連帯「保証解約権」 - Hi-HO

銀行取引の知識（９９／５）
ＹｏｕｒＦｉｎａｎｃｉａｌＢｒａｉｎ ＳＭＣ 豊島 健治
連帯「保証解約権」について
ポイント
１． 包括・限定根保証は事情があれば解約申し出が出来る
２． 申出以前に実行された貸出金に対しては解約権は及ばない
連帯保証については７５号（９７年１０月１８日）で触れましたが、今回は連帯保証の解約権
について説明してみます。
連帯保証の形式には次のようなものがあります。
保証の形式
保証の内容
具体例
裏面約定付証書貸付（住宅ロ
１
特定債務保証
特定の債務だけ定めて保証する
ーンが典型）
２
根保証
Ａ 包括根保証
主債務者の全ての借入を保証する 社長やオーナーの保証形式
金額・期間・借入形式を定めて保 第三者の保証形式で繰返し
Ｂ 限定根保証
証する
発生する貸出に利用される
裁判所の判例は、保証人の保護の立場から保証人の責任の範囲を合理的な範囲に制限する傾向
が強いようですが、連帯保証人には次のような権利がないことは承知しておいて下さい。
分別の利益
保証人が２人以上いる時、責任の範囲が人数分に分割される権利
催告の抗弁権 「本来の債務者に請求しろ」と要求する権利
検索の抗弁権 「本来の債務者をもっと良く調査しろ」と要求する権利
上記のような権利は連帯保証人にはなく、主たる債務者に不都合が生じた時、連帯保証人は債
務者と全く同じ立場になります。従って、連帯保証人になるとは、いつでも本来の債務者に替わ
って自らが（従たる）債務者になることを覚悟することでもあります。また、連帯保証債務は相
続の対象にもなりますので留意が必要です。
では、何らかの事由で連帯保証人になってしまった場合、その連帯保証人の立場から降りるこ
とが出来ないかと云えば必ずしもそうではありません。特別解約権と任意解約権が認められてい
ます。その内容は次の通りです。
主債務者が特別の事情が発生した場合、連帯保証人は将来に向かって保証契約
特別解約権
を解約することが出来る
保証契約成立後相当の期間が経過した包括根保証については、連帯保証人から
任意解約権
随時解約することが出来る
連帯保証の形式で云えば、１．の特定債務保証に保証解約権はありません。保証解約権が認め
られるのは２．の根保証です。包括根保証には任意解約権が、包括根保証・限定根保証には特別
解約権が行使できるとされています。ここでは触れませんが、解約権の行使を認める主債務者の
「特別の事情」には幾つかあります。
尚、云うまでもないことですが、夫の知らない内に妻が実印と印鑑証明を持ち出して誰かの連
帯保証人となっても、夫は保証意思を否認出来ます。銀行が保証意思の確認作業を厳密化してい
るのはその理由によるもので、本人の関知しない保証行為は争いになっても勝てます。
１９９９年５月２９日発行
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