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表7-5 住宅地区のシミュレーションケース 7.3.2 HIPの日変化の特徴
表7-5 住宅地区のシミュレーションケース No. D1: D2: D3: D4: D5: D6: D7: D8: 現状 木造・密集 RC造・密集 集合住宅 木造・密集・緑化 RC造・密集・緑化 集合住宅・緑化 現状・最大緑化 建蔽率 容積率 緑被率 樹木数 建物の構 詳細 造 (%) (%) (%) (本) 30 50 70 16 木造 建蔽率・容積率が共に低い木造住宅地 70 150 0 0 木造 都市化が進行、建蔽率・容積率が増加、木造 70 150 0 0 RC造 都市化が進行、建蔽率・容積率が増加、RC造 35 150 0 0 RC造 同一の容積率で建蔽率の違いを検討、RC造 70 150 30 0 木造 木造密集で取り得る環境改善手法 70 150 30 0 RC造 RC造密集で取り得る環境改善手法 35 150 65 11 RC造 集合住宅で取り得る環境改善手法 30 50 70 12 木造 現状の熱環境が最大限に良好になった場合 注1) 建蔽率、容積率は共にネット値である。 注2)緑被率には、樹木の樹幹部分の地面への投影面積を含める。また壁面植栽は緑被率には含まれない。 注3)樹木の高さは、D1の樹木は12m以上が5本、D7の樹木は12m以上が7本、D8の樹木は全て15m以上。 これら以外は20m以上。 7.3.2 HIPの日変化の特徴 シミュレーションの例として<D1.現状>を図7-14に示す。 表面温度の分布を見ると13時には周囲の舗装道路面や屋根面では表面温度が60℃に達し ているが、宅地内の自然土壌や建物壁面では40℃、緑陰部では気温よりも低い温度となって いる。18時の表面温度は宅地内では屋根を残して他の部分は気温程度にまで低下している。 HIPの日変化を見ると、午前中のHIPの上昇が顕著なのは<D2.木造密集>と緑化面積 の少ない<D5.木造密集・緑化>である。13時のピーク時にはそれらと<D4.集合住宅>の HIPが25℃前後と高い値をとる。14時以降、HIPの低下が著しいのは木造の建物で構成され る<D2.木造密集>と<D5.木造密集・緑化>であり、熱容量の大きいRC造の建物で構成さ れるモデルでは朝方までHIPは2℃以上の値を保っている。 123 図7-14 住宅地区のシミュレーション結果(現状) 124 7.3.3 対策効果の分析 1)高密化の場合の建物構造による違い 建物構造のみが異なる<D2.木造密集>と<D3.RC造密集>を比較すると、13時の時点で は<D2.木造密集>の方が4℃HIPは高いのに対し、熱容量が小さいため夜間は概ね3℃低く、 日中と夜間で傾向が逆転している。 2)高密住宅における緑化対策の効果 集合住宅と戸建密集住宅との HIP を比較すると、同一の容積率ではあるが建蔽率の小 さい<D4.集合住宅>の方が戸建住宅のモデルよりも敷地内に緑化スペースが多くとれて 対策が十分であったため、緑化を行った<D7.集合住宅・緑化>では 10.4℃の HIP の低下 が見られた。これに対し、戸建住宅のモデルでは木造、RC 造とも 1℃程度の低下にとど まっている。 3)現状に最大限の緑化を施した場合の効果 <D1.現状>と<D8.現状・最大緑化>を比較すると、<D8.現状・最大緑化>では建物も 樹冠が覆っているのに比べ、<D1.現状>では建物、特に屋根面への対策がされていないた めHIPは12.6℃高い。以上から、現状の宅地を保全しそこに最大限の緑化を施すことが熱汚 染対策にとって最も効果が高いことが分かる。 7.3.4 MRTの分布 ほとんどのケースにおいて、MRTが高いグループと低いグループの2つに分かれている。 このうちMRTが38℃付近に集中する地点は、緑化対策がされていないアスファルト道路上 のものであり、一方、気温相当の値に分布している地点は敷地内の日影部分のものである。 特に、それらは密集した戸建住宅地の住棟間や大木の樹冠下などに位置する。<D8.現状・最 大緑化>では、道路上にも街路樹を植栽し熱環境対策を図ったため、MRTの高い地点はほと んど存在しない。 125 建築構造による比較 D1:現状(良好な住環境) 建蔽率:30% 現状 容積率:50% 55m 30m 街区面積:1550㎡ D2:戸建・木造 D3:戸建・RC造 建蔽率:70% D4:集合住宅 建蔽率:70% 建蔽率:35% 高密化 容積率:150% D5:戸建・木造(緑化・透水化) D6:戸建・RC造(緑化・透水化) 建蔽率:70% D7:集合住宅(緑化・透水化) 建蔽率:70% 建蔽率:35% 緑化 容積率:150% 図 7-15 高密化の場合の建物構造による違いと緑化対策シミュレーション 表 7-6 高密化の場合の建物構造による違いと緑化対策シミュレーション結果 高密化 No D1 ケース 現状 建蔽率 容積率 昼(13時) HIP(℃) 夕(20時) 30% 50% 17.4 0.1 D2 D3 D4 RC造戸 木造戸建 集合住宅 建 70% 70% 35% 150% 150% 150% 25.9 21.9 25.7 1.3 4.5 4.7 高密化+緑化 No D5 D6 D7 RC造戸 ケース 木造戸建 集合住宅 建 樹高20m 0本 0本 2本 樹木の植樹 樹高12m 0本 0本 5本 樹高7m 0本 0本 4本 芝の植栽 注) 100% 100% 100% 舗装面の透水化 注) 100% 100% 100% 緑被率 30% 30% 65% 昼(13時) 25.0 20.9 15.3 HIP(℃) 夕(20時) 0.8 3.9 1.5 注)建物を除いた敷地面積に対する面積割合 126 現状の最大緑化 D1:現状 D8:最大限の緑化(高木化) 建蔽率:30% 容積率:50% 図 7-16 現状最大緑化のシミュレーション 表 7-7 現状最大緑化のシミュレーション結果 No D1 ケース 現状 樹高20m 樹高12m 樹高7m 樹木の植樹 芝の植栽 舗装面の透水化 緑被率 昼(13時) HIP(℃) 夕(20時) 注)D8の樹木はすべて15m以上 D8 現状 最大緑化 2本 10本 0本 100% 100% 70% 4.8 -0.7 0本 5本 11本 100% 100% 70% 17.4 0.1 30 46 13時のHIP 20時のHIP 44 25 MRT [℃] 42 40 38 15 36 Air 34 Temp. 32 10 5 30 図7-17 住宅地区におけるHIP及びMRTの対策効果の比較 127 D8:最大緑化 D6:RC造密集・緑化 D7:集合住宅・緑化 D5:木造密集・緑化 D4:集合住宅・現状 D2:木造・密集 D3:RC造・密集 D8:最大緑化 D7:集合住宅・緑化 D6:RC造密集・緑化 D5:木造密集・緑化 D4:集合住宅・現状 D3:RC造・密集 D2:木造・密集 -5 D1:現状 28 0 D1:現状 HIP(℃) 20 7.4 工場地区 敷地面積が大きく、建蔽率が低い工場地区については、 1)緑化の推進によりHIPの低下が見られる 2)樹木の配置を集中型と分散型で比較した結果、HIPの違いは見られなかった。 7.4.1 シミュレーションケースの設定 建築基準法の工場立地法では、敷 建蔽率:40% 容積率:150% RC造 地面積9000㎡(建築面積合計3000 ㎡)以上の工場では緑被率を20%以 上にすることが規定されている。こ れをさらに発展させ産業活動による 人工排熱を補完する機能を持った大 200m 規模な緑化を展開する場合の手法を 街区面積:28,000 ㎡ 140m 検討するため、以下のシミュレーシ ョンケースを設定した。 図 7-18 工場・流通施設の街区概要 ① 樹木の植樹方法(集中型、分 散型)による効果の違いを見る。 ② 最大限に緑化した場合の効果を見る。 具体的には、以下のパラメータを変化させHIPの変化をシミュレーションで求めた。 表7-8 工場地区のシミュレーションケース No. F1: F2: F3: F4: 現状 集中型緑化 分散型緑化 最大緑化 緑被率 樹木数 詳細 (%) (本) 0 0 全く熱環境対策が施されていない状態 20 30 敷地内の一箇所に集中的に緑化 20 30 建物を取り囲むように緑化 50 60 最大限の熱環境対策 7.4.2 HIPの日変化の特徴 シミュレーションの代表例として分散型緑化の例を図7-19に示す。 表面温度は日中、建物屋上、舗装路面などで60℃に達し、壁面も気温より高い温度を 示している。この中で気温並の表面温度は緑影部のみで敷地全体が大気を暖める要因と なっている。18時になっても建物壁面と日影以外は37∼38℃の高温を保っている。 HIPの日変化を見ると、<F1.現状>が一日を通して最も高いHIPの推移を示し、<F4. 最大緑化>で最も低い。<F2.集中型緑化>と<F3.分散型緑化>は一日を通してほぼ同様の 変化を見せており、緑化方法による効果の違いは見られない。どのモデルも午前中0時以降 にHIPの値が多少変動しているが、これは気象条件の雲量が変化しているため、大気への放 射冷却が時間ごと異なって影響したためである。 128 図7-19 工場地区のシミュレーション結果(分散型緑化) 129 7.4.3 対策効果の分析 1)植樹方法 <F2.集中型緑化>、<F3.分散型緑化>では、両者とも13時のHIPは21℃、20時は3℃ とほとんど変らない 2)最大緑化の効果 <F4.最大緑化>では、建物以外の敷地への緑化は十分であったが、広い面積を有する 屋上の熱環境対策を取り入れなかったため、13時にHIPが14.8℃と高い。 7.4.4 MRTの分布 <F4.最大緑化>以外、上昇した地表面温度の影響を大きく受けMRTが高い地点が多く 存在する。また、敷地内の様々な場所から地点を選定しているため、<F2.集中型緑化> に比べ、<F3.分散型緑化>の方が全体的にMRTは低く分布している。 130 F1:現状 建蔽率:40% 容積率:150% 200m 140m 街区面積:28,000㎡ F2:緑化対策(集中型) F3:緑化対策(分散型) 図 7-20 植樹方法の違いと緑化効果のシミュレーション 表 7-9 植樹方法の違いと緑化効果のシミュレーション結果 No ケース 樹木の植樹 注1) 芝の植栽 注2) 舗装面の透水化 注2) 緑被率 昼(13時) HIP(℃) 夕(20時) F1 現状 0本 0% 0% 0% 26.6 4.4 F2 F3 F4 集中緑化 分散緑化 最大緑化 30本 30本 60本 30% 30% 83% 30% 30% 83% 20% 20% 50% 20.9 21.0 14.8 2.9 2.9 1.3 注1)樹木の高さはすべて20m 注2)建物を除いた敷地面積に対する面積割合 30 46 13時のHIP 20時のHIP 44 25 MRT [℃] 42 40 38 15 36 Air 34 Temp 32 10 5 30 図7-21 工場地区におけるHIP及びMRTの対策効果の比較 131 F4:最大限の緑化 F3:分散型緑化 F1:無対策 F4:最大限の緑化 F3:分散型緑化 F2:一点集中型緑化 -5 F2:一点集中型緑化 28 0 F1:無対策 HIP(℃) 20 7.5 幹線道路沿道地区 中央分離帯と歩道を含む6車線道路から成る幹線道路沿道地区については、 1)街路樹の植栽によりHIPが低下する。 2)舗装面を透水化し、かつ湿潤状態が保たれていればHIPが低下する 3)街路樹と透水性舗装の併用によりHIPの低減効果が高くなる。 4)樹木がない場合は東西道路の方が午前中のHIPの上昇は早く、夕方の低下は遅い。 樹木を植樹した場合には東西道路の方が若干効果が高い。 5)MRTの低減には緑化による効果が高いが、建物の日陰部分など透水化の効果が非常に 大きい地点もある。 7.5.1 シミュレーションケースの設定 大規模な沿道緑化の効果を見る 建蔽率:80% ため中央分離帯と比較的広い幅員 容積率:600% の歩道のある6車線道路を対象に 以下のようなケースを設定した。 ① 緑化の効果と道路の方位に 120m よる影響の違いを見る。 ② 緑化の方法(低木・高木)に よる違いを見る。 街区面積:9600 ㎡ 80m ③ 歩道に透水性舗装を導入し 図 7-22 幹線道路・沿道街区の街区概要 た場合の効果を見る。 具体的にはモデルに対し以下に示すパラメータを変化させ、HIPをシミュレーション で求めた。 表7-10 幹線道路沿道地区のシミュレーションケース No. S1: S3: S2: S4: S5: S6: S7: 東西道路・現状 南北道路・現状 東西道路・最大緑化 南北道路・最大緑化 東西道路・透水化 東西道路・透水化・最大緑化 東西道路・低木緑化 緑被率 樹木数 詳細 (%) (本) 0 0 幹線道路ではベースとなるモデル 0 0 道路の方位による影響を見る 43 19 街路樹植栽の効果を調べる 43 19 街路樹を植栽した状態で方位による影響を見る 32.7 0 歩道面での熱環境対策 53.6 19 最大限の熱環境対策 5.7 72 小規模な植栽の効果を調べる 注1) 緑被率には、樹木の樹幹部分の地面への投影面積を含める。 注2) 幹線道路は、片側3車線、合計6車線で構成される。道路周辺の建物の建蔽率・容積率はあり得る最大値を示してい 132