...

Podosphaera xanthii - 大阪府立大学学術情報リポジトリ OPERA

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

Podosphaera xanthii - 大阪府立大学学術情報リポジトリ OPERA
 Title
Author(s)
宿主植物の環境応答を介したキュウリうどんこ病菌(Podosphaera
xanthii)の発達制御に関する基礎的研究
板垣, 芳
Editor(s)
Citation
Issue Date
URL
2016-06
http://hdl.handle.net/10466/15046
Rights
http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/
大阪府立大学博士(緑地環境科学)学位論文
宿主植物の環境応答を介した
キュウリうどんこ病菌(Podosphaera xanthii)の
発達制御に関する基礎的研究
板垣 芳
2016年
目次
第1章
はじめに .................................................................................................................... 2
第 2 章 光質に対する植物応答が Podosphaera xanthii の発達に及ぼす影響 ................. 6
2.1 緒言 ............................................................................................................................ 6
2.2 材料および方法 ........................................................................................................ 8
2.3 結果 .......................................................................................................................... 29
2.4 考察 .......................................................................................................................... 50
第3章
湿度に対する植物応答が Podosphaera xanthii の発達に及ぼす影響 ............. 53
3.1
3.2
3.3
3.4
緒言 .......................................................................................................................... 53
材料および方法 ...................................................................................................... 55
結果 .......................................................................................................................... 60
考察 .......................................................................................................................... 75
第4章
CO2 濃度に対する植物応答が Podosphaera xanthii の発達に及ぼす影響 ..... 77
4.1
4.2
4.3
4.4
緒言 .......................................................................................................................... 77
材料および方法 ...................................................................................................... 79
結果 .......................................................................................................................... 83
考察 .......................................................................................................................... 92
第5章
総合考察 .................................................................................................................. 94
摘要 .......................................................................................................................................... 97
謝辞 ........................................................................................................................................ 101
引用文献 ................................................................................................................................ 102
Summary ............................................................................................................................... 110
i
第1章
はじめに
植物病害の発生過程は宿主植物と病原菌の相互関係によって成立している.宿主植物と
病原菌の組み合わせは基本的に感染が成立する遺伝子の親和性によって決定され,それぞ
れの病原菌は感染できる宿主植物の種が限られている(Hammond-Kosack and Jones, 1997;
Person, 1959).糸状菌による植物病害では,病原菌は宿主植物に付着すると侵入菌糸を伸
長し,直接侵入あるいは気孔などの自然開口部や傷口から葉内に侵入し,宿主植物から養
分を吸収する.養分の吸収が安定的にできるようになると,病原菌は菌糸を伸長し繁殖体
を作り増殖する.増殖が進行すると,葉面上の病斑や褐変などの病徴から植物病害の発生
が認識される.病原菌の感染によって宿主植物の光合成,呼吸,蒸散および養水分の輸送
などの生理的特性も変化し(Scholes et al., 1994; Berger et al., 2007),そのことがさらに病
原菌の発達に影響する.他方,病原菌に寄生された宿主植物は,病原菌の侵入や養分吸収
に対して抵抗性物質の生成や,感染された細胞を細胞死させて病原菌の発達を停止する過
敏感反応などの防御応答を示す(Dangl and Jones, 2001).このように,宿主植物と病原菌
の相互関係は,感染が成立する遺伝子の親和性,病原菌の病原性の強さ,宿主植物の抵抗
性応答や生理的特性などに依存する.
宿主植物と病原菌の相互関係は光,温度,湿度などの物理環境要因に影響され,環境要
因は病原菌の発達に直接的にあるいは間接的に関与する.直接的な影響に関しては,例え
ばうどんこ病菌の場合は,分生子形成およびその拡散は低湿度下で促進され,感染や発達
は高湿度下で促進されるが,湿度が高すぎると発芽や発達が抑制される場合があると言わ
れ て い る ( Schnathorst, 1965; Reuveni and Rotem, 1974; Whipps and Budge, 2000;
Guzman-Plazola et al. 2003; Elad et al. 2007).他方,植物も環境要因によって形態的生理的
特性が変化し(Wang et al., 2003; Fujita et al., 2006),このような植物の環境応答による形
態的生理的特性の変化は病原菌の発達に影響する.例えば,イネにおけるケイ酸の蓄積量
減少による植物組織の軟弱化でいもち病が蔓延しやすくなり(Tanaka and Park, 1966),こ
れは宿主植物の蒸散の低下に伴って植物の養分の吸収と蓄積が抑制されることで起こり,
湿度や風の影響を受ける.光環境の変化に対する植物の生態的応答も病原菌の発達に影響
し,植生下層での光環境は宿主植物の病害抵抗性を低下させることが報告されており,こ
2
れは病原菌に対する防御よりも光環境への適応が優先されたためと考えられている
(Ballaré et al., 2012; Cerrudo et al., 2012; Demotes-Mainard et al., 2015).さらに,植物の炭
素固定量の変化も病原菌の発達に影響し,標準大気濃度以上の CO2 濃度(650–800 µmol
mol−1)下で育成した植物では,うどんこ病やべと病,斑点病などの病害が抑制され,これ
は高 CO2 濃度順化による抵抗性に関与する二次代謝物質量が増加したことなどに起因する
(Manning and Tiedemann, 1995; Mathur et al., 2013; McElrone et al., 2005; Strengbom and
Reich, 2006).このように,環境は宿主植物の応答を介して病原菌の発達に間接的にも影
響するが,その要因についてはまだ十分にわかっていない.環境要因の直接的あるいは間
接的影響を区別して評価することは,宿主植物と病原菌の相互関係について解明するため
の基礎的知見として,さらには農業生産における病害の発生予察や防除のために重要であ
る.
本研究では,施設園芸に特有な環境条件における宿主植物と病原菌の相互関係に注目し
た.施設園芸とは,ガラスハウスやプラスチックハウスなどの施設内で農作物の栽培を行
うことであり,露地栽培と比較して高品質な農作物の安定的生産を行うことを目的として
いる.園芸施設では,被覆資材によって施設外との熱や物質の交換が制限されるため,施
設外と異なる環境を作ることができる.例えば,被覆資材によって降雨が遮断されること
で好適な潅水管理が容易にできる,あるいは熱の交換が制限されることで施設内の気温を
施設外よりも高くできるなどの利点がある.ただし,熱や物質の交換が制限された結果と
して,植物の生育に不適な高温や高湿度,低CO2濃度条件などの意図しない環境になるこ
とがある(Kindelan, 1980; Sánchez-Guerrero et al., 2005; Kläring et al., 2007).そこで,施設
内で環境制御機器や資材を用いて積極的な環境調節を行い,自然と異なる環境を作ること
で植物の生育制御が行われている.CO2施肥によって標準大気より高いCO2濃度で光合成を
促進させることや,人工光源やフィルムを用いた光質制御によって植物の発育や形態の制
御を行うことなどはその一例である.施設園芸では病害防除も重要な課題のひとつである.
外部から隔離されることで病害リスクが減少する場合もあるが,一方で施設内の環境が病
原菌にとって好適であると,外部よりも病害が発生しやすくなることがある.そのため,
施設園芸では植物の生育制御だけでなく,病害防除も考慮しながら環境調節を行う必要が
ある.例えば,施設内は外部よりも高湿になりやすいため灰色かび病やべと病などの病害
が発生しやい.そのため,適度な換気や除湿装置によって湿度を下げることで病害発生を
抑える工夫がされている.
施設園芸特有の環境条件は,植物応答を介して間接的に病原菌の発達に影響する可能性
3
があるが,そのことは十分に調べられていない.本研究では,施設園芸で重要な環境要素
である植物育成時の照射光の光質,湿度環境およびCO2濃度に注目し,キュウリ(Cucumis
sativus L. ) 実 生 を 異 な る 環 境 下 で 育 成 し , そ の 宿 主 で あ る キ ュ ウ リ う ど ん こ 病 菌
(Podosphaera xanthii)を接種することで環境要因の間接的な影響を調べた.うどんこ病は
キュウリの重要病害のひとつである.施設内で発生しやすく,蔓延すると防除が難しい上
に,近年では薬剤耐性菌の発生も報告されている(Nao et al., 2005).さらに,P. xanthii
に感染したキュウリ実生では果実の収量および品質が低下することから,適切な防除方法
が求められている.
本論第2章では,光質の中でも遠赤色光(FR)に対する赤色光(R)の比(R/FR比)に
注目した.施設園芸では,人工光源や光吸収フィルム等を用いて照射光のR/FR比を調節す
ることで植物の生育制御を行うことがある(Rajapakse et al., 1999; Runkle and Heins, 2002;
Kozai et al., 2006; Kozai, 2007; Rajapakse and Shahak, 2007).育成時の照射光のR/FR比は植
物の形態形成に大きく影響する(Ballaré et al., 1991; Franklin, 2008; Shibuya et al., 2013).
自然光(≈ 1.2)よりも低いR/FR比(< 1.2)に宿主植物が順化することで病原菌の発達が促
進されること(Ballaré et al., 2012; Cerrudo et al., 2012; Demotes-Mainard et al., 2015)が明ら
かにされているが,逆に人工光源やフィルムなどによって自然光よりもR/FR比が高いとき
の影響は調べられていない.高R/FR比への順化は,葉が厚くなるなど低R/FR比への順化と
は逆の特性を示すことから,高R/FR比への順化によって病原菌の発達が抑制される可能性
がある.そこで本研究では,自然光と同じR/FR比あるいはそれよりも高いR/FR比に順化し
たキュウリ実生におけるP. xanthiiの初期発達および病斑形成を詳細に評価することで,照
射光のR/FR比が植物応答を介してうどんこ病菌の発達に及ぼす影響とその要因を分析し
た.さらに,施設園芸において閉鎖型施設での人工光源を用いた光質制御,あるいは自然
光下の園芸施設でのフィルムを用いた光質制御を想定して,白色蛍光灯照射あるいは自然
光下でフィルムを用いてR/FR比を高めることによるP. xanthiiの発達制御を試みた.
本論第3章では,湿度環境が植物応答を介して病原菌の発達に及ぼす影響を評価した.
施設内の湿度は,植物や土壌からの蒸発散と施設内外の熱・水蒸気交換によって決定され,
施設外とは異なる変動を示す.低湿度環境では蒸散要求量が大きくなるため,植物は水分
損失を防ぎ水分バランスを保つために葉が硬く厚くなり(Shibuya et al., 2009),クチクラ
の構築やワックスの化学成分,葉表面の構造が変化する(Hull et al., 1975; Torre et al., 2003;
Koch et al., 2006).このような植物の応答によって病原菌が葉内に侵入しにくくなり,病
斑形成が抑制される可能性が考えられる.一方で,高湿度環境では,植物は軟弱になり,
4
病原菌が葉内に侵入しやすくなり,病害が促進される可能性がある.そこで,乾燥あるい
は高湿環境に順化したキュウリ実生におけるP. xanthiiの生育を,本論第2章と同様に初期発
達および病斑形成を評価することで,湿度が植物応答を介してうどんこ病菌の発達に及ぼ
す影響とその要因を調べた.
本論第4章では,大気CO2濃度が植物応答を介して病原菌の発達に及ぼす影響を評価した.
施設内の日中CO2濃度は屋外より低く,さらに換気が限られておりCO2施用が行われていな
い 場 合 は CO2 補 償 点 近 く ま で 顕 著 に 低 下 す る こ と が あ る ( Kläring et al., 2007;
Sánchez-Guerrero et al., 2005).一方で,植物の光合成を促進するためにCO2施用が行われ
ることがある(Nilsen et al., 1983; Mortensen, 1987).CO2濃度が標準大気濃度よりも低い場
合では植物の成長が抑制されるだけでなく,生物的ストレス抵抗性も低下する可能性があ
る.なぜなら,CO2濃度が低い場合,植物は十分な同化産物を得ることができず,自身の
防御のために十分に物質分配できないと考えられるからである(Bazzaz et al., 1987; Bryant
et al., 1983).既往研究では,植物病害(例えば,うどんこ病,べと病,斑点病)に対す
る抵抗性は高いCO2濃度下で向上し,これは抵抗性に関与する二次代謝物質の生成量が変
化したことが要因であると報告されている.しかし一方で,矛盾する結果も報告されてお
り,高CO2濃度下では病原菌の発達が促進されるとも言われている(Kobayashi et al., 2006;
Lake and Wade, 2009).そこで本研究では施設園芸で起こりうる広い範囲でのCO2濃度の
変化に注目し,標準大気よりも低い濃度から高い濃度にかけての異なるCO2濃度に順化し
たキュウリ実生におけるP. xanthiiの病斑形成について評価した.
最後に本論第5章では,総合考察を行い,物理環境が植物応答を介してP. xanthiiの発達に
及ぼす要因について考察すると共に,本研究成果の施設園芸における重要性について述べ
たい.
5
第 2 章 光質に対する植物応答が Podosphaera
xanthii の発達に及ぼす影響
2.1
緒言
光質は植物と病原菌の相互関係にも影響し,特定の波長域の光を植物葉に照射すること
で病害抵抗性が向上することがわかってきている.例えば,紫外線(Bridge and Klarman,
1973),紫色光(Wang et al., 2010),青色光(Wang et al., 2010),赤色光(Schuerger and Brown,
1997; Rahman et al., 2002; Islam et al., 2002; Wang et al., 2010)において宿主植物の病害抵抗
性が向上することが報告されている.本研究では照射光の遠赤色光(FR)に対する赤色光
(R)の比(以下,R/FR 比)の変化が宿主植物と病原菌の相互関係に及ぼす影響について
注目した.
施設園芸では,人工光源や光選択性フィルム等を用いて照射光の R/FR 比を調節するこ
とで植物の生育制御を行うことがある(Rajapakse et al., 1999; Runkle and Heins, 2002; Kozai
et al., 2006; Kozai, 2007; Rajapakse and Shahak, 2007).R/FR 比が自然光(R/FR ≈ 1.2)より
も低い場合,展葉や茎の伸長が促進され,このような応答は避陰反応と呼ばれる(Franklin,
2008).R/FR 比が宿主植物と病原菌との相互関係に及ぼす影響に関しては,R/FR 比が自
然光よりも低い場合については調べられており,低 R/FR 比への順化によって宿主植物の
病害抵抗性が低下し,病原菌の発達が抑制されることが報告されている(Ballaré et al., 2012;
Cerrudo et al., 2012; Demotes-Mainard et al., 2015).しかし一方で,R/FR 比が自然光よりも
高い場合については調べられていない.照射光の R/FR 比が自然光よりも高い場合,葉が
厚くなる,茎の伸長が抑制されるなどの避陰反応と逆の形態的応答を示す(Ballaré et al.,
1991; Shibuya et al., 2013).上記で述べたように,自然光よりも低い R/FR 比に宿主植物が
順化すると病原菌の発達が促進されることから(Ballaré et al., 2012; Cerrudo et al., 2012;
Demotes-Mainard et al., 2015),逆に高い R/FR 比への順化では反対の応答が起こり,病原
菌の発達が抑制される可能性が考えられる.そこで本研究では,高 R/FR 比の照射光に順
6
化したキュウリ実生における P. xanthii の発達を評価した.
本研究ではキュウリ実生(Cucumis sativus. L)およびうどんこ病菌(Podosphaera xanthii)
を用いて 3 つの実験を行い,高 R/FR 比の光照射が植物応答を介して P. xanthii の発達に及
ぼす間接的な影響を評価するとともに,施設園芸での応用を検討した.
本章実験 1 では,異なる R/FR 比の LED 照射光下で育成したキュウリ実生における P.
xanthii の病斑形成をうどんこ病抵抗性品種を含めて評価した.さらに,照射光の R/FR 比
によって P. xanthii の発達が抑制された要因を推定するために,環境応答した宿主植物にお
ける P. xanthii の初期発達を評価した.Podosphaera xanthii の初期発達は, 分生子(胞子)
の「発芽」,「感染」および「感染後の菌糸および吸器形成」の 3 つの過程に分けること
ができる.吸器とは,病原菌が養分を吸収するために宿主細胞内に形成する特殊な器官で
ある.それぞれの過程を制限する要因が異なるため,P. xanthii の初期発達を評価すること
で,以下のように病斑形成の要因を推定することが可能である.分生子の発芽が抑制され
ている場合は,葉面上の微気象要素が影響したと考えられる(Aust and Hoyningen-Huene,
1986).分生子の感染が抑制されている場合は,病原菌の侵入に対する葉の構造的特性が
影響していると考えられる(Aust and Hoyningen-Huene, 1986).感染後の菌糸および吸器
形成が抑制されている場合は,葉の栄養状態やうどんこ病菌の養分吸収に対する抵抗性応
答などの葉の非構造的特性が影響していると考えられる(Aust and Hoyningen-Huene, 1986;
Bélanger et al., 2002; Pérez-García et al., 2009).
本章実験 2 では閉鎖型施設での人工光源を用いた苗生産(Kozai et al., 2006; Kozai, 2007)
を想定し,一般に使用されている高い R/FR 比の白色蛍光灯(R/FR 比=10),主に植物育
成用に開発された低 R/FR 比の白色蛍光灯(R/FR 比 = 1.1),および自然光と同じ分光ス
ペクトル特性をもつメタルハライドランプ(R/FR 比 = 1.2)を光源として用い,それぞれ
の環境下で育成したキュウリ実生における P. xanthii の病斑形成を比較した.
本章実験 3 では,自然光下の園芸施設でのフィルムを用いた光質制御(Rajapakse et al.,
1999; Runkle and Heins, 2002; Rajapakse and Shahak, 2007)を想定して,自然光下において遠
赤色光吸収フィルムを用いて自然光の R/FR 比を高め,それが植物応答を介して P. xanthii
の発達に及ぼす影響を評価した.
7
2.2
材料および方法
実験 1:異なる R/FR 比の照射光に順化した子葉における P. xanthii の病
斑形成
試験区設定および供試植物の育成
キュウリ‘北進’ を,バーミキュライトを充填したセルトレイ(セル;4 cm角,深さ5 cm)
に播種し,LEDパネル(ISL-305X302-RFGB; CCS Inc., Kyoto, Japan)を設置した人工気象器
内で育成した(Fig. 2.1).3枚のLEDパネルをそれぞれR/FR比1.2,5.0または10に設定して
キュウリ実生を育成した.設定したR/FR比1.2,5.0および10はそれぞれ太陽光,本章実験3
で用いた遠赤色光吸収フィルム(NIRF-L-PP-10; Yanmar Co. Ltd., Osaka, and Panac Advance
Co. Ltd., Tokyo, Japan)を透過した自然光,および白色蛍光灯の照射光とほぼ同じ値である.
各 試 験 区 の 分 光 ス ペ ク ト ル を Fig. 2.2 に 示 す . 分 光 ス ペ ク ト ル は , ス ペ ク ト ル 計
(BLK-CXR-SR; StellarNet, Tampa, USA)を用いて測定した.その他の共通する育成条件は,
気温28 ºC,相対湿度50%,光合成有効光量子束密度(以下,PPFD)300 μmol m-2 s-1,明期
16 h d-1とした.接種時の葉面積を同じにするために,R/FR比1.2で7日間,R/FR比5.0および
10で8日間育成した.灌水は,培養液(OATハウスA処方標準養液;OAT Agrio Co. Ltd., Tokyo,
Japan)を用いて育成容器底面から適宜行った.子葉展開まで育成し,接種試験の前にキュ
ウリ実生をプラスチックポット(直径60 mm,高さ55 mm)に移植した.
Podosphaera xanthiiの接種方法および接種後の育成環境
子葉展開後(Fig. 2.3),P. xanthii を葉の向軸面に接種した.接種は,P. xanthii の分生
子懸濁液を噴霧することで行った.分生子懸濁液の調製方法を以下に示す.人工気象器
(LPH-220SP; Nippon Medical & Chemical Instruments Co., Ltd., Osaka, Japan)内のキュウリ
実生上で培養した P. xanthii の分生子を接種に用いた(Fig. 2.4a).人工気象器内の環境条
件は,気温 28 °C,
相対湿度 50%,
白色蛍光灯照射(FL20SEX-N-HG; NEC Lighting Ltd., Tokyo,
Japan),PPFD 200 μmol m-2 s-1,明期 16 h d-1 とした.感染葉 4 枚を採取し,筆を用いて分
生子を蒸留水 300 mL 中に落として懸濁液を調製した(Fig. 2.4b).ただちに懸濁液をキュ
ウリ葉の向軸面に噴霧することで接種を行った(Fig. 2.4c, d).懸濁液の濃度の測定は,
8
懸濁液 10.0 μL 中に含まれる分生子を光学顕微鏡を用いて数え,5 サンプルの平均値を懸濁
液の濃度とした.
接種試験は 3 反復行い,それぞれの反復における分生子懸濁液の濃度は,
Trial 1 で 0.96  106 conidia mL-1,Trial 2 で 0.92  106 conidia mL-1,Trial 3 で 1.40  106 conidia
mL-1 であった.接種後,各試験区のキュウリ実生を人工気象器(LPH-220SP)に移動し,
同一環境下で育成した(Fig. 2.5).このときの育成条件は,気温 28 ºC,相対湿度 50%,
白色蛍光灯照射(FL20SEX-N-HG),PPFD200 μmol m-2 s-1,明期 16 h d-1 であった.各試験
区のキュウリ実生を交互に配置し,本葉は適宜摘み取った.接種後 7 日目に葉面上に形成
された病斑数を目視で数え,接種時の平均葉面積を除することで病斑密度を算出した.
Trial 3 では,うどんこ病抵抗性品種‘ときわ 333’を用いた試験も同時に行った.
R/FR 比に順化したキュウリ葉の特性の評価
接種日のキュウリ実生の子葉面積,生体重,乾物重を測定した.子葉面積の測定には,
イメージスキャナー(CanoScan LiDE 220; Canon Inc., Tokyo, Japan)および画像解析ソフト
(LIA for Win32 ver.0.376β1; K. Yamamoto, Nagoya University, Nagoya, Japan)を用いた.生
体重は,キュウリ実生から子葉を採取し,電子天びん(GX-300; A&D Company, Ltd, Tokyo,
Japan)を用いて測定した.乾物重は,葉を 80 ºC の恒温乾燥器で 3 日間乾燥させた後,電
子天びん(HR-202i; A&D Company, Ltd, Tokyo, Japan)を用いて測定した.接種日の葉面積
および乾物重より,葉面積あたりの乾物重(leaf mass per area;以下,LMA)を,乾物重お
よび生体重より乾物率(dry matter content;以下,DMC)を算出した.
各光源下で育成したキュウリ子葉の向軸面の表皮組織の厚さを測定した.厚さ 200 μm
の葉断面切片をミクロトーム(MTH-1; Nippon Medical & Chemical Instruments Co., Ltd.,
Osaka, Japan)で作成し,葉の断面をデジタル顕微鏡システム(VHX-1000; Keyence Corp.,
Osaka, Japan)で撮影した.表皮組織の厚さの測定を内蔵の画像解析ソフト(VHX-H1M1;
Keyence Corp., Osaka, Japan)を用いて行った.接種日の葉の炭素(C)および窒素(N)含
量を,CN 元素分析計(2400 Series II; PerkinElmer Inc., Waltham, MA, USA)を用いて測定し,
C 含量と N 含量の比(以下,C/N 比)を算出した.
R/FR 比 1.2 または 10 に順化したキュウリ子葉のサリチル酸含量を測定した.サリチル
酸は,Segarra et al. (2006) の方法を基に高速液体クロマトグラフィ質量分析法で測定した.
測定には,各試験区あたり 3 サンプル(1 サンプルあたり合計 5~6 gFW の子葉)を-80 ºC
で凍結したものを用いた.
9
Podosphaera xanthii分生子の発芽率の評価
分生子の発芽率を,R/FR比1.2および10の2試験区で評価した.各試験区のキュウリ実生
の葉面積が同程度になったときに,2 cm角の葉切片を作製し,P. xanthiiを接種した.接種
は,葉切片に分生子懸濁液をマイクロピペット(Nichipet EX; Nichiryo, Co. Ltd., Saitama,
Japan)で滴下することで行った.分生子懸濁液の濃度は0.70  106 conidia mL-1であった.
分生子懸濁液10 μL/dropを2滴葉切片に滴下した.接種後,各試験区の葉切片4枚ずつをプ
ラスチック容器内に置いた.葉の枯れを防ぐために葉切片の下には,水を含んだ脱脂綿を
敷いた.プラスチック容器は,気温28 ºC,白色蛍光灯照射(FL20SEX-N-HG),PPFD200
μmol m-2 s-1,明期16 h d-1の同一環境下に24 hまたは48 h置いた.プラスチック容器は蓋をし
たため,容器内の相対湿度は約99%であった.
接種時,および接種後24 hおよび48 hの分生子の発芽を調べた.接種時の分生子の発芽
の有無は,懸濁液中の約500分生子をデジタル光学顕微鏡(VHX-100; Keyence Corp., Osaka,
Japan)で観察することで調べた.接種後24および48 hでの葉面上における分生子の発芽の
有無は,走査型電子顕微鏡(SU-1510; Hitachi High-Technologies Corp., Tokyo, Japan)で観察
することで調べた(Fig. 2.6).接種後24および48 hにおいて,それぞれ1個体あたり50~90
分生子を観察し,各試験区5個体,合計190~220の分生子における発芽の有無を調べた.
観察した全分生子のうち,発芽している分生子の割合を発芽率とした.
Podosphaera xanthii の感染,接種後 24 h,48 h および 72 h における菌糸発達および二次吸
器形成の評価
Podosphaera xanthiiの感染,接種後の菌糸発達および二次吸器形成を,R/FR比1.2および
10の2試験区で評価した.子葉展開後,キュウリ実生をプラスチックポット(直径60 mm,
高さ55 mm)に移植し,ハンドスプレーで懸濁液を噴霧することで接種を行った.接種後
は,気温28 ºC,相対湿度50%,白色蛍光灯照射(FL20SEX-N-HG),PPFD200 μmol m-2 s-1,
明期16 h d-1の同一環境下に,24 h,48 h,72 hまたは7日間置いた.
接種後 24 h,48 h および 72 h にキュウリ子葉を採取し,FAA 固定液(Formalin : Acetic acid :
Alcohol = 1 : 1 : 1, v/v/v)で脱色および固定をした.葉の緑色が十分に抜けてから,分生子
の感染を観察した.FAA 固定液で固定した試料を,水で濯ぎ,ラクトフェノールブルー染
色液(Merck Millipore Co., Darmstadt, Germany)で染色して光学顕微鏡(BX-50; Olympus
Corp., Tokyo, Japan)を用いて観察した.感染率,接種後の菌糸伸長および吸器形成は,子
葉 1 枚を 1 反復とし,1 反復あたり 30 の分生子を観察し,4 反復分の観察を行った.
10
接種後 24 h の P. xanthii の分生子の発芽と主軸菌糸の伸長から感染率を算出した(Fig.
2.7a, b, c).分生子は,発芽後(Fig. 2.7a),発芽管(germ tube)からの侵入菌糸によって
葉内に侵入にすると,キュウリ表皮細胞内に一次吸器を形成する(Fig. 2.7c).吸器とは,
病原菌が養分を吸収するために宿主細胞内に形成する特殊な器官である.一次吸器
(primary haustorium)の形成に成功すると発芽管あるいは分生子から主軸菌糸(primary
hyphae)を主軸伸長する(Fig. 2.7b).葉内への侵入および一次吸器が形成できないと主
軸菌糸を伸長することができず,感染に失敗したと言える.このことから,分生子の感染
率は、発芽できた分生子のうち,発芽管で一次吸器を形成して主軸菌糸を伸長できた分生
子の割合として,以下の式より算出した.
感染率(%) =
∑ (発芽管と主軸菌糸を形成した分生子数)
{∑ (発芽管のみ形成した分生子数) + ∑ (発芽管と主軸菌糸を形成した分生子数)}
× 100
接種後 24 h,48 h および 72 h において,分生子あたりの主軸菌糸,主軸菌糸から伸長し
た二次菌糸(secondary hyphae),総菌糸細胞数(hyphal cells),菌糸細胞から形成された
二次吸器(secondary haustoria)形成を評価した(Fig. 2.7d, e, f).菌糸細胞は菌糸内に形成
された隔壁(septa)から判別した(Fig. 2.7e).分生子に隣接した菌糸細胞内に二次吸器
が形成された割合を算出した.
Podosphaera xanthiiの接種後7日目の吸器形成の評価
接種後 7 日目に,吸器が形成された表皮細胞の割合から吸器形成を評価した.平均的な
病斑部を切り抜き,ミクロトーム(MTH-1)を用いて葉断面切片を作製し,ラクトフェノ
ールブルー染色液(Merck Millipore Co.)で染色した.染色後,デジタル光学顕微鏡
(VHX-1000)で表皮細胞内に吸器が形成されたかを観察した(Fig. 2.8).1 個体あたり
200 の表皮細胞を観察し,P. xanthii の吸器が形成された表皮細胞の数を評価した.各試験
区 5 個体分,合計 1000~1200 の表皮細胞を観察した.吸器が形成された表皮細胞数と形
成されていなかった表皮細胞数から吸器形成率を算出した.
11
Fig. 2.1
Cucumber seedlings grown under a LED panel with red-to-far-red ratio of 1.2 (right), 5.0
(leaft) or 10 (center).
12
1.2
R:FR = 1.2
R/FR 1.2
1.0
1.0
0.8
0.8
0.6
0.6
Relative photon flux per wavelength
0.4
0.4
0.2
0.2
1.20
0.0
1.0
1.0
5.0
300 R:FR
R/FR=5.0
400
500
600
700
800
300 R:FR = 10
400
500
600
700
800
300
300
400
400
500
500
600
600
700
700
800
800
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
1.20
0.0
1.0
1.0
R/FR 10
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0.00
Wavelength (nm)
Fig. 2.2 Light spectra of LEDs with red-to-far-red ratio (R/FR) of 1.2, 5.0, or 10, respectively.
Photon fluxes per unit wavelength are expressed relative to the maximum. The R/FR was
estimated by dividing the total photon flux from red light (600 to 700 nm) by that from far-red
light (700 to 800 nm).
13
Acclimatization
R/FR = 1.2
Fig. 2.3
Acclimatization
R/FR = 5.0
Acclimatization
R/FR = 10
Cucumber seedlings grown under LEDs with red-to-far-red ratio (R/FR) of 1.2, 5.0,
or 10 until cotyledon stage.
14
a
c
b
d
Fig. 2.4
Preparation of inoculum. (a) Cucumber seedlings infected by Podosphaera xanthii
were grown in a growth chamber for propagation of fungus. (b) Spores on the infected
leaves were gently washed off in distilled water. (c) Inoculum was installed into a handy
sprayer and (d) were spray-inoculated onto seedlings for testing.
15
Fig. 2.5 Cucumber seedlings in a growth chamber after inoculation.
16
Germinated
conidium
Non-germinated
conidium
100 µm
Fig. 2.6
Germinated and non-germinated conidia of Podosphaera xanthii observed by
scanning electron microscope 24 h after inoculation.
17
(a)
(b)
(c)
Germ tube
Primary haustorium
Primary haustorium
Germ tube
Primary hypha
50 µm
50 µm
50 µm
(d)
Secondary hypha
Primary hypha
Primary haustorium
Primary hypha
Secondary haustorium
Secondary haustorium which
formed next to conidium
50 µm
(e)
Primary hypha
Hyphal cell
Conidium
Primary haustorium
Septum
Septum
20 µm
Secondary haustorium
Secondary haustorium which
formed next to conidium
(f)
Primary haustorium
20 µm
Fig. 2.7
Secondary haustorium
Secondary haustorium which
formed next to conidium
Development of Podosphaera xanthii conidia on cucumber seedlings acclimatized to
red-to-far-red ratio (R/FR) = 1.2. (a) Conidium with a germ tube. (b, c) Conidium with
germ tube, primary hypha and primary haustorium, 24 h after inoculation. The images of
(b) and (c) are taken from the same conidium at different depth focus. (d) Conidium with
primary and secondary hyphae and haustoria 48 h after inoculation. (e) Hyphal cell 48 h
after inoculation. (f) Primary and secondary haustorium 48 h after inoculation. The images
of (d), (e) and (f) are taken from the same conidium at different magnification and depth of
focus.
18
Haustorium formed in epidermal cell
100 μm
Fig. 2.8
Haustorium of Podosphaera xanthii formed in epidermal cell of cucumber cotyledon.
19
実験 2:異なる R/FR 比の光源下で育成したキュウリ子葉および本葉
における P. xanthii の病斑形成
子葉ステージにおけるP. xanthii接種試験
キュウリ ‘北進’を,バーミキュライト(ニッタイバーミキュライト GS)を充填した
プラスチックポット(直径 60 mm,高さ 55 mm)に播種し,メタルハライドランプ
(DR400/TL; Toshiba Lighting & Technology Corp., Yokosuka, Japan),低 R/FR 比の白色
蛍 光灯( FL20S·FR·P; Panasonic, Osaka, Japan ) ,また は 高 R/FR 比の 白色蛍 光灯
(FPL55EX-N)照射下で子葉展開まで育成した.メタルハライドランプの分光スペクト
ルは自然光とほぼ同じであり,R/FR 比 = 1.2 である.高 R/FR 比の白色蛍光灯は閉鎖型
苗生産システムに使われている光源とほぼ同じ分光スペクトル分布を持ち,R/FR 比 =
10 である.低 R/FR 比の白色蛍光灯は,高 R/FR 比の白色蛍光灯に遠赤色光域を加えて
いるもので,R/FR 比 = 1.1 である.各光源の分光スペクトルを Fig. 2.9 に示す.高 R/FR
比および低 R/FR 比の白色蛍光灯の分光スペクトルは遠赤色光領域以外ほぼ同じであっ
た.その他の共通する育成条件は,気温 28 ºC,相対湿度 50%,PPFD300 mol m-2 s-1,
明期 12 h d-1 とした.潅水は,培養液(OAT ハウス A 処方標準養液)を用いてポット底
面から適宜行った.接種時の子葉面積が試験区間で同程度になるように播種日をずらし,
メタルハライドランプおよび低 R/FR 比白色蛍光灯照射下で 7 日間,高 R/FR 比白色蛍
光灯照射下で 8 日間育成した.
子葉展開後(Fig. 2.10),P. xanthii を葉の向軸面に接種した.接種は,P. xanthii の分
生子懸濁液を噴霧することで行った.分生子懸濁液の調製方法については本章実験 1 と
同様とした.本実験での分生子懸濁液の濃度は 3.9 × 106 conidia mL-1 であった.接種後,
各試験区のキュウリ実生を人工気象器(LPH-220SP)に移動し,同一環境下で育成した.
このときの育成条件は,気温 28 ºC,相対湿度 50%,白色蛍光灯(FL20SEX-N-HG)照
射,PPFD 200 μmol m-2 s-1,明期 12 h d-1 であった.各試験区のキュウリ実生を交互に配
置し,本葉は適宜摘み取った.接種後 7 日目に 1 個体あたりの P. xanthii の病斑数を目
視で数えた.接種日の平均葉面積を除することで,病斑密度を算定した.
接種日のキュウリ実生の子葉面積,生体重,乾物重を測定した.接種日の葉面積およ
び乾物重より LMA を,乾物重および生体重より DMC を算出した.測定方法について
は本章実験 1 と同様とした.
20
本葉ステージにおけるP. xanthii接種試験
子葉ステージと同様の接種試験を第 1 本葉ステージでも行った.キュウリ‘北進’を,
バーミキュライトを充填したプラスチックポット(直径 60 mm,高さ 55 mm)に播種し,
低 R/FR 比の白色蛍光灯(FL20S·FR·P; R/FR = 1.1),または高 R/FR 比の白色蛍光灯
(FPL55EX-N; R/FR = 10)照射下で第 1 本葉展開まで育成した.接種時の葉面積を同じ
にするために高 R/FR 比白色蛍光灯照射下で 12 日間,低 R/FR 比白色蛍光灯照射下で
10~11 日間育成した.第 1 本葉展開後(Fig. 2.11),接種試験を行った.本実験での分
生子懸濁液の濃度は 1.5 × 104 conidia mL-1 であった.接種後,各試験区のキュウリ実生
を人工気象器(LPH-220SP)に移動し,同一環境下で育成した.接種後 9 日目に病斑形
成を評価した.
21
1.2
1.0
1.0
Fluorescent lamp with high R/FR (=10)
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
1.20
0.0
1.0
1.0
300
400
500
Fluorescent lamp with low R/FR (=1.1)
600
700
800
300
400
Metal-halide lamp (R/FR =1.2)
500
600
700
800
300 Natural light 400
(for reference; R/FR = 1.2)
500
600
700
800
300
500
600
700
800
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
1.20
0.0
1.0
1.0
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
1.2
0.00
1.0
1.0
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0.00
400
Wavelength (nm)
Fig. 2.9
Light spectra of fluorescent lamp with high or low red-to-far-red ratio (R/FR),
metal-halide lamp that provides a spectrum similar to that of natural light, and natural light
for reference. Photon fluxes per unit wavelength are expressed relative to the maximum.
The R/FR was estimated by dividing the total photon flux from red light (600 to 700 nm)
by that from far-red light (700 to 800 nm).
22
Metal-halide lamps
(R/FR =1.2)
Fig. 2.10
Fluorescent lamps with
low R/FR (=1.1)
Fluorescent lamps with
high R/FR (=10)
Cucumber seedlings grown under illumination of metalhalide lamps, fluorescent
lamps with low or high red-to-far-red ratio (R/FR) until cotyledon stage.
23
Acclimatization R/FR = 1.1
Fig. 2.11
Acclimatization R/FR = 10
Cucumber seedlings grown under fluorescent lamps with low red-to-far-red ratio
(R/FR) (= 1.1) or high R/FR (= 10) until first-true-leaf stage.
24
実験 3:遠赤色光吸収フィルム下で育成したキュウリ実生における
P. xanthii の病斑形成
試験区設定および供試植物の育成
キュウリ‘北進’を,バーミキュライトを充填したプラスチックポット(直径 60 mm,
高さ 55 mm)に播種し,発芽まで人工気象器(LPH-220SP)内で育成した.このときの
育成条件は,気温 28 ºC,相対湿度 80%とした.発芽後,キュウリ実生を農業用ビニー
ルフィルム(ノービエースみらい; Mitsubishi Plastics Agri Dream Co., Ltd., Tokyo, Japan)
および遮光フィルム(4S·SU45; Sekisui Nano Coat Technology Co., Ltd., Aichi, Japan)を被
覆材とするプラスチックトンネル内(以下,自然光条件),または遠赤色光吸収フィル
ム(NIRF-L-PP-10; Yanmar Co. Ltd., Osaka, and Panac Advance Co. Ltd., Tokyo, Japan)を被
覆材とするプラスチックトンネル内(以下,高 R/FR 比条件)に移動した(Fig. 2.12).
自然光条件および高 R/FR 比条件における R/FR 比は,それぞれ 1.2 および 4.7 であった.
それぞれの条件の分光スペクトルを Fig. 2.13 に示す.両プラスチックトンネルにおける
被覆材の PPFD 透過率は約 40%であった.試験期間中の日中/夜間の平均気温および平
均 相 対 湿 度 は 自 然 光 条 件 で 29.5°C/22.6°C お よ び 72%/90% , 高 R/FR 比 条 件 で
30.3°C/22.7°C,74%/94%であった.平均日積算 PPFD は,18.0 mol m–2 d–1 であった.子
葉ステージ,または第 1 本葉ステージまで各条件下で育成した.接種時の葉面積を同じ
にするために,子葉ステージでは,自然光条件で 10 日間,高 R/FR 比条件で 11 日間,
本葉ステージでは,自然光条件で 12 日間,高 R/FR 比条件で 14 日間育成した.灌水は,
培養液(OAT ハウス処方標準養液)を用いて育成容器底面から適宜行った.
Podosphaera xanthiiの接種方法および接種後の育成環境
子葉または第1本葉展開後に,P. xanthiiの分生子懸濁液を葉の向軸面に散布した.分
生子懸濁液の調製方法は第2章実験1と同様とした.接種後,各条件の15個体を接種前と
同じ条件下で,各8個体を接種前と異なる条件に入れ替えてキュウリ実生を育成した.
接種後7日目に,各個体のP. xanthiiの病斑を数え,病斑数を接種日の平均葉面積で除す
ることで病斑密度を算出した.
25
R/FR 比に順化したキュウリ葉の特性の評価
接種日のキュウリ実生の子葉面積,生体重,乾物重を測定した.接種日の葉面積およ
び乾物重よりLMAを,乾物重および生体重よりDMCを算出した.測定方法については
第2章実験1と同様とした.
26
a
b
c
Fig. 2.12 (a) Plastic tunnels used for the experiment. The tunnels were covered with (b) the
polyvinyl-chloride film and shading net (natural light condition) or (c) the
far-red-light-absorbing film (high R/FR light condition).
27
1.2
Polyvinyl-chloride film
(Control, R/FR = 1.2)
Relative photon flux per wavelength
1.0
1.0
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
1.20
0.0
300
1.0
1.0
0.8
0.8
400
500
600
700
800
400
400
500
500
600
600
700
700
800
800
Far-red-light-absorbing film
(R/FR = 4.7)
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0.00
300
300
Wavelength (nm)
Fig. 2.13
Light spectra under the polyvinyl-chloride film (control) and the far-red-light
-absorbing film. Photon fluxes per unit wavelength are expressed relative to the maximum.
The red-to-far-red ratio (R/FR) was estimated by dividing the total photon flux from red
light (600 to 700 nm) by that from far-red light (700 to 800 nm).
28
2.3
結果
実験 1:異なる R/FR 比の照射光に順化した子葉における Podosphaera
xanthii の病斑形成
接種後 7 日目において,P. xanthii の病斑形成が確認された(Fig. 2.14).順化時の R/FR
比が高いほど,P. xanthii の病斑密度が低くかった(Fig. 2.15, Table 2.1).R/FR 比 5.0
および 10 に順化した葉の病斑密度は,R/FR 比 1.2 に順化した葉のそれぞれ 0.80 倍,
0.73
倍であった.順化時の R/FR 比は子葉の LMA,DMC,C および N 含量,C/N 比に影響
した(Fig. 2.15, Table 2.1).接種日のキュウリ子葉の LMA は,順化時の R/FR 比が高
くなると大きくなった.R/FR 比 5.0 および 10 に順化した葉の LMA は,R/FR 比 1.2 に
順化した葉のそれぞれ 1.13 倍,1.18 倍であった.高い R/FR 比に順化したキュウリ子葉
は,葉全体が厚くなっていた(Fig. 2.16).向軸面の表皮組織の厚さに差はなかった.
DMC は,試験区間に大きな差はなかった.順化時の R/FR 比が高くなると,C 含量は
低くなる傾向が見られ,N 含量は多くなる傾向が見られた.その結果,C/N 比は順化時
の R/FR 比が高いほど小さかった.子葉のサリチル酸含量は R/FR 比の影響を受けなか
った(Table 2.2)
抵抗性品種においても順化時の R/FR 比が高いほど P. xanthii の病斑密度が低かった
(Fig. 2.17, Table 2.3).病斑密度が抵抗性品種の方が非抵抗性品種よりも小さかったの
は,抵抗性の違いによるものである.抵抗性品種において,R/FR 比 5.0 および 10 に順
化した葉の病斑密度は,R/FR 比 1.2 に順化した葉のそれぞれ 0.54 倍,0.51 倍であった.
順化時の R/FR 比と品種との間には交互作用はなく,R/FR 比の影響の大きさには品種に
よる違いはなかった(Table 2.3).
接種後 24,48 h における分生子の発芽率は,いずれにおいても試験区間に有意差は
なかった(Table 2.4).接種後 24 h における分生子の感染率も,試験区間に有意差はな
かった(Table 2.5).
Podosphaera xanthii の感染後の発達は高 R/FR 比に順化したキュウリ葉で抑制された
(Fig. 2.18).主軸菌糸の本数は,接種後 24 h では試験区間に有意差はなかったが,接
種後 48 h では R/FR 比 10 に順化した葉では R/FR 比 1.2 に順化した葉の 0.90 倍と少なか
29
った.二次菌糸の本数は,接種後 24 h および 48 h いずれにおいても有意差はなかった.
総菌糸細胞数は,
接種後 24 h では試験区間に有意差はなかったが,
接種後 48 h では R/FR
比 10 に順化した葉では R/FR 比 1.2 に順化した葉の 0.88 倍と少なかった.二次吸器数
は接種後 24 h では形成されていなかったが,接種後 48 h では R/FR 比 10 に順化した葉
では R/FR 比 1.2 に順化した葉の 0.72 倍と少なかった.分生子の隣の菌糸細胞に二次吸
器が形成された割合は,R/FR 比 10 に順化した葉では R/FR 比 1.2 に順化した葉の 0.69
倍と低かった.接種後 7 日目の吸器形成数は,R/FR 比 10 に順化した葉は R/FR 比 1.2
に順化した葉と比較して 0.52 倍と顕著に少なかった(Table 2.6).
30
Acclimatization
R/FR = 1.2
Acclimatization
R/FR = 5.0
Acclimatization
R/FR = 10
Fig. 2.14 Colonies of Podosphaera xanthii on cucumber cotyledons 7 days after inoculation.
31
40.0
40.0
1.5
1.5
37.5
37.5
C content
(%)
Colony density
(colonies cm-2)
2.0
2.0
1.0
1.0
0.5
0.5
32.5
32.5
3.0
0.00
10.00
30.0
0
4
8
12
2.0
2.0
N content
(%)
LMA
(gDM cm-2)
35.0
35.0
1.0
1.0
0.10
0.0
0
4
8
12
0
4
8
12
00
44
8
8
12
12
8.0
8.0
6.0
6.0
6.0
4.00
0
4
8
12
C/N ratio
DMC
(%)
0.1
7.5
0.1
5.0
0.0
2.5
Thickness of
adaxial epidermal layer
表皮の厚さ
(µm) (mm)
100
0.00
4.0
0
3.0
0
4
8
12
80
80
Acclimatization R/FR
60
60
40
40
20
20
00
Fig. 2.15
5.0
0
4
8
R/FR ratioR/FR
Acclimatization
12
Colony density of Podosphaera xanthii on cucumber cotyledons 7 d after
inoculation, leaf mass per area (LMA), dry matter content (DMC), thickness of adaxial
epidermal layer, carbon (C) and nitrogen (N) content, and C/N ratio of cucumber seedlings
acclimatized to red-to-far-red ratio (R/FR) = 1.2, 5.0, or 10. Average values of three trials
are shown for colony density, LMA, and DMC (n = 10), average values of ten replicates
are shown for thickness of adaxial epidermal layer, C and N content. The results of
ANOVA are shown in Table 2.1.
32
Table 2.1
Results of one-way ANOVA to test the effects of acclimatization red-to-far-red
ratio (R/FR) on colony density 7 d after inoculation, leaf mass per area (LMA), dry matter
content (DMC), thickness of adaxial epidermal layer, carbon (C) and nitrogen (N) content,
and C/N ratio.
Colony density
LMA
DMC
Thickness of
Trial 1
Trial 2
Trial 3
df
2
2
2
F
11.2
14.4
3.8
P
< 0.001
< 0.001
0.035
df
2
2
2
F
10.5
33.3
12.5
P
< 0.001
< 0.001
< 0.001
df
2
2
2
F
0.53
15.8
0.140
P
0.600
< 0.001
0.870
df
2
-
-
F
0.624
-
-
P
0.543
-
-
df
2
-
-
F
12.964
-
-
P
< 0.001
-
-
df
2
-
-
F
7.350
-
-
P
0.003
-
-
df
2
-
-
F
16.302
-
-
P
< 0.001
-
-
adaxial epidermal layer
C content
N content
C/N ratio
33
100 μm
Acclimatization R/FR = 1.2
Acclimatization R/FR = 5.0
Acclimatization R/FR = 10
Fig. 2.16 Cross-sections of cotyledon of cucumber seedlings acclimatized to R/FR of 1.2, 5.0
or 10.
34
Table 2.2
Salicylic acid content of cucumber cotyledons acclimatized to different
red-to-far-red ratios (R/FRs) (=1.2 or 10) .
Salicylic acid content
Treatment
(ng gFW-1)
R/FR 1.2
111.4 ± 20.5 z
R/FR 10
139.0 ± 21.4
Significance y
NS
z
Mean ± SE (n = 3).
y
NS, non-significant difference between treatments by Student’s t-test.
35
1.6
1.6
Colony density (colonies cm-2)
‘Hokushin’(non-resistant)
(non-resistant)
Hokushin
Tokiwa
‘Tokiwa333
333’(resistant)
(resistant)
Colony density
(colonies cm-2)
1.2
1.2
0.8
0.8
0.4
0.4
0.00
0
4
8
R/FR
ratio
Acclimatization R/FR
12
Fig. 2.17 Colony density of Podosphaera xanthii 7 d after inoculation on seedlings of the
non-resistant cultivar Hokushin and the resistant cultivar Tokiwa 333 acclimatized to
different red-to-far-red ratio (R/FR) (= 1.2, 5.0 and 10). The error bars represent means ±
SE (n = 10). The results of ANOVA are shown in Table 2.3.
36
Table 2.3
Results of one-way ANOVA to test the effects of acclimatization red-to-far-red
ratio (R/FR) and cultivars on colony density 7 d after inoculation.
Treatment
df
F
P
Cultivar
1
68.318
<0.001
R/FR
2
23.871
<0.001
Cultivar × R/FR
2
0.522
0.596
37
Table 2.4 Conidial germination of Podosphaera xanthii on cucumber seedlings acclimatized
to different red-to-far-red ratios (R/FRs) (= 1.2 and 10). Conidial germination at 0 h was
observed with inoculum by a digital microscope with reflected light, and conidial
germination at 24 and 48 h after inoculation was observed with inoculated cucumber
leaflets by a scanning electron microscope.
Hours after
Treatment
inoculation
0h
24 h
Total number
Number of
Percentage of
of conidia
germinated
germinated
conidia
conidia
358
7
2.0%
R/FR 1.2
724
281
38.8%
R/FR 10
913
336
36.8%
Significance z
48 h
NS
R/FR 1.2
688
381
55.4%
R/FR 10
925
490
53.0%
Significance
z
NS
NS = no significant difference between the percentage in each treatment group at P = 0.05 using
a chi-square test for independence in 2 × 2 contingency tables.
38
Table 2.5
Conidial infection of Podosphaera xanthii on cucumber seedlings acclimatized to
different red-to-far-red ratios (R/FRs) (= 1.2 or 10), 24 h after inoculation.
Treatment
Total number of
germinated conidia
Number of conidia with
germ tube and primary
hyphae
conidial infection
R/FR 1.2
120
106
88.3%
R/FR 10
120
95
79.2%
Significance z
z
Percentage of
NS
NS = no significant difference between the percentage in each treatment group at P = 0.05
using a chi-square test for independence in 2 × 2 contingency tables.
39
No. primary hyphae
(/conidium)
6
R:FR1.2
R/FR1.2
*
*
a
*3
b
4
3 *
c
4
R:FR10
R/FR10
4
NS
2
No. secondary hyphae
(/conidium)
250
20
0
1
2
15
10
NS
5
NS
No. tertiary hyphae
(/conidium)
06
0
1
2
NS
NS
1
2*
3
d
4
2
3
e
4
2*
*
3
f
4
48
2
72
3
4
2
% secondary haustoria
in hyphal cells next to
conidium
No. secondary haustoria
(/conidium)
Total No. hyphal cells
(/conidium)
25
0
20
0
15
10
5
NS
50
4
0
1
*
3
2
1
NS
50%
0
40%
40
0
1
30%
30
20%
20
10%
10
NS
0%0
0
0
24
1
96
4
Time after inoculation
Fig. 2.18
Number of (a) primary hyphae, (b) fisrt branches, and (c) second branches elongated
from conidium on cucumber seedlings acclimatized to different red-to-far-red ratios (R/FRs)
(= 1.2 and 10), 24 to 72 h after inoculation (n = 4). NS, no significant (P > 0.05) between the
treatments; *, significant difference between the treatments at P=0.05 by Student’s t-test .
40
Table 2.6
Haustorial formation in epidermal cells of cucumber seedlings acclimatized to different
red-to-far-red ratios (R/FRs) (= 1.2 or 10) 7 days after inoculation (n = 5). The cross-sections
of leaf pieces with a representative colony were examined to evaluate the percentage of cells
with haustoria (200 epidermal cells were examined for each seedling).
Treatment
z
Total number of
epidermal cells
Number of epidermal
Percentage of
cells containing
epidermal cells
haustoria
containing haustoria
R/FR1.2
1000
463
46.3%
R/FR10
1015
246
24.2%
Significance z
–
–

 = significant difference between the percentage in each treatment group at P = 0.001 using a
chi-square test for independence in 2 × 2 contingency tables.
41
実験 2:異なる R/FR 比の光源下で育成したキュウリ子葉および本葉に
おける Podosphaera xanthii の病斑形成
高い R/FR 比の白色蛍光灯照射下で育成したキュウリ実生は,低い R/FR 比の白色蛍光灯
およびメタルハライドランプ照射下で育成したキュウリ実生よりも P. xanthii の病斑形成
が抑制された(Table 2.7).このことから,高い R/FR 比の人工光源を用いることで P. xanthii
の病斑形成を抑制できることが示された.子葉ステージにおいて,高い R/FR 比の白色蛍
光灯照射下で育成したキュウリ実生は,低 R/FR 比の白色蛍光灯照射下およびメタルハラ
イドランプ照射下で育成したキュウリ実生よりも LMA および DMC が高かった(Table 2.7)
.
本葉ステージにおいても,順化時の R/FR が高いほど P. xanthii の病斑密度が低かった
(Fig. 2.19, Table 2.8).R/FR 比 10 の光照射下で育成したキュウリ実生における病斑密度
は,R/FR 比 1.2 の光照射下で育成したキュウリ実生の 0.59 倍であった.順化時の R/FR 比
は子葉の LMA および DMC に影響した(Table 2.8).接種日の第 1 本葉の LMA は,R/FR
比 10 に順化した葉で大きく,R/FR 比 1.2 に順化した葉の 1.53 倍であった.DMC に有意
差はなかった.
42
Table 2.7
Colony density of Podosphaera xanthii on cucumber cotyledons 7 d after inoculation,
leaf mass per area (LMA), and dry matter content (DMC) of cucumber seedlings grown under
metal-halide lamps (R/FR = 1.2), fluorescent lamps with low red-to-far-red ratio (R/FR) (=
1.1) or high R/FR (= 10). Mean ± SE (n = 10) are shown. Different alphabets represent
significant differences (P < 0.05) between the treatment groups by Tukey's test.
Treatment
Metal-halide lamp
(R/FR = 1.2)
Fluorescent lamp with
low R/FR (= 1.1)
Fluorescent lamp with
higher R/FR (= 10)
Colony density
LMA
DMC
(colonies cm-2)
(mgDW cm-2)
(%)
7.58 ± 0.37 a
2.30 ± 0.08 b
7.97 ± 0.19 ab
7.28 ± 0.35 a
2.06 ± 0.07 c
7.47 ± 0.27 b
5.01 ± 0.35 b
2.61 ± 0.03 a
8.52 ± 0.07 a
43
Acclimatization R/FR = 1.2
Acclimatization R/FR = 10
Fig. 2.19 Colonies of Podosphaera xanthii on first leaf of cucumber seedling acclimatized to
red-to-far-red ratio (R/FR) of 1.2 or 10, 9 d after inoculation.
44
Table 2.8 Colony density of Podosphaera xanthii on first true leaf of 9 d after inoculation, dry
mass per leaf area (LMA) and dry matter content (DMC) of cucumber first true leaf
acclimatized to red-to-far-red ratio (R/FR) of 1.1 or 10.
Colony density
LMA
DMC
(colonies cm-2)
(mgDW cm-2)
(%)
R/FR 1.1
1.70 ± 0.21 z
2.13 ± 0.12
10.1 ± 0.3
R/FR 10
1.01 ± 0.07
3.26 ± 0.16
9.7 ± 0.1
Significance y
***
***
NS
Treatment
First-true-leaf stage
z
Mean ± SE (n = 10).
y
NS, non-significant difference between treatments; ***, significantly different between treatments
at P = 0.001 by Student’s t-test.
45
実験 3:遠赤色光吸収フィルム下で育成したキュウリ実生における
Podosphaera xanthii の病斑形成
接種前も接種後も遠赤色光吸収フィルム下の高 R/FR 比条件で育成したキュウリ実生
(Fig. 2.19, “4.7/4.7”)は,子葉ステージ,本葉ステージの子葉および本葉のいずれにおい
ても自然光条件で育成したキュウリ実生(Fig. 2.19, “1.2/1.2”)と比較して病斑密度が低か
った.高 R/FR 比条件で育成したキュウリ実生の病斑密度は,自然光条件に比べて,子葉
ステージでは 0.83 倍,本葉ステージの子葉では 0.81 倍,本葉では 0.58 倍であった.
子葉ステージ,本葉ステージの子葉および本葉のいずれにおいても接種前の R/FR 比が
病斑密度に影響し,接種後の R/FR 比の影響は,子葉ステージおよび本葉で見られた(Table
2.9).接種前に高 R/FR 比条件で育成し,接種後は自然光と同じ R/FR 下で育成すると,
R/FR 比の病斑抑制効果が弱まった(Fig. 2.19, “4.7/1.2”).接種前に自然光と同じ R/FR 下
で育成し,接種後は高 R/FR 比条件で育成すると,自然光条件(Fig. 2.19, “1.2/1.2”)と比較
して病斑形成が抑制された(Fig. 2.19, “1.2/4.7”).子葉ステージおよび本葉では,接種前
も接種後も高 R/FR 比条件で育成したキュウリ実生(Fig. 2.19, “4.7/4.7”)と同じくらい病斑
形成が抑制された.ただし,子葉ステージでは自然光条件と有意差はなかった.接種前後
での R/FR 比の影響には交互作用はなかった(Table 2.9).
高 R/FR 比条件で育成したキュウリ実生は,子葉ステージ,本葉ステージの子葉および
本葉のいずれにおいても LMA が大きかった(Fig. 2.20).DMC は,子葉ステージおよび
本葉において,高 R/FR 比条件で育成したキュウリ実生は自然光条件で育成したよりも高
かった.本葉ステージの子葉の DMC は,高 R/FR 比条件で育成したキュウリ実生よりも
自然光条件で育成した方が高かった.
46
5
4
ab
Cotyledons of cotyledon stage
bc
bc
c
3
2
1
0
Colony density
(colonies cm-2)
CC
CF
FF
FC
5
Cotyledons of true leaf stage
4
a
ab
c
3
bc
2
1
05
CC
4
CF leaf of true leafFFstage
First true
FC
a
ab
bc
3
c
2
1
0
CC
1.2/1.2
(control)
CF
1.2/4.7
FF
4.7/4.7
FC
4.7/1.2
Treatment
Fig. 2.19
Colony density of Podosphaera xanthii on cucumber seedlings acclimatized to
red-to-far-red ratio (R/FR) = 1.2 (natural light) or 4.7 (under far-red-light-absorbing film).
Plants were inoculated at the cotyledon or first-true-leaf stage. Codes indicate R/FR before
and after inoculation. Bars are means ± SE of 15 replicates for 1.2/1.2 and 4.7/4.7 treatment,
and 8 replicates for 1.2/4.7 and 4.7/1.2 treatment. Bars with the same letter are not
significantly different at P < 0.05 by one-way ANOVA. The results of two-way ANOVA are
shown in Table 4.5.
47
Table 2.9
Results of two-way ANOVA to test the effects of acclimatization red-to-far-red ratio
(R/FR) on colony density 7 d after inoculation before and after inoculation on cucumber
seedlings at cotyledon stage and true leaf stage.
Cotyledon stage
Before inoculation
After inoculation
Before × After
inoculation
True leaf stage
Cotyledons
Cotyledons
First true leaf
df
1
1
1
F
8.00
20.72
20.84
P
0.007
0.001
0.001
df
1
1
1
F
9.76
2.59
31.97
P
0.003
0.115
0.001
df
1
1
1
F
0.290
0.004
0.029
P
0.593
0.947
0.866
48
2.5
2.5
***
***
2.02
LMA
(gDW cm-2)
**
1.5
1.5
1.01
0.5
0.5
00
10%
CControl
CFilm
TCControl
TCFilm
***
TTControl
*
8.0
8%
TTFilm
***
DMC
(%)
6.0
6%
4.0
4%
2.0
2%
0
0%
CControl
R/FR
= 1.2
CFilm
R/FR
= 4.7
Cotyledons of cotyledon stage
TCControl
R/FR
= 1.2
TCFilm
R/FR
= 4.7
Cotyledons of true leaf stage
TTControl
R/FR
= 1.2
TTFilm
R/FR
= 4.7
First true leaf of true leaf stage
Treatment
Fig. 2.20 Leaf mass per area (LMA) and dry matter content (DMC) of cucumber acclimatized to
red-to-far-red ratio (R/FR) = 1.2 (natural light) or 4.7 (under far-red-light-absorbing film) at
cotyledon or first-true-leaf stage. Bars are means ± SE (n = 10). *, *** significantly different
between treatments at *P = 0.05, *** P = 0.001 by Student’s t-test.
49
2.4
考察
自然光よりも高い R/FR 比は宿主植物の応答を介して P. xanthii の発達を抑制し,これは
子葉および本葉の両生育ステージにおいて観察された.自然光よりも低い R/FR 比への順
化によって宿主植物の病害抵抗性が低下し,病原菌の発達が促進されるが(Ballaré et al.,
2012; Cerrudo et al., 2012; Demotes-Mainard et al., 2015),高 R/FR 比への順化では低 R/FR 比
への応答とは逆の傾向を示すと言える.抵抗性品種においても高 R/FR 比への順化によっ
て,非抵抗性品種と同様に P. xanthii の発達が抑制され,品種と R/FR 比との間に交互作用
はなかったことから,キュウリ品種に共通する抵抗性に関与する要素が関与しているのか
もしれない.
接種後の分生子の発達過程を詳細に調べた結果,高R/FR比に順化した葉では,分生子の
発芽および感染過程ではなく,P. xanthiiの感染後の発達が抑制されることが明らかとなっ
た.高R/FR比に順化した葉では,分生子から伸長した菌糸細胞に直ちに二次吸器の形成で
きなかったことでその後の菌糸発達が抑制されたと考えられる.うどんこ病抵抗性の異な
る複数のキュウリ品種において,接種後の主軸菌糸の本数のわずかな差がその後の菌糸発
達や病斑形成に大きく影響することが報告されている(Morishita et al., 2003).本研究結
果においても,接種後48時間における主軸菌糸数の試験区間の差は小さいが,この差が,
接種後7日目における病斑および吸器形成の抑制に影響したと考えられる.
一般にP. xanthiiの初期感染過程は構造的特性に影響される.本研究では試験区間で差が
なかったことから,宿主葉の構造的特性はP. xanthiiの発達の制限要因ではないと考えられ,
その他の要因が影響したと言える.高R/FR比に順化した葉はLMAが高いことが示された.
高いLMAは一般に病原菌の侵入に対する構造的な防御に関係していると言われている
(Feng et al., 2009; Toome et al., 2010; Wright and Cannon, 2001).本研究では,LMAに試験
区間に比較的大きな差がみられたにもかかわらず,P. xanthiiの初期感染過程に差がなかっ
たことから,高いLMAは構造的防御と必ずしも関係している訳ではないと言える.
高 R/FR 比に順化した葉において感染後の生育が抑制されたことから,宿主植物の栄養
状態や化学的防御の強さなどの宿主植物の非構造的特性が P. xanthii の初期感染過程を抑
制したと考えられる.高い R/FR 比に順化した子葉の LMA および DMC は,R/FR 比 1.2
に順化した葉と比較して高い傾向が見られ,高 R/FR 比に順化した子葉は葉が厚かった.
高 R/FR 比に順化した葉は形態的生理的に陽葉的な特性を有しており,高 R/FR 比への順化
50
は過剰な光に対する応答と似ていることが指摘されている(Shibuya et al., 2012, 2015).
したがって,本研究において,キュウリ実生は高 R/FR 比に対して過剰な光順化応答を示
し,そのことが結果的に P. xanthii の発達を抑制した可能性が考えられる.自然光よりも低
い R/FR 比(< 1.2)への順化では,サリチル酸誘導の病害抵抗性や防御応答に関与する遺
伝子の発現が抑制されることが報告されている(Ballaré et al., 2012; Cerrudo et al., 2012;
Demotes-Mainard et al., 2015).また,自然光より高い R/FR 比への順化によって,光合成
などの生理的応答が低 R/FR 比への順化とは逆の応答が起こることが示されている
(Shibuya et al., 2012, 2015).これらの既往報告から,高 R/FR 比への順化では病原菌の感
染に対する防御応答も低 R/FR 比への順化とは逆の現象が起こり,防御応答が向上してい
た可能性が考えられる.サリチル酸は宿主植物の防御応答に関与する物質として一般に知
られている(Wang et al., 2010).本研究では,順化時の R/FR 比は P. xanthii 接種前の葉内
のサリチル酸含量に影響しなかった.既往研究において,白色光に赤色光を追加した光照
射下で育成したキュウリ本葉では,サリチル酸含量が P. xanthii 接種前は対照区と有意差が
なかったが,接種後にサリチル酸含量が顕著に増加し,病斑形成が抑制されることが報告
されている(Wang et al., 2010).したがって,高 R/FR 比に順化した葉において P. xanthii
の発達が抑制された要因を明らかにするには,接種前後のサリチル酸の動態を含む宿主植
物の非構造的特性についてより詳細に調べる必要があると考えられる.C/N 比は病原菌に
対する非構造的防御や葉の栄養状態と相関がある(Hermans et al., 2006; Martin et al., 2002;
Mathur et al., 2013; McElrone et al., 2005).高い C/N 比は一般に病原菌の発達を抑制すると
言われているが,本研究では高い C/N 比であった R/FR 比 1.2 に順化したキュウリ葉では
P. xanthii の発達が促進された.したがって,C/N 比の変化から P. xanthii の発達の変化を
説明することはできず,その他の要因が関与していることが示唆された.
高 R/FR 比の白色蛍光灯(R/FR 比 = 10)照射下で育成したキュウリ実生は,自然光と同
様の分光スペクトル特性をもつメタルハライドランプ(R/FR 比 = 1.2)照射下で育成した
キュウリ実生よりも P. xanthii の病斑形成が抑制されたことから,自然光下での育成よりも
高 R/FR 比の光源下で育成することで病害発生が抑制されることが示された.高 R/FR 比の
白色蛍光灯とメタルハライドランプでは分光スペクトル特性が大きく異なるので,本研究
では,高 R/FR 比の白色蛍光灯に遠赤色光域を加えた低 R/FR 比の白色蛍光灯(R/FR 比は
自然光やメタルハライドランプとほぼ同じで 1.1)も用いて同様の接種試験を行った.そ
の結果,低 R/FR 比の白色蛍光灯照射下で育成したキュウリ実生は,メタルハライドラン
プ照射下で育成したキュウリ実生と同等の病斑形成が見られた.このことから,赤色光お
51
よび遠赤色広域以外の光質ではなく,
光環境の R/FR 比が植物の環境応答を介して P. xanthii
の発達に影響したと言える.本葉においても,高 R/FR 比の白色蛍光灯下で育成したキュ
ウリ本葉は,低 R/FR 比の白色蛍光灯下で育成したキュウリ本葉よりも病斑形成が抑制さ
れた.このことから,高 R/FR への順化による病斑形成の抑制には,葉の生育段階に共通
した特性が関与している可能性が示唆された.施設園芸の閉鎖型施設では,白色蛍光灯な
どの人工光源を用いて苗生産が行われている(Kozai et al., 2006; Kozai, 2007).本研究結
果は,閉鎖型苗生産施設において高 R/FR 比の人工光源による光質制御によって苗の病害
抵抗性が高まることを示すものであった.
自然光下において,FR 吸収フィルム用いて自然光の R/FR 比を高めたときでも,高 R/FR
比が植物応答を介して P. xanthii の病斑形成を抑制することが明らかとなった.しかし,接
種後にキュウリ実生を高 R/FR 比から自然光と同じ R/FR 下に移動することで病斑形成を抑
制する効果は弱まった.これは,植物の接種後の新しい光環境への再順化が原因と考えら
れる.再順化とは,植物が光環境などの変化する物理環境へ適応し,成長を最適化するた
めに,物質を再分配することで葉の構造や機能を変化させる反応である(Anderson et al.,
1995; Bailey et al., 2004; Niinemets et al., 2006).光環境への再順化するための葉の特性の変
化には数日かかることから(Frantz and Bugbee, 2005),接種後すぐに開始されるうどんこ
病菌の初期侵入過程ではなく,侵入後の発達が再順化に影響されたと考えられる.接種後
に自然光と同じ R/FR 比から高 R/FR 比に移動させた場合にうどんこ病の病斑抑制効果が十
分に得られなかったのも,同様に再順化の影響と考えられる.成熟葉における葉の特性の
変化は未成熟葉よりも制限されることから(Niinemets et al., 2006),本葉ステージの子葉
において接種後の R/FR 比の影響が見られなかったのは,葉の成熟と再順化能力の違いに
よるものと考えられる.これらの結果は,高 R/FR 比の光源による育苗を想定すると,光
質利用によって高めた苗の病害抵抗性は,病原菌の初期発達を抑制するには有効だが,未
成熟葉ではその持続性は数日であることを示唆するものでもある.
以上より,高 R/FR 比は宿主植物の応答を介して P. xanthii の発達を抑制することが示さ
れた.これは,高 R/FR 比に対する過剰な光順化応答が,結果的に P. xanthii の発達を抑制
したのかもしれない.施設園芸における人工光源やフィルムを用いた光質制御を想定した
場合においても,高 R/FR 比の光質に制御することで,病害を抑制できる可能性が示され
た.ただし,植物の光環境への再順化によって,光質利用によって高めた宿主植物の病害
抵抗性は,病原菌の初期発達を抑制するには有効だが病害抑制効果は継続しないことに注
意する必要がある.
52
第3章
湿度に対する植物応答が Podosphaera
xanthii の発達に及ぼす影響
3.1
緒言
施設内の湿度は,植物や土壌からの蒸発散と施設内外の熱・水蒸気交換によって決定さ
れ,施設外とは異なる変動を示す.多くの病原菌にとって湿度環境は分生子(胞子)の発
芽や発達に大きく影響する.うどんこ病菌においては,一般に乾燥状態を好むと言われて
いるが(Yarwood, 1957; Aust and v. Hoyningen-Huene, 1986),発達段階によって湿度に対
する応答が異なることが報告されている.分生子形成およびその拡散では低湿度を好み,
感染や発達には高湿度を好むと言われている(Reuveni and Rotem, 1974).既往研究にお
いて,高湿度(相対湿度 80%以上)は発芽,感染とその後の発達を促進するが(Quinn and
Powell, 1982; Harris and Manners, 1983; Whipps and Budge, 2000; Kenyon et al., 2002; Carroll
and Wilcox, 2003; Guzman-Plazola et al., 2003; Mortensen and Gislerød, 2005; Elad et al., 2007;
te Beest et al., 2008),高すぎる湿度環境では発芽や発達が抑制される場合がある(Whipps
and Budge, 2000; Guzman-Plazola et al. 2003; Elad et al. 2007)と報告されている.
湿度環境の病原菌に対する直接的な影響に加え,湿度環境は植物応答を介して間接的に
病原菌の発達に影響する可能性がある.低湿度環境下では植物はクチクラの構築やワック
スの化学組成,葉表面の構造が変化し(Hull et al. 1975; Mackovà et al., 2010; Torre et al., 2003;
Koch et al. 2006),その結果水分損失が抑制される(Bañon et al., 2006).低湿度環境下で
は,植物葉は厚く硬くなる(Shibuya et al., 2009).宿主植物の葉面の化学的組成あるいは
構造的特性はうどんこ病菌の初期発達に影響する可能性が示唆されている(Zabka et al.,
2007).このような低湿度環境下における植物の水分損失を防ぐための葉の特性の変化は,
葉面から直接侵入するうどんこ病菌の発達に影響すると考えられる.施設園芸における適
切な湿度制御を行うために,病原菌の発達に対する湿度環境の間接的な影響についても明
らかにすることは重要であるが,そのことを実験的に調べた研究は見当たらない.そこで
53
本研究では,キュウリ(Cucumis sativus L.)実生を異なる湿度条件下で育成し,それぞれ
の湿度条件に順化したキュウリ葉におけるうどんこ病菌(Podosphaera xanthii)の初期発達,
吸器および病斑形成を評価することで,湿度が植物応答を介してうどんこ病の発達に及ぼ
す影響とその要因を調べた.さらに,葉面の微気象要素の違いが分生子の発芽に影響する
可能性が考えられたので,異なる湿度に順化したキュウリ葉上での分生子の発芽について
も評価した.
54
3.2
材料および方法
試験区設定およびキュウリ実生の育成方法
キュウリ(Cucumis sativus L.,‘北進’)を,バーミキュライト(ニッタイバーミキュライ
ト GS; Nittai.Co.,Ltd., Osaka, Japan)を充填したセルトレイ(セル;4 cm 角,深さ 5 cm)に
播種し,水蒸気飽差(以下,飽差)0.4 kPa(相対湿度 90%),2.1 kPa(相対湿度 50%)ま
たは 3.8 kPa(相対湿度 10%)下で育成した.飽差とは,飽和水蒸気分圧と水蒸気分圧の差
のことをいい,蒸発散速度は飽差にほぼ比例する.飽差 3.8 kPa および 2.1 kPa 下で育成す
るキュウリ実生は,飽差 0.4 kPa 下で発芽まで育成し,発芽直後にそれぞれの飽差条件下
に移動した(Fig. 3.1).その他の共通する育成条件は,気温 30 ºC,白色蛍光灯(FPL55EX-N;
Panasonic Corp., Kadoma, Japan)照射,光合成有効光量子束密度(以下,PPFD)300 μmol m-2
s-1,明期 12 h d-1 とした.潅水は,培養液(OAT ハウス A 処方標準養液; OAT Agrio Co. Ltd.,
Tokyo, Japan)を用いて育成容器底面から 5~10 mm の水深になるように適宜行い,培地含
水率を約 70%に維持した.接種時の子葉面積が各試験区で同程度になるように播種日をず
らし,飽差 0.4 kPa,2.1 kPa または 3.8 kPa 下でそれぞれ 6 日間,7 日間または 8 日間育成
した.
Podosphaera xanthiiの接種方法および接種後の育成環境
子葉展開後(Fig. 3.2),キュウリ実生をプラスチックポット(直径60 mm,高さ55 mm)
に移植し,P. xanthiiの接種を行った.分生子懸濁液の調製方法については第2章と同様とし
た.本接種試験は5反復行い,Trial 1~4では,水蒸気飽差0.4 kPaおよび3.8 kPaの2試験区で,
Trial 5では飽差0.4 kPa,2.1 kPaまたは3.8 kPaの3試験区で接種試験を行った.各反復での分
生子懸濁液の濃度は,Trial 1で6.4 × 106,Trial 2で3.0 × 106 conidia mL-1,Trial 3で4.4 × 106
conidia mL-1,Trial 4で6.1 × 106 conidia mL-1,Trial 5で1.7 × 106 conidia mL-1あった.接種後,
各試験区のキュウリ実生を人工気象器(LPH-220SP)に移動し,同一環境下で育成した(Fig.
3.4).このときの育成条件は,気温30ºC,水蒸気飽差2.5 kPa(相対湿度50%),白色蛍光
灯(FL20SEX-N-HG)照射,PPFD 200 μmol m-2 s-1,明期12 h d-1とした.平均的な光の当た
り方になるように各試験区のキュウリ実生を交互に配置し,本葉は適宜摘み取った.接種
後7日目に子葉あたりのP. xanthiiの病斑数を目視で数えた.接種日の平均葉面積を除するこ
とで,病斑密度を算定した.
55
うどんこ病抵抗性の異なるキュウリ2品種におけるP. xanthiiの接種試験
同様の接種試験を,うどんこ病抵抗性の異なる2品種のキュウリ(非抵抗性品種‘北進’,
抵抗性品種‘ときわ333’)を用いて子葉ステージで行った.
Podosphaera xanthiiの初期発達の評価
飽差0.4 kPaまたは3.8 kPaに順化した子葉における,P. xanthiiの分生子発芽,感染,感染
後の菌糸生育および吸器形成を評価した.接種時,および接種後24 hおよび48 hの分生子
の発芽を調べた.観察方法については第2章と同様とした.
接種後7日目に,水蒸気飽差0.4 kPa,2.1kPaまたは3.8 kPaに順化した子葉において,吸器
が形成された表皮細胞の割合から吸器形成を評価した.観察方法については第2章と同様
とした.
湿度順化したキュウリ葉の特性の評価
Trial 3において,接種日のキュウリ実生の子葉面積,生体重,乾物重,子葉向軸面の表
皮組織,柵状組織および海綿状組織の厚さ,C/N比を測定した.各測定方法,観察方法に
ついては第2章と同様とした.葉面コンダクタンスおよび水ポテンシャルをそれぞれ,ポ
ロメータ(ModelSC-1; Decagon Devices Inc., Washington, USA)およびサイクロメータ
(Dewpoint PotentiaMeterWP4-T; Decagon Devices, Inc., Washington, USA)を用いて測定した.
本葉ステージにおけるP. xanthii接種試験
同様の接種試験を第1本葉ステージでも行った.キュウリ‘北進’を,バーミキュライトを
充填したプラスチックポット(直径60 mm,高さ55 mm)に播種し,水蒸気飽差0.4 kPaま
たは3.8 kPaの湿度条件下で第1本葉展開まで育成した.接種時の葉面積を同じにするため
に飽差0.4 kPaおよび3.8 kPa下でそれぞれ16日間または13日間育成した.第1本葉展開後(Fig.
3.3),接種試験を行った.本実験での分生子懸濁液の濃度は8.38 × 105 conidia mL-1であっ
た.接種後,各試験区のキュウリ実生を人工気象器(LPH-220SP)に移動し,同一環境下
で育成した.接種後7日目に病斑形成を評価した.
接種日の第1本葉の葉面積,生体重および乾物重を測定し,LMAおよびDMCを算出した.
56
Fig. 3.1
Cucumber seedlings grown in a growth chamber.
57
Acclimatized to
VPD of 0.4 kPa
(RH = 90%)
Fig. 3.2
Acclimatized to
VPD of 2.1 kPa
(RH = 50%)
Acclimatized to
VPD of 3.8 kPa
(RH = 10%)
Cucumber seedlings acclimatized to vapour-pressure-deficit (VPD) of 0.4 (relative
humidity [RH] = 90%), 2.1 kPa (RH = 50%), or 3.8 kPa (RH = 10%) until cotyledon stage.
58
Acclimated to VPD of 0.4 kPa
(RH = 90%)
Fig. 3.3
Acclimated to VPD of 3.8 kPa
(RH = 10%)
Cucumber seedlings acclimatized to vapour-pressure-deficit (VPD) of 0.4 (relative
humidity [RH] = 90%) or 3.8 kPa (RH = 10%) until first-true-leaf stage.
59
3.3
結果
接種後 7 日目において P. xanthii の病斑形成が確認された(Fig. 3.4).病斑密度は,低
飽差(= 0.4 kPa;相対湿度 90%)に順化した葉よりも高飽差(= 3.8 kPa;相対湿度 10%)
に順化した葉で低かった(Table 3.1).Trial 1 から Trial 4 において,高飽差に順化した葉
における病斑密度は,低飽差に順化した葉のそれぞれ 0.64 倍,0.46 倍,0.85 倍,0.81 倍で
あった.
キュウリ子葉の LMA は,
順化時の飽差が高いと大きくなり,
高飽差に順化した葉の LMA
は低飽差に順化した葉の 1.13 倍であった(Table 3.2).高飽差および低飽差下での育成日
数を同じにした場合でも,LMA は高飽差に順化した葉で大きかった(データ非掲載).大
きい LMA は,葉が厚くなったことを示唆し,子葉断面の顕微鏡観察より,高飽差に順化
した葉は低飽差に順化した葉よりも葉が厚いことが確認された(Fig. 3.5).高飽差に順化
した葉の向軸面の表皮組織,柵状組織,海綿状組織および葉全体の厚さが低飽差に順化し
た葉よりも厚く,それぞれ低飽差に順化した子葉の 1.40 倍,1.16 倍,1.34 倍,1.31 倍であ
った(Table 3.3).DMC は試験区間に差はなかった(Table 3.2).葉面コンダクタンスは,
高飽差に順化した葉で低飽差に順化した葉の 0.55 倍であった(Table 3.4).これは,高飽
差に順化した葉は気孔開度が小さかったことを示す.水ポテンシャルは,高飽差および低
飽差に順化した葉で差が見られず,どちらの試験区でもキュウリ実生では正常な水分状態
であった(Table 3.4).順化時の飽差は C/N 比に影響しなかった(Table 3.2).
抵抗性品種においても高飽差に順化した葉において P. xanthii の病斑密度が低かった
(Table 3.5).病斑密度が抵抗性品種の方が非抵抗性品種よりも小さかったのは,抵抗性
の違いによるものである.抵抗性品種において,高飽差に順化した葉の病斑密度は低飽差
に順化した葉の 0.40 倍であった.順化時の飽差と品種との間には交互作用はなく,湿度環
境が P. xanthii の発達に及ぼす影響には,品種による違いはなかった(Table 3.5)
本葉ステージにおいても,高飽差に順化すると P. xanthii の病斑形成が抑制された(Fig.
3.6,Table 3.6).高飽差に順化した葉の病斑密度は低飽差に順化した葉の 0.63 倍であった.
高飽差に順化した第 1 本葉は,低飽差に順化した葉よりも LMA および DMC が高かった
(Table 3.6).高飽差に順化した葉の LMA および DMC それぞれ低飽差に順化した葉の
1.55 倍および 1.25 倍であった.
接種後 24,48 h における分生子の発芽率は,いずれにおいても試験区間に有意差はなか
60
った(Table 3.7).接種後 24 h における分生子の感染率は,高飽差に順化した葉で抑制さ
れ,低飽差に順化した葉の 0.74 倍であった(Table 3.8).
Podosphaera xanthii の感染後の発達においても,高飽差に順化した葉で抑制された(Fig.
3.7).主軸菌糸の本数は,接種後 24 h,48 h および 72 h において有意差があり,それぞ
れ高飽差に順化した葉は低飽差に順化した葉の 0.62 倍,
0.93 倍および 0.94 倍であった(Fig.
3.7a).二次菌糸の本数は,接種後 24 h において有意差はなかったが,接種後 48 h および
72 h において高飽差に順化した葉で伸長が抑制されており,それぞれ低飽差に順化した葉
の 0.63 倍,0.80 倍であった(Fig. 3.7b).三次菌糸は,接種後 72 h において初めて確認さ
れ,高飽差に順化した葉は低飽差に順化した葉の 0.51 倍であった(Fig. 3.7c).総菌糸細
胞数についても,接種後 24 h で高飽差に順化した葉において少なかった(Fig. 3.7d).接
種後 24 h および 48 h において,
それぞれ高飽差に順化した葉は低飽差に順化した葉の 0.58
倍および 0.81 倍であった.二次吸器数は接種後 24 h では形成されていなかったが,接種
後 48 h では高飽差に順化した葉で形成が抑制されていた(Fig. 3.7e).高飽差に順化した
葉において形成された二次吸器数は低飽差に順化した葉の 0.72 倍であった.分生子の隣の
菌糸細胞に二次吸器が形成された割合に有意差はなかった(Fig. 3.7f).接種後 7 日目にお
いて,吸器が形成された表皮細胞の割合は,高飽差に順化した葉で少ない傾向を示した(Fig.
3.8).
61
Acclimatized to
VPD of 0.4 kPa
(RH = 90%)
Acclimatized to
VPD of 3.8 kPa
(RH = 10%)
Fig. 3.4 Colonies of Podosphaera xanthii on cotyledons of cucumber seedlings acclimatized to
low vapour-pressure-deficit (VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or high VPD (=3.8
kPa; relative humidity of 10%), 7 days after the inoculation.
62
Table 3.1 Colony density of Podosphaera xanthii 7 d after the inoculation on cucumber seedlings
acclimated to low vapour-pressure-deficit (VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or high
VPD (=3.8 kPa; relative humidity of 10%).
Colony density (colonies cm-2)
Treatment
Trial 1
Trial 2
Trial 3
Trial 4
Low VPD
6.4 ± 0.2 z
2.1 ± 0.1
4.5 ± 0.1
2.9 ± 0.1
High VPD
4.1 ± 0.2
0.9 ± 0.1
3.8 ± 0.1
2.4 ± 0.2
**
**
*
Significance y
**
z
Mean ± SE (trial 1 to 3, n = 20; trial 4, n = 15).
y
*, ** = significantly different between treatments at *P = 0.05, **P = 0.01 by Student’s t-test.
63
Table 3.2 Leaf mass area (LMA), dry matter content (DMC), carbon (C) and nitrogen (N)
content, and C/N ratio of cumber cotyledons acclimatized to low vapour-pressure-deficit
(VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or high VPD (=3.8 kPa; relative humidity of
10%) at the end of the VPD treatments.
LMA
DMC
C content
N content
(mgDW cm-2)
(%)
(%)
(%)
Low VPD
1.98 ± 0.05 z
6.96 ± 0.19
41.6 ± 0.2
7.79 ± 0.08
5.35 ± 0.06
High VPD
2.45 ± 0.07
7.39 ± 0.21
39.2 ± 0.2
7.12 ± 0.08
5.51 ± 0.08
P value y
***
NS
***
***
NS
Treatment
C/N ratio
z
Mean ± SE (n = 10)
y
NS = non-significant (P > 0.05); ***significantly different between treatments at P = 0.001 by
Student’s t-test.
64
100 μm
μm
100 μm 100
100 μm
Acclimatized to VPD of 0.4 kPa
(RH = 90%)
Fig. 3.5
Acclimatized to VPD of 3.8 kPa
(RH = 10%)
Cross-sections of cucumber cotyledon acclimatized to low vapour-pressure-deficit
(VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or high VPD (=3.8 kPa; relative humidity of
10%) at the end of VPD treatments.
65
Table 3.3 Thickness of adaxial epidermal, spongy, palisade tissues, and total leaf thickness of
cucumber cotyledons acclimatized to low vapour-pressure-deficit (VPD) (=0.4 kPa; relative
humidity of 90%) or high VPD (=3.8 kPa; relative humidity of 10%) at the end of the VPD
treatments.
Thickness (µm)
Treatment
Adaxial
epidermal
Palisade tissues
Spongy tissues
tissues
Total leaf
thickness
Low VPD
15 ± 1 z
153 ± 2
424 ± 9
622 ± 9
High VPD
21 ± 1
179 ± 4
568 ± 16
813 ± 21
**
**
**
**
Significance y
z
Mean ± SE (n = 10)
y
NS = non-significant (P > 0.05); **significantly different between treatments at **P = 0.01 by
Student’s t-test.
66
Table 3.4
Leaf conductance and water potential of cucumber seedlings acclimatized to low
vapour-pressure-deficit (VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or high VPD (=3.8 kPa;
relative humidity of 10%) at the end of the VPD treatments.
Treatment
Leaf conductance
-1
Leaf water potential
(mm s )
(MPa)
Low VPD
9.09 ± 0.33 z
0.78 ± 0.02
High VPD
5.03 ± 0.09
0.80 ± 0.06
**
NS
Significance y
z
Mean ± SE (n = 5)
y
NS = non-significant (P > 0.05); , **significantly different between treatments at **P = 0.01 by
Student’s t-test.
67
Table 3.5 Colony density of Podosphaera xanthii on cucumber seedlings acclimatized to low
vapour-pressure-deficit (VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or high VPD (=3.8 kPa;
relative humidity of 10%) (n = 10). Results of two-way analysis of variance of effects of cultivar
and VPD on powdery mildew colony density in seedlings of nonresistant cultivar Hokushin and
resistant cultivar Tokiwa 333 (tested simultaneously) are also shown in the table.
Colony density
(colonies cm-2)
Treatment
Nonresistant cultivar
Resistant cultivar
Low VPD
4.34 ± 0.17
High VPD
2.95 ± 0.12
Low VPD
2.27 ± 0.26
High VPD
0.90 ± 0.22
df
F
P
Cultivar
1
101.03
< 0.001
VPD
1
46.75
< 0.001
Cultivar × VPD
1
0.002
0.961
68
Acclimatized to VPD of 0.4 kPa
(RH = 90%)
Acclimatized to VPD of 3.8 kPa
(RH = 10%)
Fig. 3.6 First true leaf with colonies of Podosphaera xanthii on cucumber seedlings acclimatized
to low vapour-pressure-deficit (VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or high VPD (=3.8
kPa; relative humidity of 10%), 7 d after inoculation.
69
Table 3.6 Colony density of Podosphaera xanthii on first true leaf of 9 d after inoculation, dry
mass per leaf area (LMA) and dry matter content (DMC) of cucumber first true leaf
acclimatized to low vapour-pressure-deficit (VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or
high VPD (=3.8 kPa; relative humidity of 10%) at the end of the VPD treatments.
Treatment
Colony density
-2
LMA
DMC
-2
(colonies cm )
(mgDW cm )
(%)
Low VPD
1.55 ± 0.06 z
1.63 ± 0.16
9.47 ± 0.94
High VPD
0.98 ± 0.07
2.52 ± 0.08
11.87 ± 0.25
***
***
*
First-true-leaf stage
Significance y
z
Mean ± SE (n =15, colony density; n = 10,LMA and DMC)
y
Significantly different between treatments at *** P = 0.001, * P = 0.05 by Student’s t-test.
70
Table 3.7 Conidial germination of Podosphaera xanthii on cucumber cotyledons acclimatized to
either a low vapour-pressure-deficit (VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or a high
VPD (=3.8 kPa; relative humidity of 10%), 0, 24 and 48 h after inoculation. Conidial
germination was examined in trial four. Three seedlings in each treatment group were
examined (50 to 90 conidia were examined from each seedling). The spore germination at 0
h was evaluated by examining the conidia in suspension liquid immediately before
inoculation.
Hours after
inoculation
Treatment
0h
24 h
Total number of
conidia
Number of
germinated
conidia
9
1.7%
LowVPD
210
32
15.1 %
High VPD
223
31
13.9 %
NS
LowVPD
195
33
16.9%
High VPD
190
34
17.9%
Significance
z
germinated
507
Significance z
48 h
Percent
NS
NS = no significant difference between the percentages in each treatment group at P = 0.05 using
a chi-square test for indepen-dence in 2×2 contingency tables.
71
Table 3.8
Conidial infection of Podosphaera xanthii on cucumber seedlings acclimatized to
either a low vapour-pressure-deficit (VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or a high
VPD (=3.8 kPa; relative humidity of 10%), 24 h after inoculation.
Treatment
z
Total number of
germinated conidia
Number of conidia with
germ tube and primary
hyphae
Percentage of
conidial infection
LowVPD
250
217
86.8%
High VPD
250
161
64.4%
Significance z
-
-
*
* Significant difference between the percentage in each treatment group at P = 0.05 using a
chi-square test for independence in 2 × 2 contingency tables.
72
No. primary hyphae
(/conidium)
6
**
a
3
**
b
4
3 **
c
4
2
3
d
4
2
3
e
4
2
NS
3
f
4
**
Low VPD
High VPD
4
***
22
No. tertiary hyphae
(/conidium)
No. secondary hyphae
(/conidium)
3000
0
1
2
20
20
10
10
**
NS
10
00
88
0
1
2
NS
NS
66
44
22
% secondary haustoria
No. secondary haustoria
in hyphal cells next to
(/conidium)
conidium
Total No. hyphal cells
(/conidium)
40
00
0
1
*
30
30
20
10
***
60
0
1
**
4
2
NS
0
40%
0
1
30
30%
*
20
20%
10
10%
NS
0%0
0
0
1
24
2
48
3
72
4
96
Times after inoculation
Fig. 3.7
Number of (a) primary hyphae, (b) fisrt branches, and (c) second branches elongated
from conidium on cucumber seedlings acclimatized to different to either a low
vapour-pressure-deficit (VPD) (=0.4 kPa; relative humidity of 90%) or a high VPD (=3.8 kPa;
relative humidity of 10%), 24 to 72 h after inoculation (n = 5). NS, no significant (P > 0.05)
between the treatments; significant difference between the treatments at * P = 0.05, ** P = 0.01,
*** P = 0.001 by Student’s t-test .
73
Colony
density
Colony
density
-2)
(colonies
cm-2)
(colonies cm
8.0
8
4.04
2.02
0.0
1.0
2.0
20.0
20
3.0
4.0
P = 0.007
15.0
15
(%)
Percentage of cells
Haustorita
formation
rate
containing
haustoria
(%)
25.0
0.00
10.0
10
5.0
5
0
0.0
Fig. 3.8
P = 0.001
6.06
0
0.0
1
1.0
2
3
2.0
3.0
VPD
VPD
(kPa)
(kPa)
4
4.0
Effects of acclimation vapour-pressure-deficit (VPD) (0.4, 2.1 or 3.8 kPa) on the density
of visible colonies and the percentage of epidermal leaf cells of the cucumber cotyledons
containing haustoria of Podosphaera xanthii, 7 days after inoculation (Trial 5). Values represent
means ± SE (colony density, n = 20). The cross-sections of leaf pieces with a representative
colony were examined to evaluate the percentage of cells with haustoria (approximately 1,000
cells were examined for each treatment). P-values in the colony density and the percentage of
cells containing haustoria were calculated by an analysis of variance (ANOVA) and by a
chi-square test for independence in 2×3 contingency tables, respectively.
74
3.4
考察
高飽差(低い相対湿度)に順化したキュウリ葉では,低飽差(高い相対湿度)に順化し
たキュウリ葉よりも P. xanthii の病斑形成が抑制されたことから,湿度環境は宿主植物の応
答を介して病原菌の発達に間接的な影響を及ぼすことが明らかになった.これは子葉およ
び本葉の両生育ステージにおいて観察された.抵抗性品種においても湿度環境への順化に
よって,非抵抗性品種と同様に P. xanthii の発達が抑制され,品種と順化時の飽差との間に
交互作用はなかったことから,キュウリ品種に共通する抵抗性に関与する要素が関与して
いるのかもしれない.
宿主植物の高飽差への順化によって,P. xanthii分生子の感染以降の菌糸生育および吸器
形成が抑制されることが明らかになった.分生子の発芽に有意差がなかったことから,湿
度順化によって生じる葉面の微気象条件の変化は小さかったと考えられる.感染過程以降
の菌糸生育および吸器形成が高飽差に順化した葉では抑制されたことから,構造的特性お
よび非構造的特性がP. xanthiiの生育に影響したと言える.
高飽差に順化した葉における P. xanthii の感染過程が抑制された要因として,水分損失を
防ぐためのキュウリ葉の形態的特性の変化が考えられる.本研究で観察された高飽差に順
化した葉における全体的に厚い葉や表皮組織,大きい LMA は,低湿度環境によって引き
起こされる特性として知られている(Hull et al., 1975; Torre et al., 2003; Bañon et al., 2006;
Koch et al., 2006; Shibuya et al., 2009).このような水分損失に対する形態的な防御応答は,
P. xanthii のように葉内に直接侵入する病原菌に対する構造的防御にもなると考えられる
(Gabler et al., 2003; Szwacka et al., 2009).Shibuya et al.(2015) は,接ぎ木したキュウリ穂
木において P. xanthii の発達が抑制されるのは,接ぎ木時の水ストレスによって葉の表皮組
織が厚くなることが一因であると示唆している.低湿度によって葉面のクチクラの量が増
えること(Koch et al., 2006),水ストレスによってクチクラの組成が変化し(Hoad et al.,
1997; Mackovà et al., 2010),厚くなる(Baker, 1974; Smith et al., 1990; Jenks et al., 2002; Ristic
and Jenks, 2002; Kosma et al., 2009)ことから,高飽差に順化した葉ではクチクラが厚くな
っていたかもしれない.このような葉面の構造的な変化が,高飽差条件下での P. xanthii
の感染を抑制した可能性がある.感染後の菌糸生育および吸器形成も抑制されていたこと
から,高飽差に順化した葉の非構造的特性も影響した可能性がある.C/N 比は病原菌に対
する非構造的防御や葉の栄養状態と相関があると言われている(Hermans et al., 2006;
75
Martin et al., 2002; Mathur et al., 2013; McElrone et al., 2005).しかし,本研究では高飽差お
よび低飽差に順化した葉で差がないことから,C/N 比の変化から P. xanthii の発達の変化を
説明することはできず,その他の要因が関与していることが示唆された.
高飽差および低飽差に順化した葉ともにキュウリ葉は正常な水分状態であった(Shibuya
et al., 2006)ことから,葉内の水分状態は病斑形成の変化の要因ではないと考えられる.
本実験における高飽差条件は,水ポテンシャルを低下させるのに十分であった(Shibuya et
al., 2006)が,水ポテンシャルは低くならなかった.その要因として,本実験では培地含
水率が十分に高く,根から子葉までの距離が短かったこと,さらに高飽差に順化した葉で
は気孔コンダクタンスを低下させ蒸散を抑制していたことが考えられる.
以上,本研究結果より,湿度環境は宿主植物の応答を介して P. xanthii の発達に間接的に
影響を及ぼすことが明らかになった.低湿度環境は,水分損失に対する防御応答として植
物の構造的・非構造的特性を変化させ,そのことが結果的に P. xanthii の感染に対する防御
にもつながったと考えられる.うどんこ病菌の発達段階によって湿度環境の影響が異なる
ことが指摘されているが(Reuveni and Rotem, 1974),そこには宿主植物の応答による湿
度環境の間接的な影響も内在している可能性がある.宿主植物と病原菌の相互関係を考察
する際には,宿主植物の環境応答の影響についても考慮する必要がある.
76
第4章
CO2 濃度に対する植物応答が
Podosphaera xanthii の発達に及ぼす影響
4.1
緒言
施設内の日中 CO2 濃度は屋外より低く,さらに換気が限られており CO2 施用が行われて
いない場合は CO2 補償点近くまで顕著に低下することがある(Kläring et al., 2007;
Sánchez-Guerrero et al., 2005).低 CO2 濃度では植物の成長が抑制されるため,低 CO2 濃度
を回避するためには CO2 施用が必要である(Nilsen et al., 1983; Mortensen, 1987).低 CO2
濃度は植物の成長抑制だけでなく,宿主植物の栄養状態の変化を介して病原菌の発達にも
影響する可能性がある.なぜなら,CO2 濃度が低い場合,植物は十分な同化産物を得るこ
とができず,防御に十分に物質分配できないと考えられるからである(Bazzaz et al., 1987;
Bryant et al., 1983).Sage and Cowling(1999)は,過去の低い CO2 濃度環境下では生物的
ストレス抵抗性が低かった可能性を示唆しているが,実験的にこのことを検証はされてい
ない.
本研究では低い CO2 濃度(標準大気よりも低い濃度)が宿主植物の応答を介して病原菌
の発達に及ぼす影響を調べた.CO2 濃度が宿主植物の病害抵抗性に及ぼす影響は,21 世紀
中に到達する可能性のある標準大気濃度(≈380 µmol mol−1)以上の濃度(650–800 µmol mol−1)
では調べられてきた(Manning and Tiedemann, 1995; Mathur et al., 2013; McElrone et al., 2005;
Strengbom and Reich, 2006).これらの既往研究では,病害(例, うどんこ病,べと病,斑
点病)に対する宿主植物の抵抗性は高い CO2 濃度下で向上し,これは病害抵抗性に関与す
る二次代謝物質量が増加したことなどが要因であると報告されている.しかし一方で,高
CO2 濃度が宿主植物と病原菌の相互関係に及ぼす影響に関して矛盾する結果も報告されて
おり,高 CO2 濃度下での育成によって宿主植物の病害抵抗性が低下するとも言われている
(Kobayashi et al., 2006; Lake and Wade, 2009).従来,高 CO2 濃度による宿主植物の高い葉
面積あたりの乾物重(leaf mass per area, LMA)や,低い窒素含量に起因する炭素と窒素の
77
比(以下,C/N 比)の上昇は,病原菌の発達を抑制する可能性があることが言われてきた.
低い CO2 濃度下では植物は十分な同化産物が得られないことから,高 CO2 濃度に対する形
態的生理的応答とは逆の応答が引き起こされる可能性が考えられる(Gerhart and Ward,
2010; Sage, 1995).本研究では,標準大気濃度よりも低濃度から高濃度にかけての異なる
CO2 濃度でキュウリ(Cucumis sativus. L)実生を育成し,うどんこ病菌(Podosphaera xanthii)
の病斑形成を評価した.うどんこ病抵抗性の異なる品種を用いて,キュウリ実生は子葉ま
たは第 1 本葉ステージまで育成し,P. xanthii の接種試験を行った.
78
4.2
材料および方法
試験区設定および供試植物の育成
キュウリ(Cucumis sativus L.,‘北進’)実生を,低CO2濃度(以下,低CO2処理区),標
準大気濃度(以下,大気CO2処理区)または高CO2濃度(以下,高CO2処理区)に制御した
人工気象室内で子葉ステージまたは第1本葉ステージまで育成した(Fig. 4.1).CO2濃度は,
CO2制御装置(Ace Point Systems Inc., Osaka, Japan)を用いて制御した.人工気象室内のCO2
濃度をCO2制御装置内蔵のCO2センサ(CO2 Engine K30; SenseAir, Delsbo, Sweden)で検出し,
低CO2処理区,大気CO2または高CO2処理区で明期中の平均CO2濃度がそれぞれ200,400ま
たは1000 μmol mol-1になるように,液化CO2ボンベからCO2ガスを人工気象室内に流入する
ように設定した.さらに低CO2処理区では,CO2吸着剤(ソーダライム; Hayashi Pure Chemical
Ind. Ltd., Osaka, Japan)を敷き詰めたプラチックトレイを人工気象室内に設置することで
CO2濃度を標準大気濃度よりも低下させた(Fig. 4.2).その他の共通する育成条件は,気
温28ºC,相対湿度50%,白色蛍光灯(FPL55EX-N)照射,光合成有効光量子束密度(以下,
PPFD) 400 μmol m-2 s-1,明期16 h d-1とした.潅水は,培養液(OATハウスA処方標準養液;
OAT Agrio Co. Ltd., Tokyo, Japan)を用いて育成容器底面から5~10 mmの水深になるように
適宜行った.バーミキュライト(ニッタイバーミキュライトGS)を充填したプラスチック
ポット(直径60 mm,高さ55 mm)またはプラスチックセルトレイ(セル;4 cm角,深さ5
cm)を用いた.接種時の葉面積が処理区間で同程度になるように播種日をずらした.子葉
ステージでは,低CO2,大気CO2または高CO2処理区でそれぞれ9,8または7日間育成した.
第1本葉ステージでは低CO2,大気CO2または高CO2処理区でそれぞれ14~16日,12~14日,
または10~12日間育成した.実験は各生育ステージで3反復(Trial 1~3)行った.Trial 3で
は,供試植物にキュウリ‘北進’(以下,非抵抗性品種)のほかに,うどんこ病抵抗性品種
である‘ときわ333’(以下,抵抗性品種)も同時に各処理区で育成し,接種試験を行った.
セルトレイを用いて育成したキュウリ実生は,接種試験前にプラスチックポットに移植し
た.
Podosphaera xanthiiの接種方法および接種後の育成環境
子葉または第1本葉展開後,P. xanthii を葉の向軸面に接種した.接種は,P. xanthiiの分
生子懸濁液を噴霧することで行った.分生子懸濁液の調製および接種方法については第2
79
章と同様とした.子葉ステージでの懸濁液濃度は,Trial 1で3.0 × 106 conidia mL-1,Trial 2
で0.9 × 106
conidia mL-1,Trial 3で3.1 × 106 conidia mL-1であった.本葉ステージでの懸濁液
濃度は,Trial 1で0.7 × 106 conidia mL-1,Trial 2で1.4 × 106 conidia mL-1,Trial 3で0.7 × 106
conidia mL-1であった.
接種後,各試験区のキュウリ実生を人工気象器(LPH-220SP)に移動し,同一環境下で
育成した.育成条件は,気温28ºC,相対湿度50%,白色蛍光灯(FL20SEX-N-HG)照射,
PPFD 200 μmol m-2 s-1,明期16 h d-1とした.このときのCO2濃度は調節せず,明期の平均CO2
濃度は400 μmol mol-1であった.光の当たり方が試験区によって偏らないように各試験区の
キュウリ実生を交互に配置した.接種後7日目に,葉あたりのP. xanthii 病斑数を目視で数
えた.接種日の平均葉面積から,葉面積あたりの病斑密度を算出した.
CO2 順化したキュウリ葉の特性の評価
接種日のキュウリ実生の子葉面積,生体重,乾物重,キュウリ子葉の向軸面の表皮組織,
柵状組織,海綿状組織の厚さ,炭素(C)および窒素(N)含量を測定した.接種日の葉面
積および乾物重より LMA を,乾物重および生体重より DMC(dry matter content;以下,
DMC)を,葉の炭素(C)および窒素(N)含量より C/N 比を算出した.測定方法につい
ては第 2 章と同様とした.
80
a
b
Fig. 4.1
Cucumber seedlings grown in growth chambers until (a) cotyledon stage or (b) first
true leaf stage.
81
Fig. 4.2 Cucumber seedings grown in a growth chamber. For the reduced CO2 concentration
treatment, CO2 absorbent (soda-lime) was placed in the growth chamber to remove CO2
continuously and maintain accurate control.
82
4.3
結果
接種後 7 日目において,P. xanthii の病斑形成が子葉および第 1 本葉において確認された
(Fig. 4.3, Fig. 4.4).CO2 濃度への順化は,子葉および本葉ステージの両生育ステージに
おいて P. xanthii の病斑形成に影響することが明らかになった.しかしながら,生育ステー
ジによって病斑形成の傾向が異なった.
子葉ステージでの接種試験では,
順化時の CO2 濃度が高いほど,病斑密度は低かった(Fig.
4.5,Table 4.1).病斑密度が抵抗性品種の方が非抵抗性品種よりも小さかったのは,抵抗
性の違いによるものである.順化時の CO2 濃度が大気 CO2 濃度よりも低い方が,濃度が高
い場合よりも病斑形成が大きく変化していた.非抵抗性品種’北進’では,大気 CO2 濃度処
理区と比較して,低 CO2 および高 CO2 処理区の病斑密度はそれぞれ 1.48 倍および 0.90 倍
であった.抵抗性品種’ときわ 333’ では,大気 CO2 濃度処理区と比較して,低 CO2 および
高 CO2 処理区の病斑密度はそれぞれ 2.12 倍および 0.49 倍であった.順化時の CO2 濃度の
影響は,非抵抗性品種よりも抵抗性品種で大きく,順化時の CO2 濃度と品種との間には交
互作用があった(Table 4.2).
本葉ステージでの接種試験では,
順化時の CO2 濃度が高いほど,病斑密度が高かった(Fig.
4.5,Table 4.1).非抵抗性品種では,大気 CO2 濃度処理区と比較して,低 CO2 および高
CO2 処理区の病斑密度はそれぞれ 0.88 倍および 1.33 倍であった.抵抗性品種では,大気
CO2 濃度処理区と比較して,低 CO2 および高 CO2 処理区の病斑密度はそれぞれ 0.65 倍およ
び 1.24 倍であった.本葉においても,順化時の CO2 濃度の影響は非抵抗性品種よりも抵抗
性品種で大きく,順化時の CO2 濃度と品種との間には交互作用があった(Table 4.2).
両生育ステージの両品種において,順化時の CO2 濃度は LMA,DMC,C および N 含量,
C/N 比に影響した(Fig. 4.6).順化時の CO2 濃度が高いほど,LMA および DMC は大きか
った.順化時の CO2 濃度が高いほど葉が厚い傾向が見られた(Fig. 4.7,Table 4.3).順化
時の CO2 濃度が高いほど柵状組織は厚くかったが,向軸面の表皮組織については一貫した
傾向が見られず,
海綿状組織の厚さには差がなかった.
CO2 濃度が高いほど C 含量は多く,
N 含量は少なかった(Fig. 4.6).その結果,C/N 比は順化時の CO2 濃度が高いほど大きか
った.本葉ステージにおける DMC および C 含量は子葉ステージよりも大きかった(P <
0.001).
83
Reduced [CO2]
Ambient [CO2]
Elevated [CO2]
Fig. 4.3 Colonies of Podosphaera xanthii on cotyledons of cucumber seedlings acclimatized to
reduced (200 μmol mol–1), ambient (400 μmol mol–1), or elevated (1000 μmol mol–1) CO2
concentrations [CO2], 7 days after the inoculation.
84
Reduced [CO2]
Ambient [CO2]
Elevated [CO2]
Fig. 4.4 Colonies of Podosphaera xanthii on fist true leaves of cucumber seedlings acclimatized
to reduced (200 μmol mol–1), ambient (400 μmol mol–1), or elevated (1000 μmol mol–1) CO2
concentrations [CO2], 7 days after the inoculation.
85
Non-resistant cultivar
‘Hokushin’
Colony dencity (colonies cm-2)
Cotyledon stage
3.0
3.0
2.0
2.0
1.0
1.0
0
0.3
0.3
400
600
800
1000
First true leaf stage
b 200
CO concentration (ppm)
2
3.0
3.0
2.0
2.0
1.0
1.0
1200
Colony dencity (colonies cm-2)
Colony dencity (colonies cm-2)
a
4.00
0.0
Colony dencity (colonies cm-2)
Colony density (colonies∙cm-2)
4.0
4.0
0.0
0
0
0
200
400
600
800
1000
Resistant cultivar
‘Tokiwa 333’
1200
200 400 600 800 1000 1200
CO2 concentration (ppm)
c Cotyledon stage
0.2
0.2
0.1
0.1
1.2
0.0
0
0
400
600
800
1000
First true leaf stage
d 200
CO concentration (ppm)
1200
2
0.8
0.8
0.4
0.4
0.0
0
0
0
200
400
600
800
1000
1200
200 400 600 800 1000 1200
CO2 concentration (ppm)
Acclimatization [CO2] (μmol mol-1)
Fig. 4.5
Colony density of Podosphaera xanthii 7 d after inoculation on seedlings of the
nonresistant cultivar Hokushin and the resistant cultivar Tokiwa 333 acclimatized to reduced
(200 μmol mol–1), ambient (400 μmol mol–1), or elevated (1000 μmol mol–1) concentrations
([CO2]). Average values of three trials are shown for the nonresistant cultivar. Average values
of replicate plants are shown for the resistant cultivar (cotyledon stage, n = 10; first-true-leaf
stage, n = 15). The results of one-way analysis of variance are shown in Tables 4.1 and 4.2.
86
Table 4.1
Results of one-way analysis of variance in trials of nonresistant cultivar Hokushin and
resistant cultivar Tokiwa 333 to test the effects of CO2 concentrations on colony density of
Podosphaera xanthii at the cotyledon and first-true-leaf stages.
Non-resistant
Cotyledon stage
First-true-leaf stage
Trial 1
Trial 2
Trial 3
Resistant
df
2
2
2
2
F
8.8
59.8
15.8
13.6
P
0.001
<0.001
<0.001
<0.001
df
2
2
2
2
F
13.2
16.0
10.14
7.5
P
<0.001
<0.001
<0.001
0.002
Cotyledon stage, n = 10, all trials; first-true-leaf stage, n = 10, trials 1 and 2; n = 15, trial 3 and
resistant cultivar.
87
Table 4.2
Results of two-way analysis of variance of effects of cultivar and CO2 concentrations
([CO2]) on colony density of Podosphaera xanthii in seedlings of nonresistant cultivar
Hokushin (trial 3) and resistant cultivar Tokiwa 333 (tested simultaneously) at the cotyledon
and first-true-leaf stages.
Cotyledon stage
First-true-leaf stage
df
F
P
Cultivar
1
663.9
< 0.001
[CO2]
2
20.5
< 0.001
Cultivar × [CO2]
2
11.0
< 0.001
Cultivar
1
41.0
< 0.001
[CO2]
2
8.82
< 0.001
Cultivar × [CO2]
2
4.96
0.009
Cotyledon stage, n = 10; first-true-leaf stage, n = 15.
88
Cotyledon stage
4.0
4.0
LMA (mgDW cm-2)
6
4
2.0
2.0
2
P < 0.001
16.0%
0.0
0
800
1000
200
CO2 concentration (ppm)
600
8.0%
8.0
4.0%
4.0
400
600
800
8.0%
1000
200
400
600
400
600
800
1000
0
200
400
600
800
1000
4.04
200
400
600
800
1000
1200
N%
0
2.02
400
600
800
1000
4
0
0
200 400
400 600
600 800
800 1000
1000 1200
1200
200
CO2 concentration (ppm)
200
400
600
800
1000
0
1200
200
200 400
400 600
600 800
800 1000
1000 1200
1200
200
CO2 concentration (ppm)
1200
400
600
800
1000
1200
CO2 concentration (ppm)
8
6
2
P < 0.001
10
0
200
400
600
800
1000
6
4
0
1200
CO2 concentration (ppm)
200
400
600
800
1000
1200
CO2 concentration (ppm)
8
6
4
2
P < 0.001
P < 0.001
0
0
00
1000
4
P = 0.001
0
0
0
800
P = 0.001
2
2
P < 0.001
600
10
30
6
8
6
400
CO2 concentration (ppm)
CO2 concentration (ppm)
10
0
0
1200
C:N ratio
C:N ratio
4.04
200
200
P < 0.001
CO2 concentration (ppm)
8
6
6.0
1000
2
P = 0.048
CO2 concentration (ppm)
1200
35
8
10
0
0
800
4
2
0
100
8.08
600
P < 0.001
4
P < 0.001
1000
40
10
30
0
1200
CO2 concentration (ppm)
6
N%
6.06
400
C%
1200
8
2.02
200
P = 0.001
CO2 concentration (ppm)
800
P < 0.001
45
0.0%
0
1200
35
10
30
600
4.0%
CO2 concentration (ppm)
C%
C%
N%
1000
400
8.0%
40
P < 0.001
C:N ratio
800
200
CO2 concentration (ppm)
8.0%
45
0.0%
1200
0
35
10
30
0
1000
12.0%
CO2 concentration (ppm)
35
35.0
800
P < 0.001
40
200
600
4.0%
45
0.0%
1200
0
40
40.0
0
400
P < 0.001
CO2 concentration (ppm)
8.08
200
16.0%
0
0
1200
CO2 concentration (ppm)
4.0%
0
45
0.0%
C content
(%)
1000
12.0%
P < 0.001
N content
(%)
800
DMC (%)
DMC (%)
DMC (%)
DMC
(%)
400
P < 0.001
P < 0.001
16.0%
0.0
0
1200
12.0%
200
2
2.0
CO2 concentration (ppm)
12.0%
12.0
0
4
DMC (%)
600
4.0
C%
400
6
N%
200
6.0
P < 0.001
16.0%
0
1200
0
Resistant cultivar
Tokiwa 333
C:N ratio
0
C/N ratio
Nonresistant cultivar
Hokushin
LMA
LMA (mgDW cm-2)
LMA
(mgDW∙cm-2)
6.0
6.0
First-true-leaf stage
Resistant cultivar
Tokiwa 333
LMA
Nonresistant cultivar
Hokushin
00
Acclimatization [CO2]
200 400
400 600
600 800
800 1000
1000 1200
1200
200
CO2 concentration (ppm)
(μmol∙mol-1)
00
200 400
400 600
600 800
800 1000
1000 1200
1200
200
CO2 concentration (ppm)
Fig. 4.6 Leaf mass per area (LMA), dry matter content (DMC), carbon (C) and nitrogen (N)
contents, and C/N of nonresistant cultivar Hokushin and resistant cultivar Tokiwa 333 just
after acclimatization to reduced (200 μmol mol–1), ambient (400 μmol mol–1), or elevated
(1000 μmol mol–1) CO2 concentrations ([CO2]) at the cotyledon or first-true-leaf stage.
Average values of replicate plants are shown (cotyledon stage, n = 10; first-true-leaf stage, n =
15).
89
100 μm
Reduced [CO2]
Ambient [CO2]
Elevated [CO2]
Fig. 4.7 Cross-sections of cotyledon of cucumber seedlings acclimatized to reduced (200 μmol
mol–1), ambient (400 μmol mol–1), or elevated (1000 μmol mol–1) CO2 concentrations ([CO2]).
90
Table 4.3 Total leaf thickness, and thickness of adaxial epidermal, spongy, and palisade tissues
of nonresistant cultivar Hokushin acclimatized to reduced (200 μmol mol–1), ambient (400
μmol mol–1), or elevated (1000 μmol mol–1) CO2 concentrations ([CO2]) at the cotyledon stage.
Mean ± SE (n = 10) are shown. Different alphabets represent significant differences (P < 0.05)
between the treatment groups by Tukey's test.
Thickness (µm)
Treatment
Total leaf
thickness
Adaxial
epidermal
Palisade tissues
Spongy tissues
tissues
Reduced [CO2]
624 ± 20 b
17.2 ± 0.4 a
151 ± 2 c
436 ± 21 a
Ambient [CO2]
656 ± 28 ab
14.7 ± 0.4 b
181 ± 5 b
441 ± 28 a
Elevated [CO2]
719 ± 26 a
18.5 ± 0.6 a
201 ± 4 a
482 ± 22 a
91
4.4
考察
大気濃度よりも低い CO2 濃度の範囲においても,CO2 濃度は宿主植物の特性の変化を
介して P. xanthii の発達に影響をすることが明らかとなった.本実験では暗期中の CO2
濃度を制御していないが,暗期中の CO2 濃度は一般に葉の呼吸に影響しない範囲での変
化であったことから(Jahnke and Krewitt, 2002),各試験区における暗期中の CO2 濃度
は葉の特性に影響しなかったと考えられる.両生育ステージにおいて,CO2 濃度の影響
は大気濃度よりも低い範囲の方が大きかった.従って,施設園芸において低 CO2 状態が
寄主植物を介して病原菌の発達に影響を及ぼす可能性があることは十分考慮すべきで
ある.しかしながら,CO2 濃度がキュウリ実生を介して P. xanthii の発達に及ぼす影響
は,子葉ステージと本葉ステージで異なっていた.すなわち,CO2 濃度が高いほど,P.
xanthii の発達が,子葉ステージでは抑制され,本葉ステージでは促進された.これまで
に既往報告では,様々な宿主植物および病原菌を用いて CO2 濃度が病原菌の発達に及ぼ
す影響について調べられてきたが,矛盾した結果が報告されている(Eastburn et al., 2011;
Lake and Wade, 2009).本研究結果はそれに加えて,同じ宿主植物でも生育ステージ(子
葉または本葉ステージ)によっても CO2 濃度が病原菌の発達に及ぼす影響が異なる可能
性を示すものである.子葉と本葉とでは役割が異なることから,子葉と本葉の特性の違
いが,相反する結果をもたらしたのかもしれない.このことは,今までに報告された矛
盾する結果を解明するための有用な知見となるかもしれない.
本研究では,宿主植物の葉の特性として LMA,DMC,C 含量および N 含量,C/N 比
を調べた.一般にこれらの特性は植物の病害抵抗性に影響することが知られている
(Eastburn et al., 2011; McElrone et al., 2005; Mathur et al., 2013).LMA は葉の構造的防御
と正の相関があることが知られており(Agrawal and Fishbein, 2006; Bryant et al., 1983;
Bazzaz et al., 1987; Feng et al., 2009; Wright and Cannon, 2001),大きい LMA は P. xanthii
の侵入を抑制する可能性がある.N 含量は,病原菌の発達と負の相関があることが知ら
れており(McElrone et al., 2005),N 含量の少ない葉では P. xanthii の発達が抑制される
可能性がある.葉の C/N 比は CO2 濃度の上昇に伴って大きくなり,病原菌に対する非
構造的防御や葉の栄養状態と相関があると報告されている(Hermans et al., 2006; Martin
et al., 2002; Mathur et al., 2013; McElrone et al., 2005).本研究において観察された,高
CO2 濃度下における大きい LMA,少ない N 含量(子葉と本葉の両方)および N 含量低
92
下に伴う C/N 比の増大は,いずれも病原菌の発達に負の影響をもたらすものである.
子葉については P. xanthii の発達とこれら葉の特性との関係は既往研究と一致していた
が,本葉では逆の傾向であった.従って,LMA や N 含量,C/N 比以外の要因の影響が
考えられる.
大きい DMC および C 含量は,
同化産物の蓄積が多いことを示すことから,
高 CO2 濃度下における大きい DMC や C 含量は病原菌が吸収する炭素由来の養分を増大
させ,病原菌の発達を促進する要素になり得る(Abood and Lösel, 2003; Ayres et al., 1996).
本研究では,本葉において DMC および C 含量が子葉よりも顕著に大きかった.本葉に
おいて高い含量の同化産物の蓄積が,大きい LMA や C/N 比,少ない N 含量などうどん
こ病菌の発達に負の効果をもたらす葉の特性よりも大きく影響したのかもしれない.
以上より,広い範囲の CO2 濃度が植物応答を介して P. xanthii の発達に影響すること
が明らかになった.高い CO2 濃度よりも低い CO2 濃度のほうが植物応答を介した影響
が大きかった.葉の特性の変化は子葉および本葉ステージで共通していたが,病斑形成
に対する CO2 濃度順化の影響が異なったことから,環境要因の影響を調べる際は宿主植
物の葉の役割や栄養状態についても考慮する必要性が示された.
93
第5章
総合考察
本研究では,施設園芸での特有な環境条件に注目し,植物応答を介して病原菌の発達
に及ぼす間接的な影響について明らかにした.さらに,環境応答した葉の特性と病原菌
の発達との関係について検討した.
本論第2章では,照射光の光質に注目し,光質の中でも遠赤色光(FR)に対する赤色
光(R)の比(以下,R/FR比)が植物応答を介して病原菌の発達に及ぼす影響を評価し
た.その結果,自然光(R/FR = 1.2)よりも高いR/FR比はキュウリ(Cucumis sativus L.)
葉の応答を介してキュウリうどんこ病菌(Podosphaera xanthii)の発達を抑制すること
を明らかにした.これは,高R/FR比に対する過剰な光順化応答によって宿主葉の特性
が変化し,そのことが結果的にP. xanthiiの発達を抑制したと考えられた.さらに病斑形
成が抑制された要因を明らかにするために,R/FR比に順化した葉における P. xanthiiの
初期発達を評価した.その結果,分生子の発芽率および感染率に差がなく,菌糸伸長や
吸器形成が高R/FR比に順化した葉では抑制されていたことから,P. xanthiiの初期侵入後
の発達が影響されることが明らかとなった.高R/FR比への順化によって,分生子から
伸長した菌糸細胞に直ちに二次吸器の形成できなかったことが菌糸発達を抑制したと
考えられ,このことが病斑形成を抑制したと考えられる.高R/FR比の白色蛍光灯を用
いた場合,あるいは光選択型フィルムを用いて自然光のR/FR比を高めた場合において
も,病斑形成が抑制されたことから,施設園芸において高R/FR比を利用した光質制御
による病害防除の可能性が示された.
本論第3章では,湿度環境に注目し,植物応答を介して病原菌の発達に及ぼす影響を
評価した.高飽差(低い相対湿度)に順化したキュウリ葉では,低飽差(高い相対湿度)
に順化したキュウリ葉よりもP. xanthiiの病斑形成が抑制されることが明らかになった.
さらに病斑形成が抑制された要因を明らかにするために,P. xanthiiの侵入過程,菌糸生
育および吸器形成を評価した.分生子の侵入過程が高飽差に順化したキュウリ実生で抑
制され,高飽差への順化による構造的特性の変化がP. xanthiiの侵入過程に影響したと言
える.高飽差に順化したキュウリ実生では初期侵入後の菌糸伸長および吸器形成も抑制
された.初期侵入後の発達は宿主葉の非構造的特性に影響されることから,高飽差に順
94
化した葉における非構造的特性もP. xanthiiの発達に影響したと考えられる.高飽差に順
化した葉は,葉全体および表皮組織が厚く,LMAが大きかった.これらの特性は,高
飽差下での水分損失を防ぐための防御応答によるものと考えられた.このような宿主葉
の高飽差への順化が P. xanthiiの発達に負の影響をもたらしたと考えられる.
本論第4章では,施設園芸において起こりうるより広い濃度範囲でのCO2濃度に注目
し,植物応答を介して病原菌の発達に及ぼす影響を評価した.その結果,CO2濃度は宿
主植物の応答を介してP. xanthiiの発達に影響を及ぼすことが比較的広い濃度範囲にお
いて示された.順化時のCO2濃度がキュウリ葉の構造的および非構造的特性に及ぼす影
響は子葉および本葉ステージで同様であったが,病斑形成に対するCO2濃度順化の影響
が異なったことから,宿主植物の葉の役割や栄養状態がP. xanthiiの発達に影響した可能
性が示唆された.
以上のように,本研究では,照射光のR/FR比や湿度環境,CO2濃度が植物応答を介し
てP. xanthiiの発達に間接的に影響することを明らかにした.このことは,これら環境要
素がP. xanthiiの発達に及ぼす影響には,宿主植物の環境応答の影響が内在していること
を意味し,それと同時に,環境調節によって植物の特性を変化させることで病原菌の発
達を制御できる可能性があることを意味する.高R/FR比や低CO2濃度など,自然とは異
なる条件においても宿主植物の環境応答が病原菌の発達に影響を及ぼすことは,新しい
知見であり,このことは施設園芸おける植物―病原菌の相互関係を解明するために重要
と考えられる.本研究では,宿主植物の環境応答特性と病原菌の発達過程を詳細に調べ
ることで,病原菌の発達が抑制される要因は複数あり,それらは複雑に関与している可
能性が示唆された.例えば,高R/FR比の光照射あるいは低湿度環境への順化によって
厚くなったキュウリ葉ではP. xanthiiの発達が抑制されたが,それらの葉面における病原
菌の発達過程は異なった.高R/FR比の光照射については,高R/FR比に対する過剰な光
順化応答によるキュウリ葉の非構造的特性の変化が感染後の発達を抑制したと考えら
れ,湿度環境については水分損失への防御による葉の構造的・非構造的特性の変化が感
染過程以降の発達を抑制したと考えられた.さらに,光質においては,環境調節によっ
て高まった病害抵抗性の持続性にも留意する必要があることが示唆された.苗生産にお
いて本研究の知見を応用する場合を想定すると,育苗中に病原菌に対して強い苗を生育
しても,定植後の環境に順化することで病害抑制効果が弱まる可能性がある.CO2濃度
の影響については,植物の形態的な特徴とP. xanthiiの発達との関係は,生育ステージに
よって異なり,そこには植物の葉の役割や栄養状態の違いなど,複数の要因が複雑に関
95
与していることが示唆された.さらにこのことは,CO2濃度に関する既往報告での一貫
しない結果を説明するものかもしれない.
本研究成果より,施設園芸特有の環境が植物応答を介して病原菌の発達に影響するこ
とが明らかになり,さらに,共通した評価手法を用いてそれぞれの環境要因の間接的な
影響を評価したことで病原菌の発達抑制の要因が異なることが明らかとなった.このよ
うな複雑さを解明することは,植物―病原菌の相互関係をより理解し,病害防除をより
効果的に行うために重要と考えられ,本研究で用いた方法論や得られた基礎的知見は,
そのために有用と考えられる.
96
摘要
第1章
はじめに
植物病害の発生過程は宿主植物と病原菌の相互関係によって成立しており,こ
の相互関係は環境要因に大きく影響される.環境要因は,病原菌の様々な発達段
階の進行に対して直接的に影響することが一般に知られている.一方で,環境要
因は宿主植物の応答を介して間接的にも影響する可能性があるが,そ のことにつ
いては十分に調べられていない.本研究では,施設園芸特有の環境に注目し,照
射光の光質,湿度およびCO 2 濃度が,キュウリ(Cucumis sativus L.)実生とうど
んこ病菌(Podosphaera xanthii)の相互関係に及ぼす間接的な 影響を調べた.施
設園芸では,施設内で環境制御機器を用いて積極的な環境調節を行い,自然と異
なる環境を作ることで植物の生育制御を行っている.人工光源やフィルムを用い
た光質制御による植物の発育や形態の制御や, CO2 施用による標準大気より高い
CO 2 濃度による光合成促進などはその一例である.しかし一方で, 施設園芸では
被覆資材によって施設外との熱や物質の交換が制限された結果として,植物の生
育に不適な高湿度や低CO 2 濃度条件などの意図しない条件になることもある. こ
のような自然と異なる環境条件は,植物応答を介して間接的に病原菌の発達に影
響する可能性があり,そこには施設園芸特有の病害リスクが存在するかもしれな
い.このことを評価することは,園芸生産における病害の発生予察や防除をより
適切に行う上で重要と考えられる.
第 2 章 光質に対する植物応答が Podosphaera xanthii の発達に及ぼす影響
本章では光質の中でも遠赤色光(FR)に対する赤色光(R)の比(R/FR比)に
注目した.育成時の照射光のR/FR比は植物の形態形成に大きく影響する.自然光
(≈ 1.2)よりも低いR/FR比(< 1.2)に宿主植物が順化することで病原菌の発達が
促進されることが明らかにされているが,逆に人工光源やフィルムなどによって
自然光よりもR/FR比が高いときの影響は調べられていない.高R/FR比への順化は,
葉が厚くなるなど低R/FR比への順化とは逆の特性を示すことから,高R/FR比への
順化によって病原菌の発達が抑制される可能性がある.異なるR/FR比(=1.2,5.0
または10)に順化したキュウリ子葉におけるP. xanthiiの病斑形成を接種試験にて
97
評価した結果,高R/FR比に順化した葉ではR/FR比1.2に順化した葉よりも病斑形
成が抑制されることが明らかになった.高R/FR比に順化した葉では,葉全体が厚
く,葉面積あたりの乾物重(LMA)が大きかった.これらの特性は陽葉的であり,
光質に対する過剰な光順化応答によるものと考えられた.このような 宿主葉の光
順化がP. xanthiiの発達に負の影響をもたらしたと考えられる.病斑形成抑制の要
因を明らかにするために,P. xanthiiの分生子(胞子)の侵入過程,菌糸生育およ
び吸器(養分吸収器官)形成を評価した.分生子の 侵入過程はR/FR比順化の影響
を受けなかった.このことは,宿主葉の構造的特性はP. xanthiiの発達抑制の主要
因ではないことを意味する.菌糸伸長および吸器形成は,高R/FR比に順化した葉
ではR/FR比1.2に順化した葉よりも抑制され ていた.一般に初期侵入後の発達は
宿主葉の非構造的特性に影響されることから,高R/FR比に順化した葉においてP.
xanthiiの初期侵入後の発達が抑制されたのは,宿主葉の非構造的特性によるもの
と考えられた.
施設園芸での人工光源や光吸収フィルムを用いた光質制御を想定して,高 R/FR
比の白色蛍光灯を用いた場合,および自然光下でフィルムを用いて R/FR比を高め
た場合についても評価した.高R/FR比の白色蛍光灯照射光下あるいは遠赤色光
(FR)吸収フィルムを用いて自然光のR/FR比を高めた環境下で育成したキュウリ
実生において,自然光下での育成したキュウリ実生よりもP. xanthiiの病斑形成が
抑制された.ただし,P. xanthiiの接種後にキュウリ実生を高R/FR比の光環境下に
移動すると,十分な病害抑制効果が得られなかった.これは,光環境が変化した
ときの宿主植物の再順化が要因であると考えられる.このことから,高R/FR比の
光源による病害抑制効果の持続性に留意する必要がある.
第3章
湿度に対する植物応答が Podosphaera xanthii の発達に及ぼす影響
施設内の湿度は,植物や土壌からの蒸発散と施設内外の熱・水蒸気交換によっ
て決定され,施設外よりも変動しやすい.湿度環境は,病原菌の分生子の発芽や
発達に対して直接的に影響することが知られている.一方で,湿度環境は植物応
答を介して間接的にも病原菌の発達に影響する可能性があるが,そのことは十分
に調べられていない.キュウリ実生を異なる水蒸気 飽差条件下(飽差0.4,2.1ま
たは3.8 kPa)で育成し,それらの飽差に順化したキュウリ子葉における P. xanthii
の発達を接種試験にて評価した結果,高飽差(低い相対湿度)に順化したキュウ
リ実生では病斑形成が抑制されることが明らかになった.高飽差に順化した葉は,
葉全体および表皮組織が厚く,LMAが大きかった.これらの特性は,高飽差下で
の水分損失を防ぐための湿度順化によるものと考えられた.このような宿主葉の
98
湿度順化が P. xanthiiの発達に負の影響をもたらしたと考えられる.高飽差ある
いは低飽差に順化した葉では葉内水ポテンシャルに差はなく,どちらも正常な範
囲であったことから,葉内の水分状態はP. xanthiiの発達に影響しなかったと考え
られた.病斑形成抑制の要因を明らかにするために,P. xanthiiの侵入過程,菌糸
生育および吸器形成を評価した結果,分生子の侵入過程が高飽差に順化したキュ
ウリ実生で抑制されていた.このことは,高飽差への順化による構造的特性の変
化がP. xanthiiの侵入過程に影響したことを意味する.高飽差に順化したキュウリ
実生では初期侵入後の菌糸伸長および吸器形成も抑制されていた.初期侵入後の
発達は宿主葉の非構造的特性に影響されることから ,高飽差に順化した葉におけ
る非構造的特性もP. xanthiiの発達に影響したと考えられる.
第4章
CO 2 濃度に対する植物応答が Podosphaera xanthii の発達に及ぼす影
響
園芸施設内の日中CO 2 濃度は,換気が限られているときには補償点近くまで低
下することがある.CO 2 施用は,低CO 2 濃度での光合成抑制を回避するために有効
であり,その際に施設内のCO2 濃度は1000 µmol mol −1 近くになることがある.CO 2
濃度は宿主植物の応答を介して病原菌の発達に影響することが知られているが,
既往研究では,将来の気候変動下でのCO 2 濃度(650–800 µmol mol −1 程度)を想定
したものがほとんどであり,施設園芸において起こりうるより広い 濃度範囲での
CO 2 濃度の影響は十分に調べられていない.本研究では,異なるCO 2 濃度下(200–
1000 µmol mol −1 )に順化したキュウリ葉でのP. xanthiiの病斑形成を評価した.病
斑形成は,順化CO2 濃度の上昇に伴い,子葉ステージでは抑制され,本葉ステー
ジでは促進された.このことは,CO 2 濃度は宿主植物の応答を介してP. xanthiiの
発達に影響することを意味し,さらにその影響は宿主植物の成長段階によって異
なることを示す.葉の特性として炭素(C)と窒素(N)の比(C/N比)を評価し
たところ,子葉および本葉ともにCO2 濃度と正の相関があったため,C/N比の変化
から生育ステージによる病斑形成の違いは説明できなかった.生育ステージによ
る葉の特性の違いとして,本葉では子葉よりもC含量が高いことが認められた .
このような子葉と本葉での栄養状態の違いは,葉の役割に起因すると考えられ,
このことがP. xanthiiの発達に及ぼすCO 2 濃度の影響が生育ステージによって異な
る一因と考えられた.
第5章
総合考察
本研究では,照射光の R/FR 比や湿度環境,CO 2 濃度が植物応答を介して P. xanthii
99
の発達に間接的に影響することを明らかにした.このことは,これら環境要素
が P. xanthii の発達に及ぼす影響には,宿主植物の環境応答の影響が内在してい
ることを意味し,それと同時に,環境調節によって植物の特性を変化させるこ
とで病原菌の発達を制御できる可能性があることを意味する.高 R/FR 比や低
CO 2 濃度など,自然とは異なる条件においても宿主植物の環境応答が病原菌の発
達に影響を及ぼすことは,新しい知見であり,このことは施設園芸おける植物
―病原菌の相互関係を解明するために重要と考えられる.本研究では,宿主植
物の環境応答特性と病原菌の発達過程を詳細に調べることで,病原菌の発達が
抑制される要因は複数あり,それらは複雑に関与している可能性が示唆された.
例えば,高 R/FR 比の光照射あるいは低湿度環境への順化によって厚くなったキ
ュウリ葉では P. xanthii の発達が抑制されたが,それらの葉面における病原菌の
発達過程は異なった.高 R/FR 比の光照射については,高 R/FR 比に対する過剰
な光順化応答によるキュウリ葉の非構造的特性の変化が感染後の発達を抑制し
たと考えられ,低湿度環境については水分損失への防御による葉の構造的・非
構造的特性の両方の変化が感染過程以降の発達を抑制したと考えられた.さら
に,光質順化においては環境調節によって高まった病害抵抗性の持続性にも留
意する必要があることが示唆された.CO 2 濃度の影響については,植物の形態的
な特徴と P. xanthii の発達との関係は,生育ステージによって異なり,そこには
植物の栄養状態の違いなど,複数の要因が複雑に関与していることが示唆され
ている.このような複雑さを解明することは,植物―病原菌の相互関係をより
理解し,病害防除をより効果的に行うために重要と考えられ,本研究で用いた
方法論や得られた基礎的知見は,そのために有用と考えられる.
100
謝辞
本研究を行うにあたり,指導教官である大阪府立大学大学院生命環境科学研
究科の准教授渋谷俊夫博士には, 細部にまで多大なご指導,ご助言を賜り,ま
た,本論文の副査を担当して頂 きました.同研究科教授北宅善昭博士には,本
論文の主査として多くのご指摘,ご助言を賜りました.同研究科の助教遠藤良
輔博士には,実験器具の扱いや成果発表などにおいて細部にまでご指導,ご助
言を賜りました.同研究科の教授石井実博士ならびに教授堀野治彦博士には,
本論文の副査を担当して頂き,貴重な意見を賜りました.同研究科准教授東條
元昭博士には,植物病原菌の実験手法,国内外の 学会発表や論文執筆の際など
で植物病理学者の立場から多大なご指導,ご助言を賜りました.富山県立大学
教授佐藤幸生博士には,うどんこ病菌についての専門的な知見ならびに実験手
法について植物病理学者の立場から多大なご指導,ご助言を賜りました.
Unuversity of Hawaii,Dr. Janice Y. Uchida には,英文の指導ならびに植物病理学
者の立場から多くの助言を頂 きました.以上の先生方に深く感謝の意を表しま
す.
本研究で用いた遠赤色光吸収フィルムを提供して頂いた,ヤンマー株式会社
ならびにパナックアドバンス株 式会社に謹んでお礼申し上げます. 本研究の一
部は日本学術振興会科学研究費(特別研究員奨励費,課題番号 No. 25·10391)の
助成を受けたものであり,同会には謹んで感謝申し上げます.
同研究科生物環境調節学研究グループの学生ならびに研究員の皆様には,植
物の世話をはじめとして本研究にご協力頂き,研究生活を充実したものにして
頂いたことに謹んでお礼申し上げます.最後になりましたが,折りに触れてご
助言,ご協力頂いた家族ならびに友人たちに深く感謝申し上げます .
101
引用文献
Abood, J. K., & Lösel, D. M. (2003). Changes in carbohydrate composition of
cucumber leaves during the development of powdery mildew infection. Plant
Pathology, 52, 256–265.
Agrawal, A. A., & Fishbein, M. (2006). Plant defense syndromes. Ecology, 87, S132 –
S149.
Anderson, J. M., Chow, W. S., & Park, Y. I. (1995). The grand design of
photosynthesis: acclimation of the photosynthetic apparatus to environmental cu es.
Photosynthesis Research, 46, 129–139.
Aust, F., & v. Hoyningen-Huene, J. (1986). Microclimate in relation to epidemics of
powdery mildew. Annual Review of Phytopathology, 24, 491–510.
Ayres, P. G., Press, M. C., & Spencer-Phillips, P. T. (1996). Effects of pathogens and
parasitic plants on source-sink relationships. Photoassimilate Distribution in
Plants and Crops, 479–499.
Bailey, S., Horton, P., & Walters, R. G. (2004). Acclimation of Arabidopsis thaliana to
the light environment: the relationship between photosynthetic function and
chloroplast composition. Planta, 218, 793–802.
Baker, E. A. (1974). The influence of environment on leaf wax development in
Brassica oleracea var. gemmifera. New Phytologist, 73, 955–966.
Ballaré, C. L., Scopel, A. L., & Sánchez, R. A. (1991). On the opportunity cost of the
photosynthate invested in stem elongation reactions mediated by phytochrome.
Oecologia, 86, 561–567.
Ballaré, C. L., Mazza, C. A., Austin, A. T., & Pierik, R. (2012). Canopy light and plant
health. Plant physiology, 160, 145–155.
Bañon, S., Ochoa, J., Franco, J. A., Alarcón, J. J., & Sánchez-Blanco, M. J. (2006).
Hardening of oleander seedlings by deficit irrigation and low air humidity.
Environmental and Experimental Botany, 56, 36–43.
Bazzaz, F. A., Chiariello, N. R., Coley, P. D., & Pitelka, L. F. (1987). Allocating
resources to reproduction and defense. BioScience, 58–67.
Bélanger, R. R., Bushnell, W. R., Dik, A. J., & Carver, T. L. (2002). The powdery
102
mildews: a comprehensive treatise. American Phytopathological Society (APS
Press).
Berger, S., Sinha, A. K., & Roitsch, T. (2007). Plant physiology meets phytopathology:
plant
primary
metabolism
and
plant–pathogen
interactions.
Journal
of
experimental botany, 58, 4019–4026.
Bridge, M.A., & Klarman, W.L. (1973). Soybean phytoalexin, hydroxyphaseollin,
induced by ultraviolet irradiation. Phytopathology 63, 606–608.
Bryant, J. P., Chapin III, F. S., & Klein, D. R. (1983). Carbon/nutrient balance of
boreal plants in relation to vertebrate herbivory. Oikos, 357–368.
Carroll, J. E., & Wilcox, W. F. (2003). Effects of humidity on t he development of
grapevine powdery mildew. Phytopathology, 93, 1137–1144.
Cerrudo, I., Keller, M.M., Cargnel, M.D., Demkura, P.V., Wit, M., Patitucci, M.S.,
Pierik, R., Pieterse, C.M.J., & Ballaré, C. L. (2012). Low red/far -red ratios reduce
Arabidopsis resistance to Botrytis cinerea and jasmonate responses via a
COI1-JAZ10-dependent, salicylic acid-independent mechanism. Plant physiology,
158, 2042–2052.
Dangl, J. L., & Jones, J. D. (2001). Plant pathogens and integrated defence responses to
infection. Nature, 411, 826–833.
Demotes-Mainard, S., Péron, T., Corot, A., Bertheloot, J., Le Gourrierec, J., Travier, S.,
Crespel, L., Morel, P., Huché-Thélier, L., Boumaza, R., Vian, A., Guérin, V.,
Leduc, N., & Sakr, S. (2015). Plant responses to red and far-red lights,
applications in horticulture. Environmental and Experimental Botany.In press.
Eastburn, D. M., McElrone, A. J., & Bilgin, D. D. (2011). Influence of atmospheric and
climatic change on plant–pathogen interactions. Plant Pathology, 60, 54–69.
Elad, Y., Messika, Y., Brand, M., Rav David, D., & Sztejnberg, A. (2007). Effect of
microclimate
on
Leveillula
taurica
powdery
mildew
of
sweet
pepper.
Phytopathology, 97, 813–824.
Feng, Y. L., Lei, Y. B., Wang, R. F., Callaway, R. M., Valiente-Banuet, A., Li, Y. P.,
& Zheng, Y. L. (2009). Evolutionary tradeoffs for nitrogen allocation to
photosynthesis versus cell walls in an invasive plant. Proceedings of the National
Academy of Sciences, 106, 1853–1856.
Franklin, K. A. (2008). Shade avoidance. New Phytologist, 179, 930–944.
Frantz, J. M., & Bugbee, B. (2005). Acclimation of plant populations to shade:
photosynthesis, respiration, and carbon use efficiency. Journal of the American
103
Society for Horticultural Science, 130, 918–927.
Fujita, M., Fujita, Y., Noutoshi, Y., Takahashi, F., Narusaka, Y., Yamaguchi -Shinozaki,
K., & Shinozaki, K. (2006). Crosstalk between abiotic and biotic stress responses:
a current view from the points of convergence in the stress signaling networks.
Current opinion in plant biology, 9, 436–442.
Gabler, F. M., Smilanick, J. L., Mansour, M., Ramming, D. W., & Mackey, B. E.
(2003). Correlations of morphological, anatomical, and chemical features of grape
berries with resistance to Botrytis cinerea. Phytopathology, 93, 1263–1273.
Gerhart, L. M., & Ward, J. K. (2010). Plant responses to low [CO 2 ] of the past. New
Phytologist, 188, 674–695.
Guzman-Plazola, R. A., Davis, R. M., & Marois, J. J. (2003). Effects of relative
humidity and temperature on spore germination and development of tomato
powdery mildew. Crop Protection, 22, 1157–1168.
Hammond-Kosack, K. E., & Jones, J. D. (1997). Plant disease resistance genes. Annual
review of plant biology, 48, 575–607.
Harris, J. G., & Manners, J. G. (1983). Influence of relative humidity on germination
and disease development in Erysiphe graminis. Transactions of the British
Mycological Society, 81, 605–611.
Hermans, C., Hammond, J. P., White, P. J., & Verbruggen, N. (2006). How do plants
respond to nutrient shortage by biomass allocation?. Trends in plant science, 11,
610–617.
Hoad, S. P., Grace, J., & Jeffree, C. E. (1997). Humidity response of cuticular
conductance of beech (Fagus sylvatica L.) leaf discs maintained at high relative
water content. Journal of Experimental Botany, 48, 1969–1975.
Hull, H. M., Morton, H. L., & Wharrie, J. R. (1975). Environmental influences on
cuticle development and resultant foliar penetration. The Botanical R eview, 41,
421–452.
Islam, S.Z., Babadoost, M., & Honda, Y. (2002). Effect of red light treatment of
seedlings of pepper, pumpkin, and tomato on the occurrence of Phytophthora
damping-off. HortScience, 37, 78–81.
Jahnke, S., & Krewitt, M. (2002). Atmospheric CO 2 concentration may directly affect
leaf respiration measurement in tobacco, but not respiration itself. Plant, Cell &
Environment, 25, 641–651.
Jenks, M. A., Eigenbrode, S. D., & Lemieux, B. (2002). Cuticular waxes of
104
Arabidopsis. The Arabidopsis Book/American Society of Plant Biologists, 1.
Kenyon, D. M., Dixon, G. R., & Helfer, S. (2002). Effects of relative humidity, light
intensity and photoperiod on the colony development of Erysiphe sp. on
Rhododendron. Plant Pathology, 51, 103–108.
Kindelan, M. (1980). Dynamic modeling of greenhouse environment. Transactions of
the ASAE, 23, 1232–1239.
Kläring, H. P., Hauschild, C., Heißner, A., & Bar-Yosef, B. (2007). Model-based
control of CO 2 concentration in greenhouses at ambient levels increases cucumber
yield. Agricultural and Forest Meteorology, 143, 208–216.
Kobayashi, T., Ishiguro, K., Nakajima, T., Kim, H. Y., Okada, M., & Kobayashi, K.
(2006). Effects of elevated atmospheric CO 2 concentration on the infection of rice
blast and sheath blight. Phytopathology, 96, 425–431.
Koch, K., Hartmann, K. D., Schreiber, L., Barthlott, W., & Neinhuis, C. (2006).
Influences of air humidity during the cultivation of plants on wax chemical
composition, morphology and leaf surface wettability. Environmental and
Experimental Botany, 56, 1–9.
Kosma, D. K., Bourdenx, B., Bernard, A., Parsons, E. P., Lü, S., Joubès, J., & Jenks, M.
A. (2009). The impact of water deficiency on leaf cuticle lipids of Arabidopsis.
Plant Physiology, 151, 1918–1929.
Kozai, T., Ohyama, K., & Chun, C. (2005). Commercialized closed systems with
artificial lighting for plant production. Acta Horticulturae, 711, 61 –70.
Kozai, T. (2007). Propagation, grafting and transplant production in closed systems
with artificial lighting for commercialization in J apan. Propagation of Ornamental
Plants, 7, 145–149.
Lake, J. A., & Wade, R. N. (2009). Plant–pathogen interactions and elevated CO 2 :
morphological changes in favour of pathogens. Journal of experimental botany, 60,
3123–3131.
Mackovà, J., Va š ková, M., Macek, P., Hronková, M., Schreiber, L., & Š antr ůč ek, J.
(2010). Plant response to drought stress simulated by ABA application: changes in
chemical composition of cuticular waxes. Environmental and Experimental
Botany, 86, 70–75.
Manning, W. J., & Tiedemann, A. V. (1995). Climate change: potential effects of
increased atmospheric carbon dioxide (CO 2 ), ozone (O 3 ), and ultraviolet-B
(UV-B) radiation on plant diseases. Environmental Pollution, 88, 219 –245.
105
Martin, T., Oswald, O., & Graham, I. A. (2002). Arabidopsis seedling growth, storage
lipid mobilization, and photosynthetic gene expression are regulated by carbon:
nitrogen availability. Plant physiology, 128, 472–481.
Mathur, P., Sharma, E., Singh, S. D., Bhatnagar, A. K., Singh, V. P., & Kapoor, R .
(2013). Effect of elevated CO 2 on infection of three foliar diseases in oilseed
Brassica juncea. Journal of Plant Pathology, 135–144.
Mcelrone, A. J., Reid, C. D., Hoye, K. A., Hart, E., & Jackson, R. B. (2005). Elevated
CO 2 reduces disease incidence and severity of a red maple fungal pathogen via
changes in host physiology and leaf chemistry. Global Change Biology, 11, 1828 –
1836.
Morishita, M., Sugiyama, K., Saito, T., & Sakata, Y. (2003). Powdery mildew
resistance in cucumber. Japan Agricultural Research Quarterly: JARQ, 37, 7–14.
Mortensen, L. M. (1987). Review: CO 2 enrichment in greenhouses. Crop responses.
Scientia Horticulturae, 33, 1–25.
Mortensen, L. M., & Gislerød, H. R. (2005). Effect of air humidity variation on
powdery mildew and keeping quality of cut roses. Scientia Horticulturae, 104, 49–
55.
Nao, M (2005). Influence of cucumber powdery mildew on the quality and yield of
hervesting fruit. Proceedings of the Association for Plant Protection of Sikoku, 40,
17–23.
Niinemets, Ü., Cescatti, A., Rodeghiero, M., & Tosens, T. (2006). Complex
adjustments of photosynthetic potentials and internal diffusion conductance to
current and previous light availabilities and leaf age in Mediterranean evergreen
species Quercus ilex. Plant, Cell & Environment, 29, 1159–1178.
Nilsen, S., Hovland, K., Dons, C., & Sletten, S. P. (1983). Effect of CO 2 enrichment on
photosynthesis, growth and yield of tomato. Scientia Horticulturae, 20, 1 –14.
Pérez-García, A, Romero, D., Fernández-Ortuño, D., López-Ruiz, F., De Vicente, A.,
& Tores, J. A. (2009). The powdery mildew fungus Podosphaera fusca (synonym
Podosphaera xanthii), a constant threat to cucurbits. Molecular plant pathology,
10, 153–160.
Person, C. (1959). Gene-for-gene relationships in host: parasite systems. Canadian
Journal of Botany, 37, 1101–1130.
Poorter, H., Niinemets, Ü., Poorter, L., Wright, I. J., & Villar, R. (2009). Causes and
consequences of variation in leaf mass per area (LMA): a meta -analysis. New
106
Phytologist, 182, 565 – 588.
Quinn, J. A., & Powell, C. C., Jr. (1982). Effects of temperature, light, and relative
humidity on powdery mildew of begonia. Phytopathology, 72, 480–484.
Rahman, M. Z., Honda, Y., & Arase, S. (2003). Red-light-induced resistance in broad
bean (Vicia faba L.) to leaf spot disease caused by Alternaria tenuissima. Journal
of Phytopathology, 151, 86–91.
Rajapakse, N.C., R.E. Young, M.J. McMahon, & R. Oi. (1999). Plant height control by
photoselective filters: current status and future prospects. HortTechnology, 9,
618–624.
Rajapakse, N.C., & Y. Shahak. (2007). Light quality manipulation by horticulture
industry, p. 290–312. In: Whitelam G. and K. Hallida (eds) Light and plant
development. Blackwell, Oxford, UK.
Reuveni, R., & Rotem, J. (1974). Effect of humidity on epidemiologic al patterns of the
powdery mildew (Sphaerotheca fuliginea) on squash. Phytoparasitica, 2, 25–33.
Ristic, Z., & Jenks, M. A. (2002). Leaf cuticle and water loss in maize lines differing
in dehydration avoidance. Journal of Plant Physiology, 159, 645–651.
Runkle, E.S. and R.D. Heins, 2002. Stem extension and subsequent flowering of
seedlings grown under a film creating a far-red deficient environment. Scientia
Hortic., 96, 257–265.
Sage, R. F. (1995). Was low atmospheric CO 2 during the Pleistocene a limiting factor
for the origin of agriculture?. Global Change Biology, 1, 93–106.
Sage, R. F., & Cowling, S. A. (1999). Implications of stress in low CO 2 atmospheres of
the past: are today’s plants too conservative for a high CO 2 world. Carbon dioxide
and environmental stress, 289–308.
Sánchez-Guerrero, M. C., Lorenzo, P., Medrano, E., Castilla, N., Soriano, T., & Baille,
A. (2005). Effect of variable CO 2 enrichment on greenhouse production in mild
winter climates. Agricultural and forest meteorology, 132, 244–252.
Schnathorst, W. C. (1965). Environmental relationships in the powdery mildews.
Annual Review of Phytopathology, 3, 3434–366.
Scholes, J. D., Lee, P. J., Horton, P., & Lewis, D. H. (1994). Invertase: understanding
changes in the photosynthetic and carbohydrate metabolism of barley leaves
infected with powdery mildew. New Phytologist, 126, 213–222.
Schuerger, A. C., & Brown, C. S. (1997). Spectral quality affects disease development
of three pathogens on hydroponically grown plants. HortScience, 32, 96–100.
107
Segarra, G., O. Jáuregui, E. Casanova, and I. Trillas. 2006. Simultaneous quantitative
LC–ESI-MS/MS analyses of salicylic acid and jasmonic acid in crude extracts of
Cucumis sativus under biotic stress. Phytochemistry 67: 395–401.
Shibuya, T., Terakura, R., Kitaya, Y., & Kiyota, M. (2006). Effects of low relative
humidity and illumination on leaf water status of cucumber seedlings and growth
of harvested cuttings. HortScience, 41, 410–413.
Shibuya, T., Hirai, N., Sakamoto, Y., & Komuro, J. (2009). Effects of morphological
characteristics of Cucumis sativus seedlings grown at different vapor pressure
deficits on initial colonization of Bemisia tabaci (Hemiptera: Aleyrodidae).
Economic Entomology, 102, 2265–2267.
Shibuya, T., Endo, R., Hayashi, N., & Kitaya, Y. (2012). High-light-like
photosynthetic responses of Cucumis sativus leaves acclimated to fluorescent
illumination with a high red: far-red ratio: interaction between light quality and
quantity. Photosynthetica, 50, 623–629.
Shibuya, T., Takahashi, S., Endo, R., & Kitaya, Y. (2013). Height -convergence pattern
in dense plant stands is affected by red-to-far-red ratio of background illumination.
Scientia Horticulturae, 160, 65–69.
Shibuya, T., Endo, R., Yuba, T., & Kitaya, Y. (2015). The photosynthetic parameters
of cucumber as affected by irradiances with different red: far -red ratios. Biologia
Plantarum, 59, 198–200.
Shibuya, T., Itagaki, K., Wang, Y., & Endo, R. (2015). Grafting transiently suppresses
development of powdery mildew colonies, probably through a quantitative change
in water relations of the host cucumber scions during graft healing. Scientia
Horticulturae, 192, 197–199.
Smith, E. F., Roberts, A. V., & Mottley, J. (1990). The preparation in vitro of
chrysanthemum for transplantation to soil. Plant Cell, Tissue and Organ Culture,
21, 141–145.
Strengbom, J., & Reich, P. B. (2006). Elevated [CO 2 ] and increased N supply reduce
leaf disease and related photosynthetic impacts on Solidago rigida. Oecologia,
149, 519–525.
Szwacka, M., Tykarska, T., Wisniewska, A., Kuras, M., Bilski, H., & Malepszy, S.
(2009). Leaf morphology and anatomy of transgenic cucumber lines tolerant to
downy mildew. Biologia Plantarum, 53, 697–701.
Tanaka, A., & Park, Y. D. (1966). Significance of the absorption and distribution of
108
silica in the growth of the rice plant. Soil Science and Plant Nutrition, 12, 23 –28.
te Beest, D. E., Paveley, N. D., Shaw, M. W., & van den Bosch, F. (2008). Disease –
weather relationships for powdery mildew and yellow rust on winter wheat.
Phytopathology, 98, 609–617.
Toome, M., Heinsoo, K., & Luik, A. (2010). Relation between leaf rust ( Melampsora
epitea) severity and the specific leaf area in short rotation coppice willows.
European journal of plant pathology, 126, 583–588.
Torre, S., Fjeld, T., Gislerød, H. R., & Moe, R. (2003). Leaf anatomy and stomatal
morphology of greenhouse roses grown at moderate or high air humidity. Journal
of the American Society for Horticultural Science, 128, 598–602.
Walters, M. B., & Reich, P. B. (1996). Are shade tolerance, survival, and growth
linked? Low light and nitrogen effects on hardwood seedlings. Ecology, 77, 841 –
853.
Wang, W., Vinocur, B., & Altman, A. (2003). Plant responses to drought, salinity and
extreme temperatures: towards genetic engineering for stress tolerance. Planta,
218, 1–14.
Wang, H., Jiang, Y. P., Yu, H. J., Xia, X. J., Shi, K., Zhou, Y. H., & Yu, J. Q. (2010).
Light quality affects incidence of powdery mildew, expression of defence -related
genes and associated metabolism in cucumber plants. European journal of plant
pathology, 127, 125–135.
Whipps, J. M., & Budge, S. P. (2000). Effect of humidity on development of tomato
powdery mildew (Oidium lycopersici) in the glasshouse. European Journal of
Plant Pathology, 106, 395–397.
Wright, I. J., & Cannon, K. (2001). Relationships between leaf lifespan and structural
defences in a low-nutrient, sclerophyll flora. Functional Ecology, 15, 351 –359.
Yarwood, C. E. (1957). Powdery mildew. Botanical Review, 23, 235–301.
Zabka, V., Stangl, M., Bringmann, G., Vogg, G., Riederer, M., & Hildebrandt, U.
(2008). Host surface properties affect prepenetration processes in the barley
powdery mildew fungus. New Phytologist, 177, 251–263.
109
Summary
Management of cucumber powdery mildew (Podosphaera xanthii)
development by controlling the environmental responses of host
plants
Chapter 1. Introduction
The developmental processes that govern plant diseases are regulated by
plant–pathogen interactions. These interactions, in turn, are greatl y affected by
environmental factors, such as atmospheric moisture (relative humidity) and light
conditions, and these environmental factors directly affect disease development. On the
other hand, environmental factors may indirectly affect the pathogen’s d evelopment
through the host plant’s responses, though the indirect effects of each environmental
factor have not been well studied. In greenhouse horticulture, plant growth is managed
by means of environmental control, which creates a different environment from natural
conditions; examples of such control include managing plant growth and morphology
by controlling light quality using artificial lights and photo -selective films, or
promoting photosynthesis by creating a CO 2 concentration ([CO 2 ]) higher than that of
the ambient atmosphere (CO 2 fertilization).
However, limitations on the exchanges of heat and substances result from the
materials used to construct greenhouses, and this can sometimes lead to unintended
conditions for plant growth, such as unsuitably high humidity and low [CO 2 ]. These
environmental conditions in greenhouses differ from natural conditions, and may affect
disease development indirectly through the host plant’s responses, thereby creating a
specific disease risk in greenhouses. On the other hand, it’s also possible that disease
management can be conducted by controlling the host plant’s responses (i.e., changes
in its properties) by managing its environment. The study described in this thesis
focused on the effects of light quality, atmospheric humidity, and [CO 2 ], which are
important environmental factors in greenhouse horticulture. Cucumber ( Cucumis
sativus L.) seedlings, a major crop grown in greenhouses, were grown under controlled
110
environmental conditions, and the indirect effects of the environmental conditions on
disease development were evaluated by inoculating plants with the powdery mildew
fungus (Podosphaera xanthii), which causes one of the most prevalent diseases in
agricultural and horticultural production of cucumber. Hyphae of P. xanthii penetrate
directily into epidermal cell wall, therefore leaf thickness and other leaf properties
should be important.
Chapter 2. Effect of acclimatization to light quality on the development of
Podosphaera xanthii
The red-to-far-red ratio (R/FR) of illumination, which greatly affects plant
morphology, was the focus of the present study. Acclimatization to a lower R/FR
(<1.2) than that of natural light (≈1.2) is known to enhance disease development, but
the effects of acclimatization to higher R/FR ratios, which can be created by artificial
lights and photo-selective films, are unclear. Because reverse responses to lower R/FR
such as thickened leaves are observed on acclimatization to higher R/FR, disease
development may be decreased by acclimatization to higher R/FR.
In Experiment 1, the colony development of P. xanthii was evaluated on
cucumber seedlings from both resistant (‘Tokiwa 333’) and nonresistant (‘Hokushin’)
cultivars that were acclimatized to different R/FR ratios provided by LE Ds. Seedlings
of resistant and nonresistant cultivars were acclimatized to R/FR ratios of 1.2, 5.0, or
10, for 7 to 8 days. These ratios represented natural light, the light produced by light
passing through film used in the present study to absorb far-red light, and typical
commercial fluorescent lamps, respectively. Conidia of P. xanthii were inoculated onto
the adaxial surface of cotyledons, and colonization was measured after 7 days. Colony
density decreased as the acclimatization R/FR ratio increased on both resistant and
nonresistant cultivars. The seedlings acclimatized to higher R/FR had thicker leaves
and greater leaf mass per area (LMA). These properties probably resulted from the
heightened acclimatization to light intensity induced by higher R/FR , which might
have affected the pathogen’s development. To identify the factors that limited colony
development, early development of P. xanthii was divided into conidial germination,
initial invasion, hyphal development, and haustorial formation, and thes e growth stages
were evaluated. There were no differences in conidial germination or initial invasion
between the treatments, so there was no effect of acclimatization to R/FR on either
factor. However, the development of hyphae, hyphal cells, and haustori a after
111
inoculation were suppressed on seedlings that had been acclimatized to higher R/FR.
Because differences occurred only after the initial invasion, nonstructural properties of
the host leaves appear to have affected the early conidial development.
In Experiment 2, practical application of a higher -than-natural R/FR ratio in a
greenhouse was evaluated by examining the effects of various illumination s with a
high R/FR ratio on colony development of P. xanthii. Seedlings of susceptible cultivar
were grown under fluorescent lamps with high-R/FR light (R/FR = 10) or low-R/FR
light (R/FR = 1.1), or under metal-halide lamps that provided a spectrum similar to that
of natural light (R/FR = 1.2) until the cotyledons were fully expanded. Plants were then
inoculated as in Experiment 1. Colony density decreased on seedlings grown under
fluorescent lamps with high R/FR compared with densities on seedlings grown under
fluorescent lamps with low R/FR or metal-halide lamps. This indicates that disease
development
is
suppressed
by
growing
plants
under
illumination
with
a
higher-than-natural R/FR ratio. The suppressed development of P. xanthii on seedlings
acclimatized to higher R/FR was also observed on the first true leaf.
Experiment 3 also tested the practical application of higher R/FR in a
greenhouse; a similar inoculation test was conducted on cucumber seedlings, but these
plants were acclimatized to natural (R/FR = 1.2) or higher -R/FR (= 4.7) light, 10 to 11
days for cotyledon stage, and 12 to 14 days for first true leaf stage. In this experiment,
the R/FR ratio was increased by means of a photo-selective film that absorbs FR light.
The treatment with higher R/FR suppressed colony development. However, this effect
decreased when the plants were moved to natural R/FR after inoculation, possibly
because of re-acclimatization of the seedlings to the new light conditions. Thus, to
suppress disease development, continuous acclimatizatio n to higher R/FR may be
required.
Chapter 3. Effect of acclimatization to atmospheric moisture content on the
development of Podosphaera xanthii
Atmospheric moisture content (relative humidity) in greenhouses can be easily
changed by managing ventilation, heating, or transpiration from plants and soil.
Relative humidity is an important environmental factor that affects both disease
development and plant growth. The spore dispersal and subsequent development of
powdery mildew are greatly affected by moisture conditions. In addition to the direct
effects on the pathogen, relative humidity may indirectly influence the pathogen
112
through its effects on host plant properties. However, these indirect effects have not
been evaluated.
The colony development of P. xanthii on cucumber seedlings of nonresistant
cultivar acclimatized to different levels of vapor-pressure deficit (VPD) was evaluated
to examine plant–pathogen interactions under a wide range of relative humidity.
Cucumber seedlings were grown under VPD of 3.8 kPa (relative humidity [RH] = 10%),
2.1 kPa (RH = 50%), or 0.4 kPa (RH = 90%). Powdery mildew spores were inoculated
onto the adaxial surface of the cotyledons, and the seedlings of all treatments were then
placed in a growth chamber maintained at a VPD of 2.1 kPa. The density of visible P.
xanthii colonies on the high-VPD-acclimated cotyledons was 0.46 to 0.85 times that of
the low-VPD-acclimated cotyledons 7 days after inoculation; that is, high relative
humidity increased colony development. The high-VPD-acclimated cotyledons were
thicker and had higher LMA. These leaf properties indicate that the plants changed
their properties to protect against the water loss caused by high VPD, and this might
have affected pathogen development. The water status of t he cotyledons does not
explain the difference in conidia development between the treatments because the
water potential of the cotyledons did not differ significantly between the treatments.
The leaf water potential in the present study was at a normal level for cucumber in both
treatment groups. The penetration and post-infection of P. xanthii was decreased on
cucumber seedlings acclimatized to high VPD, which suggests that the morphological
properties of the host leaf were responsible for limiting conidia l development. The
subsequent hyphal and haustorial development were also decreased and the percentage
of adaxial epidermal leaf cells with haustoria decreased on cucumber seedlings
acclimatized at high VPD, which indicates that the physiological propertie s of the host
leaf limited conidial development.
Chapter 4. Effect of acclimatization to CO 2 concentration on the development of
Podosphaera xanthii
The [CO 2 ] in greenhouse cultivation during daylight hours is often lower than
the atmospheric level—possibly as low as 200 μmol mol −1 when ventilation is limited.
In such cases, CO 2 fertilization can avoid the inhibition of photosynthesis and effects
on plant growth that result from low [CO 2 ]. The effects of [CO 2 ] on the development of
foliar diseases has been investigated at [CO 2 ] ranging from atmospheric levels (380
μmol mol −1 ) to higher levels (from 650 to 800 μmol mol −1 ) that cover the possible
113
range of [CO 2 ] expected in the future. However, the effect of the wide range of [CO 2 ]
that can occur in greenhouse cultivation has not been well-studied experimentally.
The colony development of P. xanthii on cucumber seedlings of resistant and
nonresistant cultivars acclimatized to different levels of [CO 2 ] was evaluated to
examine plant–pathogen interactions under the wide range of [CO 2 ] that can occur in
greenhouse cultivation. Seedlings of resistant and nonresistant cultivars were
acclimatized to reduced (200 μmol mol −1 ), ambient (400 μmol mol −1 ), or elevated
(1000 μmol mol −1 ) [CO 2 ]. Conidia of P. xanthii were inoculated onto the adaxial
surface of cotyledons or first true leaves, and colonization was measured after 7 days.
Colony density decreased as the acclimatization [CO 2 ] increased at the cotyledon stage
but increased at the first-true-leaf stage in both cultivars. This suggests that the growth
stage must be specified when the effects of [CO 2 ] on plant–pathogen interactions are
described.
The acclimatization [CO 2 ] was positively correlated with LMA, leaf dry
matter content, and carbon (C) content and negatively correlated with nitrogen (N)
content at both growth stages. Therefore, these leaf properties could not explain the
change in host-plant susceptibility between stages. Although there was no interaction
effect between these properties and growth stage, the abs olute values of the C contents
were higher in the first true leaves than in the cotyledons. That is, although the increase
in these values did not explain the increase in susceptibility, the higher values at the
first-true-leaf stage may have increased the susceptibility to infection. The effect of
acclimatization [CO 2 ] was greater on the resistant cultivar than on the nonresistant
cultivar, indicating that the resistant cultivar was more responsive. [CO 2 ] × cultivar
(resistant and nonresistant) interactions were observed for both colony density and leaf
properties, indicating that carbon accumulation and other physiological factors were
related to the initial resistance levels and interacted in a complex manner.
Chapter 5. Conclusions
This thesis research revealed the effects of the illumination R/FR ratio,
relative humidity, and [CO 2 ] on disease development through its effects on the host
plant’s responses. The results indicate that the environmental responses of host plants
indirectly determine the effects of environmental factors on P. xanthii development.
Based on these results, disease development can be managed by changing leaf
properties through environmental control. These greenhouse environmental conditions
114
that differ from natural conditions (such as higher R/FR and lower [CO 2 ]) reveal new
horticultural insights and provide important insights into environmental influences on
plant–pathogen interactions. The environmental responses of host plants and the
conidial development of P. xanthii revealed that more than one factor limited conidial
development and that these factors interacted in a complex manner. For example,
though the development of P. xanthii was suppressed on the thicker leaves that
developed in plants acclimatized to higher R/FR or lower r elative humidity, the
developmental process of P. xanthii differed: For higher R/FR, physiological changes
in the host leaf that probably resulted from the increased acclimatization to light
intensity induced by higher R/FR, suppressed the post -infection development of P.
xanthii; in contrast, the morphological and physiological changes in host leaves caused
by acclimatization to a high VPD, which may function to protect plants against water
loss, suppressed both the penetration and post-infection development of P. xanthii.
Furthermore, the results of evaluating the effect of light quality revealed the
importance of accounting for the growth stage, since the suppression of disease
development differs among growth stages; in the [CO 2 ] experiment, the relationship
between plant morphological properties and P. xanthii development differed between
two developmental stages of the host plants, and suggested that several plant properties,
such as the structure and physiological functions of the leaves, interact and affect leaf
resistance to infection in a complex manner. Therefore, revealing the details of these
complexities in future research will improve our understanding of plant –pathogen
interactions and support efforts to improve the effectiveness of disease management.
115
Fly UP