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第3回 トランスレーショナル リサーチ懇話会

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第3回 トランスレーショナル リサーチ懇話会
第 3回
トランスレーショナル
リサーチ懇 話 会
The 3rd Translational
Research Workshop
日
場
時:2004年7月23日(金)13:00∼17:00
所:国立保健医療科学院 大講堂
(元国立公衆衛生院)
東京都港区白金台4−6−1
目
次
プログラム
2
1.開会の辞
3
前東京大学医科学研究所先端医療研究センター長 浅野茂隆
(現早稲田大学理工学部教授、(財)パブリックヘルスリサーチセンター理事)
2.トランスレーショナルリサーチ(TR)共通倫理審査指針の理念と概要について
京都大学医学部附属病院探索医療センター開発部長
6
清水 章
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
(1)東京大学医科学研究所 先端医療研究センター
12
(2)名古屋大学医学部附属病院 遺伝子・再生医療センター
18
(3)京都大学医学部附属病院 探索医療センター
20
(4)
(財)先端医療振興財団先端医療センター・臨床研究情報センター(神戸市) 24
(5)大阪大学医学部附属病院 未来医療センター
29
(6)九州大学病院 先端医工学診療部・臨床研究センター
31
4.各施設のTR実施状況について
(1)東京大学医科学研究所 先端医療研究センター
36
(2)名古屋大学医学部附属病院 遺伝子・再生医療センター
38
(3)京都大学医学部附属病院 探索医療センター
40
(4)
(財)先端医療振興財団先端医療センター・臨床研究情報センター(神戸市) 44
(5)大阪大学医学部附属病院 未来医療センター
49
(6)九州大学病院
51
先端医工学診療部・臨床研究センター
5.再生医療におけるTR固有の課題と進め方について
京都大学医学部附属病院輸血部・分子細胞治療センター長 前川 平
1
58
第3回トランスレーショナルリサーチ懇話会
トランスレーショナルリサーチ懇話会 プログラム
日
場
時:2004年7月23日(金)13:00∼17:00
所:国立保健医療科学院 大講堂(元国立公衆衛生院)
東京都港区白金台4−6−1
1.開会の辞
前東京大学医科学研究所先端医療研究センター長 浅野茂隆(13:00∼13:05)
(現早稲田大学理工学部教授、(財)パブリックヘルスリサーチセンター理事)
2.トランスレーショナルリサーチ(TR)共通倫理審査指針の理念と概要について
京都大学医学部附属病院探索医療センター開発部 清水 章(13:05∼13:30)
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
(13:30∼14:30)
(1)東京大学医科学研究所 先端医療研究センター
(2)名古屋大学医学部附属病院 遺伝子・再生医療センター
(3)京都大学医学部附属病院 探索医療センター
(4)
(財)先端医療振興財団 先端医療センター・臨床研究情報センター(神戸市)
(5)大阪大学医学部附属病院 未来医療センター
(6)九州大学病院 先端医工学診療部・臨床研究センター
−
休
憩 −
4.各施設のTR実施状況について
(14:45∼15:45)
(1)東京大学医科学研究所 先端医療研究センター
(2)名古屋大学医学部附属病院 遺伝子・再生医療センター
(3)京都大学医学部附属病院 探索医療センター
(4)
(財)先端医療振興財団 先端医療センター・臨床研究情報センター(神戸市)
(5)大阪大学医学部附属病院 未来医療センター
(6)九州大学病院 先端医工学診療部・臨床研究センター
5.再生医療におけるTR固有の課題と進め方について
京都大学医学部附属病院輸血部・分子細胞治療センター 前川
6.総合討論
平(15:45∼16:15)
(16:15∼16:55)
7.閉会の辞
京都大学医学部附属病院探索医療センター検証部 福島雅典(16:55∼17:00)
2
1.開会の辞
開会の
開会の辞
前東京大学医科学研究所先端医療研究センター
前東京大学医科学研究所先端医療研究センター長
センター長 浅野 茂隆
(現早稲田大学理工学部教授
現早稲田大学理工学部教授、(財
(財)パブリックヘルスリサーチセンター理事
パブリックヘルスリサーチセンター理事)
理事)
皆様こんにちは。この 4 月までの 14 年間
席の方もおられますので、プログラムに入
東京大学医科学研究所に勤務しておりまし
る前にまず司会者の立場から簡単にそれを
た早稲田大学理工学術院の浅野です。福島
説明したいと思います。
先生からお話ありましたように、これまで
医学研究における TR の位置付けとその
の経緯から福島先生とともに司会の 1 人を
大学における推進の必要性については
つとめさせて頂きます。よろしくお願いし
2000 年に杉町先生を班長とする文科省研
ます。
究班で見解のまとめられたのが最初です。
本日は、お配りしましたプログラムにあ
それから少し間が空きましたが、それを具
りますように、最初に、前回に議論になり
体的に勧めるために 2001 年には高久先生
ました『トランスレーションリサーチ(TR)
を委員長とする文部科学省ライフサイエン
共通倫理指針』が漸く出来上がりましたの
ス課に『TR 推進のための委員会』が立ち上
で、それに関しましてその理念と概要につ
げられました。ここでは、TR についての定
いて京大の清水教授からご説明があります。 義や進め方にについて委員間で若干の認識
引き続き、各施設の『標準業務手順書の作
の不一致がありましたが、研究者が共有で
成状況』、各施設における『TR の実施状況』
きる産官学の中核的拠点としての TR セン
についてご紹介して頂き、相互認識を高め
ターや TR 支援センターの設立の必要性に
たいと思います。次いで、京大の前川教授
ついては共通の認識が出来たと思っていま
に『再生医療における TR 固有の課題と進
す(2002 年報告書、日本総研)
。しかし、
め方について』というタイトルで総説的ご
それらが‘産官学’、‘中核的’である以上
講演を頂いた後に、TR 遂行における共通の
はこれは特定の大学の枠内だけではやれな
問題点とその解決に向けての総合討論を行
いオールジャパンのものであります。先端
いたいと考えております。討論の主要な課
医療振興財団は神戸ポートピアを、また、
題は研究材料供給センターと考えておりま
パブリックヘルスリサーチセンター財団は
す。配布資料をご確認お願い申し上げます。
わが国で唯一の研究所病院が近接する公衆
有意義な会になりますよう、皆様のご協力
衛生院野跡地利用を活動拠点として視野に
のほどお願い申し上げます。
入れながら、その目標を適正に達成すべく
ところで、この TR 懇話会の発足の経緯
日夜努力しているわけです。しかし、この
についてご存知ない方、本日はじめてご出
頃から多くの大学によって独自にあるいは
3
1.開会の辞
地区ごとに TR 支援のための施設が創設さ
あり方を考えることも緊急に必要なことの
れました。また、これらとは別に、これら
一つです。そんなわけで、今回は福島先生
と関連するものとして文科省研究費として
たちと相談し今回はこれを主題にプログラ
がん TR 評価検討委員会が豊島先生を委員
ムが組まれました。
長として発足しました。これに関しては別
試験製剤といっても細胞製剤とか化学療
に福島先生からご説明もあると思いますの
法剤あるいは DNA 剤とか RNA 剤とか低分
で、私の方からは説明を省きます。
子化合物とか抗体とか、いろんなものがあ
これらの動きはそれなりに地域の活性化
ります。これらを一様に論じることは出来
のためには良いことですが、私たちが当初
ませんので、本日はとくに細胞製剤と遺伝
から危惧していましたように財政と効率に
子治療用ベクター製造・供給のあり方につ
関する問題が皆様もご周知のように少しず
いての討議したいと思います。後者につい
つ表出しつつあります。そこで、それらが
ては各製造施設の中心責任者が集まって先
効率よく動くようにするためにはこれら施
日第 1 回目の会議を開かしていただきまし
設をネットワークで結ぶ必要があろうとい
た。その議事内容については先にお送りし
う考えで結成されたのがこの TR 懇談会で
たとおりですが、施設運営の継続性に不安
す。今回で第3回になりますが、これまで
が出されました。
の経緯から福島先生と私の方でお世話をさ
以上が経緯説明です。
せていただいているわけです。2回会議は
ところで TR は医療発展のために行われ
それぞれ 2002 年 7 月、2003 年 8 月に京大
るのですが、リスクはあってもベネフィッ
で各大学における TR の現状認識を共有す
トはほとんどないわけです。医薬品候補が
るという目的で開かれてました。とくに、
増えるにつれ、何とか国際競争に勝てるこ
第 2 回目では TR 共通倫理指針案の作成が
れまで以上に効率の良い体制を作らなくて
提案承認されました。それで福島先生を中
はならない。わが国よりもはるかに進んだ
心に皆様のご意見を入れながら何度も訂正
医薬品開発体制を有する欧米でさえも TR
されてほぼ完成したのが、今日お手元に『ト
というのは決して安易な仕事ではない。そ
ランスレーションリサーチ(TR)共通倫理
う考えて TR 推進を重視してきました。し
指針』です。この TR 懇談会で討議しなく
かし、社会的な問題は起こすがお金ばかり
てはならないことは合同審査委員会の設立、 掛かって余り実らない、そのために生物製
研究における利益相反、被験者保護、大学
剤をみても分子薬剤をみても申請が減って
における TR と薬事法との関係など多々あ
きているというのが実態でございます。そ
るわけですが、臨床用試験製剤など研究材
こで、
今年の3月に FDA は、TR に加えて、
料供給センター(マテリアルセンター)の
クリティカルパスリサーチ(CPR)という
4
1.開会の辞
概念を適応させてきました(図1)
。一般に、
クリティカルパスとはプロジェクト遂行上
きでお金を出すことになると思います。医
のネットワーク状に連なった複数の作業に
師主導型臨床研究と TR がしばしば同一視
おいて、最も困難で長い作業時間を要する
されことがありますが、それは大きな誤解
経路のことを言いますが、この経路を適正
です。体制の整わない日本では特にそうで
に管理することが出来るか否かがプロジェ
しょう。TR においては医師は協力者であっ
クトの成否を左右するというものです。そ
ても決して主導者ではないわけです。また、
のためには多くの‘人’、‘もの’、‘金’が
大学の研究者は発見者や開発者であっても、
必要です。大学はそれを利用することが出
TR 支援の仕事はとてもやる時間はありま
来てもそれを動かすのは殆どの大学では無
せん。そんな中で必要な異なるプロフェッ
理です。とくに、臨床と基礎が分かれ医学
ショナルを集中させてどのように協力し合
と薬学の連携が欠けて久しい日本では、余
えば共通の目的である医薬品開発を効率よ
程思い切って体制改革をおこなわないと対
く勧められるようになるかを考えることが、
応できません。TR はまさに CRP なわけで
クリティカルパスリサーチであるわけです。
す。要するに TR を動かすためのリサーチ
今日の主題である TR 実施にあたっての共
が必要なんじゃないかということです。TR
同倫理指針と TR 支援のための研究材料供
の段階で安全性、臨床的有用性、企業性の
給センターというのは、そう言った考えを
面からの真剣な検討をそれぞれの候補につ
新たに植えつけ定着させるためになるので
いてしておく必要があります。そうすれば
はと期待しています。
TR に対して資金を出す企業や個人が前向
基礎研究
動物実験
被験者
医療
クリティカルパスリサーチ
クリティカルパスリサーチ
トランスレーショナルリサーチ
ベネフィット
リスク
安全性、
安全性、臨床的有用性、
臨床的有用性、企業性の
企業性の追求
クリティカルパス:
クリティカルパス:プロジェクト遂行上
プロジェクト遂行上の
遂行上のネットワーク状
ネットワーク状に連なった複数
なった複数の
複数の作業におい
作業におい
て、最も困難で
困難で長い作業時間を
作業時間を要する経路
する経路のことを
経路のことを言
のことを言う。この経路
この経路を
経路を適正に
適正に管理する
管理する
ことが出来
ことが出来るか
出来るか否
るか否かがプロジェクト
かがプロジェクトの
プロジェクトの成否を
成否を左右する
左右する
図 1
5
2.トランスレーショナルリサーチ共通倫理審査指針の理念と概要について
京都大学医学部附属病院探索医療センター
京都大学医学部附属病院探索医療センター探索医療開発部長
センター探索医療開発部長 清水 章
今ご紹介いただきました、京大病院探索
ルに到達するのには何が一番効率的かと考
医療センター開発部を担当しております清
えて進まなければいけないものだというこ
水です。本日は、昨年の第 2 回トランスレ
とです。そのためには、結局、基礎の研究
ーショナルリサーチ懇話会の議論の成果で
者・臨床の研究者・一切のデータを扱う生
ある、共通倫理審査指針というものについ
物統計家・薬剤師・研究看護師・データマ
て、その理念と概要を簡単にご説明したい
ネージャー・システムエンジニアなどと共
と思います。
に最終的にこういうものを効率良く進める
まず今浅野先生の方で、TR というのは共
ためのシステムを構築して、今は IT の時代
通認識になっているという前提でお進めい
ですからそれをより効率良く進めるという
ただきましたが、今日参加していただいた
ことが不可欠なわけです。つまり、こうい
方には初めての方もおられると思いますの
った形のチームをつくって事業として進め
で、まずトランスレーショナルリサーチと
ていかなければいけないというわけです。
いうものを我々はどう捉えているかという
そして、まず基礎実験と臨床の研究、あ
ことについての認識を再確認したいと思い
るいは臨床試験というものの間には大きな
ます。
ギャップがあります。それは究極につめて
まず、トランスレーショナルリサーチと
考えれば、どちらも生物を扱って、ある介
いうのは単に研究として研究者が思いつき
入をして、その結果を取り出すわけですか
で、これはいいんじゃないか、というよう
ら、基本的な原理は同じはずなのですが、
なことでやるものとは違うということをま
基礎研究では必ず成果、結果を黒か白か出
ず確認したいと思います。まず患者さんに
す事が目的でありますし、その真理の探求
対して、診断・治療・予防などの改善や向
ということを目的としているわけですから、
上を目指して開発を進めるということが大
まず条件を決めて最終的に結果を出すとい
前提であります。最終的には、今クリティ
うことです。実例を 1 つ挙げますと、要す
カルパスの話が出ましたけれども、最終的
るに条件を付与する。例えば 1 つの遺伝子
にはこれを標準治療として、患者さんの元
を、私が行った研究であれば、こういう制
へ届けるということが究極のゴールであり
限因子を 1 つ破壊してみると。それでそれ
ますから、ひょっとしたらこれが効くので
を実際に実験対象で行うと。この場合には
はないか、とか、目の前に患者さんがいる
遺伝的な背景を統一し SPF の環境で飼育し
からとりあえずやってみようというような
てという誰がやっても同じ結果が生まれる
ことで進めるものではなく、最終的にゴー
はずのことをする訳です。結果として、確
6
2.トランスレーショナルリサーチ共通倫理審査指針の理念と概要について
定的な出力として IgE の産生があがると
れはプロフィットになるかどうかという事
いうようなことを見出す事できるわけです。 が必ずしも期待できないケースもあるとい
が、実際にこれをこういった成果を基に医
う事でありますので、十分に本当にそれで
療に結び付けようとすると、どうしても臨
いいかどうかという科学的根拠とそれに基
床医学における論理というものに変えてい
づいた、研究者側だけではなくて実際に対
かなければならない。臨床医学においては
象となる患者さんにおいても、この意思決
対象は患者さんでありますし、その人にと
定というプロセスを経なければいけないと
ってはその結果どうなるかというのは一生
いうことです。
の問題になるわけですから、どれだけの確
そうなると、実際に正しくこれが評価さ
率で、この治療法についてある確率的な意
れる為には、一例ずつ積み重ねてというよ
味での入力を行うと。ここでは例えばパー
うなアプローチで、パイロット的にこれは
キンソンなどの病気に胎児の脳組織を入れ
やってみたけどああだった、ということで
たら効くのではないかということですが、
は決して結果は出ないということになりま
この胎児脳というのは必ずしも均一なもの
す。つまり、いくら積み重ねても最終的な
ではありませんし、そのときの条件は必ず
結論に達しないということです。今申し上
しも全てがコントロールできるのではない
げたように、確率的なデータに基づいて意
わけです。これを患者さんに行なうとなる
思決定のプロセスを明示して実施するとい
と、外部要因として当然パーキンソン病な
う周到にデザインされた計画、すなわちプ
どの疾患をもっているということが前提に
ロトコルがなければいけないということに
なりますが、その他の要因というのはこち
なります。
らでコントロール出来るものではありませ
先程、何を審査するのかという話が出て
ん。それが確率的にこういったことをした
きましたが、基本的にはこの実施計画、臨
時にどの程度の確率でどういう出力が出て
床試験の実施計画がきちっと作られている
くるかということになります。ところが患
かどうかということを審査しなければいけ
者さんにとってみれば、この治療がうまく
ないということです。1 つ 1 つを実験計画、
いくかいかないかというのは All or No で
試験計画の度にきちんと審査するというこ
ありまして、これはこういう確率でこうい
とになります。ですから、この薬が漠然と
うことがあるということで、受けるかどう
何に効きそうだということではなくて、実
かという意志決定をして頂かなければいけ
際どういう対象に対してどういうやり方で
ないということになります。特に TR の場
行って、どういう評価をするかということ
合には、この過程がこうなるかどうかとい
を含めた審査が必要だということです。ト
う事を必ずしも予測できない、あるいはこ
ランスレーショナルリサーチとしてやるか
7
2.トランスレーショナルリサーチ共通倫理審査指針の理念と概要について
らには、これがその時点で考えられる標準
うわけです。さらに、今浅野先生もおっし
治療、State of the Art に達しているという
ゃいましたが、これを受けてくださる方と
ことがあって、さらに、研究として行うの
いうのは、ある意味ベネフィットがあるか
ではなくて、その疾患に対して 1 つの選択
どうかわからない状態で善意で協力してい
肢としてそれが妥当であるかどうかという
ただいてるということになりますので、万
ことは大事でありますし、その安全性と臨
が一のこと、要するに起こり得ることはす
床効果について、効くか効かないかは別と
べて想定した実験計画を、試験計画を立て
して一定のデータを取っている、一定のデ
なければいけないわけですが、それがあっ
ータが得られるような形でやらなければい
たとしても不慮のことというものは起こり
くら繰り返してもゴールに到達しないとい
得るので、何が起こってもいいような万全
うことになります。ですからきちっとした
な医療体制を整えた上で行わなければいけ
生物統計家に、デザインからきちっとコン
ないという事になります。
サルトして行わなければならない。要する
以上のような共通認識、どの範囲がトラ
に、データが出てからそれを解析するのが
ンスレーショナルリサーチになるかという
統計家の役目ではなくて、試験デザインを
ようなことに関しても、今、浅野先生から
作ること自体、このデザインが統計的な観
お話がありましたが、そういった共通認識
点から正しいかどうかということを十分相
について前回・前々回のこの懇話会で、6
談しながら行わなければならないというこ
つの施設、日本においてこのトランスレー
とになります。もちろん科学的な基盤がな
ショナルリサーチを進めようとしている 6
ければいけない、つまり前臨床試験その他
つの施設の合意を得ました。つまり、この
で、これを行うことについてサイエンティ
倫理指針、倫理審査指針ですね、実際に治
ックにきちっと根拠があるんだというラシ
験とか企業、スポンサーの治験であるとか、
ョナーレがつかなければいけないというこ
それから薬事法の改正で医師主導型の治験
とです。さらに、これが社会的に公式に認
というものまで出来ましたけれども、この
められるようなものでなければいけないと。 2 つは公的な、要するに厚労省主導のきち
結果が良ければ全ていいかということでは
んとした審査があるわけです。それに行く
ありませんので、きちっとそのやり方が社
前のいわゆる臨床研究に関しては、倫理指
会的な観点から見て認められる形のものに
針というものがあるだけで法律的な縛りが
しなければいけない。ということは、倫理
ないわけです。ないから何をやってもいい
審査に関しても高い水準の、しかもその試
かというと決してそういうことではなくて、
験計画毎に、それが妥当かどうかというこ
いい加減で進めてそれが後で大きな社会的
とをきちっと評価しなければいけないとい
批判を受けるようなことになれば、トラン
8
2.トランスレーショナルリサーチ共通倫理審査指針の理念と概要について
スレーショナルリサーチそのものが成立し
提出しなければいけないか、ということを
なくなるということになります。ですので、
どういう形で合意したかといいますと、ま
その倫理指針に基づいて具体的にはどうや
ず試験薬あるいは試験製品について、これ
って審査をするべきなのかということの倫
は今浅野先生からご説明があったように科
理審査指針を策定することに致しました。
学的なドラッグであろうが、あるいはそれ
その後、ここにおられる本センターの福島
がバイオロジカルのプロダクトであろうが、
教授、手良向先生、それからこの 6 つの施
あるいはデバイスであろうが、薬あるいは
設のそれぞれの担当者の方に協力していた
製品として、それを適用しようとしてるわ
だいて、1 月に初版を、2 月・3 月と改訂を
けですから、その概要書、どういうもので
しまして、最終的に今年の 4 月 1 日からこ
あるか、いかに根拠があるか、いかに安全
の倫理審査指針を発行させたということで
であるかという事に関する概要書を必ず作
ございます。
らなければいけない。これはその適用しよ
今日の資料の中にこの倫理指針の別刷り
うとする薬なりデバイスなりについて 1 つ
が入れてございますので詳細はそれを見て
作ればいいということになります。それか
頂きたいのですが、その中に私どもが考え
ら、実際にどういう試験計画をしているか
ているトランスレーショナルリサーチとい
というプロトコル、これが極めて重要な審
うものの定義および位置付け、それからト
査対象になるわけです。さらに、実際に協
ランスレーショナルリサーチに参加する研
力して頂く被験者に対する説明文書、同意
究者の研究倫理として、こういうものが求
文書というものが具体的にきちっと作られ
められているということも書いてございま
ていなければいけない。さらに重篤な有害
すので、きちっとした審査の水準を確保し
事象が発生した時にどう対応するかという
なければいけないということも読んでいた
ことを、想定できる限りその対応をマニュ
だけると思います。具体的にどうするかと
アル化したものを添えなければいけないと
いうことについては、ここに標準手順が示
いうことになります。いちいち書き出して
されております。
いると大変なので、これは実際に読んでい
今日は、その概要ということでございま
ただくことに致しまして、概要書というの
すのでごく簡単に、この 2 番目 3 番目です
は、要するにどういう性質のものであって、
ね、どういう物を整えなければいけないか
どういう作用安全性が確保できるか、それ
と、それからどういう手順で審査しなけれ
から非臨床試験での成績はどうだと、それ
ばいけないかということについてかいつま
から、もし先行的な臨床研究があるとすれ
んでご説明いたします。
ばそれはどういう成績であったかというよ
実際に倫理審査委員会へどういう書類を
うなことです。それからデータ及びこれの
9
2.トランスレーショナルリサーチ共通倫理審査指針の理念と概要について
責任、そしてこの治療費、失礼しました、
純に書いたものではなくて、詳細に具体的
試験を実際に行っていただく試験担当医師
にきちっと書き込まれたものでなければい
に対するガイダンスですね、こういう事を
けないということであります。さらに項目
注意してやってくださいというようなこと
が多くなる、だんだん項目が多くなって字
は書かれていなければいけないということ
がどんどん小さくなっていますが、実際協
であります。ここに挙げているのは代表的
力してくださる被験者に対する説明同意と
なものでありますが、これは製品が薬であ
いうのをどういう形でするのかということ
るのか、ドラッグであるのか、生物製剤で
も含めてちゃんと審査しなければいけない
あるのか、あるいはそれがデバイスである
という事になります。どういう目的でどう
のかということによってそれぞれ内容は変
いう研究をするのかと、どういうベネフィ
わってくるということになります。ここに
ットが期待できるのか、あるいはどういう
挙げているのは代表的なその試験薬のよう
デメリットがあり得るのかと。この文章に
なものが挙がっていますが、これはそのケ
おいて過度な利益誘導あるいは非常によく
ース・バイ・ケースで必要なものが変わっ
効くというようなことだけ書いてあるとか、
てくるということになります。さらに臨床
そういうことがないようにしなければいけ
実験計画書ですがこれは、要するにプロト
ませんし、読んで頂ければそれほど難しい
コル、具体的にどういう対象疾患、どうい
ことを書いてあるわけではないと思います。
うエリジビリティー
クライテリアすなわ
ここで今回私が独断で赤字にしたところで
ち、患者さんあるいは被験者をどうやって
すね、これは、結局どうしてもこういう研
選ぶかという適格基準、それから除外基準、
究を進めるためには研究費を獲得しなけれ
そしてその他ここに挙げているように大事
ばいけませんし、費用が必要なわけです。
なのはエンドポイントですね。何をエンド
そういったものが、どこから出ているかと
ポイントとしてどういう数のデータをどれ
いうようなことに対する記載です。それか
だけ取るか、データマネジメントをどうす
らこの実際の試験にタッチする、主に実際
るのか、もし何か起こった時にどういう基
に携わる医師あるいはそのデータを解析す
準でこれを中止、あるいは終了するのかと
るような人達というものがですね、その研
いうような詳細についてきちっと決められ
究費の出所とどういう関係にあるかと。こ
ていなければいけないということです。殆
れは一見試験と全く関係ないように思われ
どのものはここに挙げられているとおり、
るかもしれませんが、これは知財のことも
順に作っていけばそれほど難しいものでは
含めて非常に重要な経済的意味を持ってお
ありませんが、いわゆる科研費の応募のよ
りまして、これをないがしろにすると具体
うな、何をやってどうこうということを単
的にどういうことになるかというと、A と
10
2.トランスレーショナルリサーチ共通倫理審査指針の理念と概要について
いうスポンサーである会社からお金を貰っ
確にした上で説明しなければいけないとか
ているとすると、A という会社に対して不
ですね、そういったことが決められており
利なデータが出そうになった時にごまかす
ます。こういったものをですね、倫理審査
のではないかとか、不利なデータを省くの
の、いわゆる倫理委員会に提出して審査を
ではないかとか、そういうような誤解を招
していただくということになります。倫理
きかねないということであります。それか
委員会側には、ちゃんと必要なものが揃っ
ら極端なケースでは、その A 社の株を持っ
ているかどうかということから始まって、
ているというようなことがあると、効きそ
このような手順できちっと審査をして頂く
うだというデータを先に知り得る立場にあ
ということになります。そのためには、倫
るわけですから、効きそうだということに
理委員会側にも、こういったことに対する
なるとその株を買うかもしれないし、効か
理解を深めていただいて、きちっとした倫
ないという事は株が暴落する危険性があり
理審査ができるという体制を整えていただ
ますから先に売ってしまうとかですね、い
く必要があるかと思います。
わゆるインサイダー取引が生じる可能性が
以上極めてかいつまんだお話でありまし
ありますので、こういったことについて、
たけれども、昨年この会で合意して作られ
そういう利害関係、経済的な利害関係があ
た共通倫理指針に関して、その理念と概要
るかどうかということについてきちっとし
をご説明させていただきました。
た記載をしなければいけないといういうこ
とがここに書いてあります。ただ、そうい
ったことを読み取れるかどうかという表現
ではないので、ここのところはもう少し具
体的に改訂する必要があるかもしれません。
さらに最後は、重篤な有害事象が発生した
時にどう対応するか、どういったものを重
篤な有害事象とするのかというようなこと
です。治験であれば治験保険とかそういう
形で補償ということが決められていますが、
TR に関してはそういった保険製品もまだ
ありませんし、具体的にどうするかと。な
いなら「ない」と書かなければいけないし、
補償があるとすればその補償はどういう範
囲のものであるかということをきちっと明
11
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
(1) 東京大学医科学研究所
東京大学医科学研究所
東京大学医科学研究所医療安全管理部 副部長 長村 文孝
東大医科学研究所医療安全管理部の長村
は全ての臨床研究の窓口として医療安全管
と申します。一般に医療安全管理部といい
理部の機能を強化して全ての審査に対応で
ますと医療事故等のリスクマネージメント
きる SOP を作成している最中です。すなわ
を行う部ですが、医科研の場合にはトラン
ち、必ずどこかの審査委員会で審査され、
スレーショナルリサーチ(TR)を始めとし
遺漏のないようにしたい。例えば薬に分類
た院内臨床研究の支援管理業務を行う目的
される臨床試験は治験審査委員会で審査さ
で設立されております。本日は標準業務手
れますが、その試験が遺伝子発現や SNPs
順書(SOP)のうち IRB 関連、各臨床試験、
の解析を含む場合には、その部分を担当す
TR における細胞等の調整作成時ならびに
る審査委員会は倫理委員会となっています
細胞調整やベクター作成を行う施設である
ので、うまく機能分担をしなくてはなりま
臨床細胞工学室・治療ベクター開発室、そ
せん。このように複数にまたがる臨床試験
して最後にプロトコル評価、施行時、モニ
も適切に対応できるものを作成することが
タリング等の支援管理業務という四つに分
課題です。先程、TR の共通倫理指針の話が
けて報告いたします。
出ましたが、このように新たに定められた
まず IRB ですが、当院の治験審査委員会
ガイドラインや、法規制の改正に対して迅
は平成 10 年 4 月に新 GCP を受けて東京大
速に対応をする事も課題です。
次に各 TR での SOP です。医科研では腎
学医科学研究所付属病院治験業務手順書が
作成され、これに基づいて運営されていま
癌に対する GM-CSF 遺伝子導入による免
す。この中で TR への対応としては、
「規程」
疫療法を施行いたしましたが、この時に細
の「承認手続きを管轄する医薬品の使用等
胞調整や遺伝子導入のための SOPが初め
の範囲」と言う条項の中で「新治療法のう
て作成されました。そして甲状腺癌に対す
ち、GCP に基づく取り扱い手順を実践する
る樹状細胞療法、これは 2002 年の 6 月に
ことが妥当であると病院長が判断するも
承認されましたが、この時以来、細胞調整
の」と言う文章を追加して対応を可能にし
時の SOP の作成を義務づけております。そ
ています。ただ、TR は様々な治療概念が入
の目的としましては被験者に投与するに足
ってきますし、高度な倫理性を要求される
る QC/QA を保つためには SOP の作成と遵
場合もありますので、この治験審査委員会
守を徹底する必要があるからです。SOP は
だけではカバーしきれず、倫理審査委員会
各工程でのチェックと日付、署名捺印によ
とその下部組織である倫理予備委員会、そ
りましてレトロスペクティブに問題点の解
して遺伝子治療臨床研究審査委員会、これ
明が可能なタイプにしなくてはなりません。
らの審査委員会が設立されています。現在
また、この後で触れますが、各臨床試験に
12
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
おいて使用する細胞やベクターは、それら
ISO9001・2000 へと認証を更新しておりま
を調整するための施設の状況と関連した
す。この ISO は、臨床細胞工学室で行って
SOP でなくてはなりません。そして SOP
いる臍帯血採取から移植施設に行くまでの
は勿論 IRB での審査対象でありまして、改
間の分離・処理・保存を対象としています。
訂版においても審査対象となっております。 各臍帯血バンク共通のガイドラインとして
次に TR を行うための施設としての SOP
日本臍帯血バンクネットワークの指針やそ
ですが、もちろん GMP 要求基準達成とい
の他がありますが、それとは別に施設とし
うために必要です。しかし、GMP の規定に
て、文章システムの構成をピラミッド型に
は責任の所在や連絡方法あるいは、文書管
形成し、頂点、すなわち最上層に ISO の要
理等の規定が実際問題として不明瞭だとい
求基準を臍帯血細胞の処理施設内状況に置
う指摘もあります。医科研内には臨床細胞
き換えて配置しています。次の階層に「SOP
工学室と治療ベクター開発室の 2 つが TR
の運営手順や基準等」を置き、その下に「手
のための被検製剤調整のための施設として
順書の整備」を置き、そして更にその下に
整備されていますが、臨床細胞工学室はク
「フォーム」と「外部文書」を構成してい
リーンルーム、P3 レベルのバイオバイオハ
ます。
次に治療ベクター開発室の SOP です。
ザードルームを備えてセルプロセッシン
グ・輸血部と細胞プロセッシング研究部の
2001 年 8 月に治療ベクター開発室が開室さ
両者で運営されています。ですから樹状細
れていす。その翌月には SOP の作成を開始
胞の作成というような場合には臨床細胞工
し、2002 年 7 月には施設のバリデーション
学室を使用しております。治療ベクター開
を開始し、以後、毎年行なわれております。
発室は日本初の臨床用ベクター作成可能施
2002 年 8 月には ISO の 9001・2000 を取
設として、ベクターユニット、セルユニッ
得し、その認証範囲は細胞および遺伝子治
トを備えておりまして外科・臓器細胞工学
療の製品の開発と生産となっています。
分野を主体として運営されています。臨床
2003 年 12 月には FDA のコンサルタント
細胞工学室での SOP ですが、ここは細胞プ
による査察も受けております。これが治療
ロセッシング研究分野が東京臍帯血バンク
ベクター開発室の SOPの目次と表紙です。
の分離・保存施設としても使用しておりま
ここでは SOP のインデックスを体系化し、
すので、そのために使用している SOP を施
施設関係から始まり外部使用者関係までの
設としての SOP として改訂したものを使
目次となっています。「GMP グレードのベ
用しています。GMP 要求基準を達成するた
クター開発に必須なレベル別の文書体系」
めの文書管理手法とて東京臍帯血バンクは
としてベクター開発室としては ABC と分
品質保証体制の国際規格である ISO9000
けたこのような構築を取っており、レベル
シリーズを活用しており、2001 年 3 月に
A が品質マニュアル、レベル B が管理運営
ISO9002:1994 を取得し、2003 年 4 月に
ガイドライン、レベルCが標準作業手順書、
13
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
レベル D が品質記録となっています。この
書という形ではありません。その後 2001
ISO に関連した文書管理ですが、これらの
年 4 月に医療安全管理部が発足し、同年 9
文書量は膨大になります。臨床細胞工学
月には院内臨床研究ガイドラインを作成し
室・東京臍帯血バンクのファイルと治療ベ
院内の承認を受けています。これは基本的
クター開発室のファイルの写真を示します。 の SOP 形式です。2002 年 1 月には院内臨
ファイル量に違いがありますが、ベクター
床研究終了時モニタリングのための手引き
開発室は下段の撮影はちょっと勘弁してく
と報告のためのテンプレート作成していま
れということでしたので一段だけ撮りまし
す。最後に医療安全管理部として今後の課
たが、この一段を SOP が占めています。臨
題です。SOP は教科書ではありませんので、
床細胞工学室はこの 2 段目のうちの大部分
どの程度の経験や知識を有する者を対象に
を SOP が占めていますが、その他にも分離
作成するのかということに困難が生じます。
作業以外の手順や機器の取り扱い等のマニ
どこの施設も同様だと思いますが SOP を
ュアルがありますので、SOP 全体としては
活用できうる人、活用して実際に生かして
これだけの量になっています。これが文書
もらう人材、そのような方が不足していて、
管理の一例です。次にマニュアル管理台帳
個人商店的な活動からもう少し大きくして
を示します。マニュアルの版をこのように
いきたいがなかなかうまくいかない。そう
記載し、複写がどのようになされた、それ
いう人材の不足。それと多様化する治療概
らの取り扱いをどのようにしたか、という
念への対応です。全く新たな治療概念に基
事項を必ず記録しなければいけません。こ
づく治療方法に関しては公的な規制やガイ
ちらが是正措置の記録書ですが、医療事故
ドラインが整備されてないと施設内のみで
などのインシデント、アクシデント報告と
の対応は難しい。このような会ですので皆
同じように、その施設内で何か発生した場
様との連携という観点考えますと、臨床試
合には必ずその事象と対処、責任者の対応
験に関する活動は少人数ですし、また施設
等を文書にさなくてはなりません。このよ
内だけでの対応が急激に困難になっており
うにして施設としての品質を高め、それが
ますので、他施設との連携の必要性を感じ
維持していくことに役立っています。
ます。例えば、私はガンが得意、私は他の
次に医療安全管理部の SOP への取り組
再生が得意とかそういう方が各施設にいら
みですが、2001 年の初頭に院内の臨床研究
っしゃると思いますので、そのような人た
の研究実施計画書(プロトコル)の IRB 前
ちと連携をとりながら体制を作っていくと
のプレレビューを開始しています。主に第
いう事が必要ではないかと考えております。
Ⅰ相試験を対象としたテンプレートとチェ
以上です。
ックリストを、以前私が個人的に使用した
ものを和訳し、日本の実情に合わせて手直
したものを作成していますが、これは手順
14
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
標準業務手順書(SOP)の現況
東大・医科研における
標準業務手順書の整備・作成情況
• IRB
• 各臨床試験(TR)における細胞等の調整・
作成時
• 細胞調整やベクター作成を行う施設: 臨床細胞工学室、治療ベクター開発室
• プロトコール評価、施行時、モニタリングな
どの支援・監視業務
東大・
東大・医科研・
医科研・医療安全管理部 医療安全管理部 長村 長村 文孝
1
2
IRBでの現況
IRBでのSOP
• 治験審査委員会:平成10年4月より東京大
学医科学研究所附属病院治験業務手順書
が施行
• 規定 承認手続きを管轄する医薬品の使用
等の範囲:「新治療法その他のうち、GCPに
基づく取り扱い手順を履践することが妥当で
あると病院長が判断するもの」を追加、TRへ
の対応を可能に
• 治験審査委員会、倫理審査委員会(倫理予
備委員会)、遺伝子治療臨床研究審査委員
会の3審査委員会により、遺伝子解析や遺伝
子治療、高度先進性の治療までを網羅
• 全ての臨床研究の窓口としての医療安全管
理部が助言や振り分けの入り口としての機能
を有し、また、把握を行う。
• 新規ガイドラインや法規改正への迅速な対応
3
4
各臨床試験(TR)でのSOP
各臨床試験(TR)でのSOP
• 「腎癌に対するGM-CSF遺伝子導入による免
疫療法」にて細胞調整・遺伝子導入のための
SOPが作成された
• 甲状腺がんに対する樹状細胞療法(2002.6 承認)より、細胞調整時のSOPの作成が義務
化された
• 被験者に投与するに足るQC/QAを保つため
にSOPは不可欠
• 各工程でのチェックと日付、署名・捺印によ
り、retrospectiveに問題点の解明が可能に
• 後述の調整施設のSOPとの関連
• IRBでの審査対象であり、改訂も審査対象
5
6
15
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
TRのための施設でのSOP
臨床細胞工学室でのSOP
• 細胞プロセッシング研究部門が東京臍帯血
バンクの分離・保存施設としても使用中
• ISO9000シリーズは品質保証体制の国際
規格。 2001.3 東京臍帯血バンクとしてのISO9002:
1994取得、 2003.4 ISO9001:2000へ認証更新
• GMP requirement達成に必要
• 臨床細胞工学室:クリーンルーム、バイオハザー
ドルーム(P3)を備え、セルプロセッシング・輸
血部と細胞プロセッシング研究部門で運営さ
れている。 e.g. 樹状細胞作成
• 治療ベクター開発室:日本初の臨床用ベクター
作成可能施設としてベクターユニット、セルユ
ニットを備え、外科・臓器細胞工学分野と共に
運営されている。
8
7
東京臍帯血バンク
バンクの
品質システム
東京臍帯血
バンク
の品質基準と
品質基準と品質
システム
治療ベクター開発室でのSOP
ISO 9001 9001 Document system
QM
(Quality
Manual)
臍帯血採取
ISO要求事項を臍帯血細胞処理施
設内状況に置換えて構築
GP
(General Procedure)
搬送
SOP (Standard Operation
Procedure)
Forms
(様式)
受領
2001.8 治療ベクター開発室開設
2001.9 SOP作成開始
2002.7 施設バリデーション開始(以後毎年)
2002.8 ISO 9001: 2000取得 認証範囲「細
胞および遺伝子治療の製品の開発と生産 」
• 2003.12 米国FDAコンサルタントによる査察
•
•
•
•
SOP運営手順や基準書等
手順書の整備
External Documents
(外部文書)
Standard
Japan Cord Blood Bank
Network
臍帯血移植の
臍帯血移植の技術指針
臍帯血移植実施基準書
分離・処理・保存
臍帯血衛生管理基準書
臍帯血採取基準書
臍帯血調製保存管理基準書
出庫
臍帯血品質管理基準書
移植施設
臍帯血バンク
臍帯血バンクの
バンクの運営ガイドライン
運営ガイドライン
FAHCT/NETCORD
10
9
GMPグレードのベクター開発に必須な
レベル別文書体系
治療ベクター開発室でのSOP
SOP Index
•
•
•
•
•
•
•
レベル A 品質マニュアル
品質マニュアル
品質目標の
の展開を
(品質方針/
品質方針/品質目標
展開を含む)
1000~ 施設関係
2000~ 施設内物品・機器関係
3000~ 試薬関係
4000~ ベクター・細胞関係
5000~ 検査関係
6000~ 品質管理関係
7000~ 外部使用者関係
管理運営ガイドライン
レベル B 管理運営ガイドライン
レベル C 標準作業手順書(
)
標準作業手順書(SOP)
A
B
C
D
品質記録
レベル D ・
・作業環境監視記録
・
・作業記録
・
機器の
の稼動および
・機器
稼動および点検記録
および点検記録 点検記録 ほか
12
11
16
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
文書管理
文書管理
治療ベクター開発室
臨床細胞工学室・東京臍帯血バンク
マニュアル管理台帳
是正処理記録書
14
13
医療安全管理部のSOPへの取り組み
• 2001初頭 院内臨床研究研究計画書(プロトコール
プレレビュー開始:第一相試験を主眼とし、FDAで
使用していた報告書からテンプレート、チェックリス
トを作成し、対応
• 2001.7 医療安全管理部発足
• 2001.9 院内臨床研究ガイドライン(一部手順書形
式)作成・承認
• 2002.1 院内臨床研究終了時モニタリングのための
手引き、テンプレート作成
15
17
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
(2) 名古屋大学医学部附属病院
名古屋大学医学部附属病院遺伝子・
名古屋大学医学部附属病院遺伝子・再生医療センター
再生医療センター長
センター長 吉田 純
ご紹介頂きました名古屋大学の遺伝子・
の調製が可能になっています。最終生産物
再生医療センターのセンター長の吉田です。 は GMP の品質保証をしておりますが、当
私どもは 2000 年から遺伝子治療臨床研究
初は液剤でありまして、長期に保存するこ
を実施しております。実施に当たりまして
とができず、その調製は困難を極めました。
いろんな観点から学内の整備を進めてきま
その後、DNA/リポソーム製剤の凍結乾燥
したが、本日は、その 1 つである SOP 作成
化技術の開発に成功し、1度に大量に調製
の経験について簡単にご紹介したいと思い
し、長期に保存することができるようにな
ます。
りました。そして、この一連の作業工程を
私どもはいろいろな探索医療を進めてお
SOP にまとめ、GMP に準拠する体制を作
りますが、先端医療開発のための SOP の作
り上げました。SOP の詳細について、ここ
成及びその整備を本格的に始めたのは、
ではお話できませんが、総括基準から始ま
DNA/リポソームを用いた遺伝子治療の
りまして製造、衛生管理、製造管理、品質
実施を計画してからです。この遺伝子治療
管理、バリデーション、危機管理、その他
の実施にあたり、まず始めに求められたの
の手順書等が作成され、厚さにすればこの
が、インターフェロンーベータを発現する
ぐらいになるでしょうか。この SOP をもと
遺伝子を包埋したリポソーム(DNA/リポ
に製剤を調製しますが、調製された製剤の
ソーム)の「製剤化」でした。当初、DNA
品質保証は、第三者機関に送付し、評価い
/リポソームの製剤化は、製薬企業とのコ
ただいております。その評価結果を、大学
ラボレーションの中で進めいていくことを
の中に設置された遺伝子治療臨床研究審査
考えていましたが、国との折衝の中で、そ
委員会内の製剤検証部会という部会で再度
の方向性を打ち出すことがむずかしいとわ
検討し、患者さんに投与されることになり
かりましたので、5、6 年ほど前から大学病
ます。一方、患者さんの選択などに関して
院 の 中 に 、 い わ ゆ る GMP ( Good
は、安全・効果評価・適応判定部会で行わ
Manufacturing Practice)に準拠した製剤
れ、対象となった患者さんが本当にその適
調製施設を整備し、大学病院内で臨床研究
応に合致しているかどうかを審議いただき、
薬を調製する方向に進路変更しました。整
さらにその部会の親委員会である遺伝子治
備した遺伝子治療製剤調製室は、WHO グ
療臨床研究審査委員会で承認を得て、遺伝
レード C、清浄度クラス 1,000 の施設で、
子・再生医療センターで実施されることに
プラスミド製剤と DNA/リポソーム製剤
なっています。また、病院内には、解析支
18
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
援施設として遺伝子治療支援研究室があり
うまく行かないということで、どうも医師
まして、この中で、治療の安全性や遺伝子
主導型から臨床研究にまた移るというよう
発現などの評価を行うのに必要なデータを
な方向で検討されています。いろいろな問
作り上げます。このように私どもはトラン
題があるものですから、この医師主導型臨
スレーショナルリサーチセンター機能を持
床治験は今のままではなかなか前に進まな
った最小単位を大学病院内に整備しており、 いのではないかと思っております。
先端医療開発を積極的に推し進めています。
また、他の施設に製剤を送るということ
実際、このシステムを使った臨床研究とし
に関しても SOP を作っています。送付に関
ては、これまでに悪性脳腫瘍に対する遺伝
する手順書の中には、ラベルの作成の方法
子治療臨床研究の 5 例がありますが、うち
や、送った相手側で製剤の生物活性が確実
2 例で有効性の確認ができました。これを
に維持されているかどうかをチェックする
受けまして名古屋大学ではこの製剤調製室
検証方法などを含め、詳細な事項が定義さ
を基に他施設共同研究を進めようというこ
れています。
とになり、現在、信州大学と共同しまして、
以上 SOP に関してはその代表例を示さ
悪性黒色腫に対する遺伝子治療臨床研究を
せていただきましたが、もう少し詳しいこ
実施しています。この遺伝子治療臨床研究
とは次のセッションのところで、またお話
では、名古屋大学で調製した製剤を他の施
しさせて頂きたいと思います。以上です。
設に提供して臨床研究を実施するといった
新しい研究スタイルを提案しています。実
施に至るまでにはかなり時間がかかりまし
たが、厚生労働省を始めとする関係省庁の
承認も本年1月に得られ、これまでに 3 例
の臨床研究が終わっております。続いて京
都府立医科大学でも腎癌に対する遺伝子治
療臨床研究を、同様のスタイルで進めてい
きたいと思っています。また、DNA/リポ
ソーム製剤だけでなく、プラスミド DNA
製剤についても他の施設と共同でこれを推
し進めています。札幌医科大学との共同研
究では、当初、厚生労働省からは医師主導
型臨床治験で進めるようとのお話もありま
したが、医師主導型臨床治験ではなかなか
19
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
(3) 京都大学医学部附属病院
京都大学医学部附属病院探索医療センター
京都大学医学部附属病院探索医療センター探索医療検証部
センター探索医療検証部 助手 手良向 聡
京大病院の手良向と申します。主に臨床
礎研究から、モノが出てくるわけです。プ
試験に関する SOP についてお話したいと
ロジェクトリーダーがプロトコル委員会を
思います。
組織して、そこには探索医療センターの 3
まず SOP とは何かということですが、
部門(開発部、検証部、臨床部)から、医
種々の標準業務手順書を作成しなければな
療開発管理部という部門も係りますけれど
らないと改正 GCP 省令には書いてありま
も、各専門家、データマネジャーや、臨床
す。
「手順書とは、治験に係る業務が恒常的
部のクリニカルリサーチコーディネーター、
に適正に実施されるよう標準的な手順を定
診療科から先生方に委員になっていただき、
めた文書」と書かれています。これに従い
プロトコルを作成するという手順です。
まして、臨床試験を行う上では SOP を作る
次に重篤な有害事象の報告につきまして
必要があるということで、我々が現在まで
は、先ほどのプロジェクトリーダー、通常
に作りました SOP を紹介します。まず実施
その先生が主任研究者になるわけですけど
準備に係る SOP に関してはプロジェクト
も、その先生と試験責任医師は独立してい
略名・実施計画書のコード、次に重要なの
まして、その間での連絡のやり取りをこの
はプロトコル委員会、これは審査委員会で
SOP に記載したわけです。さらに独立デー
はなく、プロトコルを作成する委員会です。
タモニタリング委員会という、その試験ご
倫理審査委員会はもちろん大学にある訳で
とに設置される委員会を作って、独立した
すけども、その倫理審査委員会に提出する
評価を行うという仕組みを作っています。
ためにプロトコルを作成する委員会を探索
さらに質管理とか統計解析に関する SOP
医療センターの中に設置しました。次に臨
も既にできていまして、これら 4 つの SOP
床研究実施計画書(プロトコル)の作成と
を既に作成して実際にこれで動いておりま
改訂、説明文書・同意文書、試験薬/試験
す。その中で特に統計解析につきまして、
製品概要書の作成、このような SOP を最初
治験の場合はすでに当たり前ですけども医
に準備しました。次に実施中で最も重要な
師主導の臨床試験ではまだ不十分と思いま
SOP として、重篤な有害事象の報告・対応
すが、とにかく統計解析というのはプロト
の SOP を作成しました。
コルに全て事前に明記して、どういう解析
特にこの中で 2 つだけ紹介します。1 つ
を行うということ、エンドポイントは当然
はプロトコル委員会ですけども、開発部の
ですけども、全て明記しておかなければい
中にプロジェクトがあります。そこでの基
けないということです。我々は統計解析計
20
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
画書というのをプロトコルとは別の文書と
ます。実際にはそういうことは非常に難し
して、詳細に全ての解析手法を書きまして、
いと思います。同じ病院の中で実施してい
試験開始前に承認をもらっておきます。最
るわけですし、モニタリング担当者はプロ
終的な結果に対して、事前に計画していた
トコル委員会のメンバーになっていますし、
かどうかというのが非常に重要でありまし
ある程度その試験のことを知らないとモニ
て、いわゆる後知恵解析といわれますけれ
タリングを実際にはできないと思います。
ども、後からたまたま見つかった結果では
治験を実施するためのさらに大きな障害は、
ないということを主張するための物です。
膨大な作業と費用がかかるということです。
最終的には報告書を作るわけですけども、
まず治験を実施するときに主任研究者、い
解析報告書をベースに、主任研究者が論文
わゆるスポンサーの先生はこれだけの種類
を書くという手順になっています。
の文書を用意して IRB に出さなければなら
現在作成中の SOP を示します。健康被害
ないわけです。それを作る事も必要だし、
に対する補償の問題、これはほぼ出来上が
管理も非常にたいへんです。あとはモニタ
っています。今後作る予定のものは、試験
リング体制をどうするか、監査の体制をど
薬の管理、独立データモニタリング委員会
うするかという問題もあります。
と監査の 3 つです。まだたくさん作る必要
以上をまとめますと、SOP の整備につき
があるのですが、とりあえずこれらから作
ましては、これは臨床試験だけの話ですけ
るということで今やっています。
れども年末までに 14 の SOP を作る予定で
SOP を作っていまして若干問題になって
す。GCPの欠陥といいますか、問題点とし
いますのは、将来的には治験を行いたいわ
て、先ほど申し上げたようなものがありま
けですけれども、1 つの大きな問題は今の
す。我々のモデル、主任研究者と臨床試験
改正 GCP では「自ら治験を実施しようとす
の責任医師を分けるというモデルにつきま
る者」という、先程言いました主任研究者
しては、これの方が良いのではないかと考
と治験責任医師はイコールでなければなら
えております。さらに膨大な作業と費用は、
ないという、そういう規定があるわけです。
運営資金と事業化の話はまた後で出てくる
けれども京大ではそれらを敢えて独立させ
と思いますけども、問題です。以上です。
ています。これは先程浅野先生が話された、
ありがとうございました。
研究者がその TR にどこまで参加していい
のかという問題にかかわると思いますが、
これは非常に大きな問題です。それに係り
まして、モニターというのは「その治験の
実施に従事しない者」を選べと書かれてい
21
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
SOP(
標準業務手順書)
SOP(標準業務手順書)
- 改正GCP
省令 (平成15
年6月12日
改正GCP省令
平成15年
12日)!
SOP(
標準業務手順書)作成状況
SOP(標準業務手順書)
京都大学医学部附属病院
!
探索医療センター
第3回TR懇話会
2004/7/23
第15条の
2 (業務手順書等)
15条の2
! 自ら治験を実施しようとする者は、治験実
施計画書の作成、治験薬の管理、副作用
情報等の収集、記録の保存その他の治験
の実施の準備及び管理に係る業務に関す
る手順書を作成しなければならない。
手順書を作成しなければならない。
「手順書」とは、治験に係る業務が恒常的に
適正に実施されるよう標準的な
手順を定めた
適正に実施されるよう標準的な手順を定めた
文書。
文書。
第3回TR懇話会
2004/7/23
1
2
2
1
プロトコル委員会
プロトコル委員会
SOP(作成済)
- 京大探索医療センター
京大探索医療センター 研究開発管理
2004年7月15日現在
!
探索医療開発部
実施準備
知財管理・法規対応
医療開発管理部
(プロジェクト)
プロジェクト)
プロジェクト略名、臨床研究実施計画書コード
プロトコル委員会
! 臨床研究実施計画書の作成・改訂
! 説明文書・同意文書の作成・改訂
! 試験薬/
試験薬/試験製品概要書の作成・改訂
!
!
!
概要書
プロトコル
説明・
説明・同意文書
2004/7/23
薬剤部
重篤な有害事象の報告・対応
第3回TR懇話会
診療科
プロトコル委員会
プロトコル委員会
中央診療
センター
実施中
!
企
業
・
当
局
探索医療検証部
探索医療臨床部
臨床試験計画・管理
臨床試験実施
第3回TR懇話会
2004/7/23
3
看護部
4
4
3
重篤な
重篤な有害事象の
有害事象の報告・
報告・対応SOP
SOP(
作成済)
SOP(作成済)
2004年7月15日現在
!
質管理・統計解析
臨床試験の施設・症例登録
臨床試験データの品質管理(データマネジメント)
臨床試験データの品質管理(データマネジメント)
! モニタリング
! 統計解析
!
!
2004/7/23
第3回TR懇話会
2004/7/23
5
第3回TR懇話会
6
6
5
22
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
解析報告書
解析報告書
統計解析の
統計解析の事前明記
統計解析計画書
内 容
内 容
1.エンドポイント
1.はじめに
2.定義
2.目的
3.解析結果
3.試験デザイン
試験デザイン
3.1 ベースライン特性
ベースライン特性
4.エンドポイント
3.2 薬物動態の
薬物動態の解析
5.定義
3.3 臨床効果の
臨床効果の解析
6.解析対象集団
3.4 安全性の
安全性の解析
7.中間解析
4.使用した
使用した統計解析
した統計解析ソフトウェア
統計解析ソフトウェア
8.解析方法
9.参考文献
第3回TR懇話会
2004/7/23
第3回TR懇話会
2004/7/23
7
8
8
7
改正GCPの欠陥
SOP(作成中)
2004年7月15日現在
健康被害に対する補償
試験薬の管理
試験薬の管理
! 独立データモニタリング委員会
(効果安全性評価委員会)
!
!
!
!
「自ら治験を実施しようとする者」=「治験責
任医師」
!
!
監査
モニターは当該治験の実施(実施の準備及び
管理を含む)に従事しない者
!
2004/7/23
第3回TR懇話会
「プロジェクトリーダー(主任研究者)」≠
「プロジェクトリーダー(主任研究者)」≠「試験責
任医師」(京大)
モニタリング担当者はプロトコル委員会のメンバー
(京大)
第3回TR懇話会
2004/7/23
9
10
9
まとめ
膨大な
膨大な作業と
作業と費用
!
治験の実施に関する医療機関の長(IRB
)の承認
治験の実施に関する医療機関の長(IRB)の承認
!
!
!
!
!
14種類の文書提出
14種類の文書提出
! プロトコル、概要書、CRF
見本、説明文書、モニタリン
プロトコル、概要書、CRF見本、説明文書、モニタリン
グ手順書、監査計画・手順書、分担医師名簿、治験薬
管理・費用・補償について記載した文書など
管理・費用・補償について記載した文書
第3回TR懇話会
SOPの整備
SOPの整備
!
改正GCP
の欠陥
改正GCPの欠陥
!
膨大な作業と費用
!
!
2004/7/23
11
新規作成(~2004.12
改訂(年1
1回)
新規作成(~2004.12,, 14SOPs)、
14SOPs)、改訂(年
!
!
主任研究者の必須文書
作成と管理
主任研究者の必須文書作成と管理
モニタリング体制
監査体制
監査体制
2004/7/23
10
京大モデルが理想(利益相反の管理面からも)
京大モデルが理想(利益相反の管理面からも)
運営資金
事業化推進
事業化推進
第3回TR懇話会
12
12
11
23
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
(4) (財)先端医療振興財団
(財)先端医療振興財団臨床研究情報
先端医療振興財団臨床研究情報センター
臨床研究情報センター 主任研究員 小田 英正
先端医療振興財団臨床研究情報センター
は勿論、臨床研究臨床試験運営部が行って
の小田と申します。これから 10 分ほど頂き
おります。トランスレーショナルリサーチ
まして当センターにおける SOP 作成状況
を行う上で先端医療センターと臨床研究情
を説明させていただきます。
報センター、略して TRI といいますが、TRI
本日お話させて頂く内容は 4 点で、まず、
の役割分担はこのようになっております。
当センターにおけるトランスレーショナル
研究の企画立案は先端医療研究センター、
リサーチの実施体制の大まかな内容、2 番
その後プロトコルのプロトコル概要書作成
目に先端医療センターと臨床研究情報セン
は両者協力して行うのですが先端医療研究
ターの役割分担、そのそれぞれの役割にお
センターがメインで行います。その後、症
ける SOP 作成状況を 3 番目の話題として、
例報告書といわれる CRF を TRI がメイン
最後に私自身が統計解析の専門家ですので、 で作成いたしまして被験者の登録は先端医
その統計解析業務に関する SOP の内容を
療センターが登録票を記入し、それを TRI
具体的に示したいと思います。
にファックスで送付し、登録票を記入して
実施体制については、非常に大まかです
いない者がその適格性を判断するというシ
が、先端医療センターと臨床研究情報セン
ステムをとっております。その後、実際の
ターと 2 つの大きな組織に分かれておりま
治療・検査・追跡、及び、CRF の記入は先
す。この後のセッションで我々が行ってい
端医療センター側で行い 、記入済みの CRF
るトランスレーショナルリサーチの実際の
を TRI が受け取りまして内容をチェックし
例をお話しますが、そういったトランスレ
データ入力いたします。その後、統計解析
ーショナルリサーチに関わっている主な部
を TRI 内で行って最終的な報告書を先端医
門は先端医療センターの再生医療研究部、
療センター側で作るといった役割分担にな
臨床研究支援部、及び、私が所属する臨床
っております。こういった役割を遂行する
試験運営部です。この 3 つの部門が中心に
ために両センターでそれぞれ SOP の準備
なってプロトコル作成等を行っております。 がなされております。先端医療センター側
近くに神戸中央市民病院がありますので実
で現在作られておりますのは臨床研究実施
際の患者さんの治療等々は神戸中央市民病
に関わる標準手順書等であり、非常に広い
院でも行うことになっております。SOP の
内容を含んだものを現在作成中ということ
作成は、先端医療センター側は臨床支援、
です。加えて、有害事象の対応手順書、独
臨床研究支援部、臨床研究情報センター側
立データモニタリング委員会とも呼ばれる
24
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
効果安全性評価委員会の手順書を作ってお
の受領について、プログラムおよび図表の
ります。これとは別に、先端医療センター
作成について、統計解析報告書作成につい
は、治験の業務も請負いますのでそちらの
て、発生した書類の保管について、という
SOP を作成し、既にインターネットにて公
ことになっております。統計解析の目的は
開されております。一方、TRI 側の SOP と
このようにしております。
「本手順書では財
いたしましては、すでに作成されたものと
団法人先端医療振興財団臨床研究情報セン
して、症例登録業務に関する手順書があり
ター臨床試験運営部で実施する統計解析業
ます。CRF 回収やデータ入力といったデー
務を適正に実施するための手順を明記し、
タマネジメント業務に関する手順書につい
統計解析業務に従事する構成員とその役割
ては、すでに一年前に簡単なものが作られ
及び責務を定める。
」適用範囲は先ほど書い
ておりますが、現在さらに詳細なものにす
たものと同じですが、統計解析計画書の作
べく改訂を行っております。3 番目に統計
成、データセットの受領、プログラム及び
解析業務に関する標準作業手順書がありま
図表の作成、統計解析報告書作成までの一
す。現在はまだ存在しませんが将来必要と
連の業務に適用されます。定義は、一部抜
考えておりますのは、プロトコル作成支援
粋ですが、例えば統計解析責任者などの定
業務、CRF作成業務、独立データモニタリ
義をします。各プロジェクトに対して生物
ング委員会に関する業務についての手順書
統計グループリーダーが任命し統計解析業
です。遺伝子等の測定を行うため、血液検
務を統括する臨床試験運営部員、あとその
体や腫瘍検体の保管業務も行いたいと思っ
作成されものについての定義ですが、統計
ておりますので、検体管理業務の手順書も
解析計画書とは、臨床試験実施計画書に記
必要であろう考え、今作成中または作成予
載されている解析の主要な特徴について技
定となっております。
術的で詳細な技術を定め、主要エンドポイ
最後に具体的な SOP の内容をご紹介し
ント、副次エンドポイントその他のデータ
たいと思います。ここで例に用いるのは統
に関する統計解析を実施するための詳細な
計解析業務ですが、すべての SOP はだいた
手順を含む文書ということです。次に、従
いこの 5 つの項目について書かれておりま
事する人間の任命ですが、生物統計グルー
す。まず、目的がありまして、SOP が適用
プリーダーは各プロジェクトに対して統計
する業務の範囲、用語の定義、作業従事者
解析責任者および統計解析プログラマーを
の任命、最後に個々の業務の手順となって
任命します。変更が生じた場合は代わりの
おります。統計解析業務につきましては先
ものを任命するということになっておりま
ほど手良向先生からお話のありました統計
す。具体的な手順については、例えば統計
解析計画書の作成について、データセット
解析計画書の作成についてついては誰がい
25
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
つまでにということですが、統計解析責任
者がデータ固定までに統計解析計画書を作
成すると定められています。作ったものは
必ず誰かがチェックして承認するというの
が基本ですので、その承認の手順が書かれ
ておりまして、生物統計グループリーダー
は統計解析計画書の内容を点検し統計解析
責任者はその承認を得てデータ固定までに
統計解析計画書を固定することになってい
ます。その後、改訂がおこりえますので、
改訂の手順も定められており、統計解析責
任者はプロトコルの改定に従って統計解析
計画書を改訂し、生物統計グループリーダ
ーの承認を得てそれを再固定するといった
手順が定められております。
以上で終わりますが、まとめますと実施
体制と役割分担、SOP の作成状況と具体例
について説明させていただきました。
26
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
アウトライン
(財)先端医療振興財団
先端医療センター・
臨床研究情報センター
におけるSOP作成状況
トランスレーショナル・リサーチ実施体制
TR実施における役割分担
TR実施における役割分担
標準作業手順書(SOP)
作成状況
標準作業手順書(SOP)作成状況
SOPの具体例
SOPの具体例
1.
2.
3.
4.
?
統計解析業務に関する標準作業手順書
臨床研究情報センター
臨床試験運営部
小田 英世
2004/7/22
2004/7/22
1
第3回TR懇話会
2
第3回TR懇話会
2
1
TR実施における役割分担
TR実施における役割分担
TR実施体制
再
生
医
療
研
究
部
映
像
医
療
研
究
部
臨
床
研
究
支
援
部
診
療
管
理
部
健
康
情
報
研
究
部
神戸中央市民病院
2004/7/22
研
究
の
企
画
・
立
案
臨床研究情報センター(TRI)
先端医療センター
脳
疾
患
病
態
解
析
部
遺
伝
子
デ
ー
タ
ベ
ー
ス
研
究
部
臨
床
試
験
運
営
部
第3回TR懇話会
プ
ロ
ト
コ
ル
・
概
要
書
作
成
C
R
F
作
成
被
験
者
登
録
治
療
・
検
査
・
追
跡
C
R
F
記
入
C
R
F
精
査
・
デ
ー
タ
入
力
統
計
解
析
先端医療センター ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ◎
TRI
○ ◎ ◎
2004/7/22
3
第3回TR懇話会
報
告
書
作
成
◎
◎ ◎
4
4
3
先端医療センターのSOP準備状況
!
臨床研究(治験を除く)
!
!
!
!
TRIの
TRIのSOP準備状況
SOP準備状況
!
臨床研究実施に係わる標準手順書(作成中)
有害事象対応手順書
効果・安全性評価委員会手順書
!
!
!
治験・市販後臨床試験:インターネットで公開
!
!
!
!
2004/7/22
!
治験・市販後臨床試験に係わる標準業務手順書
モニタリング・監査に係わる標準業務手順書
治験薬管理標準業務手順書
治験審査委員会標準業務手順書
第3回TR懇話会
作成済み
作成中または作成予定
!
!
!
!
2004/7/22
5
症例登録業務に関する標準業務手順書(改訂中)
データマネジメント業務に関する標準業務手順書(改訂中)
統計解析業務に関する標準業務手順書
プロトコル作成支援業務
CRF作成業務
CRF作成業務
独立データモニタリング委員会に関する業務
検体管理業務
第3回TR懇話会
6
6
5
27
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
SOPの具体例:統計解析業務-2
SOPの具体例:統計解析業務-2
SOPの具体例:統計解析業務-1
1.
2.
3.
4.
5.
目的
適用範囲
定義
任命
手順
!
!
!
!
!
2004/7/22
!
目的
!
統計解析計画書の作成
データセットの受領
プログラムおよび図表の作成
統計解析報告書の作成
書類等の保管
!
適用範囲
!
本手順は、統計解析計画書の作成、データセット
の受領、プログラムおよび図表の作成、統計解
析計報告書の作成までの一連の業務に適用され
る。
2004/7/22
7
第3回TR懇話会
本手順書では、財団法人 先端医療振興財団 臨床研究情報センター 臨床試験運営部で実施
する統計解析業務を適正に実施するための手順
を明示し、統計解析業務に従事する構成員とそ
の役割および責務を定める。
8
第3回TR懇話会
8
7
SOPの具体例:統計解析業務-4
SOPの具体例:統計解析業務-4
SOPの具体例:統計解析業務-3
!
定義
!
!
!
!
!
統計解析責任者:各プロジェクトに対して、生物統計グループ・リー
ダが任命し、統計解析業務を統括する臨床試験運営
部員
ダが任命し、統計解析業務を統括する臨床試験運営部員
統計解析計画書:臨床試験実施計画書に記載されている解析の主
要な特徴について、より技術的で詳細な記述を含め、主要エンドポ
イント、副次エンドポイント、その他のデータに関する統計解析を実
行するための詳細な手順を含む文書
・・・
手順
?
統計解析計画書の作成
!
?
統計解析計画書の承認
!
任命
!
2004/7/22
生物統計グループ・リーダは、各プロジェクトに対して、統計解析責
任者および統計解析プログラマを任命する。業務執行中に変更が
生じた場合は、生物統計グループ・リーダは、その代理者を任命す
る。
第3回TR懇話会
?
2004/7/22
まとめ
トランスレーショナル・リサーチ実施体制
TR実施における役割分担
TR実施における役割分担
標準作業手順書(SOP)
作成状況
標準作業手順書(SOP)作成状況
SOPの具体例
SOPの具体例
2.
3.
4.
?
2004/7/22
統計解析業務に関する標準作業手順書
第3回TR懇話会
統計解析責任者は、プロトコルの改訂に従って、統計解析計画書
を改訂し、生物統計グループ・リーダの承認を得て、統計解析計
画書を再固定する。・・・
第3回TR懇話会
10
10
9
1.
生物統計グループ・リーダは、統計解析計画書案の内容を点検
する。・・・統計解析責任者は、生物統計グループ・リーダの承認
を得て、データ固定までに統計解析計画書を固定する。
統計解析計画書の改訂
!
9
統計解析責任者は、データ固定までに、統計解析計画書案を作
成する。・・・
11
11
28
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
(5) 大阪大学医学部附属病院
大阪大学医学部附属病院未来医療
大阪大学医学部附属病院未来医療センター
大学医学部附属病院未来医療センター 助手 中村 憲正
阪大病院の未来医療センターにおける
研究が社会に貢献できるインパクトを含め
SOP の作成状況について報告させて頂きま
多角的にまず研究の評価を行います。それ
す。
をパスしたプロジェクトに関して2次審査
まず、臨床研究に関する全体の行程に関
があります。この審査を受けるためには、
する SOP につきましては去年の 10 月の 7
臨床研究の質を高めるためにプロトコール
日に策定し、改定を5月にしております。
の作成も含めて、生物統計学者の方も入っ
内容ですが、書類等の整備の結果、一応円
て整備が行われます。そして研究のプロト
滑な流れができるようになったと考えてお
コール及び体制が固まった時点で2次審査
ります。このような臨床研究の行程のため
があり、そこで承認を受けると実際に研究
の SOP の他に、阪大病院では細胞治療のト
が開始されるという流れです。独立したモ
ランスレーショナルリサーチプロジェクト
ニタリング委員会というべき小委員会をプ
が開始しつつありまして、そのための品質
ロジェクトごとに必要があれば設置しまし
管理のための書類が必要となっております。 て、そこでデータ解析、有害事象の検討を
この整備を現在行っております。この作成
行い、その上で審査評価委員会が最終評価
には、京大病院の前川教授のご指導も頂き
を行い、その後に外部評価を受けるシステ
まして、Institutional GMP というのは、
ムです。
どのあたりをめざしたらいいのかを考えな
一次申請では研究の概要、目的、背景、
がら GMP の精神に則り、整備しつつある
申請前の準備状況、関連企業、将来の産業
ところです。
化への展望等を包括的に記載していただい
未来医療センターの臨床研究の流れです
ております。これをパスすると、福島先生
が、阪大では先に医学倫理委員会が審査を
から提唱されておりますトランスレーショ
行い、ここで承認を受けたところから未来
ナルリサーチの指針で提示されている流れ
医療プロジェクトの申請がスタートすると
に沿って、順番に雛型を埋めてプロトコー
いう方法を取っております。特徴的なのは、
ルを完成出来るようなシステムを構築しつ
審査評価委員会の承認が2ステップに分か
つあります。有害事象ですが、審査評価委
れていることです。1次審査では、未来医
員会と病院長との連携を密に取った対応の
療に値する研究なのかどうか、つまりその
フローチャートを作成し、その発生に対処
29
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
するように考えております。それから補償
賠償の問題がありますが、先ほど補償に関
しての SOP が京都大学の方で出来上がり
つつあるということですので、我々も参考
にさせて頂ければと考えております。診療
費の問題、これはなかなか難しい問題だと
思います。経済的な面と倫理的な面など多
様な側面を配慮し、どのように設定したら
いいかとを今後討議する必要があるかと考
えております。
30
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
(6) 九州大学病院
九州大学病院臨床研究センター
九州大学病院臨床研究センター長
センター長 中西 洋一
九州大学ではトランスレーショナルリサ
に FDAの Approval まで目指している「遺
ーチ(TR)の実施の支援、及びその関連
伝子治療」につきましては新 GCP 準拠とい
事項の支援体制につきましては、臨床研究
う形で具体的な個別の SOPを作成してい
センターが担当しています。ただし、同セ
るところです。
ンターはそれに特化した組織ではありませ
TR開始の手続に関しましては、試験時
んで、治験、TRさらには自主研究まで包
責任医師の方からまず病院長の方に申請さ
括的に支援する組織として機能しています。 れ、臨床研究センターのプレ審査にかけら
そこでやっている業務の中で特にTRに関
れた後、倫理審査委員会に提出されます。
する標準業務手順書について現況、それか
プレ審査では倫理面についてもかなり詳細
ら課題についてご紹介いたします。
な検討をいたしますけども、科学性、実効
スライドにお示ししたのは、TR全体を
性、それから生物統計につきまして、個別
包括する標準業務手順書です。それ以外に
のプロトコール作成支援を行います。学内
も「臨床研究の認定制度」、「臨床試験の審
に 100 人部会という組織を設けておりまし
査委員会」、「安全性監査」、「コーディネー
て、それぞれの領域の専門家、あるいは専
タ」、「モニタリング監査」等の標準業務手
門領域外の医師の支援をいただいて、ある
順書があります。図示したものが全体を包
程度きちんとしたプロトコルにした上で、
括する標準業務手順書作成にあたっての課
次のステップの倫理審査委員会に提出する
題です。原則論と病院長の業務の中でいく
という形を取っております。
つかの実際に起こりうる事例、それに対す
実は現在倫理審査委員会の質、あるいは
る対応について申し上げたいと思います。
審査基準の揺らぎという事も非常に問題に
基本的には新 GCP と厚労省から出され
なっています。私どもはすべてのプロトコ
た倫理指針に準拠しておりますが、新 GCP
ールに目を通し訂正を加える作業をしてお
に準拠しますと現時点で補償の制度がない
りますので、内容的に問題のある審査、見
と言う点、およびモニタリングに関して割
解の違い、整合性に疑問のある審査が下さ
くことの出来る十分な資金が調達しにくい
れた場合には、各審査委員会と意見を交換
という問題がありますので、これらは明確
いたしまして、よりきちんとした審査をし
な規定として盛り込むのは現時点では難し
ていただく努力、あるいは審査基準を均一
いと判断しております。ただし今、学内で
化していただく努力をしています。
実施中あるいは進行中のTR中で、最終的
一方、個別の症例につきましてはこの秋
31
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
に設置予定の「先進医療適用評価委員会」
ニタリングの体制につきましては、FDA の
でTR実施の可否を決定することを計画し
Approval を目指した試験についてはある
ています。すでにそのプロトタイプとして
程度の資金をベースに民間の CRO の支援
の私的委員会が、現行のTRの適応につい
下で準備をしておりますが、それ以外のも
て実施しております。委員には、各診療分
のについてはなかなか難しいというのが実
野専門家、臨床心理士、精神科の医師、CRC
情です。そしてなによりもデータマネージ
等が参加しています。有害事象につきまし
メント部門の設置という事を最終的に図ら
ては、当初作成した対策がうまく機能しな
ないと、きちんとした組織として機能しに
いということがわかって参りまして、現時
くいと考えています。
点では図で示したような流れで有害事象の
今後、これらの課題について鋭意取り組
対応手順というのを作成して実施しており
んで行きたいと考えています。
ます。重篤有害事象が起った時には、安全
性監査チームが on site visit で、カルテの
直接閲覧をいたしまして、そこでの判断を
病院長ならびに倫理審査委員会の方に報告
するという形式をとっています。
もう1つ非常に重要なポイントと認識し
ておりますのは教育です。いくら良い試験
をしようとしても医師、研究者を含め、T
Rに関わろうとする者の意識や知識がない
とうまく行きません。そこで、九州大学で
は認定制度を作りました。TRを含め、す
べての臨床研究を実施する者は認定証を取
得しなくてはならないというものです。す
でに 800 名を越える医師、コメディカルス
タッフがこの制度で認定を受けております。
倫理、生物統計、新 GCP、CRC業務等
についての講義を受け、かつ試験に合格し
た者に認定証を授与し、かつ年度更新のた
めの講習を義務づけたものです。まだまだ
問題はたくさん残されています。CRC の支
援対策については資金面で課題が多い。モ
32
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
臨床研究センター機構図
九州大学病院における
標準業務手順書作成状況
病 院 長
医学研究院長
倫理審査委員会
適応評価委員会
臨床研究センター
臨床研究センター運営委員会
センター運営委員会
監査部門
経理・運営監査委員会
試験監査委員会
安全性監査委員会
センター長
副センター長
運営委員
先端医工学・分子細胞療法等の臨床研究
一般部門 IRB審査領域以外の臨床研究
人を直接研究対象としない医学研究
遺伝子治療研究審査委員会
特定部門 ヒトゲノム・遺伝子解析研究審査専門委員会
ヒトES細胞の樹立及び使用に関する倫理審査専門委員会
臨床試験審査委員会(IRB)
臨床試験審査委員会
企業主導受託臨床試験(GCP準拠)
医師主導型臨床試験(GCP準拠)
自主臨床試験(医薬品を用いた介入試験・GCP非準拠)
臨床研究の
臨床研究の
臨床研究
の実施部門
実施部門
先端医工学診療部
遺伝子・細胞療法センター
先端分子細胞診療科
各診療科
臨床研究センター
中西洋一
医師・事務部
事務官・薬剤師
事務部門
薬品等管理部門
薬剤部・検査部
看護師・薬剤師・臨床心理士
CRC部門
部門
広報部門
試験相談窓口業務
審査委員会割付
予備審査
プロトコール作成支援
同意文書作成支援
TRCアドバイス
医療統計アドバイス
法的問題アドバイス
資金獲得アドバイス
経理業務
資料作成・保管
同意書類保管
試験薬納入・回収
調剤
薬剤管理
分子細胞療法薬安全管理
(特殊検査部門)
薬剤情報管理・提供
試験業務
CRF作成補助
IC取得補助
広報活動
患者相談窓口
情報収集
市民公開講座など
メディア対策
HP作成
地域治験ネットワーク
臨床研究支援部
事務部
教育研修部門
学内教育
学外の教育研修
資格基準作成
データセンター
医師・統計学者・事務 統計解析
データ管理
運営状況モニター
試験監査業務補助
被験者
試験実施医師
試験依頼者
臨床研究センターは、以下の点を達成することを目的とする
九州大学における臨床研究の適切かつ迅速な推進の支援
良質で、安全かつ倫理的な臨床試験の推進
臨床研究の成果を社会に還元すること
(製薬会社・企業)
1
2
標準業務手順書作成にあたって
原 則
1. 原則
2. 目的と適応範囲
3. 病院長の業務
1)TRの計画と開始
2)対象症例の選択(個別評価小委員会)
3)有害事象対策
4. 審査委員会
1)倫理審査委員会:医学研究院
遺伝子治療・細胞療法・医工学の審査
2)臨床試験審査委員会:病院(新GCP準拠)
医薬品の審査
5. 責任医師の業務・責務
6. 医薬品等の管理
7. 試験事務局
8. 記録の保存
ヘルシンキ宣言及
ヘルシンキ宣言及び
宣言及び関連する
関連する指針
する指針に
指針に基づく倫理的原則
づく倫理的原則を
倫理的原則を厳守
関連する
関連する指針
する指針
・臨床研究
臨床研究に
研究に関する倫理指針
する倫理指針:
倫理指針:平成15
平成15年厚生労働省
15年厚生労働省
・遺伝子治療
遺伝子治療臨床
治療臨床研究
臨床研究に
研究に関する指針
する指針:
指針:平成14
平成14年文部科学省
14年文部科学省・
年文部科学省・厚生労働省告示第1
厚生労働省告示第1号
・ヒトES
ヒトES細胞
ES細胞の
細胞の樹立及び
樹立及び使用に
使用に関する指針
する指針:
指針:平成13
平成13年文部科学省告示第
13年文部科学省告示第155
年文部科学省告示第155号
155号)
・ヒトゲノム・
ヒトゲノム・遺伝子解析研究に
遺伝子解析研究に関する倫理指針
する倫理指針
・疫学研究に
疫学研究に関する倫理指針
する倫理指針
留意事項
・新GCP準拠
GCP準拠を
準拠を目指す
目指す(試験によっては
試験によっては新
によっては新GCP準拠
GCP準拠を
準拠を明記)
明記)
・補償については
補償については保険制度
については保険制度の
保険制度の整備までは
整備までは「
までは「なし」
なし」と明記する
明記する
4
3
先進医療適応評価委員会(案)
TRの開始と実施
1.
試験責任医師
病院長
倫理審査委員会
倫理審査委員会
一般(
一般(細胞・
細胞・医工学)
医工学)
遺伝子治療
再生
臨床試験審査委員会
医薬品
臨床研究センター
臨床研究センターでの
センターでのプレ
でのプレ審査
プレ審査
センター医師
センター医師 + 支援医師(
支援医師(100人部会
100人部会)
人部会)
検討項目
・科学性
・実効性
・研究資金
・倫理性
・生物統計
先進医療適応評価委員会
TRの実施において、エントリーされた患者が適格条件を満たしているか否かを評価
2.
構成
1)病院長
2)遺伝子細胞療法部
3)各専門領域の医師(先端分子細胞治療科、放射線科、循環器内科、呼吸器内科、血液内科、代謝内科、
消化器外科、呼吸器外科、精神科、婦人科など)
4)臨床心理士
5)CRC
6)臨床研究センター
7)事務部(医事管理課)
8)その他、特に必要と思われる専門医
*構成員の中から互選にて委員長と副委員長を選任する
3. 業務
診療科より摘出された詳細な診療情報を基に、TRの適応があるかどうかを評価する
委員長または副委員長が議事を進行する
結果は、委員長より診療科長へ報告される
評価の内容は合議の結果、1)適応有り、2)適応なし、3)条件付き適応有りの3段階とする
「条件付き適応有り」は、病状や検査所見の改善、及び特定の検査の結果報告が揃えば適応とするものを指す
「条件付き適応有り」と判定された症例は、委員会において再度「適応有り」の判定を受けなくてはならない
個別の症例におけるTRは本委員会の評価がないと実施できない
4. 記録の保管
個別評価委員会での議事録は、診療科が準備した資料を基に委員長が作成し、事務部にて保存する
原則として、記録は公開可能とする
記録の公開に際しては、個人情報の保護が厳守されることを要件とする
TRの
TRの実施
6
5
33
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
有害事象:臨床研究センターにおける対応手順
急送報告
臨床研究センター
試験責任分担医師の責務
臨床研究センター
臨床研究センターの
センターの緊急時対応
有害事象(診療科)
急送報告
急送報告
病院長
研究院長
当該倫理審査委員長
安全性監査チーム結成
1. 重篤有害事象か否かの判断
2. 24時間以内の急送報告依頼
3. 病院長以下、各部局への報告
4. 安全性監査委員会招集
5. 監査チーム結成
6. on site visitと2週間以内の2次報告
7. 運営委員会・病院長へ報告
(緊急性の高いものは直接病院長へ)
責任医師の要件資格:常勤の教員であること
臨床研究認定医証を有すること
臨床研究認定制度
講習会受講
・医の倫理
・生物統計概論
・新GCPと治験
・CRC業務
・臨床研究センターガイダンス
試験
年度更新
監査チーム
監査チームの
チームの業務
on site visit による監査
2次報告
1. 有害事象の重篤度判定
2. 対象症例における適応基準遵守
3. 治療計画遵守の有無
4. 有害事象発生時の対応の適切性
5. 有害事象の原因推定
運営委員会・
病院長の
運営委員会
・病院長
の業務
調査結果報告
運営委員会
1. 有害事象の原因推定
2. 研究継続の可否
3. 再同意取得の必要性
4. 同意説明文書改訂の必要性
5. 上記の事項の倫理委員会への報告
8
7
安全性監査委員会の業務手順
1. インシデントレベル3B以上が発生した際に、安全性監査チームを結成する
2. 急送報告受領後、3日以内に人選を行う
3. 学内意識向上と教育の目的も兼ね、人選は以下のように行う
1)チームリーダーは安全性監査委員長の指導下に監査経験者が就任する
2)チームリーダーはサブリーダーを指名する
3)サブリーダーは次回チーム結成時にチームリーダーとなる
4)監査チームは原則として4名とする(人選はチームリーダーが行う)
4. 監査チームは当該診療科と相談の上、報告より10日以内に現場での監査を行う
5. 監査内容は以下の点である
1)有害事象の重篤度の確認
2)対象症例は試験の適格基準を満たしていたか
3)治療は試験計画通りに実施されていたか
4)有害事象発生時の対応は適切であったか
5)有害事象と試験との因果関係
注:有害事象発生に際しての社会的問題については、別の組織が対応する
6.当該診療科は、重篤有害事象発生24時間以内に急送報告、3日以内に2次報告を作成する
急送報告はセンター、病院長、当該倫理審査機関の委員長へ、2次報告はセンターへ送付する
7. 監査内容は書面で、臨床研究センター運営委員会へ報告する
注:緊急性を要するものについては、監査委員長・センター長を介して病院長へ報告する
8. 監査チームは監査内容に関して守秘義務を有し、部外者への情報漏洩をしてはならない
9
34
3.各施設における標準業務手順書の作成状況について
35
4.各施設のTR実施状況について
(1) 東京大学医科学研究所
東京大学医科学研究所附属病院長・
東京大学医科学研究所附属病院長・先端医療研究センター
先端医療研究センター長
センター長 岩本 愛吉
各施設の TR 実施状況という事で医科学
と公的セルバンクへの取り組みがなされて
研究所のお話をさせていただきます。あい
きました。血液のグループでは、まだ試験
にく本日は、医科学研究所の行事と重なっ
管内の研究ですが、ヒト ES 細胞を成熟な
ておりまして、この会を通して参加させて
血液細胞へと分化誘導させることが可能に
いただけないことを誠に申し訳なく思って
なってまいりました。今後の課題として、
おります。私岩本と申しますが、浅野先生
赤血球輸血療法の開発でありますとか造血
の後任として医科学研究所の病院長を勤め
幹細胞移植療法への応用といったようなこ
させていただいております。
とが血液のグループで取り組まれておりま
医科学研究所は、元来癌と感染症を設置
す。感染症の分野では、主に HIV 感染者の
目的とする研究所ですので、TR に関しても
方々に対する HIV 特異的免疫療法の誘導
これらの疾患が中心となっております。す
を目指して患者本人由来の樹状細胞に HIV
なわち癌関連では、浅野先生が主になって
の塩基配列に基づくペプチドをパルスする
進められてこられた血液腫瘍に関する TR、
ような形の特異的免疫強化療法と抗ウイル
癌に対する遺伝子治療、それから外科系を
ス薬の中断を組み合わせた臨床試験を行っ
中心とします悪性腫瘍に対する腫瘍免疫療
ております。腫瘍に対する免疫療法につい
法などを行っております。ヒトゲノム関連
ては、外科及び先端診療部を中心とする腫
では、ヒトゲノム解析センターと連携した
瘍免疫療法が盛んで、悪性黒色腫に対する
抗癌剤の効果安全性の予測、感染症関連で
もの、甲状腺癌に対するもの、進行癌患者
は、HIV 感染症に対する免疫強化療法の TR
に対する放射線療法と樹状細胞療法を加え
などを行っております。
たものなどがすでに行われ、終了したもの
血液悪性腫瘍の取り組みの中で、G-CSF
もございます。ペプチドを使った腫瘍免疫
の開発、臨床導入をされたのは浅野先生の
療法として、外科を中心に悪性黒色腫
偉大な足跡ですけれども、サイトカイン研
gp100 由来のペプチド療法やペプチドと
究の TR を通して、医科研で行われるほと
IL2 を組み合わせたもの、それからより新
んどが成人非血縁者間の臍帯血移植療法に
しい分野では、消化器癌特に大腸癌に関し
変わってまいりました。細胞プロセッシン
て、ヒトゲノム解析センター・中村祐輔セ
グ寄付研究部門を立ち上げ、幹細胞の保存
ンター長との共同研究で新しく発見されて
36
4.各施設のTR実施状況について
きた癌関連遺伝子から、特定の HLA によっ
て拘束されるペプチド配列の発見、免疫強
化療法への応用が行われております。それ
から、胆管癌に対するペプチド療法、消化
管原発の非上皮性肉腫に対するペプチド療
法といったものも現在予定されております。
遺伝子治療に関しましては、現在九大に移
られました谷憲三朗先生を中心に腎癌に対
する GM-CSF が行われ、一応終了しており
ますけども患者さんのフォローは今も続い
ております。また、GMP レベルの治療ベク
ター室が設営され、外科の田原教授を中心
に国産ベクターを開発するべく施設が稼働
し始めております。再生療法に関しまして
は上田教授が医科研寄付部門に赴任され、
骨髄由来細胞から骨髄由来の細胞を使った
歯槽骨の再生研究というのが現在、医科研
の倫理審査委員会に提示されるばかりの段
階でございます。それからグリベック、イ
レッサに関して、感受性予測を DNA マイ
クロアレーを使って解析するという臨床研
究が予定されておりまして、グリベックに
関しては現在すでに審査委員会を通りまし
て現在、イレッサの倫理審査段階にありま
す。医科研の中にありますヒトゲノム解析
センターと先端医療研究センターの共同研
究として、医科研の附属病院でやれる事を
次々とやっていこうという段階にあるとい
う事であります。以上です。
37
4.各施設のTR実施状況について
(2) 名古屋大学医学部附属病院
名古屋大学医学部附属病院遺伝子
名古屋大学医学部附属病院遺伝子・
医学部附属病院遺伝子・再生医療センター
再生医療センター長
センター長 吉田 純
さらに臨床研究を行うために GMP(Good
名古屋大学の TR 実施状況ということで
Manufacturing Practice)グレードにアッ
お話させて頂きます。
名古屋大学では高度先端医療開発、いわ
プしていくプロセスの確立が急務です。こ
ゆる探索医療として遺伝子医療、細胞医療、
こで扱う対象は、新規医薬品(生物学的製
再生医療を中心に行っておりまして、DNA
剤を含む)や遺伝子などの修飾を受けた特
/リポソームを用いた様々な癌に対する遺
殊な細胞(これらの一部はおそらくは医療
伝子治療や RNAi を用いた核酸療法の開発
機器と同等のメディカル・デバイスとして
などを産学連携でやろうという計画が進ん
扱われると考えていますが)ですが、これ
でおります。また、DC 細胞あるいは抗原
らの医薬品や医療機器の開発に求められる
特異的 CTL を用いた免疫療法、血管新生療
3要素に、品質保証、製品の安全性、及び
法、培養皮膚・培養軟骨・培養骨を用いた
事故報告があります。そのうち製品の安全
再生医療、リポソームに包埋した抗原ペプ
性については、改正薬事法やそれに関連し
チドを用いたがんワクチン療法、各種の分
た省令などで、被験薬の品質、毒性、薬理
子標的療法あるいはヘルペスウィルスを用
作用に関する試験、その他治験を実施する
いたウィルス療法などが行われております
ために必要な試験を終了していなければな
が、本日はこのような高度先端医療開発を
らないと明記されています。すなわち GCP
行う上で、最も重要な課題のひとつである
(Good Clinical Practice)及び GMP の厳
「マテリアルセンターをどのようにして動
守が求められています。同様に、治験薬概
かしていくか」ということに焦点をあて、
要書には治験薬の物理的・化学的および製
お話をさせて頂きます。
剤医学的性質、製剤組成、薬理・毒性、薬
みなさんご存知だと思いますが、先端医
物療法薬物代謝に対する非臨床試験の成績
療を開発するためには製剤を調製する施設
の記載が求められています。従いまして、
とその管理体制の確立が重要です。すなわ
治験薬 GMP の基準を満たしていない“く
ち、大学あるいは関連施設あるいは企業が、
すり”の使用は GCP に違反し、法律で罰せ
それぞれの基盤研究を通して開拓したシー
られるということになります。私どもはこ
ズを、前臨床研究を行うために GLP(Good
れらの制約は治験だけでなく、臨床研究に
Laboratory Practice)グレードにアップし、
おいても求められるものと考えており、名
38
4.各施設のTR実施状況について
古屋大学では GMP に準拠した製剤調製室
ます。同時にその品質管理システムとして
を自らの大学病院内に整備し、先ほど少し
先にあげた ISO を考えています。そして、
お示ししましたプラスミド包埋リポソーム
品質マネージメントに対するこのような取
(DNA/リポソーム)を調製し、臨床研究
り組みが組織全体の管理体制の確立につな
を実施しています。その他のハード面では、
がると考えています。名古屋大学では前に
まだ臨床を実際には行っておりませんが、
もお話ししましたが、病院長の元で、先端
ウィルスベクターを調製する製剤調製室や、 医療推進施設、それに遺伝子・再生医療セ
細胞の修飾を行う細胞調製室(CPC: Cell
ンターや臨床試験管理センターなどを有機
Processing Center)の整備も進めておりま
的に結びつけて品質管理を行うことや、製
す。これらの施設の品質保証体制としては、
剤の保存等に関しては臨床治験管理センタ
この後に少しお話しますが ISO9001 及び
ーで行うことなど、いろいろな事項が規約
13485 を視野に入れ、その取得に向けての
として整ってきております。しかしながら、
取り組みを行っています。2006 年には名古
その管理体制や管理方法に対する保証制度
屋大学に新中央診療棟ができあがる予定で
については、現在のところ確固たる指針の
ありますが、その中に先にお話した各施設
提示が国からもありません。名古屋大学で
の機能を統合した新しいマテリアルセンタ
は、世界的な趨勢を鑑み、細胞調製に関し
ーを構築しようという計画を進めておりま
ては先にお話した ISO13485 を取得する方
す。しかしながら、大学も昨今独立行政法
向で検討を始めております。これは 2003
人化になりまして、このような計画の推進
年 7 月 15 日 に 制 定 さ れ た も の で 、
を妨げる様々な問題点がでてきています。
ISO9001:2000 を基準にして作成され、新
その 1 つとして、そういう施設ができた後
たに医療機器特有の要求事項が追加された
のランニングコストをどうしていくか、ど
規格です。ISO はアメリカを除く世界各国
う維持するかといった問題があります。先
でその制定が進められており、カナダやヨ
端医療開発を進める他の施設でも同じよう
ーロッパの一部では法制化も完了していま
な状況にあるのではないかと思いますが、
す。日本も来年の改正薬事法では ISO13485
そのあたりをこうした懇話会の中でディス
に基づく省令発行などが予定されていると
カッションして、なんらかの方向性を見出
聞いています。そういう流れの中で名古屋
していただければと思います。
大学は新しいマテリアルセンターを作って
いこうと考えております。以上です。
一方、ソフト面では、先ほどお話しまし
た SOP(標準手順書)の整備が必要になり
39
4.各施設のTR実施状況について
(3) 京都大学医学部附属病院
京都大学医学部附属病院探索医療センター
京都大学医学部附属病院探索医療センター探索医療検証部
センター探索医療検証部 助手 手良向 聡
トランスレーショナルリサーチの実施状
導等を行って基礎研究が進んでいます。チ
況についてお話します。まず、インフラス
オレドキシン創薬につきましては現在急性
トラクチャーの話を少ししますけども、ト
呼吸促迫症候群(ARDS)という疾患に対
ランスレーショナルリサーチを支える基盤
するプロトコルを現在準備中です。心不全
として、臨床試験の実務の体制、倫理審査
の細胞移植についても基礎研究が進んでい
委員会、知的財産管理の 3 つ重要なポイン
まして、骨格筋由来の心筋幹細胞の分離等
トがあると思います。それも併せてお話い
が行われています。プロジェクトについて
たします。まず、探索医療センターの流動
は以上、非常に簡単に紹介いたしました。
プロジェクトですが今 6 つのプロジェクト
こういうプロジェクトを進めるに当たりま
が動いています。
して、非臨床研究を管理しながら、特許知
1 つめは網膜再生というプロジェクト。
財の管理等を並行して行うという作業がま
これについては現在、ES 細胞から色素上皮
ずは最も重要な段階になります。こういっ
細胞の培養などを行う基礎研究が進んでい
た流れで進めているわけですけども、次に
ます。2 つめにグレリン創薬というプロジ
概要書を作ってプロトコルを作るという、
ェクトですが、これについては健常者に対
ここまで来るにはかなり時間がかかるとい
する PhaseⅠ試験を終えて、すでにパブリ
う状況でありますが、これがなるべくスム
ッシュしています。現在 Phase II 試験の1
ースに行くよう現在体制を整えております。
つ、摂食不振患者に対する試験が開始され
その後はプロトコル委員会でプロトコルを
ています。もう 1 つの高齢者に対する試験
作成して、検証部、臨床部、診療科が協力
は現在プロトコル作成中です。さらに臨床
しながら臨床試験を進めるという体制です。
試験ではありませんが、血中濃度を測定す
実際に臨床試験が始まりますと、臨床部と
るという研究も進んでおります。これはす
いう部門が中心になり、その試験の管理す
でに終わりつつあります。3 つめの HGF 肝
べてを行うということです。試験コーディ
再生プロジェクトについては、劇症肝炎に
ネーターが診療科に行って仕事をするとい
対するプロトコルを現在作成中で、試験の
うことになっています。そこから出てきた
準備を進めています。膵β細胞再生につい
データを検証部がモニタリング、データマ
ても体性幹細胞からの膵β細胞への分化誘
ネジメント、最後にデータ解析を行うとい
40
4.各施設のTR実施状況について
う仕組みです。さらに京大病院の中には先
ほどの流動プロジェクト以外にも沢山のテ
ーマがあり、支援を依頼されるわけですけ
れども、このような特許の問題とか企業と
の契約とか会社の創設とか資金の調達、こ
のような問題について仕組みをつくる必要
があるということで本年度、医療開発管理
部という組織が作られました。知財の管理
を行って医学部の産学連携オフィスと協力
をして知財管理を行う、さらには事業化を
専門的に行う部門です。
最後に全体の話を1つの絵にまとめます
と、京大の臨床から出てくるテーマ、基礎
から出てくるテーマの知財を管理しながら、
さらに事業化等を考えながら我々の探索医
療センターで臨床研究、臨床試験を支援し
てさらに次のステップに進めて行くという
ことです。こういうモデルで現在進んでい
ます。以上でございます。
41
4.各施設のTR実施状況について
トランスレーショナルリサーチを支える基盤
1.臨床試験の実務
1.臨床試験の実務 : 企画・運営・管理・解析
、JMTO ⇒ 臨床医学的基盤
! 研究組織:UHA
研究組織:UHA、
JMTO ⇒
TR(
TR(トランスレーショナルリサーチ)
実施状況
! 登録・解析センター
2.倫理審査委員会
2.倫理審査委員会
/説明文書・同意書
! プロトコル/CRF
プロトコル/CRF/
! 市民(lay
市民(lay people)
people)の参加
3.知的財産管理
3.知的財産管理 : 特許・契約・薬事
京都大学医学部附属病院
! 特許戦略、技術移転管理
探索医療センター
! 事業化推進、プロジェクトマネジメント
! 薬事管理
2004/7/23
第3回TR懇話会
TR懇話会
2004/7/23
1
第3回TR懇話会
TR懇話会
2
2
1
TRC流動プロジェクト
(2)
TRC流動プロジェクト(2)
TRC流動プロジェクト
(1)
TRC流動プロジェクト(1)
! 網膜再生(2001.10
~)
網膜再生(2001.10~)
! HGF肝再生(
2002.7~)
~)
HGF肝再生(2002.7
" ES細胞から色素上皮細胞培養、シート作成
ES細胞から色素上皮細胞培養、シート作成
" 第I/II相臨床試験
I/II相臨床試験
! グレリン創薬(2001.12
~)
グレリン創薬(2001.12~)
# 劇症肝炎(プロトコル作成、試験準備中)
" 第Ⅰ相臨床試験
! 膵β細胞再生(2002.7
~)
細胞再生(2002.7~)
# Eur J Endocrinol 2004;150:4472004;150:447-455
" 体性幹細胞からの膵β
体性幹細胞からの膵β細胞への分化誘導 細胞への分化誘導 " 第Ⅱ相臨床試験
# 摂食不振患者(2004.7
開始、症例登録中)
摂食不振患者(2004.7開始、症例登録中)
# 高齢者(プロトコル作成中)
" 高齢者グレリン血中濃度測定(2004.8終了予定)
2004.8終了予定) 2004/7/23
第3回TR懇話会
TR懇話会
2004/7/23
3
第3回TR懇話会
TR懇話会
4
4
3
非臨床研究からプロトコル作成までの流れ
TRC流動プロジェクト
(3)
TRC流動プロジェクト(3)
交渉
連携
研究開発管理
(探索医療開発部)
知財管理・法規対応
(医療開発管理部)
契約
交渉
企業
当局
! チオレドキシン創薬(2003.6
~)
チオレドキシン創薬(2003.6~)
" 第I/II相臨床試験
I/II相臨床試験
非
臨
床
研
究
の
流
監
れ
# 急性呼吸促迫症候群:ARDS
(プロトコル準備中)
急性呼吸促迫症候群:ARDS(
! 心不全への細胞移植(2003.9
~)
心不全への細胞移植(2003.9~)
" 骨格筋由来の心筋幹細胞の分離 非臨床研究進捗管理
・品質管理 ・薬理試験
・毒性試験 ・モデル動物治療実験
・非臨床データ管理
・特許マップ
特許マップ作成
マップ作成
・特許出願関係
・開発戦略策定
・サンプル提供契約
サンプル提供契約
・共同研究契約
・PL法対応
PL法対応
・薬事法対応
連携
査
・試験薬・製品概要書作成・改訂
・プロトコルコンセプト立案
・プロトコル作成・改訂
2004/7/23
第3回TR懇話会
TR懇話会
2004/7/23
5
第3回TR懇話会
TR懇話会
6
6
5
42
4.各施設のTR実施状況について
薬事法対応
臨床試験の実施体制
連携
・試験薬・製品概要書作成・改訂
・プロトコルコンセプト立案
・プロトコル作成・改訂
中 央 事 務 局
(探索医療臨床部)
監
査
連携
臨
床
試
験
の
流
れ
薬剤部
プロトコル委員会
中央診療
センター
連携
①被験者リクルート手順作成
②試験薬管理手順作成
③実施場所調整 ④検査・測定手順作成 ⑤謝金管理・健康補償 ⑥被験者リクルート 各診療科
C
R
C
C
R
C
C
R
C
診療科
診療科
診療科
連携
(検査部)
(放診部門)
(放治部門)
(病理部)
(分子細胞診療
センター)
(外来化学
療法部)
連携
看護部
・臨床試験の実施
・データ収集
2004/7/23
薬剤部
中央診療
センター
C R C 連 絡 調 整 室
探索医療検証部
探索医療臨床部
連携
⑦インフォームド・コンセント
⑧被験者のスクリーニング・登録
⑨進捗管理
⑩臨床検査の管理・検体処理
⑪有害事象の対応
⑫症例報告書記載
第3回TR懇話会
TR懇話会
看護部
2004/7/23
7
第3回TR懇話会
TR懇話会
8
8
7
中央診療
センター
C R C 連 絡 調 整 室
C
R
C
C
R
C
C
R
C
診療科
診療科
診療科
連携
・臨床試験の実施
・データ収集
モ
ニ
タ
リ
ン
グ
デ
ー
タ
収
集
TRC 実務の状況
(検査部)
(放診部門)
(放治部門)
(病理部)
(分子細胞診療
センター)
(外来化学
療法部)
流動プロジェクト以外にも
臨床開発テーマがめじろ押し!
看護部
モ
ニ
タ
リ
ン
グ
デ
ー
タ
収
集
モ
ニ
タ
リ
ン
グ
! 戦略的特許出願
デ
ー
タ
収
集
! 企業との契約
! 会社の創設
・症例登録
→Web上で管理可能に
(人員の削減化)
登 録 セ ン タ ー
! 資金調達
! プロジェクトマネジメント
・データマネジメント、解析
・モニタリング
デ ー タ セ ン タ ー
(探索医療検証部)
2004/7/23
第3回TR懇話会
TR懇話会
2004/7/23
9
第3回TR懇話会
TR懇話会
10
10
9
知財管理と事業化
(社)芝蘭会産学情報交流部
弁理士
弁護士
戦略的トランスレーショナルリサーチ
- 京都大学次世代医療技術開発モデル -
特許庁
医学領域産学連携オフィス
COE1
COE1
〈再生移植〉
知的財産経営学コース
契約・MTA
知財管理
(株)BIC
知財管理
先
端
融
合
厚生労働省
COE2
COE2
〈病態解明〉
企 業
TRC
医療開発管理部
事業化
2004/7/23
第3回TR懇話会
TR懇話会
医
学
知領
財域
管
理
部
開
• がん
発
• 脳卒中
・
検T
•
証 R 心疾患
• アルツ
・
臨 C ハイマー病
床
• 関節障害
部
産
学
連
携
コ
ー
デ
ィ
ネ
ー
タ
ー
医
療
開
発
管
理
部
• 事業化
I
T
技
術
• 他大学・医療機関
への技術移転
• 実地医療
Venture Capital
海外機関・企業
2004/7/23
11
第3回TR懇話会
TR懇話会
12
12
11
43
4.各施設のTR実施状況について
(4) (財)先端医療振興財団
(財)先端医療振興財団臨床研究情報
先端医療振興財団臨床研究情報センター
臨床研究情報センター 主任研究員 永井 洋士
にそれぞれについて触れたいと思います。
先端医療振興財団の永井と申します。
私ども先端医療振興財団では、先端医療
まず第 1 の ASO またはバージャー病に対
センターと臨床研究情報センターという 2
する血管再生臨床試験ですが、これは血管
つの研究所を中核としてトランスレーショ
撮影で閉塞または狭窄が確認された下肢虚
ナルリサーチ(TR)を推進しております。
血の患者を対象にしております。他に代替
この 2 つの研究所は、線路を挟んで合い面
治療がなく、下肢切断を免れないような患
しておりまして、西側の先端医療センター
者さんが対象です。GCSF で末梢血中の
で実際の患者さんを対象としたトランスレ
CD34 細胞を増殖させ、それを患部に注射
ーショナルリサーチを行い、東側の臨床研
するという治療ストラテジーです。主要エ
究情報センターで TR の計画、運営、デー
ンドポイントとして、最大歩行距離、下肢
タマネジメント、解析等を支援しておりま
や爪先と上腕の血圧比、それから痛みを総
す。また、つい先日、臨床研究情報センタ
合したスコアを作っております。副次エン
ーの北側には多くのベンチャー企業が入居
ドポイントはいろいろあります。予定症例
する施設がオープンしました。
数は 15 例、登録 2 年、追跡 1 年です。先程
私どもは、発足してまだ 2 年程の組織で
の「TR の実施に関する共通倫理指針」に完
すが、早急に TR 推進体制を整えまして、
全に準拠する形で進めており、現在、概要
ここに示しました 3 つのトランスレーショ
書、プロトコル、CRF、有害事象対応マニ
ナルリサーチを行っております。まず、第
ュアル、倫理委員会の承認が完了し、15
一が ASO あるいはバージャー病の患者を
例目標のところ、現在6例の患者さんが登
対象とした自家末梢血血管内皮細胞移植の
録されて追跡とデータマネジメントを行っ
血管再生に関する PhaseⅠ-Ⅱ試験、次に、
ております。
心筋梗塞または狭心症を対象とした末梢血
次に心臓病に対する血管再生臨床試験で
血管内皮細胞移植に関する血管再生治療
すが、主な適格規準は、血管撮影で確認さ
PhaseⅠ-Ⅱ試験、3つ目として、歯周病を
れた1枝病変で EF が 50 パーセント未満、
対象とした培養骨芽細胞および培養骨芽細
または、2∼3枝病変を有する患者さんで
胞及び間葉系幹細胞の自家移植に関する歯
す。移植するのは先程と同じ CD34 陽性細
槽骨再生の臨床試験です。以下、ごく簡単
胞です。主要エンドポイントとしては、薬
44
4.各施設のTR実施状況について
剤負荷心筋シンチによる心筋還流異常の重
になっております。現在、ここに示しまし
症度です。予定症例数は 10 例、登録 1 年、
たように Phase Ⅰとして 1 本、PhaseⅠ-
追跡 1 年となっています。現在、概要書プ
Ⅱとして 4 本、Phase Ⅱとして 17 本、
ロトコルが完了し、
CRF を作っております。
PhaseⅢとして 15 本、合計 50 本程の臨床
また、有害事象対応マニュアルは既にでき
試験あるいはトランスレーショナルリサー
ています。神戸中央市民病院の倫理委員会
チを支援しております。以上です。どうも
を通過しまして、近日中に先端医療センタ
ありがとうございます。
ーの倫理委員会で審査されることになって
おります。
3 つ目が歯周病患者に対する歯槽骨再生
臨床試験、これは壁性骨欠損を有する歯周
病患者が対象です。治療としては自家骨髄
由来の培養骨芽細胞と培養間葉系細胞の移
植です。主要エンドポイントとしては、ポ
ケット底変化量差であり、予定症例数 10 例、
登録 1 年、追跡 2 年です。現在の進捗状況
としては、概要書、プロトコル、CRF が完
成し、つい 2 日程前に第 1 例目の患者さん
が登録されました。
続いて臨床研究情報センターの方での支
援内容について述べさせていただきます。
現在、福島教授、私、非常勤職員を含め、
研究指導医師 6 名、統計家6名、研究運営・
管理者 15 名、IT 管理・データベース開発 5
名、知財契約管理、秘書という体制で、先
端医療センターのみならず全国のトランス
レーショナルリサーチあるいは臨床試験を
支援しております。TRI での支援内容はこ
こに示したとおりですが、2、3 ヶ月後には
検体の保存管理システムが立ち上がること
45
4.各施設のTR実施状況について
神戸医療産業都市の現況
先端医療センター/臨床研究情
報センターにおけるTR
実施状況
報センターにおけるTR実施状況
先端医療振興財団 臨床研究情報センター
永井洋士
2004年7月23日 第3回TR懇話会
2
1
2
1
重症下肢虚血患者に対する
血管再生臨床試験
先端医療センターにおけるTR
主な適格規準
慢性重症下肢虚血(慢性閉塞性動脈硬化症・バージャー病)患
慢性重症下肢虚血(慢性閉塞性動脈硬化症・バージャー病)患
者を対象とした自家末梢
血血管内皮前駆細胞
管内皮前駆細胞(
(CD34陽性細胞)
者を対象とした自家末梢血血
CD34陽性細胞)
移植による血管再生
治療に関する第Ⅰ-Ⅱ相試験
移植による血管再生治療に関する第Ⅰ
!
動脈造影にて閉塞または狭窄(内径狭窄率50%以上)部位
が確認された下肢虚血(ASO/バージャー病)患者
治療
! 血管内皮前駆細胞(CD34陽性細胞)移植
主要EP
! 主要評価スコア(最大歩行距離+TBPI+疼痛)
慢性重症虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)患者を対象とした
慢性重症虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)患者を対象とした
自家末梢
血血管内皮前駆細胞
管内皮前駆細胞(
(CD34陽性細胞)移植による
血
自家末梢血血
CD34陽性細胞)移植による血
管再生治療に関する第Ⅰ
-Ⅱ相試験
管再生治療に関する第Ⅰ-
副次EP
! 最大歩行距離、跛行出現距離、TBPI、ABPI、など
歯周病患者を対象とした
培養骨芽細胞様細胞及び培養間葉
歯周病患者を対象とした培養骨芽細胞様細胞及び培養間葉
系幹細胞の自家移植による
歯槽骨再生能の検討(第Ⅰ
能の検討(第Ⅰ-Ⅱ相
系幹細胞の自家移植による歯槽骨再生
試験)
予定症例:15例、登録:2年、追跡:1年
4
3
4
3
重症下肢虚血患者に対する
血管再生臨床試験
重症虚血性心疾患患者に対する
血管再生臨床試験
実施期間: 2003年11月~2005月12月
主な適格規準
!
進捗状況
概要書
済
登録症例数
プロトコル
済
追跡
進行中
CRF
済
DM
進行中
有害事象対応
マニュアル
済
中間解析
IRB承認
IRB承認
済
最終解析
動脈造影にて、1枝病変(実質狭窄率50~70%)かつ
EF<50%、または、2~3 枝病変を有するMI/AP患者
治療
! 血管内皮前駆細胞(CD34陽性細胞)移植
6/15
主要EP
! 薬剤負荷後の心筋潅流異常重症度
副次EP
!
NYHA class、トレッドミル最大歩行時間、NOGA所見
予定症例:10例、登録:1年、追跡:1年
5
6
5
6
46
4.各施設のTR実施状況について
重症虚血性心疾患患者に対する
血管再生臨床試験
歯周病患者に対する
歯槽骨再生臨床試験
実施期間: 2004年8月~2005月7月
主な適格規準
進捗状況
!
概要書
済
登録症例数
プロトコル
済
追跡
進行中
DM
!
CRF
有害事象対応
マニュアル
済
IRB承認
IRB承認
壁性骨欠損を有する30~60歳の歯周病患者
治療
自家骨髄由来の培養骨芽細胞・培養間葉系幹細胞移植
主要EP
!
ポケット底変化量差
副次EP
中間解析
!
最良骨増生量、治療歯動揺度、など
予定症例:10例、登録:1年、追跡:2年
最終解析
7
8
7
8
歯周病患者に対する
歯槽骨再生臨床試験
臨床研究情報センター
におけるTR
支援
におけるTR支援
実施期間: 2004年4月~2005月3月
進捗状況
概要書
済
登録症例数
プロトコル
済
追跡
CRF
済
DM
有害事象対応
マニュアル
済
中間解析
IRB承認
IRB承認
済
最終解析
1
Translational Research Informatics Center
10
9
10
9
支援内容
支援体制
6
試験物の概要書作成支援
研究指導医
6
生物統計
15
IT管理
IT管理
DB開発
DB開発
臨床研究運営管理
プロトコル作成支援
5
統計解析計画の策定
症例報告書作成
登録デスク
登録デスク
サポートデスク
説明・同意文書作成支援
3
Web症例登録・追跡システムの準備と運営
Web症例登録・追跡システムの準備と運営
6
プロジェクト管理
プロジェクト管理
知財・
知財・契約管理
秘書
データマネジメントと試験の進捗管理
データ解析
検体保存・管理
プロジェクト
11
12
11
12
47
4.各施設のTR実施状況について
Our Web Sites
支援中の臨床研究
2004.6
Phase Ⅰ
Phase Ⅰ-Ⅱ
Phase Ⅱ
Phase Ⅲ
Outcomes
Genetic
1
4
17
15
8
2
Diagnostic
3
Total
50
臨床研究情報センター (http://www.tri-kobe.org/)
臨床試験運営部 (http://www.tri-kobe.org/DCTM.html )
先端医療振興財団 (http://www.ibri-kobe.org/)
PDQ最新がん情報* (http://www.ccijapan.com/)
*米国国立がん研究所が提供する世界最大のがんデータベース
13
14
13
14
48
4.各施設のTR実施状況について
(5) 大阪大学医学部附属病院
大阪大学医学部附属病院未来医療センター
大阪大学医学部附属病院未来医療センター 助手 中村 憲正
阪大病院の未来医療センターでのトラン
活動ですが、共同研究企業は、現在のとこ
スレーショナルリサーチの取組みについて
ろ 9 社あります。これらの企業と、生活習
紹介させていただきます。
慣病の治療や心不全治療、骨軟骨再生、角
未来医療センターにおける研究プロジェ
膜再生、感染症の検査技術開発、さらにナ
クトは、臨床試験に関しては未来医療臨床
ノバイオ、ロボティックスと色々なシーズ
研究プロジェクトと命名しておりまして、
開発を試みております。
これがプロジェクトの柱であります。が、
未来医療臨床研究プロジェクトは、承認
これとは別に、次世代のシーズの開発とい
を得たものが現在 4 つあります。整形外科
うことで前臨床研究プロジェクト、産学連
から自己骨髄培養肝細胞用いての骨関節疾
携プロジェクト、医工連携プロジェクトな
患の治療、眼科から難治性の視神経疾患に
どを取り扱い、推進していく体制を取って
対する神経保護治療、心臓血管外科から末
おります。未来医療センターは阪大病院の
期的虚血性心疾患に対する左室補助装置と
外来棟の4階にあります。内部に細胞調整
自己由来細胞装置を併用した新たな治療法
施設(CPC)がありましてそれを囲むよう
の開発、そして眼科から難治性角結膜疾患
に研究区域があります。またこの区域と完
に対する培養上皮細胞シート移植の臨床応
全に遮閉された状態で別に治療区域があり
用の各プロジェクトが未来医療審査評価委
ます。この中にあります手術室は、ロボテ
員会により承認を受け、現在臨床研究が進
ィックスのシミュレーション操作も可能で
行中です。
すが、未来の手術室として機能できるよう
各プロジェクトについて簡単に説明させ
院内外とのネットワーク等のインフラ整備
ます。整形外科のプロジェクトですが、こ
を行いました。CPC は平成16年 4 月に完
れは大阪大学が開発して現在既に厚生省か
成しまして、4 つの独立した P2 封じ込めレ
ら承認を得て市販されている人工骨がござ
ベルの細胞調整室を有しております。ロボ
いますが、この内部に骨髄から採りました
ティックスシミュレーション室では、産学
組織幹細胞を培養し、骨新生、骨形成能を
連携プロジェクトにより新しい新世代のナ
高め、これをこれまで治療困難とされてき
ビゲーション化の手術の開発が進んでおり
た巨大な骨欠損に対しての治療に用いるも
ます。未来医療センターにおける産学連携
のです。現在、2 名の方がエントリーされ
49
4.各施設のTR実施状況について
て早ければ、8 月中に 1 例目の治療が開始
される予定となっております。眼科のプロ
ジェクトですが、角膜に電気刺激を加える
事によって視神経細胞の虚血性変化に伴う
細胞死、アポトーシスを抑制しようという
試みで、予定では 20 名の臨床研究のプロト
コルが作成されまして現在 7 名終了してい
るところでございます。心臓血管外科のプ
ロジェクトですが、これは筋芽細胞と骨髄
の単核球を虚血壊死を起こした心臓に移植
して筋再生効果と血管新生効果と両方狙う
というもので、非常に重症で補助人工心臓
補助下に行うという治療のプロジェクトで
す。これも近いうちに治療開始されると思
います。4つ目のプロジェクトですが、こ
れは阪大の眼科と東京女子医大の岡野教授
との共同研究によるものです。温度感受性
培養皿という特殊な培養皿の上で角膜上皮
の幹細胞を自己の脂肪からとった細胞フィ
ーダー細胞として培養しますと重層化した
組織ができるようになります。さらに、温
度を下げてやるとその組織自身が培養の底
から剥がれてシート状になり、この組織を
今まで治療困難であった角膜の潰瘍とか、
損傷部に戻して再生しようとする試みです。
このプロジェクトは、先月の審査評価委員
会で承認がおりまして現在 SOP 等の調整
をしているところです。
50
4.各施設のTR実施状況について
(6) 九州大学病院
九州大学病院長 水田 祥代
九州大学病院の水田でございます。
血肢)
、虚血性心臓病、悪性腫瘍に対する樹
九州大学病院におきましてはスライドに
状細胞による免疫遺伝子治療に関する臨床
示しますようにトランスレーショナルリサ
研究の開発を進めていきたいと考えており
ーチの研究組織を整え、遺伝子・細胞療法
ます。
臨床応用される遺伝子治療用のベクター
センターと先端医工学診療部をその臨床応
は、GMP(品質管理規制)に基づいた製造
用部門としております。
先ほど中西教授から説明がありましたよ
のために、スライドに示すようにクリニカ
うに臨床研究センターできちんとした基準
ル・ロットの検査項目に対しての方法の確
作りを行い、トランスレーショナルリサー
立が必要不可欠です。センダイウィルスに
チを推進しております。
関しましては、既に米国 FDA 基準に則った
今回はこの研究内容に関してご説明します。 GMP 生産工程が全て確立しています。
現在進行中のプロジェクトとしましては
九州大学病院におけるセンダイウィルス
産学連携国産遺伝子治療技術開発プロジェ
を用いた臨床研究としての第一段階は虚血
クト、テーラーメードのマルチペプチドパ
性疾患に対する治療的血管新生療法であり、
ルス樹状細胞を用いた癌の免疫療法、それ
重症虚血肢に対する研究は、2002 年 9 月に
に先端医工学診療部のロボテイックシステ
倫理委員会承認済、2003 年 2 月から厚生科
ムの開発、この3つがあげられます。
学審議会審議中であります。先程、述べた
遺伝子・細胞療法センターには遺伝子細
ように GMP ベクター生産済であり、また
胞療法部と先端分子・細胞治療科が含まれ
新病棟の CCU 内に循環器疾患用遺伝子治
ます。
療室を設置済です。
また、虚血性心疾患に対する研究では大
最初は産学連携国産遺伝子治療技術開発
プロジェクトについてプレゼンテーション
動物効能試験を現在実施中です。
いたします。センダイウィルスは、九州大
次に悪性腫瘍に対する樹状細胞免疫遺伝子
学病院が産学連携で開発を進めてきた国産
治療の進行状況ですが、メラノーマ細胞株
の遺伝治療のためのベクターであり、九州
を用いたセンダイウィルス導入樹状細胞の
大学病院としては,このセンダイウィルス
局所腫瘍投与による抗腫瘍効果を示します。
を用いて下肢慢性動脈閉塞性疾患(重症虚
メラノーマにおけるセンダイウィルス導入
51
4.各施設のTR実施状況について
樹状細胞の抗腫瘍効果を基にさらに現在、
1)有害事象の評価
難治性小児固形悪性腫瘍に対する樹状細胞
2)抗腫瘍効果
免疫遺伝子治療を計画しています。進行神
3)生存期間の評価
経芽腫を中心とする難治性小児固形悪性腫
4)免疫反応の評価
瘍に対してセンダイウィルスによる免疫賦
最終的には
活化サイトカインを導入した樹状細胞療法
1)プライマリー・エンドポイント:テー
を確立し、治療成績向上を目指すことを最
ラーメード・マルチペプチドパルス樹状細
終目標にしています。
胞の安全性ならびに有害事象の検討。
をおこない、
2)セカンンダリー・エンドポイント:本
次は谷先生らのグループである先端分
子・細胞治療科で行われているテーラーメ
研究の完遂性, 抗腫瘍効果の評価。
ード・マルチペプチドパルス成熟樹状細胞
3)サード・エンドポイント:テーラーメ
を用いた癌免疫療法臨床研究について説明
ード・マルチペプチドパルス樹状細胞投与
いたします。
患者における免疫反応の変化ならびにファ
ーマコジェノミクス的解析。
この研究の目的ですが
以上を評価指標としております。
テーラーメード・マルチペプチドパルス樹
最後は先端医工学診療部で行っている外
状細胞療法の実施の可能性
テーラーメード・マルチペプチドパルス樹
科領域におけるロボティックシステムの開
状細胞接種による・有害事象発生の有無・
発です。
手術支援ロボットに求められるものは、
抗腫瘍免疫誘導能・対象患者の生存期間と
評価可能病変の縮小効果の有無臨床効果
本来外科医自身の能力を遙かに超える「目」
などについて検討することです。
や「手」であり、従来の手術方式では技術
的に手術困難ないしは手術不可能であった
固形腫瘍患者を対象として開発された癌
ペプチドのうち患者末梢血リンパ球中のキ
手技を容易にし、手術可能にすることです。
ラーT 細胞前駆体に認識されるか、もしく
これにより、手術をより安全で確実なもの
は血清中にペプチド特異的 IgG 抗体の存在
にし、低侵襲化と、手術適応の拡大、医療
が確認されたペプチド最大4種類を用いて、 従事者の負担の軽減、手術合併症の減少、
患者末梢血より精製した成熟樹状細胞をパ
手術ミスの減少、医療費の削減などの多く
ルスし、患者体内へ皮下注射により戻しま
の効果が期待できます。
ロボットシステムの開発の中で、腹腔鏡
す。
マニピュレータが完成し、九州大学にて充
臨床研究評価項目としましては、
52
4.各施設のTR実施状況について
分な臨床評価ののち、平成 14 年度に日立製
ならないということです。このため、遺伝
作所よりナビオットとして製品化され、我
子治療や分子イメージングなどの新しい研
が国初の手術支援ロボットとして厚生労働
究領域との融合を目指す必要があります。
省から医療用具認定を受けました。これは
社会的課題については法整備やリスクマネ
医工連携研究の最初の成果としてマスコミ
ージメント、普及活動などが挙げられます。
今回私が説明いたしましたが、病院長と
からも関心が寄せられました。
またこれが実際に開発された手術支援ロ
しましてはこのように新しい取り組みを行
ボットのプロトタイプです。マスターマニ
っている若い研究者たちの芽をつまないよ
ピュレータは自由に動き、かつ力覚のフィ
うにして、今後発展させていかせることが
ードバックを備えています。スレーブマニ
大切であり、このことがよい病院づくりへ
ピュレータは可変視野内視鏡と3本のアー
とつながるのではないかと考えており、出
ムを備えており、体外での動作が少ないの
席させていただきました。
が特徴です。他には先端に複数の関節をも
つ多自由度鉗子や、先端にカメラと冷却装
置を持つレーザーメスなど、新しい鉗子も
開発致しました。
最後に手術支援ロボットの課題を簡単に
述べたいと思います。
大きく分けて技術的課題と社会環境的な
課題があります。技術的課題としてはやは
り多くの医療施設で用いるためには小型化
とコストの削減が重要です。
2番目には安全性の向上です。手術の安
全性を向上させるためにはナビゲーション
の発展は不可欠です。外科医の新しい眼と
して多くの情報を有機的に使えるようなシ
ステムの構築が重要だと思います。
3番目の課題は治療の質的向上です。従
来の手術手技や外科医を模倣するのではな
く、治療そのものを変えるものでなくては
53
4.各施設のTR実施状況について
産学連携国産遺伝子治療技術開発プロジェクト
1. 産学連携国産遺伝子治療技術開発
プロジェクト
遺伝子・
細胞療法センター
遺伝子
・細胞療法
センター
九州大学病院における
九州大学病院における
Translational Researchの
Researchの現状
2. テーラーメード
テーラーメード・・マルチペプチドパルス
成熟樹状細胞を
いた癌免疫療法臨床研究
成熟樹状細胞
を用いた
癌免疫療法臨床研究
遺伝子・
細胞療法センター
遺伝子
・細胞療法
センター
水田 水田 祥代
3. 外科領域における
外科領域におけるロボティックシステム
におけるロボティックシステムの
ロボティックシステムの開発
先端医工学診療部
2
1
遺伝子・・細胞療法
細胞療法センター
遺伝子
センター
九州大学病院トランスレーショナル
九州大学病院トランスレーショナル研究組織
トランスレーショナル研究組織
病
病 院
院 長
長
トランスレーショナル
トランスレーショナル
リサーチ推進
リサーチ
リサーチ推進
リサーチ推進
推進
((AMC病床
AMC
病床
中心
とした
AMC病床
病床を
を中心とした
中心とした
とした利用
利用))
AMC病床を
病床を
中心とした利用
とした利用
遺伝子・
遺伝子
遺伝子・
細胞療法
遺伝子・・細胞療法
センター
センター
遺伝子・
遺伝子
遺伝子・
細胞療法部
遺伝子・・細胞療法部
トランスレーショナルリサー
トランスレーショナルリサー
チコーディネータ(TRC)
チコーディネータ
チコーディネータ(TRC)
(TRC)
チコーディネータ(TRC)
サポート
運営会議
運営会議
薬剤部
薬剤部
看護部
看護部
検査部
検査部
管理栄養士
管理栄養士
*
*心理療法師
心理療法師
*
データ
*データ解析部門
データ解析部門
解析部門
データ解析部門
治験管理室
治験管理室
サポート
先端医工学診療部
先端医工学診療部
輸血療法
輸血療法
部
部門
門
各診療科
細胞療法支援
細胞療法支援
部門
部門
各診療科
各診療科
先端療法検査部門
先端療法検査部門
((腫瘍センター
腫瘍
センター
腫瘍センター
センター)
腫瘍センター)
センター))
特
特 殊
殊 検
検 査
査
((遺伝子・
遺伝子
遺伝子・
免疫等先端治療
遺伝子・・免疫等先端治療
研究
データ
研究データ
データの
の集積
集積))
研究データの
データの
プロトコール提出
プロトコール提出
トランスレーショナルリサーチ
研究計画
遺伝子療法
遺伝子療法
支援部門
支援部門
先端分子・
先端分子
細胞
先端分子・
AMC)
先端分子・・細胞(
細胞((AMC)
治療科
治療科
通常輸血療法
検
検査
査部
部
九州大学臨床研究センター
九州大学臨床研究センター
倫理審査委員会
運営会議
運営会議
・・適応症例検討会
適応症例検討会
・・臨床研究経過等報告会
臨床研究経過等報告会
((AMC病床等
AMC
病床等
AMC病床等
病床等)
AMC病床等)
病床等))
各製品の
各製品のGMP
グレードチェック
患者の
の安全性チェック
患者
安全性チェック
通常各種検査
(検査部・
検査部・薬剤部)
薬剤部)
通常細胞療法
(造血細胞療法、
造血細胞療法、
免疫細胞療法など
など)
免疫細胞療法
など)
各診療科病床 など
サポート
患者の
患者の安全性チェック
安全性チェック
データ解析
データ解析
( *データ解析部門
データ解析部門・
解析部門・
治験管理室)
治験管理室)
先端分子細胞治療科(
先端分子細胞治療科(AMC)
国際病診連携センター
国際病診連携センター
九州大学病院
九州大学病院
西日本および
西日本
西日本および
および
西日本および
東
アジア
東アジア病院
アジア病院
病院
アジア病院
トランスレーショナルリサーチコーディネータ
トランスレーショナルリサーチコーディネータ
((TT RR C)
CC)
C))
薬剤部
薬剤部
看護部
看護部
管理栄養士
管理栄養士
*
*心理療法師
心理療法師
*
データ
*データ解析部門
データ解析部門
解析部門
データ解析部門
治験管理室
治験管理室
4
3
九州大学病院における
九州大学病院
における
産学連携国産遺伝子治療技術開発
国産遺伝子治療技術開発プロジェクト
産学連携
国産遺伝子治療技術開発
プロジェクト
□基本コンセプト
基本コンセプト
産学連携国産遺伝子治療
技術開発プロジェクト
技術開発
プロジェクト
・全く新しいコンセプト
しいコンセプトに
コンセプトに基づく国産技術
づく国産技術
→
→ 世界初の
世界初の細胞質型RNA
細胞質型RNAベクター
RNAベクターであり
ベクターであり、
であり、
強力
強力な
強力な遺伝子導入・
遺伝子導入・発現能力を
発現能力を持つ、
組換
組換え
組換えセンダイウイルスベクター(
センダイウイルスベクター(SeV)
SeV)
組換え
組換えセンダイウイルスベクター
(SeV:
SeV: recombinant Sendai virus)
virus)
遺伝子・・細胞療法部
遺伝子
・強力な
強力な特許クラスター
特許クラスターによる
クラスターによる国際的先導性
による国際的先導性
の
の確保
→ 基盤特許は
基盤特許は既に米国他で
米国他で成立。
成立。
クラスター化特許
クラスター化特許は
化特許は30以上
30以上。
以上。
□今後5
今後5年間の
年間の臨床研究開発候補
・下肢慢性動脈閉塞性疾患(
下肢慢性動脈閉塞性疾患(重症虚血肢)
重症虚血肢)
・虚血性心臓病
・悪性腫瘍に
悪性腫瘍に対する樹状細胞
する樹状細胞による
樹状細胞による免疫遺伝子治療
による免疫遺伝子治療
6
5
54
4.各施設のTR実施状況について
治療用ベクター
治療用ベクターの
ベクターの
GMP製造技術
GMP製造技術の
製造技術の完成
SeVは
SeVは世界初の
世界初の細胞質型 RNA ベクターである
ベクターである
Existing vectors
SeV vector
■クリニカル・
クリニカル・ロットの
ロットの 検査項目と
検査項目と方法の
方法の確立
GOI
AA AA
AAA A
AA
□ 力価(
力価(遺伝子導入効率)
遺伝子導入効率)
□ 純度
GOI
細胞質内での
のまま転写
転写 =
細胞質内でのRNA
でのRNAのまま
RNAのまま
転写 =
DNAである
である染色体
DNA
である染色体との
染色体との相互作用
との相互作用なし
相互作用なし
□ エンドトキシン
エンドトキシン試験
試験
□ 無菌試験
□ マイコプラズマ
マイコプラズマ否定試験
否定試験
□ ウイルス否定試験
ウイルス否定試験
DNAとして
DNAとして核内
として核内へ
核内へ移行 =
移行 =
染色体への
への積極的
染色体
への積極的・
積極的・偶然的挿入
□ 増殖性ウイルス
増殖性ウイルスの
ウイルスの否定試験
センダイウイルスベクターの
センダイウイルスベクターの場合
Titre testing
38499
Haemagglutination assay to
qualify Sendai virus particles
CIU assay to qualify Sendai virus
80014
particles
Sterility and Mycoplasma testing
37409
Sterility testing
37090
Mycoplasma detection (FDA)
Detection of mycoplasma species
37184
Retrovirus testing
F-PERT testing
37405
Adventitious agent testing
Cust.
28 day in vitro assay with blind passage
Cust.
37027
In vivo assay using adult and suckling
mice and embryonated eggs
8
7
虚血性疾患に
虚血性疾患
に対する治療的血管新生療法
する治療的血管新生療法
悪性腫瘍に
する樹状細胞免疫遺伝子治療
樹状細胞免疫遺伝子治療
悪性腫瘍に対する
国際出願番号
PCT/JP2001/010323 優先権主張番号
国際出願番号 PCT/JP2001/010323
優先権主張番号:
優先権主張番号:特願2000
特願20002000-359374
課題名
課題名:
課題名:血管新生遺伝子を
血管新生遺伝子をコードする
コードするパラミクソウイルスベクター
するパラミクソウイルスベクターおよびその
パラミクソウイルスベクターおよびその利用
およびその利用
未公開特許
未公開特許:
:特願
特願2003
2003された樹状細胞
樹状細胞の
未公開特許
2003-374808 374808 課題名
課題名:
課題名:遺伝子導入された
遺伝子導入された
樹状細胞の製造方法
ヒト末梢血単球由来樹状細胞
ヒト末梢血単球由来樹状細胞
組換え
組換えセンダイウイルスベクター
□ 樹状細胞(
樹状細胞(DC)
DC)への遺伝子導入
への遺伝子導入における
遺伝子導入におけるSeV
におけるSeVの
SeVの優位性
重症虚血肢:
重症虚血肢: 2004年実施予定
2004年実施予定
虚血性心疾患:
虚血性心疾患:
・倫理委員会承認済
倫理委員会承認済(
(2002年
2002年9月)
・厚生科学審議会審議中
厚生科学審議会審議中(
(2003年
2003年2月? )
・GMPベクター
GMPベクター生産済
ベクター生産済(
生産済(2004年
2004年3月輸入済)
月輸入済)
・循環器疾患用遺伝子治療室設置済
(
(南棟CCU
南棟CCU内
CCU内)
・新GCP準拠試験
準拠試験(
(外部CRO
GCP準拠試験
外部CRO導入
CRO導入)
導入)
・大動物効能試験、
大動物効能試験、
サル
サル安全性試験実施中
サル安全性試験実施中
・短時間での
短時間での遺伝子導入
での遺伝子導入が
遺伝子導入が可能
→
→ 30分
30分の低力価の
低力価の接触で
接触で、前処置なしに
前処置なしに最大導入効率
なしに最大導入効率(
最大導入効率(90%以上
90%以上)
以上)を示す。
活性化される
される
・遺伝子導入された
遺伝子導入されたDC
されたDCは
DCは活性化操作を
活性化操作を必要とせず
必要とせず、
とせず、最大に
最大に活性化
→
→ SeVによる
SeVによるDC
によるDCの
DCの活性化能は
活性化能は、LPS、
LPS、cytokine cocktail、
cocktail、OKOK-432処理
432処理と
処理と
比較
比較して
比較して同等以上
して同等以上である
同等以上である。
である。しかもこれらの操作
しかもこれらの操作では
操作では得
では得られない、
られない、
MHC
MHCクラス
MHCクラスII
クラスII抗原
II抗原の
抗原の著明な
著明な発現亢進が
発現亢進が得られる。
られる。
10
9
難治性小児固形悪性腫瘍に
難治性小児固形悪性腫瘍
に対する
樹状細胞免疫遺伝子治療
B16メラノーマ
メラノーマに
に対するSeV
B16
メラノーマ
するSeVSeV-DCの
DCの抗腫瘍効果
26日目
26日目の
日目の腫瘍サイズ
腫瘍サイズ
200
150
Tumor volume (mm3)
Tumor volume (mm3)
B16F1(
B16F1(MHCクラス
MHCクラス1
クラス1陽性、
陽性、低悪性度株)
低悪性度株)
治療なし
治療なし
100
50
0
10
20
LPS-DC
SeV-GFP-DC
*治療遺伝子を
せずとも、
、
治療遺伝子を搭載せずとも
搭載せずとも
SeV抗腫瘍効果は
は
SeV-DCの
DCの抗腫瘍効果
LPSで
LPSで活性化した
活性化したDC
したDCより
DCより高
より高い
30 (days)
□コンセプト
40
進行神経芽腫を
進行神経芽腫を中心とする
中心とする難治性小児固形悪性腫瘍
とする難治性小児固形悪性腫瘍に
難治性小児固形悪性腫瘍に対してSeV
してSeVによる
SeVによる
免疫賦活化サイトカイン
免疫賦活化サイトカインを
サイトカインを導入した
導入した樹状細胞療法
した樹状細胞療法を
樹状細胞療法を確立し
確立し、治療成績向上
を目指すことを
目指すことを最終目標
すことを最終目標に
最終目標に、マウスによる
マウスによる前臨床試験
による前臨床試験の
前臨床試験の動物実験の
動物実験の確立、
確立、
免疫学的抗腫瘍メカニズム
免疫学的抗腫瘍メカニズム解析
メカニズム解析、
解析、サルによる
サルによる安全性試験
による安全性試験を
安全性試験を経て、Phase I, II
studyの
studyの臨床研究を
臨床研究を実施する
実施する。
する。
30
20
10
0
□前臨床試験の
前臨床試験の動物実験
LPS-DC SeV-GFP
-DC
小児固形悪性腫瘍由来の
小児固形悪性腫瘍由来の細胞株を
細胞株を皮下に
皮下に移植した
移植した担癌
した担癌マウス
担癌マウスに
マウスに対して細
して細
胞株の
胞株のlysateを
lysateをパルスした
パルスしたSeV
したSeVのみを
SeVのみを導入
のみを導入した
導入した樹状細胞
した樹状細胞、
樹状細胞、及びINFINF-βを発現
するSeV
そけい部
部リンパ節付近
するSeVを
SeVを導入した
導入した樹状細胞
した樹状細胞を
樹状細胞をそけい
リンパ節付近の
節付近の皮下に
皮下に投与し
投与し、免疫
応答、
応答、抗腫瘍効果を
抗腫瘍効果を判定中
判定中。
LPS-DC:
:
1/3の
のマウスで
マウスで腫瘍完全消失
SeV-GFP-DC
2/3の
のマウスで
マウスで腫瘍完全消失
12
11
55
4.各施設のTR実施状況について
研究目的
i) テーラーメード
テーラーメード・
・マルチペプチドパルス樹状細胞療法
マルチペプチドパルス樹状細胞療法
の実施の
実施の可能性
テーラーメード・・マルチペプチドパルス
テーラーメード
成熟樹状細胞を
いた癌免疫療法臨床研究
成熟樹状細胞
を用いた
癌免疫療法臨床研究
ii) テーラーメード
テーラーメード・
・マルチペプチドパルス樹状細胞接種
マルチペプチドパルス樹状細胞接種
による
・有害事象発生の
有害事象発生の有無(
有無(安全性評価)
安全性評価)
先端分子・・細胞
細胞((AMC)
AMC)治療科
先端分子
治療科
・抗腫瘍免疫誘導能
・対象患者の
評価可能病変の
の縮小
対象患者の生存期間と
生存期間と評価可能病変
効果の
効果の有無(
有無(臨床効果など
臨床効果など)
など)
について検討
について検討する
検討する。
する。
14
13
方 法
HLA
HLAHLA-A24陽性
A24 陽性もしくは
陽性 もしくはHLA
もしくは HLAHLA-A2陽性
A2 陽性の
陽性 の 固形腫瘍患者
を対象として
対象として開発
として開発された
開発された癌
された癌ペプチドのうち
ペプチドのうち
樹状細胞
樹状細胞
(未熟)
未熟)
+
サイトカイン
患者末梢血リンパ
リンパ球中
球中の
細胞前駆体に
認識さ
患者末梢血
リンパ
球中
のキラーT
キラー T細胞前駆体
に認識
さ
れるか、
、
れるか
樹状細胞
(成熟)
成熟)
+
もしくは血清中
血清中に
ペプチド特異的
特異的IgG
IgG抗体
抗体の
存在が
もしくは
血清中
にペプチド
特異的
IgG
抗体
の存在
が確認
された
腫瘍抗原
腫瘍抗原
(ペプチド
(ペプチド)
ペプチド)
ペプチド最大
最大4
4種類
種類(
(テーラーメード・
ペプチド最大
テーラーメード・マルチペプチド)
マルチペプチド)を
用いて、
患者末梢血より
より精製
精製した
した成熟樹状細胞
いて、 患者末梢血
より精製
した成熟樹状細胞を
成熟樹状細胞をパル
ス し 、 患者体内
患者体内へ
へ皮下注射により
皮下注射 により戻
により戻す。 これを進行固
これを 進行固
形腫瘍患者に
に対して
して14
14日毎
日毎に
に計4回実施する
する。
。
形腫瘍患者
14日毎
回実施する
培養
採血
16
15
試験治療の内容
1.治療前検査
治療前検査;
;
注射
臨床研究評価項目
HLA(A2
HLA(A2,A24
,A24)
24)
キラーT
T細胞前駆体
キラー
ペプチド特異的
ペプチド特異的IgG
特異的IgG抗体
IgG抗体
1)有害事象の
有害事象の評価:
評価:NCI-
NCI-CTC ver.2
2.アフェレーシス
2)抗腫瘍効果:
抗腫瘍効果:WHOWHO-RECIST
3.未熟樹状細胞
未熟樹状細胞の
の誘導; 誘導; 6
; 6日間培養
(GM-CSF,IL4
4)
(GM-CSF,IL
3)生存期間の
生存期間の評価
4)免疫反応の
免疫反応の評価:
評価:
4.成熟樹状細胞の
; OK432
432
成熟樹状細胞の誘導; OK
誘導; OK
1.遅延型アレルギー
遅延型アレルギー(DTH)
アレルギー(DTH)
5.マルチペプチドパルス; 最大4
4種類
マルチペプチドパルス; ペプチド
; ペプチド最大
ペプチド最大
3.ペプチド抗体誘導
ペプチド抗体誘導・
抗体誘導・増強の
増強の有無の
有無の検討
2.反応傷害性T
反応傷害性T細胞CTL
細胞CTL活性
CTL活性の
活性の評価
4.T細胞クローナリティー
細胞クローナリティーの
クローナリティーの解析
6.患者接種;
患者接種;
レベル1
レベル1
レベル2
レベル2
レベル3
レベル3
3X106
1X107
3X107
18
17
56
4.各施設のTR実施状況について
評価指標((エンドポイント
エンドポイント))
評価指標
外科領域における
外科領域における
ロボティックシステムの
ロボティックシステム
の開発
1) プライマリー・
エンドポイント:
:テーラーメード・
プライマリー・エンドポイント
テーラーメード・マルチペプチド
パルス
パルス樹状細胞
パルス樹状細胞の
樹状細胞の安全性ならびに
安全性ならびに有害事象
ならびに有害事象の
有害事象の検討。
検討。
MRIガイド
MRIガイド下
ガイド下リアルタイムナビゲーションシステム
プレホスピタルケアロボット
カプセルロボット
2) セカンンダリー
セカンンダリー・
・エンドポイント
エンドポイント:
:本研究の
完遂性,,抗腫瘍効果
本研究の完遂性
(
臨床的効果)
)の評価。
(臨床的効果
評価。
3) サード・
エンドポイント:
:テーラーメード・
サード・エンドポイント
テーラーメード・マルチペプチドパルス
樹状細胞投与患者
樹状細胞投与患者における
における免疫反応
免疫反応の
の変化ならびに
樹状細胞投与患者
における免疫反応
変化ならびに
先端医工学診療部
ファーマコジェノミクス
ファーマコジェノミクス的解析
ファーマコジェノミクス的解析。
的解析。
20
19
日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業
外科領域におけるロボティックシステムの開発
平成11-15年度
日本初
日本初の手術用ロボット
手術用ロボットの
ロボットの開発・
開発・製品化
-日立製作所 日立製作所 内視鏡把持装置 NaviotNaviot九州大学医学部・
九州大学医学部・東京大学工学部が
東京大学工学部が共同で
共同で開発
2002.4
.4 国内初の
2002
国内初の手術支援ロボット
手術支援ロボットとして
ロボットとして承認
として承認
(医療用具製造承認番号 21400BZZ00150000)
2002.7
2002.7 受注開始
2002年度 年度 グッドデザイン賞
グッドデザイン賞 受賞
2002年度
研究組織
東京大学大学院新領域創成科学研究科
東京大学大学院情報理工学系研究科
東京大学大学院工学系研究科
九州大学大学院医学研究院
大阪大学大学院医学系研究科
開発参加企業
開発参加企業
THK, ベルデックス,
ベルデックス, 瑞穂医科工業,
瑞穂医科工業,
新興光器,, スパークリングフォトン
スパークリングフォトン,,
新興光器
ペンタックス , コアテック,
コアテック,
三菱スペースソフトウェア
スペースソフトウェア,, 日立製作所
三菱スペースソフトウェア
市販鉗子に装着した
術具スイッチ
(日経新聞2002
日経新聞2002年
2002年5月)
22
21
腹腔鏡下手術支援
マスタ・スレーブロボットシステム
ロボット手術(精密手術)の課題
技術的課題
1. さらなる
さらなる低侵襲
低侵襲性
低侵襲性の追求・
追求・小型化
マイクロマシン技術
マイクロマシン技術、
技術、ナノテクノロジーの
ナノテクノロジーの応用
2. 安全性の
安全性の向上
画像誘導装置の
画像誘導装置の開発
3. 治療の
治療の質的向上
分子イメージング
分子イメージング、
イメージング、分子標的治療との
分子標的治療との融合
との融合
コストパフォーマンスの
コストパフォーマンスの向上
スレーブマニピュレータ
多機能鉗子
社会的課題
4. 法環境整備
ガイドラインの
の作成、
ガイドライン
作成、診療体系の
診療体系の確立
5. リスク管理
リスク管理
技術認定制度
技術認定制度や
制度やメンテナンス体制
メンテナンス体制の
体制の確立
6. 普及活動
研究開発体制の
研究開発体制の強化・
強化・一般人への
一般人への教育
への教育
マスターマニピュレータ
ナビゲーションシステム
24
23
57
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
京都大学医学部附属病院輸血部長・
京都大学医学部附属病院輸血部長・分子細胞治療センター
分子細胞治療センター長
センター長 前川 平
(スライド1)再生医療における「トラ
ております。スライドに示しますように心
ンスレーショナルリサーチ固有の課題と進
血管系の病気が一番多いのですけれど、か
め方について」というタイトルで、細胞プ
なりの人が恩恵に預かる可能性があると考
ロセシングのことに関して少し述べたいと
えられております。すなわち、多くの人が
思います。
あたらしい再生医療、あるいは細胞治療が
開発されるのを待っているということであ
お話させていただく前に、私が細胞プロ
セ ッ シ ン グ に あ る い は GMP(Good
ります。
manufacturing Practice)の専門家だと思
(スライド3)今日のお話で、
「治験」と
われているかも分かりませんが、私の専門
いう言葉よく出てきますが、これは製薬企
は血液内科で、GMP に関しては専門的な教
業が新薬の承認申請を行うためのもので、
育を受けたわけではなく、独学であります。
ICH-GCP(International Conference on
大学病院での本務は輸血の管理および適正
Harmonization- Good Clinical Practice)を
輸血の指導で、輸血医学教育を担当してお
遵守することが必須であります。治験にも
り、教室の研究テーマはがんに対する分子
ちいる新薬は治験薬 GMP に基づいて作製
標的治療の開発であります。東京大学医科
しなければならないのですが、今度の改正
学研究所(医科研)におりました時から、
薬事法の中にも「治験薬の品質の確保のた
必要にせまられて GMP の事を独学で、ま
めに必要な構造設備を備え、かつ、適切な
た ISCT(International Society of Cell
製造管理及び品質管理の方法が採られてい
Therapy)というアメリカの学会があります
る製造所において製造された治験薬」とあ
が、その学会に属している私の友人や FDA
らためて明記されております。すなわち、
の知人にいろいろ聞いて自分で勉強して参
治験薬も医薬品 GMP と同様、治験薬 GMP
りました。したがって、現時点において必
に基づいてちゃんとしたところで作りなさ
ずしも最新の情報をすべて把握している訳
いという事であります。
ではないかと思いますし、我田引水、ある
(スライド4)私の前にも、トランスレ
いは私の考え方が間違っているところもあ
ーショナルリサーチには厳しい研究倫理と
るかとは思いますけれど、私が今考えてお
科学性が必要であるというお話があったわ
りますことについて少し述べさせていただ
けですが、治験は ICH-GCP に準拠して行
ければと思います。
わなければなりませんが、トランスレーシ
(スライド2)これは、再生医療の開発
ョナルリサーチあるいは医師主導型の臨床
が進み臨床応用されれば、一体どれだけの
試験研究に関しては ICH-GCP を遵守しな
人がその恩恵にあずかるだろうかという予
ければならないとは、どこにも明記されて
測データで、2000 年の Science に掲載され
いるわけではありません。しかし、
ICH-GCP が治験だけに求められるもので
58
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
はありませんし、おそらくトランスレーシ
いと言う規制はありませんが、患者さんの
ョナルリサーチにもこういうことに則って
立場に立って考えると、治験できちっとし
やっていくべきであることは今までのお話
たものを使ってやってくれているのに、ト
からコンセンサスが得られるであろうと思
ランスレーショナルリサーチや医師主導型
います。清水先生の方からも話がありまし
臨床試験でも同様のものを投与して欲しい
たけれども、トランスレーショナルリサー
と考えるのは当然で、患者の権利でありま
チに関する共通倫理指針というのができた
す。すなわち、トランスレーショナルリサ
ばかりであります。トランスレーショナル
ーチや医師主導型臨床試験にも GMP グレ
リサーチに用いる、品質の保証された新規
ードで作製したものを用いるべきと考えら
薬剤、核酸医薬、細胞への遺伝子導入に必
れます。しかし、大学自身で製薬会社なみ
要なウイルスベクターなど、また細胞治療
の GMP に準拠したものを作製することは
や再生治療に必要な治療用細胞自体の品質
なかなか難しいのが現状です。試薬メーカ
を担保する必要があります。医科研では、
ーやベンチャー企業が試験薬を作成して供
ウイルスベクターの生産設備を持っており
給することも考えられますが、厚生労働省
ますが、治療用細胞の作製も含めて GMP
は持続的に供給する場合は製薬企業に準じ
に準拠したルールで準備する必要があろう
ると判断しますので、GMP グレードのもの
ということであります。今日はスライドの
を製造する必要があります。したがって、
中で、特に 3 番目について最近京大で行わ
製薬企業が GMP グレードで作製した薬物
れました膵臓のランゲルハンス島の細胞移
を提供してくれれば助かるのですが、新薬
植の件についても少し触れながらお話した
の申請承認取得を目的としていませんので、
いと思います。
企業がトランスレーショナルリサーチや医
(スライド5)これは皆様のお手元にあ
師主導型臨床試験で得られたデータを新薬
ります「トランスレーショナルリサーチ実
の申請に使用することはできず、もし研究
施にあたっての共通倫理審査指針」の最初
成果が治療法として開発可能だと分かって
にある表を抜き出して作ったものでありま
も、最初から、フェーズ I からやり直さな
す。この中の「治験」の欄の試験薬/試験製
ければなりません。加えて、個々の薬品の
品の供給元に「企業」と書いてありますが、
GMP の構築には数億単位のお金が必要で、
企業で製造する治験薬はすべて治験薬
企業にとっては、トランスレーショナルリ
GMP に準拠して作製されています。治験薬
サーチや医師主導型臨床試験のフェーズ
GMP できちっとしたものを作ってそれを
I/IIa のデータを新薬の申請に使用でき、フ
用いて、新薬の申請承認取得を目的として、
ェーズ IIb/III からはじめることが可能でな
いわゆる「治験」をするわけであります。
ければ、数億円のお金を注ぎ込むメリット
トランスレーショナルリサーチ、医師主導
はありません。したがって、現状では、大
型臨床試験では、現在のわが国では GMP
げさに言ってみれば大学内に製薬工場を作
に準拠した製造方法をとらなければならな
らなければなりません。すなわち、試験薬
59
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
の品質管理は研究者や医師の責任において
の規制が一番厳しく、治験薬 GMP はそれ
行わなければならないと言うことでありま
に次ぐと言えるかも知れません。
す。さらに試験薬の製造方法に関しては、
(スライド7)輸血は細胞治療の原型で
製薬会社の方で当然ノウハウを持っている
あります。細胞治療(Cell Therapy)と言うの
わけですが、細胞となると話しは違います。
は、輸血を含めてヒトの細胞を輸注あるい
製薬会社のなかで、GMP 準拠細胞プロセッ
は移植することで行う治療法の総称で、細
シングのしっかりしたノウハウを持ってい
胞プロセシングとは細胞治療に用いるヒト
るところは私の知る限りあまりありません。 細胞の加工の工程を言います。したがって、
したがって、トランスレーショナルリサー
細胞プロセシングなければ、細胞治療や再
チや医師主導型臨床試験の場合、治療用細
生医療は成り立たないということでありま
胞の品質管理は、研究者や医師の責任で行
す。
わなければならないと言うことです。現行
(スライド8)2001 年 2 月の新聞記事で
の薬事法では、院内で作製し、院内で使用
あります。東大医科研と京大にトランスレ
するものに関しては、院内の責任でやりな
ーショナルリサーチの拠点を整備するとい
さいと言うことであります。しかし、繰り
う内容で、京大では探索医療センター(開
返しますが、トランスレーショナルリサー
発部、検証部、臨床部)と言う形で拠点が
チや医師主導型臨床試験であっても、それ
できたわけであります。そして、細胞治療
を受ける患者の立場からすれば、治験薬
あるいは再生治療の場合に、品質の保証さ
GMP グレードのものを使用して欲しいと
れた治療用細胞を作製する必要があるとい
言うのは当然であります。
うことで、血液内科の内山教授を代表とし
(スライド6)治験薬 GMP の前に医薬
て獲得された高度先進医療経費により細胞
品 GMP というのがあります。これは市販
プロセシングセンターが京大に出来たわけ
されている医薬品の GMP でありますけど
であります。
も、両者には色々違いがあります。例えば、
(スライド9)GMP に準拠するという事
医薬品の製造は許可事業でありますし、医
はどういう事かというと、簡単に言えば、
薬品 GMP の製造管理者は薬剤師でなけれ
人的なミスの防止、それから医薬品に対す
ばならないとされています。それから治験
る汚染および品質低下の防止、高度な品質
薬 GMP の方では治験薬開発段階で目的に
を保証するシステムの構築と言う三大要件
応じたバリデーションをすればいいのに対
があります。これは考えてみれば、医療の
して、医薬品 GMP の方は多岐にわたるバ
リスクマネジメントと輸血治療と実践と同
リデーションをせよというふうな規則があ
様の考え方がその源流にあると考えられま
ります。これは薬事法で決まってることで
す。
ありまして、違反するとかなり厳しい罰則
(スライド10)CNP の構成というもの
規定もあり、もっとも厳しい法律の 1 つで
は製造段階における医薬品の品質確保であ
あると思います。すなわち、医薬品 GMP
ってハードとソフトの両方がですね合わさ
60
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
らないといけないと。どっちか片一方だけ
30 日のいわゆる改正薬事法ですが、この中
設備だけはできてもそれで十分なわけでは
で二のバイオゲノム等のさまざまな科学技
ありません。箱ものだけ作って済むと考え
術に対応した安全確保の充実というところ
たら大間違いであります。設備面に関して
で、生物由来製品の特性において付加的な
は、私が医科研でわが国ではじめての細胞
基準を設けることとしたことと書かれてお
プロセシング施設の建設にかかわった7、
ります。
8年前には、米国並の GMP 準拠の細胞プ
(スライド12)その付加的な下位の法
ロセシング施設建設のノウハウを持ってい
令っていうのは平成 17 年、来年ですけど 4
るわが国の業者は皆無と言ってよい状況で
月に出てくるはずでありますけども、その
した。その後、我々とともに試行錯誤を重
中の⑤に医薬品、医療用具の製造管理、品
ね、いくつかの業者はその建設ノウハウを
質管理(GMP)の改正というところがあり
しっかり持つようになっていますので、設
ます。GMP という言葉がここではじめて出
備面での問題はほぼクリアされていると思
て参りますけど、その改正を行うというこ
います。問題は施設の管理面であります。
とであります。現在、パブリックコメント
細胞プロセシングの方では標準作業手順書
を予定しておるというところと聞いており
という風に SOP を読みます。先ほどの GCP
ます。
の方では標準業務手順書ということであり
(スライド13)その案を見ますと、組
ますけれど、書類の管理が非常に大変であ
織製造責任者の責務、それから先ほどから
ります。GMP 準拠細胞プロセシング建設業
言われてます SOP とか品質手順書、製造管
者と言うのは、建設とともに、このような
理書、マスターバリテーションプランとか
ソフトの指導ができなければならないと思
あるいは製法変更管理を逸脱、こういう苦
います。施設を建ててそれでおしまいとい
情処理とかこういうのが全部このGMP中
う業者は信用しないほうが無難です。
に入っております。特別要求事項の中にも
「GMP の構築」と言うのは、このハードと
無菌薬品、それから生物学的製剤というの
ソフトの両者がきちんとできてはじめて完
がありますけれどもこれをじっくり読みま
成するものなのであります。あとでも述べ
すと、記載が不十分というよりも不親切で
ますが、建設業者の選定さえ誤らなければ
非常にわかりにくいというところがあると
ハードの面はほぼクリアされるようになり
思います。後もう 1 つが問題なのは、これ
ましたが、ソフトに関しては、研究者、臨
は今までの議論に出てまいりませんでした
床研究医、技師、薬剤師、GMP コンサルタ
けれど、細胞培養に牛の血清の問題とかそ
ント、エンジニアが同じテーブルについて
れから異種移植ですね。マウスの細胞と混
構築して行く必要があります。このことを
同培養したりする、そういうようなことに
理解しないと、細胞プロセシング施設は立
ついては全く書いていないというところで
ち上がりません。
あります。
(スライド11)これは平成 14 年 7 月
(スライド14)その構造設備について
61
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
色々書いてあるのを示しますが、ここは正
はその製造の方法とかが詳しく書いてある
しいことが書いてあります。空気処理シス
ものではなく、いわゆる感染症が伝播しな
テムを別系統にすること、というふうに書
いように注意しなさいということを書いた
いております。クリーンルームの中の空気
ものであります。たとえば、HIV とかそう
処理系統は別系統に、特に飛散しやすいも
いうものが伝播しないようにちゃんと注意
のを扱うときはそうしなさいと記載されて
しなさいということ書いたものであります
います。したがって、これは例えばウイル
(著者註:最近、GTP の最終案が発表され、
スベクターなんかを扱う、そういう産生施
2005 年 5 月から発効すると発表された)。
設では空調を別系統にする事が必要であり
具体的な設備やプロセシングの方法に関し
ます。しかし、業者あるいは設計者によっ
ては、2002 年9月に Sterile drug products
てはコストを安く上げるために空調が全く
produced by asepetic prosesshinng と言う
一緒のものを作ってくることがあります。
文書が CBER から出されています。これは
だから、施設の建設を発注するわれわれの
無菌医薬品の作り方で極めて細かい事が書
サイドで、設計図はかけないまでも設計図
いてあります。この中の序文でありますけ
が読める必要があると思います。それと、
ども、この赤字のところですが、要するに
第2の無菌医薬品と第3の生物学的製剤の
GMP コンデションを守らなかったら結局
ところですけども、ここの書き方が不適切
最終的に迷惑するのは患者さんであります
です。生物学的製剤の種類・製造方法など
よと、きちっと明記されております。
により支障なく無菌操作を行うことができ
(スライド16)それから、今問題にな
る機能を有する設備は備える場合はこの限
ってます BSE の問題、それから異種移植の
りではないと書いてあります。おそらく、
問題、それから例えばドナーをどうやって
「クローズドの環境である場合に限り」と
選ぶかという問題が立て続けに出てきてお
いうことと考えますが、普通の部屋にクリ
ります。この中に例えばですね、牛の血清
ーンベンチを置いてですねそれでオーケー
を培養で使ったら絶対駄目であるという書
というふうにも取れないことはないわけで
き方ではなく、できるだけ無血清でやりな
す。それからもう1つ、
「前室の出入口」と
さいと書いてあります。現在、FDA は基本
ありますが、こういうふうに書いてしまう
的に無血清培養系でなければ認めませんし、
と出口と入口が同じで、クロスコンタミネ
異種移植は原則的として許可してないと私
ーションの確率が極めて高いそういうふう
は聞いております(著者註:
「異種移植の実
なものができてしまいます。ですから、大
施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する
きく間違ってはいないのですが、非常に不
指針」に基づく 3T3J2 株および 3T3NIH 株
親切な書き方であると私は思います。
をフィーダー細胞として利用する上皮系の
(スライド15)こういうことに関して
再生医療への指針、と言う厚労省特別研究
アメリカでは Good Tissue Practice (GTP)
事行の報告が、国立感染症研究所の吉倉所
というレギュレーションがあります。これ
長から出されています)
。
62
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
(スライド17)それから FDAがどうい
あります。どういうクラスの清浄度が必要
うところを規制してくるかといいますと、
であるとか、どのような動線であるべきだ
カテゴリーとしては細胞プロセシングを 3
とか、すべて書いてあります。
つに分け、すでに確立して日常の治療に用
(スライド20)これはソフトの方であ
いられているような、例えば PBSC の分離
りますが、それを邦訳してかなりの分厚い
とか骨髄細胞のところには規制をかけてお
報告書になってしまいました。私はこれを
りません。しかし、規制がないからと言っ
勉強しておりますときに、製薬企業で医薬
て、いい加減でいいわけではありませんで、
品を製造するときのいわゆる医薬品 GMP
例えば輸血部なんかできちっとした記録を
を構築することは大学ではなかなか難しい
残して管理するべきだろうと私は思います。 し、医薬品 GMP は、当然でありますが錠
臍帯血の分離・調整・保存は規制がかかっ
剤等を対象にしたものであって、細胞プロ
ていると聞いておりますし、第2、第3カ
セシングには相容れないところがあること
テゴリーのように当然細胞を培養したり遺
から、再生医療の細胞プロセシングに特化
伝子導入したりあるいは再生医療に用いる
し た GMP 、 大 学 で で き る GMP
場合は規制がかかっております。レギュレ
(Institutional GMP)を構築する必要がある
ーションって日本語で訳すと『規制』です
ということを、厚労省に言ってきたのです
けれども、米国 FDA の立場は、ルールがな
けれど、そんな事は企業にまかせておけば
いことによって細胞治療や再生治療などの
よいし、サイエンスじゃないから大学でや
先端医療の開発が遅れるということを危惧
るべきようなことではないと言われました。
してその開発を促進させるために規制を提
実際は、企業の方から私に大挙して相談に
示すると言うスタンス(国家戦略)であり
来るのですけれど。私、申請書類を毎年出
ます。決して縛り付けるという内容ではあ
しますから、ついに今年は、
「そんなに大学、
りません。
innstitutional と言うのだったら、厚労省の
(スライド18)平成 14 年度に、私は厚
金よりは文科省の補助金でやって下さい」
労省の科学研究費をいただきまして、細胞
と言われてしまいました。今日は文科省か
プロセシング施設はどういう基準で建設さ
ら来ていただいていますし、実は明日も神
れるべきであるかを報告いたしました。そ
戸での会議で厚労省の方も来られますが、
れから、ヒト細胞・組織を用いた細胞プロ
宜しくお願いしたいと思います。
セシング規制(案)のフローチャートや、
(スライド21)京都大学医学部附属病
後で述べますけども、京大分子細胞治療セ
院の細胞プロセシングセンターである分子
ンターの内容を報告した 450 ページ程に及
細胞治療センター、CCMT (Center for Cell
ぶ報告書を提出いたしました。
and Molecular Therapy)の鳥瞰図です。こ
(スライド19)その中で私は GMP 準
ういうふうな施設ができました。
(スライド22)医科研の時の経験から、
拠の臨床用ヒト細胞、構造設備基準という
日常の運営管理で環境のモニタリングは全
のを作りました。この中にきちっと書いて
63
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
部集中管理をした方がいいということで、
かという事で、ここにトランスレーショナ
コンピューターですべて管理が出来るよう
ルリサーチというのは個人プレーなんかじ
になってます。温度とか室圧とかそういう
ゃなくて「チーム」だ、
「事業」であるとい
のは全部こう出てまいります。
う こ と が 書 い て あ り ま す 。
Laboratory-based investigator, Clinical
(スライド23)それから各部屋の清浄
度は全部リアルタイムで分かると、そうい
investigator,
Pharmacists,
Statician,
うシステムになっています。これは膵臓の
Research nurse, Data manager、これらの
ランゲルハンス島細胞の分離のときの実際
人々がみんな一緒に協力してやらないとい
の記録でありますが、ほとんどクラス
けないと言うことで、私はトランスレーシ
10,000 以下を保っております。使ってない
ョナルリサーチと言うものは、
「究極のチー
ときはもうクラス 10 くらいの非常に清潔
ム医療」だと考えております。写真は、ハ
な部屋であります。
ワード・ヒュー医学研究所で、トランスレ
(スライド24)入退室はキーカードで
ーショナルリサーチを担っている人々であ
管理しております。セキュリテイが十分に
ります。実際セルプロセッシングも私は究
守られるように設計されています。これも
極のチーム医療を担うひとつであろうと思
全部 GMP の要件であります。
います。
(スライド25)部屋を管理する事、非
(スライド28)セルプロセッシングも
常に大切で、だいたい月に 2 回やっており
結局その業者だけに任せといたりしてもこ
ます。空中の浮遊菌とか全部チェックをし
れ絶対にできません。やっぱりエンジニア
て、誰がやって、誰が認めましたと言うこ
いりますし、GMP のコンサルタントは不可
との記録を残して、きちっと管理しており
欠ですし、臨床医、研究者、ラボのテクニ
ます。
シャンとか、皆が同じテーブルについて、
(スライド26)臨床科の方から色々プ
対等な関係で、ワイワイガヤガヤ言いなが
ロジェクトが提出されてきます。新規プロ
ら、きちっと必要な GMP を構築して、そ
ジェクトが計画された場合には我々が相談
こに FDA のオフィサーがきていろいろ指
に乗って、こういう風な工程表に従って
導すると、こういう風なシステムが日本で
SOP などの作成をやりましょうという流れ
はなかなかないわけですが、これを私、医
が出ております。遠くから見るとちょっと
科研でも一部やっておった訳ですけれども、
分かりにくいかと思いますが、このプロセ
京大に行ってから完成させました。
スでやりましょうと言うものであります。
(スライド29)ここから膵島移植の話
これに則ってやれば、大体何ヶ月ぐらいで
になります。細胞プロセシングがうまく立
何ができるというふうなことがわかります。 ち上がった好例としてお聞きいただければ
(スライド27)これは 2002 年ぐらいの
幸いです。膵島移植が再生医療とは私は申
ネーチャーメデイシンに載った記事ですが、 しませんけれども、細胞治療を考える上で
非常に参考になる例だと思います。2000 年
トランスレーショナルリサーチとは一体何
64
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
に、カナダのエドモントにあるアルバータ
量はこのくらいで、膵島の移植基準を満足
大学で膵島移植が成功した報告で、日本人
しています。細胞の生存率を調べましてオ
の若い移植外科医も参加して非常に頑張っ
ッケー、純度を調べましたらオッケーと、
ていたと聞いております。
エンドトキシンレベルもオッケーで、細菌
(スライド30)膵島移植に対する米国
検査も陰性ということで、移植のゴーサイ
FDA の規制というのはどういう風に行わ
ンを CCMT が出すわけであります。それか
れているかを箇条書きにしたものでありま
ら、あとで、膵島細胞の機能も調べており
す。まず SOP を作り、それからドナーの感
ます。
染症を検査して、クリーンルームである
(スライド34)膵島分離の作業記録で
CPC で分離を行わなければならない、それ
すが、誰が分離して、誰が確認し、誰がオ
から記録を管理しておきなさいと言うこと
ーソライズしたかというのを全部記録して
です。それから、これは GCP に関連するこ
あります。
とですが、インフォームドコンセントを含
(スライド35)膵島移植を行った第 1
めて質の良い臨床試験をデザインし、それ
例目の症例、36 才の女性です。1型の糖尿
を遵守しなさい、そういう風なことを FDA
病で、血糖値が大きく変動するため、事故
は言っております。
も起こしたり日常生活に大きな制約が合っ
たわけです。
(スライド31)膵島移植を簡単に説明
したものであります。ドナーさんから膵臓
(スライド36)膵島移植後には血糖が
をいただきます。膵臓を酵素で消化します
スッと下がって安定し、だいたい 150∼50
とこういう風になるのですが、赤く見える
ぐらいになってきました。そして 2 回目の
ところがまるで島のように浮かんでいます
移植でまた一段と良くなりました。
ので『島、island』と呼ばれます。それを
(スライド37)インシュリンの必要量
比重遠心法で純化します。それを肝臓の門
は、40 単位近くあったんですけども移植後
脈から注入して、肝臓に生着させると言う
ずっと減ってきまして 2 回目の移植後数日、
治療法であります。
ついこの間インシュリンから離脱に成功い
(スライド32)これは CCMT のモニタ
たしました。
(スライド38)今まで膵島移植は実際
ーカメラからとった映像です。膵臓をここ
で処理をして、純化してバックに入れます。
第 1 例目は 4 月に始まってからもこれだけ
その一部を検査して、細胞数、生存率、エ
あっという間にできてまいりました。経過
ンドトキシンのレベルや細菌検査を行いま
は皆さんきわめて良好であります。
す。そして、CCMT がオーケーといった認
(スライド39)膵島移植チームであり
証のラベルを貼付して、CCMT からシッピ
ます。細胞センターの方は主任クラスの技
ング(出荷)します。そして、放射線科で
官が運営を取り仕切ってくれています。文
透視下に移植をしてるところであります。
科省がマネージメント改革を言うまえに京
(スライド33)膵島の分離結果で、収
大では輸血部も病理部も検査部もみんな壁
65
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
がなくなりまして、検査部から 1 人いただ
GMP(医薬品 GMP)は非常に厳しいと言わ
き、来ていただいた技官であります。彼に
れています。違反した場合には製造中止命
私の持っている GMP のことノウハウを全
令と罰則が伴いますし、多くの人員が必要
部教え込んで、彼自身も大急ぎで勉強して
であります。バリデーションも非常に細か
くれました。それから実際の日常のメンテ
くしなければなりません。大学では、それ
ナンスを手伝ってくれています。彼女たち
だけの人的余裕はありませんし、またもと
4名は、21 世紀 COE 経費で雇用している
もと細胞治療のトランスレーショナルリサ
非常勤職員であります。あとは輸血部の技
ーチに必要な細胞プロセシングを行う訳で、
官でありますけれども実際輸血部専属は 1
対象となる患者数は少なく、比較的短期間
人だけで、あと2人は検査部所属でありま
のうちに次のプロジェクトに移る必要があ
す。うち1人は検査部とのローテーション
り、同じ薬を何年間も作り続けるための医
で1年ごとに変わります。少ない人数です
薬品 GMP とは、その目的が異なります。
が、この人数で何とかやり繰りして頑張っ
私 が 提 唱 し て い る iGMP (Institutional
てやっています。移植外科の方は、松本先
GMP)というのは、細胞治療再生治療のトラ
生がチームリーダーで、私が京大に来て半
ンスレーショナルリサーチに特化したよう
年後に当時まだ建設中の CCMT を見て、こ
なもので、大学あるいは先端医療センター
れなら膵島移植が日本でもできると言うこ
に必要でかつ十分なものを目指したもので
とで戻ってきました。彼は神戸大学出身で
あります。なにも iGMP を法令化する必要
あります。その後、数珠つなぎで米国の各
はないと考えていますが、トランスレーシ
地の大学にいました、皆移植外科医であり
ョナルリサーチのためのガイドラインとし
ますけれども、それが半年ぐらいの間にす
て整備するべきと考えています。必要な資
べて日本へ帰って参りました。それで皆で
金は、エンジェルあるいは競争的な研究を
SOP などを作成しました。私が助かりまし
とってこないといけないですし、必要最低
たのは、彼ら移植外科医は GMP 準拠の細
限の人員で、バリデーションも必要最低限
胞プロセシングが必要であるということを
でやりたいと言うところがあります。それ
米国で勉強して、もうそういう訓練を受け
から ISO ですが、取得と毎年の維持に結構
ているんですね。だから、私としても非常
のお金が必要です。京大でも ISO を取得し
に助かりましたし、彼らとしても、施設が
たいし、いつでも審査を受けることは可能
もうできつつありましたので、多少の試行
なのですが、お金がかかるのでまだとって
錯誤はありましたが、概ね順調に膵島移植
いません。米国でも、先端医療開発を行っ
の準備が進みました。
ている大学やベンチャー企業の細胞プロセ
(スライド40)ここから、今回の本題
シングは FDA が査察を行い、必要なところ
である institutional GMP のことを説明さ
は改善するように指導しています。わが国
せていただきます。医薬品の製造に要求さ
では、まだそのようなシステムがありませ
れる GMP を full GMP と呼びます。Full
んし、医薬品 GMP の専門家も細胞プロセ
66
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
シングの特殊性を理解した人でなければ、
できるということになっておりますので、
細胞治療や再生治療に必要な GMP を指導
忙しいのですが、問題はないと考えます。
することはできないと思います。
それと、それぞれのプロジェクトごとに専
任の製造担当者が欲しいところであります。
(スライド41)改正薬事法では医薬品
GMP として full GMP を要求されるわけで
(スライド43)細胞治療や再生治療に
すが、従業員が非常に大学では少ないとい
特化したトランスレーショナルリサーチに
う事情があります。それからバリデーショ
おけるバリデーションの問題点を説明しま
ンに関しては、実にこれだけのバリデーシ
す。まず、DQ(design qualification)および
ョンをしないといけない。GMP と一口に言
IQ(installation qualification) で あ り ま す
いますけれども、薬剤の治験薬 GMP1つを
が、これはしっかりした施設を作って参り
構築するのにも、製薬企業に製造を依頼し
ま し た か ら OK で あ り ま す 。 し か し 、
ても億の単位の費用がかかります。まだ、
calibration と operation qualification は、
治療法として確立するかどうかなどまった
最初はいいのですけれども、何回も使用後
く分からないものに、製薬企業がそれだけ
その都度やるとなると金がかかります。そ
のリスクをとることは難しいと考えます。
れから、performance qualification、予備
かと言って、バリデーションひとつとって
実験をしなさいということですが、たとえ
みても、design qualification, installation
ば膵島なんかドナーさんから提供していた
qualification,
operation
だいた膵臓を練習用に使うわけにいきませ
qualification, performance qualification,
んからこれはできないということになりま
process validation, cleaning validation、全
す。それから、process validation ですが、
部やらないといけないとなると、人員や資
細胞医薬品というのは、基本的に one lot-
金の少ない大学では大変であります。
one donor で lot を構成しないので、たとえ
calibration,
(スライド42)では、どういうふうに
ば3つの lot を用いて安定した成績を得ら
CCMT ではやっているかというと、センタ
れるか前もって調べると言うことは出来ま
ー長は私で、品質管理責任者が先ほどの主
せん。あともう1つ、洗浄、部屋のクリー
任技官であります。品質管理責任者と製造
ニングですが、どこまでやればいいのかっ
管理責任者、これは同一人物であってはい
ていうのは難しい問題です。細胞の場合は
けませんが、これは iGMP としても崩せま
未知のウィルスもありますし非常に難しい
せん。ところが、ここに同一人物がいくつ
ところがあります。だからこの辺はどうす
ものプロジェクトの品質管理責任者を兼務
ればいいのか。医薬品 GMP のコンサルタ
しております。製薬企業であれば、別の人
ントに聞きますと、これには明確な回答が
がプロジェクトごとに担当するのでありま
できないとのことでした。京大の場合は大
しょうが、人が少ないため、CCMT では今
手の某製薬会社の医薬品 GMP の OB をコ
こういうふうになっております。ただし、
ンサルタントにきてもらって相談しながら、
治験薬 GMP では許可されている、兼務が
京大独自のものを構築しました。コンサル
67
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
タントにもかなり無理をお願いしましたが、
(スライド46)要求される GMP のレ
治療用細胞の取り扱いと医薬品の取り扱い
ベルは、この図に示しますように、臨床試
とはやはりかなり違うと言うことを、こち
験が前臨床試験からトランスレーショナル
らも GMP のあり方を勉強させていただく
リサーチ→フェーズ I→フェーズ II→フェ
とともに、コンサルタントの方も理解して
ーズ III へと進むにつれて厳しくなってゆ
いただいて、京大独自の GMP を構築して
く の が 理 想 だ と 思 い ま す 。 Stepwise
きたわけであります。構築過程で、われわ
approach が必要だと言うことです。フェー
れとコンサルタントの間に「共通言語」が
ズがまだトランスレーショナルリサーチあ
少しずつでき、互いのコミュニケーション
るいはフェーズⅠ時には、決して甘い GMP
がとれるようになったと思います。
で良いと言っている訳ではありませんが、
(スライド44)Full GMP に則ったバ
患者さんに対して必要な品質の保証された
リデーションを外注した場合にはかなりの
ものを提供できる、そういう GMP を構築
お金がかかります。バリデーションは年に
しなければ、大学や研究センターで行うト
1 回ないしに 2 回する必要があるのですが、
ランスレーショナルリサーチあるいは医師
すべて依頼した場合にどれくらいの費用が
主導型の臨床試験はうまく進んで行かない
かかるかを試算してもらったものです。た
と思います。大学や研究センターで行う、
とえば、部屋の空気の清浄度を感知するパ
細胞治療や再生治療などの先端医療開発に
ーティクルカウンターの点検と校正費用は
特 化 し た GMP 、 す なわ ち institutional
180万円ぐらい必要ですが、そのなかで
GMP (iGMP)の構築が必要であると思いま
この試験成績証明書は、検査成績は別に出
す。それともうひとつ、これらをサポート
ますから、要らない、これも要らないとい
するテクニシャンやバイオロジストの育成
う事で削っていきました。われわれで作成
が急務であります。これらも、いわゆる『ク
してもよいものは自主作成することにした
リテイカルパスリサーチ』のひとつと考え
り、あるいはやり方を教えてもらったりし
られます。
(スライド47)私は 21 世紀の細胞治療
て自分たちでやりますということで減らし
システムというのはこういうふうになると
ていきました。
思います。大学や先端医療研究センターで、
(スライド45)このようにして削って
いきました。京大の場合は 200 平米足らず
細胞治療や再生治療に関する治療法がトラ
の CPC でありますけども、年間にバリデー
ンスレーショナルリサーチ、あるいは医師
ションだけで 1,000 万円ほどかかってしま
主導型臨床試験の段階に入って、それが有
うところなのですが、それが大体 300 万円
望である可能性がでてくれば、神戸の先端
ぐらいで済むことになりました。この金額
医療センターで行なわれる医師主導型治験、
であれば、大学でも何とかできる範囲内で
さらには細胞治療に特化した企業の主導で
あると思います。しかし、この費用が毎年
多数例を対象とした「治験」として行われ
かかります。
るようになると考えています。そして治験
68
5.再生医療における TR 固有の課題と進め方について
が終了し、その結果あたらしい治療法とし
リサーチ』のひとつでありますが、わが国
て確立され、多くの患者さんに還元するた
には、そういうトレーニングコース、教育
めには、全国に 78 箇所あります血液センタ
コースがない。アメリカにはありますけれ
ー。あるいは企業が細胞プロセシングを担
ども、今は京都大学の21世紀 COE プログ
当し、最終的には、各病院へサプライをし
ラムの中でこれを作ってやろうということ
て患者さんに投与するようになるであろう
で、準備をしております。それからあと行
と考えております。
政との連携、学会のサポート、例えば先ほ
(スライド48)これは最後のスライド
どの膵臓のランゲルハンス島であれば、膵
ですが、今後の課題としては institutional
島移植ワーキンググループ、そこが学会に
GMP(iGMP)のルールづくりを京都大学で
働きかけて皆でまとまっていこうというこ
やってきましたけれども、これをもっとブ
とでやってゆくと言うようなことが必要で
ラッシュアップしないといけないと思いま
あると考えております。
す。それから培養方法のルール、血清の問
それからあともう 1 つ、最後に私が思う
題、異種移植の問題があります。ウシ血清
のは税制ということでありまして、これは
をもちいた培養系もマウスのストローマ細
一番最初のスライドにも戻りますけども、
胞との共培養系も異種移植の範疇に入りま
例えば色んな試薬を研究者のレベルで実際
す。原則的に、異種血清を用いた培養、マ
つくっていいのかどうかと言う問題がある
ウスとの共培養系は認められないというの
と思います。それはやはり製薬会社がある
が FDA の基本的スタンスです。あともうひ
程度関与せざるを得ないと思います。が、
とつは、最近は CPC 立てればそれで何とか
個々の GMP の構築に非常に金がかかりま
なるという風潮がありますが、さっきも申
す。そういうトランスレーショナルリサー
しましたけれども箱だけ作って、それで
チをサポートするようなリスクを積極的に
GMP 準拠の細胞プロセシングになると考
とる企業に対しては少々の優遇税制を考え
えている向きがあります。CPC を建設した
てもいいのではないかと思います。また、
ことで、細胞治療や再生治療の正当性を主
企業がトランスレーショナルリサーチをサ
張する免罪符になる可能性があるんじゃな
ポートしても問題がないように、改正され
いかという風に私は危惧しております。箱
たばかりではありますが、この改正薬事法
もの行政では、患者さんのためのあたらし
をさらに手直ししてゆくことが、わが国に
い治療法の開発はできません。さきほども
おけるトランスレーショナルリサーチの発
申しましたが、これからのわが国の細胞治
展に必要であると考えております。厚労省、
療や再生治療の開発にとって、とくに細胞
文科省の官僚の方々の慧眼に期待するとこ
プロセシングにとって、一番重要なことは
ろ、きわめて大であります。
CPC を管理運営できるテクニシャンあるい
ご清聴、有り難うございました。
は PhD(バイオロジスト)の育成です。こ
ういった人材の育成は『クリテイカルパス
69
5.再生医療におけるTR固有の課題と進め方について
Potential of Advanced Cellular Therapies
再生医療におけるTR固有
の課題と進め方について
重度熱傷
パーキンソン氏病
Burns (Severe)
Parkinson's Disease
アルツハイマー病
Spinal Cord Injuries
脊髄損傷
Alzheimer's Disease
Birth Defects
がん Cancer
骨粗鬆症 Osteoporosis
先天異常
8M
10 M
58 M
16 M
京都大学医学部附属病院
輸血細胞治療部・分子細胞治療センター
前 川 平
Diabetes
糖尿病
自己免疫病
Cardiovascular
Diseases
心血管病
30 M
M: 100万
万
Autoimmune
Diseases
? Science 2000;287:1423
第3回TR懇話会 平成16年7月23日
2
1
トランスレーショナルリサーチには…
治験には…
(1) ICH-GCPの
の遵守が
遵守が必要
(1) TRには
には厳
は単に治験
には厳しい研究倫理
しい研究倫理と
研究倫理と科学性が
科学性が必要 ( ICH-GCPは
だけに求
だけに求められるものではない )
(2) 治験薬GMP
治験薬
『トランスレーショナルリサーチ実施にあたっての共通倫理審査指針』
厚生労働省令第106号
(2) 作製された
作製された新規薬剤
された新規薬剤、
新規薬剤、核酸医薬、
核酸医薬、ベクターの
ベクターの品質保証
平成15年6月12日 厚生労働大臣 坂口 力
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の一部を改正する省令
『GMPに準拠した薬剤、ベクターなどの作製』
第2節 自ら治験を実施する者による治験の管理に関する基準
(治験薬の品質の確保)
(3) 作製された
作製された治療用細胞
された治療用細胞の
治療用細胞の品質保証
第26条の3 自ら治験を実施する者は、治験薬の品質の確保のために必
要な構造設備を備え、かつ、適切な製造管理及び品質管理の方法が採ら
れている製造所において製造された治験薬を用いて治験を実施しなけれ
ばならない。 『GMPに準拠したヒト細胞などの作製』
…が必要
4
3
TR
医師主導型臨床試験
治験薬GMPと医薬品GMPの要求事項の相違点
治験
目的
新しい医療技術開発
標準治療法の革新
新医療技術、新薬
の効率化 と改善 の申請承認取得
治験薬GMP
医薬品GMP
被験者数 少数 少数? 多数 少数? 多数
治験薬の製造に許可は不要
主導者 研究者および医師 医師 企業および医師
製造管理者は薬剤師のほか、大学で薬学、医学、歯学、 製造管理者は薬剤師でなければならない。
獣医学、理学又は工学を修め、必要な教育訓練を受け
た者等でもよい。
研究資金 国、企業、 企業、国、研究者 企業
の出所 ベンチャー
キャピタル、
研究者
含まれる I/IIaのみ I ? III 臨床試験
の phase
I ? III
治験薬GMP
治験薬
試験薬/ 研究者、企業、国 企業 企業
試験製品
の供給元 試験薬の品質管理は研究者の責任
治療用ヒト細胞の品質管理は研究者の責任
医薬品製造業の許可の要件
治験薬品質管理者は治験薬の品目ごとに置く。複数の
治験薬についての兼務を妨げない。治験薬製造施設
に常駐していなくてもよい。
製造管理者は製造所ごとに置く。
製造等の記録類の保管期間は、他の治験関係記録と
同様の期間。
製造等の記録類の保管期間は3年(生物10年、特生30
年)
他の試験検査機関等の利用は、治験薬品質管理者の
判断に委ねられ、特に制限していない。
他の試験検査機関等の利用制限がある。
治験薬開発段階の目的に応じたバリデーションを実施
すればよい。
多岐にわたるバリデーションが要求されている。
委受託製造:治験薬の製造については許可は不要で
ある。全部委託や再委託を妨げない。原薬等を含め、
工程分断を妨げない。
委受託製造:委託側、受託側とも製造業の許可が必要。
全部委託や再委託は認めない。原薬等の工程分断の
禁止。
製造施設:製造用水供給設備、試験検査設備について
は、備えなくてもよい。
製造所:製造用水供給設備、試験検査設備が必要。
6
5
70
5.再生医療におけるTR固有の課題と進め方について
細胞治療 (Cell Therapy) とは
わが国
わが国におけるトランスレーショナル
におけるトランスレーショナル・
トランスレーショナル・リサーチの
リサーチの動き
輸血、
輸血、造血幹細胞移植、
造血幹細胞移植、細胞移入免疫療法、
細胞移入免疫療法、遺
伝子治療、
伝子治療、再生治療などの
再生治療などの細胞
などの細胞を
細胞を輸注、
輸注、移植す
移植す
ることにより行
治療法の
総称であり
であり、
細胞プロ
ることにより
行う治療法
の総称
であり
、細胞
プロ
セッシングとは
とは細胞治療
細胞治療に
いるヒト
ヒト細胞
細胞の
セッシング
とは
細胞治療
に用いる
ヒト
細胞
の調
製、加工の
加工の行程を
行程を言う。ー輸血は
輸血は細胞治療の
細胞治療の原
探索医療開発部
探索医療検証部
探索医療臨床部
型。
とくに細胞移植治
とくに細胞移植治
療・再生治療推進
のためには
の設置
GMPに
GMPに準拠した
準拠した細胞
した細胞プロ
細胞プロ
セッシングが
が必要
セッシング
8
7
GMPの
の3大要件
GMP の 構成
GMPの
GMPの目的は
目的は、製造段階における
製造段階における医薬品
における医薬品の
医薬品の品質
• 人為的な過誤の防止
確保であり
ソフト)
)の両
確保であり、
であり、設備面(
設備面(ハード)
ハード)と管理面(
管理面(ソフト
方が円滑に
されることによりはじめてその目
目
円滑に実施されることによりはじめてその
実施されることによりはじめてその
• 医薬品に対する汚染および品質低下の防止
的が達成される
達成される
• 高度な品質を保証するシステムの構築
設備面:
設備面:施設の
施設の整備
管理面:
:標準作業手順書 (SOP: Standard Operating Procedure)
管理面
記録管理 (Documentation)
医療のリスクマネジメントや、安全で効率的な
輸血治療の実践と同様の事項が要求されている
10
9
改正薬事法の施行について(案)
厚生労働省発医薬第0731011号
平成14年7月31日
各都道府県知事殿
(平成17年度施行事項について)
平成15年6月 医薬局
厚生労働事務次官
薬事法及び採血及び供血あっせん業取締法の一部を改正する法律について
I 薬事制度の見直しに基づく政省令告示の整備について
II 改正薬事法を受けた下位法令の整備
記
1 薬事法の施行期日
第一 薬事法関係
一 医療機器に係る安全対策の見直し
二 バイオ、ゲノム等の様々な科学技術に対応した安全確保対策の充実
平成17年度に施行される事項は、平成17年4月施行とする。
2 主な整備項目
(1) 薬事法施行令(製造業、製造販売業の許可主体、GMP調査の実施
主体、GMP適用範囲の改訂その他)
(2) 薬事法施行規則
2 原材料の採取及び製造から市販後に至る各段階における生物由来
製品については、その感染リスクなどを踏まえ、原材料の採取及
び製造から市販後に至る各段階において、一般の医薬品、医療機
器等における各種基準に加え、以下に掲げる付加的な基準等を定
めることより、一層の安全確保を図ることとしたこと。
(3) 上記以外の省令の制定及び改正
① 薬局等構造設備基準の改正
② 製造販売後安全管理基準の制定
③ 製造販売品質管理規則の制定
(2) 製造段階においては、構造設備、製造管理及び品質管理
の方法について、生物由来製品の特性に応じた付加的な
基準を設けることとしたこと
④ 市販後調査の実施の基準の制定
⑤ 医薬品、医療用具の製造管理及び品質管理規則(GMP)の改正
(別途、パブリックコメント予定)
⑥ 医療機器販売業者等の継続研修カリキュラムの制定
12
11
71
5.再生医療におけるTR固有の課題と進め方について
I.
改正薬事法の施行について(案)
(3) 作業所のうち作業室は、製造する医薬品の種類、剤型及び製造工程に応じ、じんあい又は
微生物による汚染を防止するのに必要な構造及び設備を有すること。
平成15年8月 医薬局
I. 一般要求事項
II. 特別要求事項
第1 通則
第1 原薬
1. 組織
(1) 文書・記録
2. 製造管理者の責務
(2) 品質管理
4. 構造・設備(装置を含む)
(1) 構造・設備
(2) 製造
6. 製造(製造標準書、製造管理基準書、 衛生管理基準書等)
7. 品質管理(製品標準書、品質管理基準 書、衛生管理基準書等)
(3) 教育訓練
(2) 文書・記録
(3) 製造
記載が不十分
(不親切?)
特別要求事項その他
第2 無菌医薬品
(1) 構造・設備 ① 作業所のうち作業室又は作業管理区域は、製造する無菌医薬品の種類、剤
型、特性及び製造工程に応じ、適切な温度、湿度及び清浄の程度を維持できる構造及び設備を
有すること。
(1) 構造・設備
9. バリデーション
11. 逸脱
II.
第3 生物学的製剤等
8. 製造所からの出荷
10. 変更管理
(6) 飛散しやすく、微量で過敏症反応を示す医薬品や物質又は交叉汚染することにより他の医
薬品に重大な影響を及ぼすおそれのある医薬品や物質を製造する場合には、それらの医薬品
等の作業室を専用とし、かつ、空気処理システムを別系統にすること。
第2 無菌医薬品
3. 責任者・従業員
5. 文書・記録
一般要求事項
4. 構造・設備(装置を含む)
(製造管理・品質管理の基準:GMPについて)
(2) 製造 製造業者は、無菌医薬品を製造する場合には、別に規定する業務の他、手順書に基
づき、次に掲げる業務を行わなければならない。
(4) 品質管理
第3 生物学的製剤等
(5) 教育訓練
(1) 構造・設備 。。。。無菌室であること。ただし、当該作業室内に、生物学的製剤の種類、製造
方法等により、支障なく無菌操作を行うことができる機能を有する設備を備える場合は、この限
りではない。。。。。無菌室には、専用の前室を附置し、通常当該前室を通じてのみ作業室内に
出入りできるような構造のものとし、かつ、その前室の出入口は屋外に直接面していないこと。
12. 苦情処理
13. 回収処理
14. 自己点検
細胞培養、ウシ血清の問題、異種移植(マウス細胞と
15. 教育訓練
の共培養など)についての取り決めはない
14
13
Good Tissue Practice (GTP)
Establishment of a quality
program, which would evaluate
all aspects of the firm operations,
to ensure compliance with GTP
Guidance for Industry
Preventive Measures to Reduce the Possible Risk of
Transmission of Cruetzfeldt-Jakob Disease (CJD) and
Variant Cruetzfeldt-Jakob Disease (vCJD) by Human Cells,
Tissues, and Cellular and Tissue-Based Products (HCT/Ps) ? CBER, June 2002
- by FDA, January 8, 2001
Sterile Drug Products Produced
by Aseptic Processing Draft
Source Animal, Product, Preclinical, and Clinical Issues
Concerning the Use of Xenotransplantation Products in
Humans ? CBER, April 2003
? Preliminary Concept Paper Not for Implementation ?
CBER, Sept. 27, 2002
Manufacturing should have a keen awareness of public health
implication of distributing a nonnon-sterile drug purporting to be
sterile. Poor cGMP conditions at a manufacturing facility can
ultimately pose a life threatening health risk to a patient.
Eligibility Determination for Donors of Human Cells, Tissues,
and Cellular and Tissue-Based Products (HCT/Ps) ? FDA, May 25, 2004
16
15
細胞プロセッシング
細胞プロセッシングの
プロセッシングの分類と
分類と規制
平成14年度厚労省科研費
単年計画)の研究実績
平成 年度厚労省科研費(単年計画)
第1カテゴリー(
カテゴリー( 細胞の
細胞の採取、
採取、調製、
調製、保存 )
平成14年度厚生労働科学研究費補助金
14年度厚生労働科学研究費補助金
平成14年度厚生労働科学研究費補助金
14年度厚生労働科学研究費補助金
アフェレーシスによる
による採取
採取・
アフェレーシス
による
採取
・調製
医薬安全総合研究事業
医薬安全総合研究事業
骨髄・
末梢血幹細胞採取・
・分離、
骨髄・末梢血幹細胞採取
分離、保存
臍帯血分離・
調製、
臍帯血分離
・調製
、保存
第2カテゴリー(
カテゴリー( 細胞の
細胞の純化、
純化、修飾 )
選択的細胞移植
細胞移入免疫療法(
細胞移入免疫療法
( 養子免疫療法 )
第3カテゴリー
カテゴリー(
( 高度の
高度の細胞操作、
細胞操作、増幅 )
造血幹細胞・
前駆細胞の
造血幹細胞
・前駆細胞
の増幅
造血細胞の
造血細胞の体外大量培養
遺伝子導入、
再生医療にもちいる
にもちいる細胞培養
遺伝子導入
、再生医療
にもちいる
細胞培養
わが国
わが国における細胞治療
における細胞治療・
細胞治療・再生治療開発のた
再生治療開発のた
めの細胞
細胞プロセッシング
めの
細胞プロセッシングの
プロセッシングの現状
先端医療センター等
センター等における細胞治療・
細胞治療・再生治療開発のためのGMP
先端医療センター
先端医療センター等
センター等における細胞治療・
細胞治療・再生治療開発のための
再生治療開発のためのGMP
F
D
A
準拠細胞プロセッシング指針
プロセッシング指針の
作成に関する研究
指針の作成に
準拠細胞プロセッシング
準拠細胞プロセッシング指針
プロセッシング指針の
指針の作成に関する研究
する研究
(14130101)
(14130101)
に
よ
る
規
制
(
米
国
内
)
先端医療センター
先端医療センター等
センター等における細胞治療
における細胞治療・
細胞治療・再生
治療開発のた
治療開発のための
のためのGMP
めのGMP準拠細胞
GMP準拠細胞プロセッシン
準拠細胞プロセッシン
グ施設が
施設が持つべき構造設備基準
つべき構造設備基準(GMP
構造設備基準(GMP細胞
(GMP細胞
プロセッシング施設基準
プロセッシング施設基準)
施設基準)について(
について(研究報告
案)
(課題番号:
課題番号:H14H14-医薬-001)
001)
(課題番号:H14H14-医薬-001)
001)
平成14年度
14年度(単年度) 単年度) 平成14
平成14年度
14年度(
年度(単年度) 単年度) 総括・分担研究報告書
総括・
総括・分担研究報告書
主任研究者 主任研究者 前川 平
主任研究者 前川 前川 平
(京都大学医学部附属病院)
京都大学医学部附属病院)
(京都大学医学部附属病院)
京都大学医学部附属病院)
平成15年
15年3月
平成15
平成15年
15年3月
ヒト細胞
ヒト細胞・
細胞・組織を
組織を用いた細胞
いた細胞プロセッシング
細胞プロセッシング規
プロセッシング規
制のフローチャート
フローチャート
チャート(
(研究報告案
研究報告案)
京都大学医学部附属病院分子細胞治療セン
京都大学医学部附属病院分子細胞治療セン
ターの
ターの設計概略
頁)
などを報告
などを報告(総 454頁
18
17
72
5.再生医療におけるTR固有の課題と進め方について
無菌医薬品の
無菌医薬品の生産のための
生産のための無菌的
のための無菌的プロセッシング
無菌的プロセッシングに
プロセッシングに関する規定
する規定(
規定(案)
先端医療センター
準拠細胞
先端医療
センター
における
細胞治療
再生治療開発
のための
先端医療センター
センター等
等における細胞治療
における細胞治療
細胞治療・
・再生治療開発のための
再生治療開発のための
のためのGMP
準拠細胞
先端医療センター等
センター等
における細胞治療・
細胞治療・
再生治療開発のためのGMP
のための
プロセッシング施設
プロセッシング
施設
つべき
構造設備基準
細胞
プロセッシング
プロセッシング施設
施設が
が持
持つべき構造設備基準
つべき構造設備基準
構造設備基準(
(GMP
GMP 細胞プロセッシング
細胞プロセッシング
プロセッシング施設
施設
プロセッシング施設が
施設が
つべき構造設備基準(
構造設備基準(
細胞プロセッシング施設
プロセッシング施設
基準)
について(
基準
)
について
(
案
)
基準)
基準)について(
について(案)
Ⅰ.はじめに
Sterile Drug Products Produced by
Aseptic Processing Draft
Ⅱ.背景
Ⅲ.責任範囲
Ⅳ. 施設が
施設が具備すべき機能的条件とその設計
A.
クリテイカル・エリア(
エリア(クラス100)
B.
サポーテイング・クリーン・エリア
C.
各クリーン・
クリーン・エリアの分離について
D.
空調(供給される
供給される空気
される空気の
空気の清浄度を
清浄度を保つための空気濾過)
空気濾過)
1.
メンブラン(
メンブラン(圧縮空気)
圧縮空気)
2.
HEPA(
HEPA(High Efficiency Particulate Air)
Air)フィルター
E.
設計
細胞治療・再生治療に用いるヒト細胞・組織(臨床用ヒト細胞)の取扱いについては薬
細胞治療・再生治療に用いるヒト細胞・組織(臨床用ヒト細胞)の取扱いについては薬
務公報第1867号別添1(平成13年2月21日)において「細胞・組織医薬品等の取り扱いお
務公報第1867号別添1(平成13年2月21日)において「細胞・組織医薬品等の取り扱いお
よび使用に関する基本的考え方」および「ヒト由来細胞・組織加工医薬品等の品質およ
よび使用に関する基本的考え方」および「ヒト由来細胞・組織加工医薬品等の品質およ
び安全性の確保に関する指針(同別添2)」とされたところである。これを受けて、厚
び安全性の確保に関する指針(同別添2)」とされたところである。これを受けて、厚
生労働科学研究費による本研究では臨床用ヒト細胞を製造する施設が構造上遵守すべき
生労働科学研究費による本研究では臨床用ヒト細胞を製造する施設が構造上遵守すべき
適切な基準(案)を以下に「臨床用ヒト細胞・組織の製造施設の構造設備基準」
適切な基準(案)を以下に「臨床用ヒト細胞・組織の製造施設の構造設備基準」 ( (GMP
GMP
準拠臨床用ヒト細胞・組織製造施設の構造設備基準)として提案する。
準拠臨床用ヒト細胞・組織製造施設の構造設備基準)として提案する。
?? Preliminary Concept Paper Not for Implementation ??
CBER, Sept. 27, 2002
Ⅴ.技術員訓練、
技術員訓練、資格、
資格、 モニターリング
A.
プロセッシング技術員
プロセッシング技術員
B.
細菌検査室などの
細菌検査室などの技術員
などの技術員
C.
技術員の
技術員の技術をモニターリングするプログラム
Ⅵ.原料、
原料、容器・栓
A.
B.
記
記
邦訳
原料
容器・栓
Ⅶ.エンドトキシン・
エンドトキシン・コントロール
Ⅷ.種々の時間制限
GMP
準拠臨床用
ヒト
細胞
組織製造施設
構造設備基準
GMP準拠臨床用ヒト
準拠臨床用ヒト
ヒト細胞
細胞・
・組織製造施設の
組織製造施設の
の構造設備基準(
構造設備基準(
(案
案)
)
準拠臨床用ヒト細胞
ヒト細胞・
細胞・
組織製造施設の
構造設備基準(
Ⅸ. プロセス・
プロセス・バリデーションと
バリデーションと機器の適格性評価
A.
プロセスシミュレーション
B.
濾過効率
C.
機器、容器、
容器、栓の滅菌
一 当該製造施設の臨床用ヒト細胞・組織(製造の中間工程で造られたものであって、
一 当該製造施設の臨床用ヒト細胞・組織(製造の中間工程で造られたものであって、
以降の製造工程を経ることによって臨床用ヒト細胞・組織となるもの(以下「中間製品」
以降の製造工程を経ることによって臨床用ヒト細胞・組織となるもの(以下「中間製品」
という
という ) ) を含む。以下同じ。)を製造するのに必要な設備及び器具を備えているこ
を含む。以下同じ。)を製造するのに必要な設備及び器具を備えているこ
と。。。。。。。
と。。。。。。。
Ⅹ. 検査室のコントロール
A.
B.
C.
D.
環境モニターリング
微生物学的培地とその
微生物学的培地とその評価
フィルター通過前
フィルター通過前の
通過前の生物学的負荷
空気中の
空気中の浮遊粒子の
浮遊粒子のモニターリング
再生医療の細胞プロセッシン
グに特化したInstitutional
GMPソフトの構築が喫緊の
課題であるのだが.….
。。。。。。。。。
20
19
京都大学分子細胞治療センター
京都大学分子細胞治療センター
日常の運営管理(環境モニタリング)
( GMP Facility for Cell Processing )
Kyoto University Hospital Center for Cell and Molecular Therapy
22
21
パーティクル カウンターによる清浄度測定
日常の運営管理(入退室管理)
(膵島分離作業時)
Kyoto University Hospital Center for Cell and Molecular Therapy
Kyoto University Hospital Center for Cell and Molecular Therapy
24
23
73
5.再生医療におけるTR固有の課題と進め方について
日常の運営管理(空中浮遊菌検査)
新規プロジェクトのための工程表
大分 小分
類
類
前
臨
床
プ
ロ
セ
ス
細
胞
処
理
管
理
プ
ロ
セ
ス
環境微生物の評価基準
EU-GMP
空中微生物数
最小空中採取量
グレード
A
B
C
(CFU/m3)
<1
10
100
(m )
0.5
0.5
0.2
3
表面付着微生物数
機器・設備
手袋
2
(CFU/24~30cm )
<1
<1
5
5
25
---
顧客
センター長
品質管理者
品質管理責任者 製造管理責任者
製造担当者
情報のフィード
バック
会議体
基準書−SOP
記録書
治療開発計画
基礎的検討
治療法開発実施案
作成
品
質
方
針
ニーズ
年度
運営計画書
品質方針
承認
運営会議
品 質 目 標
力量、認識 及び 教育・訓練
細
胞
処
理
計
画
の
運
用
品質マニュアル
教育訓練管理基準書
教育訓練計画表
※1
基本作業
教育計画立案
運営会議
各プロジェクト
作業教育計画書
衛生
資格認定者名簿
VMP
Logbook
製品衛生管理基準書
インフラストラクチャー 及び 作業環境準備
清掃に関する手順書
浮遊菌試験に関する手
順書
設備機器点検に関する
手順書
清掃実施記録
月間清掃記録
浮遊菌検査試験検査記
録書
入退室関する手順書
手洗いに関する手順書
Kyoto University Hospital Center for Cell and Molecular Therapy
Kyoto University Hospital Center for Cell and Molecular Therapy
25
26
Translational Researchers’ Struggle
Cell Processing is also a Team
Barriers are many and imposing
2. Usually not an individual, rather a TEAM
Engineer &
Architect
……… “ Translational Team ”
FDA officer
GMP consultant
Laboratory-based investigators
T
E
A
M
Dr. Drucker
Clinical investigators
Pharmacists
Staticians
Research nurses
Data managers
Dr. High
Dr. Sawyer
Clinical investigator
Howard Hughes Medical Institute (HHMI) has
announced a new initiative to fund the work of 12
of America's best physician-scientists
Processing technician
& Pharmacist
For cell therapy, cell processing is mandatory
Laboratory-based investigator
What is Translational Research? - Birmingham K, Nature Med 8:647, 2002
28
27
アルバータ大学
アルバータ大学での
(2000年)
大学での臨床膵島移植成功
での臨床膵島移植成功 (2000年
膵島移植に対する米国 FDA の規制
1. 膵島分離にかかわる約束ごとを成文化して、標準作業
手順書 (SOP) を作成する
2. ドナーの感染症の有無の確認
3. 膵島分離操作はクリーンルームであるCPC内でのみ実
施し、その際に用いる器具や培養液は十分に品質管理
を受けたものを使用する
カナダの
エドモントンにある
にあるアル
カナダのエドモントン
にあるアル
バータ大学
バータ大学では
大学では、
では、7例の膵島移
4. 記録を残して随時参照することを可能にする
植を行い1年後全員の
年後全員の糖尿病
5. インフォームドコンセントを含めた質のよい臨床試験の
デザインを構築し、それを遵守する
が完治したと
発表した
した
完治したと発表
したと発表
30
29
74
5.再生医療におけるTR固有の課題と進め方について
膵島移植
Pancreatic Islet Cell Transplantation
膵島の分離から移植まで
肝臓
膵臓
膵島分離
膵臓消化
QuickTimeý Dz YUV420 ÉRÅ[ÉfÉbÉN êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ Ç™Ç±ÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ-ÇÅB
膵島純化
門脈内投与
膵島
32
31
膵島分離SOPと作業記録書
膵島分離結果
膵島収量:
膵島収量: 34万
34万 IE
(移植基準 > 5000 IE/kg)
IE/kg)
Viability:
99 %
(移植基準 > 70 %)
純度::
純度
60 %
(移植基準 > 30 %)
組織量:
組織量:
7 ml ml (移植基準 < 10 ml)
ml)
エンドトキシン:
エンドトキシン:4.7 EU (移植基準 < 5 EU/kg)
グラム染色
グラム染色:
染色:陰性
(移植基準
移植基準:
:陰性
陰性))
機能検査:
機能検査
:Static Incubation (Stimulation Index)
Edmonton法
Edmonton法:23.5
Kyoto University Hospital Center for Cell and Molecular Therapy
34
33
膵島移植前後の
膵島移植前後の血糖値
症 例:H. F. 36才
才 女性
Serum Glucose (mg/dl)
主 訴:無自覚性低血糖
450
400
350
現病歴:
才時に
型糖尿病と
現病歴:15才時
才時に1型糖尿病
型糖尿病と診断され
診断され
た。強化インスリン
強化インスリン療法
インスリン療法でも
療法でも、
でも、
血糖の
血糖の動揺が
動揺が激しく突然生
しく突然生じる
突然生じる
無自覚性低血糖によって
無自覚性低血糖によって交通事
によって交通事
故の既往もある
既往もある。
もある。
Pre-breakfast
Pre-dinner
300
250
200
1st Tx
2nd Tx
150
100
50
0
Pre 0 10 20
Transplantation
30 40 50 60 70 80 90
Post-Transplantation (days)
100 110
36
35
75
5.再生医療におけるTR固有の課題と進め方について
膵島移植前後の
膵島移植前後のインスリン必要量
インスリン必要量
現在までの膵島分離と移植症例
Insulin Dose (U/day)
40
1st
35
Tx ( 4/7 )
30
分離No. 日時 膵島収量 膵状態
移植
1
WGルールに基づき凍結
04/01/19
32万 正常
2 04/04/07 35万
25
2nd Tx
20
(7/ 20)
インスリン離
インスリン離
脱に成功
15
正常
3 04/04/17 13万
第1例目に移植
慢性膵炎 細胞数不足で凍結
4 04/06/02 40万 正常
第2例目に移植
5 04/07/01 47万 正常 第1例目に2回目の移植
10
5
6 04/07/21 51万
0
0
10
20
Pre-Transplantation
30
40
50
60
70
80
90
正常 第3例目に移植
7 04/07/21 35万 正常 第3例目に移植(6と一緒)
100 110
Post-Transplantation(days)
38
37
Full GMP と Institutional GMP
膵島移植チーム
目的
輸血細胞治療部教授
CCMTセンター
CCMTセンター長
センター長
対象
施設
探索医療センター
探索医療センター
医の倫理委員会
田中紘一病院長
移植外科教授
構築、
構築、実施、
実施、管理
責任の
責任の所在
山田祐一郎助教授
糖尿病栄養内科
行政側からの
行政側からの
実施体制
エンジニア
GMPコンサルタント
GMP
コンサルタント
デザイナー
機器メーカー
機器メーカー
笠井泰成
CCMT主任技官
品質管理者
松本慎一助手
(ミネソタ大
ミネソタ大)
臓器移植医療部
岩永康裕
(シンシナチ大
シンシナチ大)
移植外科
興津輝
(メリ ? ランド大
ランド大)
移植外科COE
COE移植外科
COE
-RA
米川幸秀
移植外科
COECOE-RA
医薬品 full GMP
iGMP
最終産物の
最終産物の安全性と
安全性と信
頼性の
頼性の担保
医薬品、
医薬品
、特定生物
企業
最終産物の
最終産物の安全性と
安全性と
信頼性の
信頼性の担保
細胞治療・
再生治療の
細胞治療
・再生治療
のTR
大学、
先端医療センター
大学
、先端医療
センター
施設における
における研究
研究チーム
施設
における
研究
チーム
厚生労働省
法令(
法令(薬事法)
薬事法)
村松裕子
中川陽子
松村紘子
CCMT教務補佐員
CCMT教務補佐員 CCMT内部監査員
CCMT内部監査員 CCMT技術補佐員
(COE非常勤
COE非常勤)
非常勤)
(COE非常勤
COE非常勤)
非常勤)
輸血部技官
野口洋文
(ジョスリンC
ジョスリンC)
移植外科
永田英生
(ネブラスカ大
ネブラスカ大)
移植外科
中井勇介
研究補佐
(非常勤
非常勤)
)
“指針”
指針”
競争的研究費、
競争的研究費、エンジェル
資金
企業
人員
必要十分
バリデーション
ISO認定
ISO
認定
内田百合香
CCMT内部監査員
CCMT内部監査員
(COE非常勤
COE非常勤)
非常勤)
(研究者、
研究者、臨床研究医、
臨床研究医、技師、
技師、
GMPコンサルタント
GMPコンサルタント、
コンサルタント、企業の
企業の研究者)
研究者)
必要最低限
詳細
必須
違反・
違反・不備の
不備の際
必要最低限
I & A, 指導的査察
改善の
勧告”
“改善
の勧告
”
製造中止命令と
製造中止命令と罰則
(COE非常勤
COE非常勤)
非常勤)
40
39
CCMTの責任体制
改正薬事法で要求されるfull GMP
I. 一般要求事項
第1 通則
1. 組織
Full GMPで
で要求される
要求される バ
リデーション
センター長
前川
DQ(Design Qualification) 設計の適格性
品質管理者
笠井
企業のGMPであ
れば別の人物の
ことが多い
2. 製造管理者の責務
3. 責任者・従業員
4. 構造・設備(装置を含む)
5. 文書・記録
6. 製造(製造標準書、製造管理基準書、 衛生管理基準書等)
7. 品質管理(製品標準書、品質管理基準 書、衛生管理基準書等)
8. 製造所からの出荷
9. バリデーション
10. 変更管理
11. 逸脱
12. 苦情処理
13. 回収処理
14. 自己点検
15. 教育訓練
IQ(Installation Qualification) 据え付け状態の適格性
造血幹細胞
保存管理
膵島分離
Calibration
OQ(Operation Qualification) 運転状態の適格性
松本
製造管理
責任者
PQ(Performance Qualification) 稼働性能の適格性
製造担当者
PV(Process Validation)
実生産規模での確認
移植外科医
CCMT
CV(Cleaning Validation)
笠井
品質管理
責任者
同一人物で
あってはなら
ない
笠井
製造管理
責任者
樹状細胞培養
木村
品質管理
責任者
製造担当者
CCMT
プロジェクトごとに
Kyoto University Hospital
専任が理想
門脇
製造管理
責任者
笠井
品質管理
責任者
製造担当者
血液内科医
CCMT
Center for Cell and Molecular Therapy
42
41
76
5.再生医療におけるTR固有の課題と進め方について
TRにおけるバリデーションの問題点
DQ
材質、形状、寸法、容量、能力等が設備の使用条件に照らして妥当かどうか
を検証する。設備完成後のトラブルを未然に防ぎ、使用目的に合致した設計
の導入が目的。
IQ
設備が設計通り作製及び設置されているか等の仕様の確認。
Calibration
OQ
機器の校正。新規購入時には問題ないが、仕様後の校正には費用
が必要。
設備の稼働状態での仕様の確認(IQは静止状態での確認)。新規購入時には
問題ないが、仕様後の校正には費用が必要。
× PQ
製造手順、製造施設等がワーストケースにおいて、意図したとおり稼働する かどう
いてのワーストケー
か検証。TRではドライランやウ オーターランは可能だが、実原料を用
ス(たとえば、バイオバーデン)は実施できないことあ り。例えば、試験だけの目的で、ドナー
の膵臓を用いることはできない。
設備、工程、手順等の適正化が終了後、SOP通りに3ロットの生産を行い、 その
× PV
品質が一定であることを確認すること。TRでは、1ロット、1ドナーであ
り、実施不可能。
×
金額(万円)
Full GMPでのバリデーション項目(1)
空気中パーテイクル多点システム定期バリデーション
パーテイクルセンサー点検(10)
パーテイクルセンサー校正(10)
試験成績書(10)
交換部品(レーザーダイオード)(10)
ポンプユニット点検調整
交換部品(ダイヤフラム、Oリング等)
試験成績書
定期バリデーション作業一式
技術料2名×2.5日
交通費(往復)
宿泊費2名×2日
校正器損料
コンピューターメンテナンス費用
データバックアップ作業
ループ試験
偽計数試験
流量試験
定期バリデーション書類作成
諸経費
センサーポンプ引き上げ作業
小型LED表示灯(設置調整費含む)
CV
洗浄によって表面の残留物が適切に除去されていることを保証し、交叉汚染
の可能性を極小化させることを目的としている。生物由来の原料の場合、病原体
の検出限界もあり、厳密なCVは不可能。
iGMP
25.0
8.0
25.0
8.0
13.0
要時交換
59.0
8.0
5.0
1.0
17.2
4.0
4.2
10.0
2.0
2.0
1.0
1.0
3.0
3.0
自主作成
10.0
5.44
小計
3.0
2.5 3.0
184.34
39.0
44
43
金額(万円)
Full GMPでのバリデーション項目(2)
液体窒素凍結保存容器(MVE)定期バリデーション
MVE容器真空層の真空度チェック
液体窒素自動供給制御盤点検
液体窒素貯槽定期検査
弁駆動用窒素ガス供給装置点検検査
18.6
12.5
12.5
6.2
小計
iGMP
自主点検
自主点検
49.8
室内空調機器交換
HEPAフィルター(31)
中性能フィルター(8)
HEPAフィルター取り替え工料(31)
室内照明器具交換
室内照明球部材(44)
室内照明取り替え工料(44)
環境モニターシステム(ESD)定期バリデーション
2.288
7.04
室内点検
(温度、センサー、室圧、風速、清浄度、書類作成など)
室内サニテーション一式
Institutional Facility
0
111.9
28.0
19.53
64.0
要求される
要求
要求される
されるGMP
GMPの
のレベル
レベル
要求される
されるGMP
GMPの
Blood Center
tion
eriza
ract
Company
a
h
C
ucts
P
GM
Prod
Phase III
Phase II
Translational Phase I
111.9
28.0
19.53
自主交換
自主交換
自主点検
161.85
室圧、
室圧、風速のみ
風速のみ
30.0
112.38
自主作業
PrePre-clinical
Institutional GMP
Full GMP
QA & QC, Clinical Monitoring Program
Prior to Phase I: need product safety and basic characterization information
合計
1,004万
万3,280円
円
321万
万9,300円
円
46
45
課題と今後の進め方(私案)
21 世 紀 の 細 胞 治 療 システム
1. iGMPの
のルールづくり
ルールづくり
先端医療支援施設
造血幹細胞移植ほか
造血幹細胞移植ほか
(stem cell transplantation)
2. 培養方法の
の問題 )
血清、Xeno-cultureの
培養方法のルールづくり
ルールづくり( 血清、
血液センター
血液センター
3. GMP cell processingを
を理解した
理解したテクニシャン
したテクニシャンの
テクニシャンの養成
( COE トレーニングコース )
4. 評価・
は TR の免罪符ではない
免罪符ではない )
評価・査察・
査察・認定機構( CPCは
5. センター化
センター化( 集約化 、資金の
資金の集中化)
集中化)をどうするか
先端医療 先端医療 セ
セ
ンター
自己組織・
自己組織・臓器の
臓器の再生
大学・
大学・研究所
(tissue engineering)
Pre-clinical Phase I
6. ファイナンシャル・
ファイナンシャル・サポート
企業
Phase II
7. 行政との
行政との連携
との連携
病院
8. 学会の
学会のサポート
Phase III
9. 税制
(探索的臨床試験研究
探索的臨床試験研究)
)
48
47
77
第3回トランスレーショナルリサーチ懇話会
トランスレーショナルリサーチ懇話会
平成 17 年 8 月発行
編集・発行
京都大学医学部附属病院 経理・調達課
研究推進掛
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町 54
TEL:075-751-4899 FAX:075-751-4905
E-mail:[email protected]
※掲載内容の無断転載を禁じます
第3回
トランスレーショナル
リサーチ懇話会
リサーチ懇話会
The 3rd Translational
Research Workshop
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