Comments
Description
Transcript
販売データを用いた省エネ家電の機器選択モ デルの検討
電力中央研究所報告 経 営 販売データを用いた省エネ家電の機器選択モ デルの検討 −2008-09 年度冷蔵庫市場の場合− キーワード:機器選択,ロジットモデル,省エネルギー,割引率,冷蔵庫 背 報告書番号:Y10022 景 省エネ家電の普及を 1 つの目的として、2009 年 5 月に家電エコポイント制度が導入さ れた。今後、家庭部門の省エネ機器の普及支援策を費用対効果が高いものにするために は、消費者がどのような要因で家電機器を選択するのかを説明できるモデルがあると、 制度の効果を事前評価できるため、非常に有用である。 目 的 冷蔵庫を例として、 実販売データを用いて、省エネ家電の機器選択モデルを検討する。 主な成果 2008-09 年度の 2 年間に家電量販店チャンネルを通じて販売された冷蔵庫の実際の販 売台数と販売価格データを用いて、機器選択モデルを検討した。同データの販売台数の 合計値は、国内出荷台数約 400 万台の約 1/3 をカバーする(表 1) 。 1. 販売価格とエネルギー消費効率のトレードオフ 容量 251L 以上では、容量区分毎に、販売価格とエネルギー消費効率(年間消費電力 量のカタログ値)の間に負の相関があることが分かった(図 1)。消費電力量が小さい機 器ほど販売価格が高い。同 250L 以下では、このような傾向は確認できなかった。 2. ロジットモデルを用いた家電機器選択モデル ロジットモデルを用いて販売データを分析したところ、容量 251L 以上では、冷蔵庫 の販売台数シェアに対して、想定した冷蔵庫の 3 つの機器属性―(1)販売価格、 (2)年 間消費電力量(カタログ値) 、 (3)定格内容積―が影響を与えることを確認した(図 2)。 同 250L 以下では、 そのような傾向は確認できなかった。容量 251L 以上の区分に対して、 推定した機器選択モデルを用いて 2009 年度の販売台数シェアを計算し、 同年度の実績値 と比較したところ、モデル推定値は実績値の傾向を概ね再現することを確認した(図 3)。 推定した機器選択モデルから観測される、消費者が許容可能な投資回収年数は 6.85 年 (2008 年度)、5.5 年(2009 年度)であった。割引率※で言うと各々9.1%、14%である。 但し、この投資回収年数や割引率は、他の機器属性(例えば冷蔵庫の機能性)を無視し たモデル結果であることに注意が必要である。 ※割引率(r):将来受け取る金額を現在価値に割り引く時に用いる割合。単純投資回収年数(PBT)から次の式を用い て導く。PBT=(1-(1+r)^(-T))/r (T:耐用年数) 今後の展開 モデルの精度向上と対象家電機器の拡大を行い、家庭部門の省エネ機器の普及支援策 の事前評価に使える手法を考案する。 表 1 使用データの概要 2008-09年度を比較すると、容量の平均値は 313Lから324Lへ増加したが、年間消費電力量 は450kWhから384kWhへ減少した。 販売価格 容量 250L以下 省エネ性能 型式1 [ INI1 SIZE1 KWH1 ] 型式2 [ INI2 SIZE2 KWH2 ] 型式n [ 冷蔵庫の 購入 容量 INIn SIZEn INI1 SIZE1 KWH1 ] 型式2 [ INI2 SIZE2 KWH2 ] … INIn SIZEn 効用関数U(i)=-4.73E-05*INI(i)-2.6E-04*ELE(i)+0.0141*SIZE(i)-3.52 i: 型式コード, INI: 販売価格(円), SIZE: 定格内容積(L), ELE: 年間電気料金(円/年)(=22円/kWh*年間消費電力量(kWh)) 図 2 冷蔵庫の購入時の意思決定ツリーと推定した 機器選択モデル(2009 年度,容量 251L 以上) 容量 251L 以上の区分では、販売価格と年間消費 電力量、容量の 3 つの機器属性が、販売台数シェ アに影響を与えている。 問い合わせ先 ¥50,000 INI=9803.2+156.3*SIZE ¥0 0 100 200 300 400 500 600 700 年間消費電力量(kWh) 図 1 冷蔵庫市場における販売価格とエネルギー 消費効率のトレードオフ(2009 年度) 容量 251L 以上の区分では、販売価格と年間消費 電力量(カタログ値)の間に負の相関がある。 251-400L 高kWh 251-400L 低kWh 401-500L 高kWh 401-500L 低kWh 501L以上 高kWh 33% 7% 15% 9% 14% 501L以上 低kWh 実績値 32% モデル推 定値 31% 11% 2% 19% 25% KWHn ] 販売台数シェア=Pr(INI,ELE,SIZE)=EXP(U(i))/Σk EXP(U(k)) 研究担当者 250L以下 INI=132775-222.5*KWH +162.9*SIZE KWHn ] 型式1 [ 型式n [ 501L以上 401-500L 251-400L 1% … 容量 251L以上 販 ¥150,000 売 INI=67496.2-188.8*KWH 価 +302.4*SIZE 格 円 ¥100,000 ) 250L以下 251-400L 401-500L 501L以上 定格内容積(L,加重平 313 324 均) 450 384 年間消費電 平均 力量[カタロ 250L以下 367 320 グ値](kWh/ 251-400L 524 484 年,加重平 401-500L 480 380 均) 501L以上 472 383 ※データソース: GfK Japan ※参考:国内出荷台数=406万台(2008年度), 407万台(2009年度) INI=-27810.3-290.8*KWH+566.7*SIZE ¥200,000 ( 2008年度 2009年度 535ヶ 490ヶ 127万台 134万台 34.9% 33.2% 23.5% 22.5% 31.5% 29.6% 10.2% 14.7% 型式数 販売台数 販売台数 シェア(%) ¥250,000 高橋 雅仁(社会経済研究所 0% 20% 40% 60% 80% 100% 販売台数シェア ※高 kWh は消費電力 401kWh 以上, 低 kWh は同 400kWh 以下 図 3 冷蔵庫の販売台数シェアの実績値とモデル 推定値の比較(2009 年度,容量 251L 以上) 推定した機器選択モデルは、販売台数シェアの 実績値の傾向を概ね再現するが、モデルの精度 向上を図り再現性をさらに高める必要がある。 エネルギー技術政策領域) (財)電力中央研究所 社会経済研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 03-3480-2111(代) E-mail : [email protected] 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] ©財団法人電力中央研究所 平成23年4月発行 10−012