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“貝島家特定契約”関係史料

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“貝島家特定契約”関係史料
〈研究ノート〉
“貝島家特定契約”関係史料
一貝島家家憲成立史に関する史料-
畠 山 秀 樹
I
は じ め に
周知のように,日本の石炭産業は,その工業化に大きな役割を果たすと
ともに,財閥形成途上における重要な資本蓄積基盤となったが,その産業
構造上の特徴の一つとして,はやくから顕著な寡占構造をなしていたこと
があげられている.いうまでもなく,その主要企業として中央大手では三
井・三菱など,さらに地方大手では貝高・明治(安川)・麻生などがあげ
られるが,地方大手のなかには巨大な資本蓄積を基礎としてしだいに経営
の多角化や株式投資を押し進め,三井や三菱に比して小規模ながらコン
ツェルン的形態を展開する者も現われてきた.貝島・明治・麻生などが,
九州閣川あるいは地方財閥と呼ばれるようになったゆえんであろう.
さて,貝島は地方大手中の最有力者であったので,貝島の経営史は,石
炭産業史の研究にとっても地方財閥の研究にとっても,ともに重要な位置
を占めているが,この貝島の経営史においで貝島家家憲”はとりわけ特
別の意義を有してきたと考えられる.というのは,貝島の行動に“家憲”
がきわめて重大な影響を及ぼしたとされるからである.
ところで,かつて私は貝島家家憲と,付属諸規定のうち重要なものを紹
―
92 −
“貝島家特定契約”関係史料
1)
介し,簡単な検討を試みたことがあったが,貝島家ではその家憲制定をさ
かのぼることおよそ10年前に,すでに家憲の原型をなしだ貝島家特定
契約”なる草案が作成されていたのである.前稿では,当時の事情からそ
の点についてふれることができなかったので,私の貝島経営史研究の一環
として,ここに関連する史料を整理し,紹介しようとするものである.
n.
貝島家は,
"貝島家特定契約”の作成事情
1909年元老井上馨邸において同家家憲の制定式を華やかに
挙行した.この家憲は『貝島太助伝』によれば,創業者貝島太助か1902
年に井上馨に家憲制定を依頼し√その間に紆余曲折はあったものの,その
1):畠山秀樹「貝島家の家憲」(『大分大学経済論集』第37巻第1号,
1985年)
参照.なお,同稿で紹介したものは,その草案であったので,近くその正文
を紹介する予定である.また,貝島家事業の概観についてはとりあえず,畠
山秀樹(筑豊炭礦企業家の形成と発展O)」(『大分大学経済論集』第36巻第3
号,
1984年)参照.なお,貝島に関連する最近の研究として,管見する限り
では以下の通りである.
宇田川勝「貝島家の事業経営と鮎川義介の関係について」(『エネルギー史
研究ノート』第7号,
1976年),同「貝高財閥経営史の一側面」(『福岡県史
一近代研究編各論(1)』1989年),同「貝島家の石炭業経営と井上馨」(法政大
学『経営志林』第26巻第4号,
1990年),永江鼓夫「明治期貝島石炭業の経
営構造」(『福岡大学経済学論叢』第29巻第2・3号,1984年),同「貝島鉱
業合名会社の経営組織に関する覚書」(同上誌,第31巻第3・4号,
1987年),
同「日露戦争期における貝島石炭業の収支構造」(秀村選三先生御退官記念論
文集『西南地域の史的展開一近代編』思文閣,
1988年),同「鉱業(石炭)
財閥」(渋谷隆一・加藤隆・岡田和喜編『地方財閥の発展と銀行』日本評論社,
1989年),同「第一次大戦後期から昭和恐慌にいたる貝島石炭業経営の展開」
(荻野喜弘編『戦前期筑豊炭鉱業の経営と労働』啓文社,
1990年),荻野喜弘
「第一次大戦前後における貝島炭鉱業の労資関係」(荻野喜弘編著,前掲書),
森川英正「貝高財閥」(同『地方財閥』日本経済新聞社,
1985年).
2)『貝島太助伝』(未定稿)は数種伝えられているが,小論で使用するものは,
1955年の貝島太市の序文が付されたものである.以下『太助伝』と略.
−93−
“貝島家特定契約”関係史料
3)
作成を指導して制定を迎えたものと伝えられている.しかしながら,この
記述は年代からみても事実に関して大きな疑問を残しているのである.と
いうのは,貝高家家憲の原型をなしたと想定できる“貝島家特定契約”あ
るいぱ貝島一家特定契約”なる文書が数種類残されており(以下“契約”
と略),日付は空白となっているが,いずれも“明治32年”と記入されて
おり,
1899年に制定する予定であったと推測できるからである.しかも
この点に関してもう一つ留意しておきたいことは,貝島家家憲は井上馨の
指導の下に作成された三井家憲を模倣したものであるが,三井家憲は
1900年に施行されたものであるから,貝島家家憲は三井家憲の制定と平
行しながらその草案作成が進められていたことになるのである.
ところで,先述したように“貝島家特定契約”は同家家憲の最も古い草
案としてきわめて重要なものと評価してよいが,『太助伝』や『貝島会社
4』
年表草案』では奇妙なことにこれに関する記述は全くみあたらない.両者
の編纂者達かこの“契約”を閲覧する機会がなかった,というようなこと
はまず考えられないので,むしろその間の事情に伏せておきたいものが
あったと考えるほうが妥当であろう.いずれにせよ,この“契約”が作成
されている頃,実は貝島家ではこれと関連を有する各種の文書作成が進め
られていた模様で,現在判明しているものは表1のごとくである.では,
何故この時期にこのような文書が作成されたのか,この点について少しふ
れておきたい.
貝島の炭礦事業は,日清戦争とその後のブームに乗って経営の安定を取
り戻すとともに,その規模をも飛躍的に拡大しつつあり,もはやこの頃に
は貝島太助の名声ぱ炭礦工”としてゆるぎないものとなっていた.しか
しながら,井上馨は太助の豪放かつ厚情,そしてそれと裏腹をなす無計算
3)『太助伝』第3巻(2),413頁.
4)『貝島会社年表草案』は,同社社史編纂の一環として作成されたもので,貝
島の歴史を知る上できわめて信憑性の高いものである.
−94
−
“貝島家特定契約”関係史料
表1
史料番号
史料I
史料n
史料Ⅲ
史料Ⅳ
史料V
史料Ⅵ
史料Ⅶ
史料11
史料DC
史料X
史料XI
貝島家特定契約関連文書一覧
史 料 名
時 期
貝島鉱業合名会社設立趣意書
貝島鉱業合名会社設立契約書
第二大ノ浦坑採炭合資会社契約草案
貝島鉱業合名会社定款
分配表
a.各社員所有地分配表
b.分配表
c貝島鍍業合名会社出資額 目下ノ分
d.貝島鍋業合名会社出資額 今後増資ノ分
一族共同積立金法
積立金法
各社員出資額割合
貝島家特定契約
貝島家家系図
誓約書案
明治31年
同 上
無
明治32年
無
明治32年7月20日
同 上
同 上
明治32年
明治32年7月16日
無
(注)L史料番号は,仮に付したものである.
2.時期は,原文書に記入されているものである
3.史料I・nには「写」と記入されている,
と散財がその事業基盤を崩壊させるのではないかと強く懸念していた.そ
こで,井上は事業経営を安定的に存続させるために,同族の財産に対する
持分権の決定,経営機構の整備,およびそのための事業の法人化を太助に
忠告し,太助もそれに従って貝島鉱業合名会社が1898年に設立されたと
考えられる.これに関連する文書が史料I
・H・IV・Vとして作成され,
また同族の持分権および同族の根本となるべき規範として,史料V・Ⅵ・
Ⅶ・IX・X・XIが作成されたと思われる.史料Vは,貝島同族の持分を明
らかにするとともに,個人と法人の財産をも区分しようとするものであっ
た.史料
は,このような合資会社が実際に設立されたのかどうか,さら
にはその目的も現在では不詳であるが,おそらく草案のままで終ったもの
であろう.
ところで,表1に掲げたような多くの文書のうち,実際に実施あるいは
一一95 −
“貝島家特定契約”関係史料
実効性をもったと考えてよいものは,史料I
・ Ⅱ ・IV・V・VI・Ⅶ・VⅢ.
Xである.ただし,日付まで記入されているVI・Ⅶ・徊・Xを除いて他の
文書は,未だ草案の段階と考えられることに注意しておく必要があろう.
そして,最終的に“貝高家特定契約”jとそれに付随する“誓約書案”の実
施は見送られ,とりあえず合名会社設立に必要とされた文書と,同族の持
分を明確にする文書とが制定・実施されたものと推測される.それではな
ぜ,“貝島家特定契約”は実施されなかったと推測されるのか.この問に
直接に答える史料は手許に存し
ないが,経済的事情として考え
表2 貝島鉱業会社貸借対照表貸方の推移
(単位:千円)
られることの一つは,貝島鉱業
1898年 1899年 1900年
11月 9月 12月
会社設立頃から炭況の下降が進
出 資 金
2,000
2,000
2,000
み,経営状態が悪化し始めてい
諸積立金
51
たことがあげられよう.
借 人 金
221
432
930
手形借入金
150
534
463
したものである.これによれば,
三井物産
炭代見合借金
206
233
58
1898年から1900年にかけて,
三井物産受入
負債(B)は822千円から1,652千
預 り 金
円へと倍増しており,貸方合計
配当金預り金
114
に占めるその割合も同期間に
その他諸勘定
79
29.1%から43.4%へと急増し
益 金
表2は,貝島鉱業会社のバラ
ンス・シートの貸方の推移を示
ているレなかでも,借入金およ
び手形借入金勘定の増加が顕著
であるが,これは固定的な負債
131
52
104
71
29
69
100
貸方合計(A)
2,822
3,400
3,803
負 債(B)
822
1,331
1,652
39.1
43.4
B/A(%) 29』
である.貝島太助は,“契約”
(注)1.千円未満四捨五入.
2.負債は,(A)から出資金・諸積立金・
が作成されていた1899年に井
益金を控除して算出.
〔出典〕貝島炭礦㈱『七十年誌・各部提出社史厨
上馨に対して設立されたばかり
稿一経理関係−』より作成,
−96−
“貝島家特定契約”関係史料
の貝島鉱業会社の資本金を炭況
表3 貝島鉱業会社貸借表貸方之部
の不振を主な理由として半減し
たい旨訴えており,その当時貝
島が借入金としてあげていた金
額は表Sのようになっていた.
資本金半減は実行されなかった
が,三井からの借入金が大きな
(1899年4月30日)
借入金 百十銀行
同 三井銀行
同 同
同 毛利公
合 計
千円 130
50
250
106
536
〔出典〕貝島家所蔵文書(一族会関係)
より作成.
割合を占めており,同年9月の三井物産からの借金も233千円に達してい
た.やがて,三井物産からの借金は手形借入金・三井銀行借入金に振り替
えられていったと推測できるが,いずれにせよ,この時期に貝島は三井に
よる支配に深ぐ落ち入っていくのである.
以上のような状況下においては,三井家憲を模倣しだ貝島家特定契
約”の制定を実行することは困難であったと思われるし,また三井に先ん
じることも無理であったのではあるまいか.そこで,先述したように持分
権を明らかにすることで満足したのではなかろうか.
Ⅲ.史料紹介
以下,前掲表1の順に各史料を紹介するが,先にも述べたように,これ
らは正式に実施されたものであるかどうか判明していない.ただし,同じ
種類の草案が複数存在する場合には,より整ったものを掲げることとした.
なお,参考として表4に貝鳥家特定契約と貝高家家憲の目次を対比した
が,これからも「契約上においてすでに「家憲」の骨格ができあかってい
たことが看取できよう.
−97−
“貝島家特定契約”関係史料
表4 貝島家特定契約・貝島家家憲目次対比表
貝島家特定契約目次
第1章 貝島家一族(第1∼4条)
第2章 一族ノ義務(第5∼12条)
第3章 一 族 会(第13∼34条)
第4章 婚姻養子縁組及分家
(第35∼38条)
第5章 後見禁治産及ヒ準禁治産
(第39∼44条)
第6章 相 続(第45∼49条)
第7章 貝島家顧問(第50∼52条)
第8章 財 産(第53∼60条)
第9章 制 裁(第61∼64条)
第10章 補 則(第65∼68条)
貝島家家憲目次
第1章 総 則(第1∼2条)
第2章 一 族(第3∼8条)
第3章 一族ノ義務(第9∼15条)
第4章 一 族 会(第16∼39条)
第5章 婚姻養子及分家
(第40∼42条)
第6章 後見,親族会,禁治産及準禁
治産 (第43∼47条)
第7章 相続及遺言(第48∼51条)
第8章 顧 問(第52∼55条)
第9章 財 産(第56∼83条)
第10章 制 裁(第84∼87条)
第11章 補 則(第88∼91条)
〔付 記〕
1.ここで紹介した貝島家特定契約関係史料は,貝島化学工業株式会社社長貝島
義雄氏の特別の御高配で利用を許されたものであり,同社の森芳興氏には
種々御世話になった.また,貝島関係の多数の史料が宮田町石炭記念館に所
蔵されており,利用に際し館長内野健男氏には多大の御配慮をいただき,ま
た同館の玉置紀都氏からは種々御便宜をはかっていただいた(貝島鉱業合名
会社定款は宮田町石炭記念館蔵を利用).なお,貝島義雄氏には法政大学教
授宇田川勝氏より御紹介の労をとっていただいた.
記して厚く謝意を表したい.
2.本稿は,平成3年度文部省科学研究費補助金一般研究(C)による研究成果の一
部である.
(平成3年10月5臼受理)
98
“貝島家特定契約”関係史料
〔史料I〕貝島鉱業合名会社設立趣意書
貝島太助弟貝島六太郎及其弟貝島嘉造ノ三名ハ同心協カシテ石炭鉱業ヲ経
営スル茲二幾何年其間幾多ノ辛酸銀苦ト幾多ノ障碍挫折トニ遭遇シタリト
雖トモ不僥不屈一貫ノ精神卜忍耐励精非常ノ勇気トヲ以テ之二処シ亦幸二
天与ノ庇護二依り着々其途二就キ今ヤ所有に属スル石炭鉱区ノ数ハ数十之
レカ総坪数八五百五拾万坪其坪契芦販売其他業務ノ為メニ使用スル事務員
技術員八三百人職工鉱夫等ノ数ハ殆ント三千五百人ヲ以テ算シ其出炭総額
ハ之ヲ月ニシテ八五千万斤余之ヲ歳ニスレ八六億六千万斤ノ多牛二達シ仮
リニ之ヲ金員二算スレハーケ年ノ総額百八拾万余円二及ヘリ而シテ各炭坑
二鉱務所ヲ置キ各要地二支店又ハ出張所等ヲ設ケ又本邸内二本部ヲ置牛以
テ業務ヲ統轄シ日夜之レカ発達二務メ時日ト共二漸次進張シツヽアリ多年
酸苦忍耐ノ功果此二至りテ顕ハレタリト謂フヘシ自今益業務ヲ拡張シ信用
ヲ保全シ子孫亦継承心ヲ一二シカヲ戮セ以テ永遠二貝島本末家ノ関係ヲ親
密ニスルト共二愈家道ノ隆運ヲ期セント欲ス而シテ之レカ実行ヲ図ラント
スルニハ基礎ヲ輦固ニシ機関ヲ整備シ秩序的ノ行動二出テサルヲ得サルノ
必要ヲ認メタリ
故二今相計りテ責任最モ深重二行動最モ敏捷二且ツ基礎最モ掌固二適実ナ
ル方法二従ヒ茲二貝島太市ヲ加へ四人共同貝島鉱業合名会社ヲ設立スル所
以ナリ庶幾クハ某等か子孫タルモノ亦此意ヲ体シ永遠二此会社ヲ保続伸張
シ以テ益我家運川隆盛ヲ無窮二致サンコトヲ
明治三十一年 月 日
貝 島太助⑩
貝 島 六太郎⑩
貝 島嘉造⑩
貝 高 太 市⑩
99
“貝島家特定契約”関係史料
〔史料H〕貝島鉱業合名会社設立契約書
第壹章 総 則
第壹条 当会社ハ合名会社組織ニシテ貝島鉱業合名会社卜称ス
第貳条 当会社ハ石炭ノ採堀及販売ヲ為スヲ以テ営業ノ目的トス
第三条 当会社ノ義務二付テハ第一当会社財産第二合名社員ノ全財産連帯
無限二其責任ヲ負フ
第四条 当会社ノ営業所ハ福岡県筑前国鞍手郡直方町大字直方 番地二股
立ス但必要ノ地二支店又ハ出張所ヲ設クル事アルベシ
第五条 当会社ノ存立時期ハ無期限トス
第貳章 資本井二社員ノ出資額
第六条 当会社ノ資本金ハ貳百万円トス
第七条 前条資本金二対スル各社員ノ出資金額ハ左ノ如シ
一 金 百万円 貝 島 太 助
一 金 四拾参万円 貝 島 六太郎
一 金 参拾五万円 貝 島 嘉 造
一 金 貳拾貳万円 貝 島 太 市
第八条 各社員ノ出資金ハ明治三十一年 月 日垠一時二悉皆差入ルヽモ
ノトス
第参章 社員ノ権利義務
第九条 当会社ノ社員ハ出資額ノ如何二拘バラス其議決及承諾権ハ同一ト
ス
第十条 社員事故アルトキハ他ノ社員二委任シテ前条ノ権利ヲ行ハシムル
事ヲ得
第十一条 社員若シ無能カナルカ又ハ能カヲ喪失シタルトキハ他ノ社員ニ
−100−
“貝島家特定契約”関係史料
委任シテ第九条ノ権利ヲ行ハシムルコトヲ得
第十二条 各社員ハ当会社二対シ正整ナル商人ノ自己ノ業務二於テ為スト
レ 同シキ勉強注意ヲ為ス責務アリ其責務二背手当会社二損害ヲ生セシ
メタルト手ハ之ヲ賠償スルノ義務ヲ負フ
第十三条 各社員ハ総社員ノ承諾ヲ得ルニアラサレバ直接又ハ間接二会社
ノ業務卜類似スルト否トヲ問ハス他ノ業務ヲ営ムヲ得ス之レニ背牛
タルモノハ其出資ヲ没収シ会社パ之ヲ除名スル事ヲ得ルモノトス
第十四条 各社員ハ自己ノ持分ヲ他二譲渡シ又ハ其出資及持分ヲ減スル事
ヲ得ス
第四章 社員ノ入社及退社
第十五条 社員ハ第三者ヲ入社セシムル事ヲ得ス
第十六条 社員中死亡シタル場合二於テハ其相続人ハ当然社員ト為ス
第十七条 社員ハ如何ナル場合卜雖モ退社スルコトヲ得ス
第十八条 社員除名セラレ又ハ破産若クハ家資分散ノ宣告ヲ受ケタルトキ
ハ当然退社スルモノトス
第五章 会社業務ノ施行
第十九条 当会社二各社員ノ互撰ヲ以テ業務担当社員壱名ヲ置キ之ヲ社長
ト称ス
第二十条 社長ハ当会社ヲ代表丿全般ノ業務ヲ統轄シ及事務員技術員其他
業務使用人ヲ進退跳砂ス
第二十一条 社長ハ各社員二協議ヲ遂ゲ業務施行二関スル規則ヲ設定シ之
ヲ施行スルモノトス
第二十二条 社長ノ任期ハ満 ケ年トス満期再撰スルモ妨ケナシ
第二十三条 社長ハ総社員ノ承諾ヲ得ルニアラサレハ社債ヲ起シ又ハ石炭
鉱区ノ売買譲渡質人書入ヲ為スコトヲ得ス
−101 −
“貝島家特定契約”関係史料
第二十四条 業務担当社員ノ明示シテ会社ノ為メニ為シ又ハ事実会社ノ為
メニ為シタル総テノ行為二因り当会社へ権利ヲ得義務ヲ負フ
第二十五条 各社員ハ何時ニテモ当会社ノ業務ノ実況夕監視シ金庫帳簿及
書類ヲ検査シ且此事二関シ意見ヲ述ルコトヲ得
第二十六条 業務担当ノ任ナ平社員力業務ヲ施行シ又ハ詐欺ヲ行ヒ若クハ
主要ノ義務ヲ訣平タルトキハ当会社ハ之ヲ除名シ且損害ヲ生シタル
ト平ハ賠償ヲ求ムルモノトス
第二十七条 社員当会社ノ為メニ受取りタル金銭ヲ相当日時内二当会社二
引渡サス若クハ之ヲ自用二供シタルト平ハ当会社二対シ規定ノ利息
ヲ支払ヒ且ツ如何ナル損害ヲモ賠償ス可シ
第二十八条 社長ノ辞任及解任ハ総社員ノ承諾二依ル
第二十九条 社長ノ報酬額等ハ総社員ノ協議ヲ以テ之ヲ定ム
第六章 計 算
第三十条 当会社ノ事業年度ハ毎年四月ヨリ九月迄及十月ヨリ三月迄トシ
各年度ノ終りニ於テ其年度中二属スル総テノ決算ヲナス可シ
第三十一条 諸勘定ノ決算ヲ為スニハ総収益金中ヨリ諸経費利息及損失ヲ
引去り其残額ヲ以テ純益金ト為ス可シ
第三十二条 純益金ハ左ノ割合ヲ以テ分配ス可シ
一 純益金百分ノ三十 損失補填積立金
二 純益金百分ノ三十五 事業拡張準備積立金
三 純益金百分ノ三十 社員配当金
四 純益金百分ノ五 業務担当社員賞与金
権三十三条 損失補填積立金ハ損失二依り資本金二欠損ヲ生シタルト牛若
クハ非常臨時費ヲ要スル場合之ヲ補フノ資二供ス
第三十四条 事業拡張準備積立金ハ新タニ炭山ヲ購入シ及ヒ新坑開堀若ク
ハ諸㈹m増設等ノ費二供ス
-べ02−
“貝島家特定契約”関係史料
第三十五条 社員配当金ハ各社員ノ出資額二応シ割当ツルモノトス損失二
対スル負担モ亦同シ
第三十六条 諸勘定ノ決算及算出方ハ総社員過半数ノ承諾二依リテ之ヲ定
ム
第七章 社印及会社契約ノ変更
第三十七条 当会社ノ社印及社長ノ印章ハ左ノ如シ
.・ (空 橋D
第三十八条 当会社ノ社印ハ官庁二宛テタル文書及当会社二於テ権利ヲ得
義務ヲ負フヘ牛一切ノ書類二之ヲ用ユ
第三十九条 本契約ノ条項ヲ変更スル必要アルトヰハ総社員ノ承諾ヲ経ル
ニアラサレハ之ヲ為スコトヲ得ス其承諾ハ各社員ノ著名捺印シタル
書面ヲ以テ之ヲ表明スルコトヲ要ス
右之通我等共通ノ計算ヲ以テ商業ヲ営ム為メ此契約ヲ締結シ貝島鉱業合名
会社ヲ設立ス依リテ総社員各茲二署名捺印スルモノ也
福岡県筑前国鞍手郡直方町大字直方七百貳拾番地
明治三十一年 月 日 貝 島 太 助⑩
同県同国同郡同町大字同 貝 島 六太郎⑩
同県同国同郡同町大字同 貝 島 嘉 造⑩
同県同国同郡同町大字同 貝 島 太 市⑩
〔史料Ⅲ〕第二大ノ浦坑採炭合資会社契約草案
草 案
第二大ノ浦大谷炭坑石炭採掘合資会社
103
貝
島
太 助
柏
木
勘八郎
“貝島家特定契約”関係史料
小滓寅熊
森二 清 蔵
貝 島 六太郎
福 原 栄太郎
貝 島 嘉 造
貝 島 太 市
第壱条 前記八名ハ協議ノ上石炭採掘販売ヲ営業トスル合資会社ヲ組織シ
各自二属スル権利義務及会社ノ業務施行二関スル規程ヲ左ノ逐条ノ
如ク定メタリ
第弐条 社名ヲ ダ ト称ス
第参条 営業所ヲ ‥ 設置ス 尚
第四条 目的ハ石炭採掘及之レカ販売二在り
第五条 本社営業資本金総額ヲ拾五万円トス
第六条 本社ノ設立ハ明治三十一年 月 日ニシテ其存立時期ハ無期限ナ
リ
第七条 各社員ノ出資額及責任ハ左ノ如シ ト
太 助
一参万円
柏 木
勘八郎
小 滓
寅 熊
森
清 蔵
二貳万円
一壱万五千円
一壱万五千円
一壱万五千円
一壱万弐千五百円
一七千五百円
仝 仝 仝 仝 仝 仝 仝
一参万五千円 有限責任 貝 島
貝 島 六太郎
福 原 栄太郎
貝 島 嘉 造
貝 島 太 市
第八条 損益持分ノ割合ハ前条出資ノ額二応シ各其持分相当ノ利益ヲ収得
シ又ハ損失ヲ負担ス可シ
第九条 開業後二於ケル収益配当ノ割合ハ左ノ如ク之ヲ定ム
−104−
“貝島家特定契約”関係史料
第一 積立金 総益金 分ノ
第二 事業拡張費 仝
ニ第三 賞与金及交際費 仝
第四 配当金 仝
第拾条 営業年度ヲ 月 日ヨリ 月 日マテヲ上半期トシ 月 日ヨリ
翌年 月 日マテヲ下半期トシ年両度二決算シ通常総会ヲ開牛諸般
\ ノ顛末ヲ報告ス可シ \ ト
第拾壹条 損益ハ毎営業ノ年度末ノ現財産二基キ之レヲ計算シ其利益金ハ
翌月拾日以前二社員総会ノ決議ヲ経テ配当スルモノトス
第拾弐条 本社役員ハ社員中ヨリ業務担当社員壱名ヲ互撰シ社長卜称ス其
任期ハ当撰ノ日ヨリ満弐ケ年間トス
但満期後ト雖モ再撰セラルヽコトアルヘシ
第拾参条 業務担当社員即チ社長ハ満任後ト雖トモ後任者ノ就任ノ日マテ
ハ其職務二従事スルモノトス
第拾四条 業務担当社員ノ主任事務二属スルモノト雖レトモ左記ノ件々ニ付
テハ総社員合意ノ上二非サレハ其壱人若シクハ数人二於テ之ヲ専決
実施スルコトヲ得ス
第壱 不動産二関スル件 =
第弐 金銭貸借其他定例ナ牛取扱及取引ノ件 丿
第三 代務人其他重要事務ヲ担当セシムヘ牛商業使用人雇聘解任ノ件
第四 訴訟及和解又ハ仲裁契約等ノ件
第五 営業品二非サル動庶物購買ノ件
第六 右ノ他尚ホ重大ナル事件
第拾五条 重大ノ事件ト雖トモ急遮二出テ合議ノ暇ナキトキハ業務担当社
員臨機ノ所置ヲ為シ追テ総社員ノ同意ヲ求ム可シ
第拾六条 業務担当社員ノ報酬ハ総会ノ節社員壱同ノ決議二依テ之ヲ定ム
第拾七条 業務担当社員ハ会社壱切ノ業務施行ノ権能及責任ヲ有セリ然lレ
一工05−
“貝島家特定契約”関係史料
トモ法律命令本社ノ契約及ヒ総会ノ決議ヲ遵守シ毫モ之ヲ犯ス可ラ
ス
第拾八条 前条二違背セル業務担当社員二対シテハ相当ノ損害賠償ヲ要求
スルノミナラス或ハ其者ヲ除名スル事ヲ得
第拾九条 代務人其他商業使用人以下ノ定員給料服務規程及業務施行二関
スル規程井二旅費規則等ハ総社員協議ノ上之ヲ定ム
第弐拾条 各社員ノ持分ハ総社員ノ承諾ヲ得ルニ非ラサレハ之ヲ他人二譲
渡ス等ノコトヲ得ス
但譲受人力正当相続人ナルト牛八本文ノ限りニ非ス
第弐拾壱条 此契約以外ノ事項ハ凡テ商法第壱編第六章中合資会社ノ規程
ヲ遵守スルモノトス
第弐拾弐条 本契約ハ社員参分ノ弐以上ノ合意アルトキハ之ヲ加除シ又ハ
変更スルコトヲ得
〔史料IV〕貝島鉱業合名会社定款
貝島礦業合名会社ヲ設立シテ鉱業ヲ営ム為メ左ノ通り契約ヲ締結シ総社員
署名捺印シテ之ヲ証スルモノナリ
明治三十二年 月 日
社員 貝 島 太 助
社員 貝 島 六太郎
社員 貝 島 嘉 造
社員 貝 島 太 市
貝島鉱業合名会社定款
第一章 総 則
第一条 当会社ハ合名会社二関スル規定二従ヒ之ヲ組織ス
−106−
“貝島家特定契約”関係史料
第二条 当会社ハ石炭ノ採掘及販売ヲ為スヲ以テ目的トス
第三条 当会社ハ貝島鉱業合名会社ト称ス
第四条 当会社ハ福岡県鞍手郡直方町大字直方二本店ヲ置ク
但必要ノ地二支店又ハ出張所ヲ設クルコトアルペシ
第五条 当会社ノ存立期間ハ定款作成ノ日ヨリ五拾ケ年トス
前項ノ期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得
期間満了六ヶ月前二於テ社員中ヨリ更新反対ノ中出ナキトキハ存立
期間ハ期間満フノ時二於テ五拾ケ年之ヲ更新シタルモノトス
第六条 期間満了前反対ノ中出ヲ為シタル者アルトキハ営業期間ノ更新ハ
総会ノ決議二依り之ヲ定ム
前項ノ決議二不服ナル者ハ更新ノ際退社ヲ為スコトヲ得
第二章 社 員
第七条 当会社ノ社員左ノ如シ
住 所 貝 島 太 助
住 所 貝 島 六太郎
住 所 貝 島 嘉 蔵
住 所 貝 島 太 市
第八条 社員ハ業務担当社員二非ザレハ会社ヲ代表シ又ハ業務ヲ処理スル
コトヲ得ス
第九条 社員ハ何時ニテモ会社業務ノ状況ヲ視察シ会社ノ財産井会社ノ帳
簿其他ノ書類ヲ検査シ営業二関シテ意見ヲ述ブルコトヲ得
第十条 社員ハ業務担当者ナルト否トヲ問ハス会社二対シ忠実ナルヘキ義
務ヲ有ス
前項ノ義務二背牛会社二損害ヲ生セシメタル社員ハ其責二任ス
第十一条 社員ハ如何ナル場合ト雖トモ全部又八一部ヲ他人二譲渡シ又ハ
之ヲ担保二供スルコトヲ得ス
工07
“貝島家特定契約”関係史料
第十二条 社員隠居又ハ死亡シタルトキハ其社員トシテノ権利義務ハ当然
家督相続人二於テ之ヲ承継ス
第デ三条 社員ハ如何ナル場合卜雖トモ退社スルコトヲ得ス
但第十二条ノ場合ハ此限りニアラス
第十四条 社員ハ理由原因ノ如何ヲ問ハス当会社ノ存立期間中ハ其持分ノ
払戻ヲ求ムルコトヲ得ス し
第十五条 社員ハ其持分二応シテ当会社ノ利益ヲ亨受シ損失ヲ負担スルモ
ノトス
第十六条 社員力故意又ハ過失二因リテ会社二損害ヲ蒙ラシメタルトキハ
之ヲ賠償スベシ
第十七条 社員ハ他ノ社員ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ自他何レノ為ニスルヲ
問ハス当会社ノ業務ト同一又ハ之二類似スル行為ヲ為シ又ハ之二関
与スルコトヲ得ス
鉱業権ノ得喪二関スル行為又同シ 十
第十八条 社員中左二掲ケタル行為アルトキハ他ノ社員ノ一致決議ヲ以テ
之ヲ除名シ其持分ヲ没収スルコ下ヲ得
一 第十七条二違背シタル者
二 当会社二対シ重大ナル不正行為ヲ為シタル者
第十九条 社員前条二依り除名セラレタル場合ハ会社ハ其持分ヲ没収シ尚
ホ損害ヲ償フニ足ラサルトキハ其不足額ヲ賠償セシムベシ
第三章 資犬 本
第二十条 各社員ノ出資額ハ左ノ如シ
ー金壹百万円 貝 島 太 助
一金四拾参万円 貝 島 ブく太郎
一金参拾五万円 貝 島 嘉 蔵
一金貳拾貳万円 貝 島 太 市
−108−
“貝島家特定契約”関係史料
資本金ノ総額ヲ増加スル場合二於テハ各社員ハ前項ノ割合二応ジテ
出資ス
第二十一条 各社員ノ持分ハ出資額ノ割合二依ル
第四章 役 員
第二十二条 当会社二総社員ノ互選ヲ以テ業務担当社員一名ヲ置キ之ヲ社
長トス
第二十三条 社長ノ任期八五ヶ年トス
但重任スルコトヲ妨ケズ
第二十四条 社長ハ会社ヲ代表シ会社ノ業務二関スル一切ノ行為ヲ為ス権
利義務ヲ有ス
但定款及総会ノ決議二反スルコトヲ得ス
第二十五条 社長ハ営業規則ノ定ムル所二従ヒ代務ノ委任又ハ解任ヲ為ス
コトヲ得
第二十六条 社長ハ総社員ノ一致決議アルニアラサレハ社債ヲ起シ又ハ鉱
区ヲ売買シ若クハ之ヲ担保二供スルコトヲ得ス
第二十七条 社長ハ総会ノ決議ヲ経ルニアラサレハ営業ノ方針ヲ変更シ又
ハ其計画ヲ伸縮スルコトヲ得ス
第二十八条 当会社二理事ヲ置ク理事二名以上アルトキハ内一名ヲ専務理
事トス
理事ノ外尚ホ必要アルトキハ他ノ役員ヲ置クコトヲ得
第二十九条 専務理事ハ社長差支アルトキハ其職務ヲ代理シ専務理事ナキ
トキハ理事之ヲ代理ス
第三十条 専務理事及理事ハ社長ヲ輔ケテ事務ヲ掌理ス理事ノ外尚ホ役員
ヲ置ク場合二於テ其職務ノ分掌ハ営業規則ノ定ムル所二依ル
第三十一条 当会社二監査役貳名ヲ置ク
第三十二条 監査役ノ任期八三ヶ年トス
−109−
“貝島家特定契約”関係史料
但重任スルコトヲ妨ゲス
第三十三条 監査役ハ当会社ノ業務ノ執行及会計並二財産ノ状況ヲ監査ス
第三十四条 監査役ハ会社ノ利害二関スル重大ナル事故ヲ発見シタルトキ
ハ直二各社員二通知スベシ若総会ノ必要アリト認ムルトキハ社長二
対シ其招集ヲ請求スベシ
第三一ト五条 専務理事,理事及監査役ノ選任及解任ハ総会ノ決議二依ル
第三十六条 業務担当社員ノ報酬額ハ総会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 総 会
第三十七条=総会八通常総会及臨時総会ノニ種トス
第三十八条 通常総会ハ毎年一月社長之ヲ招集シ前年度ノ諸計算書財産目
録貸借対照表及事業報告書ヲ調査シ並利益分配案其他重要ナル事項
ヲ議決スルモノトス
第三十九条 臨時総会ハ社長二於テ必要ト認ムルト牛又ハ社員三分ノ一以
上ノ請求アルト牛若クハ監査役ノ請求アルト牛社長之ヲ招集ス
第四十条 総会ヲ招集スルニハ会議ノ目的事項日時及場所ヲ記載シタル書
面ヲ以テ会日ヨリ五日前二各社員二通知スルコトヲ要ス
前項ノ期間ハ急施ヲ要スル事項二付テハ之ヲ短縮スルコトヲ得
第四十一条 総会二於テハ総社員五分ノ三以上ニシテ其出資額力資本ノ半
額二当ル社員力出席スルニ非サレバ決議ヲ為スコトヲ得ズ
第四十二条 総会ノ決議ハ定款二別段ノ規定アル場合ヲ除ク外出席シタル
社員ノ議決権ノ過半数二依ル若シ可否同数ナルトキハ議長之ヲ決ス
議長ハ自己ノ議決権ヲ行フコトヲ妨ケス
第四十三条 社員ノ議決権ハ其出資額拾万円迄ハ壹万円毎三壹個トシ拾万
円ヲ超ユル分二対シテハ参万円毎二壹個ヲ加フ
第四十四条 総会ノ議長ハ社長之二任ス社長差支アルトキハ出席社員∧互
選ヲ以テ議長ヲ定ムベシ
一一且O−
“貝島家特定契約”関係史料
第四十五条 社員力無能力者ナルトキハ其法定代理人又ハ保佐人之二代り
テ総会二出席シ議決権ヲ行フ
第四十プく条 社員ハ疾病其他止ムコトヲ得サル事由ノ為メ自ラ総会二出席
スルコト能ハザルト牛又ハ女子及妻タル社員ハ他ノ社員ヲ代理人ト
シテ議決権ヲ行フコトヲ得
但其代理人ハ代理権ヲ証スル書面ヲ会社二差出スコトヲ要ス
第四十七条 専務理事,理事及監査役ハ社員ニアラサルモノト雖トモ必要
アルトキハ総会二出席シ意見ヲ述ブルコトヲ得
第四十八条 当会社ノ営業規則ハ総会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
第四十九条 総会ノ議事ハ之ヲ議事録二記載シ議長及出席社員署名捺印シ
之ヲ保存スルコトヲ要ス 犬
第六章 会 計
第五十条 社長ハ毎年一丹前年度ノ総決算書財産目録貸借対照表及事業報
告書ヲ調製シ総会二提出シテ其承認ヲ受クルコトヲ要ス
第五十一条 当会社ノ積立金ハ損失填補積立金及事業拡張準備積立金ノニ
種トシ総会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
但其額少クトモ毎期純益金百分ノ六十以上タルコトヲ要ス
第五十二条 役員及使用人ノ俸給手当並賞与,二関スル規程ハ総会ノ決議ヲ
以テ之ヲ定ム
第七章 解 散
第五十三条 当会社ハ総社員ノー致決議アルニ非サレハ之ヲ解散スルコト
ヲ得ス
解散ノ決議ヲ為スト同時二議決権ノ過半数ヲ以テ清算人ヲ選定スヘ
シ
HI
“貝島家特定契約”関係史料
第八章 附 則 レ
第五十四条 本定款ハ総社員ノ一致決議アルニ非ザレハ之ヲ変更スルコト
ヲ得ス こ
〔史料V〕分 配 表
a。各社員所有地分配表
各社員所有地分配表
一
植木村
田六町九反一畝拾九歩
此地価貳千九百七拾円廿参銭五厘
地租七拾五円八拾七銭
附口米百九拾参俵三歩五厘 評価一俵付三拾八円
代金七千参百四拾七円参拾銭
一
畑壱町六反八畝廿三歩
地価百四拾七円五拾貳銭
地租金参円六拾八銭八厘
附口米拾四俵一分九厘 評価一俵付貳拾円
代金貳百拾参円八拾銭
宅地八反三畝廿一歩
地価金貳百七拾七円四拾参銭貳厘
地租金六円九拾参銭七厘
附口米貳拾壱俵八歩
評価一俵付参拾八円
イ犬金八百貳拾八円四拾銭
合計反別九町四反四畝三歩
地価金参干参百九拾五円拾八銭七厘
地租金八拾六円四拾九銭五厘
一一112一一
“貝島家特定契約”関係史料
附口米貳百貳拾九俵三歩四厘
代金八千四百五拾九円五拾銭
頓野村
-
田三町三反六畝拾八歩
地価金千四百五拾参円八拾四銭五厘
地租金参拾六円参拾四銭六厘
附口米百拾六俵五歩 評価一俵付四拾参円
代金五千九円五拾銭
田貳町四反八畝三歩
一
地価金千百四拾九円八拾六銭六厘
地租金貳拾八円七拾四銭七厘
附口米八拾八俵壱歩 評価一俵付四拾参円
代金参千七百八拾八円参拾銭
畑壱反五畝廿八歩
一
地価全拾四円六拾銭
地租金参拾六銭五厘
附口米壱俵九歩
代金五拾円
合計反別六町拾九歩
地価金貳千六百拾八円参拾壱銭壱厘
地租金六拾五円四拾五銭八厘
附口米貳百六俵五歩
代金八千八百四拾七円八拾銭
下境村
一
田三町六反六畝廿二歩
地価金千六百貳拾円四拾七銭八厘
地租金四拾円五拾銭七厘
−113
“貝島家特定契約”関係史料
附口米百貳拾四俵五歩 評価一俵付四拾参円
代金五千参百五拾参円五拾銭
一
畑七反五畝四歩
地価金貳拾九円拾貳銭
地租金七拾貳銭八厘
附口米六俵参歩
評価一俵付貳拾五円
代金百五拾七円五拾銭
合計反別四町四反壱畝廿六歩
地価金千六百四拾九円五拾九銭八厘
地租金四拾壱円貳拾参銭五厘
附口米百参拾俵六歩貳厘
代金五千五百拾壱円
大隈町
一
田拾貳町六反七畝拾八歩
地価金五千五百六拾参円六拾八銭貳厘
地租金百参拾九円九拾貳銭
附口米四百七拾参俵六歩八厘八毛 評価一俵付参拾九円
代金壱万八千四百七拾参円八拾参銭貳厘
熊[日村
-
田貳町貳反五畝参歩 外壱畝廿壱歩荒地
地価金九百参拾四円八拾銭四厘
地租金貳拾壱円九拾八銭貳厘
一
溜池拾六歩
合計反別貳町貳反七畝拾歩
地価金九百参拾四円八拾銭四厘
地租金貳拾壱円九拾八銭貳厘
附口米百拾九俵 評価一俵付参拾七円
一114−
“貝島家特定契約”関係史料
代金四千四百参円
碓井村上西郷
一
田壱反三畝拾四歩
地価金五拾八円拾銭
地租金壱円四拾五銭貳厘
附口米六俵四歩
評価一俵付参拾八円
代金貳百四拾参円貳拾銭
足自村馬見
一
m三反貳歩
地価金百九拾六円九拾貳銭
地租金四円九拾貳銭参厘
附口米拾五俵
評価一俵付参拾八円
代金五百七拾円
一
足自村椎木
田貳反八畝壱歩
地価金百参拾四円参拾四銭
地租金参円五拾五銭参厘
附口米拾貳俵貳歩九厘四毛 評価一俵二付参拾八円
代金四百六拾七円四拾銭
一
大分村
日]貳町三畝壱歩
地価金七百九拾七円八銭四厘
地租金拾九円九拾貳銭七厘
附口米七拾参俵五歩
評価一俵二付参拾六円
代金貳千六百四拾六円
総反別参拾七町五反六畝四歩
地価金壱万五千参百四拾八円貳銭六厘
一皿5−
“貝島家特定契約”関係史料
地租金参百八拾四円九拾四銭五厘
附口米千貳百六拾六俵参歩四厘貳毛
代金四万九千六百貳拾壱円七拾参銭貳厘
此ノ分配
金貳万四千八百拾円八拾六銭六厘 百分ノ五十
貝島 太助
金壱万六百六拾八円六拾七銭貳厘 百分ノ廿一半
貝島六太郎
金八千六百八拾参円八拾銭参厘 百分ノ十七半
貝島嘉造
金五千四百五拾八円参拾九銭壱厘 百分ノ十一
貝島 太市
処々貝島太助分
一
田壱町七反七畝廿四歩 植木村ノ内
代金千八百八拾八円九拾銭九厘
一
畑壱町六反八畝廿三歩 植木村
代金貳百八拾参円八拾銭
一
宅地八反三畝貳拾壱歩 植木村
代金八百貳拾八円四拾銭
一
日]貳町四反八畝参歩 頓野村ノ内
ミJ
代金参千七百八拾八円参拾銭
田拾貳町六反七畝拾八歩 大隈mト
代金壱万八千四百七拾参円八拾参銭貳厘
反別計拾九町四反五畝廿九歩
代金計貳万五千貳百六拾参円貳拾四銭壱厘
貝島六太郎分
一
田三町三反六畝拾八歩
頓野町
代金五千九円五拾銭
-
畑壱反五畝廿八歩
頓野村
代金五拾円
−116−
“貝島家特定契約”関係史料
一 田貳町貳反七畝拾歩
熊田村
代金四千四百参円
一 田壱反参畝拾四歩
臼井村上西郷
代金貳百四拾参円貳拾銭
一 田参反貳歩
足自社%見
代金五百七拾円
一 田貳反八畝壱歩
足自村椎木
代金四百六拾七円四拾銭
反別計六町五反壱畝拾参歩
代金計壱万七百四拾参円拾銭
貝島嘉造分
田貳町参畝壱歩
大分村
代金貳千六百四拾六円
田参町プベ反六畝廿二歩
下境村
代金五千参百五拾参円五拾銭
一
畑七反五畝四歩
下境村
代金百五拾七円五拾銭
反別計六町四反四畝貳拾七歩
代金計八千百五拾七円
貝高太市分
一
日]五町壱反参畝貳拾五歩
植木村ノ内
代金五千四百五拾八円参拾九銭壱厘
b。分配表
分配表
一117−
“貝島家特定契約”関係史料
金弐千五円 農工銀行四百壱株 一株五円払込
一
一
金弐千五百円 八拾七銀行弐百株 一株拾弐円五拾銭払込
一
金六千円 小野田セメント株三百株 一株弐拾円払込
一
金五千円 杵島炭坑出資額
一
金参万弐千百九拾円四銭九鉄三千八百八拾三株 一株弐拾五円払込
一
金壱万千九百八拾四円拾銭 貸家建築費
計五万九千七百七拾九円拾四銭
此ノ権利割合左ノ如シ
金貳万九千八百八拾九円五拾七銭 百分ノ五十
貝島 太助
金壹万貳千八百五拾貳円五拾壱銭五厘 百分ノ廿一半
貝島六太郎
金壹万四百六拾壱円参拾五銭 百分ノ十七半
貝島 嘉造
金六千五百七拾五円七拾銭五厘 百分ノ十一
貝島 太市
処
金貳万九千八百ブL拾貳円参拾銭
貝島 太助
内
金壱万千九百八拾四円拾銭
貸家
金五千円
杵島炭坑
金千貳拾五円
農工銀行二百五株
金畳万千八百八拾参円貳拾銭
九鉄千四百廿九株
/
金壹万貳千八百五拾円四拾九銭
貝島六太郎
内
金貳千五百円
八拾七銀行二百株
金三千円
セメント株百五拾株
金四百九拾円
農工銀行九拾八株
金六千八百六拾円四拾九銭
九鉄八百貳拾五株
/
118
“貝島家特定契約”関係史料
金壹万四百五拾円五拾九銭五厘
貝島 嘉造
内
金四百九拾円
農工銀行九拾八株
金参千円
セメント株百五拾株
金六千九百六拾八円五拾九銭五厘
九鉄八百三拾八株
/
金六千五百七拾七円七拾五銭五厘
貝島 太市
内
金六千五百七拾七円七拾五銭五厘 九鉄七百九拾一株
明治三拾二年ヨリ向フ拾ケ年間左記金額会社純益金ノ内ヨリ分配ノ事
金拾万円 貝島文兵衛次女 貝島マス
c.貝島鉱業合名会社出資額 目下ノ分
貝島鉱業合名会社出資額 目下ノ分
一 金貳百万円
総出資金
内
金百万円
百 株
貝
島
太 助
金四拾参万円
四拾三株
貝
島
六太郎
金参拾五万円
三拾五株
貝
島
嘉 造
貳拾貳株
貝
島
太 市
金貳拾貳万円
d。貝島鉱業合名会社出資額 今後増資ノ分
貝島鉱業合名会社出資額 今後増資ノ分
一 金貳百貳拾万円 総出資金
内
金百万円 百 株 貝 島 太 助
一119−
“貝島家特定契約”関係史料
島
六太郎
金参拾八万円 三拾八株
貝
島
嘉 造
金貳拾万円
貝
島
太 市
島
フジノ
島
栄 次
島
ヱ ツ
全五万円
六 五 五
金六万円
貳拾株
貝貝貝
貝
株株株
金四拾六万円 四拾六株
金五万円
〔史料Ⅵ〕一族共同積立金法
一族共同積立金法
共同事業利益配当金各自領収高ヨリ百分ノ拾ヲ積立金トス
右ノ通相定候也
貝 島 太 助
明治三十二年七月廿日
〔史料Ⅶ〕積 立 金 法
積立金法
共同事業純益金高弐分ノ壱積立金
内
共同事業臨時損失填補金 百分ノ弐十
共同事業拡張準備金 百分ノ四十
共同事業資本原価償却金 百分ノ三十
共同事業々務担当員賞与金 百分ノ十
/
右ノ通相定候也
貝 島 太 助
120
“貝島家特定契約”関係史料
明治三十二年七月二十日
〔史料Ⅷ〕各社員出資額割合
各社員出資額割合
金壹百万円 出資総額
内
金五拾万四千五百円
貝
島
太 助
金貳拾万九千円
貝
島
六太郎
金拾七万貳千五百円
貝
島
嘉 造
金九万千円
貝
島
太 一
金貳万三千円
貝
島
ヱ ツ
/
右ノ通り相定候也
貝 島 太 助
明治三十二年七月二十日
〔史料K〕貝島家特定契約
貝島家特定契約
抑モJliii家ノ元鄙夫ヨリ起り数回川利厄二遭遇セシモ百折不擁終二今日ノ
隆盛ヲ来タスニ至リタル所以ノモノハ太助二於テ苦心百端薪二臥シ胆ヲ嘗
メ毎二家運ノ盛興ヲ謀ルニ当り其実弟某々等二於テ克ク之ヲ輔佐シ一族互
二同心協プJシ身ヲ犠牲二供シテ家名ノ繁栄ヲ勉メタルニ依ラスンハアラサ
ルナリ各家ノ子孫ダルモノ一日モ某等ノ困苦ヲ忘却シテ可ナランヤ然ルニ
時期ノ経過ト共二既往困難ノ感覚モ亦タ自ラ薄ラキ貝島各家及ヒ其家族動
モスレハ現在二泥ミ以テ今日アルノ来歴ヲ忘却シ不知不識ノ間'm奢怠惰二
一一121 −
“貝島家特定契約”関係史料
陥り以テ各家ノ基礎ヲ危スル恐ナシトセス茲二於テカ某等相謀リテ家制ヲ
定メ家ヲ興シタル起因ハ採テ以テ貝島家ノ家風トナシ家ヲ破ラントスルノ
傾向ハ其根本二於テ之ヲ排除シ依テ以テー族ノ繁栄ヲ子孫二伝へ永ク家名
ノ輦固ヲ企図センカ為メ別格ノ通り各家ノ間二於テ契約ノ効カヲ有スル条
項ヲ定メ記名者各自固ク之ヲ守ル可牛ハ勿論並セテ各自ノ家族ヲシテ之ヲ
守ラシムルコトヲ勤ムルノ義務ヲ互二負フ事ヲ約シ其証トシテ貝島家顧問
某立会ノ上各当事者署名捺印スルモノナリ
明治三十二年
貝島家特定契約目次
第壱章 貝島家一族
第貳章 一族ノ義務
第三章 一 族 会
第四章 婚姻養子縁組及分家
第五章 後見禁治産及ヒ準禁治産
第六章 相 続
第七章 几島家顧問
第八章 財 産
第九章 制 裁
第十章 補 則
貝島家特定契約
第壱章 貝島家一族
第壱条 貝島家一族ト称スルハ貝島太助貝島六太郎貝島嘉造貝島太市貝島
亀吉及ヒ将来各家ノ子孫中ヨリー族会ノ承認ヲ経テ特二一族二列ス
ル者並二其各家ノ家督相続人ヲ謂フ
一一122・●一一
“貝島家特定契約”関係史料
第貳条 貝高太助ノ一家ヲ以テ本家ト称シ貝島六太郎貝島嘉造貝島太市貝
島亀吉並二将来特二一族二列スル者ヲ分家ト称ス
第参条 第壱条二記載シタル貝島家一族各家ハ此特定契約ヲ以テ永世楡ル
可ラサルー族ト定メタルモノナレハ将来如何ナル事由アリト雖モ廃
家若クハ退族ヲ為シ又ハ新夕二他家ヲ一族二加フルコトヲ許サス
第四条 将来一族各家ニシテ新タ二分家ヲナス時ハ之ヲ其家ノ分家ト為ス
コトヲ得ルモ一族二加フルコトヲ得ス
第貳章 一族ノ義務
第五条 見島一族各家ハ常二兄弟ノ情誼ヲ以テ交ハリ同心協力倍々家門ノ
隆昌ヲ謀り各家ノ基礎ヲ宗固ナラシムルコトヲ勉ム可シ
第六条 一族各分家ハ常二本家ヲ尊敬補助シ本家八分家二対シ愛愉ヲ主ト
シ本末ノ分義ヲ素ラサルコトヲ勉ム可シ
第七条 一族各家ハ奢侈ヲ禁シ節倹ヲ守ル可シ
第八条 貝島一族各家ノ子女ハ学齢二達スルトキハ必ス就学セシメ可成尋
常中学科以上ノ学業ヲ修メシム可シ若シ疾病其他已ムヲ得サル事故
二因り実際本条ノ規定二従フコト能ハサルトキハ一族会ノ認可ヲ受
クルコトヲ要ス
第九条 貝島一族ハ左ノ事項ヲ為スコトヲ得ス
一 政党二加入シ其他総テ公然政治二関係スルコト
ニ 私二負債ヲナスコト
三 私二債務ノ保証ヲナスコト
第十条 貝島一族八一族会ノ許可ヲ経スシテ左ノ事項ヲ為スコトヲ得ス
一 私二商工業ヲ営ムコト
ニ 私二会社ノ株主トナリ又ハ商工業ノ資本主トナルコト
三 一族共同事業以外ノ会社又ハ組合等ノ役員若クハ社員トナルコト
四 官務又ハ公務二就クコト
−123一一
“貝島家特定契約”関係史料
五 其他一族会二於テ特二其許可ヲ経ヘキモノト指定シタルコト
第十一条 一族間二如何ナル争議ヲ生スルモ裁判所二出訴スルコトヲ許サ
ス此場合二於テハ先ツ一族会ノ指定シタル裁定者ノ裁断ヲ請フ可シ
若シ其裁断二不服アルトキハ貝島家顧問ノ裁断ヲ請ヒ之ヲ以テ終局
トス可シ
第拾貳条 貝島一族ハ貝島鉱業合名会社ノ設立契約定款其他一族会議決ノ
趣旨二従ヒテ共同ノ営業二従事スル義務アルモノトス
第三章 一族会
第拾三条 貝島家一族会ハ第壱条二記載セルー族各家ノ戸主ヲ正員トシ各
家ノ隠居及ヒ成年二達シタル推定家督相続人ヲ参列員トシテ之ヲ組
織ス
但シ女子ハ参列員タルコトヲ得ス
第拾四条 一族会正員中未成年者又ハ禁治産者アルトキハ其法定代理人之
ヲ代表ス可シ
第拾五条 一族会正員中準禁治産者アルトキハ保佐人ヲ以テ之ヲ代表セシ
メ禁治産ヲ受ケサル癒癩者アルトキハー族会ノ決議ヲ以テ会員中ヨ
リ其代表者ヲ指定ス可シ
第拾六条 一族会正員又ハ其法定代理人若クハ保佐人女子ナルト牛八一族
会員中ヨリ一族会ノ認可ヲ経タル代表者ヲ定メ之ヲシテ一族会二列
セシムルコトヲ得
第拾七条 一族会正員ニシテ疾病流行其他ノ事故二因り引続牛会議二出席
スルコト能ハサルトキハー族会員中ヨリ一族会ノ認可ヲ経タル代表
者ヲ定メ置ク可シ
第拾八条 第拾四条乃至第拾七条ノ代表者ハー人ニシテ同時二二人ヲ代表
スルコトヲ得ス
第拾九条 一族会ハ必要ノ場合二於テ貝島家共同事業二従事セル役員ヲ参
−124−
“貝島家特定契約”関係史料
列セシムルコトヲ得
第貳拾条 一族会ノ議長八本家ノ戸主ヲ以テ之二任ス
一族会ノ議長ハ会議ヲ統理スルノ外一族会ヲ代表シテ其決議ヲ実行
シ其他常二一族二関スル共通ノ事務ヲ処理スルモノトス
本家ノ戸主事故アルトキハ正員中年長者ヲ以テ代理セシム可シ
第廿壱条 一族会ハ議長之ヲ招集ス
一族ノ正員八一族会ノ招集ヲ議長二請求スルコトヲ得議長若シ之二
応セサルトギハ他ノ正員三名以上ノ同意ヲ得テ自ラ代ハリテ招集ス
ルコトヲ得ヘシ但此ノ場合二於テ議長出席ヲ拒ムトキハ出席ノ正員
中年長者議長ノ職務タ行プ可シ
第廿二条 貝島家顧問八一族会ノ招集ヲ議長二請求シ且何時ニテモ一族会
二出席シ若クハ其代理監督人ヲシテ意見ヲ・錬述セシムルコトヲ得
第廿三条 一族会ハ毎年一月及ヒ七月二之ヲ招集ス必要ノ場合二於テ臨時
招集スルコトアル可シ 万
第廿四条 此特定契約ノ各条項二明記セルモノヽ外一族会ノ議決ヲ経ヘキ
事項ノ概目左ノ如シ
一 一族又ハ其家族ノ相続婚姻養子縁組離縁離婚隠居分家禁治産準禁
治産認知其他重大ナル身分又ハ親族関係ノ変更二関スル件
二 丿族各家ノ後見人後見監督人保佐入法定代理人ノ指定選任及ヒ免
除並二親族会員推選等二関スル件
三 貝島家共同事業二関スル定款諸般ノ規則及ヒ契約ヲ変更又ハ設定
スルコトニ関スル件 ‥
四 一族共同事業ノ利益配当井二各種ノ積立金ノ増減保管利殖及流用
支出等二関スル件
五 共同事業ノ伸縮興廃及ヒ其営業方針ノ確定及ヒ変更井二共同事業
ノ資本ノ増減変更二関スル件
六 共同事業ヨリ退社セシメ又八一族ヲ除名スルコト
−12卜-
“貝島家特定契約”関係史料
七 前項ノ場合二於ケル財産処分二関スル件並二共同事業ノ廃止若ク
ハ其資本減少等ノ場合二於ケル財産処分二関スル件
八 共同事業ノ業務担当員及ヒ重立タル使傭人ノ任免俸給手当及ヒ賞
与・ニ関スル件
九 共同事業二関スル各種積立金ノ増減処分及ヒ管理二関スル件
十 一族共同積立金以外ノ共同財産二関スル件
十一 一族各家所有ノ不動産及ヒ其一族会二届出テタル家産ノ売却譲
与貸渡等二関スル件
十二 共同事業ノ為メ又八一族各家若クハ其家族二於テ負債ヲナシ或
ハ債務ノ保証ヲナシ又ハ他人二資金ヲ貸与,シ若クハ物品ヲ譲与シ其他
総テ権利ヲ揚棄シ義務ヲ生スルコトニ関スル件
十三 貝島家顧問ノ嘱托及ヒ解任二関スル件
十四 第拾条二掲ケタル各事項二関スル件
十五 其他此特定契約又ハ之レニ基ツキテ制定シタル諸規則井二一族
会議ノ議決二依リテー族会ノ権限二属セシメタル事項二関スル件
十六 共同事業若クハー族各家二関スルヲ問ハス総テノ訴訟事件二関
スル件
十七 一族共通ノ事務二関スル件
第廿五条 一族会ハ正員半数以上ノ出席アルニ非サレハ議事ヲ問クコトヲ
得ス但一族共同積立金及ヒ其支出流用並二共同事業ノ解散後ノ財産
処分其他事業ノ伸縮興廃営業ノ方針及ヒ営業資産二関スル事項二就
テハ正員五分Λ三以上出席シ且其持分力一族全体ノ持分ノ半額ヲ超
ユルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス
第廿六条 一族会ノ議事ハ此特定契約若クハー族会ノ議決二依リテ特二規
定シタル場合ヲ除クノ外出席正員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス可否同数
ナルトキハ議長ノ裁決スル所二依ル
但一族共同積立金及其支出其他共同財産ノ処分又ハ保管二関スル件
-…■126−
“貝島家特定契約”関係史料
並二事業ノ伸縮興廃営業ノ方針及ヒ営業資金二関スル事項二就テハ
併セテ出席者持分ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス
第廿七条 一族会ノ議長ハ討議及ヒ投票ノ権ヲ妨ケラルヽコトナク又裁決
投票ヲ為ストキト雖モ自己ノ投票ヲ妨ケラルヽコトナシ
第廿八条 一族会正員ニシテ他ノ正員ヲ代表スル場合ニハ代表ノ投票ヲナ
スト共二自己ノ投票権ヲ妨ケラルヽコトナシ
第廿九条 一族会ノ参列員ハ意見ヲ述フルコトヲ得ルモ議決二加ハルコト
ヲ得ス
第三十条 一族会法定ノ代理人其他ノ代理者ハ議事二与カリ投票ヲ為スコ
トヲ得
第三十一条 一族会ハ必要アル場合二於テハ其議決二依り会員又ハ其家族
ノ身上二関スル議事及ヒ議決ヨリ其会員ヲ回避セシムルコトヲ得
第三十二条 一族会ノ議事ハ之ヲ会議録二記載シ出席ノ会員之二捺印ス可
シ
第三ヽト三条 一族会ノ議事ハ総テ秘密会トシ其会議録ハ会員以外ノ者二示
サヽルモノトス但顧問ハ此限二在ラス
第三十四条 一族会ノ決議ヲ決行シ其他一族及ヒ一族一般二係ハル共通ノ
事務ヲ処理スル為メ一族会事務所ヲ置牛一族会議長之ヲ統轄ス
事務所ノ規定及ヒ其経費等ハ別二一族会ノ議決ヲ以テ之ヲ定ム
第四章 婚姻養子縁組及ヒ分家
第三十五条 一族各家ノ婚姻養子縁組離婚離縁認知及ヒ分家ハ必ラス予シ
メ一族会ノ認可ヲ経ルヲ要ス
第三十六条 一族各家ノ男子ハ成年二達スルニ非サレハ結婚スルコトヲ許
サス但特別ノ事情アリテー族会ノ認可ヲ経タルモノハ此限ニアラス
第三トヒ条 一族各家ノ男子ハ成年以上二達スルニ非サレ八分家スルコト
ヲ得ス
−12卜-
“貝島家特定契約”関係史料
第三十八条 一族中養子ヲ為サントスルトキハ成ル可クー族各家中ノ男子
ヲ択フ可牛モノトス
第五章 後見禁治産及ヒ準禁治産
第三十九条 各家ノ後見人後見監督人及ヒ保佐人ハ事情ノ許ス限り一族中
ヨリ之ヲ指定シ又ハ選任ス可シ
第四十条 一族二非サル者ニシテー族各家ノ後見人後見監督人又ハ保佐人
ト為ルトキハ此特定契約及ヒー族会ノ決議ノ趣旨ヲ遵守ス:可キ誓書
ヲー族会二出サシムルヲ要ス
第四十一条 後見人後見監督人及ヒ保佐人ノ任免ハ総テ予シメー族会ノ認
可ヲ経テー族会ノ議長之ヲ行フモノトス
第四十二条 後見人財産目録ノ調製ヲ為スト牛八一族会ハ委員ヲ派シテ之
二立会ハシム可シ
第四十三条 一族会ハ後見人及ヒ保佐人ヨリ定時二財産目録管理状況ノ報
告書及ヒ計算書等ヲ差出サシム可シ
第四十四条 一族各家中品行修ラサル者兄ハ家財ヲ浪費スル者アルトキハ
準禁治産ノ請求ヲ為スニ至ラサル場合卜雖モ一族会ハ之二監督者ヲ
附シ品行ノ監督及ヒ財産ノ管理ヲ為サシムルコトヲ得
監督者ハ品行監督及ヒ財産管理ノ伏況ヲ時々一族会二報告ズ可シ
第六章 相 続
第四十五条 一族中已ムヲ得サル事情二因り隠居ヲナサントスル者ハ予シ
メ一族会ノ認可ヲ経可シ
第四十六条 一族中法定ノ推定家督相続人ノ廃除又ハ其取消ヲ為サントス
ルトキハ予シメ一族会ノ認可ヲ経ヘシ
第四十七条 一族中家督相続人ノ指定又ハ其取消ヲ為サントスル時ハ予シ
メー族会ノ認可ヲ経ヘシ但此場合二於テハ事情ノ許ス限り一族ノ家
一一128−
“貝島家特定契約”関係史料
族中ヨリ指定スルヲ要ス
第四十八条 法定又ハ指定ノ家督相続人アラサル場合二於テ家督相続人ヲ
選定セントスルトキハ予シメー族会ノ認可ヲ経ヘシ
前項ノ場合二於テ親族会家督相続人ヲ選定スヘキ時ハ予シメ一族会
二協議スルヲ要ス ‥
第四十九条 一族ハ此特定契約ノ条項二違反スル遣言ヲ為スコトヲ得ス
文書二依リテ遺言ヲ為サントスルトキイヽ予シメー族会ノ認可ヲ経ヘ
シ
=口頭ノ遺言ヲ為サントスルト牛八一族会員三名以上ノ立会アルコト
ヲ要ス
第七章 貝島家顧問
第五十条 貝島家二密接ノ縁故ヲ有シ倚信ス可牛有識ノ士二貝島家脇句ヲ
嘱托スルコトヲ得但壱名トス
顧問八時宜二依り代理監督人ヲ選任シ其職務ノー部ヲ処理セシムル
コトヲ得
第五十一条 顧問ハー族各家二於テ此特定契約ヲ遵行スルヤ否ヤヲ監督ス
ル責務アルモノ,トス ノ
第五十二条 此特定契約二於テ定メタル場合ノ外一族会ノ議決其他ノ事項
ニシテ顧問ノ同意承諾ヲ要ス可牛モノハ一族会ノ議決ヲ以テ別二之
ヲ定ム
第八章 財 産
第五十三条 貝島一族ハ共同事業ノ収益中ヨリ利益ノ配当ヲ為スニ先チ左
ノ金額ヲ引去ル可キモノトス
一 純益金百分ノ 以上
共同事業臨時損失填補金一.
129
“貝島家特定契約”関係史料
二 純益金百分ノ 以上
共同事業拡張準備金
三 純益金百分ノ 以上
共同事業資本原価償却金 犬
四 純益金百分ノ 以上
共同事業々務担当員賞与金 犬
本条積立金ノ使途ハ別二之ヲ定ム但一定ノ制限二従ヒ之ヲ流用スル
コトヲ妨ケス
右数項二掲ケタル出資ヲ引去リタル残額ニアラサレハ之ヲ各家二分
配スルコトヲ得ス ∧ふ:
第五十四条 共同事業々務担当員ノ賞与ハ其俸給及ヒ手当並二出資額二応
シテ受ク可牛利益ノ分配若クハ損失ノ分担等二影響ヲ及サヽルモノ
トス
第五十五条 一族ハ共同事業ノ科益配当金ノ中ヨリ少ナクトモ其百分ノ
以上ヲ出資シ一族共同積立金ヲ設ク可シ
第五十六条 一族共同積立金ハ別二定ムル規則二従ヒ左ノ場合二於テ支出
スルモノトス
一 天災地変其他不時ノ災害二遭遇シ一族ノ体面ヲ維持スルコト能ハ
サルト牛
二 共同事業ノ不振二因り利益ノ配当ニテ各家ノ家計ヲ維持スルニ足
ラサルト牛
三 臨時避ク可ラサル一族共通ノ費用アルト牛
前項積立金ノ支出ノ制限及ヒ其保管並二利殖ノ方法等ハ別二之ヲ定ム
但結婚養子縁組分家及ヒ葬祭ノ場合二於テ貝島六太郎貝高嘉造両家二
係ハル支出費額ノ最高限ハ貝島太助ノ家二係ルモノヽ分ノ 貝島太
市貝島亀吉及ヒ将来特二一族二列スルモノヽ家二係ハルモノハ貝島太
助ノ家二係ハルモノヽ分ノ ヲ超ユルコトヲ得ス
−130−
“貝島家特定契約”関係史料
第五十七条 前条積立金二対スル各家ノ出資及ヒ持分ハ共同事業ノ資本金
ニ対スル持分卜同一トス
但第一条二依り将来特二一族二列スル者アル場合ハー族会二於テ本
条ノ精神ヲ準用シテ別二之ヲ定ムルコトヲ得
第五十八条 前条ノ支出ヲ引去リタル残額ニシテー族各家二分配ス可半金
額中ヨリ一家二付キ 分ノー以上卜其家二在ル子孫ノ数二応シ子孫
一人二付半少クトモ 十分ノ一以上トヲ引去り之ヲ以テー族各家積
立金二充ッ可シ
第五十九条 一族各家ノ積立金ノ割合ハ子孫ノ数二依り又ハ認知養子及ヒ
女子ノ場合二於テ差等ヲ設ク可シ
又本家卜分家又ハ各分家ノ間二於テ積立割合二差等ヲ設クコトヲ得
第六十条 一族各家積立金八一族会二於テ之ヲ管理シ其利殖ヲ謀ル可シ
前項積立金八一族会ノ議決ヲ経ルニアラサレハ之ヲ支出スルコトヲ
得ス
第九章 制 裁
第六十一条 一族各家ニシテ此ノ特定契約又ハ之二基ツキ一族会二於テ制
こ定シタル諸規則二背牛タル者素行修ラスシテ一族ノ品位ヲ傷ケタル
者我意ヲ張りテ一族間ノ情誼ヲ破リタル者其他重大ナル過失二依リ
テー族ノ損害若クハ迷惑ヲ来タシタル者八一族会二於テ其過失ノ程
度二応シ左ノ制裁ヲ加フルコトヲ得
一 詰責
二 一定ノ期間一族会出席ノ停止 此場合二於テ成年男子ノ推定家督
相続人アルトキハ之ヲ以テ其代表者トシ若シ之ナキトキハー族会ノ決
議ヲ以テ会員中ヨリ代表者ヲ指定ス可シ
三 一定ノ期間一族共同積立金ノ為メニ各家ノ出資スル年額ノ割合ヲ
其四分ノ一以内増加シテ賦課スルコト
131
“貝島家特定契約”関係史料
四 一族除名 此ノ場合二於テハ共同事業積立金其他ノ積立金ハ違約
金トシテ一族会二没収スルモノトス
前項第壱号乃至第三号ノ事蹟ハ他ノ一族会員四分ノ三以上ノ同意ヲ
(マ-,-)
要シ第四号ノ事項ハ他会員ノ一致決議ヲ要ス
第六十二条 一族ノ家族ニシテ第六十一条ノ前項二該当スルモノアルト牛
八一族会ハ其過失ノ程度二応シ左ノ制裁ヲ加フルコトヲ得
一 謎責
一 一定ノ期間一族会参列権ノ停止
一 一族共同積立金又ハ各家ノ積立金ニョリテ其家族ノ亨有ス可キ利
益ノ一部又ハ全部ヲ有期若クハ無期二停止シ若クハ剥奪スルコト
本条ノ事項八一族会員四分ノ三以上ノ同意アルコトヲ要ス
第六十三条 前条ノ制裁ヲ加フルモ尚ホ其効ナキトキハ一族ハ其家族卜交
誼ヲ絶ツコトヲ得此場合二於テハ前条二規定シタル利益ノ喪失ハ無
論之二伴フ可牛モノトス
本条ノ事項ハ其家族ノ属スル戸主ヲ除ク外一族会員ノ一致決議ヲ要
ス
第六十四条 一族会ノ決議二依り第六十一条乃至第六十三条バ制裁ヲ決行
セントスル場合二於テ貝島家顧問アルトキハ其同意ヲ経ルヲ要ス
第十章 補 則
第六十五条 此特定契約ノ条項ニシテ将来国法ノ変更二因り法令二抵触ス
ルモノアルニ至りタルトキ又八時勢ノ変遷等二因り此特定契約ヲ改
定スル必要ヲ生シタノレトキハー族会員ノー致決議及ヒ貝島家顧問ノ
同意ヲ以テ此特定契約ノ精神二準拠シ適当ノ処分若クハ改正ヲ為ス
コトヲ得
第六十六条 此特定契約二明文ナ牛場合二於テハー族会ノ決議二依ル可シ
第六十七条 一族ハ其家族及ヒ親戚ヲシテ此特定契約ノ趣旨ヲ遵奉セシム
−132−
“貝島家特定契約”関係史料
ル義務アルモノトス若シ親戚中親族会ノ権限等二関シ故意二此特定
契約ノ条項二違背スル者アルトキハ一族ハ之卜交誼ヲ絶ツ可シ
第六十八条 一族ノ家督相続人ハ相続開始ノ時二於テ一族立会ノ上此特定
契約二加ハリ永ク其趣旨ヲ遵守ス可キ宣誓ヲナスノ義務アルモノト
ス
〔史料X〕賀島家家系図
貝島家家系図
故祖父 貝 島 条四郎
長 男 貝 島 太 助
二男故 貝 島 文兵衛
三 男 貝 島 六太郎
四 男 貝 島 嘉 造
長 男 貝 島 栄三郎
二 男 貝 島 柴四郎
三 男 貝 島 賢 次
四 男 貝 島 太 市
長 女 貝 島 フジノ
五 男 貝 島 栄 次
長 女 貝 島 エ ッ
聟 貝 島 亀 吉
次 女 貝 島 マ ス
聟 貝 島 百 吉
・相続人太助二男 柴四郎
︲長女妻 貝 島 イソネ
−相続人太助三男 賢 次
133
“貝島家特定契約”関係史料
故貝島文兵衛ハ明治十八年大之浦炭坑創始ノ際ヨ')業務ヲ補佐セシモ明治
二十年ノ春遂二病ノ為二死去ス時二年三十九才二女アリ長女エツ父ノ跡ヲ
継手戸主トナル
長女 エ ツ
当年二十七才
明治二十五年人聳 亀 吉
\ 三十三才 ………
二女 マ ス
当年二十四才
明治二十七年入聳 百 吉
二十八才
右共二二女アリ
明治三十二年七月十六日記
〔史料XI〕誓約書案
誓約書案
貝島家ノ今日アルヲ致シタルハ太助以下某々等ノ苦心百端一身ヲ議性二供
シテ同心協力家名ノ盛興ヲ謀リタルニ依ルト雖トモ亦夕外部ヨリ某氏ノ太
助ヲ被護援助シタルノ事実大二与テカアルハ論ヲ待タザル処トス明治 年
太助儀非常ノ困危二陥ルニ際シ某氏二於テ其社会二於ケル偉大ノ勢カト克
ク太助ヲ知ルノ明識トヲ以テ太助二対シ無上ノ親切ヲ尽シ毎二其勇敢小心
及ビ先見ヲ以テ太助等ヲ教導指揮セシコトナカリセバ貝島家今日ノ境遇ハ
推シテ知ルベキモノアルトス爾後某氏ト貝島家トノ関係八日ヲ追テ親密ヲ
加へ終二互二縁族ヲ以テ相和親スルニ至リタリ如斯貝島家ノ興廃ト最モ密
接ナル関係ヲ有シ加フルニ卓識ニシテ倚信スルニ足ルノ人物ハ某氏ヲ措テ
他二之ヲ求ムル事能ハス故二茲二家制ヲ定ムルニ当り将来各家ノ基礎ヲ固
−134−
“貝島家特定契約”関係史料
スル為メ貝島某々等ハ某氏ヲ仰テ貝島家顧問タル事ヲ依頼シ家制ノ実行,
共同事業ノ状況及ヒ各家就業ノ模様子孫ノ教育,並二一族及ヒ其家族ノ素
行ヲ充分二監督セラレシ事ヲ希ヒ其ノ指揮又ハ其委任ヲ受ケタル代理者ノ
差図ハ決シテ之二叛カサルヘキコトヲ約シ就中別紙特定契約書中第一条第
九条及第十三条乃至第十五条二記載シタル事項ハ必ズ先ヅ顧問若クハ其代
理者ノ同意ヲ経タル後二非レバ之ヲ決行セザルコトニ合意スルト同時二某
氏二対シ謹テ右ノ責任ヲ引請ケラレン事ヲ乞フモノナリ右契約ノ成立ヲ証
スル為メ且右二対シ某氏ノ承諾ヲ希フガ為メ各当事者茲二記名捺印スル者
ナリ 。
某某
年 月 日
某氏宛
135
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