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上越教育大学研究プロジェクト 終了報告書(若手研究)
別紙3 上越教育大学研究プロジェクト 終了報告書(若手研究) 研究代表者 所属・職名 附属小学校 教諭 氏 名 寺島 克郎 研究期間 平成27年度 研 究 費 240,000 円 言語感覚に着目した語句・語彙学習モデルの構想 研究プロジェクトの名称 -「言葉遊び」を中核とした活動づくり- 子どもが自ら、語句・語彙への認識を新たにするような学習は、言語感 覚のはたらきによって支えられると考える。本研究プロジェクトは、小学 校入門期にある1年生の子どもが、言葉の多様性についての気付きをひろ げる学習モデルを構想することを目的とし、子どもが「言葉遊び」を通し て、言語感覚をはたらかせることを中核とする活動を設定したものであ る。 本プロジェクトは「言葉遊び」を中核として活動をつくる点に特色があ 研究プロジェクトの概要 り、その意図は、次の3点にある。 ① 道具を必要とせず、人数や場所を選ばずに楽しめるよさがある。 ② 連想・発想で言葉をつなぎながら、言葉を掘り起こしたり、他者と かかわったりする。 ③ 一定のルールの中で、音や音数、韻律に焦点を合わせて言葉と言葉 のつながりをつくっていく(伝達の手段としての言葉は、それが、 ある文法体系の中で、特定の指示対象をもつからである。 「言葉遊び」 の中には、このことにとらわれないものがある)。 ○表現活動と言葉の掘り起こしが一体となった「あいうえおうた」 「あいうえおうた」(4音・4音・5音でつくる詩的表現)の模倣によ る試作と、子どもの試作を抽出して提示し、分類・整理することをサイク ルとして、表現と言葉への気付きを一体とする活動を行った。 うたづくりの基盤として、 「○○言葉集め」 (言葉の掘り起こし)を同時 に行った。「あ」で始まる言葉、「い」で始まる言葉…から始め、「動物言 葉」、 「食べ物言葉」、 「気持ち言葉」 、 「反対言葉」などを集めた。休み時間 や隙間の自由時間にも取り組むほど、子どもは楽しんだ。 うたづくりと言葉の耕しが一体となって、子どもの言語感覚が研ぎ澄ま されてきたことが、子どもが分類した「うた」のグループ名(「音うた」 「様 成 果 の 概 要 子うた」 「気もちうた」 「人間うた」など)と、そのグループに属する「う た」を特徴づける「言葉」に表れた。 子どもは、おもしろいと思ったら、楽しいと感じたら、それを真似して 自分でもやってみたくなる。しかも、そのままの真似より、少し、自分の 感覚(自分らしさ)を折り込みたくなる。そうして、表現されたものが溜 まってくると、それを整理する視点が見えてくる。ここは共に活動する教 師が存在する価値が表れる。表現されたものが溜まって整理することで、 ボトムアップ的に、実感を伴って言葉への気付きがつくられる。すると、 今度は偶然だけではなく、意図的に言葉を使おうとするようになる。結果、 楽しみながら語彙が増えたり、言葉の使い方を習得したりすることにつな がった。 ○「言葉遊び」を媒介として他者とつながった「言葉遊び屋」 様々な「言葉遊び」を楽しんだ子どもが、自分の好きな「言葉遊び」を 商品として、ワークショップコーナーをつくる「言葉遊び屋」を行った。 「言葉遊び屋」は、「言葉遊び」の「店」であり、2つが1つになって いて区別はない。しかし、客には、扱う商品が「しりとり対決」でも「に らめっこ対決」でも「ジャンケン対決」でもよい。このような「客」との 出会いによって、様々な「言葉遊び」を楽しみながら、国語の音韻、リズ ム、意味などに気付き、ことばの見方をつくり変え、ことばの世界をひろ げてきた子どもが、「言葉遊び」とは何かを考えた。 しゃれは、例えば、「ふとんが吹っ飛んだ」の「ふとん」みたいに、同じことばを二 回使うことを考えるのが楽しい遊びだよ。他にも、「レモンのいレモンのわすレモン」は 「レモン」を三回使うよ (恵理) 初め、 「『しゃれ』って何ですか?」と聞かれ「だじゃれだよ」と答えた 恵理さんは、自分が「しゃれ」を商品にしようと思った楽しさを考え抜い た。そして、国語のもつ同音で異なる意味を表すことばの多様さに気がつ いた。 「なぞかけ屋」の経験を重ね、「なぞかけ」について捉えた子は、正解 することだけが「なぞかけ」の楽しさではなく、分からなくても、頭をひ ねって、語呂を総動員してことばを掘り起こすこと自体が楽しく、さらに、 頭をひねる過程で、ヒントを出したり、誤答したりしながらやりとりする ことそのものが「なぞかけ」の楽しさなのだと考えた。 「言葉遊び屋」をやり込みながら、子どもは、「言葉遊び」の楽しさを 捉え直し、それを他者と共有しようとする中で、かかわりをつくる喜びを 味わっていた。言葉がはたらく実際の場面で、体当たりでことばを使いな がら、表現や伝達といったことばのはたらきについて、考えをつくってい る姿があった。 ○成果のまとめ 「言葉遊び」を中核とした語句・語彙学習のモデルによって、子どもは、 音や音数、韻律といった特徴に焦点を合わせて言葉を探したり、偶然つく られたつながりから意味を読み取ったりすることを通して、言葉の捉えを 更新しながら、その多様さに気付いていく姿があった。 「言葉遊び」では、言葉そのものが吟味の対象となる。そのため、『リ ズムがある言葉だ』『全部「な」で始まる言葉だ』など、言葉の特徴その ものに注目があつまったり、 『反対の意味の言葉だ』 『同じ風の音でも、い ろいろな様子の言葉がある』など、言葉の意味の差が注目されたりした。 子どもは「言葉遊び」をつくりながら、言葉に対する感覚をはたらかせて いた。 子どもは「言葉遊び」をつくる活動を通して、言語感覚をはたらかせな がら、語句・語彙への認識を新たにするような経験を積んだ。 ○「言葉を楽しみ、言葉に気づく子ども~『ことばあそびわーるど』の活動か ら~」 『教育創造 第 180(通巻 308)』 高田教育研究会 2015 研 究 成 果 の 発 表 状 況 ○「ことばあそびわーるどへようこそ」 『今を生き明日をつくる子どもが育 つ学校 2016』 上越教育大学附属小学校 2016(予定)