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口頭発表H会場(PDF/約8MByte)
H-01 反応性 RF マグネトロンスパッタリングによる 酸化銀薄膜の 形成制御の検討 (米子高専生産システム工学専攻) ○國竹和樹・角田直輝 キーワード:酸化物半導体,RF スパッタリング,酸化銀,Ag2O 1.緒言 近年,P 型酸化物半導体の研究が盛んに行わ れている.一般に酸化物の電子構造は N 型半導 体に適しており,P 型半導体には不適であると いう事実から P 型酸化物半導体のデバイス応 用は遅れている.P 型酸化物半導体は,酸化銀 (Ag2O)や酸化銅(CuO),酸化ニッケル(NiO)など いくつか報告されており[1][2],その中でも Ag2O が最も熱力学的に安定していることが分 かっている[3].しかしながら,酸化銀は酸化数 の違いにより,Ag2O の他に酸化銀(I) Ag2O,酸 化銀(Ⅱ)(一酸化銀)AgO(または AgIAgⅢO2) , 酸化銀(Ⅲ) Ag2O3 が存在するため,酸化銀薄膜 の光学的物性値・電気的物性値などは未だ確定 されていない。そこで本研究では,RF マグネ トロンスパッタリングで成膜した酸化銀の P 型化に向けた検討として,結晶構造の同定を行 った. の試料は Ag2O がほとんど確認されなかった(c) と(d)の試料のスパッタ時間を長くしたもので ある.(a)と(b)のように Ar:O2 ガス流量が 8:1 ~1.5 のとき Ag2O の組成が多かった,また(c) と(d)のように Ag2O がほとんど含まれない組成 でも(e)と(f)のようにスパッタ時間を長くす ると Ag2O の組成が増えることが分かった.成 膜した酸化銀薄膜はガス流量比,スパッタ時間 の違いにより酸化銀の組成にかなり違いがあ ることがわかった.Ag2O が多く確認された(a) と(b)をもとに今後は,Ar:O2 ガス流量 8:0.5 や 8:2 なども検討していく予定である. 当日は成膜した酸化銀薄膜の XRD による結 晶子サイズの分析,AFM による表面観察,また 導電型についても併せて報告する予定である. 2.実験方法 酸化銀薄膜は、超純水およびアセトンで洗浄 したガラス基板上に反応性高周波マグネトロ ンスパッタリングでターゲットを Ag,不活性 ガスにアルゴン(Ar),反応性ガスに酸素(O2)を 導入して成膜した.スパッタリング条件を Table 1 に示す. Table 1 試料のスパッタリング条件. 基板温度 (℃) 20 スパッタ時間 (min) 5~20 RF パワー (W) 50 Ar ガス流量 (ml/min) 7~8 0 ガス流量 (ml/min) 1~5 基板-ターゲット間の 40 距離 (mm) 成膜圧力 (Torr) 8×10-3 成膜した酸化銀薄膜は X 線回折(Rigaku 社製 UltimaⅣ)を行い,その薄膜の結晶構造の同定 を行った. 3.結果および考察 Fig.1 に成膜した酸化銀薄膜の組成(AgO, Ag2O,AgⅠAgⅢO2,AgⅡAgⅢO2 )の重量比を示す. (a)~(d)の試料はスパッタ時間を 5 分のとき Ar:0 ガス流量を変化させたもので,(e)と(f) Fig.1 酸化銀薄膜のスパッタ時間,ガス流量 の違いによる組成比 参考文献 [1] Ullash Kumar Barik, S.Srinivasan, C.L.Nagendra, and A. Subrahmanyam, Thin Solid Films 429 (2003) 129. [2] Esben Lund , Augustinas Galeckas, Alexander Azarov, Edouard V. Monakhov, and Bengt G. Svensson, Thin Solid Films 536 (2013) 156. [3] J. F. Pierson and C. Rousselot, Surf. Coat. Technol. 200 (2005) 276. お問い合わせ先 氏名:角田直輝 E-mail:[email protected] H-02 PLD 法による鉄シリサイド薄膜の作製と評価 (鈴鹿高専専攻科電子機械工学専攻 1,鈴鹿高専電気電子工学科2) ○井頭卓也 1・中村晃大2・柴垣寛治2 キーワード:PLD 法,FeSi2,成膜プロセス 2.実験 真空容器内にターゲット材料FeSi2を設置し, 垂直方向からレーザを照射する.使用したレー ザはNd:YAGレーザであり,最大エネルギー 50mJ,波長1064nm,繰り返し周波数10Hzであ る.放出された粒子は飛行して対向面に設置し たSi基板上に堆積して薄膜となる.本研究では 成膜時間を1~3時間,ターゲットと基板間の距 離を3~6cmと実験条件を変更して成膜実験を 行い,得られた膜サンプルおよびターゲット材 料についてSEMやEDXを使用して表面状態や 組成の評価を行った. 3.結果と考察 上記の実験により膜厚約0.2~0.4μmのFeSi2 薄膜を作製することができ,薄膜表面をSEM で観察した結果,薄膜上に最大約10μm程度の ドロップレットが確認できた.また,図1に示 すように,ターゲットと基板間の距離が長くな るにつれて,ドロップレットの堆積量は減って いることが確認できた.レーザ照射後のターゲ ットにも注目したところ,レーザ光による照射 痕の掘削深さは他のターゲット材料(Ti,Ni) に比べて非常に深く,放出された粒子量は多量 であった. FeSi2の融点はTi,Niに比べて200~400℃程低 いことから,熱による影響を受けやすく,少し のエネルギーでもアブレーションが起こり,掘 削深さが深くなったと考えられる. また,基 板に堆積するまでの距離が遠いほど粒子が広 い範囲に分散したため局所的なドロップレッ トの堆積量は減少したと考えられる. 25 Ratio of Droplet (%) 1.緒言 物理気相成長法の一つであるパルスレーザ 堆積(PLD)法は,ターゲット材料へレーザを 照射することで放出される微粒子を基板上に 堆積させて成膜を行う手法で,様々な材料の研 究開発で用いられている.本研究では,ターゲ ット材料として鉄シリサイド(FeSi2)に注目 した.鉄シリサイドは構成元素が無毒性で資源 が豊富に存在し,940℃以下で安定なβ相は直接 遷移型半導体の性質を持つといった特徴があ るが,PLD法におけるアブレーションの詳細に ついては不明な点が多い.そこで本研究では PLD法により薄膜を作製,およびターゲット材 料の評価を行うことで,鉄シリサイドのアブレ ーション時に起こる現象と成膜プロセスにつ いての理解を深めることを目的とした. 20 2h 3h 15 10 5 0 0 1 2 3 4 5 6 Distance between Target and Substrate (cm) 図1.ターゲットと基板との距離を変更した 場合のドロップレットの割合の変化 4.まとめ 本研究では,FeSi2 ターゲットの PLD 成膜実 験を行い,薄膜およびターゲットの分析を行っ た.そして生成するドロップレットについて分 析することで,これまで明らかとなっていない FeSi2 のレーザアブレーションにおける基礎的 な知見を得ることができた.現在は放出された 粒子についての理解を深めるために質量分析 法および発光分光法を用いて,放出された粒子 の挙動をさらに詳細に分析・検討する実験を行 っている.詳細は講演にて報告する. お問い合わせ先 氏名:井頭卓也 E-mail:[email protected] H-03 風力発電用レセプタの熱伝導計算 ( 米子高専電気情報工学科 1,松江高専電気情報工学科 2 ) ○近藤 由典 1・松原孝史 1・箕田充志 2 キーワード: 風力発電,落雷,レセプタ,熱伝導方程式,温度分布 1. まえがき 風力発電用ブレードの落雷破損対策としてレセプ タが設置されている。ここでは,落雷電流による, レセプタの熱伝導解析を行い,材料による熱伝導温 度分布をビジュアル的に表示する方法について検討 したので報告する。 4.むすび 風力発電用ブレードに設置してあるレセプタの熱 伝導解析を行った。2 種類の材料について温度分布 をグラディエーション化で熱伝導の様子が比較しや すくなった。今後は,熱流量 Q を与えた解析を行う。 2. 熱伝導方程式 絶対温度関数T に関する,二次元場の熱伝導方程 式は次式で表せる。[1] k( 2T 2T T 2 ) Q 2 x y t (1) 図 1 レセプタ概略図 図 2 解析モデル ここで,k,c,ρおよび Q は,それぞれ熱伝導 率(W/mK),比熱(J/kg),比重(kg/㎥)および熱流量 (W/㎥)である。 3.解析モデルと解析例 図 1 にブレード上のレセプタと落雷の概略図を示 す。図 2 にレセプタの解析モデルを示す。 直径 100mm のレセプタに幅 10mm の強化プラスチッ ク(FPR)を帯状に付けている。解析は,モデルの対称 性から右半分の領域を有限要素法による後退差分法 を用いて行った。境界条件は,FRP の熱伝導率はレ セプタに比べてかなり小さいので,FRP の外周部は 外気温度 10℃一定とし,レセプタの一端α-βを 1000℃一定とした。 レセプタ材料は,銅および銅の熱伝導率の 1.6 倍 ある超伝導材料 SCT の 2 種類について,時間差分幅 ⊿t を 0.0001 秒として, 各時刻の温度分布を求めた。 図3 に, レセプタが銅の場合とSCT の場合の0.01, 0.1,1.0 秒後の各温度分布を比較して示した。温度 分布は,グラディエーション化して比較し易いよう にした。この結果から,明らかに銅に比べて STC が 熱伝導に優れていてレセプタに有用であることが分 かる。 図 3 レセプタ各時刻の温度分布 参考文献 [1]下関他:有限要素法/非定常熱応力プログラミング,日刊 工業新聞社,1988 年 ---------------------------------------問い合わせ先 氏名:松原 孝史 E-mail:[email protected] H-04 電磁界中の生体に誘導する電流計算 ( 米子高専 電気情報工学科 ) ○森田寛人・松原孝史 キーワード:電磁波 , 波動方程式 , 生体の誘導電流 1. まえがき 4. むすび スマートフォン,Wi-Fi タブレットなどの無線機器利 生体内の平面波電磁界解析法を導出した.簡易的な 用者は,絶えず外部からの電磁波にさらされているた 人体平板モデルで解析を行った結果,電磁波の減衰の め,人体内に少なからず誘導電流が発生する.この誘導 様子を観察することができた.今後は,人体頭部,胴部 電流を求める初歩的な段階として人体平板モデルを用 への電磁界解析に発展する予定である. いて波動方程式を解析的手法で計算した。 2. 電磁界の解析方法[1] Ez は、電界の z 方向成分,𝜀を誘電率,𝜇を透磁率とす るとき、一次元場の電界に関する波動方程式は,空間の 電荷がないとき次式となる. 𝜕2 𝐸𝑧 𝜕𝑧 2 =𝜀∙𝜇 図 1. 人体平板モデル 𝜕2 𝐸𝑧 (1) 𝜕𝑡 2 今、領域 1 における電界の入射波𝑬𝑖1 ,反射波𝑬𝑟1 をそ れぞれ次式のように表わす.ただし, 領域 1 の反射係 数を𝑅1 とする.𝐸𝑧 は入射電界の大きさを示す. 𝑬𝑖1 = 𝐸𝑧 ∙ 𝑒 −𝑗𝑘1 𝑧 𝑬𝑟1 = 𝐸𝑧 ∙ 𝑅1 ∙ 𝑒 (2) 𝑗𝑘1 𝑧 (3) ここで,領域 i の伝搬定数𝑘𝑖 = ω√𝜇𝑖 𝜀𝑖 である。また, 領域 2 の透過係数を𝑇2 とすると領域 2 への電界の透過 波𝑬𝑡2 は次式で表わされる. 𝑬𝑡2 = 𝐸𝑧 ∙ 𝑇2 ∙ 𝑒 図 2. 生体モデルでの各部の電界 −𝑗𝑘2 𝑧 (4) 𝜇 また, 特性インピーダンス 𝑍𝑖 = √ 𝑖 とおいて,それぞ 𝜀 𝑖 れの領域の磁界, 𝑯𝑖1 , 𝑯𝑟1 , 𝑯𝑡2 も同様に関係式を導き、 境界面 z=0 での境界条件より 𝑅1 , 𝑇2 を求めると, 𝑅1 = 𝑍2 −𝑍1 𝑍2 +𝑍1 , 𝑇2 = 2𝑍2 𝑍2 +𝑍1 (7) となる.このようにして,複数領域の場合も,境界にお ける方程式を立て,これを連立して解けばよい. 3. 人体平板モデルと計算例 図 3. 生体モデルでの各部の磁界 図 1 に人体平板モデルと各領域の比誘電率を示す。 比透磁率は、いずれも空気と同じ 1 である。 また図 2 と図 3 に生体モデルでの各領域部の電界と 磁界の計算結果を示す.これにより、空気中から入射す る電磁波が人体モデル各部で減衰する様子が分かる。 参考文献 [1] 生体を含む電磁界解析技術調査専門委員会,電気学会技術報告書 1309 号「生体を含む電磁界解析実用化技術」,電気学会,2013. -----------------------------------------------問い合わせ先 氏名:松原孝史 E-mail:[email protected] H-05 電力送電網の潮流解析による負荷特性 ( 米子高専 電気情報工学科 ) ○那須 翔太 ・松原孝史 キーワード:電力送電網, 潮流解析, ノード電圧, 進相コンデンサ 1.まえがき 電力送電網の基本的な潮流解析プログラムを 作成し,簡単な送電網モデル上で負荷ノードの有 効電力,無効電力によって,各ノード電圧がどの ように変わってくるか確かめたので報告する。 図 1 解析モデル 表 1 初期条件 2.潮流解析 電力送電網における発電所や変電所の母線を ノード,ノード間をつなぐ送電線をラインと呼び, 各ノード電圧とライン間アドミッタンスに関す る電力方程式は,次式のように表される。[1] N S i Pi jQi Vi Yij V j … (1) j 1 ここで。Si , Pi, Qi はノード i の皮相電力,有効電 力,無効電力を表し,Vi はノード i の電圧,Yij は ライン i-j の共役アドミタンスを, V j はノード 図 2 SC=0 のときのノード 2 の電圧の変化 j の共役電圧を表す。電力方程式は電圧の二次式 となるので,直接会が求められないため,ニュー トンラフソン法により反復計算で求める。[2] 3.解析モデルと解析例 図 1 に発電所と変電所からなる 3 ノード 2 ライ ンの送電モデルを示す。 ここでノード 1 は発電所, ノード 2 は負荷点,ノード 3 は電圧を一定に調整 した負荷点である。 図 2 は,計算条件表 1 により,ノード 1 と 3 を 単位法で 1 として,ノード 3 から電力 P を 0.35 取り出したとき,ノード 2 の電圧が P,Q の取り 方によってどのように変わるかを示したもので ある。符号は+が入力,-が出力されるものを表 す。図 3 および 4 は,ノード 2 に進相コンデンサ を接続した場合の電圧の変化を示している。 4.むすび 基本的な送電網の潮流解析を行い,負荷特性 を計算した。計算結果は,定性的な理論とよく 一致していた。今後は,数十ノードの大型送電 網モデルで確かめる予定である。 図 3 SC=0.3 のときのノード 2 の電圧の変化 図 4 SC=0.6 のときのノード 2 の電圧の変化 参考文献 [1] 永田 武, “電力システム工学の基礎”,コロナ社,2000 [2]佐々木 博司, ”シミュレーション技術としての潮流計 算” ,シミュレーション第一巻一号,1981 ---------------------------------------------------問い合わせ先 氏名: 松原 孝史 E-mail:[email protected] H-06 半導体基板を用いた高性能ヒータの作製と特性評価 (沼津高専電気電子工学科) ○多田拓・野毛悟 キーワード:無機材料薄膜形成,高温高速追従ヒータ,シリコン発熱体 1.はじめに 本研究室ではエレクトロニクス応用に適した 薄膜の形成技術に関する研究を行っている。 高品質な薄膜を形成するには,さまざまな条件 の最適化が必要であるが,最も重要なパラメータ の一つに薄膜形成時の温度がある。所有している RF マ グ ネ トロン スパ ッタ 装置 は 加熱 温度が 350℃であるが,特性の良い無機材料薄膜形成に は,600℃程度の温度を必要とする場合が多い。 さらに,温度上昇時間によって薄膜特性が変化す るため,温度追従性が求められる。 本研究では半導体の抵抗率温度変化を利用し た薄型ヒータを考案し,設計製作する。シリコン の抵抗率温度変化(1)は,常温からある程度の温度 までは比例して抵抗値が上昇するが,ある温度を 超えたところで指数関数的に抵抗値が減少する ことが分かっている。この特性を利用することに より,小型で 800℃程度の高温と高い温度追従性 を有する装置用ヒータの実現を目的とする。 2.ヒータの仕様 4.シリコンヒータの構造 シリコンヒータの断面構造を図 1 に示す。ま た,作製中のシリコンヒータの外観写真を図 2 に 示す。ヒータはネジによって基板ホルダに着脱可 能になっており,図 1 は取り外したときの断面で ある。シリコン板の温度が上昇すると,体積膨張 による応力歪みによってシリコン板が破損する 可能性があるため,固定は上面から抑え込む形と し,平面方向への膨張を緩和する。また,シリコ ン板と伝熱材の間に石英ガラスを採用し,電極同 士の短絡防止を図っている。 発熱体[シリコン] SiO2スパッタ膜[SiO2] ネジ[ステンレス] 給電用電極[ステンレス] 25.4mm 0.65mm 図 1 シリコンヒータの断面構造 有効加熱エリア:1インチ角以上 使用可能温度:800℃程度 使用雰囲気:アルゴンおよび酸素ガス ヒータ高さ:10mm 以下 その他:真空装置内の基板ホルダに着脱可 3.加熱部分の検討 サンプルの加熱に用いられる熱源にはカン タル線(鉄・クロム等の合金線)あるいは赤外 ランプなどが一般的である。しかし,1インチ 程度のエリアを加熱するような小形の真空装 置においては,内部のワークスペースが小さい ことや装置の改造にかかる部品の調達などに 問題があり,トライアルな研究課題において費 用対効果が高いとは言いにくい。この課題を解 決する方法の一つとして,我々はヒータの発熱 体にシリコン基板を用いることを考えている。 シリコン基板(厚み 0.65-0.70mm 程度)は縦 25.4mm 横 38mm の長方形である。シリコン板 の長辺の両端を上下から給電用電極で挟み込む ため,ヒータの有効面積は 25.4mm(1 インチ)角 を確保した。給電部分に低抵抗化のための加工 を施している。また,加熱面には絶縁かつ機械 的強度の向上のために石英薄膜をスパッタリ ング等によって体積させた。 図 2 シリコンヒータ 外観写真 5.まとめ 発熱体としてシリコン基板を用いた簡易な構 造でかつ安定性の良いヒータの設計と作製を行 なった。概ね仕様を満たすことができた。今後, 成膜装置の周辺部(フィードスルーや電源)の整 備を行い本格的な成膜実験を行う。 参考文献 (1) 吉田 梅次郎: 「半導体物性工学」, 株式会社 昭晃堂, 12 版, pp.52 -53(発行年 1963 年) お問い合わせ先 氏名:野毛悟 E-mail:s-noge @numazu-ct.ac.jp H-07 機能性結晶薄膜集積化のための小型加熱 ヒーター作製と特性評価 (沼津高専電気電子工学科) ○白鳥大毅・野毛悟 キーワード:エピタキシャル,薄膜,セラミックヒーター,加熱処理,アモルファス 1.緒言 光通信用デバイスの集積化、小型化のためには 光学機能性薄膜の形成方法が重要なカギである が、光デバイスに用いられるSiO2 のような非晶質 基板上に単結晶薄膜を形成することは容易では ない。 本研究室では非晶質基板上への薄膜形成の方 法としてコンタクトエピタキシャル法(1) (以下、 コンタクトエピ法)を提案している。今回は、よ り集積化に適した局所的な薄膜形成技術を確立 するための改良を目指し、現有の結晶化装置に組 み込み可能な小型ヒーターの設計と製作を行っ たので報告する。 2.コンタクトエピ法と加熱処理 コンタクトエピ法とは、所望の薄膜材料をあら かじめ非晶質基板上にアモルファス状態で堆積 させておき、種結晶の接触加圧と加熱処理により 結晶薄膜とする方法である。現有の実験装置は基 板周辺部よりヒーターによる熱処理を行う構造 であるが、種結晶およびアモルファス表面への加 熱が不十分であり、局所的な結晶化には改造が必 要である。 3.ヒーター作製の指針 (b) 試作 (a) 設計図 図 1 ヒーターの構造 することが容易にできる。試作したものを図1(b) に示す。伝熱体は円錐型または四角錐型とし、よ り局所加熱ができる形にする。伝熱体には熱伝導 率や耐腐食性を考慮し、金または銀を使用する。 ヒーターの昇温特性を図 2 に示す。測定条件は、 初期温度 23.0℃、電流値 1A として空気中で測定 を行ったものである。温度の最大上昇値は 350℃ で設定した。10 分程度で 350℃まで到達してお り、ほぼ想定した特性を有していることが分かっ た。真空中ではより安定した温度特性が見込める と考える。 加圧部分を直接加熱するヒーターを設置し、局 所的な加熱を行うことで、サンプル全体を長時間 高温にせず、半導体等の基板や周辺回路への影響 を軽減し、結晶化に必要な加熱ができること、実 験装置のワークスペースを考慮し、ヒーターサイ ズが 20mm×20mm×5mm に収まるようなヒー ターを設計し、作製する必要がある。また、加熱 処理の温度は 800℃程度を想定しており、耐ヒー トショック性も考慮する。 4.ヒーターの構造と仕様 発熱体には坂口電熱株式会社のマイクロセラ ミックヒーター(定格 10V 50W,MS-M1000)を 用いた。最高 1000℃までの昇温が可能であり、 発熱面が 5mm 角と小型で仕様に適している。ヒ ーターは断熱や装置に取り付ける部分の加工を 考慮し、発熱体周辺を囲む必要がある。ヒーター には断熱性や耐熱性、加工性を考慮して、マシナ ブルセラミックスを使用した。 図 1(a)に示すように、20mm 角のセラミッ ク板をベースとし、周辺部を囲むことにより、発 熱体を保持する構造となっている。発熱体が 1.75mm と薄いため、中央部分が低くなる。この 構造により、中央部に伝熱用の金属チップを配置 図 2 空気中における 350℃までの昇温特性 5.今後の予定 作製したヒーターを装置へ導入し、真空中に おける温度特性を測定する。また、今回作製し たヒーターでの局所加熱処理による結晶化が 可能かどうか検証する。 参考文献 (1)野毛悟: 「下地基板の影響を軽減した結晶薄膜の形成方 法」,2011-08,信学技報 CPM2011-71,p73-78 お問い合わせ先 氏名:野毛 悟 E-mail:[email protected] H-08 規則性ナノ構造を有する多孔質薄膜形成法 (沼津高専 電気電子工学科) ○望月夏鈴・野毛悟 キーワード:陽極酸化法,多孔質アルミナ,アニーリング,電解研磨 1.はじめに 本研究室では太陽電池への利用が期待される SnS(硫化スズ)の溶液成長法に関して研究を進め ているが,母材となる基板との付着力や膜の堆積 密度が低いことが課題となっている。課題解決の 試行として規則性ナノ構造を有する多孔質アル ミナの応用を提案している。このナノ構造を有す る薄膜を各種の機能性材料の下地層として利用 することにより,機能性材料の特性の顕在化,ガ ラス基板上への結晶薄膜形成の下地層として応 用できる可能性を探索する。 今年度は,研究のスタートにあたり多孔質アル ミナ薄膜の形成法として陽極酸化法の条件につ いて検討を行う。 分にして実験を行った場合の表面 SEM 写真であ る。配列秩序が見られないが,細孔が形成されて いる。溶液温度,電流密度,処理時間等の条件を 変え実験し検討を行っている。 図 1 多孔質アルミナ 概略図 2.多孔質アルミナ 多孔質薄膜は Al や Ti などを電解溶液中で陽極 として通電すること(陽極酸化法)により得られ, 表面の改質技術として知られている。多孔質アル ミナはそのセルの直径が数百 nm 程度でセルの中 心部に数十 nm の微細孔を有する。図 1 は我々が 目指している多孔質アルミナの概略図である (1) 。 図 2 3.実験 3.1 陽極酸化法 陽極酸化 法 本研究では,Al 薄膜を陽極として実験を行う。 電解液には,H2SO4 (希硫酸)を使用する。Al 薄膜 を陽極酸化すると表面に酸化被膜が生じ,多孔質 の Al2O3 (アルミナ)が形成される。水溶液中では, 図 2 のように電離,反応している。 3.2 陽極酸化処理 前処理として,Al 薄膜にアニーリングと電解 研磨を行う。アニーリングにより残留応力を緩和 する。アニーリング後,アセトンで脱脂し,リン 酸 2.8ml およびクロム酸 1.605g,水 80ml の溶液 を 60℃で保持しエッチングを行う。続けて電解 研磨により,表面の平坦性を整える。処理条件の 一例として,1cm2 の Al 面に対してエタノール 85ml と過塩素酸 17ml の混合溶液中で 3 分間 15℃, DC20V の処理を施した。平均粗さが 110nm 以下と なるように処理を行う(1)。 次に陽極酸化処理を行う。主溶液として,シュ ウ酸(0.3mol/l)を用いている。電流密度を調整す ることにより,表面に形成される酸化膜の状態が 変化する。図 3 は,DC20V で陽極酸化時間を 90 図3 陽極酸化膜の表面 SEM 4.まとめ 陽極酸化法を用いて,規則性ナノテンプレート 制御技術を確立するための基礎検討を行った。今 後は,陽極酸化条件の最適化について,溶液の濃 度や温度,反応中の電流密度等の検討を進める。 参考文献 (1) M.K.Kushwaha :「 A comparative study of different electrolytes for obtaining thick and well-ordered nano-porous anodic aluminium oxide (AAO)films.」,2014 お問い合わせ先 氏名:野毛 悟 E-mail:[email protected] H-09 超音波を用いた製品の自動検出システムの開発 (鶴岡高専専攻科機械電気システム工学専攻 1,創造工学科2) ○安食朋寛 1・保科紳一郎2・神田和也2 キーワード:超音波,Arduino,自動検出,距離測定,センサ 1.背景 依頼のあった食品会社の工場ではベルトコ ンベアに乗って流れる製品数を目視で計測し ている。製品の数量を自動的に計測するシステ ムを導入することで、生産ラインの状態を把握 することが必要とされている。この自動検出シ ステムを複数のベルトコンベアに設置し、測定 結果をグラフ化し、生産効率の悪いラインを調 べ、改善することで、工場全体の生産効率を向 上させることが出来る。本研究では、超音波セ ンサを用いた自動検出システムを開発し、その 性能評価と検討を行う。 2.自動検出システムの概要 実際の製品は透明な袋に入っており、中は水で 満たされている。ベルトコンベアの寸法は長さ 2[m]、幅 0.25[m]である。ベルトコンベア上を 製品が通過した際の、センサの出力の変化を Arduino によって処理し、製品検出を行う。 3.自動検出システムの作製 工場内に設置するため、防滴型超音波センサ (PT40-18N/PR40-18N)を使用する。表 1 に防滴 型超音波センサの定格を示す。設置のし易さを 考慮して、反射型で使用できるよう回路を作製 した。送信部には Arduino を用いて 40[kHz]、 5[Vp-p]、デューティ比 50[%]のパルスを印加 した。しかし、5[Vp-p]のパルスでは測定距離が 不十分であったため、トランジスタを用いて増 幅を行い 9[[Vp-p]のパルスを印加している。受 信部にはオペアンプを用いた 2 段重ねの反転 増幅回路で-100×-10=1000 倍の増幅を行って いる。高周波数帯でも安定して増幅できる GB 積の大きな高速オペアンプ(NJU7032D)を使用 した。Arduino は受信回路へ電源供給を行って いる。また、受信回路の出力を Arduino で読み 取り、製品検出を行う。パルス列の送信後から、 受信部の出力電圧が 1.5[V]を超える場合を製 品検出したものとする。 試作した超音波センサ回路で、実験を行った。 40[kHz]、9[Vp-p]の矩形波を 8 周期、200[μs] 間送信部に印加し、検出物との距離を変化させ た際の、受信部の出力変化を図 1 に示す。図 1 より、センサと検出対象の距離が 0.4[m]の場 合、受信回路の出力電圧が 1.5[V]を下回り、 製品検出が行えないことが判明した。 4.まとめ 本研究では、超音波センサを用いた製品の検 出回路を作製し、Arduino を用いて受信回路の 出力の変化を処理するプログラムを記述した。 試作した自動検出システムで実際に製品を検 出可能と確認できた。 5.今後の課題 検出距離を伸ばす必要がある。現状、自動検 出システムの検出距離は 0.4[m]程度である。 9[Vp-p]の信号を送信センサに印加しているが、 より大きな電圧をセンサに印加し、検出距離を 伸ばす。また、実際に工場内で長期間動作させ、 既製品であるセンサと性能を比べる。多湿な環 境で正確な計測が行えるか検討を行う。 表 1 防滴型超音波センサの定格 中心周波数 PT-18N PR-18N (送信) (受信) 40[kHz]±1[kHz] 送信器音圧レベル 106[dB] 受信感度 -74[dB] 許容入力電圧 60[V] 動作温度範囲 -20[℃]~60[℃] 図 1 測定結果 お問い合わせ先 氏名:安食朋寛 E-mail:[email protected] H-10 音響解析によるゴルフクラブ打音特徴の検討 (鶴岡高専専攻科機械電気システム工学専攻 1,株式会社本間ゴルフ2) ○渡部 立 1・渡部誠二 1・大井順久2・斎藤大輔2・柳本憲作 1 キーワード:ゴルフクラブ打音,高速フーリエ変換,ウェーブレット変換 1.緒言 平成 20 年にゴルフクラブに関するルールが改 正され,高反発モデルが規制された.そのため近 年では,ゴルフクラブ開発においてゴルフクラブ の打音などの打感の良さにより既存製品との差 別化がなされるようになった.ゴルフクラブ打音 の評価はゴルフクラブの使用者により行われる 為,使用者の感性に左右される.故に,現状では 定量的な評価が困難である. 本研究では音響解析を用いて,定量的な観点か らアベレージゴルファー向けのクラブとアスリ ートゴルファー向けのクラブの,それぞれの好ま れる打音の特徴を検討する. 4.結言 本研究では,音響解析からゴルフクラブ打音の 解析を行い,定量的な観点から打音の特徴を検討 した.また解析結果から,従来の定性的評価と対 応する点について,確認することができた. 【参考文献】 [1]一宮亮一 “わかりやすい静音化技術” , 森北出版(2011) 4.51kHz,94dB 5.64kHz,89dB 2.実験方法 ゴルフクラブの打音について,精密マイクロフ ォンで録音し,時系列データ解析ソフト Oscope を用いて音響解析を行った.音響解析には,高速 フーリエ変換(FFT)とウェーブレット変換の2 つの手法を用いた.FFT の解析結果から顕著な ピークが現れる周波数を調査し,またウェーブレ ット変換の解析結果よりピークが現れる周波数 の時間に伴う強度の変化を調査する. 3.解析結果・考察 本項ではアベレージゴルファー向けで心地よ い響きの打音のクラブをクラブ#1,アスリート ゴルファー向けで心地よい響きの打音のクラブ をクラブ#2 として,それぞれのクラブの打音の 解析結果を述べる. クラブ#1 打音及びクラブ#2 打音の FFT の解 析結果を図 1 に示す.図 1(a)と(b)は共に,4kHz 付近と 6kHz 付近にピークが確認された.それぞ れのピークで両者には,スペクトル強度に大きな 差は見られなかった. 図 2 にクラブ#1 打音及びクラブ#2 打音のウェ ーブレット変換の解析結果を示す.図 2(a)と(b) の結果を比較すると,両者に 4kHz 付近での残響 が確認できるが,図 2(a)の方が(b)に比べ,比較 的長時間の残響となっている.一般的に,アベレ ージゴルファーはよく響く打音を好むと言われ ている.また,図 2(a)は,人間の聴覚の感度が高 いとされる 4kHz 付近[1]で長時間の残響が見られ る.従って,定性的評価における良く響く打音と は,4kHz 付近に長時間の残響がみられる打音を 指すと考えられる. (a) club#1 4.45kHz,92dB 6.35kHz,90dB Fig.1 (b) club#2 FFT analysis result of impact sound (a) club#1 (b) club#2 Fig.2 Wavelet analysis result of impact sound お問い合わせ先 氏名:渡部 立 E-mail:[email protected] H-11 電磁界シミュレータを用いたテーパー線路 インピーダンス変換器の特性誤差に関する検討 (香川高専専攻科電子情報通信工学専攻 1) ○細川裕基 1・草間裕介 1 キーワード:マイクロストリップ線路,インピーダンス変換,電磁界シミュレータ,電磁場解析 1.緒言 Microstrip Line (MSL)は高周波伝送線路の一つ であり,製作・加工の容易さが特徴の一つとして 挙げられる.本研究室では,MSL を題材とした 設計・製作・評価に至る一連のデザインプロセス を習得するための RF エンジニア育成プログラム の開発を検討している.そこで,先行市販品の韓 国 Man&tel 社 製 マ イ ク ロ 波 実 験 キ ッ ト MW-1000[1]を模範とし,その中の一つであるテ ーパー線路インピーダンス変換器に着目した.過 去の研究では,理論計算およびシミュレーション, 測定の 3 点から模範モデルを解析し,比較検討を 行った[2].しかしながら,理論計算と測定値と の間で特性誤差が生じた.その原因として,理論 計算に考慮されていない条件が測定値に影響を 与えていることが考えられる.そこで,電磁界シ ミュレータ ANSYS HFSS を用いて,各条件が与 える誤差の程度と原因の検討を始めた.検討の対 象となる条件は以下の通りである. (a) 同軸コネクタの接続の影響 (b) アルミ製シールドケースの影響 (c) 基板共振の影響 (d) 基板誘電率の周波数特性の影響 (e) 測定ランダム誤差の影響 (f) シールドケースと基板間のギャップの影響 (g) 同軸コネクタ内部の誘電体空隙の影響 条件(a) – (e)については,HFSS を用いて検討を行 ったが,誤差の原因となる結果は得られなかった [3].そこで本検討では,残りの条件(f)と(g)が与 える誤差の程度と誤差原因を検討した. 2.理論計算と測定値の特性誤差の検討 (f) シールドケースと基板間のギャップの影響 模範モデルのシールドケースと基板間に幅 f 0.5 mm ほどのギャップが生じていた.これ を HFSS 上に再現し, 特性への影響を検討した. 図 1 に解析結果を示す.Meas.は測定値,HFSS[2] は検討前の HFSS,HFSS_f は条件(f)を考慮した HFSS を示す.ギャップが生じることにより,RL 特性の共振点は低周波側に移動することが確認 できた. (g) 同軸コネクタ内部の誘電体空隙の影響 模範モデルのコネクタ誘電体とアルミ製シー 図1 模範モデルの RL 特性解析結果 ルドケース間に幅 g 0.15 mm ほどの空隙が生 じていた.条件(f)と同様に HFSS 上で空隙を再現 し,特性の変化を検討した.図 1 に HFSS_f+g と して解析結果を示す.空隙を考慮することで,共 振点の数と位置が測定値とほぼ一致した.ゆえに, コネクタ内部の誘電体空隙は理論計算と測定値 の特性誤差の原因であると考えられる. 3.結言 本検討では,RF エンジニア育成プログラムの 開発検討のため,模範モデルの理論計算と測定値 の特性誤差の原因を検討した.HFSS を用いて考 え得る条件の解析検討を行い,コネクタ内部の誘 電体空隙が特性誤差の要因であると考えられる. 今後は,設計理論を FR4 基板に適用し,製作サ ンプルのばらつきについて検討する予定である. 参考文献 [1] MW-1000, Man&tel Co., Ltd. [2] 草間裕介, 石川将也, 横井雄亮, 橋本修, “テ ーパー線路インピーダンス変換器の設計製作実 験に関する一検討,” 電気関係学会四国支部連合 大会, 12-7, Sep. 2014. [3] 細川裕基, 草間裕介, “テーパー線路インピー ダンス変換器の設計に関する一検討,” 電気関係 学会四国支部連合大会, 12-10, p.152, Sep. 2015 お問い合わせ先 氏名:細川裕基 E-mail:[email protected] H-12 ࢸࣥࣃࢽࢳ࣮ࣗࢽࣥࢢࢲࣉࢱࡢ◊✲ 㸦㤶ᕝ㧗ᑓᑓᨷ⛉㟁Ꮚሗ㏻ಙᕤᏛᑓᨷ 㤶ᕝ㧗ᑓ㟁Ꮚ㺚㺛㺡㺯ᕤᏛ⛉ 㸧 ࠐ୕㷂ៅஓ ࣭୰㔝ඞဢ ࣭⸨⏣ᩯ ࣭⸨ᏹ⾜ ࣭୕㷂ᖾ ࣮࣮࢟࣡ࢻ㸸ࢸࣥࣃࢽ㸪ࣆ࢚ࢰ⣲Ꮚ㸪PVDF㸪ࢥࣥࢱࢡࢺ࣐ࢡ㸪ࢳ࣮ࣗࢽࣥࢢࢲࣉࢱ㸪 ᅗ 1.ヨసࡋࡓ PVDF ᅽ㟁㺪㺆㺷㺯㺜㺻㺙ࡢᴫ␎ᅗ 㻹㼕㼚㼕㻿㼑㼚㼟㼑 㻝㻜 㻜 㻌 㔜䜚䠖㻜 㻚㻟 㼓 㻌 ඹ࿘Ἴᩘ䠖㻣 㻡 㻴㼦 ᅗ 2. 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に示す 構造を開発した。呼吸による胸郭の変化に追随 するように伸縮性のないバンドの一部に伸縮 する弾性体(例えばゴム)を取り付け,弾性体 上にブリッジ状に撓ませた PVDF 圧電フィル ムを取り付ける。これによりセンサに取り付け られた弾性体により患者の呼吸による胸郭変 化の制限を少なくし,装着感は非常に良くなっ た。また胸郭の変化を弾性体の伸縮に集中させ, 弾性体の伸縮を PVDF 圧電フィルムの撓み変 化で測定するため出力も非常に大きく,呼吸を 正確に検出することが可能となった。 ム出力測定回路を用いて出力電圧の測定を行 った。開発した呼吸センサによる呼吸信号測定 結果を図 5 に示す。 図 5 の波形でおよそ 2 秒ごとに周期的に観 測される波形が呼吸波形である。オフセット約 1.5[V]を基準に,息を吸った場合の出力電圧は 約-0.5[V],息を吐いた場合の出力電圧は約+0. 5[V]の出力が得られた。波形の一部を拡大する と,呼吸波形以外に細かく周期性のある波形が みられる。これは心拍信号であることをパルス オキシメータの心拍波形と比較し確認した。 図 2.開発した呼吸センサによる測定結果 この結果,開発した呼吸センサを使用すれば 呼吸波形と心拍波形を同時に測定することが 可能であることがわかった。 4.結論 PVDF 圧電フィルムを使用した高感度呼吸 センサを提案し呼吸測定を行った。その結果, 正確な呼吸信号と心拍信号を確認することが できた.また,実際に従来のセンサとの比較を 行い,呼吸を正確に測定できていることを確認 した。 図 1.開発した高感度呼吸センサの動作概略図 3.開発した呼吸センサによる呼吸測定 次に被験者に約 30 秒間呼吸をしてもらい, チャージアンプを使用した PVDF 圧電フィル 参考文献 [1] 達吉朗 他 51 名:パーソナル・ヘルスケア ~ユビキタス,ウェアラブル医療実現に向けた エレクトロニクス研究最前線~全 398 項, pp. 269-275,株式会社エヌ・ティー・エス,2013 お問い合わせ先 氏名:藤田 健斗 E-mail:[email protected] H-14 高品質な音声信号処理を実現する装用型装置に関する研究 (久留米高専専攻科機械・電気システム工学専攻 1, 熊本大学大学院2,久留米高専電気電子工学科3) ○七種貴紀 1・上田祐市2・坂田聡2・池田隆3 キーワード:音声信号処理、DSP、ホルマント、装用、補償 1.緒言 これまでに音声のホルマント成分に着目した 単共振分解方式による補聴処理方法や音声の画 像化プログラムが提案され有効性が明らかとな った。またホルマント情報 の抽出が高性能の DSP モジュール 1 個により IFC 法よりリアルタ イム抽出が可能であることが示された。そこで本 研究では単共振分解処理及びホルマント抽出と その応用処理により聴力損失の補償及び語学学 習の支援に活用できる装用型装置の実現を目的 とする[1]。 2.音声信号処理 単共振分解方式では可聴領域内の各ホルマン トの量を制御し、合成することで補聴処理を行う。 試作基板上で DSP10001(55×80mm) 1 個により 約 6[ms]でホルマント F1~F4 のリアルタイム抽出 が逆フィルタ制御法により可能である。そのため DSP を 2 個用意し、ホルマント情報などのパラ メータ抽出及び補聴器などの音声の応用処理を リアルタイムに実行させる。 3.装置の構成 小型化のために表面実装部品を多用し、6 層と する。CAD によって基板を設計する。装置の構 成を図 1 に示す。 音声信号処理装置 USBホストコントローラ H8 マイコン 3069f 音声 マイク, スピーカー DPRAM1 16k×16 DSP1 DSP10001 DPRAM2 32k×36 USB コネクタ SL811 HST DSP2 DSP10001 画像化 図 1 装置の構成 ホルマントの抽出及び音声の応用処理のために DSP10001 モジュールと対応するコネクタを 2 組の他、音声信号の入出力に汎用の USB オーデ ィオデバイスを接続できるよう USB ホストコン トローラ機能を配置する。図 2 に今回作成した基 板を示す。 4.ソフトウェア これまでに USB ホストコントローラのプログ ラムを Cbar を用いて C 言語で開発を行い、単独 で の動作 を確 認 してい る。 今後、DSP ユ ニットから DPRAM とデ ー タを送 受す る ハンド リン グ テスト 、オ ー ディオ から USB ホストコ ン トロー ラを 介し DSP ユニ ッ トまで との 間 で音声 デー タがリアルタ 図 2 基板上の部品配置 イ ムで送 受す るスルーテストを進めている。また、DSP の音 声処理プログラム開発にはツールとして CCS(Code Composer Studio)を用いて C 言語で 行っている。以前に据え置き型の DSP による音 声信号処理は報告されているのでそれを改良し て対応する。今後は、今回作成した基板の信号処 理システムが一連のシステムとして動作するプ ログラムを開発する。 5.結言 装用型装置を最終目的として、DSP ユニット を複数個実装する研究用基板を開発した。今後、 この基板で、IFC 法のプログラムが動作可能なこ とを確認する。更にリアルタイム動作可能なホル マント周波数を活用した応用システム等にも使 用できる装用型装置の完成を目指し音声入出力 部の実装及び画像出力の検討を進める。 参考文献 [1]T.Ikeda, T.saikusa, T.sakata, Y.Ueda “A Development of Wearable DSP Units to Extract Speech Parameters for Hearing Aids and Speech Visualizer” WESPAC2015, Singapore. 謝辞:本研究は文部科学省平成 27 年度科学研 究助成事業(科学研究費補助金)基盤研究(C) (課題番号 24500650)からの支援により行われ たものである。 お問い合わせ先 氏名:池田 隆 E-mail:[email protected] H-15 音声の分析再合成を用いた音声聴取訓練装置に関する研究 (久留米高専専攻科機械・電気システム工学専攻 1, 熊本大学大学院2,久留米高専電気電子工学科 3) ○鶴直人 1・上田裕市2・池田隆 3 キーワード:音声,聴覚障害,ホルマント,聴き取り 1.緒言 これまでの感音性難聴者に対する聴き取り補 償の研究で,ホルマントのピークレベルを可聴領 域内に適正に制御すれば聴き取り補償が可能で あることが確認されている [1]. 本研究ではこれを応用し健聴者にも対応でき る音声聴取訓練装置の開発を目的としている.ホ ルマント情報の制御により,言語の聴き取り易さ も制御できれば,能力に合わせた効率の良いリス ニング学習への応用が期待できる.また,ホルマ ント情報を制御した音声を聴くことで,発話にも 変化が現れる可能性がある. 今回は,聴き取りに着目し,健聴者の聴取能力 を変化させるパラメータとして日本語や英語音 声から抽出したホルマント周波数により,音声の ホルマント成分(単共振波)を抽出し,合成加算 により各ホルマント情報を制御する方法で聴き 取りに対する影響を調べる. 2.聴取実験 2.1 実験方法 作成した試料音声を用いて,健聴者の成人男性 9 名で聴取実験を行った.日本語・英語それぞれ 男性話者 1 名分の有意味単語を第 1〜第 4 ホルマ ント成分に分解・再合成し,原音との聴き取り正 答率を比較した. 任意のホルマント成分に対応する単共振成分 は複数の逆フィルタを用いて抽出する(図 1). 第 n ホルマント成分と逆の特性を持った逆フィ ルタ(IFn)を順次通過させ,最後に BPF を用いて 単共振成分(Fn)を抽出し,再合成する.F1~F6 のホルマント周波数は予め逆フィルタ制御法に より抽出されたデータを用いる. 英単語の音声試料には,英単語教材 COCET2600 から 90 単語を掲載順に選択した. 理工系学生に重要な単語順に掲載されており,比 較的身近な単語(battery, message, etc.)となっ ている.日本語の音声試料には,ATR 重要単語 データベースの 520 単語からランダムに 100 単 語を選択した. 被験者は簡易聴力検査室内に着座し,PC から 両耳のヘッドホンで提示する音声を聴き,直ちに 書き取る.解答は正しく記述しているものを正解 とする.英単語は書き取りのスペル誤り防止のた め,1 週間前に 90 単語のリストを配布して各自 確認し,持ち込んで実験した.聴き取り音量は, 実験前に被験者が聴き取りやすい音量に調整し, 実験中は固定した.英語の実験は合成音・原音計 180 個の音声をランダムに 90 個ずつに分け,日 本語では計 200 個の音声を 100 個ずつに分けて それぞれ二回ずつ実験を行った.流れる単語の順 番は全被験者共通である. 2.2 実験結果 聴取実験の正答率を図 2 に示す.英語では,正 答率は被験者による相違が大きい.日本語では合 音声入力 出力 図 1 単共振成分抽出ブロック図 英語 日本語 図 2 実験結果 成音の正答率が全体的に低下した.英語・日本語 共に全被験者において原音の方が合成音より正 答率が高く,平均差は,英語が 9.3%,日本語が 10.1%であった. 3.結言 本研究では,第 1~第 4 ホルマントの合成音を 用いて,原音と聴き取り正答率を比較し,日本 語・英語共に正答率に差が生じた.今回は,音声 の話者がそれぞれの母語話者であり,話者による 影響も調べる必要がある.英語の場合は,日本語 と比較して原音の正答率が低い傾向があり,被験 者の語学力との関係も考えられる.今後,抽出し た単共振成分の組合せやレベルを変化させ,これ らの操作による聴き取りへの影響も調査する予 定である. 参考文献 [1] 池田隆,池田博,上田裕市,渡邉亮,“感音性難聴 者の音声聴取能力と可聴領域内ホルマントピー ク分布の関連”,日本音響学会誌(2002),58 巻,8 号,pp.507-508 お問い合わせ先 氏名:池田 隆 E-mail:[email protected] H-16 簡易 MPPT 制御する太陽電池用昇圧コンバータ (木更津高専専攻科機械・電子システム工学専攻) ○山野寺大地 1・大澤寛2 キーワード:太陽電池,昇圧コンバータ,MPPT,変圧器 1. まえがき 近年,地球温暖化に伴いクリーンエネルギー に注目が集まる中,太陽光発電システムの需要 は増え,いたる所で太陽電池が活用されている. 太陽電池の出力には最大電力点があり,電流が 連続になる昇圧コンバータを用いて最大電力 追従制御(MPPT)を実現している.現在の太陽 光発電システムでは,主にコンピュータ制御に よるパワーコンディショナーが用いられてい るが,このような集中管理方式では,各パネル の特性を個別に調整することが難しい.よって, パネルごとに簡易な MPPT 回路を付けるのが 理想的である.先行研究において,太陽光パネ ルに対し照度変化ならびに出力側にバッテリ を想定した場合のバッテリ電圧変化において は十分な成果が得られたが,温度補償について は検討していなかった.検討の結果,太陽電池 パネルは温度による特性変化が大きいため,こ れまで検討してきた提案回路を太陽電池 1 セ ル用に改善し,さらに温度補償機能を付けた回 路を新たに提案する. 2. 回路動作 Fig.1 に提案回路の回路図を示す.図中三角 波 vt はトランス T によって FET のゲート側に v’t として出力される.この v’t と太陽電池の出 力電圧 VS の R1 と R2 の分圧による V1 によって ゲート電圧 vg が生成される.FET の閾値電圧 を Vgt とすると,vg >Vgt である間 FET は ON す る. 一般的に太陽電池の温度特性は,温度上昇に 伴って開放電圧が低下,短絡電流は微増する. 定電圧制御状態で太陽電池を動作させると温 度上昇と共に,動作点における電流 IS は減少 する. 今回提案する回路において,温度補償には Fig.1 内のダイオード D1 を用いる.太陽光パネ ルの温度増加に伴って,ダイオードの順方向電 圧 VF は低下する,同時に温度が増加した場合 Fig.1 の VS は減少し V1 ならびに V2 も減少する. しかし,VF が減少することによって温度変化 前後で V1 の電圧降下割合は少なく抑えられる ため,Duty が高くなる.すなわち,Duty が増 加することによって L1 に流れる電流 IL1 が増加 する.伴ってバッテリに流れる電流 IB も増加 する.バッテリ電流の増加により,太陽電池の IS IB V2 VF VS R1 D1 v't VB V1 vg R2 vt Fig.1 Proposed Circuit 電流 IS も増加する.つまり,IS の低下を妨げる ように回路が働き,最大電力点近傍での動作が 可能となる.今回の回路ではあらかじめ,Fig.1 内の可変抵抗 R2 を変化させ,ある照度下で回 路の動作点と最大電力点を一致させることで 温度が変化した場合に簡易的な MPPT を可能 とする. 3.シミュレーション LTspice を用いて提案回路のシミュレーシ ョンを行い,動作確認を行った.シミュレーシ ョンに用いた提案回路には実験室所有の太陽 電池に近似した等価回路を用い,照度,バッテ リ電圧,温度がそれぞれ変化した場合において シミュレーションを行った.シミュレーション より,それぞれが変化した場合において,提案 回路によって最大電力点近傍で太陽電池が動 作していることが確認された. 4.まとめ LTspice を用いたシミュレーションにおい て,提案回路に太陽電池 1 セルの等価回路を付 加し,照度,バッテリ電圧,温度がそれぞれ変 化した場合において,最大電力点近傍での動作 を可能とすることが確認できた.しかしながら, 実際の太陽電池 1 セルに提案回路を付加した 場合を想定すると,温度補償を十分に可能にす るために付加する温度補償用のダイオードの 数について検討する必要がある. お問い合わせ先 氏名:山野寺 大地 E-mail:[email protected] H-17 レーストラック形コイルを用いた渦電流探傷系の 探傷性能と内部欠陥検出性能の評価 (徳山高専専攻科機械制御工学専攻) ○田村隆希 キーワード:渦電流探傷,レーストラック形コイル,非接触探傷,超伝導 1.緒言 金属材料の品質検査の自動化の実現は,材料の 信頼性の更なる向上だけでなく検査に必要な人 件費等のコスト削減に大きく寄与する。その検査 の自動化に対し,渦電流探傷は優れた実用性を持 つ。しかし,「渦電流に移動導体の影響がある」 「部材とコイル間の距離変動の影響が大きい」 「内部欠陥の検出が困難」等の課題もある。これ らの改善のために,励磁・検出コイルが共に方形 で,導体面に対し励磁コイルを平行に,検出コイ ルを垂直に配置したシステムが考案されている が,内部欠陥検出の課題はまだ改善されていない。 この課題の改善に対して,励磁コイルを大電流で 励磁することが特に有効である。そこに超電導現 象を応用できるなら,その内部欠陥検出性能は飛 躍的に向上する。しかし,超電導材は固く,巻き つけにくいことから方形コイルで超電導を実現 することは困難である。それに対し,レーストラ ック形コイルは超電導材に適した形状であり,か つ,方形コイルと同様の方向性を有する。したが って,レーストラック形コイルを用いた渦電流探 傷システムは既存のシステム同等の探傷性能を 持ち,更に,超電導の応用が可能なシステムある。 そこで,将来の内部欠陥の検出が可能な超電導現 象を応用した渦電流探傷システムの開発に向け て,レーストラック形コイルを用いた渦電流探傷 システムの探傷性能の評価と内部欠陥検出性能 の定量的評価を行った。 3.実験結果及び考察 3.1 探傷性能 励磁電流 0.7A,励磁周波数 20kHz での実験結 果を図 2 に示す。図 2 中の黒線はコイルの中心と クラックが重なる位置を表しており,出力電圧は クラックの前後で大きく変化していることから, クラックの検出ができたと言える。出力電圧がク ラックの前で高く,後で低くなっているのは,コ イルの前後で誘起される渦電流の極性が異なる ためであると考えられる。また,クラック間で小 さな出力の変化が表れているのは,渦電流が誘起 される範囲が広いために前後のクラックの影響 を受けたためであると考えられる. 図 2 検出コイル出力電圧の距離特性 2.実験 レーストラック形コイルを直交に配置した渦 電流探傷系を製作し,クラック長さ 14mm,幅 0.3mm,深さ 0.5mm,1.0mm,2.0mm,3.0mm の 4 種類で表面開口した SS400 鋼板を用いて探 傷実験を行う。製作したシステムと用いたコイル の諸元を図 1,表 1 に示す。コイルには直径 0.3mm のポリウレタン被膜導線を用いた。 表 1 各コイル諸元 図 1 製作システム 3.2 内部欠陥検出性能 内部欠陥検出性能評価のためのパラメータと して磁界の浸透深さを用いる。今回の実験で設定 した励磁周波数 20kHz から,鋼における磁界の 浸透深さを計算すると 0.108mm となり,渦電流 探傷では極めて表層部の欠陥しか検出できない ことがわかる。探傷性能をそのままに,同システ ムで 2mm 程度の磁界の浸透深さを実現する際 に必要な励磁周波数は約 60Hz,励磁電流は約 230A となる。しかし,超電導材の臨界電流等を 考慮する必要もあり,更なる検討が必要である。 氏名:田村隆希 E-mail:[email protected] H-18 果樹殺菌用プラズマ発生装置の検討 (和歌山高専専攻科メカトロニクス工学専攻) ○岡健太、岡孝則、竹下慎二 キーワード:非熱平衡プラズマ、殺菌、オゾン 1.本研究の背景 本研究室ではこれまで、和歌山県の主な生産品 であるみかんについて、プラズマ発生装置を製作 合が最も長く 7[mm]であった。また、流量が増え るにつれてプラズマ長は短くなり、6[L/min]以降 はプラズマ長が 5[mm]一定となった。 し、みかん病原菌について殺菌試験を行ってきた。 熱平衡プラズマによる殺菌効果は確認できたが、 プラズマの熱によって試料にダメージを与えて しまう問題点があった。そこで、本研究ではプラ 3. 非熱平衡プラズマを用いた殺菌試験 製作した非熱平衡プラズマ発生装置を用いて、 アオカビに対して殺菌試験を行った。 ズマの温度が室温程度である非熱平衡プラズマ 約 15[mm] 発生装置を製作し、同様に殺菌試験を行い、熱平 衡プラズマでの殺菌効果と比較検討する。 2. 非熱平衡プラズマ発生装置 図2 殺菌範囲測定結果 アオカビを塗布した平面寒天培地の中心にプ 図1 非熱平衡プラズマ発生装置概略図 ラズマを照射し、コロニーが形成されるまで培養 した後、コロニーが形成されていない個所を殺菌 まず始めに、滅菌試験を行うための実験装置を 範囲として評価した。He は 4[L/min]一定、電圧 製作した。電源は DC12[V]、昇圧には冷陰極管イ は DC12[V]一定、プラズマの照射時間は 0[s]、 ンバータを用いた。リアクタには、誘電体として 10[s]、20[s]、30[s]、40[s]、50[s]、60[s]、120[s] ガラス管、電極として銅板と配線コード芯線を利 とし、各時間ごとに 3 つずつサンプルをとった。 用した。作動流体は He を用いた。 結果として、120[s]の照射で約 15[mm]の殺菌範 囲を得ることができた。 3. 作動流体の流量によるプラズマ長の変化 製作したプラズマ発生装置を用いて、電圧を DC12[V]一定とし、 He の流量を 1[L/min]から 10[L/min]まで、1[L/min]刻みで変化させた場合 のプラズマ長を測定した。流量が 4[L/min]の場 お問い合わせ先 氏名:岡健太 E-mail:[email protected] H-19 MHD 技術を用いた固体ロケットの速度制御の基礎検討 (和歌山高専電気情報工学科) ○田中駿介、山澤駿、稲垣僚太 キーワード:MHD,固体ロケット,数値解析 1.はじめに いるのはチャネル内で燃焼ガスが反射している MHD 加速・減速技術は宇宙推進などの宇宙航空 からだと考えられる。また、減速されずに加速さ 分野への応用が期待されている。本研究では特に れているのは電流が流れる時間が長くなったこ 固体ロケットへの応用が可能か検討する。固体ロ とでジュール熱による加速させる力が長い時間 ケットは一度点火すると燃焼し続けるため速度 働いたためだと考えられる。 の制御ができず、発射時の加速度に人体が耐え切 れないため有人飛行ができない。 そこで MHD 減速技術を応用し発射時の加速度 を制御できないかシミュレーションにより検討 以上のことから、より減速させるためには電流 を高めるのではなく磁束密度を可能な限り高め、 電流が流れる時間を細かくした方が良いという ことが分かった。 する。 2.シミュレーション結果 シミュレーションで用いるパラメータを次に 示す。入力電流値を 1.3[kA]、パルス間隔を 10[μ s]、電流が流れる時間を 40[μs]、とした方形波 パルス電流 を三回入力 、磁束密度の最大値を 0.2[T]、燃焼ガスの初速度を 20[m/s]とする。こ の時のチャネルの出口での時間―流速のグラフ を図 1 に示す。 図1 時間―流速のグラフ (3回パルス,電流印加時間40[μs]) また、電流が流れる時間以外のパラメータを同 じにし,電流が流れる時間を1パルス当り 0~ 150[μs]に変更したときのシミュレーション結 果を図 2 に示す。 3.考察 電流印加時間 図 1 より、MHD 減速時に流速が加速されてから 減速されているのが分かる。これは電流を印加し た際、ジュール熱により燃焼ガスが加速されてか 図2 時間―流速のグラフ らローレンツ力による力を受けて減速されるた (単発パルス,電流印加時間:0~150[μs]) めと考えられる。 図2より、波形が波打って流速が約 40[m/s]の ところで収束していくと推測される。0~150[μ s]の間で電流が流れているのに波形が波打って お問い合わせ先 氏名:田中駿介 E-mail:[email protected] H-20 サレジオ高専とモンゴル高専との学生共同による PWM 制御回路を用いた水耕栽培装置の製作 (サレジオ高専電気工学科 1,一般教育科2,モンゴル高専 3) ○大野淳之介 1・上脇優人 1・有福修 1・オユンエレデネ 3・伊藤光雅 2 キーワード:PWM 制御回路,水耕栽培装置,共同研究,サレジオ高専,モンゴル高専 1.はじめ サレジオ高専とモンゴル高専では,2014 年 に教育協定を結び,各種の交流事業を推進して いる.JST さくらサイエンスプランでの交流事 業もその一つで,2 年連続にて採択されて,両 校間の交流事業を展開している.2015 年度の 交流事業では,PWM 制御回路を用いた水耕栽 培装置の製作を実施した. 本発表では,モンゴ ル国で実施した製作前の事前指導と,日本で実 施した2国間学生共同による製作過程を報告 する. 2 .水耕栽培装置の制作過程 制作過程については以下の 3 つの Step で行 った. 渡航前作業(Step1) : 両電源の PWM 制御 回路の作製を行った. 電源電圧は+12V, - 12V の両電源を制作した. PWM 制御回路の三 角波を出力した後の接続は比較器を3つに増 設し,並列に接続した. また3つの比較器のマ イナス端子に接続する可変抵抗も増設し, RGB それぞれを調光できるようにした. その 後はそれぞれの出力信号の先にトランジスタ を接続した. 最後にトランジスタのコレクタ にテープ LED の RGB それぞれを接続した. モンゴル高専での作業(Step2) : モンゴル国 でのデモンストレーションのため,両電源の PWM 制御回路装置をモンゴル国へ搬送して 装置を組み立てモンゴル人学生の前で説明を 行いながら動作確認を実施した. 日本に帰国 した後は日本でのモンゴル人学生との共同制 作の前準備を行った. 渡航後作業(Step3) : 両電源での PWM 制御 回路では安定化電源が必要になってしまうた め手軽に使えるために安定化電源が必要なく コンセントで装置を動かせるようにするため に単電源の PWM 制御回路の制作を行った. 単電源装置は電源電圧を 12V とした. 両電源 の時と同様に, 三角波の出力先に比較器を並 列に3つ接続する. また比較器のマイナス端 子に接続する可変抵抗も増設した. 比較器の それぞれの出力信号の先にトランジスタを増 設し,12V とベース間の抵抗 1kΩを 2kΩに変 えた. 最後にトランジスタのコレクタにテー プ LED を接続した. 図1.単電源の PWM 制御回路 3 .結果・考察 渡航前に制作した両電源の水耕栽培装置を モンゴル国で動作確認を行った.結果としては モンゴルの安定化電源は電圧が安定せず指定 以上の負荷が装置のマイコンにかかり破損す る問題が生じた. そのため改善策として手軽に使うため家庭 用のコンセントから電源を供給でき,電圧が安 定できる単電源の PWM 制御回路装置の制作 を行った. 動作を行ったところ LED が完全に 消灯しなかった. そのため 12V とベース間の 抵抗 1kΩを 2kΩに変えたところ安定に動作し た. 4 .まとめ 今回の取り組みについて,モンゴル国では日 本とは違い安全性の不十分な電源を使用して いた.事前準備ではモンゴル高専の学生に制作 手順を説明するのに日本語だけでなく英語の 使用や写真を多用した.このことから日本とモ ンゴル国では言語の違いだけではなく,文化の 違いもあることを体験した. この1年間の取り組みで体験したことは言 語だけではなく異文化を理解した上で協調し て作業を進めることである. お問い合わせ先 氏名:大野淳之介 E-mail:[email protected] H-21 サレジオ高専とモンゴル高専との連携による 水耕栽培遠隔監視システムの研究 (サレジオ高専電気工学科 1,一般教育科2,モンゴル高専 3) ○上脇優人 1・大野淳之介1・有福修1・オユンエレデネ 3・伊藤光雅 2 キーワード:水耕栽培,遠隔監視システム,Ardiuno,XBee,共同研究 1.はじめに モンゴルでは,年間を通じて安定的に野菜を 育てる事が困難である.そのため安定的に育て る手法として水耕栽培に着目した. そこで本研究では,モンゴル高専との学生共 同の取組みにて XBee を利用することで,温湿 度センサ及びカラーセンサを用いた計測・管理 を遠隔操作可能な装置を製作した. 本稿では,水耕栽培遠隔監視システムでの計 測結果とモンゴル高専との共同研究について 報告する. 2.監視システムの概要 本システムは,栽培者が温度・湿度・LED の 色を遠隔で管理するためのシステムである. 計測部は,Ardiuno を用いて製作した.セン サは,温湿度センサ及びカラーセンサを用いた. そのため,野菜づくりに欠かせない適切な環境 及び LED の色を知ることができる.また,パソ コンからの遠隔管理を実現するために観測部 に XBee を取り付けている Ardiuno に XBee を直 接取り付けるため,Ardiuno 用の XBee シール ドを用いた.また,本システムは Ardiuno で計 測したデータをクラウドに保存するシステム にした.これにより,計測データを逐次パソコ ン上に保存できる.そのため,現在の栽培状況 と過去の栽培状況を比較できる. 制御部は,Processing を用いて製作し,視覚 的に操作しやすいシステムにした.また,水耕 栽培機の制御はトグルスイッチを利用するこ とにより 2 つの制御ができる.1 つ目は可変抵 抗を回すことにより LED の色を制御する.2 つ 目は,パソコンで画面を視覚的に操作し制御す る.これにより,遠隔操作だけでなく手動操作 も行える. 3.計測結果 本システムでの計測結果を以下に示す. 表1 計測結果 赤* 253 253 253 252 253 緑* 0 0 0 0 0 青* 0 0 0 0 0 *単位表記は Number 湿度[%] 34 34 34 34 34 温度[℃] 22 22 22 22 22 計測は,10 秒に一回行い XBee にてデータ をパソコンに送信している. 計測結果から野菜の栽培は一定の温湿度下 の中,行われていることが分かる.また,LED の色は赤一色で実験している. 4.モンゴル高専との共同研究 2015 年 8 月 31 日から 2015 年 9 月 4 日までモ ンゴルに滞在し,水耕栽培に関するデモンストレ ーションをモンゴル高専の学生と教員へ実施した. また,2016 年 1 月 14 日にサレジオ高専にてモン ゴル高専の学生と共同で水耕栽培装置を製作し た.モンゴル高専の学生は,本装置をモンゴル国 に持ち帰り,モンゴル国の環境下で実験する予定 である.これによりモンゴル国にて本水耕栽培機 で安定的に野菜を栽培できるかの検証を行う. 本取り組みは,サレジオ高専生とモンゴル高専 生との共同研究により将来エンジニアとして求め られるチームワークの習得や異文化適応能力の 育成を目指している. 5.考察 システム構築後の課題は,監視システムと水補 充の自動化である. 本装置では,野菜の栽培状況を映像で監視す るために CCD カメラを用いた監視システムの構築 を検討する. また,野菜の栄養源である水は手作業で補充 している.そのため,水の補充も自動化を検討す る.これにより,発芽してからの自動化が可能とな るであろう. 6.結論 本研究における計測結果から,野菜は安定し た環境下で栽培可能であることが明らかとなった. また,モンゴル高専との共同研究では多様性を理 解して異文化適応能力を付ける契機となった. 今後は,水の補充の自動化及び CCD カメラに よる植物の遠隔監視システムの検討を行う.また, モンゴル国での実験で得られた結果から PDCA サイクルを意識して継続的な改善を進める. お問い合わせ先 氏名:上脇優人 E-mail:[email protected] H-22 液晶・誘電体多層構造によるミリ波帯偏向素子の設計 (秋田高専専攻科生産システム工学専攻 1,秋田高専電気情報工学科2) ○手塚大貴 1・田中将樹2 キーワード:ミリ波偏向,多層構造,等価誘電率 1.はじめに ミリ波を使った車載レーダーでは物体などを検知する 際にはミリ波を走査させる必要がある。走査機構として 一般的な機械的走査では、コストやスペース等の問題が あるため、電気的に走査する技術が望まれる。本研究で は、ミリ波を電気的に偏向させる素子の作製を目的とし て液晶・誘電体多層構造を提案し、ミリ波の偏向素子の 設計を試みた。 参考文献 [1] R.E.COLLIN : "A simple Artificial Anisotropic Dielectric Medium", IRE Transaction on Microwave Theory and Techniques,Vol.6,No.2,pp.206-209(2008). 2.研究内容 本研究で提案した液晶・誘電体多層構造モデルの一例 を Fig.1 に示す。このモデルでは液晶層の厚さを 0.2mm 一定とし、誘電体層の厚さを 4 周期ごとに変化させるこ とで、液晶の占有率 f を 0.5 ~ 0.25 と変化させている。 誘電率が積層方向に周期的な変化を持つ構造は、有効媒 質理論(EMT)より等価誘電率をもった一様な媒質に近似 できる。占有率 f を段階的に変化して各占有率における 等価誘電率に勾配を与えることにより、本構造を通過す るミリ波が偏向することになる。そこで多層構造のモデ ルに対するミリ波の偏向角度を EMT を使って算出し、 偏向素子の設計を行った。 3.有効媒質理論(EMT)による数値計算結果 Fig.1 で提案したモデルに対して EMT を用いて偏向角 度の計算を行った。等価誘電率の計算は TM 波における 2 次近似式を用いた[1]。それぞれの占有率をブロックと して等価誘電率を計算し、そのブロックの中心の光路長 を代表として光路差を求め、ブロック中心間の幅から偏 向角度を算出した。計算結果の一例を Fig.2 に示す。試 料の長さ d は 20mm とし、誘電体の比誘電率d を変化さ せた場合における偏向角度を周波数 50GHz、70GHz、 79GHz、90GHz のミリ波について計算した。偏向角度は ミリ波が通過する面積が異なることを考慮して 2 つのブ ロックごとの面積比で重みをつけて計算した。また、液 晶の比誘電率は、誘電異方性を考慮してLC = 2.5 および 3.0 と仮定してそれぞれ計算し、その差を Fig.2 に示す偏 向角度差としている。Fig.2 よりミリ波の周波数が高いほ ど大きな偏向角度が得られることが確認できるが、d = 3 の場合では、周波数による偏向角度差の違いは見られな かった。また、いずれの周波数においてもd = 4 の場合の 偏向角度差が最大となっており、90GHz のミリ波では約 4.8°となった。 謝辞 本研究の一部は JSPS 科研費 26390107 の助成を 受けて行われた。 Fig.1 液晶・誘電体多層構造のモデル Fig.2 計算結果 お問い合わせ先 氏名:田中将樹 E-mail:[email protected] H-23 無線通信の電波による位置推定 (和歌山高専知能機械工学科) ○古谷翔太郎,村山暢 キーワード:無線通信,電波強度,RSSI 値,位置推定 2.距離推定手法 電波強度𝑃𝑅 [mW]の理論式は以下である. 𝑃R = ( 𝜆 4𝜋𝑑 )2 𝐺𝑅 𝐺𝑇 𝑃𝑇 (1) ここで,λ[m]は電波の波長,d[m]は通信距離, 𝐺𝑅 ,𝐺𝑇 は受信アンテナ,送信アンテナの利得 である.また,XBee で取得することができる RSSI 値𝑄𝑅 [dBm]は以下となる. 𝑄𝑅 = −10 log10 𝑃𝑅 (2) 以上 2 式より,波長 λ[m]と送信電力𝑃𝑟 [mW] の値を代入すると通信距離 d[m]を推定する以 下の式が得られる. 𝑄𝑅 −30.046 ) 20 𝑑 = 10( (3) 以上を考慮して,後述の位置推定実験のため に長さ 80m の廊下で予備実験を行った結果が 図1である. RSSI値[dBm] 75 70 65 60 55 50 45 40 35 30 25 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 距離[m] 50 55 60 65 70 75 80 にばらつきが大きいことが分かる. これらの結果を踏まえ本研究では,予備実験 時の測定値のばらつきを標準偏差として記録 しておき,RSSI 値の平均と標準偏差の両方を 利用して位置推定を行うこととした. 3.位置推定実験 予備実験と同じ廊下長さ 80m の両端に送信 アンテナを,線分上に目標の受信アンテナを 配置し,位置推定の実験を 5m 間隔おきにそ れぞれ 10 回行った.その結果を次の図 2 に 示す. 推定による位置[m] 1.緒言 通信インフラや GPS の整備に伴い,屋外で の徘徊老人の検出や迷子探しなどは,比較的容 易になってきた.しかし,屋内での位置推定や 徘徊検知は未だ一般的ではない.一方, Bluetooth や Wi-Fi,XBee といった無線通信 規格が近年,様々な機器に標準装備されている. これらの無線の電波強度によって位置が推定 できれば新たに位置センサを設置する必要性 が少ないと考えられる. 本研究では,無線通信の電波強度を用いて位 置推定を目的とする.電波強度の測定によって, 複数の通信体間の距離を推定し,対象通信体の 位置を推定する.移動体の移動履歴を利用して 位置推定の精度を向上させる. 80 75 70 65 60 55 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 実際の位置[m] 図 2.位置推定実験結果 結果より,0m~25m および 55m~80m での 位置推定は精度よく行われている.30m~50m 間の位置推定が安定しないのは送信アンテナ からの距離が遠いことに加えて,40m 地点は 先述通り,電波伝播が他の地点と異なることが 原因であると考えられる.また,位置推定履歴 をプログラムの実行画面に表示させた. 4.考察 位置推定精度を向上させるため,さらに位 置推定履歴を利用することが考えられる.各 地点において RSSI 値が得られる条件付き確 率を予め求めておき,全時刻の推定位置から 求められる現時点の位置の確率と観測された RSSI 値から推定位置の事後確率を計算す る.これを利用し位置推定精度の向上を検討 する. 図 1.RSSI 値と距離の関係 結果より,多くの測定値が理論値(3)の近く にあることがわかる.さらに,距離が遠いほど お問い合わせ先 測定値のばらつきが大きいことがわかる.また, 氏名:村山暢 40m の地点には別の廊下が繋がっており,特 E-mail:[email protected] H-24 無人航空機の自律飛行による 農業用フィールドセンサ情報の取得 (鶴岡高専専攻科機械電気システム工学専攻 1,鶴岡高専創造工学科2) ○須貝優磨 1・石黒康平1・金帝演2・宍戸道明2 キーワード:農業用フィールドセンサ,無人航空機,自律飛行,センサ情報モニタリング 1.まえがき 近年、農業従事者の少子高齢化が進んでおり、 次世代への技術の継承が困難となっている。こ の解決策として、農業における作業や生産性の 向上のために圃場の温度や日射量等の環境情 報の取得が重要である。従来の環境情報取得方 法の例として Ad-hoc 通信型やフィールドサー バ型[1]がある。しかしながら、Ad-hoc 通信型 は通信が不安定になりやすく、フィールドサー バ型は消費電力が大きい等の課題がある。 そこで本稿では、上記の問題を解決するため に無人航空機(以下 UAV : Unmanned Aerial Vehicle)を用いた農業用フィールドセンサ情 報取得システムの提案し、自律飛行によるセン サ情報取得の安定性の評価を行う。 2.提案システム 提案システムのイメージを図 1 に示す。本シ ステムでは UAV に無線通信コーディネータ ーを搭載し、GPS の位置情報を利用した自律 飛行により圃場に設置したセンサの上を通過 してデータを取得する。その後 BaseStation に戻り、無線 LAN 等によりサーバにデータを 送信する。 3.性能評価 実験方法を図 2 に示す。実験場所は鶴岡高専 グラウンドとし、A~D の各センサ(TWE-Lite DIP) の そ れ ぞ れ の 上 を 通 過 し 、 そ の 後 HomePoint に戻るように UAV (Phantom3)を 高さ 6m、速度 2.5m/s で自律飛行させ、これ を 5 回行う。同時に、UAV にコーディネータ ー(ToCoStick)を搭載し、通信間隔 1 秒で各 センサからのデータ取得を行う。 性能評価は、コーディネーターと各センサと の通信品質(LQI : Link Quality Indication) とデータ取得回数を評価項目として行う。 図 3 に UAV の自律飛行時における各センサ とコーディネーターとの平均 LQI を示す。評 価は、使用装置の仕様より、LQI が 50 以上で 安定した通信であるとする。各センサの LQI が 50 以上の通信回数は A~D でそれぞれ 13 回、14 回、14 回、19 回と十分な回数であり、 いずれも安定したデータ取得ができていると 判断できる。この結果より、本システムの実際 の圃場での運用可能性が得られた。 図 1 提案システムのイメージ 図 2 実験方法 図 3 コーディネーターと各センサとの LQI 4.まとめ 本稿では安定してフィールドセンサ情報を 取得するために、UAV の自律飛行によるセン サ情報の取得を行った。実験結果から、本シス テムの実際の圃場での実現可能性が得られた。 参考文献 [1] 深津時広,”農業分野におけるセンサネット ワーク技術の利用の課題”,電子情報通信学 会誌, Vol.97, No.8, pp.688-694, Aug. 2014. お問い合わせ先 氏名:須貝優磨 E-mail:[email protected] H-25 無線通信環境構築のための群ロボットの被覆制御 (和歌山高専知能機械工学科) ○中出裕也・村山暢 キーワード:群ロボット,被覆制御, 1.緒言 災害地,海上,山間部などの通信インフラが ない広大な環境では,携帯電話などの通信機器 や遠隔操作ロボットを使用するのが難しい.こ のような環境に対して,無線通信機能を持った ロボットが移動することによって通信インフ ラが確保され,対象エリアで通信機器が利用で きるようになると考えられる. 群ロボットのセンサ範囲によって対象エリ アを覆う,被覆制御という手法が提案されてお り,本研究の目的に対して有用であると考えら れる.しかし,これらの先行研究手法はセンサ の感知範囲で被覆することを目的としており, ロボットに搭載された通信機器の通信範囲を 考慮するものではない. 以上の背景より本研究では,被覆制御の先行 研究手法を拡張し,通信インフラが確保されな いエリアにアクセスポイントを持った群ロボ ットを配置する自律移動手法を提案する. 2.従来手法 本研究における被覆制御は,空間を各ロボッ トに最も近い点からなる領域(ボロノイ領域 Vi )に分割した時に,それぞれの領域が均等 になる状態を目指す.ロボット i が自身のロノ イ領域 Vi のボロノイ重心 gi に向かって移動す ることで,自律分散的に目標状態が達成される. 計算機シミュレーションによって個々のロ ボットに上記の手法で求められるボロノイ重 心 gi への移動を逐次的に行わせた結果,図 1 の初期状態から図 2 の状態へと収束していく ことを確認した.また,実際のロボットでも実 験を行い同様の結果を得ることができた. しかし,この手法では図 3 に示すような各ロ ボットの通信可能範囲を考慮しておらず,ロボ ット間のネットワークが非連結になる恐れが ある.次節ではこの問題点を解決する自律分散 制御手法を説明する. 3.通信範囲を考慮した被覆制御 本節では,各ロボットが通信可能距離を超え て移動しないよう,ボロノイ領域よりも範囲を 狭めた領域を利用する手法を提案する.具体的 には,通信可能半径の 1/2 の半径を持つロボッ ト i の位置 pi を中心とした円板 Di とボロノ イ領域 Vi の共通集合を求め,その共通集合の 図 1. 初期位置 図 2. 従来手法 図 4. 提案手法 図 3. 従来手法 (通信範囲描画) 図 5. 提案手法 (通信範囲描画) 重心へロボットを移動させる手法を考案した. この手法では,近傍ロボットの通信可能範囲か ら離れることなく互いに通信ができる状態を 維持したまま被覆制御を行うことができる. 計算機シミュレーションによって,各ロボッ トが自律分散的にロボット間の距離を通信可 能範囲内に保ちつつ被覆状態を目指すことを 確認した(図 4).また,通信可能範囲が被覆対 象領域に対して十分に大きい場合は,先行研究 の被覆制御と同様の結果を得ることを確認し た(図 5). 4.結言 従来手法の被覆制御に条件として通信可能 範囲を付け加えることで,互いの通信を保った ままエリアを覆うことができた. しかし,提案手法のシミュレーション結果の 状態(図 5)より,被覆範囲を拡大できる状態が 存在するように思われる.またロボットが途中 で通信切れや故障を伴った時,通信の連結が維 持できなくなる可能性が考えられる.以上 2 点の課題を解決する手法を考えることが今後 の課題となる. お問い合わせ先 氏名:村山暢 E-mail:[email protected] H-26 通信連結性を維持した 群ロボットのフォーメーション制御 (和歌山高専知能機械工学科) ○宮本和典・村山暢 キーワード:フォーメーション制御,通信距離,衝突回避 1.緒言 フォーメーションを形成した群ロボットを 移動させる場合,ロボット同士の衝突や障害物 への衝突を避けて目標地点に到着する機能が 必要とされる為,自律回避手法が提案されてい る[1].一方,ロボット間の情報交換には電波 による無線通信の利用が想定される.無線通信 には通信可能な距離に上限があり,通信を継続 出来る様にロボット間距離を維持する必要が ある. 以上のことから,本研究では通信距離とフォ ーメーションを維持した上で,障害物を回避し つつ目標地点に到達する制御手法を提案する. 2.制御手法 ・フォーメーション形成 ロボット𝑖にリーダーロボットの位置を基準 とした配置座標を追従させる事でフォーメー ションを形成する.フォーメーション制御速度 は配置座標𝑥𝐹(𝑡)と現在のロボット𝑖の座標𝑥𝑖 (𝑡) の差で与える. 𝒗𝐹𝑖 (𝑡) = 𝑘𝐹 (𝒙𝐹 (𝑡) − 𝒙𝑖 (𝑡)) ・障害物の回避 ロボット𝑖は半径𝑟𝑖 の円形ロボットと仮定し, 周囲の障害物を感知できるセンサを持つロボ ット𝑖を考える.障害物がセンサの範囲𝑑𝑎 内に 入った時,障害物から離れる方向への速度を与 える.障害物に近づく程,障害物から離れる方 向への速度が大きくなる様なポテンシャルを 設計し,その勾配を回避速度とする. 𝜕𝑈𝑖𝑜 (𝑡) −𝑘𝑜 𝒅𝑖𝑙 (𝑡) = ×( ) 𝑘 +1 𝑜 ‖𝒅𝑖𝑙 (𝑡)‖ 𝜕𝒅𝑖𝑙 (𝑡) ‖𝒅𝑖𝑙 (𝑡)‖ − 𝑟𝑖 ) ( 𝑑𝑎 − 𝑟𝑖 ・通信連結性の維持 ロボット𝑖と𝑗間の距離‖𝒅𝑖𝑗 ‖が任意の距離𝒅𝑐 を越えると,通信連結性を維持する為の速度を 与える.ロボット𝑖と𝑗の距離が通信距離の上限 𝑑𝑚𝑎𝑥 に近づく程,通信相手へ向かう方向への 速度が大きくなる様なポテンシャルを設計し, その勾配を通信維持速度とする. 𝒅𝑖𝑗 (𝑡) 𝜕𝑈𝑖 (𝑡) −𝑘𝑖 = ) 𝑘𝑖 +1 × ( 𝜕𝒅𝑖𝑗 (𝑡) ‖𝒅𝑖𝑗 (𝑡)‖ 𝑑𝑚𝑎𝑥 − ‖𝒅𝑖𝑗 (𝑡)‖ ( ) 𝑑𝑚𝑎𝑥 − 𝑑𝑐 以上のフォーメーション制御速度,回避速度, 通信維持速度の総和をロボット𝑖の目標速度と 設定する. 𝒗𝑑𝑖 (𝑡) = 𝒗𝐹𝑖 (𝑡) + ∑ 𝑗∈𝑁𝑖 𝜕𝑈𝑖 (𝑡) 𝜕𝑈𝑖𝑜 (𝑡) +∑ 𝜕𝒅𝑖𝑗 (𝑡) 𝜕𝒅𝑖𝑙 (𝑡) 𝑜 𝑙∈𝑁𝑖 急激な速度変化が起こらないように,実際には ロボット𝑖に次の速度制御入力𝒖𝑖 (𝑡)を与える. 𝒖𝑖 (𝑡) = 𝒗𝑖 (𝑡) + ∆𝑡 ∙ 𝑘𝑣 ∙ {𝒗𝑑𝑖 (𝑡) − 𝒗𝑖 (𝑡)} 3.実験 図 1 の様にロボットを3台配置し,障害物を 回避させながら移動する実験を行った.その結 果,障害物に衝突することなく,目標地点にた どり着いた.さらに移動している間,通信が可 能な距離を維持することができた.(図 2) 540 (max) ロボット間の距離(最大値) 130 障害物との距離(最小値) 300 (min) 0 時間[s](制御周期:0.15s) 図 1 実験の様子 図 2 ロボットからの距離 4.考察 設計パラメータ𝑘𝐹 ,𝑘𝑜 ,𝑘𝑖 ,𝑘𝑣 の数値によっ て,ポテンシャルが大きい場合は衝突しないが 動きが大きく振動し,小さい場合は振動が小さ くなるが,障害物への衝突や通信できない距離 になる可能性がある.そのため,より適した設 計パラメータの数値を見つける必要がある. 5.結言 通信距離とフォーメーションを維持した上 で,障害物を回避しつつ目標地点に到達する制 御手法を提案した.実験により,提案制御手法 が制御目標を達成していることを確認できた. 【参考文献】 [1] 宮崎 達也,鷹羽 浄嗣,“障害物回避を考 慮した移動ロボット群のフォーメーショ ン制御”,システム制御情報学会論文誌, Vol. 28,No. 2,pp. 50-57,2014. お問い合わせ先 氏名:村山暢 E-mail:[email protected] H-27 3D センサーを用いた動体の認識と追跡技法の 開発に関する研究 (熊本高専 人間情報システム工学科) ○奥村 亮祐 ・ 孫寧平 キーワード:3D センサー,LeapMotion,動体認識 1.まえがき コンピュータを用いて動体の認識・追跡を行 う技術の現状は,2D の画像情報に対してプロ グラム処理を行うという方法が一般的である. しかし近年は Kinect などが開発され,3D の 情報を扱う技術の必要性が年々高まっている. そこで手の情報取得に特化した 3D センサー である LeapMotion を利用して手の動きをジ ェスチャーとして認識・追跡するためのアルゴ リズムの開発を行い,それを通して 3D の情 報から動体の認識と追跡を行う方法の研究を 行った. 本研究では,まず「LeapMotion」による手 の動きデータを取得する方法について調査を 行い,手の各関節の位置,掌の回転角,手の重 心などの情報を取得する事が出来た.その後, 取得した3D 情報を図1のように視覚化し,こ れらの情報を一旦保存,比較することでジェ スチャーの認識を行う. 図 1 取得した情報の可視化 2.ポーズの認識 ある時点の手の状態(以下,ポーズとする) を保存し,それを現在の手の情報と比較して ポーズの認識を行う.比較の方法としては二 つの状態における指先と指の各関節の座標群 を空間としてユークリッド距離を求め,その 値が予め設定した閾値よりも小さい場合はそ のポーズを取っていると判定する.ユークリ ッド距離 d は(1)式によって求めることが出来 る. (1) なお,x,y にはそれぞれ同じ箇所の同じ座 標系の値を代入するものとする.この比較を一 定のタイミングだけでなく,複数のタイミング にまたがって同時に行うということによって ポーズの変化,つまりジェスチャーの認識が可 能になると考えられる. 前述では座標の比較だけを行ってポーズの 認識を行っていたが,実際に読み取る手の動 きには手の傾き,手全体の位置,特定の指の 形に大きな特徴を持った物がある.そういっ たものをより確実に認識するためには,より 多くの情報を判定に用いる必要がある.その 準備として LeapMotion から直接取得できる掌 の回転角,手の重心といった情報に加え,2 つの時刻における座標から算出できる速度, 手の重心を原点とした場合の指先・関節の座 標といった情報を算出し,それらをポーズ, ジェスチャーの判定材料として使えるように している. 3.今後の課題 ジェスチャーの認識について複数のポーズ を同時に判定することでジェスチャーの判定 を行うとしたが,このジェスチャーを行う速さ が時と場合によって様々であり,同じ動きでも 速さが違えば先程提示した方法では認識が出 来ないという問題がある.またポーズについて も LeapMotion に対する手の角度は誤差が出 やすく,掌の回転角を全て 0 に補正した各点の 座標の取得を行えるようにする必要がある. お問い合わせ先 氏名:孫寧平 E-mail:[email protected] H-28 囲碁棋譜自動作成システムの構築 (米子高専電気情報工学科) ○中山健太・浅倉邦彦 キーワード:囲碁棋譜,Processing,画像処理,リアルタイム 1.緒言 一般の囲碁の対局では記録係がいないため, 棋譜を残すには対局者自身が対局中に棋譜を 記録する必要があるが,自身および相手の対局 への集中を削ぐので好ましくない.これまでに 囲碁棋譜自動作成システムが構築された例 [1] があるが,着手の検知が手動という不便性があ る. そこで本研究では統合開発環境 Processing を用い,自動的に着手の検知・着手位置の推 定・碁石の判別をリアルタイムで行う囲碁棋譜 自動作成システムを構築する. 3.結言 本研究では,統合開発環境 Processing を用 い,リアルタイムで囲碁棋譜自動作成を行う システムを構築した.現段階では,盤上座標 (a) 着手前 (b) 着手後 図 2 着手前後のキャプチャ画像 1 黒からの距離 2.研究内容 図 1 に本システムのイメージ図を示す.図中 の Web カメラが 0.2 秒間隔で画像をキャプチャ し,そのキャプチャ画像を監視し続けることで, 定常状態から次の定常状態への移行を自動的 に検知できる.それを着手とみなし,着手位置 の推定処理へ移る. 図 2 に着手前後のキャプチャ画像を示す.ま ず,2 枚の画像について同一ピクセル座標の RGB 値の差分をとり,それがしきい値を超えた ピクセルを抽出する.次に抽出された領域を近 似円で表現し,その円内部に含まれる唯一の盤 上座標を特定することで着手位置を推定でき る. 続いて碁石の識別方法について述べる.ここ では,碁石の中心座標から半径 R の円内部の各 ピクセルカラーの黒からのユークリッド距離 の平均を黒白間距離で規格化した値により,碁 石の黒白識別を行うこととする.検証結果を図 3 に示す.黒石と白石,それぞれ盤上の 3 か所 について検証を行った.碁石の半径である 11[px]以下では,黒石,白石ともにそれぞれ 0.23 以下,0.90 以上の値を安定的に示すこと から,黒白判定のしきい値は単純に 0.5 とし, また半径 R は碁石半径の半分程度とすれば十 分正しい識別が行えることを確認した. 以上の手順により棋譜情報が取得でき,それ をもとに棋譜の自動作成を行うが,自動作成さ れた棋譜は当日示す. 図 1 システムのイメージ図 0.8 白石 0.6 0.4 0.2 黒石 碁石の半径 0 0 5 10 15 碁石の中心座標からの半径R[px] 20 図 3 碁盤画像の碁石の黒からの距離 と画像座標の対応付けが手動であり,自動化が 今後の課題である. 文 献 [1] 芝浩二郎, 古屋保, 西省吾, 森邦彦,画像処理によ る囲碁棋譜自動生成システム,電気学会論文誌 C, vol.126, no.6, pp.980-988, 2006. お問い合わせ先 氏名:浅倉邦彦 E-mail:[email protected] H-29 輝度解析に基づいたデッサン風絵描き技法の開発 (熊本高専 人間情報システム工学科) ○片岡千知 ・ 孫寧平 キーワード:画像処理,輝度解析,デッサン 1. はじめに 広告物などのデザイン物にデザイナの趣向 を凝らすには手間と時間がかかる.そのため, 今日ではデザインに関する画像処理のツール やアプリケーションが多く存在している.この 中で,絵画の基本となる「デッサン」に着目し たところ,再現性の高いツールが少ないことが 分かった.そこで,本研究では輝度解析を用い て「デッサン」をより簡単に再現し,新しい画 像処理の画風として提案することを目的とす る. 2. アルゴリズムの概要 デッサンとは物体の形体,明暗などで平面に 描画する美術の作品,またはその技法を指す. 主にペンや鉛筆,木炭などで描かれ,モノクロ が基本であり,陰影を濃淡で表すため,二次元 の画像を三次元的に見せる効果がある 本研究では,画像をデッサン風に仕上げるた めに,輝度解析を基づいたアルゴリズムを考案 した. 明度の赤,緑,青成分にそれぞれ重み付け をしてもとめた輝度をいくつかのグループに 分ける.この時,等分割して得たグループで は人の目に見える色の変化量が等しくならな い.よって,以下のような式を用いる. アルゴリズムとしては,まず,画像をモノクロに 加工し,輝度のグループ化を行う.次に,ピ クセルごとに輝度を取り出し,グループに当 てはめていく.その後,同じグループの点ま で線を描画する.これを線の角度とグループ の範囲を変えて繰り返すことにより,線を重 ね鉛筆の流れを再現する. 3.アルゴリズムの検証 現段階では,輝度解析を用いてグループ化を 行い,そのグループに当てはめて線を引くこ とでデッサンを表現している.前述のアルゴ リズムの検証を行った.図2の元画像を考案 したアルゴリズムで処理した結果を図3に示 す.細かいところを見ると全てが線で描かれ ていることが確認できた. 今後はより人の描くデッサンに近づける方法を 模索し,開発と検証などを行う. 図2 元画像 ここで, は表現する最低の輝度を表し, は グループの数を指す. の場合をグラフに 表したものが図 1 となる. 図3 実行結果 図1 輝度解析を表したグラフ お問い合わせ先 氏名:孫寧平 E-mail:[email protected] H-30 球技フォーメーションシミュレータにおける データ入力手法の改善 (仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻 1, 仙台高専機械システム工学科 2) ○菊地 凛 1・北島 宏之 2 キーワード:フォーメーションシミュレータ,Kinect,データ入力 1. 背景 球技における選手のフォーメーションは一般 に矢印を用いた図によって表現されるが,選手の 動きの直感的理解が困難であることが多く,フォ ーメーションの検索や管理も容易とは言えない. そのため,所属する研究室の先行研究において 球技フォーメーションシミュレータが開発され てきた.しかし,フォーメーションの入力作業が 容易ではないという問題点があったことから,本 研究では外部デバイスとして Kinect を用いたシ ミュレータに対するデータ入力システムを提案 し,本報告では選手のすれ違い時におけるデータ 入力手法の改善について検討する. 2. Kinect によるデータ入力 これまでの研究において,Kinect の骨格追跡 機能を用いて選手の位置情報を取得するプログ ラムの実装を進めている.ここで,2 人の選手が すれ違った際に,背後側を通過する選手の骨格情 報を取得できなくなる問題が考えられる.あるい は,選手が一時的に動きを止めることで Kinect は背後側の選手の骨格情報を再認識し位置情報 を取得することができるが,再認識した選手は別 の選手として認識されることが考えられる.また, 位置情報も別の選手として取得される可能性が ある.今回はこの問題を確認するために,複数の すれ違い状況についてデータ取得実験を行った. 3. 実験 実験ではすれ違いの際に被験者(選手)の前後 を入れ替えた 8 パターンについて,それぞれ 5 回ずつ情報を取得し確認を行った.図 1 はそのう ちの一つであり,縦軸が Kinect から見た奥行き 方向,横軸が水平方向を表している.情報の取得 方法に際して,すれ違い時に Kinect が骨格情報 を取得できなくなった時点で被験者に一時停止 を指示し,Kinect がもう一度骨格を認識した時 点で移動を支持した. 図 2 に実験で取得した被験者の位置情報を示 す.実験の結果より,Kinect が骨格情報を再認 識した場合は,新たな別の選手として認識される ことが分かった.また,取得した位置情報につい ても新たな被験者の位置情報として取得される ことが確認できた.従って,このような位置情報 を同一選手であると判断するためのアルゴリズ ムを考案する必要がある.この際,すれ違い以前 の位置情報とすれ違い以降の選手の位置情報を 関連付けるためには,すれ違い前の位置情報から すれ違い後の位置を予測する必要がある. 図 1 選手のすれ違い移動パターン 図 2 取得した被験者の位置情報 他方,すれ違いが起きた前後の位置情報につい ては,誤差の大きい情報もあることが確認できた. 従って,選手の位置情報を正確に予測するために は,位置情報の中から誤差の大きいデータを取り 除く必要がある. 4. まとめ 本報告では実験の結果から選手のすれ違い時 に取得される位置情報とその問題点について確 認した.現在,問題解決のためのアルゴリズムの 実装を進めており.結果については発表にて報告 できる予定である. お問い合わせ先 氏名:北島宏之 E-mail:[email protected] H-31 Ocblock を用いた voxelization の実用化に関する研究 (熊本高専 人間情報システム工学科) ○酒井雄野 ・ 孫寧平 キーワード:ボクセル化,3DCG,3D プリンタ 1.まえがき 3.Ocblock デザインの改良 昨今,新たなモデリング手法として,小 前述の方法を用いてモデルのボクセル化 さな立方体で内部を満たし,表現する を施し, 3D プリンタで検証を行こうとした. voxelization(ボクセル化)という手法の研 しかし,図2のように 2 次再帰以上の再帰 究が進んでいる.当研究室では,現実世界 的描画を行うと,角と角が重なってしまい, のように細胞の組み合わせによってモデル 3D プリンタで印刷することはできないとい を描画する方法を考え,その細胞として再 った問題が発生した. 帰的な規則に従って自己相似形状に成長し ていくことが可能なフラクタルモデルを用 いる研究を以前から行っている.しかし, 先行研究ではモデリングを行うだけに留ま っており,実用化には至っていない.そこ で本研究ではこのモデリング手法を実用化 する第一歩として 3D プリンタで印刷でき る形式にする手法を開発,検証する. 2.Ocblock の概要 本研究では,2次元シェルピンスキー曲 線を3次元へ展開させるとの発想で,図1 に示すようなボクセルパターンを提案し た.この2つの基本図形は再帰構造を用い た立体が八方向へ拡張できるため, Ocblock と命名した. (a) Ocblock1 (b) Ocblockc 図 1 基本ボクセルパターン 中央に位置する Ocblockc の描画後に再 帰を用いて Ocblock1 を呼び出す.この際描 画座標の平行移動を行う.その後,平行移 動した Ocblock1 と中央の Ocblockc の角の 面(三角形)をマッチさせるため,平行移 動した Ocblock1 の各角を軸にして,描画座 標を 60°回転させてオブジェクトを呼び 出す.この処理を 8 つの角全てに行う.そ して再びこのパターンが再帰処理により フラクタルな性質を保持したまま発展し ていく. Ocblock を用いてモデルのボクセル化を 行った結果,内部充填ができた.また,ボ クセルの回転がもたらした斜面での光の 反射効果は他の手法と比べてよかった. 図 2 改良前の Ocblock そのため,角の長さや ocblockc の大きさ を吟味し直し,Ocblock の基本パターンを 構成し直す必要がある.角の長さなどの各 構成要素の大きさを変えた Ocblock の基本 パターンを複数個用意し,内部充填率など の要素から検証した.Ocblock1 では角の側 面が正方形でないとの原因を突き止めた. 角の側面を正方形と過程するならば,モデ ルが破綻しない最大の角の側面の一辺の 長さと Ocblockc の側面の長さの比率は 8:5 であることが分かった.図3のよう なモデルの破綻がない基本パターンを構 成することができた.これを3D プリンタ で印刷できる形式に変換し,実際に 3D プ リンタにて検証を行い,今後モデルへの展 開を図る. 図3 改良後の Ocblock お問い合わせ先 氏名:孫寧平 E-mail:[email protected]