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基本講座 製本テキスト(サンプル)

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基本講座 製本テキスト(サンプル)
第
1
章
民法の基礎知識
年 度
07
賃貸人・賃借人の権利・義務
08
10
11
12
○
賃借権の譲渡・転貸
○
敷 金
その他
09
○
13
14
15
16
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
民法とは
第1章では、権利関係の学習の中心となる民法が、どのよ
うな法律なのかを知って欲しい。本章では、試験で直接出
題される項目はほとんど登場しない。しかし、これから民
法を学習していくうえで欠かせない基礎的知識や大原則の
説明もあるので、飛ばさないこと。特に、初めて民法を学
習する人は必ず学習して欲しい。
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|第
1節
民法とは
民法は、人と人の間の権利・義務を規律する法律である。
↓ では、
? 問題
↓
権利・義務を規律するとは何を意味するのだろうか。
先取り
たとえばBがコンビニAでおにぎりを買うと(売買契約を結
*₁▶民法には様々
ぶと)
、売主となったAと買主となったBには、民法に基づい
な契約が規定されて
おり、契約当事者に
て下図のような権利と義務が発生する*1。
発生する権利・義務
の内容は、契約の種
(コンビニ) A
類によって異なる。
おにぎりを渡す
義務代金を支払え
という権利
法律用語
*₂▶「○ ○ と い う
条件を満たしたら」
の部分を「要件」と
呼 び、
「× × と いう
権 利・義 務 が 発 生
(消 滅)す る」の 部
売買契約
代金を支払う義務
おにぎりを渡せ
という権利
↓ つまり、
!
結論
民法には「○○という条件を満たしたら××という
権利・義務が発生(消滅)する」といったことがびっしり規定
分を「効果」と呼ぶ。 されている、ということを意味する
|第
2節
B
*2
。
契約について
1 契約の成立
権利・義務は、契約によって発生するのが民法の世界の大原
法律用語
*₁▶ A の「売 り ま
す」、ある い は Bの
「買います」のように、
自分の意思を表すこ
とを「意思表示」と
則。
↓ では、
? 問題
どうすれば契約を成立させることができるか。
↓ この点、
売買契約であれば、Aの「売ります」という意思と、Bの
「買います」という意思が一致すれば、契約が成立する*1。
呼ぶ。
2
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第 編 権利 関係
1
①売ります
A
③売買契約
B
②買います
↓
結論
契約は、意思表示が一致すれば成立する*2。
↓ したがって、
契約書の作成は原則として不要であり、口約束でも契約は成
立する。
法律用語
*₂▶契約のように、
意思表示によって成
立する行為を「法律
行為」と呼ぶ。問題
2 契約に関する大原則
契約には、2つの大事な原則がある。民法を学習していくう
えで、非常に大切なので、最初に頭に入れておこう。
① 誰とどのような契約をするかは、契約をする当事者の自
由である*3。
② いったん契約したら、守らなければならない*4。
↓ したがって、
理由もなく、一方的に契約を破棄(=解除)することは
許されない。
文 中、
「法 律 行 為」
第 章 民法の基礎知識
!
つまり、
1
という言葉が登場し
たら、法律行為=契
約と考えれば良い。
法律用語
*₃▶「契 約 自 由 の
原則」と呼ばれる。
先取り
*₄▶契約を守らな
かった者は、責任を
追及される(債務不
履 行責 任)
。債 務不
履行については、第
11 章で学習する。
3
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第
2
章
意思表示
年 度
07
08
09
10
詐 欺
12
13
14
15
16
○
強 迫
○
○
虚偽表示
○
○
心裡留保
○
錯 誤
11
○
○
○
○
○
○
○
意思表示
第1章で学習したとおり、民法の世界では、いったん契約を結ぶ
と守らなければならないのが大原則だ。しかし、この原則にも例
外がある。だまされて契約した場合や脅されて契約した場合だ。
そういった例外を 5 つ学習する。多くの受験生が得意にしてい
る分野なので、出題されると正答率も高い。したがって、宅建試
験に合格するためには、まず手始めに攻略したい分野だ。
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|第
1節
詐 欺
1 詐欺による契約
補足説明
*₁▶「意 思 表 示 を
取り消せる」という
? 問題
だまされて意思表示をした(=契約を締結した)A
は、契約を守らなければならないのだろうか。
こ とは、「契 約 を取
だまされた
り消せる」というこ
とと同じである。契
だました
A
約は、意思表示が一
B
売買契約
致することで成立す
土地
るので、意思表示を
取り消せば、契約も
なかったことになる
からである。
法律用語
*₁▶「第三者」とは、
当事者以外の人を意
味する。
!
結論
詐 欺 に よ る 意 思 表 示 は、取 り 消 す こ と が で き る
(96 条1項)*1。
2 第三者との関係*1
? 問題
だまし取った土地をBがCに売却した場合、Bとの
契約を取り消したAは、Cから土地を取り戻せるか。
だまされた
だました
①売買契約
A
③取消
主張?
法律用語
「対抗」と表現する。
土地
②売買契約
※2
*₂▶法律の世界で
は、主張することを
B
C
↓ この点民法は、
Cが詐欺の事実を知っていた場合は、Aは取消しをCに対抗
できる(=土地を取り戻せる)とし、
Cが詐欺の事実を知らなかった場合は、Aは取消しをCに対
抗できない(=土地を取り戻せない)とする。
6
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!
つまり、
詐欺による取消しは、悪意の第三者に対抗できるが、
結論
*3*4
善意の第三者に対抗できない(96 条3項)
。
法律用語
1
*₃▶「悪意」とは、
ある事実を知ってい
ることを意味する。
3 第三者による詐欺
? 問題
法律用語
第三者CがAをだました場合、AはBとの契約を取
A
*₄▶「善意」とは、
ある事実を知らない
ことを意味する。
②売買契約
補足説明
B
2
*₁▶だまされたA
は、何としても契約
を取り消したいとこ
①Cによる詐欺
第 章 意思表示
り消すことができるか*1。
だまされた
第 編 権利 関係
↓
ろだが、相手方のB
は何も悪いことをし
だました
!
結論
ていないので問題と
C
なる。
第三者による詐欺は、相手方が悪意の場合にのみ取
り消せる(=相手方が善意なら取り消せない・96 条2項)
|第
強 迫
2節
1 強迫による契約
? 問題
脅されて意思表示をしたAは、契約を守らなければ
ならないのだろうか。
脅された
A
脅した
売買契約
B
土地
!
結論
強 迫 に よ る 意 思 表 示 は、取 り 消 す こ と が で き る
7
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(96 条1項)
。
2 第三者との関係
? 問題
Bが脅し取った土地を善意のCに売却した場合、A
はCに取消しを対抗できるか。
脅された
脅した
①売買契約
A
③取消
補足説明
結論
土地
②売買契約
対抗?
!
B
C
(善意)
強迫による取消しは、善意の第三者にも対抗できる
*1
(96 条3項反対解釈)
。
*₁▶詐 欺 の 場 合、
だまされた人にも多
少の落ち度がある
ケースが多い。一方、
強迫の場合、脅され
た人には落ち度がな
3 第三者による強迫
? 問題
第三者CがAを脅した場合、AはBとの契約を取り
消すことができるか。
いことが多い。そこ
で民法は、だまされ
た人よりも脅された
脅された
人をより手厚く守る
A
②売買契約
B
①Cによる詐欺
ため、このような差
異を設けたのである。
脅した
!
結論
C
第三者による強迫は、相手方の善意・悪意を問わず
常に取り消すことができる(96 条2項反対解釈)
8
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第 編 権利 関係
|第
虚偽表示
3節
1
1 虚偽表示とは
契約当事者がグルになって(通謀して)ニセの契約を結ぶこ
とである。通謀虚偽表示とも呼ばれる*1。
売買契約
*₁▶問題文中では、
AB間のニセの売買
B
契約を「仮装売買」
土地
と か、
「仮 装 譲 渡」
と呼ぶことが多い。
第 章 意思表示
A
ニセの
法律用語
2
2 効 果
虚偽表示による契約は無効となる(94 条1項)
。
One Point
無効と取消しはどう違うのだろうか。無効とは、最初か
ら契約の効力が生じないことをいう。
A
B
一方、取消しは、取り消されるまで契約は一応有効だが、
取消しによって最初から契約は無かったことになるもので
ある。
A
A
一応有効
取消し
B
B
9
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3 第三者との関係
? 問題
BがAから取得した土地を善意のCに売却した場合、
AはCに無効を対抗できるか。
①ニセの売買契約
A
③無効
対抗?
!
余力があれば
*₁▶第三者Cが善
意の場合、A以外の
者(ex. Aの土地を
差し押さえようとし
ていた銀行)が、無
結論
B
土地
②売買契約
C
(善意)
虚偽表示による無効は、善意の第三者に対抗できな
*1
い(94 条2項)
。
→→ たとえ第三者に過失があっても無効を対抗できない(大
判昭 12.8.10)*2。
→→ たとえ第三者が登記を備えていなくても無効を対抗でき
ない(最判昭 44.5.27)*3。
効を対抗することも
できない。
法律用語
*₂▶「過失」とは、
不注意のこと。過失
がないことを「無過
失」という。
法律用語
*₃▶「登記」とは、
不動産登記簿という
4 第三者の意味
? 問題
善意だと無効を対抗できなくなる「第三者」とは、
どのような人を意味するのだろうか。
↓ この点判例は、
虚偽表示における「第三者」とは、当事者以外の者で、虚偽
表示が有効であることを前提に、新たな利害関係を有するに
至った者を意味するとするが、宅建試験対策としては、次の2
つの具体例を知っておけば十分だ。
帳簿の上で、名義の
書換えをすること。
たとえば、Aから土
地を買ったBは、土
地の名義をAからB
に書き換える。
10
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る(大判昭 12.2.9) 。
*1
余力があれば
*₁▶ 判 例 は、不 動
産の仮装譲受人から
①虚偽表示による
A
売買
抵当権の設定を受け
B
土地
債権
17)や、仮装債権の
9)も「第 三 者」に
該当するとしている。
補足説明
2
*₂▶仮装譲受人の
単なる債権者は、差
押えを行っておらず、
①虚偽表示による
売買
第 章 意思表示
C (善意)
② 仮装譲受人の単なる債権者は、第三者にあたらない*2*3。
A
1
譲受人
(大判昭 6.6.
②差押
×対抗
た者(大判大 4.12.
第 編 権利 関係
① 虚偽表示の目的物を差押えた差押債権者は、第三者にあた
仮装売買された土地
B
土地
に 対 し て「利 害 関
係」があるとはいえ
ない。
債権
余力があれば
○対抗
C(善意)
*₃▶ 判 例 は、債 権
が仮装譲渡された場
合の債務者(大判昭
8.6.16)は、
「第 三
5 転得者との関係
? 問題
者」に該当しないと
している。
第三者Cが、さらに土地を善意のDに売却していた
場合、AはDに無効を対抗できるか。
(悪意)
A
①虚偽表示に
よる売買契約
B
④無効
②売買
C
③売買
対抗?
土地
D(善意)
11
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!
補足説明
*₄▶転得者も当事
結論
虚偽表示による無効を、善意の転得者に対抗するこ
*4
とはできない(最判昭 45.7.24)
。
者以外の者である以
上、「第 三 者」に 含
まれるからである。
|第
4節
心裡留保
1 心裡留保とは
ウソや冗談による意思表示から契約が成立してしまった場合
法律用語
である*1。
*₁▶問題文中では、
①
(冗談で)売ります
「真意と異なる意思
表示」といった表現
で登場することが多
A
い。
③売買契約
B
②買います
2 効 果
補足説明
*₂▶心裡留保によ
る意思表示を信じた
相手方を保護するた
めである。
法律用語
*₃▶「表意者」とは、
意思表示をした者の
こと。この場合は、
心裡留保による意思
? 問題
Aは、心裡留保により成立した契約を守らなければ
ならないか。
↓ この点、
原則
心裡留保による意思表示は、原則として有効となる
*2
(93 条本文)
。
↓ ただし、
例外
相手方が表意者の真意を知っている場合(=悪意)
、
または知ることができた場合(=過失がある)は無効となる
(93 条但書)*3。
表示を行ったAを指
す。
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