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三重苦を抱える不振企業を復活させる

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三重苦を抱える不振企業を復活させる
第
章
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三重苦を抱える不振企業を復活させる
本章では、企業変革、つまり、ターンアラウンドとはど
う い う 性 質 の 課 題 を 対 象 と す る の か、 ど う い う 「 生 き 物 」
なのかを理解し、それから見えてくるもの、すなわち、企
業変革、ターンアラウンドを成功裏に進めるうえで求めら
れる「要件」を解説していきたいと思う。
9 第1章 三重苦を抱える不振企業を復活させる
つのターンアラウンド
社のターンアラウンド、A社とB社では事業内容、収益構造
ベンチャー企業・伝統的大企業の
これまでに私がリードした
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がオーナーとなったのち、残った
つの事業、すなわち、製薬事業、菓子・食品事業、それ
さらには粉飾決算などのコンプライアンス問題も発生し、産業再生機構という国の管理組織
本一の規模を誇っていた。しかしながら、身の丈を越えた過度な多角化と経営改革の遅れ、
で、日本経済の成長にあわせて様々な事業分野へと業容が拡大し、一時期輸出企業として日
もう一つのターンアラウンド対象B社は、明治初期に創業した紡績業を母体とする製造業
を成功させることが求められた。
した中、創業時からの事業であったIT関連出版事業に特化し、その中でターンアラウンド
の分野でまったく競争力が無く、赤字であるばかりか、中核事業自体も赤字であった。こう
誌、書籍の出版業であった。当時、出版業以外にも、いくつかの事業があったが、それぞれ
最初の事例A社は、かつて著名なIT関係のベンチャー企業で、中核事業はIT関連の雑
も差し支えない。
のみならず、歴史や企業文化などソフト的な側面も大きく異なり、ほぼ対極にあると言って
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からコスメ・トイレタリー事業を、日本の投資ファンド
れた。
社の傘下で変革することが求めら
以 上 の よ う に、A社 は、﹁ 単 一 事 業 ﹂
、﹁IT関 連 出 版 業 ﹂、﹁ベ ン チ ャ ー 的 ﹂ で、B社 は
つの異なる事業﹂
、﹁製造業﹂
、﹁伝統的な大企業的﹂というように、まったく異なるプロ
社のターンアラウンドを手掛けた。事業面での共通性は、偶然ではある
し、実際の適用方法や動かし方は対象企業によって大きく変えることが極めて大切であるこ
変革のリーダーとなるターンアラウンド・マネジャの役割は普遍的なものであること、ただ
身で感じることができた。その結果、﹁素材﹂としての企業は異なるが、変革の方法論や、
このようにまったく異なる分野の企業を手掛けたため、何が共通で何が異なったのかを肌
が、両社とも消費財を中心にした企業であったことぐらいだ。
ファイルを持った
﹁
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年間経過した後の業績を見てみると、
ターンアラウンドは単なるコスト削減活動ではない
とを学んだ。
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A社、B社ともに、ターンアラウンドに着手して
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11 第1章 三重苦を抱える不振企業を復活させる
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年間でほとんど変わらなかった。一方、
%という惨憺たる状
%も改善したのだ。
%弱に改善した。営業利益が
倍
年間で売上高の水準は多少下がったが、それはあまり変化がな
事例に限らず、世の多くのターンアラウンド事例おいて、P / L上の業績面での
ラウンドはコストを下げること﹂
、すなわち、
﹁コスト削減活動﹂と狭く認識してしまいがち
なことである。私が手掛けた、両社のケースともいわゆるリストラは行っていないのだが、
コスト削減が収益改善の源泉となっていることからすれば、私のようにターンアラウンドを
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売上高は不変、あるいは、微減で、営業利益︵マネジメントが追いかける管理上の営業利益︶
が大きく改善した結果となった。
具体的には、A社の中核事業における売上高は
%強の黒字に転換した。利益率が
利益面では、ターンアラウンドする前は売上高営業利益率でマイナス
年後にはプラス
年後には
年間で数パーセント減ったが、ターンアラウンドの前
%であった売上高営業利益率が、
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況であったのが
・
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成果としては、
﹁コスト削減による収益改善﹂が通常である。問題はこれを見て、﹁ターンア
この
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社における改善内容を財務的にみると、コストが下がったことが利益改善をもたら
したということがわかる。
この
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一方、B社においては、売上高は
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いのでコスト側の低減が収益改善の源泉となったのだ。
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には
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強増加した計算になる。
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リードする人間は﹁コスト・カッター﹂と呼ばれてしまうのである。
ではコスト削減の鬼に徹することがターンアラウンド・マネジャにとって最も大事なこと
なのだろうか。ターンアラウンドとは﹁全社を巻き込んだコスト削減活動﹂のことを意味す
るのであろうか。答えは否である。もしそうであれば本稿を上梓することにならなかったで
13 第1章 三重苦を抱える不振企業を復活させる
あろう。ターンアラウンドはその意味の通り、企業における大転換、すなわち、企業変革活
動を意味する。結果として、コストが下がることで収益は改善するが、最も大切なのは、企
業体質をいかに健全なものへと変革していくかにある。財務的なコストの低下は結果の一部
であって、ターンアラウンド、すなわち、企業変革の全体像を示すものではない。
つまり、ターンアラウンドは﹁単なるコスト削減ではない、一大変革活動である﹂のだ。
ターンアラウンドに求められるもの
ターンアラウンドに取りかかるに当たり、まず最初に、対象となる企業の事業がいま現在
淘汰期にある事業に求められるもの
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どの事業ライフステージにあるのかを知る必要がある。これは、個別企業の固有の状況に関
わらず、企業が抱えている事業そのものの特徴に由来してどうしても理解しておかなければ
いけない基本原則のようなもので、戦略立案においても、また組織設計や人の動き方にも大
きな影響を与えるものである。そこでまず事業のライフステージ論について復習しておこ
う。
事業のライフステージ論とは、事業、ひいては産業においても、人の一生のように、胎動
期、成長期、成熟期、そして、淘汰期があるというものの見かたである。
経営の教科書などには最終ステージを淘汰期ではなく、衰退期と定義しているものが見ら
れる。しかし、事業や産業が衰退して実際に無くなってしまう、あるいは、事業としての魅
力もまったく無くなってしまうというより、参入している企業が淘汰され、やがて寡占構造
下で安定期を迎えるという意味で、 私は敢えて﹁淘汰期﹂ という表現を使っている。 この
フェーズにある事業は、やり方次第では﹁残り物には福がある﹂というように、極めて魅力
的な事業となる。この点からすると、日本にある既存の産業の多くが、この淘汰期フェーズ
にあると言っても差し支えない。
問題は、事業のライフステージによって〝競争のレバー〟、勝つためのポイントが変わっ
てくるということであり、これに追従できない企業は、進化する顧客への対応上、またます
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