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(57)【要約】 【課題】 皮膚や腸内の常在菌叢に影響を与えることなく、黄色

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(57)【要約】 【課題】 皮膚や腸内の常在菌叢に影響を与えることなく、黄色
JP 2005-139074 A 2005.6.2
(57)【 要 約 】
【課題】 皮膚や腸内の常在菌叢に影響を与えることなく、黄色ブドウ球菌に
よるエンテロトキシンの産生を有効に抑制し、アトピー性皮膚炎の増悪など、スーパー抗
原の関与するアレルギー性疾患の増悪防止又は症状緩和や、食中毒の予防に有用で、安定
性及び安全性に優れる黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤を得る。
【解決手段】 ウミブドウ抽出物を含有して成る、黄色ブドウ球菌エンテロトキシ
ン産生抑制剤。またさらにホップ,レンギョウ,シナレンギョウ,チョウセンレンギョウ
,トウキンセンカ,キンセンカ,スイカズラ,ウグイスカグラ,サルビア及びその変種,
クチナシ及びその同属植物,クマザサ,イラクサ,ミヤマイラクサ,ヒキオコシ,クロバ
ナヒキオコシより選択した1種又は2種以上の植物の抽出物を、ウミブドウ抽出物と併用
して担体又は基剤に含有させる。
【選択図】 なし
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウミブドウ抽出物を含有して成る、黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤。
【請求項2】
さ ら に 、 ホ ッ プ ( Humulus lupulus L.) , レ ン ギ ョ ウ ( Forsythia suspensa Vahl) , シ
ナ レ ン ギ ョ ウ ( Forsythia viridissima Lindl.) , チ ョ ウ セ ン レ ン ギ ョ ウ ( Forsythia ko
reana Nakai) , ト ウ キ ン セ ン カ ( Calendula officinalis L.) , キ ン セ ン カ ( Calendula
arvensis L.) , ス イ カ ズ ラ ( Lonicera japonica Thunb.) , ウ グ イ ス カ グ ラ ( Lonicera
gracilipes Miq. var.glabra Miq.) , サ ル ビ ア ( Salvia officinalis L.) 及 び そ の 変
種 , ク チ ナ シ ( Gardenia jasminoides Ellis) 及 び そ の 同 属 植 物 , ク マ ザ サ ( Sasa veitc
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hii Rehd.) , イ ラ ク サ ( Urtica thunbergiana Sieb. et Zucc.) , ミ ヤ マ イ ラ ク サ ( Lap
ortea macrostachya Ohwi) , ヒ キ オ コ シ ( Isodon japonicus Hara) , ク ロ バ ナ ヒ キ オ コ
シ ( Isodon trichocarpus Kudo) よ り 選 択 し た 1 種 又 は 2 種 以 上 の 植 物 の 抽 出 物 を 併 用 し
て成る、請求項1に記載の黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤を含有して成
る、アトピー性皮膚炎増悪防止又は緩和剤。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤を含有して成
る、食中毒予防剤。
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【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤を含有して成
る、食品添加物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本 発 明 は 、 皮 膚 や 腸 内 に お け る 細 菌 叢 に 影 響 を 与 え る こ と な く 、 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 ( Stap
hylococcus aureus) に よ る エ ン テ ロ ト キ シ ン 産 生 を 特 異 的 に 抑 制 す る こ と が で き 、 こ れ
らがスーパー抗原として関与するアレルギー性疾患の増悪防止又は軽減や、黄色ブドウ球
菌 ( Staphylococcus aureus) に よ る 食 中 毒 の 予 防 に 有 用 な 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 エ ン テ ロ ト キ
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シン産生抑制剤、並びにこれを含有して成るアトピー性皮膚炎増悪防止又は緩和剤、食中
毒予防剤、及び食品添加物に関する。
【背景技術】
【0002】
黄 色 ブ ド ウ 球 菌 ( Staphylococcus aureus) は 、 嘔 吐 を 伴 う 食 中 毒 や 各 種 膿 瘍 の 原 因 と
なるグラム陽性菌である。これにより産生されるエンテロトキシン(腸管毒)は食中毒の
原 因 と な る 他 、 エ ン テ ロ ト キ シ ン B や 毒 性 シ ョ ッ ク 症 候 群 毒 素 ( toxic shock syndrome t
oxin-1, T S S T -1) の よ う に ス ー パ ー 抗 原 と し て 、 ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 の 増 悪 な ど ア レ ル
ギー性疾患に関与するものが知られている。エンテロトキシンBはスーパー抗原として、
抗原提示細胞によるプロセッシングを受けることなく、抗原提示細胞上の主要組織適合遺
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伝 子 複 合 体 の ク ラ ス II分 子 と 、 T 細 胞 受 容 体 の V β 領 域 と に 直 接 結 合 す る 特 性 を 有 し 、 そ
のスーパー抗原と結合する特定のVβを表現するT細胞群を一気に活性化して大量のサイ
トカインの産生を促し、生体の免疫反応に顕著な影響を与えるものと考えられている。黄
色 ブ ド ウ 球 菌 の ス ー パ ー 抗 原 で あ る エ ン テ ロ ト キ シ ン B や T S S T -1は 、 皮 膚 の ラ ン ゲ ル
ハ ン ス 細 胞 や マ ク ロ フ ァ ー ジ を 刺 激 し て 、 イ ン タ ー ロ イ キ ン -1, 腫 瘍 壊 死 因 子 , イ ン タ ー
ロ イ キ ン -12を 産 生 さ せ 、 イ ン タ ー ロ イ キ ン -12は 活 性 化 さ れ た T 細 胞 に 皮 膚 ホ ー ミ ン グ レ
セ プ タ ー ( homing receptor) の 皮 膚 リ ン パ 球 結 合 抗 原 ( C L A ) の 発 現 を 誘 導 す る 。
【0003】
上記のように、黄色ブドウ球菌により産生されたエンテロトキシンが食中毒の他にアレ
ルギー性疾患にも関与することが明らかになるにつれ、黄色ブドウ球菌に対し抗菌もしく
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は殺菌作用を有する薬剤のスクリーニングが活発に行われてきた。かかる薬剤として、最
近ではマンネンタケ子実体傘部抽出物(特許文献1参照)、クローブ,オールスパイス,
オレガノ等の抗菌性香辛料(特許文献2参照)、クジン抽出物(特許文献3参照)、ジャ
ックフルーツ抽出物(特許文献4参照)、アルトカルピン及びソフォラフラバノンG(特
許文献5参照)、キサントン誘導体(特許文献6参照)、カバノタケ抽出物(特許文献7
参照)、キトサン誘導体(特許文献8参照)、光触媒活性を有する微粒子酸化チタン(特
許文献9参照)、ステビア抽出物(特許文献10参照)、アルケニルイソチオシアナート
化合物(特許文献11参照)、ホップ,レンギョウ,シナレンギョウ,チョウセンレンギ
ョウ,トウキンセンカ,キンセンカ,スイカズラ,ウグイスカグラ,サルビア及びその変
種,クチナシ及びその同属植物,クマザサ,イラクサ,ミヤマイラクサ,ヒキオコシ,ク
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ロバナヒキオコシより選択した1種又は2種以上の植物の抽出物(特許文献12参照)な
どが開示されている。
【0004】
ま た 、 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 の 除 去 を 目 的 と す る N-ア シ ル グ ル タ ミ ン 酸 塩 を 含 有 す る 洗 浄 剤 (
特許文献13参照)や、鉄結合型ラクトフェリンを含有する細菌性エンテロトキシン中和
剤(特許文献14参照)も知られている。
【0005】
しかしながら上記した技術は、ほとんどが黄色ブドウ球菌の静菌又は殺菌もしくは除去
を 図 る も の で 、 ス タ フ ィ ロ コ ッ カ ス ・ エ ピ デ ル ミ デ ィ ス ( Staphylococcus epidermidis)
, バ ク テ イ オ イ ズ 属 ( Bacteroides属 ) , エ ウ バ ク テ リ ウ ム 属 ( Eubacterium属 ) , 連 鎖 状
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球 菌 ( Streptococcus) 属 , ビ フ ィ ズ ス 属 ( Bifidobacterium属 ) と い っ た 皮 膚 や 腸 内 に お
ける常在菌にも静菌,殺菌作用を及ぼしたり、これらを除去してしまうため、常在菌叢の
変化をきたして、皮膚や腸のホメオスタシスに影響を及ぼし、日和見感染を招く危険性の
生じることがあった。また、ラクトフェリンを主成分とするエンテロトキシン中和剤はタ
ンパク質製剤であるため、安定な製剤を得る上で制約も多く、感作性の発現も危惧される
。
【0006】
ウミブドウは、緑藻綱(Chlorophyceae)イワヅタ科(Caurelpa
ceae)イワヅタ属(Caulerpa)に属する海藻であり、本州の太平洋南部,九
州,南西諸島,太平洋熱帯域,インド洋に広く分布しており、シーグレープ,グリーンキ
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ャビアなどと言われる場合もある。沖縄などで養殖もされており、食用で酢の物などに用
いられている。またウミブドウ抽出物の有効性に関しては、様々な検討が行われており、
ウミブドウの属するイワヅタ科の海藻の利用としては、ヒアルロニダーゼ阻害剤(特許文
献15参照),スリミング剤(特許文献16参照),育毛剤(特許文献17参照)がこれ
までに開示されている。また、ウミブドウの有効性としては、ヒアルロン酸産生効果(特
許文献18参照)等が知られている
【0007】
【特許文献1】特開平6−116162号公報
【特許文献2】特開平7−267873号公報
【特許文献3】特開平8−73364号公報
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【特許文献4】特開平8−73368号公報
【特許文献5】特開平8−73372号公報
【特許文献6】特開平9−110688号公報
【特許文献7】特開平10−120589号公報
【特許文献8】特開平10−158305号公報
【特許文献9】特開平11−5729号公報
【特許文献10】特開平11−43443号公報
【特許文献11】特開平11−137949号公報
【特許文献12】特開2001−226280
【特許文献13】特開平11−80781号公報
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【特許文献14】特開平11−279076号公報
【特許文献15】特開平09−67266号公報
【特許文献16】特開2000−72642号公報
【特許文献17】特開2001−55314号公報
【特許文献18】特開2003−128573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明においては、皮膚や腸内の常在菌叢に影響を与えることなく、黄色ブドウ
球菌によるエンテロトキシンの産生を有効に抑制し、アトピー性皮膚炎の増悪など、スー
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パー抗原の関与するアレルギー性疾患の増悪防止又は症状緩和や、食中毒の予防に有用で
、安定性及び安全性に優れる黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤を得ることを目
的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するべく種々検討した結果、ウミブドウ抽出物において特異的な黄色
ブドウ球菌のエンテロトキシン産生抑制作用を見いだし、さらに前記作用が様々な製剤系
においても安定に維持され、しかも有効濃度において、経口毒性,皮膚刺激性,感作性,
催奇形性等を全く示さないことを確認して、本発明を完成するに至った。
【0010】
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ま た さ ら に 、 ウ ミ ブ ド ウ 抽 出 物 と ホ ッ プ ( Humulus lupulus L.) , レ ン ギ ョ ウ ( Forsyt
hia suspensa Vahl) , シ ナ レ ン ギ ョ ウ ( Forsythia viridissima Lindl.) , チ ョ ウ セ ン
レ ン ギ ョ ウ ( Forsythia koreana Nakai) , ト ウ キ ン セ ン カ ( Calendula officinalis L.
) , キ ン セ ン カ ( Calendula arvensis L.) , ス イ カ ズ ラ ( Lonicera japonica Thunb.)
, ウ グ イ ス カ グ ラ ( Lonicera gracilipes Miq. var.glabra Miq.) , サ ル ビ ア ( Salvia o
fficinalis L.) 及 び そ の 変 種 , ク チ ナ シ ( Gardenia jasminoides Ellis) 及 び そ の 同 属
植 物 , ク マ ザ サ ( Sasa veitchii Rehd.) , イ ラ ク サ ( Urtica thunbergiana Sieb. et Zu
cc.) , ミ ヤ マ イ ラ ク サ ( Laportea macrostachya Ohwi) , ヒ キ オ コ シ ( Isodon japonicu
s Hara) , ク ロ バ ナ ヒ キ オ コ シ ( Isodon trichocarpus Kudo) よ り 選 択 し た 1 種 又 は 2 種
以上の植物の抽出物を、併用して配合することにより、特異的な黄色ブドウ球菌のエンテ
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ロトキシン産生抑制作用が相乗的に向上することを見いだしたものであります。
【0011】
すなわち本発明においては、ウミブドウ抽出物を単独で、若しくは上述の植物抽出物と
併用して、担体又は基剤に含有させて黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤とし、
さらに前記エンテロトキシン産生抑制剤を担体等に含有させて、アトピー性皮膚炎増悪防
止又は緩和剤、食中毒予防剤及び食中毒防止用の食品添加物を得る。
【発明の効果】
【0012】
以上詳述したように、本発明により、皮膚や腸内の常在菌叢に影響を与えることなく、
黄色ブドウ球菌によるエンテロトキシンの産生を有効に抑制し、安定性及び安全性に優れ
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る黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤を得ることができた。この黄色ブドウ球菌
エンテロトキシン産生抑制剤は、アトピー性皮膚炎の増悪など、スーパー抗原の関与する
アレルギー性疾患の増悪防止又は症状緩和や、食中毒の予防に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明において抽出物を得るのに用いるウミブドウ及び植物について説明する。
【0014】
ウミブドウ抽出物を得る際のウミブドウとしては、ウミブドウ(Caurelpa l
entillifera)、及びカウレルパ ラセモサ(Caulerpa racem
osa)藻類を用いることができる。カウレルパ ラセモサ(Caulerpa rac
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emosa)藻類には、カウレルパ ラセモサ(Caulerpa racemosa)
以外に多数の変種が存在することが知られており、その変種として、センナリヅタ(Ca
u r e l p a r a c e m o s a v a r . c l a v i f e r a f . m a c r o p h
y s a ) , ス リ コ ギ ヅ タ ( C a u r e l p a r a c e m o s a v a r . l a e t e
− v i r e n s ) , ヒ ラ エ ヅ タ ( C a u r e l p a r a c e m o s a v a r . l a
m o u r o u x i i ) , エ ツ キ ヅ タ ( C a u r e l p a r a c e m o s a v a r . occidentalis),タカツキヅタ(Caurelpa racemosa v
a r . p e l t a t a ) , コ ハ ギ ヅ タ ( C a u r e l p a r a c e m o s a v a r .
uvifera),カウレルパ ラセモサ ツルビナタ(Caulerpa race
m o s a v a r . t u r b i n a t a ) な ど が 知 ら れ て い る 。 ウ ミ ブ ド ウ は 、 こ れ ら
10
、ウミブドウ(Caurelpa lentillifera)、及びカウレルパ ラセ
モサ(Caulerpa racemosa)藻類の総称として用いられ、本発明におい
ても特にその種の区別なく用いることができる。なお、抽出には全藻を用いることができ
る。これらは塩抜きを行った後、生のまま抽出操作に供してもよいが、抽出効率を考える
と、細切,乾燥,粉砕等の処理を行った後抽出を行うことが好ましい。
【0015】
ホ ッ プ ( Humulus lupulus L.) は 、 生 薬 「 ホ ッ プ 」 ( Lupuli Strobilus) の 基 原 植 物 で
あ り 、 ク ワ 科 ( Moraceae) に 属 す る 蔓 性 多 年 草 で あ る 。 花 , 葉 , 茎 , 果 実 等 各 部 位 を 用 い
ることができるが、雌花穂を用いることが特に好ましい。
【0016】
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レ ン ギ ョ ウ ( Forsythia suspensa Vahl) , シ ナ レ ン ギ ョ ウ ( Forsythia viridissima L
indl.) 及 び チ ョ ウ セ ン レ ン ギ ョ ウ ( Forsythia koreana Nakai) は 、 生 薬 「 レ ン ギ ョ ウ 」
( Forsythiae Fructus) の 基 原 植 物 で あ り 、 モ ク セ イ 科 ( Oleaceae) に 属 す る 落 葉 低 木 で
ある。花,葉,枝,幹,果実等の各部位を用いることができるが、果実を用いることが特
に好ましい。
【0017】
ト ウ キ ン セ ン カ ( Calendula officinalis L.) は 、 キ ク 科 ( Compositae) に 属 す る 一 年
生 或 い は 二 年 生 草 本 で 、 キ ン セ ン カ ( Calendula arvensis L.) は こ の 近 縁 種 で あ る 。 花
,葉,茎等各部位を用いることができるが、花を用いることが特に好ましい。
【0018】
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ス イ カ ズ ラ ( Lonicera japonica Thunb.) は 、 ス イ カ ズ ラ 科 ( Caprifoliaceae) に 属 す
る 常 緑 蔓 性 植 物 で 、 ニ ン ド ウ と も 呼 ば れ る 。 ウ グ イ ス カ グ ラ ( Lonicera gracilipes Miq.
var.glabra Miq.) は こ の 近 縁 種 で あ る 。 花 , 葉 , 茎 , 枝 , 果 実 等 の 各 部 位 を 用 い る こ と
ができるが、葉及び茎を用いることが特に好ましい。
【0019】
サ ル ビ ア ( Salvia officinalis L.) は 、 シ ソ 科 ( Labiatae) に 属 す る 多 年 草 で 、 そ の
変 種 と し て は Salvia officinalis var.tenuiorが 挙 げ ら れ る 。 花 , 葉 , 茎 及 び 全 草 を 用 い
ることができる。
【0020】
ク チ ナ シ ( Gardenia jasminoides Ellis) 及 び そ の 同 属 植 物 は 、 ア カ ネ 科 ( Rubiaceae
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) に 属 す る 常 緑 低 木 で 、 生 薬 「 サ ン シ シ 」 ( Gardeniae Fructus) の 基 原 植 物 で あ る 。 同
属 植 物 と し て は 、 Gardenia jasminoides var. grandiflora Nakai) , コ ク チ ナ シ ( Garde
nia radicans Thunb.) が 挙 げ ら れ る 。 花 , 葉 , 枝 , 幹 , 果 実 等 の 各 部 位 を 用 い る こ と が
できるが、果実を用いることが特に好ましい。
【0021】
ク マ ザ サ ( Sasa veitchii Rehd.) は 、 イ ネ 科 ( Gramineae) に 属 す る 常 緑 の 単 子 葉 植 物
であり、花,葉,枝,稈,地下茎,根等の各部位を用いることができるが、葉を用いるこ
とが特に好ましい。
【0022】
イ ラ ク サ ( Urtica thunbergiana Sieb. et Zucc.) 及 び ミ ヤ マ イ ラ ク サ ( Laportea mac
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rostachya Ohwi) は 、 イ ラ ク サ 科 ( Urticaceae) に 属 す る 多 年 草 で あ り 、 花 , 葉 , 茎 等 の
各部位を用いることができるが、葉を用いることが特に好ましい。
【0023】
ヒ キ オ コ シ ( Isodon japonicus Hara) 及 び ク ロ バ ナ ヒ キ オ コ シ ( Isodon trichocarpus
Kudo) は 、 シ ソ 科 ( Labiatae) に 属 す る 多 年 草 で 、 生 薬 「 エ ン メ イ ソ ウ 」 ( Isodonis He
rba) の 基 原 植 物 で あ る 。 花 , 葉 , 茎 , 根 等 の 各 部 位 を 用 い る こ と が で き る が 、 地 上 部 を
用いることが特に好ましい。
【0024】
本発明において、上記ウミブドウ及び上記植物は生のまま抽出に供してもよいが、抽出
効率を考えると、細切,乾燥,粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。抽
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出は、抽出溶媒に浸漬して行う。抽出効率を上げるため撹拌を行ったり、抽出溶媒中でホ
モジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とす
るのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、4時間∼
14日間程度とするのが適切である。
【0025】
抽出溶媒としては、水の他、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノー
ル 等 の 低 級 ア ル コ ー ル 、 1,3-ブ チ レ ン グ リ コ ー ル , プ ロ ピ レ ン グ リ コ ー ル , ジ プ ロ ピ レ ン
グリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル,プロピルエーテル等のエ
ーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類、アセトン,エチルメチルケトン等の
ケトン類などの極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択し
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て用いる。また、生理食塩水,リン酸緩衝液,リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。
【0026】
上記ウミブドウ及び植物の上記溶媒による抽出物は、そのままでも本発明に係る黄色ブ
ドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤として用いることができるが、濃縮,乾固したもの
を水や極性溶媒に再度溶解したり、或いは黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制作用
を損なわない範囲で脱色,脱臭,脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィ
ーによる分画処理を行った後に用いてもよい。また保存のため、精製処理の後凍結乾燥し
、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。本発明においては、ウミブドウ及びホップ
等の植物の上記溶媒による抽出物又は前記処理物をそのまま、或いは水,低級アルコール
等の水性担体、乳剤,ゲル,クリーム,軟膏等の基剤に含有させたり、粉末化或いは顆粒
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化して黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤とする。また、リポソーム等のベシク
ルやマイクロカプセル等に内包させることもできる。
【0027】
従って、本発明に係る黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤は、必要に応じてデ
ンプン,乳糖,微結晶セルロース,メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の賦形剤、ステ
アリン酸マグネシウム,タルク等の滑沢剤、ゼラチン,セラック,ポリビニルピロリドン
,メチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース等の結合剤、カルボキシメチルセルロ
ースカルシウム等の崩壊剤、ソルビトール,グリセリン等の保湿剤、ジブチルヒドロキシ
トルエン,ブチルヒドロキシアニソール,トコフェロール等の抗酸化剤、吸収促進剤、界
面活性剤、等張化剤等とともに公知の方法によって、軟カプセル剤,硬カプセル剤,錠剤
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,丸剤,顆粒剤,散剤,懸濁剤,液剤,シロップ剤,乳濁剤,エリキシル剤等の経口剤、
注射剤、坐剤、ペッサリー又は外用剤として提供され得る。
【0028】
本発明に係る黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤は、低刺激性で毒性及び感作
性を示さないため、特に経口的に服用したり、又は皮膚において局所的に外用するのに適
しており、アトピー性皮膚炎の増悪など、スーパー抗原の関与するアレルギー性疾患の増
悪防止又は症状緩和や、食中毒の予防を目的とした経口剤又は食品添加物として有用で、
さらに安定性にも優れるものである。
【実施例】
【0029】
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さらに本発明の特徴について、実施例により詳細に説明する。
【0030】
[抽出物1]
ウミブドウ(パラオ諸島産)乾燥物50gを精製水950gに分散させる。80℃にて
1時間静置し、上清をガーゼでろ別し、さらにそのろ液を0.45μmポアのフィルター
を用いて、滅菌ろ過した後、減圧濃縮を行い、抽出物1に係る水性製剤100gを得た。
【0031】
[抽出物2]
ウミブドウ(パラオ諸島産)乾燥粉砕物10gを精製水990gに分散させる。上清を
ガーゼでろ過し、さらにそのろ液を0.45μmポアのフィルターを用いて、滅菌ろ過し
10
た後、減圧濃縮を行い、抽出物2に係る水性製剤100gを得た。
【0032】
[抽出物3∼抽出物11]
表1に示す植物各250gを乾燥,粉砕し、50容量%エタノール水溶液1.0リット
ル中に浸漬して、25℃で7日間静置して抽出した。抽出物をろ過してろ液を回収し、ミ
リポアフィルターにて除菌して、抽出物3∼抽出物11を得た。
【0033】
【表1】
20
【0034】
[実施例1∼実施例20,比較例1∼9]
表2に示した抽出物を用いて、実施例1∼実施例20に係る水性製剤を得た。なお、実
施例3∼実施例20は2種類の抽出物を等量混合することにより調製した。また表3に示
した抽出物を比較例1∼比較例9とし、下記の黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制
効果測定に供した。
【0035】
30
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【表2】
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【0036】
【表3】
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【0037】
上記の実施例1∼実施例20及び比較例1∼比較例9について、黄色ブドウ球菌エンテ
ロトキシン産生抑制効果を評価した。評価は、96穴マイクロプレートに、各実施例をB
H I ( Brain Heart Infusion Broth) 培 地 に て 最 終 濃 度 が 1 . 0 重 量 % 及 び 2 . 0 重 量 %
となるように希釈して調製した試料液を注入し、アトピー性皮膚炎患者の患部皮膚より分
離 し た エ ン テ ロ ト キ シ ン 産 生 陽 性 の 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 ( Staphylococcus aureus) を 1 0 0
00cfu/mLとなるように播種し、35℃で20時間培養した後、1,600回転/
分にて15分間遠心分離して上清を回収し、新垣らによる逆受身ラテックス凝集法(デン
カ生研製の検出キット)を用い、感作ラテックスの凝集の程度からエンテロトキシンの産
生を確認した。結果を表4∼6に示す。
【0038】
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【表4】
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【0039】
【表5】
20
【0040】
30
【表6】
40
【0041】
表4∼6より明らかなように、本発明の実施例1∼実施例20は、いずれも0.25重
量%の濃度でエンテロトキシン産生抑制効果を示していた。特に、ウミブドウ抽出物とホ
ップ抽出物,レンギョウ抽出物,クチナシ抽出物,ヒキオコシ抽出物を併用した実施例3
,4,5,6,13,14,19,20においては、0.50重量%の添加でも、高いエ
ンテロトキシン産生抑制効果が認められていた。
【0042】
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続いて本発明の他の実施例を示す。
【0043】
[実施例21] 実施例1を、減圧濃縮して乾固した後、乾固物を凍結乾燥して粉末剤
である実施例21を得た。 【0044】
[実施例22] 実施例2,100mLに大豆レシチン80gを添加して65℃で懸濁
し、次いで超音波処理してリポソームを調製し、遠心分離により回収して、リポソーム製
剤である実施例22を得た。 【0045】
[実施例23] 実施例1に、アルギン酸ナトリウム0.6重量%,ポリビニルアルコ
10
ール12.0重量%,グリセリン12.0重量%及び精製水75.4重量%より成る皮膜
物質溶液を用い、流動パラフィンを芯物質として塩化カルシウム水溶液で硬化させ、次い
でアセトンにより流動パラフィンを除去して成るマイクロカプセル200gを浸漬し、実
施例1を内包させた後、遠心分離により回収して、マイクロカプセル製剤である実施例2
3を得た。
【0046】
[実施例24] アトピー性皮膚炎増悪防止剤1(1)ジプロピレングリコール 10.0(重量%)(2)カルボキシビニルポリマー 0.5(3)水酸化カリウム 0.1(4)パラオキシ
安息香酸メチル 0.1(5)実施例2 20
2.0(6)精製水 87.3製法:(
6)に(2)を均一に溶解した後、(1)に(4)を溶解して添加し、次いで(5)及び
(3)を順次添加して均一化する。 【0047】
[実施例25] アトピー性皮膚炎増悪防止剤2(1)ミツロウ 6.0(重量%)(2)セタノール 5.0(3)還元ラノリン 8.0(4)スクワラン
27.5(5)グリセリル脂肪酸エステル 4.0(6)親油型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.0(7)ポ
リ オ キ シ エ チ レ ン (20E.O.)ソ ル ビ タ ン 5 . 0 モ ノ ラ ウ リ ン 酸 エ ス テ ル ( 8
30
) 1,3-ブ チ レ ン グ リ コ ー ル 5 . 0 ( 9 ) パ ラ オ キ シ 安 息 香 酸 メ チ
ル 0 . 1 ( 10) 精 製 水 3 6
. 4 ( 11) 実 施 例 1 1 . 0 製 法 : ( 1 ) ∼ ( 7 )
の 油 相 成 分 を 混 合 , 溶 解 し て 7 5 ℃ と す る 。 一 方 、 ( 8 ) ∼ ( 10) の 水 相 成 分 を 混 合 , 溶
解して75℃に加熱する。次いで、この水相成分に前記油相成分を添加して予備乳化した
後 ホ モ ミ キ サ ー に て 均 一 に 乳 化 し 、 冷 却 後 4 0 ℃ で ( 11) を 添 加 す る 。 【0048】
[実施例26] アトピー性皮膚炎緩和剤1 実施例1を濃縮,乾固した後凍結乾燥し
た。前記乾燥粉末0.2g,乳糖52.0g,コーンスターチ22.8g,カルボキシメ
チルセルロースカルシウム5.0g,セルロース20.0gを混合し、顆粒化した後打錠
40
して、一錠0.2gの錠剤を得て、経口のアトピー性皮膚炎緩和剤1とした。 【0049】
[実施例27] アトピー性皮膚炎緩和剤2 実施例2150mLに単シロップ200
mLを加え、次いで精製水を加えて1.0リットルとし、経口のアトピー性皮膚炎緩和剤
2を得た。 【0050】
[実施例28] 食品添加物1 実施例1の溶媒を留去した後凍結乾燥して、食品添加
物1を得た。 【0051】
[実施例29] 食品添加物2 実施例2の溶媒を留去した後凍結乾燥して、食品添加
50
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物2を得た。 【0052】
本発明の上記実施例24∼実施例27について臨床試験を行った。掻痒感及び皮疹等の
皮膚症状を呈するアトピー性皮膚炎患者20名を1群とし、各群に実施例及び比較例をブ
ラインドにて、実施例24及び実施例25については1日2回、3日間患部に塗布させ、
実施例26及び実施例27については1日3回、3日間内服させて、掻痒感及び皮膚症状
の改善状況を評価した。比較例としては、実施例24及び実施例25において、本発明に
係る黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤をグルコン酸クロルヘキシジン液に代替
したものを比較例10,比較例11、実施例26及び実施例27において、本発明に係る
黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制剤をブドウ糖液に代替したものを比較例12及
10
び比較例13とした。掻痒感及び皮膚症状の改善状況は、使用開始前の状態に比べて、そ
れぞれ「改善」,「やや改善」,「変化なし」,「悪化」の4段階にて評価し、各評価を
得たパネラー数にて表7に示した。 【0053】
さらに上記臨床試験に際し、皮膚及び腸内の細菌叢の調査を行い、その変動の程度につ
いて、「○;ほとんど変動を認めない」,「△;若干の変動を認める」,「×;顕著な変
動を認める」として、表7に併せて示した。 【0054】
【表7】
20
30
【0055】
表7より明らかなように、本発明の実施例24,実施例25使用群においては、全群で
掻痒感及び皮膚症状の悪化を示したパネラーは存在せず、これら症状の改善傾向も見られ
ていた。また、皮膚細菌叢において変化は認められていなかった。さらに、経口製剤であ
る実施例26及び実施例27服用群においても、掻痒感及び皮膚症状の悪化を示したパネ
ラーは存在せず、掻痒感については両群で75%、皮膚症状については65%及び70%
のパネラーにおいて改善傾向が認められていた。腸内細菌叢の変化も認められていなかっ
た。 【0056】
これに対し、比較例10∼比較例13使用群では、掻痒感及び皮膚症状の改善傾向を示
40
すパネラーも相当数認められたが、症状の悪化したパネラーも少数存在していた。さらに
、皮膚細菌叢の変化は顕著に認められていた。また、比較例12及び比較例13使用群で
は、皮膚細菌叢の変化は認められないものの、掻痒感及び皮膚症状の改善傾向はほとんど
認められず、55%以上のパネラーにおいて症状の悪化を認めていた。 【0057】
次に、実施例28及び実施例29について、食品に添加した場合の黄色ブドウ球菌エン
テロトキシン産生抑制効果を評価した。評価は、実施例28及び実施例29を、生クリー
ム及び和菓子各100g中に200mg及び500mgを添加して混練したものに、7.
5 (w/v)% の 塩 化 ナ ト リ ウ ム を 含 む B H I 培 地 に て 培 養 し た エ ン テ ロ ト キ シ ン 産 生 陽 性 黄
5
色 ブ ド ウ 球 菌 ( Staphylococcus aureus ATCC14458) を 1 . 0 × 1 0 C F U / m L 含 む 滅
50
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菌リン酸緩衝液100μLを噴霧し、37℃で10時間静置した後、前記食品をホモジナ
イズし、適宜希釈してRPLA法により食品中に産生されたエンテロトキシン量を測定し
て行った。いずれの実施例をも添加しない対照についても同様に評価を行い、食品100
g中に検出されたエンテロトキシン量にて表8に示した。 【0058】
【表8】
10
【0059】
表8より明らかなように、対照においては生クリーム,和菓子のいずれにおいても10
0g当たり20.0μgのエンテロトキシンの産生が認められたが、本発明の実施例28
及び実施例29を500mg添加した場合には、エンテロトキシン量は0.6μg未満で
あり、各200mgの添加によっても、生クリームで25%、和菓子で12.5%及び6
.5%までエンテロトキシン量は減少していた。従って、本発明の食品添加物は、黄色ブ
ドウ球菌の混入による食中毒発生を有効に防止し得ることが示された。 【0060】
なお、上記実施例14∼実施例18については、皮膚一次刺激性及び皮膚感作性は全く
認められず、実施例19∼実施例22についても、経口毒性,感作性及び催奇形性は認め
られなかった。また、本発明の実施例1∼実施例22は、25℃で6カ月間保存した場合
においても製剤の状態変化は認められず、黄色ブドウ球菌エンテロトキシン産生抑制作用
の低下も認められなかった。
20
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7
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61P 43/00
A61P 43/00
111 A61P 43/00
121 Fターム(参考) 4C088 AA15 AB12 AB14 AB26 AB34 AB38 AB64 AB76 BA08 BA09
BA10 CA11 CA14 MA07 MA17 MA22 MA23 MA24 MA28 MA31
MA35 MA37 MA41 MA43 MA52 MA63 MA66 ZA41 ZA89 ZB35
ZC75
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