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見る - 早稲田大学

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見る - 早稲田大学
早大中国塾 (2010年12月での講演) 修正版
「華僑ならぬ和僑に関するユニークな研究」
研究テーマ: 「キャリア充実を求め、中国に越境し起業する和僑たち」
早稲田大学アジア太平洋研究科
堀内弘司
[email protected]
1
一般的な意識。。
• 「日本人はアントレプレナー意識に乏しい?
• 中国よりも日本で生活をした方が豊かで幸せ?
• 移民は、開発途上国から成熟社会国へ?
ちょっと
違う日本人
もいる。。
「和僑」という
生き方をする
人たち
2
最近の新聞記事
70后の和僑たち
3
NHK「めざせ!会社の星 -上海で起業する」
(10/10 0:15-0:40全国放送、10/11 23:30-23:55再放送)
4
こちらは、読売新聞-大阪版(2011,1/3~7の連続特集)
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/kansai1294013634313_02/index.htm
日本経団連の2010年7月の提言書
「このまま無策が続けば、
2010年から2015年の間に、
30万人規模の雇用機会が減少し、
失業率を+5%悪化する」
日本社会から、プッシュ・アウトされる
若年就業者の中には。。。
(ベトナム、タイ、中国に向かう若者たち)
5
「和僑」という現象が全国に拡がり始めている
・和僑アジア大会では、世界の和僑と
日本の中小企業が70のブースで
ビジネス交流をした。
・アジア大会には、沖縄県副知事も出席。
琉球の「大交易時代」の復活に期待する。
和僑会は、2004年に香港で始まり
その後、深セン、広州、上海、北京に。
シンガポール、タイ、モンゴルにも。
そして、北海道、東北、東京、京浜多摩、
名古屋、関西、福岡、沖縄にも2010年
から展開
6
NHK 「クローズアップ現代」でも、和僑会が特別報道
【2011年1月17日 19:30-20:00、1月18日 0:20-0:50】
・中国の広告代理店で
収入アップをするOL
・中国語ができなくても
中国には仕事がある。
・30歳代の建築家でも
数百億円のプロジェクトを
任される中国。
・和僑会で、和僑がひとつ
となって中国市場を開拓
する。
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/yotei/
7
NHK 「ASIAN PASSION アジアを駆ける日本人 『上海ドリームをつかめ~和僑たちの挑戦~』」
【5月14日 九州・沖縄地区で放映】 【7月18日 NHK総合にて全国放映 (45分番組)】
・中国で、自分のキャリアを
花咲かせる環境を得た。
・中国人はどんどんと
お洒落になっていく。
外国の料理を受け入れて
いく。
・日本で生まれた人間が
持つセンスが、中国で
チャンスとなる。
・しかし、中国はそんなに
甘い社会でもない。
8
ウーマン・オブ・ザ・イヤー9位 熨斗麻起子さん
今注目される海外に定住し活躍する「和僑」の一人。
日経WOMAN 2010年12月報道
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/trend/20101203/109466/?P=1 より引用
9
毎日新聞も「上海ドリーム」を報道
ー2011年1月24日報道-
10
人民日報のサイトにも
2011年1月31日
http://j.peopledaily.com.cn/94476/7278016.html
11
CNNのニュースにも
(2010年11月12日14:00 「ワールド・リポート内の報道」 )
日本は経済・生活・人間関係あらゆる面で
どんどんご自身にとって居心地が悪くなってゆく・・
ある日本人の双子の
人生ですが。。。
中国での仕事では自分のやりがいが十分に活かせるし、
経済面では日本とは比較にならないほど有利!
一人は英国に留学し
帰国後に日本で就業・生活
こんな日本人が増えている
一人は日本で就業後、
中国に越境して、北京で就職
12
http://ameblo.jp/sauter-pianos/entry-10705986836.html#cbox を参照・引用
(2000年⇒2010年)
この現象は日本人だけでなく、他の先進国の人々も
Time誌(2010.10.25版)で、イタリア人の若者が中国で充実したキャリアを得る生き方を紹介
13
じつは、私の祖父も和僑でした。。。
15歳でシアトルに渡り、カリフォルニア州や
中西部のオクラホマ州などで、クリーニング業、
メロン畑のプランテーション、花屋、石油成金むけ
の高級家具芸術品販売などさまざまな起業を
し、20世紀初頭のまだ無法な文化も残る米国
に根付いて30年を過ごした。大恐慌や満州事
変に対する国際非難などによる時代変化で
1931年に日本に家族で戻った。
父は米国生まれの日系二世。
1940年頃に一人帰米したが、1941年の
米国連合国のブロック経済政策などによる
時代変化で1941年に日本に戻った。
新聞記事は、父の他界後に、
「父を尋ねて3千里」をやりに行って
地元新聞記者に助けられて、父の通った
14
小学校に行き着いたときの記事。
和僑という現象を報道した番組・記事(2010-2011年1月)
1) NHK福岡局
「ASIAN PASSION アジアを駆ける日本人 『上海ドリームをつかめ~和僑たちの挑戦~』」
【5月14日 九州・沖縄地区で放映】 【7月18日 NHK総合にて全国放映 (45分番組)】
2) 朝日新聞
「向龍時代:和僑になる」
【9月5日(1面・2面)および6日(3面)】
3) NHK名古屋局
「めざせ会社の星! 上海で起業するの巻」
【10月10日 25分番組】
4) CNN-J
「ワールド・リポート内の報道」
【11/12 14:00からの報道】
5) テレビ東京
「週間ニュース新書 “和僑”を目指せ!日中 草の根ビジネス最前線 」
【11月27日 15分紹介】
6) 読売新聞(大阪)
「踏み出すとニッポンが見えた」
7) NHK首都圏報道部
「クローズアップ現代 チャイナドリームを追いかけて」
【2011年1月3日~1月7日の連続報道特集】
【2011年1月17日 19:30-20:00、1月18日 0:20-0:50】
ほか、山形新聞(2010/10/01)、河北新報(10/01)、沖縄タイムス(11/26,11/27,11/30)、
琉球新報(11/26,11/27)でも、中国ビジネスで活路を見出したい地元企業と和僑会に関する
報道をしている。
多くのTV局が長い時間を費やし、多くの新聞が大きく紙面を割いて
「和僑という現象」を報道している。
15
私の研究
「キャリア充実を求め、中国に越境し起業する和僑たち」
<研究の動機・背景>
・和僑たちには、1970年代以降生まれの若者が多い。
和僑たちは、中国で数年働くと起業する。
・「どのような動機や背景から、彼らは中国に向かうのか」
・「どのような動機や背景から、彼らは中国で起業するのか」
中国にいって確かめた。
200名以上の和僑に会った。
16
2章:先行研究の知見と 本研究の位置づけ
チャート: 先行文献 と 当研究の位置づけ
90年バブル崩壊を境に起こった、就業環境の変容と若者たちの行動分析の研究分野
「一億総中流」社会へ
バブル崩壊・「下流社会」へ
研究分野4:
日本を飛び出し、
海外で希望ある
就業環境を得ようと
自ら状況打破する
若者たち
研究分野3:
国内で希望ある
就業環境を得ようと
自ら状況打破する
若者たち
『だから若者たちは辞めていく』、
『ルポ 正社員の若者たち 就職氷河期世代』
(小林美希:2008,ダイヤモンド社:2007)
*波線は日経平均1970-2005年の株価イメージ(http://www.zyoutou.com/data/index.htmlより引用)
研究分野1: 「一億総中流社会:」から「下流志向社会」への変遷
研究分野2.
下降傾向にある
日本で生きる
若者たち
『和僑』、『上海ジャパニーズ』
(渡辺賢一:2007、須藤みか:2007)
*当研究は研究分野4になる
1970年以降生まれの若者たちのキャリア環境に関する文献:
『下流社会 あらたな階層集団の出現』
、『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』など
(三浦展:2005,城繁幸:2006,三神万里子:2005、森永卓郎:2003 ほか)
・90年まで、「東洋の奇跡」と呼ばれ、誰もが「明日は今日よりも豊かになる」と信じていた。
・97年以降、「一億総中流社会」⇒「下流社会」、「希望格差社会」、
「就業リスク配分の不平等」で若者・女性には、生きがい・働きがいが見出しずらい日本。
・職を得た若者たちも「辞めていく」。一部は状況打破すべく「転職ならぬ転国」で中国へ。
本研究は、この中国へ行った若者たち(70后の和僑たち)、200名以上に会い、
17
彼らの中国移住の動機と背景を、民族誌的調査で観察・分析した。
3章:研究方法1
ー自らが中国移住をしたー
•
•
•
2009年8月~翌年1月まで、復旦大学・大学院 国際関係与公共事務学院に在籍。
自らも中国移住することで、彼らの活動舞台の現代中国に自ら浸かった。
大学院授業でも、「現代中国」に関する、社会学・宗教学・映画学などを取った。
Kids Market
Ordinary People Market
Student Market
Modern Market
International
Residents Market
Young workers Market
日式 Japanese Market
急速に近代化する中国で
日本人には起業チャンスがいっぱい!
18
3章 研究方法2
ー自らがキーインフォーマントになったー
・12/12に、上海和僑会が設立。
・10月より、設立準備委員会の
幹事になった。
幹事という肩書きは、香港和僑会、
深セン和僑会など、他の和僑会メン
バーにも大きなラポールとして機能。
他の日本人コミュニティにも、和僑
会を代表する者として動けた。
19
研究結果
20
4章: 研究結果1
ー「70后の和僑たち」のキャリア・ライフヒストリー
4-1-1 70年代/80年代:「誕生期・成長期」
-「世界一豊かな子どもたち」
-「一億総中流社会」、「男女雇用機会均等法」「Hanako族」
-「海外が身近な世代」
世帯収入は5年ごとに倍々で向上。
Vs米国で、89年には名目一人
当たりGDPを追い抜いてしまう。
為替上昇で、ブランド品買い漁り
01年
96年
91年
86年
81年
76年
71年
66年
61年
200,000
180,000
160,000
140,000
120,000
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
56年
生まれたときから、日本製のハイテク製品に
囲まれて育った。
21
4章: 研究結果1
ー「70后の和僑たち」のキャリア・ライフヒストリー
4-1-1 70年代/80年代:「誕生期・成長期」
-「海外が身近な世代」。家族旅行は毎年海外旅行。
身近に留学経験者も続出。親戚に海外赴任者もいる。
-1981年とらばーゆ創刊、87年Hanako創刊
89年ケイコとマナブ創刊。
-1984年雇用機会均等法、
<Hanako族>
⇒女性たちは、母親のような家篭りの人生でなく
男勝りに働いて、after5は銀座を闊歩し、
毎年2回は海外旅行。「ケイコとマナブ」で
スキルアップし、上昇志向のとらばーゆ。
70后は、こういう先輩たちを、こういう生き方を
夢見て 育った。
22
4章: 研究結果1
ー「70后の和僑たち」のキャリア・ライフヒストリー
4-1-2 90年代後半 突然のバブル崩壊/「就職氷河期」がやってきた。
-1993年パイオニア社の大量解雇。97年の山一證券、拓銀の倒産事件で、日本
全体がバブル的な経営から、180度方向転換した経営に。
-「就職氷河期」がやってきて、大卒者は就職が大変に。
-就職しても、働きがいのない閉塞感ただよう先輩たちと社内ムード。
「こんなはずではなかった」と青い鳥を探して、「3年で30%辞める」を繰り返す。
上は中位年齢の各国比較。
日本人の平均給与額は、97年を頭に反転して
2000年でみると、日本は41歳。韓国や米国は
いる。もとより日本的給与風土があり、出世しない
32歳程度で、ITでは30前後で管理職にもなれる。 と給与は上がらない。どんなに頑張っても評価は
2005年では、日本は44歳。三神万里子は
くれない。 就職しても、「働く喜び」に出会えない。
「44歳でも係長になれない国」、
辞めて転職を繰り返す若者が少なくない現象。
23
「パラサイト・ミドルが会社にすがりつく」と論じる。
4章: 研究結果1
ー「70后の和僑たち」のキャリア・ライフヒストリー
4-1-2 90年代後半 突然のバブル崩壊/「就職氷河期」がやってきた。
避難できる人間は避難する。
『だから若者は辞めていく』(ダイヤモンド社)より
・俺らの所得は下がるのか?
・社会保障は、払い損?
・日本で何箇所も転職したが
「働く喜び」には出会えない?
日本にいて
も先が見え
ている
中国に越境して、「キャリアの充実」を得た、たくさんの「70后の和僑たち」
24
4章: 研究結果1
ー「70后の和僑たち」のキャリア・ライフヒストリー
4-1-2 90年代後半 突然のバブル崩壊/「就職氷河期」がやってきた。
「転職か、MBAか、中国語学留学か」の問いに対して
R1:「いまさら、米国行ってMBAとって意味があるんですか。MBA
取ってもサブプライム後は高給取りの転職は無理でしょう。
米国留学はお金かかるし、元が取れない。」
R2:「私はイギリスにOL留学で語学留学したけど、それでイギリスで
職が探せた訳でもないし、帰国しても英語ができるからといって
日本でいい職場の就職が得られた訳でもない。」
R3:「中国に来て良かったと思う。中国語を身につけて、責任とやりがい
のある仕事に就業できた。すごく活気ある社会だし可能性が拡がる。」
2006年日本人の留学先
2000年のデータと対比すると
米国に向かう留学生は24%ダウン、
中国に向かう留学生は33%アップ。
2012年頃には中国が首位になる?
実際に、「大学間協定の留学生」では
2006年に中国に向かう学生が米国を
抜き、首位になっている。
(中国19%、米国17%)
2006年 対中貿易の割合が20.3%、
対米貿易が17.4%である。
2010年は対中が23.4%で対米が13.5%、
この差はさらに拡がっていく
25
4章: 研究結果1
ー「70后の和僑たち」のキャリア・ライフヒストリー
4-1-3 中国入国後の生活。
1) 詳細データを取れた60名中の32名は、語学学校に1年(or半年)入学。
2) トヨタ、松下、NTTデータ、三井住友海上、新聞記者、JALなどの出身者もいる。
3)彼らは、1年間の学校生活で、中国流を体得していく。
(月の生活費:700~1000元程度。中国人の友達を作っていく)
4)32名の多くは、日本で勤務経験(それも大企業)がある。そして中国語もできる。
中国語を話せない派遣駐在管理職のいる日系企業に就職。
中国の日系企業で
「いきなり管理職」の図式
日本本社からの駐在管理者
- 中国語ができないー
現地採用の和僑
中国人の従業員
生産・調達 貿易・物流
営業・市場開発 人材育成
20代後半で「いきなり管理職」となる。
⇒「44歳でも係長になれない」日本とは大違い。
⇒50人、なかには300人の中国人従業員を監督・指導
するものもいる。
⇒30歳前後から、経営者コンピテンシーが身についていく
1) 経営者資質の体得
2) ビジネス人脈の獲得
3) 起業ネタの体得
26
⇒起業へのステップ1
4章: 研究結果1
ー「70后の和僑たち」のキャリア・ライフヒストリー
4-1-3 中国入国後の生活。
-前頁のように、人・モノの経営要素を得ていく。
(「ビジネス・パートナー」、「起業時の顧客」、「起業ネタ」、「業務スキル」)
-中には、中国でも転職を繰り返すものがいる。
(「お前は現地採用だぞ! 正社員とは違うんだ!」という差別的な処遇など)
昔の日本企業のエリート候補養成の図
エリート候補の養成プロセス
ZZ株式会社
就職
営業
ほか
YY株式会社
生産
貿易
営業
ほか
XX株式会社
生産
貿易
営業
調達・生産
ほか
営業貿易
貿易
経営者へ
人事
経営管理
財務
さまざまな業務経験をし、経営者としての資質を高めていく
転職を重ねることで、自ら「エリート候補」
のジョブ・ローテーションをまわす。
27
4章: 研究結果1
ー「70后の和僑たち」のキャリア・ライフヒストリー
4-1-3 中国入国後の生活。
起業資金はどうするの?
1)現地採用の給与は、1万元~。(13万円前後)
彼らの多くは、毎月5-10万円を
貯金できる。
2)日本の一流企業出身者では
生活無理だよね。。。?(日本なら26万円前後)
3)ところが、彼らは1年間語学学校の寮生活をして
いる。
・生活費:1000元。
・40平米 2人シェア:1500元。
・日本人コミュニティとのつきあい
⇒月に2回程度 1000元。
1万元から上記合計を差し引いても
7000元近く残る。 ⇒10万円貯金
就職して1年半くらい経つと、いつのまにか150万円くらい溜まっている。
⇒ 中国では、150万円あればいろんなことが始められる。
*東京ではラーメン屋開業でも、1000万円はかかる。
なおかつ日本は法治国家なので、いろんな資格なしには起業できない。
⇒ 中国は、アントレプレナーにとってチャンスいっぱい。いっぽう日本は・・・・・。
28
ー5章 彼らはどのような起業をするのか?
概念図2 : 3つの起業パターン
1.経験・業縁を元に
ビジネス起業
1.日本での就業、中国での就業で得た、職務スキル
(貿易、営業、生産管理、人材育成など)、業種知識
(B2BビジネスやB2Cビジネスのモデル、ネット
ショップの運営などのビジネスモデル運営知識)、
業縁(人脈)を元に、業縁のサポートや叱咤激励を
受けて、起業するパターン
2.日本にあって、中国に
なかったビジネスの起業
2.日本式のやわらかいパフ・クリームのシュークリー
ム専門店や、日本式のラーメンショップ、中国でま
だ流通していないファッショングッズ卸、日本式の
顧客満足度の高いエステやフラワーコーディネー
タなどを起業するパターン。過去に就業経験が
なくて始めてしまうのが特徴。
3.中国で、カリスマ美容師や
シェフ、デザイン会社で起業
3.日本で技術者(美容師など)をやっていたが、日本
で独立して事業拡大するよりも、ニューリッチ市場
が急速に拡大する中国で、大きなビジネス成功を
目指そうとする起業のパターン。
共通しているのは「日本的なビジネス」
中国人や欧米人とは一味違う
29
参考: 和僑経営者の業容など
香港和僑会の会員からの分析。 さまざまな業種があるが
大別すると、B2Bプロフェッショナルと、B2Cサービス事業者
30
ー6章 彼らがそのライフヒストリーから得る
経営者コンピテンシーの概念図
概念図3: 中国で起業するに必要な能力や人脈、経営者資質を
どのように獲得するのか?
1.日本で生まれ育って、高いホスピタリティと不良品を出さない日本の文化の中で育っていく。
日本企業に就業して、この意識がさらに高まり、業務を通して体得する。
中国の日系企業で
「いきなり中間管理職」の図式
日本本社からの駐在管理者
- 中国語ができないー
2.中国に移住する決意をし、中国人と接しながら、中国人が日本人と異なる部分があることを
冷静に受け入れていく。
現地採用の和僑
3.中国進出する日系企業で、中国語ができない駐在管理者に取って代わって、人材育成・管
理、営業開発、貿易・物流、生産・調達の経営責任ある業務を経験し、経営者資質を高める。
(右図を参照)
4.中国内の日本人企業家ネットワークに属して、人脈を増やす。
一部の者は、中国人と結婚し、その血縁、地縁関係を得る。
中国人の従業員
生産・調達
貿易・物流 営業・市場開発人材育成
中国での業務経験・獲得した信頼・人脈
日本での業務経験
中国の安い生活環境と
日本では得られない可処分所得
日本で育ち、良いものと
悪いものを見分ける
センス(検品能力)
ビジネス商材
業務スキル
ビジネス
パートナー・従業員
中国市場
での顧客
中国人の結婚相手
その親族のネットワーク
創業資金
日本企業と
うまくやる能力
日本での業務経験
中国人と
うまくやる能力
起業する
度胸
中国在住の日本人企業家ネットワーク
中国人企業家のサポート・アドバイス
これから中国市場で生きていく
という気概
中国での業務経験・獲得した信頼
彼らは、
「日本人+中国人」に
グローカルした!!
31
3者の比較
日本人駐在員、現地化、和僑
1)中国語で従業員と仕事
2)日本語で従業員と仕事
1.中国に移住した 2.本社命令で来
30歳日本人
た45歳日本人
○
×
○
○
3.日本語ができる
30歳中国人
○
○
3)日本式ビジネスのやり方
4)不良品を検品する能力
5)お客様第一の精神
6)中国の文化・常識の理解
○
○
○
△
○
○
○
×
△
×
×
○
7)中国で生きていく意志
8)中国人の営業人脈
○
○
△
×
○
○
「中国人+日本人」の特質を持つ彼らは、3者の比較で
無難な管理者の資質を持つと分析した。
*もちろん、個々人によって、ビジネス資質は大きく異なる。
32
本研究で得られた
「70后の和僑たち」のキャリア・ライフヒストリー概念図
概念図1: 中国に渡り起業する日本人起業家のキャリア・ライフヒストリー
<時代カテゴリー>
誕生・成長期
(奇跡の高度成長⇒一億総中流社会へ)
就職・転職期
(一億総中流社会 ⇒下流社会化する日本)
中国への移住・起業期
(奇跡の高度成長⇒和諧社会へ)
*波線は日経平均1970-2005年の株価イメージ(http://www.zyoutou.com/data/index.htmlより引用)
<1.彼らのキャリアに関する意識と経験>
1)「勤勉に働くことで、日本の明日は今日よ
りも、右肩上がりでもっと豊かになる」
1)「キャリア志向が満たされない職場」
-Made in Japanは、世界のトップブランド
- 一億総中流社会を目指しみんな平等豊かに
2)「能力主義、男女平等というキャリア志向
が形成される」
-中国語学学校でゼロからスタート
-急成長する中国市場
-日本式サービスの需要が拡大
-卒業後、20代で「いきなり管理職」
2)「キャリア充実を求め、転職を繰り返す」
2)「ジェンダー差別のない中国」
-どこにいっても閉塞感漂う就業環境
-社会全体も下流化、年収300万円時代に
-1986年男女雇用機会均等法
-1981年とらばーゆ、88年Hanako創刊
-格好いいOLになって、キャリアも人生も充実したい
-女性も男性もない平等社会
3)「転職か、MBAか、中国語学留学か?」
-海外で活躍する仕事をやっぱりしたい
3)「将来は、海外で活躍したい」
-1983年 地球の歩き方創刊
-身近に海外赴任、留学者がいる
4)「中国で起業を決意!」
5)「職務を通じ、日本企業が求める業務レ
ベルを完全に体得」
-ビジネス・アイデアはある
-人脈もできてる。
-創業資金も溜まってる
-日本式管理での検品、検収業務を体得
-ホスピタリティ高い日本式ビジネスを体得
-不良品のない日本
-ホスピタリティの高い日本文化
<2.彼らのビジネス・コンピテンシー>
高度成長期の日本に生まれ、
不良品なく、ホスピタリティの高い
「日本式の商品・サービス」を
生まれながらにして体得している。
3)「しかし、ここでも安く利用され
る社員なの?」
-日本からの駐在管理者との差別待遇
4)日本にいても先が見えている
4)「日本で生まれ育ち、日本市場が求める
品質レベルが身体に染み付いてる」
1)「チャンスいっぱいの中国!」
-イケイケの業容拡大投資をしていた企業は、突然
チャレンジしなくなる。
-能力主義と言いながら、何もさせてくれない職場
-ジェンダー差別もある、閉塞感ただよう就業環境
語学と、中国人従業員や
顧客対応法を体得する。
+
日本で就業し、日本企業が求める
高い品質レベルを提供する業務
管理ノウハウを体得する。
+
「日本にあって中国にない
ビジネス商材」を見つける
「日本式の
ビジネス」
を中国で起業
する
起業に必要な創業資金
と人脈を形成する
33
参考: 世界に拡がる和僑ネットワーク
・80年代改革開放以后の中国経済のグローバル化を、華僑ネットワークが育んで
いったように、21世紀の日本経済のグローバル化を、和僑ネットワークが育んでく。
34
和僑会の会員数概要
ー2011年3月時点-
上記の活動者と別に、メール登録会員がいる。
2010年11月では3千名であったが、2011年11月に5千人を突破
35
唄: 「和僑の風となれ」
by ジプシークイーン(歌詞:Aki)
YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=8HkqC_ppQ7E
36
参考: 現代の中国和僑または日本華僑の
Business Migrationに興味があれば。。
早稲田・アジア太平洋研究科
●中国和僑 ⇒堀内弘司 [email protected]
「キャリア充実を求め、中国に越境し起業する日本人アントレプレナー」
●日本華僑(新華僑) ⇒ファーラー、グラシア准教授
Gracia Farrer
[email protected]
“Producing Global Economies from Below: Chinese Immigrant
Transnational Entrepreneurship in Japan”
「在日中国人移民の従業員のキャリア移動度」 ほか
和僑という生き方に興味を持ってく
ださいまして、ありがとうございます
堀内弘司
[email protected]
[email protected]
38
今後の計画
「中国で起業する和僑のグローカライゼーション研究」
・「日本人的経営/日本人論」と「華人的経営/華人論」、および
「日系企業の中国進出した日系企業の成功・失敗事例」に関する
先行研究の知見を参照しながら、彼らにもう一度フィールドワークする。
・また、日系企業大手の経営者にも調査をし、
「従業員と毎日顔を合わせるスタートアップの経営に重要な資質」と
「直接管理をしないヒエラルキー構造を持つ経営に重要な資質」に関する
意識の違いも研究する。 ⇒6章の 概念図3の精度を高める。
図1:当研究のフレームワーク
先行研究からのビジネス知見
当研究で生成する概念構造モデル
日本社会・日本的経営に
関する概念要素
日本人的
な要素
華人社会・華人経営に
関する概念要素
1.スタートアップ企業の運営で
必要な概念要素
中国人的
な要素
2.大企業の運営で必要な
概念要素
C社ケース
B社ケース
当研究で得られる知見(A社ケース)
3.中国で企業運営するには、捨て去るべき
日本的な概念要素
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和僑のキャリア・ライフ・ヒストリーを紹介する書籍など
本研究は、独自に面談した60名のキャリアライフヒストリーを元に、彼らの中国越境の時代的背景と、
彼らに共通してみられるキャリア充実の思いなどを記述したが、下記などを参照している。
<複数ケースを紹介>
渡辺賢一(2007)、『和僑:15人の成功者が語る実践アジア起業術』(アスペクト社)
須藤みか(2007)、『上海ジャパニーズ 日本を飛び出した和僑24人』(講談社α文庫)
須藤みか(2004)、『上海で働く』(めこん社)
江原規由(2003)、『職在中国 40人の日本人が語る就職・起業チャレンジ』(ジェトロ)
<一人のケースを詳細に記述>
五十嵐らん2006)、『明日から中国で社長をやってください』(エクスナレッジ)
谷崎光(1999)、 『中国てなもんや商社』(文春文庫)
<一般的に心得ておく文化の違い>
範雲寿(2008)、 『中国ビジネス とんでも事件簿 章文化の違いに迫る』(PHP新書)
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