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発達段階に応じて技能が高まる ボールゲームの学習指導法の在り方

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発達段階に応じて技能が高まる ボールゲームの学習指導法の在り方
平成 18 年度
研究紀要
(第 745 号)
G6-01
発達段階に応じて技能が高まる
ボールゲームの学習指導法の在り方
―ラグビー型ゲームにおけるミニゲームの工夫を通して―
ラグビー型ゲームにおける発達段階に応じた身に付けさせたい技術を明
らかにし,発達段階に応じた系統的なミニゲームの工夫や主ゲームを設定
することで,児童生徒の技能の習得を図った。
その結果,児童生徒の発達段階に応じた技能を高めることにつながり,
「できるようになった」という喜びを味わわせることができた。
福岡市教育センター
体育,保健体育科研究室
目
次
第Ⅰ章 主題についての考え方
1 主題設定の理由‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 1
2 主題の意味‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 1
3 発達段階の具体的とらえ方‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 2
4 具体的な目指す姿‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 3
5 研究の目標‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 3
6 研究の仮説‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 3
7 研究の内容と方法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 3
8 研究内容の一覧表‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 4
第Ⅱ章 研究の実際とその考察
1 小学校2年生「ボールはこびゲーム」
(1)低学年での学習過程のとらえ方‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 5
(2)発達段階に応じたミニゲームの工夫‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 5
(3)考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 6
2 小学校4年生「タグラグビー」
(1)中学年での学習過程のとらえ方‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 9
(2)発達段階に応じたミニゲームの工夫‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体 9
(3)考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体10
3 小学校5年生「タグラグビー」
(1)高学年での学習過程のとらえ方‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体13
(2)発達段階に応じたミニゲームの工夫‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体13
(3)考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体15
4 中学校2年生「タグラグビー」
(1)中学校での学習過程のとらえ方‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体17
(2)発達段階に応じたミニゲームの工夫‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体17
(3)考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体18
第Ⅲ章 研究のまとめと今後の課題
1 研究のまとめ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体21
2 今後の課題‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体21
3 あとがき‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体22
参考文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥保体23
第Ⅰ章
主題についての考え方
的に育成してこそ,もっと楽しい体育の実現
があるのではないかと考える。
1
主題設定の理由
(2) 昨年度からの継続研究として
(1) 学校体育が育てようとする力
本研究室は,昨年度,発達段階に応じてボ
体育・保健体育科は,心と体を一体として
ールゲームの学習過程の工夫,めあての内容
とらえることを重視し,生涯にわたる豊かな
についての支援,技能を高めるための支援の
スポーツライフの実現,および自らの健康を
三点から授業づくりに取り組んだ。その結果,
適切に管理し,改善していくための資質や能
自発的に学ぶ児童生徒の姿が見られるように
力を培うことを目指している。
なった。そこで,本年度も,発達段階に応じ
現在の体育科学習においては,児童生徒の
て技能を高めるということを中心とした研究
現状が,運動に興味をもち活発に運動する者
を継続していきたいと考えた。
とそうでない者に二極化する傾向にあること
領域は継続性という意味から,それぞれの
から,発達段階や,自己の能力などに応じて
発達段階の学習内容が,一番曖昧であるボー
学習すること,将来に向けて主体的な運動実
ルゲームで行うこととした。また,技能を高
践能力を育てることが重要になり,
「 自ら学び,
める支援の内容の具体化や,発達段階に応じ
自ら考える力」を育てる課題解決型の学習を
て支援の在り方を,追究するという視点から,
中心にして展開されているところである。
今年度は各発達段階をラグビー型ゲームで統
しかし,今日の体育は楽しさを強調しすぎ
一し,タグラグビーにおいて検証していく。
たため,
「できなくても楽しければ」といった
さらに,昨年度の成果として,低学年の慣
体育であったり,課題解決力の育成という名
れ遊びや中学年のミニゲームによって技能の
のもとに,直接的な指導を否定するような風
伸びが見られたことから,高学年や中学校に
潮が生み出されたりと,技能習得の学習を軽
おいても同様の成果が得られるのではないか
視する傾向が見られるようになってきている
と考え,ミニゲームの工夫に研究内容を焦点
ことも確かである。特に,技能の低い児童生
化し,本研究主題を設定した。
徒が取り残され,発展的な楽しさが保障され
ていない実態がみられる。その理由として,
2
主題の意味
体育授業において,発達段階に応じて能力育
(1) 「発達段階に応じて技能が高まる」とは
成に向けた指導がなされていないことも考え
児童生徒が各発達段階において,ボールゲ
られる。
ームを楽しむための最低限の技能,個人や集
平成 18 年の中教審「健やかな体」専門部
会の審議過程では,すべての児童生徒に保障
団の動き方を習得し,それらを生かしてゲー
ムを楽しんでいる姿である。
すべきミニマムを特定すること,そして,そ
各発達段階において,目指す姿を設定する
の到達目標を①身体能力②知識,思考・判断
際には,児童生徒及びクラスの実態と,昨年
③態度の3領域で検討することになった。こ
度の研究から明らかになった各発達段階の,
のことから,児童生徒にミニマムを習得させ
技術内容の割合(P2表-1)を考慮する。
るには,教師の指導力や発達段階に応じた適
切な指導法が必要になると考えられる。
児童生徒がもっとも嬉しいのは,運動が「で
きる」ようになったときである。基礎的・基
本的な知識・技能と自ら学び考える力を総合
保体-1
体によって満足させられる時期と考え,
「 動きづ
指導内容の割合
くり」を進めながら,自然に身体諸機能の発達
をねらうものとする。
戦術的集団技術
小学校中学年期•••この時期の児童は,低学年
に残っているような幼児期的な特徴が消え,自
他の関係を客観的にとらえることができるよう
戦術的個人技術
になったり,集団意識が芽生えてきたりする段
個人技術
階である。つまり,他者とのかかわりを意識し
低学年 中学年
高学年
たり求めたりすることができるようになってく
中学校
る時期といえる。さらに,競争への意欲も高く
発達段階
表-1
なり,集団の中で仲間と連携・協力して,他の
集団に勝ちたいという欲求も高まってくる。ま
発達段階における指導内容の割合
た,この時期の児童の体は,幼児期から続いた
(2) ミニゲームの工夫とは
体力,運動能力の発達が水準に達し,これから
ラグビー型ゲームにおける技術を洗い出し,
始まる発達促進の準備期にあり,次の時期への
発達段階に応じて,どのような技術を身に付
橋渡しの時期ともいえる。つまり,この時期は
けさせるか検討し,その技術を身に付けるこ
低学年の時よりも複雑な運動や工夫した運動の
とができるミニゲームを設定する。また,現
楽しみ方,ならびに,運動量の豊かな運動に取
存するミニゲームだけでなく,新しいミニゲ
り組むのに適している時期と考え,積極的に運
ームの開発も考えていく。
動に参加できることをねらうものとする。
さらに,学習過程におけるミニゲームの位
置付けも考慮していく。
小学校高学年期•••この時期の児童は,中学年
の頃から育っている仲間意識をもち,いつも仲
間と一緒にいて遊びなどの行動をともにする傾
3
向が,組織的集団的活動へと発達していく段階
発達段階の具体的とらえ方
本研究を進めるにあたって児童生徒の発達段
である。集団の中で目的をもち,それをみんな
階を,発達特性と運動から小学校低学年期,中
で協力して達成していく。この過程で問題が生
学年期,高学年期,中学校期のそれぞれの発達
じれば,それを自分たちで解決する。また,思
段階に分けて考えていくものとする。
考については,それまでの具体的な思考から抽
小学校低学年期•••この時期の児童は,全体と
象的な思考,論理的な思考への移行,さらには,
部分,部分と部分,原因と結果の関係を十分に
自己中心的な思考から客観的な思考へ移行され
理解できず,自己中心的な行動が残っている段
る。また,この時期の児童の体は,次にむかえ
階である。また,自己主張をし,自分の存在を
る思春期への移行期である。体は大きくなり機
示したいという欲求が強い。しかし,1年程経
能的にもかなり高い水準にある。つまり,この
つといろいろな能力が高まってくる。競争意欲
時期は,運動技術や戦術,練習などへの取組が
も強くなり,周りの人から認められることを求
変わる時期と考え,学習環境の整備をし,運動
める傾向も強くなってくる。また,この時期の
意欲を十分に満たすことをねらうものとする。
児童の体は,神経系の関与する能力の発達は他
中学校期•••この時期の生徒は,組織的集団的
の能力よりも盛んなので,調整力の発達を促進
活動が充実する時期である。集団における自分
することが望まれる。つまり,この時期は運動
の役割を自覚し,自己の責任の範囲内で自己の
に対する興味・欲求は,体を動かすことそれ自
意志に従って行動するようになるので,集団ス
保体-2
ポーツを好む傾向にある。思考については,抽
6
研究の仮説
象的な思考,論理的な思考が定着し,客観的な
ラグビー型ゲームにおいて,各発達段階で身
思考ができるようになる時期である。また,こ
に付けさせたい技術に応じたミニゲームの工夫
の時期の児童の体は,発達が成熟の段階にあた
をすれば,児童生徒が発達段階に応じて技能を
るが,各部位や器官の発達がもっともアンバラ
高めることができるであろう。
ンスな時期であり,成長の遅速が見られ個人差
が大きく,しだいに性差もはっきりしてくる。
7
研究の内容と方法
したがって,発達の個人差と性差の側面から考
ラグビー型ゲームにおいて,児童生徒の発達
えて,教材選択や教材体系(教材の順序)をあ
段階に応じて技能を高めるには,ミニゲームの
る程度考慮する必要がある。つまり,この時期
工夫が大切であると考えた。本年度は,発達段
は,個人や集団の能力に応じて合理的に運動に
階に応じてミニゲームの工夫及び新しいミニゲ
取り組もうとする時期と考え,運動技能を高め
ームの開発,さらに,学習過程におけるミニゲ
ることをねらうものとする。
ームの位置付けも考慮し,研究を進めていくこ
ととした。
4
(1) 研究の内容
具体的な目指す姿
発達段階に応じてミニゲームを工夫し,学
各発達段階において,本研究で目指す具体的
な技術を,次のように設定した。
習過程に位置付ける。各学年期において,ミ
小学校低学年期
ニゲームⅠ・Ⅱを設定し,ミニゲームⅡが次
○ボールを持って走る
の 学 年 期の ミ ニ ゲ ーム Ⅰ へ ス パイ ラ ル す る
○タグを取る
ように系統性をもたせる(資料-1)。
○逃げる
(2) 研究の方法
前述の内容を学習指導に取り入れ,毎時間
○追いかける
小学校中学年期
の児童生徒の変容を記録し,仮説検証する。
検証する学年・単元は次の通りである。
○パスを出す
[小学校]
○パスを受ける
2年生「ボールはこびゲーム」
○意識してかわす
4年生「タグラグビー」
○相手を追い詰める
5年生「タグラグビー」
[中学校]
小学校高学年期
2年生「タグラグビー」
○タグを取られる前にパスを出す
○自陣を守る工夫をする
資料-1
中学校期
○相手をひきつけて,
タグを取られる前にパスをする
ミニゲームⅠ
ミニゲームⅡ
学習過程
低
個人技術Ⅰ
戦術的個人技術
資料-7
中
個人技術Ⅱ
○相手を分析して守る工夫をする
戦術的個人技術
高
5
発達段階に応じて身に付けさせたい技術
研究の目標
高度な
戦術的個人技術
ラグビー型ゲームにおけるミニゲームの工夫
中
を通して,発達段階に応じて技能を高めること
学
ができるボールゲームの学習指導法を明らかに
する。
保体-3
戦術的集団技術
高度な
戦術的個人技術
戦術的集団技術
高度な
戦術的集団技術
資料-17
資料-28
資料-37
8
研究内容の一覧表
個人技術 戦術的個人技術
小学校
低学年 小学校
中学年 小学校
高学年
中学校
○ボールを持って走る ○パスを出す
○しっぽを取る
○パスを受け取る
→タグを取られた後に
○逃げる
○追いかける
○意識してかわす(フェイント)
○相手を追いつめる
戦術的集団技術
○タグを取られる ○相手を引きつけてタグ
を取られる前にパスを
前にパスを出す
→ ノーマークの人 出す
にパスを出す
「サインプレー」
・とばすパス
○自陣を守る工夫
・クロス
・ダミー
○相手を分析しながら
守る
ミニゲームⅠ
○ボールはこび
ゲーム
○タグとり鬼
○パスゲーム
ミニゲームⅡ
ミニゲーム
○ボールはこび
リレー
○ボールはこび
ゲーム
○トライゲーム
<1対1>
○トライゲーム
<1対1>
主ゲーム
○ボールはこびゲーム ○タグラグビー
<4対4>
(ミニゲームⅡ)
○トライゲーム
<2対1>
<2対2>
○タグラグビー
<4対4>
保体-4
○トライゲーム
<2対1>
<2対2>
<3対2>
○ワンプレーゲーム
○タグラグビー
<6対6>
(ア) ボールはこびリレー
第Ⅱ章
児童にとってボールを持って走るという
指導の実際とその考察
動きは初めての経験であるため,動きに慣れ
1
させる必要があると考え,ボールをはこびな
小学校2年生「ボールはこびゲーム」
(1) 低学年での学習過程のとらえ方
がらリレーするゲームを行った。おもなルー
本単元で身に付けさせたい技術は,個人技術
ルは,ボールをバトンの代わりにして,チー
である「ボールを持って走る」
「タグを取る」と,
ム対抗で走距離 40mの折り返しリレーとし
戦術的個人技術である「逃げる」「追いかける」
た。ボールは,持って走ることに適したラグ
の4つである。
ビーボールを使用した。
そこで,単元の前半(3時間)は,個人技術を
初めは,両手でボールを持って走ったり,
身に付けるためのミニゲームⅠを行い,単元の
お腹の辺りに抱えて走ったりと,思い思いの
後半(4時間)は,戦術的個人技術を身に付ける
走り方をしていた。そこで,ゲーム中に「脇
ためのミニゲームⅡを行うステージ型の学習過
に抱えて走ると速いね」「ボールの持ち方が
程を設定した(資料-2)。
上手だよ」などのボールを持った走り方に対
ミニゲームⅡで行ったボールはこびゲームは,
して声かけしたり,学習後の振り返りでボー
ボールゲームの系統的なカリキュラムにおいて,
ルを持った走り方を交流したりした。このこ
タグラグビーのミニゲームとして位置付けられ
とにより,次第にボールを脇に抱えて,ボー
るが,2年生は鬼遊びからタグラグビーへ移行
ルを持っていない方の腕をしっかり振って
する段階であり,攻撃側全員がボールを持って
走ると,速く走ることができることに気付き,
ゴールを目指し,パスがないボールはこびゲー
全員がこの走り方で走るようになった。
ボールを持って走ることに慣れてきたら,
ムを主ゲームとして単元を構成した。
(2) 発達段階に応じたミニゲームの工夫
コースをジグザグにして変化をもたせるこ
ア
とによって,コースを変えて走ることができ
ミニゲームⅠ
ミニゲームⅠとして,ボールを持って走る技術を
身に付けることをねらいとするボールはこびリレ
ーと,タグを取る技術を身に付けることをねらい
とするタグとり鬼の二つを取り上げた(資料-3)。
るようにした。
(イ) タグとり鬼
タグを取ることに慣れさせるために,お互
いのタグを取り合うゲームを行った。ボール
はこびゲームのコートで,2チーム対抗の形
資料-2
技術
めあて1
めあて2
式をとった。
学習過程における内容
初めはどちらかのチームのタグがなくな
ミニゲーム
ボールはこびリレー
るまで競わせたが,1試合に3分以上かかる
タグとり鬼
こともあり,最後は疲れて走れない状態にな
戦術的
ボールはこびゲーム
ったので,1試合1分間の時間制にし,残っ
個人技術
(主ゲームとして)
個人技術
資料-3
たタグが多いチームを勝ちとした。
ミニゲームⅡのボールはこびゲームにつ
ミニゲームⅠ
なげるためにタグを取った時に大きな声で
「タグ」と言うことを指導した。
ゲーム中は,タグの取り方を意識させたの
で,
「勢いよく取る」
「体を低くして取る」な
ボールはこびリレー
どのよい取り方に気付き実行していた。
タグとり鬼
保体-5
イ
ミニゲームⅡ
資料-4
たので,
「タグを取られても相手の得点にはな
らない,ゴールに行かないと得点できない」
ボールはこびゲーム
というゲームの特性を再認識させた。
第5時までに身に付けさせたい動き方は,
児童から出つくしたので,第6時以降は「自
分が得意な逃げ方で攻めよう」
「相手の逃げ方
に合わせて追いかけよう」と,技術の定着に
ミニゲームⅡとして,タグを取られないよ
支援の重点を置いた。
うにゴールに向かって逃げる技術と,得点さ
毎時間,ゲーム①とゲーム②の間にチーム
れないように相手を追いかけて,タグを取る
タイムを設定し,チームの中で逃げ方,追い
技術を身に付けることをねらいとするボール
かけ方を振り返らせた。
はこびゲームを取り上げた(資料-4)。
(3) 考察
おもなルールは,次のとおりとした。
ア
ミニゲームⅠ
ボールはこびリレーにおいて,児童は「脇
・ ゲームには,4人が出る。
・ コートの広さは,縦 14m,横7m。
に抱えて走る」
「ボールを持っていない方の腕
・ タグを取られないで,相手のゴールにボ
をしっかり振る」などのボールを持ったよい
走り方に気付き,その技術を身に付けること
ールを運んだら1点。
・ ボールを持っているときにタグを取ら
れたら,スタートライン(センターライ
ができた。
また,タグとり鬼において,児童は「タグ
をよく見て取る」
「体を低くして取る」などの
ン)に戻る。
タグのよい取り方に気付き,その技術を身に
・ 4分で攻めと守りを交代する。
学習前に今日がんばることをノートに書か
付けることができた。
せることによって,タグを取られない逃げ方
さらに,図-2から分かるとおり,学習後
や得点されない追いかけ方に対するめあて意
のアンケートでもミニゲームの中で自分の技
識をもたせた。
能が高まったことを実感している児童が多か
ゲーム中は,「逃げ方が上手だよ」「相手が
った。
いないところに走るといいね」
「どうしたら相
以上のことから,ミニゲームによって「ボ
手に抜かれないかな」
「端っこに追いつめたら
ールを持って走る」
「タグを取る」という個人
いいね」など,タグを取られない逃げ方や得
技能を高めることができたと考える。
点されない追いかけ方を意識させることを中
ボールはこびリレーで走り方
タグとり鬼でタグの取り方
ボールはこびゲームで逃げ方
ボールはこびゲームで追いかけ方
心に声かけした。
また,児童から出された逃げ方や追いかけ
方,教師から取り上げた逃げ方や追いかけ方
を掲示板に残していくことで,タグを取られ
ないよい逃げ方や得点されないよい追いかけ
方を振り返ることができるようにした。
とてもなった
なった
ならなかった
ボールはこびゲームの初めは,タグを取ら
全然ならなかった
れないようにという方へ意識が向いてしまい,
0
5
10
15
20 (人)
相手とにらみ合ったままでいたり,コートの
外でスタートせずにいたりする児童が多くい
保体-6
図-2
ミニゲームで動き方が上手になったか(28 人)
しかし,タグとり鬼では「タグを取られな
ウ
単元を通して
いように逃げる」「タグが取れるように追い
楽しさ
かける」という戦術的個人技術や「みんなで
3
相手を囲んでタグを取る」という戦術的集団
2.5
技術に児童の意識が向いてしまう面もあっ
た。
イ
技術の上達
2
1.5
1
0.5
ミニゲームⅡ
0
ボールはこびゲームにおいて,児童は「相
手がいないところへ走る」「ジグザグに走る」
第1時 第2時 第3時 第4時 第5時 第6時 第7時
図-3
毎時間の自己評価の平均点(3点満点)
「相手の正面に行く」「端っこに追いつめる」
鬼遊び(学習前)
ボールゲーム(学習前)
ボールはこびゲーム(学習後)
などのタグを取られないよい逃げ方や得点さ
れないよい追いかけ方に気付き,その技術を
身に付けることができた。
大好き
好き
また,資料-5は抽出チームのゲームにお
ける動きを分析した結果(攻撃側はボールを
持って後ろ向きに逃げる,守備側はゴールに
嫌い
大嫌い
0
5
10
15
向かって追いかけるという望ましくないプ
レーの回数)である。学習前に比べて望まし
図-4
20 (人)
ゲームの好嫌度(28 人)
くないプレーが減っていることから,タグを
図-3から分かるとおり,ほとんどの児童
取られないようにゴールに向かって逃げる
が毎時間,「楽しく学習できた」「じょうずに
こと,得点されないように追いかけてタグを
なった」という意識をもっていた。
取ることができるようになったことがうか
また,図-4から分かるとおり,学習前の
アンケートで鬼遊びが「嫌い」と答えた6人
がえる。
さらに,単元の後半では,個人技術の高ま
とボールゲームが「嫌い」と答えた1人(重
りと同時に「味方と一緒に走って,その人が
複している)が,学習後のアンケートでは全
タグを取られている間にトライする」「一人
員が「好き」になっていた。
一人相手を決めて守る」などの戦術的集団技
また,学習後の感想として次のような記述
をしている児童がいた(資料-6)。
術も自然と高まった。
しかし,技能が高まるにつれて,動きがダ
このような児童の姿から,ミニゲームによ
イナミックになり,コートが狭く感じられた
って「ボールを持って走る」
「タグを取る」の
ので,コートの広さを再考する余地がある。
個人技術,「逃げる」「追いかける」の戦術的
資料-5
ゲーム中の望ましくないプレーの回数
(チーム全体で)
学習前
個人技術を身に付けるという学習過程をとっ
たことが,ボールはこびゲームの楽しさを十
分に味わわせることにつながったと考える。
第6時
資料-6
攻撃側
9
5
学習後の感想
ぼくは,ジグザグとくねくねの組み合わ
せをきようしました。これをつかったら,
守備側
8
2
7点も入りました。さいしょは,とにかく
まっすぐ走っていたけど,今ではいろんな
走り方ができます。
保体-7
資料-7
小学校2年生「ボールはこびゲーム」の学習過程
保体-8
2
小学校4年生「タグラグビー」
資料-9
ボールはこびゲームのルール
(1) 中学年での学習過程のとらえ方
タグラグビーは中学年になって初めて経験
する運動である。そこで,学習を進めていくに
あたり,児童に身に付けさせたい技術を,パス
を出す・受け取る,意識して相手をかわす,相
手を追いつめるとし,これらの技術が身に付く
ようなミニゲームを学習過程に位置付け,勝ち
負けの楽しさに浸りながら技術を身に付けら
れるようにした。
単元前半のめあて1では,相手から逃げる・
相手を追いかける戦術的個人技術,タグを取ら
資料-10
ボールはこびゲームの様子
れた後にパスを出す・パスを受け取る個人技術
を身に付けさせるミニゲームⅠを位置付けた。
単元後半のめあて2では,相手を意識してか
わす・相手を追いつめる高度な戦術的個人技術
を身に付けさせるミニゲームⅡを位置付けた。
る意識を向上させるために,ゲーム中,後ろ
今回,中学年では,資料-8のように実施した。
に逃げた回数を数えさせるようにした。
(2) 発達段階に応じたミニゲームの工夫
守る側には,タグを取ることに慣れさせる
ミニゲームⅠ
ために,タグを取ったら大きな声で「タグ」
ゲームを行うための技術を身に付けさせ
と言うことを確認したり,取りやすいタグの
るために,ボールはこびゲームとパスゲーム
取り方を見つけさせたりした。資料-9はボ
を行った。
ールはこびゲームのルール,資料-10 はゲー
ア
ムの様子である。
(ア) ボールはこびゲーム
ボールはこびゲームでは,相手から逃げ
(イ) パスゲーム
る・相手を追いかけるといった戦術的個人技
パスゲームでは,ラグビーボールの安定し
術を身に付けさせることをねらいとして行
た投げ方・取り方といった個人技術を身に付
った。これは,主ゲームで使う実際のコート
けさせることをねらい,ゲームを進めた。
を使用し,3分で攻守・交代しながら行うも
初めは,個人の自由にまかせてボールを投
のである。攻める側は全員がボールを持ち,
げさせ,うまくいかなかったこと,うまくい
タグを取られないでゴールに駆け込むと得
ったことを出し合わせながら,ボールを投げ
点となり,守る側はタグを取ることで攻めを
たり受け取ったりするためのポイントに気
防ぐことができる。
資料-11
攻める側には,単にタグを取られないよう
逃げるのではなく,ゴールに向かって前に走
資料-8
めあて1
めあて2
学習過程における内容
技術
ミニゲーム
戦術的個人技術
ボールはこびゲーム
個人技術
パスゲーム
高度な戦術的個人技術
1対1トライゲーム
保体―9
パスゲームのルール
資料-12
パスゲームの様子
資料-14
クラスの宝
付かせるようにした。また,めあて2からは,
準備運動として毎時間の始めに行うように
資料-15
チームノートへのチェック
した。資料-11 はパスゲームのルール,資料
-12 はゲームの様子である。
イ
ミニゲームⅡ
ミニゲームⅡでは,相手を意識してかわ
す・相手を追いつめるといった高度な戦術的
個人技術を身に付けさせるために1対1ト
ライゲームを行わせた。主ゲームで使う実際
のコートを使用し,攻めと守り1対1で行う。
ラスの宝として価値付けることにより,ミニ
自分が相手をかわさなければならない,タグ
ゲームで動きを見つけようとする意欲や,ミ
を取って攻めを防がなければならないとい
ニゲームで見つけた動きを主ゲームに生かし
った1対1の局面を作ることで,かわす・追
ていこうとする意欲を高めさせようとした
いつめる技術を身に付けさせようと考えた。
(資料-14)。
資料-13 はトライゲームのルールとゲーム
(イ) チームノートへのチェック
の様子である。
ウ
ゲームでも動きを意識していくように,そ
主ゲームに生かすための工夫
れぞれの段階ごとにチームノートに動きを
ミニゲームで見つけた動き,身に付けた動
チェックさせるようにした(資料-15)。
きを主ゲームで生かしていくために,次のよ
(3) 考察
うな工夫を行った。
ア
(ア) 児童が見つけた動きの掲示物
今回,児童の技術の定着度を調べるために,
児童が見つけた動きをボードに掲示し,ク
資料-13
ミニゲームⅠ
トライゲームのルールとゲームの様子
抽出チームをしぼり,事前,第3時・5時・
7時と,ゲームの全景をVTRに収めた。そ
のVTRをチェックして,身に付けさせたい
技術が成功した数,出現数をもとにグラフを
作成した。作成したグラフは,図-6・7・
8・9である。
(ア) ボールはこびゲーム
ボールはこびゲームを行うにあたり,ゴー
ルに向かって前に走る意識を向上させるこ
と,相手のかわし方や取りやすいタグの取り
方を見つけさせることに重点を置いて,学習
を進めた。
保体―10
学習ノートの自己評価によると,第1時よ
回数ともに伸びていることから,逃げる・追
いかけるなどの戦術的個人技術が伸びたこと
事前
第3時
第5時
第7時
A児
りも第2時で,タグを取った回数,ゴールの
E児
チーム平均
が分かる(図-5)。
0
(イ) パスゲーム
5
図-8
10
15(m)
主ゲームにおける動きの出現数
パスゲームを始めた第3時以降,ゲームで
第5時
第7時
タグを取る動き
のパスの成功率が伸びていることが分かる。
相手をかわす動き
このことから,パスゲームを取り入れたこと
0
イ
5
10
15 (回)
により,パスを出す・受け取るなどの個人技
図-9 主ゲームでボールを持って前に進んだ距離の変容
術が身に付いたことが分かる(図-6)。
うと意欲的に活動する姿が見られた。
(イ) チームノートへのチェック
ミニゲームⅡ
1対1トライゲームを始めた第5時と比
動きを見つけたり,ミニゲームで身に付け
べ,第7時では動きの成功率が上がっている
たりするだけでなく,主ゲームで生かしてい
ことが分かる。相手をかわす動きについては,
くように,動きをチームノートにチェックさ
タグを取る動きも高まっていることと合わせ
せたことで,見つけた動きを生かしながらゲ
て考えると,動き自体の伸び率は低いものの
ームに取り組む姿が見られた。図-8の主ゲ
意識は高まっていると考えられる。これらの
ームにおける動きの出現数の表からも,その
ことから,1対1トライゲームを通して,意
伸びが分かる。
識してかわす,相手を追いつめるといった
図-9は,ボールを持ったワンチャンスで
高度な戦術的個人技術が身に付いている
前に進んだ距離を時間ごとに平均したもの
ことが分かる(図-7)
。
ウ
である。個人差は見られるものの,学習が進
主ゲームに生かすための工夫
むにつれボールを持って前に進む距離が長
くなっていることが分かる。このことからも,
(ア) 児童が見つけた動きの掲示物
児童が見つけた動きを掲示物として価値
今回の学習において,意識して相手をかわす
付けたことにより,トライゲームにおいて相
といった高度な戦術的個人技術が児童に身
手をかわす動き・追いつめる動きを見つけよ
に付いたことが分かる。
エ
タグが取れた
0
図-5
ミニゲームを取り入れ,技術を意識させて
第1時
第2時
ゴールができた
5
10
15
20
25
30 (人)
学習を進めたことにより,児童の意識面にも
高まりが見られた(資料-16)。
1時,2時での自己評価の変容
資料-16
事前
第5時
第7時
0
5
図-6
10
15 (回)
パスの成功度の変容
パスゲームやタグ取り鬼ごっこやトライゲー
ムなどのゲームを,試合前にやって,本番がより
強くなったと思います。それを7時間もやったか
らうまくなったと思います。
第5時
第7時
タグを取る動き
相手をかわす動き
0%
20%
40%
60%
80%
学習後の児童の感想
初めの時にあまりできなかったことも,時間ご
とに上達していくので,うれしくなっていった。
点を入れられた時,なんで入れられたのか。また,
入れた時,なんで入れることができたのか考えた
りして,次の時間に生かしていくことが,自分で
もうまくなったなぁと少しずつ感じられた。
第3時
図-7
単元を通して
100%
トライゲームにおける動きの成功率
保体―11
資料-17
小学校4年生「タグラグビー」の学習計画
保体―12
3
小学校5年生「タグラグビー」
資料-19
ミニゲームⅠの学習資料
(1) 高学年での学習過程のとらえ方
発達段階に応じて技能を高めるために,毎時
間のはじめにミニゲームを位置付けた。
単元前半のめあて1の活動では,「相手を意
識してかわす」「相手を追いつめる」といった
高度な戦術的個人技術を身に付けさせるため
に,1対1のトライゲームをミニゲームⅠとし
て位置付けた。
単元後半のめあて2の活動では,「タグを取
資料-20
ミニゲームⅠでの活動の様子
られる前にパスを出す」といった戦術的集団技
術を身に付けさせるために,2対1のトライゲ
ームをミニゲームⅡとして位置付けた。今回実
施した高学年における学習過程を簡単に表す
と資料-18 のようになる。
(2) 発達段階に応じたミニゲームの工夫
ア
イ
ミニゲームⅠ
ミニゲームⅡ
1対1のトライゲームとは,主ゲームのコ
2対1のトライゲームとは,主ゲームのコ
ートを使用し,両チームに分かれて1対1で
ートを縦半分にして使用し,両チームに分か
トライを競い合うゲームである。攻める側は,
れて,2対1でトライを競い合うゲームであ
相手にタグを取られないように,いかにして
る。コートを半分にすることで,パスを出さ
かわしながら前に進むかを思考させながら
ざるを得ない局面をつくり出し,タグが1回
行わせた。守る側は,相手をいかに追いつめ
でも取られたら守りの勝ちというルールを
てタグを取るかを思考させながら行わせた。
設定することにより,自然にタグを取られる
1対1の局面を意図的につくり出すことで,
前にパスを出す技能を身に付けさせようと
自然に相手を意識してかわす技能や,タグを
した。めあて1と同様に,資料-21 のように
取るために相手を追いつめる技能を身に付
学習資料を事前に提示し,ゲームのイメージ
けさせようとした。また,資料-19 のように
をもたせた。資料-22 は,ミニゲームⅡでの
ゲームの行い方やねらいを示した学習資料
実際の活動の様子である。向かってくる相手
を事前に提示し,ゲームのイメージをもたせ
の動きを見ながら,タグを取られる前に味方
た。資料―20 は,ミニゲームⅠでの実際の活
にパスを出そうとしていることが伺われる。
動の様子である。広いコートを生かして,走
る方向を急に変え,相手をかわそうとしてい
ることが伺われる。
資料-18
学習過程における内容
技術
ミニゲーム
めあて1
高度な戦術的個人技術
1対1トライゲーム
めあて2
戦術的集団技術
2対1トライゲーム
保体―13
資料-21 ミニゲームⅡの学習資料
資料-22
資料-25
ミニゲームⅡでの活動の様子
技能を高める段階的な重点目標
ボールを持ったらタグを取られるまで前に進もう。
ボールを持っている人のおしりを見て走ろう。
パスをしたら後ろへ回ろう。
タグされた後は攻めのラインをつくろう。
タグを取られる直前にパスをしよう。
ウ
主ゲームに生かすための支援
とができ,攻めると必ず得点が入るというゲ
(ア) 動きのヒントカードへの価値付け
ームの様相が見られるようになった。そこで,
ミニゲームⅠ・Ⅱともに,活動の様子をビ
高度な戦術的個人技術をもとにしたゲームか
デオに記録し,動きを客観視できる支援を行
ら,戦術的集団技術をもとにしたゲームへと
った。ビデオの中に出てきた高度な戦術的個
ゲームの質を高めるために,タグの回数を制
人技術や戦術的集団的技術につながる気付き
限するというルールの変更とともに,段階的
を動きのヒントカードに価値付け,主ゲーム
な重点目標を提示することとした。資料―25
の中での活用を促してきた(資料-23・資料
は,ゲームの中で提示した段階的な重点目標
-24)。
である。まずは,ボールを持ったら前に進む
また,高学年がねらう戦術的集団技術であ
意識を高めていき,タグ後のパスを正確に行
る「自陣を守る工夫」は,主ゲームを行う中
う指導をした。次にパスをもらう側の動き方
で出てきた工夫をヒントカードに価値付けた。
を工夫させ,タグ直前でのパスを意識させる
(イ) 技能を高める段階的な重点目標の提示
ことでゲームの質を高めようと試みた。
陣取り型ゲームであるタグラグビーは,ボ
(ウ) 学習ノートの工夫
ールを持ったら前に走ることが基本となる。
技能の高まりを児童に実感させるには,ゲ
しかし,ゲームの質が高まってくるとタグ後
ームの中でいかに成功体験を積んだかを認知
にパスを出し続けていくと必ずトライするこ
させることが大切と考えた。そこで,トライ,
資料-23 高度な戦術的個人技術を価値付けた動きのヒントカード
タグ,パスなどの個人の記録を残す個人ノー
トとゲームの中でどのくらい戦術的な動きが
出てきたかを記録させるチームノートを使用
した(資料―26・資料―27)。
資料-26
資料-24
資料-27
戦術的集団技術を価値付けた作戦のヒントカード
保体―14
個人ノート
チームノート
(3) 考察
トライアングル
ア
ミニゲームⅠ
とばしパス
クロス
チームノートに記録された高度な戦術的
ダミークロス
個人技術の各時間における平均使用回数を
集計したところ,追いつめ方は第4時に,か
フルバッ ク
水平ライン
わし方は第5時に最高値を示した。その後,
第6時,7時では,平行線をたどるようにな
できるようになっ た人
マ ークマ ーク
(人) 0
図-12
5
10
15
20
高度な戦術的個人技術を身に付けた児童の数
った。これは,ミニゲームⅠで身に付けてき
カットイン
フェイント
た技能が,ゲームの中で追いつめ方,かわし
チ ェン ジオ ブペース
方の順に使われるようになり,単元後半にな
まち ぶせタグ
スワーブ
ダ ミーパス
追いつめ タグ
ると,お互いの技能が均衡してきたからだと
追いかけタグ
(人) 0
考えられる。
(図―10)。
イ
5
10
15
20
25
30
35
ミニゲームⅡ
図-13
チームノートに記録された,戦術的集団技
で価値付けてきた技能がどのくらい身に付
術の成功回数を集計したところ,守り方が一
いたかを調査したところ,図―12,図―13
時的に高くなったものの,攻め方が安定して
が示す結果となった。カットインやとばしパ
伸びを示したといえる。これは,守り方の技
スをはじめ,多くの児童が高学年でねらう技
能が高まるにつれて,高度な戦術的個人技術
能を身に付けたことが分かる。
のみで得点することが困難となり,ミニゲー
ウ
で き るようにな った人
うらよ みタグ
戦術的集団技術を身に付けた児童の数
また,学習前後の自己評価を比較すると,
ムⅡで身に付けてきた,仲間を意識したタグ
図―14 のように,学ぶ,できる,楽しむのす
直前のパスをチームの戦術として使い始め
べての項目で伸びが見られた。特にできると
たためだと思われる。つまり,個人の技能を
学ぶという項目において大きな伸びを示し
主としたゲームから,チームの技能を主とし
たことは,客観的思考ができるようになる高
たゲームへとその質が高まってきたからだ
学年の児童にとってミニゲームで技能を高
と考えられる。(図―11)。
めることの有効性を物語る結果となった。
以上のことから,発達段階に応じたミニゲ
単元を通して
単元終了後に,ミニゲームや主ゲームの中
(回 )
4
ームを学習過程に位置付け,学習環境の整備
など,主ゲームに生かす支援を行ったことは,
3 .5
身体的にも成長し,運動技術への意識が芽生
3
2 .5
える高学年児童の運動意欲や技能を高める
2
1 .5
1
上で有効であったと考える。
かわし方
0 .5
追いつめ方
0
第2時
図-10
第3時
第4時
第5時
第6時
第7時
高度な戦術的個人技術の使用回数
学ぶ
(回)
7
6
学習前
5
学習後
できる
4
3
攻め方
2
守り方
1
楽しむ
0
第4時
図-11
第5時
第6時
第7時
(15点満点)
10
戦術的集団技術の使用回数
図-14
保体―15
11
12
学習前後の自己評価の記録
13
資料-28 小学校5年生「タグラグビー」の学習過程
保体―16
5
中学校2年生「タグラグビー」
資料-30
ミニゲームⅠ
(1) 中学校での学習過程のとらえ方
戦術的集団技術と高度な戦術的集団技術を身
に付けさせるためのミニゲームを考えて,学習
過程を組み立てた。中学校期における戦術的集
団技術とは「タグを取られる前にパスを出す」
「自陣を守る工夫をする」と考え,めあて1で
は,ミニゲームⅠとして2対1,2対2,3対
2を行った。中学校期における高度な戦術的集
団技術とは,「相手をひきつけて,タグを取ら
れる前にパスをする」「相手を分析して守る工
夫をする」と考え,めあて2では,ミニゲーム
Ⅱとしてハーフコートでチームで考えたサイン
資料-31
プレーを試みるワンプレーミニゲームを行った。
○主ゲームのコートの4分の1の広さで
今回実施した中学校における学習過程を簡単に
行う。(調節しても良い)
表すと資料-29 のようになる。
○2対1は1タグ,2対2,3対2は2
(2) 発達段階に応じたミニゲームの工夫
ア
ミニゲームⅠのルール
タグとする。
ミニゲームⅠ
○チームで5回攻撃をしたら攻守交代す
ミニゲームⅠでは,戦術的集団技術を高
る。
めながら,仲間と協力してゲームを行うこ
○1トライ1点で得点板に記録する。
とをねらいとし,主ゲームコートの4分の
へとつなげさせた。 また,ミニゲームⅠで,
1の広さで行わせ,同じような場面が何回
成功したプレーを提示して,他のチームに
も経験できるゲームとして設定した。資料
も紹介し,チームの新しい戦術を考えさせ
-30 のように,守りA,攻撃B,攻撃Cが,
る参考とさせた。ミニゲームの中で身に付
それぞれコーンをまわり2対1を行わせた。
けた個人技術や集団技術はグループノート
ボールをもらう攻撃Bと二番目のプレーヤ
に記録させた。資料-31 はミニゲームⅠの
ー攻撃Cのまわるコーンを分け,二番目の
ルールを簡単にまとめたものである。
プレーヤーがやや後方からボールに働きか
イ
ミニゲームⅡ
けできるように工夫し,ボールをもらうプ
高度な戦術的集団技術を身に付けさせる
レーヤーの位置を意識させた。段階的に2
ために,ミニゲームⅡでは,チームに応じ
対1,2対2,3対2と人数を増やした。
た攻撃や防御を考えさせ,戦術的集団技術
3対2では,攻守ともにラインを作った状
を生かしたゲームを行わせた。ミニゲーム
態でゲームをはじめさせ次のミニゲームⅡ
Ⅱでは,ハーフコートで主ゲームの時と同
資料-29
ミニゲームを位置付けた学習過程
じ人数で行わせ,できるだけ試合と同じよ
技術
ミニゲーム
うな場面を自分たちで考えて経験できるゲ
めあて
戦術的集団技
2対1,2対2,
ームとして設定した。トライ後や攻守交代
1
術
3対2
時に作戦ボードを使い,簡単なミーティン
めあて
高度な戦術的
ワンプレーミニ
グ(資料-32)を行わせ,サインプレーや
2
集団技術
ゲーム
ディフェンスの確認が随時できるようにし
た。その際にアドバイスを行い,ミニゲー
保体―17
資料-32
(3) 考察
作戦ボードの活用
ア
ミニゲームⅠにおいて
ミニゲームⅠでは,2対1,2対2,3
対2と段階的に行った。ミニゲームⅠで,
成功したプレーを他のチームにも紹介した
ことで,2対1では,相手を引き付けてパ
スを投げるプレー(資料-35)や,パスを
投げるふりをするダミーパスが見られた。
資料-33
2対2では,パスをした後もう一度パスを
ミニゲームⅡのルール
もらいに行くループプレーや,2人のプレ
○主ゲームのコートの半分の広さで行
ーヤーが交差するクロスやクロスダミーが
う。
○人数は守りの人数にあわせる。
見られるようになった。3対2では,フリ
○2タグで攻守交代とする。
ーのプレーヤーに直接パスをするとばしパ
○1トライ1点で得点板に記録する。
スが見られるようになった。また,ミニゲ
ムⅠで身に付けたプレーを組み合わせチー
ームⅠを進める上で,段階的に人数を増や
ムでできるサインプレーを考えてミニゲー
していったことは,生徒にとって学習がス
ムⅡで試させた。また,チームのディフェ
ムーズに流れ,個人やチーム(2人~3人)
ンスの方法を確認してチーム内で共通理解
の実態にあった戦術的集団技術の習得がで
できるようにした。資料-33 はミニゲーム
きた。
Ⅱのルールを簡単にまとめたものである。
ウ
イ
ミニゲームⅡにおいて
図-15 でも分かるように,ミニゲームⅡ
主ゲームに生かすための支援
主ゲームにおいては,ゲーム後のミーテ
では,ミニゲームⅠで身に付けたプレーを
ィングで必ず活動の振り返りを行い,ミニ
組み合わせ,チームでできるサインプレー
ゲームが生かされているかどうか,できな
を考えて試していくようにした。チームで
かったことなどを確認させた。個人のタグ,
考えたサインプレーが定着するようになっ
パス,トライの回数を記録させ技能の高ま
て,主ゲーム中で試す回数が増えてきてい
りを意識させた。サインプレーを試みた回
ることが分かる。授業終了後のアンケート
数と成功した回数を記録させ,ミニゲーム
でも「授業で主ゲームに生かされたこと
Ⅱで身に付けたことが主ゲームで生かせる
は?」という問いにほとんどの生徒がミニ
ようにした(資料-34)。
ゲームⅡと答えたことからも有効であった
資料-34
と考える(図-16)。
学習ノート
資料-35
保体―18
ミニゲームⅠでの活動の様子
第6時
サインプレー
第7時
トライ
第8時
試した回数
成功した回数
第9時
第10時
第11時
タグ
(回)
0
5
図-15
学習前期
学習後期
パス
(人)
0
10
サインプレーの回数
図-18
10
20
30
主ゲームの中でできたこと
生かされた
だいたい生かされた
ミニゲームⅠ
第5時
第6時
あまり生かされなかった
ミニゲームⅡ
生かされなかった
その他
0
(人)
5
10
15
20
25
(人)
図 - 16
ウ
主ゲームにいかされたことは?
図-19
ミニゲームⅠが主ゲームに生きたか?
主ゲームにおいて
ミニゲームⅠの段階(第3時~第5時で
はパスが少ないゲームだったことが図-17
で分かる。ダミーパスやクロスダミーで一
生かされた
だいたい生かされた
第7時
第9時
あまり生かされなかった
第11時
生かされなかった
0
人の生徒が独走する場面が多く見られた。
5
10
15
20
(人)
ミニゲームⅡの段階(第6時~第 11 時)で
は主ゲームに近づいたゲームを通してパス
エ
図-20
ミニゲームⅡが主ゲームに生きたか?
が定着してきたため,ゲームの中でパスが
ンケートで主ゲームの中でできたことを聞
多く見られるようになり,主ゲーム中のパ
いたものである。学習前期に比べ,サイン
スの回数が増えてきていることが分かる。
プレーや得点をあげるトライに対しての答
単元を通して
えが増え戦術的集団技術への意識が高まっ
タグラグビーの学習を通して,できるよ
たと考えられる。
うになったことを調査した。図-18 は,ア
図-19 は,ミニゲームⅠ,図-20 は,ミ
ニゲームⅡが,それぞれ主ゲームに生かさ
第3時
れたかをグラフに示したものである。時間
第5時
を重ねミニゲームが主ゲームに生かされて
いるのが分かる。
第7時
以上のことから,中学校期のボールゲー
第9時
ムにおいて,戦術的集団技術を身に付けさ
第11時
0
20
40
せるためのミニゲームⅠと高度な戦術的集
60
(回)
団技術を身に付けさせるためのミニゲーム
Ⅱを学習過程に位置づけていくことは大変
図 - 17
有効だったと考えている。
主ゲーム中のパスの回数
保体―19
資料―36 中学校2年生「タグラグビー」の学習過程
保体―20
第Ⅲ章
研究のまとめと今後の課題
ニゲームⅠで行い,ミニゲームⅡでは,
「タグ
を取られる前にパスを出す」ことを身に付け
1
研究のまとめ
ることをねらいとした戦術的集団技術を,2
本年度は,児童生徒の発達段階に応じて技能
対1などを通して支援していった。
を高めるには,ミニゲームの工夫が大切である
中学校期においては,小学校高学年期の戦
と考え実践し,その結果,ラグビー型ゲームに
術的集団技術,2対1や2対2をミニゲーム
おいて,学習過程におけるミニゲームの設定や
Ⅰで行い,動きを想起させた。ミニゲームⅡ
その内容,それに伴う支援が大切であることが
では,サインプレーなどにより,チームとし
確認できた。
て状況を判断してゲームを進めていくことが
できるような高度な戦術的集団技術を,ワン
(1) 学習過程のとらえ方
学習過程において,各学年期で身に付けさ
プレーゲームを通して支援を行った。
せたい技術「個人技術」
「戦術的個人技術」
「戦
このように,各発達段階で身に付けさせた
術的集団技術」(図-1参照)に応じたミニ
い技術を洗い出し,ミニゲームを工夫しスパ
ゲームを位置付け,主ゲームを行ったことは,
イラルさせ設定していったことは,児童生徒
実践結果を見ると,発達段階に応じて技能が
の発達段階に応じて技能を高めることにつな
高まり大変有効であった。
がったと考える。このことから,ミニゲーム
(2) 発達段階に応じたミニゲームの工夫
で身に付けた技術を,主ゲームにおいても発
ラグビー型ゲームにおいて,児童生徒の発
達段階に応じて技能を高めるには,系統性を
揮していくことにつながり,大変有効であっ
た。
もったミニゲームの設定及びその内容が大切
2
である。
小学校低学年期において,ミニゲームでは,
今後の課題
本研究では,ボールゲームにおいて,発達
「ボールを持って走る」
「タグを取る」といっ
段階に応じての支援の在り方をさらに追究す
た個人技術を身に付けさせることをねらいと
るという視点から,ラグビー型ゲームで統一
する,ボールはこびリレーとタグとり鬼を設
し,具体的に検証していった。研究の成果に
定した。主ゲームでは,相手から「逃げる」
ついては前述した通りである。
相手を「追いかける」といった戦術的個人技
今回対象としたラグビー型ゲームは,攻守
術を身に付けさせることをねらいとする,ボ
混合系陣取りゴール型である。今後は,他の
ールはこびゲームを設定した。
ボールゲームにおいて,発達段階に応じてど
中学年期では,低学年の動きの想起として
のようなミニゲームの工夫が有効であるのか,
のボールはこびゲームと,「パスを出す」「パ
9カ年間を見通したすべての児童生徒に保障
スを受ける」といった個人技術を含めた,円
すべきミニマムを,どのように学ばせたらよ
陣パスをミニゲームⅠで行った。ミニゲーム
いのか,今回の成果を基にしながら,検証を
Ⅱでは,
「意識してかわす(フェイント)」
「相
行っていくことが必要ではないかと考える。
手を追い詰める」といった,個人として状況
を判断してゲームを進めていく,高度な戦術
的個人技術を身に付けさせることをねらいと
3
あとがき
我が国において,球技が教材として導入さ
れたのは昭和22年の学校体育指導要綱から
する,1対1トライゲームを設定した。
高学年期では,中学年での高度な戦術的個
である。この要綱では,球技を野球型・庭球
人技術を想起させ,1対1トライゲームをミ
型・蹴球型・籠球型に分類し,それぞれの種
保体-21
目について解説している。しかし,球技の指
涯スポーツを目指した体育学習のあり方」が
導法についての解説は十分でなく,球技学習
浮上し,球技学習においても「ゲームの楽し
の定説もなく,もっぱら伝統的な武道型・徒
さ」という視点から検討が加えられた。
手体操型の指導である「示範と練習」の繰り
昭和60年代以降は,これまで検討された
返しによる指導法や教科外における球技クラ
運動技術やゲーム様相,運動の楽しさなどを
ブ型の指導法によって進められるなど,当時
学習として総合化するという視点から研究が
は暗中模索の指導であった。
進められ,特にゲームを中心とした学習を展
昭和30年代の前半では,ゲームと個人技
開し,勝敗の楽しさに触れることができる学
術のかかわりが強調され,球技学習は「ゲー
習環境をどのように生み出すかに関心が払わ
ムから出てゲームにもどれ」という主張がな
れてきた。
された。しかし,ゲームから出てくる課題は
そして,今日では「攻防の仕方を工夫する
個人技術であり,それを再びゲームにもどす
とともに,攻防の作戦に適した集団技術や個
という指導法で,個人技術とゲームを繰り返
人技術を活用できるようにする」など作戦を
す学習であった。つまり,全習法(ゲーム)
立ててゲームができるようになるということ
→分習法(個人技術)→全習法(ゲーム)と
が重視されるようになり,技術の指導に加え
いう指導過程で,分習法の中味が整理されな
て,戦術の指導の重要性が増している。子ど
いまま「ゲームから出てゲームにもどれ」と
もたちが自主的に作戦を立てられるようにす
いう球技学習のあり方であった。
るには,子どもたちがゲームを見る視点を共
昭和30年代の後半から昭和40年代の前
通にもつことが必要である。そのためには,
半では,運動の特性を技術構造から捉えたり,
ゲームに現れた状況やそこで求められる基本
技術を構成している中核技術とは何かという
的な技能を明確にし,ゲーム構造を捉えて指
外形的技術の特性から指導法の検討が進めら
導することが大切である。
れるとともに,学年別技術の問題についても
しかし,ゲーム学習の中核となるこの技術
検討が進められた。つまり,技術に関する学
-戦術的行動を習得する方法論はあまり明確
習内容の研究であり,特に球技では中核技術
にされていないのが現状である。また,子ど
を集団技術に据え,集団技術を学年別に系統
もたちの達成状況に,見合ったゲームが用意
化し,各学年に配当した。また,集団技術と
され,しかもそこで学習すべき内容もゲーム
ゲームや個人技術のかかわりを明らかにし,
能力の向上を目指して系統的に配列されてい
指導法を組み立てる研究も進められた。
るとはいえない現状もある。
昭和40年代の後半では,形式的集団技術
このような球技学習の現状認識から本研究
の指導法が問題になり,ゲーム内容を漸進的
を概括すると,基本的な技能を身に付けるこ
に発展する指導法の主張がなされた。つまり,
とを前提とし,ボールゲームに必要な戦術的
全習法と分習法をミックスした漸進的変容法
能力を徐々に高めながらボールゲームの楽し
による指導法の検討である。この主張はゲー
さを追求できる授業づくりを目指したもので
ムの捉え方を様相で捉えるということで具現
ある。その結果,個々のプレーを戦術的視点
化し,ゲームの高まりをゲームの様相で類型
から構造的に捉え,発達段階に応じてプレー
化し,ゲームの特徴が漸進的に変容する過程
のコツをつかませ,そのプレーをゲームの中
と,学習内容を対応させる捉え方へ発展した。
で使うために必要な戦術的思考の獲得を目指
昭和50年代では,引き続きゲーム様相を
した球技学習のあるべき姿が具現化されてお
発展させるための学習内容の検討が行われる
り,示唆に富む研究になっていると考える。
が,一方では学習指導要領の改訂によって「生
保体-21
(相部
保美)
参考文献
1
ホイジンガ
ホモ・ルーデンス
中央公論社(昭和 48 年)
2
クルト・マイネル
マイネルスポーツ運動学
大修館書店(昭和 56 年)
3
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学校体育用語辞典
大修館書店(昭和 63 年)
4
カイヨワ
遊びと人間
5
文部省
小学校学習指導要領解説
体育編
東山書房(平成 11 年)
6
文部省
中学校学習指導要領解説
保健体育編
東山書房(平成 11 年)
7
チクセントミハイ
楽しみの社会学
8
高橋健夫
体育科教育学入門
9
高橋健夫
体育授業を観察評価する
明和出版(平成 15 年)
10
三木四郎
新しい体育授業の運動学
明和出版(平成 17 年)
11
大修館書店
体育科教育(2006.02)
大修館書店(平成 18 年)
講談社(平成2年)
思索社(平成 13 年)
大修館書店(平成 14 年)
共同研究者
相
部
保
美
(福岡教育大学教授)
鈴
木
康
則
(主任指導主事)
冨
澤
一
史
(室見小学校教諭)
高
巣
健
一
(長丘小学校教諭)
児
玉
清
孝
(那珂小学校教諭)
林
田
栄
治
(鳥飼小学校教諭)
原
田
真
司
(長丘中学校教諭)
保体-21
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