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Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 9 月米農務省需給報告:コーン・大豆共に期末在庫が市場予想を上回る! ●新年度の米国産コーン、期末在庫が市場予想を下回る 米国産コーンの用途別需要 米農務省は、現地時間 9 月 11 日に発表した需給報告で、新穀となる 2015-16 年度の米国産コーンについて、供給 面は、「イールド」167.5 ブッシェルとし、前月(168.8 ブッシェル)から下方修正。市場予想(167.6 ブッシェル)も下回っ た。そのため、「生産高」は 135 億 8,500 万ブッシェルに下方修正され、市場予想(135 億 9,900 万ブッシェル)も下回っ ている。また、期初在庫も引き下げたため、「総供給」は 153 億 5,700 万ブッシェルとし、前月から 1 億 4,100 万ブッシェ ル下方修正した。 需要面は、「飼料・その他」を下方修正し、「総消費」は 137 億 5,500 万ブッシェルとし、前月から 2,000 万ブッシェル 引き下げた。ただ、実現すれば過去最高となる見込み。 結果、「期末在庫」は 15 億 9,200 万ブッシェルとし、前月から 1 億 2,100 万ブッシェル下方修正し、市場予想(16 億 4,300 万ブッシェル)を下回った。期末在庫率は 11.6%。 旧穀となる 2014-15 年度については、「輸出高」を上方修正した結果、「期末在庫」を 17 億 3,200 万ブッシェルに下 方修正している。期末在庫率は 12.6%。 2015-16 年度 米国産コーン需給テーブル 作付面積 8,890 万 エーカー 飼料・その他 52 億 7,500 万 ブッシェル 収穫面積 8,110 万 エーカー 食品・種・工業用 66 億 3,000 万 ブッシェル 52 億 5,000 万 ブッシェル 119 億 0,500 万 ブッシェル イールド 167.5 ブッシェル 17 億 3,200 万 ブッシェル 国内消費 生産高 135 億 8,500 万 ブッシェル 輸出高 18 億 5,000 万 ブッシェル 輸入高 3,000 万 ブッシェル 総供給 153 億 4,700 万 ブッシェル 総消費 137 億 5,500 万 ブッシェル 15 億 9,200 万 ブッシェル 期末在庫率 期初在庫 期末在庫 エタノール副産物 米国産コーン用途別需要の割合 11.6% ※USDA のデータを基に ERI 作成 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 1 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 ●新年度の米国産大豆、期末在庫が市場予想を上回る 米国産大豆の用途別需要 新穀となる 2015-16 度の米国産大豆需給について、供給面では、「イールド」は 47.1 ブッシェルとし、前月(46.9 ブッ シェル)から上方修正。市場予想(46.4 ブッシェル)も上回った。そのため、「生産高」は 39 億 3,500 万ブッシェルに上 方修正され、市場予想(38 億 6,900 万ブッシェル)を上回った。 ただ、「期初在庫」は前月から下方修正したため、「総供給」は同 1,100 万ブッシェル下方修正の 41 億 7,500 万ブッ シェルとした。 需要面では、「圧砕高」を同 1,000 万ブッシェル上方修正。結果、「期末在庫」は同 2,000 万ブッシェル下方修正の 4 億 5,000 万ブッシェルとなり、市場予想(4 億 1,500 万ブッシェル)は上回った。期末在庫率は 12.1%。 2014-15 年度は、「輸出高」を過去最高の 18 億 3,500 万ブッシェルに上方修正。また、大豆ミールの国内消費の増 加を背景に「圧砕高」も上方修正。結果、「期末在庫」は同 3,000 万ブッシェル下方修正の 2 億 1,000 万ブッシェルと予 測した。期末在庫率は 5.4%。 2015-16 年度 米国産大豆の需給テーブル 作付面積 8,430 万 エーカー 圧砕高 18 億 7,000 万 ブッシェル 収穫面積 8,350 万 エーカー 輸出高 17 億 2,500 万 ブッシェル 37 億 2,500 万 ブッシェル イールド 47.1 ブッシェル 2 億 1,000 万 ブッシェル 生産高 39 億 3,500 万 ブッシェル 輸入高 3,000 万 ブッシェル 総供給 41 億 7,500 万 ブッシェル 総消費 4 億 5,000 万 ブッシェル 期末在庫率 期初在庫 期末在庫 米国産大豆用途別需要の割合 12.1% ※USDA のデータを基に ERI 作成 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 2 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 ●新年度の世界コーンの生産高は前月比 751 万トン減の 9 億 7,810 万トンと予測 世界のコーン生産 2015-16 年度の世界コーンの「生産高」は前月比 751 万トン減の 9 億 7,810 万トンと予想。欧州連合(EU)が同 425 万トン、米国は同 257 万トン下方修正。フィリピン、モルドバ、セルビア、タイも小幅引き下げられた。 「期末在庫」は同 540 万トン減の 1 億 8,969 万トンとし、市場予想平均(1 億 9,344 万トン)のみならず、予想の下限(1 億 9,200 万トン)も下回った。米国が同 308 万トン、ブラジルは同 140 万トン、EU は同 113 万トン、ウクライナは同 60 万トン下方修正。一方、メキシコは同 65 万トン、中国は同 20 万トン上方修正されている。 「輸入」は世界全体で同 200 万トンの上方修正。EU が同 100 万トン上方修正されたほか、ベトナム、メキシコ、フィ リピンも上方修正されております。一方で、ブラジルは同 20 万トンの下方修正。「輸出」は世界全体で同 5 万トンの小 幅上方修正。EU が同 100 万トン下方修正された一方、ウクライナは同 100 万トン上方修正されている。 2014-15 年度については、「生産高」は前月比 123 万トン増の 10 億 0,747 万トンと予測。「期末在庫」は同 21 万ト ン減の 1 億 9,721 万トンとし、市場予想平均(1 億 9,705 万トン)を上回ったものの、予想の上限(1 億 9,770 万トン)は 下回った。 2015-16 年度 世界のコーン需給テーブル 世界全体 ウクライナ 生産高 9 億 7,810 万 トン 期末在庫 1 億 8,969 万 トン アルゼンチン 生産高 2,700 万 トン 世界のコーンの輸出シェア推移 中 国 生産高 2,500 万 トン 生産高 輸出高 1,550 万 トン 期末在庫 ブラジル 輸入高 生産高 7,900 万 トン 輸出高 2,400 万 トン 国内消費 2 億 2,500 万 トン 9,041 万 トン 300 万 トン 2 億 1,900 万 トン ※USDA のデータを基に ERI 作成 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 3 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 ●新年度の世界大豆の生産高は前月比 44 万トン減の 3 億 1,961 万トン 世界大豆生産 2015-16 年度世界大豆については、「生産高」は前月比 44 万トン減の 3 億 1,961 万トンと予測。米国が同 51 万ト ン上方修正された一方、ウクライナとカナダは下方修正された。 「期末在庫」は同 190 万トン減の 8,498 万トンとし、市場予想平均(8,621 万トン)のみならず、予想の下限(8,503 万ト ン)も下回った。アルゼンチンが同 67 万トン、米国は同 52 万トン、ブラジルは同 15 万トン下方修正された。また、カナ ダとウクライナも下方修正されている。 「輸入」は世界全体で同 8 万トン下方修正。「輸出」は世界全体で同 70 万トンの下方修正。ウクライナの引き下げが 大きな要因。 2014-15 年度は、「生産高」が前月比 1 万トン増の 3 億 1,937 万トン。「期末在庫」は同 184 万トン減の 7,873 万トン とし、市場予想平均(8,015 万トン)のみならず、予想の下限(7,937 万トン)も下回った。 2015-16 年度 世界の大豆需給テーブル 世界全体 生産高 期末在庫 アルゼンチン 3 億 1,961 万 トン 生産高 5,700 万 トン 8,498 万 トン 輸出高 975 万 トン 中 国 世界大豆の輸出シェア推移 ブラジル 生産高 1,150 万 トン 生産高 9,700 万 トン 期末在庫 1,615 万 トン 輸出高 5,450 万 トン 輸入高 7,900 万 トン パラグアイ 国内消費 9,170 万 トン 生産高 880 万 トン ※USDA のデータを基に ERI 作成 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 4 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 ●南米の動向(コーン) ブラジル国家食糧供給公社(Conab)は 9 月 11 日に、2014-15 年度同国産コーンの生産量見通しを 8,470 万トンと 予測し、前月見通し(8,430 万トン)から上方修正した。今年度 2 度目の収穫期となるコーンの生産量は 5,450 万トンと し、前月見通し(5,400 万トン)から上方修正。このうち 2,640 万トンが輸出に振り向けられるとの見通しを示している。 アルゼンチンのロサリオ穀物取引所は 9 月 9 日に、2014-15 年度同国産コーンの生産量見通しを 2,730 万トンと、 従来予想(2,580 万トン)から上方修正した。コルドバ州で作付面積が従来の見込みを上回ったことが理由。2015-16 年度の作付面積は前年度比 33%減の 330 万ヘクタールとなる見通し。なお、アルゼンチンでは 10 月に、エルニーニ ョ現象の影響で暴風雨などが見込まれているが、10 月は同国で作付けが始まる時期で、農家は低コストの大豆生産 を拡大し、コーン生産を縮小するとの見方が出ている。 米農務省によると、2015-16 年度の世界コーン生産に占める米国の割合は 34.8%である一方、南米 2 ヶ国(ブラジ ル、アルゼンチン)は 13.0%に過ぎず、依然として米国の動向に左右され易い。 ●史上最強のエルニーニョ現象に発達か? 米気象予報機関(NWS)傘下の気象予報センター(CPC)は 9 エルニーニョ監視海域の海面水温の変化 月 10 日に、太平洋赤道域東部の海面水温が平年を上回るエル ニーニョ現象が北半球の晩秋か初冬にピークに達し、春に後退 するとの見通しを示した。エルニーニョが北半球の冬まで続く可 能性については、前月予報の 90%強から約 95%に上方修正。 また、気象庁は 9 月 10 日に、9 月エルニーニョ監視速報で、エ ルニーニョ現象が続いているとし、今後についても「冬の間はエ ルニーニョ現象が続く可能性が高い」との見通しを示し、豪気象 庁オーストラリア気象局(BOM)は 9 月 1 日に、エルニーニョ現象 が、約 20 年ぶりの強いレベルに達していると発表。熱帯太平洋の高温異常は、1997-98 年に発生した同現象以来の 水準に達しているとした。また、世界気象機関(WMO)も 9 月 1 日に、エルニーニョ現象に伴う現在の天候パターンは、 2015 年 10 月-2016 年 1 月にピークに達するとみられ、史上最強の水準になる可能性があると指摘している。 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 5 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 ●南米の動向(大豆) ブラジル国家食糧供給公社(Conab)は 9 月 11 日に、2014-15 年度同国産大豆生産量を 9,620 万トンとし、前月見 通しで据え置いた。このうち大豆 5,000 万トンが輸出に振り向けられるとの見通しを示している。 また、ブラジル農業調査会社セレレスは 9 月 9 日に、これから作付けされる 2015-16 年度同国産大豆の生産量に ついて、前年度比 1.2%増の 9,710 万トンとの見通しを示した。大豆の国際価格はこの 3 年間下がり続けているもの の、2015-16 年度の作付面積は同 2.3%増の 3,220 万ヘクタールとなる見込み。同社は、「より有利な為替レートで魅 力的な利益が出ることを踏まえると、大豆相場の下落によって作付面積が減る公算は小さい」と述べている。ブラジ ル通貨レアルは年初来、対ドルで 30%下落しており、輸出業者は、海外の競合先よりも割安で販売し、レアル安に伴 う高利益をなお確保している状況としている。 ブラジルの大豆需給 近年、世界大豆生産に占める南米 3 ヶ国(ブラジル、アルゼン チン、パラグアイ)の割合は急速に拡大しているが、米農務省に よると、2015-16 年度の米国の割合は 33.2%となり、前年度から 0.7%低下する見込み。一方、南米 3 ヶ国は 51.1%となり、前年 度から 0.1%の拡大に留まる見込み。 アルゼンチンの大豆需給 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 6 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 ●中国政府、コーン備蓄を来年度も継続へ 中国のコーン輸出入の推移 中国国家発展改革委員会は 9 月 22 日に、2015-16 年度も コーンの買い上げ備蓄政策を継続し、購入価格は 2014-15 年 度(2,220~2,206 元)比 10%引き下げる方針を明らかにした。 東北部の農家に支払われる金額は 1 トン=2,000 元、期間は 11 月 31 日~2016 年 4 月 30 日まで。中糧集団(COFCO)など 国有企業 4 社が政府の指示を受けて買い上げる予定。 中国政府は、農家収入を支援するため、国内農家から市場 よりも高い価格でコーンを買い付けている。しかし、国産コーン 価格の高騰を受け、飼料工場によるモロコシ(ソルガム)や大 麦などコーン代替穀物の輸入が拡大。推計 1 億 5,000 万トンとされる国家備蓄からの売却が困難になっている。コー ン買い付け価格は、なお国際価格の 2 倍近い水準にあるが、引き下げは 2008 以来となる。なお、政府当局者は「ど んな対応策を取ろうと、農家収入が減少せず、市場もその価格を受け入れられるようにする必要がある」としている。 ●8 月の中国大豆輸入量は前月比 18.1%減となり、6 ヶ月ぶりに減少! 中国税関総署が発表した統計によると、8 月中国大豆輸入量(速報値)は前月(950 万トン)比 18.1%減の 778 トン となり、6 ヶ月ぶりに減少に転じた。前年同月(603 万トン)比では 29.0%増加。2015 年 1-8 月期累計では前年同期 中国の大豆輸入の推移 (4,770 万トン)比 9.9%増加の 5,244 トン。 ●中国農業省、GM 作物の違法栽培調査へ 中国農業省は 9 月 11 日に、遺伝子組み換え(GM)作物の 違法栽培に関する全国規模の調査に乗り出す方針を発表し た。今回の措置は、中国経営報が黒竜江省の一部の農家が、 高い収量を得るために GM 大豆を違法栽培していると報じたこ とを受けた措置。中国は、GM 作物に関する研究に多額を投じ ているが、国内栽培は認めていない。 ●初の米中農業対話を開催へ! 米政府は 9 月 16 日に、中国政府との「米中農業革新対話」を 9 月 24 日にワシントンで初めて開催すると発表。米 国からはビルサック農務長官とフロマン通商代表部(USTR)代表、中国からは韓長賦農相らが出席し、農業技術の 向上策や食料品の安全基準などを協議する予定。米中は 2014 年の首脳会談で農業問題の閣僚級対話の必要性を 確認しており、農業対話は今後毎年開かれる見通し。 市場関係者によると、習近平国家主席の訪米期間中に米国産大豆を大量に買い付ける模様。今回訪米する中国 代表団には、国有穀物商社の中糧集団(COFCO)や中国儲備粮管理総公司(シノグレイン)、黒龍江九三集団など 約 20 社が加わる見込み。なお、習氏が国家副主席として初訪米した 2012 年 2 月に、中国代表団は大豆 1,200 万ト ン余りの購入契約を締結し、一回の買い付け量として過去最大を記録している。 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 7 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 ●米国産穀物の生育状況 米国産コーンの作柄 米国産コーンの収穫率 米農務省が9月 21 日に発表したクロップ・プログレス(9 月 20 日現在)によると、米国産コーンの作柄状況は、「優」 と「良」の占める割合が前週と変わらずの 68%で、市場予想平均(68%)と同水準であったものの、前年同期(74%) は下回った。主要州ではアイオワが 79%、イリノイは 54%。 生育状況は、米国産コーンのデント率は前週比 7 ポイント上昇の 94%で、過去 5 年平均(93%)、前年同期(89%) を上回る水準。主要州ではアイオワが 95%(前年同期 91%)、イリノイは 100%(同 94%)。 成熟率は前週比 18 ポイント上昇の 53%で、過去 5 年平均(56%)を下回ったものの、前年同期(40%)は上回る水 準。主要州では、アイオワが 49%(前年同期 34%)、イリノイは 78%(同 53%)。 収穫率は前週比 5 ポイント上昇の 10%で、過去 5 年平均(15%)は下回ったものの前年同期(7%)は上回ってい る。主要州ではアイオワが 2%、イリノイは 13%。 米国産大豆の「優」と「良」の占める割合は前週から 2 ポイント上昇の 63%となり、市場予想平均(61%)は上回った ものの、前年同期(71%)は下回っている。主要州ではアイオワが 76%、イリノイは 54%。 生育状況は、落葉率は前週比 21 ポイント上昇の 56%で、過去 5 年平均(50%)や前年同期(42%)を上回す水準。 主要州では、アイオワが 48%(前年同期 31%)、イリノイは 54%(同 41%)。収穫率は 7%で、過去 5 年平均(7%)と 同水準。前年同期(3%)は上回っている。主要州ではアイオワが 1%、イリノイは 3%。 米国産大豆の作柄 米国産大豆の作付進捗率 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 8 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 ●マッカーシー米 EPA 長官、バイオ燃料の使用義務量は 11 月までに決定する 米環境保護局(EPA)のマッカーシー長官は 9 月 15 日に、エタノ 米国産コーン エタノール需要 ールなどのバイオ燃料の使用義務量を 11 月末までに決定すると改 めて表明。期限までに(使用義務量の決定を)終わらせることが優 先されると強調した。また、バイオ燃料への投資を促進することが 重要だと指摘している。 なお、エタノール生産大手の米レノバ・エナジーは、ワイオミング 州唯一のエタノール製造拠点であるワイオミング・エタノール LLC プ ラント(生産能力日量 1,000 万ガロン)を 9 月 4 日に閉鎖した。原油 価格が 6 年半ぶりの安値に落ち込み競争激化の中、生産者支援のための税額控除策が 6 月に打ち切られ、生産者 マージンが減少したことが理由と見られている。 ●E15、米自動車レースでの使用が 800 万マイル突破 全米コーン生産者協会(NOGA)は 9 月 11 日に、米自動車レース「NASCAR(ナスカー)」で、ガソリンに 15%のエタノ ールを混ぜた燃料「E15」を使った車の総走行距離が、9 月 12 日にバージニア州リッチモンドのレースで総走行距離 が 800 万マイルを超える見通しになったと発表。自動車レースでの過酷な使用にも十分耐えられることを示し、一般 への普及拡大を目指すとした。 同協会は「この 5 年間、ナスカーでは燃料に関係した問題は一度も起こっていない」と強調。これに対し、石油業界 は「自動車の故障の原因になる」として 10%以下に留まる様求めている。 ●米国の来年の農産物輸入が過去最高に 米農務省は 8 月 27 日に、2016 年の農産物輸入額が前年比 6%増の 1,225 億ドルとなり、過去最高になるとの予 測を発表。景気回復により、野菜や果物の輸入が増えるとしている。輸出額は同 1%減の 1,385 億ドルに留まり、農 産物貿易の黒字額は同 33%減の 160 億ドルと、9 年ぶりの低水準に落ち込む見通し。輸出が前年を下回るのは 2 年連続で、大豆相場の下落で中国向けが減少することが主因。輸出先別では、カナダが中国を抜いて首位に浮上す るとしている。日本向けは同 2%増の 120 億ドルの見込み。 ビルサック農務長官は、輸出は依然として過去 4 番目の高水準だとして「堅調な輸出は継続する」と強調。「農家に とって最善の通商協定を実現できるよう戦い続ける」と述べ、環太平洋連携協定(TPP)交渉などに全力を挙げる考え を表明した。 ●IGC、2015-16 年度の世界穀物供給は記録的水準へ 国際穀物理事会(IGC)は 9 月 27 日に、2015-16 年度の世界穀物供給量が、記録的水準に達する見通しだと明ら かにした。収穫高は 19 億 8,800 万トンと、従来見通しから 1,800 万トン上方修正。ただ、過去最高だった 2014-15 年 度(20 億 1,500 万トン)は下回る見通し。ロシア、ウクライナ、欧州連合(EU)諸国の小麦収穫見通しを上方修正する と共に、米国産コーンの収穫見通しを引き上げ、「前年度の豊富な繰り越し在庫と合わせ、総供給量(在庫、収穫)は 約 1,000 万トン増加し、記録的水準に達する見込み」としている。 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 9 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 ●今後の展望 シカゴ・コーン(12 月限、日足) 新穀が対象となるシカゴ・コーン(2015 年 12 月限)は、米国 産コーンが最重要生育期である受粉期を波乱なく通過し、「天 候プレミアム」が剥落。3 年連続の豊作が現実味を帯びる中、9 月 4 日に一時 360.50 セントまで下げるも、実需を中心に買い拾 われた様で、8 月 12 日の安値 357.50 セントを維持。そのため、 突っ込み売り警戒感が広がる中、9 月 11 日に発表された 9 月 米農務省需給報告で、2015-16 年度米国産コーンのイールド が市場予想よりも下方修正されたことから、売り方のショート・ カバー(買戻し)の動きが強まり急伸。100 日平均線及び、200 日平均線を突破し、9 月 15 日には 395.00 セントまで買い進め られたものの、7 月 14 日の高値 454.25 セントから 8 月 12 日の 安値 357.50 セントの下げ幅をフィボナッチ・リトレースメントで見た場合の 38.2%戻し水準 394.46 セントや切り下がっ てきている 50 日平均線でレジスタンスを受けた様で、上昇一服となっている。 毎週発表されているクロップ・プログレスによると、既に収穫は始まっているが、400 セント付近では生産コストをカ バー出来るだけに、農家の換金売りが出易くなっている様だ。ただ、今年は米中西部東側は大雨・洪水により、肥料 が流されたため茎が細くなるなど、作柄が悪化した一方、米中西部西側は良好な作柄を維持するなど、地域によって 作柄にバラつきが大きく、今後収穫が進むにつれて調査の精度が上がり、さらにイールドが下方修正されるとの見方 も出始めている。ただ、イールドは依然としてトレンド・イールドは上回っている上に、今後下方修正されても大幅に引 き下げられることは考えづらいだけに、イールドが過去 2 番目、生産高が 3 番目の高水準となるなど大豊作であるこ とには変わりはないことから、影響は限定的だろうか。 400 セント付近では「ハーベスト・プレッシャー」を受け易い一方、357.50 セントで「ハーベスト・ロー(収穫期の安 値)」を付けたとの見方も出始めているだけに、当面は 360-400 セントのレンジで推移するだろうか。 最近の輸出成約高は市場予想を下回ることが多くなっているが、 8 月の需給報告では輸出高が前月比 2,500 万ブッシェル下方修正さ 大口投機家の取組=CFTC・シカゴ・コーン れたが、飼料需要で競合する小麦が世界的に豊作である上に、ウ クライナが輸出攻勢を強め、南米産が豊作となる中、ドル高により 米国産コーンの国際競争力は弱まっている。その上、中国の期末 在庫が 1 億 5,000 万トンに膨れ上がっているとの見方も出ているだ けに、ファンダメンタルズの弱さも上値を押さえそうだ。 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 10 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report シカゴ大豆(11 月限、日足) 平成 27 年 09 月 24 日発行 新穀が対象となるシカゴ大豆(2015 年 11 月限)は、最重要 生育期である「着さや期」を無事通過し、3 年連続の豊作が日 に日に強まる中、中国の景気減速懸念が強まっていることも あり、900 セント台に戻すことが出来ず、上値の重い展開が継 続。そんな中、9 月 11 日に発表された 9 月米農務省需給報告 で、2015-16 度米国産大豆のイールドが上方修正されたことか ら、一時 853.25 セントまで下げるも、節目の 850 セントを維持し たことから売り方のショート・カバー(買戻し)を中心に買い拾わ れた様だ。また、コーンの急伸も好感された模様。 そのため、9 月 15 日に 894.50 セントまで上昇したものの、翌 9 月 16 日は高値面合わせとなり、上昇一服。米中西部の大豆 加工業者の需要減退を背景に、現物価格が軟化していることから軟調な地合いとなっている。今後も、収穫期が近 づく中、「ハーベスト・プレッシャー」が意識され、上値の重い展開が続くとの見方が多いだけに、節目の 850 セントを 維持出来るかどうかが引き続き焦点となりそうだ。 また、目先は 9 月 24 日にワシントンで開催される「米中農業革新対話」で、中国の大豆買い付けが発表されるかど うか注目される。なお、習氏が国家副主席として初訪米した 2012 年 2 月に、中国代表団は大豆 1,200 万トン余りの購 入契約を締結し、一回の買い付け量として過去最大を記録している。 また、ファンドの動向が注目されるが、商品先物取引委員会 (CFTC)のデータによると、大口投機家のシカゴ大豆のネット・ロン 大口投機家の取組=CFTC・シカゴ大豆 グは 9 月 15 日現在で 2 万 7,057 枚となり、13 週連続でネット・ロン グを維持。ただ、内訳をみると、ロングは 17 万 3,129 枚と 3 週連続 で増加している一方、ショートは 14 万 6,072 枚と 5 週連続で増加し ている。 EVOLUTION JAPAN Co.,Ltd. 11 Evolution Japan Co., Ltd. EVO Commodity Report 平成 27 年 09 月 24 日発行 ●8 月の世界食料価格は、6 年 4 ヶ月ぶりの低水準 国連食糧農業機関(FAO)が 9 月 7 日に発表した 8 月世界食料価格指数(2002~2004 年=100)は、前月から 8.5 ポイント低下の 155.7 となり、6 年 4 ヶ月ぶりの低水準となった。中国など新興国経済の減速で需要が減少、原油安も 生産コストを押し下げた模様。8 月に最も大きく下げたのは砂糖と乳製品で、砂糖は前年同月比 33.2%減、乳製品は 同 32.5%減。小麦やコメなどの穀物も同 15.1%低下。生産量は記録的な豊作だった前年を下回るものの需要を大き く上回り、FAO などの従来予想を超える見通し。原油安が続き、バイオ燃料の需要も減ると見られており、原料となる サトウキビやコーン、食物油などを燃料に振り向けられる分が、食料分に回され、その分供給が増える見通し。 世界食料価格指数は 2000 年は 100 未満であったものの、2008 年 6 月に 225.8 にまで急上昇。金融危機でいった ん下落したものの、新興国の需要増加への期待や世界的な異常気象を受けて、2011 年 2 月に 240.1 にまで再度上 昇。その後、原油安や世界的な穀物の豊作を受けて、下落基調が続いている。 なお、FAO は 7 月に経済協力開発機構(OECD)と共同でまとめた報告書で、穀物は過去 2 年で在庫が膨らんだこ とから短期的には弱含むと予想。全体的に技術向上による歩留まりの改善もあり、総じて低めに推移すると予測して いる。 (9 月 24 日 ERI 大湖 一樹 記) 本レポートは EVOLUTION 総研株式会社(以下「ERI」という)が情報提供を目的として作成したものであり、投資その他の行動を勧誘するも のではありません。本レポートは信頼できると思われる情報に基づき作成されておりますが、ERI はその正確性及び完全性に関して責任を負 うものではありません。また、記載された内容は作成時点のものであり、予告なく変更する場合があります。投資に係る最終決定はお客様ご自 身の判断でなさるようお願い致します。Copyright © EVOLUTION RESARCH INSTITUTE CO.,LTD All Rights Reserved. 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