Comments
Description
Transcript
コーパスを用いた英文・語法の研究
Corpus による英文・語法の研究 研究者:桑原 伊藤 指導教諭:田口 1 摩帆 正哉 裕士 千村 半坂 先生 友綺 剛志 松原 祥太 研究の動機 英語の歌を聴いていると、 wanna , gonna , gotta というような語がたくさん出てくる。これらの 語は発音する通りに書かれており、本来の語と表記が変わっているものであると知って興味を持った。 そして、このような語はどのくらい人々に定着しているのか、いつから使われ始めたのか調べてみた いと思い、調べ始めた。 また、海外の映画などを英語字幕で観ていた時、受け身の表現ががよく出てきていることに気付い た。例えば、 …all exams have been canceled. という文だが、これは直訳すると「全ての試験はと りやめになりました。 」と、物事(全ての試験)が主語になっている。しかし、実際に吹き替えを聴くと、 「全ての試験をとりやめにしました。 」と、省略されてはいるものの、人(私たち)が主語に置き換えら れている。この、日本語との感覚の違いに興味を持ち、調べようと思った。そして、一般的に受け身 にして用いる動詞がいくつかあるが、 (surprise, scare など)これを映画で見たときに他動詞で用い ている例がたくさんあった。例えば You surprise me. Did I scare you? などだが、この文は一般的 なのか興味を持ち調べてみようと思った。 同様に、意味の似ている語(類語)についても、普段の英語の学習や映画などから、その使い分けに ついて疑問に思い、研究を始めて行った。 2 研究の概要 それぞれが疑問に思ったことから研究対象を絞り込み、主に Corpus やコンピュータのツールを用 いて数値的に研究をしていった。具体的には以下の通りである。 【会話・音声】 発音する通り、聞こえる通りに表記されて使われている短縮語、特に wanna, gonna, gotta を取 り上げた。Google 書籍検索や txtana というツールを用いて、表記が変化している語ともとの形の 語の双方をできるだけ細かく調査し、得られたデータから考察していった。 【英文・語法】 類語 (例:見る watch, see, look など) や、他動詞 (例:驚かす surprise, amaze, astonish など) に ついて、 txtana を用い、使用されている用法の件数・使用頻度(%)などを調べ、データをまとめて 比較・考察をしていった。 6-1 3 研究を始めるにあたって この研究のデータの検証には、Corpus(コーパス)を利用した。Corpus とは、コンピュータで 検索することができるテキストデータのことであり、言語の研究、分析に利用されている。 今回は、独自に収集した小規模の Corpus を用いた。著作権の消失したもの、公開されている草稿 を中心に収集した。内容は以下の通りである。 movie written 映画・ドラマ 980 本 ― 会話英語の Corpus として使用 小説・ノンフィクション・エッセイ 181 篇 ― 文学作品の Corpus として使用 過去 10 年間の主要大学の入試問題 入試問題 ここで、研究に用いるツールについて説明する。 ★ txtana(テキスターナ) Corpus を検索・分析するソフトウェアをコンコーダンサと言う。 txtana とはそのコンコーダン サの一種であり、テキストデータが入った Corpus から、任意の表現を検索、表示できるツールであ る。検索には正規表現(※1)を用いる。 検索された表現のヒット件数や前後の文章が表示され、前後の語には何が多く来ているかなども調べ ることができる。 ★ Google 検索途中の例↓ web 検索・書籍検索 検索したい語句を入力することで、その語句の使われている web ページの一覧を表示することが でき、検索した語句のヒット数も調べることができる。 web 検索はすべてのホームページから検索、書籍検索は Google に登録されている書籍データの 文章中からのみの検索となる。 6-2 ※1 正規表現について 正規表現とは、文字列を表記する方式のこと。文字列に関して、様々な検索をすることができる。 次は、その中の基本的な記法。 [ ] (大括弧) ・・・指定した文字群列から任意の 1 文字を指定 例:[abcd] → a, b, c, d のいずれか 1 文字 [A-Z] ・・・任意の大文字 1 文字 例:[A-Z] → A, B, C … Z のいずれか 1 文字 [a-z] ・・・任意の小文字 1 文字 例:[a-z] → a, b, c … z のいずれか 1 文字 [A-Z][a-z] ・・・任意の大文字 1 文字+任意の小文字 1 文字 例:[A-Z][a-z] → Mr, Ms, At, By など ? (半角ハテナ)・・・前の文字の 0 回または 1 回の繰り返し 例:abcde? → abcd, abcde のどちらか + (半角プラス)・・・前の文字の 1 回以上の繰り返し 例:abcd+ → abcd, abcdd, abcddd … * (半角アスタリスク)・・・前の文字の 0 回以上の繰り返し 例:abcd* → abc, abcd, abcdd, abcddd … ( | ) (小括弧、パイプ)・・・指定された文字群列から任意の文字列を指定 例:(make|makes|made) → make, makes, made のいずれか 1 語 @ ・・・@不規則動詞、@a のようにすると、活用形の全てや冠詞類が検索される( txtana のみ) 例:@write = (write|writes|wrote|written|writing) 4 研究内容(結果・考察) 【会話・音声】 この研究にあたっては、主に txtana と、Google 書籍検索を使用した。 wanna , gonna , gotta は『発音綴り』という。これらはもとの語が、発音する通り、聞こえる通 りに表記されている語であり、なぜ聞こえる音が書かれているものと違うのか、それはいつから多く 使われるようになったのか、また、実際の会話でどのくらい使われているかを調べた。 まず、綴りが変化する経緯を調べた。 ・want to→wanna の場合 want to を発音するとき、t の音が連続していると片方の音が消える性質がある。さらに to の o は あいまいな音なのではっきり発音されない。→wanna となる。 ・got to→gotta の場合 got to は、t の音が連続しているので、片方の音が消える。また to の o の音はあいまいなのではっ きり発音されず、音がつながって gotta となる。 6-3 ・going to→gonna の場合 going は oi と母音が連続している。このときは後ろの音が弱くなる(→gong-to) 。 ing の g は、ナチュラルスピードになるとほとんど発音されなくなる(→gon-to) 。 t は n の音に飲み込まれるように消え、あいまいな母音の o が残る→gonna になる。 では、これらの語は会話にはどのくらいの頻度で出てくるのか? 研究には、Corpus を利用した。実際の日常会話から調べることはできないので、会話が多く出て くる映画を用いた。映画の音声と Corpus のテキストデータと照らし合わせてみると、ほぼ一致した ので、映画を観て音を確かめていくより、Corpus を用いた方が効率の良い検証ができると考えたた めこれを利用した。 発音綴りの語と、もとの単語の出てくる数を txtana で調べ、表にまとめた。 表-1 件数と割合 wanna/wanna+want to+want a written 入試問題 movie 1(0.016%) 1777(22.88%) 5954(96.36%) 5687(73.21%) 224(3.63%) 304(3.91%) wanna want to want a 0(0%) 1282(93.99%) 82(6.01%) gonna going to 1(0.05%) 2014(99.96%) 22(0.48%) 4541(99.52%) 10301(67.98%) 4852(32%) gotta got to have to have got to has got to 've got to 's got to 5(0.30%) 242(14.52%) 1228(73.67%) 24(1.44%) 18(0.84%) 110(6.60%) 44(2.64%) 7(0.10%) 191(2.83%) 6307(93.31%) 22(0.33%) 14(0.27%) 200(2.96%) 14(0.21%) 1995(22.05%) 949(10.49%) 5409(59.78%) 54(0.60%) 16(0.18%) 495(5.47%) 131(1.45%) ・ written・入試問題・movie の3つのグループに分け、wanna, want to, want a の和を分母とし、 各語のグループ内での割合を出した。 gonna , gotta についても同様に、それぞれのグループ の中で全体の数を分母とし、各語の割合を出した。研究結果の頻度(%)については、小数第 3 位 以下を四捨五入しているため、100%にならない場合がある。 ・ got to は、 「~に着く」という意味で使われる場合の数を引いた。 検索式 got to (@me|[A-Z][a-z]+|@a [a-z]+) を用いて、 got to + 名詞の件数を出し、細部に ついては検索された文を見て手作業で件数を修正した。 ○考察 gonna の頻度は非常に高く、疑問文や否定文にも出てきた。 (例文) ・What’re we gonna do? 入試問題より ・If you’re not gonna remember me for anything else, just go ahead. 入試問題より 会話表現でよく使われるとは言っても、本来正式な言葉で書かれているはずの入試問題にまで出て くるのは gonna が定着している証拠だといえる。 6-4 調べているうちに、 want to しか wanna にならないのか( wants to, wanted to も wanna に なるのか)と疑問に思い、txtana で主語を変えて検索してみると、 he wanna, she wanna などはほ とんどなく、出てくる場合はほぼ、Does に続く疑問文にしかなかった。 このことから、 wanna になる語は単純に意味が同じという理由だけで短縮しているのではなく、 きちんと音の変化に従って表記が変わっていると考えられる。 次に、この語がいつからよく用いられるようになったのかを、Google 書籍検索で調べた。 書籍検索を使用して、wanna, gonna, gotta が使われる書籍がいくつあるか年ごとに調べ、そこか ら、この3つの単語がいつから多く使われるようになったか調べ、考察をした。次のグラフは、wanna, gonna, gotta が書いてある書籍数を年ごとに表したものである。 グラフ-1 gonna 60 50 冊数 40 30 20 10 0 1908 1909 1910 1911 1912 1913 1914 1915 1916 1917 グラフ-2 wanna 60 50 冊数 40 30 20 10 0 1915 1916 1917 1918 1919 1920 1921 1922 1923 1924 1925 1926 グラフ-3 gotta 80 70 60 冊数 50 40 30 20 10 0 1904 1905 1906 1907 1908 1909 6-5 1910 1911 1912 1913 1914 ・gonna, wanna, gotta が今から約100年も前から使われていて、使用数も確実に増えてきている ことがわかった。 ・また下記の文は、実際に書籍にあった文章である。この頃は、Google 書籍検索上では gonna, wanna, gotta がヒットする件数はまだ尐ないが、確かに100年以上前からあることがわかった。 Where else am I gonna live? ━━ Last will and testament より 著者 Ev Miller 1869 年 ○考察 ・gonna、wanna、gotta ともに古くから使われていることから、大衆に古くから広く知れ渡った表 記であったようだ。 ・また、wanna の割合と gotta の割合がほぼ同じ理由については、同年代に多く使われだしたという ことから、人々のこの2つの言葉に対する感覚や印象が似ていたのではないか、と推測した。 ・gonna の割合は他2つに比べてとても多い。これは、wanna と gotta には他の意味もあるのに対し、 gonna は一つしかないことから、確実に意味が通じるため gonna は使われやすいと推測できる(going to には~に着く or~するつもりだという 2 つの意味があるが、意味によって次に来る語の品詞が確定 するため、判別は容易である) 。 表1では、映画 Corpus での wanna, gotta の割合が20%を超えたが、この数は多いのか?歴史的 な要素も踏まえて考察した。 ・Google 書籍検索による結果が正しければ、これらの語は約100年以上前(日本では1912年 は大正元年)から広まっており、現在でもさらに浸透してきていると考えられる。しかし、日本語と 違って流れるように喋る英語では、つづりが want to でも wanna でも実際の会話での発音に大差がな いので、発音綴りで書く必要性は尐ないはずである。また、結局は短縮形の元になる言葉を使用する のが正しいのだから、この数字は妥当なものかもしれない(実際に gonna だけなら実際に 60%を超え ている) 。 【英文・語法】 Ⅰ 類語研究 類語研究では、 「見る」という意味を代表する3語 see, watch, look を中心に、その用法の違いにつ いて、複数の辞書・文法書にあたり研究した。Corpus では、対象を日常会話に搾り込み、映画約1 000本の中からどれほど同じ意味として利用されている頻度があるのか、利用頻度を調べ、エクセ ルでデータの表を作成した。 まず、3 つの基本語およびその他の語の意味・用法は、以下の通りである。 see 目を向ける積極的な動作ではなく、見える・視覚に映るということが基本義である。つまり「見よう」という意志 はなく、モノを眺め、それが認識されるということである。 watch 注意・集中して目を向けるというニュアンス。Watch は通例動くもの、または動きそうなものを注意して興味をも って熱心に見守る意味に用いる。 6-6 もともと、「注意して見守る」という意識の強さから「見張る」という意味が生まれた。また、その他にも時間の経 過を見守り、休みなく時を刻む「時計」という意味になった。 look 見ようと思って「視線を向ける」が基本義であり、通例 look at の形で用いる。しかし、look の「目を向ける」は 目をジーッと向け続けるということではなく、何かが起こってそちらに注意がいく時に使う「見る」である。 *stare … じろじろ見る、 (驚き、好奇心などで)じっと見つめる *gaze … じっと見る、凝視する、注視する stare と gaze 特に意味合いが似ている stare と gaze の違いは相手に与える印象の違いである。 gaze は物や風景を「凝視する」いわば、眺めている状態で、どちらかといえば、プラスのイメージ。stare は「驚き・感嘆・恐怖などのために目を見開いてみる」の意で、しばしばマイナスイメージを伴う。好 奇心をあらわにして外国人を見つめる日本人の目を、外国人は「日本人は自分たちを『stare』して いる」と言って不快がることが尐なくない。 *peep … こっそり見る、のぞき見する *glance … ~をひと目[ちらりと]見る 以上の語の、映画での使用頻度は以下の表の通りである。 意味 動詞 see watch look at stare gaze glance peep 見る ※検索式 動詞 原形・現在形 過去・過去分詞形 4314 1742 508 59 716 51 12 1 8 1 3 0 2 0 -ing 238 209 141 51 0 0 2 計 6294 776 908 64 9 3 4 割合 77.59% 9.57% 11.19% 0.79% 0.11% 0.04% 0.05% (@me|[A-Z][a-z]+|@a [a-z]+) を用いて、他動詞の用法に限定して検索をした。see, watch, look のような基本語は、多義語であり、できるだけ「見る」の意味で用いられている文を検索するためである。look に ついては、look at に限定をした。look, watch には、名詞が含まれるので、冠詞類のつくものを検索し、総数から 引いた。 ○考察 txtana による使用頻度検索の結果、 「見る」という単語の中では、see (77.6%)、look at (11.2%)、 watch (9.6%), その他( stare, gaze, peep, glance )1.0%という結果になった。 名詞用法である意味の表現はほぼ除いたが、「見る」という意味だけでの検索は掛けることが出来 ないので、この結果はおおよその傾向である。see には、 「人に会う」の意味があるが、これは今回の 件数に含まれている。see の「わかる」の意味については、that 節をともなうものを除いてあるが、 その他のケースは含まれている。従って、「見る」の意味の see の頻度は、表よりも実際には低くな るはずである。 以上を考慮しても、日常会話における利用頻度が一番高い語は see 、2番目に look at 、3番目 6-7 に watch という結果になった。これは、 「ウィズダム和英辞書」(三省堂)のコーパス分析の結果とほ ぼ一致する。stare, gaze, glance, peep については、会話では使用頻度が低いが、written では、stare at (375 件), gaze at(211 件), glance at(393 件)となり、これらの動詞は、書き言葉で用いられること が多いことがわかる。peep は、特殊な意味のため、書き言葉でも動詞としての使用は尐ない。 同じ「見る」という意味でも、単語ごとに尐しずつ意味やニュアンスが違い、その微妙な違いによ って利用頻度が異なるということが分かった。実際に検索した例文を見ると、他の語で言い換えはで きない、または、言い換えるとニュアンスが変わってしまうことがわかる。 (a) “it's their only chance to see New York.” (b) “I'm going, I'm going.” “I can still see you!” (c) “Cover your eyes, Newt. Don't look at the light.” (d) “You didn't look at me at all,” (e) “Why don't we go to the beach, you know?” “Watch the sun rise or something?” (f) “I've been watching you with this McKay boy.” (g) “The way he's been looking at you, all your long, secret talks.” (a)、(b)は「見える、見えている」の see が適切であり、(c), (d)は「目を向ける」の look at が, (e), (f) は「 (注意して)見る、見守る」の watch が適切である。(f)の文のような、watch が完了進行形で用 いられている文は 18 件あるのに対して、look at が完了進行形で用いられているのは、(g)を含む 2 件だけであり、それぞれの語義の違いが影響しているように思える。 Ⅱ 他動詞研究 他動詞についての研究では、用法ごとの件数や頻度、主語ごとの件数や頻度を、 txtana を用いて movie ・ written それぞれから調べ、考察をした。 用いた正規表現は以下の通り ■全用法 (驚かす surprise を例に) (surprise|surprises|surprised|surprising) 全ての活用形をパイプでつなぎ、小括弧でくくる。検索した他動詞の全ての活用形(全用法)が表示さ れる。 ■他動詞用法 (surprise|surprises|surprised|surprising) (@me|[A-Z][a-z]+) 全活用形、半角スペース、 @me (代名詞全て)と [A-Z][a-z]+ (固有名詞=人名)をパイプでつなぎ、小 括弧でくくる。他動詞のあとには目的語(人)が来るため、これで検索できる。 ■受け身用法 (@be|s|m) surprised @be ( be 動詞の全活用形)と、 be 動詞の省略で用いられる s と m (’s と’m )をパイプでつなぎ、 小括弧でくくる。その後、半角スペース、動詞の過去分詞( ~ed )。 受け身用法は、肯定文のみ(疑問文・否定文は含めず)。 ■名詞用法① (@a|this|that|these|those) (surprise|surprises) @a (全冠詞)、 this, that, these, those をパイプでつなぎ、小括弧でくくる。その後、半角スペース、 動詞の原形、複数形。 6-8 ■名詞用法② (@a|this|that|these|those) [a-z]+ (surprise|surprised) ①の、2 つの小括弧の間に [a-z]+ (小文字から始まる、任意の 1 語以上)を 1~3 つ入れる。 この [a-z]+ は次の名詞にかかる形容詞で、それが 1 つ~3 つの場合を検索する。(前置修飾のみ) ①、②を合計したものが名詞用法の件数となる。(名詞用法については、動詞に名詞的意味のある語に 限る) これらの用法については、調べた中で文法的に違う用法だとわかるものは手作業で省いた 調べた他動詞は次にあげる 12 単語である。 ☆驚かす(surprise, amaze, astonish) surprise ・・・ 相手を驚かし、あきれさせるという意味をもつ。 amaze ・・・ 相手を仰天させる、とても信じられないほど驚くなど、強い意味を持つ。 astonish ・・・ ひどく驚かすという意味をもつ。たまげる、跳びあがるほど驚く。 強弱は surprise < amaze ≦ astonish ☆怖がらせる(scare, frighten, terrify) scare ・・・ びくびくさせるというニュアンスで、怖がらせるという意味を持つ。 frighten ・・・ ひどく怖がらせ、戦々恐々とさせるなど強い意味をもつ。また、ぞっとさせる。 terrify ・・・ 恐怖でいっぱいにするという意味を持つ。また、プラスの意味ですごい(怖いほどす ごいというニュアンス)という意味もある。 強弱は scare ≦ frighten < terrify ☆傷つける(hurt, wound, injure) hurt ・・・ 傷つける、感情を害する、苦痛を与えるなどのニュアンスを持つ。悪影響を与える。 wound ・・・ 負傷させるという意味を持つ。具体的には刃物などの武器によって傷つける。 injure ・・・ いためる、けがをさせるという意味をもつ。感情を傷つけるなど hurt に似た意味も 含まれる。 強弱は injure < wound ≦ hurt ☆楽しませる(entertain, amuse, delight) entertain ・・・ 楽しませ、また満足させるという意味をもつ。楽しさを与えて喜ばせる。 amuse ・・・ 面白がらせる意味で、楽しませるという意味をもつ。笑わせる。 delight ・・・ 大喜びさせる意味で、楽しませるという意味をもつ。意識して喜ばせ、楽しませる というニュアンスである。entertain に似た意味をもつ。 強弱は entertain = amuse ≦ delight まず、全用法・他動詞用法・受け身用法・名詞用法についてまとめた (%は尐数第 3 位を四捨五入している) 6-9 表-3 驚かす( surprise, amaze, astonish ) 意味 驚かす movie surprise amaze astonish written surprise amaze astonish 全用法 666(多) 496(中) 5(少) 全用法 1703(多) 269(少) 473(中) 他動詞用法 88(13.21%) 8(1.61%) 2(40.00%) 他動詞用法 112(6.58%) 26(9.67%) 27(5.71%) 受け身用法 119(17.87%) 13(2.62%) 0(0.00%) 受け身用法 213(12.51%) 47(17.47%) 65(13.74%) 名詞用法 193(28.98%) × × 名詞用法 471(27.66%) × × ・全用法が movie で 5 件と、データが尐なかった astonish を除き、他動詞用法は全体的に尐なか った。 ・ movie では amaze が astonish よりかなり多かったが、 written では件数が逆転した。 ・ movie では surprise の 17.87%を除き、他の 2 語は受け身用法としてはあまり使われていなかっ たが、 written ではどの語も 10%台の頻度だった。 ・ surprise は名詞用法が約 30%と、動詞としての用法より多くなった。 表-4 怖がらす( scare, frighten, terrify ) 意味 怖がらす movie scare frighten terrify written scare frighten terrify 全用法 758(多) 74(中) 45(少) 全用法 182(少) 804(多) 356(中) 他動詞用法 185(24.41%) 19(25.68%) 2(4.44%) 他動詞用法 29(15.93%) 136(16.92%) 37(10.39%) 受け身用法 192(25.33%) 15(20.27%) 12(26.67%) 受け身用法 27(14.84%) 98(12.19%) 35(9.83%) 名詞用法 10(1.32%) × × 名詞用法 8(4.40%) × × ・ movie では scare が最も使われていたが、 written では frighten が上回った。 ・上記の surprise とは違い、この 3 語には名詞用法がほとんどなかった。その中でも使われている scare の名詞用法は、何か特殊な場合なのか。 ・ movie で、 terrify の他動詞用法が他より格段に尐なかったが、受け身用法はどの語も 20%台 と、高い頻度だった。 表-5 傷つける( hurt, wound, injure ) 意味 傷つける movie hurt wound※2 injure written hurt wound※2 injure 全用法 1251(多) 188(中) 59(少) 全用法 605(中) 791(多) 184(少) 他動詞用法 443(35.41%) 4(2.13%) 0(0.00%) 他動詞用法 202(33.39%) 39(4.93%) 37(20.11%) 受け身用法 47(25.41%) 1(0.53%) 16(27.12%) 受け身用法 56(9.26%) 71(8.98%) 28(15.22%) 名詞用法 9(0.72%) 132(70.21%) × 名詞用法 27(4.46%) 319(40.33%) × ※2 抽出できるものはできるだけ手作業で抽出したが、 wound には、 「傷つける」の wound の原 形以外にも、 「曲がる、巻きつける」という意味の動詞 wind の過去形、過去分詞形が含まれている 可能性がある。 ・ injure は movie では他動詞用法が 0 であったが、written では 20%という高い頻度であった。 ・いずれも、 hurt の他動詞用法の使用頻度が高く、他の 2 語は 0%近い低い数字であった。 6 - 10 ・ wound はどちらでも名詞用法が多かったが、特に movie では約 70%と、非常に高かった。 表-6 楽しませる( entertain, amuse, delight ) 意味 movie entertain amuse delight written entertain amuse delight 楽しませる 全用法 31(多) 30(中) 15(少) 全用法 333(少) 460(中) 861(多) 他動詞用法 3(9.68%) 1(3.33%) 1(6.66%) 他動詞用法 51(15.32%) 84(18.26%) 27(3.16%) 受け身用法 2(6.45%) 1(3.33%) 5(33.33%) 受け身用法 21(6.31%) 28(6.09%) 178(20.79%) 名詞用法 × × 6(40.00%) 名詞用法 × × 254(29.50%) ・ entertain, delight の件数は、 movie と written で逆になった。 ・ 母数が違うため一概には言えないものの、movie では 3 語とも件数が尐なかったが written では 3 語とも件数が多いという傾向にあった。 次に、主語によって違いがあるのかについて、頻度を調べていった。 1 人称とは I, we 2 人称とは you 3 人称とはそれ以外、すなわち he, she, it, 固有名詞などのことであ る。 表-7 (%は、x 人称/1 人称+2 人称+3 人称×100) 驚かす( surprise, amaze, astonish ) movie 他動詞用法 受け身用法 1 人称 2 人称 3 人称 1 人称 2 人称 3 人称 surprise 40% 51% 9% 59% 34% 8% amaze 0% 57% 43% 40% 60% 0% astonish 0% 0% 0% 0% 0% 0% movie :他動詞用法では 2 人称が多く、受け身用法では 1 人称・2 人称が多い。 written 他動詞用法 1 人称 受け身用法 2 人称 3 人称 1 人称 2 人称 3 人称 surprise 12% 15% 73% 36% 9% 56% amaze 11% 19% 70% 22% 7% 71% 5% 10% 86% 27% 6% 67% astonish written : 他動詞用法・受け身用法ともに 3 人称が多い。 表-8 怖がらす( frighten, scare, terrify ) movie 他動詞用法 1 人称 受け身用法 2 人称 3 人称 1 人称 2 人称 3 人称 scare 24% 59% 17% 40% 35% 25% frighten 31% 50% 19% 7% 7% 86% 0% 0% 100% 45% 9% 45% terrify movie:他動詞用法では 2 人称が多く、受け身用法では 1 人称・3 人称が多い。 6 - 11 written 他動詞用法 1 人称 受け身用法 2 人称 3 人称 1 人称 2 人称 3 人称 scare 12% 18% 71% 45% 15% 40% frighten 16% 14% 69% 15% 8% 77% terrify 10% 3% 87% 18% 2% 81% written:他動詞用法・受け身用法ともに 3 人称が多い。 表-9 傷つける( hurt, wound, injure ) movie 他動詞用法 1 人称 受け身用法 2 人称 3 人称 1 人称 2 人称 3 人称 hurt 35% 51% 15% 30% 20% 50% wound 25% 0% 75% 33% 33% 33% injure 17% 33% 50% 12% 42% 46% movie: 他動詞用法・受け身用法ともに 3 人称が多い。 written 他動詞用法 1 人称 hurt 受け身用法 2 人称 3 人称 1 人称 2 人称 3 人称 20% 27% 53% 17% 20% 63% wound 6% 11% 83% 7% 9% 84% injure 11% 15% 74% 10% 5% 85% written :他動詞用法・受け身用法ともに 3 人称が多い。 表-10 楽しませる( entertain, amuse, delight ) movie 他動詞用法 1 人称 entertain 受け身用法 2 人称 3 人称 1 人称 2 人称 3 人称 29% 29% 43% 0% 0% 100% amuse 100% 0% 0% 33% 0% 67% delight 0% 0% 0% 100% 0% 0% movie:他動詞用法は 1 人称・3 人称が多く、受け身用法は 3 人称が多い。 written 他動詞用法 1 人称 受け身用法 2 人称 3 人称 1 人称 2 人称 3 人称 entertain 19% 13% 68% 3% 0% 97% amuse 13% 25% 62% 18% 11% 72% delight 13% 13% 78% 35% 7% 58% written:他動詞用法・受け身用法ともに 3 人称が多い。 ○考察 ・ surprise のように movie, written ともに件数が多い語もあるが、ほとんどの語は、movie と 6 - 12 written で件数が逆転することが多い。話し言葉として多用される語、書き言葉として多用される語 はしっかりと区別されていることが多いのではないか。 ・表 5 より、傷つけるの動詞を例にとって言うと、 hurt は他動詞用法、 wound は名詞用法、 injure は受け身用法の頻度が多いという傾向になる。このことから、動詞にはそれぞれどの用法に適してい るか、というような特徴があるのではないか、と思われる。 ・全体の傾向として、他動詞用法では 2 人称の頻度が高く、受け身用法では 1 人称・3 人称の頻度が 高くなった。 これを movie ・ written 別に見ると、movie の他動詞用法ではやはり 2 人称の頻度が高くなり、 受け身用法では 3 人称の頻度が高くなる。 witten ではほとんどの場合において 3 人称の頻度が高く なった。しかし 3 人称には多様な名詞が当てはまるのでこれを抜きにして考えると、他動詞用法では 怖がらす( scare, frighten, terrify )を除き、ほぼ 2 人称の頻度が高くなり、受け身用法では傷つけ る( hurt, wound, injure )を除き、ほぼ 1 人称の頻度が高くなった。 このことから、 movie 、すなわち会話では相手が中心となって自分を驚かすというニュアンスが強 く、それにより会話において臨場感が生まれる。 written 、すなわち書き言葉も同じようなことが 言える。しかし、movie では頻度が最も高いものが 1 人称、2 人称などになっているため、相手が自 分を驚かすというニュアンスであるといえる。 実際にこのような例文が出てきた。ただし、意訳してあるので本来の動詞の意味と違う部分もある。 ・They can't scare the moon. The Lost Princess of Oz より~ ~written 彼ら(ここでは狼)は月を(遠吠えして)怯えさせることはことできないのだ。 ・I am afraid I may frighten the company. ~written The Picture of Dorian Gray より~ 劇団のみんなが驚くんじゃないかしら。 5 反省と研究の課題 【会話・音声】 ・wanna, gonna, gotta という3つの発音綴りを例に研究をしたが、最初の方は何をしたらいいか があまり分からずに、研究が難航してしまった。 ・Corpus や Google 書籍検索を使って件数を調べたが、実際に音声をよく聞いて感覚をつかみた かった。 ・Google 書籍検索で、もっと広範囲の年代を調べたかった。 ・gonna, wanna, gotta の使われている歴史が、思ったより昔だったことに驚いた。 【英文・語法】 Ⅰ 類語研究 ・使用する際の状況の違いや意味の強さなどによっても頻度ということをもっと明確に調べたかっ 6 - 13 た。 実際の会話場面での利用頻度を調べたが、今回は書籍に関しては検索することが出来なかったので 同様に書籍ではどのような結果になるのかは今後の課題として班の考察とした。 ・今回ピックアップした「見る」という単語は6語であるが、他に「見る」という意味の単語はあ るのか?慣用句での「見る」という意味を持つ表現はどれほどあるのか、その表現の利用頻度はどれ ほどなのか?を上の結果と照らし合わせたらもっと興味が持てる内容になると思った。 ・情報収集の際苦労した例として watch には原形でも名詞意の「腕時計」などが混ざってきてしま って、その名詞表現を動詞の「見る」という頻度から引かなくてはならなければならないということ があった。 Ⅱ 他動詞研究 ・今回は、動詞としての意味について主に考えたため用法を 3 つに絞ったので、形容詞的な用法、 自動詞的な用法などまで調べることができなかった。可能性のある全ての用法について調べることが できれば、他動詞の特徴についてもっと知ることができるかもしれない。 ・他動詞の中にも、意味が複数あったりするものがあり、より正確な研究結果を出すことができな かった。もっと条件を絞り込んだりして、よりよい結果がでるようにすればよかった。 ・動詞によっても頻度にかなりの差が出たので、その意味によっても違いがあるのかなどまで調べ られればよかった。 ・Corpus を用いた研究は私たちにとっては始めての挑戦で、正規表現やツールなど、戸惑うこと が多かったが、班員皆が独自の課題に取り組め、一人一人が自ら考え、行動する研究ができたのがよ かった。 ・調査をし、考察を進めるにつれ、また新たな疑問が次々と出てきた。その疑問の中からさらに調 べ、もっと英語について理解を深めていけたら良いと思う。 6 参考文献 英語 FAQ なぜ wanna? http://www.uda30.com/05faq/boin/wanna.htm よく使う英単語 http://plaza.harmonix.ne.jp/~toshiono/international/enwords.html#interjection 英会話の略形 wanna gonna gotta http://www.thebelltree.com/archives/2007/10/_wanna_gonna_go.html スーパーアンカー英和辞典 (学習研究社) ジーニアス英和辞典(大修館) ウィズダム和英辞書 (三省堂) LONGMAN Dictionary of Contemporary English (Longman) Practical English Usage Machaelo Swan (Oxford) 「ネイティブスピーカーの単語力 1 基本動詞」 6 - 14 大西 泰斗/ ポール・マクベイ(研究社出版)