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科学的グローバル教育モデル としてのコンピテンシー

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科学的グローバル教育モデル としてのコンピテンシー
i
科学的グローバル教育モデル
としてのコンピテンシー育成
中央大学理工学部コンピテンシー育成FD研究会
ii
目
次
中央大学理工学部コンピテンシー育成FD研究会について
はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iv
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ v
中央大学コンピテンシー定義一覧
中央大学総長・学長メッセージ
第1章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ viii
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ xv
段階別コンピテンシー育成教育の展開
第1節
取り組みの背景
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第2節
取り組みの目的と特徴
第3節
取り組みの進捗
第4節
学生コンピテンシー育成の柱と工夫
第5節
今後の展開に向けた本年度の活動
第6節
当取り組みの情報提供
第2章
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
15
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16
段階別コンピテンシー教育の成果
第1節
画像・映像コンテンツ演習概要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
17
第2節
実績と評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
20
第3節
受講生コメント
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
22
第4節
TAコメント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
26
第5節
卒業生による評価
28
第6節
受講生コンピテンシー評価
第7節
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
35
総括
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
38
第3章
プロジェクト形式の演習によるコンピテンシー育成
第1節
プロジェクト形式演習の効果
第2節
学生による感想
第4章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
41
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
44
コンピテンシーと学士力・社会人基礎力
第1節
学士力の内容
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
46
第2節
学士力の再定義
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
48
第3節
社会人基礎力の内容
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
50
iii
第4節
学士力・社会人基礎力のコンピテンシーレベル
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
53
第5節
効果のレビュー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
59
第6節
教育方法の開発への応用
第5章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コンピテンシーと就業力
第1節
就業力と就職活動
第2節
中央大学における就業力育成
第3節
就業力育成のための多様なプロジェクト
第4節
効果のレビュー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
77
80
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
97
コンピテンシーと生徒力
第1節
付属学校の有利な点
第2節
付属学校における生徒力
第3節
生徒力から大学版コンピテンシーへの連続性
第4節
生徒力を育成する多様なプログラム
第5節
効果のレビュー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
98
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 103
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113
段階別コンピテンシー教育のこれから
第1節
取り組みの目的と特徴(再掲)
第2節
関係者の「気づき」
第3節
第1グループ(情報工学科)の展開
第4節
理工学部の「三つの方針」への反映と C-Compass によるインフラ整備
第5節
むすび~グローバル展開を目指して
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 114
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117
第8章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120
・・・・ 123
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 126
教育モデルのデザイン
第1節
教育モデルのデザイン
第2節
学生コンピテンシー育成への期待
おわりに
66
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第6章
第7章
60
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 128
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 131
iv
中央大学理工学部コンピテンシー育成FD研究会について
中央大学理工学部コンピテンシー育成FD研究会は、2009年度の文部科学省「大学教育・
学生支援推進事業【テーマA】大学教育推進プログラム」に採択された中央大学理工学部
「段階別コンピテンシー育成教育システム」および2010年度の文部科学省「大学生の就業
力育成支援事業」に採択された中央大学(全学)「『知性×行動特性』による就業力育成教
育」の成果を社会還元することを目的に、中央大学理工学部におけるFD活動の一環として、
中央大学のコンピテンシー育成について研究しています。
中央大学理工学部教授(情報工学科)
牧野
光則
中央大学理工学部長補佐
中央大学理工学部教授(情報工学科)
鈴木
寿
中央大学キャリア教育委員
中央大学理工学部助教(情報工学科)
鳥海
重喜
情報工学科演習系授業担当
中央大学理工学部助教(情報工学科)
髙松
瑞代
情報工学科演習系授業担当
中央大学理工学部教授(情報工学科)
田口
東
旧横浜山手女子学園理事長
日本アイ・ビー・エム株式会社
倉持
多輝子
コンサルタント※
※ 文部科学省事業への上記採択テーマに基づきファシリテーションその他の支援を実施
【3D表示】 バーチャルバッティングセンター (「画像・映像コンテンツ演習4」作品)
v
はじめに
伝統的な教育は、ある意味で極めて素直でした。例えば、精確性を鍵とする数学の授業
において、宿題を期日までにきちんと提出するようにしつけられたとします。すると、本
来は数学と期日厳守との間には何の関係もないのですが、数学とは期日を厳守するものと
学ぶでしょう。さらには、数学を離れても期日厳守が習慣化します。一方、数学という学
問自体は普遍的に継承されていきますので、数学ある限り期日厳守の文化も継承されてい
くこととなります。
いま仮に中学か高校か大学の数学の授業において「ピタゴラスの定理の証明方法を、何
通りか考えよ」という宿題を出したとしましょう。現代の教育現場では、熱心に宿題に取
り組む人がいる傍ら、次のように主張する人達もいます。
【タイプⅠ】数学ができる人はどのみち成績が良いので、初歩的(?)な宿題は無意味。
【タイプⅡ】受験(進学・資格)のためには塾・予備校のほうが重要。宿題は適当でよい。
【タイプⅢ】人生には数学の宿題よりも大切なことがある。だから、宿題にはこだわらない。
【タイプⅣ】ある友人の宿題を写させてもらえば良い成績が取れるので、そうするのが有利。
なぜ、このような主張が現れるのでしょう。単に、世の中のモラルが低下しつつあるから
でしょうか。
昔は余計なことを考えずに、親や先生の言葉にただ従って日々の修練を積んでいれば、
優等生として評価され人生にも成功できました。
対する現代では世界中に情報が氾濫し、経済・産業構造もグローバル化しており、昔は
想像もつかなかった出来事が次々に起こっています。その結果、新しい世代は旧い世代の
言葉に従っているだけでは文字どおり「生き残れない」ことを鋭敏に感じとっています。
当然、その是非は別として、各自がそれなりの対策を講じるようにもなるでしょう。
とりわけ賢い人なら、もし先生への基本的な信頼感がありませんと、タイプⅠの主張を
しても不思議はありません。先生は熱意だけで進めていてはだめで、個々の生徒・学生を
冷静に分析しつつ本来のその人の姿へと導く責務があります。価値観の多様な現代社会に
おける教員の腕の見せどころ、ともいえます。
その際、社会のさまざまな分野において継続的に高業績を達成している人々(ハイパ
フォーマー)に共通する行動特性すなわちコンピテンシー(competency)を生徒・学生に
明示することによって、各人が優位点と弱点とを認識し学修状況を自らコントロールでき
るようになると考えられます。
vi
具体的には、頭は良くとも心が未成熟なタイプⅠの主張をする人向けには、コンピテン
シー「知識獲得力」
(ⅷ頁から始まるコンピテンシー定義一覧のうちⅹ頁参照)を高めるよ
うに指導します。
「ピタゴラスの定理の証明方法を、何通りか考えよ」という宿題に対し「数
学ができる人はいずれにせよ成績が良いので、初歩的な宿題は無意味」と主張する人には、
あらためて「あなたは継続的に深く広く情報収集に努め、取捨選択したうえで知識やノウ
ハウを習得し、関連付け、他者が思いつかない形で活用していますか」(「知識獲得力」の
レベル4)と問い質すと、実はそこまでは達していないことに自ずと気づくでしょう。
同様に、まだ成長過程にあると思われるタイプⅡの主張をする人向けには、コンピテン
シー「問題解決力」を高めるよう指導します。
少し心配なのは、情動の豊かさだけが感じられる、タイプⅢの「人生には数学の宿題よ
りも大切なことがある。だから、宿題にはこだわらない」と主張する人です。成長期にあ
る若者がこう言い出したときには、安易に本人の意思に任せるべきではありません。
「あな
たは、視野が狭く周りが見えず、偏った考え方をしていませんか」(「バランス力」のレベ
ル0)と問い質す必要があります。ただし、単にバランス力を高めなさいと言っても素直
に言葉が届くとは思えませんので、そのようなときは、相応の時間を掛けて説教してくれ
る先生、上級生、社会人などが必要です。
「最初から勉強を放棄し聞こえ良く言い繕ってしまう、というような人生への姿勢は、ど
うなのかな。」
「自給自足の生活ならともかく、あなたはひとりだけで生きているわけではないでしょう。
人が働く意義とは、文字どおり生計を立てるのと同時に、個人の能力が社会に活用される
ことによって、結果的に世の中にも役立っているわけだ。」
「もし潜在的に才ある者がその才を活用することなく、他者が生産した物をただ消費する
だけで生きているとすれば、それはどうなのだろう。」
「一見無意味に見えても、先生が意図をもって与えた課題に取り組んでみることが、あな
たの人生を掛けて排除宣言するほどたいそうなことなのだろうか。むしろ傲慢な言い方に
も聞こえるが、あなた自身はどう思う?」
以上に比べ、頭も心も未成熟と思われるタイプⅣの「ある友達の宿題を写させてもらえ
ば良い成績が取れるので、そうするのが有利」と考えている人は、極めて厄介といえます。
奇妙なる悪意感の欠如は、最初から解決方法を与えられた点数獲得の容易な教育の影響と
も疑われ、いくら防止に努めても一定率で現れる試験時の不正行為、さらには就業力の低
下や社会人としてのコンプライアンスの欠如にもつながっていきます。
ここに、あらためてコンピテンシーの観点から考えますと、実は二段階の指導が必要な
ことがわかります。一つは、カンニングをしてはいけないという抑制性指導であり、コン
ピテンシー「倫理」
(関連法令遵守。技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を理解し、技術
者が社会に対して負っている責任を果たす)のレベルを高めることです。もう一つは伸長
性指導であり、コンピテンシー「発想する力」
(既存の枠にとらわれず、今までに無かった
新しいアイディアを生み出す)のレベルを高めることです。具体的には、例えば「あなた
は、そういうことをしていると、一見有利に思うかもしれないけれど、実は、発想する力
vii
を鍛える機会を自ら失っているのですよ。発想力こそが、社会であなたを最も優位に導く
秘訣なのに…」などと諭しつつ、本人に気づかせる必要があります。どちらかだけを一面
的に教えたのでは、やや捻じ曲がって育ったタイプⅣの人を正しく導くことはできません。
一方、伝統的教育における期日厳守の文化は、継承できるのでしょうか。コンピテンシー
には「スケジュール管理」という項目があります。生徒・学生が自ら気づくか、あるいは
他者から指摘されることによって気づけば、期日は厳守するものだという感覚も自然に身
に付くでしょう。
ところで、伝統的な期日厳守の概念と、コンピテンシーを意識したスケジュール管理の
概念は、一見似ているのですが、質的にはだいぶ異なります。例えば、情報分野や建設分
野などにおける大規模プロジェクトの 遂行に当たっては、しばしばPERT (Program
Evaluation and Review Technique)と呼ばれるネットワーク状のフロー図を描くことにより
作業順序を管理します。各作業のチェックポイントに最も早く着手できる最早日時、およ
び、仮に遅れたとしてもそのときまでに開始しなければミッション全体が完了できなくな
る最遅日時を書き込むことにより、いわゆるクリティカルパスが抽出できます。
..
もしクリティカルパス以外で突発的な事態が起きても、大きな障害にはなりません。対
照的に、もしクリティカルパス上で遅れが生じると、たとえそれが些細に見えても現実に
はミッション全体が律速されてしまいます。よって、このパス上の作業には最初から重点
的にマンパワーを投入しなければならないことがわかります。また、万一クリティカルパ
ス上で突発的な事態が起きたとしても、即時にPERT全体を描き直すことにより態勢の立
て直しが可能であることもわかります。
このように、いわゆる精神論ではなく、例えば組織が最大能力を発揮するためのマネジ
メント方法を、コンピテンシーの言葉を用いて可視化した多面的な必要性に動機付けられ
つつ導入するというようなグローバル教育志向の科学的FDも自ずと加速します。
以上、掛け足で事例に言及しましたが、中央大学におけるコンピテンシー育成の向かう
ところの広大な構想の一端をご推察いただけるでしょうか。
中央大学理工学部「段階別コンピテンシー育成教育システム」は2009年度の文部科学省
「大学教育・学生支援推進事業【テーマA】大学教育推進プログラム」に、また、中央大学
(全学)「『知性×行動特性』による就業力育成教育」は2010年度の文部科学省「大学生の
就業力育成支援事業」に採択されました。これらの事業のもとで研究開発および試行した
内容の中心的な部分を積極的に公開することにより、各方面において、価値観の多様なグ
ローバル社会におけるコンピテンシー育成の新たな教育モデルづくりの一助となりますよ
う、本書を発行致します。
教育にかかわるあらゆる分野において、皆様のご参考になれば幸いです。
viii
中央大学コンピテンシー定義一覧
以下は、中央大学の全学生に共通するコンピテンシー項目「コミュニケーション力」
「問
題解決力」「知識獲得力」「組織的行動能力」「創造力」「自己実現力」の定義一覧です。
コ ンピテ ンシ ー 項目
コミュニケーション力
傾聴力
読解力
記述力
提案力
議論力
定義
0
他人の意見ある 相手を理解し、相
いは記述された 手に自分の意見
文章を正しく理解 を伝えることがで
したうえで、それ きない
に対する自分の
意見を明確に表
現する。効果的
な説明方法や手
段を用いて、関係
者を納得させる
1
相手の意見を一
通り理解し、相手
に自分の意見を
一通り伝えている
レベル
2
相手の意見を聞
き、自分の意見を
伝えることで円滑
なコミュニケー
ションを図ってい
る
3
相手を理解したう
えで、説明の方
法を工夫しなが
ら、自分の意見
や考えをわかり
やすく伝え、十分
な理解を得てい
る
4
様々な説明の方
法や手段を駆使
し、意見の異なる
相手との相互理
解を得ている
他人の意見を聞 意見を聞き、理解 相手の意見を一 相手の意見を十 相手の意見を十 相手の意見を十
き、正しく理解し、 することができて 通り理解している 分理解している 分理解し、自分と 分理解し、自分と
尊重する
いない
異なる意見にも 異なる意見にも
耳を傾けている 耳を傾け尊重し
ている
記述された内容 記述された内容 記述された内容 記述された内容 記述された内容 記述された内容
を正しく理解する を理解できていな を一通り理解して を十分理解して を十分理解して を十分理解して
い
いる
いる
いる
いる
正しい文章で他 記述された文章 正しい文章で、他 正しい文章で、他 正しい文章で、他 正しい文章で、他
人が理解できる を他人が理解で 人が一通り理解 人が十分理解で 人が十分理解で 人が十分理解で
ように記述する きない、あるい
できるよう記述す きるよう記述する きる記述となるよ きる記述となるよ
は、記述された文 ることができる
ことができる
う工夫をしている う秀でた工夫をし
章に重大な誤り
ている
がある
適切な手順・手 効果的な手順・ 効果的な手順・ 効果的な手順・ 適切な手順・手 適切な手順・手
段を用いてわか 手段を用いてわ 手段を用いてわ 手段を用いてわ 段を用いてわか 段を用いてわか
りやすく説明した かりやすく説明で かりやすく説明し かりやすく説明で りやすく説明した りやすく説明した
うえで、自分の意 きない
ようとしている
きている
うえで、自分の意 うえで、自分の意
見を効果的に伝
見を効果的に伝 見を効果的に伝
える
えている
え、自分と異なる
意見を持つ相手
からも十分な理
解を得ている
議論の目標を設
定し、それに合わ
せて議論を展開
する
一方的な主張に
終わっている。あ
るいは意見を述
べていない、誤っ
た意見のために
議論にならない
議論の目標を設
定し、それに合わ
せて議論を展開
しようとしている
議論の目標を設
定し、それに合わ
せて議論を展開
している
議論の目標を設
定し、それに合わ
せて、自分と異な
る意見を持つ相
手とも議論を展
開している
議論の目標を設
定し、それに合わ
せて、自分と異な
る意見を持つ相
手とも議論を展
開し相互理解を
得ている
ix
コ ンピテ ンシ ー 項目
問題解決力
課題発見
課題分析
論理的思考
計画実行
検証
定義
0
1
課題を正しく理解 与えられた課題 与えられた課題
する。解決策を立 を正しく理解でき を正しく理解し、
て実行する。その ない
解決を行おうとし
結果を検証し、計
ている
画の見直しや次
の計画への反映
を行う
現状と目標(ある 与えられた課題 与えられた課題
べき姿)を把握
を正しく理解でき を正しく理解でき
し、その間にある ない
ている
ギャップの中か
ら、解決すべき課
題を見つけ出す
課題の因果関係
を理解し、真の原
因(本質)を見出
す
課題の因果関係
や本質を理解で
きない、または、
見出せない
レベル
2
自ら発見した課
題、もしくは与え
られた課題を正し
く理解している。
解決策を立て、
実行している
現状と目標を把
握し、その間にあ
るギャップの中に
問題を見つけて
いる
3
自ら課題を発見
し、解決策を立
て、実行してい
る。実行結果は
検証し、計画の
見直しや次の計
画に反映している
現状と目標を把
握し、その間にあ
るギャップの中か
ら、解決すべき課
題を見つけ出して
いる
課題の因果関係
や本質を理解し
ようと見出す努力
をしている
4
自ら課題を発見
し、最善の解決
策を選択し、計画
的に実行してい
る。その結果を多
面的に検証し次
の計画に反映し
ている
現状と目標を把
握し、その間にあ
るギャップの中か
ら、解決すべき課
題を見つけ出し
優先順位付けが
できている
課題の因果関係 課題の因果関係 課題の因果関係
を理解し、そこか を理解し、本質を を理解し、かつ、
ら本質を見出そう 見出している
本質を見出した
と努力している
上で、解決の方
向性を認識して
いる
複雑な事象の本 複雑な事象を整 複雑な事象を整 複雑な事象を整 複雑な事象を整 複雑な事象を整
質を整理し、構造 理し、構造化でき 理し、構造化しよ 理し、構造化でき 理し、構造化でき 理し、構造化でき
化(誰が見てもわ ない
うと努力している る
る。自分の意見 る。意見や手順を
かりやすく)でき
や手順を論理的 論理的に展開し、
る。論理的に自
に展開できる
相手を納得させ
分の意見や手順
ることができる
を構築・展開でき
る
目的と目標を設 場当たり的な行 目的と目標を設 目的と目標を設 目的と目標を設 目的と目標を設
定し、順序立てて 動をしている
定し、計画を立て 定し、計画を立て 定し、計画を立
定し、複数の方
計画して確実に
ているが、計画倒 てそれを実行して て、その計画通り 法から最善の方
実行する
れで実行イメー いる
に実行している 法を選択し、計画
ジが伴わない
を立て実行してい
る
計画して実行した 結果を検証して 結果を一通り検 結果を正しく評価 結果を正しく評価 結果を正しく多面
結果を正しく評価 いない
証している
している
し、計画の見直し 的に評価し、計画
し、計画の見直し
や次期計画への の見直しや次期
や次期計画への
反映を行なって 計画への反映を
反映を行う
いる
行なっている
【3D表示】 バーチャルバッティングセンター (「画像・映像コンテンツ演習4」作品)
x
コ ンピテ ンシ ー 項目
知識獲得力
学習
応用力
情報収集力
定義
継続的に深く広く
情報収集に努
め、取捨選択した
上で、知識やノウ
ハウを習得し、関
連付けて活用す
る
0
自ら情報収集し、
新しい知識やノウ
ハウを習得する
ことができていな
い
1
一通り情報収集
し、新しい知識や
ノウハウを習得す
ることができてい
る
レベル
2
収集した情報を
精査し、知識やノ
ウハウを習得し、
関連付けて活用
している
専門知識のみな 自ら新しい知識 限定的な知識や 自ら新しい知識
らず人文社会に やノウハウを習得 ノウハウの習得 やノウハウの習
関するものも含 できていない
に留まっている 得に努めている
めて、幅広い分
野で知識やノウ
ハウを深く習得す
ることを継続する
3
深く広く情報収集
に努め、取捨選
択した上で、知識
やノウハウを習得
し、関連付けて活
用している
4
継続的に深く広く
情報収集に努
め、取捨選択した
上で、知識やノウ
ハウを習得し、関
連付け他者が思
いつかない形で
活用している
専門知識のみな
らず人文社会に
関するものも含
めて、幅広い分
野で、深く知識や
ノウハウを習得し
ている
専門知識のみな
らず、人文社会
に関するものも
含めて幅広い分
野で、知識やノウ
ハウを深く習得す
ることを継続して
いる
入手した知識やノ
ウハウを関連付
け、他者が思い
つかない形で活
用している
様々な手段を駆
使し、情報を入手
している。信頼性
が高い情報のみ
を選択して自分
のものとしている
入手した知識やノ 入手した知識やノ 入手した情報や
ウハウを関連付 ウハウが関連付 知識やノウハウ
けて活用する
けられていない が一通り関連付
けられている
入手した知識やノ 入手した知識やノ
ウハウを関連付 ウハウを関連付
けて活用している け、自ら工夫して
活用している
必要な情報を入 必要な情報が入 通り一遍の情報
手し、精査した上 手できない
入手に留まって
で、取捨選択して
いる
自分のものとす
る
情報を入手し、精 工夫して情報を
査している
入手し精査した
上で、取捨選択し
て自分のものとし
ている
【3D表示】 バーチャルバッティングセンター (「画像・映像コンテンツ演習4」作品)
xi
コ ンピテ ンシ ー 項目
組織的行動能力
バランス力
役割認識
主体性
協働
率先力
定義
レベル
0
1
2
3
チームで作業が 指示されると作業 チームでの作
チーム、組織の
できない、自己中 できるが、目標を 業、行動において 目標を達成する
心的な行動をとる 達成するために 共通の目標を理 ために何をすべ
自ら動かない
解し、達成するた きか、複数の視
めに当事者意識 点から多面的、
を持って行動す 客観的に捉え、
る
適切な判断を下
し、当事者意識を
もって行動する。
その際、他者とお
互いの意見を尊
重し、信頼関係を
築くような行動を
とる
チーム、組織の
目標を達成する
ために何をすべ
きか、複数の視
点から多面的、
客観的に捉え、
適切な判断を下
し、当事者意識を
もって行動する。
その際、他者とお
互いの考えを尊
重し、信頼関係を
築いてそれを維
持しつつ行動す
る
複数の視点か
視野が狭く、周り 事実に基づいた 複数の視点から
ら、多面的、客観 が見えない。偏っ 視点で客観的に 多面的、客観的
的に物事を捉え た考え方をする 物事を捉えてい に物事を捉えて
た適切な判断を
る
いる
基に行動する
複数の視点から
多面的、客観的
に物事を捉えた
適切な判断を基
に行動している
4
チーム、組織の
目標を達成する
ために何をすべ
きか、関係者の
利害を幅広く考
慮したうえで適切
な判断を下し、自
ら進んで行動を
起こすだけでな
く、目指すべき方
向性を示し、他を
導いている
複数の視点から
多面的、客観的
に物事を捉え、影
響範囲や関係者
の利害を幅広く
考慮したうえで適
切な判断を下し、
それを基に行動
している
チーム、組織の 自分の役割を認 自分の役割を認 個人の役割を理 個人の役割を理 基本的な役割を
目標を達成する 識していない
識しているが、行 解し、当事者意 解し、当事者意 理解したうえで行
ために個人の役
動に移せない
識を持って行動し 識を持って行動 動する。また状況
割を理解し、当事
ている
する。また状況に ごとに役割を柔
者意識を持って
よって役割を柔 軟に変え、役割を
行動する
軟に変え行動す 超えた働きをする
る
物事に対して自 誰かに指示され 誰かに指示され 何も言われなくて 物事に対して自 物事に対して自
分の意志・判断 てもやらない、で たことのみ行って も行動は起こす 分の意志・判断 分の意志・判断
で責任を持って きない
いる
が、単なるマニュ で責任を持って で責任を持って
行動する
アル的行動をとる 行動している
行動し、その行動
に工夫・独自性
が見える
共通の目標を達 チームで作業が チームで作業で チームでの作
チームでの作
チームでの作
成するためにお できない、自己中 きるが、目標を達 業、行動において 業、行動をすると 業、行動をすると
互いの考えを尊 心的な行動をす 成するために自 共通の目標を理 き、共通の目標を き、共通の目標を
重し、信頼関係を る
ら動かない
解し達成するた 達成するために 達成するために
築くような行動を
め行動できる
お互いの考えを お互いを尊重し、
とる
尊重し、信頼関 信頼関係を構築・
係を築くような行 維持しようと自ら
動をとる
工夫して行動す
る
先に立って実践 行動しない
他者に従って、あ 先に立って実践 先に立って実践 先に立って実践
する。先に立って
るいは真似をして している
している。先に
している。先に
模範を示し、他を
行動している
立って模範を示 立って模範を示
誘導する
し、他を誘導して し、他を誘導して
いる
いる。さらに目指
すべき方向性を
示し、他を導いて
いる
xii
コ ンピテ ンシ ー 項目
創造力
発想する力
推論する力
感動する力
探求する意欲
倫理
定義
0
知的好奇心を発 新しい発想や技
揮して様々な 専 術を知っても興
門内外のことに 味を持たない
関心をもち、それ
らから着想を得
て今までにな
かった新しいアイ
ディアを発想す
る。その際、関連
法令を遵守し、倫
理観を持って技
術者が社会に対
して負っている責
任を果たす
1
普段から自分が
興味のある分野
について情報収
集し、新しい発想
や技術に関心を
払っている
既存の枠にとら 新しい考え方を
われず、今まで 持とうとしない
に無かった新しい
アイディアを生み
出す
ヒントを与えられ
た場合、新しい考
え方で物事にとり
組む
経験のないこと 経験のないこと
や将来起こりうる や将来起こりうる
ことを推し量る
ことを推し量るこ
とができない
すぐれた技術や
芸術、あるいは斬
新なアイディアに
接して強い印象
を受け、新たな取
り組みの原動力
とする
すぐれた技術や
芸術、あるいは斬
新なアイディアに
興味を持たない
旺盛な知的好奇 新たな知識を得
心を持ち、専門で ようという姿勢を
あるなしに関わら 持たない
ず、未知の知識
を取り入れようと
する
レベル
2
自分の専門内外
に関わらず幅広
い知的好奇心を
持ち新たな知識
を意欲的に取り
入れ、物事に取り
組もうとする
3
知的好奇心を発
揮して様々な 専
門内外のことに
関心をもち、それ
らから着想を得
て今までにな
かった新しいアイ
ディアを発想する
ことができる。そ
の際、関連法令
を遵守し、倫理観
を持って技術者
が社会に対して
負っている責任を
果たす
4
知的好奇心を発
揮して様々な 専
門内外のことに
関心をもち、それ
らから着想を得
て科学技術の発
達に貢献するよう
な独自のアイディ
アを発想すること
ができる。その
際、関連法令を
遵守し、倫理観を
持って技術者が
社会に対して
負っている責任を
果たす
経験したことがな
いことでも既存の
枠にとらわれず、
今までに無かっ
た新しいアイディ
アを生み出すこと
ができる
既知の事柄をも 既知の事柄をも 前例のないことに
とにして経験のな とにして経験のな ついて将来起こり
いことや将来起こ いことや将来起こ うることを推し量
りうることを推し りうることを推し る
量ろうとする
量る
すぐれた技術や すぐれた技術や すぐれた技術や
芸術、あるいは斬 芸術、あるいは斬 芸術、あるいは、
新なアイディアに 新なアイディアに 斬新なアイディア
興味を持つ
接して強い印象 に接して強い印
を受け、心を奪わ 象を受け、新たな
れる
取り組みの原動
力とする
これからの技術
に示唆を与え科
学技術の発達に
貢献するような、
独自のアイディア
を生み出すこと
ができる
前例のないことに
ついて将来起こり
うることを複数通
り推し量る
普段から自分が
興味のある分野
について情報収
集の努力をして
いる
自分で適切な
データを収集・参
照し、新しい考え
方で物事に取り
組む
自分の専門内外
に関わらず幅広
い知的好奇心を
持ち、新たな知識
を取り入れよう
と、一部は実際に
行動している
自分の専門内外
に関わらず幅広
い知的好奇心を
持ち、新たな知識
を意欲的に取り
入れようと、実際
に行動している
関連法令遵守。 関連法令を理解 関連法令を理解 関連法令を理解
技術が社会や自 していない
して遵守している して遵守してい
然に及ぼす影響
る。技術が社会
や効果を理解し,
や自然に及ぼす
技術者が社会に
影響や効果を理
対して負っている
解し、技術者が
責任を果たす
社会に対して
負っている責任を
認識している
関連法令を理解
して遵守してい
る。技術が社会
や自然に及ぼす
影響や効果を理
解し,技術者が
社会に対して
負っている責任を
認識し、一部は
実際に行動して
いる
すぐれた技術や
芸術、あるいは、
斬新なアイディア
に接して強い印
象を受け、積極
的に新たな取り
組みの原動力と
する
自分の専門内外
に関わらず幅広
い知的好奇心を
持ち、新たな知識
を意欲的に取り
入れようと、積極
的に行動している
関連法令を理解
して遵守してい
る。技術が社会
や自然に及ぼす
影響や効果を理
解し,技術者が
社会に対して
負っている責任を
認識し、その責任
を果たす
xiii
コ ンピテ ンシ ー 項目
自己実現力
定義
0
1
自らを高めるた 目標を見つけよう 目標があるとそ
め、常に新しい目 とせず、与えられ れを達成したいと
標を求め、その ても達成しようと 思い努力する
実現のために道 しない
筋を考え、努力
する。その際、自
己管理と改善の
ための工夫を怠
らない
自己管理
ストレスコントロール
達成志向
3
自らを高めるた
め、常に新しい目
標を求め、その
実現のために道
筋を考え、努力
する。その際、自
己管理と改善の
ための工夫を怠
らない
4
自らを高めるた
め、常に新しい目
標を探しており、
見つけるとその達
成のために最短
の道筋を考えて
それをたどるため
に努力する。失
敗してもあきらめ
ず、繰り返し挑戦
する
自らを高めるた 目標を設定する
めの適切な目標 ことができない
を設定する
おぼろげな目標 明確な目標を設 自らを高めるた
を設定することが 定することができ めの適切な目標
できる
る
を設定し、さらに
それを達成する
ための具体的な
指標を設定する
ことができる
継続的に自らを
高めるための適
切な目標を設定
し、さらにそれを
達成するための
具体的かつ最適
な指標を設定す
ることができる
目標の実現のた
めに適切な行動
計画を立案し、計
画遂行のために
(メモを取るなど
の)スケジュール
意識を持って行
動する
スケジュール意
識はあるがメモを
取らない。いつ何
をしなければなら
ないかを理解して
いるが一部でき
ない
目標設定
スケジュール管理
レベル
2
自ら明確な目標
を定め、その実
現のために道筋
を考え、努力す
る。その際、自己
管理を怠らない
スケジュール意
識がない。いつ何
をしなければなら
ないかを把握して
いない
スケジュール意
識があり、メモを
取る。行動計画
の立案はできる
が、突発的な事
態に対応できな
い
行動計画の立案
ができ、突発的な
事態に対応でき
る
行動計画の立案
ができる。突発的
な事態に臨機応
変に対応し、必要
に応じて適切な
対応、調整がで
きる
目標達成のため 日常生活の管理 日常生活の管理
に必要な日常生 を怠っている
を行っている
活の管理(時間
管理、衛生管理、
健康管理、金銭
管理など)を行
い、適時的確な
行動を取る
日常生活の管理
を行っている。定
期的に健康診断
を受け、普段の
生活に生かし体
調を崩さないよう
にする
日常生活の管理
を行っている。定
期的な健康診断
を受け、その結果
を踏まえて健康
維持のための積
極的な取り組み
を行っている
日常生活の管理
を行っている。定
期的な健康診断
を受け、その結果
を踏まえて健康
維持のための積
極的な取り組み
を継続的に行っ
ている
ストレスと上手に ストレスの解消法 ストレスが溜まる
付き合い、それに を知らず溜め込 と察知して解消
よる悪影響を最 んでしまう
するか、これ以上
小に抑える
蓄積しないよう行
動する
普段から自分の
ストレスを意識的
にチェックし、自
分に合った方法
で解消することが
できる
普段から自分の
ストレスを意識的
にチェックし、自
分に合った方法
で上手に解消す
ることができる
普段から自分の
ストレスを意識的
にチェックし、自
分に合った方法
で解消したり低減
したりすることが
できる
普段から新しい
目標を求めてお
り、自分で設定し
てそれを達成しよ
うと道筋を立て、
努力する。改善
のための工夫を
する
普段から新しい
目標を求めてお
り、自分で設定し
てそれを達成しよ
うと努力する
普段から新しい
目標を求めてお
り、自分で設定し
てそれを達成しよ
うと努力する。そ
のための道筋を
立て、改善のた
めの工夫を怠ら
ない
普段から新しい
目標を求めてお
り、自分で設定し
てそれを達成しよ
うと努力する。失
敗しても効果的
な改善を行い、あ
きらめず繰り返し
挑戦する
目標が与えられ 目標が与えられ
ても達成しようと るとそれを達成し
努力しない。最初 ようと努力する
からあきらめてい
る。すぐにあきら
める
xiv
「専門性」は、理工学部・大学院理工学研究科のみが学科・専攻ごとに定義しています。
以下は、情報工学科・専攻の例です。
コ ン ピ テ ン シ ー 項目
専門性
精確性
専門知識
1
断片的な専門知識
や学力を有し、簡
単な情報の理解と
正確性の判断をし
て小規模な主張を
行うことができる
が、作業の緻密さ
や正確さは不十分
である
レベル
2
専門知識を概ね理
解し、それに関連
する情報の理解と
正確性の判断をし
て自らの主張を行
うことができる。一
定基準の緻密さや
正確さをもった作
業を行うことができ
る
3
専門知識を体系的
に理解し、専門性
の高い情報の理解
と正確性の判断を
して自らの主張を
行うことができる。
一定基準以上の緻
密さや正確さをもっ
た作業を行うことが
できる
一連の作業を緻密 一連の作業を緻密 一連の作業を緻密
かつ正確に実行す かつ正確に行おう かつ正確に行おう
る
という心掛けがな という心掛けが十
く、雑に作業を行う 分でなく、行った作
業が定められた基
準での緻密さ、正
確さをもたない
一連の作業を緻密
かつ正確に行おう
という心掛けがあ
り、行った作業が
定められた基準の
緻密さ、正確さをも
つ
一連の作業の緻密
性または正確性を
向上する心掛けを
もち、定められた
基準以上の緻密
さ、精確さで作業を
行うことができる
自らの考えを実現
するために適切に
プログラムを作成、
またはICTツールを
利用する
与えられた手順を
プログラミングでき
ない、または、誤っ
たプログラムを作
成し、修正できな
い。あるいは、ICT
ツールを誤用す
る、または、利用方
法を知らない
プログラム言語の
基本文法を断片的
に理解し、主要文
法の一つまたは少
数による単純なプ
ログラムを作成で
きる。かつ、他者の
助力を得て必要な
ICTツールを利用
できる
プログラム言語の
基本文法を概ね理
解し、課題に対して
正しい手順(定式
化、アルゴリズム
構築、プログラム
作成、実行、検証と
必要な修正)に従っ
てプログラムを作
成できる。かつ、必
要なICTツールを
自力で利用できる
プログラム言語の
基本文法を体系的
に理解し、課題に
対して正しい手順
(定式化、アルゴリ
ズム構築、プログ
ラム作成、実行、
検証と必要な修正)
に従って効率的・
効果的なプログラ
ムを工夫して作成
できる。加えて、必
要なICTツールを
利用して効率的・
効果的に作業がで
きる
プログラム言語の
基本文法を体系的
に理解し、課題に
対して正しい手順
(定式化、アルゴリ
ズム構築、プログ
ラム作成、実行、
検証と必要な修正)
に従って効率的・
効果的なプログラ
ムを秀でた工夫で
作成できる。加え
て、必要なICTツー
ルを利用して効率
的・効果的に作業
ができる
数学・自然科学に
関して深く広い知
識を有し、その内
容を理解の上、必
要に応じて利用す
る
情報工学の基礎を
学ぶために必要な
数学・自然科学に
関する知識を有し
ていない
情報工学の基礎と
しての数学・自然
科学の知識を断片
的に有している
情報工学の基礎と
しての数学・自然
科学の知識を概ね
理解し、専門知識
の獲得に役立てる
ことができる
情報工学の基礎と
しての数学・自然
科学の知識を理解
し、専門知識の獲
得に効果的に役立
てることができる
情報工学の基礎と
しての数学・自然
科学の知識を理解
し、これを駆使して
高度な専門知識の
効果的な獲得に役
立てることができる
語学、歴史、文化、
法令、環境などを
含む幅広い分野に
関心を持つと共に
知識を有し、それら
を含む論述を理解
し、必要に応じて利
用する
情報工学の基礎や
数学・自然科学を
学ぶために必要な
基盤となる学力を
有していない。ある
いは必要な場面で
利用することがで
きない
専門内外の分野に
おける他者の論述
内容の正誤や根拠
を自らの知識や経
験をもとに断片的
に確認できる。か
つ、規模の小さい
自らの主張を知識
や経験をもとに口
頭または文章を用
いて母国語で行う
ことができる
幅広い分野におい
て、他者の論述内
容や専門知識に関
する母国語または
外国語による論述
内容の正誤や根拠
を知識や経験をも
とに一通り確認で
きる。自らのまと
まった主張を口頭
または文章を用い
て母国語で行うこ
とができる
幅広い分野におい
て、他者の論述内
容や専門知識に関
する母国語または
外国語による論述
内容の正誤や根拠
を知識や経験をも
とに適切に確認で
きる。自らのまと
まった主張を口頭
または文章を用い
て母国語または外
国語で行うことが
できる
幅広い分野におい
て、他者の論述内
容や専門知識に関
する母国語または
外国語による論述
内容の正誤や根拠
を知識や経験をも
とに適切に確認で
きる。自らのまと
まった主張を口頭
または文章を用い
て母国語かつ外国
語で効果的に行う
ことができる
定義
0
広さと深さがある知 情報工学を学ぶた
識と経験をもとに、 めに基盤となる学
プログラミングや 力や知識を持って
ICTツールを適切 いない。あるいは
に用いて、精確に 知識に誤りがある
作業を進め、情報
工学を活用する
一連の作業の緻密
性または正確性を
向上する心掛けを
もち、秀でた工夫
により、定められた
基準以上の緻密
さ、精確さをもつ作
業を行うことができ
る
情報工学に関する 専門知識を全くま 専門知識について 専門知識について 専門知識について 専門知識について
知識を有し、その たはほとんど理解 断片的に理解し、 概ね理解し、複数 体系的に理解し、 体系的にかつ一部
内容を理解し、必 していない、あるい 少数の知識を必要 の知識を総合して その内容を他者に については深く理
要に応じて利用す は、誤って理解して とする課題に解答 課題に解答できる 説明できる
解し、専門職業人
る
いる
できる
と討論できる
情報技術基礎
数学・自然科学
基盤となる学力
4
非常に高度な専門
知識を有し、専門
知識人対象レベル
の情報の理解と正
確性の判断をして
自らの主張を国内
外に発信できる。
秀でた工夫により
一定基準以上の正
確さや緻密さをもっ
た作業を行うことが
できる
xv
2012年3月16日 中央大学後楽園キャンパスにて開催された
中央大学「段階別コンピテンシー育成教育システム」報告会
における中央大学総長・学長 福原 紀彦のビデオメッセージ
皆さん、こんにちは。
「段階別コンピテンシー育成教育システム」報告会が開催されるに
当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
本学理工学部では、2007年に既に国内で浸透しておりましたコンピテンシーということ
に着目を致しました。このコンピテンシー教育の必要性は、東日本大震災での関係機関の
対応や被災地の行動を見ても、今日大きく痛感されるところであります。
理工学部では、研究活動で高い業績を上げている学生の行動を分析したうえで、さらに
統一基準に基づいて段階別評価の視点を加えました。そこで、そういったコンピテンシー
を確立するために、コンピテンシーの育成を図るために、まずどのような教育を行うべき
かを分析したのであります。このことは教員、学生間の中での評価基準、ひいては質の保
証につながる取り組みが期待できますし、教育の「見える化」に貢献するものだと思いま
す。実際に理工学部では、一部の科目にコンピテンシー教育を組み込んで、専門知識・技
能の修得と同時に、このコンピテンシー育成を図る革新的な授業改善を進めているところ
です。
そして、本学では2011年度から、文系の5学部にもこれを適用して全学的な取り組みが
進んでいます。すなわち、この段階別の特長を生かして、2011年度には文部科学省の助成
を得て、C-compass という自己診断システムを学生に提供しているところであります。こ
の取り組みは、最近全国でも注目されるところになっております。
今日、日本の大学が抱えているグローバル人材の養成、就業力の支援、このいずれにとっ
ても「段階別コンピテンシー育成教育システム」というものが果たす役割は大変大きなも
のがあるのではないかと思われます。
「實地應用ノ素ヲ養フ」という建学の精神のもとにさ
まざまな取り組みを進めている中央大学にとって、この「段階別コンピテンシー育成教育
システム」の登場と展開というものは、まさに中央大学の歴史、伝統、発展そのものだと
いうふうに信じてやみません。
これまでその開発・発展にご尽力をいただいた先生方や学生諸君に心から敬意と感謝を
申し上げますとともに、本日の報告会が有意義に開催され、その成果がさらに一層獲得さ
れることを祈ってご挨拶とさせていただきます。
ありがとうございました。
1
第1章
段階別コンピテンシー育成教育の展開
中央大学理工学部教授
牧野
光則
※ 本章の内容は、2012年3月16日に中央大学後楽園キャンパスにて開催された中央大学
「段階別コンピテンシー育成教育システム」報告会より抜粋したものです。
第1節
取り組みの背景
「段階別コンピテンシー育成教育の展開」という題名で、これまでの流れと今年度(20
11年度)はどういう予定であったかというお話をさせていただきます。
私の内容といたしましては、
「取り組みの背景」
「取り組みの目的と特徴」
「取り組みの進
捗」
「学生コンピテンシー育成の柱と工夫」
「今後の展開に向けた本年度の活動」
「当取り組
みの情報提供」の6点についてご説明申し上げます。
まず、
「取り組みの
背景」でございます。
皆様ご承知のとおり、
学士課程への改革要
求は、ある意味厳し
取り組みの背景
 学部教育への改革要求を受け、本学学部教育の課題認識のもと必要な学士力を具現化するコンピテンシー
の定義しそれを継続的に育成する仕組みとして「段階別コンピテンシー育成教育プログラム」を開発
学士課程(学部)教育への改革要求
文科省・大学設置基準改正 (H20年4月施行)
人材養成目的の明確化(学則・公表):
- 学部等で学生に修得させるべき能力は?
くなっていることか
成績評価基準等の明示(シラバスに):
と存じます。これは、
FD(ファカルティ・デベロップメント)の義務化:
国内からはもとより
海外からも何らかの
質保証、あるいは教
育改善が求められて
いる。なおかつ、社
会に出る際の知識と
能力の保証というこ
- 授業の目的、到達目標、各回ごとの授業内容、成績評価基準、
準備学習など
- 授業の内容・方法の改善を図るための研修
高等教育版PISA型テスト(AHELO)
中央大学・理工学部教育の課題
教育改善への取組
建学の理念「実地応用ノ素ヲ養フ」
卒業生が社会で活躍できる~専門職業人としての知識と能力
大学教育の出口保証
~学会発表が多い理工学研究科の質の維持と向上のために
正課のカリキュラムとしての「能力開発」の必要性
(human resource development)
大学教育の高度化
~Faculty developmentを通じた学内Good Practiceの普及
学部課程修了段階での学習成果を国際的に評価
- 一般的技能(批判的思考力、分析的論理づけ能力、
問題解決能力 等)
- 専門分野能力(工学、経済学)
- 背景情報(学生教員比率、図書館蔵書数、カウンセリング体制等
の教育環境)
企業が求める人材像
経済産業省:社会人基礎力
文部科学省・中教審大学分科会:学士力
厚生労働省: 若年者就職基礎力
1
「段階別コンピテンシー育成
教育プログラム」
研究面だけでなく、教育面でも充実をはかる
1
とを産業界からも強く言われております。また最近の報道等では、大学の科目にナンバー
を振って比較検討がしやすいようにという、ある意味、教育の「見える化」も進めようと
しております。
2
そのような中で中央大学理工学部におきましては、教育改善の取り組みといたしまして、
まず先程来、学長、副学長よりご紹介のとおり、建学の理念、そもそも法律に関すること
なのですが、いまやそれぞれの学部の分野における「實地應用ノ素ヲ養フ」という理念に
基づき、改善を始めている、ということでございます。
例えば、専門職業人としての知識や能力は何だろうかとか、理工学部ですので大学院と
ある意味セットで考えることが多いのですが、学会発表が多い理工学研究科は、大学院生
の質の維持と向上のためにさまざまなサポート体制を組むとか、あとは正課のカリキュラ
ムとしての能力開発の必要性を感じ、さまざまなプログラムを展開しているところであり
ます。当然ながら、FD等を通じた Good Practice の普及を進めるということもございます。
こういうさまざまな状況下で、環境、あるいは周囲の要求に応じ、今回の段階別コンピ
テンシー育成教育プログラムが生まれた、ということでございます。これは理工学部、あ
るいは大学院理工学研究科の研究面だけではなく、教育面でも充実を図ることにより、本
学、本学部の改善、あるいは展開と、それがまた研究面にフィードバックすることを意図
しております。
暗号通信サービスの実現 (「画像・映像コンテンツ演習3」作品)
3
第2節
取り組みの目的と特徴
これは、確かGP
取り組みの目的と特徴 (再掲)
を申請する際に書い
た目的でございます
が、
「各学科が育成す
る人材に必要な学士
取り組みの目的
中央大学理工学部各学科が育成する人材に必要な学士力を具現化するコンピテンシーを具体的かつ段階的
に定義し、これを育成するための教育改善を継続的に行う環境を整備して理工学部卒業生の到達度を
保証するPDCAシステムの構築
力を具現化するコン
ピテンシーを具体的
取り組みの特長
かつ段階的に定義し、
これを育成するため
専門職業人・高度専門家を目指す育成する人材
像(教育目的)の達成に必要なコンピテンシーを
具体的に定め、正課のカリキュラムの中で育成
特長Ⅰ
の教育改善を継続的
に行う環境を整備し
特長 Ⅱ
コンピテンシーを主要キーワードで構成し、それ
ぞれに統一尺度による段階(水準)を定義し、学
年進行に合わせて到達を点検・実感可能な構成
特長 Ⅲ
取組を通じて意識が変わった教員団による継続
運用
て、理工学部卒業生
の到達度を保証する
PDCAシステムの
典型的な
知識伝授型の
教育課程
知
識
本取組による
正課教育課程における
知識獲得+
コンピテンシー育成
キャリア教育による
コンピテンシー育成
コンピテンシー
1
1
構築」とさせていた
だいております。特徴としては、知識の習得とコンピテンシーの向上というものの両面を
支える何らかのプログラムをつくっていく。それがゼロからいきなりトップに行くわけで
はないので、段階的に行こうと。そして、この途中経過もきちんとつくっていこうという
ものでございました。
そういう意味で特長は3点ございまして、一つは、正課のカリキュラムの中でコンピテ
ンシーを育成する、ということでございます。次の特長といたしましては、今申し上げた
段階別な水準を定義する。学年進行に合わせて到達を点検し、実感可能な構成とする、と
いうことでございます。三番目といたしましては、今回の取り組みに主たる担当者として
携わった教員は、おそらく意識が変わったかと思います。その意識が変わった教員らによ
る継続的な運用を図りたいということで、この特長といたしましては今後の展開に委ねら
れることになります。
4
格好よくシステム
として書くと、この
PDCAサイクルに
なります。段階別コ
ンピテンシー育成に
学習成果保証システムの構築
 学生に求められるコンピテンシーを定義し、育成目標を定め、それを育成するための育成プログラムの質
の向上を通じて中央大学理工学部生の学習成果の保証システムを構築
PLAN
DO
関しては、まずプラ
ンといたしまして育
育成する人材像
の明確化
成する人材像の明確
必要なコンピテン
シーとは何か、その
水準とは何か、そこ
コンピテンシー
項目策定
コンピテンシー
水準策定
学年別育成目標
コンピテンシー水準
支援の仕組み
ツール開発
対象プログラム
選定
成果評価
DO
学習成果
育成
要件
定義
育成
プログ
ラム
設計
育成
プログ
ラム
開発
育成
プログ
ラム
実施
教育改善を通じた
学習成果保証システム
反応
育
成
プ
ロ
グ
ラ
ム
評
価
ステークホルダー
マネジメント
知識修得
行動
ACTION
育成プログラムの質の向上
育成成果
育成プログラム
の質の向上
成果
・
・
・
仕組みの合理性
評価
品質
マネジメント
タイム
マネジメント
ACTION
に至る段階とは何か、
それが学年でどう対
PLAN
CHECK
化、そういう人材に
学習成果保証システムの構築
構想策定
プログラム評価
基準策定
CHECK
1
1
応するのか、支援するツールとか対象プログラム、科目をどう選定するのかというような
プランのところ、あとは実際にそのプランに基づいてプログラム、あるいは科目を開発し、
実施するというところです。この大きなPDCAサイクルの中にさらに青で書いてあります
けれども、各科目、あるいはプログラム単位でのPDCAが回るということになります。
「学習成果」というところは、ある意味、学生によるPDCAということになります。学
生がこのプログラム、あるいは科目を受講することによって、学生は何かを計画し、学習
に取り組み、あるいはその背景にあるコンピテンシーの向上を行い、何らかの意味でチェッ
クし気づきを経て、さらに次の行動に移る、という学生のPDCAが入る、ということでご
ざいます。
そういうことで、プログラム全体としてはそれらの成果をもとにさらにチェックし変え
ていくという大きなPDCAということで、模式図といたしましては3個のPDCAが存在す
るかと思います。
暗号通信サービスの実現 (「画像・映像コンテンツ演習3」作品)
5
第3節
取り組みの進捗
この取り組みを実
取り組みの進捗
施するに当たりまし
H21前記までの
活動
て、理工学部は9学
科ございますけれど
も、GP採択以前より
第一
グループ
情報工学科
先行実施しておりま
した情報工学科を第
第二
グループ
一グループとし、そ
経営システム
工学科
コンピテン
シー定義
段階別水準
表作成
育成教育の
設計と試行
二グループが得た成
果を第三グループへ
ガイド類開発、多面評
価方法検討 等
H22年度
H23年度
コンピテンシー育成の本
卒業研究を含む他の科
目へのコンピテンシー
育成教育の検討
成果発表実施
コンピテンシー育成教
育の実施と評価・点検
推進Gへの蓄積事例
報告
格実施と評価点検を
継続的に実施
実行結果および点検Gか
らの指摘に基づき各種
改訂・追加開発実施
成果報告会実施
Plan
Action
他の科目への展開検討
先行グループを参考に23
年度実施に向けた「育成
第三
グループ
する人材像定義」「コン
ピテンシーキーワード
(専門性)定義」実施
育成教育の設計実施
ハウを第二グループ
へ、そして第一、第
と計画策定
本格実施のための教材、
第一グループを参考
に「育成する人材像定
義」「コンピテンシー
キーワード(専門性)定
義」「育成教育の設計」
実施
こが先行する形で得
た知見あるいはノウ
H21年度後期
既設科目の見直し実施
Do
Check
コンピテンシー育成教
育の実施と評価・点検
展開検討
推進WG
全体推進および状況把握・調整 取り組みの学内外への公開
点検WG
点検・評価と改善項目のフィードバック
1
ということで、リー
ディングをする学科とフォローする学科、そこでフォローする学科のほうで何らかの気づ
きがあった場合にはもう一回フィードバックを掛ける、というような形で進行いたしまし
た。一番右にありますとおり、平成23年度は実際にやってみるところが主な活動というこ
とになりました。
暗号通信サービスの実現 (「画像・映像コンテンツ演習3」作品)
6
第4節
学生コンピテンシー育成の柱と工夫
このプログラムの
学生コンピテンシー育成の柱と工夫
内容は、コンピテン
 「段階別コンピテンシー育成教育システム」は、理工学部全体(9学科)にて、人材像と求められるコンピテンシーが
提示され、対応教育(育成プログラム)の実施と、コンピテンシー育成のPDCAの仕組み(C-compass)の提供に
よって、学生のコンピテンシー育成を支援
シーや人材像をつく
る、定義するところ
と、それを実行に移
人材像
コンピテンシー
す、それをもとに教
育をするという育成
プログラムと、それ
らを支えるPDCA
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
PDCAの
育成プログラム
仕組み
の仕組みという3本
の柱があろうかと思
います。
1
実際にどういうふ
うにやっていたかということですが、右上の三つのところにロゴみたいなものが付いてお
りますけれども、ちょっと色が抜けているところがあります。ここは逆に、色が付いてい
るほうが関係するところとお考えください。
まず、各学科での
人材像
コンピテンシー
コンピテンシーの育
成を、人材像の定義、
義という、学科とし
対応科目を決めてそ
の科目におけるコン
育成プログラム
実施作業項目
学
科
と
し
て
実
施
主な作成資料
「学生コンピテンシー定義
:人材像定義」
「学生コンピテンシー定義
:専門性定義」
ピテンシーの育成目
学生人材像定義
専門性定義
コンピテンシーレベル定義
育成コンピテンシー
画像・映像コンテンツ演習(仮称)計画案
授
業
工程
内容
行動のポイント
次回迄の宿題
(教員等が次回迄に提
出内容を確認できる時
間の猶予が必要)
問題解決力
(デザイン)
コミュニケーション力
提出物
傾
聴
力
読
解
力
◎
◎
記
述
力
提
案
力
議
論
力
課
題
発
見
課
題
分
析
論
理
的
思
考
◎
◎
◎
○
○
仕様書作成
計
画
実
行
①基礎知識習得
検
証
どうやって育成をす
るかという方法の検
討ということを、こ
れは当然ながら科目
として実施するとい
2
3
授
業
科
目
と
し
て
実
施
概要紹介、
班分け、
テーマ発表
進め方の説明、演習ノートシステ
ム利用方法説明、チームの(仮)
決定、プロジェクトテーマの発表
基礎実習(1) 必要知識やシステム利用方法の
習得(複数名でのプログラム開発
基礎実習(2) における留意事項を含む?)
4
モデル・アルゴリズムの選択、関
仕様作成(1) 数単位での仕様書作成、TA・教
員からの助言
5
仕様作成
(2)、役割分
担
6
構築(1)
7
構築(2)
・テーマを理解する
・チームを作る
テーマに関するチーム
の意識合わせ、メン
バーの知識・能力の相
互確認
実習成果
◎
◎
テーマ解決方法の選
択・考案
実習成果
○
○
上級生から助言を得た
上での、必要な修正・
追加
仕様書(案)
○
○
○
○
○
動作確認方法案
仕様書、役割分担書
○
○
◎
○
○
・基礎知識習得
・テーマ解決方法の検討
「コンピテンシー
育成目標設定」
・仕様を作成する(関数単
位)
・助言を得る
仕様書の完成(TA・教員への説明
・仕様書を完成する
を含む)と役割分担の決定、次回
・役割分担をする
以降の作業の確認(特に動作確
・動作確認方法を検討する
認方法について)
◎
◎
④助言を得る
コミュニケーション力
⑤仕様書を完成する
⑥役割分担をする
①基礎知識習得
⑦動作確認方法を検討する
②テーマ解決方法の検討
③仕様を作成する(関数単位)
知る
④助言を得る
⑤仕様書を完成する
⑥役割分担をする
④助言を得る
⑤仕様書を完成する
試す/使う
実施
◎
9
構築(4)
知る
学習
試す/使う
実施
○
完成した部分のプログラ
ム、動作確認結果
・プログラミングをする
○
違いを知る
完成した部分のプログラ
ム、動作確認結果
・動作確認をする
・評価する
◎
○
◎
授業科目におけるコンピテンシー育成目標設定表
構築(3)
・プログラムの結合をする
評価に必要なデータの
内容案
プログラム全体、動
作確認結果
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
プログラムの結合、動作確認(TA
の確認を含む)、評価方法の決定
(TAの確認を含む)
・結合の動作確認をする
・評価する
プログラム全体、動
作確認結果
完成したプログラムを実行させ、
・プログラムを実行する
プレゼンテーションや最終レポー ・プレゼンテーション、最終
トに掲載すべき結果やデータを収 レポートのための情報収集
集
をする
10
実行、評価
11
・役割分担を決める
プレゼン
プレゼンテーションのポイントをも ・プレゼンテーションのス
テーション準
とに資料準備(役割分担を含む)
トーリーを考え、資料を作成
備(1)
する
12
プレゼン
テーション準 プレゼンテーションリハーサル
備(2)
・プレゼンテーションのリ
ハーサルをする
・助言を受ける
プログラム、実験結
果(未整理)
○
プレゼンテーション
計画書
上級生から助言を得た
上での、必要な修正・
追加
プレゼンテーション資料
◎
○
◎
◎
○
◎
○
○
○
知識獲得力
組織的行動能力
創造力
自己実現力
①先生の話を聞く
②テーマと課題内容を ①基礎実習で基礎知 ②チームでテーマ解 仕様を作成するなかで スケジュール管理を
違いを知る
①不明点や間違いを指摘
②テーマ解決方法を
②チームの話し合い
TAからのアドバイスで 仕様書完成が期限に
②チームで相談する フィードバック
理解し、その解決方法
識を習得する②③⑦TAからフィード
決方法を検討するた
自分なりの工夫をする
しっかりと行い、期限
バックを受けながらよ
自分の仕様の欠点や 間に合わなないなどの
④先生/TAの助言を得るた を考えるされ、話の聞き漏らしや、
②テーマ解決方法を
めに話し合う 検討しながら、チーム がうまくいかなかった
までに仕様書を完成さ
理解できなかった点がある
り良い問題解決方法
メンバーの意見やTA り、異なる意見が出て
改良点を知る
トラブルがあり、スケ
めに自分の考えを説明す ③課題内容に合った
検討する
⑥お互いを知り、チー
せる
ことに気づく ③仕様を作成する
を知る
のアドバイスを聞いて くる
ジュール管理の大切さ
る
仕様を作成する
ムで話し合って役割分
②チームでの相談がうまく
違う思考方法を知る ⑥役割分担でうまくい
に気づく
⑤仕様を記述する
⑦動作確認方法を検
担をする
③仕様を作成し、TA かなかったところがあ
討する いかず、TAにまとめてもら
う
のアドバイスを受けて とで問題として発生す
フィードバック ①不明点や間違いを指摘 ②③⑦TAからフィード
②テーマ解決方法を ②チームの話し合い
仕様書完成が期限に
④自分の考えをうまく説明
修正する TAからのアドバイスで
る
され、話の聞き漏らしや、 バックを受けながらよ
検討しながら、チーム がうまくいかなかった 自分の仕様の欠点や 間に合わなないなどの
できなかったり、助言を理
理解できなかった点がある り良い問題解決方法
メンバーの意見やTA り、異なる意見が出て 改良点を知る
トラブルがあり、スケ
解できず自分の足りない能
ことに気づく
を知る 力に気づく
のアドバイスを聞いて くる
ジュール管理の大切さ
②チームでの相談がうまく
違う思考方法を知る ⑥役割分担でうまくい
に気づく
⑤仕様の記述がうまくいか
フィードバックを経て決心したこと(アク
いかず、TAにまとめてもら
③仕様を作成し、TA
かなかったところがあ
ず、アドバイスを受けて修
ションプラン)をまとめておけるシート
う
のアドバイスを受けて
とで問題として発生す
正する
(ノート)を用意する必要があります
④自分の考えをうまく説明
修正する
る
できなかったり、助言を理
宣言する
自己宣言
①話を注意して聞こうとす ②③⑦より良い問題 ②③⑦フィードバック ②⑥話し合いで異なる 次回はもっと工夫しよ 次回からスケジュール
解できず自分の足りない能
る
解決方法を学んでいこ を受けて学んだ違う思 意見が出たときやうま うと思う
管理を大事にしようと
力に気づく
②チームで相談することの うと思う
考方法を取り入れて くいかなかったときの
思う
⑤仕様の記述がうまくいか
難しさを知り、今後につな
次に生かそうとする
調整方法を学び、次回
フィードバックを経て決心したこと(アク
ず、アドバイスを受けて修
げようと思う
に生かそうとする
ションプラン)をまとめておけるシート
正する
(ノート)を用意する必要があります
④説明の仕方に注意し、助
言を注意して聞く
自己宣言
①話を注意して聞こうとす ②③⑦より良い問題
②③⑦フィードバック ②⑥話し合いで異なる 次回はもっと工夫しよ 次回からスケジュール
⑤仕様の記述を学んでス
る
解決方法を学んでいこ を受けて学んだ違う思 意見が出たときやうま うと思う
管理を大事にしようと
②チームで相談することの うと思う
考方法を取り入れて くいかなかったときの
思う
難しさを知り、今後につな
次に生かそうとする
調整方法を学び、次回
げようと思う
に生かそうとする
④説明の仕方に注意し、助
言を注意して聞く
⑤仕様の記述を学んでス
授業科目におけるコンピテンシー育成方法
宣言する
◎
◎
問題解決力
③仕様を作成する(関数単位)
②テーマ解決方法の検討
⑦動作確認方法を検討する
メンバー毎のプログラム作成、動
作確認(メンバー同士の相互評価
を含む)
8
コミュニケーション力
①基礎知識習得
①基礎知識習得
②テーマ解決方法の ②テーマ解決方法の ②テーマ解決方法の
②テーマ解決方法の検討
検討
検討
検討
③仕様を作成する(関 ③仕様を作成する(関
③仕様を作成する(関
数単位)
数単位)
数単位)
④助言を得る
問題解決力
知識獲得力
組織的行動能力
創造力
自己実現力
⑤仕様書を完成する
⑤仕様書を完成する
①基礎知識習得
⑥役割分担をする
②テーマ解決方法の ②テーマ解決方法の
②テーマ解決方法の
⑦動作確認方法を検
⑦動作確認方法を検
検討
検討
討する 検討
討する
③仕様を作成する(関
学習 ③仕様を作成する(関 ③仕様を作成する(関
③仕様の作成方法を
⑥チームの中での役 仕様の作成方法を学
数単位)
数単位)
数単位)
知る
割業務、分担方法の ぶ
共有をする
⑤仕様書を完成する
①先生の話を聞く
②テーマと課題内容を ①基礎実習で基礎知 ②チームでテーマ解 仕様を作成するなかで スケジュール管理を
⑥役割分担をする
②チームで相談する
理解し、その解決方法 識を習得する
決方法を検討するた 自分なりの工夫をする しっかりと行い、期限
⑦動作確認方法を検 ⑦動作確認方法を検
④先生/TAの助言を得るた を考える
②テーマ解決方法を めに話し合う
までに仕様書を完成さ
討する
討する
めに自分の考えを説明す ③課題内容に合った 検討する
⑥お互いを知り、チー
せる
③仕様の作成方法を ⑥チームの中での役 仕様の作成方法を学
る
仕様を作成する
③仕様を作成する
ムで話し合って役割分
知る
割業務、分担方法の ぶ
⑤仕様を記述する
⑦動作確認方法を検
担をする
共有をする
討する
②テーマ解決方法の検討
①基礎知識習得
仕様書作成
1
標を設定し、実際に
PDCAの
仕組み
 各学科独自の「学生人材像定義」および「専門性定義」、「コンピテンシーレベル定義」作成
 授業科目として「コンピテンシー育成目標の設定」と「コンピテンシー育成方法の検討」を作成、育成プログ
ラム実施
コンピテンシーの定
て実施するところと、
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
各学科プログラムでのコンピテンシー育成
「コンピテンシー
育成方法検討」
TAガイド
1
う、二つのカテゴリーに分けて実施いたしました。そういう意味で、上のほうは学科の多
7
数の教員が参画し、下のほうはその科目担当教員が中心に検討したということになります。
できるだけほかの教員に、あるいは学外にもその成果をお見せするという観点から、文
書化を進めるということは、かなり注意を払って行いました。結果として、例えば人材像
の定義、コンピテンシーの定義に関しては、その定義を行うためのドキュメント、あるい
は定義したものを統一フォームでつくった、ということでございます。
さらに、ある科目を選んで、その科目に対して全部のコンピテンシーを対応させるのか、
あるいは一部を対応させるのか、そのときの水準、目標段階はどこなのかというような設
定の仕方とか、対応表のつくり方とか、最終的に育成方法を検討するというようなところ
は、これらの文書ですね。「授業科目におけるコンピテンシー育成目標設定表」とか、「授
業科目におけるコンピテンシー育成方法」、ガイドラインとかそれらを集約して、ではこう
いうふうにやりましょうと。あるいはもしTAがつくのであれば、TAにこういう指導をし
ましょうという、ある意味集約された形で文書化されている「TAガイド」とか、こうい
うものを作成し、実際に後年、担当者が変わっても続けられるような仕組みをつくりたい
ということでこうなりました。
いまの流れの中で、
人材像
コンピテンシー
まず人材像をどうつ
くったのかにつきま
して、これは昨年の
人材像とコンピテンシー定義
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
育成プログラム
PDCAの
仕組み
 中央大学理工学部の全9学科には「育成すべき人材像」とそれに必要な「段階別コンピテンシー」を定義・公表
 9学科は7種類のコンピテンシーのうち6種類を共通とし、各学科の教育の特徴を示す育成すべき人材像を強く反
映する「専門性」に特色を持つ
シンポジウムでもご
報告を申し上げまし
中央大学理工学部の育成する人材像
たけれども、まず理
「新しい課題への果敢な挑戦力と組織をまとめる卓越した交渉力を持ち、人類共
有の知的資産たる科学技術を継承し、自らの新発見の成果発表を通じて積極的
に社会貢献できる人材」(学則より抜粋)
工学部の育成する人
材像とは何か。これ
はここに書いてあり
ますけれども、こう
いうものだと。では、
各学科が育成する人材像
卒業後にこのような姿で活躍してほしいという人材像
学生コンピテンシー定義
それに対して各学科
全9学科に共通する「コミュニケーション力」などの6つと、各学科個別の「専門
性」、あわせて7つの主要コンピテンシーを指標として定義
が育成する人材像は
各コンピテンシーは大学での学習中によく現れる行動例で段階化
何かというものを、
1
卒業後にこのような姿で活躍して欲しいというところからつくり出す。ここをつくるに当
たっては、それぞれの学科の就職状況、大学院進学の状況、そういう各種のデータとか、
あるいは逆に入ってくる側、高校生がその学科に何を期待して入ってくるのかを調査しな
がらつくる、ということになりました。
8
そして、そういう
人材像を定めたとき
に、その人材像が具
人材像
コンピテンシー
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
中央大学理工学部 学生コンピテンシー定義
PDCAの
仕組み
育成プログラム
備すべきコンピテン
シーとは何かという
ことを次につくり、
さらに段階をつくる
ということになりま
した。最初は情報工
学科が先例として実
施したのですが、結
局コンピテンシーと
いたしましては7種
中央大学HPより
類で構成しておりま
す。そのうち七番目
1
が「専門性」というもので、これは情報工学科特有のつくり方をいたしました。ですので、
あとに続いたほかの8学科は、その専門性をつくりかえるということで、ほかの6種類の
コンピテンシーについては、これは理工学部生として持つべきものであろうということで
共通化いたしました。その6種類のコンピテンシーは全学的に採用をいただいているので、
最終的には中央大学の学生が具備すべきコンピテンシーという形になっております。
あとは特徴といた
人材像
コンピテンシー
しまして、各コンピ
テンシーは大学の学
習中によくあらわれ
る行動例、後ほどの
ご報告ではまだ主観
的で客観的ではない
というご報告も入る
とは思うのですけれ
ども、できるだけ行
動例として段階化し
たつもりでございま
す。例えば7種類の
段階別
コン ピ テン シー育成
教育システム
育成プログラム
定義例:情報工学科 人材像定義と各学年に求められるコンピテンシーレベル
■定義
情報分野の幅広い業種にわたりミドル~トップマネジメントの担い手となるため、専門性と共
に広範な基礎知識を身に付け、夢の実現に向けて学び挑戦し続ける心と、研究活動や学会
での研究発表等を通じて培ったコミュニケーション力とを備え、集団および社会における自ら
の役割を常に意識し、正しい倫理観をもって行動する知性的な人材を、学びの目標である
1.未知のプログラミング言語にも対応できる多言語技術者としての素地
2.新世代の高度情報処理を実現するソフトとハード両面の知識
3.国際社会の情報マネジメントに必要なデザイン能力
の修得を通じて育成します。
■必要コンピテンシーレベル(P30「コンピテンシー レベル設定と具体例」、P31「コンピテンシー項目別レベル記述」参照)
コンピテンシー
1年
8月末
2年
8月末
3年
8月末
4年
8月末
卒業
時点
M1
8月末
M2
8月末
終了
時点
コミュニケーション力
1
2
3
3
3
3
4
4
問題解決力
1
2
2
3
3
3
4
4
知識獲得力
1
2
2
3
3
3
4
4
組織的行動能力
1
2
3
4
4
4
4
4
創造力
1
2
2
3
3
3
4
4
自己実現力
1
2
3
4
4
4
4
4
専門性
1
1
2
3
3
3
4
4
コンピテンシーは、
さらにその中で要素
PDCAの
仕組み
1
に分解しています。基本的には5個ですが一つだけ3個のものがありますので、全部で33
の小項目が存在いたします。それぞれにつきまして、例えばコミュニケーションとはこう
ですよという定義もありますし、問題解決力とはこうだという小項目に対する定義もござ
います。さらに0から4までの、問題行動から卓越行動までの5段階の定義をつくらせて
9
いただきました。ですので、7種のコンピテンシーといたしましては5段階ということな
ので、35個の段階の定義があるということでございます。小項目になりますと全部で37
種類のコンピテンシーに対して33の小項目が存在いたしますので、33×5で165の定義が
あるということで、コンピテンシーそのものと小項目の段階定義を合わせますと200があ
るということでございます。その200に関しまして、0とはこういうものである、1とは
こういうものであるという思想のもとに、統一的な尺度を行動例として定義しているとい
うものでございます。
いま、200と申し上げましたけれども、先ほど少し説明したとおり、実は各学科は専門
性がちょっと違うということがあります。これは情報工学科の人材像と必要なコンピテン
シーのレベル、あるところまではいくつにいって欲しいと期待する水準でございます。こ
ういう書き方をすると、各学科はだいたい同じような並びになるのですけれども、この専
門性の中身が、各学科は実は違ってくるということになります。
各学科の定義、詳
述をここに置くと大
変な量になるので、
人材像
コンピテンシー
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
各学科の特色を反映した「専門性」コンピテンシー
育成プログラム
PDCAの
仕組み
今日は小項目のキー
ワードだけをお見せ
電気電子情報
通信工学科
応用化学科
経営システム
工学科
情報工学科
生命科学科
グローバル
創発力
創生
統合力
精確性
発見・主張
分析・総合
実用
工学デザイン力
応用
手法活用
専門知識
展開・活用
都市環境学基礎
精密機械
工学基礎
工学基礎科学
と技術
(テクノロジー)
化学基礎
経営システム
工学基礎
情報技術基礎
生命科学基礎
数学科
物理学科
都市環境学科 精密機械工学科
概念化・洞察
探求
大局観・実現力
一般化・応用
サイエンス
数学基礎
物理学基礎
することにいたしま
すが、こういう形に
なっております。一
応、統一的な考え方
としては、その学科
の専門性を養成する
自然科学
数学・自然科学 数学・自然科学 数学・自然科学 数学・自然科学 数学・自然科学 数学・自然科学
数学・自然科学
数学・自然科学
・情報科学
・情報科学
・情報科学
・情報科学基礎
・情報科学
・情報科学
・情報科学
のに基盤となるもの
から、実際に専門家
基盤となる学力 基盤となる学力 基盤となる学力 基盤となる学力
基盤となる学力 基盤となる学力 基盤となる学力 基盤となる学力
中央大学HPより
として将来活躍する
のに必要な技能・技
補完能力
(人間力)
1
量、最終的にこの一番上は、どちらかと言うと内在するものになります。こういう考え方
でつくらせていただいております。
ほとんど同じキーワードが並んでいるところもありますし、一部、それぞれの学科の目
標とする人材によって多少違いが出てきます。一番上の欄が、各学科の思いが詰まってい
るような状況かと思います。これは全部で9学科で5個の小項目がありますから、ここだ
けで45個あります。45個に対してそれぞれ5段階あるわけですから、これだけで225個あ
るということになります。ですので、全部表形式ですべての定義を書きますと、たぶんA
4で、すごく小さくてもたぶん5~6頁は必要という状況でございます。もしご興味があれ
ば、後ほどお送りしたいと思います。
10
そういうふうにつ
くったコンピテン
シーを科目にどう展
開するのかに関しま
人材像
コンピテンシー
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
育成プログラム設計・開発&品質改善
育成プログラム
PDCAの
仕組み
 各授業科目で実施する「育成プログラム設計・開発」および「品質改善」に関する手順を「育成プログラム設
計・開発&品質改善の手引き」として作成し、プログラムの質の向上を担保
しては、先行した2
学科の例をもとにこ
ういうふうにつくり
ましょうということ
で、つくり方のガイ
ドブックというもの
をつくりました。な
お、この開発に当た
りましては、今は日
本アイ・ビー・エム
ですけれども、当時
1
1
は日本アイ・ビー・エムとその子会社だったIBMビジネスコンサルティングサービスのご
協力をいただいております。
それで、こういう
ふうにやっていきま
しょうという手順書
をつくったというこ
人材像
コンピテンシー
各授業科目における育成目標設定と育成プログラム設計・開発
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
育成プログラム
PDCAの
仕組み
 各授業科目の内容、特性を考慮し、その中で「めざす姿」「よりよい姿」を「コンピテンシー育成目標」として設定
 育成目標へ導くための育成方法を検討。実施ガイドとして「TAガイド」を作成
とでございます。具
体的にはコンピテン
1. コンピテンシー
シー育成目標をつく
育成目標の設定
(A)コンピテンシー
育成目標定
②コンピテン
シー育成目標
設定
①科目の狙い
の定義
現状
るということで、ま
ず科目の狙いは何で
しょうということを
2. 育成プログラム
設計・開発
①科目における
コンピテンシー
育成目標設定
表作成
シラバスの作成
もう一回確認し、そ
授
業
工程
内容
行動のポイント
次回迄の宿題
(教員等が次回迄に提
出内容を確認できる時
間の猶予が必要)
問題解決力
(デザイン)
コミュニケーション力
提出物
傾
聴
力
読
解
力
記
述
力
提
案
力
議
論
力
課
題
発
見
課
題
分
析
論
理
的
思
考
計
画
実
行
(B)育成プログラム
設計・実施
③TAガイドの作
成
②育成方法の
検討
育成コンピテンシー
画像・映像コンテンツ演習(仮称)計画案
の科目の狙いからコ
仕様書作成
検
証
①基礎知識習得
コミュニケーション力
問題解決力
v
知識獲得力
v
組織的行動能力
創造力
自己実現力
①基礎知識習得
①基礎知識習得
②テーマ解決方法の ②テーマ解決方法の ②テーマ解決方法の
②テーマ解決方法の検討
検討
検討
検討
③仕様を作成する(関 ③仕様を作成する(関
③仕様を作成する(関
数単位)
数単位)
数単位)
④助言を得る
問題解決力
知識獲得力
組織的行動能力
創造力
自己実現力
⑤仕様書を完成する
⑤仕様書を完成する
①基礎知識習得
⑥役割分担をする
②テーマ解決方法の ②テーマ解決方法の
②テーマ解決方法の
⑦動作確認方法を検
⑦動作確認方法を検
検討
検討
討する 検討
討する
③仕様を作成する(関
学習 ③仕様を作成する(関 ③仕様を作成する(関
③仕様の作成方法を
⑥チームの中での役 仕様の作成方法を学
数単位)
数単位)
数単位)
知る
割業務、分担方法の ぶ
④助言を得る
共有をする
⑤仕様書を完成する
⑤仕様書を完成する
試す/使う
実施
①先生の話を聞く
②テーマと課題内容を ①基礎実習で基礎知 ②チームでテーマ解 仕様を作成するなかで スケジュール管理を
⑥役割分担をする
②チームで相談する
理解し、その解決方法 識を習得する
決方法を検討するた 自分なりの工夫をする しっかりと行い、期限
⑦動作確認方法を検 ⑦動作確認方法を検
④先生/TAの助言を得るた を考える
②テーマ解決方法を めに話し合う
までに仕様書を完成さ
討する
討する
めに自分の考えを説明す ③課題内容に合った 検討する
⑥お互いを知り、チー
せる
③仕様の作成方法を ⑥チームの中での役 仕様の作成方法を学
る
仕様を作成する
③仕様を作成する
ムで話し合って役割分
知る
割業務、分担方法の ぶ
⑤仕様を記述する
⑦動作確認方法を検
担をする
共有をする
討する
②テーマ解決方法の検討
③仕様を作成する(関数単位)
1
2
ンピテンシー育成の
概要紹介、
班分け、
テーマ発表
進め方の説明、演習ノートシステ
ム利用方法説明、チームの(仮)
決定、プロジェクトテーマの発表
・テーマを理解する
・チームを作る
実習成果
◎
◎
◎
◎
・基礎知識習得
・テーマ解決方法の検討
テーマ解決方法の選
択・考案
実習成果
○
○
◎
◎
4
モデル・アルゴリズムの選択、関
仕様作成(1) 数単位での仕様書作成、TA・教
員からの助言
・仕様を作成する(関数単
位)
・助言を得る
上級生から助言を得た
上での、必要な修正・
追加
仕様書(案)
○
○
○
○
○
5
仕様作成
(2)、役割分
担
動作確認方法案
仕様書、役割分担書
○
○
◎
○
○
6
構築(1)
7
構築(2)
仕様書の完成(TA・教員への説明
・仕様書を完成する
を含む)と役割分担の決定、次回
・役割分担をする
以降の作業の確認(特に動作確
・動作確認方法を検討する
認方法について)
・プログラミングをする
完成した部分のプログラ
ム、動作確認結果
・動作確認をする
・評価する
完成した部分のプログラ
ム、動作確認結果
◎
○
○
◎
◎
目標を定める。この
知る
学習
試す/使う
実施
違いを知る
・プログラムの結合をする
評価に必要なデータの
内容案
・結合の動作確認をする
・評価する
構築(4)
知る
○
○
◎
プログラム全体、動
作確認結果
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
プログラムの結合、動作確認(TA
の確認を含む)、評価方法の決定
(TAの確認を含む)
9
⑦動作確認方法を検討する
②テーマ解決方法の検討
③仕様を作成する(関数単位)
⑦動作確認方法を検討する
○
◎
授業科目におけるコンピテンシー育成目標設定表
構築(3)
④助言を得る
コミュニケーション力
⑤仕様書を完成する
⑥役割分担をする
①基礎知識習得
②テーマ解決方法の検討
④助言を得る
⑤仕様書を完成する
⑥役割分担をする
◎
メンバー毎のプログラム作成、動
作確認(メンバー同士の相互評価
を含む)
8
①基礎知識習得
仕様書作成
テーマに関するチーム
の意識合わせ、メン
バーの知識・能力の相
互確認
基礎実習(1) 必要知識やシステム利用方法の
習得(複数名でのプログラム開発
基礎実習(2) における留意事項を含む?)
3
ときに現状と目指す
目指す姿
プログラム全体、動
作確認結果
完成したプログラムを実行させ、
・プログラムを実行する
プレゼンテーションや最終レポー ・プレゼンテーション、最終
トに掲載すべき結果やデータを収 レポートのための情報収集
集
をする
10
実行、評価
11
・役割分担を決める
プレゼン
プレゼンテーションのポイントをも ・プレゼンテーションのス
テーション準
とに資料準備(役割分担を含む)
トーリーを考え、資料を作成
備(1)
する
12
プレゼン
テーション準 プレゼンテーションリハーサル
備(2)
・プレゼンテーションのリ
ハーサルをする
・助言を受ける
プログラム、実験結
果(未整理)
○
プレゼンテーション
計画書
上級生から助言を得た
上での、必要な修正・
追加
プレゼンテーション資料
◎
○
◎
◎
○
◎
○
○
◎
◎
○
①先生の話を聞く
②テーマと課題内容を ①基礎実習で基礎知 ②チームでテーマ解 仕様を作成するなかで スケジュール管理を
違いを知る
①不明点や間違いを指摘
②テーマ解決方法を
②チームの話し合い
TAからのアドバイスで
②チームで相談する フィードバック
理解し、その解決方法
識を習得する②③⑦TAからフィード
決方法を検討するた
自分なりの工夫をする
しっかりと行い、期限
バックを受けながらよ
自分の仕様の欠点や
④先生/TAの助言を得るた を考えるされ、話の聞き漏らしや、
②テーマ解決方法を
めに話し合う 検討しながら、チーム がうまくいかなかった
までに仕様書を完成さ
理解できなかった点がある
り良い問題解決方法
メンバーの意見やTA り、異なる意見が出て
改良点を知る
めに自分の考えを説明す ③課題内容に合った
検討する
⑥お互いを知り、チー
せる
ことに気づく ③仕様を作成する
を知る
のアドバイスを聞いて くる
る
仕様を作成する
ムで話し合って役割分
②チームでの相談がうまく
違う思考方法を知る ⑥役割分担でうまくい
⑤仕様を記述する
⑦動作確認方法を検
担をする
③仕様を作成し、TA かなかったところがあ
討する いかず、TAにまとめてもら
う
のアドバイスを受けて とで問題として発生す
フィードバック ①不明点や間違いを指摘 ②③⑦TAからフィード
②テーマ解決方法を ②チームの話し合い
仕様書完成が期限に
④自分の考えをうまく説明
修正する TAからのアドバイスで
る
され、話の聞き漏らしや、 バックを受けながらよ
検討しながら、チーム がうまくいかなかった 自分の仕様の欠点や 間に合わなないなどの
できなかったり、助言を理
理解できなかった点がある り良い問題解決方法
メンバーの意見やTA り、異なる意見が出て 改良点を知る
トラブルがあり、スケ
解できず自分の足りない能
ことに気づく
を知る 力に気づく
のアドバイスを聞いて くる
ジュール管理の大切さ
②チームでの相談がうまく
違う思考方法を知る ⑥役割分担でうまくい
に気づく
⑤仕様の記述がうまくいか
フィードバックを経て決心したこと(アク
いかず、TAにまとめてもら
③仕様を作成し、TA
かなかったところがあ
ず、アドバイスを受けて修
ションプラン)をまとめておけるシート
う
のアドバイスを受けて
とで問題として発生す
正する
(ノート)を用意する必要があります
④自分の考えをうまく説明
修正する
る
できなかったり、助言を理
宣言する
自己宣言
①話を注意して聞こうとす
②③⑦より良い問題
②③⑦フィードバック
②⑥話し合いで異なる
次回はもっと工夫しよ
解できず自分の足りない能
る
解決方法を学んでいこ を受けて学んだ違う思 意見が出たときやうま うと思う
力に気づく
②チームで相談することの うと思う
考方法を取り入れて くいかなかったときの
⑤仕様の記述がうまくいか
難しさを知り、今後につな
次に生かそうとする
調整方法を学び、次回
フィードバックを経て決心したこと(アク
ず、アドバイスを受けて修
げようと思う
に生かそうとする
ションプラン)をまとめておけるシート
正する
(ノート)を用意する必要があります
④説明の仕方に注意し、助
言を注意して聞く
自己宣言
①話を注意して聞こうとす ②③⑦より良い問題
②③⑦フィードバック ②⑥話し合いで異なる 次回はもっと工夫しよ 次回からスケジュール
⑤仕様の記述を学んでス
る
解決方法を学んでいこ を受けて学んだ違う思 意見が出たときやうま うと思う
管理を大事にしようと
②チームで相談することの うと思う
考方法を取り入れて くいかなかったときの
思う
難しさを知り、今後につな
次に生かそうとする
調整方法を学び、次回
げようと思う
に生かそうとする
④説明の仕方に注意し、助
言を注意して聞く
⑤仕様の記述を学んでス
仕様書完成が期限に
間に合わなないなどの
トラブルがあり、スケ
ジュール管理の大切さ
に気づく
授業科目におけるコンピテンシー育成方法
宣言する
次回からスケジュール
管理を大事にしようと
思う
TAガイド
1
姿がもし乖離しているのであれば、ここに何らかの工夫が要るということになります。
実際に育成するプログラムはどうするかというと、当然、各科目はシラバスがあるはず
なので、シラバスをもとにつくることになります。各授業で何をするのかということがシ
ラバスには書いてあるわけですが、そこから学生がどういう行動をとることを教員が期待
しているのかというところから、その行動に必要なコンピテンシーとは何か、そのときの
水準は何かというような話をこの辺りで検討し、もし不足しているのであれば、教員側が
11
何か工夫をする必要があるか、あるいは科目の流れを少し変える必要があるかというよう
なことを検討いたします。
最終的に、もしこれが演習や実験などのようにTAがついている場合には、それに基づ
いてTAに不適切な行動をとらないように指示をしなければいけないので、その指示書を
つくる。それによって、知識の習得として、コンピテンシーの向上としてはこういうこと
を期待していると。そうであるにはTAはこういう行動をとるべきであるし、あるいはこ
ういう行動をとってはならないというような話をまとめて書いてTAに渡すというような
ことをいたしました。
こういうことをしてはならないというのは、それこそTAは遅刻してはいけないとか、ま
ずそういうところから始まります。身だしなみをきちんとしなさいというのもあります。
演習などのような科目であれば、直ちに正解を教えるなというような話です。とにかく学
生に考えさせなさいというような、ある意味当たり前のことですけれども、学部生の質を
保証しようとしている取り組みですから、学部を卒業をして来る大学院生にも何らかの教
育をしなければいけないということで、「TAガイド」という「見える化」を図ったという
ことになります。
その「TAガイド」
をつくるに際しまし
ても、そのつくり方
というのが必要だと
人材像
コンピテンシー
育成プログラム実施要領: TAガイド作成の手引き作成
PDCAの
仕組み
 各担当教員が、担当する授業科目用のTAガイド(TA指導書)を作成する手順と、作業に必要な参照資料を
取り纏めた「TAガイド作成の手引き」を作成し、各学科での育成プログラム実施を支援
いうことで、
「TAガ
TAガイド作成の手引きの構成
イド作成の手引き」
というものをつくっ
て、各学科、担当教
員、科目担当教員に
お配りし、これを見
ながらそれぞれの科
目に合わせてカスタ
マイズをしていただ
いたということにな
ります。
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
育成プログラム
1
1
12
例えばどんな感じ
かというと、こうい
うものでございます。
人材像
コンピテンシー
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
学科作成:TAガイドサンプル
育成プログラム
PDCAの
仕組み
 全学科にて授業科目内コンピテンシー育成のための「授業計画書」「TAガイドを作成」
これは精密機械工学
科の例ですけれども、
ある回はこういうこ
とを行います、と。
学生はそのときにど
ういうことを行うの
かということで、そ
れに対するチェック
ポイントは何か、こ
ういう行動をとるこ
とによって強化が期
待されるコンピテン
1
シーとは何か、この上に書いてある知識や能力向上に関してTAが求められる知識項目は
何か、TAに求められる行動は何か、TAにふさわしくない行動とは何かというような並び
で、各回1頁で基本とし、つくっているということです。科目の内容によっては、3~4回
同じようなことになるので、まとめて1頁というような場合もあろうかと思います。
どのような科目に
TAガイド、あるい
は授業計画をつくっ
人材像
コンピテンシー
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
各学科の実施状況(1/2)
育成プログラム
数
学
科
物
理
学
科
対
象
科
目
名
情
報
処
理
現
代
物
理
学
序
論
者数です。例えば1
学年
1年次
年生の場合、2年生
開講期
の場合は学生が異な
るとか、あるいは必
たかというのがこれ
でございます。ここ
学
科
工精
学密
科機
械
から2枚にまたがっ
ておりますけれども、
一番下に書いてある
のが今年度(平成23
応
用
化
学
科
電
工情
気
学報
通
科信電
子
材
料
力
学
演
習
デ
ィ
ジ
タ
ル
代
数
及
演
習
プ
ロ
グ
ラ
ミ
ン
グ
演
習
無
機
化
学
演
習
1年次
2年次
1年次
3年次
2年次
前期複数
後期
前期
前期
後期
後期
必修選択
専門必修
専門選択
専門必修
専門必修
専門選択
専門必修
履修者数
88
70
148
248
10
147
年度)の科目の履修
修科目の場合、選択
PDCAの
仕組み
1
科目の場合というふうにバラエティーに富んでおります。必修科目は当然ながら履修者数
が多いということになりますし、選択科目は場合によっては非常に少ないというようなも
のもございます。1年生の情報処理だと、いわゆる情報リテラシーに近いような話もあり
ますし、3年生のプログラミングですからもう少し高度なことをおこなっているというよ
うなことが推察される科目もございます。
13
2枚目が残りの3
学科でございますけ
れども、経営システ
ム工学科と情報工学
人材像
コンピテンシー
育成プログラム
経
工営
学シ
科ス
テ
ム
学
科
科に関しましては、
PDCAの
仕組み
情
報
工
学
科
プ
及ロ
びグ
演ラ
習ム
1 言
語
生
命
科
学
科
画
像
・
映
演像
習コ
1 ン
テ
ン
ツ
画
像
・
映
演像
習コ
2 ン
テ
ン
ツ
画
像
・
映
演像
習コ
3 ン
テ
ン
ツ
画
像
・
映
演像
習コ
4 ン
テ
ン
ツ
"
このようにかなりの
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
各学科の実施状況 (2/2)
2年次
3年次
3年次
4年次
1年次
情
報
処
理
実
習
情
報
処
理
学年
1年次
1年次
工学科の事例と情報
開講期
前期
前期
後期
後期
前期
後期
前期
前期
工学科の事例をご説
必修選択
専門必修
専門必修
専門必修
自由科目
自由科目
自由科目
自由科目
専門必修
履修者数
110
112
18
5
6
22
76
学年にまたがってコ
ンピテンシー育成を
実施しております。
後ほど経営システム
明する予定です。
そういうことで、
1年次
最履修
105
105
Ⅰ
対
象
科
目
名
情
報
処
理
演
習
1
演習科目等々、いろいろなバリエーションが出てきましたので、私どももこれをまたフィー
ドバックをかけることで、ほかのそれぞれの学科の参考にしていければと考えております。
今までのものが教
員側、職員側の話で
ございます。では、
学生はただ言われる
ままに行うのかとい
うと、こういうもの
は最終的には学生自
人材像
コンピテンシー
学生自身によるコンピテンシー育成PDCAの流れ
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
育成プログラム
PDCAの
仕組み
【C-Compass画面】
コンピテンシー習得のPDCAを
半期毎に繰り返し行う
●コンピテンシー目標レベルの設定
●目標を達成するための活動計画の作成
身が気づいて動かな
ければならないとい
うことから、それを
きちんと習慣化する
ためのシステムとい
うものを、私どもの
取り組みとは別の話
でございますけれど
<<具体的な活動の実施>>
●活動報告の入力
●コンピテンシーレベルを評価
(活動を通じてたレベルの変化を自己評価)
前の期を踏まえて
●新たなコンピテンシー目標レベルの設定
●目標を達成するための新たな活動計画の作成
1
も、大学全体として構築いたしました。先ほどの学長の話にも入っておりましたけれども、
C-compass と呼ばれるシステムが平成23年度初夏より動いております。これは基本的には
学生自身がコンピテンシー習得、PDCAを回すためのものでございます。
まず、各期の初めにコンピテンシーの目標レベルを設定する。その目標レベルに対して
どういう計画をしたいか、活動したいかという計画を学生自身に立てさせる。期の途中は、
特に C-compass はいつやりなさいというのはないのですけれども、何かやったらその都度
14
入れましょう、という形になります。それで期末、あるいは次の期の最初に自分はどこま
で行ったのかというレベル評価を自己点検で行う。ある意味、使用前・使用後ということ
になるわけですけれども、その違いを自分で見て、次はどうしよう、というふうにまた回
していくことになります。
C-compass の使用自体には、学生のPDCAだけではなくて教員側、職員側からの助言が
できるとか、あるいはこれをやりたいのだったらこういうことがお勧めだよというお勧め
機能なども含まれております。うまく活用すれば、かなり学生にとって良いものになろう
かと思います。
お手元に「先輩に学ぶ就職活動」という資料がございますけれども、これは C-compass
の主担当であるキャリア支援等が作成したもので、正課の教育プラス、いわゆる厚生補導
でもコンピテンシー育成を図るということが、お読みになればおわかりいただけるかと思
います。
暗号通信サービスの実現 (「画像・映像コンテンツ演習3」作品)
15
第5節
今後の展開に向けた本年度の活動
こういう流れの中
今後の展開に向けた本年度の活動
で、平成23年度は全
グループとも、先ほ
どお示ししたように
何らかの科目で計画
したことを実行に移
して、実際はどうな
のか試してみるとい
うことをする。あと
関連事項として、1
年生にキャリアガイ
ダンス等を実施し、
全グループ
何らかの科目でコンピテンシー対応を意識した専門教育の
実施
- 1年生へのキャリアガイダンス実施
~学生生活を通じて「コンピテンシーを伸ばす~
-
第1グループ
卒業研究でのコンピテンシー育成・点検を実施
- 技術者倫理の教材開発(24年度より実施)
-
成果報告会実施
コンピテンシーを伸
ばすことが必要なの
1
だということを意識
させるよう、関係部局に協力をお願いして進めています。特に先行する情報工学科ではい
ろいろなことを進めていこうということになります。これについては、最後の私のお話で
もう一度触れさせていただきます。最後に、本日の成果報告会を実施し、私どもの取り組
みをご紹介するとともに、忌憚のないご意見を伺いたいというものでございます。
暗号通信サービスの実現 (「画像・映像コンテンツ演習3」作品)
16
第6節
当取り組みの情報提供
また、これは私ど
当取り組み情報提供
もの取り組みをどう
いうところでお話し
ているかというもの
 [グローバル展開]
-
でございます。紙に
できるものは外の廊
下のところに印刷し
-
 [国内展開]
-
て置いてありますの
-
で、それを後でパラ
-
パラとご覧いただけ
ればと思います。例
えばということでお
示ししているのは、
海外にも行ってお話
2011/12/9 韓国慶北国立大学にて講演
2010/3
米国ワシントン州立大学Engineering Education Research Center
訪問・講演
2009/2/24 韓国慶北国立大学調査団受け入れ ** GP採択の半年以上前!
-
-
2012/2/10 経済産業省 ヒアリング受け入れ
2011/9/20 文部科学省 勉強会 講演
2011/7
画像・映像コンテンツ演習プレゼンテーション 他大学教員見学
受け入れ
2011/5/18 琉球大学エンジニアリング・デザイン教育ワークショップ 講演
2011/3/9 山形大学工学部FD講演会 講演
2011/1/21 山形大学工学部調査受け入れ
 他、講演・執筆等
-
Chuo Onlineの教育記事第一号
1
しているとか、国内
も省庁の勉強会等でお話をさせていただいているとか、あるいは対応科目は他の大学の先
生方にもご見学いただいている、というようなことをさせていただいております。ですの
で、私どもの成果をぜひともお使いいただきたいし、またそれぞれのところでお進めになっ
ている良い例を参考にさせていただきたいと思っておりますので、今後もどうぞよろしく
お願いします、ということでご紹介を申し上げております。
どうもありがとうございました。
暗号通信サービスの実現 (「画像・映像コンテンツ演習3」作品)
17
第2章
段階別コンピテンシー教育の成果
中央大学理工学部助教
鳥海
重喜
※ 本章の内容は、2012年3月16日に中央大学後楽園キャンパスにて開催された中央大学
「段階別コンピテンシー育成教育システム」報告会より抜粋したものです。
第1節
画像・映像コンテンツ演習概要
ただいま牧野教授から紹介がありましたけれども、情報工学科のほうでコンピテンシー
育成のためのカリキュラムとして「画像・映像コンテンツ演習」を設けたわけですけれど
も、これを実施した結果を中心にお話しさせていただこうと思います。
まず初めに、私の略歴を紹介させていただきます。別にこのようなところで言わなくて
もいいのかもしれないですけれども、実はこれが後々効いてくるということで――何が言
いたいかと申しますと、私はここのOBであるということです。情報工学科ができて2年
目だったのですけれども、そこから入って途中で何度か出入りするのですが、中央大学が
大好きなものですから戻ってきて今に至るということで、ここら辺の時代の関係が今日の
話の後半のほうに効いてきます。
それから私の話で
いくつか数字が出て
きますので、それを
把握していただくた
めに学科の紹介をし
たいと思います。い
ま申し上げましたよ
うに、1992年に学科
が開設しましたので
中央大学 理工学部 情報工学科 の紹介
 1992年に学科開設
 学部生444名、大学院生92名
5領域からのアプローチ
社会
情報
領域
(2011年5月1日現在)
 教授10名、助教3名、
教育技術員3名、室員1名
映像
情報
領域
数理
情報
領域
ちょうど二十年ぐら
い経つわけです。学
部生が444名ですの
で、だいたい一学年
生命
情報
領域
知能
情報
領域
18
が大雑把に言って100名前後という規模になっています。それを支える教員はだいたい13
人になっています。
それでは、これから具体的に内容のほうの話をさせていただきます。
まず、われわれ情
報工学科が非常に重
視していることの一
つとして、プログラ
情報工学科におけるプログラミング技術力習得スキーム
 1年次から3年次までの科目は全て必修
 個人で演習課題に取り組む
 プログラミング言語におけるマルチリンガル
ミングに関してかな
り力を入れて取り組
んでいます。下のほ
うは段階的な模式図
になっているのです
けれども、入って1
年目の4月からCプ
ログラミングという
ものを始めます。C
プログラミングに関
しては、都合2年次の途中まで1年半かけて、最初のうちは講義と演習、2年生の最初の
ほうにおこなうのがCの演習だけになるのですけれども、このようなふうにCプログラミ
ングの教育をおこなっております。その後、すごく異色になるかもしれませんけれども、
LISPという言語を学んで、3年次になるとJavaとかC++をカリキュラムの中で学びます。
ということで、1年次から3年次までこのようなプログラミング演習をこなしていく中
で、すべての科目が必修科目となっています。そのうち1、2年の科目に関しては、取って
いないと卒業研究に着手できないということで、かなりコアな部分に位置付けているわけ
です。ただ、これらの科目に関しては、基本的にはすべて個人で演習課題に取り組むよう
な形式をとっております。プログラミング言語に関する、これだけ、4種類ぐらいの言語
を学ぶわけですけれども、マルチリンガルということになるので、技術的な部分に関して
はこれまでの正課のカリキュラムの中である程度担保できているというふうに考えていた
わけです。
これをもとにして、われわれがコンピテンシーの育成を目指してどういう位置付けで科
目をつくるかを考えるわけですけれども、その際に一番大きく考えていたのが、先ほど申
し上げましたように、通常のカリキュラムでは個人でおこなっていく、その中ですと、ど
うしてもコミュニケーション力とか、いわゆるコンピテンシーの部分の成長がなかなかで
きないということで、チームプロジェクト形式でおこなおうということが、まず第一にあ
がったわけです。
19
それから、どういうものをテーマにしようかといったときに、われわれの強みとして
CAVE と呼ばれるようなハードウェアがあったので、そういうものを生かしたテーマを考
えようということで、画像・映像系でテーマをつくろうということになりました。
それから重視した項目としては、既存科目が――いま、プログラミングの紹介をいたし
ましたけれども、それ以外の項目とも関連させて知識を実践する場にしたいと考えたわけ
です。
それから、もちろん取り組む学生に関しては達成感を持たせてあげたいし、ただプログ
ラミングするだけではなく、文書作成能力とか、それを公表する能力も向上させたいと思
いました。
これらをトータル
で考えて、コンピテ
ンシーによる達成目
標を明確化したうえ
で、このような図に
挙げております「画
像・映像コンテンツ
演習」の1から4ま
での四つの科目をつ
くりました。これら
はいずれも半期の科
目になっていまして、
「画像・映像コンテンツ演習」 授業科目内容
 半期4科目(2年次後期~4年次
前期)
-
在学生にも展開するために「自
由科目(卒業単位に含まれな
い)」とする
 チームプロジェクト形式
 画像・映像系をテーマ
 既存講義科目との関連を意識
(知識の実践)
 達成感を持たせたい
 文書作成能力、プレゼン能力も
向上させたい
 コンピテンシーによる達成目標
の明確化
画像・映像コンテンツ演習1 (2年後期):
立体視用バーチャルシティ
電子地図データを適切に処理して、後楽園キャンパス周辺の都市空
間をCAVE上で再現し、ウォークスルー、フライスルーを可能とするコ
ンテンツを作成する。
画像・映像コンテンツ演習2 (3年前期):
立体肖像撮影インターフェース
被写体を一対のカメラで撮影した左右の画像間の視差を利用して凹凸
形状をコンピューター内に取り込む方法の原理を習得し、必要なイン
ターフェースをコンパクトに開発すると共に3次元画像における手動また
は自動の補正スキルを体得しつつ、人の立体肖像を作成する。
画像・映像コンテンツ演習3 (3年後期):
画像の符号化と暗号化
まず、画像の変換符号化の原理を理解した上で、符号化と復号方式を
実現する。次にモザイク、ステガノグラフィ、スクランブルなどの画像暗
号化の原理を理解し、暗復号方式を実現する。最後に鍵配送や認証も
含む画像暗号化システムの完成を目標とする。
画像・映像コンテンツ演習4 (4年前期):
立体視用リアルタイムグラフィックス
OpenGLを利用して対話的に動作するリアルタイムグラフィックスプロ
グラムを構築し、裸眼立体視ディスプレイ上で動作するコンテンツを
作成する。
最初は2年次の後期
から、そして3年次
の前期、後期、そして最後は4年の前期という流れになっています。2年の後期となって
いるのが、最初に申し上げましたとおり、われわれはC言語の教育を1年半かけておこなっ
ておりますので、2年の後期のスタート時点で、C言語に関してはある種、ほぼマスター
してそれなりに書けるようになっているだろうということで、ある程度知識を得ている学
生に対してこういう科目を提供したいという気持ちになったわけです。
それから、これらのもう一つの特徴としては、自由科目になっているということが大き
な特徴になっております。自由科目というのは卒業単位に含まれない科目ですから、学生
さんによっては、労力があってもメリットがないというふうに考えると、なかなか取ろう
としない科目になるわけですけれども、実際にはここで自由科目にしています。その理由
の一つとしては、在学生にも展開するために、こういうふうにしています。通常ですと、
ある年から年次進行で切り替わっていくので在学生の方に提供できないのですけれども、
今回は「いっせーのせ」で2年生、3年生、4年生にも提供したいということで自由科目
にしたということがあります。
20
第2節
実績と評価
では、実際にこれ
らの自由科目をどの
ぐらいの人数が取っ
たのか、こちらでグ
「画像・映像コンテンツ演習」 履修者数の推移
 履修者数(≒単位取得者)は概ね増加傾向
 3年次後期に開講されている“演習3”は履修者が少ない
→就職活動への懸念か?
ラフにしています。
この科目は3年前の
2011年となってお
りまして、こちらを
ご覧いただきますと、
画像・映像コンテンツ演習4
20
単位取得者数
ら2009年、2010年、
画像・映像コンテンツ演習2
画像・映像コンテンツ演習3
25
2009年から開講し
ておりまして、左か
画像・映像コンテンツ演習1
<演習2>
第1回授業を休講とし
た影響と考えられる
(東日本大震災の余
震が発生し,履修生
に未成年が多く含ま
れることを考慮)
15
10
5
0
2009年
2010年
2011年
概ね右肩上がりであ
ると言えると思いま
す。それぞれがコンテンツ演習1、2、3、4を表していて、一つ、「画像・映像コンテンツ演
習3」がやや低位置にあるのですけれども、これは時期が3年の後期に実施されるという
ことで、どうしても就職活動等を考えている学生さんですと、なるべく負担を増やしたく
ないという意識がはたらいているのかなと予想されます。
それからもう一つ、ここまで上がったけれどもここで下がったということで、
「画像・映
像コンテンツ演習2」に関しては、昨年度の東日本大震災の影響により、第1回の授業を
休講としてしまった ※ために、きちんと説明する間もなく、なかなか学生が集まらなかっ
たのではないかと考えております。それ以外の科目については概ね右肩上がりですので、
順調に学生さんのほうに浸透して履修がおこなわれているわけです。
※ 「画像・映像コンテンツ演習2」は3年次前期に実施されており、震災直後の休講は年
齢に配慮したものです。なお、2012年5月現在の履修者数は11名に回復しています。
それから具体的な人数に関して申し上げますと、一学年100人ぐらいですから、一番多
いところで20ということで、約2割の学生が履修しているような状況です。
この1、2、3、4と四つの科目を提供しているのですけれども、その全科目を履修した学生
が今年度初めて出てきました。全科目を履修した学生は百名のうちの4%ということです
からそんなに多くはないのですけれども、この4名について少しご紹介したいと思います。
21
この4人、進路は
全員が大学院進学で、
うち1名は外部の大
学院、ここの隣の駅
にあります某T大学
に進学する予定です。
「画像・映像コンテンツ演習」 履修者の特性
全科目を履修した学生は4名
-
全員が大学院進学(うち1名は外部の大学院)
-
4名の卒業時取得単位数は平均151.5単位
 理工学部の卒業単位数は130単位
 4名を除く卒業生(4年生のみ)の取得単位数は平均135.5単位
特徴的なものは真ん
中に挙げております
けれども、4名の卒
業時取得単位数が
-
4名のうち3名は卒業時成績上位20%以内
 GPA(Grade Average Point)を基準
151.5単位になって
ハイパフォーマーへの科目提供
います。理工学部の
卒業単位数は130単
位ですから、これは
非常に多く取っていることを意味しています。
では、そのほかの学生はどうなのかということで今年の卒業生で見ると、4年生で取得
単位が大体135ということですから、少しは多く取っていますけれども、ここまでは多く
はありません。したがいまして、この4人のスタイルとしては、一生懸命関連する科目を
履修して勉強するような学生が通っていることが見受けられます。ちなみに、この151.5
の中には、自由科目なので先ほどのコンテンツ演習は含んでおりませんので、その分を一
科目2単位と考えて、8単位加えると約160単位を取っているということですから、相当な
授業負担の中で演習をしています。
さらに、ただ単位数が多いだけではなくて、その内容としても4人のうち3人は卒業時
の成績上位20%ということですから、われわれが当初想定していたとおりです。通常の科
目のさらに先にあるということで、ハイパフォーマーへの科目提供ということがこれでわ
かったわけです。
【3D表示】 3D顔アニメーション (「画像・映像コンテンツ演習2」作品)
22
第3節
受講生コメント
それでは、これか
ら先は履修した学生
のコメントを紹介し
たいと思います。こ
受講生コメント : 履修してよかったこと
11
プロジェクト管理経験
10
スキルの習得(OpenGL、卒研関連)
れは履修した学生に
成果発表機会
アンケートを行いま
コミュニケーション力習得
して、全部で21人の
ネットワーク拡大
学生に、まず「履修
12
複数人でのプログラミング経験
7
6
4
組織的行動能力の習得
3
自己実現力の習得
3
してよかったことは
ものづくりの楽しさを知った
1
何ですか」と聞きま
OBによる評価
1
(複数回答/21人中)
した。複数回答です
ので、ひとりでいく
アンケート設問「 履修してよかったことをできるだけ挙げてください。特に、他の科目で
は得ることができなかったことがあれば教えて下さい。」の回答を事務局にて分類集計
つもあげている場合
がありますけれども、
一番多かった「複数人でのプログラミング経験」を、本人たちは一番メリットとして感じ
ているようです。
もう一つ、この授業の特徴でもあるのですけれども、
「プロジェクト管理経験」です。具
体的にスケジュールの管理とか役割分担を経験できたことは非常に大きかったと言ってい
ます。
さらに「スキルの習得」ということで、C言語に関する知識というものはもちろん普段
の授業の中で得られていたわけですけれども、この科目は画像・映像系の、ある種スペシャ
リスト系の科目になっておりますので、その中で使われる技術である OpenGL とか、ある
いはコンピュータグラフィックスに関連するような、卒業研究をする学生にとってみると、
その知識を習得することができたというわけです。
それから、普段のプログラミング演習等では経験することができないのですけれども、
「成果発表機会」があったり「コミュニケーション力習得」をすることができたと、こういっ
たことが履修してよかったこととして挙げられています。
23
さらに、
「履修して
受講生コメント : 履修してよかったこと(その中で最もよかったこと)
よかったこと(その
中で最もよかったこ
複数人でのプログラミング経験
と)」を聞いたのです
プロジェクト管理経験
けれども、ここでも、
いま申し上げたよう
7
6
3
成果発表機会
2
情報共有機会
な「複数人でのプロ
自ら行動するようになった
1
トップになっており
コミュニケーション力/組織行動力の習得
1
ます。続いて「プロ
卒研に必要なスキルの習得
1
グラミング経験」が
(単一回答/21人中)
ジェクト管理経験」、
「成果発表機会」とい
うことで、この科目
アンケート設問「 履修してよかったことの中で最もよかったことをあげてください。」
の回答を事務局にて分類集計
でなければなかなか
経験することができなかったことが上位にあがっています。
では、
「この科目を
履修したことによっ
て、将来どういった
影響があるか」と聞
きましたが、それに
受講生コメント : 将来への好影響
16
卒研に役立つ経験ができた
就職活動に役立つ経験ができた
7
知識/スキル習得ができた
7
関してはほとんどの
学生が、
「卒研に役立
つ経験ができた」と
回答しています。こ
のアンケート自体は
4
自分の成長につながった
将来の仕事のイメージがつかめた
1
4年生に多く回答し
てもらっていて、つ
いこの間まで卒研を
(複数回答/20人中)
アンケート設問「卒業論文、学部での学修、大学院進学、大学院での学修や修士論
文、就職活動などその後に少しでも影響を与えたことがあったら教えて下さい。」
の回答を事務局にて分類集計
やっていましたので、
そこに非常に直結しているということを本人たちは感じているわけです。
もう一つ、学生にとっても、われわれ大学にとっても重要なことですけれども、
「就職活
動に役立つ経験ができた」ことも挙げられています。これはおそらく技術的なことではな
くて、プロジェクトを進めていく中での共同作業だったり、あるいは先に申し上げたスケ
ジュールの管理が非常に役立ったということが言えるのではないかと思います。
それから三番目として「知識・スキル習得」も取り上げられています。
24
実際に具体的なコ
メントをここに列挙
受講生コメント : 複数回受講で得られたもの(該当者6名)
 主なコメント
してみました。ここ
-
多様なチームでの活動経験を得た。
では「複数回受講で
-
多様なプロジェクト経験を得た。
得られたもの」を聞
-
多くの発表機会、学習機会を得た。
いております。した
-
失敗の克服により、さらに上を目指した。
がいまして、先ほど
-
リーダーシップの発揮機会を得た。
までのアンケートに
-
信頼できる友人、技術上の相談相手を得られた。
は、一回だけ受けて
-
成功体験により自信を得られた。
よかったことも含ま
-
スケジュール管理の難しさや重要性を学んだ。
-
バージョン管理の必要性を認識した。
れているのですけれ
ども、ここに関して
は複数回ということ
複数回受講しなければ
得られなかったこと
アンケート設問「複数科目を履修した方にお尋ねします。複数科目を履修したことで
得たことをできるだけ挙げてください。」の回答より事務局にて抽出
ですから、二度、三
度受講して、その経験がどう生きているかを聞いているわけです。その中で、五つの青く
なっている部分に関しては、まさに複数回受講しなければ得られなかったであろうことを
意味しているものです。
最初に「多様なチームでの活動経験を得た」ということで、
「多様」というのは、つまり
複数でいろいろなパターンで体験したということです。複数回受講する場合にしても、必
ずしも履修生がいつも一緒というわけではありませんし、履修生が一緒だったとしても同
じチームに組み込むわけではないので、毎回違った人が入って複数で共同作業をおこなう。
ある種、いままでの学生さんというのは、仲のいい学生さんとはうまくやるのだけれども、
そうではない学生さんとはあまりコミュニケーションをしないというのも、日々教員とし
て見ているとあったのですけれども、そういうものを壊して、今回はこちらのチームでこ
の人たちとやりましょう、次回はあちらですよとか、そういうことが生きているわけです。
もちろん、その中で違うプロジェクトの経験ができたということも共通するわけです。
それらに関して、
「多くの発表機会、学習機会を得た」というのは非常にわれわれとして
も嬉しいですし、それから「失敗の克服により、さらに上を目指した」と。2年次、3年
次等でプロジェクトを進めていく中で、やはりどうしても一回目ではうまくいかないこと
があるわけですけれども、それを経験として、次におこなうときにしっかりと生かすこと
ができたということを言っているわけです。
それから五つ目の「リーダーシップの発揮機会を得た」というのも大きなことで、例え
ば、一度目のチームの中でリーダー格の人がいる、あるいはそれをフォローする人がいる
ような組み合わせであったとしても、二度目をおこなうときに、実は前回フォローだった
人が、では今度は経験者としてリーダーになろうということが往々にして起きます。そし
て実際にリーダーになってみると、リーダーならではの苦しさというか、苦労するところ
が出てくるわけですけれども、そういうことを経験した、あるいはそういうものをやって
25
みようと思った、ということが大きいわけです。
そういうことで、上のほうはいくつかやっていく中で自動的に経験できることですけれ
ども、ここら辺は本人たちの意識が変わってきていることを表しているわけです。
【3D表示】 3D顔アニメーション (「画像・映像コンテンツ演習2」作品)
26
第4節
TAコメント
それから、この演
TAコメント : TAを勤めて得たこと
習に関しては、履修
生だけではなくて、
大学院のティーチン
グ・アシスタントT
プロジェクトマネジメントの機会
3
教えることによる成長の機会
3
他人のコードからの気づき/着想
2
考えさせる指導方法
2
Aにも携わっても
さまざまな視点から課題に取り組んだ
1
らっていますので、
自分だけではなく他の意見を求めた
1
もちろんそのTAを
複数人への対処方法
1
経験した学生さんに
学部生時代に学んでいない内容の学習
1
もアンケートをおこ
後輩との交流機会
1
なっています。
「TAを務めて得
(複数回答/7人中)
アンケート設問「TAを務めて得たことをできるだけ挙げてください。特に、他の科目
のTAでは得ることができなかったことがあれば教えて下さい。」の回答を事務局に
て分類集計
たこと」として回答
しているのが7人で、やや少ないのですけれども、まず最初に「プロジェクトマネジメン
トの機会(を得たこと)」、「教えることによる成長の機会(を得た)」ことがあげられてい
ます。
それから、これは技術的な話になるかもしれませんけれども、
「他人のコードからの気づ
き」ということで、人がこういうふうにプログラミングをおこなっている、それを見て、
良いところを真似る
という機会を得たと
いうことですね。
それから「TAを
TAコメント : TAを勤めて得たことの中でもっとも重要なこと(回答者7名)
 主なコメント
-
他の授業と違い、1回1回で授業が終わるわけではないので学部生のス
ケジュール管理への助言などマネジメント的な要素を体験できたことで
その難しさがわかった。
-
マネジメントを経験することになるのが最も重要だと重います。 コミュニ
ケーション力や計画力を鍛えるよい経験になったと思います。
務めて得たことの中
で最も重要なこと」
を聞いています。こ
-
複数人に配慮する経験を積んだ。
こで一番大きかった
-
TAとしての視線でチームを支え導いたこと。
のは、
「TAとしてマ
-
チームを後方からサポートする力
ネジメント的なこと
-
課題に対して一緒に様々な視点から考えることができた。
ができた」というこ
-
研究にダイレクトに関わっている画像処理部分のアルゴリズムやUIなど
の着想部分
とを多くのTAがあ
げています。だいた
アンケート設問「 TAを務めて得たことの中で最も自分にとって重要と思うことを挙げ
てください。」の回答
27
い半期の授業の中で、このチームを見てねとか、TAに割り当てをしているのですけれど
も、TAがそのチームを見ながら、そのチームがうまくいくようにどうフォローするかと
いうことを考えるわけです。その際、場合によっては一人のTAが複数のチームを見ると
いうことも起こり得ます。そういったときにこちらのチームで見ていて、またいないとき
にこっちのチームにどうサポートするかというようなことを本人が悩んでそういうことが
できたということですから、少し先のことになるかもしれませんけれども、ある種、会社
に入ってそういう苦労をというか、そういうことが経験できたというのが非常に大きかっ
たとコメントをしています。
それから、TAを
して「その後どんな
よい影響があった
か」を聞いてみると、
TAコメント : その後への好影響(該当者7名中5名回答)
 主なコメント
-
後輩の卒業論文指導
-
発表や取り組みについては就職活動でのエピソードとして活用している
「後輩の卒業論文指
-
就職活動において自分は映像に関わる仕事をしようという思いを強くした
導」という技術的な
-
面接で研究の説明をするときには、 TAにおいての話すという経験が役に
立っていると思います
-
チームをサポートしたという経験は、就職活動時の自己PRで話すことがで
きた
こともあげているの
ですけれども、多く
は「就職活動」のと
ころに効いてきてい
る。実際にサポート
した内容を就職活動
においての面接等で
アンケート設問「 大学院での学修や修士論文、就職活動などその後に少しでも影
響を与えたことがあったら教えて下さい。」の回答
アピールすることに
役立った、と。まあ、本当に役立ったかどうかは就職活動をした本人じゃないとわからな
いのですけれども、そういう場で話す材料には困らなかったということになると思います。
それから、
「TA経
験はコンピテンシー
向上に貢献するか」
と聞いてみますと、
「大いに貢献した」と
TAコメント : TA経験はコンピテンシー向上に貢献するか(回答者7名)
あまり貢献して
いない
1
「少し貢献した」がほ
大いに貢献し
た
3
ぼ占めるわけです。
両者で7分の6とい
うことですから、
TA自体もこの取り
組みの中でコンピテ
少し貢献した
3
ンシーの向上が図ら
れている様子がわか
るかと思います。
アンケート設問「 TA経験は、情報分野で活躍する人材に必要なコンピテンシー(行
動特性)向上に貢献したと思いますか?」の回答人数
28
第5節
卒業生による評価
次に、本取り組みのもう一つの大きな特徴として、卒業生を巻き込むということをおこ
なっています。これについて少し詳しくご紹介したいと思います。
四つの演習科目そ
れぞれの中で、最終
回に成果を発表する
機会を設けておりま
す。チームのメン
バー全員が参加して
ポスターセッション、
デモンストレーショ
ンをおこないながら、
それぞれが半期間で
取り組んだ成果を発
卒業生による評価 : 学生プレゼンテーションの実施
 内容
-
 形式
-
ポスターセッション
デモンストレーション
 ChuoCAVE
 裸眼立体視ディスプレイ
 評価者
-
担当教員、TA、卒業生
当日の流れ
事前説明会(30分)
プレゼンテーション(2時間)
片付け、評価(30分)
親睦会(1時間) ※履修学生を含む
懇親会(2時間) ※卒業生のみ
 卒業生に審査員をお願いする
-
事前(約1ヶ月前)に、担当教員からメール等で個別に依頼する
全ての卒業生に依頼するのではなく、担当教員が人選を行う
 毎回15~20名に依頼(ほぼ固定化されている)
 担当教員の(学生時代の)個人的なネットワークを活用
表します。その発表
成果は、技術的なこ
演習の最終回に、成果をチームごとに発表
チームのメンバー全員が参加
-
同窓会組織とは独立している
ともそうですし、発
表態度も含めて、それらを評価する人間として、担当教員、TA、卒業生がおこなってい
ます。
卒業生にはどんなふうに審査員をお願いするかというと、事前(約一か月前)に担当教
員からメールで個別に依頼するということで、この担当教員というのが、最初におこなっ
た私なのです。私自身がここのOBでもあるということで、私のネットワークを使ってこ
れをやっています。もちろん、すべての卒業生に依頼できるわけではないので、担当教員
がよく知っている人たちにお願いするのですけれども、実際にはどうしているかというと、
毎回15名から20名ぐらいの人たちに(ほぼ固定しているのですけれども)、個別にメール
で「何日にこういうことをやろうとしているのだけれども来ていただけないですか」とい
うふうに聞くのです。そうすると、個人的なネットワークがあるのであまり無視されずに、
きちんと返信が返ってくるのです。通常、メーリングリスト等で一斉に送ったりするとな
かなか返信が来ないとか、よくて欠席という返信が来るかどうかですけれども、何せこう
いうことをしているので非常にレスポンスがいいというのがあります。ただし、同窓会の
組織とは離れているので、本当に個人的な伝手を使っているという部分が、やや特徴的な
部分でもあります。
29
当日は少し早めに来てもらって、事前に趣旨の説明とか審査の方法等の説明を30分ぐら
いかけておこない、プレゼンテーション自体は2時間ぐらいおこないます。その後、学生
さんが片付けをしている最中に評価をおこない、最後は親睦会をおこないます。この後、
写真などをご覧いただきますけれども、この親睦会では履修している学生なども含めた会
合をおこないます。そしてこれを終えてから、親睦会と懇親会はどう違うのかということ
はあるかもしれませんが、卒業生だけを連れて懇親会をおこなっています。
では、卒業生の審
査員が毎回どれぐら
い参加してくれるの
かというと、15名と
卒業生による評価 : 卒業生審査員
 実際に参加して頂けるのは各回6名程度
 3年間で1回でも参加した卒業生は15名(その多くは修士号取得者)
 2010年度から、参加者には薄謝を進呈
か 20名 に 声 をかけ
て、毎回大体6人ぐ
参加者の所属先
らいが都合をつけて
日立製作所
キヤノン
リコー
三菱電機
日本IBM
KDDI
JR東日本
など
来てくれるというわ
けです。半分ぐらい
が卒業後十年以上
経っている世代です
から、大体三十代ぐ
らいの人ですね。残
りの半分ぐらいが卒
業後十年未満ということですから、二十代後半ぐらいの卒業生が来てくれるわけです。全
部で6回やっているのですけれども、一度でも参加した卒業生は15名ですから、大体ほぼ
声をかけている人が一度は来てくれているわけです。GPの予算がついて、2010年度以降
に来ていただいた卒業生には一応薄謝を進呈しています。参加者の所属先のほうは、一応、
一部上場企業の有力どころというか、こういうところにお勤めの人に来ていただいていま
す。
プレゼンテーショ
ンの様子は、先ほど
お待ちいただいてい
る中でも写真がいく
つか流れていたと思
いますけれども、例
えばこんなふうに、
ここはわれわれの情
報工学科が持ってい
るプログラミング演
習室ですが、ここに
ホワイトボードを立
卒業生による評価 : プレゼンテーションの様子
30
てて、この両面でポスターを貼って、ここで1チーム、ここで1チーム、裏側で1チーム
という形でおこなっています。ここら辺が卒業生の審査員ですけれども、実際に学生に内
容を聞いたりして評価する。あるいは座って評価をしていたり、何かプレゼンテーション、
デモンストレーションをやっているときには聞いている。このような状況で進んでいるわ
けです。
実際の評価はどう
おこなっているかと
いうと、1チーム当
たり、A4の用紙で
卒業生による評価 : プレゼンテーション評価シート
 1チームあたりA4用紙2枚
 審査員は必ずしも全チームを評価する必要はない
 評価結果は個別には公表しない
このようなふうに2
枚の紙を用意して、
チームに対する評価
と個人に対する評価
をおこなってもらい
チームに対する評価
個人に対する評価
ます。1チームでこ
れですから、例えば
8チームが参加して
いるときは、2×8で
16枚 の 評 価シート
が出てきて、これを2時間で全部埋めるというのは相当大変です。したがって、必ずしも
全チームは評価できないので、いくつか割り当てというか、だいたいこの辺の何チームか
を見てくださいと事前にお願いしておいて、4~5チームぐらいを重点的に見てもらうこと
をおこなっています。
評価結果については、個別には「○○さんが、このようなことを言っていた」というよ
うなことは開示しないで、これはあくまでも審査員の方がこういうことができているかと
いう、ある観点に関してこういう質問の例を載せています。このような質問をしてきちん
とこういう反応が返ってきましたかというように、チェックをする形になっています。こ
ういうA4の評価シートになっているのですけれども、これを集計する際には、これがで
きていたらどのコンピテンシーができていることになるという対応表をわれわれのほうで
つくっております。したがって、卒業生がここを読んでいくつかチェックして、○とか×
を付けるのですけれども、実際に裏側ではコンピテンシーの評価につなげている形になっ
ています。
それからフリーコメントとして実際にそこに記述された例をお示ししますと、お手元を
ご覧いただきたいのですけれども、上の方に「良かった点」と「悪かった点」をあげてい
ます。さらに上の半分は、とにかくいろいろな意味でよかったということを評価していま
す。ここの部分は何かといいますと、「悔しそう」「メンバーとして必要なことを実感して
いる」「反省点を認識している」「昨年の反省ができている」ということで、技術的なこと
31
ではなく、コンピテ
卒業生による評価 : フリーコメントに記載された事例
ンシーの部分が、あ
 良かった点
るいはそれにつなが
-
るようなことをしっ
-
かりとOB側の方も
-
評価しているという
-
-
-
-
証になっています。
-
それから「悪かっ
た点」としては、ポ
スターとか、できが
悪かったという部分
もありますけれども、
自分達のアイディアに自信をもってアピールしていた。
通常学んできたことを活かせたことで、喜びを感じている。
ポスター・説明・成果、全て素晴らしいです。
4人連携で苦労していた話を聞いてよくコミュニケーションがとれていると感じました。
与えられた課題以上のモノを作りたいという意欲が感じられました。
うまく出力できない状態で本日を迎え、悔しそう。
今回の演習を通して、リーダーとして必要なこと、メンバーとして必要なことを実感しているようだったので、今後の
活躍を期待しています。
反省点を認識しており、次回以降力になるようなチームでした。
A君は自分の失敗を素直に認められる点がよいと思う。
昨年の反省ができている。
 悪かった点
-
-
方法論はよくわかるポスターだったが、目的と結論が書かれていなかった。
成果目標やスケジュールを意識して取り組めば、もっと良い成果が出たのでは?
技術力が高いメンバーに周りのメンバーが引っ張られて進めた印象があり、チームワークが良かったのか疑問。
お互いの成果物に対して理解が浅いのがもったいないと思う。議論できる程度には理解していることが望まれる。
課題をやらされている感が少しあった。
プレゼン経験者にしては惜しいです。
「課題をやらされて
いるのではないか」とか「プレゼン経験者にしては惜しい」と。つまり、複数回おこなっ
ているのがわかっているわけですけれども、過去おこなっているのだったらもう少しでき
るのではないか、という気持ちがあったのですね。それがそこまで到達していなかったと
いうことで、そういうことを書かれている。そういうことで、プラスの面とマイナスの面
をフリーコメントには記述してもらっています。
それから親睦会の
様子ですけれども、
卒業生による評価 : 親睦会の様子
情報工学科のある会
議室をこのような感
じでテーブルごとに
区切って、発表した
学生、それからTA
にも来てもらったり
しながら、卒業生の
審査した人を入れて、
このようなふうに囲
んで1時間ぐらいお
話をしてもらってい
ます。2年生もいま
すので、アルコールは出さずにきちんとソフトドリンクにお菓子というような形にしてい
ます。
この中で話している内容に耳を傾けて聞いていると、当日の発表の話、あるいは技術的
な話とかの続きもあるのですけれども、情報工学科の昔の話や自分たちの社会人としての
経験とか、本当に先輩後輩としての流れというか、単なる同窓会に近いような位置付けに
32
もなっているわけです。したがって、ここでたまに私の知り合いとかがいると私の過去を
暴露されたりして、それを学生がおもしろがるとか、そういうことも実際におこなわれて
いるわけです。
卒業生自体にも今
年アンケートをとり
まして、こういう取
卒業生によるコメント : 卒業生が授業に関わること
 主なコメント
-
り組みについていろ
いろ聞いてみました。
-
-
ここでは「卒業生が
-
授業に関わることに
-
ついてどう思います
-
か」ということを聞
-
いています。概ね肯
-
よい試みだと思います。社会人の観点での指摘や助言を学生に与えられる。
卒業生の視点では良いことだと思う。学生にはOB/OGとの関わりに対して前向きに捉えて
もらえればありがたい。
学生さんとの接点ができ、非常にうれしい。
卒業生にとっても、学生にとっても、とても良い刺激になるので良い取り組みだと思います。
とても素晴らしいことだと考えます。特に今回の取り組みは互いに希望して実施しているの
で、前向きに自発的行動ができて良いです。OBならではのずうずうしさも良く活かされます。
今後も取り組むべきである。
学生にとっては、教員やTAだけではなく、外部の者からの視点で見られる機会となり、学習
の理解に深みが増すと考える。またOBも刺激を受けることとなり、双方にメリットがある。
卒業生のみならず、外部に自分の学習成果を見てもらう機会があることはよいことだと思え
る。
学生側から考えると卒業生である必要はないと思いますが、さまざまな環境の人が質問し、
評価するというのは大変学生にはよいと思います。
定的な意見ばかりで
すけれども、
「OBと
していろいろ学生に
アンケート設問「卒業生が学生の授業に携わることについて、どのようにお考えで
すか?(自由記述) 」の回答より事務局にて抽出
こういう機会が与え
られるのは非常に良いことである」ということを言っています。
「学生にとっても外部に自
分の学習成果を見てもらう機会があるというのはいいのではないか」ということですから、
OB側としても非常に高い評価をくださっている様子がわかります。
それから、こうい
う場面で卒業生に来
卒業生によるコメント : 卒業生自身の気づき
 主なコメント
てもらって、
「卒業生
-
自身に気づきがあっ
-
たかどうか」という
-
ことも聞いています。
-
そうすると、ただ単
-
にOBとして審査す
-
る、あるいは同窓会
-
のように来るだけで
-
はなくて、
「自分自身
にも良い刺激を与え
てもらった」と多く
-
やる気のある学生と接して、自分にも刺激になったことがありました。学生のプレゼンを指摘する
ことで、自分の勉強にもなったと思います。
本取り組みに参加していない学生はもったいない。
自分学生だったときに受けた講義と同じ講義を受けている今の学生と自分を比較して反省できる
というのは自分にも良い機会であったと思います。
振り返りの良い機会として、とても有意義である。また、いろいろなリテラシ(コンピテンシー)のあ
り方について考える貴重な機会だと思う。大変有り難い。
自分学生時代にはこのような横のつながりを持つ授業がなかったので、この取り組みはよい。ス
ケジューリングの難しさ。
自分が学生だった頃を思い出しました(自分が学生だったら、どのように取り組んだのだろうか?
と考えさせられます)。
良い活動をされる若い学生から尊敬される先輩でありたいと感じました。仕事もがんばれます。あ
りがとうございます。
学生のプレゼン、質問への回答を見て自分のプレゼンを振り返ることができた
多くの気づきがあった。学生チームのプロジェクトがうまく進んでいない要因は、社内でもしばしば
あり得るものである。また、成功の感動は忘れていたように思う。共感を通じて、久しぶりにその
気持ちを思いだした。
アンケート設問「審査員として参加することで、あなた自身が気づかされたことはあ
りますか? (自由記述) 」の回答より事務局にて抽出
の方が答えていらっ
しゃいます。
「自分の勉強にもなった」、
「振り返りのよい機会」、
「自分の学生だった頃を思
い出した」、それから「学生チームのプロジェクトがうまく進んでいない要因は、社内でも
しばしばあり得る」ということですから、実際の社会のほうにも、ある意味、こういう経
験がつながっていくということを、これは示唆しているコメントではないかと思います。
33
それから参加理由
卒業生によるコメント : 参加理由
について聞いてみた
のですけれども、一
(複数回答/9人中)
本取り組みに興味があった
5
担当教員にお願いされた
5
番多いのが、
「本取り
組みに興味があっ
た」ということと、
これは私がお願いし
ているので無碍に断
4
学生と関わりたかった
3
その他
れないということも
答えられています。
それから、ここら辺
はコンピテンシーの
薄謝が得られる
0
アンケート設問「審査員として参加しようと思った理由
を教えて下さい。」の回答を事務局にて分類集計
•大学・学科に貢献したかった
•過去の自分と比較することで励
みになる
•毎回参加していますが、大変興
味深く、発表は勉強になります
あるOBに頼んでい
るので、だれも「薄
謝が得られるから、来る」というふうには答えませんでした。したがいまして、予算が切
れて「来年から薄謝がなくなるよ」と言ってもきっと来てくれると信じています。
その他の意見として、「大学・学科に貢献したかった」「過去の自分と比較することで励
みになる」、それから「毎回参加していますが、大変興味深い」ということで、この人は毎
回なのですが、6回やって6回とも参加してくれた人がいます。しかも、途中で転勤になっ
て名古屋に行ってしまわれたのですけれども、名古屋からわざわざ新幹線を使って来てく
れて、とても薄謝ではお支払いし切れないのですけれども、非常にこの取り組みに共感し
てくださって、毎回参加していただいているというOBの方もいらっしゃいます。
また、
「本演習は社
会に出て役立つか」
卒業生によるコメント : 本演習は社会に出て役立つか(回答者9名)
ということを聞くと
ちゃんとわかってい
役立つ
2
役立たない
0
て、役立たないと答
えた人はだれもいな
くて「大いに役立つ」
と回答してくださっ
ていますので、安心
してここにお示しで
大いに役立つ
7
きました。
アンケート設問「学生にとって、本演習の経験が社会に出た後に役に立つと思いま
すか?」の回答人数
34
それから、私たち
卒業生によるコメント : 学生時代の自身が履修するか(回答者9名)
が学生だった頃はこ
ういった科目がな
かったわけですけれ
ども、
「あなたが学生
履修する
2
履修しない
3
時代にこういう科目
があったら履修しま
すか」と聞いてみる
•当時の自分だったら、
選びません。逃げてま
す
と、「必ず履修する」
という人が2人、
「履
修を検討する」と
言ったのが4人、そ
履修を検討す
る
4
アンケート設問「あなたが学生時代にこのような演習が(卒業単位に含まれない)自
由科目で提供されていたら履修を考えましたか?」の回答人数
れから「履修しない」
という人も3人いる
のです。なぜかと聞くと「このような授業、こなし切れない。とてもじゃないけど、自分
ではできないので、逃げますよ」というふうに言っているので、まあ、本当に嫌でという
よりも、なかなかハードルが高いということを意味していると思います。
【3D表示】 3D顔アニメーション (「画像・映像コンテンツ演習2」作品)
35
第6節
受講生コンピテンシー評価
では、この科目に
よってコンピテン
シーが本当に伸びて
受講生コンピテンシー評価 : 学年別自己点検結果
 2年生が最も低く、3年生が最も高い
 4年生が3年生よりも低くなるのは、卒業研究、就職活動の影響か?
いるのかどうか、こ
傾聴力
基盤となる学力3.0
数学・自然科学
情報技術基礎
2.8
れからお示ししたい
と思います。お手元
専門知識
からないと思います
ので、こちらのほう
をご覧いただきます
と、これは先ほどの
33のコンピテン
課題発見
2.2
課題分析
2.0
ストレスコントロール
2012年1月末実施
議論力
2.6
2.4
精確性
達成志向
は白黒でまったくわ
読解力
記述力
提案力
論理的思考
1.8
1.6
自己管理
計画実行
1.4
スケジュール管理
検証
目標設定
学習
倫理
1年(74名)
2年(54名)
応用力
探求する意欲
情報収集力
感動する力
推論する力
発想する力
率先力
バランス力
協働
3年(66名)
4年(64名)
役割認識
主体性
シーがレーダー
チャートになってお
ります。四つの色で描かれていまして、1年生から4年生までに、今年の1月にコンピテ
ンシーを聞いています。そうすると非常におもしろくて、1年生、2年生、3年生、4年
生になるにしたがって、われわれはだんだん円が大きくなってくるというふうに期待して
いるのですが、現実はそうではなくて、1年生よりも2年生の方が小さいわけです。3年
生になると思い切り外に広がって、4年生になるとまた少し萎む。1年生のうちは、まだ
その鼻っ柱がへし折られていない、というと変かもしれないですけれども、あまりわかっ
ていない中で自信を持っている。2年生になると、だんだんこれじゃまずいということに
気づいて、少し自分で「そこまでは、行っていないな」と気づくわけです。それが3年生
になると、
「よし、だんだん上級生になってきたので、だいぶいろいろなことがわかってき
た」ということで自信を持っていく。その後の4年生になると、就職活動や卒業研究でへ
こまされて少し下がるというような、たぶん、このようなストーリーがあるのではないか
と推測されるわけです。
ただ、これは別に同じ学生にずっと聞いているわけではなくて、現状での1年生、2年
生、3年生、4年生に聞いているので、それぞれの学年の特色とか個人の特色みたいなも
のがあるので、いま言ったような過程が必ず成り立つかどうかは別の問題ですけれども、
概ね3年生が一番大きくなっている傾向があります。
36
それでは、先ほど
受講生コンピテンシー評価 : 履修者と未履修者との差異
のコンテンツ演習の
 2年生では履修者のほうが低い(特に「自己実現力」の各項目)
 4年生では全ての項目で履修者のほうが大幅に高い
科目を履修した人と
履修していない人で
は差があるのかを見
傾聴力
達成志向3.2
読解力
ストレスコントロール
記述力
3.0
自己管理
提案力
2.8
てみました。左側が
スケジュール管理
2年生で右側が4年
生です。左側を見ま
目標設定
倫理
探求する意欲
2.6
2.4
2.2
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
発想する力
低いですね。これは
探求する意欲
論理的思考
検証
学習
率先力
協働
主体性
倫理
課題分析
推論する力
修者のほうが総じて
目標設定
課題発見
計画実行
役割認識
応用力
情報収集力
バランス力
2.6
2.4
2.2
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
スケジュール管理
議論力
感動する力
すと、2年生では履
傾聴力
達成志向3.2
読解力
ストレスコントロール
記述力
3.0
自己管理
提案力
2.8
2012年1月末
実施
2年(履
修者18
名)
課題分析
論理的思考
計画実行
推論する力
検証
発想する力
学習
率先力
協働
主体性
2年生
青いグラフが履修者
課題発見
感動する力
2年(未
履修者
36名)
2012年1月末
実施
議論力
役割認識
応用力
情報収集力
バランス力
4年(履
修者13
名)
4年(未
履修者
45名)
4年生
です。緑が履修して
いない学生です。例
えば「計画実行」は思い切り、へこんでいるのです。つまり、履修したことによって計画
的に実行できなかったことに気づいたわけです。それによって自己評価が下がっている様
子がわかります。それから、そのほかの部分として「スケジュール管理」も思い切り下がっ
ているのです。つまり、取っていない学生は気づいていないということが想像できるわけ
です。
一方、右側の4年生になると、これは素晴らしいですね。このような絵が出ると思わな
かったので、きょうはこれだけ見てお帰りになってください。青いグラフが外側に思い切
り広がっています。これは一回でも履修した学生がどう答えているかを見ているのです。
そうすると、4年の最後ですから本当に卒業時点になるわけですけれども、一回も履修し
なかった学生と比べて、だいたい一段階ぐらい、どの項目も高くなっているわけです。で
すから、履修した学生にとってみると、コンピテンシーを伸ばすのに非常に役立っている
というのが、この結
果からわかるのでは
ないかと思います。
それでは、実際に
その学生に対して、
履修前後でどうかと
いうことを聞いてい
るのが、こちらの表
とグラフになります。
まずどのように聞い
ているかというと、
演習をする直前の4
月の段階でコンピテ
受講生コンピテンシー評価 : 演習参加学生の「成長実感」と「演習効果」
成長実感
傾聴力
読解力
記述力
提案力
議論力
課題発見
問
課題分析
題
解
論理的思考
決
計画実行
力
検証
知
学習
識
獲
応用力
得
力
情報収集力
組
バランス力
織
役割認識
的
行
主体性
動
協働
能
力
率先力
発想する力
推論する力
創
造
感動する力
力
探求する意欲
倫理
目標設定
自
己 スケジュール管理
実
自己管理
現 ストレスコントロール
力
達成志向
精確性
専門知識
専
門 情報技術基礎
性 数学・自然科学
基盤となる学力
平均
コ
ミ
ュ
ニ
ケ
ー
シ
ョ
ン
力
全体
71.4%
71.4%
14.3%
42.9%
42.9%
57.1%
42.9%
57.1%
71.4%
57.1%
57.1%
42.9%
14.3%
28.6%
71.4%
71.4%
71.4%
42.9%
42.9%
42.9%
85.7%
57.1%
42.9%
71.4%
42.9%
28.6%
14.3%
42.9%
57.1%
42.9%
42.9%
14.3%
28.6%
50.0%
演習効果
全体
傾聴力
57.1%
読解力
57.1%
記述力
14.3%
提案力
42.9%
議論力
28.6%
課題発見
57.1%
問
課題分析
28.6%
題
解
論理的思考
28.6%
決
計画実行
57.1%
力
検証
57.1%
知
学習
42.9%
識
獲
応用力
28.6%
得
力
情報収集力
14.3%
組
バランス力
28.6%
織
役割認識
42.9%
的
行
主体性
57.1%
動
協働
71.4%
能
力
率先力
14.3%
発想する力
42.9%
推論する力
42.9%
創
造
感動する力
57.1%
力
探求する意欲
28.6%
倫理
28.6%
目標設定
42.9%
自
28.6%
己 スケジュール管理
実
自己管理
0.0%
現 ストレスコントロール
0.0%
力
達成志向
42.9%
精確性
57.1%
専門知識
28.6%
専
門 情報技術基礎
42.9%
性 数学・自然科学
14.3%
基盤となる学力
28.6%
平均
40.0%
コ
ミ
ュ
ニ
ケ
ー
シ
ョ
ン
力
XX% 成長実感あるいは演習効果が
あると半数以上の学生が回答
基盤となる学力
数学・自然科学
情報技術基礎
専門知識
傾聴力
3
2.5
議論力
2
精確性
課題発見
1.5
達成志向
演習4(4年生)履修生
自己点検結果
(赤:4月、青:7月)
読解力
記述力
提案力
課題分析
1
ストレスコントロール
論理的思考
0.5
自己管理
計画実行
0
検証
目標設定
学習
倫理
応用力
探究する意欲
情報収集力
感動する力
推論する力
発想する力
率先力
7/20平均
4/20平均
スケジュール管理
バランス力
協働
役割認識
主体性
【フリーコメント例】
このプロジェクトを半年間やり通すことによって自分に今後求め
られている能力がよくわかりました。
コミュニケーション能力、創造力等、言葉だけを見てイメージした
ものが、それらを必要とされる場面に実際に遭遇することで、今
後自分自身を高めていく方向性がわかったと思います(3年生)
時間は非常にかかったが、達成感は他の科目とは比べ物にな
らないほど大きい(4年生)
37
ンシーを聞いています。それから半期間の科目の終わった直後に、また同じように聞いて
います。そして、その差をとって、その科目の中でどう変化したかを聞いているわけです。
左側の表の方は、「それぞれコンピテンシーの33の項目の中で成長したと思いますか」と
聞いていて、一体何%の人が成長したと思っているかを示しています。それから、
「それが
演習の効果として上がっているか」も聞いています。この色がついているところは、半数
以上の人が「成長実感、あるいは演習効果がある」と答えた項目になっています。
それから右側のレーダーチャート、この赤いものが履修の直前の状況、青いものが履修
後の状況になっています。こうして見ますと、それぞれこの演習、あるいは自分自身が成
長したというふうに実感する項目の部分においてはしっかりと高くなっている、広がって
いる様子がわかりますので、実際にこの演習をすることによって気づき、さらに成長を促
されている様子が、このアンケート結果からもおわかりいただけるかと思います。
フリーコメントのほうを見ますと、「このプロジェクトを半年間やり通すことによって、
自分に今後求められている能力がよくわかりました」とか、
「時間は非常にかかったが、達
成感はほかの科目と比べ物にならないほど大きい」というような、かなり肯定的なコメン
トをもらっているわけです。
【3D表示】 3D顔アニメーション (「画像・映像コンテンツ演習2」作品)
38
第7節
総括
最後に「総括」と
して、本プログラム
総括
 本プログラムを通して
を通して感じたこと
-
ですけれども、今回、
-
四つの演習科目を提
供して、伸びる素地
-
伸びる素地のある学生に対して、伸びる機会を提供
継続的な演習により、「知る→試す/使う→違いを知る→宣言する→行動/態度を
変える」と段階的に成長
履修生、TA、教員に加え、卒業生も巻き込んだAll Chuoチームの結成
卒業単位に含まれないにも関わらず、当初想定していたよりも多くの学生が履修
(驚き!)
のある学生に対して
伸びる機会を提供す
ることができた、と。
 今後の課題
-
 担当教員の個人的なネットワークに依存している
 規模を拡大することが難しい
最近、大学のほうで
は入ってくる学生の
ばらつきがどうして
履修者が増えることに伴う教員の負担増
卒業生審査員制度の継続
-
プレゼンテーションの際、ビジネスマナー(目上の人に対する接し方)も同時に習得
 履修生の名刺の準備
も大きいものですか
ら、どこにターゲッ
トを当てて授業をするか、科目をつくっていくかが非常に悩ましいところですけれども、
その中で、ハイパフォーマーに対するところが、ともすると手薄くなるところに対して、
非常にこういう科目がマッチしたということがあります。
それから2年生から4年生にかけて4回のチャンスがあるのですけれども、その中で継
続的に行うことによって、
「知る→試す/使う→違いを知る→宣言する→行動/態度を変え
る」という段階的な変化を促すことができているのではないか。
それから履修生、TA、教員に加えて卒業生も巻き込んだ、ここでは All Chuo(オール中
央)と書いてありますけれども、私立大学ですからこういう意識は非常に重要ですが、卒
業してからもこういうものに携わってもらえるようなチャンスをつくっています。
これは感想になるのですけれども、卒業単位に含まれない自由科目ですから、本当に一
部の学生だけが来るか、もしかするとまったく来ないのかなと思っていたのですが、当初
想定していたよりも非常に多くの学生に履修してもらうことができたということで、これ
は素直に驚いています。
今後の課題としては、やはりこういう科目ですから、どうしても履修者が増えると教員
の負担が非常に大きくなるところがありまして、実際に今、一つの科目で20人ぐらいを見
ているのが限界に近いのです。これが30、40、50となったときには、とても今のリソース
39
ではちょっと対応し切れない可能性が出てきます。したがって、需要がもし増えたときに
は教員側も増やすというか、提供する側も何らかの手立てをとらなければいけないし、そ
れを考えていかなければいけない。
それからこの肝にもなっているのですけれども、卒業生審査員ということをおこなって
いますが、これはどうしても担当教員、つまり私の個人的なネットワークに依存している
ので、これを別のところに展開しようとするとなかなか難しいことがあります。そういう
個人的な伝手に頼らずにどうシステム化するかを考えたい。
もう一つ同じような意味になるのですけれども、こういう背景があるので、例えば卒業
生を100人呼ぶとかいうことはなかなか難しいわけです。
あと、これは課題というか、少しはやっておけばよかったかなということの一つですけ
れども、プレゼンテーションの際に、ただ技術的な話をするだけではなくて、ビジネスマ
ナーですね。特に目上の人に対する接し方も同時に習得させられるようにすべきだったの
ではないかということを、いま感じている次第です。具体的に言うと、履修生に名刺を準
備させておいて、来てもらった卒業生の人と名刺交換をする。それから、そういうネット
ワークを使って自分自身が就職活動をするときに役立てる。そういうところまでつなげら
れるとよかったのかなと思っています。
最後は模式的な相
関図になるのですけ
総括 : 学生・TA・卒業生の相関図
れども、ここには教
員が入っていません
が、
「卒業生」
「学生」
「TA」となったとき
学生(履修生)
現役の技術
者・研究者
からの指摘
に、学生に対して卒
大学院生へ
の憧れ
初心への
振り返り
経験者からの
アドバイス
業生は「現役の技術
愛校心
者・研究者からの指
摘」を与えているわ
けです。学生のほう
はここで何を与えて
卒業生
TA(大学院生)
就職活動
くれているかという
と「初心への振り返
り」がくるわけです。それから、学生から見てTAには「大学院生への憧れ」があります。
TAさんに対して、ただ単に教えてくれる人ではなくて、
「いつか自分もああなりたい」
「す
ごく格好いい」というようなまなざしがあるわけです。そしてTA側からすると、
「経験者
からのアドバイス」を学生にフィードバックできる。もう一つ、卒業生とTAの間も親睦
会等で関係が出てくるのですけれども、卒業生から「愛校心」が伝えられます。そして大
学院生のほうからすると、
「就職活動」に直結するような、非常に生の声を聞くチャンスが
40
あります。この三者が、あるいは教員まで混ぜると四者が非常にうまく絡み合った成果を
出せたのではないかなと感じています。
申し訳ありません、やや長々と話してしまいましたけれども、私からの報告は以上とさ
せていただきます。
ご清聴ありがとうございました。
【3D表示】 3D顔アニメーション (「画像・映像コンテンツ演習2」作品)
41
第3章
プロジェクト形式の演習によるコンピテンシー育成
中央大学理工学部助教
第1節
髙松
瑞代
プロジェクト形式演習の効果
情報工学科では学生のコンピテンシー育成のため、画像・映像コンテンツ演習というプ
ロジェクト形式の演習を実施しています。この演習には演習1から演習4まであり、それ
ぞれ2年後期、3年前期、3年後期、4年前期を対象としています。ここでは演習4を取
り上げ、演習の特徴や履修学生の様子について述べます。
画像・映像コンテンツ演習4(以下、コンテンツ演
習と呼ぶ)のテーマは、
「OpenGL を利用して、裸眼立
体視ディスプレイ上で動作するゲームを作成する」と
いうものです。ゲームの内容およびプログラムの仕様
などは、各チームで学生が相談して決めます。学生に
とってゲームは大変身近なものなので、作りたいもの
のイメージはすぐに膨らむようです。図 1 は、自主的
にブレインストーミングをおこなって、ゲームに関す
図1
るアイディアを出し合うチームの様子です。
「こういう
ブレインストーミングをおこなう
チーム
ゲームにしたい」
「こういう機能を追加したい」といっ
た意見がどんどん出て議論は進み、例年どのチームも非常に盛り上がっています。
ここで興味深いのは、ほぼすべての学生が「自分の能力で作れるもの」ではなく「作り
たいもの」を作ろうとする点です。これは、通常の講義との大きな違いです。通常の講義
のレポートでは、担当教員が設定したレベルをクリアするだけで満足してしまう学生が数
多く存在します。しかし、大学における理想の教育は、講義をきっかけに学生が学問に興
味を持ち、自分で突きつめ、探究するようになることです。教員が課題を出すから解くの
ではなく、
「自分で学びたい、作りたいから頑張る」というコンテンツ演習における学生の
姿勢は、本来の大学教育にあるべき姿であると考えられます。
通常の講義で出題される課題は、その講義で習った知識を用いれば解けるようになって
いることが一般的です。一方、コンテンツ演習では「作りたいもの」が「作れるもの」で
あるとは限りません。これは、本来ならばプログラムの仕様を決める際に気づくべきです
42
が、実際にはプログラムを書く時点で発覚することが多々あります。このような場合、教
員から与えられた課題では「先生が答えを知っているからヒントをもらおう」と質問しに
くる学生や「習っていないからできなくてもよいのだ」と開き直る学生が出てきますが、
コンテンツ演習では学生が自分でゲーム内容を決めているため、
「自分たちで何とかしなく
てはいけない」という責任感があります。また、ひとりではできないけれど、皆で相談す
ればできるかもしれない、と思える点がチーム作業の長所です。
さらに、コンテンツ演習で取り組む問題には模範解答が存在しない点も、学生の自主性
を引き出しています。皆で同じレポート問題を解く場合は、講義の理解度や問題を解く速
さ、正確さなどを周りの学生と比べて自由に質問・議論をすることができないことがあり
ます。一方チーム作業では、個人個人が自分の得意な作業を担当することができます。自
分と周りを比較して萎縮しなくなることは、学生にとって自信につながり、自分の意見を
のびのびと主張できるようになります。これが活発な議論につながっていると考えられま
す。
また、プレゼンテーションやディスカッションの機
会が多い点も特徴的です。まず、各グループでどのよ
うなコンテンツを作成するかを決めた後、教員と他の
チームの学生の前で、どのような作品を作るかを説明
します(図 2)。教員や他のチームの学生から質問を受
けることで、考え足りなかった点に気づき、新しいア
イディアを得ることができます。さらに、他のチーム
図2
設計予定のシステムの発表会
図3
チームでのディスカッション
図4
コンテンツ演習発表会のようす
の発表に対して気軽に質問できる場を設けることで、
就職してから必ず必要となる「質問する能力」を養う
機会を提供しています。
システムの設計中には、どのようにプログラムを組
むべきかわからなくなることが多々あります。その場
合、チームのメンバーに相談し、数人でディスカッショ
ンを行います(図 3)。これは、自分の考えていること
を相手にわかりやすく伝え、相手の言っていることを
正しく理解する訓練になります。多くの学生は、友人
とのディスカッションを通じて、自分の説明が他者に
とってわかりにくいことに気づきます。その結果、わ
かりやすく説明することを意識するように成長します。
コンテンツ演習のクライマックスは、OBを招いた
発表会です。発表会では、各チームがポスターを用い
てOBや大学院生、他のチームの学生に対して、自分
のチームが作った作品について説明し、質疑応答を行
43
います。さらに、制作したゲームを実際に体験しても
らいます。毎年発表会は非常に盛り上がり、さながら
学会のポスターセッションのようです(図 4)。図 5 は
ゲームのデモンストレーション、図 6 はポスター発表
の様子です。何年も企業で働いているOBからの質問
に答えることは、学生にとっては貴重な経験であり、
「社会人の視点」を学ぶことができます。学部生の頃か
らこういった経験を積むことで、近い将来必ず必要と
なるプレゼンテーション技術やコミュニケーション能
図5
制作したゲームの体験コーナー
力を早い時期から鍛えることができます。
このように、コンテンツ演習には、卒業研究や就職
後に必要となる問題解決能力、コミュニケーション能
力、ディスカッション能力、プレゼンテーション技術
を養う機会が凝縮されています。実際、ある履修学生
は授業の感想として「自分の力が伸びていることが
もっとも実感できる授業であった」と述べています。
コンテンツ演習は、頑張れば頑張るほど結果となって
図6
ポスター発表のようす
返ってきます。また、就職してから確実に役立つと学
生自身が肌で感じることができるため、高いモチベーションを維持することができます。
向上心の高い学生が意欲をもって取り組むことにより、コンピテンシーを効果的に伸ばす
ことのできる場となっています。
【3D表示】 VIRTUAL WORLD (「画像・映像コンテンツ演習1」作品)
44
第2節
学生による感想
※ 以下は、2012年3月に情報工学科を卒業し2012年4月より東京大学大学院情報理工学
系研究科に進学した学生が、後輩向けに画像・映像コンテンツ演習の活用を勧める感
想を記したものです。
私は学部2年生のときに画像・映像コンテンツ演習に参加し、そこでPDCAサイクルの
中でコンピテンシーを伸ばすことの大切さに気づき、その後の学生生活を大いに実りある
ものにすることができました。
画像・映像コンテンツ演習では、3、4人で一つのチームを作り、与えられたテーマをも
とに自分たちで解決すべき課題や目標、それらを解決する計画を立て、チームでの共同作
業をおこない、最終的には学科の教授や院生、更にはOB・OGの方々の前で成果物のプレ
ゼンテーションをおこないました。
通常の授業をこなしながら、画像・映像コンテンツ演習のプロジェクトを進めることは
大変なことでした。他の授業との両立はもちろんのこと、ほとんど初対面の人たちと意思
疎通を図ることの難しさ、未知の課題へ取り組むことの難しさ、さまざまな壁が私の前に
立ちはだかりました。もともと人と話すことが苦手だった私にとって、特にチームメンバー
との意思疎通が大きな課題でした。当時は、自分にコミュニケーション能力が足りないこ
とはわかっていましたが、具体的に何をどうすればコミュニケーション能力は向上するの
か(さらに極論を言ってしまうと、コミュニケーション能力とは何か)が皆目わからなかっ
たのです。
しかし、画像・映像コンテンツ演習の受講開始時に渡されたコンピテンシー自己評価表
を使って自分のコンピテンシーを自己評価することにより、自分に足りない能力や自分の
伸ばしたい能力、さらには、コミュニケーション能力とは何か、具体的にどう行動するよ
う心掛ければコミュニケーション能力は向上するのかを知ることができました。そして、
それらを意識してプロジェクトに取り組むことにより、自身のコンピテンシーを伸ばすこ
とができ、実際に他のメンバーとの意思疎通もうまくおこなえるようになりました。
もともと何事にも受動的であり、自分に自信を持てずにいた私にとって、一つのプロジェ
クトをやり遂げたことは大きな自信となりました。画像・映像コンテンツ演習終了時に再
度おこなったコンピテンシーの自己評価により、自身の成長を数値として実感できたこと
も一つの要因です。それからの私は、積極的にアルバイトや企業のインターンシップに挑
戦するようになりました。アルバイトやインターンシップに挑戦する際も、PDCAサイク
45
ルを活用してコンピテンシーを伸ばすことを意識しました。
コンピテンシーを向上させるには、PDCAサイクルの中で繰り返し、繰り返し磨き続け
ることが大切です。どのような活動に取り組むときも、まずは目的あるいは目標をもち、
それらを達成するためにはどうすれば良いか計画をたて(Plan)、実際に行動に移し(Do)、
行動の結果どうであったかを自分で確認・反省し(Check)次に生かす(Action)ことによ
り、少しずつですが確実にコンピテンシーは成長していきます。また、普段からPDCAサ
イクルを意識することにより、自身の成長を実感できるので、新しい活動に対して意欲的
になれます。むろん、日々の活動の中で失敗も多々ありますが、その失敗も次の活動にお
いての新たな課題であるとポジティブに捉えることができるようになります。私はさまざ
まな活動を経験する中で、たくさんの人や物、さまざまな考え方と出会い、それがきっか
けで自分のやりたいこと、人生の目標が見つかり、今の進路を決定するに至りました。
最後に、実はこのPDCAサイクルという考え方は、コンピテンシーの向上のためだけで
はなく、他のことにも応用できるということを紹介したいと思います。例えば皆さんが4
年生になってからおこなうことになる研究にもPDCAサイクルは大いに活用できます。研
究をおこなう際には、自ら課題や目標を発見し、それらを達成するにはどのような手法や
考え方が有効だろうかと仮説を立て(Plan)、実際にその仮説に基づいて実験をおこない
(Do)、実験の結果が自分の期待したものであったかどうかを確認し(Check)、そうでなけ
ればどうしてそうなったのかを考察し、次の仮説を立てるのに役立てる(Action)ように
すると、少しずつではありますが、研究も進むでしょう(確実に成果が出るという保証は
できませんが)。
これから C-compass を利用できる運の良い皆さんには(私の在学中は C-compass は試験
運用期間中で、ほとんど使用できませんでした)、コンピテンシーに限らず、自ら積極的に
課題を発見し、目標を立てることで、PDCAサイクルを大いに活用し、自らの夢や目標を
かなえていただきたいと思います。また、いまはやりたいこと、自分の夢や目標が見つか
らない方でも、さまざまなことに挑戦し、PDCAサイクルを活用してコンピテンシーを磨
き続ける中で、自ずと自分のやりたいこと、あるいは進むべき道というものが見つかると
思います。私もそうでした。焦っていろいろなことに手を出し過ぎてしまう必要もありま
せんが、何事にも目的をもって、さまざまな活動に取り組むことで、有意義な大学生活を
送ってください。
46
第4章
コンピテンシーと学士力・社会人基礎力
中央大学理工学部教授
第1節
鈴木
寿
学士力の内容
文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会が2008年12月24日に答申した「学士課
程教育の構築に向けて」の本文※において、12頁に現れる学士力の内容は次のとおりです。
※ 当該資料は、2012年5月現在
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1217067.htm
よりダウンロードできます。
1.知識・理解
専攻する特定の学問分野における基本的な知識を体系的に理解するとともに,その
知識体系の意味と自己の存在を歴史・社会・自然と関連付けて理解する。
(1)多文化・異文化に関する知識の理解
(2)人類の文化,社会と自然に関する知識の理解
2.汎用的技能
知的活動でも職業生活や社会生活でも必要な技能
(1)コミュニケーション・スキル
日本語と特定の外国語を用いて,読み,書き,聞き,話すことができる。
(2)数量的スキル
自然や社会的事象について,シンボルを活用して分析し,理解し,表現する
ことができる。
(3)情報リテラシー
情報通信技術(ICT)を用いて,多様な情報を収集・分析して適正に判断
し,モラルに則って効果的に活用することができる。
(4)論理的思考力
情報や知識を複眼的,論理的に分析し,表現できる。
(5)問題解決力
問題を発見し,解決に必要な情報を収集・分析・整理し,その問題を確実に
解決できる。
47
3.態度・志向性
(1)自己管理力
自らを律して行動できる。
(2)チームワーク,リーダーシップ
他者と協調・協働して行動できる。また,他者に方向性を示し,目標の実現
のために動員できる。
(3)倫理観
自己の良心と社会の規範やルールに従って行動できる。
(4)市民としての社会的責任
社会の一員としての意識を持ち,義務と権利を適正に行使しつつ,社会の発
展のために積極的に関与できる。
(5)生涯学習力
卒業後も自律・自立して学習できる。
4.統合的な学習経験と創造的思考力
これまでに獲得した知識・技能・態度等を総合的に活用し,自らが立てた新たな課
題にそれらを適用し,その課題を解決する能力
【3D表示】 雪合戦~冬将軍~ (「画像・映像コンテンツ演習4」作品)
48
第2節
学士力の再定義
答申「学士課程教育の構築に向けて」においては、学士力を構成する各項目が必ずしも
明示的には定義されていません。本書では、用語の混乱を避けるため、学士力の各項目を
答申の趣旨に沿って次のように再定義しておきます。
【知識・理解:文化知識理解】
専攻する特定の学問分野における基本的な知識を体系的に理解すると共に、その知識体
系の意味と自己の存在を歴史・社会・自然と関連付けて理解すること。特に、多文化・異
文化に関する知識の理解。
【知識・理解:社会・自然等知識理解】
専攻する特定の学問分野における基本的な知識を体系的に理解すると共に、その知識体
系の意味と自己の存在を歴史・社会・自然と関連付けて理解すること。特に、人類の文化、
社会と自然に関する知識の理解。
【汎用的技能:コミュニケーションスキル】
知的活動でも職業生活や社会生活でも必要な汎用的技能として、日本語と特定の外国語
を用いて、読み、書き、聞き、話せること。
【汎用的技能:数量的スキル】
知的活動でも職業生活や社会生活でも必要な汎用的技能として、自然や社会的事象につ
いて、シンボルを活用して分析し、理解し、表現できること。
【汎用的技能:情報リテラシー】
知的活動でも職業生活や社会生活でも必要な汎用的技能として、情報通信技術(ICT)
を用いて、多様な情報を収集・分析して適正に判断し、モラルに則って効果的に活用でき
ること。
【汎用的技能:論理的思考力】
知的活動でも職業生活や社会生活でも必要な汎用的技能として、情報や知識を複眼的、
論理的に分析し、表現できること。
【汎用的技能:問題解決力】
知的活動でも職業生活や社会生活でも必要な汎用的技能として、問題を発見し、解決に
必要な情報を収集・分析・整理し、その問題を確実に解決できること。
49
【態度・志向性:自己管理力】
態度・志向性の一要素として、自らを律して行動できること。
【態度・志向性:チームワーク等】
態度・志向性の一要素として、他者と協調・協働して行動でき、また、他者に方向性を
示し、目標の実現のために動員できること。チームワーク、リーダーシップ。
【態度・志向性:倫理観】
態度・志向性の一要素として、自己の良心と社会の規範やルールに従って行動できるこ
と。
【態度・志向性:社会的責任】
態度・志向性の一要素として、社会の一員としての意識をもち、義務と権利を適正に行
使しつつ、社会の発展のために積極的に関与できること。市民としての社会的責任。
【態度・志向性:生涯学習力】
態度・志向性の一要素として、卒業後も自律・自立して学習できること。
【統合的学習と創造的思考力】
これまでに獲得した知識・技能・態度等を総合的に活用し、自らが立てた新たな課題に
それらを適用し、その課題を解決する能力。統合的な学習経験と創造的思考力。
【3D表示】 雪合戦~冬将軍~ (「画像・映像コンテンツ演習4」作品)
50
第3節
社会人基礎力の内容
経済産業政策局長の私的研究会である社会人基礎力に関する研究会が2006年1月20日
に報告した「中間とりまとめ」の本文※において、12~14頁に現れる社会人基礎力の内容
は次のとおりです。
※ 当該資料は、2012年5月現在
http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/torimatome.htm
よりダウンロードできます。
【前に踏み出す力(アクション)】
一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力
実社会の仕事において、答えは一つに決まっておらず、試行錯誤しながら、失敗を恐れ
ず、自ら、一歩前に踏み出す行動が求められる。失敗しても、他者と協力しながら、粘り
強く取り組むことが求められる。
【考え抜く力(シンキング)】
疑問を持ち、考え抜く力
物事を改善していくためには、常に問題意識を持ち課題を発見することが求められる。
その上で、その課題を解決するための方法や過程について十分に納得いくまで考え抜くこ
とが必要である。
【チームで働く力(チームワーク)】
多様な人と共に、目標に向けて協力する力
職場や地域社会等では、仕事の専門化や細分化が進展しており、個人として、また組織
としての付加価値を創り出すためには、多様な人との協働が求められる。自身の意見を的
確に伝え、意見や立場の異なるメンバーも尊重した上で、目標に向けともに協力すること
が必要である。
51
【前に踏み出す力:主体性】
物事に進んで取り組む力
例:指示を待つのではなく、自らやるべきことを見つけて積極的に取り組む。
【前に踏み出す力:働きかけ力】
他人に働きかけ巻き込む力
例:「やろうじゃないか」と呼びかけ、目的に向かって周囲の人々を動かしていく。
【前に踏み出す力:実行力】
目的を設定し確実に行動する力
例:言われたことをやるだけでなく自ら目標を設定し、失敗を恐れず行動に移し、粘り
強く取り組む。
【考え抜く力:課題発見力】
現状を分析し目的や課題を明らかにする力
例:目標に向かって、自ら「ここに問題があり、解決が必要だ」と提案する。
【考え抜く力:計画力】
課題の解決に向けた過程を明らかにし準備する力
例:課題の解決に向けた複数の過程を明確にし、「その中で最善のものは何か」を検討
し、それに向けた準備をする。
【考え抜く力:創造力】
新しい価値を生み出す力
例:既存の発想にとらわれず、課題に対して新しい解決方法を考える。
【3D表示】 雪合戦~冬将軍~ (「画像・映像コンテンツ演習4」作品)
52
【チームで働く力:発信力】
自身の意見をわかりやすく伝える力
例:自身の意見をわかりやすく整理した上で、相手に理解してもらうように的確に伝え
る。
【チームで働く力:傾聴力】
相手の意見を丁寧に聴く力
例:相手の話しやすい環境をつくり、適切なタイミングで質問するなど相手の意見を引
き出す。
【チームで働く力:柔軟性】
意見の違いや立場の違いを理解する力
例:自身のルールや方法に固執するのではなく、相手の意見や立場を尊重し理解する。
【チームで働く力:情況把握力】
自身と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
例:チームで仕事をするとき、自身がどのような役割を果たすべきかを理解する。
【チームで働く力:規律性】
社会のルールや人との約束を守る力
例:状況に応じて、社会のルールに則って自らの発言や行動を適切に律する。
【チームで働く力:ストレスコントロール力】
ストレスの発生源に対応する力
例:ストレスを感じることがあっても、成長の機会だとポジティブに捉えて肩の力を抜
いて対応する。
【3D表示】 雪合戦~冬将軍~ (「画像・映像コンテンツ演習4」作品)
53
第4節
表3-1
学士力・社会人基礎力のコンピテンシーレベル
学士力および社会人基礎力が想定していると思われるコンピテンシーレベルと
中大理工の目標との対応付け(鈴木による)
学士力
知識・
理解
文 社
化 会
知 ・
中大理工コンピテンシー
識 自
(最下段「専門性」構成項目は
理 然
学科・専攻ごとに独自定義/
解 等
本表は情報工学科・専攻版)
知
識
理
解
傾聴力
コミュニ 読解力
ケーション 記述力
力
提案力
議論力
課題発見
課題分析
問題
論理的思考
解決力
計画実行
検証
学習
知識
応用力
獲得力
情報収集力
バランス力
役割認識
組織的
主体性
行動能力
協働
率先力
発想する力
推論する力
創造力 感動する力
探求する意欲
倫理
目標設定
スケジュール管理
自己
自己管理
実現力
ストレスコントロール
達成指向
精確性
専門知識
専門性 情報技術基礎
数学・自然科学
基盤となる学力
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汎用的技能
コ
ミ
ュ
ニ
ケ
ー
シ
ョ
ン
ス
キ
ル
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態度・志向性
数
量
的
ス
キ
ル
情
報
リ
テ
ラ
シ
ー
論
理
的
思
考
力
問
題
解
決
力
自
己
管
理
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ー 理 会 涯
ム 観 的 学
ワ
責 習
ー
任 力
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等
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統
合
的
学
習
と
創
造
的
思
考
力
学
士
力
想
定
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中大
理 大
工 学
学 院
部 理
目 工
標 学
研
究
科
目
標
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社会人基礎力
社
会
人
基
礎
力
想
定
前に踏み
出す力
主 働 実
体 き 行
性 か 力
け
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考え抜く力
チームで働く力
課 計 創 発 傾 柔 情 規 ス
題 画 造 信 聴 軟 況 律 ト
発 力 力 力 力 性 把 性 レ
見
握
ス
力
力
コ
ン
ト
ロ
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ル
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3
2
3
3
2
3
3
4
4
3
2
2
3
2
2
この表は、以下をまとめた一覧です。
①
学士力の各項目が想定していると思われるコンピテンシー各項目のレベル(左約半分)
54
②
中央大学理工学部が目標としていると思われるコンピテンシー各項目のレベル(左右
中央付近)
③
中央大学大学院理工学研究科が目標としていると思われるコンピテンシー各項目のレ
ベル(左右中央付近)
④
社会人基礎力の各項目が想定していると思われるコンピテンシー各項目のレベル(右
約半分)
左端の欄は、コンピテンシーの各項目を表します。最下段を除く6大項目「コミュニケー
ション力」「問題解決力」「知識獲得力」「組織的行動能力」「創造力」「自己実現力」、およ
び、これらを構成する小項目は、中央大学が全学的に定義しています。最下段の大項目「専
門性」は、現在のところ理工学部・大学院理工学研究科だけが定義しています。
(その他の
学部等において「専門性」が不要と判断されているわけではありません。)さらに、専門分
野ごとの特性を反映するため、
「専門性」を構成する5小項目は学科・専攻ごとに定義して
います。
「専門性」が「精確性」
「専門知識」
「情報技術基礎」
「数学・自然科学」
「基盤とな
る学力」から構成される本表は、情報工学科・専攻版です。
A.左右中央付近の4欄「学士力想定」
「理工学部目標」
「理工学研究科目標」
「社会人基礎力想定」以外の数値
表3-1において、左右中央付近の4欄「学士力想定」「理工学部目標」「理工学研究科
目標」「社会人基礎力想定」以外の数値は、次のように解釈します。
例えば、コンピテンシー項目「傾聴力」の行と学士力項目「文化知識理解」の欄との交
点「3」は、
専攻する特定の学問分野における基本的な知識を体系的に理解すると共に、その知識
体系の意味と自己の存在を歴史・社会・自然と関連付けて理解し、特に多文化・異文
化に関する知識を理解する
ためには、レベル3すなわち
相手の意見を十分理解し、自身と異なる意見にも耳を傾けている
程度の「傾聴力」が想定されていることを意味します。
また、コンピテンシー項目「傾聴力」の行と学士力項目「コミュニケーションスキル」
の欄との交点「2」は、
知的活動でも職業生活や社会生活でも必要な汎用的技能として、日本語と特定の外国
語を用いて、読み、書き、聞き、話せる
ためには、レベル2すなわち
相手の意見を十分理解している
程度の「傾聴力」が想定されていることを意味します。
なお、レベルが最高であることを示す「4」は赤色で強調してあります。
55
表を埋めるに当たって注意すべきは、例えば学士力項目「コミュニケーションスキル」
を修得するには当然コンピテンシー項目「傾聴力」のレベルが最高でなければならないだ
ろう、というように機械的に作業してはならない点です。事実、
「コミュニケーションスキ
ル」は「読み、書き、聞き、話せる」ことに限定されており、
「自身と異なる意見にも耳を
傾けている」特性まで求めているものではありません。このように、表を埋めるに当たっ
ては、定義を逐一参照しつつ細心の注意を払う※必要があります。
※ 極めて高度な内観的作業ですが、FDに直結します。
また、学士力項目「文化知識理解」が学士力項目「コミュニケーションスキル」よりも
高レベルのコンピテンシー「傾聴力」を想定しているからといって、必ずしも前者の修得
が後者の修得よりも難しいとは限りません。例えば、コンピテンシー項目「記述力」の行
と学士力項目「文化知識理解」の欄との交点「2」は、
専攻する特定の学問分野における基本的な知識を体系的に理解すると共に、その知識
体系の意味と自己の存在を歴史・社会・自然と関連付けて理解し、特に多文化・異文
化に関する知識を理解する
ためには、レベル2すなわち
正しい文章で、他人が十分理解できるよう記述することができる
程度の「記述力」が想定されていることを意味する一方、
「記述力」の行と「コミュニケー
ションスキル」の欄との交点「3」は、
知的活動でも職業生活や社会生活でも必要な汎用的技能として、日本語と特定の外国
語を用いて、読み、書き、聞き、話せる
ためには、レベル3すなわち
正しい文章で、他人が十分理解できる記述となるよう工夫をしている
程度の「記述力」が想定されていることを意味しており、一般に不特定の相手を対象とす
る「記述力」の観点からは、むしろ「文化知識理解」の修得よりも「コミュニケーション
スキル」の修得が難しいといえます。
このように、コンピテンシー各項目の観点に応じて、学士力や社会人基礎力の各項目を
修得する難しさは変化します。これは、現代のように多様な価値観が輻輳するグロ-バル
社会においては、一面的な教育が立ち行かないことを暗示しています。
B.左右中央付近の4欄「学士力想定」
「理工学部目標」
「理工学研究科目標」
「社会人基礎力想定」の数値
「学士力想定」欄の各数値は、当該行のコンピテンシー項目について学士力項目「文化知
識理解」…「統合的学習と創造的思考力」が想定しているレベルの上限を表します。例え
ば、
「傾聴力」行のレベルは2と3から成るので、結局のところレベル3が必要であり、
「傾
聴力」行と「学士力想定」欄の交点「3」はそのことを表します。
同様に、
「社会人基礎力想定」欄の各数値は、当該行のコンピテンシー項目について社会
56
人基礎力の項目「主体性」…「ストレスコントロール力」が想定しているレベルの上限を
表します。例えば、
「傾聴力」行のレベルは3と4から成るので、結局のところレベル4が
必要であり、「傾聴力」行と「社会人基礎力想定」欄の交点「4」はそのことを表します。
また、
「理工学部目標」欄(青色強調)の各数値は、当該行のコンピテンシー項目につい
て中央大学理工学部が学生を指導・支援するに当たり目標としているレベルの下限を表し
ます。例えば、「傾聴力」のレベルは少なくとも3以上となることを目標としており、「傾
聴力」行と「理工学部目標」欄の交点「3」はそのことを表します。
同様に、
「大学院理工学研究科目標」欄(緑色強調)の各数値は、当該行のコンピテンシー
項目について中央大学大学院理工学研究科が学生を指導・支援するに当たり目標としてい
るレベルの下限を表します。例えば、
「傾聴力」のレベルは4となることを目標としており、
「傾聴力」行と「大学院理工学研究科目標」欄の交点「4」はそのことを表します。
C.コンピテンシーのレベル定義の再確認
コンピテンシーの項目ごとにレベルの定義は異なりますが、総合的に見れば定義の内容
は概ね次のように特徴付けられます。5段階評価に慣れていますと、レベル3が標準的で
あるかのように感じてしまうかもしれませんが、5段階評価の3に当たるものはレベル2
であることに注意してください。
【レベル4】
独自の効果的工夫を加え状況を変化させ得る独創的行動
行動を起こすに当たって、事前に問題を把握している。また、問題解決に当たり他者よ
り秀でた独自の工夫が見られる。
例:課題提出のみを目的にせず、他者より秀でた独自の工夫を加え課題を解く。また、
継続的に研究し続ける。
【レベル3】
明確な意図や判断に基づいた自主的行動
マニュアル的行動を起こす前に、自分なりに考えて行動する。ただし、独自の発想はな
い。
例:与えられた課題に対し指示の範囲を超えて取り組むが、特に独自性は見出せない。
【レベル2】
行うべきことを行うべきときに行う通常行動
何もいわれなくても行動は起こすが、どちらかといえばマニュアル的行動である。
例:与えられた課題に対し課題理解・課題分析・課題解決という通常の過程にのっとり
課題を提出する。
57
【レベル1】
指示されれば行う指示待ち行動
誰かに指示されたので行う程度。
例:与えられた課題に対し指定の条件で提出するが、内容に工夫がなくその場しのぎに
なる。
【レベル0】
行動していないか誤った行動をする問題行動
誰かに指示されても行動しない、正しい行動ができていない、やってはいけない行動を
する。
例:与えられた課題に対し提出できない、指示通りできていない、やってはならないこ
とをする。
D.学士力と社会人基礎力との差
学士力はコンピテンシー項目のほとんどについてレベル3(自主的行動)を想定してお
り、コンピテンシー項目「バランス力」「主体性」「率先力」についてのみ最高レベル4を
想定しています。学部卒業者が「自主的行動」を求められていることは、自然なように思
われます。
一方、社会人基礎力はコンピテンシー項目の約半数について最高レベル4(独創的行動)
を想定しています。一般論として個々の社会人が実際にレベル3や4に達しているかどう
かは別として、社会人が「独創的行動」を求められていることは自然なように思われます。
E.理工学部目標と大学院理工学研究科目標について
表3-1より、高度教育機関としての中央大学理工学部※1 は「学士力想定」を満たす「理
工学部目標」
(青色部分)を想定していること、特に「知識獲得力」および「組織的行動能
力」
(左端の欄における青色部分)については「学士力想定」よりも高いレベル「4」を想
定していることがわかります。これは、理工学部の特色として、研究を実学的な教育方法
の一つとして捉え研究力の育成に力を注いでいること※2、および、中央大学の伝統※3 とも
いえる組織的行動能力の育成に力を注いでいることを反映しています。
※1 現段階では試行的なものであり、例えば情報工学科・専攻版とは異なります。今後、
時代の状況にあわせて調整していきます。
※2 理工学部と大学院理工学研究科の学生による学会等での発表件数は、年間約350件に
達しています。
※3 中央大学の前身である英吉利法律学校の創設は、18人の少壮法律家によるといわれて
います。
58
また、上級校である中央大学大学院理工学研究科は、すべてのコンピテンシー項目につ
いて最高レベル「4」の「大学院理工学研究科目標」(緑色部分)を想定しており、「社会
人基礎力想定」を充足しています。一般論として個々の大学院生が実際にレベル4に達し
ているかどうかは別として、大学院生が学部生よりもいわゆる人気企業への内定を得やす
いのは事実です。
特に「大学院理工学研究科目標」が「社会人基礎力想定」を超えているコンピテンシー
項目については、左端の欄を緑色で強調してあります。
【コミュニケーション力:読解力、記述力、提案力、議論力】
大学院は、スペシャリストとしての技術者・科学者の育成を目的としています。学術的
な原稿を書き、議論を交わす機会がありますので、
「コミュニケーション力」のうち「傾聴
力」以外の「読解力」
「記述力」
「提案力」
「議論力」についても最高レベル「4」が想定さ
れています。
【創造力:推論する力、倫理】
技術者・科学者は未知の事象について論理的に予見できることが求められますので、
「創
造力」のうち「推論する力」についても最高レベル「4」が想定されています。また、従
来ないものを創造するに当たっては、関連法令を理解して遵守するだけでなく、自らの取
り組みや仕事が社会や自然に及ぼす影響や効果を理解し、社会に対して負っている責任を
認識し、その責任を果たすことが求められますので、「倫理」についても最高レベル「4」
が想定されています。
【自己実現力:スケジュール管理】
技術者・科学者は、行動計画の立案ができるだけでなく、突発的な事態に臨機応変に対
応し、必要に応じて適切な対応や調整ができることが求められますので、
「自己実現力」の
うち「スケジュール管理」についても最高レベル「4」が想定されています。
【専門性】
技術者・科学者には高度な専門性が求められますので、
「専門性」について最高レベル「4」
が想定されていることは自然です。
59
第5節
効果のレビュー
中央大学理工学部情報工学科および中央大学大学院理工学研究科情報工学専攻は、学士
力および社会人基礎力の観点から見たコンピテンシー育成の効果を次の4段階に分類して
レビューすることにより、PDCAサイクルによる継続的改善の体制整備を試みています。
【第一段階】学生の現状アセスメント
① 学力プレースメントテスト(学部1年生対象)
② 自己発見レポート(学部1・2年生対象)
③ 授業その他の共通的な各種アンケート
④ 重点化プログラムごとのアンケート
【第二段階】知識獲得志向に関するアセスメント
① 授業への積極的参加
② 定期試験
③ 各種資格試験への応募状況と合格率
【第三段階】社会参画への意識改革を伴う行動変容のアセンスメント
① 成績上位者進学率(情報工学科内GPA上位50%者における大学院進学率)
② 副専攻の選択
③ 論文・国際発表数および発明(特許申請)数
④ 受賞数
⑤ TA・RAへの積極的応募
⑥ ボランティア活動への参加
⑦ 学生主体の各種活動への参加
【第四段階】組織的成果のアセスメント
① ハイパフォーマー行動特性としてのコンピテンシー自己評価
② ハイパフォーマー予測指標としてのEQ検査(大学院1年生対象)
③ 学部入試における受験者数と第一志望率
④ 就職率
⑤ 就職満足度(就職活動における達成感の主観評価)
⑥ 牽引的人材の輩出
60
第6節
教育方法の開発への活用
FDの観点からコンピテンシーを活用した教育方法の開発について、以下にいくつかのヒ
ントを示します。
A.コンピテンシーレベルの再定義
中央大学におけるコンピテンシーレベルの定義は項目ごとに異なりますが、総合的に見
れば定義の内容は概ね次のように特徴付けられます。(18頁の内容の一部を、レベルを逆
順にして再掲します。)
【レベル0】行動していないか誤った行動をする問題行動
誰かに指示されても行動しない、正しい行動ができていない、やってはいけない行動を
する。
【レベル1】指示されれば行う指示待ち行動
誰かに指示されたので行う程度。
【レベル2】行うべきことを行うべきときに行う通常行動
何もいわれなくても行動は起こすが、どちらかといえばマニュアル的行動である。
【レベル3】明確な意図や判断に基づいた自主的行動
マニュアル的行動を起こす前に、自分なりに考えて行動する。ただし、独自の発想はな
い。
【レベル4】独自の効果的工夫を加え状況を変化させ得る独創的行動
行動を起こすに当たって、事前に問題を把握している。また、問題解決に当たり他者よ
り秀でた独自の工夫が見られる。
B.演習におけるコンピテンシーの活用
一例として、「提案力」は
適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自分の意見を効果的に伝え
る
61
コンピテンシーとして定義されています。演習時間中における学部生(下級生)のコンピ
テンシー「提案力」のレベルは、次のような行動例に現れます。
【レベル0】
わかりやすく説明できない。
例:何の提案もしない、または、その気がない。
【レベル1】
効果的な手順・手段を用いて、わかりやすく説明しようとしている。
例:上級生からの助言を受けるため、状況を伝えられる。
【レベル2】
効果的な手順・手段を用いて、わかりやすく説明できている。
例:必要に応じ紙や道具を用いて、チームのメンバーへ意思伝達できる。
【レベル3】
適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自分の意見を効果的に伝えて
いる。
例:研修で学習したプレゼンテーションの技法を用い、効果的なプレゼンテーションを
おこなっている。
【レベル4】
自分の意見を効果的に伝え、異なる意見をもつ相手からも十分な理解を得ている。
例:さまざまな意見が出たあと、相互理解を得て合意に達するように議論を導ける。
同様に、TAである大学院生(上級生)のコンピテンシー「提案力」のレベルは、次の
ような行動例に現れます。
【レベル0】
わかりやすく説明できない。
例:下級生からの質問に、答えられない。
【レベル1】
効果的な手順・手段を用いて、わかりやすく説明しようとしている。
例:下級生からの質問に、答えられる。
【レベル2】
効果的な手順・手段を用いて、わかりやすく説明できている。
例:下級生からの質問に対し、下級生にもわかるように答えられる。
62
【レベル3】
適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自分の意見を効果的に伝えて
いる。
例:下級生からの質問に対し、気づきを与えるような助言をわかりやすく伝えられる。
【レベル4】
自分の意見を効果的に伝え、異なる意見をもつ相手からも十分な理解を得ている。
例:下級生が自ら質問しなくとも、気づきを与えるような助言を適切な場面で与えてい
る。
個々の学生のレベルをより正確に把握するためには、典型的な行動例を継続的に収集・
整理する必要があります。評価者が複数いる場合は、おもに観察する学生を分担すると共
に、分担以外の学生についても観察するようにし、発現する機会のあった行動例に基づい
てレベル評価した結果を集約すると効果的です。
個々の学生については、低レベルのコンピテンシー項目を検出し、それを重点的に向上
するような指導ができます。
また、多数の学生について低レベルのコンピテンシー項目が検出されたときは、それを
全体的に底上げするための教育方法を工夫することが考えられます。
C.レポートにおけるコンピテンシーの活用
別の例として、通常の授業において「ある式を計算するプログラムを作成してシミュレー
ションを行い、レポートにまとめよ」という課題を与えたとき、コンピテンシー「提案力」
の各レベルの行動例はレポート上で次のように現れます。
【レベル0】
わかりやすく説明できない。
例:課題を解決したと認められる常識的な要件が満たされていない。プログラムそのも
の、または、実行結果の確認が欠如している。
【レベル1】
効果的な手順・手段を用いて、わかりやすく説明しようとしている。
例:課題の解決に努めた痕跡が残っている。プログラムまたは実行結果の確認が欠如し
ているものの、その両方を記載しようと努め途中で時間切れとなったことが客観的に認め
られるもの。
【レベル2】
効果的な手順・手段を用いて、わかりやすく説明できている。
例:課題を解決した。
63
【レベル3】
適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自分の意見を効果的に伝えて
いる。
例:課題を解決し、他者が十分理解できる記述となるよう工夫しようと努めている。グ
ラフにより視覚化を試みているが、品質は不十分。努力すればさらに良くなる。
【レベル4】
自分の意見を効果的に伝え、異なる意見をもつ相手からも十分な理解を得ている。
例:課題を解決し、他者が十分理解できる記述となるよう秀でた工夫をしている。グラ
フにより視覚化しており、他者による分析のための資料となり得る。
最も多いレポートのレベルは2「課題を(そつなく)解決した」です。
課題は解決していますので当然そのままでも及第点は付くのですが、上記のレベルおよ
び行動例を記した紙と一緒にレポートを返却しつつ「さらに良い評価を得たければ、これ
を参考にして再提出してもかまいません」と一言添えると、約三分の一の学生がレポート
を再提出し、それらのほとんどがレベル4に達しています。
最近の若者は指示以上の挑戦をしなくなったとはいわれますが、指示以上の挑戦を行う
という考え方があり得ること、および、それに見合う評価が得られること、すなわち先生
に認めてもらえることを示せば、行動はまた変わってきます。
D.コンピテンシー育成の教育資源はいたるところにある
例えば大学院において、
特許あるいは実用新案・商標登録等知的財産に該当するような発明・発見を行う
ことは、特に「論理的思考」
「課題発見」
「提案力」
「議論力」のレベル向上につながり、ま
た「探求意欲」「主体性」「バランス力」「達成志向」のレベル向上にもつながります。
このように、コンピテンシー育成の教育資源は、いたるところに存在します。要は、教
える側と教わる側とがそれぞれの視点から、各教育資源によって何が向上するのかを明確
に意識することが肝要です。
E.FDへの柔軟な応用
行動特性をレベル化する汎用的な方法論は、組織的な行動指針にも応用できます。以下
はFDの一環として、学生支援の観点から見たときの、組織としてのコンピテンシー「学生
相談」をレベル化した一例です。
64
【レベル0】限定的回答(Definitive answer)
特別な配慮を必要としない質問へは、正確に回答するか、適切な関連部署を紹介します。
簡単な質問や、研究室における日常的な指導については、必ずしも C-compass に記録する
には及びません。
例:履修方法について。
例:エントリシートの書き方がわからない。
例:友人をつくる大学での機会を教えて欲しい。
【レベル1】指導性助言(Coaching advisement)
場合に応じて叱咤激励しつつ、指導性の助言を行います。必要に応じて関連部署を紹介
します。必ずしも C-compass に記録するには及びません。
例:GPAが思わしくない。勉強方法に問題があるのだろうか。
例:実はどうすべきか内心決めているが、他者の意見・助言も得たい。
例:大手企業への就職にこだわる。
例:卒研を疎かにし、ゼミへ無断欠席し続けた。親に問い詰められるし、どうしたらよい
かわからない。論文提出の締切りまであと三日しかないが、いまから頑張って実験を
行い卒論を書くので、卒業させて欲しい。
(いわゆる心の不調ではない。行うべきこと
を行わなければ、誰でも心苦しくなる。きちんとゼミに出席するところから始めるべ
き。)
【レベル2】支援性相談(Backup counseling)
適切な支援や治療等により乗り越えられそうな問題のときは、回復に導くことを試みま
す。大した問題ではないように見えても、本人にとっては不可抗力に近いので、叱咤等は
避けます。指導性助言は、局面を脱してからにします。自己表現の苦手な学生による暗黙
の援助要請サインの可能性がありますので、判断がつかないときは、学生相談室へ行くよ
う勧めます。また、そのように勧めたことを C-compass に記録します。
例:いつもはゼミに出席しているが、急に出席する気が失せた。
(季節性気分障害などの可
能性。)
例:家の経済状況が変化したが、学業を継続したい。(経済的支援の可能性。)
例:就職活動が怖い、辛いなど。(メンタルケアが必要。)
例:対人恐怖がある。(ゼミの態様または代替手段を工夫。)
例:聴覚障害があることを、科目ごとに先生に自己申告するのは困難。大学として対応し
て欲しい。
例:少し障害があるが、障害者手帳は持たない。不利益は覚悟のうえで卒業まで到達した
い。
65
【レベル3】代替支援(Alternative support)
パーソナリティや行動の障害その他により、本質的に学業の継続や就職活動が困難なと
きは、複合的な支援が必要です。学生に対し、まずは状況を整理する必要があること、ま
た、場合に応じてメンタルケアも受けられることを説き、必ず学生相談室へ行くように勧
めます。その後、局面に応じて関連部署間で連携しつつ対応する必要があります。長期化
することも想定し、大らかな気持で対応しなければなりません。
例:深刻な病気を患った。
例:人生相談、家族問題など。
例:研究室ゼミへ出席していない、就職活動をしていないなど。
例:退学を希望するが、学士の学位は欲しい。(学位授与機構を活用する可能性。)
【レベル4】極限対応(Supreme action)
学生および教職員の生命・人権に直接かかわる状況は、学部として把握しておく必要が
あります。必要な関連部署と連携しつつ丁寧に対応すると同時に、必ず学生相談室にも局
面を連絡します。
例: 独り暮らしの友人が突然、ゼミを連絡なしで欠席し、他の友人との連絡も途絶えた。
例: ハラスメントに悩んでいるが、下手に動くと危ない気がする。
例: ある授業で、言動の異様な人がいつも教室の後方に居て、不安を感じる。
【3D表示】 雪合戦~冬将軍~ (「画像・映像コンテンツ演習4」作品)
66
第5章
コンピテンシーと就業力
中央大学理工学部教授
第1節
鈴木
寿
就業力と就職活動
2010年2月の大学設置基準等の改正により、教育課程内外を通じた「社会的・職業的自
立に向けた指導等(キャリアガイダンス)」が制度化された中で、大学の教育課程内外を通
じて、学生が社会的・職業的自立につながる就業力をしっかりと身に付けることの重要性
が述べられています。就業力は、就職活動にそのまま反映されます。
A.就職活動に関連するコンピテンシー
最近の就職活動においては、内定が得られやすい人は得られやすく、得られにくい人は
得られにくいという二極化が進行しています。以下では、内定が得られやすい人と得られ
にくい人との本質的な差異がどこにあるかについて、コンピテンシーの観点から分析しま
す。
大学は、就職活動に関連する対策のために存在するわけではありません。にもかかわら
ず、大学生活は就職活動の成否とその後の人生を大きく左右します。その意味では、就職
活動は入学直後から始まっているともいえます。逆にいえば、予めいくつかのポイントを
意識することによって、勉学についてもそれ以外についても楽しく大学生活を送りつつ、
無理なく就職活動の準備を進めることが可能となります。
次頁の表4-1「就職面接等における質問への臨機応変な回答に必要なコンピテンシー
レベル(鈴木による)」は、学部生と大学院生についていわゆる有名企業の内定を得られた
人々および得られなかった人々からさまざまな形で収集した情報に基づいて、就職活動時
のエントリシートや面接などにおけるさまざまな質問へ臨機応変に回答するために必要と
思われるコンピテンシー各項目のレベルをまとめた一覧です。
67
表4-1 就職面接等における質問への臨機応変な回答に必要なコンピテンシーレベル
(鈴木による)
質問の類型
【タイプA】
【タイプB】
【タイプC】
中大理工コンピテンシー
授業関連の
(最下段「専門性」構成項目は
研究課題
志望理由
学科・専攻ごとに独自定義/ (ゼミ・卒論等) 勉強以外に
力を注いだこと (取り組み
本表は情報工学科・専攻版)
または
(スポーツ・
たい分野)
興味ある科目
サークル等)
傾聴力
4
4
4
コミュニ 読解力
2
1
3
ケーション 記述力
1
1
3
力
提案力
3
3
3
3
議論力
3
3
課題発見
4
4
4
課題分析
2
2
4
問題
論理的思考
3
3
4
解決力
計画実行
2
2
4
1
検証
2
4
学習
2
2
3
知識
応用力
1
3
2
獲得力
3
情報収集力
3
3
バランス力
1
2
3
役割認識
2
2
2
組織的
主体性
2
3
3
行動能力
協働
2
3
3
3
率先力
4
2
発想する力
3
4
3
推論する力
2
3
2
創造力 感動する力
4
3
3
探求する意欲
3
3
3
2
倫理
2
2
目標設定
3
3
3
スケジュール管理
3
3
3
自己
自己管理
2
3
2
実現力
ストレスコントロール
2
2
3
4
達成指向
3
3
回答難度(平均)
2.46
2.71
3.00
【タイプD】
自己PR
4
2
2
3
3
4
3
3
3
3
2
3
3
4
4
4
4
3
4
3
4
4
2
4
3
4
4
4
3.32
必要レベル
(最小上界)
重要度
(平均)
4
3
3
3
3
4
4
4
4
4
3
3
3
4
4
4
4
4
4
3
4
4
2
4
3
4
4
4
4.00
2.00
1.75
3.00
3.00
4.00
2.75
3.25
2.75
2.50
2.25
2.25
3.00
2.50
2.50
3.00
3.00
3.00
3.50
2.50
3.50
3.25
2.00
3.25
3.00
2.75
2.75
3.50
左端の欄はコンピテンシーの各項目を表します。6大項目「コミュニケーション力」
「問
題解決力」
「知識獲得力」
「組織的行動能力」
「創造力」
「自己実現力」、および、これらを構
成する小項目は、中央大学が全学的に定義しているものです。
また、上端の「質問の類型」は、エントリシートや面接などにおけるさまざまな質問を
類型化したものです。ほとんどの質問は、本質的には
【タイプA】研究課題(ゼミ・卒論等)または興味ある科目
【タイプB】授業関連の勉学以外に力を注いだこと(スポーツ・サークル等)
【タイプC】志望理由(取り組みたい分野)
【タイプD】自己PR
に帰着できます。一見したところこれらのタイプには属さないと思える質問であっても、
例えば「なぜ○○大学に入学したのですか」という質問は、本質的にはタイプA(場合に
よってはタイプB)に帰着できますし、別の例として、
「尊敬する人は誰ですか」は本質的
にはタイプBに帰着できます。また、例えば「あなたの短所は何ですか」は、実は人格を
68
否定するための質問ではなく、その人に固有のエピソードの中で、短所や失敗経験がいか
に人間的成長につながっているかを語ってもらうための質問であり、本質的にはタイプD
に帰着できます。一般に、面接担当者による質問は、タイプA~Dを行ったり来たりしな
がら推移します。
「タイプA」欄において、最終行を除く各数値は、タイプAの質問への臨機応変な回答に
必要な当該行のコンピテンシー項目のレベルを表します。例えば、
「タイプA」欄と「傾聴
力」行との交点「4」は、タイプAの質問「研究課題(ゼミ・卒論等)または興味ある科
目」へ臨機応変に回答するためには、レベル4すなわち
相手の意見を十分理解し、自身と異なる意見にも耳を傾け尊重している
程度の「傾聴力」が必要であることを表します。また、最終行「回答難度(平均)」は、
「タ
イプA」欄におけるレベルの平均値の小数点第三位を四捨五入した結果であり、タイプA
の質問への回答がどの程度難しいかを表しています。
タイプB、C、Dについても同様です。
「必要レベル(最小上界)」欄の各数値は、当該行のコンピテンシー項目について全タイ
プの質問への臨機応変な回答に必要なレベルを表します。例えば、
「読解力」行のレベルは
1~3から成るので、
「読解力」のレベルとして3が想定されており、
「読解力」行と「必要
レベル(最小上界)」欄の交点「3」は、そのことを表します。ここに、「必要レベル(最
小上界)」欄の数値の並びが、先の表3-1「学士力および社会人基礎力が想定していると
思われるコンピテンシーレベルと中大理工の目標との対応付け(鈴木による)」における「社
会人基礎力想定」欄の数値の並びと完全に一致していることは、恣意的に調整したもので
はなく、分析の結果そうなったものです。ただし、たまたまそうなったとはいえ、社会人
基礎力が有名企業の求める人間像に酷似している事実については一考する価値がある ※よ
うに思われます。
同様に、「重要度(平均)」欄の各数値は、当該行のコンピテンシー項目について全タイ
プの質問への臨機応変な回答に必要なレベルの平均値の小数点第三位を四捨五入した結果
であり、タイプを問わずさまざまな質問への臨機応変に回答するためのコンピテンシー各
項目の重要さを表しています。ここに、
「重要度(平均)」欄の数値が上側四分位数3.25以
上(すなわち上位0~25%)のとき当該行を緑色で強調してあります。また、上位四分位
数以下かつ中央値3以上(すなわち上位25~50%)のときは当該行を青色で強調してあり
ます。
※
社会人基礎力の定義が的確であるように見える一方、倫理面が相対的に重要とは考え
られていない事実が浮き彫りになっています。企業で働く個々人が「関連法令を理解
して遵守している」ことは当然ですが、さらに「自らの取り組みや仕事が社会や自然
に及ぼす影響や効果を理解し、社会に対して負っている責任を認識している」ことは
求められても、企業の総体として「その責任を実際に果たす」ことまでは個々人には
求められていない、とも解釈でき、ときとして技術者・科学者が会社と社会との板挟
みになる状況があり得ることを暗示しています。
69
B.実は自己PRは難しい
就職活動に当たって自己PRをなおざりにする人は多いのですが、
「回答難度(平均)」行
からわかるように、実は自己PRに関連する質問へ臨機応変に回答するために必要なコンピ
テンシーのレベルは総じて高いといえます。逆にいえば、自己PRをなおざりにする人は内
定を得られにくいことが容易に想像できます。
C.全体を通して重要なのは、感動を原動力として、新しい何かを発想し、
関心事を探求すること
表4-1を参照すると、コンピテンシー大項目「創造力」のうち特に小項目「発想する
力」
「感動する力」
(緑色部分)および「探求する意欲」
(青色部分)については、高いレベ
ルが必要なことがわかります。これらの「必要レベル(最小上界)」は次のとおりです。
① 「発想する力」の最高レベル「4」
これからの社会に示唆を与え貢献するような、独自のアイディアを生み出す。
② 「感動する力」の最高レベル「4」
すぐれた芸術や技術、あるいは、斬新なアイディアに接して強い印象を受け、積極的
に新たな取り組みの原動力とする。
③ 「探求する意欲」の最高レベル「4」
常に、自身の専門内外に関わらず幅広い知的好奇心をもち、新たな知識を意欲的に取
り入れようと積極的に行動する。
理工学部の教育課程は、ゼミ・卒業論文等を通じて卒業時までにこれらの項目を少なく
ともレベル3まで引き上げ、さらに大学院で最高レベル4まで引き上げることを想定して
いますので、一般論として、ある特性の学部生が有名企業の内定を得るためには、特に「発
想する力」「感動する力」「探求する意欲」を何らかの方法で補強しておかなければならな
い※ことがわかります。
※
中央大学の全学的プロジェクト「『知性×行動特性』による就業力育成教育」は、コン
ピテンシー各項目のレベルを向上するために、「キャリア教育プロジェクト(授業科
目)」
「キャリア教育プロジェクト(課外)」
「インターンシップ推進プロジェクト」
「ア
セスメントプロジェクト」「学生アドバイザープロジェクト」「外国人留学生プロジェ
クト」
「国際力養成プロジェクト」
「理工学部WISEプロジェクト」
「職業養成プロジェ
クト(公務員)」
「職業養成プロジェクト(教員)」その他のさまざまなプロジェクトを
設置しています。
一方、概して大学院生のほうが内定を得やすいのは、大学院生は研究活動を通じて最高
レベル4に近いところにいるからと考えられます。
70
なお、理系の場合は情動に左右されない人のほうが知性は高いように誤解されがちです
が、現実には、革新的な発見や発明は常に、情動豊かな動機に支えられています。何にも
感動しない特性の学生は、大学生活において「好きこそ物の上手なれ」の「好き」をみつ
ける必要※があります。
※
幼少期に十分な感動体験を有し「感動する力」のレベルが高ければ、大学において意
識して改善するには及びません。それがいわゆる情操教育の効用と考えられます。
D.次に重要なのは、相手の言葉をよく聴き、自身も何かを提案し、必要に
応じて議論できること
表4-1を参照すると、コンピテンシー項目「コミュニケーション力」のうち特に「傾
聴力」
(緑色部分)および「提案力」
「議論力」
(青色部分)については、やや高いレベルが
必要なことがわかります。これらの「必要レベル(最小上界)」は次のとおりです。
① 「傾聴力」の最高レベル「4」
相手の意図を十分理解し、自身と異なる見解が示されても耳を傾け尊重する。
② 「提案力」のレベル「3」
適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自身の意見を効果的に伝え
る。
③ 「議論力」のレベル「3」
議論の目標を設定し、それに合わせて、自身と異なる意見をもつ相手とも議論が展開
できる。
理工学部の教育課程はゼミ・卒業論文等を通じて卒業時までにこれらの項目を少なくと
もレベル3まで引き上げ、さらに大学院で最高レベル4まで引き上げることを想定してい
ますので、一般論として、ある特性の学部生が有名企業の内定を得るためには、特に「傾
聴力」を何らかの方法で補強しておかなければならないことがわかります。
一方、概して大学院生のほうが就職活動に有利なのは、大学院生は研究活動を通じて最
高レベル4に近いところにいるからと考えられます。何らかの方法でとはいうものの、あ
らためて考えると、普段から講義を真剣に聴きポイントを押さえてノートに要領良く記し
確実に試験に通るという勉学スタイルを徹底すれば、
「傾聴力」は速やかに最高レベルに達
するはずです。
もし「傾聴力」を補強しておかないと、たとえ他のコンピテンシー項目のレベルが高く
とも、面接担当者による質問の意図が理解できず見当違いの回答をしてしまうでしょう。
例えば、既にタイプBの質問に対し趣味を答えたにもかかわらず、再び「あなたは何を得
71
意としますか」と質問されたとしたら、それは趣味を再確認されているのではなく、自己
PRを促されていると理解すべきです。しばしば「趣味の話に花が咲いて、面接の感触が良
かった」と喜んでいたのに後日不合格となる人がいるのは、このことを反映しています。
E.志望理由(取り組みたい分野)を答えるときに特に重要なこと
表を参照すると、志望理由(取り組みたい分野)を答えるときには、コンピテンシー大
項目「問題解決力」
(赤色枠で強調)全般について最高レベル4が必要であることがわかり
ます。もしレベルが低いと、自己分析や企業研究が進まず、学生本人の希望・現状と企業
の希望・現状とが合致しません。また、特に「課題発見」
(緑色部分)と「論理的思考」(青
色部分)は質問のタイプを問わず重要であることもわかります。
① 「課題発見」の最高レベル「4」
現状と目標を把握し、その間にある差の中から、解決すべき課題を見つけ出し優先順
位付けができる。
② 「論理的思考」のレベル「3」
複雑な事象を整理し構造化することにより、自身の意見や手順を論理的に展開できる。
理工学部の教育課程はゼミ・卒業論文等を通じて卒業時までに「問題解決力」項目を少
なくともレベル3まで引き上げ、さらに大学院で最高レベル4まで引き上げることを想定
していますので、一般論として、ある特性の学部生が有名企業の内定を得るためには、特
に「課題発見」を何らかの方法で補強しておかなければならないことがわかります。
一方、概して大学院生のほうが就職活動に有利なのは、大学院生は研究活動を通じて最
高レベル4に近いところにいるからと考えられます。
例えば、早期すなわち2年生夏頃からインターンシップに参加するなどにより、計画的
に「問題解決力」全般が増強できます。また、学科・専攻によっては計画的にコンピテン
シーを増強するためのプロジェクト授業(例えば、情報工学科2~4年生「画像・映像コン
テンツ演習1~4」など)が設置されていますので、それらを積極的に活用することを勧め
ています。
なお、以上は、志望理由等を質問されたときに「高い問題解決力をもっている」と主張
すべきであることを勧めているわけではなく、
「問題解決力」が低ければ志望理由等を的確
に答えられないという意味である点に注意してください。難しい数式は解けてもメタ認知
が低い人は、
「御社を志望する理由は、私の問題解決力が高いと思うからです」などと答え
る可能性がありますので、指導に当たっては注意が必要です。
72
F.自己PRのときに特に重要なこと
表を参照すると、自己PRのときには、コンピテンシー項目「組織的行動能力」(赤色枠
で強調)全般について高いレベルが必要であることがわかります。
理工学部の教育課程は、演習やゼミ・卒業論文等を通じて卒業時までに「組織的行動能
力」全般を最高レベル4まで引き上げることを想定していますので、学部生が就職活動を
始める時期に間に合うはずです。ただし、ある特性の学部生が有名企業の内定を得るため
には、
「組織的行動能力」全般を何らかの方法で補強しておくほうが良さそうに思われます。
いわゆる体育会系部活の経験が就職活動に有利であるといわれる理由は、
「組織的行動能
力」が増強されるからです。授業に関する勉学以外に力を注いだことを質問され、部活を
行っていたと述べた場合、もし相手がそう理解してくれれば、自ら「組織的行動能力」を
アピールしなくとも自動的に内定が得られます。ただし、部活に言及したからといって必
ずしも「組織的行動能力」が高いと理解してもらえるとは限りません。単に「部活をして
いました」と答えて具体的事例を述べずに放置すると、「この人は、部活さえしていれば、
あとはどうでもよいと考えている」とみなされて、不合格となる可能性もあります。
効果的な準備として、早期すなわち2年生夏頃からインターンシップに参加することに
より、計画的に「組織的行動能力」全般が増強できます。また、中央大学理工学部および
大学院理工学研究科の学科・専攻によっては計画的にコンピテンシーを増強するためのプ
ロジェクト授業が設置されていますので、それらを積極的に活用することを勧めています。
インターンシップやプロジェクト授業に参加しても何も変わらないのではないか、と疑
う人もいますが、その場合は次の例を提示しています。例えばタイプBの質問「授業に関
する勉学以外に力を注いだこと」に対し、もし「自宅でPCを組み立てるのが趣味です」と
答えたとすると、相手は、その人の「組織的行動能力」が低いと感じるかもしれません。
対照的に、もし「学費を稼ぐため、何人かの友人と協同でPCを組み立て、売り切りで販売
した経験があります」などと答えたとすると、相手に「組織的行動能力」が高い印象を残
すことに成功するでしょう。インターンシップやプロジェクト授業に参加すると、そのよ
うな視点に自ずと気づく効果があります。
このように、自己PRに当たっては、各人に固有のエピソードを語りつつ、「組織的行動
能力」の高さが確実に相手に伝わるように工夫を施さなければなりません。すなわち、
① 大学生活において、実際に「組織的行動能力」を増強すること
② 就職面接時に確実に伝わるように工夫すること(「コミュニケーション力」のうち、特
に「記述力」「提案力」「議論力」がレベル3以上であること)
の二段階が必要です。
73
G.「問題解決力」の重要性
コンピテンシー項目「問題解決力」が高い人は、あらゆる活動に際して、PDCAサイク
ル(Plan-Do-Check-Act cycle)と呼ばれる継続的改善を実践しています。継続的改善は大
学に入学しなくとも実践できますが、ポイントは、大学における勉学と並行すれば、高度
に知的な「課題発見」「課題分析」「論理的思考」「計画実行」「検証」が可能となる点にあ
ります。
知性とコンピテンシーの組合せは、思わぬ副産物をもたらします。例えば、内定が得ら
れやすい人は、就職活動を始めると間もなく容姿がきりっと引き締まってきます。それは、
仕事にふさわしい服装や化粧を、自ら論理的に思考して工夫できるようになるから ※です。
※
例えば、ハラスメント防止の観点から「学問の修得に服装は無関係だから、服装や化
粧に言及すべきではない」とする指導方針があり得ますが、個々の学生に社会的・職
業的自立につながる就業力をしっかりと身に付けさせるためには、時・場所・場合に
応じた服装や化粧に気づかせることは重要です。
H.コンピテンシー項目「組織的行動能力」における両立
自己PRのときには、コンピテンシー項目「組織的行動能力」(赤色枠で強調)全般につ
いて高いレベルが必要ですが、
「重要度(平均)」を見ればわかるように、特に「主体性」「協
働」「率先力」(青色部分)は全体を通して重要です。
① 「主体性」の最高レベル「4」
物事に対して自身の意志・判断で責任をもって行動し、その行動に工夫・独自性があ
る。
② 「協働」の最高レベル「4」
チームで作業・行動するとき、共通の目標を達成するために、お互いの考えを尊重し、
信頼関係を構築・維持するように自ら工夫して行動する。
③ 「率先力」のレベル「3」
先に立って実践し、模範を示し、他を誘導できる。
「組織の和を乱すなという人がいる一方、リーダーシップを取れという人もいて、いった
いどちらにすべきかわからない」と悩む人がいますが、現実には両立が求められます。そ
して、そのためには、他者から収集した思考・行動のリスト中で最も有利な一つを選ぶと
いうような生き方をしていてはいけません。まずは、主体性が必要です。
74
ところで、グループ討論などにおいて目立とうとする人が不合格になる理由は、
「率先力」
以外のレベルが低いとみなされる点にあります。グループ討論では適切に発言して「協働」
のレベルの高さをアピールしつつ、機会を伺い、必要なら「率先力」も発揮可能であるこ
とを一瞬でもアピールするのが定石といわれています。もし「組織的行動能力」の5小項
目を満遍なく増強していれば、場の雰囲気を良好に誘導していけますので、
(グループ全員
の、ではなく)その人の内定の可能性が大幅に高まります。
I.自己PR時に特に重要なもう一つのこと
自己PRのときにはコンピテンシー項目「自己実現力」(赤色枠で強調)全般についても
高いレベルが必要ですが、
「重要度(平均)」を見ればわかるように、特に「目標設定」
「ス
ケジュール管理」(青色部分)および「達成志向」(緑色部分)は全体を通して重要です。
① 「目標設定」の最高レベル「4」
自らを高めるための適切な目標を設定し、さらにそれを達成するための具体的かつ最
適な指標を設定する。
② 「スケジュール管理」のレベル「3」
行動計画を立案し、突発的な事態にも対応できる。
③ 「達成志向」の最高レベル「4」
普段から新しい目標を求め自身で目標を設定してそれを達成しようと努力し、失敗し
ても効果的な改善を行って諦めず繰り返し挑戦する。
面接時間に遅れることは論外ですが、問題なのは、だからといって「私は時間を厳守し
ます」とか「私には自己実現力があります」のように直接的に主張すれば、果たしてアピー
ルになるだろうか、という点です。社会人にとって、例えば時間厳守は当然ですから、も
しあえて「私は時間を厳守します」と主張しますと、
「この人はいままでしばしば授業に遅
刻しており、ゆえに、これからは遅刻しません、とわざわざ宣言しているのだろう」とも
思われかねません。
ここに、再び「コミュニケーション力」が効いてきます。
「自己実現力」の高さが確実に
相手に伝わるためには、題材は何でもよいので、本人固有のエピソードを語る中で「自己
実現力」の高さのアピールを上手に織り込む必要があります。
なお、企業によっては「自己実現力」は、
「臨機応変」や「タフ」などの言葉で表わされ
る場合もあります。
75
J.情報収集し自身のものにする
全体を通して「知識獲得力」が必要であり、「重要度(平均)」を見ると、特に「情報収
集力」(青色部分)が重要であることがわかります。
① 「情報収集力」のレベル「3」
工夫して情報を入手し、精査したうえで、取捨選択して自身のものとしている。
就職面接時に、志望企業(財務諸表を含む)について調べていない人は、たぶん内定が
得られません。この人は同様に、大学の授業においても、与えられた課題を単にこなすだ
けであり、自らさまざまな情報を収集し自身のものとする習慣はないと考えられます。と
いうことは、卒研もなおざりであるし、
「創造力」も乏しいと考えられます。面接担当者に、
直ちに見抜かれてしまうでしょう。
K.1年生からエピソード集め
内定が得られやすい人に共通するのは、とにかく、手持ちのエピソードが多いという事
実です。手持ちのエピソードが多いということは、大学生活においてさまざまな経験を積
んできたということであり、それはすなわち、意識しているか否かにかかわらず、コンピ
テンシー各項目を増強した機会の多さを意味します。その当然の結果として、いよいよ就
職活動においても、面接担当者の質問をよく聴き、臨機応変に手持ちのエピソードを出し
つつ、コンピテンシーの高さを魅力的に相手に伝えていると考えられます。
対照的に、もし手持ちのエピソードが少なければ、例えば「私には、発想する力があり
ます」というように表面的・形式的に答えたとしても「そうですか。それで?」となり、
そこから話は進みませんし、相手には何も伝わりません。むしろ、そのように答えてしま
う行為自体が、
「コミュニケーション力」
「問題解決力」
「創造力」の乏しさを露呈している
といえます。表面的・形式的にそつなく回答することだけを心掛けている人が、なかなか
内定に至らない理由は、ここにあります。
以上に述べてきた1年生から始められる就職活動の準備を、以下にまとめます。
① 自己評価システム C-compass 上で、コンピテンシーのレベルを半年ごとに確認する。
② 補うべきコンピテンシー項目は、授業や学内外の課外活動を通じて計画的に増強する。
③ 大学生活のログをとる。すなわち、何か出来事とか行事を経験したら、そのつど画像
1枚を添えて簡単な文章と共に記録する。その際、増強されたと思われるコンピテン
シー項目を付記※する。
※ この最後の部分が、単なる日記とは異なります。
76
最初の二つ①②を継続すればコンピテンシー各項目は徐々に増強できますし、また、い
よいよ就職活動の際には、③にて書きためたログを整理しつつ大学生活を振り返ることに
より、就職面接等における質問に対して、どのエピソードを用いてどのコンピテンシー項
目の高さを相手に伝えるか、予めイメージトレーニングができます。
中央大学理工学部は、1年生から始められる就職活動の準備について解説した資料を新
入生全員へ配布することにより、個々の学生が充実した大学生活を送りつつ、数年後の就
職活動に楽しく取り組めるように誘導することを試みています。
画像暗号化認証システム (「画像・映像コンテンツ演習3」作品)
77
第2節
中央大学における就業力育成
中央大学において、理工学部「段階別コンピテンシー育成教育システム」以外の、コン
ピテンシーを通じた教育および学生支援の状況について、以下にまとめます。
A.就業力育成教育プログラム実行委員会
中央大学は、建学の理念である「實地應用ノ素ヲ養フ」に基づく実学教育のもと、188
5年(明治18年)の創立以来125年にわたり、産業界、法曹界、官界等の各界に有為人材
を多数輩出してきました。この伝統と実績をいっそう強化するため、近年ではインターン
シップの拡充、入学時からのキャリア教育の充実、実務家を講師に招いた授業などを推進
しています。
また、2011年度の大学設置基準の一部改正により、学生の就業力育成に向けた大学の組
織的な取り組みが求められるようになったことに伴い、総長・学長のもとに全学的な推進
組織として「就業力育成教育プログラム実行委員会」を設け、建学の理念に根ざした実学
教育に基づく人間育成をいっそう強化するものとしています。
この取り組みを通じて学生の就業力の向上を図り、大学教育の質の保証に向けた高度教
育機関としての社会的期待に応えると共に、中央大学の伝統であるところの各界における
わが国社会と国際社会を牽引する強い意欲、および、各職業分野で通用する高い実践的能
力と専門的知識をもつ「実地応用」の理念を体得した人間のいっそうの輩出を目指してい
ます。また、実業界との連携をいっそう強め、継続的に産業界、法曹界、官界等の各界へ
の意識調査や意見聴取を行い、取り組みの妥当性と効果を常に検証して改善・高度化を図
るものとしています。
なお、2012年5月現在、就業力育成教育プログラム実行委員会は「知性×行動特性」学
修プログラム実行委員会に改称されています。
B.『知性×行動特性』による就業力育成教育プロジェクト
中央大学は、建学の理念「実地応用ノ素ヲ養フ」に基づく実学教育の現代的展開として、
就業力を「知性(専門的知識・技術)」×「行動特性(実地応用する)」と定義したうえで、
就業力を育成するため、関連する授業科目と課外講座・行事を再編成し、実業界との連携
を強めながら総合大学として全学レベルでの体系的な取り組みを推進しています。
78
図4-2
中央大学における就業力育成の取組全体像
① 多様なプロジェクトによる展開
就業力育成に関する特定課題ごとにプロジェクトを設けています。本プロジェクト
は、初年次教育から専門教育までを4つのステップにより体系化した「実地応用力育
成メタプロジェクト」のもとで展開しています。多様なプロジェクトとして「キャリ
ア教育」
「インターンシップ推進」その他多数があり、各々に関連する授業科目と課外
行事を再編成し、体系化した育成・指導を行う仕組みを構築するものとしています。
② 行動特性に注目した自己評価
就業力の評価軸を「知性」および「行動特性」として定め、知性の指標としてGPA
(学業成績の平均値)、行動特性の指標としてはコンピテンシーを用いるものとしてい
ます。学生は多様なプロジェクトを利用した学修の成果をこれら2つの指標によって
測り、就業力向上へ向けての主体的な学生生活の中で両指標の相乗的な伸長を図るも
のとしています。 中央大学は、個々の学生が多様なプロジェクトへの参加記録やコン
ピテンシーの自己評価を自由に入力し知性と行動特性の推移等を自己点検できるIT
ツール C-compass を開発しました。
③ 社会的適合性調査による検証
実業界との連携を強める社会的適合性調査を、定期的に行うものとしています。中
央大学の 125 年にわたる実業界との交流や卒業生とのネットワークを基盤として、学
79
生の卒業時に実業界が求めるコンピテンシーレベルのほか、この取り組み自体の妥当
性や評価等を調査・検証し、実業界との継続的な連携をいっそう強化することを目指
しています。
個々の学生はコンピテンシー自己評価システム C-compass を用いて、半年ごとに自身の
コンピテンシー各項目のレベルを評価します。個々の学生が計画的にコンピテンシーレベ
ルを増強できるように、中央大学は多様なプロジェクトを提供しています。
例えばコンピテンシー大項目「コミュニケーション力」、特に小項目「記述力」
「提案力」
「議論力」を増強したいときは、
「A.キャリア教育プロジェクト(授業科目)」のうち、徹
底的に文章を書くことを通じて自身の進路に合わせた必要な文章力の修得を図る「文章力
養成講座(全学部全学年対象)」を活用します。
これに限らず、任意のコンピテンシー項目を増強するために、どのプロジェクトが活用
できるかは、C-compass に併設した中央大学独自のプロジェクト検索システム C-search を
使って探すことができます。
※ C-search は、社会の変化に合わせたコンピテンシー育成を保証するような正課・課外
資源を大学が提供できているかどうか、組織的に自己点検する具体的な手段を与えて
くれます。
【就業力育成のための多様なプロジェクト】
A.キャリア教育プロジェクト(授業科目)
B.キャリア教育プロジェクト(課外)
C.インターンシップ推進プロジェクト
D.アセスメントプロジェクト
E.学生アドバイザープロジェクト
F.外国人留学生プロジェクト
G.国際力養成プロジェクト
H.理工学部WISEプロジェクト
I.職業養成プロジェクト(公務員)
J.職業養成プロジェクト(教員)
80
第3節
就業力育成のための多様なプロジェクト
A.キャリア教育プロジェクト(授業科目)
1年次より、自らのキャリアデザインについて主体的に考えるための授業科目および課
外講座・行事が体系的に学べるプロジェクトです。授業科目では、全学共通または専門分
野の特性に応じた科目が履修できます。また、課外講座・行事では、自ら課題を選択して
履修することにより、授業科目と連携して、キャリアデザイン、職業観の醸成、およびプ
レゼンテーション技法などの向上を図ります。
【法律専門職養成プログラム(法学部3・4年対象)】
下級年次での学修を基礎とし、実際の判例を素材として、法をより深く理解するための
能力を養成します。
「法学特講」は大学教員が担当し、憲法・民法・刑法・行政法・商法・
民事訴訟法・刑事訴訟法の重要判例を題材としながら、判決文を読むことから始め、判決
の意義・射程・将来の方向性を見定めます。
「法曹特講」は法曹実務家が担当し、演習形式
のもとで、討論や論文作成を通じて、「法学特講」で扱われた問題の理解を深めます。
【法曹論(法学部1年対象)】
弁護士、検察官、裁判官の法曹実務家が、各自の実際の体験を交えた講義を行います。
この講義を通じて、弁護士、検察官、裁判官の活動と役割について深く検討します。
【大学と社会(法学部1年対象)】
高等学校までの学習と大学における学修の違いを認識し、専門科目への学修へ円滑に移
行できるようにします。具体的には、講義の受け方、ノートの取り方、文献の読み方、論
文・レポートの執筆方法といった大学における学びの技法の修得を図ります。また、法学
部における学修が社会に出た際にどのように活かされるかということと、学生にロールモ
デルを示すという観点から、ゲストスピーカーを招き、大学における学問修得と社会の関
係について講義を行います。
【職業・差別・人権(法学部全学年、他学部履修可)】
「職業」という概念の検討と職業観の変遷、職業に関わる価値意識(差別を含む)、
「仕事」
という概念の多義性、勤勉の倫理観の衰退と「良い仕事」という概念、
「労働」という概念
の検討、労働とジェンダーの問題、現代社会における労働および労働者に関するデータと
その分析、などを取り上げ、「職業」については哲学の視点から、「仕事」については倫理
学の視点から、
「労働」については社会学の視点からアプローチし、その知識と理解を深め
ます。
81
【自治型社会の課題(法学部1・2年対象、他学部履修可)】
地方分権社会の推進、市民活動の充実・発展を背景に、自治体および地域社会に対して
市民が新たな期待を寄せつつある現状を踏まえ、これまでの都市政策、公共政策の枠組み
をわかりやすく組み替え、課題の解決に向けて市民・事業者、自治体・行政が実践すべき
政策を提示します。前期は自治制度と各分野の概観を、後期は現代的課題の掘り下げを中
心に講義します。講義を通じて、地域に顕在化する現実の課題に関心をもち、都市問題の
発見と解決方法を主体的に考えることを目的としています。
【現代新聞論(法学部1・2年対象、他学部履修可)】
生きたジャーナリズムの現場、その仕事、直面している課題、役割と意味、将来の展望
などを理解し、講師たちの視点や問題意識を知ることにより、現代メディア状況、社会、
世界への関心と理解を深めます。
【公共政策の最前線(法学部3・4年対象、他学部履修可)】
国の政策や組織運営を中心として、日本の公共政策の内容、課題、形成過程等について、
行政現場の実態に即して学びます。また、主要省庁がどのような政策や取り組みを行って
いるかについて概観するため、各省庁の第一線で活躍している公務員、政策決定にあたる
政治家、国家スタッフ等をゲストスピーカーに招いた講義も行います。
【キャリアデザイン(経済学部1年対象、他学部履修可)】
大学での学修の意義、社会において働くことの重要性などを認識し、広い意味でのキャ
リアデザインへの取り組みを通じて、大学の初期段階で目的意識をもった学生生活が送れ
るようにすることを目指します。
「働く」ために必要な資質修得の契機として、社会のさま
ざまな分野で職業のプロフェッショナルとして活躍されている方々をゲスト講師として招
き、授業の中で、生きることの意味、働くことの意味について講演を行います。
【総合講座(起業家入門2)(商学部全学年対象、他学部履修可)】
起業に関心がある、または、将来起業をしたいと考えている学生を対象とした入門講座
です。実際に起業をした方、起業を支援している方を講師として招き、起業について深く
考え、必要とされる知識やスキル、意識等の修得を図ると共に、起業を考える中で新しい
視野を開いていくことを目標としています。
【総合講座(働くこと入門4)(商学部全学年対象、他学部履修可)】
「働くこと」について深く考え、視野を拡げることにより、学生生活における目的をもっ
た活動や行動のきっかけをつくることを目標としています。さまざまな分野(業界)で活
躍をしている企業役員等を外部講師として招き、各業界の現状やこれまで仕事に携わって
きた中で培ってきたことなどについて講義を行います。
【アカウンタント・プログラム(商学部2~4年対象)】
公認会計士・税理士・国税専門官などを目指す学生を対象とした講座です。会計学関係、
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民法・商法関係、税法関係、経済学関係および総合演習(答案練習)を通じて、アカウン
ティングの全般的な理解を図ります。
【ビジネス・コミュニケーション・プログラム(商学部2~4年対象)】
ビジネス英語の修得などを目指す学生を対象とした講座です。ビジネス英語関連および
マーケティング関連の講義・演習を通じて、グローバルコミュニケーションも含めたビジ
ネス場面におけるコミュニケーションスキルの理解とその実践力向上を図ります。
【ビジネス・イノベーション・プログラム(商学部2~4年対象)】
情報化社会における、ITを活用した経営革新や、経営企画スタッフを目指す学生を対象
とした講座です。情報技術分野と情報活用分野において、技術分野では「情報ネットワー
ク論」や「ビジネス・プレゼンテーション」等、活用分野では「eコマース論」や「ベン
チャービジネス論」、「ITと組織開発」等を通じて、知識・理解の向上を図ります。
【金融スペシャリスト・プログラム(商学部全学年対象)】
金融の専門職業人を目指す学生を対象とした講座です。ファイナンシャル・プランナー
や証券アナリストなどを目指すために必要とされる実践的学習(企業の財務分析や資産運
用で有用となる金融の専門知識等)を通じて、知識・理解の向上を図ります。
【科学技術と倫理(理工学部1年対象)】
キャリア教育科目として、理工学部全学科の1年生を対象として実施しており、理工学
を学ぶ人々が社会で活躍していくために必要な倫理観を学修していく科目です。環境・情
報・技術・医療・法律等現代社会のさまざまな分野で活躍している講師による講義を通じ
て、生涯を通じて継続的に成長していくための具体的な方法論や社会的知識を身に付ける
ことを目標としています。
【産業キャリア教育プログラム(理工学部全学年対象)】
授業科目として1年次に「情報メディア産業技術論1」「情報メディア産業演習1」、2
年次に「情報メディア産業技術論2」「情報メディア産業演習2」、3年次に「情報メディ
ア産業技術論3」「情報メディア産業演習3」、さらに4年次に「産業技術研修」を開講し
ています。これらの科目は、産業界から第一線で活躍する実務家を講師に招き、産業界で
の研究開発、新製品開発の方法論について実例から体系的に学べる機会です。
【キャリアデザイン(1)(文学部1・2年対象、他学部履修可)】
新聞記者・弁護士・NHKプロデューサー・公務員・中小企業社長等を外部講師として招
き、社会人としてのあり方やそれぞれの業界の実情、職業の特性について講義を行います。
卒業後の人生について深く考える機会を提供すると共に、学生生活における目的をもった
活動や行動のきっかけをつくることを目標としています。
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【キャリアデザイン(2)(文学部1・2年対象、他学部履修可)】
キャリア形成支援を専門とする外部講師を招いて、ワークショップ形式による討論を中
心としたキャリア講座を行います。将来に向けての明確なキャリアデザインを描き、自ら
行動を起こせるようになることを到達目標としています。
【研究基礎(1)(文学部1年対象)】
さまざまな異なる専門分野の教員・外部講師による、学びの技法の修得を図るための講
義を行います。新聞の読み説き方、レポートの書き方などさまざまな視点から大学生活を
始め、社会で働くために必要な知識や考え方を身に付けることを目標としています。
【研究基礎(2)(文学部1年対象)】
「メディア・情報リテラシー」と題した専攻横断的な講義形式の授業から、少人数による
ワークショップ形式によるディベートやプレゼンテーション能力を向上させる授業など4
種類の授業を通じて、大学の教育・研究に必要な基礎能力から現代社会において必要不可
欠な幅広い視野や能力を身に付けることを目標としています。
【プロジェクト科目(1)(文学部2~4年対象)】
社会学専攻の専任教員を中心とした講師による、少人数による講義と演習を行います。
ワーク・ライフ・バランスなど、卒業後にも重要となる男女の関係性についてジェンダー
という視点から考え、理解を深めることを目標としています。
【プロジェクト科目(2)(文学部2~4年対象)】
中央大学に関係の深い多摩地域の歴史について学ぶ講座です。政治や経済の変遷、社会
のあり方に関する歴史的な理解を自ら主体的に行動し、深めることを目的としています。
【キャリア・デザイン・ワークショップ(経済学部・商学部・文学部・総合政策学部1年対象)】
グループワーク中心の随意科目として実施しており、キャリア形成に必要な「社会人基
礎力(「前に踏み出す力(アクション)」
「考え抜く力(シンキング)」
「チームで働く力(チー
ムワーク)」)の向上をはかると共に、自らのコンピテンシーを発見することができる講義
内容となっています。グループワーク等を通じて、学生生活において身に付けておく重要
な「コミュニケーション能力」「プレゼンテーション能力」「問題解決能力」などのコンピ
テンシーの向上を目指すと共に、自らが得意とする能力の存在に気づくことを目標として
います。
【特殊講義(ビジネス・コミュニケーションⅠ)(総合政策学部2年対象)】
社会人としての活動に必要な基本的なマナーやコミュニケーション能力を習得し、ビジ
ネスにおけるプランニング策定の基礎を修得することを目標としています。社会人として
要求される身だしなみやマナー、コミュニケーション能力の基本を身に付けるために、ビ
ジネスの場のみならず社会生活の上で必ず必要とされる冠婚葬祭を事例として、社会生活
に必要な基礎知識の基本を学び、その上で、ビジネスにおける企画策定の基本について理
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解を深めます。また、単位取得者のうち希望者についてはビジネス・インターンシップ(国
内)を実施し、さらに事前学習としてマナー講習を行うことにより実践の場を通じてその
修得度を高めます。
【文章力養成講座(全学部全学年対象)】
徹底的に文章を書くことを通じて、自身の進路に合わせた必要な文章力の修得を図りま
す。
B.キャリア教育プロジェクト(課外)
1年次より、自らのキャリアデザインについて主体的に考えるための授業科目および課
外講座・行事を体系的に学べるプロジェクトです。授業科目では、全学共通または専門分
野の特性に応じた科目が履修できます。また、課外講座・行事では、自ら課題を選択して
履修することにより、授業科目と連携して、キャリアデザインや、職業観の醸成、および
プレゼンテーション技法などの向上を図ります。
【キャリアデザイン・ノート(全学部全学年対象)】
2003 年度より、キャリアデザインの考え方、大学生活での目的意識づくり、職業観・勤
労観の形成を目的に編集したノートを、新入生の入学時および3年次の進路・就職ガイダ
ンスにおいて配布しています。ノートは大まかには「キャリアデザインに関する記事」と「演
習用の Note」から構成されており、自身の将来をイメージすることにより、大学生活を充
実させるための方法についての情報やヒント、および、演習を掲載しています。また、関
連する授業科目や課外講座等において、学生生活全体を通じた就業力向上へのノートとし
ても利用しています。
【キャリア講演会(全学部全学年対象)】
キャリアセンターが主催する講演会であり、キャリアに関する幅広い課題(仕事・業界・
職種・労働契約・OB訪問等)について、その分野に精通する社会人をお招きし実施して
います。講演会を通じて、キャリアに関する幅広い情報収集をしたり、さまざまな経歴の
社会人の考え方を聞くことができる機会を提供しています。
【ビジネス体感ワークショップ(全学部全学年対象)】
キャリアセンターが主催する、実際のワークを体感するセミナーです。商社・メーカー
等の企業の方を講師に迎え、実際の仕事を仮想的に体感することにより、仕事への関心や
業界への理解を深めたり、仕事の楽しさや適性を探ることができる機会を提供しています。
【能力開発講座(コミュニケーション)(全学部全学年対象)】
キャリアセンターが主催する一日講座であり、コミュニケーション力やプレゼンテー
ション力などの課題について、ワークショップ形式で実践を重ねながら学べます。この講
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座をきっかけに、自身の得意な能力や伸ばしていきたい能力について考え、学修につなげ
ることができます。
【能力開発講座(プレゼン・グループディスカッション)(全学部全学年対象)】
キャリアセンターが主催する一日講座であり、プレゼンテーション力やディスカッショ
ン力などの課題について、ワークショップ形式で実践を重ねながら学べます。この講座を
きっかけに、自身の得意な能力や伸ばしていきたい能力について考え、学修につなげるこ
とができます。
【能力開発講座(問題解決・発想)(全学部全学年対象)】
キャリアセンターが主催する一日講座であり、問題解決力、発想力等の課題について、
ワークショップ形式で実践を重ねながら学べます。この講座をきっかけに、自身の得意な
能力や伸ばしていきたい能力について考え、学修につなげることができます。
【自己理解セミナー(全学部全学年対象)】
キャリアセンターが主催する講座であり、「キャリアデザイン・ノート」を教材として、
自身の強みや弱み、価値観、能力について、ワークショップ形式で行う自己分析の講座で
す。自身を振り返ることにより、次への行動計画を考える機会を提供しています。
【薬物乱用防止講演会(全学部全学年対象)】
学生部が主催する一日講演です。「なぜ薬物は一度でも使用すると乱用につながるのか」
という問題に対して、専門家が大脳生理学の観点から解説を行います。講演および講演に
基づく自己理解を通じて自己防衛能力を高め、種々の誘惑や勧誘から自身を守り、幸せな
学生および社会生活を営む能力・行動力を養います。
【カルトに関する講演会(全学部全学年対象)】
学生部が主催する一日講演です。反社会的な活動を行う宗教団体の巧妙な勧誘等に対し
て、専門家が解説を行います。講演および講演を踏まえた自己理解を通じて、自己防衛能
力を高め、種々の誘惑や勧誘から自身を守り、幸せな学生および社会生活を営む能力・行
動力を養います。
【学生相談室春季セミナー(全学部全学年対象)】
学生部が主催する、グループワークを中心とした実践形式のセミナーです。グループワー
クでは、少人数のグループで課題となる実習を遂行し、実習を通じて協調性やコンセンサ
スの得方、リーダーシップ力などを学びます。また、体験を通じて、自己理解、他者理解
を高め、他者との関係のあり方について改めて考える機会を得られると共に、新たなコミュ
ニティーづくりの機会にもなります。
【草のみどり(全学部全学年対象)】
自己理解および表現力向上を目的として、父母向け雑誌「草のみどり」への投稿を行い
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ます。ゼミ活動、留学、各種フィールドワーク、学会発表など大学生活において実践した
ことを文章としてまとめ、
「他人に読んでもらう」ために必要な内容構成力、文章力等につ
いての修得を図ります。
【総政キャリアカフェ(総合政策学部全学年対象)】
総合政策学部同窓会が主催します。卒業生との交流を通じて、学生生活および卒業後に
関するさまざまな助言を卒業生から受けることができる機会です。就職相談はもとより、
結婚、子育てなどについても直接助言が受けられ、機会を通じて視野識見を広げ、学生生
活における目的をもった活動や行動のきっかけをつくることが目標です。
C.インターンシップ推進プロジェクト
授業科目や課外行事でインターンシップに参加する学生が、より実習の効果を上げられ
るよう、体系立てたプログラムや研修等を提供するプロジェクトです。
【インターンシップ
国際(法学部2~4年対象)】
就業体験の事前および事後の学修です。広い意味での外交・国際(行為主体は国際機関
や政府機関に限定されない)について、外部のゲストスピーカーを含めた講義により俯瞰
図を獲得しつつ、あわせてインターン実習に向けて準備を進めます。また、実際にインター
ンを経験した後、それを深化、客観化させていくためのプレゼンテーション、および、いっ
そうの研究調査・討論を行い、また、最後に報告書をまとめ説明会を実施することにより、
経験を共有化します。
【インターンシップ
行政(法学部2~4年対象)】
就業体験の事前および事後の学修です。実務家教員のもとで、毎回、自治体で問題となっ
ている課題・事例を取り上げ、その原因や解決策を考え、発表するワークショップ(グルー
プ演習)を行います。これにより、自治体行政の現実や課題を理解すると共に、実務で求
められる課題分析能力やコミュニケーション能力の養成を図ります。インターンシップ終
了後、各自の経験について報告書をまとめます。
【インターンシップ
NPO・NGO(法学部2~4年対象)】
就業体験の事前および事後の学修です。特定非営利活動促進法が制定されて、NPO・N
GOは新しい社会システムの担い手としてますます注目を浴びるようになっています。ゲ
ストスピーカーによる講義・討論・ワークショップを経た後、実際にNPO・NGOに参加
し、自身で行動することを通じてNPO・NGOの社会的意義を考えます。インターンシッ
プ終了後、各自の経験について報告書をまとめ、発表を行います。
【インターンシップ
法務(法学部2~4年対象)】
就業体験の事前および事後の学修です。インターンシップを通じて弁護士等の法律家が
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実際にどのような仕事をしているのかを知り、将来法律家を目指す学生の社会的関心と学
習意欲の向上を図ります。弁護士の職業倫理・リーガルカウンセリングのほか、弁護士が
紛争解決に当たってどのような考え方をするのか、どのような点を大切にしているのか等
を学生に伝えると共に、大学でのアカデミックな研究が法律実務にどのように活用される
のかを検討します。また、インターンシップを体験した後、公開の報告会を実施し、各自
の体験を報告・発表を行います。
【インターンシップ
自治体分野(経済学部3年以上対象、他学部履修可)】
就業体験の事前および事後の学修です。自治体行政の制度や仕組みを学び、自治体の仕
事を実際に体験する「市区役所」系と、首都東京の政策の現状と課題を学び、質の高い都
市づくりにどう対応していくべきかを調査研究する「都市研究ゼミ」系があります。東京
都職員OBをはじめとする実務専門家を講師に招き、地域社会の重要な課題である、環境、
都市づくり、危機管理、国際化、福祉などの具体的な問題を取り上げて学修します。実習
先は、東京都市・区役所および東京都関連施設です。
【インターンシップ
民間企業分野(経済学部3年以上対象、他学部履修可)】
就業体験の事前および事後の学修です。 企業における一般的な組織体制と、業務の進め
方を学習し、将来、企業などの組織において自身の力を発揮できるよう、ビジネスマナー
も含めた社会人基礎力の修得を図ります。実習はおもに情報系の民間企業で行い、実習先
企業の主要業務に触れることのみならず、情報処理に関する知識や技術、そして、ビジネ
ス文書やプレゼンテーション資料作成のスキルを実務環境の中で実践的に修得します。
【インターンシップ
金融分野
金融エコノミストコース(経済学部3年以上対象、他学部
履修可)】
就業体験の事前および事後の学修です。 金融ビジネスは、あらゆる分野の世界経済と密
接に結びついています。現役のファンドマネージャーを講師に招き、金融経済の仕組みと
現状、そして金融政策がもたらす社会への影響力について学修します。資産運用会社で行
う実習では、金融ビジネスに関わる上で必要な実務能力を養うと共に、社会人として役立
つ思考法の修得を図ります。
【インターンシップ
金融分野
金融アナリストコース(経済学部3年以上対象、他学部履
修可)】
資本市場の高度化やグローバル化に伴い、アナリストの活躍の場は急速に拡大していま
す。現役で活躍するアナリストを講師に招き、アナリストの基本である戦略的思考を身に
付け、自らが実習を行う企業における金融的見地からの企業分析、企業価値評価、企業戦
略について学修します。
【インターンシップ
シンクタンク分野(経済学部3年以上対象、他学部履修可)】
就業体験の事前および事後の学修です。 シンクタンクとは、さまざまな領域の専門家を
集めて、企業や自治体、ときには国家の政策決定などに関わる高度な問題を調査・研究す
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る機関です。 第一線で活躍する現役の研究員を講師に招き、シンクタンクの社会的意義と
役割について学び、シンクタンク会社での実習では社会における政策立案・決定・検証の
過程について学修します。
【インターンシップ
ジャーナリスト分野(経済学部3年以上対象、他学部履修可)】
就業体験の事前および事後の学修です。
「新聞社」
「テレビ局」
「ラジオ局・地方テレビ局」
「通信社」コースから選択します。 現場で活躍する実務家を講師として招き、
「ジャーナリ
ズムとは何か」
「ジャーナリストに求められる資質とは何か」を考え、世界の動きや最新の
ニュースを分析しながらジャーナリズムに関する知識を深めます。新聞社、テレビ局、ラ
ジオ局、通信社等で行う実習では、現場の臨場感を体得し、政治・外交・経済・事件をマ
スコミがどのように報道しているかを分析し、ジャーナリストとして必要な能力の養成を
目指します。
【インターンシップ入門(商学部1・2年対象)】
企業より求められる問題分析力、対人感受性、対面影響力等の能力や、社会の仕組みビ
ジネスマナー、健康管理等に関する知識を修得するため、企業における人事や教育、健康
管理、法律、企業インターンシップ等について詳しい外部講師を招き講義を行います。
【インターンシップ実習(商学部2・3年対象)】
自身のキャリア形成を考え、企業等が求めている仕事への取組みの姿勢、コミュニケー
ション能力、論理的思考能力、ビジネスマナー等を理解しそれを身に付けることを目的に、
インターンシップ入門での理解を前提に大学が指定する企業にてインターンシップを行い
ます。
【パブリック・インターンシップ(総合政策学部対象)】
政治・行政の生きた本当の姿・仕組みを学ぶため、政治・行政等各分野で活躍している
方(国会議員、前副知事、市長、中央省庁現役・OB、経済界、労働界、学界、マスコミ
等)の講演を行います。それぞれの講師の思想や行動等を知ることにより、知識を深める
と共に、自らの目標や行動へとつなげていくことを目的としています。
【国際インターンシップⅠ・Ⅱ(総合政策学部対象)】
「国際インターンシップⅠでは6ヶ月間、国際インターンシップⅡでは1年間、インター
ンシップ生として海外で実習を行います。受け入れ先の開拓、受け入れに当たっての交渉
から、諸手続きまですべて学生自身で行い、実習だけでなく実習に至るまでの活動も含め
て、自ら立てた目標達成を目指した行動の立案とその実践力の向上を図ります。
【アカデミックインターンシップ(理工学部のうち4学科2~3年対象)】
経営システム工学科、精密機械工学科、都市環境学科、生命科学科の4学科が、専門教
育科目の選択科目として実施しています。「学科での学修内容が実際の場面でどう役立つ
か」「社会に出るまでに何を身に付けるべきか」「社会に出て何をなすべきか」などを、社
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会での就業体験を通じて修得を目指します。
【キャリアデザイン・インターンシップ(実習型)(全学部全学年対象)】
企業や行政機関において取り組む就業体験です。特に実習型においては、実際に職場で
業務に携わり、現場の社員と共に仕事に従事することにより、社会において必要な能力に
気づくと共に、自身の能力を試すことができます。また、将来の職業選択を考えられる良
い機会にもなります。
【キャリアデザイン・インターンシップ(グループワーク型)(全学部全学年対象)】
企業や行政機関において取り組む就業体験です。特にグループワーク型においては、実
際のビジネスの場と同じような課題に対して、グループワークにて解決方法を探り、また
自分たちで出した議論や回答に対して、企業がフィードバックを行います。実習を通じて、
仕事で必要な問題解決の方法や能力に気づくきっかけを得ることができ、また将来の職業
選択を考えることができる良い機会にもなります。
【授業科目「学部共通インターンシップ」(経済学部・商学部・総合政策学部2年対象)】
2010 年度より、各学部が専門分野に適した業界を対象として独自に開講しているイン
ターンシップ科目に加え、全学共通科目としてもインターンシップ科目を開講しています。
この科目では、ビジネスマナーや実習先での情報守秘などの事前研修、および、実習の振
り返りや学修・学生生活の目的意識づくりへの活用を図る事後研修も行います。受講学生
は「事前研修→実習→事後研修」という一連のインターンシップ体験を通じ、職業意識の
飛躍的な向上を目指します。
【キャリアデザイン・インターンシップ事前研修(全学部全学年対象)】
インターンシップ参加が決まった学生を対象に実施している研修です。講義・実技・グ
ループワーク等を通じて、インターンシップに対する目的意識の向上・目標の設定等の動
機付けや、ビジネスマナーの修得を図ることを目的としています。
【キャリアデザイン・インターンシップ事後研修(全学部全学年対象)】
インターンシップに参加した学生を対象に実施している研修です。体験報告会を通じて、
経験を振り返り、整理することにより、実習したことを今後の学生生活の新たな目標へと
結び付けていきます。
【キャリアデザイン・インターンシップ関連の課外行事(全学部全学年対象)】
キャリアセンターが主催している課外行事です。インターンシップに参加する意義・目
的等を知る機会の提供として、各種ガイダンス、過去の参加学生の体験談報告会等を実施
しています。
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D.アセスメントプロジェクト
進路意識やコンピテンシー等を客観的に測定し、定点観測を行うアセスメントを実施す
るプロジェクトです。フォローアップ・ガイダンスでアセスメント結果を解説し、キャリ
アデザインへの気づきを図り、大学生活の目的意識の形成と向上を目指します。
【自己発見レポートⅠ(全学年1年対象)】
1年生を対象に、進路意識、職業関心、想定進路、コンピテンシー等を診断項目とした
自己診断ツールを実施しています。あわせてフォローアップ・ガイダンスを行い、診断結
果のフィードバックと解説を行います。この取り組みを通じて、これからの学生生活にお
ける目標を明確化し、それを実現するための計画を立てることを促します。
【自己発見レポートⅡ(全学部2年対象)】
2年生を対象に、1年次で実施した「自己発見レポートⅠ」と連動した自己診断ツール
を実施しています。
「自己発見レポートⅠ」と同様に、進路意識、職業関心、想定進路、コ
ンピテンシー等を診断項目として行い、フォローアップ・ガイダンスも実施しています。
このガイダンスを通じ、入学後1年間の各指標の伸長度を確認し、大学生活における目標
設定の確認と再設定、体系的な学修計画の見直し等を促します。
E.学生アドバイザープロジェクト
上級生が下級生に対して指導・助言を行う取り組みを通じて、受ける側の理解向上を図
ると共に、行う側が指導・助言を通じて目標設定・提案力等さまざまな能力の向上を図る
プロジェクトです。
【クラスミーティング(SA活動)(総合政策学部2年対象)】
2年生がSA(スチューデント・アドバイザー)となって新入生クラスミーティングを企
画し、新入生の交流を促します。ミーティング内容の立案・運営を通じて、計画実行力・
検証力を高めると共に、クラス全体を取りまとめるための統率力やコミュニケーション力
等の向上を図ります。
【CREW活動(理工学部4年対象)】
就職先の確定した内定者が、自らの学生生活や就職活動の経験を生かして、後輩たちの
進路選択をサポートする取り組みを行っています。具体的には、就職支援イベントの企画・
運営や個別相談の対応等を実施し、後輩の就職活動の支援を行います。イベント内容の立
案・運営や相談対応を通じて、計画実行力・実行力やコミュニケーション力等の向上を図
ります。
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F.外国人留学生プロジェクト
情報提供や相談を通じて快適かつ安全に充実した大学生活を過ごすための情報・助言が
得られると共に、学生生活における目標設定やいっそうの充実に向けたきっかけづくりに
するプロジェクトです。
【外国人留学生ガイダンス(全学部全学年対象)】
一年に一回、多摩と後楽園で実施しています。新入生・学部生と、研究科生とに分け、
それぞれに対して説明を行っています。研究科生に対しては奨学金選考のための筆記試験
を実施し、選考基準の基礎資料としています。
【個別相談(全学部全学年対象)】
大学生活を快適かつ安全に過ごすため、国際交流センター職員が個別相談にのります。
学業、就職、留学、学費等の学生生活を通じて生じ得るあらゆる相談を通じて、自身の目
標に向けた助言を得たり、疑問や不安点の解消が図れます。
G.国際力養成プロジェクト
留学や実践型プログラムを通じて国際感覚を養うと共に、情報収集や相談を通じて、快
適かつ安全に充実した大学生活を過ごすための情報・助言が得られるプロジェクトです。
【留学フェア(Study-Abroad Fair)(全学部全学年対象)】
国際交流センターが主催であり、春と秋の2回、留学に意識や関心を寄せている学生に
対して行うイベントです。中央大学の留学制度、留学エージェントによる留学・国際ボラ
ンティアの紹介、またはTOEFL、IELTSなどの試験紹介、さらに留学後の就職問
題に対する相談等を実施しています。イベントを通じて留学に関する理解・知識を深め、
具体的な行動を起こす目標設定へとつなげていきます。
【個別相談(全学部全学年対象)】
大学生活を快適かつ安全に過ごすため、国際交流センター職員が個別相談にのります。
学業、就職、留学、学費等の学生生活を通じて生じ得るあらゆる相談を通じて、自身の目
標に向けた助言を得たり、疑問や不安点の解消を図ります。
【派遣オリエンテーション(全学部留学決定者対象)】
国際交流センターが主催であり、留学決定者に対して実施する研修です。おもな内容は、
留学における事務手続き、帰国後の就職活動の方法、留学の心構えや、安全管理・異文化
適応の講義などを行います。注意事項を徹底し安全管理への意識を最大限に高めると共に、
目標設定の最終的な確認の場です。
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H.理工学部WISEプロジェクト
WISEという名称は、Women in Science and Engineering に因みます。理工学部で取り
組んでいる、女性研究者・技術者を目指す女子学生へのキャリアモデルの提供を中心とし
たプロジェクトです。
【女性研究者・技術者育成関連の課外行事の拡充(理工学部全学年対象)】
理工学部は、女性研究者・技術者育成に向け、女子新入生と女子学生との交流会、女性
技術者による講演会、女性技術者が活躍する会社見学会等の課外行事を行い、女子学生が
女性研究者・技術者へのキャリアデザインを考える機会を設けています。理工学部関連の
学生支援部門との連携を強めて各種行事の充実を図っています。
I.職業養成プロジェクト(公務員)
職業選択の一つとして公務員を考えている学生に向けて、さまざまなガイダンスや勉強
会等を実施するプロジェクトです。主体的に参加し計画的に取り組むことにより、公務員
への理解を深め知識を獲得すると共に自己研鑽に励むことができ、その過程を通じて公務
員としての就業に向けた能力向上を図ります。
【自治型社会の課題(法学部1・2年対象、他学部履修可)】
地方分権社会の推進、市民活動の充実・発展を背景に、自治体および地域社会に対して
市民が新たな期待を寄せつつある現状を踏まえ、これまでの都市政策、公共政策の枠組み
をわかりやすく組み替え、課題の解決に向けて市民・事業者、自治体・行政が実践すべき
政策を提示します。前期は自治制度と各分野の概観を、後期は現代的課題の掘り下げを中
心に講義します。講義を通じて、地域に顕在化する現実の課題に関心をもち、都市問題の
発見と解決方法を主体的に考えることを目的としています。
【公共政策の最前線(法学部3・4年対象、他学部履修可)】
国の政策や組織運営を中心として、日本の公共政策の内容、課題、形成過程等について、
行政現場の実態に即して学びます。また、主要省庁がどのような政策や取り組みを行って
いるかについて概観するため、各省庁の第一線で活躍している公務員、政策決定にあたる
政治家、国家スタッフ等をゲストスピーカーに招いた講義も行います。
【インターンシップ
行政(法学部2~4年対象)】
就業体験の事前および事後の学修です。実務家教員のもとで、毎回、自治体で問題となっ
ている課題・事例を取り上げ、その原因や解決策を考え、発表するワークショップ(グルー
プ演習)を行います。これにより、自治体行政の現実や課題を理解すると共に、実務で求
められる課題分析能力やコミュニケーション能力の養成を図ります。インターンシップ終
了後、各自の経験について報告書をまとめます。
93
【インターンシップ
自治体分野(経済学部3年以上対象、他学部履修可)】
就業体験の事前および事後の学修です。自治体行政の制度や仕組みを学び、自治体の仕
事を実際に体験する「市区役所」系と、首都東京の政策の現状と課題を学び、質の高い都
市づくりにどう対応していくべきかを調査研究する「都市研究ゼミ」系があります。 東京
都職員OBをはじめとする実務専門家を講師に招き、地域社会の重要な課題である、環境、
都市づくり、危機管理、国際化、福祉などの具体的な問題を取り上げて学修します。実習
先は、東京都市・区役所および東京都関連施設です。
【冊子「公務員を目指そう」(全学部全学年対象)】
この冊子は、公務員として活躍している先輩の体験談や公務員を目指すための大学の支
援体制等について掲載しています。この冊子を利用して、先輩の足跡をたどり大学の資源
を最大限に活用できます。
【行政インターンシップ(全学部全学年対象)】
行政機関において取り組む就業体験です。法学部・経済学部・理工学部で実施している
アカデミックインターンシップのほか、キャリアセンターで実施しているキャリアデザイ
ン・インターンシッププログラムとして、行政機関でのインターンシップができます。多
くの官公庁や自治体で就業体験ができますので、将来の職業選択を考える良い機会になり
ます。
【炎の塔多摩研究室(文系学部全学年対象)】
公務員を目指す学部学生のための勉学の環境です。勉強することとあわせて、同じ進路
を目指す仲間づくりができます。
【公務員入門ガイダンス(文系学部おもに低学年対象)】
キャリアセンター主催(公務員予備校協賛)による低学年を対象とした公務員を志す学
生向けのガイダンスです。公務員の種類・仕事、試験準備に必要なことなどをわかりやす
く説明します。このガイダンスを通じて、公務員に関する仕事への関心や理解を深めたり、
試験準備のための行動計画が立てられます。
【公務員試験制度・業務説明会(全学部全学年対象)】
キャリアセンター主催であり、春期・秋期に省庁・地方公共団体・国立大学法人の採用
担当者を招いて、採用試験の実施状況と業務内容の魅力について説明します。卒業生が来
訪する場合もあり、公務員の職業イメージが醸成できます。
【内定者体験報告会(文系学部3年対象)】
キャリアセンター主催であり、国家公務員Ⅰ種・Ⅱ種・地方上級の内定者による報告会
です。おもに受験予定者を対象とし、個別相談も行っています。自身の目標と現状との差
を把握し、次の行動への計画につながります。
94
【公務員試験突破の大戦略(文系学部3年対象)】
行政研究会主催(キャリアセンター後援)であり、国家公務員Ⅰ種・Ⅱ種・地方上級の
内定者によるパネル討論を実施しています。内定者の生の声を聞くことによって、公務員
イメージが醸成できる機会です。
【国Ⅰ OB・OG指導・相談会(全学部全学年対象)】
キャリアセンター主催であり、国家公務員Ⅰ種に関心のある学生向けの現職の中央大学
OB・OGと内定者による勉強会です。指導・相談会では、仕事の魅力、現況方法などの質
問・疑問に答えます。また、模擬官庁訪問では、模擬面接を実施しています。
【地方公務員OB・OGガイダンス(文系学部3年対象)】
キャリアセンター主催であり、中央大学OB・OGによる講義形式のガイダンス、および、
面接試験対策として模擬面接を実施しています。二次試験直前対策として、コミュニケー
ション力・自己実現力が向上します。東京都庁、神奈川県、埼玉県、千葉県、特別区受験
者に最適のガイダンスです。
【内定者による国Ⅰ・国Ⅱ・地方上級試験 勉強会(全学部全学年対象)】
キャリアセンター主催であり、内定者がチューターとなって、面接・グループ討論・官
庁訪問の対策を行います。公務員を目指す学生に最も近い存在の内定者から最新の公務員
受験対策を学びとれる勉強会です。仲間づくりの場としても最適な機会です。
【国Ⅰ 人事院面接対策セミナー(全学部4年対象)】
キャリアセンター主催であり、国家公務員Ⅰ種一次試験合格者(文系・理系不問)を対
象に、講師により面接の実践練習を行います。受講者は自身の弱点や強みを認識し、自己
研鑽のヒントが得られます。
【国Ⅰ 官庁訪問対策セミナー(文系学部4年対象)】
キャリアセンター主催であり、国家公務員Ⅰ種試験最終合格者(文系)を対象に、予備
校講師により、各官庁が面接を通じて評価する事柄や着眼点を踏まえた面接実践を行いま
す。受講者は自身の弱点や強みを認識し、自己研鑽のヒントが得られます。
【公務員模擬面接セミナー(文系学部4年対象)】
キャリアセンター主催であり、地方公務員に関心のある学生を対象に、実践的な模擬面
接練習を行います。面接のプロによる講義形式の面接試験対策と模擬面接を中心とした少
人数のセミナーであり、コミュニケーション力や自己表現力が身に付きます。
【公務員講座(全学部1・2年対象)】
キャリアセンター主催(公務員予備校
協賛)の試験対策講座であり、公務員に関心の
ある学生に対し、独習では得られない知識・スキルを提供し、次の段階の学習に結びつけ
る行動計画や目標設定ができる機会を提供しています。初学者にも理解できる講義を中心
95
として基礎学力を養成します。
J.職業養成プロジェクト(教員)
教員を職業選択の一つとして考えている学生に向けて、さまざまなガイダンスや勉強会
等を実施するプロジェクトです。これらに主体的に参加し計画的に取り組むことにより、
教員への理解を深め知識を獲得すると共に自己研鑽に励むことができ、その過程を通じて
教員免許状の取得および教員としての就業に向けた能力向上を図ります。
【教職課程(全学部2年以上対象)】
教員になるには、教職課程で必要単位を履修し教育職員免許を取得しなければなりませ
ん。教職に関する科目では、単に必要単位を修得するだけでなく、教員に必要なさまざま
な事例を知り模擬体験ができます。また、介護等体験実習や教育実習では、現場での経験
に基づき教育の現状や適性について考えることができます。
【冊子「教員を志す君へ」(全学部全学年対象)】
教員を進路選択の一つとして考えたときに、最初に知っておくべき情報が掲載されてい
る冊子です。教員になるまでの過程、教員になるために必要な具体的取り組み、および先
輩の体験談です。行うべきことを理解し、今後の学生生活の過ごし方を計画する際に役立
てられます。
【学校ボランティア(全学部全学年対象)】
実際の学校現場を早い段階で体験することにより、教員を目指す動機を高めたり、自己
の適性を確認できます。また、教育の現場で起こるさまざまな事例に対し自身の考えを深
めることにより、目指す教員像をイメージできます。
【教育関係アルバイト(全学部全学年対象)】
教員を志す人は、アルバイトをするなら教育に関するものを探すのが適切です。学校内
外の教育を取り巻く環境を知ると共に、自身がどのように教育に関わりたいのかを考える
きっかけになります。
【教育関係インターンシップ(全学部全学年対象)】
さまざまな視点から、教育について考えることが大切です。文部科学省や地方自治体の
インターンシップに参加することにより、行政の観点から教育を考えることができます。
また、民間企業のインターンシップやアルバイトを通じて、社会の観点から教育を考える
こともできます。
96
【教職採用試験ガイダンス(全学部全学年対象)】
教職経験者による講演や採用試験合格者による個別相談会を通じて、教職の魅力を知る
と同時に、教員になるためにはどのような能力が求められているかについて、具体的な経
験に基づく話が聞けます。
【教職講座(文系学部全学年対象)】
教員採用試験に向けて、具体的な筆記試験対策を実施しています。
【教員採用試験模擬試験(全学部4年対象)】
教員採用試験が近づいてきたら、模試の受験を通し、自身の実力レベルを確認します。
全国の受験者の中で自身がどのレベルにいるか知ることにより、具体的な対策を計画しま
す。
【論文試験対策講座(全学部3年以上対象)】
教員採用試験では、論文・面接を通じて、教員としての適性や熱意が問われます。論文
において、教育に対する自身の考えをどのように伝えるか、講座を受講することにより見
えてきます。
【面接試験対策講座(全学部3年以上対象)】
教員採用試験では、論文・面接を通じて、教員としての適性や熱意が問われます。面接
においては、教育に対する自身の考えや、具体的な教育活動をどのように伝えるか、講座
を受講することにより見えてきます。
任意のコンピテンシー項目を増強するために、どのプロジェクトが活用できるかは、
C-compass に併設した中央大学独自のプロジェクト検索システム C-search を使って探す
ことができます。
97
第4節
効果のレビュー
中央大学理工学部および中央大学大学院理工学研究科は、就業力の観点から見たコンピ
テンシー育成の効果を次の4段階に分類してレビューすることを目指しており、PDCAサ
イクルによる継続的な改善を試みています。
【第一段階】学生の現状アセスメント
① 授業その他の共通的な各種アンケート
② 就業力に関連する重点化プログラムごとのアンケート
【第二段階】知識獲得志向のアセスメント
① 各種資格試験への応募状況と合格率
【第三段階】社会参画への意識改革を伴う行動変容のアセンスメント
② 成績上位者進学率(各学科内GPA上位50%者の大学院進学率)
③ 上昇志向を反映する学部・大学院別の就職決定(内定)者に関する就職先の資本平均
【第四段階】組織的成果のアセスメント
① ハイパフォーマー行動特性としてのコンピテンシー自己評価
② ハイパフォーマー予測指標としてのEQ検査(大学院1年生対象)
③ 研究力修得指標としての論文・国際発表数および発明(特許申請)数
④ 就職率
⑤ 就職満足度(就職活動における達成感の主観評価)
⑥ キャリア適合性(企業が学生に対して重点的に求めるコンピテンシー項目を定期的に
調査し、学生によるコンピテンシー自己評価との整合性を調査)
⑦ 上場企業役員数
画像暗号化認証システム (「画像・映像コンテンツ演習3」作品)
98
第6章
コンピテンシーと生徒力
中央大学理工学部教授
第1節
田口
東
付属学校の有利な点
いわゆるルーブリック(rubric)は、従来も小学校や中学校において表面的には用いられ
ています。成績表における「生活のようす」や絶対評価などと表現されているものです。
ただし、それらのほとんどはアドホックで定性的な評価方法として理解され、本質的な意
味では使いこなされていないのが実情です。
対照的に、コンピテンシー項目とレベルを明確に定義しつつ、校内・校外のすべての教
育資源を整理して可視化するところまで踏み込んだルーブリック活用の意義は、次の3点
にあります。
① 個々の生徒・学生に自己の長所と短所を気づかせ、向上心および実際の行動へと導き
得る。
② 教員が一面的な教育論にとらわれることなく、広視野なスーパーバイザーとして個々
の生徒・学生の特性を客観的に分析し根拠に基づく合理的な指導・助言を実践できる。
③ 生徒・学生および教員の双方にとって具体的目標を伴う教育方法が細やかに創意工夫
でき、外部評価を含む高度に計画された継続的改善サイクルを形成しつつ、社会に連
動した教育論を能動的に創造し得る未来パラダイムを内包している。
近年しばしば言及される「グローバル教育」とは、単なる語学教育のことではなく、緻密
なルーブリックを活用した上述のような国際標準的教育システムをさしています。
さて、付属学校の場合は、上級校である大学が存在することによって、目指す人間像を
通常よりは明確に定義できます。一方には筆記試験だけが良ければあとはどうでもよいと
する極端な考え方があり、もう一方には自由奔放に育ってくれれば勉強などは適当でよい
とする考え方があるものの、昨今の世界状況に鑑みますと、知性と行動特性はもともと二
元論的ないし二者択一的に扱うべきではなく、価値観の多様な現代社会においては特に、
知性と行動特性との間に強い相関をもたせつつ、頭と心とが共に優れている人物を育成す
ることが肝要であり、付属学校ではそのための機会が柔軟に確保できます。
99
付属学校が実践するコンピテンシー育成は、大学における高度に学術的な教育・研究を
通じた、現代のグローバル社会におけるハイパフォーマー育成へと連続的につながってい
きます。本章は、そのような教育を可能にする仕組みの一端を紹介※します。
※
個々の学科・課外プログラムを実施するに当たっての、生徒力各項目を増強するため
の具体的な資料や確認シートその他については、中央大学固有の教育ノウハウ(各教
育機関が独自に、かつ競争的に創意工夫すべき性質のもの)であり、開示しておりま
せん。
【3D表示】 超次元合体マージングピクチャー (「画像・映像コンテンツ演習2」作品)
100
第2節
付属学校における生徒力
A.教育方針等
一例として中央大学横浜山手中学校・高等学校は、次の教育方針等を提示しています。
【校訓】
謝恩礼節
自立実践
【教育理念】
実学の伝統と家族的な人間関係を大切にする校風の中で、知性を磨き、徳性を涵養し、
心身ともに健全な自立した人間の育成をめざす。また、人々の幸福と社会の発展に寄与す
る意欲と行動力を兼ね備えた人間となるための素養を磨く。
【教育方針】
① 主体的に考え、自律的に行動できる自己を確立するために、あらゆる場面において、
謙虚に学ぶ姿勢を持った人間を育てる。
② 常識を重んじ、当たり前のことを当たり前のこととして受容できる逞しくしなやかな
感性によって、人生を肯定的に生き抜いていくことができる人間を育てる。
③ 心身の健全な発達とその維持に努め、他者と協調・協力して生活できると共に、優れ
た知性と世界を視野に入れた行動力によって真のリーダーとなりうる人間を育てる。
④ 横浜の先進的・国際的な地域性に根ざし、志を高く掲げ、自身の中にフロンティアを
育み、それらが社会的に価値あるものとなるように努力と挑戦を続ける人間を育てる。
B.期待
中央大学横浜山手中学校・高等学校のステークホルダーは、次のことを期待しています。
【生徒自身による期待】
① 自身の夢をかなえるための実力を付けたい。
② 学習および課外活動を通じて、達成感を得たい。
③ 信頼できる先生・友人と楽しく安心して過ごしたい。
【保護者、小中学校や塾・予備校の先生による期待】
① 安定した学力を付け、将来の進路の選択肢を広げて欲しい。
101
② 友人をつくり、他者との接し方を学んで欲しい。
③ 社会的ルールやマナーを身に付けて欲しい。
④ 楽しく安全に安心して過ごせる場所であって欲しい。
⑤ 学校でしか経験できないことを通じて視野を広げ、可能性を広げて欲しい。
【中央大学、他大学、社会による期待】
① 知的好奇心をもって積極的に学んで欲しい。
② 目的意識をしっかりもち、最後まで成し遂げて欲しい。
③ 横浜山手出身であることの特色を生かし、付属生として良い影響力を発揮して欲しい。
【教員による期待】
① 知的好奇心をもって学べる人であって欲しい。
② マナーを備え、ルールを守り、正しい倫理観をもって、社会で信頼される人であって欲
しい。
③ 確固たる自分なりの価値観や信念をもって自立した人であって欲しい。
④ 努力する大切さを学び、チャレンジ精神をもって物事に望んで欲しい。
⑤ コミュニケーション力を身に付けて、他者を認め、協調していく人であって欲しい。
⑥ 困難や世の変化にも対応できる強さと逞しさをもって欲しい。
⑦ 中大横浜山手の生徒であることを誇りに思い、母校愛をもって欲しい。
C.人間像
中央大学横浜山手中学校・高等学校の教育方針等(A)、および、寄せられる期待(B)
に基づき、生徒が目指すべき人間像を、次のように定義しています。
【知性】学びに真摯に向き合う人
① 納得いくまで勉強して、知識を深める。
② お互いに刺激を与え高めあう。
③ 社会に還元できる知識を蓄え、それを社会に発信する。
【徳性】他者とのかかわりを尊重する人
④ 素直に感謝し、元気良く挨拶できる。
⑤ 他者を受け容れる謙虚な心をもち、共に向上できる。
⑥ 社会に自身がどう働きかけられるかを考える。
【行動力】輝く将来に向かって挑戦する人
⑦ 自身の目標に向かって諦めずに努力する。
⑧ 周囲に働きかけ、協力して物事をやり遂げる。
⑨ 社会の一員として責任をもち、その発展に寄与する。
102
D.生徒力
中央大学横浜山手中学校・高等学校は、個々の生徒が、目指す人間像となるために身に
付けるべきコンピテンシーを「生徒力」と呼び、大学版のコンピテンシー大項目(「専門性」
を除く)に対応する次の6項目を定義しています。
【学ぶ】
読み書きによって基礎学力を身に付ける。また、観ること、聴くこと、感じることによっ
て、広く教養を身に付ける。
大学版のコンピテンシー大項目「知識獲得力」の相同です。
【考える】
幅広い視野で問題を捉える。また、習得した知識・知恵・技術を活用し、解決に向けて
取り組む。
大学版のコンピテンシー大項目「問題解決力」の相同です。
【見つめる】
自身を知り、受け入れ、自尊心を育む。また、自身の力を信じて切磋琢磨し、人間性を
高める。
大学版のコンピテンシー大項目「創造力」の代替です。中学校・高等学校は、まずは自
身をしっかりと確立する段階であり、さらに大学へ進学して、はじめて社会へ働きかける
段階になることを考慮しています。
【やり遂げる】
目標を高く定め、計画的に行動するまた、達成に向けて諦めずに粘り強く努力する。
大学版のコンピテンシー大項目「自己実現力」の相同です。
【伝える】
他者の話を受けとめ、自身の思考や感情を相互に伝え合う。また、収集した情報をまと
め、表現方法を工夫して発信する。
大学版のコンピテンシー大項目「コミュニケーション力」の相同です。
【共に生きる】
お互いの存在を認め合い、信頼関係を築く。また、倫理観をもって、集団の一員として
の責任を果たし、協調して物事をやり遂げる。
大学版のコンピテンシー大項目「組織的行動能力」の相同です。
103
第3節
生徒力から大学版コンピテンシーへの連続性
中学校・高等学校の各学年において目標とする生徒力各項目の行動例は、次のとおりで
す。高校充実期(高校2・3年)には大学版コンピテンシーにおける概ねレベル2を充足
することが想定されています。
A.中学入学期(中学1年)
【学ぶ】
① 家庭学習の習慣が身に付いている。
② 他者の話を聴いて取り組む姿勢が身に付いている。
③ 本をたくさん読んでいる。
【考える】
① 常に「なぜ?」を意識している。
② 疑問点を明確にし、質問を切り出せる。
③ 学習したことの要点をまとめ、整理できる。
【見つめる】
① 自身の言動・行動の良し悪しを判断できる。
② 自身の可能性を肯定的に捉えられる。
【やり遂げる】
① 自己管理ができる。
② 自分たちで、学級行事・学年行事の計画を立てられる。
③ 立てた計画を学級で協力して実行できる。
【伝える】
① 自ら挨拶ができる。
② 他者の行動を思いやった言動ができる。
③ 感想・意見等を文章にできる。
④ 自身の言葉で発表できる。
104
【共に生きる】
① 周囲に気を配れる。
② 協力して学習環境を整えられる。
③ 学校のきまりを理解し、守れる。
B.中学充実期(中学2・3年)
【学ぶ】
① 予習・復習が習慣化している。
② 授業をしっかり聞きながら、早く正確に記録できる。
③ さまざまなジャンルの本を読んでいる。
④ 問題の意図を正確に読み取れる。
【考える】
① 自ら抱いた疑問に対して、労力を惜しまずに調べられる。
② 自身の学習計画をつくれる。
③ さまざまな勉強方法を試せる。
④ 自身の考えと他者の考えを冷静に比較検討できる。
【見つめる】
① 自己を取り巻く社会・環境を、自身に関係するものとして捉えられる。
② 自己の立場、責任を考えられる。
【やり遂げる】
① 学習計画を達成できる。
② 自分たちで、学年行事・研修旅行・部活動の企画や計画を立てられる。
③ 立てた企画・計画を、下級生も巻き込んで実行できる。
【伝える】
① 自身の考えを、積極的に話せる。
② 自身の考えを、文章で相手にわかりやすく伝えられる。
③ あるテーマについて、冷静に持続的に議論できる。
【共に生きる】
① 上級生としての自覚をもち、同級生だけでなく下級生とも意見を交換できる。
② 学校行事・部活動において、先輩・後輩と協力して活動できる。
③ 学級内で話し合ってルールをつくり、守れる。
105
C.高校入学期(高校1年)
【学ぶ】
① 予習・復習が習慣化している。
② わからないことを、そのままにしていない。
③ 幅広い分野の知識を蓄えている。
④ 基本事項が定着している。
⑤ 苦手分野をなくすよう努力している。
【考える】
① 問題を自ら見つけ、さまざまな方法で調べられる。
② 筋道を立てて考えられる。
③ 自身の考えだけにとらわれず、広い視野で物事を捉えられる(客観的)。
④ 自身に合った勉強方法を見つけている。
【見つめる】
① 勉強・行事などに積極的に取り組み、自身が何をしたいか、何をできるかを知っている。
② 学習や体験を通じて将来の自分自身と目標を考えられる。
【やり遂げる】
① 委員会・部活動・学校行事などに前向きに取り組める。
② 短期・長期の展望や目標をもって計画できる。
③ 目標達成に向けて、あらゆる手段を考案し実行できる。
④ 達成するまで努力し続けられる。
【伝える】
① 新しい環境の中で、自身の個性を相手に伝えられる。
② さまざまな表現方法を学び、活用できる。
【共に生きる】
① お互いが中大横浜山手で共に生活する仲間であることを自覚している。
② ひとりひとりが与えられた責任を果たせる。
③ 協力の意義を知り、自ら率先して行動できる。
④ 社会のルールやマナーを理解し、守れる。
D.高校充実期(高校2・3年)
【学ぶ】
① 模擬試験などの結果をもとに、自身の課題を把握し取り組める。
106
② 自分なりに情報を収集し、その背景、諸問題などについて探求している。
③ 基本事項を踏まえ、発展的な内容に取り組める。
【考える】
① 習得した知識を複合的に組み合わせることができ、一つの方法に固執しない。
② 当たり前に見えることを当たり前として済ませず、物事を多角的に見られる。
③ 目標を設定し、それにあわせて的確な議論を展開できる。
④ 目標達成のために適切な行動スケジュールを計画できる。
【見つめる】
① 最上級生としての自覚をもっている。
② 将来の自分自身を具体的にイメージできる。
③ 自己の適性を理解できる。
④ 自立への心構えができている。
⑤ 常に新しい目標を定められる。
【やり遂げる】
① 目標に向けて、壁に直面しても諦めずに挑戦し続けられる。
② 地道な努力を怠らず、自身の力を信じて物事に取り組める。
③ 自身の意志で、責任をもって行動できる。
④ あらゆる学校行事に関し、目標に向かって企画や計画を立てられる。
⑤ 立てた企画・計画を、学内外も巻き込んで実行できる。
【伝える】
① どのような場面でも、自身の意見を発表できる。
② さまざまな表現方法により、自己を表現できる。
③ 周りの評価を受け止め、今後の自身に生かせる。
【共に生きる】
① 学校行事・部活動において、下級生の模範となり活動できる。
② 支えてくれた周りの人々への感謝の気持ちを忘れない。
③ 善悪をきちんと判断し、責任感をもって行動できる。
④ 将来社会を担う一員となることを自覚している。
⑤ 公共心をもって社会に対して貢献しようと努力している。
107
第4節
生徒力を育成する多様なプログラム
中央大学横浜山手中学校・高等学校は、教科科目以外の各プログラムを適切な学年に配
置することにより、目標とする生徒力各項目のレベルを計画的に育成しています。
A.生徒力「学ぶ」を育成するためのプログラム
読み書きによって基礎学力を身に付け、また、観ること、聴くこと、感じることによっ
て広く教養を身に付けるためのプログラム(教科科目以外)の一覧です。
中学1~3年の学科プログラム「特別活動/HR」
中学2・3年の学科プログラム「総合的な学習」
中学1~3年の課外プログラム「部活動」
を通じて修得を目指す中学充実期の行動例は、次のとおりです。
① 予習・復習が習慣化している。
② 授業をしっかり聞きながら、早く正確に記録できる。
③ さまざまなジャンルの本を読んでいる。
④ 問題の意図を正確に読み取れる。
高校1年の課外プログラム「宿泊オリエンテーション」
を通じて修得を目指す高校入学期の行動例は、次のとおりです。
① 予習・復習が習慣化している。
② わからないことを、そのままにしていない。
③ 幅広い分野の知識を蓄えている。
④ 基本事項が定着している。
⑤ 苦手分野をなくすよう努力している。
中学3年および高校2年の課外プログラム「研修旅行/修学旅行」
高校1~3年の学科プログラム「総合的な学習/HR」
を通じて修得を目指す高校充実期の行動例は、次のとおりです。
① 模擬試験などの結果をもとに、自身の課題を把握し取り組める。
② 自分なりに情報を収集し、その背景、諸問題などについて探求している。
③ 基本事項を踏まえ、発展的な内容に取り組める。
108
B.生徒力「考える」を育成するためのプログラム
幅広い視野で問題を捉え、また、習得した知識・知恵・技術を活用し解決に向けて取り
組むためのプログラム(教科科目以外)の一覧です。
中学1~3年の学科プログラム「道徳」「総合的な学習」
中学1~3年の課外プログラム「文化祭」
中学2年の課外プログラム「遠足」
中学2・3年の学科プログラム「特別活動/HR」
中学3年の課外プログラム「部活動」「社会見学」「研修旅行/修学旅行」「生徒会」
高校1~3年の学科プログラム「総合的な学習/HR」
を通じて修得を目指す中学充実期の行動例は、次のとおりです。
① 自ら抱いた疑問に対して、労力を惜しまずに調べられる。
② 自身の学習計画をつくれる。
③ さまざまな勉強方法を試せる。
④ 自身の考えと他者の考えを冷静に比較検討できる。
高校2年の課外プログラム「研修旅行/修学旅行」
高校2・3年の課外プログラム「合唱コンクール」「文化祭」
を通じて修得を目指す高校充実期の行動例は、次のとおりです。
① 習得した知識を複合的に組み合わせることができ、一つの方法に固執しない。
② 当たり前に見えることを当たり前として済ませず、物事を多角的に見られる。
③ 目標を設定し、それにあわせて的確な議論を展開できる。
④ 目標達成のために適切な行動スケジュールを計画できる。
C.生徒力「見つめる」を育成するためのプログラム
自己を知り、受け入れ、自尊心を育み、また、自身の力を信じて切磋琢磨し人間性を高
めるためのプログラム(教科科目以外)の一覧です。
中学1年の学科プログラム「特別活動/HR」
を通じて修得を目指す中学入学期の行動例は、次のとおりです。
① 自身の言動・行動の良し悪しを判断できる。
② 自身の可能性を肯定的に捉えられる。
中学1~3年の学科プログラム「道徳」
中学2・3年の学科プログラム「総合的な学習」
中学3年の課外プログラム「社会見学」
を通じて修得を目指す中学充実期の行動例は、次のとおりです。
109
① 自己を取り巻く社会・環境を、自身に関係するものとして捉えられる。
② 自己の立場、責任を考えられる。
中学1年および高校1年の課外プログラム「宿泊オリエンテーション」
中学3年および高校1年の課外プログラム「部活動」「生徒会」
高校1年の課外プログラム「委員会」
を通じて修得を目指す高校入学期の行動例は、次のとおりです。
① 勉強・行事などに積極的に取り組み、自身が何をしたいか、何をできるかを知っている。
② 学習や体験を通じて将来の自分自身と目標を考えられる。
中学3年および高校2年の課外プログラム「研修旅行/修学旅行」
高校1~3年の学科プログラム「総合的な学習/HR」
高校2・3年の課外プログラム「合唱コンクール」
を通じて修得を目指す高校充実期の行動例は、次のとおりです。
① 最上級生としての自覚をもっている。
② 将来の自分自身を具体的にイメージできる。
③ 自己の適性を理解できる。
④ 自立への心構えができている。
⑤ 常に新しい目標を定められる。
D.生徒力「やり遂げる」を育成するためのプログラム
目標を高く定め計画的に行動し、また、達成に向けて諦めずに粘り強く努力するための
プログラム(教科科目以外)の一覧です。
中学1~3年の学科プログラム「特別活動/HR」
中学2年の課外プログラム「遠足」
中学2・3年の学科プログラム「総合的な学習」
中学3年の課外プログラム「研修旅行/修学旅行」
を通じて修得を目指す中学充実期の行動例は、次のとおりです。
① 学習計画を達成できる。
② 自分たちで、学年行事・研修旅行・部活動の企画や計画を立てられる。
③ 立てた企画・計画を、下級生も巻き込んで実行できる。
中学1~3年および高校1年の課外プログラム「文化祭」
中学3年および高校1年の課外プログラム「生徒会」
高校1年の課外プログラム「委員会」
を通じて修得を目指す高校入学期の行動例は、次のとおりです。
110
① 委員会・部活動・学校行事などに前向きに取り組める。
② 短期・長期の展望や目標をもって計画できる。
③ 目標達成に向けて、あらゆる手段を考案し実行できる。
④ 達成するまで努力し続けられる。
中学1~3年および高校1~3年の課外プログラム「合唱コンクール」「部活動」「体育
祭/スポーツ大会」
高校2・3年の学科プログラム「総合的な学習/HR」
を通じて修得を目指す高校充実期の行動例は、次のとおりです。
① 目標に向けて、壁に直面しても諦めずに挑戦し続けられる。
② 地道な努力を怠らず、自身の力を信じて物事に取り組める。
③ 自身の意志で、責任をもって行動できる。
④ あらゆる学校行事に関し、目標に向かって企画や計画を立てられる。
⑤ 立てた企画・計画を、学内外も巻き込んで実行できる。
E.生徒力「伝える」を育成するためのプログラム
他者の話を受けとめ自身の思考や感情を相互に伝え合い、また、収集した情報をまとめ、
表現方法を工夫して発信するためのプログラム(教科科目以外)の一覧です。
中学1年の課外プログラム「ボランティア活動」
を通じて修得を目指す中学入学期の行動例は、次のとおりです。
① 自ら挨拶ができる。
② 他者の行動を思いやった言動ができる。
③ 感想・意見等を文章にできる。
④ 自身の言葉で発表できる。
中学1~3年の学科プログラム「総合的な学習」
中学2年の課外プログラム「遠足」
中学2・3年の学科プログラム「特別活動/HR」
を通じて修得を目指す中学充実期の行動例は、次のとおりです。
① 自身の考えを、積極的に話せる。
② 自身の考えを、文章で相手にわかりやすく伝えられる。
③ あるテーマについて、冷静に持続的に議論できる。
中学3年および高校1年の課外プログラム「部活動」
を通じて修得を目指す高校入学期の行動例は、次のとおりです。
111
① 新しい環境の中で、自身の個性を相手に伝えられる。
② さまざまな表現方法を学び、活用できる。
中学1~3年および高校1~3年の課外プログラム「委員会」
中学1年および高校2年の課外プログラム「研修旅行/修学旅行」
中学2・3年および高校2・3年の課外プログラム「文化祭」
中学3年および高校1~3年の課外プログラム「生徒会」
高校2・3年の学科プログラム「総合的な学習/HR」
を通じて修得を目指す高校充実期の行動例は、次のとおりです。
① どのような場面でも、自身の意見を発表できる。
② さまざまな表現方法により、自己を表現できる。
③ 周りの評価を受け止め、今後の自身に生かせる。
F.生徒力「共に生きる」を育成するためのプログラム
お互いの存在を認め合い信頼関係を築き、また、倫理観をもって集団の一員としての責
任を果たし協調して物事をやり遂げるためのプログラム(教科科目以外)の一覧です。
中学1~3年の学科プログラム「道徳」「特別活動/HR」
中学2年の課外プログラム「遠足」
中学3年の課外プログラム「研修旅行/修学旅行」
中学2・3年の学科プログラム「総合的な学習」
を通じて修得を目指す中学充実期の行動例は、次のとおりです。
① 上級生としての自覚をもち、同級生だけでなく下級生とも意見を交換できる。
② 学校行事・部活動において、先輩・後輩と協力して活動できる。
③ 学級内で話し合ってルールをつくり、守れる。
中学1年および高校1年の課外プログラム「宿泊オリエンテーション」
中学1~3年および高校1年の課外プログラム「合唱コンクール」「体育祭/スポーツ大会」
を通じて修得を目指す高校入学期の行動例は、次のとおりです。
① お互いが中大横浜山手で共に生活する仲間であることを自覚している。
② ひとりひとりが与えられた責任を果たせる。
③ 協力の意義を知り、自ら率先して行動できる。
④ 社会のルールやマナーを理解し、守れる。
112
中学1~3年および高校1~3年の課外プログラム「部活動」「文化祭」「ボランティア活動」
中学2・3年および高校1~3年の課外プログラム「委員会」
中学3年および高校1~3年の課外プログラム「生徒会」
高校1~3年の学科プログラム「総合的な学習/HR」
を通じて修得を目指す高校充実期の行動例は、次のとおりです。
① 学校行事・部活動において、下級生の模範となり活動できる。
② 支えてくれた周りの人々への感謝の気持ちを忘れない。
③ 善悪をきちんと判断し、責任感をもって行動できる。
④ 将来社会を担う一員となることを自覚している。
⑤ 公共心をもって社会に対して貢献しようと努力している。
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113
第5節
効果のレビュー
コンピテンシー育成を開始した直後より、次の効果が現れています。
① 教員の意識改革および教育資源の可視化が進んでいる。
② 個々の生徒の意識改革および勉学意欲の段階的向上が進んでいる。
③ 教育資源を可視化することにより、保護者と社会への訴求力が格段に向上している。
また、経営面での副次的効果として、大学における先進的な教育モデルが付属学校にも
そのまま生かされている点などが評価され、付属学校化したことによる単体効果以上の受
験者数増につながっているように思われます。
なお、学士力・社会人基礎力や就業力の観点から見た場合のように、生徒力の観点から
見たコンピテンシー育成の効果を4段階に分類してレビューすることは、現在のところお
こなっていません。
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114
第7章
段階別コンピテンシー教育のこれから
中央大学理工学部助教
牧野
光則
※ 本章の内容は、2012年3月16日に中央大学後楽園キャンパスにて開催された中央大学
「段階別コンピテンシー育成教育システム」報告会より抜粋したものです。
第1節
取り組みの目的と特徴(再掲)
今度は「これから」ということで、理工学部あるいは大学として、どうしていこうかと
いう話でございます。
全体と致しましては冒頭の学長のメッセージに全部入っていると言えばそれまでのこと
でございますので、中央大学は頑張りますとしか言いようがないわけですが、それではお
さまらないということで、一応いくつかの観点でお話をしたいと思います。
最初にもう一度振り返りますと、まず個人レベルでどういうことが今までわかっていて
何が残されているかという話を致します。それを踏まえて、特に第1グループ、最も先行
している情報工学科において学科単位で何を行おうとしているか、あるいは今何を進めて
いるかというお話で
す。冒頭の講演での
取り組みの目的と特徴 (再掲)
ご質問にもあったの
取り組みの目的
ですけれども、最終
的にはいわゆる三つ
の方針にどう反映さ
中央大学理工学部各学科が育成する人材に必要な学士力を具現化するコンピテンシーを具体的かつ段階的
に定義し、これを育成するための教育改善を継続的に行う環境を整備して理工学部卒業生の到達度を
保証するPDCAシステムの構築
れているか、と。あ
取り組みの特長
とは C-compass とい
うプランで何をしよ
専門職業人・高度専門家を目指す育成する人材
像(教育目的)の達成に必要なコンピテンシーを
具体的に定め、正課のカリキュラムの中で育成
特長Ⅰ
うとしているかとい
うことで、まず大学、
特長 Ⅱ
コンピテンシーを主要キーワードで構成し、それ
ぞれに統一尺度による段階(水準)を定義し、学
年進行に合わせて到達を点検・実感可能な構成
特長 Ⅲ
取組を通じて意識が変わった教員団による継続
運用
あるいは学部の覚悟
をお示ししたいと思
典型的な
知識伝授型の
教育課程
知
識
本取組による
正課教育課程における
知識獲得+
コンピテンシー育成
キャリア教育による
コンピテンシー育成
います。そして最後
コンピテンシー
1
1
115
に、
「グローバル展開を目指して」ということで、結びといたしまして皆様へ少しお願いも
込めてお話をさせていただければと思います。
まず、目的および
特長は先ほど申し上
げたとおりですので
改めてこれというこ
とはないのですが、
基本的には正課のカ
学習成果保証システムの構築
 学生に求められるコンピテンシーを定義し、育成目標を定め、それを育成するための育成プログラムの質
の向上を通じて中央大学理工学部生の学習成果の保証システムを構築
PLAN
DO
学習成果保証システムの構築
構想策定
PLAN
プログラム評価
基準策定
コンピテンシーの両
コンピテンシー
項目策定
方をやっていく、向
コンピテンシー
水準策定
上させる、継続的に
学年別育成目標
コンピテンシー水準
ありましたけれども、
対象プログラム
選定
育成
プログ
ラム
設計
育成
プログ
ラム
開発
育成
プログ
ラム
実施
教育改善を通じた
学習成果保証システム
反応
育
成
プ
ロ
グ
ラ
ム
評
価
ステークホルダー
マネジメント
知識修得
行動
ACTION
育成プログラムの質の向上
育成成果
育成プログラム
の質の向上
成果
・
・
・
仕組みの合理性
評価
品質
マネジメント
タイム
マネジメント
ACTION
意識が変わったかど
うか、という話も少
育成
要件
定義
CHECK
リキュラムで知識と
支援の仕組み
ツール開発
成果評価
DO
学習成果
育成する人材像
の明確化
運営する。ご質問に
CHECK
1
1
しあろうかと思います。
三つのレベルでのPDCAがあると、実際にそのPDCAは回っているか、あるいは回し続
けるにはどうしたらいいか、ということが問題になります。一番外側のPDCAは、ある意
味、組織をつくって定期的に点検を行い対応していくという組織単位の話ですので、ここ
が回ること自体は、たぶんそれほど難しいことではないだろうと思っています。問題はこ
の中のプログラム、あるいは科目単位でPDCAをどんどん回していくことと、ここは主に
学科の責任ということになろうかと思うのですが、それをすること、あとは実際に学生が
ちゃんとPDCAを自分たちで回すかという、先ほどのお話にもあったとおり、この辺りが
たぶんポイントにな
ると考えております。
人材像やコンピテ
学生コンピテンシー育成の柱と工夫
 「段階別コンピテンシー育成教育システム」は、理工学部全体(9学科)にて、人材像と求められるコンピテンシーが
提示され、対応教育(育成プログラム)の実施と、コンピテンシー育成のPDCAの仕組み(C-compass)の提供に
よって、学生のコンピテンシー育成を支援
ンシーは細か過ぎる
というご意見もあり
人材像
コンピテンシー
ましたけれども、細
か過ぎるのを読ませ
ることも教育だとい
うことで、このまま
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
PDCAの
育成プログラム
仕組み
にしていきたいと
思っています。また、
細かくしないとどう
しても抽象的になっ
1
116
てしまうということで、やはり第三者評価をするに当たっては困るだろうということもあ
ります。そうすると、育成プログラムの改良とPDCAの仕組みをどうパワーアップしてい
くか、ということに話が移ります。
【3D表示】 VRML 3Dマップ (「画像・映像コンテンツ演習1」作品)
117
第2節
関係者の「気づき」
今日、学科における事例をお話し致しましたけれども、ほかの学科の対応科目を担当し
た教員にご意見を聞
いています。
「コンピ
関係者の「気づき」
テンシー対応授業に
際して得たことは何
コンピテンシー対応科目担当教員へのアンケートより
ですか」、あるいは
コンピテンシー対応授業に際して
1. 得たこと(学生が得たこと、TA等支援者が得たこと、教員が得たこと、等)
2. 得たかったこと(学生に獲得させたかったこと、TA等支援者に獲得させた
かったこと、教員が獲得したかったこと、等)
の2項目について回答を得た
「得たかったことは
何ですか」という2
項目でございます。
学生が得たことは何
か、TA等支援者が
得たことは何か、教
員が得たことは何か
という観点でお聞き
しています。
1
そうすると、まず
履修している学生が
学生
•
従来は事前に各自に課題を与えていたが、当日課題を講義開始前に与えることで、個々
の学生が自分の課題だけではなく、全ての課題を解く努力をすることで学力向上が図れ
た。また、グループ分けすることで、互いにわからない所を相談することで学習効果の向
上が図れた。
•
自分でやれば問題が解決できることを自覚した。
•
グループ(4名程度)で毎週時間を決めて宿題の解決にあたることで、コミュニケーション
能力が向上した。
•
授業時間外の作業量も多かったにもかかわらず、プログラミングスキルにとどまらず、問
題設定・解決策の検討・他者とのコミュニケーション・プレゼンテーションなど多くの能力が
身に付き、受講して良かったとの感想が得られた。
•
“双方向のやり取り”により、学生がなぜ問題を解くことができないのか、に関する理由を
教員に直接話すことができた点、問題の解決方法を教員から教えてもらう事で、問題を解
けるようになった点、また、学生がこれまで学んできた無機化学の基礎的知識や考え方を
より強力に定着させることができた点などが挙げられる。また余談になりますが、学生が
教員に、「問題を解くことができるようになりました」と伝えるときのすこしうれしそうな顔が
印象的であった。このように、学生が段階的に、少しずつではありますが変わっていく様
子がわかったことは1つの成果であると考えられる。
気づいたのではない
かというコメントは
こんな感じで寄せら
れております。最後
のここがたぶん一番
大きいですね。
「教員
に『問題を解くこと
ができるようになり
ました』と伝えると
きの少しうれしそう
な顔が印象的であっ
た」ということで、
1
これはコンピテンシーとの対応を考えて授業の改善をし、実際に少し手間はかかったかも
しれませんけれども、学生がわかったという自覚の出たところでこれをおこなって、
「学生
は、努力すればいいのだ、頑張れば報われるのだということがたぶんわかったのではない
か」というふうなコメントが寄せられております。
118
大学院生のTAは
何か気づいたかとい
TA(大学院前期課程学生)と上級生
•
通常の授業ではTAに対して, 行動について, 服装について, 言葉遣いについて,
履修学生への対応について, 特別な指示をしていないが, この授業については こ
れらについて口頭で伝えて確認するとともに, プリントして渡したので, 昨年度TA
を行った学生にも, 今回初めてTAを行った学生にも非常に参考になり, この授業
でなければ得られないものを得たようだ.
•
随時自分が担当する学生からの質問に対応し、自身も人に教えることの難しさや
喜びを理解し、さらに、担当学生の学力向上に貢献することができた。
•
4年生に、2つのグループをまかせ、グループ同士のディベートの管理をさせた。
質問の内容の吟味やコントロールがスムーズに出来るようになった。
•
指導するために自らのプログラミングスキルを向上する必要があり、また、学生
が何を必要としているかを絶えず考えながら接する必要があったため、他人を指
導するという観点から成長が得られたと思われる。
•
TAの行動規範およびtipsが明確化されていたので、行動しやすかったと思われ
る。しかし、未だ、TAの言うことが分かりにくいというアンケート結果がある。
うことについては、
「TAガイド」という
ものを通じて、たぶ
んいろいろなことが
わかったらしいこと
がわかりました。た
だし、
「いまだTAの
言うことがわかりに
くい」というコメン
トを受講生から言わ
れているような話も
1
ありますので、TA
のばらつきをどうしていくかというのは今後も継続的に考えていかなければいけない、と
いうことであります。「TAガイド」はつくりましたが、その「TAガイド」が読めないTA
をどうするか、ということになるのだろうと思います。
では、教員は気づ
いたか。ここがいわ
教員
•
毎回8問の問題の完全解答のレポートを課した。最初は、未解答が続出す
るのでは無いかと予想したが、80%程度の学生は最後までキチンとグル
ープでの相談を通して解答していたので、学習時間を取らなければならな
い仕組みを作ることにより、キチンと学習できることが確認できた。
悪くはないというコ
•
年間の授業計画を一層明確化できた。
メントにはなったと
•
問題を解く際の学生の気持ちや状況を把握できた点、学生と話しやすくな
ったことにより、今後学生を良い方向に導くことができるだろうと感じた。
•
新しい概念の導入によっていままでより、少しだけ授業への取り組みの意
識が変わった。
ゆるFDに近いとこ
ろだと思いますが、
教員は、まあやって
思います。
「きちんと
学習できる」
「ちゃん
とできた」
「年間の授
業計画を一層明確化
できた」
「今後学生を
よい方向に導くこと
ができるだろうと感
1
じた」とか、極めて前向きなコメントであります。もちろん、これで全面的に何かが変わ
るということはなくて、たぶん、本音としてはこの辺で少しだけ授業への取り組みの意識
が変わった、と。単に知識伝授型ではなくて、学生を伸ばすためには、学生の能力を開発
するためにはどうしたらいいのか、ということを意識するようになったところは大きかろ
うと思います。
119
とはいえ、百点満
点ではなくて、やは
残された課題
•
やっている学生は非常に学習が進んだと思われるが。留年生等の欠席が
ちの学生のドロップアウトが目立った。これらの学生のケアをどうするか。
•
能力に差がある学生の間で共同作業させるとき、全員がコミットできる体制
づくりをいかに作るかについて、教員がさらに工夫する必要がある。
•
学生に獲得させたかったこと: 大学で学ぶべきことは何かを考えること、
自学の方法、および仲間との討論の重要性。
•
講義時間外においても、学生に本講義の内容について考えさせる。
•
教員1名あたりの学生数が多い。
りいろいろ残された
ことがございます。
先ほどの話にも多少
あったのですけれど
も、学生はどうして
もドロップアウトが
出てくるということ
で、それをどうする
かというところが残
されています。
それから、チーム
1
で何かを作業させるときに、
「能力差、あるいは知識の差による学生の取り組み方の差をど
う埋めていくのか」というところに工夫の必要がある。それから、こういう取り組みを通
じて、科目単位ではなくて、そもそも大学で学ぶべきものは何かというところまで考えさ
せたい、というような先生もいらっしゃったということです。
そして、講義時間外において本講義の内容について考えさせる、その授業時間中はいい
のだけれども、予習・復習等を通じてきちんと考えたかどうか。あるいは、社会とその専
門科目の内容とを結びつけて考えたか、というところまではちょっと自信がないというこ
と。
あとは最終的には、私立大学の宿命ではございますけれども、教員1名当たりの学生数
が多い。ここが結局ネックになって、きめ細かな対応がとりにくい。どうしてもやらなけ
ればいけないとなると、先ほどのご提案にもありましたとおり、何かシステムをつくらな
ければいけない、ということになるわけです。ただ、システムをつくるとなると、たぶん
大変な労力がそこに掛かるので、どうなるかというところがございます。
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120
第3節
第1グループ(情報工学科)の展開
ただ、その中で何
とか工夫をしていか
第1グループ(情報工学科)の展開
•
学生の「気づき」促進に向けて
定期的なコンピテンシー自己点検の実施(C-Compass+紙)
•
コンピテンシー育成の強化
ソーシャル・コンピューティング・ガイドラインの策定・周知
論理的思考の強化.「ロジカルシンキング(入門)」の少人数での実施
専門性と論理的思考の強化:システム要件定義
カリキュラム大改定の議論
•
卒業時の「質保証」に向けて
「卒業研究」における、各段階でのコンピテンシー向上ガイド
なければいけないと
いうことで、今まで
のご質問にもありま
したとおり、例えば
1年生の頃からコン
ピテンシーの重要性
に気づかせて向上さ
せるために学生に何
を促すのかとか、そ
ういう辺りをどうし
ようかというところ
で、情報工学科では
1
定期的にコンピテンシー自己点検の実施をすることに致しました。これは鳥海先生ご紹介
の演習科目履修者だけではなくて、学科所属全員に行わせる、ということをほぼ決めてお
ります。
「C-compass+紙」となっているのは、C-compass は大学全体のものなので、実は専門性
の定義が入力できないということで、評価が入力できておりません。なので、そこの部分
は紙でやらせるというふうにしています。ただ、紙で行わせることによって、ある意味、
強制力がちょっとそこに掛かる。紙を渡して、出さないでは済まされないという雰囲気を
つくらせようとしております。C-compass も紙も当然記名させていますので、誰が出して
いないかがわかるようにはなっております。
なおかつ初年度からのコンピテンシー育成の強化として、この辺りを今少し考えており
ます。最終的には今カリキュラムの大改定を議論中ですけれども、そういうところに含ん
でいることになろうかと思います。
あとはいろいろなご意見がありますけれども、現実にカリキュラムは、4年生は卒業研
究への依存が極めて高いのは間違いございません。そこでコンピテンシーが逆に下がるよ
うな事態になってはいけないわけですから、そこでのガイドをきちんとつくって、これは
むしろ学生というよりは研究室を指導する教員の意識を変える、こういうことが必要なの
ですよという、教員の意識を変えるためのガイドをつくっているということでございます。
121
まず、ソーシャ
ル・コンピューティ
ング・ガイドライン
ということですが、
情報倫理とか技術者
情報工学科ソーシャル・コンピューティング・ガイドライン
 (特に新入生、未成年に対し)情報リテラシー・情報倫理の強化
 被害者にも加害者にもなり得ることの自覚を促す
 利用を禁止するのではなく、適切かつ注意深い利用を促す
 技術者倫理を含むケーススタディをコンピテンシー対応科目に盛り込む
倫理に関係する話で
ございます。情報リ
テラシー、情報倫理
の強化を図る。特に
最近では、ソーシャ
ルメディアが暴走す
ると被害者にも加害
者にもなり得るとい
1
うことの怖さの自覚
を未成年の頃から促しておかないといけない、ということです。
それから情報工学科なので、そういうコミュニティーのインフラをつくるのも将来の仕
事になるでしょうから、利用を禁止するのではなくて、適切かつ注意深い利用を促すべき
であろうという考えのもとに、こういうガイドラインをつくって、今度の4月に学生に配っ
て徹底するという話です。
あとは先ほどのコンテンツ演習の中で、こういうケーススタディーを90分間でちょっと
やってみようということを考えております。これでディスカッションさせて何か気づくか
どうか、ということを少し試してみたいということです。
二つ目は、平成23
年度の後期から始め
たのですけれども、
1 年 生 に 対 して90
分2コマでロジカル
シンキングの入門演
習を実施しておりま
す。基本的には問題
解決力の強化を図り
たいのですけれども、
何 せ 90分 2 コマな
ので、ロジカルシン
ロジカルシンキングに関する入門演習の導入
 (新入生に対し)問題解決力(論理的思考)の強化
 いかに自分がロジカルでないかを気づかせる
(実際にロジカルシンキングができるようになる段階までは求めていない)
 企業人材育成コンサルタントを講師とTA1名で1年生3名×5班を90分×2回で
(14週で学科1年生全員に実施)
概要
1. 仕事をするために必要なスキル
2. ロジカルに考えないと・・・・・
2011年度履修生による「良かった点」
3. 情報を分類しラベル付けをする • 色々な事に役立ちそうな物事の考え方について学ぶことができた
• ロジカルシンキングという物を知ることができた
• 楽しくロジカルシンキングを学べた
4. MECE演習
• ロジックツリーの詳しい作り方が分かって良かった
• 情報の整理の仕方がわかってよかった
5. 相関図演習
• 物事を整理して考える方法がわかった
• 原因を上手に分析する能力を少し習得できた
6. 考えの深堀をすること
• 論理的に相手にわかりやすく伝えることの重要性がわかった
• 考察の際に順序立てて考えていけりょうになった
7. ロジックツリー演習
• 企業のことを考えることや自分のことを考えることができた
• 物事を論理的に考える必要性を知ることができた
• 物事を論理的に考える方法をいくつか知ることができた
キングができるよう
になるわけではなく、
1
いかに自分がロジカルじゃないかを気づかせてあげるかということになります。本人たち
122
はロジカルだと、自己点検の結果から見ると論理的思考力ができているとか、どうも思っ
ているらしいのですけれども、教員側から見ると何を言っているのかわからないという状
況ですから、まあ論理的ではないということで、それをこういう話で進めています。これ
は企業の方へ講師に来ていただくと、やはりこういうことは大学教員ではなくて企業の人
が行うとちゃんと聞いているらしいということで、演習などもきちんとおこなって、実際
にロジカルシンキングに関する本を自分で借りて読むとか、行動が変わった学生もいると
いうことも聞いています。
あとは卒業研究で
すけれども、ざっく
り専門的な何か新規
性が出るとか、論文
卒業研究におけるコンピテンシー育成
 Capstone activityである卒業研究の行動を10ステージに分解、整理
 発現し得るコンピテンシーとそれを向上させるためのポイントをまとめる
 学部生向け、院生向け、教員向け、学科向けのガイドを作成
#
活動項目
#
が書けるようになる
期待される行動
ゼミに出席する
A-1
という最終的なとこ
ろだけではなくて、
研究活動ではどうい
A-2 講義を受講する
講義内容や質問内容はメモを取りながら聞 学会/研究会/技術展等学外の活 研究者の最先端の研究や社会で活躍する 学会/研究会/技術展等への参加方法や選
技術者のを聞ける学会/研究会に積極的に 択について、学部生にアドバイスする
A-3 動に参加する
参加し,質疑に参加しよう
A 研究室活動 A-4 研究室内での質疑応答・情報交
換
オープンキャンパスなどの研究室
公開の企画・運営する
A-5
週に一度,指導教官に現状を報告しよう
質問、相談をするべき相手を判断しよう
オープンキャンパスなどの研究室公開にお
いて、積極的に企画・運営し、来訪者の相
手を務めよう
研究経過・成果を公表する場合には、知的
所有権を含むさまざまな影響を考慮しよう
研究室のメンバーとのレクリエー 研究室の懇親会などのイベント幹事を務め
A-6
ション
よう
研究環境整備(情報機器・備品の 定期的に情報機器・備品の点検・管理や研
管理、研究室の清掃 等)
究室の清掃を実施しよう
A-7
講習などで図書検索システムの使い方を覚
えよう
うことがあり得るか、
卒業論文の準備の段
B-1
B-2
階ではどういう行動
が現れるはずで、そ
れだったらそのとき
に何に注意すべきな
施策案
学部生ガイド
指導役院生ガイド
研究室単独
研究室合同/学科単位
他者の発表や自身の考えをメモにまとめよ 学部生のショートプレゼンやその他発表に 毎週のゼミの冒頭で、3分程度のショートプ 年に2回程度、複数研究室での合同ゼミを
う
ついて、不明点・気づいた点があれば指摘 レゼンを交代で実施する(自身の研究内容 開催する
1日1回は質問・コメントしよう
する
あるいは時事など)
質問について、すぐに回答を与えるのでは ゼミでは議論しやすいよう、お互いの顔が
なく、本人に考えさせるようにする
見える席(円卓等)に座らせる
持ち回りでゼミの議事録を作成し、関係者
にメールさせる
B-3
B
前年度卒業研究発表会に出席
し、聴講する
準備について指導教授の指示に
従う
進路を決める(キャリアデザイン)
卒業論文の意義・あるべき姿に
ついて考える
準備
B-5 1年間の大まかな活動計画を立
研究室の使い方を習う(安全管
B-6
理を含む)
自分の研究や夢を学部生に熱く語る
オープンキャンパスなどの研究室公開の企 画・運営方法について、学部生が自発的に
検討するよう促し必要に応じにアドバイスす
る
定期的にオープンキャンパスなどの研究室
公開を実施し、学生の自主運営を促す
【講習会】プレゼンテーション
【講習会】関連法規
研究環境整備(情報機器・備品の管理、研
究室の清掃 等)の必要性・方法について学
部生に教える
先輩の研究成果を聴講することで、卒業研
究のイメージを掴もう
メモを取りながら聞き、疑問点があれば質
問しよう
書籍や指導教授/先輩/家族への相談を通
して進路を決めよう
卒論を通して何を実現したいか、それを実
現するための活動計画について発表しよう
卒業研究について、苦労した点、気づき等
先輩としてアドバイスする
1年間の大まかな活動計画を立てよう
メモを取りながら聞き、疑問点があれば質
問しよう
学部生に、安全管理も含め研究室の使い
方を説明する
B-4
学会/研究会/技術展等学外の案内を行
い、参加を促す
【講習会】図書検索システムの使い方
自身の経験を踏まえ、学部生の相談に乗る
現役社会人(OB/OG)との交流の機会を設
(進学に関して)
ける
学部生の目標が低い場合は、本人が気づく 卒論を通して何を実現したいか、それを実
よう問いかけ、高いレベルを目指すよう誘 現するための活動計画について発表させる
導する
学部生の発表に主体性が感じられない場
合は、卒業研究は自発的・能動的・主体的
に行うべきものであると本人が気づくよう問
いかける
【講習会】WBS作成
1
のかというようなことを分類・整理しております。大体10ステージに分解し、整理し、発
現し得るコンピテンシーとそれを向上させるためのポイントをまとめ、学部生、実際に卒
業研究を行う学生にはこういうことに注意しましょう、と。実質近くにいて面倒を見る大
学院生はこういうことを注意すべきである、と。一番最後は、ここが教員で、教員はこう
いうことに注意すべきであるし、あるいは学科としてこういう手立てを講じた方がいいの
ではないか、という改善の提言も含んでおります。これを当学科では研究室を指導する全
教員に配って、一応読んでおいてください、と。これを使って、例えば卒業研究の評価に
つなげるかどうかというのは、まだ議論になると思います。
123
理工学部の「三つの方針」への反映と C-Compass
第4節
によるインフラ整備
四点目、今度は学
部としてのことです
学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)
○理工学部において養成する人材像
各学科の人材像
が、冒頭の講演でご
質問があったとおり、
いわゆるディプロ
マ・ポリシーに何と
書いてあるかという
ことですけれども、
これは理工学部にお
いて養成する人材像
は、基本的には各学
科の人材像が書いて
自主的行動(水準3)を明記
○理工学部を卒業するにあたって備えるべき資質・能力
理工学部を卒業するにあたり、次の7つの資質・能力を獲得しているものとします。
 コミュニケーション力:相手を理解したうえで、説明の方法を工夫しながら、自分の意見や
考えをわかりやすく伝え、十分な理解を得ることができる。
 問題解決力:自ら問題を発見し、解決策を立て、実行できる。実行結果は検証し、計画の
見直しや次の計画に反映することができる。
 知識獲得力:深く広く情報収集に努め、取捨選択した上で、知識やノウハウを習得し、関連
付けて活用することができる。
 組織的行動能力:チーム、組織の目標を達成するために何をすべきか客観的に考え、適
切な判断を下し、当事者意識をもって行動できる。その際、他者とお互いの意見を尊重し、
信頼関係を築くような行動がとれる。
 創造力:知的好奇心を発揮して様々な専門内外のことに関心をもち、それらから着想を得
て今までになかった新しいアイディアを発想することができる。その際、関連法令を遵守し、
倫理観を持って技術者が社会に対して負っている責任を果たすことができる。
 自己実現力:自らを高めるため、常に新しい目標を求め、その達成のために道筋を考え、
努力する。その際、自己管理と改善のための工夫を怠らない。
 専門性
(各学科の専門性)
あります。理工学部
を卒業するに当たっ
1
て備えるべき資質・能力として、この六つのコンピテンシーは、いわゆる「自主的行動(水
準3)」がそのまま書いてあります。専門性は各学科に分かれている。各学科の「水準3」
が書いてあるということでございます。ですので、ある意味、GPとしての取り組みから始
まったのですけれども、三つの方針を平成23年度中に公表するということで、まずそれを
公表するに当たって、理工学部としてはコンピテンシーをベースに策定・公表していると
いうことでございます。ある意味、明記し、公表したわけですから、もう後には引けない
状況になります。
ディプロマ・ポリ
シーだけではなくて、
実はカリキュラム・
ポリシーにもそこそ
こ書き込んでいます。
カリキュラムの基本
方針は、これらのコ
ンピテンシーを確実
に身に付けられるよ
う云々という話にな
りますし、体系性と
して各科目群は主に
教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)
○理工学部において展開するカリキュラムの基本方針・構成
 卒業時点で求められる広さと深さをもつ知識とそれを活用するためのコミュニケーション力、問題解決
力、知識獲得力、組織的行動能力、創造力、自己実現力、専門性を確実に身につけられるよう、外国
語教育科目1群・2群、総合教育科目1群・2群・3群、専門教育科目、学科間共通科目、学部間共通科
目、自由科目を設置します。
 また、基礎から応用の着実な修得に資するために、それぞれの科目群では目的に応じて講義科目、演
習科目、実験科目のバランスに配慮してカリキュラムを整備します。
 卒業研究はカリキュラムの集大成として位置づけられ、教員の指導の下に1年間実施されます。
○カリキュラムの体系性
各科目群の役割を明示
 外国語教育科目1群・2群では、それぞれ英語および第二外国語を学び、主として外国語によるコミュニ
ケーション力を養います。
 総合教育科目1群は保健体育に関する科目からなり、主として心身の健康についての意識を高め、自
己実現力を養います。
 総合教育科目2群は人文・社会・自然分野の総合知識の学習を目的として設置され、問題解決力、知
識獲得力、組織的行動能力、創造力、自己実現力を養うための基盤となる科目です。
 総合教育科目3群は専門教育科目の基礎となる科目として設置されており、問題解決力、知識獲得力
、専門性を獲得するための基盤となります。
 専門教育科目は学科ごとの専門性を反映して体系的に履修できるように設置され、望ましい履修の流
れが履修モデルとして提示されているほか、学士課程の総仕上げとして卒業研究が位置づけられ、目
標とする水準以上のコミュニケーション力、問題解決力、知識獲得力、組織的行動能力、創造力、自己
実現力、専門性を身につけられるようになっています。
1
124
何を養成する、あるいは獲得するための科目であるのかという位置付けが書いてあります。
ただ、これは一般論でございまして、では具体的に、どの科目は何をどの程度までなの
かというところまで全科目がちゃんとやっているかとか、ご質問があったとおり、人文社
会系の、われわれは総合教育科目と言っているのですが、総合教育科目の先生方全員にこ
の趣旨が徹底されているかというと、まだそこまでは行っていない。ただ、大枠としては
定めた。あとはこれを個別に少しずつできるところから進めていくということになろうか
と思います。専門科目にしても一斉に実施しているわけではなくて、やはり対応しやすい
ところ、あるいはそれを行うべきだという必要性を感じておられるところから対応をして
いるのが現状です。
ディプロマ・ポリ
入学者受け入れの方針(アドミッション・ポリシー)
シー、カリキュラ
○理工学部の求める人材
ム・ポリシー、最終
エンジニアや科学者として科学技術の第一線で活躍したい人理工学部では、理
学並びに工学の分野に関する理論及び諸現象にかかる教育研究を行うことによ
り、確実な知識と応用力を身につけ、新しい課題への果敢な挑戦力と組織をまと
める卓越した交渉力を持ち、人類共有の知的資産たる科学技術を継承し、自ら
の新発見の成果発表を通じて積極的に社会貢献できる人材を養成することを目
的としています。この理念を反映したもので、全ての形態の入学試験に共通する
ポリシーです。
 自己実現に向かって前進したいモチベーションの高い人
主に自己推薦・指定校推薦・スポーツ推薦・編入学試験などの、志願する分野
へ強い興味と勉学意欲をもつ受験生を選抜する方式に対応しています。
 科学技術の継承と新発見を通じて社会貢献したい人
主に理数選抜及び自己推薦入学試験という、時間がかかっても物事を筋道立
てて考える能力の発現を重視する試験に対応しています。
以上の共通基盤として、一定程度の水準のコミュニケーション力、問題解決力、
知識獲得力、組織的行動能力、創造力、ならびに自己実現力を発揮しており、入
学後も自らそれらを向上させ、専門性を獲得する意志を有することが求められま
す。
的にはアドミッショ
ン・ポリシーという
入り口の段階ですけ
れども、入り口の段
階でも一応コンピテ
ンシーに関する話は
触れています。こう
いうことができる人
材を募集する。
「以上
の共通基盤として、
一定程度の水準の」
情報工学科:面接を伴う入試用コンピテンシーチェックシートを作成・利用
1
という言い方で――ここでは具体的な水準は書いてありませんが、やはり七つのコンピテ
ンシーについてきちんと明記しているということで、一応一貫性を保つようになっており
ます。
なおかつ、私どもの情報工学科では、面接を伴う入試に際して面接担当はコンピテンシー
がチェックできるようなシートを実は持っていて、先ほどのポスタープレゼンのチェック
シートと同じようなものなのですけれども、こういう質問をしたらこの辺がわかるはずで
あるというチェックシートをつくってはおります。
125
そういうことで、
C-Compassによる学生自身のPDCA促進と教育側の支援
活動を支えるインフ
ラとして、中央大学
としては C-compass
【C-Compass画面】
コンピテンシー習得のPDCAを
半期毎に繰り返し行う
をつくりましたので、
●コンピテンシー目標レベルの設定
これを活用していく
●目標を達成するための活動計画の作成
ことになろうと思い
ます。単に学生に入
れろ入れろと言って
いるだけでは、やは
り続かないと思いま
す。先ほども触れさ
向上機会の情報提供と
個別助言が可能
<<具体的な活動の実施>>
●活動報告の入力
●コンピテンシーレベルを評価
(活動を通じてたレベルの変化を自己評価)
前の期を踏まえて
●新たなコンピテンシー目標レベルの設定
●目標を達成するための新たな活動計画の作成
せていただきました
が、向上機会の情報
1
をこのシステムを通じて提供するということと、個別助言ができるようになっている、と。
だから、ここら辺りの機能をうまく使っていく必要があると思いますし、使わないと学生
はたぶん入力しなくなってしまうだろうというふうには感じております。だから、各学科
も積極的にこれに関与する必要はあろうかと考えています。
【3D表示】 VRML 3Dマップ (「画像・映像コンテンツ演習1」作品)
126
第5節
むすび~グローバル展開を目指して
最後に、私どもと
してはこの取り組み
を、一応本学の特長
むすびにあたり~グローバル展開を目指して
学術団体・組織
産業界
として今いろいろな
ところに強くアピー
ルをしております。
卒業生・社会人
↑「資質」の明確化と
保証された人材の輩出
交流を通じた
相互強化
↓情報、「コーチ」の提供
大学入学希望者
↑明確なメッセージ発信
↓強い目的意識を持った
入学・留学
↑大学教育への参画機会の提供
それによって、学術
↓「コーチ」による後輩育成への参画
団体とか高等教育機
関の皆様とは交流を
通じて相互の強化を
図りたいと思ってお
ります。私どもがで
きることはご提供申
し上げますし、逆に
ご協力を
お願いいたします
中央大学
「實地應用ノ素ヲ養フ」~「知性×行動特性」
人材像
コンピテンシー
段階別
コンピテンシー育成
教育システム
育成プログラム
PDCAの
仕組み
段階別コンピテンシー育成に関わる文書化の推進、ノウハウ蓄積
TAガイドに代表される段階別コンピテンシー育成の「見える化」
人材像定義・段階別コンピテンシー定義の参考訳作成(英語、簡体中国語)
1
情報を提供していただきたいと思っております。
産業界の皆様には、中央大学としては資質を明確化しているということと、その水準、
段階的コンピテンシーという観点で保証された人材の輩出を目指すということを私どもと
してはやっていきたい。そもそもコンピテンシーというのは産業界で生まれている概念で
活用されていると思いますので、いろいろな情報やノウハウをご提供いただきたいし、例
えば審査員であるとか、先ほどのTAではないですけれども、コーチングに関するスタッ
フが大学には不足していると感じております。ですので、こういうところに何らかのご協
力をいただければありがたいと思います。
卒業生・社会人に対しては、先ほど鳥海先生のお話にもありましたけれども、中央大学
は大学教育への参画機会の提供をする。これは本人たちにとってたぶん誇りに思うでしょ
うし、あるいは将来、何らかの教育職に就く可能性がある人にとってはいい経験であろう
と思います。そのかわり、それこそ審査員、あるいはプロジェクト進行中のコーチをぜひ
お引き受けいただければと思います。
あとは大学入学希望者ということで、高校生とか海外の方になるのですけれども、学科
の名前を見れば、大体どういう専門知識が得られるか、たぶんわかると思います。それだ
けではなくて、どういう能力、あるいは行動特性を得られるかということに関して明確に
メッセージを発信していきたいと考えております。それによって、中央大学でこういうこ
127
とを身につけたい、あるいはこういう人材になりたいという強い目的意識を持った入学
生・留学生が入ってくることを、私どもとしては期待しております。
このために、冒頭申し上げたとおり、文書化を推進し、ノウハウを蓄積中であるという
こと、「TAガイド」等に代表される「見える化」を進めているということです。あとは海
外ということも少し入っていますので、実は人材像定義・段階別コンピテンシー定義は、
英語と簡体中国語の参考訳をつくりました。これに基づいて、中央大学がどういうことを
目指しているかということを、現実に今、大学にいる留学生とか興味を持ってくださる方
にお示しできると思っております。
こういう教育改革、あるいは教育改善は、一つの大学にとどまる話ではなかろうかと思
いますので、皆様方のご協力を今後ともお願いしたいということを強く申し上げ、締め括
りとさせていただきます。
どうもありがとうございました。
【3D表示】 VRML 3Dマップ (「画像・映像コンテンツ演習1」作品)
128
第8章
教育モデルのデザイン
日本アイ・ビー・エム株式会社
第1節
倉持
多輝子
教育モデルのデザイン
「コンピテンシー育成」と言うや否や「特別な新たな取り組みへの余裕などない。今の教
育で手一杯なのに」という声が聞こえてきそうです。本当に、そうなのでしょうか。
今回「教育モデル
のデザイン」にあ
たっては、企業内研
コンピテンシー育成モデル
修で培われてきた
 コンピテンシーは「知る」「試す/使う」「気づく」「決心する」「行動/態度を新たにする」というステップを踏むこと
で習得することが可能です
 中でも最も重要なのは「気づく」→「決心する」ことです。コンピテンシー習得は自らが能動的に取り組むことで
実現します
「コンピテンシー育
成モデル」を14ある
いは15コマ、半年か
けて学ぶという大学
行動/態度
を新たに
する
教育向けにアレンジ
決心する
して適用しています。
気づく
試す/使う
コンピテンシーは、
知る → 試す/使う
知る
→ 気づく → 決心
する → 行動/態度
を新たにする、とい
0
© Copyright IBM Corporation 2011
うステップを踏むこ
とで修得できます。その中で最も重要なのは、気づく → 決心する、ことです。コンピテ
ンシー修得は誰かに指示されて行うことではなく、自らが能動的に取り組むことで実現し
ます。したがって、その育成は「知識伝授」というよりむしろ「気づき」を助けることに
他なりません。ここで述べる「教育モデルのデザイン」は「気づきを助けるには、どうす
ればよいのか」を意識したものです。具体的にはコンピテンシー修得のステップのうち、「知
る → 試す/使う → 気づく」が自然に進むようきっかけとなる問い掛けや行動の促しを
行います。こういった育成方法はプロジェクト型演習にのみ有効ということはなく、座学
中心の教科にも適用可能です。
129
取り組みの結果、ハイパフォーマー輩出に効果がある反面、二極化された側の学生支援
には効果が薄いのではないかという点が指摘されています。その解決の鍵は、気づく → 決
心する、の部分の支援強化にあると考えます。何かできていないことや、より良い方法が
あることに気づいたとき、「次はこうやろう」と決心するか、「もういいや」と放棄するか
がその分岐点になっています。分岐点にいる学生がより多く「決心する」方向に向えるよ
う支援していくことが次のチャレンジといえそうです。
【3D表示】 YUM TENNIS (「画像・映像コンテンツ演習4」作品)
130
第2節
学生コンピテンシー育成への期待
社会人から「学生時代にもっと英語を勉強しておけばよかった」という声が異口同音に
ささやかれます。その声に応えるかのように昨今は学生時代に「英語力を強化」すること
が一般的になっており、入社条件に一定のTOEICスコア取得を課している企業も少なから
ず見受けられます。
変化の激しい現代において、企業がその従業員に求めることは、
「変化に対応し、変化を
自ら実践できること」と言われ、「競争優位の源泉は『人』、その人材価値向上のためにコ
ンピテンシー育成を強化する」という企業内研修の方向性の提示が目に付きます。ところ
が、このコンピテンシーの修得は、一夜漬けでは無理なばかりか、語学以上に一朝一夕に
かなわぬものです。そのため、社会に出る前の学生生活の中で身につけられるかどうかは
その後の本人にとって少なからぬ影響を及ぼします。コンピテンシーの修得は「進学、そ
の後の研究活動の成果につながる」「就職活動の面接で役に立つ」とか、「社会に出て成果
をあげることに役立つ」といった一面のみならず、家庭生活や趣味の活動の中でも有用で
す。
当初、
「人間力重視」の観点から医療系、福祉系教育機関からスタートした「学生コンピ
テンシー育成」の流れは、今後、英語力の強化と同様、社会の求めに応じる形で多くの教
育機関に広まることと推測されます。当取り組みをその際の参考にしていただけると幸い
です。
【3D表示】 YUM TENNIS (「画像・映像コンテンツ演習4」作品)
131
おわりに
驚きました。
最初はどこへ向かうかもわからずに、コアメンバーが中心となって半信半疑のまま始め
たコンピテンシー育成の教育モデルづくりではありましたが、試行的に始めた中央大学理
工学部情報工学科の自由科目「画像・映像コンテンツ1~4」
(各半期、卒業単位に含まず)
が一巡してみると、同演習1~4のすべてを受講した先駆け的な4人のうち3人がGPA上位
20%に入っており、卒業研究も卒業後進路も立派でした。
(従来、GPAと卒業研究および
卒業後進路との間には、文字どおり何ら相関がありませんでした。)
当然ながらコンピテンシーの自己評価も極めて合理的に見えるものであり、それゆえ逆
に、育成がなかなか難しそうな一部のコンピテンシー項目が検出され、FDの観点からは、
今後私たち教える側がどのように正課・課外の大学資源を工夫していかなければならない
かも明確になりました。
思えば入学したての頃は、真面目に勉強しているようには見えるが、声を掛けても応答
が返ってこないような、
(やや不謹慎な表現ではありますけれど)どちらかといえば会話の
相手としてはおもしろくなさそうなある学生が、大学生活を送るうちに次第に能動的・積
極的な姿勢や行動を見せるようになり、卒業する頃には、魅力ある言葉を操り周囲にも影
響を与え得る存在に成長していたのです。
価値観の多様なグローバル社会においては知性と行動特性との間に明示的な相関をもた
せるように教育すべきという私たちの仮説は、少なくとも試行的初動段階では間違ってい
ないようです。
もっと意外なこともありました。
最初はともすれば、「人を品質管理された製品であるかの如く扱う、非人間的な考え方」
として誤解を受けたコンピテンシー育成の教育モデルではありましたが、個々の学生の行
動特性を客観的に分析し自ら気づきが得られるように高度に計画した授業を実践してみた
ところ、そこにかかわった人々が一致して最大の成果と感じたものは、実は、学部生(下級
生)とTAである大学院生(上級生)とが相互に刺激し合う効果、制作したコンテンツの
発表会および懇親会(1分間PPTプレゼンテーション、ポスタープレゼンテーション、デ
モンストレーションなど)を通じて学生がOB社会人から受ける助言や叱咤激励の効果、そ
して学生・教員間の意思疎通の質的向上などといった、極めて人間的な「人と人とのつな
がり感」の再認識だったのです。
最先端のプロジェクトというものは、得てして最初にイメージするものから最も懸け離
れているように見える局面で際立った効果をもたらすものであり、それゆえ、誰もまだ試
していない試みに、私たち科学者、高度専門教育に携わる者は、何とも形容しがたい人間
教育の醍醐味を肌身で感じています。
132
ハイパフォーマー輩出については何となく方向性が見えてきた一方では、しかし、うま
くいかない学生の存在もまた明らかになってきました。例えば、現在の画像・映像コンテ
ンツ演習は卒業単位に含まれない自由科目であって、演習の内容上多くの時間が取られま
すので、余裕のある学生に適合する性質のものであり、その旨事前指導もしていますが、
それでも趣旨が十分には理解されず、本人はそつなく「コンピテンシーが向上した」よう
に自己評価してはいても客観的には必ずしもコンピテンシーが向上しているようには思え
ない学生もいました。表面的に整っていればある程度の点数が与えられ、それ以上の思考
は無駄(?)だから停止するというスタイルに慣れてしまった「ゆとり教育」の負の側面と
も言えます(75頁「K.1年生からエピソード集め」の第二段落参照)。
どうやら、私たちが初めて創意工夫したコンピテンシー育成の教育モデルは、ハイパ
フォーマー輩出には効果がある一方、二極化された側の学生支援用には、まだ研究の余地
がありそうです。(最初にハイパフォーマー輩出を企図したわけですから、これは当然で
す。)次の段階として、一方でうまくいったのなら、さらに研究を重ねることによって他方
でもうまくいく可能性が期待されます。
世間ではしばしば、教育に忙しくて研究に専念する暇がないという大学教員のぼやきを
聞きますが、私たちのグループは教育と研究とを二者択一的には捉えておらず、研究を「実
学的な教育方法の一つ」として捉えています。今後、卒業研究に覚束なくなりつつある学
生、ちょっとした壁があると乗り越えようとせず就職活動も途中で挫折しがちな、一定率
で現れる学生を、どのように再生していけばよいのでしょうか。道は遠くとも、科学者は
あきらめることを知らない「自己実現力」レベル4の道標的存在であるべきと考え、今日
も明日も新たな教育方法を探究し続けていきます。
133
科学的グローバル教育モデルとしてのコンピテンシー育成
【発行日】
2012年6月1日
【著
中央大学理工学部教授(情報工学科)
牧野
光則
中央大学理工学部教授(情報工学科)
鈴木
寿
中央大学理工学部助教(情報工学科)
鳥海
重喜
中央大学理工学部助教(情報工学科)
髙松
瑞代
中央大学理工学部教授(情報工学科)
田口
東
日本アイ・ビー・エム株式会社
倉持
多輝子
者】
【発行者】
中央大学理工学部コンピテンシー育成FD研究会
【発行所】
中央大学
Fly UP