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情報システム統括室 第3回 広報

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情報システム統括室 第3回 広報
広
報
第 3 号
2012年9
2012年9月
大阪府立大学
大阪府立大学工業高等専門学校
大学工業高等専門学校
情報システム統括室
≪目 次≫
■巻頭言
情報システム統括室長
福嶋茂信 ・・・・・
・・・・・ 1
■投 稿
2009年度 ものづくり担い手技術研修
・・・・・ 3
『3次元CAD/CAM/CAEシステムを利用した
ディジタルエンジニアリング演習』
ディジタルエンジニアリング演習』
†
:システムデザインコース、
システムデザインコース、‡:技術教育支援室
里中 直樹†、葭谷 安正†、和田 健†
上村 匡敬†、君屋 直之†、廣口 和夫‡
3次元可視化シミュレーションソフトウェア
†
:電気電子工学コース(
電気電子工学コース(専攻科)
専攻科)
・・・・・11
、‡:電子情報コース(
電子情報コース(本科)
本科)
藤原 賢二†、新永 夏代‡
前田 篤志† ‡
製図導入教育におけるコンピュータ活用事例報告
システムデザインコース
和田 健
・・・・
・・・・・15
福嶋茂信
・・・・
・・・・・17
計算機管理の移管補助の一事例
システムデザインコース
■資料
運用記録(2009年~2011年)
情報システム統括室
・・・・
・・・・・21
巻 頭 言
大阪府立大学工業高等専門学校 情報システム統括室
室長
福嶋
茂信
まず,本校の情報システム統括室の広報がここ3年間出ていないことを学内外関係者にお
詫び申し上げます.このたび,H21・H22・H23 年度合併号として,昨年度 8 月までに集まった
文書をまとめました.昨年度夏期に,6 年に 1 度の学内ネットワークの全面的なリプレイスを行
いましたが,その報告については号を改めたいと存じます.
さて,この巻頭言では,操作ログを取ることについて述べます.ネットワーク管理においては,
「構築済みのシステム」と同等かそれ以上に,「どのようにシステムを構築したか」が重要となり
ます.
たとえば,5 年前に導入した端末を,故障が原因で入れ替える場合を考えてみましょう.この
とき,コンピュータの製品サイクルは早いため,同じ型番の端末を入手することはできません.
通常,最新の端末を入れます.すると,OS を始めとした各種ソフトウェアのバージョンも上がり
ます.この段になって分かるのですが,元の設定データでは動作しない場合がほとんどです.
このときに役に立つのは,過去に設定した一つ一つの操作の履歴です.これが残っていれば,
多少の機知と試行錯誤をプラスすることで,大概システムを復元することができます.残ってい
ない場合,おそらく最初からシステム構築することになるでしょう.
ここまで話を進めると,この話には前提があることが見えてきます.それは,製品に対して技
術的な変化がめまぐるしく起きていて,製品のライフサイクルが短いということです.コンピュー
タの世界では,1.5年で性能が倍になる(正確には集積回路上のトランジスタ数が倍になる)と
いうムーアの法則が,今でも健在です.また,逆に,入れ替わりの激しい製品を扱う場合,設計
過程を示す履歴が重要になるとも一般的にいえるように思います.
以上から,情報システムの保守の分野は,結果よりも過程が重要であると考えます.設計の
分野では,電気図面,機械図面,ソースコードといった成果物に技術が凝集されます.これに
対して,保守の分野では成果物を得るための作業の「過程」にノウハウが残ります.
そこで,いよいよ本題ですが,次の問題はどのようにして「過程」を残すかです.「過程」は,
ターミナルの操作ログでよいでしょう.最も簡単な方法は,適当なタイミングでテキストファイル
にコピーペーストを行うことです.しかし,急いでいてやらない場合も多いでしょうし,そもそも人
-1-
間はそれほど勤勉ではありません.従って,もう少し「楽な」方法を模索することになります.今
回この巻頭言を書くにあたり,ネットでも調べました.対象の環境は基本的に UNIX 系(Linux と
Gnome の組合せ)です.以下,列挙します.
1.history コマンドを使用する
2.script コマンドを利用する
3.Emacs の shell モードを利用する
4.TeraTerm を利用し,ファイル→ログを保存とする
1の history コマンドは,ユーザが実行したコマンドを列挙するもので,細かな結果までは表
示しません.よって,今回の用途には不十分です.
2の script コマンドは,すべての出力を保存します.機能的には十分です.ログを取り始める
時点で script コマンドを実行する必要がありますが,端末ソフトに自動起動の設定を書くことも
できるようです.
3の Emacas の shell モードは,筆者が普段利用する方法です.Emacas 自体はエディタです
が,M-x shell と入力しその中でシェルを走らせることができます.このシェル上で作業をすれ
ば,好きなときに好きなところだけログを取ることができますし,エディタですので,ついでに編
集もできます.注意事項が一つあり,Emacs を利用するためには,ディストリビューションのイン
ストール時に指定が必要です.
4の TeraTerm は通信ソフトですが,ログをメニュー(「ファイル」→「ログ」)から保存することが
できます.よって,自端末に TeraTerm でリモートログインすれば,ログをとることもできます.
総合的に評価すると2→3→4の順番でしょうか.なお,個人的には断然3です.
最 後 に , 後 半 の 記 述 の 価 値 を 下 げ る こ と に な り そ う で す が , Gnome の 標 準 端 末
(gnome-terminal)だと,「ファイル」→「内容を保存」からログを保存できることを確認しています.
ディストリビューションは CentOS6.2(2011 年末時点の最新版)です.機能的には,TeraTerm
のログを取る機能と同等です.ならば,当然ながら,標準端末を総合評価の第1位とすべきで
しょう.以前,別のディストリビューションで試したことがあるのですが,保存したログをテキストエ
ディタで開くことができず,別の機能かと勝手に思っておりました.コンピュータの進歩がこうい
う地味だが大切な分野にも広がっているのは喜ばしいことです.
近年,記憶媒体の価格は非常に安いものとなりました.操作履歴のログの保存を対象とする
ならばタダ同然です.さらに,操作ログをとること自体もとても簡単になりました.十分な操作ロ
グが残っていないとすると,われわれの勤勉さの問題のようです.
-2-
2009 年度 ものづくり担い手技術研修
3 次元 CAD/CAM/CAE システムを利用した
ディジタルエンジニアリング演習
里中 直樹†
葭谷 安正†
健†
和田
上村 匡敬†
君家 直之†
廣口 和夫‡
†
:大阪府立工業高等専門学校 総合工学システム学科 システムデザインコース
‡
:大阪府立工業高等専門学校 技術教育支援室
1. はじめに
北河内・北大阪地域は中小企業の集積する
新しい産業拠点のひとつであり,高い技術力を
有する企業が多数集積し,また発展が著しい地
域である.しかし,少子化・高齢化による労働人
口の減少や若年者のものづくり離れにより,中
小製造業を中心に慢性的な人手不足と技術
力・競争力の低下と実情がみられる.このため,
若年者に重点を置いたものづくり人材の養成を
図っていくことが必要である.
しかし,社内における人材育成については,
時間的・金銭的余裕がなく,施設・設備がない
等の理由により人材育成や能力開発を行って
いない企業が多くみられる.また,企業に職を
得ようとする求職者については,定職につくた
めには何らかの技術を持っている必要があり,
技術を有する場合においてもスキルアップして
自己の価値を高めておく必要がある.
このような現状を踏まえ,求職者や若手技術
者の技術力アップをはかり,より付加価値の高
い製品を開発できる人材の輩出が望まれる.そ
こで,大阪労働協会[1]においては,中小企業従
業員のスキルアップのため各種講習・研修を開
催している.2008 年度,大阪府立工業高等専
門学校では,大阪労働協会および協力企業と
の共催により実施した人材育成事業において,
中小企業の経営者や従業員を対象としたもの
づくり担い手技術研修「マイコン自動システム構
築」が実施された.
一方,機械設計分野では,より生産性のアッ
プと効率化のため,3 次元 CAD の導入を模索
する企業が存在する.このような企業では,高
額ソフトを購入する前に従業員に試用させ,自
-3-
社への導入可否を判断したいという要望がみら
れる.また,CAD のみならず,CAD/CAM/CAE
の技術を速成で従業員に施したいという希望も
みられる.そこで本年度(2009 年度)は,「マイコ
ン自動システム構築」に加えて,「3 次元
CAD/CAM/CAE システムを利用したディジタル
エンジニアリング演習」が新たに実施された.
本報では,2009 年度 ものづくり担い手技術
研修 「3 次元 CAD/CAM/CAE システムを利用
したディジタルエンジニアリング演習」について,
その概要を紹介する.
2. ディジタルエンジニアリング
近年,製品の高性能化・高品質化と,設計製
造の期間短縮化・低コスト化という相反する要求
を満足させるための技術として,ディジタルエン
ジニアリング[2]が非常に注目されている.
ディジタルエンジニアリングとは,製品の設計
生産プロセス(設計→解析→加工)のすべての
情報をディジタル化し,コンピュータをフルに活
用したものづくりの技術であり,これらのプロセス
を 3 次元データで一貫処理するエンジニアリン
グ環境のことである.ディジタルエンジニアリン
グの重要な構成要素であるコンピュータ支援技
術には
CAD(コンピュータ支援設計)
CAM(コンピュータ支援製造)
CAE(コンピュータ支援工学解析)
CAT(コンピュータ支援試験)
等があり,これらが設計生産サイクルのすべて
のタイミングにおいて連携し,最適化することが
重要である.これらを有機的に連携させ統合し
たシステムを,CIM(コンピュータ統合生産)[3] と
呼んでいる.
表 1 研修スケジュール
3. 研修の目的
回
本研修では,実際の 3 次元 CAD/CAM/
CAE システムを利用した演習を通じて,ディジタ
ルエンジニアリングの意義とそのプロセスを理解
するとともに,これらを実務に活用できる素養を
身につけることを目的とする.
学習目標として,以下の項目を掲げた.
3 次元 CAD/CAM/CAE の各構成要素とそ
の連携システム,ディジタルエンジニアリン
グによる設計生産プロセスを理解できる.
3 次元 CAD による部品モデリング・製品ア
センブリ・製図が行える.
3 次元 CAD データをもとに,CAE による機
構解析や強度解析等の工学的解析が行え
る.
3 次元 CAD データをもとに,CAM による機
械加工のための NC プログラミングが行え
る.
ラピッドプロトタイピング(高速試作技術)等
のディジタルエンジニアリングにおける最新
技術を理解できる.
受講対象者としては,ディジタルエンジニアリ
ングに興味・関心を有し,中小企業において設
計生産に関わる業務に従事している機械系技
術者,および具体的に 3 次元 CAD/CAM/ CAE
システムの導入を検討されている機械系技術者
とした(ただし,大企業の従業員の受講は認め
られない).また,過去に CAD/CAM システム経
験 の 有 無 は 問 わ な い が , PC ・ OS(Microsoft
WindowsXP 等)の基本操作を習得していること
が望ましいこととした.
月日
1
10/3
2
10/10
10/17
10/24
10/31
11/21
11/28
12/5
12/12
12/19
3
4
5
6
7
8
9
10
内
容
開講式,研修ガイダンス,
デジタルエンジニアリング概論,
システム環境設定
3D-CAD 演習
3D-CAD 演習
3D-CAD 演習+CAE 演習
3D-CAD 演習+CAE 演習
3D-CAD 演習+RP 演習
3D-CAD 演習+CAM 演習
CAM 演習+CNC 加工演習
CNC 加工演習
組立演習,製品完成,閉講式
計生産プロセスが理解しやすいように,CAD→
CAE→CAM の順に各演習を配置した.
演習用システムについては,大手企業の設
計生産関連業務でも広く利用されている米国
Parametric Technology Corp.製の 3 次元 CAD
ソフトウェア”Pro/ENGINEER Wildfire 2.0”[4] を
使用することにより,実務にも役に立てられる実
践的な 3 次元 CAD/CAM/CAE システム技術を
修得できるようにした.3 次元 CAD/CAM/CAE
システムの利用には,本校地域連携テクノセン
ター情報処理部門 CAD ルームを利用した.受
講者 1 人 1 台ずつ PC の割り当てを行い,受講
者各個人が 3 次元 CAD/CAM/CAE システム技
術を確実に修得できるようにした.
また,3 次元 CAD/CAM/CAE システムだけ
での演習にとどまらず,本校地域連携テクノセ
ンターCIM 実験実習室にある CNC 工作機械実
機による CNC 加工演習も取り入れ,設計から実
際のものづくりまでの一貫した流れを実体験で
きるようにした.さらに,ディジタルエンジニアリ
ングのトピックとして近年注目されているラピッド
プロトタイピングも演習内容に取り入れ,最新技
術にも対応できるようにした.
4. 研修スケジュールと実施方法
本研修のスケジュールを表 1 に示す.
実施期間は,10 月~12 月の 3 ヶ月間であり,
文化祭等の学校行事実施日を除いた毎週土曜
日に計 10 回の研修を実施した.受講者定員は
最大 40 名であり,総受講時間は,受講時間
90(分/コマ)×総コマ数 4(コマ/回)×10(回) =
3600(分) である.
5. 研修の内容
初回のガイダンス以降の研修スケジュールは,
実際のディジタルエンジニアリングにおける設
-4-
ここでは,本研修で実施した表 1 に示す各演
習について,順次説明する.
なお,本研修では,3 次元 CAD/CAM/CAE
システム技術を利用することにより,CAD→CAE
→CAM の設計生産プロセスを理解させる.その
ため,各演習については,個別のテーマを設定
するのではなく,あるひとつの製品をテーマとし
て設定し,これを設計生産対象として,演習全
体を通じて一貫したプロセスを体験できるように
した.
今回の研修では,図 1 に示す簡単な「動くおも
ちゃ」の設計事例を取り上げた.
5.1 3D3D-CAD 演習
最初に,ディジタルエンジニアリングのもっとも
基本的な技術である 3 次元 CAD の演習を行っ
た.Pro/ENGINEER による部品モデリング・製品
アセンブリ・製図を行うための操作演習はもとよ
り,それに加えて今回の研修では,特に 3 次元
CAD 上での製品設計の考え方を理解させるこ
とに主眼を置いた.
設計では一般的に,製品企画→概念設計→
機能設計→詳細設計というようなプロセスをとる.
設計のプロセスが進行するにつれ,抽象化→
具体化が進行する.コンピュータ支援技術が発
達した現在,3 次元 CAD を利用する場合であっ
ても,上流である製品企画および概念設計につ
いては,実際のところ人手に頼るしかないのが
現状である.しかし,これらで発案したアイデア
を,如何に 3 次元 CAD の上で具体化していく
かが重要な問題となる.
今回の「おもちゃ」に関しては,製品企画に関
しても,本来ならば受講者自身に体験させたい
プロセスではあるが,時間の関係上,スタッフ側
で製品企画を行い,これを 3 次元 CAD によって
具現化していくプロセスから,演習を行うものと
図 1 「動くおもちゃ」設計事例
-5-
図 2 おもちゃの構想図(ラフスケッチ)
した.図 2 に,講師自身による製品企画のため
の構想図(ラフスケッチ)を示す.
このような製品企画のラフスケッチから,3 次
元 CAD により具現化していく設計プロセスでは,
たとえば授業のように 2 次元製図をもとに 3 次元
モデルを作成するような手法は,当然のことな
がら使用できない.これは,最初何も存在しな
いゼロの状態から,設計プロセスの進行にとも
なって,各部品の詳細が順次決定されていくか
らである.そのため,3 次元 CAD でモデリングを
進めていくためには,最初は大まかな形状のモ
デリングを行い,全体的なレイアウトを決定する
と同時に,各部品の詳細化を行っていかなけれ
ばならない.このようなモデリング手法を「1 フィ
ーチャモデリング」と呼んでいる.[5]
1 フィーチャモデリングでは,最初にすべての
構成部品を 1 つの基本形状(フィーチャ)でモデ
リングし,まずこれらをアセンブリすることによっ
て,大まかなレイアウト設計を行う.次に,アセン
ブリ上で,お互いの部品の相互関係を考慮しな
がら,主要寸法を決定していき,レイアウトを確
定する.その後,順次第 2 フィーチャ,第 3 フィ
ーチャと追加していき,さらに詳細化を進めてい
①第 1 フィーチャ
(初期レイアウト)
②第 1 フィーチャ
③第 2 フィーチャ追加 ④第 3 フィーチャ以降
(レイアウト確定)
詳細化
追加,完成
図 3 1 フィーチャモデリングと詳細化
く.図 3 におもちゃの 1 フィーチャモデリングから
の詳細化プロセスを示す.
5.2 CAE 演習
3 次元 CAD で作成された形状データは,単に
CAD 上における設計での利用にとどまるのでは
なく,各種解析や製造に利用されてこそ,その
真価を発揮する.CAE とは,製品を設計生産す
るために必要な情報をコンピュータを利用いて
統合的に処理し,製品の性能や強度等を工学
的に解析し評価する技術のことである.
CAE 演習では,おもちゃの運動性能を評価
するための機構運動解析と,外装部品(ハウジ
ング)の強度解析を行った.
まず,機構運動解析は,おもちゃのカムフォロ
ア機構について,カム軸回転角とフォロア変位
の関係を運動解析した.その結果を図 4 に示す.
機構運動解析には,Pro/ENGINEER の CAE モ
ジュールのひとつである Mechanism Design を利
用する.おもちゃの各部品間に,対偶としてピン
結合やスライダ結合を再定義し,実機と同様に,
3 次元 CAD 上で機構運動が行えるようにしてお
く.また,カム部品とフォロア部品の間には,カ
ム-フォロア結合を定義しておく.車輪を一定角
速度で回転させ,フォロア変位の時間変化をグ
ラフとして出力させる.これにより,フォロアの運
動特性を容易に把握できる.
次に,外装部品の強度解析を行うにあたり,
図 3④で完成した内装機構モデルを利用して,
ハウジング部品の形状設計を行った.ハウジン
グのような容器部品を設計する場合は,まず容
器が納めるべき内容積自体を設計しモデリング
する.次に,この内容積に対して外側にシェル
フィーチャによって薄肉化を行い,最後に機構
との干渉部分(フォロア先端や車輪)を解決する.
図 5 に,その形状設計プロセスを示す.
強 度 解 析 に 関 し て は , Pro/ENGINEER の
CAE モ ジ ュ ー ル の ひ と つ で あ る Pro/
MECHANICA を利用する.Pro/MECHANICA
は,CAE の基幹技術である有限要素法(FEM)
を利用した各種工学的解析が行える.ハウジン
グ部品に,拘束条件と荷重条件,および材料物
性(ヤング率等)を付加し,このハウジングに対す
る弾性力学的支配方程式を数値計算で解く.
解析結果は,図 6 に示すように,ポストプロセ
(a)内容積設計 (b)シェル化・干渉部分解決
図 5 ハウジング部品の形状設計
(a)カムフォロア機構
(b)フォロア変位
図 4 おもちゃの機構運動解析
-6-
図 6 ハウジング部品の強度解析
ッサにより,変形挙動や応力分布等をグラフィッ
クスで視覚的に表示できる.これにより,この部
品が設計段階で強度面や剛性面で問題がない
かどうかを評価することができる.
5.3 CAM 演習
CAM とは,広義には,数値制御(NC),工程
管理,産業用ロボット管理,資材計画等の生産
システムおよび生産技術を,コンピュータ支援
により自動化する技術の総称である.狭義には,
製品の製造を行うために,CAD で作成された形
状データを入力として,それを元に CNC 工作機
械の工具軌跡(ツールパス)を生成し,それに工
作機械情報や切削条件等を付加することによっ
て,CNC 工作機械により自動加工を行うための
NC コードを生成するコンピュータシステムであ
る.
通常は,CAD に対し CAM は別のシステムとし
て提供されることが多いが,Pro/ENGINEER の
場合は,CAD/CAM が同一システム上でシーム
レスに統合されている.
CAM 実習では,前に実施した CAE 実習でも
使用したハウジング部品を利用することで,連
続性を持たせた.このハウジング部品は,今回
の研修では,後述する RP 演習において,RP 装
置によって製作するが,一般にこのような形状
の部品は ABS 等のプラスチックを材料として,
-7-
図 7 ハウジング部品と金型モデル
金型による射出成形法で生産されることが多い.
そこで,最初にハウジング部品を利用して,そ
の金型を設計することにした.図 7 に,ハウジン
グ部品と金型(雄型・雌型)のモデルを示す.
金型のモデリングは,金型プレート部品とハウ
ジング部品とのブーリアン演算(雄型は和,雌型
は差)によりモデリングを行う.
CAM 実習は,モデリングされた金型を NC フ
ライス盤で切削加工を行うことを想定して行った.
まず,金型素材定義や NC 加工原点定義等の
製造モデルを作成する.次に,CNC 工作機械
設定や切削工具設定,取付具設定等の製造設
定を行う.そして,加工領域定義や加工条件設
定等の加工定義を行う.以上の各種設定にもと
づき,NC シーケンスのシミュレーションが行える.
シミュレーションでは,工具経路(ツールパス)の
確認や,図 8 に示すように切削加工における材
料除去の様子を確認できる.シミュレーションの
結果が問題なければ,最後に NC コードを出力
し,CNC 工作機械に転送すれば,実際に NC
加工を行うことができる.
5.4 RP 演習
ラピットプロトタイピング(RP)とは「高速試作」を
意味する.最近,携帯電話をはじめとする情報
家電製品等は,そのライフサイクルが短縮され,
それにともない設計生産期間の短縮化も余儀
なくされている.意匠設計にもとづいた複雑な
形状設計結果を,3 次元 CAD の仮想空間だけ
ではなく,実際のカタチとして手にとって確認し
たいという現場からの要求により,RP 技術が近
年大きな注目を集めている.[6]
そこで,今回の研修では,この RP 技術を体
験することも目的のひとつとして取り入れ,実際
に自分で設計した 3 次元 CAD データから,RP
装置により実際に成形を行い,その効果を実体
験してもらうことにした.
本校に設置され てい る RP 装置は,米国
STRATAsys 社製”Dimension SST768”[7]である.
この装置は溶融積層型 RP であり,熱可塑性樹
脂を高温で繊維状にし,製品の高さ方向に各
断面形状を走査しながら順次積層していくこと
で,成形を行うものである.成形材には,ABS が
使用されるため,成形品の強度も比較的高く,
場合によっては,試作品にとどまらずそのまま
製品として使用することも可能である.
RP 演習では,おもちゃの左右のハウジング部
品とヘッド部品の成形に利用した.
Pro/ENGINEER で作成した 3 次元形状データ
を STL 形式に変換し,これを RP データ生成ソ
フトウェア”CatalystEX”により変換する.これを
RP 装置に転送し,成形作業を行う.
図 9 に RP 装置外観と成形中の様子を示す.
5.5 CNC 加工演習
本研修を 3 次元 CAD/CAM/CAE システムだ
けの演習で終わってしまっては,PC の中だけで
の閉ざされた「机上の空論」の世界になりかねな
い.本研修を完結させるためには,3 次元
CAD/CAM/CAE システムで設計したものを実
際に加工・組立し,製品として完成させ,設計か
ら実際のものづくりまでの一貫した流れを実体
験させる必要がある.そこで,一通り
CAD/CAM/CAE 演習が終了した研修の終盤
に,本校地域連携テクノセンターCIM 実験実習
室にある CNC 工作機械実機による CNC 加工
演習も取り入れた.
図 10 に,おもちゃの全部品を示す.CNC 加
工演習で,実際に受講生が加工を行ったのは,
以下の 3 グループの部品である.
車輪・カム(ターニングセンタ:図 11 参照)
フレーム(卓上小型 CNC フライス盤)
ハウジング・ヘッド(RP 装置)
図 10 おもちゃの全部品
図 8 CAM による切削加工シミュレーション
図 11 CNC 加工の様子(ターニングセンタ)
図 9 RP 装置外観と成形中の様子
-8-
車軸やフォロア等の残りの部品については,あ
らかじめスタッフ側で加工を行い,最終回の組
立作業までに揃えておいた.
なお,これらの CNC 工作機械には台数に制
限があるので,受講者を 3 グループに分け,半
日単位で各テーマをローテーションして行った.
CNC 工作機械の操作については,スタッフが講
習した後,実際に受講者に運転してもらい,各
自が使用する部品を加工してもらった.
また,RP 装置については,成形中に受講者
が特に行う作業はないため,CAD ルームで
3D-CAD 演習において残されていた各部品の
製図作成作業に充てた.
5.6 組立演習・製品完成
研修の最終日には,CNC 加工演習で完成し
た部品を集めて,受講者に 1 人 1 台で組立作業
を行い,図 1 に示すように,おもちゃ製品を完成
させた.ここでは,実際の部品を組み立てること
によって,3 次元 CAD で行ったアセンブリとの相
違を実感してもらった.製品の加工誤差等で,
実際はうまく組み立てられなかったり,カム-フォ
ロアがうまく運動しなかったりしたケースもあり,3
次元 CAD と実際の製品との間のギャップを実
体験した受講者もみられた.
製品完成後,研修の総括として,3 次元 CAD
上のモデルとの比較を行った.両者を比較し,3
次元 CAD モデルがどの程度製品を再現してい
るかを確認した.両者の比較例を,図 12,図 13
に示す.
6. 研修の状況
6.1 スキーム別研修
以上,2009 年度 ものづくり担い手技術研修
「3 次元 CAD/CAM/CAE システムを利用したデ
ィジタルエンジニアリング演習」について,その
概要を紹介した.
受講者は,当初定員最大 40 名のところ,それ
を上回る応募があり,研修開始時には 42 名とな
った.受講者の内訳は,中小企業社員の参加
者が 25 名,求職者を含む一般参加者が 17 名
であった.
研修を開始した直後の第 2・3 回目の
3D-CAD 演習で大きな問題に直面した.それは,
受講者が要求する研修内容のレベルが二極化
-9-
図 12 内装機構の比較
図 13 外観の比較
していたことである.たとえば,企業からの参加
者は,研修内容に対して非常にモチベーション
が高い.実際に研修で受講した内容を,各自の
実務に生かしたいと考えている受講者が多く,
そのような内容の質問も多かった.一方,一般
参加者の中には,CAD 等を触るのも初めて,文
系出身者で工学的内容はさっぱりわからない,
というような初心者もみられた.このような受講者
からは,3 次元 CAD を利用した設計の考え方よ
りも,CAD の基本操作や製図法・機械工学の基
礎事項に関する質問がほとんどであった.この
ような状況であったため,そのまま当初予定の
研修内容を行ったのでは,毎回の研修時間の
制約上,双方が満足するような細かい対応が困
難になり,研修後のアンケートにおいても,否定
的意見が多く見られた.
これを解決するために,第 4 回目以降の研修
において,受講者を希望により 2 グループに分
けて,それぞれ個別の研修内容で行うことにな
った.ひとつは,当初の予定通りの研修内容で
進めていく企業参加者向けコースと,もうひとつ
は,本来の研修内容から離れて内容をレベル
ダウンした上で,機械製図の基礎事項の講義か
ら始まって,3D-CAD の基本操作を何回も反復
して行い,基礎の定着をはかる初心者コースで
ある.結果として,初心者コースへは,13 名の受
講者の移動があった.以降,各コースにおいて
否定的な意見は減少し,肯定的な意見および
満足度が増加した.そして,それぞれのコース
で研修がスムーズに行えるようになった.
以上のようなこともあり,研修の最終回には,
受講者は 34 名に減少してしまった.反省として,
次回以降は,本来の研修コースとは別に,応募
時に初心者コースを併設しておくような受講者
のスキーム別対応を取るべきであろう.
6.2 TA 学生
また,今回の研修では,本校本科 4・5 年,専
攻科より,学生 TA が毎回 8 名参加した.これら
の TA 学生の CAD 操作技術スキームは,すで
に本科における CAD 授業において,基本操作
や中級モデリング技術等はマスターしている状
態である.ただし,今回の研修では,企業技術
者向けということもあり,3 次元 CAD のバックグラ
ウンドにある設計の考え方が主眼となっている.
これに関しては,残念ながら現行の授業では時
間の制約もあり,講義し切れていない.そのた
め,TA 学生については,毎回の研修日前日の
放課後に集めて,補講を行った.
研修時に,TA 学生は,講義に着いて来られ
ていなかったり誤操作で戸惑っている受講者の
CAD 操作のフォローや,工作機械操作の補助
を行っている.彼らは非常によく健闘しており,
受講者からの要求に対しても,的確に対応して
いる状況がみてとれた.学生の潜在能力の高さ
が伺われる.
毎回の研修後には,スタッフと TA 学生を交
えての意見交換会・反省会を行ったが,TA 学
生からは自分が教える立場に立って,はじめて
教えることの難しさおよび自分があらかじめ勉強
して理解しておくことの重要性がよくわかった,
との意見が多くみられた.また,受講者が社会
人でもあり,目上の人とのコミュニケーションを取
ることの難しさも実感したようである.
今回の研修は,TA 学生にとっても,非常に
効果的な学習機会を提供できたものと考えられ
る.
7. おわりに
これは後日談であるが,大阪労働協会より,本
研修を受講した求職者の中から 4 名が関連分
野企業への就職が決定したとの連絡をいただ
いた.本研修が微力なりとも社会に貢献できた
ことは,非常に喜ばしい限りである.
最後に,本研修を遂行するにあたり,多大な
ご尽力いただいた共催者の(財)大阪労働協会
の皆様および本校学生 TA 諸君に,厚く御礼申
し上げます.
参考文献
[1] (財)大阪労働協会,
http://www.l-osaka.or.jp/ork/ (2010.3.31)
[2] たとえば月刊「日経ものづくり」,日刊 BP 社
[3] たとえば岩田一明監修,CAD 概論,共立出版
(1995),p1
[4] PTC-Pro/ENGINEER,
http://www.ptc.com/products/proengineer/
(2010.3.31)
[5] CAD 攻略スペシャル総集編,機械設計 2006 年 3
月臨時増刊号(2006),p29
[6] 機械設計 2009Vol.53No.14,日刊工業新聞社
(2009),pp9-12
[7] Dimension SST 3D プリンタ,
http://www.dimensionprinting.com/international
/JA/3d-printers/3d-printing-sst.aspx
(2010.3.31)
(2009 年 3 月受け付け)
- 10 -
3次元可視化シミュレーションソフトウェア
藤原 賢二† 新永 夏代‡ 前田 篤志†‡
†
:大阪府立工業高等専門学校 電気電子工学コース(専攻科)
‡
:電子情報コース(本科)
1. はじめに
一般に,電磁気学が難しいと感じる学生が
多いのには,複数の原因が存在すると言われ
ている.その一つとして,原子や分子の動きと
いった微視現象や,磁界・電界といった不可視
現象を扱うという点が挙げられる.学生は教授
者の説明やテキストの図からそれらをイメージ
することしかできないため,実感が湧かないほ
か,正しくイメージできているかを確認しづらい.
次に,複雑な数式が多数存在し,その表現方
法や解釈が統一されていない点を指摘できる
[1]
.複雑な数式は初学者の学習意欲を損ねや
すい上に,単位系の違いや E-H 対応と E-B 対
応,有理系と非有理系などがテキストによって
異なるため,学生は更なる混乱に陥りやすい.
これらの理由により,学生は「なぜそうした現象
が起こるのか」という概念部分の理解を諦めて
しまう.結果,物理概念を理解した上で学習し
た方が長期的満足度は高いにもかかわらず[2],
学生は試験で点数を取るために計算式を暗記
することに専念してしまう.
近年,アニメーションを用いた電磁気学に関
する教育用コンテンツが多数制作ならびに公
開されている.しかし,これらには静的なものが
多く,インタラクティブ性が低い.また,シミュレ
ーションソフトウェアも開発されているが,その
多くは研究開発を目的としたものであり,教育
用のものは数少ない.研究開発用ソフトウェア
では解析結果が示されるだけであり,初学者
は十分な考察を行えない [3] .そこで本研究で
は,概念理解を促すための教育用アプリケー
ションとして,シミュレーション結果を 3 次元で
可視化するソフトウェアの開発を目標にし,そ
の題材としてフレミング左手の法則を選択した.
フレミング左手の法則は,ジョン・フレミングによ
り,電流が流れる導体にかかる力と磁界との関
- 11 -
係を知るために考案されたものである.プロセ
スを考える必要なく,力の向きが即座に分かる
便利な法則であり,多くの初学者が用いてい
る.
以下,「どのようにして導体に力が働くのか」
という概念理解を目的に開発したソフトウェアを
紹介するとともに,ユーザの評価結果とそれを
踏まえた今後の展開について述べる.
2. 手法
アプリケーション作成のアプローチは以下の
3 点である.
3 次元を用い多くの情報を提供する
インタラクティブ性を高める
磁界を可視化し理解を助ける
テキストなどでは図(2 次元)で表すことしか
できない対象を,開発環境として Microsoft の
DirectX を用いることで 3 次元描画し,平面より
も多くの情報をユーザに提供する.また,様々
なパラメータ操作により,シミュレーション結果
が毎回変わるなど,インタラクティブ性を高めて
ユーザの関心を惹く.さらに,目に見えない磁
界を空間上の各点で矢印として可視化するこ
とで,学生の理解を助ける.電磁場解析ソフト
との差異を明確にするため,結果のみの表示
ではなく,合成前の磁界を示すなどの工夫も
行う.開発に際して前提としているのは,本ソフ
トウェアが教育用アプリケーションであり,ユー
ザは電磁気学を学ぶ学生であるという点である.
電磁場解析のようにいかに厳密なシミュレーシ
ョンを行うかよりも,ユーザが種々の法則を直
感的に理解できるかどうかに重点を置く.
シミュレーションを行う対象は,磁界とローレ
ンツ力である.シミュレーション範囲として設定
した空間は,適当なサイズで立方体のメッシュ
に切り分け,重力は考慮しないこととする.
3. 磁界の計算
3.1 定常磁界
磁石を両端に正負の磁荷を持つ点磁極とみ
なし,磁石間に生じる磁界を2つの点磁荷によ
る合成ベクトルとして計算した[4].
r
r
r
H = H1 + H 2
r
r
r
Qm r1
Q
H 1 = k 2 ⋅ , H 2 = k m2
r1 r1
r2
r
r2
⋅
r2
(1)
1
= 6.33 × 10 4 )
4πμ0
(1)式において,Qm は磁荷の強さ,r は任意
r
の点と磁極との距離, r は磁極から任意の点
(k =
に向かうベクトル,μ0 は真空中での媒質の透
磁率である.
3.2 電流磁界
電流による磁界の計算にはビオ・サヴァール
の法則を用いた[5].
r
r
r
I dl r
dH =
×
4πr 2 r
(2)
について計算した.その結果,平面でのシミュ
レーションおよび描画速度については,平均
30FPS(Frame Per Second)程度のストレスを感
じない動作を実現した.一方,全領域をカバー
した立体表示の速度は 15FPS となり,若干の
動作の遅延が確認された.
5.1 直線導体と電流
図1の中央付近に存在する黒色の直線状の
オブジェクトが電流導体である.導線は回路全
体ではなく,シミュレーションに必要な一部の
みを描画した.電流の量と方向は,導体上の
赤色のバーの幅とその移動方向で表現した.
なお,電流の量はスライダーで,方向はボタン
で,いずれもユーザが操作できる(図 2).
5.2 磁界ベクトル
図 1,図 3 の電流導体周辺に描画されている
矢印が磁界を表している.矢印の長さは磁界
の強さと対応させており,磁石による磁界(橙
色)と電流による磁界(緑色)は,単体表示・重
畳表示が可能である.例外処理として,磁界の
r
(2)式の I は導体の任意の微小部分におけ
る電流方向,dl は微小部分の長さ,r は指定し
r
た微小部分と任意の点との距離, r は微小部
分から任意の点に向かうベクトルである.空間
と同じ幅でメッシュ化した導体の各部分が全領
域に及ぼす磁界を計算し,それらを足し合わ
せることで空間上の磁界を求めた.
3.3 合成磁界
実際に作用している合成磁界ベクトルは,定
常磁界ベクトルと電流導体による磁界ベクトル
をメッシュ毎に足し合わせることで求めた.
図 1 スクリーンショット
4. ローレンツ力
電流導体にかかる力は以下の式で計算し
た.
r
r
r
dF = Ids ×μ0 H (3)
磁石による定常磁界は直線導体のメッシュ
に対して等しく作用すると仮定し,ローレンツ力
は電流導体の 1 箇所のみで計算した.
5. 動作内容
図 2 ツールバー
図 1 に動作画面を示す.メッシュの格子点は
3000 個に設定し,毎フレーム,全てのメッシュ
強さがほぼ零もしくは非常に大きい場合は,見
- 12 -
つの磁界に分解表示できるため,ユーザはロ
ーレンツ力の大きさの変化の原因を考察する
ことができる.
6. 評価
図 3 電流導体と磁界 図 4 ローレンツ力
図 5 合成の様子
やすさの観点から矢印を描画しない.定常磁
界と電流磁界の強さはスライダーで独立に設
定できる(電流磁界の強さは電流量を操作す
ることによる間接調整).
5.3 磁界の表示範囲
磁界の表示方法は,任意の一平面のみを
描画するか,シミュレーション範囲内の全ての
点で描画するかを選択できる.平面表示で状
況を把握した後,立体表示に切り替えた方が
概念理解が容易になると考え,ソフトウェア起
動時の初期状態では平面表示を選択してい
る.
5.4 合成磁界とローレンツ力
「合成する」ボタンを押すことにより,定常磁
界と電流磁界が合成されていく様子をアニメー
ションで示した.具体的には元となる2つの磁
界ベクトルが時間とともに合成磁界ベクトルに
向かって回転し,最終的に 1 つのベクトルにな
るというものである(図 5).ベクトルが回転する
ということに物理的な意味はないが,ユーザの
直感的な理解をサポートすると考える.
合成磁界の描画後,ローレンツ力ベクトルと
ともに実際に導体が動く様子を提示した(図 4).
ローレンツ力を表すベクトルは,磁界ベクトルと
区別するために,矢印の太さに大きく差をつけ
た.導体に実際に力を加えると,常に力がかか
り続けるため導体は加速され,その後,磁石か
ら離れるに従いローレンツ力が弱まり等速にな
る.導体が移動している間も合成磁界を元の 2
- 13 -
本科電子情報コースの 4 年生 16 名を対象に,
簡単な口頭説明を交えながら自由に本ソフトウ
ェアを使用させた後,紙面でアンケート調査を
実施した.また,セミコン・ジャパン 2009(幕張メ
ッセ:12 月 2-4 日)にソフトウェアとポスターを
出展し,参加者に聞き取り調査を行った.以下,
その結果を基に,開発したソフトウェアの有用
性と改善点について述べる.
まず有用性については、フレミング左手の法
則を知っている学生の過半数が,本ソフトウェ
アを使用してより理解が深まったと回答した.こ
のことは,本ソフトウェアで採用したシミュレー
ション手法が,学生に対して有益な情報を提
示することを示唆しており,研究目標はほぼ達
成されたと考えている.
課題については、ユーザビリティの低さが挙
げられる.視点の操作方法については8割が
満足しているが,それにも拘わらず表示状況の
理解が容易であった学生は 6 割にとどまってい
る.具体的には,自由記述において「導線がそ
れであると分かりにくかった」「矢印が示す磁界
の強さを把握しづらかった」などの意見が得ら
れている.そのため,ソフトウェア起動時の初
期状態において説明文を付加するなどの改善
方法を検討している.
立体表示の際に矢印が見づらいといった,3
次元を 2 次元に投影する際に生じる情報の把
握のしづらさも指摘されている.この点につい
ては,表示を任意の平面で行える機能を実装
することにより,磁界を把握しやすくなると考え
る.さらに,立体表示の際,矢印を細くして奥
側の矢印を見やすくするなどの改善を行う予
定である.
テキストなどの情報媒体と本ソフトウェアのど
ちらが分かりやすいかについて,テキストもしく
はどちらとも言えないという学生が半数を占め
た.この結果は,テキストの有用性を示してい
ることから,様々な教材についてその特長を調
査し,それらを取り入れる,又は組み合わせて
利用するなどの工夫が必要であると考える.
現状に加えて実装を必要とする機能につい
ては,導線や磁石の移動,磁界の強さ・力につ
いて数値化された定量的なステータス表示を
求める声があった.前者については実装を予
定しているが,後者については,本ソフトウェア
の目的が概念理解であることから実装を考え
ていない.
その他改善すべき点として,メッシュの切り方
やシミュレーション範囲の可変化が挙げられる.
現状では磁界の計算範囲を固定しているが,
導線が移動する際,すぐに磁界を表示してい
る範囲を超えてしまうため,導線の速度の変化
を認識しづらい.また,メッシュの大きさを統一
しているが,磁界の変化が大きい部分におい
てはメッシュを細分化すると状況をより把握し
やすくなる.そのため,数値解析手法をある程
度取り入れる必要がある.
当初,本ソフトェアは学生が自由に利用する
ことを想定して開発を行った.しかしアンケート
では,本ソフトウェアを利用したい場面につい
て「授業中」と答えた学生が半数に達した.ま
た,学生が独自に利用する様子と,セミコン・ジ
ャパン 2009 においてプレゼンテーション形式
で解説しながらソフトウェアを紹介した際のユ
ーザの様子を比較すると,圧倒的に後者の理
解度が高い印象を受けた.これらの事実は,
本ソフトウェアが自学自習よりも解説を交えて
用いた場合に効果が高くなることを示唆してい
る.ソフトの操作方法における自由度が高く,
本研究が想定している使用方法を把握しづら
いという点がその要因の 1 つと考える.そのた
め,今後は学生が自由に利用する場合と,授
業において教授者が利用する場合の両方で
有効なソフトウェアとして開発を進めたい.具体
的には,前者については使用方法をユーザに
伝えるため,ソフトウェア内にテキストによる説
明やガイドツアーのような機能を実装する.後
者においては,数式を表示させ,教授者が数
式とあわせて概念を説明する環境を整える必
要があると考える.
7. むすび
概念理解を促すための教育用アプリケーシ
- 14 -
ョンを提案し,フレミング左手の法則に関する 3
次元可視化シミュレーションソフトウェアを開発
した.具体的には,DirectX を用いることにより
3 次元での描画を実現し,磁界を矢印で可視
化することにより学生の理解を支援した.さらに,
学生の関心を惹く工夫として,電流値,定常磁
界の強さ,電流の方向,磁界表示の種類・範
囲の設定など,インタラクティブ性を高める機
能を付加した.
本ソフトウェアは,学生自身の操作によって
磁界の可視化や導体がローレンツ力を受け移
動する様子を描画できることから,概念理解を
助けるほか,授業において教授者と学生の議
論を活発にすることが期待される.アンケート
の結果,シミュレーション自体はほぼ仕様を満
たしているが,ユーザビリティの部分で改善す
べき点が多い.今後は,複数本の導体や曲線
導体の導入など,インタラクティブ性の向上に
努めるほか,さらなる展開として,本ソフトウェア
をベースにしたモータの回転原理を提示する
アプリケーションの開発を検討している.
謝辞
本研究を行うにあたり,多くの有益な示唆を与
えて下さった福嶋茂信教授に心より感謝申し上
げます.また,アンケート調査に協力頂いた電子
情報コース 4 年生の皆様に厚く御礼申し上げま
す.
参考文献
[1]細野敏夫:電磁気学はなぜ難しい,電子情
報通信学会誌 vol.76 No.2 pp168-175,1993
[2]鈴木久男:大学における理科教育のグローバ
ル化と e ラーニング,高等教育ジャーナル
Vol.13 pp.21-28,2005
[3]野口聡他:電磁気学教育,電磁機器設計のた
めの電磁場可視化・電磁力知覚インタラクテ
ィブシステムの開発,日本シミュレーション学
会誌 第 23 巻第 3 号 pp42-50,2004
[4]吉野純一:電磁気学の基礎と演習,コロナ社,
2002
[5]後藤尚久:グラフィック電磁気学,朝倉書店,
1991
(2009 年 3 月受け付け)
製図導入教育におけるコンピュータ活用事例報告
和田 健
大阪府立工業高等専門学校 総合工学システム学科システムデザインコース
1.はじめに
3. 製図導入教育における課題
本校 1 年生に対して開講されている総合工
学実験実習Ⅰでは,“体験的学習を通じて工学
への「興味・関心」をかきたたせるとともに,もの
づくりに関する基礎的技術や発想法を身につ
けること”を目的とし,各工学分野の実験あるい
は実習をオムニバス形式で行なっている.この
なかで,設計製図分野としては“製図基礎”およ
び“CAD 基礎”という 2 つのテーマをもうけて,2
週(4 時間×2)にわたって実習を行なっている.
本稿では,このうちの“製図基礎”におけるコン
ピュータの活用事例について報告する.
製図の導入教育では,一定割合で少なから
ず存在する“空間把握・立体把握が極端に苦手
な学生”に対してどのようなフォローを行なうか
が重要なポイントとなる.特段のフォローもなし
に授業を進めた場合,その学生の製図嫌いは
一気に加速する.
例えば,製図教育の初期段階では,図1に示
すような「等角図(あるいはキャビネット図)から
三面図(立体物を正面,上面,右側面から投影
した図)を作図せよ」という基礎演習がよく行な
われる(本実習でもこの演習を行なっている).
この演習では,投影図をどのように描くのか,
外形線・かくれ線・対称中心線をどのように描き
分けるのかといったことを繰り返し慣れさせなが
ら覚えさせるという目的がある.しかし,立体把
握が苦手な学生にとってはそれ以前の問題,
つまり,その立体物を右側面から見たときに「そ
れがどのように見えるのか」といったようなことが
イメージできないということが問題となる.一般に,
空間を認識し立体形状の把握を補助するため
の教材としては,図 2 に示すような模型などがあ
り,各種メーカーから発売されている.
しかし,これらの模型教材は,効果は高いもの
の非常に高価であり,一斉進行する大人数の
実習では使いづらいという難点がある.
2.製図基礎実習の概要
総合工学実験実習Ⅰの実習テーマ “製図
基礎” では,次に示す 4 項目を達成目標として
掲げ,簡単な手書き製図をする(等角図から三
面図を描く,三面図から等角図を描く,三面図
に寸法記入をする)といった体験的学習を行な
っている.
1. 機械製図の目的と意義を理解し,それを説
明することができる.
2. 立体物から第三角法により三面図を描くこ
とができる.
3. 三面図を元に立体物をイメージすることが
できる.
4. 簡単な寸法記入ができる.
平成 20 年度まで,この実習は製図室を使用
して 8 時間(月曜午後 4 時間×2週)で行なって
いた.しかし,平成 21 年度に総合工学実験実
習Ⅰ全体の構成見直しがあり,本実習の時間
が 4 時間(4 時間×1週)に減少されたことから,
大幅に実習内容を変更し,場所を製図室からコ
ンピュータ室に移してコンピュータを積極的に
活用する形式で実習を行なっている.
図 1 基礎演習:三面図(投影図)の作図
- 15 -
図2
製図学習実体模型
図3
4. 立体把握補助のための Acrobat 3D モ
デルの利用とテキストのウェブ化
以上のような背景より,本実習では実習にコ
ンピュータ室を利用し,模型教材の代わりにコ
ンピュータ上で表現される 3D モデルを空間把
握・立体把握のための補助教材として利用する
という試みを行なった.
また,コンピュータ室を利用するということで,
これまで紙媒体で提供してきたテキストを,全て
電子化しウェブブラウザを通じて閲覧できるよう
にした.ウェブテキスト化することで,これまでの
紙媒体ではコスト面で難しかったカラーの図を
多数使用できるようになり,学生にとってより分
かりやすいテキストを提供することが可能となっ
た.また,枚数についての制約もなくなったこと
から,作業の早い学生,標準レベルの課題だけ
では物足りないと感じる学生向けにやや難易度
の高い演習課題を用意することもできるようにな
った.
補助教材として学生に提供する 3D モデルは,
無償で入手できる Adobe Reader を利用して閲
覧可能な Acrobat 3D 形式で提供を行なった.
具体的には「次に示す等角図より,三面図を作
成せよ」という課題,「次に示す三面図より等角
図を作成せよ」という課題に対して,その対象立
体物の 3D モデルを Acrobat
3D 形 式
であらかじめ準備しておき,学生が各端末から
必要に応じて閲覧できるようにした.Acrobat 3D
形式の 3D モデルは Adobe Reader を 通 じ て
マウス操作により回転,拡大縮小,透過
Adobe Reader による 3D モデルの表示
ON/OFF などが簡単にできるため,三面図から
立体物の形状把握ができない学生や,投影図
をイメージできない学生の理解促進を大きくフォ
ローすることができる.
5.導入の効果と学生の反応
“製図基礎” の内容を大幅に変更して 1 年が
経過した.コンピュータを導入した現在の実習
形式について,定量的な学生アンケートは実施
していないが,実習報告書の感想欄を見るかぎ
りでは,不満や改善要求はほとんど見られない.
このことから,おおむね現在の形式について学
生は満足していると考えられる.
また,教員側としては,3D モデルを導入した
ことで,学生に立体の形状把握をさせることが
格段に楽になったと実感しており,導入により高
い効果があったことを感じている.
現在,演習課題に対して,3D モデルを用意し
ているのは 3 割程度である.3D モデル導入の
効果が確認できたので,今後も 3D モデルを増
やしていくことを考えている.
(2009 年 3 月受け付け)
- 16 -
計算機管理の移管補助の一事例
福嶋 茂信
大阪府立工業高等専門学校 総合工学システム学科 システムデザインコース
概要 府立高専では、今春計算機ネットワーク管理担当の職員の交替があった。
あいにく引き継ぎ作業のための時間をとることができなかった。そこで、操作マ
ニュアルに加え操作中の動画も作成しておき、基本的にこれらで引き継ぎ作業を
代用した。マニュアルと動画の内訳や作成について述べ、それらの効果について
評価する。
1.はじめに
1.はじめに
2.ネットワーク構成と管理業務
2.ネットワーク構成と管理業務
計算機ネットワークの管理業務は,組織内固
有の取り決めが多く,作業効率的には同じ管理
者が毎年担当する方が望ましい.本校では,一
昨年度より技術職員が毎年度当初に交替する
体制になった.さらに,契約の都合上,交替す
る技術職員間で仕事の引き継ぎを行うための
時間を持つことができない.ネットワーク管理に
詳しい教員が最終的な管轄をするものの,新任
の技術職員に一通りのネットワーク管理業務を
教育することは時間的に難しい.
本稿は,上のような状況において,業務の引
き継ぎを,基本的に電子的なコンテンツのみで
行う試行に関してまとめたものである.昨年度か
ら今春に当校で行った内容とその評価につい
て述べる.
図 1 は当校のネットワーク構成図である.下流
のネットワーク管理との責任の分界は,コースや
グループ(一般的な高専の学科に相当)に割り
当てられた L2 エッジハブであり,その先にコー
スやグループの端末がぶら下がる.サーバの台
数は,UNIX OS のサーバ機が 4 台,Windows
OS のサーバ機が 6 台である.
主な管理業務は,以下の(1)~(9)である.情
報システム統括室(以下,統括室)所属の教員
5 名と技術職員 2 名とで運営している.技術職
員 2 名は週に延べ 12 時間の電気と CAD の実
験実習の支援も担当している.
(1) IP アドレス管理
(2) アカウント・メールアドレス管理
(3) PC 教室(4 教室)保守
(4) 学生利用プリンタ用紙管理
(5) メーリングリスト管理
(6) ウィルス対策,Windows Update
(7) 幹線トラフィック,サーバ監視
(8) Microsoft 関連(Office School
Agreement, Academic Alliance)
インストールディスク管理
(9) 統括室 HP(各種告知用)更新
本校の技術職員は,人材派遣業者からの技
術派遣である.契約前に技術スキルの指定は
可能であるが,スキルのばらつきは小さくない.
しかし,より大きな障害は,着任時における引き
継ぎ,すなわち,本校特有の決まり事について
図 1 府立高専学内ネットワーク
- 17 -
理解してもらうことである.
決まり事には,(i) 学校職員としての学生との
接し方と(ii) ネットワーク管理に関する取り決め
の 2 種類に分かれる.(i)の心構えについては,
教員による日常的な指示や依頼から徐々に身
につけていってもらうしかない.本稿で扱うのは,
技術的な決まり事に関するものである.これをマ
ニュアルと動画といった電子媒体で伝達するこ
とを試みた.
3.ネットワーク管理業務のマニュアル化
3.1 コンテンツ作成の経過
電子マニュアルと説明用動画は,統括室教
員が用意するわけではなく,技術職員が作成
する.技術職員が作成したマニュアルや動画を,
次年度の技術職員が利用し,さらに改良を加え
る.これを繰り返すことで技術職員間の業務引
継ができれば,担当教員の負荷は大きく軽減さ
れるはずである.
これまでの経緯を時間に沿って述べる.
【H21 年度 4 月~9 月】
現体制に移行して 1 年目である.統括室教員
は技術職員に On Job Training に近い形で教育
を行った.ある程度業務に慣れたと判断したの
は,H22 年度 9 月である.
【H21 年度 10 月~12 月】
技術職員に日常的な業務の合間を縫ってマ
ニュアルを作成してもらった.
【H21 年度 1 月】
技術職員に操作時の動画を製作してもらった.
製作期間は約 10 日である.
【H21 年度 2 月~4 月】
本件については特になし.
【H22 年度 5 月】
GW 前後で技術職員が交替し,現在に至る.
3.2 マニュアルコンテンツの内訳
次に,H21 年度に作成したマニュアルについ
て述べる.
最終的には合計 29 のマニュアルを作成した.
例を以下に示す.スクリーンショット(SS)を目で
追っていくことで操作を再現できるように,1 ペ
ー ジ に 1 以 上 の SS を 含 め る よ う に し た .
Microsoft Word で作成し,これを PDF ファイル
に変換しファイルサーバ上に置いてある.マニ
ュアルの総ページ数は約 120 である.
教職員・学生アカウント作成
A/D サーバカウント作成(21 ページ、30
SS、3 テーブル)
メールアカウントの設定(11 ページ、13
SS)
エイリアスファイル修正(5 ページ、5 SS)
Web メール設定(8 ページ、9 SS)
プリンタ枚数管理設定(11 ページ、24 SS、
5 テーブル)
メーリングリスト登録(6 ページ、6 SS)
3.3 動画コンテンツの内訳
11 の動画を作成した.内容を示すファイル名
を以下に列挙する.
00 センター説明.wmv
01 アカウント確認決定.avi
02 アカウント作成.avi
03 ホームディレクトリ作成.avi
04 プリンタ管理フォルダ作成.avi
05 メール alias 作成.avi
06aWEB メール登録.avi
06bWEB メール確認.avi
06c コンフィグ修正.avi
07 プリンタ出力設定.avi
08 メーリングリスト登録.avi
09 印刷枚数変更.avi
10 アカウント無効・パスワードリセット.avi
11 バックアップ確認.avi
リスト 1 動画コンテンツ一覧
先頭の「センター説明」の動画は,仕事環境
の説明用である.ビデオカメラで撮影したものを
編集している.その他のものは,画面キャプチャ
ソフトで動画を作成し,それに読み上げソフト
(SoftTalk)で音声をつけている.画像サイズは,
Windows サーバが対象のときは 1280×1028 で
あり,UNIX サーバが対象ときは,749×623 であ
る . フ ァ イ ル サ イ ズ は , 11 の 動 画 の 合 計 で
1.69GB であり,平均では 1 本あたり 154MByte
である.長さは,合計で約 50 分であり,1 本平均
4 分 35 秒である.作成期間は,2 週間ほどであ
った.通常の管理業務と並行して作成した.
また,ネットワーク管理以外の業務も含めた作
業一覧も別途技術職員に用意してもらった.こ
- 18 -
れとコンテンツの DVD を GW 前の顔合わせ時
に渡した.
図 2 統括室内コミュニケーション
4.評価
4.評価
4.1 コミュニケーション量による比較
上図 2 に統括室での連絡形態について示す.
統括室の教員は 5 名いるが,うち 4 名は学内の
コースやグループを代表している.本校 LAN シ
ステムが各部署で適切に利用できるための連
絡や,各部署からの意見集約などを行う.2 名
の技術職員には,統括室長が主に指示を出し
ている.さらに,導入業者の SE のサポートが入
る形で管理業務は遂行される.管理業務の内
容は,メーリングリストで統括室員にも共有され
る.
今回評価するのは,統括室長,技術職員,SE
間のメールのやりとりである.技術職員の入れ
替わりは,H21 年度,H22 年度とも 5 月 GW 明
けであったので,5 月と 6 月のメールの本数に
ついて比較する.以下の表 1 にその結果を示
す.
表 1 メールの本数の比較
H21 年度 H22 年度 前年比[%]
46
25
54
24
13
54
5月
23
30
67
10
9
90
(各月上段は全体,下段は室長からの指示)
6月
技術職員の入れ替わりの 5 月において,統括
室全体でも,室長からだけでもメールの本数は
54%に削減された.6 月度については,全体的
には 67%の削減となったが,室長からのメール
は,ほぼ前年度と同等である.担当教員の負荷
軽減という観点でいうと,最初の 1 ヶ月にその効
果が大きいといえる.
4.2 技術職員からの評価
次に,技術職員(H22 年度)からの主観評価
を行った.実施したのは,着任度約 2 ヶ月経過
した時点である. (i)利用のしやすさ,(ii)有効性
(役に立つか),(iii)わかりやすさ(構成など),
(iv)見やすさ,(v)信頼性,(vi)全体的な印象の 6
項目について,5 段階の評価を行ってもらった
(最高 5,最低 1). 表 2 にその結果を示すが,
中立的な評価が多く,あまり参考にならない.マ
ニュアル,動画とも,役立つかどうかと構成とに,
否定的な意見が少しあった.
表 2 使用者による主観評価
動画
マニュアル
利用しやすさ
役立ち感
構成
見やすさ
信頼性
全体的印象
3
2.5
2.5
3
3
3
3
2.5
2.5
3
3
3
次に,記述による主な回答を以下に挙げる.
(1)使用頻度(マニュアル)
・操作時に毎回
・最初の 1 ヶ月は 15 回,その後週に 1 回
使用頻度(動画)
・初回のみ
・最初の数回
(2)よいところ(マニュアル)
・Windows の GUI の操作がよく分かる
よいところ(動画)
・操作イメージを持つのによい
(3) 改善点(マニュアル)
・全体的な流れ図が欲しい
・CUI のキャプチャ画像が不鮮明
上の記述から,マニュアルは 2 ヶ月経過時点
でもかなりの頻度で利用されていることがわかっ
た.動画も少なくとも着任当初には役だったよう
である.
室長(管理側)の立場でいうと,本年度(2010
年度)は,新しい技術職員が着任当初に付きっ
きりになる必要がなかったことが非常に大きかっ
た.この一点だけでも,動画を用意した価値は
- 19 -
あったように思う.また,操作マニュアルの日常
的な利用頻度が予想以上に高いことがわかっ
た.
一方,複雑なトラブルが発生した場合は,管
理側で主体的にとり組み,技術職員に明確な
指示を出す必要がある.このような場合は,経
験に基づいた応用力が必要であり,マニュアル
に記載されていることはあまり意味がない.
5.おわりに
5.おわりに
H21 年度から H22 年度にかけて,大阪府立
高専で行った,電子コンテンツを用いた技術職
員の業務引継について述べた.電子コンテンツ
としては,操作マニュアルの他に,操作時の
動画も用いた.操作マニュアルは,継続的に利
用されるのに対して,動画は着任時に利用され
る.動画は,着任直後において,管理側の業務
軽減に効果がある.特に着任 1 ヶ月間において,
上述の操作マニュアルと操作動画の電子コン
テンツが有効利用され,業務量低減につながっ
ていることが,部署内の通信量から確認され
た.
(2010 年 3 月受け付け)
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パソコン室などの運用記録(
パソコン室などの運用記録(2009 年度)
中方
大阪府立工業高等専門学校
昌彦
芝 拓哉
情報システム統括室
3. 開放利用実績
1.はじめに
2009 年度の情報システム統括室における運
用記録として,プリンターの印刷枚数および開
放利用の実績データをもとに示す.
学生が情報システムセンターのパソコンを空
き時間を利用する場合,開放利用記録を記入
することになっている.学生の記入習慣が定着
しつつある.集計した結果を以下に示す.
2009 年開放利用実績
2.印刷枚数状況
現行システムでは,プリント管理システム
(ApeosWare AcountingService)を利用している.
情報システムセンターで利用する全パソコンに
について,プリントの履歴データを収集している.
同プリント管理システムの補助ツールで作成し
たデータを以下に示す.
(前期・後期別)
年度学期
期間
H21 前期
102 日
H21 後期
86 日
集計
2211 名
1457 名
(休暇中の利用実績)
表1 2009 年度印刷枚数状況
期間
2009 年 04 月
2009 年 05 月
2009 年 06 月
2009 年 07 月
2009 年 08 月
2009 年 09 月
2009 年 10 月
2009 年 11 月
2009 年 12 月
2010 年 01 月
2010 年 02 月
2010 年 03 月
合計
面数
2577
4739
9778
13832
950
6877
6745
5423
4555
1120
4300
1553
62449
枚数
2463
4601
9409
12309
874
6514
6559
5320
4261
1102
4135
1440
58987
※面数はページ数,枚数は用紙数(A4,A3)
利用者
数
休暇
集計期間
夏季
H21/07/29-08/31
158 名
春季
H22/03/01-03/31
72 名
4. おわりに
情報システム統括室職員の立場からは,まだ細
かな不都合や繰り返し発生するネットワークトラブ
ルがあり,完全に安定動作はしないままに次期更
新を迎えるのではないかと心配するところもある.
次期システムも見据えて,ご意見・ご要望があれ
ば収集していきたい.補足情報として,次頁以降
に情報システムセンターパソコン室の授業時間割
表を載せる.
(2010 年 3 月 31 日受け付け)
- 21 -
- 22 -
- 23 -
パソコン室などの運用記録(2010 年度)
大阪府立工業高等専門学校
情報システム統括室
竹田
順一
1.はじめに
3.開放利用実績
2010 年度の情報システム統括室における
運用記録として,プリンターの印刷枚数およ
び開放利用の実績データを述べる.
学生が情報システムセンターのパソコンを
利用する場合,開放利用記録を記入することに
なっている.学生が記入した記録簿より集計し
た結果を以下に示す.
2.印刷枚数状況
2010 年度開放利用実績
現行システムでは,プリント管理システム
(ApeosWare Accounting Service)を利用し,
情報システムセンターで利用する全パソコン
においてプリント指示を行った場合,履歴デー
タを常時収集している.同プリント管理システ
ムの補助ツールで検索したデータを下表にま
とめる.
(通年:休業中を除く)
年度
期間
H22 通年
202 日
集計
2,323 名
(H22 通年時間帯別)
昼休み
5 時台
472 名
1,308 名
6 時台
962 名
(前期・後期別)
年度学期
期間
H22 前期
97 日
H22 後期
105 日
集計
1,445 名
878 名
表1 2010 年度印刷枚数状況
期間
2010 年 04 月
2010 年 05 月
2010 年 06 月
2010 年 07 月
2010 年 08 月
2010 年 09 月
2010 年 10 月
2010 年 11 月
2010 年 12 月
2011 年 01 月
2011 年 02 月
2011 年 03 月
合計
面数
2,641
8,056
8,447
7,034
785
7,631
5,185
5,778
1,057
7,727
8,724
851
63,916
枚数
2,442
7,824
8,186
6,843
754
7,331
5,105
5,611
1,003
7,572
8,586
840
62,097
(休暇中の利用実績)
利用者
数
休暇
集計期間
夏季
H22/07/30-08/31
128 名
春季
H23/03/01-03/31
65 名
情報システムセンターのパソコン室利用状
況を示す授業時間割表を次頁以降に示す.
※面数はページ数,枚数は用紙数(A4,A3)
- 24 -
- 25 -
- 26 -
パソコン室などの運用記録(2011 年度)
大阪府立工業高等専門学校 情報システム統括室
梶田 貴
1.はじめに
3.開放利用実績
2011 年度の情報システム統括室における
運用記録として,プリンターの印刷枚数およ
び開放利用の実績データを示す.
学生が情報システムセンターのパソコンを
利用する場合,開放利用記録を記入することに
なっている.学生が記入した記録簿より集計し
た結果を以下に示す.
2.印刷枚数状況
2011 年 8 月までのデータは,学内 LAN リプ
レイス時になくなった.残っていないため,同
年 9 月から翌年 3 月までの出力枚数を示す.
(通年:休業中を除く)
年度
期間
H23 通年
195 日
集計
1,866
(H23 通年時間帯別)
昼休み
17 時台
271 名
765 名
18 時台
579 名
(前期・後期別)
年度学期
期間
H23 前期
78 日
H23 後期
113 日
集計
996 名
774 名
表1 2011 年度印刷枚数状況
期間
2011 年 04 月
2011 年 05 月
2011 年 06 月
2011 年 07 月
2011 年 08 月
2011 年 09 月
2011 年 10 月
2011 年 11 月
2011 年 12 月
2011 年 01 月
2011 年 02 月
2011 年 03 月
合計
枚数
(不明)
(不明)
(不明)
(不明)
(不明)
7,088
5,668
5,383
3,360
7,751
8,823
1,738
68,859
(休暇中の利用実績)
利用者
数
休暇
集計期間
夏季
H23/07/30-08/31
0名
春季
H24/03/01-03/31
96 名
2011 年度開放利用実績
- 27 -
平成23年度 前期 授業時間割表
2011年7月7日作成
9 : 0 0 ~1 0 :3 5
1
1 0 : 4 5 ~1 2 : 2 0
2
3
1 3 :0 5 ~1 4 :4 0
4
総合工学基礎I
CAI (河内*,石川,越智,
前田,久野,藤長) 【3年】
CAD製図
1 4 : 5 0 ~1 6 : 2 5
6
7
8
電子デバイス
(前田) [4E]
CADII
(上村) [3-2]
CAD/CAM/CAE
(上村) [5S]
CAD (君家) [4M]
5
CADII
(和田) [3-1]
月
IP
制御工学特論
(土井) [専2M]
情報処理
(葭谷) [2-1]
HPC
特別研究
(小川,湯城) [3-4]
CAI
CADII
CAD (和田) [3-3]
CAD製図
(君家) [4S]
CADII
(三宅) [3-5]
情報
(窪田) [1-1]
情報
(芋野*) [1-2]
火
IP
HPC
メディアデザイン論
(福嶋) [5S]
CAI
総合工学実験実習III
CAD製図
(君家) [4H]
CAD (越智,田代,有末,當村,和田,上村,片山,梅本,
西,重井,早川,戸田,伊藤和,武市,藤長)[3年]
水
IP
マイクロコンピュータ
(大西) [4A]
データベース工学
(窪田) [5E]
英語応用演習II
特別研究
(小川,湯城) [3-5]
電磁気学I
(前田) [4E]
CADII
(和田) [3-4]
総合工学実験実習IV
(中馬,土井,石川,福嶋,重井,谷口,東田,
辻元,小幡,岩本,黒田芳,廣口,笠井,尾鷲)[5年]
情報
(稲浦*) [1-4]
情報
(稲浦*) [1-3]
情報処理
(花川) [2-2]
情報処理
(窪田) [2-5]
特別研究
工学システム計画
(藪,和田) [専1]
特別研究
(小川,湯城) [3-1]
特別研究
(小川,湯城) [3-2]
CAD/CAM/CAE
(上村) [5H]
電子機械工学実験
(君家,杉浦,田代,塚本,里中,山内,西,臼田*)
[4MSH]
情報処理
(葭谷) [2-3]
情報処理
(葭谷) [2-4]
HPC
CAI (中谷,前田,NET*) [専2]
システムデザイン演習
CAD (里中,上村) [5S]
木
IP
HPC
CAI (小川,湯城) [3-3]
CAD/CAM/CAE
CAD (上村) [5M]
金
IP
計算力学
(中谷) [専1]
電子機械工学実験
(君家,杉浦,田代,塚本,里中,山内,西,臼田*)
[4MSH]
HPC
※ 追加時間割 木曜日 9時限 ~ 10時限 IPルーム 総合課題学習
- 28 -
平成23年度 後期 授業時間割表
2011年9月27日作成
9 : 0 0 ~1 0 : 3 5
1
1 0 : 4 5 ~1 2 : 2 0
2
3
1 3 : 0 5 ~1 4 : 4 0
4
物理化学III
CAI (戸田) [4A]
数値計算
(早石*) [4M]
CAD
工学システム設計演習
(葭谷) [專1年]
5
1 4 : 5 0 ~1 6 : 2 5
6
7
8
数値計算
(早石*) [4H]
月
IP
総合工学基礎III
(河内*,石川,土井,前田,村田,武市)
[3年]
総合工学基礎IV
(和田) [3年]
数値計算
(菊地*) [4E]
数値計算
(早石*) [4S]
環境デザイン論II
(山野) [5C]
数値計算
(菊地*) [4C]
HPC
知的所有権
CAI (前田) [專2年]
CAD
CADI
(野田*) [2-2]
CADI
(野田*) [2-3]
火
情報
(窪田) [1-1]
IP
情報科学
(花川) [4M]
HPC
工学演習II
(前田) [4E]
環境デザイン論I
(山野) [4C]
CAI
総合工学実験実習III
機械デザイン
(里中)[5S]
CAD (越智,難波,有末,當村,和田,上村,片山,梅本,
藪,重井,早川,戸田,久野,福住,三宅) [3年]
水
IP
数値計算
(大西) [4A]
ヒューマンインターフェイス
(福嶋) [5S]
HPC
特別研究(湯城,井上,山崎,西田,中川,柴,
情報
ヒューマンインターフェイス
(福嶋) [5M]
CAI (芋野*) [1-2]
電磁気学II
(前田) [4E]
増木,川村,小川,畠山,深山,湯谷,佐々木,
松野,稗田,鬼頭,北野,佐藤,橋爪)
総合工学実験実習IV
システムデザイン演習
CAD (里中,上村) [5S]
工学システム設計演習
(藪) [專1年]
(中馬,土井,越智,難波,重井,青木,東田,久野,
小幡,福住,黒田芳,廣口,笠井,尾鷲) [5年]
[3年]
特別研究 [3年]
──────────
総合工学実験実習IV [5年]
木
特別研究(湯城,井上,山崎,西田,中川,柴,
IP
情報
(稲浦*) [1-4]
情報
(稲浦*) [1-3]
増木,川村,小川,畠山,深山,湯谷,佐々木,
松野,稗田,鬼頭,北野,佐藤,橋爪)
[3年]
HPC
設計工学
CAI (里中) [專2M]
CAD
CADI
(石川) [2-1]
音楽・美術・書道
(西村*)[1-1,1-2]
音楽・美術・書道
(西村*)[1-3,1-4]
CADI
(三宅) [2-5]
電子機械工学実験
(君家,杉浦,田代,塚本,里中,山内,西,臼田*) [4MSH]
金
IP
ヒューマンインターフェイス
(福嶋) [5H]
CADI
(伊藤隆*) [2-4]
HPC
※ 追加時間割 木曜日 9時限 ~ 10時限 IPルーム 総合課題学習
- 29 -
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