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立命館大学びわこ・くさつキャンパス 一日体験入学

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立命館大学びわこ・くさつキャンパス 一日体験入学
立命館大学びわこ・くさつキャンパス
一日体験入学
主催:
立命館大学生命科学部 応用化学・生物工学・生命情報学・生命医科学
共催: 日本化学会、化学工学会
日 時: 2010 年 8 月 6 日(金)
会 場: 立命館大学びわこ ・ くさつキャンパス
集 合: フォレストハウス 2 階 F201 教室
プログラム
9:30~10:00
10:00~10:05
10:05~10:25
10:25~10:30
10:30~10:40
10:40~11:30
11:30~13:00
13:00~15:30
15:30~15:45
15:45~16:00
受付(F201 教室)
開会の挨拶
生命科学部・薬学部の概要説明
実習に関する注意点の説明
テーマ毎に実験室へ移動
安全教育と実験内容の説明
昼休み(昼食は学内の食堂をご利用ください)
実験
F201 教室へ移動
アンケート実施後解散
注意事項
1. テーマによっては、安全のために白衣、保護メガネを着用して頂きます。
2. 実験指導者の指示に従い、行動してください。
3. 昼食は大学内の食堂をご利用可能です(所在はテキスト付随のキャンパスMAPに記載)。
*弁当を持参の方も食堂スペースをご利用いただけます。
<大学内飲食店リスト>
ユニオンスクエア内1F カフェテリア(食堂) 営業時間:11~14 時
ユニオンスクエア内1F コンビニ 営業時間:10 時~15 時
レストラン C-Cube 営業時間:12~18 時
サブウェイ BKC 店 営業時間:10〜20 時
1
実験番号
テーマ名
実習場所
1
物質の色と染色
学生実習室
(応用化学科: 岡田 豊/ 伊藤 達哉)
(エクセル2、 1階)
2
ナノホールを作ってみよう ~アルミ板の電気分解~
学生実習室
(応用化学科: 小島 一男/ 玉置 純/ 橋新 剛)
(エクセル2、 1階)
3
金ナノ粒子 色がイロイロ!?
学生実習室
(応用化学科: 小島 一男/ 玉置 純/ 橋新 剛)
(エクセル2、 1階)
4
クモの糸よりも細く、
鋼鉄よりも強い繊維を合成してみよう
学生実習室
(応用化学科: 堤 治)
(エクセル2、 1階)
5
液晶の色や組織を覗いてみると?
学生実習室
(応用化学科: 花﨑 知則)
(エクセル2、 1階)
6
超好熱菌の住む世界
環境バイオテクノロジー
研究室
(生物工学科: 今中 忠行/ 福田 青郎)
バイオテクノロジーで環境を科学する
7
~自然環境中に存在する微生物の観察とその DNA 抽出・定量~
(生物工学科: 久保 幹/ 松宮 芳樹/ 久保田謙三)
生物機能工学研究室
(エクセル2、 2階)
学生実習室
(生物工学科: 若山 守/ 矢野成和)
(エクセル2、 1階)
9
心臓の動きと心臓のシミュレーション
組織機能解析学研究室
(生命情報科: 天野 晃)
(クリエーションコア、 2階)
10
シアノバクテリアの光合成色素
生分子ネットワーク研究室
(生命情報科: 寺内 一姫)
(エクセル2、 2階)
11
心拍数を測ってみよう
応用生理学研究室
(生命医科学科: 里見 潤/ 谷田 守)
(サイエンスコア、 3階)
線虫 C.エレガンスってどんな虫?
病態細胞学研究室
(生命医科学科: 堀 利行/ 井上 英樹)
(サイエンスコア、 3階)
12
2
3~4
5~6
7~8
9~10
11~12
13~14
(エクセル2、 2階)
酵素反応を利用して絵を描こう
8
ページ
15~16
17~18
19~20
21~22
23~24
25~26
物質の色と染色
応用化学科
有機反応化学研究室
岡田
豊・伊藤
達哉
1.はじめに
われわれが色を感じる範囲はかなり狭い波長(400~800nm)の光に限られており、これを
可視光線と呼んでいる。一方、ほとんどの有機化合物は光のエネルギーを吸収するが、アルコ
ールやナフタレンなどの化合物が無色であるのは、光の吸収帯が紫外部にあって、可視部にな
いからである。有機化合物が色素となるためには可視部に光の吸収帯をもつことが必要条件と
なる。
染料は独特の鮮明な色をもっていることが必要条件であるが、色をもっているだけでは、そ
れは単なる色素であって必ずしも染料にはなりえない。色素が染料になるためには繊維を染め
ることができなければならない。そのためには染料が水または適当な溶媒に溶けて直接繊維が
染まるか、または染料自体が溶媒に溶けなくても、簡単な処理によって可溶性物質となり、繊
維がそれに染まって、後に不溶性の元の染料に再現できるものである。
染色堅牢度(せんしょくけんろうど)*を高めるように工夫された合成染料が非常に多く合成されている。本実
験では、次の3つの染色方法による染色をおこなう。
Ⅰ)直接染法:染料を水に溶かし、この水溶液に繊維をつけて染着させる方法で操作として
は最も簡単である。しかし、染料自身が水溶性であるため、洗濯などに対する堅牢度の優れた
染色物を得にくい欠点がある。
Ⅱ)発色染法:染料を合成する過程で、一歩手前の中間体の一成分を水に溶かして染着させ
た繊維を、さらに第二の染料中間体を溶かした水溶液で処理すれば、2種類の染料中間体が繊
維上で化合し、水に不溶性の染料に変化させることができる。すなわち、染料中間体同志を繊
維上で反応させて発色させる方法で、洗濯堅牢度の比較的高い染色が可能である。
Ⅲ)建染染法:染料が水に不溶性の場合、染料を適当な還元剤を用いて還元すれば水に可溶
性の物質に変化し、しかもこれを空気中に放置しておけば、酸素により酸化され、もとの不溶
性の染料に戻る場合がある。この性質を利用して、水に不溶性の染料を還元剤により還元し、
この状態で繊維に染着させる。染着された繊維を空気中にさらすと、染料は酸化されて元の美
しい色に戻るとともに水に不溶性となり、洗濯に対する堅牢度の高い染色を行うことができる。
*)染色する場合に最も重要なことは、繊維が美しい色調に染色されること以外に、日光,洗
濯,汗,摩擦,水,海水や薬品などに対する安定性をもつことである。このような安定性を一
般に”染色堅牢度”という。
3
2.実験
Ⅰ)直接染法
ビーカー中で、30ml の水に 0.1g のメチルオレンジを加え、約 50℃に加熱・溶解する。これ
にピンセットを用いて羊毛と木綿とを浸して、約 5 分間染める。染色した羊毛と木綿とは、ゆ
るやかに水洗後、空気中で乾燥する。両者の染色状態を比較しよう。
(H3C)2N
NN
SO3Na
Ⅱ)発色染法
①
ビーカー中で、40ml の水に 0.2g の 2-ナフトールと 0.2g の水酸化ナトリウムを加え、約
50℃に加熱しながら溶かす。これにピンセットを用いて木綿の布を浸す(約 10 分)。
②
別のビーカーを用い、2.5ml の濃塩酸を 10ml の水に溶かした水溶液に、1ml のアニリン
を加える(アニリン溶液)。
さらに、別のビーカーに、10ml の水に 0.8g の亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を調製し、
これを前に用意したアニリン溶液の中へ、5℃以下の温度に冷やしながら、ピペットを用いて
徐々に加える。
③
①で処理しておいた布を取り出してしぼり、しばらく空気で乾燥させておいてから、これ
を②で得られた塩化ベンゼンジアゾニウム溶液につけて染色する。染色した布はゆるやかに水
洗後、空気中で乾燥させる。Ⅰ)の直接染法と染色状態を比較しよう。
N2Cl
HO
OH
+
N N
Ⅲ)建染染法
ビーカーに 0.1g の粉末インジゴをとり、20ml の水を加える。これに 0.5g の水酸化ナトリウ
ムと 0.3g のハイドロサルファイトナトリウムを加え、約 50℃にあたためて還元する。インジ
ゴは還元されて黄緑色になる。これに 20ml の水を加えて、布を浸し、約 10 分間染める。布を
取り出して空気中に 10 分間以上放置すると発色する。ゆるやかに水洗した後、乾燥する。
OH
O
H
N
C
C
N
H
[H]
C
[O]
N
H
C
C
C
H
N
C
C
OH
O
4
アルミ板
アルミ板にナノホールを作
にナノホールを作ってみよう
橋新
剛、小島一男、玉置
純
はじめに
電池と電気分解の違いはどこにあるのでしょうか?最近テレビや新聞で紹介されて
いる燃料電池は水素と酸素を反応させて水と電気エネルギーを生み出します。電気分解
は電池の逆です。水に電気エネルギーを加えて水素と酸素に分解することができます。
電気分解は装飾品、自動車部品など金属をめっきするために使われています。
今日はこの電気分解を使ってアルミニウム板(アルミ板)を硫酸の中で溶かしてアル
ミニウムに穴を空ける実験をやってみます。さて、どんな穴ができるのか楽しみですね。
アルミ板
った希硫酸
希硫酸の
アルミ
板を使った
希硫酸
の電気分解
皆さんは高校の授業で「水を電気分解するときは、少量の硫酸や水酸化ナトリウムを
加える。」と教わっていますが、これはなぜでしょうか?水だけでは電気が流れないた
めです。電気を流すためには電気を通す物質(電解質)を水に加えないといけません。
図 1 は水で薄めた硫酸(希硫酸)の中にアルミ板を 2 本入れて、電気分解した時の様子
を示しています。この時の陽極と陰極での反応を示すと次のようになります。
陽極(酸化反応)
Al3+
2H2O
Al
→
-
4OH
→
陰極(還元反応)
+
+
3e-
O2
+
-
4e
(1)
(2)
+ 2e- →
H2
(3)
2H+
-
-
2H2O + 2e
→
H2
+
2OH
(4)
皆さんが良く知っている電気分解の反応は(2)と(4)です。図
図 1 の電気分解ではさらに(1)
と(3)の反応が加わってきます。(1)の反応では、アルミ板が溶け出すことでアルミの表面
に穴ができます。(3)の反応では、硫酸が電離して生じた水素イオン(H+)が陰極で還
元されて水素を発生します。
e-
-
+
O2
陽極
OH-
陰極
H2
H+
OH-
OH-
H2
H+
Al3+
OH-
e-
H2O
+
H
H2O
H2O
SO42-
H2O
図 1.
電気分解の
電気分解の様子(
様子(●:e-).
5
OH- OH-
ではアルミニウムが酸化されている(溶け出す)時に穴はいったいどのようにして発生
するのでしょう。図 2 は(1)の反応によってアルミニウムが溶け出す時にアルミニウムの
表面でどのような変化が起こっているのかを示しています。
Al3+
Al2O3
Al3+
Al
Al
Al
図 2. アルミニウムの酸化
アルミニウムの酸化によって
酸化によって穴
によって穴が発生する
発生する様子
する様子.
様子
アルミニウムが溶け始めてからしばらくすると、(5)の反応によって溶け出したアルミニ
ウムイオン(Al3+)が(4)の水の分解で生じる水酸化物イオン(OH-)と反応して水酸化
アルミニウム(Al(OH)3)ができます。(6)の反応では、脱水によって酸化アルミニウム
(Al2O3)ができます(脱水反応)。
Al3+
+
3OH- →
Al(OH)3
(5)
2Al(OH)3 → Al2O3
3H2O
(6)
+
このように、陽極ではアルミニウムが溶け出して穴(孔)が空き、その穴の表面が酸化ア
ルミニウムで覆われる。この反応を繰り返しながら穴が成長します。このようにして得
られたアルミニウム酸化物の細かい穴の空いた膜(細孔膜)を陽極酸化ポーラスアルミ
ナと言います。
実験
1)
) 電解研磨
一般にアルミ板はアルミの塊から切り出しているので、切削時にできた大きな傷
(凹凸)がアルミ板の表面に残っています。このままの状態で陽極酸化するとどう
なるでしょうか。切削によって表面に残っている凹凸はその大きさや深さが様々な
ので、孔の成長速度が凹凸の程度によって大きく変化して、綺麗な細孔を得ること
ができません。そこで、図
図 1 の電解液を過塩素酸とエタノールの混合溶液に変更し
てアルミニウムの板(アルミ板)を電解すると、表面の凹凸が除去されて非常に平
滑な面(鏡面)が形成されます。この処理を電解研磨と言います。
2)
) 陽極酸化
1)で電解研磨したアルミ板を濃度の異なる酸性溶液を使って電解します。
3)
細孔の
) 細孔
の確認
走査型電子顕微鏡(別紙参照)を使って 2)で陽極酸化したアルミ板の表面を観察
して、細孔が形成されているかどうかを確認します。
注意事項: 強酸を扱う場合は保護メガネ、手袋を着用してから実験するようにして下
さい。また、強酸および強酸を含む処理液が皮膚や衣類に付着しないように注意して下
さい。皮膚に付着した場合は直ちに水道水で洗い流して下さい。
6
高校生一日体験入学@立命館大学びわこ・くさつキャンパス(BKC)
担当:小島一男 (応用化学科 無機分光化学研究室)
はじめに
みなさん、ステンドグラスをご存知ですか?右の
写真のような教会などでよく見られる色がついた
ガラスです。着色された(stained)ガラス(glass)の意
味でそう呼ばれています。着色といってもガラスに
色を塗ってあるわけではありません。ステンドグラ
スはガラスの原料の中にいろいろな金属を混ぜて、
ガラスそのものに色をつけています。
左の表はステンドガラス中に使われている金属元素
色
含まれている金属元素
紫
マンガン+銅、コバルト
青
コバルト、銅
緑
クロム、鉄、銅
黄
銀、ニッケル、クロム、カドミウム
や銀はそれぞれ金色、銀色ですが、非常に小さいナノ
黄赤
セレン+カドミウム
粒子になると、金ナノ粒子は赤色、銀ナノ粒子は黄色
赤
金、銅、コバルト
になるのです。表中の他の金属は金属酸化物として
赤紫
ネオジム、マンガン
を示しています。ここで注目してほしいのが、赤色や
黄色のガラスに含まれている金や銀です。これらは金
属ナノ粒子(サイズ:1ナノメートル(1 nm=10-9 m))の形
でガラス中に含まれています。一般に知られている金
ガラス中に含まれています。
何故ナノ粒子になると色が変わるのでしょうか。これにはプ
ラズモン吸収が関係しています。プラズモン吸収とは、金属ナ
金属ナノ粒子
ノ粒子の表面に存在する電子がプラズマという状態になり、
+++
ある波長の光と共鳴してその光を吸収することで、金ナノ粒
子の場合520nm(緑色)、銀ナノ粒子の場合480nm(青色)の波
長の光を吸収します。そのため、その補色である赤色や黄色
に見えるのです。また、吸収される光の波長はナノ粒子の大
きさに依存します。大きいほど長い波長の光を吸収するので、
金ナノ粒子の場合、紫色をおびていきます。
7
−−−
光
電子雲
実験
今回、みなさんには実際に金ナノ粒子を作ってもらいます。
<使う試薬>
PVP水溶液
NaAuCl4水溶液
・テトラクロロ金(Ⅲ)酸ナトリウム・二水和物
(NaAuCl4・2H2O)
NaBH4溶液
・ポリビニルピロリドン (PVP) ([C6H6NO]n)
n
・水素化ホウ素ナトリウム (NaBH4)
N
O
<作り方>
まず、各試薬を水(NaBH4はエタノール)に加えてかく拌して
溶かします。次に、NaAuCl4水溶液(黄色)をPVP水溶液に加
えて30分間かく拌し、Au3+がPVPに取り囲まれた状態にしま
す。最後にNaBH4溶液を加えて1時間かく拌し、Au3+ (黄色)を
Au0 (赤色)に還元してやることで完成です。
※ 各試薬は直接皮膚に触れないように
してください(特にNaAuCl4・2H2Oは劇物)。
使用の際には手袋、保護メガネを着用し、
皮膚に付いた場合は、直ちに水道水で洗
い流してください。
測定
吸光光度計を使って吸収スペクトルを測定すれば、物質がど
の波長の光を吸収するかを調べることができます。今回、みなさんが
作った金ナノ粒子の吸収スペクトルを実際に測定してみます。
TEM
吸光光度計
透過型電子顕微鏡 (TEM) は、電子を利用する
顕微鏡の一種で、金ナノ粒子のように非常に小さい物質を観察す
ることができます。今回は測定を行いませんが、実際に測定した
写真を当日みなさんにお見せします。
Quiz
前ページで、金ナノ粒子は大きさによって色が変わることをお話しました。そこでクイズです。今回用
いる試薬だけでも金ナノ粒子の大きさを変えることができます。どうやればよいでしょうか?各自で
考えてみてください。できれば当日に、みなさんが考えた方法を試してみたいと思います。
8
鋼鉄より強くクモの糸より細い繊維を合成してみよう
担当:堤
治
1.はじめに
ナイロン–6,6 は,1935 年にアメリカ,デュポン社のカローザスによって開発
された世界初の合成繊維です。1938 年に同社より「石炭と水と空気から作られ,
クモの糸よりも細く,絹よりも美しく,鋼鉄より強い」というキャッチフレー
ズで発売されました。このキャッチフレーズからも分かるように,ナイロンは
細くても強度の高い繊維であり,耐摩耗性にも優れているため現在でも身の回
りでたくさん用いられています。例えば,ストッキングやスポーツバッグ,釣
り糸,漁業用具(網など)に利用されています。
化学的には,ナイロンは小さな分子が多数連結した巨大分子
O
H
C N
です。このような分子を「高分子」といいます。ナイロンはポ
リアミドと呼ばれる高分子の一種で,アミド結合(図 1)を介 図 1 アミド結合
してたくさんの分子が連結しています。ナイロン-6,6 の場合は,炭素原子が 6
個ずつからなる鎖がアミド結合によって連結されています(図 2,カルボニル基
(C=O)の炭素も数に含める)。
O
O
H
H
C CH2 CH2 CH2 CH2 C N CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 N
n
図2
ナイロン–6,6 の分子構造
ポリアミドはカルボニル化合物(カルボン酸,酸無水物,酸塩化物)とアミ
ンの縮合反応で合成できます。今回は,酸塩化物である二塩化アジポイル (1)と
アミンであるヘキサメチレンジアミン (2)を用いて,界面重縮合法1と呼ばれる方
法によりナイロン-6,6 を合成します(スキーム 1)。
スキーム 1
ナイロン-6,6 の合成
O
O
Cl C CH2 CH2 CH2 CH2 C Cl + H2N CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 NH2
1
NaOH
2
O
O
H
H
C CH2 CH2 CH2 CH2 C N CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 N
+ HCl
n
1
互いに混ざり合わない溶媒にそれぞれの反応剤を溶解し,両溶液の液­液界面で重合
する方法
9
2.実験
注意:この実験では強塩基(水酸化ナトリウム)を使用します。強塩基は非常
に危険であり,特に目にはいると回復不可能なダメージを受ける可能性が高い
ため,保護メガネを必ず着用して下さい。また,実験中は保護メガネを絶対に
外さないようにして下さい。試薬類が身体に付着した場合には,すぐに水道水
で洗い流すとともに担当者に申し出て下さい。
200 mL ビーカに水 100 mL を入れ,水酸化ナトリウム 3.5 g を加えてガラス
棒でよく撹拌し溶解する。5 mL のヘキサメチレンジアミンをメートルグラスで
はかりとり,これを水酸化ナトリウム水溶液に加え撹拌して溶解させる。別の
300 mL ビーカに 100 mL のジクロロメタンを入れ,二塩化アジポイル 5 mL を
ジクロロメタンに加える。ヘキサメチレンジアミンのアルカリ水溶液を二塩化
アジポイルジのクロロメタン溶液にガラス棒を使って静かに加える。ジクロロ
メタン相と水相の二層に分離し,界面にナイロン-6,6 の膜を生じるので,この
膜をピンセットでつまみ試験管に巻き付けて巻き取る(図 3)。一定の速度で巻
き取ると,均一な太さのナイロン糸が得られる。得られた糸は 50 %のアセトン
水溶液に入れよく洗浄する。ナイロン糸をアセトン水溶液から引き上げ,水で
洗浄を数回行ったら,ろ紙を数枚重ねたものに挟んで乾燥する。
試験管
ナイロン糸
ヘキサン相
界面
水相
図3
ナイロン糸の巻き取り
10
液晶の色や組織を覗いてみると?
立命館大学生命科学部応用化学科
有機材料化学研究室
1.
花﨑知則
目的
現在,液晶は各種ディスプレイ装置をはじめ,種々の分野で実用化されている.液
晶がこの様に応用され始めたのは 1960 年代であるが,その発見は意外に古く,約 120
年前のことである.
植物中のコレステロールの作用を研究していたオーストリアのライニッツァーは,
人参から抽出したコレステロールを扱いやすい安息香酸エステルとした.その時,こ
のエステルの融解現象が他の通常の有機化合物とは異なり,143.5℃で白濁し,178.5℃
で透明な液体となることを見出した.1888 年 3 月 14 日,ライニッツァーは,当時優
れた偏光顕微鏡を持っていたドイツの物理学者レーマンにこの試料を送り,さらに詳
しい研究を依頼した.レーマンはこの物質が液体としての流動性と,結晶としての光
学的異方性とを合わせ持つ事から,流動性結晶,のちに液晶と命名した.これが液晶
発見のいきさつであり,実験における「観察」の重要性を示す一例でもある.
液晶は,液晶相発現様式によって,ある温度
範囲で液晶状態を呈するサーモトロピック液晶
と,ある濃度範囲で液晶状態を呈するリオトロ
ピック液晶とに分類される.また,分子配列の
様式から,ネマチック液晶,スメクチック液晶,
コレステリック液晶等に分類される.このうち,
コレステリック液晶の分子配列を図 1 に示す.
図からわかるように,この液晶は「らせん」構
造を持ち,この「らせん」の周期に応じて光を
波長選択的に反射する.この波長が可視光領域
にあれば,美しい色を呈する事になる.
実験では,リオトロピック液晶を形成する高
分子溶液の濃度や温度を変化させる事によって,
コレステリック液晶のらせん周期を変化させ,
図 1 コレステリック液晶分子配列
その選択反射の波長が変わる事による美しい色
:液晶分子
の変化を観察しよう.
また,サーモトロピック液晶の温度を変えることで,液晶相から液体相へと変化す
る様子を肉眼で観察した後,これを偏光顕微鏡で観察してみよう.偏光顕微鏡を使う
と,液晶相に特有の美しい模様(組織)が観察できる.
さらに,2枚の透明電極付きのガラス基板の間に液晶を注入し,これに偏光フィル
ムを貼り付けて液晶セル(TN 型液晶セル)を作り,電圧を加えてみよう.これを使
って液晶ディスプレイの原理を考えてみよう.
11
2.
実験
2.1
コレステリック液晶の調製と観察1)
2g,イオン交換水
1.2g
<試薬>
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
<器具>
サンプル瓶×1 本,黒い紙,かき混ぜ用ガラス棒,氷水,温水(60℃程度)
<調製と観察>
① HPC を 2g 量り取り,サンプル瓶に入れる.
② イオン交換水 1.2g を量り取り,①で用意したサンプル瓶に入れる.
③ かくはん用ガラス棒で,気泡が入らないようにゆっくりかき混ぜる.
④ これらを一晩放置する(粘度が高いので均一溶液となるのに時間がかかる).この
実験では,あらかじめ①~③と同様の方法で調製した試料で⑤以降を行う.あらか
じめ調製した試料(5 本)は,それぞれ HPC 2g に,イオン交換水 0.9g,1.0g,
1.1g,1.3g,および 1.4g を加えたものである.
⑤ サンプル瓶のまわりを手のひら,もしくは黒い紙で覆い,反射光の色を観察する.
濃度に応じて異なる波長の選択反射が観察できる.続いて,温水で試料を温めたり,
氷水で冷やしたりする事によって,温度変化による液晶状態の変化を観察する.温
水に浸す時は,サンプル瓶の底から 5mm 程度だけ浸し,また 5~10 秒程度つける
だけにする.長時間,高温の温水にサンプル瓶全体を浸すと,サンプル瓶が割れる
(破裂する)危険性があるので注意する.
⑥ サンプルを自宅に持ち帰っても良いので,色々なサンプルを温水で温めたり氷水で
冷やしたりして,色の変化や液晶性の消失ないしは発現を確認してみよう.
2.2
サーモトロピック液晶の偏光顕微鏡観察
<試薬>
メトキシベンジリデンブチルアニリン(MBBA)
少量
<器具>
スライドガラス×1,カバーガラス×1,偏光顕微鏡,温度制御装置
<観察>
① サンプル瓶に入った MBBA の様子を肉眼で観察する(MBBA は室温で液晶状態).
② サンプル瓶をお湯(60℃程度)に浸し(底の方だけ),変化を観察する.
③ スライドガラス上に MBBA を一滴落とし,カバーガラスを載せる.これを偏光顕
微鏡に取り付けた温度制御装置にセットし,まず室温で観察する.
④ 温度制御装置を作動させ,徐々に温度を上げていきながら観察する.
2.3
TN 型液晶セルの作成と観察
<試薬>
4-シアノ-4’-ペンチルビフェニル(5CB)
<器具>
TN 型液晶セル×1 組,偏光フィルム×2 枚
少量
<観察>
① あらかじめ組み立てられている TN 型の液晶セルの内部に,5CB をしみこませる.
この状態で乾電池につないで電圧を加えた時の変化を観察する.
② 偏光フィルムを 90°ずらした方向になるように(直交ニコルになるように)液晶
セルの上下に貼り付ける.この状態で再び乾電池につなぎ,変化を観察する.
3.参考文献
1) 瓜生敏之,加藤隆史,現代化学,1991 年 7 月号,25-28 頁(東京化学同人).
12
超好熱菌の住む世界
担当者
環境バイオテクノロジー研究室
福田 青郎・今中 忠行
<1>はじめに
現在この地球上には、われわれ人間はもちろん動植物や微生物にいたるま
で、さまざまな生物が生息しています。これら地球上にすむ生物が共通して持
っている 16S rRNA 遺伝子配列を元に進化系統樹を作製すると、大きく三つのド
メインに分かれます。すなわち真核生物(Eucarya)と細菌(Bacteria)、始原
菌(Archaea)です(下図)。真核生物とバクテリアはともかくアーキアはあま
り馴染みがないと思います。このアーキアはバクテリアと同じく核膜を持たな
い原核生物で、80℃を超えるような温泉地に住む好熱菌や、高塩濃度の塩湖等
に生息する好塩菌、またはメタン生成などを行うメタン菌等を含む微生物群で
す。下図の進化系統樹を見ると、根の近傍には至適生育温度が 80℃を超える超
好熱菌が位置しています。このことから超好熱菌は生命の起源である可能性が
高いと考えられており、現在でも様々な議論がなされています。さらにこの現
存する超好熱菌には原始の代謝を予想させるものがあり、この微生物は非常に
興味深い存在です。また一方で好熱菌は工業的に有用な耐熱性酵素を産生する
ため、産業への利用の観点からも興味深いという特徴もあります。
地球上にすむ生命の遺伝子配列を基にした進化系統樹
13
本研究室では、「生命現象の根本的な理解」、「産業
的な応用」の両面を視野に入れ、超好熱始原菌
Thermococcus kodakarensis(右図)をはじめとした
様々な好熱菌を対象として研究を行っています。今回
使用する菌 T. kodakarensis は鹿児島県小宝島の海底
温泉より単離された絶対嫌気性 硫黄還元型 超好熱
始原菌で、これまでに全ゲノム配列の解析が終了して
おり、ゲノム上の半分程度は役割がわかっています。
<2>目的
今回の実験では、超好熱菌研究の初歩中の初歩である、
「超好熱菌の培養」を
行います。今回の実験を通して、様々な場所に生物が生息していることへの理
解や、原始生命体への理解が深まることを期待します。
<3>実験操作
① 培地の作成
②
③
④
⑤
⑥
⑦
トリプトン
2.5g
乾燥酵母エキス
2.5g
人工海水の元
15g
ピルビン酸
2.5g
上記の試薬を 600ml の水に溶かす。
①で作成した培地を 100ml・耐圧性培養瓶に分注する。
下記の(c)-(f)を培地に植菌する。
(a)(b) 何も植菌しない(ブランク)
(c)(d) 超好熱菌 T. kodakarensis 菌液
(e)(f) 常温菌 大腸菌菌液
(a)(c)(e)を 80℃の保温機に静置 (b)(d)(f)を 37℃の保温機に静置
せっかくなので、生卵も 85℃と 37℃の保温機にいれる。
せっかくなので、保温開始一時間後くらいに、卵の固まり具合を見てみる。
数時間後恒温機から培養液を出し、顕微鏡で菌体の存在を観察する。
<4>安全のために
(ⅰ) 危険ですので、研究室内の器具に“絶対”手を触れないで下さい。
(ⅱ) 今回の実験では 85℃で微生物を培養するため、火傷に気をつけて下さい。
高温のものに触るときは、必ず軍手をつけてから触れるようにして下さい。
(ⅲ) 今回使用する試薬・菌体は安全なものを使っていますが、念のため菌液
や(ゆで卵も含め)卵を口に入れないようにして下さい。
14
バイオテクノロジーで環境を科学する
~自然環境中に存在する微生物の観察とその DNA 抽出・定量~
担当者
久保 幹
松宮 芳樹
久保田謙三
(1)はじめに
「カビ」「バクテリア・細菌」「ウイルス」など、普段耳にするこれらの言葉
は、悪い印象を持つことが多いかもしれない。しかし、私たちの身の回りには、
動物、植物、昆虫のほかにも目に見えないプランクトン、カビ、バクテリア、
更にはウイルスなど微生物が多様に存在し、お互い良い影響、悪い影響などさ
まざま共存・共生しながら生命活動を営んでいる。たとえば、土や水の中にも
微生物は多様に存在し、さまざまな生命活動を営んでいるが、私たちがなにげ
に生活する中では目で見ることもできないし、確認することも出来ない。
土壌中に存在する微生物は、枯れ草や土壌中の小さな動物・昆虫の屍骸など
を食べながら生育している。私たちが大便や小便をするように、微生物もさま
ざまな物質を排泄している。その排泄物はまた、他の微生物の栄養となるなど
の何回ものサイクルを通し、植物が栄養として利用するような物質、たとえば
亜硝酸や硝酸などに変換される。これを植物が利用し、我々が食べたりする。
これを物質循環という。このことから、土壌の微生物の数やバランスが悪いと、
植物の生長が遅くなったりして「やせた土」になる。
しかしながら、土壌の微生物は様々存在し、これまでに確立されている培養
技術では確認できない微生物がほとんどを占めている。微生物も私たちと同様
に遺伝子として DNA を有しており、その DNA を抽出して解析することで、微
生物がどの程度存在しているのかを測定することが出来る。
(2)目的
各自が持ってきた土壌中のバクテリアから DNA を抽出し、測定することで土
壌中のバクテリア数を調べ、どのような環境に微生物が多いかを考察する。
(3)実験操作の概要
土壌からの DNA 抽出
1)土壌を 1g 実験用のプラスティックチューブに入れ、バクテリアの膜を破
15
壊する界面活性剤などを含んだ溶液①8 ml と溶液②1 ml を加える。
2)この土壌けん濁液をプロペラにより 20 分間混ぜ(回転数 1,500 回転/
分 以降 rpm)、1.5 ml を別のプラスティックチューブに移し、8,000 rpm
で 20℃、5 分間遠心分離し、土と抽出された上澄み(上清)とに分ける。
3)上清 700 µl に、溶液③を 700 µl 加えよく撹拌し、12,000 rpm で 5 分間遠
心分離し、上清を 500µl 他のチューブに移す。
4)上清 500 µl に溶液④を 300 µl 加え、12,000 rpm で 15 分間遠心分離し、
上清を捨てる。上清に 500 µl の溶液⑤を加え、12,000 rpm で遠心分離し上
清を捨てる。
5)沈殿を吸引乾燥機により乾燥し、溶液⑥を 50 µl 加え、沈殿(DNA)を溶
解する。
6)5 µl をアガロースゲル電気泳動し、DNA の濃度をコンピュータにより解
析する。
溶液① eDNA 抽出緩衝液(100 mM Tris、100 mM EDTA、100 mM リン
酸 2 水素ナトリウム、1.5 M 塩化ナトリウム、1% CTAB)
溶液② 20%ドデシル硫酸ナトリウム
溶液③ クロロフォルム・イソアミルアルコール(24:1 で混合したもの)
溶液④ 2-プロパノール
溶液⑤ 70%エタノール
溶液⑥ TE10.1(10 mM Tris-HCl、1 mM EDTA)
(5)考察
A)なぜ DNA が取れるのかを考察しよう。
B)他の人が持ってきた土と微生物量を比較し、どのような場所に微生物が多
いかを考えよう
C)DNA がなぜバンドとして見ることが出来るのかを考えよう。
16
酵素反応を利用して絵を措こう
矢野 成和、若山 守
はじめに
地球上のすべての生物達の活動は、連続して起こる化学反応から成り立ってい
ます。一つ一つの反応を見てみると、実験室で酸やアルカリを用いたり、加熟して
行なう反応と同じです。それではガゾ)ンを燃やして走るくるまと比べて、なぜ私
達は過激な燃焼を行なわずに走ることができるのでしょうか?実は、生物の体内
で活躍している様々な酵素のおかげなのです。酵素はたいへん優れた触媒で、常
温常圧というマイルドな条件下において、複雑な反応を一本道に順序立て、副産
物ができるのを防ぎ、迅速に反応を進行させます。
われわれの実生活に別して酵素反応を考えた場合、次の2つの点が重要です。
第一は、生命活動の中心的な反応として、そq)メカニズムや特性について理解を
深めなければならないことです。第二は、私たちの生活を豊かにする素材や医薬
品などを生産する手段として、副反応が少なく常温で行える酵素反応が利用でき
ることです。
酵素の実体はどんなもの?
#酵素はタンパク質である。
#タンパク質は20種類のアミノ撃がペプチド結合をした高分子である。
#高分子のペプチドは3次元的に折りたたまれて、立体的な構造を取っている。
酵素タンパク質の立体構造モデル
酵素反応の特性
(1 )連続可能な反応(酵素は反応の道しるべ)
(2)温和な反応条件(酵素はぬるめがお好き)
(3)高い基質特異性(酵素は好き嫌いが激しい)
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酵素を利用して絵が措ける原理
オブラ-卜
邑=_I;・lc-:-tLL孟C
∵
アミラーセ●く酵素1 )
島
二二
++
グルコースオキシダーで(酵素2 )
、遠転化水素、 ・JJ/ルコ1-1義:.
原色
守,「
(1,2,3
H202
へ○ルオキシダーセ'(酵素3)
菜
原色素1 :4-アミノアンチピリン、フェノール
厚色素2 :〇一フエ二レンジアミン
原色素3 : ABTS (2,2㌧azino-dト【31ethyJ・ benzthiazoIine〕-sulfonic acid)
惜/C= C一正⊃
4-アミノ7:jfと0 1)ン
._ ■■・
恨一03S
二= i---:---- :
SO3縄▲
N
⊂二だ5 C二品,
0-7ここレンシてミン
ABTS
(2. 2 ㌧之2まT10一七三卜lr3-号thyi benzthia20ユまne.iuユ='onic acid)
18
心臓の動きと心臓のシミュレーション
生命情報科:
天野
晃
本講義では,生命科学の分野で日々進められている膨大な研究の成果を,計算機を使っ
て互いの関連を調べ,まとめていくことを目指しています.現在,生命科学分野で出版さ
れる論文の数は膨大なものとなっていますが,細分化された研究内容を互いに関連のある
「生命」の現象としてまとめていくという研究は少なく,まだ始まったばかりです.個々
の研究成果をまとめていくツールとして,計算機を利用したシミュレーションを利用しま
す.
実験テーマ:心臓のシミュレーション:
1.心臓の動き
心臓の動きは,主として磁気共鳴画像法(MRI)を使って計測や解析が行われています.
心臓は,上部と下部で逆向きに回転していることが知られており,雑巾を絞るような運動
で血液を拍出しています.
左心室タギングMRI画像(左:横断面,右:矢状面)
2.心筋細胞の仕組み
細胞は,細胞内外にあるイオンの濃度勾配を使って,様々な活動を行っています.こ
の濃度勾配を上手に制御しているのが,細胞膜上にある膜タンパク質です.膜タンパク質
の動作はかなり詳細に研究されており,詳細な数式モデルも提案されています.これらの
数式をまとめて計算することで,心筋細胞のイオン輸送活動を再現することができます.
今回は,心筋細胞モデルの活動を計算するシミュレータ simBio を使って,細胞の電
気的な活動の様子を観察します.最初に,細胞の活動の数式化の方法を説明した後,簡単
な時間経過を計算するモデルを作ってみます.さらに,既に作られている心筋細胞のモデ
ルを使って,実際の細胞の活動がどのように行われているかを,シミュレータを通して観
察します.
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心筋細胞モデル Kyoto モデルの構成図
3.心臓のシミュレーション
心筋細胞のモデルでは,細胞が発生する収縮力も計算できます.左心室全体の拍動を
計算するためにはスーパーコンピュータが必要ですが,例えば血圧の変化等のある現象だ
けに注目すれば,簡単なモデルで現象を再現できます.ここでは,そのような応用例も説
明します.
全身循環動態のシミュレーション
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左心室モデル
光合成色素をみてみよう
担当者:寺内一姫(生命科学部生命情報学科)
はじめに
光合成は、細胞の中の葉緑体に含まれている光合成色素が光を吸収するところか
ら始まる。光合成色素には、複数の種類があり,大きく分けると、クロロフィル、カロテ
ノイド、そしてフィコビリンなどがある。クロロフィルとカロテノイドは多くの光合成生物
に含まれているが、フィコビリンは紅藻やシアノバクテリアなどの一部の藻類のみに
存在する。
光合成生物の主要な色素であるクロロフィルには、クロロフィルaとクロロフィルbが
ある。クロロフィルは可視スペクトルの両端に近い青と赤の光を吸収する。このため、
光合成でクロロフィルだけが働くとすると、可視光の大部分は利用されないことになる。
しかし、光合成生物はカロテノイドやフィコビリンなど他の色素をもっており、これらが
青と赤の間の波長の光を吸収し、そのエネルギーをクロロフィルに受け渡す。
目的
薄層クロマトグラフィー(TLC=Thin Layer Chromatography)を使って、身の回り
の光合成生物がどのような色素をもっているかを調べ、その違いから生物の環境へ
の適応を考察する。
今日の実験
材料:生葉、乾燥葉など何でも良い
例)緑葉、紅葉した葉、乾燥した葉(紅茶、ウーロン茶、抹茶など)、スサビノリ(食
用乾燥海苔)など紅藻類、乾燥ワカメなど褐藻類、アナアオサ(お好み焼き用の
青のり)など緑藻類、シアノバクテリア
薬品:ジエチルエーテル(抽出溶媒)、石油エーテル、アセトン
器具:TLC シート(5cm 10cm)、ふたつきの透明なガラス瓶、乳鉢、乳棒、薬さじ、
ガラス細管、マイクロチューブ、ピペット
手順
1.TLC シートを準備する
5cm 10cm の両端から1cm の位置に それぞれ鉛筆で薄く線を引く。一端を
色素液をつける原点とし、もう一端を展開溶媒の最終前線とする。色素液を塗
布する点に印をつけておく。
21
2.展開溶媒の準備をする
1瓶につき10mlの展開溶媒(石油エーテル:アセトン=6:4) を壁に飛ばな
いように入れ、ふた(又はラップ)をしておく。
3.試料を準備する
試料を乳鉢で細かくすり下ろす。
4.色素を抽出する
ペースト状の試料を薬さじでマイクロチューブの4分の1程度入れ、エチルエー
テルを1ml加える。ふたをしてよく振った後、静置しておく。この上澄を TLC の
試料として用いる。
5.色素抽出液を TLC シートに塗布する
マイクロチューブの上澄を毛細管でとり、TLC シートの鉛筆で印をつけた点に
つける。色素のスポットはできるだけ小さく、濃い方が望ましい。そのため、毛
細管を TLC に接触させる時間は瞬時とし、乾いたら同じ操作を数回繰り返す。
この操作を10 20回程度繰り返して濃いスポットにする。
6.TLC シートを展開液の入った瓶に静かに入れ、色素を展開させる。
ガラス瓶のふたをあけ、静かに真っ直ぐ TLC シートを下ろし、液面が揺れない
ように静かにふたを閉める。
7.TLC シートを取り出す
10 15分程度で展開液が前線に到達する。ふたをあけ、TLC シートを取り出
す。色素(特にカロテン)はすぐに色が薄くなるため、スケッチや Rf 値の計測を
する場合は鉛筆で各色素スポットの輪郭を描く。植物名、色素名を書く。
*参考*
シアノバクテリアとは?
ラン藻、藍藻、藍色細菌ともいわれる光合成をするバクテリアであり、私たちのまわ
り、池、海、田んぼ、温泉、様々な環境で生きている。その祖先は、約 28 億年前には
地球で誕生したといわれて、植物の葉緑体の起源となった生物である。シアノバクテ
リアが約 20 数億年前に大発生したことで、地球上に酸素が増えて、その後の生命の
進化につながる。
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心拍数を測ってみよう
担当者:里見 潤、谷田 守(応用生理学研究室)
はじめに
心拍数は、身近な生体情報です。心拍数は秒針のついている時計さえあれば誰で
も自分自身で簡単に測ることができます。「1 分間に心臓が拍動のする回数」が心拍
数です。手首の血管に皮膚を介して手指で触れることで感知できる脈拍を手掛かりに
心拍数を測定するというのが最も簡単で一般的な方法です。
最近では、アスリートのトレーニングをサポートするための超小型・軽量のウォッチ
式の心拍数測定装置(ハートレートモニター)が開発され、激しい運動中の心拍数も
正確に測定できるようになりました。また、最新のハートレートモニターでは、心拍の
揺らぎ(心拍変動)を記録・解析し自律神経系の活動状態を推定することも可能にな
っています。
心拍数をはじめとする心拍情報は、極めてシンプルではあるけれども、アスリートス
ポーツにとっても健康のための身体活動にとっても有効に活用できる生体情報です。
目的
最新のハートレートモニターを使用して、自分自身の安静時および運動時の心拍情
報を記録し、専用ソフトウエアで解析することを体験し、身近な生体情報である心拍
数、および心拍変動についての理解を深める。
ハートレートモニター
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今日の実験
1.参加者は、まず、自分自身で手首での脈拍を手掛かりとした方法で心拍数を測
定してみる(①仰向けの姿勢、②床に腰を下ろした姿勢、③立った姿勢)。
2.ハートレートモニターを装着し、上記と同じ①-③の姿勢で心拍情報の記録を
行う。
3.次に、ハートレートモニターを装着したまま、実験室のある 3 階から1階まで階段
を使って降り、階段で5階まで上り、そこから階段で3階まで降り実験室に戻ると
いうコースを移動し、その間の心拍情報を記録する。
4.参加者の中から1-2名の希望者を募り、自転車エルゴメータ(運動負荷テスト
用固定自転車装置)で、数段階の軽い負荷強度レベル(きつさを感じないレベ
ル)の運動を行ってもらい、ハートレートモニターで心拍情報を記録する。
(*安全を最優先します。希望者がいない場合はこの実験は実施しません)
5.以上の測定が終了したら、ハートレートモニターによって記録されたデータを全
てパソコンに取り込み専用ソフトウエアによって心拍数および心拍変動に関する
解析を行う。
6.各自の得られた解析結果に関して、参加者みんなで意見を出し合い考察を行っ
てみる。
心拍の揺らぎ(RR間隔、瞬時心拍数の変動)
58.8拍/分
61.2拍/分
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線虫 C. エレガンスってどんな虫?
生命医科学科 病態細胞生物学研究室
堀 利行 井上 英樹
はじめに
線虫 Caenorhabditis elegans (C. elegans) は、土の中に棲む、雌雄同体と雄の性からなる、
体長 1mm 程度の小さな多細胞動物です。雌雄同体でたった 959 個、雄で 1031 個の細胞しか
ありませんが、腸を含めた消化器系、神経、筋肉など一通りの組織・器官が備わっています。
2002 年にノーベル医学・生理学賞を受賞した Sydney Brenner が最初に研究のモデル動物として
採用してから 50 年近く経ちます。その間線虫は飼育のしやすさ、世代交代の早さ、体が透明で
観察しやすいなどの理由で、世界中で実験動物として受け入れられてきました。線虫は、
1998 年に多細胞動物のなかでもっとも早く全ゲノム DNA 配列が決定されました。
ゲノム DNA の長さは 1 億塩基対(ヒトは 30 億塩基対)、約 20000 の遺伝子(ヒトは約 22000)
があることが推定されました。ヒトゲノム計画の進展により、ヒトの遺伝子で研究されたものの
うち約 74% が、線虫でも同様の遺伝子として見つかっています。
この中には、現在ヒトを苦しめる様々な病気を引き起こす原因となっている遺伝子も多く
含まれています。病気を治療するために、原因となる遺伝子の働きを知ることはとても大切です。
このことから、線虫を用いた研究は単に線虫のことを知るためだけでなく、線虫遺伝子の機能を
明らかにすることでヒトの遺伝子の機能を類推し、遺伝子が引き起こす病気の治療のための
研究の基礎として重要です。
0.1mm
図1:線虫の写真。左、雌雄同体。右、雄
咽頭
神経
腸
産卵孔
生殖腺
貯精嚢
子宮
肛門
wormatlas (http://www.wormatlas.org/)
図2:線虫の簡単な解剖図
1 日体験入学では、最初に線虫がどんな姿なのか、胚から成虫までを顕微鏡で観察してもらいます。
次に、線虫の行動実験を体験してもらいます。
行動実験
線虫は目がないので外部の情報は嗅覚、触覚に頼ることになります。線虫の雌雄同体 959 個の
細胞のうち、約 1/3 にあたる 302 個が神経細胞です。線虫はこの神経細胞を利用して運動し、
外部の情報感知してそれに対応した行動をします。例えば餌となるバクテリアの匂いを感知
することで誘引行動をとり、捕食者の匂いを感知することで忌避行動をとります。
今回は線虫の飼育に用いられる寒天プレートの上に、いろいろな匂い物質などを加え、
線虫が誘引されたり、忌避する様子を観察しましょう。また、どのような物質に線虫が
引き寄せられるのか、いろいろ調べてみましょう。
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材料と方法
材料:線虫用寒天培地、アジ化ナトリウム溶液、いろいろな化学物質や食品など
(試してみたい食品があればもってきてください。ごく少量でよいです)
方法: (1)餌を塗っていない線虫の飼育プレートの、両縁に近い部分に印をつける。片方が陰性対象
の印でもう一方が誘引物質の印である(A と B など書いて区別する )。
それぞれの印の上に 1μl の 1M アジ化ナトリウムを落とし、しみ込むのを確認する。
線虫は、誘引物質にひかれるといってもそこにずっと留まっているわけではない。
ある一定の領域を行き来するため、個々の線虫が誘引物質にひかれていったところに留まるように
するため、アジ化ナトリウムで麻酔をかけて動けなくする。
A
X
B
B
A
(2) 線虫をアッセイプレートにおく
(1) アッセイ用プレートの準備。
マーキングとアジ化ナトリウムの
滴下
(3) A に誘引物質、B に陰性対照を
落とす
(4) A, B 両地点にいる個体を計数する。
(2) 飼育していた線虫を 1.5 ml のゼラチン入り M9 バッファ(線虫用の緩衝液)で洗い流し、
プラスチックチューブに入れる。線虫が底に沈むまで 2 3 分おき、上清を静かに取り除く。
ゼラチン入り M9 バッファでもう 2 回同様に洗浄する。10μl ぐらいの線虫をプレート真中の X 印
あたりにのせる。
(3) 誘引物質を一方の印上に落とし、もう一方の印上に陰性対照をおく。実験中はプレートの
ふたを開けたり振動を与えたりしない。
(4) アッセイは 60 分間おこない、60 分後に各印の周辺に移動している線虫を計数する。
(5) 計数後、どのような化学物質や食品に誘引されたかまとめてみましょう。
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実験を行う際の注意点
1. 実験担当教員、TAの指示に従いましょう!
(間違った薬品の調整方法は怪我のもとです。研究室内には
高価な機器があるので、不用意に触らないようにしましょう。)
2. 実験中は保護眼鏡(ゴーグル)や、白衣を絶対に
脱いではいけません!
(薬品が飛散することがあります。)
3. 薬品の危険性を認識しよう!
(不用意ににおいをかいだり、口に入れたりしないこと。)
4.薬品がこぼれたり、肌や目に付着した場合は、す
ぐに教員やTAに報告し、処置してもらいましょう!
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