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NGNにおけるUNI/NNI信号方式の 標準化動向
グローバルスタンダード最前線 NGNにおけるUNI/NNI信号方式の 標準化動向 お お ば たくみ†1 た に だ こ う じ†2 大羽 巧 /谷田 康司 †1 NTTサービスインテグレーション基盤研究所 /NTTネットワークサービスシステム研究所†2 ITU-Tにおける次世代ネットワー る情報も制御信号上でセッション設定 た各種制御機能を提供するプロトコル ク(NGN)の信号方式の標準化は, 時に交渉されるため,使用を推奨する です. 網間(NNI)およびユーザ網間 コーデックの規定などの通信中のデー しかし,単に「SIPを適用する」と (UNI)の信号方式にかかわる勧告が タにかかわる部分の規定も含んでい いっても,IETFにおけるSIPの規定は ます. 基 本 手 順 を規 定 した文 書 である 2007年3月および2008年2月に発 RFC3261(4)が規定された2002年か 行され,音声や映像に関するセッ ション型サービスの基本的な接続に NGN信号方式の規定内容 ら現在まで6年余りの間に100文書以 関する部分が完成しました.ここで は,そのITU-TにおけるNGN信号方 式の概要を紹介します. NGN信号方式の規定範囲 上も追加規定が行われていることから NGNのセッション型サービスの制御 も分かるとおり,非常に広範囲にわた 信号としては,インターネット関連の るものですが,NGNにおけるセッショ 標 準 化 団 体 であるI E T F で規 定 する ン型サービスの提供にあたっては,そ SIP(Session Initiation Protocol) れらすべての規定に基づいた実装が必 を適用します.SIPはIP網上で一定時 要なわけではなく,また,IETFにおけ ITU-TにおけるNGNでは二者間の音 間継続する音声や画像などの通信を る規定は汎用的な用途に対応するため 声や画像によるインタラクティブなマ “セッション”と位置付け,その設定 オプションの選択の余地も多々あるた ルチメディア通信サービス(セッショ や解放,ならびに端末の登録も含め め,相互接続性の向上や実装の容易 ン型サービス)の実現を最初の勧告群 (リリース1)の最大の目標としていま した(1),(2).これに対応して,NGN信 UNI信号方式 (Q.3402) 号方式として,NNI(Network Net- NNI信号方式 (Q.3401) アプリケーション ANI work Interface)およびUNI(User アプリケーション・サービスサポート機能 Network Interface)の信号方式に かかわる勧 告 が2 0 0 7 年 3 月 および サービス サービス制御機能 ユーザプロファイル 2008年2月に発行されました. サービスストラタム 信号方式の規定点としては,図に示 すとおり,Y . 2 0 1 2 で規定するN G N アーキテクチャにおける他NGN事業者 との接続点であるNNI,および端末と の接続点であるUNIに対応して,NNI をQ.3401,UNIをQ.3402にて規定 管 理 機 能 ネットワークアタッチメント 制御機能(NACF) トランスポート ユーザプロファイル エンド ユーザ 機能 ションの設定・解放を行う制御信号の 他網 転送制御機能 しています(3). 信号方式の規定内容としては,セッ リソース・受付 制御機能 (RACF) トランスポート機能 UNI NNI トランスポートストラタム 制御信号の流れ 音声・画像・データなどの流れ 管理用信号の流れ 規定が中心となりますが,実際にセッ ション型通信を行ううえでの音声・ 図 NGN信号方式の規定点 画像の種類等の通信中のデータに関す NTT技術ジャーナル 2008.12 63 グローバルスタンダード最前線 性を目的として仕様の取捨選択(プロ ファイル)を行う必要があります. 表1 NNIでサポートするRFC 番 号 M/O タイトル そこで,IETFのSIPの規定をNGN RFC2046 多目的インターネットメール拡張(MIME)パート2:メディア型式 O 網間に適用する際のプロファイルを規 RFC2327 SDP:セッション記述プロトコル (Session Description Protocol) M RFC2976 セッション開始プロトコル(SIP)INFOメソッド (The SIP INFO Method) O RFC3087 SIP Request-URIを利用するサービス・コンテキストの制御 O 定したものがQ.3401であり,ユーザと NGN網間のプロファイルを規定したも のがQ.3402になります.具体的には, RFC3204 ISUP及びQSIGオブジェクトの為のMIMEメディア型式 O RFC3261 SIP:セッション開始プロトコル(Session Initiation Protocol) M RFC3262 セッション開始プロトコル(SIP)における暫定レスポンスの信頼性 M 文書(RFC)レベルからメッセージ・ RFC3264 セッション記述プロトコル(SDP)を使ったオファー/アンサーモデル M パラメータレベルに至ってサポートの必 RFC3265 セッション開始プロトコル(SIP)特有のイベント通知 O RFC3311 セッション開始プロトコル(SIP)UPDATEメソッド M 須(M)・オプション(O)の区別や RFC3312 リソース管理とセッション開始プロトコル(SIP)の統合 O RFCの規定範囲内でのオプション項目 RFC3323 セッション開始プロトコル(SIP)のためのプライバシー機構 M の選択や規定の明確化などを行ってい RFC3324 網付与ID情報のための短期的な要求条件 O RFC3325 トラストドメイン内の網付与ID情報のためのセッション開始プロトコル(SIP)へのプライベート拡張 M ます.UNIとNNIで使用するプロトコ RFC3326 セッション開始プロトコル(SIP)のためのReasonヘッダフィールド M ルがともにSIPであるため,Q.3401と RFC3398 SIP- ISUP信号方式相互接続に関する技術仕様 O Q.3402の規定内容は非常に似通った RFC3420 インターネットのメディア型式 message/sipfrag(Internet Media Type message/sipfrag) O RFC3428 インスタントメッセージのためのセッション開始プロトコル(SIP) O RFC3455 3GPPのためのセッション開始プロトコル(SIP)のプライベートヘッダ(P-Header)拡張 O RFC3515 セッション開始プロトコル(SIP)Referメソッド O RFC3824 セッション開始プロトコル(SIP)におけるE.164番号の利用 O RFC3840 セッション開始プロトコル(SIP)におけるUA能力の通知 O ず,着側UNIでは発番号通知の有無 RFC3841 セッション開始プロトコル(SIP)の為の発信者プレファレンス O によって設定の要否が決定されるなど, RFC3891 セッション開始プロトコル(SIP) Replacesヘッダ O RFC3892 セッション開始プロトコル(SIP) Referred-Byメカニズム O RFC3893 セッション開始プロトコル(SIP) ボディ認証識別子型式(AIB)フォーマット O ファイルの一部としてQ.3401における RFC3911 セッション開始プロトコル(SIP) Joinヘッダ O NNIの文書(RFC)レベルの必須オ RFC3959 セッション開始プロトコル(SIP)の為の早期セッション特性型式 O ものとなっていますが,例えば,網で 保証した発番号のように網間では必ず 転送しますが,発側UNIでは設定でき 規定点ごとの差分も存在します.プロ プション規定を表1に示します. さらに,Q 3 4 0 1 / 3 4 0 2 では,セッ ション型サービスにおけるユーザ間の通 信中の音声・画像データのやり取りに 用 いるRTP( Real-time Transport Protocol)のプロファイルやそれに付 RFC3960 セッション開始プロトコル(SIP)におけるアーリーメディアおよび呼出音生成 O RFC3966 電話番号のためのtel URI M RFC4028 セッション開始プロトコル(SIP)におけるセッションタイマ M RFC4032 セッション開始プロトコル(SIP)のプレコンディション・フレームワークの更新 O RFC4235 セッション開始プロトコル(SIP)の為のINVITE送出ダイアログ・イベント・パッケージ O RFC4244 リクエスト履歴情報のためのセッション開始プロトコル(SIP)への拡張 O RFC4412 セッション開始プロトコル(SIP)の為の通信リソースのプライオリティ O RFC4458 ボイスメールおよび音声応答システム(IVR)などのアプリケーションのためのセッション開始プロトコル(SIP)URI O RFC4483 セッション開始プロトコル(SIP)メッセージにおけるコンテンツ間接参照メカニズム O 随して使用を推奨するコーデックも規 RFC4566 SDP:セッション記述プロトコル M 定しています. RFC4694 tel URI型式の為の番号ポータビリティ・パラメータ O M:該当RFCのサポートは必須 O:該当RFCのサポートはオプション ただし,Q3401/3402は端末の実 装を規定するものではなく,あくまで もUNI/NNIという規定点における信 するコーデックのリストに関する規定 点であるANI(Application Network 号方式の規定であるため,実際の通信 になっています(表2). Interface)が規定されています.ANI に使用されるコーデックはSIP による なお,Y.2012で規定するNGNアー には Y.2001ではParlay-Xを例として セッション確立時におけるエンド・エ キテクチャにおいてNGNと外部との接 オープンなAPIを提供すべきことが規 ンド間での交渉が基本であり,その交 続点は,NNIとUNI以外にも,図1 定されており,現在,ANI規定の具体 渉時に制御信号に設定することを推奨 に示すとおりアプリケーションとの接続 化に向けてアプリケーション・サービ 64 NTT技術ジャーナル 2008.12 表2 コーデックリストに含まれるコーデック デフォルト G.711 A/mu law:Pulse Code Modulation(PCM)of Voice Frequencies 術レポートに規定した範囲はそのまま 踏襲し,NGNアーキテクチャに完全準 AMR :Adaptive Multi-Rate 拠するよう機能拡張したものとなって EVRC :Enhanced Variable Rate Codec います. G.729 :Coding of Speech at 8 kbit/s using Conjugate-Structure Algebraic-Code-Excited Linear-Prediction(CS-ACELP) 今後の展開 G.729A :Reduced complexity 8 kbit/s CS-ACELP speech codec G.722.1 :7 kHz Audio-coding at 24 and 32 kbit/s for Hands Free Operation in Systems with Low Frame Loss 推 奨 G.726 :40,32,24,16 kbit/s Adaptive Differential Pulse code Modulation(ADPCM) AMR WB :Wideband Coding of Speech at around 16 kbit/s Using Adaptive Multi-rate Wideband(AMR-WB) VMR-WB :Source-Controlled Variable-Rate Multimode Wideband Speech Codec G.722 まずは基本的なセッション型サービスの 実現を想定し,UNIとNNIについて規 定しました.NTT研究所は,ITU-T :7 kHz Audio Coding within 64 kbit/s G.729.1 :G.729 based Embedded Variable bit-rate coder: An 8-32 kbit/s scalable wideband coder bitstream interoperable with G.729 T.140 I T U - T におけるNGN信号方式は, :Protocol for multimedia application text conversation での勧告の規定やTTCへのダウンスト リームにあたり,積極的に寄与してき ました.これらの規定はNTTのNGN サービス提供においても他事業者の スサポート機能の検討が進められてい 3GPP/ETSI TISPANでは完成度が NGNとの接続やユーザ端末との接続 ます. ある程度高まれば,実装を促すために において用いられる非常に重要なもの 早期に文書化し,その後適宜修正を であり, N T T のN G N サービスは 3GPP/ETSI TISPAN との関係 続けるというスタイルをとります.この Q.3401等のNGN信号方式にかかわる ように改版におけるポリシーが大幅に ITU-T勧告およびそれに対応するTTC 3GPPやTISPANにおいても,IMS 異 なりますが, I T U - T の勧 告 化 時 標準に準拠しています. やNGNの詳細な内部構造に従ってSIP (NNIは2007年3月,UNIは2008年 今後はITU-Tではさらに高度なサー 2月)には両者の規定は十分整合し ビスの実現,例えばカスタマイズされ たものとして規定しています. た呼び出し音や着信音の提供を目指し (5) ,(6) のプロファイルを規定しています . ITU-Tでは,3GPPやTISPANを参考 ています.今後も,日本のブロードバ にしたうえで,相互接続性向上の観点 国内標準化との関係 からNGNと外部との接続点に焦点を NTT研究所は国際標準化に積極的に 絞って検討を進めています.すなわち, I T U - T の規 定 はN G N 間 やユーザと TTCでは,ITU-Tに先立って従来 NGN間の相互接続により密接に関連 の事業者SIP網の規定をベースとした した規 定 であり, 3 G P P / E T S I 技術レポートをNNI/UNIに対応する TISPANの規定はNGNを構成する機 TR-9025,TR-9024(7)として限定的 能ブロックの実装に密接に関連した規 な機能を提供するかたちで規定しま 定であるといえます.よって,これら した. の規定は互換性があり,互いに補完し ITU-Tでの勧告化を受けて,NNIは 合うものであり,重複するものでも矛 TTCでもJT-Q3401として2007年度 盾するものでもありません. に標準化済みであり,またUNIについ ITU-Tでは完成度を十分高めてから ンド環 境 の先 駆 的 な経 験 を活 かし, ても2 0 0 8 年 度 に標 準 化 予 定 です. 勧告化を行うため,一度決めた勧告の ITU-T勧告をダウンストリームしたこ 修 正 はあまり頻 繁 に行 いませんが, れらのT TC標準は,先に規定した技 貢献していきます. ■参考文献 (1) 森田・今中・鎌谷・大羽・谷田:“ITU-Tの N G N 標 準 化 動 向 ,” N T T 技 術 ジ ャ ー ナ ル , Vol.19,No.9,pp.111-113,2007. (2) 森田・今中:“ITU-T NGNリリース1の完成, ” NTT技術ジャーナル,Vol.20,No.9,pp.64-65, 2008. (3) http://www.itu.int/rec/T-REC/e (4) http://www.ietf.org/rfc.html (5) 黒川・東:“ETSI TISPANのNGN標準化動 向,”NTT技術ジャーナル,Vol.18,No.4, pp.71-73,2006. (6) http://www.3gpp.org/specs/numbering.htm (7) http://www.ttc.or.jp/cgi/document-db/ index.html NTT技術ジャーナル 2008.12 65