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経済統計と日本経済 第1回:イントロダクション

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経済統計と日本経済 第1回:イントロダクション
経済統計Ⅱ
第6回:景気変動と経済統計
2016年10月31日
元山斉
石田和彦・吉野克文・美添泰人
景気循環に関する経済統計
・ 生産面から景気を捉える統計:月次ベースで、生産面から経済活動水準を測る
① 『鉱工業生産指数』
── 統計としては、他に、出荷、在庫、稼働率等も併せて、『鉱工業指数』(「経
済統計Ⅰ」第12回講義資料参照)
② 『第3次産業活動指数』、『全産業活動指数』
・ 景気の動きを総合的に捉えようとする統計:
① 『景気動向指数』
② その他、短観DI(『日銀短観』)
── 伝統的には『大口電力消費量』も注目されてきたが、その意義は低下?
・ 景気循環を主導する要因として注目される統計:
① 輸出入関連指標(→次回:日本銀行特別講義(吉野克文先生):国際収支統
計へ)
② 設備投資関連の統計(特に、先行指標)
2
「第3次産業活動指数」
1.統計の目的: 第3次産業に属する業種の生産活動を総合的に捉えること(経済産
業省が作成する加工統計)
2.統計作成方法: 個別業種のサービスの生産活動を表す指数系列を、基準年の
「産業連関表」による付加価値額をウェイトにして加重平均により算出
── 対象範囲: ①電気・ガス・熱供給・水道業、② 情報通信業、③運輸業、郵便
業、④卸売業、小売業、⑤金融業、保険業、 ⑥不動産業、物品賃貸業、⑦学術研
究,専門・技術サービス業、⑧宿泊業、飲食サービス業、⑨生活関連サービス業、娯
楽業、⑩教育、学習支援業」 (ただし、教育は「公務等活動指数」の対象)、⑪医療、
福祉、⑫複合サービス事業、⑬サービス業(他に分類されないもの、公務等を除く)
── 「個別業種の生産活動を表す指数」は、公的統計に限らず、各種業界統計等
も含めて幅広く収集(金額ベースのものは、「企業物価指数」、「企業向けサービス価
格指数」等の対応品目を用いて、実質化)
── 個別業種指数を基準年のウェイトで加重平均して算出(固定ラスパイレス算
式)
── 「鉱工業生産指数」と「第3次産業活動指数」等を合成した、「全産業活動指数
も」作成
3.統計の公表: 翌々月中旬頃
3
景気指標としての「第3次産業活動指数」
・ 景気判断・分析に用いられる指標(ただし、注目度はあまり高くない)
① 第3次産業活動指数
② 全産業活動指数
── 「全産業活動指数」は、「鉱工業生産指数」、「第3次産業活動指数」、「建設業活動
指数」(国土交通省、基礎資料は、「建設総合統計」)を、「産業連関表」の付加価値額ウェ
イトで合成したもの
── グロスの生産額か付加価値かの違いはあるものの、カバレッジとしてはGDPの生産
面に最もよく対応するものであるが、景気指標としての注目度はあまり高くない
・ 景気判断における注目度が高くない理由
① 統計精度に疑問が残る
── サービス業(及び、建設)に関しては、そもそも基礎統計の整備が十分とは言い難い
中で、無理をして活動指数を作成している面も(ユーザーもそう認識しているので、あまり
積極的には使わない)
② 公表が遅い(「全産業活動指数」は翌々月の下旬頃)
⇒ 将来的に、「サービス産業動向調査」等を用いて、統計精度の改善や公表の早期化が実
現すれば、注目度が高まる可能性はあるが・・・
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「第3次産業活動指数」の公表資料例(2016/8月分)
出所: 経済産業省HP
5
「景気動向指数」
・ 統計の目的: 「生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指
標の動きを統合することによって、 景気の現状把握及び将来予測に資するために作成さ
れた指標」(内閣府が作成する加工統計)
・ 統計作成方法:
①先行指数: 景気の動きに対し、先行して動く指標(11系列)を合成
②一致指数: 景気の動きに対し、一致して動く指標(10系列)を合成
③遅行指数: 景気の動きに対し、遅行して動く指標(9系列)を合成
── 合成の方法:
①CI(コンポジット・インデックス): 採用系列の前月と比べた変化量を合成したもの(合成
方法の詳細に関しては、内閣府のHPを参照)
⇒ 主として景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定することが目的
②DI(ディフュージョン・インデックス): 採用系列の各月の値の値を3ヶ月前を比較して、
採用系列数に占める拡張系列数の割合(%)
⇒ 景気拡張の動きの各経済部門への波及度合いを測定することが主な目的
・ 統計の公表: 速報=翌々月上旬、確報=翌々月中旬頃
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先行指数の構成
出所: 内閣府HP
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一致指数の構成
出所: 内閣府HP
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一致指数の最近の動き:足踏み(基調判断)
出所: 内閣府HP
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「CIによる景気の判断基準」(2016/7)
出所: 内閣府HP
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「CIによる景気の判断基準」(続き)
出所: 内閣府HP
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遅行指数の構成
出所: 内閣府HP
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QUIZ(第6回講義関連)
・ 「景気動向指数」の先行指数に採用されている11系列(「一致指
数のトレンド成分」は除く)から3つの系列を選んで、それぞれ、なぜ、
景気変動に先行するのか、その理由を考えよ。
・ コメントシートに記入して,感想等とともに,講義終了時に提出
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景気動向指数の資料例:「月例経済報告」
出所: 内閣府「月例経済報告主要経済指標」平成27年10月
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景気指標としての『景気動向指数』
・ 本来的には、景気動向指数の:
① 一致指数(CI)が上昇している、または同(DI)が50%を超えている時が景気拡張局面
② 一致指数(CI)が低下している、または同(DI)が50%を下回っている時が後退局面
③ 一致指数(CI)の変化の大きさが景気の拡張または後退のテンポを表す
⇒ 景気拡張期、後退期の判断材料
⇒ 『景気基準日付』も原則的には、『景気動向指数』に依拠して認定される
・ 先行指数: 一致指数に数ヶ月先行 ⇒ 景気の動きを予知する目的で利用
・ 遅行指数: 一致指数に数ヶ月から半年程度遅行 ⇒ 景気の転換点や局面の確認に
利用
⇒ 但し、実際は、『景気動向指数』のみに基づいて、機械的に景気の基調判断を行うこと
は困難
・ 景気判断に用いる上での留意点:
① 現実の経済構造に比べて、製造業関連指標のウェイトが高い
② 経験的、実際的に作成された指数であり、理論的な根拠、整合性を欠く面も(名目値
と実質値の混在、等)
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景気基準日付
出所: 内閣府HP
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景気動向指数研究会
(委員)
吉川洋座長
刈屋武昭委員
小峰隆夫委員
嶋中雄二委員
櫨浩一委員
福田慎一委員
美添泰人委員
(座長以外は五十音順)
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(参考) 景気判断(月例経済報告、2016年9月)
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設備投資関連の経済統計
・ 設備投資(民間企業設備)は景気判断上極めて重要な項目であるにもかかわら
ず、設備投資を直接捉える月次統計は、存在しない
⇒ 各種関連統計から、設備投資の動向を判断せざるを得ない
① 月次の設備投資関連統計(供給側): 「資本財出荷指数」、「資本財総供給」
── 生産統計から資本財部分を切り出したもの(「総供給」は、輸出入を調整)
② 設備投資の先行指標
ⅰ) 『機械受注』: 機械投資の先行指標
ⅱ) 『建築着工』: 建設投資の先行指標
ⅲ) 各種アンケート調査: 代表は『日銀短観』
③ 四半期の設備投資関連統計(支出側)
── 『法人季報』(『四半期別法人企業統計調査』)
⇒ 1次QEより遅い(⇒景気動向の判断指標としての役割は限定的)
⇒ むしろ、企業の設備投資行動の分析用に広く用いられる
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設備投資関連の統計:政府「月例経済報告」の例
出所: 内閣府「月例経済報告主要経済指標」平成28年9月
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「機械受注統計調査」
・ 調査目的 : 「機械製造業者の受注する設備用機械類の受注状況を調査し、設備
投資動向を早期に把握して、経済動向分析の基礎資料を得る」こと(内閣府、一般
統計調査)
・ 調査方法: 機械等を製造する企業のうち主要なものを対象
── 昭和60年現在でカバレッジが80%以上となるよう選定された企業280社(基本的
に固定)の回答の単純集計(母集団推計ではない)
・ 調査事項:
①需要者別、機種別の受注額
── 民間需要(製造業及び非製造業の内訳業種)、官公需、海外需要、代理店
② 機種別販売額及び受注残高
── 販売額及び受注残高については需要者別に調査していない。
・ 結果の公表: 翌々月の上~中旬頃
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景気指標としての「機械受注統計」
・ 景気判断・分析によく用いられる指標:
⇒ 「機械受注総額(民需、除く船舶・電力)」
── 「船舶、電力の受注は景気局面との対応性が薄く、不規則かつ多額であり、
懐妊期間が長いものも多いため、2ないし3期先の自律的な設備投資の動向をうか
がうのに不適当と考えられる。そのため、需要者別受注額において、「船舶・電力を
除く民需」等これらを除く項目を特に設けてある」
── 「なお、ここでいう「船舶」とは機種としてのものであり、「電力」とは需要者とし
てのそれである」
⇒ 「景気動向指数」の先行指数では、「実質機械受注(船舶・電力を除く民需)」を
「実質機械受注(製造業)」に入替え(2015/7月)
・ 景気指標として用いる場合の留意点
① 現在では、経験的に、設備投資に1~2四半期先行する傾向があると言われて
いる(統計開始当初の想定より、やや短期化)
② 機械投資しかカバーしない(建設投資は別途、「建築着工統計」等でみる)
── 機械投資に限っても、カバー率は低下している可能性(調査企業固定⇒経済
構造の変化を反映しない)
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「機械受注統計」の利用例
出所: 日本銀行「経済・物価情勢の展望」2016年7月
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「建築着工統計調査」
・ 調査目的: 「全国における建築物の着工状況(建築物の数、床面積の合計、工事
費予定額)を建築主、構造、用途等に分類して把握する」こと
── 国土交通省の基幹統計調査である「建築動態統計調査」の一環で、「建築物
着工統計」、「住宅着工統計」、「補正調査」からなる
・ 調査方法: 建築基準法第15条第1項の規定による建築工事届に記載されている
内容を都道府県が集計して、国土交通省に送付
── 形式上は調査統計の扱い(調査対象は、都道府県の建築主事等)であるが、
実質的には業務統計に近い(=統計精度は高い)
・ 調査事項: 建築場所、工事の予定期間、建築主の種別、工事種別、建築物の用
途、建築物の使途、構造、床面積の合計、工事費予定額、新築の場合における階
数、新築の場合における敷地面積
・ 結果の公表: 1ヶ月後の月末
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景気指標としての「建築着工統計」
・ 景気判断・分析によく用いられる指標
⇒ 民間(会社、会社でない団体、個人)・非居住用(居住専用、居住産業併用は除
く)の:
① 建築着工床面積: 実質の建設投資概念に近い
② 工事費予定額: 名目の建設投資額に近い
── 用途別(産業別)、使途別(事務所、店舗、工場、倉庫)、等の内訳も注目され
ることがある
・ 景気指標として用いる場合の留意点:
① オフィスビル、工場等の「建物」の着工を捉えるもので、設備投資全体の先行
指標ではない
── ただし、工場設備に関しては、一般に、建物→機械設備の先行関係あり
② 先行期間は、機械受注に比べて長いものと考えられる
── 建設投資の予測を行う場合は、用途別、使途別等の平均工期で進捗展開
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「建設着工統計」の利用例
出所: 日本銀行「経済・物価情勢の展望」2016年7月
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連絡事項
11/14日の講義時間に「小テスト(第1回)」を実施します。小テストの詳細は以下
の通り。
・ テスト時間: 60分
── 13:20にテストを開始しますので、必ず定刻までに集合して下さい。
・ 範囲: 主に、第1回講義~第6回講義の内容
・ 教科書(中村・新家・美添・豊田『経済統計入門[第2版]』、東京大学出版
会)、講義資料(第1回~第7回+経済統計Ⅰの講義資料も可)、自筆
のノート、のみ持込・参照可
・ 電卓使用可(但し、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の電卓機
能は不可)
・ 小テスト終了後に、テストの簡単な解説を行います。
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