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第6章 エレクトロニクス産業からの排出
第6章 エレクトロニクス産業からの排出 6.1 はじめに いくつかの進んだエレクトロニクス関係の生産工程では、複雑なパターンのプラズマ・ エッチング、チャンバーの洗浄、温度制御にフッ素化合物(FCs)が用いられている。本 章で取り上げるエレクトロニクス産業の個別部門には、半導体、薄膜トランジスタ液晶デ ィスプレイ(TFT-LCD)、光電池(PV)の生産(「エレクトロニクス産業」と総称する) などがある 1 。現在エレクトロニクス産業の生産工程からは、室温でガス状と液状の両方 の FCを 排 出 す る 。 ガ ス に は CF 4, C 2 F 6, C 3 F 8, c-C 4 F 8, c-C 4 F 8 O,C 4 C 6 ,C 5 F 8 、 CHF 3 、 CH 2 F 2, 三フッ化窒素(NF 3 )、六フッ化硫黄(SF 6 )が含まれていて、これらのガスは、エレクト ロニクスの生産での重要な二つの工程で用いられている: (i)シリコン含有材料のプラズ マエッチング(ii)シリコンが析出する化学蒸着(CVD)室の洗浄 2 。FCの排出量の大部 分は、エッチング工程中または洗浄工程中でのFC先駆物質の使用効率が低いことから発生 する。この ほか、生産 工程で使わ れるフッ素 化合物の一 部は、CF 4 場合によっ てはC 2 F 6 に変わることがある 3 。エッチングや洗浄用の炭素含有低k(または炭化物)材料の副生物 として生成されるCF 4 も計算に入れねばならない 4 。付け加えるに、地球温暖化にはそれ 自体は寄与しないが、使用が増加しているF 2 とCOF 2 もある条件下ではCF 4 を発生させる。 エレクトロニクス関係のある工程の温度制御にもFCs が使用される。これらのFCs は 室温では液体で適切な蒸気圧を持つ。蒸発損失がFCsの全排出量を増加させる。これらの 蒸発損失は、工程装置の冷却中、パッケージ型半導体のテスト中、蒸気相還流により回路 基板に電子部品をはんだ付けしている間で生じる。作業中の電子装置/システムの冷却に 液体FCs を用いる際には、蒸発損失は発生しないようである。この用途の場合、液体FCs は、製品またはシステムの耐用年数中密封したシステム内に封じ込められる。20 種類以上 の液体FCs がエレクトロニクス業界向けに市販されている。この場合完全フッ素化合物と 1 ヨーロッパと米国PVメーカーの最近の広範囲な調査では、PVメーカーの 40~50%がSiNxのフィル ムへの沈着の後FC(シリコンウエーハのエッチング時のCF 4 と洗浄中のC 2 F 6 が支配的)の比較的少量を 使用していることが分かった。2004 年のこの調査では、世界の使用量がCH 4 で約 30Mtである。世界の FC使用量が 2004 年は低かったので、PV業界の確かな今後の成長率は約 30%/年(それ以上も)である。更 に、いくつかの報告書は生産性向上と低コストが進むとしてFC使用の正しさを絶賛している。このよう に期待される成長率とFC使用増加の見通しはこの章のPVメーカーからのPFC排出量含有に興味を与え る。 2 C 5 F 8 はIPCCが認知するGWPを持たないが、C 5 F 8 排出量はこの章で記載する。C 5 F 8 は温室効果ガ スでありこの章で記載した方法とデータを使用して推計できる。C 5 F 8 の大気寿命は約 1 年で、比較的 低いGWPを持つ。(関屋、2003) 3 C 2 F 6 の副産物の排出は、C4F 6 分子の分解から観察されてきたが、炭素原子2個以上のその他のFC 分子についても副産物が排出されることがある。FC前駆物質からは副生物としてのC 2 F 6 の生成は検出 されていない。 4 低誘電率(低k)材料 は結合点が 0.25μm以下の半導体チップの相互結合構造用絶縁体として、当初 は、低誘電率(低k)材料が用いられていた。多くの低k材料には、低k蒸着用に用いられているCVD 室の洗浄中または薄膜エッチング中にCF 4 として除去される炭素が含まれている。CF 4 は炭化物の沈着 に使われるCVD室の洗浄中にまた形成する。 99 の混合物として市販されているケースが多い。これらのガスはGWPが異なることからそれ ぞれは個別に追跡調査され報告される。液体FCもGWPがそれぞれ異なるので、個別に報 告することが決められている 5 6 。液体FCs は、液晶パネル生産中の洗浄に時々用いられ ていて、この文書の7章で検討されている。 6.2 方法論の問題 6.2.1 方法論の選択 6.2.1.1 半導体のエッチングと CVD 洗浄、液晶ディスプレイと光電池 排出量は、各種の電子装置の生産に使われるガス、利用する工程(おおざっぱに言えば、 工程の種類-CVD かエッチング)、使用する製造設備のブランド、排出量削減技術の実施 状況に応じて変化する。 本節において「ティア」という用語を使うのは、必要データの増加、排出量推定過程の 高度化に対応している。どの方法を選択するのかは、どれほどデータを入手できるかによ って左右され、デシジョンツリーに概要が示してある。図 6.1「エレクトロニクスの生産 によるFC排出量推定のためのデシジョンツリー」を参照のこと。液体FCs からの排出量 は、異なるティア1,2と3方式を用いて推定し、本節では別々に説明する。継続的(現場 で)に排出量を監視することは、エレクトロニクス産業での排出量を推定するには技術的、 経済的に発展性のない手段と考えられている。FCの排出量は、新しい生産工程や製造設備 の開発中やセンターライン工程 7 (例えば、基準)確定後に定期的に測定される。企業は、 大量生産用に新しい生産工程を投入する前に、PFC排出量をできるだけ少なくするような センターライン工程設計を模索する。しかしながら、FCの排出量が工程のレシピー(例: 圧力、温度、プラズマ力、FCガス流量)の変化に影響を受けることもある点に留意せねば ならない。したがって、排出量の推定に使用する方法の精度は、生産に利用する工程と基 準となるセンターライン工程の相違に影響を受ける。FC排出抑制機器の効率は、メーカー の仕様書に従って機器の操作及びメンテナンスができるのかどうかに係っている。ガス流 量の増加、不適切な温度設定、必要なメンテナンスを怠ることが、いずれも性能に悪影響 を及ぼす。 推計される排出量の精度は用いられる方法に依存する。ティア1法は全てのパラメータ ーにデフォルト値を使用する。ティア2a 法では、工程で使用されるガスの排出削減技術 の有無による割合についての企業固有のデータを使用するが、エッチングと洗浄とでは区 5 これらの材料は商品名FluorinertとGaldenとして売られている。Fluorinertは完全にフッ素化したア ルカンに性能を得るためにエーテル,第三級アミンとアミノエーテルの混合物からなる。Galdenはパー フロロポリエーテル(PFPEs)と呼ばれる完全フッ素化ポリエーテルの液体である。 6 混合物を使用する場合は、インベントリ編集者は混合物の重量をCO 2 に換算するのに適切な換算係数 を使用することを確実に行う必要がある。ティア1法を使用するのならば、換算を適切に行うのに排出 係数を調整する必要がある。 7 センターラインの条件は装置製造者が、販売のために標準化する条件を参照。半導体製造業者は特別 な要求を最適化するためにこれらの条件を修正することが一般的である。 100 別せず、他のパラメーターにはデフォルト値を使用する。ティア2b 法では、エッチング 対洗浄のガス使用割合、排出削減制技術を採用している生産工程に使われるガス分に関す る企業固有のデータが用いられるが、その他のパラメーターの一部または全部については デフォルト値を利用する。最も厳密な方法であるティア3法は、デフォルトよりも工程固 有値の完全なものを必要としている。 表 6.1 は各ティアによる排出量推計に必要とされるデータをまとめた。 表 6.1 エレクトロニクス製造におけるティアによる排出量推計法を完全にするための情報源 データ 工程ガスの 投入設備 設備での工 程ガスの反 応と破壊 下流部での 排出削減 年間の生産 能力 ティア1 FC ip = 固 有 の 工 程 p又 は 標 準 工 程 設 備 (例 え ば 窒 化 ケ イ 素 エ ッ チ ン グ )の 小 部 分 に 投 入 されるガスiのkg FC ip = 広 い 範 疇 の 工 程 ( 例 え ば エ ッ チ ン グ や 洗 浄 )に 投 入 されるガスiのkg h= 使 用 後 に 容 器 に 残 っ て い るガスの割合 U ip = 各 ガ ス i 工 程 p で の 使 用 割合(破壊したり、輸送された 割合、kg中) B CF4ip とB C2F6ip =各工程での CF 4 と C 2 F 6 夫々の輸送した ガス i の割合 a ip =承認されたFC排出削減 技術のある工程に投入される ガス割合 d ip = 排 出 削 減 技 術 に よ り 破 壊されたガスiの割合 d CF4ip と d C2F6ip = 排 出 削 減 技 術 に よ る 副 生 物 CF 4 ,C 2 F 6 夫々の割合 C d =加工基板(例、シリコン、 ガ ラ ス )の 表 面 積 当 た り の 年 間生産設計能力 C U =年間能力の使用割合 D= 指針からのデフォルト係数を使用する 101 テ ィ ア 2b ティア3 M M D/M M=これらの値を測定あるいは入手する テ ィ ア 2a M M D D M D D M D D M M M M D D M D D M 図 6.1 エレクトロニクス製造からの FC 排出量推計用デシジョンツリー 開 始 エレクトロニクス・メーカーから FC と N 2 の活量データ と排出係数を入手 報 告 メーカーは 、生 産 工 程固有の排出係数 を用いているか? YES できるか? エレクトロ・メーカーか ら 活 量 / 排 出 量 データを 収 集 2 NO これ は主 要1 YES BOX4:ティア 3 ティア 3 方 式 を 用 い て 排出量を推定 NO YES 報告メーカーは、行程 の種類(CVD クリーニ ングか エッチング)別 の FC ガス の 使 用 を YES BOX3:ティア 2b ティア 2b 方 式 を 用 い て排出量を推定 追跡調査している NO NO 回 路 基 盤 部 分 別 (シリ コンか ガラス)の エレクトロニ クス年間生産 能力に 関 す る 全 国 データを 入手できるか? NO それぞれの部門の 回路基盤部分別年 間生産能力に関す る データを 作 成 ま た は入手する BOX1:ティア1 ティア 1 方式を用いて排 出量を推定 YES ティア1法-デフォルト 102 BOX2:ティア 2a ティア 2a 方式 を 用い て排出量を推定 ティア1法は、最も精度の低い推定方法で、企業固有のデータが入手できない場合にの み使用するものとする。ティア1法は、ティア3又は2法とは違って、エレクトロニクス 産業によるFC総排出量-すべてのガスを対象とした加重平均排出量-を推定する。計算は、 生産中に消費される回路基板(例:シリコン、LCDパネル又はPV-セル)1個あたりの平 均総排出量を表わす一般排出係数を使用する。続いて、排出係数に、年間稼動率(C u 、a 分)、処理加工した回路基板の年間設計生産能力(C d -10 億平方メートル(Gm 2 ))を乗 じる。C u ×C d の積は、エレクトロニクス生産中に消費された回路基板の推定量となる。PV 生産中はFCの使用量が大きく変化するので、第三番目の因子—FCを使用するPV生産の割 合—はPV分野からのFC排出量を推計するのに必要とされる。 式は、式 6.1 に示す。 式 6.1 FC total = EF × C U × C d × { C PV ×δ+(1-δ) } ここで、 FC total =総FC排出量(Mt-CO 2 )。 総排出量はその期間でのFC排出量の世界平均分布を 使用して個々のガスに分けることができる。 EF=基盤表面積 10 億平方メートルあたりのすべてのガスを対象とした加重平均 FC 排出量(Mt-CO 2 /Gm 2 )。 C u =年間の稼動率 C d =年間設計生産能力(処理加工した回路基板のGm 2 、PVの場合はMm 2 ) C PV =FCを使用するPV生産割合 δ=式 6.1 を PV 業界に適用する時は 1、半導体と LCD 業界の時には 0 この方法は、生産工程の種類(エッチング対洗浄)、個々の生産工程または製造設備の違 いは計算に入れず、大気中排出削減装置の使用も計算に入れない。 個々の FC の排出量を推計するために、生産で使用される FC の混合比とこれらの生産 工程から排出される典型的なガスの混合比について仮定を設ける必要がある。国固有か企 業固有のデータが利用できないのならば、次の%割合を使用することができる。これらは 半導体生産では 2000 年、LCD 生産は 2003 年、PV 生産は 2004 年での FC 排出量の世界 平均の割合を示している: 103 表 6.2 半導体生産でのFC排出量のティア1で想定した配分(MMTCE%)2 8 CF 4 C2F6 CHF 3 C3F8 NF 3 SF 6 25 52 3 3 3 14 出典:2000 年米国 EPA と半導体産業とのパートナーシップで報告されたもの 表 6.3 LCD 生 産 で の FC 排 出 量 の テ ィ ア 1 で 想 定 し た 配 分 (MMTCE%) CF 4 NF 3 SF 6 3 10 87 出典:ISESH 2004?から Leu, ITRI 表 6.3 PV 生 産 で の FC 排 出 量 の テ ィ ア 1 で 仮 定 し た 配 分 (MMTCE%) CH 4 C2F6 99 1 出典:V.Fthenakis,2005 FC i の排出量(kg) = FC i の仮定した割合×CO 2 等価排出量の合計÷IPCC第二次評価報告書での GWP ティア2a 法-工程ガス固有パラメーター この方式は、ガスの消費量、排出削減技術に関する企業固有のデータに基づき、使用す るそれぞれのFCの排出量を計算する。この方式は、使用残(使用後に出荷容器に残ってい る購入ガス分)(h)、半導体、LCD生産工程における「使用済み」(破壊または転換)ガス 分、生産工程中にCF 4 またはC 2 F 6 に転換されたガス分に関する産業規模の一般デフォル ト値を使用する。ティア2法を使用することに対し、国の政府は産業界との情報交換を指 導すべきである(例えば排出量の年次報告)。全排出量は、式 6.2、6.3、6.4 に示す通り、 生 産 工 程 で 使 用 さ れ る FC i ガ ス か ら の 排 出 量 + FC i ガ ス の 使 用 に よ り 生 成 さ れ る 副 生 物 CF 4 /C 2 F 6 の排出量の合計に相当する。この節の後の方で説明しているように、ティア 3、ティア2bと違う点は、ティア2a方式が、生産工程または生産工程の種類の間で区別 しない点である。デフォルト排出係数は、全てのエッチングとCVDプロセスにおける 各ガスの個々に作られる重量平均値(専門家の判断を基にした)を示す。 8 米国EPAと半導体協会とのパートナーシップ報告(2000 年) 104 排出係数については後に記載しているが、ティア2法は個々の FC が特定のエレクトロ ニクス分野で最も頻繁に使用される生産工程の種類(CVD 又はエッチング)用の排出係数 を使用する。この方法はそれぞれの産業を通じて、特定の生産工程または生産工程の種類 (CVD またはエッチング)における個々の FCs の現在での主要な使用傾向を反映する。 しかしながら、使用パターンは産業規模の使用パターンから大きく逸脱している(例:CVD にガスを使用しているのが一般的であるのに対して、主にエッチングにガスを使用してい る)。メーカーまたはプラントのある国でのインベントリ機関は、ティア2b 方式ではなく、 ティア2a 方式を使用することでの誤差の可能性を評価すべきである。 式 6.2 FC i の排出量=(1-h)×〔FC i ×( 1-U i )×(1-a i ×d i )〕 ここで FC i =ガスの消費量(kg)(例:CF 4, C 2 F 6, C 3 F 8, c-C 4 F 8, c-C 4 F 8 O,C 4 F 6 ,CHF 3, CH 2 F 2, NF 3 、SF 6 等)。 h=使用後に出荷容器に残っているガス分。 U i =ガスの使用率(生産工程中に破壊または転換された分)。 a i =排出量抑制技術を採用した生産工程に投入されたガス分(企業固有またはプラ ント固有)。 d i =排出削減技術により破壊されたガス分i 式 6.3 副生物排出量 CF 4 FC i に対する副生物CF 4 の排出量=(1-h)×〔(B CF4 ×FC i ) ×(1-a i ×d CF 4 )〕 ここで、 B CF4 = ガス使用量i(kg)に対するCF 4 生成量(kg) d CF4 = 排出削減技術により破壊された副生物CF 4 分 式 6.4 副生物排出量 C 2 F 6 FC i に対する副生物C 2 F 6 の排出量=(1-h)×〔(B C2F6 ×FC i ) ×(1-a i ×d C2F6 )〕 ここで、 B C2F6 = ガス使用量i(kg)に対するC 2 F 6 生成量(kg) d C2F6 = 排出削減技術により破壊された副生物C 2 F 6 分 それぞれのガスごとに FC i 、副生物 CF 4 、C 2 F 6 の排出量を推定した後、インベントリ 機関またはメーカーは、すべてのガスについてこれらの排出量を合計して、FC 排出量の 105 集計値を推定するものとする。この方式は、生産工程の種類間(エッチング対洗浄)、個々 の生産工程間または製造設備間の相違は計算に入れない。 ティア2b 方式-生産工程の種類固有のパラメーター ティア2b方式は全てのエッチング工程と全ての洗浄工程(FC i,p )に投入される各ガス量 の合計についてのデータを必要とする。これは広い意味での生産工程の種類(エッチング 対CVD室の洗浄)のみによって分けるのであって、生産工程または少数の生産工程グルー プに分けるのではない。個々の工程での企業固有あるいはプラント固有値が利用できる場 合には、ティア3法を使用することがグッドプラクティスである。下記のいずれについて も、産業規模の一般デフォルト値を使用する: *出荷容器に残っているガス分(h)。 *生産工程の種類別の「使用済み」(破壊または転換)ガス分(U i , p )。 *生産工程の種類別のCF 4 に転換されたガス分(B CF4,P )。 *生産工程の種類別のC 2 F 6 に転換されたガス分(B C2F6,P )。 排出削減技術により破壊されたガス分に関するデフォルト値も公表されている(d i , p 、 d CF4 , p 、d C2F6 , p )。排出削減技術を備えた工程に投入されるガス量、a i , P のデフォルト値は ゼロである。 式 6.5 ティア2B 法 FC i の排出量= (1-h)× ∑ [FC i , p ×(1-U i , p )×(1-a i , p ×d i , p ] p ここで p=生産工程または生産工程の種類(エッチングまたは CVD 室洗浄)。 FC i , p =生産工程または生産工程の種類pに投入されるガス量i(kg)(例:CF 4, C 2 F 6 、 C 3 F 8, C 4 F 6 ,c-C 4 F 8, c-C 4 F 8 O,CHF 3, C 5 F 8 ,NF 3, SF 6, N 2 O)。 h =使用後に出荷容器に残っているガス分。 U i , p =ガスi別、生産工程/生産工程の種類p別の使用率(kg)。 a i , p =排出削減技術を採用した生産工程に投入されたガス分(企業固有またはプラント 固有)。 d i , p =排出削減技術により破壊されたガス分i(生産工程/生産工程の種類pに2種類 以上の排出削減技術が採用されている場合は、排出削減技術により破壊された分の 平均。それぞれの破壊分に、技術を採用している設備に投入されたガスの量で加重 する)。 106 式 6.6 副生物排出量 CF 4 FC i , p に対する副生物CF 4 の排出量=(1-h)× ∑ [B CF4,P × FC i , p ×(1-a i , p ×d CF4 , p ) p ここで B CF4,P =生産工程/生産工程の種類p別のCF 4 に転換されたガス分i。 d CF4 , p =排出削減技術により破壊された副生物CF 4 分(例:表 6.6「半導体生産に よる FC の排出量のデフォルト排出係数」に記された削減技術の種類)。 式 6.7 副生物排出量 C 2 F 6 FC i , p に対する副生物C 2 F 6 の排出量=(1-h)× ∑ [B C2F6,P × FC i , p ×(1-a i , p ×d C2F6 , p ) p ここで B C2F6,P =生産工程/生産工程の種類p別のC 2 F 6 に転換されたガス分i。 d C2F6 , p =排出量削減技術により破壊された副生物C 2 F 6 分(例:表 6.6「半導体生 産による FC 排出量のデフォルト排出係数」に記された削減技術の種類)。 特定のエッチングまたは洗浄の処方においては、複数の FC 先駆物質が併用されること があり、副生物としての CF 4 または C 2 F 6 は、個々の FC 先駆物質の分解により排出され ることがあることを念頭に置く必要がある。そのような場合には、副生物の CF 4 または C 2 F 6 は、流量が最大の FC ガスから発生すると報告するものとする。 ティア3法―工程固有のパラメーター ティア3法も式 6.5,6.6 と 6.7 を使用する。しかしながら、この方法は各々の個々の工程 又は工程の各部分において、これらの式で使用される全ての変数に企業固有あるいはプラ ント固有の 値を必要と する(例え ば、窒化ケ イ素エッチ ング又はプ ラズマによ る化学蒸着 (PECVD)室洗浄)。そのため式 6.5,6.6 と 6.7 を使用する時には、インベントリ編集者はこ の式での”p”を「工程種」ではなく固有の「工程」(窒化ケイ素エッチング又はプラズマに よる化学蒸着(PECVD)室洗浄)として解釈する必要がある。 透明性と共通性のために、これらの排出変数に使用される値は上手く文書化すべきであ る(排出係数の選択参照)。 炭素含有フィルムからの CF 4 の生成 ティア3法では、炭素含有低誘電率(k)材料のエッチングあるいは低 k 又はカーバイドフ 107 ィルムを含む CVD 室の洗浄を経て除去中に生成する CF 4 を勘定に入れる。FC 前駆物質 に炭素や温室効果ガスが含まれていない場合でも、CF 4 が生成されることもある。 例えば、NF 3 を含む洗浄用低kCVD室は、副生物としてCF 4 を生成する。このような場 合には、NF 3 排出量を報告するのに式 6.5 を用い、生産工程から出るCF 4 排出量を反映す るために、式 6.6 の結果を加えるものとする。洗浄室でF 2 やCOF 2 が使用される状況でも、 CF 4 が生成されることもある。この場合、CF 4 排出量は式 6.6 を使用して推計され、結果 は式 6.5 から得られるCF 4 の総排出量に加えられる。両方ともに、B CF4 , P はリアクターに 投入される洗浄用またはエッチング用のガスの質量に対する生成されるCF 4 の質量分とし て示される。 それぞれの FC ガスの排出量と副生物としての CF 4、 C 2 F 6 の排出量を推定した後、イン ベントリ機関またはメーカーは、すべてのガスについてこれらの排出量を合計して、個々 の生産工程からの FC 排出量の集計値を推定するものとする。 例えば、NF 3 (洗浄とエッチング),CHF 3 (エッチング)そして CF 4 (エッチング)あるい は 低 k フィルムが使用された場合には、NF 3 ,CHF 3 と CF 4 には式 6.5 を使用して推計し、低 k フィルムを NF 3 で除去する時に生成する CF 4 には式 6.6 を使用する。 例 総FC排出量=FC NF3 + FC CHF3 +FC CF4 +FC NF3 , CF4 6.2.1.2 熱伝導液 熱伝導液の使用による排出量を推定するには二つの方法がある。方法の選択は熱伝導液 の使用に関する活動量データの利用価値に依存することをデシジョンツリーでは示した。 図 6.2 の「熱伝導液からの FC 排出量の推計に対するデシジョンツリー」を参照のこと。 ティア1方式-熱伝導液 熱伝導液に関する企業固有のデータが利用できない時にはティア1方式を使用する。熱 伝導液損失による排出量を推定する2つの方式の中では、ティア1は精度が低い方である。 この方式は、ティア2方式と違って、総排出量-すべての FCs 液を対象とした加重平均排 出量-を推定する。半導体生産中に消費されるシリコン1個あたりの平均総排出量を表わ す一般排出係数を使用する。FCs 液による排出量を推定するためのティア1方式は、半導 体生産中の FCs ガスによる排出量を推定するティア1方式とほぼ同じである。 この方式は、式 6.8 で表わすことができる。この場合の FC は C 6 F 14 である。 108 式 6.8 ティア1法による熱伝導液からの FC 排出量の推計 FC liquid,total = Ei × Cu × Cd ここで、 FC liquid,total = FC総排出量 (Mt-CO 2 ) E l = 今期中に消費されたシリコンGm 2 当たりの排出量合計(Mt-CO 2 /Gm 2 )。 Cu=国内における今期中のすべての生産を対象とした平均生産稼働率。 Cd=国内における設計生産能力(Gm 2 )。 ティア2方式-熱伝導液 それぞれのFC液の使用による実排出量を推定する方法の1つに、ティア2方式がある。 この方式は、FC液の年間使用量を計算に入れるマスバランス方式で、企業固有のデータを 入手できる場合には適当な方式である。1年間で、新たに購入した機器に充填されたり、 機器の操作中に蒸発したFC液の損失分を埋めるために、FCs 液が使用される。ティア2 方式は、新規または既存の機器に充填している間の液の損失、あるいは古い機器の廃棄時 (高価なFCs 液にとっては妥当)の液の損失は無視する 10 。 この方式は、式 6.9 で表わすことができる。 式 6.9 ティア1法による熱伝導液からの FC 排出量の推計 FC i (kg)=ρ i {I it-l (l)+P it (l)-N it (l)+R it (l)-I it (l)-D it (l)} ここで、 ρ i =FC i 液の密度(kg/l) I it-t (l) =前期間の期末時におけるFC i 液のストック(㍑) P it (l)=今期中のFC i 液の購入量(㍑) N it (l)=新しい機器に充填するために今期中に使用したFC i 液の量(㍑) R it (l)=廃棄または売られる設備の総充填量(公称容量) (㍑) I it (l) =今期の期末時におけるFC i 液のストック(㍑) D it (l)=今期中に廃棄されるFCiの量(㍑) 10 熱伝 導液 の価 格は 、1 リッ ター あた り 55~ 130 ドル。熱伝導液のメーカーである3M社は、2000 年生産分は蒸発により年間 1900 リッターの損失があったと推定している。熱伝導液を使用するテスト 機器メーカーは、蒸発損失の少ない最新設計のシステムで1機当たり年間約 30 リッター、古い設計の システムで1機あたり年間約 50 リッターの損失があると報告している。 109 図 6.2 エレクトロニクスの生産中の HT 液漏れによる FC 排出量推定のための デシジョンツリー 開 始 BOX 2:テ ィ ア 2 エレクトロニックス メ ー カー か ら 熱 伝 導 液 漏 れデ ー タ が 入 手 できるか? YES ティア 2 法を用いて排 出量を推定 NO これは主 要カテゴ リーか ? YES エレクトロニクスメー カ ー か ら 液 体 FC 使 用 デ ータを収集 NO ティア 1 法を用い て排出量を推定 BOX 1: テ ィ ア 1 注: 1 主要カテゴリーの概念は、1巻の 4.1 で説明してある。 2 追加データを収集するための資源が国にない場合の状況に関する手引きについては、1巻の 2.3 項を参 照のこと 。主 要カテゴ リー について は、 可能なも っと も厳しい 方法 のために デー タを収集 する のがグッ ドプラクティスである。 110 6.2.2 排出係数の選択 ティア1 ティア1方式のための排出係数は表 6.5 に示した。半導体生産用の係数はシリコンの消 費量の 20MtCO 2 /m 2 である。この係数は、1996-99 年での米国半導体メーカーが報告した 総排出量データから算定した4つの類似の排出係数での平均値である。この期間での重量 平均GWPは 11,000 と推計されている 11 。またこの期間中に、半導体メーカーは 150 mm、 200 mmのシリコンウェーハを使用し、削減装置は使用しなかった。20MtCO 2 /m 2 の係数 は 2005~2012 年にわたって製造される層の数をそれとなく説明していて、この期間では この指針が使われることになる。いつの年でも半導体業界は複雑さ 12 を修正するために多 くのデバイスを製造している。デバイス上の活性要素が小型になるほど、毎年装置面積(平 均で)当たりの複雑さは増加する。作られたデバイス上のシリコンの面積に対するのと同じ 様に複雑さに排出量が比例するので、排出係数(デバイス面積当たりのMtCO 2 )はまた大き くなる。しかしながら、排出量推計を簡単にするために、ティア1法は世界平均の複雑さ を反映するような係数を採用している。 LCD生産におけるティア1排出係数は 0.1MtCO 2 /m 2 が与えられる。この係数は日本と 台湾でのLCDメーカーのFC排出量の重量平均を示しており、類似の値をLeu(ITRS,2004) も提示している。これらの排出量を重量平均するためのGWPの粗い推計では、SF 6 の排出 割合にもよるが、18,000~22,000 の範囲にある。 PV生 産 に お け る テ ィ ア 1 排 出 係 数 は 基 板 面 積 当 た り 0.03MtCO 2 /m 2 が 与 え ら れ る (表 6.5 参照)。ヨーロッパと米国のPVメーカーに対する最近の調査では、FC(CF 4 とC 2 F 6 )を 使 用 し 削 減 対 策 を 採 っ て い な い メ ー カ ー (現 在 は 多 く の メ ー カ ー が 対 策 を 採 っ て い る )に 0.03MtCO 2 /m 2 のティア1排出係数を適用することを認めていた。排出係数は、Phylipsen と Alsema(1995)そして Alsema ら(2001)によって公表された古くて初歩的な推計に置き換 えた、現在の製造方法に沿った代表的なものであると思われている。 半導体製造中のHTF使用に対するティア1法の排出係数は 3MtCO 2 /m 2 である(表 6.5 参 照)。この係数の出典は 2004 年にBurtonが記載していて、TumaとTousignant(2001) の精力的な仕事の一部を基にしている。 11 米国EPAの半導体パートナーシップは 2000 年度のFC排出量の平均重量割合を次のように報告して いる:CF 4 (25%),CHF 3 (3%),C 2 F 6 (52%),C 3 F 8 (3%),NF 3 (3%),SF 6 (14%) 12 複雑さの言葉は半導体の生産では特別の意味を持つ。デバイスの機能を満たすために基板の活性要素 を結びつける(ワイヤーと一緒に)のに必要とされる層の数を表す。活性要素が小さいほど、シリコン片 上に置くことができる数は大きくなる。要素の数が増加すると、結びつけるために多くの層を必要とし、 これを複雑さが増すと呼ぶ。例えば、90nmという最小のロジックデバイス要素の全てを回線に繋ぐため には、10 回線と同じだけ使用される。対応するための最新の記憶デバイスは 4 個必要とされる。 (ITRS,2004,表 81a と 82a) 111 表 6.5 エレクトロニクス産業での FC 排出量のためのティア1方式デフォルト総排出量 総排出係数(E)(加工処理した回路基板の表 エレクトロニクス産業の業種 面積単位当たりの MtCO 2 シリコンm 2 当たり 20MtCO 2 13 半導体 液晶ディスプレイ(LCD) ガラスm 2 当たり 0.1MtCO 2 熱伝導液 シリコンm 2 当たり 3MtCO 2 (暫定値) 光電池(PV) 回路基板(例:シリコンまたはガラス) a m 2 当たり 0.03MtCO 2 a Thenakis, Alsema, Agnostinelliの未公開資料からの排出係数 ティア2 上で論じた通り、簡単なエレクトロニクス生産変数に基づく排出係数は、排出量に影響 を及ぼす全ての排出係数を計算に入れるのには適さない。厳密な推定を行うには、下記の それぞれの変数に関するデータが必要である: *使用したガス。 *利用した生産工程の種類(CVD またはエッチング)。 *使用した製造設備のブランド。 *排出削減技術。 直接の測定値、参考文献、専門家の判断に影響を及ぼすティア1、ティア2b の方式に おいて使用する変数のためのデフォルト値を算定した(表 6.6,6.7,6.8 に記載した半導体、 LCD、PV 生産からの FC 排出量のためのティア2排出係数を参照)。エレクトロニクス産 業内の様々な生産条件を表わすのは難しいため、デフォルト排出変数は、どうしても不確 実なものとなる。多くの測定データがあれば、また、同様もしくは同一の化学品処方を用 いる同様の生産工程に排出係数を適用する場合には、精度を改善することができる。化学 品供給業者、機器供給業者、エレクトロニクスメーカーによる急速な技術革新により、今 後 10 年の間に、エレクトロニクス産業内で大幅な排出削減が期待できる。このような技 術革新が、排出係数に影響を及ぼす可能性もある。半導体業界、LCD 業界は、それぞれ、 世界半導体会議、世界 LCD 産業協力委員会を通じて、世界の排出係数を評価するための 機構を確立している。インベントリ機関は、世界の状況、各国の状況に関する理解を進め るために、業界と定期的に協議することを希望することもありうる。 出荷容器に残っているガス分に関するデフォルト値は 0.10 である。 13 ティア1デフォルト係数は製造される層の数を示している。係数 20MtCO 2 /m 2 は 2004 年半導体の国 際技術ロードマップからの 6 層を示している。6 層としたのは多くの技術集合体の世界平均であって、 先端のものではない。ティア1デフォルト係数は 2005~2007 年が誇張した排出量であり、2008~2010 年は最善に概算した排出量であるので排出量は控えめである。重量平均基準のもとで、世界の平均層数 は年に 0.3 層増えている。 112 表 6.6(a) 半導体生産からの FC 排出量のティア2方式のデフォルト排出係数 第 3 次評価報告書で GWP の記載のある温室効果ガス 工 程 ガ ス (i) CF 4 C2F6 CHF 3 CH 2 F 2 C3F8 C-C 4 F 8 NF 3 遠隔 NF 3 SF 6 1-U i 0.9 0.6 0.4 0.1 0.4 0.02 0.02 0.2 0.2 B CF4 NA 0.2 0.07 0.08 0.1 0.02 0.02 0.09 NA B C2F6 NA NA NA NA NA NA NA NA NA B C3F8 NA NA NA NA NA NA NA NA NA Etch 1-U i 0.7 0.5 0.4 0.06 NA 0.2 NA 0.2 0.2 CVD 1-U i 0.9 0.6 NA NA 0.4 0.1 0.02 0.2 NA Etch B CF4 NA 0.4 0.07 0.08 NA 0.2 NA NA NA Etch B C2F6 NA NA NA NA NA NA NA NA NA CVD B CF4 NA 0.16 NA NA 0.1 0.1 0.02 0.1 NA CVD B C2F6 NA NA NA NA NA NA NA NA NA CVD B C3F8 NA NA NA NA NA NA NA NA NA ティ ア 2a ティ ア 2b 表 6.6(b) 半導体生産からの FC 排出量のティア2方式のデフォルト排出係数 GWP の記載のない温室効果ガス 温室効果ガスではない FC 副生物 C4F6 C5F8 C4F8O F2 COF 2 1-U i 0.1 0.1 0.1 NA NA B CF4 0.3 0.1 0.04 0.02 0.02 B C2F6 0.2 0.04 NA NA NA B C3F8 NA NA TBD NA NA Etch 1-U i 0.1 0.2 NA NA NA CVD 1-U i NA 0.1 0.1 NA NA Etch B CF4 0.3 0.2 NA NA NA Etch B C2F6 0.2 0.2 NA NA NA CVD B CF4 NA 0.1 0.04 0.02 0.02 CVD B C2F6 NA NA NA NA NA CVD B C3F8 NA NA NA NA NA 工 程 ガ ス (i) ティ ア 2a ティ ア 2b 113 表 6.7(a) LCD 生産からの FC 排出量のティア2方式のデフォルト排出係数 第 3 次評価報告書で GWP の記載のある温室効果ガス CF 4 C2F6 CHF 3 CH 2 F 2 C3F8 C-C 4 F 8 NF 3 遠隔 NF 3 SF 6 1-U i 0.6 0.6 0.2 NA 0.4 0.1 0.02 0.3 0.8 B CF4 NA 0.2 0.07 NA 0.2 0.07 NA NA NA B CHF3 NA NA NA NA NA 0.006 NA NA NA B C2F6 NA NA NA NA NA 0.03 NA NA NA B C3F8 NA NA NA NA NA NA NA NA NA Etch 1-U i 0.6 0.4 0.2 NA NA 0.1 NA 0.2 0.3 CVD 1-U i NA 0.6 NA NA 0.4 0.1 0.02 0.3 0.9 Etch B CF4 NA 0.2 0.07 NA NA 0.009 NA NA NA Etch B CHF3 NA NA NA NA NA 0.02 NA NA NA Etch B C2F6 NA NA NA NA NA 0.1 NA NA NA CVD B CF4 NA 0.2 NA NA 0.2 0.1 NA NA NA CVD B C2F6 NA NA NA NA NA NA NA NA NA CVD B C3F8 NA NA NA NA NA NA NA NA NA 工 程 ガ ス (i) ティ ア 2a ティ ア 2b 表 6.7(b) LCD 生産からの FC 排出量のティア2方式のデフォルト排出係数 GWP の記載のない温室効果ガス 温室効果ガスではない FC 副生物 C4F6 C5F8 C4F8O F2 COF 2 1-U i NA NA NA NA NA B CF4 NA NA NA NA NA B C2F6 NA NA NA NA NA B C3F8 NA NA NA NA NA Etch 1-U i NA NA NA NA NA CVD 1-U i NA NA NA NA NA Etch B CF4 NA NA NA NA NA Etch B CHF3 NA NA NA NA NA Etch B C2F6 NA NA NA NA NA CVD B CF4 NA NA NA NA NA CVD B C2F6 NA NA NA NA NA CVD B C3F8 NA NA NA NA NA 工 程 ガ ス (i) ティ ア 2a ティ ア 2b 114 表 6.8(a) PV 生産からの FC 排出量のティア2方式のデフォルト排出係数 第 3 次評価報告書で GWP の記載のある温室効果ガス CF 4 C2F6 CHF 3 CH 2 F 2 C3F8 C-C 4 F 8 NF 3 遠隔 NF 3 SF 6 1-U i 0.8 0.6 0.4 NA 0.4 0.2 NA 0.2 0.4 B CF4 NA 0.2 NA NA 0.2 0.1 NA 0.05 NA B C2F6 NA NA NA NA NA 0.1 NA NA NA B C3F8 NA NA NA NA NA NA NA NA NA Etch 1-U i 0.7 0.4 0.4 NA NA 0.2 NA NA 0.4 CVD 1-U i NA 0.6 NA NA 0.1 0.1 NA 0.3 0.4 Etch B CF4 NA 0.2 NA NA NA 0.1 NA NA NA Etch B C2F6 NA NA NA NA NA 0.1 NA NA NA CVD B CF4 NA 0.2 NA NA 0.2 0.1 NA NA NA CVD B C2F6 NA NA NA NA NA NA NA NA NA CVD B C3F8 NA NA NA NA NA NA NA NA NA 工 程 ガ ス (i) ティ ア 2a ティ ア 2b 表 6.8(b) PV 生産からの FC 排出量のティア2方式のデフォルト排出係数 GWP の記載のない温室効果ガス 温室効果ガスではない FC 副生物 C4F6 C5F8 C4F8O F2 COF 2 1-U i NA NA NA NA NA B CF4 NA NA NA NA NA B C2F6 NA NA NA NA NA B C3F8 NA NA NA NA NA Etch 1-U i NA NA NA NA NA CVD 1-U i NA NA NA NA NA Etch B CF4 NA NA NA NA NA Etch B C2F6 NA NA NA NA NA CVD B CF4 NA NA NA NA NA CVD B C2F6 NA NA NA NA NA CVD B C3F8 NA NA NA NA NA 工 程 ガ ス (i) ティ ア 2a ティ ア 2b 115 表 6.9 (2005 年 1 月 25 日以降) エレクトロニック産業の FC 排出削減技術のためのティア 2b&2c デフォルト 排出係数 排出管理技術 CF4 C2F6 CHF3 C3F8 c-C4F8 NF3 SF6 破壊 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9 補足率 0.75 0.9 0.9 NT NT NT 0.9 製造設備排出係数 ティア2a 方式とティア2b 方式のための製造設備排出係数計算手順も同じである。製 造設備排出係数は、温室効果ガス排出量を生産工程内で使用する温室効果ガスの使用量で 除した数値である。排出係数は、ティア2の式における(1-U i) 項にあたる。例えば、 CF 4 の排出係数が 0.8 であるということは(上表 6.6 のティア2a の値を参照のこと)、生 産工程内で使用される CF 4 の 80%が CF 4 として排出されるということを意味する。 副生物の排出係数も計算した。専門家グループが、重要な主要副生物排出量は CF 4 の 排出量であると判断した。CF 4 の副生物として多量に排出するガスは C 2 F 6 と C 3 F 8 だけ であると一般的になっているけれど、製造設備メーカーや化学メーカーによるデータでは CF 4 はガス(例えば、CHF 3 又は CH 2 F 2 を含む)と c-C 4 F 8 との混合物からも発生する。こ の議論の結果、CHF 3 ,CH 2 F 2 ,C 2 F 6 ,C 3 F 8,C- C 4 F 8 , C 4 F 8 O に関して、CF 4 の副生物排出係数 を計算している。例えば、C 3 F 8 の値が 0.1(上表 6.6 のティア2a の値からとった)であ るということは、C 3 F 8 の使用量の 10%が CF 4 に転換することを意味している。ただし、 C 2 F 6 は、C 4 F 6 などの分子の分解によっても排出される。既に記載したように、炭素含有 フィルムが存在する所でのエッチングや洗浄でも生成することもある。 ティア2bの製造設備排出係数を計算するために、製造設備メーカー、半導体メーカー からデータが集められる。生産工程の種類別(化学蒸着(CVD)またはエッチング)、更 には、ガスの種類別(例:C 2 F 6 、CF 4 )のデータも集める。排出量検査を実施するため に用いた方法は、瞬時にできる4極子質量分光測定法(QMS)とフーリエ変換赤外分光法 (FTIR)である。結果を数量化するために、検量線法(通常、N 2 の 1%混合物)を使用し た。採用する定性分析、品質検査の基準については、 「機器環境特性確認のためのガイドラ イン」の改訂版3で概説してある 14 。ティア2bの排出係数(表 6.6 を参照のこと)は、 エッチング用、CVD用それぞれのガスのために収集したデータの単純平均値を四捨五入し て整数にしたものである。 ティア2a の製造設備排出係数を算定するためには、標準的な半導体生産工程で使用さ れるガスの量を把握しておくことが必要である。ティア2a の排出係数において、エッチ ングと洗浄工程で使われる夫々のガスの割合は産業界の専門家により決められたものを使 14 International Sematech:www.sematech.org/docubase/document/4197axfr.pdf 116 用する。例えば、C 2 F 6 のティア2b 排出係数は、0.5(エッチング)、0.6(CVD)である。 エッチングと CVD 室洗浄での C 2 F 6 の使用割合は 20:80 である。排出係数の夫々にこの 割合を適用すると C 2 F 6 のティア2a 係数は 0.6 となる。 ティア3の排出係数については、半導体メーカーは、上表 6.1 に記したデフォルト値を 使わずに、企業固有値またはファブ固有値を使用している 15 。排出係数の質を確保するた めに、排出量検査は信任を受けた方法にしたがって実施せねばならない 16 。第三者の供給 業者が排出量検査を実施する場合、半導体メーカーは、 「機器環境特性確認のためのガイド ライン」の改訂版 3.0 で概説したあらゆる基準を第三者の供給業者が満たすことができる ようにしなければならない。製造設備メーカーから提供された排出係数を使用する半導体 メーカーは、自らの個々の生産工程に排出係数が適用できるようにする必要がある。工程 変数(例:圧力、流量)がセンターライン条件から逸脱している生産方法での排出係数は、 製造設備メーカーから提供された排出係数とは異なることもありうる。 ティア2方式の排出削減技術での排出係数 ティア2(aとb)法の排出削減技術の排出係数に関する前提は、以下の通り: (i)個々の排出削減技術は列挙しない。それぞれの化学物質の排出係数は、半導体生産 用の排出削減技術のテスト中に得られた最良の結果に基づき確定した。 (ii)表 6.5 に記した排出係数をクリアまたは超えるために削減手段メーカーが指定した 使用範囲内に該当する排出量を対象に削減が行われた時にのみ、排出係数を使用する ものとする。 (iii)適切に使用され、保守が行われた削減装置を通過した排出量部分にのみ、排出係数 を適用するものとする。排出係数は、削減装置を迂回する場合、メーカーの仕様書に したがって削減装置が使用されていない場合、あるいは、仕様書にしたがって削減装 置の保守が行われていない場合には、排出係数を適用してはならない。 (ⅳ)投入ガスまたは副生成物に CF 4 が存在する時の破壊効率(DRE)が 85%以上、それ 以外の全ての FC ガスには 90%以上の破壊効率で CF 4 を削減できない削減技術には排 出係数は適用しない。メーカーが他の排出抑制技術を使用していれば、ティア2法を 使用した時には破壊効率は 0%である。 表 6.9「エレクトロニクス産業 FC 削減技術に関するデフォルト排出係数」でのデフォ ルトティア2排出削減係数は装置販売者、削減技術供給者、電子部品メーカーから得られ たデータにより計算される。FC 削減のために特別に設計された削減設備からのデータの 15 「ファブ固有」とは、生産プラント固有を意味する。 16 国際的に信任を受けた検査方法の1例は、半導体産業協会(2000 年):「機器環境特性確認のための ガイドライン」の 2000 年 2 月現在の最新版(改訂版 3.0)に掲載されている。 117 みが計算に使用されることに注意すべきである。データは燃焼削減設備(燃料に使用される 全て),プラズマによる削減設備、電気加熱削減設備、そして触媒削減設備から得られる。 排出削減技術は、エレクトロニクス生産技術と歩調を合わせて急ピッチで発展している。 表 6.9 にあるデフォルト抑制技術の排出係数は、個々の生産工程や製造設備のために最適 化された削減装置の検査結果に基づいたものである。結果は、製造設備、流量によって変 化すると予想される。半導体、液晶ディスプレイまたは光電池の生産施設のあらゆる製造 設備または生産工程に適用できるわけではない。表 6.5 に記したティア2デフォルト排出 係数は、排出削減技術が、メーカーの仕様書に従って利用され、保守が行われている場合 にのみ適用することができる。もし企業が他の種類の削減設備を使用すると、破壊効率は ティア2a と b 法では 0%と仮定すべきである。 表 6.4「エレクトロニクス産業FC削減技術に関するデフォルト排出係数」に記された 数値は、最適化された技術、それぞれの投入ガスに関するすべての収集データの中で最良 の結果の端数を切り捨て、直近の 5%単位にしたものである(例:平均 98%の場合は、端 数を切り捨て、0.95 とする)。次のような状況を反映するために、平均値の端数を切り捨 てた: (i)排出抑制装置は、破壊を最適化した対象のガスの種類に応じて効率が変化する。 (ii)排出削減装置の効率は、装置を設置する用具の種類(150 mm、200 mm または 300 mm のウェーハ)、その製造設備に流れる FC ガスの流量、排出削減装置を流れる総排 出流量によって変化する。特定の製造設備に流れる FC を破壊するよう最適化されて いる場合には FC の 99%を破壊できる。排出量削減装置でも、他のガスを破壊するよ うに最適化されている場合、あるいは、FC の流量または総排出量が特定の限界を超 えている場合は、FC の破壊率が 95%に達しないこともありうる。半導体メーカーと 削減手段メーカーは、設置される削減システムの大きさの決定と、保守が適切に行わ れ、排出削減装置が表 6.9 に特記したデフォルト排出係数をクリアまたは超えること ができるように努めねばならない。 熱伝導液に関するティア2方式とティア1方式の排出係数 ティア1方式の排出係数は、3MtCO 2 /m 2 である。ティア2方式に関しては、熱伝導液の 蒸発による排出量を推定する排出係数は存在しない。 6.2.3 活動量データの選択 エレクトロニクス産業の活動量データとなるのは、ガスの販売量、使用量またはエレク トロニクス回路基板の年間加工量(例:半導体用に加工したシリコンの面積-m 2 )に関す るデータである。データ集約性が強いティア2方式の場合では、企業レベルまたはプラン トレベルでのガス購入データが必要となる。ティア1方式の場合は、インベントリ機関が、 特定年度に加工したエレクトロニクス回路基板の総面積を算定する必要がある。シリコン 118 消費量は、半導体装置・材料国際協会(SEMI)が四半期ごとに発表しているWorld Fab Watch(WFW)のデータベースの適当な版を用いて推定する。データベースには、場所、 設計生産能力、ウェーハのサイズなどの情報を含む世界のファブ(生産工場、研究開発所、 パイロット工場など)のリストなどがある。同様に、SEMIのフラット・パネル・ディス プレイのファブに関するデータベースには、世界のLCD生産用ガラス消費量の推定値が入 っている。表 6.10 の活動量データには、設計生産能力の数字が反映されている。半導体や LCDの生産ファブは、持続的期間、すなわち1年間を通して設計生産能力で操業すること はない。生産能力は製品の需要に応じて変動する。半導体生産については、公に入手でき る産業統計から分かる通り、1991 年-2000 年の世界の平均年間生産稼働率は、76%-91% で、平均は 82%、もっとも確率の高いのは 80%である。国固有の生産稼働率データが入 手できない場合は、半導体生産の推奨される生産稼働率は 80%である。LCD生産について は、公に入手できる生産稼働率データはない。LCD生産業界は、半導体生産業界と同様、 ファブの実用生産稼働率を最高レベルに保つために、製品価格を引き下げている。従って これから類推すれば、各国のLCDメーカーを対象とした表 6.10 に記す設計生産能力に基 づき回路基板のガラスの消費量を推定するにあたっては、稼働率 80%を採用することが望 ましい。PV生産業界では、公表されたデータが半導体やLCDよりも大幅に限定されるが、 2003-2004 年が 77~92%、平均で 86%である。それ故、86%が式 6.1 のC U のデフォルト 数値として薦めることができる。 PV生産での排出量の推計する時には、実際の業界が使用するFC(式 6.1 ではC PV )の割合 を計算すべきである。最近の調査ではPV生産でのFCの割合は 40~50%が示されていて、 使用傾向は増加している。奨励されるC PV のデフォルト値は 0.5 である。 表 6.10 は、合計で 2003 年世界の生産能力の 9x%を占める国々の 2003 年、2004 年、 2005 年の生産能力をまとめたものである。 119 表 6.10 2003 年~2005 年のシリコン(Si)とガラスの国別の総設計生産能力(Mm 2 ) Si年間設計生産能力 (Mm 2 ) ガラス年間設計生産能力(Mm 2 ) 国別合計 2003 1 2004 2 2005 2 2003 1 2004 2 2005 2 オーストラリア オーストリア ベルギー カナダ 中国 チェコ フランス ドイツ 香港 ハンガリー インド アイルランド イスラエル イタリー 日本 ラトビア マレイシア オランダ ベラルーシ ロシア 韓国 シンガポール スロバキア 南アフリカ スウェーデン スイットランド 台湾 タイ トルコ イギリス アメリカ ベトナム 合計 0.0008 0.0201 0.0040 0.0041 0.1436 0.0057 0.0653 0.1622 0.0059 0.0006 0.0128 0.0175 0.0310 0.0431 0.9091 0.0019 0.0284 0.0301 0.0077 0.0250 0.3589 0.1730 0.0043 0.0021 0.0019 0.0098 0.5186 0.0000 0.0000 0.0597 0.6732 0.0000 3.3206 0.0008 0.0201 0.0040 0.0041 0.1982 0.0057 0.0674 0.1622 0.0059 0.0006 0.0128 0.0430 0.0310 0.0431 0.9235 0.0019 0.0284 0.0301 0.0077 0.0250 0.3742 0.1730 0.0043 0.0021 0.0019 0.0098 0.5645 0.0000 0.0000 0.0597 0.6921 0.0000 3.4972 0.0008 0.0201 0.0040 0.0041 0.3243 0.0057 0.0674 0.1622 0.0059 0.0006 0.0128 0.0430 0.0564 0.0609 0.9639 0.0019 0.0284 0.0301 0.0077 0.0325 0.3937 0.1985 0.0043 0.0021 0.0019 0.0098 0.6196 0.0094 0.0000 0.0936 0.7190 0.0000 3.8849 NA NA NA NA 0.0432 NA NA NA NA NA NA NA NA NA 4.5746 NA NA 0.0209 NA NA 5.8789 0.2821 NA NA NA NA 4.2575 NA NA NA 0.0000 NA 15.0572 NA NA NA NA 0.0432 NA NA NA NA NA NA NA NA NA 5.3256 NA NA 0.0209 NA NA 9.4679 0.2821 NA NA NA NA 8.8563 NA NA NA 0.0000 NA 23.9959 NA NA NA NA 0.8145 NA NA NA NA NA NA NA NA NA 6.9201 NA NA 0.0209 NA NA 12.4857 0.2821 NA NA NA NA 13.2217 NA NA NA 0.0000 NA 33.7459 1 国別合計には稼働中のファブが含まれる。 2 国別合計には、建設中ファブ、建設が発表されたファブも含まれる。 出典:World Fab Watch のデータベースからの抜粋、半導体生産、フラット・パネル・ディスプ レイのファブに関するディスク・データベースの 2004 年 1 月版、TFT-LCD 生産に関する 2004 年 10 月版。 120 表 6.11 2003 年の国別PV総生産能力(Mm 2 ) オーストラリア 0.135 オーストリア 0.0307 カナダ 0.0154 デンマーク 0.00254 フランス 0.162 ドイツ 0.817 イタリア 0.100 日本 3.72 ノルウェー 0.0138 ポルトガル 0.115 韓国 0.462 スペイン 0.715 スウェーデン 0.377 スイス 0.00238 英国 0.0269 米国 1.02 全ての PV 生産技術能力で、これには PV 生産中に FC を使 用しないところも含まれている;2003 年の世界の平均稼働 率=86%。出典:IEA,2003 年 PV 参加調査国 6.2.4 完全性 半導体産業については、企業やプラントの数が限られているため、大半の国で排出量を 完全に計算できるようにせねばならない。取り組むべき完全性に関しては4つの問題があ る: *その他の副生物:CVD 室の洗浄やエッチングに FC を使用する結果、数多くの加工副生 物が発生する。上で強調した通り、CF 4 と C 2 F 6 は、他の FC ガス分解の結果生成される ことがある。また、低kCVD 室の洗浄では、CF 4 の生成が認められた。この場合、排出 量を正確に推定するために、ティア3方式を利用せねばならない。 *新しい化学物質:半導体業界が、製品改良のための新しい生産工程を評価し、採用する ことになれば、完全性は将来も問題となる。FCの排出量を削減する業界規模の努力も、新 しい化学物質の検討を加速させている。したがって、IPCC第 3 次評価報告で取り上げら れていない温室効果ガス(例:C 4 F 6 、C 5 F 8 、Fluorinerts TM 、Galdens R )も計算に入れ るメカニズムに組み込むことが、業界にとってのグッドプラクティスとなる。これらの新 121 しいFC物質は、GWPが高く、高GWPの副生物の排出量が多いものもある。 *その他の排出源:ガスの処理(例:配給)中、また、研究開発(例:大学)規模のプラ ント、製造設備メーカーなどの排出源から、少量の FCs が放出されることがあるが、その 排出量は有意なものとは考えられない(例:この業界の総排出量の 1%未満)。 *その他の製品または生産工程:半導体産業では、次のような排出源用途でのFCの使用が 確認されている:微小電気機械システム(MEMS) 17 、ハードディスク・ドライブの製造 やテスト(FC液)、蒸気相還流はんだ付け、精密洗浄 18 。 6.2.5 一貫した時系列の展開 半導体産業による FCs の使用は、1970 年代末期に始まり、1990 年代初期に大幅に拡大 された。基準年の排出量水準を算定するのが難しいのは、1995 年より前の排出量に関する データがほとんどないからである。単純な仮定(例:使用量=排出量)に基づき過去の排 出量を推定する場合には、上記の方法を適用して、それらの推定値を改善することができ る。ティア3又は2方法を利用できるほど過去のデータがない場合には、デフォルト排出 量変数を使用するティア1法を、遡及的に利用してもいい。比較や評価基準を作ることが できる量のデータが入手できるようになった年には、ティア1法とティア2法を同時に適 用してもいい。その場合は、1巻第5章に記す手引きにしたがって行うものとする。 経時的に一貫した排出量の記録をつけるために、インベントリ機関は、排出量の計算手 順が変わるたびに(例:インベントリ機関が、デフォルト値の利用からプラント・レベル で算定した実値に変更した場合)、報告されたすべての年の FC 排出量を再計算せねばなら ない。時系列内のすべての年に関するプラント固有のデータが入手できない場合には、イ ンベントリ機関は、それらの年の排出量を再計算するのに、現在のプラント・データをど のように使用できるのかを検討する必要がある。プラントの操業が実質的に変わらなけれ ば、以前の年度の販売データに現在のプラント固有排出量変数を適用することもできる。 排出量傾向の変化が現実のものであり、手順変更の人為的結果でないようにするためにも、 再計算は必要である。 6.3 不確実性の評価 ティア3方式を利用すると、不確実な数字は最小限となる。プラント数は限られており、 プラントレベルで生産工程が綿密に監視されているため、ティア2b 法またはティア3法 で使用するデータの収集は、技術的には可能である。インベントリ機関は、1巻第3章で 17 微小電気機械システム(MEMS)の生産による排出量は、その他電子関係の小業種のために利用した 方法と同様の方法を利用して推定することもできる。会社固有の排出量と削減ファクターも必要である。 研究開発の研究所/施設でも、極く少量のFCs を使用する。 18 精密洗浄による排出量は、7.2「溶剤小排出源カテゴリー」に記載するものとする。 122 概説されている専門家の判断を仰ぐ方式を採用し、不確実性について業界に助言を求める べきである。 すべての方式の中でもっとも不確実なのが、ティア1である。各種の半導体製品からの FC 排 出 量 を 計 上 す る の に た だ 1 つ の 係 数 を 採 用 す る と い う の は 、 簡 易 化 し す ぎ る 。 20 MtCO 2 /m 2 という係数は、1990 年代末期に先端であったメモリーとロジック製品(それぞ れ、シリコンウェーハに 3~5 層を重ねたもの)に比重を置き過ぎている。現在、最先端 の技術で製品を製造しており、FC排出量削減手段を採用していない国々を対象とした係数 はもっと大きいのに対して、古い技術を使用する製品を製造し、より簡単なデバイスを製 造している国々の場合は、同じか、もっと小さい係数を使用することになる。 6.2.3 項で記載したように、20MtCO 2 /m 2 という係数は単純ではあるがそれとなくこの簡素 化を埋め合わせたものである。 LCD 生産のためのティア1排出係数は、データが利用できる地域での LCD 生産期間中 に消費された基盤ガラス面積当たりの推計された重量平均 PFC 排出量の合計を示してい る。日本が報告した推計排出量では、半導体生産に関する 2002 年グッドプラクティスガ イダンスの半導体生産用のティア2b 係数を使用している。台湾の LCD 生産からの排出量 には、排出量推定の方法が記載されていない。LCD 生産用のティア1排出係数の不確実性 は大きいが、しかし知られてはいない。 半導体と LCD 生産用にティア3を使用した時の排出量の推計結果は、ティア2a,2b あ るいはティア1法よりもかなり精度が良く、相対誤差は±15%程度(標準偏差)である。 排出削減技術の有効性での不確実性が、全体の不確実性に対し最も寄与することが示され ている。特に排出削減設備の稼動率の不安定さと排出削減設備の設計能力以上の排気量な どがある。 ティア2法を使用しての熱伝導液からの排出量の推計は、ティア1法よりも相対誤差は ±10%程度(標準偏差)とより正確である。 6.3.1 排出係数の不確実性 ティア2b、2a 方式のための推奨排出係数の不確実性を、表 6.12「半導体と LCD の生 産を対象としたティア2a、2b の方式のための排出量の相対誤差、物質の生成/破壊効率 の係数」に示した。特にこの手引きのために、係数を定めた。ティア2b については、そ れぞれの記入事項(ティア2b の場合は生産工程とガス)の相対誤差を、専門家グループ から提供を受けた係数の標準偏差(単純-無加重-平均により正規化し、四捨五入して1 つの有効数字とした)として推定した。物質生成係数(B)の相対誤差を推定するのにも、 同じ手順を用いた。ティア2c 方式の相対誤差を推定するにあたっては、それぞれのガス について、エッチング工程、洗浄工程を通じて、報告を受けたすべての排出係数、物質生 成係数をまずプールした。続いて、この母集団の相対誤差を数値の標準偏差(単純平均に より正規化し、四捨五入して1つの有効数字とした)として推定した。 123 表 6.12 半導体と LCD の生産を対象としたティア 2a、2b 方式の排出量の相対誤差 ±%(標準偏差)、物質生成/破壊効率の係数 CF 4 C2F6 CHF 3 C3F8 c-C 4 F 8 NF 3 SF 6 1-U i 20 30 60 10 50 100 100 B NA 100 100 60 70 100 NA C NA NA NA NA 130 NA NA Etch 1-U i 30 50 30 NA 50 NA 95 CVD 1-U i 5 20 NA 15 20 100 NA Etch B NA 80 100 NA 70 NA NA CVD B NA 60 NA 60 60 100 NA 1-C i 20 30 60 10 50 40 60 B NA 100 100 60 70 NA NA Etch 1-C i 20 50 30 NA 50 NA 30 CVD 1-C i ND 20 NA 15 20 40 5 Etch B NA 80 100 NA 70 NA NA CVD B NA 60 NA 60 50 NA NA 半導 体 ティア 2a ティア 2b TFT-LCD ティア 2a ティア 2b ティア1は新しい方法なので新しい排出係数を決める必要があった。ティア1の排出係数 の不確実性は、±100%(標準偏差)となると思われる。 6.3.2 活動量データの不確実性 ガス消費量は、ティア2a、2b の方式により半導体と LCD の生産中の排出量を推定す る際の活動量単位となる。ガス消費量は、ガスの購入量データから推定するか、測定する ことができ、出荷容器に入れてガス供給業者に返却された未使用のガス(h)を把握する必要 がある。ガスの消費量とh(測定値または専門家の判断に基づく推定値)に関する不確実 性(相対誤差、標準偏差)を、表 6.13「半導体と LCD の生産を対象としたティア2a、 2b 方式の活量量データの相対誤差」に示した。 124 表 6.13 半導体と LCD の生産を対象としたティア2a、2b 方式の活動量データの 相対誤差±%(標準偏差) CF 4 C2F6 CHF 3 C3F8 c-C 4 F 8 NF 3 SF 6 FC i ±5 ±5 ±5 ±5 ±5 ±5 ±5 h(測定値) ±5 ±5 ±5 ±5 ±5 ±5 ±5 h(推定値) ±50 ±50 ±50 ±50 ±50 ±50 ±50 半 導 体 と LCD 生 産 ティア1方式の場合は、活動量単位は回路基板の消費量である。ティア1活動データでの 不確実性は WFW と FPD のデータベースにデータ登録をしないことにある。表 6.6 に記 載された WFW 値の信頼性の推定値は、±5%(1標準偏差)で、これは、データベース への記入漏れや記入ミスによる誤差を反映したものである。1991-2000 年の期間における 生産能力の稼働率の標準偏差は±6%である(-1標準偏差は稼働率 76%、 +1標準偏差は稼働率 88%)。LCD と PV 生産の類似の登録は半導体生産の状況と同じで あると言える。 6.4 6.4.1 品質保証と品質管理(QA/QC)、報告、文書化 品質保証と品質管理(QA/QC) 1巻第6章で概説した品質管理のためのチェックを行い、専門家に排出量の推定値を再 検討してもらうのがグッドプラクティスである。1巻第6章で概説した追加的な品質管理 のためのチェックおよび品質保証手順も適用しても良い。この排出源のカテゴリーからの 排出量を算定するのに高い階層の QA/QC 手順を利用する場合は、特にそうである。イン ベントリ機関は、1巻第4章で指定した主要カテゴリーには、高い階層の QA/QC 手順を 採用するのが望ましい。 高い階層の QA/QC 手順の追加的な一般手引きも、1巻第6章に記してある。半導体業 界は非常に競争が激しいため、企業の機密情報の取扱い規定を、検証のプロセスに盛り込 ませる必要がある。採用した方式は、文書化し、データの測定と計算の定期的な監査を検 討せねばならない。プロセスと手順の QA 監査も検討せねばならない。 6.4.2 報告、文書化 1巻の 6 章で概説した国内排出量のインベントリを推定するのに必要なあらゆる情報を 文書化し、保管するのがグッドプラクティスである。国内インベントリ調査報告書にすべ ての文書を含めるのは実用的でない。しかしながら、インベントリ調査には、利用した方 法の要約、参照した出所データを加え、報告する排出量推定値の透明性を高め、計算段階 125 を追跡調査できるようにせねばならない。 エレクトロニクス業界における排出量に関して明確な報告を行えば、排出量の透明性と 比較性を改善することができる。エレクトロニクス業界からは多くの FCs ガスが排出さ れるため、化学物質の種類別ではなく、ガスの種類別に報告した方が、データの透明性と 有用性が改善されると思われる。透明性を向上させる努力を行うにあたっては、個々のガ スの用途に関する企業機密情報の保護を考慮せねばならない。3社以上のメーカーがある 国では、ガス固有排出量データを国レベルで集計して、この情報を保護せねばならない。 表 6.14「半導体生産による排出量の推定値を完全に透明なものにするために必要な情報」 には、報告する排出量推定値を完全に透明なものにするために必要な関連情報を記してあ る。 ティア3の場合、会社固有排出係数策定を文書化し、一般デフォルト値からの偏差を説 明するのが、グッドプラクティスである。機密維持上の問題から、インベントリ機関は、 メーカーを通じてこの情報を集計することを希望することもあるかもしれない。ある国の 複数のメーカーが、特定の FC、生産工程または生産工程の種類について異なる排出係数 または転換係数を報告してきた場合には、インベントリ機関は、報告、使用された係数の 範囲を提示してもかまわない。 表 6.14 エレクトロニクス生産による排出量推定値を完全に透明なものにするために必要な情報 ティア 1 加工したエ レ クトロニク ス 基板の総面 積 (例:シリ コンcm 2 、ガラスm 2 ) 半導体、LCD と PV 生産に利用できる能力 PV 生産での FC ガスを使用する割合 各 FC の排出量(すべての FCs の排出量合計ではな い) 各 FC の販売量/購入量 生産工程別または生産工程の種類別の各 FC 使用量 排出削減技術を採用した生産工程における各 FC の 使用分 生産工程別または生産工程の種類別の各 FC 使用率 (この情報 と 下記の情報 は 、デフォル ト 値を使用し ない場合にのみ必要) 生 産 工 程 別 ま た は 生 産 工 程 の 種 類 別 各 FC の CF 4 転換分 出荷容器内に残ったガス分 排出削減技術により廃棄された各 FC の破壊分 排 出 削 減 技 術 に よ り 破 壊 さ れ た 各 CF 4 副生 物の 破 壊分 126 ティア 2a ティア 2b X X X X X X X ティア3 X X X X X X X X X X