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静岡県の東海地震対策 (PDF:7310KB)
地震対策資料 No.244-2011 静岡県の 東海地震対策 平成23年4月 静 岡 県 目 次 1 東海地震とは 1 (1)東海地震とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 (2)東海地震発生の根拠・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (3)静岡県に関係するその他の主な地震・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 2 被害想定 4 3 地震対策事業の実施 7 4 東海地震の監視体制 10 (1)政府の地震調査研究体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 コラム 飲料メーカーとの災害対応型自動販売機の設置促進等に関する協定・・・10 (2)県内の地震予知観測網・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 5 「東海地震に関連する情報」発表時の対応 12 6 効果的な災害対策のための取組 14 (1)静岡県の防災体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 (2)地域危機管理局地域支援課・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 (3)災害対策本部施設の常設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 (4)総合情報ネットワークシステム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 (5)総合防災情報支援システム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 (6)東海地震応急対策活動要領に基づく静岡県広域受援計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 (7)国の現地本部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 (8)消防防災航空隊・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 コラム 家庭内DIG~地震がきてもわが家で暮らす方法~・・・・・・・・・・・・・・20 (9)孤立地域対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 (10)新東名高速道路の使用に関する協定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 (11)海上輸送体制の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 (12)災害応急対策における静岡空港の活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 (13)地震対策推進条例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 (14)全国都道府県における災害時等の広域応援に関する協定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 コラム 平成22年度の防災訓練・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 (15)ふじのくに防災に関する認証制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 (16)災害ボランティアの受入と支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 コラム 避難所運営ゲームHUG(ハグ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 (17)静岡県地震防災センター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 コラム 中国浙江省との防災に関する協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 7 地震対策アクションプログラム2006の推進 28 (1)国の地震防災戦略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 (2)地震対策アクションプログラム2006・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 コラム 防災ヘリコプターの相互応援協定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 (3)プロジェクト「TOUKAI-0」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 (4)県有建築物の耐震性能等の表示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 コラム 浜岡原子力発電所の地震対策について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 (5)協働(コラボレーション)や人材育成による自主防災組織の活性化・・・・・・・・・・31 コラム 平成21年8月11日の駿河湾を震源とする地震・・・・・・・・・・・・・・・・31 8 防災訓練 32 コラム 自主防災リーダーのためのチェックリストシリーズ・・・・・・・・・・・・・・32 <表紙紹介> 平成22年度の総合防災訓練(平成22年8月31日) 県地震災害警戒本部(本部長:川勝知事)と国の現地警戒本部(本部長:大島内閣府 副大臣(当時))との合同会議を実施し、国との連携体制について確認しました。 1 東海地震とは (1)東海地震とは 1976年(昭和51年)8月、東京大学理学部の石橋助手(当時) 日本付近のプレート は、「静岡県を中心とした東海地域で、大規模な地震が明日起こっ 130°E 140° ても不思議ではない」という東海地震説を発表しました。 この地震説の発表は、静岡県を中心とした東海地域で大きな社 会問題となり、県や市町村をはじめ各家庭でも、東海地震対策 50°N が最も急がれる重要な課題となりました。 この説の発表から大地震が起こることなく30年余が経過しました が、「日一日と東海地震の発生が近づいている」というのが、地 震学者の一致した意見です。 40° 「東海地震」の想定震源域 30° (瀬野徹三氏による) (気象庁による) プレート境界型地震が発生するしくみ 予想されている東海地震は、プレート境界型地震(「海溝型地震」とも呼ぶ。)です。駿河湾内の最深部(駿河トラフと呼ばれてい るところ)が、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界となっています。 駿河トラフ 海底を作っているフィリピン海プレートが年 数cmの割合でユーラシアプレートの方へ 移動し、その下へ潜り込む。 ユーラシアプレートの先端部が引きずり込 まれ、ひずみが蓄積する。 1 ひずみがその限界に達した時、ユーラシア プレートが跳ね上がり、地震が発生する。 その際、津波も発生する。 (2)東海地震発生の根拠 ①大地震は周期的に起こる 日本列島の太平洋岸では、海洋プレートの潜り込みによる地 震が繰り返し起こっています。 しかし、駿河湾から遠州灘にかけては、1854年の安政東海 地震以来大きな地震がなく、地震活動の空白域と呼ばれ、地 フィリピン海プレートが潜り込む東海地域から四国沖にかけて は、100~150年の周期で、ほぼ同じ場所で、ほぼ同じ規模の 震のエネルギーが蓄積されており、近い将来、巨大地震の発 生が予想されています。 また、神奈川県西部の地域でも、1633年の寛永地震以降 地震が繰り返し起こっています。 1854年の安政東海地震の後、東海地方より西側では、1944 年(昭和19年)の東南海地震や1946年(昭和21年)の南海地 だけでもほぼ一定の間隔でM7程度の地震が5回発生してお り、近い将来、地震の発生が指摘されています。 震が発生し、このときに一度、地震のエネルギーは放出したと考 えられています。 太平洋岸で起こった過去の大地震と想定震源域 2 2 ②大地に歪みが蓄積されている ③最近の東海地域とその周辺の地殻変動 国土地理院による東海地域の地殻変動観測では、水平変動 最近の観測データから見ると、東海地震の想定震源域のさらに では駿河湾をはさむ東西方向が年間1cm程度縮みつつあり、 深部で、平成13年(2001年)から続いていたスロースリップ(非 上下変動では駿河湾の西側が沈降しています。年間4回の測 地震性のゆっくりすべり)は、平成17年(2005年)まで続き、現在 量では、掛川市内にある水準点を基準にし、御前崎市内にあ はほぼ停止しました。一方、浜名湖東方から静岡県中部では、地 る水準点は、グラフのとおり季節的な上下変動を繰り返しなが 震活動が通常より低い状態(地震活動の静穏化)が続いています。 ら沈降しています。沈降が停止し、隆起に転じるとき地震が発 東海地震を起こすエネルギーは絶え間なく蓄積されており、前 回の安政東海地震から約150年が経過する中、東海地震はいつ 生すると考えられています。 発生してもおかしくない状況にあります。 掛川市を基準とした御前崎市の地面の沈下量のグラフ (3)静岡県に関係するその他の主な地震 ○富士川河口断層帯による地震 富士川河口断層帯は静岡県東部の富士川河口から富士山南西山麓にかけ て、ほぼ南北に延びる約26kmの断層帯で、駿河湾内のプレート境界断層 (東海地震の震源域)に連続していると考えられています。 政府の地震調査委員会は最新の調査結果をもとに平成22年10月に長期 評価の一部改訂を行いました。その評価結果によると、富士川河口断層帯は 駿河トラフで発生する海溝型地震と連動して同時に活動すると推定され、この 場合マグニチュード8程度の地震が発生する可能性があります。 過去の活動履歴についての解釈の違いから、将来の地震発生確率も2通り の評価がありますが、いずれの場合も最大値をとると今後30年の間に地震 が発生する確率が、わが国の主な活断層の中では高いグループに属すること になります(高いグループとは、今後30年間の地震発生確率(最大値)が3% 以上であることを意味します)。 富士川河口断層帯位置図 (出典:平成22年10月地震調査研究推進本部) ○東南海・南海地震 遠州灘西部から四国沖までの南海トラフ沿いの地域も、歴史 震対策大綱」によれば、「今後、東海地震が相当期間発生しな 的に見て、概ね100~150年の間隔で海溝型巨大地震が発生 かった場合には、東海地震と東南海・南海地震が連動して発 しています。このうち、遠州灘西部から熊野灘で発生する地震が 生する可能性も生じてくると考えられるため、今後10年程度経 東南海地震、四国沖で発生する地震が南海地震と呼ばれ、今 過した段階で東海地震が発生していない場合には東海地震対 世紀前半にも巨大な地震が発生する状況にあることが懸念され 策と合わせて本大綱を見直すものとする」としており、現在、国 ています。 において、連動発生についての被害想定等の検討を始めたと 平成15年12月には、東南海・南海地震により著しい災害が発 ころです。また、仮に東海地震と東南海地震が同時に発生して 生するおそれのある地域として「東南海・南海地震防災対策推 も、直下の東海地震の震源断層から発する地震動などの影響 進地域」が指定され、県内では16市町が指定されています。 が最も大きいことから、防災対策は東海地震対策を行うことで なお、中央防災会議が平成15年に発表した「東南海・南海地 概ねカバーされると考えられます。 3 2 被害想定 第3次地震被害想定の前提条件 地 震 の 規 模 : マグニチュード8程度 想 定の季節等: 冬の朝5時、春・秋の昼12時、冬の夕18時 対 象 人 口 : 3,737,360人(平成7年国勢調査による常在人口) 対 象 建 物 : 1,528,349棟(平成10年1月1日現在) 被害想定に用いた断層モデル 第3次地震被害想定の結果(総括表) 予知なし (1)物的被害 ●建物被害 被害区分 予知あり 冬5時 春・秋12時 冬18時 大 破 150,330棟 155,489棟 192,450棟 140,801棟 中 破 306,845棟 305,329棟 294,846棟 309,174棟 291,890棟 一 部 損 壊 289,365棟 288,090棟 279,433棟 床 上 浸 水 7,884棟 7,865棟 6,945棟 7,041棟 754,424棟 756,773棟 773,673棟 748,907棟 計 ※焼失は「大破」に含む。「予知あり」の場合、出火防止対策により、焼失する建物が「予知なし」に比べ減少す ることが見込まれるため、「大破」に該当する建物は「予知あり」と「予知なし」によって違いが生じている。 また、「予知あり」により焼失を免れた建物であっても、揺れの被害により「中破」や「一部損壊」等の被害を受 けることが見込まれるため、「中破」や「一部損壊」に該当する建物も「予知あり」と「予知なし」によって数値に 違いが生じている。 なお、小数点処理による四捨五入のため合計値は必ずしも合わない。 ●その他の物的被害 (2)人的被害 区 分 対象箇所数 256,296箇所 27,989箇所 屋外落下物 54,336箇所 7,577箇所 予知なし 予知あり 被害区分 冬5時 死 春・秋12時 冬18時 冬5時 春・秋12時 冬18時 者 5,851人 3,695人 4,016人 1,470人 828人 790人 重傷者 18,654人 16,579人 16,309人 3,122人 2,663人 2,521人 中等傷者 85,651人 74,564人 73,072人 17,634人 14,205人 13,412人 (3)ライフライン機能支障 ●ライフライン被害 被害箇所数 ブロック塀・石塀 施設名 総 配電柱 電 電 数 被害数 被害率(%) 712,612本 9,269本 1.3% 地中線(配電) 1,170km 11km 0.9% 地下ケーブル 6,175km 65km 1.1% 0.6% 力 話 都市ガス 架空線 9,243km 57km 電話柱 267,828本 3,284本 1.2% 低圧管 5,323km 2,488箇所 0.5箇所/km 17,045km 23,156箇所 1.4箇所/km 6,006km 128km 2.1% 上水道(配水管) 下水道(枝線) ●ライフライン機能支障 機能支障率 電 力 電 話 都市ガス 機能支障需要家数 34% 施設応急復旧日数 582,667 6~12日程度 輻輳により1週間程度電話がかかりにくくなることが想定される 12日程度 安全確保のため揺れに伴い緊急遮断され供給が停止する 30日程度 1日後 71% 880,477 30日程度 7日後 15% 183,557 30日程度 2% 11,707 30日程度 上 水 道 下 水 道 4 5 6 3 地震対策事業の実施 また、「地震防災対策特別措置法」に基づく地震防災緊急事業 「大規模地震対策特別措置法」には、東海地震による災害か ら住民の生命、財産を守るため、緊急に整備すべき施設として、 五箇年計画も、平成18年度から平成22年度までの第3次五箇 避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路及び関連施設、 年計画により避難地、緊急輸送路などを整備しました。 このほか、県単独事業による地震対策事業も行っています。 通信施設などが挙げられています。 なお、県では、昭和54年度から平成5年度までの15年間にわ 県では、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整 備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(地震財 たって企業の理解と協力を得て法人事業税の超過課税を実施し、 特法)」に基づく地震対策緊急整備事業について、昭和55年 これらを財源として地震対策事業を行いました。 度から平成26年度までの35箇年計画を作成し、各種施設を 整備しています。 県が取り組んだ地震対策事業の実績 (単位:億円) 病院・学校・ 社会福祉施設の耐震化 3,849 その他市町助成等 6,411 計 1兆9,793億円 緊急輸送路の整備 3,410 通信施設の整備 481 消防用施設の整備 803 山・崖崩れ防止対策 2,534 津波対策施設の整備 826 避難地・避難路の整備 1,479 昭和54(1979)年度~平成21(2009)年度の事業費の合計と内訳 地震対策事業の実績 (単位:億円) 区分 事業別 平成21年度末 実績額 計画額 1地震対策緊急整備事業 2地震防災 緊急事業 3県単独の地震対策事業等 合 計 9,314 8,419 (90%) 第1次計画 (H8~H12) 1,758 1,518 (86%) (平成12年度末) 第2次計画 (H13~H17) 1,132 632 (56%) (平成17年度末) 第3次計画 (H18~H22) 979 584(60%) (平成21年度末) 8,640 19,793 ( )は進捗率 7 法人事業税の 超過課税の実績 (単位:百万円) 期 間 実績額 昭和54年4月~ 昭和59年3月 39,369 昭和59年4月~ 平成元年3月 60,147 平成元年4月~ 平成6年3月 56,654 合 計 156,170 これまでの地震対策事業と被害軽減効果 人的・物的被害の軽減 避難地・避難路の整備 1,479億円 避難の迅速化、避難地の確保 避難地 87.0ha、 避難路 37.7km 消防用施設の整備 火災被害の軽減(冬18時) 803億円 焼失棟数 79,000棟⇒ 58,000棟(26%被害減) 人的被害 800人⇒ 590人(27%被害減) 耐震性貯水槽など 8,927施設 病院・学校・社会福祉施設の耐震化 突発地震による入院患者、児童・生徒、 3,849億円 入所者の安全確保 小・中学校 1,749校 地震後の医療救護拠点や避難拠点の確保 社会福祉施設 192箇所 津波対策施設の整備 津波の浸水域の軽減(冬5時) 826億円 浸水面積 59k㎡⇒ 38k㎡(36%軽減) 人的被害 死者810人⇒ 230人(72%被害減) 物的被害 大破6,700棟⇒ 2,200棟(66%被害減) 河川管理・海岸保全施設 60箇所 山・崖崩れ防止対策 山・崖崩れ危険度の軽減(冬5時) 2,534億円 人的被害 死者660人⇒ 560人(16%被害減) 物的被害 大破4,200棟⇒ 3,500棟(15%被害減) 急傾斜地崩壊防止施設、 地すべり防止施設等 計2,796箇所 災害応急対策の迅速化 緊急輸送路の整備 食料、生活物資、復旧資機材などの 緊急輸送活動の迅速化 3,410億円 緊急輸送道路等 18.4km 通信施設の整備 県民への的確な情報伝達 災害対策本部の活動の迅速・的確化 481億円 同報無線 10,680局 その他市町村助成等 6,411億円 災害応急対策の迅速化 防災拠点整備や老朽住宅密集市街 地対策、自主防災組織の育成、県民 の防災意識の高揚など 県民の防災対策の充実 注1:事業費は昭和54(1979)年度~平成21(2009)年度における合計19,793億円の内訳 事業例は主な事業を例示 注2:被害軽減効果は平成11(1999)年度までの事業により算出 8 避 難 公立小・中学校の耐震化 地 城北公園(静岡市) 津 波 対 策 施 設 藤枝市立藤岡小学校校舎(藤枝市) 消 防 用 施 設 焼津漁港津波避難施設(焼津市) 防 災 拠 点 救助工作車(静岡市) 緊 急 輸 送 路 三区コミュニティ防災センター(焼津市) 急傾斜地崩壊防止施設 (国)473号(菊川市) 東 名 跨 道 橋 岩地西の田(松崎町) J R 跨 線 橋 (他)今泉神楽石1号線・神田ヶ沢橋(富士市) (他)新居12号線・新居跨線橋(新居町) 9 4 東海地震の監視体制 (1)政府の地震調査研究体制 文部科学省 国土地理院 地震調査研究推進本部 政 策 地震調査 委 員 会 委 員 会 各 省 防災関連部局 地震予知連絡会 マスコミ 評価結果・説明 データ評価結果 具体策 地域地震情報センター 管区気象台 データ説明研修会 大学 地方出先職員 情報 地方自治体 公益企業・民間企業 大学並びに 各研究観測機関 気象庁 地震防災対策 強化地域判定会 国土地理院 大学等 防災科学技術研究所 産業技術総合研究所 海上保安庁海洋情報部 ①地震調査研究推進本部 平成7年7月に施行された「地震防災対策特別措置法」に基づき、地震に関する調査研究を推進するため、「地震調査研究推 進本部」が設置されました。推進本部には、施策の立案、調整、計画策定、広報などについて調査審議する「政策委員会」と、 地震に関する調査結果等の総合的評価を行う「地震調査委員会」が置かれています。 ②地震防災対策強化地域判定会 ③地震予知連絡会 大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域の 地震予知計画に加わっている官庁(気象庁、国土地理院 指定(昭和54年8月7日)に併せて設けられた機関です。在京の大 など)、大学などの専門家が最新の観測結果を検討する会 学教授6人で構成され、歪計のデータに基準値を超える異常が 議で、昭和44年に発足しました。事務局は国土地理院にあ あった場合などに、東海地震につながる異常か否かを判定します。 ります。3ヶ月毎の定例会のほか、異常現象が観測された時 判定の結果、地震の発生に結びつくと判断された場合、内閣総理 には、中日本、東日本及び西日本部会のほか臨時の本会 大臣に報告され、内閣総理大臣は閣議決定の後、強化地域に対し 議などが開催されます。 て警戒宣言を発するとともに、強化地域内の住民に対して地震予 知情報の周知徹底を図ることとなります。 会 委 長 員 会 長 副会長 阿部勝征(東京大学名誉教授) 島崎邦彦 (東京大学名誉教授) 吉井敏尅(日本大学文理学部教授) 加藤照之 (東京大学地震研究所教授) 副会長 平田 直(東京大学地震研究所教授) 吉田明夫(神奈川県温泉地学研究所長) (平成22年4月1日現在) 委 員 島崎邦彦(東京大学名誉教授) 東日本部会長 松澤 暢(東北大学大学院理学研究科教授) 西日本部会長 平原和朗(京都大学大学院理学研究科教授) 中日本部会長 山岡耕春(名古屋大学大学院環境学研究科附属 地震火山・防災研究センター教授) 26人 (平成22年5月21日現在) コ ラ ム 飲料メーカーとの災害対応型自動販売機の設置促進等に関する協定 県は、平成22年8月、県内に災害対応型の清涼飲料自動販売機を設置する飲料メーカーと、機 内飲料の提供や設置促進に関する基本協定を締結しました。 県では、1人1日3リットルの飲料水備蓄を各家庭にお願いするとともに、メーカーとの飲料水提 供協定の締結や、日本水道協会と連携した飲料水確保施策を行っていますが、災害対応型自動 販売機の設置により、家庭の備蓄不足を地域で補う体制の整備も進めてまいります。 10 (2)県内の地震予知観測網 地震計、GPS、歪計、傾斜計など485の観測施設が設 東海地域は、大規模地震対策特別措置法により地震 置されています。 観測体制の強化が図られ、平成23年1月現在、県内に は、気象庁や国土地理院などの防災関係機関等により、 地震・火山噴火予知観測施設整備状況 (平成23年1月17日現在) テレメータ数 観測項目 施設数 歪 32 32 (26) 地 震 117 116 (94) 傾 斜 44 44 (35) 検 潮 9 9 (8) 地 電 位 11 10 0 地 磁 気 28 22 0 地 下 水 位 15 15 (12) 地 下 水 11 11 (4) ラ ド ン 4 4 0 伸 縮 4 3 0 重 力 1 1 0 G P S 194 136 (5) レ ー ザ ー 7 5 0 電 磁 波 1 1 0 全 磁 力 2 2 0 地 中 温 度 1 1 0 水 温 1 1 0 間 隙 水 圧 0 0 0 溶 存 ガ ス 1 1 0 海底地殻変動 2 0 0 計 485 414 (184) ( )は気象庁までテレメータ化され、24時間監視され ている施設数 水管傾斜計 ※気象庁、静岡県以外の観測施設も含む 中でも、気象庁による歪計の観測網は、東海地震の前兆現象をキャッチする 大きな戦力とされ、「東海地震に関連する情報」の発表基準の対象にもなってい ます。県においても、想定震源域の北西側での検知能力の向上を図るため、平 成9・10年度に、県内陸部(浜松市天竜区春野町及び川根本町)に大深度歪計 観測施設を整備し、気象庁へデータ伝送を行っています。 県ではこのほか、水管傾斜計を昭和57年度に牧之原市(旧相良町)、昭和 59年度に静岡市に設置し、県及び静岡大学へデータ伝送を行っています。 か み さ か 上坂(静岡市)観測点内部 大深度歪計の概念図 県庁(危機管理センター) (伝送処理装置) 浜松市天竜区春野町及び川根本町 (大深度歪計埋設) 内部に組込んだ歪計センサー 歪計センサーの外観 11 5 「東海地震に関連する情報」 発表時の対応 ○東海地震予知情報 気象庁では、静岡県を中心とする東海地域に設置した 【カラーレベル 赤】 地震計や歪計等の観測機器により、24時間体制で地殻 東海地震が発生するおそれがあると認められ、「警戒宣 の状況を精密に監視しています。観測データに異常な変 言」が発せられた場合に発表される情報。この東海地震予 化が見られた場合は、東海地震発生の危険度に応じて、 知情報は、内閣総理大臣は閣議で決定した後、静岡県全域 気象庁から次の三つの段階の東海地震に関連する情報 (全市町)を含む「地震防災対策強化地域」に対して「警戒 が発表されます。 宣言」を発令された後に発表されます。 ○東海地震に関連する調査情報 【カラーレベル 青】 東海地震注意情報及び東海地震予知情報は発表後、 東海地震に関連する現象について調査が行われた場 東海地震発生のおそれがなくなったと判断された場合は、 合に発表される情報 それぞれ情報が解除されます。 (定例) 毎月の定例の判定会で評価した調査結果として 出される情報 東海地震に関連する調査情報、東海地震注意情報、東海 (臨時) 観測データに通常とは異なる変化が観測された 地震予知情報の発表や警戒宣言の発令は、テレビ・ラジオ 場合、その変化の原因についての調査の状況とし 等により、県民に伝えられます。また、警戒宣言が発令され て出される情報 た場合は、市町村の広報用スピーカー(同報無線)、サイレ ○東海地震注意情報 【カラーレベル 黄】 ン、広報車などでも伝えられます。 観測された現象が東海地震の前兆現象である可能性が 高まった場合に出される情報 【カラーレベル 青】 【カラーレベル 黄】 【カラーレベル 赤】 東海地震に関連する 調査情報(臨時) 警戒宣言 ↓ 東海地震予知情報 東海地震に関連する現 象について調査が行われ た場合に発表されます。 観測データに通常とは 異なる変化が観測された 場合、その変化の原因に ついての調査の状況とし て発表されます。 東海地震が発生する おそれがあると認めら れ、「警戒宣言」が発 せられた場合に発表さ れる情報。 (東海地震の突然発生の可能性) 東海地震予知のための観測体制や解析技術等は年々進歩してきていますが、現状では必ず地震予知ができるとは限り ません。地震予知ができる場合と、予知できず突然東海地震が発生する場合のいずれの可能性も考えられます。 地震予知の可能性に頼ることなく、いつ地震が発生してもしっかり対応できるよう、家屋の耐震性の確保や家具の固定、 食料・飲料水の備蓄など、日ごろから十分な備えを行っておくことが大切です。 12 「東海地震に関連する情報」発表時の対応 東海地震に関連する調査情報(臨時)【青】発表時 防災対応は特にありません。 電気・ガス、水道、電話のサービス供給や公共交通機関の運行、商店等の営業も平常どおりです。 平常どおりの行動に努め、テレビやラジオ等で正確な情報を把握してください。 県民・自主防災組織・各機関の対応 ライフライン・交通機関の状況 東海地震注意情報【黄】発表時 家具の転倒防止や防災倉庫・備蓄品の点検 避難対象地区の要援護者の事前避難 県民・自主防災組織 電気・ガス 平常どおり使用可能 避難対象地区の学校等では、児童・生徒の安全性を考慮し、帰宅又は保護者に引き渡 す。 水道 百 貨 店 原則として営業するが、状況によって部分的又は段階的に営業中止 電話 利用者の急増等により、ふくそう等が生じた場合は、必要 に応じ一般通話を制限する。 コンビニ等 平常どおり営業 鉄道 長距離夜行列車及び貨物列車は強化地域内に進入しな い。 医療機関 急患を除き、原則として外来診療制限 バス 平常どおり利用可能 道路 平常どおり通行可能 幼稚園・学校 銀 行 自動車運転者 (交通規制等) 東海地震予知情報【赤】発表(警戒宣言発令)時 県民・自主防災組織 平常どおり営業 交通規制は行われないが、著しい渋滞箇所などでは警察官による交通整理がある。 不要不急の旅行は自粛し、ラジオ等による情報収集に努める。 避難対象地区の住民は避難地に避難 自主防災組織による避難誘導、避難地開設 電気・ガス 幼稚園・学校 使用可能(できるだけ使わない。) 閉園・閉校し、子供は帰宅又は保護者に引き渡す。 百 貨 店 営業中止(ただし、耐震性が確保されている店舗は営業継続可) 水道 使用可能(普段から水をためておく。) コンビニ等 耐震性が確保されている店舗は営業継続可 電話 必要に応じ一般通話制限。ただし、緑色、オレンジ色及びグ レーの公衆電話からの通話は確保される。 医療機関 急患を除き、外来診療中止 鉄道 最寄の駅等付近の安全なところまで走行し、運転を中止す る。 営業中止(ただし、一部のATMは営業継続) バス 付近の安全なところまで走行し、運行を中止する。 徐行又は安全な速度で運転する。 強化地域への進入は禁止される。 主要避難路・緊急輸送路では交通制限が行われる。 主な交差点では交通整理が行われる。 運転中に避難が必要な場合は、道路の外又は左側に止め、できる限りキーをつけドアに 鍵をかけずに避難する。(車検証等の貴重品は持ち出す。) 道路 緊急輸送路・避難路を確保するため交通規制がされる。車 は徐行運転。 銀 行 自動車運転者 (交通規制等) 13 6 効果的な災害対策のための 取組 (1)静岡県の防災体制 県では、大規模地震等の災害発生時における情報の収 こととしています。 集、市町村支援等、県としての地域における災害応急対策 なお、本部は、国等との広域的な連携機能や全県的な広域 を充実・強化するため、地域危機管理局(4か所)を設置し、 調整機能を担うこととしています。 災害時には方面本部の中核としての機能を担わせる ●防災管内図 ●防災体制の概要 災害応急活動を円滑に実施するための 全県的な広域調整 国の現地本部 調整 応援部隊 指示 応急活動の 基本方針指示 要請 調整 要請 情報共有 東部危機管理局 (東部方面本部) 政府対策本部 県本部 県民への 広報活動 アシストⅡ 県庁 危機管理部 (県本部) 県方面本部 物資等の 受入れ 西部危機管理局 (西部方面本部) 方面本部管内で実施又は調整可能な対策は 各方面本部で対処 要請 応急活動の 実施 中部危機管理局 (中部方面本部) 各地域で 応急活動を 展開 市 ・ 町 (被災地) 賀茂危機管理局 (賀茂方面本部) (2)地域危機管理局地域支援課 県では、大規模地震等の災害発生時に、被害が甚大な市 方面本部に連絡するとともに、状況により県の連絡本 町の災害応急対策の実施を支援するために各地域危機管 部を設置し、市町と方面本部の連絡体制を確保します。 理局に指令班支援係(平常時は地域支援課)を設置して 平常時は、市町職員の資質向上のための研修や訓 います。 練の実施、危機事案に対する関係機関との調整など、 指令班支援係は、方面本部が設置された場合、方面本部 市町の防災体制強化のための支援を行っているほか、 長の指示に基づき方面本部体制の確保を行います。 市町地域防災計画の修正、大規模地震対策等総合支 また、市町に職員を派遣しても方面本部体制の確保に支 援事業費補助金事務などの業務を行っています。 障が生じないと判断できる場合には、指令班支援係を市町 また、ライフライン関係機関との連携を強化し、災害 に派遣します。派遣された指令班支援係は、市町の現状を 対策の促進を図っています。 14 (3)災害対策本部施設の常設 県では、大規模地震等の災害発生時に備え、県庁別館 静岡県危機管理センターには、発災初期に県内全域 に災害対策本部施設として、静岡県危機管理センターを常 の被害を迅速に把握するためモニターを各所に配置して 設しています。 います。それらの情報を、発災時に派遣される自衛隊な 静岡県危機管理センターは、大規模災害発生時における どの防災関係機関の連絡員と共有することで、迅速な調 本部長(知事)を中心とする迅速な意思決定及び業務執行 整や応急対策を実施します。 並びに国の東海地震応急対策活動要領に対応した応援部 また、地域危機管理局にも方面本部室を常設し、本部 隊の円滑な受入等を図るため、平成19年12月から平成20 や市町災害対策本部とのホットラインが設置されるなど、 年7月にかけて再整備しました。 必要な機能が備えられています。 静岡県危機管理センター(東) 対策立案・支援エリア 静岡県危機管理センター(東) 意思決定エリア 静岡県危機管理センター(西) 情報収集・分析エリア AV操作卓(静岡県危機管理センター(東)) 通信統制室 ヘリコプターテレビ電送システム県庁統制局設備(通信統制室) 15 (4)総合情報ネットワークシステム 県では、平成8年5月に、高度情報化に対応した情報 通信基盤の一環として、地上系無線と衛星系無線の2 ルート化による効率的な「総合情報ネットワークシステ ム」を構築しました。このシステムは、地上系無線と衛星 系無線を総合的・有機的に統合させ、信頼性の高いもの 防災ヘリコプター となっています。県庁をはじめ、市町村や防災関係機関 災害現場の状況を、搭載テレビカメ ラにより撮影し伝送します。 等を結ぶ通信回線として整備されたもので、防災通信は もちろん、データ通信や一般行政電話、映像伝送などの 幅広い用途に活用されています。 現在、デジタル化を軸とした次期防災通信ネットワーク の整備に着手しており、平成20年度に基本構想を策定 し、平成21年度から22年度にかけて基本設計と実施設 計を行いました。また、平成23年度から工事を始め、平 成26年3月末の完成を目指しているところです。 今後は、デジタル方式のメリットを活かし、災害に強い 高度な防災通信ネットワークシステムを構築していきま す。 無線局の設置箇所 (平成23年1月1日) 無線局数 施設名 県庁(災害対策本部) 施設数 (配備数) 地 無 上 線 系 局 衛 地 球 星 局 1 1 1 中継所 11 11 - 反射板 2 2 - 総合庁舎 9 9 9 無線中継所 単独土木事務所 2 2 2 土木支所(駐在等も含む) 9 9 9 県庁からの通信を、各地域危機管理局や 市町と結ぶ電波中継塔です。 その他出先機関 9 9 9 企業局出先機関 4 - 4 市町(支所含む) 66 59 66 市町消防本部 26 26 26 防災関係機関 11 10 10 災害拠点病院 9 - 9 衛星通信移動中継車 1 - 1 - - 18 160 138 164 可搬型衛星地球局 計 市町・防災関係機関等(災害対策本部) 一斉通報の受信やホットライン通話、映像受信、ファクシミリ通信など の機能を持ち、地域住民とのパイプ役になっています。 16 通信衛星 (スーパーバード) 県 庁(災害対策本部) 統括局としてシステム全体を把握し、 災害などに迅速に対応します。 可搬型衛星地球局 災害現場に設置して、音声、 ファクシミリ等により初期情 報を発信します。 地域危機管理局(方面本部) 県庁からの一斉通報の受信や管内市町村などへの一斉通報な ど、県庁と市町を結ぶ地域の情報拠点です。 衛星通信用移動中継車 災害現場などからの映像を送信します。 土木事務所・その他県出先機関(災害対策本部) 道路・河川の情報収集などにより、災害時の復旧、二次災害の防止などの役割 を持っています。 移動車 災害現場から、音声によりリアルタイムな情報を 送信します。 17 (5)総合防災情報支援システム 国、県の出先機関、市町及び防災関係機関からの 気象情報や被害情報などをコンピュータの活用によ り迅速・的確に収集できる「総合防災情報支援ステ ム」(ASSIST-Ⅱ)により、災害応急対策を支援し ます。 このシステムの特徴は、ビジュアルな情報により的 確な状況を提供できることです。 「ASSIST-Ⅱ」では、他のシステムとの連携や大 画面スクリーンへの表示など各種の個別防災システ ムを取り込み、本部・方面本部の立ち上がりから対 策立案までを支援します。 なお、平成22年度から23年度にかけて、市町と 連携した広域的な新システムを開発しており、23年 度中をもって「 ASSIST-Ⅱ」の運用を終了し、新シス テムにその役割を移します。 4 防災データベースシステム 1 被害情報収集システム 県内4つの方面本部や出先機 関と本部を総合情報ネットワー ク及び防災LANや県庁LAN等で 結び、パソコンを使って迅速な 被害情報の収集及び災害情報 の共有化を図ります。 あらかじめ「地域防災計画」で定めら れた県内各地の避難地や避難場所、 ヘリポートなどの各種防災基礎情報 のデータベース化により、対策立案の 支援を行います。 また、東海地震を想定した県内各地 の推定震度や建物被害率、人的被害 率などの想定データにより、災害直後 の被害概要の推定を支援します。 5 震度情報等表示システム 2 要請情報管理システム 市町からの県への要請情報と その回答について、管理するこ とができます。 また、県の対応状況について、 「未確認」、「保留」、「確認事項 有」、「対応中」及び「対応済」と リアルタイムに把握できます。 静岡県震度情報ネットワークシステム 及び気象庁緊急防災情報ネットワーク システムと連携し、県内震度情報及び 気象注警報等を表示します。 6 一斉配信システム 3 地図情報収集システム 被害情報収集システムと連動 し、被害場所を地図上に表示し ます。 また、ヘリコプターテレビ電送 システムなどからの画像情報の 表示と合わせ、被害の概要を即 座に把握できます。 インターネットやLGWANを利用し、県内 の市町や防災関係機関に緊急情報を一 斉に伝達します。 18 (6)東海地震応急対策活動要領に基づく 静岡県広域受援計画 県では、平成17年4月に、東海地震発生時等において実施 県へ 長野 ,340人 ) 2 (予知 2,340人 ) (突発 される国の広域応援を円滑に受け入れるため、広域受援計 画を策定しました。 計画では、主な活動内容として、救助・消火活動等、医療活 動、物資調達及び輸送活動の4分野について、応援部隊の数、 岐阜県 (予知) へ 300 人 (突発) 300 人 県へ 人 山梨 5,210 ) 10人 知 (予 ) 5,2 発 (突 神 (予 奈川 (突 知) 3 県へ 発) ,38 3,3 0人 80人 愛知県へ (予知) 13,550人 (突発) 12,450人 広域医療搬送や救護を要する患者数、必要となる物資の 量、これらを輸送する規模・範囲等を明示しています。 静岡県へ (予知) 52,990人 (突発) 53,800人 県では、計画に基づく活動が着実に実施できるよう地域危 三重県へ (予知) 3,470人 (突発) 3,470人 機管理局を中心に、市町や自衛隊等と連携し、おのおのの役 全般支援(防衛省) (予知) 36,800人 (突発) 36,800人 割分担の確認、要員や備品の整備状況の把握、活動拠点や 応援部隊の派遣規模(最大) ヘリポートなどの計画の検証に取り組んでいます。 浜名湖SA 足柄SA 応援部隊の主な進出拠点箇所 応援部隊の進出拠点(足柄サービスエリア) (7)国の現地本部 東海地震等の大規模災害が発生した際や、警戒宣言が発 この現地本部は、内閣府副大臣又は内閣府大臣政務官 令された際には、国の「緊急災害対策本部」(警戒宣言時に を本部長とし、内閣府、消防庁、厚生労働省などの関係省 は「地震災害警戒本部」)の現地本部として、静岡県庁別館 庁の職員で構成され、県との連絡調整、県内の被害情報及 内に、「緊急災害現地対策本部」(警戒宣言時には「地震災 び支援要請の収集、国の施策に係る情報提供や県に対す 害現地警戒本部」)が設置されます。 る支援等を行います。 国の現地本部(平成22年8月31日訓練) 現地合同対策本部会議(平成22年8月31日訓練) 19 (8)消防防災航空隊 ①消防防災航空隊の概要 県では、迅速かつ広域的な航空消防防災体制を整えるた ます。 め、防災ヘリコプターを用いて高度な訓練を積んだ隊員によ また、平成20年10月1日に消防航空隊の本格運用を開 る消防防災航空隊を平成9年度に創設しました。 始した静岡市、 平成22年4月1日に運用を開始した浜松市 専用機となる防災ヘリコプター(愛称:オレンジアロー)によ との相互応援体制を構築し、より充実した航空消防防災体 り、東海地震等の大規模災害が発生した際の災害応急対 制の確立を図ります。 策 や 林野火災の消火などを行い、静岡県を空から守り 組 織 / 県に派遣された8名の消防職員で編成 危機管理部の1組織とし、隊員は県職員との併任 発 足 の 時 期 / 平成9年4月1日 飛 行 時 間 / 365日体制で、緊急時は日の出から日没までの間、運 航(点検整備期間を除く) 航 空 隊 基 地 / 「静岡ヘリポート」内 任 務 / 救急、救助、消火活動などに対する災害即応体制を整 えるための訓練と緊急出動を中心に次のような任務に つく ●救急活動 ●平時の災害危険箇所調査 ●救助活動 ●飛行場外離着陸等の確保 ●消火活動 ●広域航空消防応援活動 ●災害応急対策 ●緊急消防援助隊としての応援活動 コ ラ ム 家庭内DIG~地震がきてもわが家で暮らす方法~ 県では、自宅の耐震化や家具類の 固定、さらには地震発生後の生活に ついても考え、県民自らの力で家庭 の地震防災対策を進めてもらうため のツールとして、「家庭内DIG-地震 がきてもわが家で暮らす方法-」を 平成21年11月に制作しました。 これは、大地震が発生すると家の 中がどんな状態になるのか、電気・ 水道・ガスがストップした中どうやっ て自宅で生活していくか、また、その ためにはどのような準備をしておけ ばいいのかを、家族で絵や言葉で書 き示しながら話し合い、行動に移して いただくためのものです。 20 ②防災ヘリコプター(オレンジアロー) 主要性能・諸元 導 型 全 全 全 入 長 幅 ( ( 年 主 主 回 回 転 転 座 全 月 翼 翼 を を 含 含 席 む む 日 式 平成9年2月20日 川崎式BK117C-1型 ) ) 高 13.00m 11.00m 3.85m 数 標準10座席(最大11座席) 備 重 量 ( 最 大 離 陸 重 量 ) 最 最 最 大 大 大 標 速 航 航 続 続 準 距 時 タ ン 3,350kg 度 離 間 278km/h 555km 3時間 ク 710ℓ(568kg) ▲ホイスト装置 ▲消火タンク ▲担架装置 ▲ヘリテレ用カメラ 主要装備品 ホ イ 消 火 担 ヘ ス ト タ 架 リ テ 装 ン 装 レ 電 送 置 要救助者等を吊り上げる装置 吊り上げ能力272kg ケーブル長90m ク 容量670ℓ(自給式) 置 ストレッチャー2台搭載可能な装置 装 置 機体に装着したカメラで撮った画像と音声を地上に送信する装置(GPS 付) 静岡市消防航空隊 (静岡市消防ヘリコプター「カワセミ」) 静岡市は、平成20年10月1日、静岡市消防航空隊の運用を開始しました。 「カワセミ」の概要 ・カナダ国製 ベル式412EP型 ・搭乗定員 15名 ・最大巡航速度 時速226km ・主な活動装備品 レスキューホイスト 消火タンク 救急搬送担架 ヘリテレ電送装置 浜松市消防航空隊 (浜松市消防ヘリコプター「はまかぜ」) 浜松市は、平成22年4月1日、浜松市消防航空隊の運用を開始しました。 「はまかぜ」の概要 ・フランス‐ドイツ国製 ユーロコプター製AS365N3型 ・搭乗定員 14名 ・最大巡航速度 時速286km ・主な活動装備品 レスキューホイスト 消火タンク 救急搬送担架 ヘリテレ電送装置 21 (9)孤立地域対策 平成16年に発生した新潟県中越地震以降、全国各地で発 めのヘリコプターの活用、水・食料の備蓄等による孤立に強い 集落づくりなどの市町の取組を支援しています。 生した地震災害では、孤立地域対策についての課題が浮き 彫りにされました。 内閣府の「中山間地等の集落散在地域における孤立集落 の可能性に関する状況調査」結果によると、本県では、地震、 風水害、津波が発生した場合、道路構造物の損傷や土砂等 の堆積、船舶の停泊施設の被災等の要因により、約1,400 の中山間地域及び沿岸地域等の集落のうち370以上の集 落が孤立すると予想されています。 県では、この調査結果や過去の地震災害の教訓を踏まえ、 孤立集落と外部との通信の確保、物資供給や救助活動のた 新潟県中越地震により不通となった国道 (10)新東名高速道路の使用に関する協定 現在、県内全域で新東名高速道路の整備が進められてお り、工事が概成した区間では緊急車両が部分的に通行可能 となってきました。東海地震等の大規模災害が発生した際に この区間を活用し、緊急車両の通行を確保して被害の拡大 防止、早期復旧に役立てるため、県と日本道路公団静岡建 設局(現中日本高速道路㈱)は平成16年8月に、新東名高 速道路の工事中区間を使用する基本協定を締結し、平成17 年1月には、細目協定を締結しました。 防災の目的で工事中の高速道路を使用する協定を結ぶ のは全国で初めてのことです。 平成22年8月30日 新東名の応援部隊受入れ訓練 (11)海上輸送体制の確保 被災者や(滞留)観光客の被災地外への応急搬送、被災現場 の救出・救助活動のための要員や資機材の搬送業務、食料・ 水・生活必需品などの輸送業務のために、船舶を活用した海上 輸送体制の確保に努めています。 総合防災訓練では、海上保安庁・海上自衛隊の艦船や民間船 舶による被災者の応急搬送、支援部隊や資機材の搬送訓練な ど実践的な訓練を実施しています。 なお、民間船舶の支援体制として、県内航海運組合、県旅客 船協会や漁業協同組合と海上輸送に関する協定を締結してい るほか、県外の船舶会社とも協定を締結しています。 また、県内の港湾や漁港に、“海からの支援拠点”として、耐震 岸壁の整備を進め、防災対策の充実・強化を図っています。 22 平成22年度総合防災訓練(伊東市「うみエリア」) (12)災害応急対策における静岡空港の活用 「東海地震応急対策活動要領に基づく静岡県広域受援計画」 に基づく応援部隊の進出や緊急物資の搬入、重傷者の県外へ の搬送を円滑に行うため、従来のヘリポートや基地、拠点に加 え、静岡空港を活用し、防災体制の充実・強化を図っています。 また、他都道府県への応援要員を派遣する場合の拠点として も活用します。 (1) 救出・救助、消火活動部隊の中核基地としての機能 ・空路により全国の警察本部から派遣される広域緊急援助 隊先行情報班(ヘリ)の集結基地となります。 ・陸路が途絶した場合に、県外から固定翼機により進出する 広域緊急援助隊及び緊急消防援助隊の進出拠点となりま す。 (2)医療活動の中核拠点としての機能 ・中部地域における重傷者の広域搬送拠点となります。 ・豪雨や余震等が発生しても広域医療搬送活動が行えるよ うに、空港内にステージング・ケア・ユニット(SCU)を設置 します。また、そのための通信施設をあらかじめ整備して います。 ※ステージング・ケア・ユニット:広域医療搬送の中継拠 点(被災地内)に設けられる、救急医療の専門家チー ムによる患者の病態評価と安定化措置を行う仮設救 護所。ここで、広域搬送に耐えられるかトリアージが行 われる。 (3)県内運航ヘリの給油・夜間駐機基地としての機能 ・県内で運航する広域緊急援助隊先行情報班(ヘリ)、緊急 消防援助隊航空部隊及び患者県内搬送用ヘリ等の給油 基地として、静岡空港の給油施設内に備蓄している燃料を 応援ヘリに提供します。 ・応援部隊等の夜間駐機基地としても活用します。 (4)他都道府県への応援要員の派遣拠点としての機能 ・他都道府県において大規模な災害が発生した場合におけ る静岡県からの応援要員の派遣拠点として活用します。 (13)地震対策推進条例 県では、阪神・淡路大震災の教訓を生かし、予想される東海 特に重要な地震防災のための措置について定めることによ 地震や神奈川県西部の地震などの大規模地震災害から県民 り、地震対策の的確な推進を図り、もって県民が安心して暮 の生命、身体及び財産を守るため、県及び市町並びに県民の らせる地震災害に強い県づくりを行うことを目的として、平 責務を明らかにするとともに、地震による建築物の倒壊の防止 成8年3月28日に『静岡県地震対策推進条例』を公布し、同 等の災害予防、地震発生後における緊急交通の確保その他の 年4月1日に施行しました。 23 (14)全国都道府県における災害時等の広域応援に 関する協定 全国知事会では、大規模災害が発生し、被災した都道府県 人の職員を派遣し、平成19年の新潟県中越沖地震では、3都 や各ブロック知事会等では十分な応急措置が実施できない場 県が、住家被害調査のため柏崎市に12人の職員を派遣しまし 合に、被災した都道府県の要請に基づき、全国知事会の調整 た。 の下、各都道府県が広域応援を行うため、平成8年7月に「全 なお、県では、新潟県中越地震において、国や各都道府県 国都道府県における災害時等の広域応援に関する協定」を と広域応援の調整を行ったほか、国等の要請を受けて、医師、 締結しています。 保健師、建築・土木の技術職員など368人を派遣しました。新 この協定に基づき、平成16年の新潟県中越地震では、本県 を含む15都県が、避難所運営のため長岡市や小千谷市に200 潟県中越沖地震においては、保健師、建築の技術職員42人を 派遣しました。 医療救護要員による住民への診断 派遣職員等による避難所への食料搬入 コ ラ ム 平成22年度の防災訓練 静岡県では、防災関係機関との連携強化、地域の防災体制の確立、県民の 防災意識の高揚を図るため、年間を通じて計画的かつ段階的に実践的な訓練 を実施することで、東海地震に的確に対応できる体制づくりをすすめています。 特に9月1日の「防災の日」には、毎年県内各地で大規模な防災訓練が実施さ れています。 平成22年は9月1日に、伊東市を中央会場として、「『連携』~“安全・安心”に 暮らせ、訪れられるまち“伊東”~」をテーマに総合防災訓練が実施されました。 伊東市では、「拠点エリア」、「うみエリア」、「共助エリア」、「救援エリア」、「そら エリア」の5つのエリアを設けて、それぞれの訓練テーマに沿った訓練を実施し 「共助」 担架搬送訓練をする中学生(伊東市) ました。 その中でも、自主防災組織の訓練が中心となる「共助エリア」では、 「みんなで助け合おう!地域での連携」を訓練テーマに、多くの住民が 地域防災力の向上を目指して真剣に取り組みました。さらに、将来の 地域防災力の担い手である中学生・高校生も積極的に訓練に参加す ることで、地域内での存在感をアピールしました。 また、内閣総理大臣を団長とする政府調査団が、「共助エリア」の伊 東市市民グラウンドと伊東市立南小学校を視察に訪れました。 訓練には、自衛隊、警察、消防等も多数参加し、地域住民との連携 「公助」 警察による救出訓練(伊東市) を通じて、災害時における「自助・共助・公助」の理解を相互に深めま した。 24 (15)ふじのくに防災に関する認証制度 県では、平成22年8月に地域防災の裾野を広げるため、「ふじのくに防災に関する知事認証制度」を創設しました。 この知事認証制度には、「ふじのくに防災士」、「ふじのくに防災マイスター」、「ふじのくにジュニア防災士」など6つの知事認証 があり、県は、東海地震等大規模災害発生時に自らの判断で的確な行動をすることのできる知識、知恵及び技術を持った人材 や、次世代の地域防災の担い手などの育成に取り組んでいます。 知事認証名 内 容 ふじのくに防災マイスター 災害時に役立つ技能と認められる国家資格またはこれに準ずる資格を有する者で、防災 に関する知識を有し、災害時にその知識及び技術を活用し、自らの判断で的確な行動がで きる者 ふじのくにジュニア防災士 県内に居住する小・中・高校生で、減災の意識を持ち、東海地震等の災害から自らの身を 守ることができる者であって、かつ、地域の防災活動に参加する次世代の地域防災リー ダーとなることが期待される者 ふじのくに地域防災指導員 地域防災指導員として市町から選任された者であって、減災のため対策や災害図上訓練 の指導ができる自主防災組織のリーダーとなる者 ふじのくに災害ボランティアコー ディネーター 災害時に被災地の人たちが求める支援に対し、ボランティア活動が効果的に行われるよう に調整できる者 ふじのくに防災士 防災に関する専門的な知識を持ち、地域や事業所等で活躍する者 ふじのくに防災フェロー 防災に関する高度な専門知識を持ち、特定の地域または複数災害に自主的・自発的に対 応できる者 ふじのくに防災マイスター養成講座 平成22年11月24日、12月22日の2日間をかけて、ふじのくに 防災マイスター養成講座を開講しました。 この講座には、看護師、介護福祉士、建築士などの国家資格 を持った人たちが参加し、67名に知事認証が授与されました。 ふじのくにジュニア防災士養成講座 平成22年8月、教育委員会と連携してふじのくにジュニア防災 士養成講座を開催しました。 受講した小・中・高校生のうち57名が、地域で行われた防災訓 練でのレポートを提出し、知事から「ふじのくにジュニア防災士」 の認定証を授与されました。 25 (16)災害ボランティアの受入と支援 県では、災害対策本部及び方面本部を設置した場合、静 また、平成23年度から「ふじのくに国際災害ボランティア支援 岡県社会福祉協議会、静岡県ボランティア協会、ボランティ ネットワーク(仮称)」を立ち上げ、支援及び受援がスムーズに ア団体等と連携して、県災害ボランティア本部・情報セン 連携できるよう体制を整えていきます。 ター及び県災害ボランティア支援センターを設置し、市町の 圏域を越えた配置調整等を行うこととしています。 県は、こうした体制が円滑に機能するよう、静岡県ボラン ティア協会等と連携して、ボランティア本部等の立上・運営 訓練を実施しています。また、これら本部等の運営を担う人 材として、災害ボランティアコーディネーターを養成していま す。 さらに、本部等設置時の運営経費に充てるための基金と して、全国で初めて「静岡県災害ボランティア活動ファンド」 災害ボランティアの支援活動の様子 を設けました(平成21年度末基金残高約5千2百万円)。 コ ラ ム 避難所運営ゲームHUG(ハグ) 静岡県では、避難所運営を皆で考えるための1つのアプローチとし て、平成19年度に避難所運営ゲームHUG(ハグ)を開発しました。 HUG(ハグ)は、避難所(Hinanzyo)運営(Unei)ゲーム(Game)の 略であり、また英語の「抱きしめる」という意味から、避難所において 避難者をやさしく受け入れるというイメージで名付けられました。 東海地震等の大規模災害が発生すると、避難所に指定されている 小・中学校等に、多様な状況の避難者が多数押し寄せます。迅速に対 応するためには、住民の自主的な連携の中で、いかに速やかに避難 所を適切に運営していくかが課題になります。 HUGは、ゲーム参加者が避難者を体育館や教室に見立てた平面 図にどれだけ適切に配置できるか、また避難所で起こる様々な出来 事にどう対応していくかを模擬体験するゲームです。 災害時要援護者や震災孤児、外国人、ペット連れ等、個別の事情を 抱える多数の避難者を適切な生活スペースに配置したり、トイレや炊 き出し場の決定、ボランティアの受け入れ等に対応していく中で、参加 者の間で自然に活発な意見交換が行われ、その中でそれぞれが新た な気づきや視点を獲得し、また、個々の考え方の相違について認識す る な ど 、 お 互 い に 理 解 を 深 め な が ら 避 難所の運営に取り 組む訓 練として期待されています。 当初は、自主防災組織、自治体職員等を対象に開発されましたが、 最近では災害ボランティア、教職員、中高生などに利用が拡大してお り、徐々に全国にも普及しつつあります。なお、「避難所HUG」は静岡 県の登録商標です。(平成22年3月12日登録) 26 (17)静岡県地震防災センター 静岡県地震防災センターは、自主防災組織の活性化を支援するととも に、県民が東海地震に立ち向かうための知識や技術を習得するための 教育啓発施設として平成元年4月に開館しました。 館内には、地震のメカニズムや防災対策が学習できる展示・体験学習 コーナーや平成22年度にリニューアルしたTSUNAMIシアターのほか、 ホール、会議室、図書室などがあり、年間約4万人の人が利用しており、 平成22年度に来館者90万人を達成しました。 また、県内各大学、報道機関等と連携して「しずおか防災コンソーシア ム」を設立し、防災関係者と研究者の交流などを進める拠点として利用さ れているほか、社会環境の変化に対応し、自助・共助の地域防災力を維 問い合せ 静岡県地震防災センター 持・確保するための人材育成に力を入れ、定期的に県民向けに防災講座 〒420-0042 静岡市葵区駒形通5丁目9番1号 を開講(平成22年度は22講座、受講生1,800人を実施)し、さらに一定の TEL.054-251-7100 講座の受講者に防災に関する知事認証を与える制度を創設し、新たな担 http://www.e-quakes.pref.shizuoka.jp/ い手の育成に取り組んでいます。 常設展示コーナー 地震体験コーナー 展示・体験学習コーナーの紹介 TSUNAMIシアター:大型液晶マルチディスプレイにより、迫力ある映像で津波の恐ろしさや津波 のしくみを学習できます。 東海地震コーナー:マルチスクリーンにより、東海地震の被害想定などを学習できます。 地震体験コーナー:前後・左右・上下の3方向で、リアルな地震の揺れを体験できます。 耐震コーナー:既存の木造住宅をイメージした家(実物大)に耐震補強工法や家具の転倒防止方法 を展示するとともに、地震に強い新築住宅を実物大で展示しています。 防災用品公募展示コーナー:最新の防災用品を紹介しています。 コ ラ ム 中国浙江省との防災に関する協力 平成20年12月、県は、浙江省との間に防災に関する相互応援協定を締結し、相互に防災に関する技術や知識、人材等の 交流を図っていくこととしました。 また、平成22年5月には、中国東方航空との間に救援物資の緊急輸送協定を締結しました。これは、先の平成20年の協 定により中国国内の物資輸送を浙江省が実施することと相俟って、静岡空港から送る救援物資が、中国国内の被災地に迅 速・確実に届けられる体制を整えたものです。さらに、同年10月には、静岡県防災用品普及促進協議会と浙江省災害防御協 会との間で、民間団体による防災連携及び交流を図る相互応援協定が締結されました。 県では、これらの協定により、これまで培ってきた防災力を国外にも発信し、防災先進県としての静岡県や防災拠点として の静岡空港をアピールし、国際貢献を果たしながら国際交流の推進を図っています。 27 7 地震対策 (1)国の地震防災戦略 国は、平成17年3月の中央防災会議において、今後10年間 (平成26年度末まで)に死者数、経済被害額を半減することを目 標(減災目標)とする東海地震の「地震防災戦略」を策定しました。 この目標を達成するためには、地方公共団体の参画が不可欠 であることから、国は、平成17年7月に防災基本計画を修正し、 県においても地震防災戦略を踏まえた「地域目標」の策定に努 めるべきことを定めました。 <中央防災会議> ●「中央防災会議」とは、内閣総理大臣を会長とし、全閣僚、 指定公共機関の長及び学識経験者からなる会議で、防災に 関する重要事項に関し内閣総理大臣及び防災担当大臣への 意見の具申等の役割があります。 (2)地震対策アクションプログラム2006 施策体系 東海地震による被害を効率的に減らすためには、具体 方 針 的な被害軽減量を数値目標として定め、それに向けて効 果的な対策を選択し、集中して推進する必要があります。 このため、県では、国の地震防災戦略を踏まえ、平成13 減災 年度から取り組んできた「地震対策アクションプログラム ミティゲーション 2001」の総点検を実施し、静岡県の「地域目標」として 減災目標 「地震対策アクションプログラム2006」を策定しました。 東海地震で 想定される 死者数の半減 今後は、目標達成に向けて、「地震対策アクションプログ ラム2006」に盛り込んだ対策を、県民と協働し、着実に実 施していきます。 (達成時期:平成27年度末) かけがえのない 県民の生命を守ります 被災後の 県民生活を守ります 県民生活の確かな 復旧・復興を進めます コ ラ ム 防災ヘリコプターの相互応援協定 県と静岡市、県と浜松市は、それぞれ「県内航空消防相互応援協定」を締結しています。 この協定では、定期点検等でのヘリコプター運航不能時や、一つの災害に複数のヘリコプターを必要とするとき、また、 同時期に複数の災害が発生したときなどに相互応援を実現して、3機体制で県内全域をカバーすることで、本県の航空 消防体制の強化を図ることとしています。 さらに、山梨県、長野県と、それぞれ相互応援協定を締結するとともに、東海地区の四県一市(静岡県、岐阜県、三重 県、愛知県、名古屋市)でも相互応援協定を締結しています。 28 ト ウ カ イ ゼ ロ (3)プロジェクト「TOUKAI-0」 阪神・淡路大震災で亡くなった方の8割以上が、建物の倒壊 の耐震性を知り、地震で倒壊しない住宅にする事が重要です。 や家具の転倒による圧死や窒息死でした。特に、昭和56年5 県では、東海地震からひとりでも多くの県民の生命を守るため、 月31日以前に建築された旧耐震基準の木造住宅に大きな被 市町と連携して、プロジェクト「TOUKAI-0」を推進しています。 害がでました。地震で大切な命を失わないためには、わが家 平成27年度までに住宅の耐震化率90%を目指し、木造住 宅耐震補強助成戸数2万戸を目標としています。 さらに、阪神・淡路大震災では、住宅等の倒壊と家具の転倒 による死者約5千4百名の半数は高齢者が占めた例があり、ま くらし・環境部、土木事務所及び市町職員と協力して、県内主 た高齢者は足腰が弱くとっさの避難行動が取れませんでした。 要駅でポケットティッシュの配布やのぼり旗の掲示等による推 このため、高齢者の世帯に対し民生委員・児童委員を通じた啓 進キャンペーンや、住宅の耐震化の必要性を目で見て分かる 発活動や、高齢者等が集う機会を捉えた出前講座などを重点 簡易版「木造倒壊ぶるる」の活用や、「耐震リフォーム事例集」 的に行っています。 の配布により、住宅の耐震化の重要性を呼び掛けています。 29 (4)県有建築物の耐震性能等の表示 平成15年度に中央防災会議で東海地震対策大綱が策定され、東 海地震緊急対策方針が閣議決定されました。その中で、東海地震 発生時等に、住民が的確な対応を取れるようにするため、公共建築 物の耐震性に関するリストを作成し、周知することが示されました。 これを受け、県では県有建築物の耐震性能リストの公表を平成16 年4月に行いました。 平成18年度から、県民や施設利用者に災害時の対応を含め、十 分な周知を図るため、個々の建物に耐震性能等を表示することとし ました。 表示は、耐震性能リストを公表している県有建築物(平成22年4 月1日現在2,925棟)の中で、災害時の拠点となる建築物や不特定 多数の方が利用する2,203棟の建築物を対象としています。 表示ラベルはB5判程度の大きさで、建物の出入口など分かり易 い場所に表示しています。 表示は、県が独自に策定した耐震性能の判定基準に基づき、東 海地震に対して耐震性を有するⅠa、Ⅰbの建物は緑色のラベルで、 耐震性が不足するⅡ、Ⅲの建物は黄色のラベルで表示します。なお、 本県の判定基準は、建築基準法上の耐震性と比べ、ランクⅠaは約 1.8倍、Ⅰbは約1.5倍の耐震性を有していると評価されています。 また、県内の全市町においても、市町有建築物の耐震性能リスト 表示ラベル の公表が行われ、現在、県と同様にラベルの表示が進められていま す。 コ ラ ム 浜岡原子力発電所の地震対策について 原子力発電所は、国の原子力安全委員会が定めた『発電用原子炉施 設に関する耐震設計審査指針』に基づき、活断層の上には建設しないこ と、岩盤上に直接建設すること、その立地場所ごとに想定される最大の 地震の揺れを考慮して設計、施工されています。 この指針自体も、最新の知見によって見直されており、浜岡原子力発電 所についても新たな指針に基づき、事業者による耐震性の再確認(バック チェック)が行われ、国がその内容を審査しているところです。 浜岡原子力発電所 提供:中部電力㈱ また、原子炉は一定以上の揺れ(※)を感知すると、直ちに停止する仕組みとなっており、平成21年8月11日に発生した駿 河湾を震源とする地震でも、運転中の浜岡原子力発電所4、5号機が、自動的に停止しました。 なお、東海地震が予知された場合には、事業者は地域防災計画等に基づき、電力供給事情を勘案しながら原子炉を停止 するなど、運用面からも地震の影響を回避することとしています。 ※浜岡原子力発電所では、原子炉建屋最下階に設置された地震計で120ガル以上 30 (5) 東海地震のような大地震から自分や家族の命を守るために 的確に行動し被害を最小限に止めるため、日ごろから地域内 は、さまざまな災害発生に備え、普段から十分な対策を講じて の安全点検や住民への防災知識の普及・啓発、防災訓練の実 おかなくてはなりません。しかし、ひとたび大地震が発生すると、 施など地震被害に対する備えを行い、また、実際に地震が発 災害の拡大を防ぐためには、個人や家族の力だけでは限界が 生した際には、初期消火活動、被災者の救出・救助、情報の収 あり、危険や困難を伴う場合があります。このような時、毎日顔 集や避難所の運営といった活動を行うなど、非常に重要な役 を合わせている隣近所の人たちが集まって、互いに協力し合 割を担っています。 県では、自主防災組織と防災関係機関や消防団、防災士、 いながら、防災活動に組織的に取り組むことが必要です。 災害発生時はもちろん、日ごろから地域の皆さんが一緒に 災害ボランティア、学校、事業所、民生・児童委員や福祉団体 なって防災活動に取り組むための組織、これが「自主防災組 等との協働(コラボレーション)による地域防災力の充実・強化 織」で、県内全域にほぼ100%、約5,000の組織が結成されて を推進するため、自主防災組織を指導する地域防災指導員、 います。 防災の専門知識をもとに行政や企業等の現場で防災活動に 自主防災組織は、大規模な災害が発生した際、地域住民が 取り組むふじのくに防災士やふじのくに地域防災指導員の人 材養成などにも取り組んでいます。 地域内の安全点検 自 主 防 災 組 織 の活 動 平 常 時 防災知識の普及・啓発 協働 地域の危険性や家庭内で の安全点検及び各種の防 災訓練を通して、日頃から 大規模な災害に備えるため の活動です。 防 災 訓 練 初 期 消 火 救 災 害 時 大規模な災害が発生したと きに、人命を守り、災害の 拡大を防ぐために必要な活 動です。 出 ・ 救 助 情報の収集・伝達 避 難 誘 導 避難所の管理・運営 コ ラ ム 平成21年8月11日の駿河湾を震源とする地震 平成21年8月11日午前5時7分頃、駿河湾を震源とするマグニチュード6.5、 県内最大震度が震度6弱の地震が発生しました。 早朝の地震発生でしたが、職員の速やかな参集により、早期に災害対策本部を 設置し、災害応急対策に当たることができました。市町等からの情報収集や県民 への情報提供についても迅速かつ的確に行うことができ、その対応については一 定の評価を得ております。 被害状況については、死者1名、負傷者311名(平成22年3月23日確定報)で あり、不幸なことに1名の犠牲者を出すこととなってしまいましたが、震度6弱の揺 れに対して、人的被害は概して軽微であったと言えます。こうした負傷者の原因分 析よれば、家具の固定や窓ガラスへの飛散防止フィルム貼付け等、家庭内の地 人的被害の要因別分類 震対策の重要性が改めて浮き彫りになった結果となりました。 31 8 防災訓練 地震災害は広範かつ多様な被害や混乱をもたらすため、「迅 緊急事態発生時の行動を体で覚えておくことが必要です。 速かつ的確」な対応が望まれます。いざという時に慌てないため このため、県では、主に次のような訓練を実施しています。 にも、平常時からあらゆる状況を想定した訓練を繰り返し行い、 総合防災訓練 防災の日(9月1日) 防災週間(8月30日~9月5日) <東海地震の発生が予知されたことを想定> 昭和51年に東海地震説が発表され、昭和53年には「大規模地震対策特別 措置法」が制定されました。県では、翌昭和54年から大規模地震災害に対処 するため、東海地震を想定した総合防災訓練に取り組み、現在に至っていま す。 国・県・市町・防災関係機関・自主防災組織が協力して訓練を実施します。 東海地震注意情報発表時、警戒宣言発令時に、各家庭や地域の自主防災組 織が計画している対策を行い、防災行動を身につけることを目標とします。 地域防災訓練 地域防災の日(12月の第1日曜日) <突然東海地震クラスの大地震が発生したことを想定> 「地域防災の日」は、昭和19年12月7日に発生した東南海地震にちなんで 制定されました。地域防災訓練は、昭和58年から毎年12月の第1日曜日の 「地域防災の日」に、各市町村単位で自主防災組織を中心に地震発生後の避 難、消火、救護など一連の対応訓練を行います。 それぞれの地域の特性を生かした訓練を実施し、防災活動を身につけるこ とを目標とします。 コ ラ ム 自主防災リーダーのためのチェックリストシリーズ 平成21年8月11日の駿河湾を震源とする地震で、発災直後、一部自主防災組織の 活動に混乱があったことを受け、県では、平成22年11月、「自主防☆初動チェックリス ト」を作成し、県内各自主防災組織に配布しました。 この「自主防☆初動チェックリスト」は、東海地震等大規模地震の発災直後から3日間 に自主防災リーダーがやるべきことが一目で分かるようチェックリストにしました。 また、自主防災組織役員や市町災害対策本部、消防署などの連絡先を記入すること ができるようにし、災害に備えてもらうよう工夫してあります。 さらに、多くの被災者が押し寄せ、大混乱が予想される避難所の運営についても、発 災直後から3日間に自主防災リーダーがやるべき必要最小限のことをチェックリストに した「避難所運営チェックリスト」を平成22年4月に作成・配布しています。 32 津波避難訓練 津波対策推進旬間(7月1日~10日) <突然東海地震クラスの大地震が発生したことを想定> 東海地震が発生した場合には、県内の沿岸部には津波が襲来し、大きな 被害をもたらすことが予想されます。これに対応するため、平成元年に旧榛 原町と県が初めて津波避難訓練を行いました。現在では、県及び沿岸市町、 防災関係機関、自主防災組織が協力して、津波対策推進旬間(7月1日~ 10日)の中で、津波避難訓練を行っています。 住民に対する情報伝達、住民が津波への対応を自ら考える津波DIG、観 光客等海浜利用者への避難指示、遭難者救助訓練、防潮水門閉鎖訓練等 を実施し、防災行動を身につけることを目標とします。 職員参集訓練 4月中下旬 <突然東海地震が発生したことを想定> 4月の中下旬に職員には予告をしないで、突然東海地震が発生したと いう想定により、全職員の参集訓練を実施します。この訓練は、4月の人 事異動直後における災害対策本部の初動体制を確保することを目標とし ます。 地震対策オペレーション(図上訓練) 1月中旬 <突然東海地震が発生したことを想定> 東海地震が発生した場合を想定した実践的な図上訓練を体系的に繰 り返し実施し、災害応急対策のマニュアルを検証するとともに、職員の 練度を高めることにより、県の総合防災力の向上を図ることを目標とし ます。 特に、医療救護、緊急輸送路の確保、物資調達、通信など災害応急 対策の分野別の訓練を行った上で、1月に国や市町、防災関係機関と 連携して総合的な図上訓練を行っています。 災害図上訓練「DIG」(Disaster Imagination Game) 参加者が地図を囲みながらゲーム感覚で災害時の対応策を考えるこ とができる一般県民向けのイメージトレーニングで、地域防災活動の推 進に効果があります。 平成14年度から、地域防災指導員や災害ボランティアを中心に、自主 防災組織や学校での普及・促進に取り組んでいます。 33 インターネットによる防災情報は、静岡県危機管理部のホームページで提供しています。 静岡県危機管理部 http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/ 地震からあなたと家族の命を守る 「命のパスポート」 携帯電話から御覧になれます。 http://www.pref.shizuoka.jp/m/lifepass/j_index.html 編集・発行 静岡県 危機管理部 〒420-8601 静岡市葵区追手町9番6号 TEL 054-221-3596 FAX 054-221-3252