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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title 様々な出会い,解けぬ謎,見果てぬ夢 Author(s) 土屋, 勝彦 Citation 長崎大学総合環境研究. 2007, 9(2), p. 49-58 Issue Date 2007-09-28 URL http://hdl.handle.net/10069/21483 Right This document is downloaded at: 2017-03-29T02:34:28Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp 長崎大学総合環境研究 第 9巻 第 2号 pp.4 9-58 2007年 9月 様 々な出会い,解 けぬ謎,見果てぬ夢 土屋勝彦* Unf or ge t t a bl eMe nt or sa ndAs s oc i at e s , Uns o l ve dPuz z l e s , Une ndi ngDr e ams Ka t s uhi koTSUCHI YA 私は 2007年 3月 31日をもって長崎大学 を定年退職 1 .自己紹介 した。岡山大学医学部生理学講座 に文部教官助手 とし 私の職歴 を示せば て職を得てか ら通算 40年 となる。2007年 3月 4日に最 表 1のごとくなる。 終講義 としてお話 した事 をもとに記録 に留 めることにし 私の研究上の興味は 「 動物生理学 」か ら始まり中頃は 主 として 「 生理学」、「 環境生理学」、そ して終盤の環境 た。 科学部 においては、 「 環境生理学 ・動物生理学 」 をめ 「 1 .様 々な出会い」では通算 40年の職歴のうちで出 ざしなが ら次第 に 「自然環境 」 に注意が移 っていった。 会 った多 くの人々に影響 を受け、共 に研鋳 しあった事 を 2 . 様 々な出会い 記 したいo r 2 .解 けぬ謎 」 においては,私 の研究歴 を 表 1に示 した研究歴 を経 る間に幾多の人々の薫陶 を 振 りかえって、中でも特 に印象に残 る未解決な ことが ら のその幾つかについて解説する。最後 のr 3 .見果てぬ 受 け、直接 または間接的に助 けて頂 いた。すでに故人 夢」については特 に身近な 自然環境、長崎大学文教キャ とな られ た先生方 もあるが、 この人々な くして今 日の私 ンパス、浦上川及び浦上水源池周辺 において観察可能 はあり得ないと言える。過去 をかえりみて感謝 に堪えな な野鳥 について記述 し、長崎市の都市開発や浦上水源 い。 40 年間にわたる大学 ・研究所の勤務 の うちにめぐり 池周辺の森 の開発等 について言及する。 あった恩師、同僚 または共 同研究者の一覧 を表 2に掲 表 1私の職歴( 研究歴) 1 ) 2) 3) 4) 5) 岡山大学理学部 動物生理学研究室 ( 1 967 -) 技術補佐員 岡山大学 医学部生理学教室 ( 1 967 -) 文部教官助手 東京都老人総合研究所生理学部 ( 1 973-) 研究員 Ma xPl nc a kI ns t i t ut e , Ke r c khofI ns t i t ut ef o rPhys i ol ogi c la a ndCl i ni c a lSt udy ( 1 976) 長崎大学熱帯医学研究所疫学部門 ( 環境生理学) ( 1 979 -) 文部教官講師および助教授 *長崎大学名誉教授 受領年 月 日 2 0 0 7年 ( 平成 1 9年) 3月 31日 受理年 月 日 2 0 0 7年 ( 平成 1 9年) 8月 31日 -4 9 - 土屋勝彦 表 2恩師,同僚,共同研究者 岡山大学理学部 ・医学部時代 岩 田 清二先生* ,吉田 正夫先生* ,渡辺 宗孝先生, 福原 武先生* ,中山 沃先生, 難波 良司先生,福田 博之先生,禰屋 山里晃弘 先生 東京時代 入来 正窮 博士,長崎 紘明博士* ,永井 正則博士,野本 茂樹博士 ドイツ留学時代 P r o f .E .S i m o n ,P r o f .F r .K .P i r a u * ,Dr .K . G o e r k e 長崎大学熱帯医学研究所 片峰 大助先生* ,小坂 光男先生,大渡 伸 先生, 松本 孝朗先生 長崎大学医学部 尾崎 正若先生,相 川 忠 臣先生,松本 逸郎先生, 嶋 田 敏生先生, 関根 一郎先生,伊東 正博先生,七候 和子先生 長崎大学歯学部 佐藤 俊英先生,岡田 幸雄先生,宮本 武典先生 活水女子大学 井上 靖久先生 俊昭先生, * は故人を表す. げ る。1 976年か らの 2年間、及び 1 993年の 3ケ月 式 . .& 即 ー 部 本 居 宣 一・ g と もJ F .の ゥ セ ー_ 長 撃 へ 学 に、 麻 の警 たが へること多く, 師 の税 のわろき ことあるを 人々と接することが多かった。 れ A) 師の説になづまざること 幸運 にも私 は各 々 の研 究 分野 にお い研 究 熱心 な 二 五︺ おの んで述べてみたい。 はちわが肺 の心にて、 つね にをL へられLは、後 によき考 への出 で来たらんには、かたらず とかその様態は様々であるが、このような謎の幾つか選 は、 き ま へいふことも おはかるを、 いとあるまじき 1とと息ふ<おはかめれど、これすな その後なんとか説明がついたとか、もう少 しでなんとか 解 りそうであるとか、もう少 しで正解 にたどり着けたのに 霊 むがふること、さらにひと。二 ある時期 においては全 く解けそうもない謎であったが、 た 票 解けぬ謎 Lも師の悦 にたがふとて、なはばかりそとなむ'敬 へられし。 こはいと たふ とき をし へに 役立ったと思われ る。 て,宗 師 の上にすぐれ給 へる 10な。。お監 とくに発展途上国の研究者 との共 同研究な どに大 いに の中 には取りもなどかなからむ'必ずわろき こともまじ らではえ あらず。 そ のおの が心 に つけられた。このことはその後の熱帯医学研究所時代 に 人 のカも て'ことご とくあき らめ つくすべくもあらず。またよき人 の悦ならんからに'多く 国際的視野 を持 たな くてはな らないとの気持ちを植 え は'今はいにL へのところことごとく明らかなり、 これをおき ては、あるべくもあらずと, ショックであったが、 この経験 によって、研究生活 には 息ひ定めたることも' おも ひの外に'また人 のことなるよき かむが へも いでく るわざなり。 の接触の経験 に乏 しかった私 とって言わば カルチャー っぎ にく はしくなりも てゆくわざなれは'師. の 説なりとて'かたらずなづみ守 るべき にもあ 留学は以前か ら外国語が特意ではな く、かつ外国人 と あまたの年を在 るまにまに'さきざき の考 への・ nへ宅 なほよく考 へき はむるからに, つぎ らず。よきあしきを いはず、 ひたぶるにふるきをまも るは'学問 の遠 にはいふかひなきわざ なり? にわたるドイツ、Ba dNa uh e m の Ke l r c k h o f研究所での 図 1 玉勝間「 師の説になづまざること」 しか し永 い間には研究 上の指導者の学説や考え方 に必ず しも同意 し難 い局面 浮かんだのは本居宣長の 「 玉勝間」の一節 「 師の説に にも立たざるを得ない場合 もあった。また研究上の論議 なづまざること」( 国 1 ) であったO この短文は 「 真 に師 をしている途 中で見解 ・理解の相違が明 らかになって、 を敬 うことは師の学説を専守 ことではな く、師の説の不 研究上の論議であるにもかかわ らず、時に感情的なしこ 十分な部分を改良 してより良いものにすることである」と りが残ることもあった。このような局面でのいつも脳裏に 簡潔に説いている ( 保坂,1 956 ) 。 研究者の使命は世 -5 0- 様 々な出会い,解 けぬ謎,見果てぬ夢 に使われている 「 教科書」のたとえ一行でも改訂 または 書き加えることであり、そのためにたとえ自分の師の考 この研究室で私の研究テーマは 「 ラット 陰嚢皮膚温度 刺激 による上行性 の感覚信号が途中の脊髄後角にお えと違 っても真実を明 らかにすることに尽 くす ことが大切 いて、上位中枢か らの下行性の信号によって如何なる であると信 じてきたつもりである。 支配影響 をうけているか」 を調べることであった。 この 実験計画 の遂行は困難 を極めた。一方 において陰嚢皮 A) ,同時に腰髄 レベ 膚の温度刺激 を行 いなが らく図 2 B) ラット椎骨突起の番号 ドイツ連邦共和国マックスブランク研究所,ケル クホッ ルにおいて脊髄後角にガ ラス微小電極 を刺入 して陰嚢 フ研究所に共同研究のため 2年間の滞在 を許 され た。 皮膚温度 の変化 に呼応する脊髄後角細胞の電気信号 . -K. Pi e r a u先生, E. Si mo n先生を始め多 く その間、Fr を誘するく図 2 B) のが第一段階であった。複雑な実験 研究者 との親交 を得たことは私の研究生活 において非 装置のセ ット アップや微小電位の記録のために電子記 常 に重要な点である。 この時、私の 日本 における上司 録装置の調節を行 っているうちにラット の 血圧が下降 し は東京都老人総合研究所生理学部の入来正窮先生で て、絶命 してしまうことが多かったか らであった。脊髄 の mon あり、ケル クホッフ研究所の生理学部門主任は Si 伝導 を断つ目的な ちぎ脊髄の局所麻酔で ことたりるとこ 先生であった。両人は,入来先生の ドイツ滞在時代に, ろであるのに、 この ことを可逆的に行 うために脊髄伝導 Tha ue r一門として、脊髄温度受容の研究の進展に重要 の 「 冷却ブロック」を採用 し、その後 に適当な温水をこ な役割 を演 じて、その後 の 「 交感神経地域性反応」研 の装置に環流 し、速やかな温度の回復 によって脊髄伝 ue r先生の現 究の推進者であったOこの研究所 には Tha 導の阻害 を可逆的にコントロール しようとの作戦であっ 役の時代か ら日本か らの研究者が数多 く滞在され た関 た。 係か ら、 日本人研究者およびその家族はきわめて友好 ている脊髄が一体、第何節であるかを的確 に知る必要 的で手厚い取 り扱いを受 けた。 私の直接的な指導者 があった。 以上の実験 を遂行するために部分的に露出され e r a u先生であり、先に岡山大学医学部か ら来て 2 は Pi まヂ、脊椎骨の分節 と脊髄の分節には微妙なずれ が 年間滞在 されていた禰屋俊昭先生のお仕事を継承する あり、各動物種 によってそのずれ にも差異のあることを ことになった。 l A) . 知った(図 3 ラッ吊こおける脊椎分節 と脊髄分節 の関係は図 3 Aに示す ( Wa i bl ,1 97 3) 。 このような図を 実験室で,座右におけば 脊椎骨分節の番号 さえわかれ ば 、その直下の脊髄分節が正確 にわかることになる。 しか しなが ら当初,麻酔 したラット の背部で部分的に露 出した脊椎骨分節の番号を確実 に言 い当てるのは難 し か った.そ こで ラットの解剖 の詳細 な本等 ( Gr e e ne , 1 963; Wa i bl ,1 97 3 ) によって検討 したOその結果,胸椎 ( Th) の1 0番の椎骨突起が 3角形で小さい富士山のよ うな形状 をしていて、その尾側 に位置する分節の突起は 頭側 になび き、それ より頭側のものは後方 になび くこと に気がついた( 図3 B) 。この ことによって胸椎 ( Th) の1 0 番の椎骨突起は容易に同定できるようになった。 他方頚部の脊椎骨 を露出すると,際だって大 きい椎 骨突起が見て取れ ,それ より前方の脊椎分節は胸椎の S 図 2 ラット陰嚢皮膚温度刺激時の上行性の感 覚神経信号に関する美妓の様子 A:陰嚢皮膚温度刺激 B:頚髄 の冷却ブロック A, BにおけるTh e mo r d eの温度 を変化 させ ることによっ て、陰嚢皮膚及び脊髄 の温度 を実験的 に変化 させ る。 各分節よりも椎骨突起は小さく頚部のものと同様 に思え た。そ こでこの大 きい椎骨突起 を持つ脊椎分節が第 1 胸椎骨分節 と思ってしまった。ところが この 1 0番の胸椎 の突起 を起点 に頭側 に数えなが ら遡 ると頚部でひ とき わ大きい椎骨突起は 2番になってしまう(図 3 B) 。何か の誤謬が あるのでは と何 日も同じ事を繰 り返 し、悩んだ 末、麻酔 ラッドご不十分 にしか露出できない椎骨におい -51 _ 土屋勝彦 験で使用後 のラット を使 って,頚部か ら胸椎 ・腰部 まで C) 脊髄ラットにおける血圧と心拍数の変化の鏡像関係 脊髄 レベル による自律機能 の調節 に関する研究 は 自 一挙 に、完全 に掃 出 してこれ をホルマ リンで固定 して、 律神経系 に関する研究 上の興味のみな らず不幸 にして 脊椎骨のモデル標本 を作製 した。その結果、ひ ときわ 脊髄 の機能 を損なった人々の健康のためにも重要なテ 大 きい椎骨突起 を持つ分節は第 2胸椎 ( Th2 ) で間違 い ーマである。 て計測同定 しているためではないか と考えた。そ こで実 ないことを確信 した。椎骨突起 の大 きさにより判然 とし 長崎大学熱帯医学研 究所小坂光男 先生の研究室 に た差異か ら大 きな椎骨突起 をもつ椎骨列 をそのまま胸 おいて、実験のためにラット 頚部で脊髄 を切断 して、 こ 0数 椎列 と考えたのが誤 りであることがわかるまでに 1 のラットを暖かい飼育室で数 日間飼育 して 「 慢性的脊髄 日を経てしまった。しか も解剖学の本 を丹念 に読めば こ ラッh として実験 に供 していたころの事であるo の ことは明確 に記述 してあった( Gr e e ne ,1 963) 。安易な か じめ血液凝固阻止剤 を授与 され た慢性脊髄 ラット の 思 いこみの故 の誤謬であったが この経験 によって思考 大腿動脈 にポ リエチレン細管 を挿入 し、観血的に動脈圧 あら の柔軟性 の大切な ことを強 く印象づけ られ た。また解剖 を連続的 に計測 し,同時 に両膝下 に刺入 され た電極か 学の本は図のみを見 るのではな く記述部 も詳細 に 「 読 ら心電 図 を誘導 し、 これ をもとに心拍数 を計測 した。 む」 べきであることを身にしみて学んだ。 図 4は血圧、心拍数、直腸温、尾部皮膚温 を同時記 録 した図である。血圧が下降する時に心拍数は増加 し、 魚類の分類学が教えるところによると,魚 の鰭の中に は何本かの軟骨状の鰭条が存在する。背びれ について 逆 に血圧が上昇する時は心拍数が下降 している。血圧 言えば 、これ ら鰭条 を立てた り伏せた りすることによって tJ L指数 を表す曲線は互 いに鍍像関係 にあるo通常、 背鰭の形状 を変化 させ ることができる。分類学 において 血圧 の変動 を頚動脈や大動脈 に存在する動脈性 の圧 は種の同定 に各鰭 の鰭条 の数が判定基準 になっている。 受容器が感知 し、その信号 を脳幹部の循環調節中枢が その場合、「 一番前の長い鰭条 より前の短 い麻状のもの 受 け取 って心臓や躯幹部 の血管へ の交感神経系の遠 を数 に入れ ない」ことが分類学上の約束事であるとの こ 心路は脊髄 内を下降するOしか し慢性脊髄 ラッNこおい 。この ことは上述のラッ とである ( 上野 & 坂本,2004) ては頚部で脊髄 を慢性的 に切断され ているので、脳幹 ト 脊椎骨の計数の ことに関連 して興味深かったO 部か らの調節性 の信号 を脊髄 を介 して躯幹部 に送 るこ とが 出来ない。そ こで脳幹か らの指令 を躯幹へ伝達で きる神経経路 として残 る唯一の可能性 は迷走神経の遠 三 二 ... ;≡ . . .. . . : 1 .: .. I 1.I A 心路であろうか。心臓 に分布 している迷走神経系の抑 制作用 の変化 によりこのような鮮やか血圧 と心拍数 の 囲 卜1,各脊椎骨 と脊髄分節の位置際 A :辞職骨各分節の僻面団 鏡像関係の原因 となっていたのであろうか。 このような 記録は、たまたま得 られ たものであり珍 しい記録であっ B: 脊椎骨各分節の背面図 . / I,, C: 脊髄各分節の背面図 た。従 ってこのような状態 を誘導するためには特別な条 ( C l及び T hl等は脊縫骨▲ 脊髄及び脊髄神程の番号を示す, 8 , C は似 bl , 1 9 7 3による) 件が あるのか も知れない。脊髄 レベルでの 自律神経の ta l . ,1 970; 調節活動 についての研究 は多数 ( Sl m on e Ar de l le tal . ,1 98 2;Ts uc hi yae ta l J987;Os bom e tal . , 1 989;Tr os t e le tal . ,1 991 ) ある。 これ らを文献的に検討 し - たが、 このような図 4 によって示 され るような事例の記 述 もまた説明のヒントも得 られなかった。 この謎 をとくに ∫ ㍉ 「 :∴ ∴て∴ 薮 r L E f , r ; - は慢性脊髄 ラッ吊こおいて図 4 の様な連続記録 をしな ,fげ榊 C f J7 L ァト ん - 如, い, ヶ Jふ , : L払 ; 3〆L i , , Jj 如′ - -i J・ 7Ll 血 d・ . ・ 〆4 ・ ・井弟 L hdi , . - メ- 〟 Jt'・ ヤ ーL / こ- A ・ : F J LL L /. 44 , ・ 止 oJ が ら迷走神経 の遠心性 発射活 動 の誘導記録 をする必 ・ ' ' <B 要が あると考えている。 - ふカ 〆, h J ・ メ( 図 3 ラット脊椎分節と脊髄分節の関係を示す図 A: We i bl ( 1 973 ) か ら引用 ち:摘出 ラット 脊椎 ・脊髄標本のスケッチ ( 土屋) -5 2- 様々な出会い,解けぬ謎,見果てぬ夢 吊ことっての重要な放熱反応であるo AVA の開放は 極めて突然であり ( Ra nd e tal . ,1 965;0' Le a r ye ta l . , ( mt nt l g) 1 985) 、ある臨界温度が存在 し視床下部の機能のよって 0f様式で制御 さ 尾部皮膚全体の AVA がいわゆる OnTr ○ lヽ⊥I l ^門 BP瑚ー 8745). れ ていると温 熱 生理 学 の分 野 では信 じられ てい る - -〟 ( Yong皮 Da ws on,1 982) 。ところが私達の実験室で高血 I t 軒_ : i 千t 訂 . 一 ・ 一 I : 十 1 - 圧 自然発症 ラット ( SHR) で、ラットを小型ケージに閉 じ こめた状態で直腸温、尾部皮膚温、室温 をサ ーミスタ ・ l . 碍 L T . ; - ー温度計で計測 し,室温を次第に上昇させていた時、 尾 部 皮 膚 温 が 何 段 階 に も波 状 的 上 昇 し た ( Ts uc hi ya, 2001 ) (図 5 ) O この ことは尾部皮膚の全域 の 図 4慢性脊髄ラットの血圧と心拍数の同時記録 AVA が必ず しも全て同時に開閉をしていないことを意 Tr e:直腸温, BP:血圧, Tr a i l:尾部皮膚温 味している。 視床下部の制御部分に段階性が存在す 孤 :心拍数, Ta:室温 るのか、あるいは尾部皮膚の各部分の AVA に対応する 複数の制御装置が存在するものかは不明である。 D ) ラット皮膚温度の波状変化について 従来,生理学の研究はその手法の発達 と相まって、 その主流は次第に微細な細胞 レベルか ら細胞下 レベル に移行 してきた。 しか し、いかに、研究対象 ・方法が 微細精微 になろうが、その生理学的意味を考察するに あたって、最終的には生体 における機能 において理解 し なくてはな らない。その意味で,生理学 における動物実 験は必須のものであると考える。生理学における動物実 験は従来主 としてとしてウサギ、ネコ、イヌなどが使わ れてきたが、正確な統計は知 らないが ほぼ 1 970年代 か らラットを使った生理学の動物実験が増加 したと思え る。 図 5 ラット尾部皮膚温の波状変化 2匹の高血圧 自然発症 ラット ( S HR)1と2について 実験動物 ラッNま実験動物 として確立する前は ドブネ 環境温 ( Ta ) を次第 に上昇 させ た場合 の直腸温 ( Tr e ) と ズミのあったと言われ る ( 石橋,1 98 4) 。冷たい水辺の 尾部皮膚温( T t i a1 ) の変化 を同時記録 した。 環境で生き抜 くために、その身体は保温性が重要であ ろう。そのためか全身は分厚 い体毛で覆われていて断 D ) 魚類の体色変化にまつわる研究について 熱性が高い。 しかし鼻先、手足、陰嚢そして尾部皮膚 脊椎動物のなかで魚類,両生類,帽虫類においては において体毛は疎 らである。 特に尾部皮膚の面積は 総体表面積のわずか 10%程度である( Lyza k,& Hu nt e r , 多 くの種 においてその体色が変化することはよく知 られ 1 987;Ts uc hi ya& Ta i mu ra ,2006) が尾部皮膚には多数 ている。とくの魚類は身近な存在であるのでこれ を実際 の動静脈吻合 ( AVA) が存在 L( Ge mme l l &Hal e s ,1 977) これが交感神経性の血管収縮神経の支配下にあり、通 に観察される機会 も多いし、その生理学的なメカニズム 常は閉塞 しているD ラッ極言 高体温になったとき突然 も詳細に研究されている ( Pa rke r ,1 948;Wa ri ng,1 963) 。 フナ,コイの硬骨魚類は全身皮膚に微細な色素額粒 にAVA の開放が起 こり、尾部皮膚の血流が急激に上昇 を含んだ色素胞が無数 に分布する.色素胞に含 まれ る し、その結果尾部皮膚温度が上昇する ( Fol kow,1 955, 色素によって黒色素胞,黄色素胞 ( 赤色素胞) などと分 Ha l ese tal ・ ,1 978 ) . このことによって尾部皮膚か ら多量 類され る ( 小比賀,1 98 2) 。例えば 色素胞の自身の大き の熱放散が行われ ることが知 られている。皮膚の AVA さは変化 しないが、色素胞内の色素頼粒が各細胞の中 の開放による熱放散反応は汗腺の発達 していないラッ 心に凝集 ( 色素凝集状態) すれば 各色素胞は見かけ上 153- 土屋勝彦 A 色素 血 :v g I_ . I -I/ ■ ( 色 兼拡l R) r J ( 】 鞘下 丑 体 中 兼 ) 魚 類 黒 色 素 胞 に 対 す る 様 々 の イヒ学 物 質 の 作 用 K く 白 土-13 ■一 t■メ タ ノ ブ 一丁の 7 TJ d B 支 点己 . 叩 ○′ F YJA Lo E R Jn・'t'一 一 . r∼ Ld ・ch Yl n),p・ 3ユ9,F i g. 光 18 く1973) よ り戦 ¥ ) S・ lvJ L tA. EL F t zkL d l. C 叫 d・W ▼∫ く A a. け ♪d ' 。 J 一 色 # 細 胞 .及 JI r 沖 ら . 耕 供 社 .1982 図 6 魚類黒色素胞の支配の説明図 A:黒色素胞 の細胞周辺 の支配 図、 図 7硬骨魚類にノルアドレナリンまたはアセチル コリンを投与した場合体色変化 B:魚類 の眼に入 った光刺激か ら皮膚黒色素胞 までの支配 説明図 A:メダカの場合、左 の個体 にノル ア ドレナリン、右 の個 体 に塩化 アセチル コリンの溶液 を腹腔 に授与 し、 B:ナマズの場合、背部皮下 にアセチル コリン溶液 を 授与 した。 は点 とな り全身皮膚の色調は色素胞の存在 に影響され ないOしか し色素胞内で色素拡散が起 これば色素頼粒 は色素胞 いっぱ いに広が り色素胞全体が見えるように なる。その結果、皮膚の色調が色素胞 によって彩 られ る面積は増大する。 の硬骨魚 においては 3分程度である。 この色素胞拡散反応が黒色素胞 図 6は この反応のメカニズムについての説明してい について起 これば 全身の色調は暗化する。 る。図 6 Aは魚類黒色素胞の興奮に直接関与 している 陽光の下の浅瀬で泳いでいる魚類の黒色素胞を例に 神経系及び液性的な要素を示 したものであるO この分 とれば ,川底が 白い色調である場合 ( 白背地) 、頭上 野 には交感神経性の色素凝集神経のみの存在 しない か らの入射光は眼の網膜の底部を刺激 し、白い川底面 Si ngl eI nne va r t i on 説」 と、色素凝集神経の と考える 「 による反射光は網膜の上部 を刺激する。他方、底面が 黒い場合 ( 黒背地) は入射光 については白背地の場合 と 同様であるが、頭上か らの入射光は黒い川底面で吸収 されて反射せず網膜には至 らない。 この様な事情 に よって、黒背地においては魚類の背部は黒っぽ い色調 を帯び( 暗化) 、白背地においては白っぽ い色調を帯び る ( 明化) 。その結果、魚は上空か ら襲 う鳥などの天敵 とって目立たな くなるO この背地反応 を実験的に試 して みると、この反応が大方終了するに要する時間はある種 他 に色 素 拡 散 神 経 の 存 在 を考 えて い る 「Doubl e l r me r va t i on 説」 も提案 されていたO この ことはは晴乳 動物の皮膚血管 において交感神経性血管拡張神経の 存在の可能性について論議されている ( 土屋,1 986)こと に類似 しているO 図 6 B はフナについて眼の網膜 に入った光 により刺 激 され た黒色素胞凝集神経系が経路 とその作動のしく みが示されている。 この場合は黒色素胞凝集神経系 のみによる 「 Si ngl eI nne va r t i o nSys t e m」 によって説明さ -5 4- 様 々な出会い,解 けぬ謎,見果てぬ夢 れている ( I wa t aa ndF血 da ,1 973;小比賀, 1 98 2) 。 ち 感神経 に限 ってその伝達物質は例外的 にアセチル コリ ngl eI nne va r t i onSys t e m は晴乳類の皮膚血管 なみに、Si 981 ) である。これ に関連 して, ン( コリン作動性、小川 ,1 の支配様式 と同様である。晴乳動物の一般の末梢血管 硬骨魚類 の黒色素凝集神経の色素胞へ の伝達物質 は においては、交感神経性血管収縮神経のみの支配が認 ノルアドレナリンと考えられているが、ナマズにおいては め られてお り、この支配神経の活動増加 により血管平滑 それ が例外的にアセチル コリンであることが紹介 され て 筋は収縮 し、活動減少によって血管平滑筋は弛緩する いる( 藤井, 1 976) 。 と理解 され ている。 礎科 目の 「 環境保全設計基礎実験 B」においての供覧 そ こで次 のような疑 問が残 った。1 .魚類の色素胞調 長崎大学環境科学部のコース基 実験で この実演 を行 った。図 7 Aでは、メダカの腹腔 節神経 ( 凝集) 神経 と晴乳類の皮膚末梢血管の交感神 にノル ア ドレナリンとアセチル コリン溶液 を投与 しところ、 経性血管収縮神経 との類似性は ? 2.魚類の色素胞 前者 の体色は明化 し後者は暗化 したく図 調節神経 と魚類 の皮膚 の血管調節神経 はいかなる関 ナマズの皮下 にアセチル コリン溶液 を注射 した場合,注 .魚類 の色素胞 にはそ 係 をもっているのだろうか ? 3 射点 を中心 として円形の範囲において皮膚 の明化が観 e の魚 種 によって、 または 体 の部 位 によって Doubl 察 され たく図 7 B) 。 ヒト な どの汗腺のエクリン腺は交感 I r me r va t i onSys t e m は存在 しないであろうかO 神経系における伝達物質の例外であるが、ナマズの色 その他、晴乳動物の交感神経の節後神経か ら色素胞 への伝達物質は ノルアドレナリンであるが、ヒト な どにお 7 l B) 。そして 素胞 は硬 骨魚 における色素胞 の支配神経及び色素胞 の薬物感受性 に関する例外である。 いて主 として温熱性発汗 を司るエクリン腺 を支配する交 E) アオサギの開翼姿勢について He ns e le ta l . , 1 973; 井上, 鳥類 は汗腺 を持 たない ( 1 981 , 1 987;Ra ut e nbe r g,1 995 ) O鳥類の熱放散は浅速呼 第 Y 和銅 ▲ r ー ., 吸による口腔及び気道粘膜か らのに蒸発性熱放散が主 Da ws o n皮 Huds on,1 970;井上, 1 981 ) 。 もし である ( 鳥類が汗腺を備えていたら、飛期のような激 しい運動 を 紹 門 卜 する場合、発汗で体温の上昇 を抑制 しなければ な らな いとすれば 、汗 の原料 と言うべき水分 をあらか じめ余分 に蓄えていな くてはな らいない。 この ことは体重 を増加 ' ' w 払 Y 卿i ' 鵬 A T 1 I ・ 一 心、 ・、 ∴ ' 、 i::・ : . ' / : I . : i : ・ ・ ミ ' 1 = r p ・ . 器 望 邑 ■ 一 こ ■ ・ ■ ■ 恋 蒜 : 芸 子 瓜 だ 謁 怒 恕 J V メ 伸 す 叫 事 . 如 杉 k 小忠 心 n J h ・ ・ 宗 ㌫ 怒 ㌫ d 棚 ′ J e 認 温 d如 ▲・ J ' 叫 pF 柵 l 叫 、 棚 ′ ナ 触 F血J Mr l l = 正 喜: ミ = J・ こ ▲・・ ■ - 治 ま r brl . ヴ o P k o f 1 J k C o mp f e l C8 t L . ,l l L l ヽ ht l 一 心、l YJ . させ、飛期するのに不利な ことが らであることは想像 に 難 くない。 現在、河川、湖沼及び海浜な どでごく普 通 に見 られ るアオサギの奇妙な 「 開翼姿勢 」 を観察 し l B) .ほぼ 体軸 を地面 に直角に直立 し、両翼 を た(図 8 大 きく開いて静止 している姿である。 この この姿勢の意 義 を文献的に調べたところ、雑誌アニマにアオサギの 日 光浴 として紹介 してあった ( Te ui r ,1 993) 。 また、英 国 の本 にアオサギは暖を取 るためにこのように開巽姿勢 を して日光浴 ( Sunba t hi ng) を行 うと記述 してあった ( Ca dy 図8 A) 。 ところが長崎で観察 され たア 皮 Hume ,1 992)( オサギの開翼行動は同時に口を半開きにして浅速呼吸 を行 っているO図 8 l Bの写真撮影 日時は 2002年 9 月 1 日であり、その時の気温は長崎海洋気象台の記録で 図 8 アオ サ ギ の 開 翼 姿 勢 につ いての説 明 は長崎市の午後の気温 は 29. 2℃であった。この ことか ら、 ( Ca d y &Hu me , 1 9 92)と開翼姿勢をしながら浅速呼吸 この場合 のアオサギの開翼行動は浅速呼吸を伴 った熱 している写真 放散のための行動性体温調節調節 ( 村上恵 ,1 987;描 哲郎, 1 98 9) であると考 えると理解 し易 い。胴体 を覆 っ -5 5- 土屋勝彦 表 3 文教 キャンパス、浦上川及び浦上川周辺で見られ る野鳥 長崎大学文数キャンパスで観察 された野鳥 ツル ( マナズルまたはナベズル) ,ジョウピタキ,マ ミチャジイナ,アカハラ,シロハラ,ツグミ, シジュウカラ,エナガ,ヤマガラ,メジロ,ヒヨ ド1 ),ハシボソカラス,ハシブ トカラス,キジバ ト, カワラヒワ,イソヒヨドリ,キセキレイ,ハクセキレイ,コゲラ,モズ,スズメ,メジロ,ウグイス, アオサギ,ゴイサギ, トビ 以上 26種 浦上川及び浦上永源池周辺で観察された野鳥 ジョウピタキ,シロハ ラ, ツグミ,シジュウカラ,エナガ,ヤマガラ,メジロ,ヒヨドリ,ハシボソカラス, ハシブ トカラス,キジバ ト,カワラヒワ,イソヒヨ ドリ,キセキレイ,ハクセキレイ,セグロセキレイ, イソシギ,コチ ドリ,バ ン,コゲラ,モズ,スズメ,メジロ,ウグイス,アオサギ,ゴイサギ, ササゴィ, トビ,ホオジロ,オシ ドリ,マガモ,コガモ,ホシハジロ,ダイサギ,コサギ,カワセミ,ミサゴ,カイツブ リ, カンム リカツブリ,ホオジロ,アオジ,アマサギ,アオバ 上 ウ 以上 4 4種 ている巽 を離 して、胴体 を直接 に外気 に露 出することに 生 最 近 の 自然科 学研 究 の多 くの部 分 が 屋 内 の実験 設 斗 切 3 .見果てぬ夢 第 冒 二十 f段 か 求編 ぐでな らな い。 恩 化 させ、室温 ・体温 と開翼行 動 の発現 との関係 を見 な 窓 珍 す るには、 アオサギ個体 を捕獲 して室温 を人工 的 に変 を 翼姿勢 をとることもあるのだ ろうか。ことを実験的 に証 明 i ._ っな . -ち 麓 か陶 ふも の には、馬 ・牛 。 繋 ぎ 昔 し む るこそ いたま しけ れ J. 言l まも ふ 廿 な- て かなは ぬも の なれば' い か ・Jは せ ん。 犬 は' 守 つと め、 生t y 人 にも防 具 れば, 磐 や)あ る ペLo 毘 ど,蟹 ,と にあ るも のな ㍍ 8 .呈 と れば ' 特 発 に め はやと も あも なん か ( ・ J ヱ( ・J i E tC ) . . 1 . ft・浅/ rt< .く TJ そ の外 の鳥 ・歓 ' す べて用 なきも の な-。走 る歓 捻 鑑 に こ め へ 幼 九 ( I) ・ は五 こ を さ 、れ、飛 ( ぶ)鹿 は海を -'舘 に入 ( 汁)ら れ てt等 を癖 か、 野 ) 〓 0 お一( l<( 山 ふ 愁 '止 れむ ) 時 なLo そ の息 ( ひ)、二 我 なで温 ( Y 3) 二が身 にあ た ・ 丁 右ヱ 主雪l がた エー たの 線 - ほ' 心 あらん人 、 これ を 津 しま んや C を薯 しめ て日 を 寄 ほ し ≡こ .J H 畑し⋮ 〓 正 志 < , 富 は・ ( 撃 離 ) な-。 王 子 歓 が 鳥 を愛 せし、林 に 鍵 し ぶを 李 -I 蓑 . ".く ち 禦 欝 友としき各輔 (苦 しめ写 O1 1あ らず心 l ' こ . . . . .. . Et L空 rJ 入l f つ .( . らし き 禽 r あや し き鮮 r 拓 に育 はやし と こそ ' 文 に 文献 にあるように寒冷環 境 で集 熱行 動 として同様 な 開 「九 号 ). も侍 るな れO よる熱放散 の促進 と考 えたほ うが妥 当 と考える。 しか し 備 を駆使 したものである。私 の研究 ・教育 生活 の大分 部分 も実験 室 にお けるものであった。環境科学部 に着 ら 防 任 してか ら趣 味及び 教育 を通 じて野外 の 自然環境 を主 ぐ i ・ として環境科学部 の学生 と観察する機会 を得 た。趣 味 と しては野鳥 の観察 であり、教育 ・研 究 としては環境科学 部 の集 中講義、野外生物調査 、文理融合学部長裁定 プ ロジェクドごあった. また長崎大学公 開講座 において野 図 9 徒然草 第 1 21段(西尾 1 9 5 7 ) 鳥 の生態等 を市民 に紹介 する機会 を得 た。これ らを通 じ まれ る。 て、強 く印象付 け られたことは、多 くの人 々が 自然環境 3 世紀、徒然草 において兼 野鳥観 察の思想 は既 に 1 及び 動植物 の生態 系 に強 い興 味 を持 っているが 、実 際 ) 。この趣 旨は 「 不 行法師が見事 に言 い表 している(図 9 の野外での観察 は得意 でな いという人 々が大多数 であ 必 要 に野 鳥 などを捉 えて龍 にいれ て飼 うよりも、鳥 が 自 った ことである.野鳥観察 ( バ ー ドウオ ッチの は人々の 野外 生物 へ の興 味 を喚起 し、かつ野鳥観察 を通 して自 由 に飛 び 交 うのを見 る方 がよい」である。野鳥 の観 察 の 然環境や生態 系へ の理解 を深 め、合わせ て自然 に対す 意義 につ いては次 の様 に考 えられる.1.野鳥 の多くは る豊 かな感性 を醸成す るもの と考 えられ る。 す くな く とも長崎大 学環境科学部 は学部 の教育 にお いてより積 極 的 にこの ようなカ リキュラムを維持 強化 す ることが望 食物連鎖 の上位 に位 置するので環境 汚染 に敏感 である. 2.渡 り鳥 は地球上を長距離移動して,ウイルス等の微 生 .木の実等を食料 とする野 物を運搬する可能性 がある.3 -56- 様 々な出会い,解 けぬ謎,見果てぬ夢 4 . 謝辞 鳥 は植物種の分布 に貢献している。4.ある種の野鳥は 永 きにわたる、教育 ・ 研究生活 を大過な く過 ごされ た 蜜を採取する時に植物の交配に関与する。 長崎大学環境科学部の所在する文教キャンパスは浦 ことは長崎大学環境科学部 の同僚 をは じめ、長崎大学 上川の本流 に隣接 している.長崎湾へ注 いでいるその 及び他大学 ・研究所の多 くの人々のお力添えが あって 河 口部か ら源流 までの距離は比較的短 く、河 口部、中 の事 と思 います。 ここに心より感謝 申し上げ ます。 流部、源流部の様相 をわずかの距離で体験できる。 ま た浦上川 にはオイカワ等 の小魚が多数生息 し、サギや カワセミな どに豊富な食物な どの水鳥 にとっての豊富な 食料 を提供 している。中流域では川幅 も20-30m 程度 引用文献 で狭 く、川幅の範囲内で、水鳥の観察が可能であるの 1 ) Ar de l l , ∫ . L. ,Bam a n,S. M. ,Ge bbe rGL, で、野鳥観察 の トレーニングにも便利である。文教キャ Sy m pa t he t i cne r vedi s c ha rgei nc h r o ni cs pi na lc a t . ンパス及び 浦上川及び 浦上水源池で観察 され た野鳥 Am. ∫ . Phys i ol . 24 3, H463H470( 1 98 2) . 文教キャンパス及びその周辺で 26種、 種 を表 3に示す。 2) Ca dyM. , Hu m eR. ( Eds . ) ,TheCo mpl e t eBo o ko f 浦上川 ・浦上水源池では 44種の野鳥観察の記録があ Br i t i s hBi r d s ,TheAut o mo bi l eA ss oc i a t i on( 1 992) . る。 この記録は数年 にわた り記録 され たものであるが 、 3) Da ws o nW R. , Huds o nJ . W, Bi r dh: a C. 市街地 の存在する文教キャンパス、及び市内を流れ る ) ,Co mpa r at i v ePk ys i ol o B yO f h i W t t o w( e d. 浦上川および長崎市住 吉地 区に隣接す る浦上水源池 The r mo r e gu l at i o nV ol . I , I n v e r t e b r a t e sa nd 2006; 土屋 における観察記録 としては多種である( 土屋, No nma mma l i a nV e r t e b r a t e s , Ac a de mi cPr e s s , 他,2006) 。野鳥種の同定 には図鑑類 ( 小林,1 969;日 pp. 22331 0( 1 970) . 本野鳥の会 , 1 997, 1 998;叶内,2000; 福 田,200 2;本山, 4) Fol kowB. , Ne Ⅳousc o nt r oloft hebl oodve s s e l s , 2006 ) を参考 にした。 Phys i ol . Re v.35,629663( 1 955) . 1 976) . 5) 藤井良三,貞慶粛彪 東京大学 出版会 ( 浦上水源池 の周辺周 囲約 4kmは 6) 福田晴夫,川の生き物図鑑,厳 島者のGJ # あ称 長崎市水道局 によって厳重 な金網 の フェンスで防備 され ていて一般 する会腐 -,南方新社( 200 2) . の人々が簡単 に水辺 に近づけない。 この ことが野鳥 に T. , Ha l e sJ . R. S. ,Cut a ne o usa r t e r i ove nous 7) Ge mme l lR. は幸 いして、オシドリ、カワセミ、ウ、 アオサギ、ゴイ na a s t o mos e spr e s e n ti nt het a i lbuta bs e nt&om t he サギ、コサギ、ダイサギ等の絶好 の聖域 となっている。 e ar oft her a t . ∫ . Ana t .1 24,355358 ( 1 977) . 水源池周辺 の水辺の森 は一部が鷺 山 とな り、アオサギ 8 ) Gr e e neE. C. , Ana t omyo ft heRat ,Ha he rPubl i s hi ng な どの営巣活動が路線バスの通 る道路か ら容易に観察 Compa ny( 1 963) . 9) 掘 哲郎,体温調節行動, I n:久保 田 競,小野 できるO浦上水源池の南西の岸は長崎市住吉地 区 と深 第1 1巻 い帯状の森 によって隔て られている。この森は幾多の野 武年編,新生理科学大系 生の動植物種 を育む生態系を構成 していて、長崎大学 栄 医学書院, pp1 41 1 1 59( 1 989) . 環境科学部 の集 中講義、 「 野外生物調査」の実習地 と 存参の登屠 1 0)Ha l e sJ . R. S. ,I r i kiM. ,Ts uc hi yaK. ,Koz a waE. , してまたは小中学生の野外観察 に絶好 の場所 を提供 し The ma l l yi duc e dc ut a ne o us s ympa t he t i ca c t i vi t y ていた。 r e l a t e dt o bl ood f lO w t h r o ugh c a pi l l a r i e sa nd ところが平成 1 7年ごろか ら市街地側か ら宅 地開発が始 まり、森の伐採、整地、そ してマンション用 a r t e r i o ve no us a nas t o mos e s .Pf he ge r sAr c h.375, のビル の建設が始 まった。市街地 に隣接 した水源地 に 1 724( 1 978 ) . 周辺の森 が この様 に奇跡的 に自然のままの状態 してい k. ,Pa t hP.V, He a te xc ha ngewi t h l l )He ns e lH. ,Bme c るだけで、非常 に貴 いと考えていたのにこの ことは極 め e nvi r o nme nt ,I n:H.Pr e c ht , J . Chr i s t o phe r s e n,H. て残念である。 このような事態に対 し、市民及び大学 He ns e l ,W.La rc he r( e ds . ) ,乃mpe r a t u r ea ndLi fe , 関係者 とうが ほ とんど現状 の推移 を知 らなかったことを 非常 に残念 に思 える。 これ は 自然環境 の大切 さに対す Spr nge i rVe r l a g, pp5 4556 4( 1 973 ) . 1 2)保坂弘司,丘議 執野 ・ 花方貰貯後れ 学燈社 る認識 ・価値観 を市民が共有する世 の中でありたい と 1 3)井上太郎,体温調節の比較生理,也: 中山昭雄 編 , ( 1 956) . 盟腰登屠 覚 理工学社, pp. 339370 ( 1 981 ) . 思 うのは私 の希望であり、夢である。 15 71 土屋勝彦 1 4)井上太郎,砂漠 における体温調節,也:生理科学 大系,22 巻,エネルギー化静 ・体感藤 野の登 屠 貿 医学書院, pp. 337358( 1 987) . 1 5)石橋正彦,実験動物 としてのラット h: 石橋正彦, 高橋寿太郎,菅原七郎,安 田泰久 ( 宿) ,臭 紛 鯵学 ラッj 3講談社 , pp. 11 24( 1 98 4). ,K.S. ,FukudaH. ,Ce nt r a lc o nt r olofc ol or 1 6)I wa t a nW.Cha vi n( e d. )" Re s po n s e so f c ha nge si nf i s h.I ji s ht oEn v i r o nme nt alCha n ge s . "Cha r l e sC.Tho ma s Publ i s he r, pp. 31 6362( 1 973) . 1 7)叶内拓 哉, カモ ハ ン ドブ ック,文 一総合 出版 ( 2000) . 好貞H , 寿腰囲@ 1 8)小林桂助,ノ # ( 増補改訂版) , 保育社 ( 1 969) 1 9)Lyz a kW. A. ,Hu nt e rW. S. ,Re gi o na ls ur f a c ea re a sof s po nt ne a ous l yhype r t e ns i vea ndWi s tKyo t or a t s ,J . r a Appl . Phys i ol . 62,75 2755( 1 987) . 毒励 鑑 東京書籍 ( 2006) . 20)本山賢 司,. 21 )村上 恵,行動性体温調節, 也: 中山昭雄,入 来正窮 ( 蘇) ,新生理科学大系 第 22巻 エネル ギ -作′ 静 ・蘇盟 謬 ノ 野 の登 屠 学 , 医 学 書 院 , pp. 28 6296 ( 1 987) . ,一 才丈F f , E産 J #草, 岩波 書店 22) 西 尾 賓 (校 注 ) ( 1 957) . 23) 日本野鳥 の会監修,メガ O J 24) 日本野鳥 の会監修,卿 O J 急 北隆館 ( 1 997) . 急 北隆館 ( 1 998 ) . 25 )小比賀正敬,脊椎動物 の色素細胞 , I n: 及川 淳, 井 出宏之 編, 貞虜絡 この好男牌 罫 ,講談社, pp. 3258 ( 1 98 2) . 26)0' Le a r y D. S. ,J o ms l onJ . M. ,Ta yl o rW F. ,Modeof ( 1 995 ) . nge i r ,W. ,Kos a kaM. , 32)Si monE. ,Ra ut e nbe r g,W ,Us De rEi nf lus sde rs pi na l e n Hypot he mi r ea ufdi e s pha l e nva s omo t o r i s c he nZe nt r e n,∫. Nu r oⅥs e c e r a l Re l a t . 31 ,35037 2( 1 970) . ,264( 1 993) 33) Te uiK.ア二7 r ,Ka t zS. A. ,Os bo m ∫ . W ,Func t i o na l 34)Tr os t e lK. A. e vi de nc ef o rs ympa t he t i cne vea r c t i vi yi t nc o ns c i ous , Am. J. Phys i ol . 261 , c e vi r c a l s pi na lr a t s R434R441 ( 1 991 ) . ,R i waP. G. ,Kos a kaM. ,Aut onomi c 35)Ts uc hi yaK. ne voust r o ne si nc hr o ni cs pi na lr a t s ,Tr o p. Me di c ne i 29, 241 249( 1 987) . 36)Ts uc hi yaK. ,Ta mu l raA. ,Efe c t sofc hr o ni che a to r , c ol de xpos u r eo ngr o wt ha ndbl oodpr e s s u r ei nr a t s J . Envi r o n.St udi e s , Na ga s a kiUni v. 9. 1 7( 2006) . 37)Ts uc hi yaK. ,Ther a tt a i la samode lor ga n f o r ta l . (e ds ) , pe r i phe r a lva s odi l a t i o n. I n:M. 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P. ,De t e mi na nt s Ra t t u sno r v e gi c u s ) , s pi na lc o r doft hea l bi nor a t( ofa r t e r i a lpr e s s ur ea 洗e rc hr o ni cs pi na lt r a ns a c t i o ni n Adva nc e sh Ana t omy,Embr yol ogya ndCe l lBi o1 . r a t s . Am. J . Phys i o1 . , 256, R666R673( 1 989) . 47,ト41 ( 1 973) 29)Pa r ke rG. . H. ,Ani malCol ou rCha n ge sa nd t he i r , Da ws o n N. J. , Ev i de nc ef o ro nof f 44)Yo n g A. u A. c o nt r olofhe a tdi s s i pa t i onf ro mt a i loft her a t . Ca n.J . , Ca mbr i dgeUni ve r s i y Pr t e s s ( 1 948 ) . Ne u r o hu mou r s 30)Ra ndR. P. ,Bur t o nA. C. ,I ngT. ,Thet a i loft her a t ,i n t e mpe r a t ur er e g ul a t i ona nda c c l i ma t i z a t i o n,Ca n.J . Phys i ol . Phm a c ol . 43, 257267( 1 965) . 31 )Ra ut e nbe r gW ,鳥類 の体温調 節, I n:入来正窮 露節 の L , く 歩 , 文光 堂 pp.278 287, ( 宿) ,併 題 j -58- Phys i ol . Phm a c ol . 60,392398( 1 98 2)