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博士論文 糖尿病診断用マーカー1,5-アンヒドロ-D
博士論文 糖尿病診断用マーカー1,5-アンヒドロ-D-グルシトールを 基質とするソルボース脱水素酵素とピラノース酸化酵素の 機能解析と応用 2015 年 3 月 荒木俊雄 岡山大学大学自然科学研究科 バイオサイエンス専攻 目次 略号 ····························································································· 1 序章 ····························································································· 3 第1章 Sinorhizobium sp. 97507 由来ソルボース脱水素酵素の 諸性質評価及び 1,5-AG 測定への応用可能性 1-1 緒言 ··············································································· 15 1-2 材料及び方法 ··································································· 17 1-2-1 材料・試薬 1-2-2 sdh 様遺伝子の取得 1-2-3 SiSDH 大腸菌組換え体の発現と精製 1-2-4 酵素活性測定 1-3 結果 ··············································································· 20 1-3-1 sdh 様遺伝子の取得 1-3-2 SiSDH の発現及び精製 1-3-3 SiSDH の酵素特性 1-3-4 SiSDH を用いた 1,5-AG の定量 1-4 考察 ··············································································· 32 第2章 部位特異的変異導入によるピラノース酸化酵素の色素依存性 脱水素酵素活性の向上 2-1 緒言 ··············································································· 34 2-2 材料及び方法 ··································································· 36 2-2-1 材料・試薬 2-2-2 変異導入プライマーの設計及び変異導入方法 2-2-3 改変体の培養 2-2-4 酵素活性測定方法 2-3 結果 ··············································································· 38 2-3-1 変異導入プライマーの設計及び改変体の作製 2-3-2 改変体の評価 2-4 考察 ··············································································· 42 第3章 総括 ··············································································· 45 参考文献 ····················································································· 47 謝辞 ··························································································· 53 略号 1,5-AG, 1,5-anhydro- D-glucitol (1,5-アンヒドロ-D-グルシトール) 1,5-AF, 1,5-anhydro- D-fructose (1,5-アンヒドロ-D-フルクトース) CFE, cell free extract (無細胞抽出液) DCIP, 2,6-dichlorophenol Indophenol (2,6-ジクロロフェノールイン ドフェノール) FAD, flavin adenine dinucleotide (フラビンアデニンジヌクレオチ ド) GA, glycated albumin (糖化アルブミン) GmSDH, Gluconobacter melanogenus UV10 sorbose dehydrogenase (Gluconobacter melanogenus UV10 由来ソルボース脱水素酵 素) HbA1c, glycated hemoglobin A1c (糖化ヘモグロビン A1c) 1-methoxy-PMS, 1-methoxy-5-methylphenazinium methyl sulfate (1-メトキシ -5-メチルフェナジニウムメチルスルフェート) PQQ, pyrroloquinoline quinone (ピロロキノリンキノン) PROD, pyranose oxidase (ピラノース酸化酵素) PePROD, Peniophora sp. pyranose oxidase (Peniophora sp. 由来ピラ ノース酸化酵素) SDH, sorbose dehydrogenase (ソルボース脱水素酵素) SDS-PAGE sodium dodecyl sulfate‐polyacrylamide gel electrophoresis (ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動) SiSDH, Sinorhizobium sp. 97507 sorbose dehydrogenase (Sinorhizobium sp. 97507 株由来 SDH) SMBG, self-monitoring of blood glucose(血糖自己測定) 1 TOOS, N-Ethyl-N-(2-hydroxy-3-sulfopropyl)-3-methylaniline, sodium salt, dehydrate (N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル -3-メチルアニリンナトリウム二水和物) Tris-HCl, tris(hydroxymethyl)aminomethane hydrochloride (トリスヒド ロキシメチルアミノメタン塩酸) WST-1, 2-(4-Iodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2 H-tetrazolium sodium salt (2-(4-ヨードフェニル)-3-(4-ニ トロフェニル)-5(2,4-ジスルフォフェニル)-2H-テトラゾリ ウム,ナトリウム塩) 2 序章 第1節 糖尿病 糖尿病は, 血液中の血糖値をコントロールできなくなり, 高血糖状態となる 疾患である. 食物から摂取された D-グルコースは血液中で筋肉や各臓器に運ば れエネルギー源となるが, 糖尿病を発症すると D-グルコースが血液中に溢れ, 高濃度(=高血糖)になる. 健常な場合, 食後などに血糖値が上昇すると, 膵臓 で作られるインスリンホルモンによって, 一定の濃度に調節される. これはイ ンスリンが, 筋肉などの D-グルコース取込み, 及び肝臓のグリコーゲン合成を 促進させ, かつグリコーゲン分解を抑制させることで達成される 1) . 様々な要 因によってこの調節機能が破綻すると糖尿病を発症する. 糖尿病は大きく 1 型 と 2 型の 2 つの型に分類され, 1 型糖尿病はインスリンが欠乏することにより 高血糖となり発症する. これは, インスリンを作る膵臓の β 細胞が, 自らの免 疫系により異物として認識(自己免疫反応)され破壊されるためで, 遺伝的要 因によると考えられているがはっきりとした原因は分かっていない 2). 一方で, 2 型糖尿病はインスリンの作用が相対的に不足することにより発症する. イン スリン分泌能の低下が主に認められる病態とインスリン作用の不足(細胞のイ ンスリン抵抗性)が主に認められる 2 つの病態に分けられる(Fig.1). 2 型糖 尿病の原因は主に生活習慣によるものとされ, 肥満, 高脂肪食摂取, 運動不足 の 3 者が代表的とされる. 日本における糖尿病の 95%は 2 型糖尿病である 3). その他には妊娠中に増加するホルモンが原因となる妊娠糖尿病も知られてい る. また, 糖尿病は自覚症状に乏しく, その発見が遅れる場合がある. 糖尿病 と診断された場合, その完治は難しいとされ, その病態が進行すると糖尿病性 網膜症, 糖尿病性腎症, 糖尿病性神経障害など重篤な合併症を発症する (Fig.2). 3 Fig. 1. 健常者と糖尿病患者の血糖値の変動 Fig. 2. 糖尿病の原因と特徴 4 日本では健康保険法の改正により, 2008 年から 40~74 歳の保険加入者を対 象として, 糖尿病を含めた生活習慣病の発症や重症化を予防することを目的と して特定健康診査が行われ, その予防に努めている 4). しかしながら, 国際糖尿連合(IDF)の調査によると, 世界の糖尿病患者数は 約 3 億 8,000 万人(2014 年時点)であり, 有効な対策が施されない場合は 2035 年までに約 5 億 9,000 万人に増加すると予測されている. 世界での発症率は, 第1位が中国で約 9,800 万人, 第 2 位がインドで約 6,500 万人, 第 3 位が米国 で約 2,400 万人, 日本は第 10 位で 710 万人である 5). 世界的に糖尿病人口は増 え続けており, その対策が急務となっている. 第2節 糖尿病診断用マーカー 糖尿病の診断や糖尿病患者の治療においては, その血糖状態を把握, 又はコ ントロールする必要がある. 血糖値はその時々の食事の影響を受けて変動する ため, 正確に血糖状態を把握することが困難である. そのため, その把握には 測定時から過去一定期間の血糖値を反映するマーカーが管理指標として用い られる. そのマーカーとして, 糖化ヘモグロビン A1c, 糖化アルブミン, 及び 1,5-AG など,反映する過去の平均血糖期間が異なるものが知られている. 下記 に, 糖化ヘモグロビン A1c 及び糖化アルブミンについて述べる. なお, 1,5-AG については第 3 節で述べる(Fig.3). 【糖化ヘモグロビン A1c】(Glycated Hemoglobin A1c:HbA1c) ヘモグロビンは赤血球の構成成分で, 肺で受け取った酸素を各組織に運搬する 機能を有する. α サブユニットと β サブユニットのそれぞれ 2 つから構成される 4量体構造を形成し, その寿命は約 120 日とされる. 糖化ヘモグロビンは, 高血 糖状態においてヘモグロビンのアミノ基と 5 D-グルコースが非酵素的な反応(メ イラード反応)により生じる. イラード反応)により生じ Fig 3. 過去の平均血糖状態を反映する各糖尿病マーカー Fig. その中で HbA1c は β サブユニットの N 末端のバリン残基の α 位のアミノ基と D-グルコースの グルコースの 1 位の OH 基がシッフ塩基結合してアルジミンとなり がシッフ塩基結合してアルジミンとなり がシッフ塩基結合してアルジミンとなり, さらにア マドリ転移を受けてケトアミン化合物となったものである. マドリ転移を受けてケトアミン化合物となったものである . HbA1c は過去 1~2 ヶ月間の平均血糖を反映する. ヶ月間の平均血糖を反映する 主には HPLC 法で測定され, 法で測定され その他に抗体や酵 素を用いた 素を用いた測定 測定方法が知られている 方法が知られている 6) (Fig. Fig.4). 【糖化アルブミン】( (Glycated Glycated Albumin:GA Albumin:GA) ) アルブミンは血清中に多く存在するタンパク質で アルブミンは血清中に多く存在するタンパク質で, 血清中のタンパク質の約 50% 50%を占める.. 血液の浸透圧調整, 血液の浸透圧調整 , 血液中に存在する脂肪酸やビルビリンなど の外来物質を吸着する の外来物質を吸着する機能を有する 機能を有する 機能を有する. 高血糖状態において, 高血糖状態において アルブミンの 4 箇所 の Lys 残基の ε 位のアミノ基と D-グルコースがメイラード反応 グルコースがメイラード反応を行い グルコースがメイラード反応を行い, 糖化アル ブミンが生じる ブミンが生じる. 糖化アルブミンは 糖化アルブミンは, 過去 2 週間前から 1 ヶ月前の平均血糖を反 映するとされ 映するとされ,, その測定には酵素法が用いられる 6)(Fig. Fig.5). 6 Fig. 4. 糖化ヘモグロビンの立体構造 Fig. 5. アルブミンの立体構造,及び糖化される Lys 残基 7 第3節 1,5-アンヒドロ アンヒドログルシトール アンヒドロ D-グ 1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG)(cas 番号 154-58-5)は, D-グル コースの 1 位の OH 基が水素に置き換わった構造を有する環状ポリオールの 1 種である(Fig.6). 別名として,1-deoxyglucose, あるいは 1,5-anhydrosorbitol とも呼ばれる. 1888 年にヒメハギ科植物の葉より初めて発見され, ポリガリト ール(Polygalitol)と命名された. その構造は 1983 年に X 線結晶構造解析によ り明らかとなっている 7). 1,5-AG は自然界の動植物中に幅広く存在し, 植物の 他に微生物(大腸菌など), ヒトなどの高等生物からもその存在が報告されて いる. 微生物では大腸菌 C600 における 1,5-AG の生合成, および培地中への放 出が確認されている 8). 1,5-AG の合成は, 大腸菌ではグリコーゲンの脱離分解 により生じた 1,5-アンヒドロ- D-フルクトース(1,5-AF)が由来とされており, 大腸菌では, 更に, 放出した 1,5-AG を再吸収し, 1,5-AG-6 リン酸に変換した後, 再度培地中に放出されていることが確認されている. そのため, この大腸菌に おける 1,5-AG 代謝系は, 何らかのシグナル伝達に関与している可能性が示唆 されている 7,9). Fig. 6. D-グルコースと 1,5-アンヒドロ-D-グルシトール 8 なお なお, グリコーゲンの脱離分解 グリコーゲンの脱離分解反応は α-1,4 1,4-グルカンリアーゼ グルカンリアーゼ グルカンリアーゼ(EC (EC 4.2.2.13) により触媒されるとされ, により触媒されるとされ 真菌および紅藻から 真菌および紅藻から, 澱粉やグリコーゲンのような α-1,4 1,4-グリコシド結合からなるポリマーに作用し グリコシド結合からなるポリマーに作用し グリコシド結合からなるポリマーに作用し, 1,5-AF 1,5 を生成する酵素が報 告されている 10,11). また また, 1,5-AF AF を 1,5-AG AG に還元する NADP 依存性 1,5-アンヒドロ 1,5 アンヒドロ-D-フルクト フルクト ース還元酵素が ース還元酵素が, ラットや豚の肝臓 ラットや豚の肝臓, 及び Sinorhizobium 属の細菌からそれぞ れ見出され れ見出され, その諸性質が明らかとなっている 12,13) (Fig.7).. 植物ではアマ ランスの発芽種子や熟したバナナにおいて ランスの発芽種子や熟したバナナにおいて,, 1,5-AG 濃度の上昇が 濃度の が報告されてお れてお り,, その際に 1,5-AF 活性も確認されている 14). Fig. 7. α-1,4-グルカンからの グルカンからの 1,5-アンヒドロ アンヒドロ-D-グルシトールの生成 グルシトールの生成 9 一方で 一方で, ヒトでは 1973 年に脳脊髄液 15), 及び 1975 年に血清中に 1,5-AG AG の 存在が確認された 16). ヒトでの 1,5 1,5-AG の生合成はヒト白血病細胞( (K-562 562)を 用いた実験で 用いた実験で, 培養液の培地中に約 培養液の培地中に約 0.5 µg/L の濃度で確認されている 17 7) . ヒ ト体内 ト体内中の 1,5-AG 1,5 は健常人であれば は健常人であれば腎臓の尿細管内にある 腎臓の尿細管内にある糖輸送体により 腎臓の尿細管内にある糖輸送体により, 糖輸送体により その 99.9%が体内に再吸収され が体内に再吸収され, が体内に再吸収され, 体内での 1,5-AG は一定濃度が保たれる は一定濃度が保たれる しかし糖尿病のように体内が高血糖状態にある場合は, しかし糖尿病のように体内が高血糖状態にある場合は 20) . D-グルコース排泄であ グルコース排泄であ る尿糖により 1,5-AG の再吸収が競合阻害を受ける の再吸収が競合阻害を受ける. その場合, その場合 尿中へ 1,5-AG 1,5 が排出され血中の 1,5-AG AG 濃度が減少する 21) . このような特性から このような特性から,1,5-AG AG は 糖尿病における血糖コントロールの指標として用いられており, 糖尿病における血糖コントロールの指標として用いられており , 1,5-AG の正常 下限値は 14 µg/mL(約 µ 約 0.1 mM) )と設定されている と設定されている 22,23) 22 (Fig. Fig.8). Fig. 8. 1,5--AG の生体内動態,及び糖尿病における体内濃度低下の機序 10 また, ヒト体内での 1,5-AG は主に食品に由来し, 1 日あたり 5 mg 程度の 1,5-AG が日常的に食品から摂取され, 結果としてヒト血漿中では一般的な健 常人において 7~50 µg/mL 程度で存在すると報告されている 18,19). また, 米や 肉類, 果物類などの食品で, 大豆を除き, 飼料 1 g 当たり 0.5~4 µg 程度の濃度 で存在しており, 例外的に種子類では濃度が高く, 大豆やバナナでは 20 µg/g 程度の比較的高い濃度で存在する 18). 血中 1,5-AG 濃度は, 酵素法により臨床的に測定されており, 2 種の方法が知 られている. 1 つは, ピラノース酸化酵素を用いる方法であり, 1,5-AG の 2 位の OH 基を酸化する酵素として, Polyporus obtusus 由来のピラノース酸化酵素が 知られている 24) . ピラノース酸化酵素は D-グルコースに反応性を示すことか ら, 前処理として検体の D-グルコースをリン酸化して, ピラノース酸化酵素が 反応しない物質に変換する. その後, 検体中の 1,5-AG とピラノース酸化酵素 の反応で生じた過酸化水素をペルオキシダーゼとトリンダー試薬である N-エ チル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル-3-メチルアニリンナトリウム二水和 物(TOOS)を用いた発色反応により定量を行う 25) . もう一つの方法は, 検体 中の 1,5-AG をヘキソキナーゼにより 1,5-AG-6 リン酸に変換した後, 1,5-AG-6 リン酸脱水素酵素を用いる方法である. NADP 依存性の 1,5-AG-6 リン酸脱水素 酵素と 1,5-AG-6 リン酸を反応させることで NADPH を生成させ, この NADPH と還元型発色性試薬である 2-(4-ヨードフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5 (2,4-ジスルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム, ナトリウム塩(WST-1)に ジアホラーゼを作用させ, その発色反応により定量を行う方法である(Fig.9) 26) . 11 Fig. 9. 1,5-アンヒドロ 1,5 アンヒドロ-D-グルシトールを測定する グルシトールを測定する臨床診断薬 2 種の酵素 の酵素 反応 上記の 2 つの測定方法は, つの測定方法は 1,5-AG AG に反応する酵素の基質特異性に課題があり に反応する酵素の基質特異性に課題があり の基質特異性に課題があり, 測定に複数のステップを必要とする 測定に複数のステップを必要とする. 仮に 1,5-AG のみに特異的に反応 のみに特異的に反応する酵 する酵 素を見いだせれば 素を見いだせれば, 測定系を簡略 測定系を簡略化できると考えられる できると考えられる. できると考えられる また また一方で,, この 1,5 1,5-AG は近年,食後高血糖のマーカーとして注目されている. 食後高血糖のマーカーとして注目されている この食後高血糖 は,食事後の血糖値が糖尿病患者の血糖値近くまで上昇する症状を示す疾患で あり,この食後高血糖は,動脈硬化性疾患のリスクを増加させ,また糖尿病の 初期段階に見られることから隠れ糖尿病とも言われる. 初期段階に見られることから隠れ糖尿病とも言われる 1,5-AG は短期間の平均 血糖を反映することから,HbA1c や GA に比べて食後高血糖のモニタ に比べて食後高血糖のモニタリング リングに 適していると言われている 53) ( (Fig.10). 12 Fig. Fig 10. 食後高血糖とそのリスク さらに さらに近年では糖尿病患者が自身で自らの血糖を 近年では糖尿病患者が自身で自らの血糖を簡便に測定 近年では糖尿病患者が自身で自らの血糖を 測定(SMBG SMBG : self self-monitoring monitoring of blood glucose) glucose)できる, 小型の酵素センサが 小型の酵素センサが広く普及してい 広く普及してい る.. 本センサ センサには D-グルコー グルコースに反応する酵素が搭載されているが スに反応する酵素が搭載されているが スに反応する酵素が搭載されているが, 酸化酵素 では酵素反応が では酵素反応が血中の溶存酸素の影響を受ける 血中の溶存酸素の影響を受ける 血中の溶存酸素の影響を受けるとされ とされ, 現在は酸素の影響を受 酸素の影響を受 けない脱水素酵素 けない脱水素酵素が主流となっている 主流となっている 主流となっている. このような小型酵素センサに 1,5-AG 1,5 測定用 測定用酵素を搭載できれば 酵素を搭載できれば, 酵素を搭載できれば 1,5-AG AG の測定は更に簡便となると の測定は更に簡便となると考えられる 考えられる. 考えられる これまで これまで1,5 1,5-AGに作用する 作用する脱水素酵素について種々の研究がなされている 脱水素酵素について種々の研究がなされている 27) . 細菌においては 菌においては,Agrobacterium Agrobacterium sp. 28), Flavobacterium saccharophilum 29), Pseudomonas sp. NK-85001 85001 30), Deleya sp. 31), Cytophaga marinoflava 32), Rahnella aquatitlis 33), Enterobacter cloacae 33) Serratia marcescens 33)など, など また真菌においては また真菌においては,Pycnoporus Pycnoporus coccineus 34), Coriolus consors 34) , Eupenicillium crustaceum 35), Hansenula California 35),), Trichoderma 13 longibrachiatum 36)などから1,5-AGに反応する脱水素酵素の酵素特性が報告さ れている. しかしながら, 未だ基質特異性に優れた実用的な1,5-AG脱水素酵素 は, 見出されていない. 本研究では, 臨床への応用を目的として, 1,5-AG を基質とするソルボース脱水 素酵素とピラノース酸化酵素の機能解析とその応用について報告する. 14 第1章 Sinorhizobium sp. 97507 由来ソルボース脱水素酵素の 由来ソルボース脱水素酵素の諸性質 諸性質評価及 諸性質評価及 び 1,5-AG 1,5 測定への応用可能性 1-1 緒言 ソルボース脱水素酵素[SDH, ソルボース脱水素酵素[SDH, (EC EC 1.1.99.32) 1.1.99.32)]は, ]は L-ソルボースを酸化 ソルボースを酸化 し L-ソルボソンを生成する反応を触媒する酵素である ソルボソンを生成する反応を触媒する酵素である. ソルボソンを生成する反応を触媒する酵素である L-ソルボソンは ソルボソンは L-アス コルビン酸(ビタミン C)製造における C)製造における 2-ケト ケト-グロン酸( グロン酸(2KGA 2KGA)の前駆体と )の前駆体と して知られており 37), Gluconobacter melanogenus UV10 由来の膜結合性 SDH (GmSDH GmSDH)の酵素特性が の酵素特性が, の酵素特性が Sugisawa らにより報告されている 38). GmSDH SDH の 精製酵素は 精製酵素は, L-ソルボースのみに高い基質特異性を示し ソルボースのみに高い基質特異性を示し, ソルボースのみに高い基質特異性を示し 他の糖や糖アルコー ル類に反応性を示さない (Table Table 1 1). Table 1. 1 Gluconobacter melanogenus UV10 由来 SDH(GmSDH GmSDH)の 基質特異性 15 一方で, 1,5-AG はグルコピラノースの 1 位の OH 基が水素に置き換わった 6 単糖であり, 細菌, 動物, 及び植物などで幅広く見つかっている(Fig.11) Fig. 11. L-ソルボースと 1,5-アンヒドロ-D-グルシトール また,これまでに Sinorhizobium 属由来のソルボース脱水素酵素が 1,5-AG に作用するとの報告はない. 本章では, Sinorhizobium sp. 97507 株由来ソルボース脱水素酵素(SiSDH) の大腸菌組換え酵素の諸性質, 並びに 1,5-AG 定量への応用可能性について報 告する. 16 1-2 材料及び方法 1-2-1 材料・試薬 研究室の保存菌株である Sinorhizobium sp. 97507 株はゲノム DNA の取得に 用いられた. 大腸菌 JM109, 制限酵素, Takara LA Taq DNA ポリメラーゼ, In-fusion HD クローニングキットは, タカラバイオ製を用いた. 大腸菌 BL21 (DE3) はバイオダイナミクス製を用いた. KOD FX DNA ポリメラーゼは東洋紡 製を用いた. pET-21a プラスミドベクターはノバジェン製を用いた. TALON 金 属(コバルト)親和性樹脂はタカラバイオ製を用いた. その他の全ての化合物 は試薬グレードのものを使用した. 1-2-2 sdh 様遺伝子の取得 sdh 様遺伝子は, Sinorhizobium sp. 97507 株から単離されたゲノム DNA を 鋳型として, PCR により増幅された. PCR プライマーは Sinorhizobium meliloti 1021 に内在するメガプラスミド pSymA 上に存在する SMa1414 遺伝子配列 39) を も と に 設 計 し た . フ ォ ワ ー ド プ ラ イ マ ー (5′CCCCCCATGGATGATGGAAGGTTTTGATTA-3′)は開始コドンに制限酵 素 NcoI の切断(フォワードプライマー配列内の下線部)を含む. 一方, リバー スプライマー(5′-GGGAAGCTTTCAAATGTTGCCCCGTATCAG- 3′)は, 終止コ ドンの下流に制限酵素 HindIII の切断部位を(リバースプライマー内の下線部) を含む. 増幅した PCR 産物である sdh 様遺伝子は, 制限酵素 NcoI, HindIII で消 化後, 同様に制限酵素消化したプラスミド pUCNNT2 にライゲーションした. pUCNNT2 は, pUC19 にプラスミドの安定化に寄与する pKK223-3 の rrnB ribosomal terminator を付加したプラスミドである. 続いて, sdh 様遺伝子を発 17 現用プラスミド pET-21a に In-fusion システムによりサブクローニングした. フォワードプライマー(5′-ATACATATGGCTAGCATGATGGAAGGTTTT-3′) には, pET-21a の NheI 制限酵素サイトの上流 15 塩基の配列に特異的な配列を 付 加 ( フォ ワ ー ドプ ラ イ マー 配 列 内の 下 線 部) し , リバ ー ス プラ イ マ ー (5′-GTGGTGGTGCTCGAGAATGTTGCCCCGTAT-3′)には, pET-21a の XhoI 制 限酵素サイトの下流 15 塩基の配列に特異的な配列を付加(リバースプライマ ー配列内の下線部)した. なお, リバースプライマーの設計では, sdh 様遺伝子 の 5’末端にベクター由来の 6 残基の His 残基が付加するよう終始コドンを除去 している. 1-2-3 SiSDH 大腸菌組換え体の発現と精製 プラスミドベクターpET-21a/SiSDH により形質転換された大腸菌 BL21 (DE3) を, 終濃度 100 µg/mL アンピシリンナトリウム, 及び終濃度 0.1 mM IPTG を添加した Terrific Broth 培地(1.2%トリプトン,2.4%酵母エキス, 0.8%(w/v)グリセロール, 0.94%K2HPO4, 0.22%KH2PO4)にて, 25℃, 48 時間, 培養した. 取得した培養菌体を遠心分離により回収し, 0.1 mM FAD,300 mM NaCl, 及び 10 mM イミダゾールを含む 20 mM Tris-HCl(pH8.0) 緩衝液にて懸 濁した. 超音波処理により菌体を破砕し, 遠心により残渣を除去した. 無細胞 抽出液に終濃度 0.3%となるように Triton X-100 を添加し, 可溶化のために 4℃, 1 時間攪拌を行った. 懸濁液を 2,000 x g, 30 分で遠心した後, 遠心上清に終濃 度 20%となるようにグリセロールを添加した. 続いて, 平衡化した TALON 金 属(コバルト)親和性樹脂を充填したカラムに上記の可溶化サンプルを添加し た. 終濃度 10 mM イミダゾールを含む緩衝液 A (0.03% Triton X-100, 20% glycerol, 300 mM NaCl, 0.1 mM FAD, 20 mM Tris-HCl (pH8.0)) をカラムに通 液し樹脂の洗浄を行った. 18 SiSDH の溶出には, 終濃度 30 mM イミダゾールを含む緩衝液 A をカラムに通 液した. 溶出したサンプル中のイミダゾールと NaCl の除去には,遠心式濃縮装 置 Amicon Ultra-15(メルクミリポア製)を用いた. なお, SiSDH の精製度は SDS-PAGE で確認した. 0.5 µgのサンプルを e-PAGEL E-T15L(アトー製)を用 いて電気泳動し, 泳動後のゲルを CBB 染色した. タンパク質濃度は牛血清ア ルブミンを標準タンパク質として, プロテインアッセイキット(バイオラッド 製)を用いたブラッドフォード法にて測定した. また, SiSDH の粗精製サンプ ルを用い,ゲル濾過クロマトグラフィーにて本酵素の総分子量を調査した. 移 動相に 0.2 M NaCl を含む 50 mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を用いて, TSKgel BioAssist G4SWXL カラム(東ソー社製)にて流速 0.5 ml/min の条件 で分析した. 分子量マーカーは,オリエンタル酵母社製, アマシャムバイオサ イエンス社製をそれぞれ使用した. 1-2-4 酵素活性測定 酵素活性は, 分光光度計を用いて 37℃での 600 nm の吸光度変化により測定 した. 反応溶液には, 0.1 mmol リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0), 1.0 mmol Lソルボース, 1.8 µmol 1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルフェート (1-methoxy-PMS), 0.18 µmol 2,6-ジクロロフェノールインドフェノール (DCIP)を含む溶液を使用した. 酵素活性の算出には, DCIP のモル吸光係数 16.3 M-1cm-1 を用い, 酵素活性 1 U を, 1 分間に 1 µmol の L-ソルボースが酸化 される量と定義した. 酵素反応の至適温度, 至適 pH の検討では, 様々な温度, pH で酵素活性を測定した. なお至適 pH での検討は, 37℃で測定を行った. 酵 素の安定性の検討では, 0.1 U の精製酵素(0.03% Triton X-100, 0.1 mM FAD, 20 mM Tris-HCl(pH8.0))を様々な温度や, 様々な緩衝液でインキュベートし, 上 記の活性測定方法で残存活性を測定した. また, 酵素反応溶液に種々の金属イ 19 オン(終濃度 1 mM)を添加した酵素活性測定も行った. 1-3 結果 1-3-1 sdh 様遺伝子の取得 SMa1414 遺 伝 子 は 共 生 型 窒 素 固 定 土 壌 細 菌 で あ る Sinorhizobium meliloti1021 株に内在するメガプラスミド pSymA の構成因子の 1 つである. 本 遺伝子は, 推定分子量 57,312 Da で,531 アミノ酸をコードする FAD 依存性の 脱水素酵素であるとアノテーションされている. BLAST 検索によるホモロジー 解 析 で は , Gluconobacter oxydans 由 来 の ソ ル ボ ー ス 脱 水 素 酵 素 (UniProt accession number : Q47944.1) 40)と約 73%のアミノ酸配列の同一性を有してい る(Fig.12). sdh 様遺伝子は PCR により Sinorhizobium sp. 97507 株由来のゲ ノム DNA から増幅できた. pUCNNT2 ベクターに挿入した後, sdh 様遺伝子の遺 伝子配列を確認した. その結果, sdh 様遺伝子から翻訳されるアミノ酸配列は, SMa1414 アミノ酸配列の Met54 に相当するアミノ酸が Leu であったことを除 き, その他のアミノ酸配列は同一であった(Fig.13). また, 大腸菌組換え体で ある SiSDH の無細胞抽出液を調製し, 酵素活性を評価した結果, L-ソルボース のみならず 1,5-AG に明らかな活性を示した. 1-3-2 SiSDH の発現及び精製 取得した SiSDH 遺伝子は, TALON 金属(コバルト)親和性樹脂を用いたア フィニティークロマトグラフィーを行うため, C 末端にヒスチジンタグを付加 する pET-21a ベクターにサブクローニングされた. 精製においては, すべての 20 ステップで特に明記しない限り, 終濃度 0.1 mM FAD, 終濃度 20% glycerol, 及 び終濃度 0.03% Triton X-100 を含む 20 mM Tris-HCl(pH8.0)緩衝液を使用し た. Fig. 12. Sinorhizobium meliloti 1021 由来 SMa1414 と Gluconobacter oxydan 由来 ソルボース脱水素酵素(GoSDH ) (UniProt Accession Number: Q47944.1) のアミノ酸配列のアライメント 21 SiSDH SMa1414 1 MMEGFDYVIVGGGSSGCVLAARLSENPSVRVCLIEAGGRDRHPLIHMPVGFAKLTAGPMT 60 1 MMEGFDYVIVGGGSSGCVLAARLSENPSVRVCLIEAGGRDRHPLIHMPVGFAKMTAGPMT 60 SiSDH SMa1414 61 WGLTTAPQKHANNREIPYAQARVLGGGSSINAEVYTRGHPRDYDRWVEEGADGWSFQEVK 120 61 WGLTTAPQKHANNREIPYAQARVLGGGSSINAEVYTRGHPRDYDRWVEEGADGWSFQEVK 120 SiSDH 121 PYFLRSEGNTILSGEWHGTDGPLGVSNLPDPQPMTRAFVQSCQELGIPYNPDFNGPVQEG 180 SMa1414 121 PYFLRSEGNTILSGEWHGTDGPLGVSNLPDPQPMTRAFVQSCQELGIPYNPDFNGPVQEG 180 SiSDH 181 AGVYQTTIRNSRRCSAAVGYLRPALARKNLMLITGALVLRIVFQGRRAVGVEYSTGGAAK 240 SMa1414 181 AGVYQTTIRNSRRCSAAVGYLRPALARKNLMLITGALVLRIVFQGRRAVGVEYSTGGAAK 240 SiSDH 241 IARAESEVLVTSGAIGTPKLMMLSGVGPAASLRSHGIDVVQDMAGVGQNLHDHFGVDIVA 300 SMa1414 241 IARAESEVLVTSGAIGTPKLMMLSGVGPAASLRSHGIDVVQDMAGVGQNLHDHFGVDIVA 300 SiSDH 301 ELKGHDSLDKYNKFHWMLLAGIEYALFKSGPVASNVVEGGAFWYGDRASPYPDLQFHFLA 360 SMa1414 301 ELKGHDSLDKYNKFHWMLLAGIEYALFKSGPVASNVVEGGAFWYGDRASPYPDLQFHFLA 360 SiSDH 361 GAGAEAGVPSVPKGSSGVTLNSYTVRPKSRGSVTLRSADPRALPIVDPNFLDDPDDLRIS 420 SMa1414 361 GAGAEAGVPSVPKGSSGVTLNSYTVRPKSRGSVTLRSADPRALPIVDPNFLDDPDDLRIS 420 SiSDH 421 VEGIRISREIFGQPSLQKYIKTIRFPDESVRTQADFEAYARQYGRTSYHPTCTCKMGRDD 480 SMa1414 421 VEGIRISREIFGQPSLQKYIKTIRFPDESVRTQADFEAYARQYGRTSYHPTCTCKMGRDD 480 SiSDH 481 MSVVDPQLRVHGLDGIRICDSSVMPSLVGSNTNAATIMIGEKAADLIRGNI SMa1414 481 MSVVDPQLRVHGLDGIRICDSSVMPSLVGSNTNAATIMIGEKAADLIRGNI 531 531 Fig. 13. SiSDH と Sinorhizobium meliloti 1021 由来 SMa1414 のアミノ酸配列の アライメント 22 SiSDH は FAD 未添加に比べ, 添加時の方が高い酵素活性を示したため, 精 製用緩衝液には FAD を添加した. 発現ベクターpET-21a/SiSDH により形質転 換した組換え大腸菌 BL21(DE3)を Terrific Broth 培地で培養した. 回収した 培養菌体を超音波破砕した後, 遠心を行い無細胞抽出液(cell free extract, CFE) を調製した. その CFE の比活性を測定した結果, 1.0 U/mg であった. TALON 金 属(コバルト)親和性樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィーによる 精製結果を Table 2 に示す. Table 2. 大腸菌組換え SiSDH の精製 Total activity (U ) Total protein (mg) Specific activity (U/mg) Yield (%) Purification (fold) cell-free extract 40 41 1.0 100 1.0 TALON Metal Affinity Resin 11 Purification step 0.94 12.0 27.5 12.0 酵素回収率は約 28%であり, 精製された SiSDH の比活性は 12 U/mg であっ た. しかしながら, 精製酵素は不安定で, 4℃, 2 日間の静置で酵素活性の約 30%が失活した. 1-3-3 SiSDH の酵素特性 SDS-PAGE により純度検定を行った結果, 高い純度で生成されており, SiSDH のサブユニット分子量は, 約 59 kDa と推察された(Fig. 14, lane 2). そ の結果は, ヒスチジンタグを含んだ遺伝子配列から推測される分子量(58.4 kDa)とほぼ同じであった. また, これまでに粗精製酵素を用いたゲルろ過 (TOSOH 製,TSKgel BioAssist G44WXL カラム)を行った結果では, 150 kDa 及び 672 kDa と算出された 2 つのピークを確認し, どちらの画分においても酵 23 素活性を確認した. そのため, SiSDH はホモダイマーを形成していると推察さ れた(Fig. 15). Fig. 14. 大腸菌組換えSiSDH精製酵素のSDS-PAGE Lane 1, 標準タンパク質. Lane 2, SDH精製酵素. 精製酵素 0.5 µgを 15%のポリアクルアミドゲルで分離し,CBB染色した. 24 Fig. 15. 大腸菌組換え 大腸菌組換えSiSDHのゲル濾過の結果 のゲル濾過の結果 2.2 mgの粗精製酵素 の粗精製酵素(チャージサンプル の粗精製酵素 チャージサンプル 20 µl) をHPLCカラム を カラム(TSKgel TSKgel BioAssist G44WXL) G44WXL)にてゲル濾過を行った にてゲル濾過を行った. にてゲル濾過を行った 25 精製酵素を用いて, 至適 pH, 至適温度, 及び pH 安定性と熱安定性の検討を 行った. それらの結果を Fig. 16 及び 17 に示す. 終濃度 50 mM の様々な緩衝液 を用いて SiSDH の酵素活性を測定した結果, SiSDH の至適 pH は pH 8.5(Fig. 16A)であった. また, 様々な反応温度で SiSDH の酵素活性を測定した結果, 至適温度は 40℃(Fig. 16B)であった. Fig. 16. 大腸菌組換えSiSDH精製酵素のpHと温度の依存性 (A) 酵素活性は様々な緩衝液(終濃度50 mM)で標準活性測定方法にて測定さ れた. (B) 酵素活性は様々な温度で標準活性測定方法にて測定された. (基質 にはL-sorboseの代わりに1,5-AGが使用された) 緩衝液: 酢酸ナトリウム緩衝 液 (◇); クエン酸緩衝液(▲); りん酸カリウム緩衝液(□); トリス緩衝液(●); グリシン緩衝液(○). 26 また, 終濃度 50 mM の様々な緩衝液で SiSDH を 40℃,15 分間インキュベー ションし,その残存活性を測定した pH 安定性の検討では, pH 5.5 から 8.0 の 範囲で活性の低下は認められなかった(Fig.17A). さらに, 様々な温度で SiSDH を 10 分間インキュベーションし,その残存活性を測定した温度安定性 の検討においては, SiSDH は 30℃まで安定であり, 35℃, 10 分間のインキュベ ーションで, 熱処理なしの酵素活性を 100%とした場合に 82%の酵素活性を維 持していた. 55℃, 10 分間の熱処理後ではほぼ完全に失活していた(Fig. 17B). Fig. 17. 大腸菌組換えSiSDH精製酵素のpHと温度の安定性 (A) 精製酵素は様々な緩衝液(終濃度50 mM)で40℃,15分間インキュベーショ ンされた後,その残存活性が標準活性測定方法にて測定された. (B) 精製酵素 は様々な温度で10分間インキュベーションされた後,その残存活性が標準活 性測定方法にて測定された. 緩衝液: 酢酸ナトリウム緩衝液(◇); クエン酸緩 衝液(▲); りん酸カリウム緩衝液(□); トリス緩衝液(●); グリシン緩衝液 (○). 27 金属イオンの酵素活性に与える影響について検討した結果を Table 3 に示す. SDH の酵素活性は, 2 価のマンガンイオン, 2 価の水銀イオン, 及び 2 価の銅イ オンにより阻害された. また, 2 価のニッケルイオンと 2 価のカドニウムイオン に弱く阻害された. Table 3. 大腸菌組換え SiSDH 精製酵素への金属 イオンの影響 Relative activity(%) Metal None 100 MgCl2 101 CaCl2 100 BaCl2 99 CoCl2 99 FeCl3 96 AlCl3 91 CdCl2 71 NiCl2 62 MnCl2 18 HgCl2 3 CuCl2 2 28 次に, SiSDH の基質特異性を検討した結果を Table 4 に示す. この酵素は Lソルボースと 1,5-AG に高い特異性を有していた. 評価したその他の基質の反 応性は, L-ソルボースへの反応性を 100%とした場合に 5%以下であった. Table 4. 大腸菌組換え SiSDH 精製酵素の基質特異性 酵素活性は,様々な基質 (終濃度 333 mM)を用いて標準活性測定方法にて測定さ れた. この基質濃度条件は L-ソルボースの Km 値の 5 倍の基質濃度とした. Substrate L-sorbose 1,5-AG Relative Activity (%) 100 79 Substrate Relative Activity (%) D-glucose-6-sulfate 0.3 D-mannose 0.1 D-galactose 1.4 D-sucrose 0.1 D-glucose 1.0 D-arabinose 0.1 D-fructose 0.9 D-raffinose 0.1 D-cellobiose 0.7 arabitol 0 2-deoxy-D-glucose 0.4 D-xylose 0 methyl-β-D-glucopyranoside 0.3 glycerol 0 3-O-methyl-D-glucose 0.2 29 更に, 精製した SiSDH の L-ソルボースと 1,5-AG に対する kcat 及び Km 値 を算出し, 酵素反応速度論的な解析を行った(Table.5). L-ソルボースに対する Km 値は 62.4 mM であり, kcat 値は 11.2 s-1 であった. また,1,5-AG に対する Km 値は 97.5 mM であり, kcat 値は 14.1 s-1 であった. L-ソルボース及び 1,5-AG に対 する触媒効率(kcat/Km)は, それぞれ 179.0 s-1・M-1, 145.0 s-1・M-1 であった. Table 5. 大腸菌組換え SiSDH 精製酵素の速度論的解析 kcat (s-1) Km (mM) kcat / Km(s-1 M-1) L-sorbose 62.4 11.2 179.0 1,5-AG 97.5 14.1 145.0 1-3-4 SiSDH を用いた 1,5-AG の定量 精製した SiSDH を用いて 1,5-AG の定量を行った結果を Fig.18 に示す. 吸 収波長 600 nm での吸光度と 1.5-AG 濃度の相関を調べた結果, 1,5-AG 終濃度 0.5 mM から 5.0 mM の間で直線性が認められた. しかしながら, 本測定方法で は 0.5 mM 以下の濃度を検出することができなかった. 30 Fig. 18. 1,5-AGの検量線 酵素活性は様々な 1,5-AG 濃度で標準活性測定方法にて測定 された. 31 1-4 考察 本研究では, Sinorhizobium sp. 97507 株からソルボース脱水素酵素遺伝子を クローニングし, その酵素特性を明らかにした. バイオインフォマティックス 解析(SOSUI: a classification and secondary structure prediction system for membrane proteins 41)によると, 本酵素は水溶性タンパク質として分類される. しかしながら無細胞抽出液を用いた超遠心分離の実験では, 超遠心前の酵素を 100%とした場合に, 遠心後上清には 15%の酵素活性量しか残っていない. 残 りの 85%は細胞膜画分を含めた沈殿内に存在していると思われる. これらの 結果から, SiSDH は, Sugisawa らが報告した GmSDH と同様に細胞膜に結合し ている膜結合性酵素であると考えられた. なお, SiSDH での精製方法の検討に おいては, 超遠心分離により調製した膜画分を可溶化した SiSDH を用いた検 討を試みたが, 結果として今回行った精製方法の方が高い比活性を示す結果と なった. その原因は, 界面活性剤の種類や濃度など未だ最適化出来ていないこ とによると考えられた. Sugisawa らが報告した GmSDH は, L-ソルボースのみに反応性を有し, 電子 伝達体として DCIP を用いた測定では, その Km 値は 100 mM であった 38) . SiSDH と GmSDH は同程度の Km 値を有しているが, 一般的な細胞内酵素とし て考えた場合, 本酵素の L-ソルボースと 1,5-AG に対する Km 値は高く, これら の基質は SiSDH の天然の基質ではない可能性があると考えられた. また, 精製したSiSDHを用いて1,5-AGの定量を行い, 終濃度0.5 mMから5 mMまでの濃度範囲において, 600 nmでの吸光度変化との直線相関性を確認し た. しかしながら, 臨床的に測定される1,5-AG濃度は約0.006 mMから0.3 mM であり, SiSDHを用いたこの測定方法では, その低濃度範囲を検出できなかっ た. 今回の測定方法で, 低濃度の1,5-AGを定量するには, 大量のSiSDHが必要 と想定された. 一方で, これまでに報告されている1,5-AG脱水素酵素は0.5-6.6 32 mMの低いKm値を有している 32, 35, 42) . 従って, 上記のAGDはSiSDHと比べて, より少ない酵素量で測定が可能である. それゆえ, SiSDHのKm値は1,5-AG測 定に不利である. 但し, SiSDHはL-ソルボースと1,5-AGのみに作用し, 遺伝子 改変などによりそのKm値を改良することで1,5-AG測定に利用できる可能性が あると考えられた. ソルボース脱水素酵素はその基質特異性から 2 つのタイプに分けられる. タ イプ 1 の SDH(EC 1.1.99.12)は,L-ソルボースの 5 位に作用し, GmSDH のよ うなタイプ 2 の SDH(EC 1.1.99.32)は, L-ソルボースの 1 位に作用する. タ イプ 1 の SDH においては, Asakura らが Gluconobacter oxydans DSM 4025 由 来の PQQ 依存性の L-ソルボース/ L-ソルボソン脱水素酵素について報告してい る 43) . この酵素は広い基質特異性を有し, 糖, 糖アルコール, 及びアルコール などに反応性を示す. 更にこの酵素は D-ソルビトールを L-ソルボースと D-グル コースに変換する. 従って, その酵素は D-ソルビトールを C-1 位と C-5 位の両 方の OH 基を酸化することが報告されている. SiSDH はピラノース環を認識し, エタノール, 1-プロパノール, 1-ブタノールなどのアルコールに対して反応を示 さない. さらに G.oxydans.由来の SDH と 73%のアミノ酸配列の相同性を有す る. そのため, 本酵素は PQQ 依存性の L-ソルボース/ L-ソルボソン脱水素酵素 のようなタイプ 1 の SDH ではなく, むしろ L-ソルボースの 1 位に作用するタ イプ 2 の SDH であると思われる. 1 つの可能性として考えられるのは, SDH が ピラノースのいずれかの OH 基に対して, 位置選択的に酸化していることであ る. Trametes multicolor 由来のピラノース酸化酵素は, D-グルコースの 2 位を 酸化し, 更に活性部位内での基質の回転によって 2-ケト-D-グルコースの 3 位を 酸化する. SiSDH の反応機序は結晶構造が解析された際に明らかになると思わ れるが, 1,5-AG の反応部位の同定には更なる検討が必要である. 33 第2章 部位特異的変異導入によるピラノース酸化酵素の色素依存性脱水素酵 素活性の向上 2-1 緒言 ピラノース酸化酵素(EC 1.1.3.10)は, グルコースなどの 6 員環を形成する 糖類の 2 位の OH 基を酸化し, 過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素とし て知られている 44, 45). 本酵素はその特性から, 抗生物質の生成やフルクトース の工業生産, その他にもバイオセンサやバイオ燃料電池への応用など, 様々な 用途への提案がなされている酵素である 46, 47, 48, 49). また, 本酵素は糖尿病の診断マーカーである 1,5-AG を基質とするため, 糖 尿病の診断薬としても使用されている 24) . 1,5-AG 診断用途に本酵素を用いる 場合, 現状の液状試薬としての形態で用いる他に, 上記に記載した酵素センサ として用いる形態も考えられる. しかしながら, 酵素センサ素子として酸化酵 素を使用する場合, その反応上, 血中の溶存酸素の影響を受ける可能性がある. 従って, 酵素センサに搭載する酵素としては, 脱水素酵素の方が適している. 一方で, 酸化酵素に部位特異的変異を導入することで, 酸化酵素活性を低減 し, 人工電子受容体を介した酵素活性(色素依存性脱水素酵素活性:以下, 脱水 素酵素活性と称する)を向上させた報告がなされている 50) . この報告では, Streptomyces sp.由来コレステロール酸化酵素に対し,その立体構造情報(PDB ID: 1MXT)を参考に酸素結合部位に変異を導入することで, 酵素反応時の酸素 への電子伝達能が低下し, 人工電子受容体への電子伝達能を向上させた. basidiomycetous fungus No.52 由来ピラノース酸化酵素(PROD)は,Furuya らによりその酵素特性が明らかにされた 51). 本酵素は,グルコースに対する酵 素活性を 100%とした場合に,1,5-AG に対して 19%の反応性を示し, またその 他の糖類にも反応性を示す酵素である. しかしながら,第 1 章で報告したソル 34 ボース脱水素酵素と比べ熱安定性が高い酵素 ボース脱水素酵素と比べ熱安定性が高い酵素であり, であり,50℃, 30 分の熱処理後で も 88%の残存活性を示す,熱安定性の高い酵素である の残存活性を示す,熱安定性の高い酵素である(Fig.19) の残存活性を示す,熱安定性の高い酵素である ). そのため, 基質特異性に課題はあ 基質特異性に課題はあるが るが,本酵素 ,本酵素に変異を導入し,その脱水素酵素活性を向 に変異を導入し,その脱水素酵素活性を向 上させる検討を行った 上させる検討を行った.. Fig. 19. basidiomycetous fungus No.52 No.52由来ピラノース酸化酵素の酵素特性 由来ピラノース酸化酵素の酵素特性 35 2-2 材料及び方法 2-2-1 -2-1 材料・試薬 研究室の保存プラスミド pET21a-PROD を変異導入用鋳型として用いた. 宿主として, 大腸菌 JM109, または BL21(DE3)を使用した. T4 ポリヌクレオチ ドキナーゼはタカラバイオ製, Pfu ポリメラーゼは stratagene 製, Taq リガーゼ は New England Biolabs 製をそれぞれ用いた. その他の全ての化合物は試薬グ レードのものを使用した. 2-2-2 -2-2 変異導入プライマーの設計及び変異導入 変異導入プライマーの設計及び変異導入方法 プライマーの設計及び変異導入方法 PROD のアミノ酸配列を検索配列とし, プロテインデータバンク(RCSB Protein databank: http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do)をデータベースと した BLAST 検索を行い, PROD と最もアミノ酸配列の同一性が高い立体構造 が公知であるピラノース酸化酵素を検索した. 次に分子グラフィックスツール Pymol を用いて, 検索でヒットした酵素の立体構造から, 酸素結合部位や活性 中心近傍に立体構造上位置すると考えられたアミノ酸残基を抽出した. 抽出し たアミノ酸残基とアミノ酸配列のアライメントで一致する PROD のアミノ酸 をアラニン残基に置換する変異導入用プライマーを設計した. 変異導入用にデ ザインしたプライマーのリン酸化を行い, 沢野らの方法 52) に基づいて変異が 導入されたプラスミドの複製(Quick change 法)を行った. 反応溶液に対して制 限酵素消化(DpnI)を行った後, 変異導入されたプラスミドを大腸菌 JM109 に導 入し, 遺伝子配列の確認を行った. その後, 配列確認を行ったプラスミドで大 腸菌 BL21(DE3)の形質転換を行い, 目的酵素を発現させ酵素活性の確認を行 った. 36 2-2-3 -2-3 改変体の培養 プラスミドベクターpET21a-PROD により形質転換された大腸菌 BL21 (DE3) を, 終濃度 100 µg/mL アンピシリンナトリウム, 及び終濃度 0.1 mM IPTG を添加した Terrific Broth 培地(1.2% トリプトン, 2.4% 酵母エキス, 0.8%(w/v) グリセロール, 0.94% リン酸水素二カリウム, 0.22% リン酸二水素 カリウム)にて, 25℃, 24 時間培養した. 取得した培養菌体を遠心分離により 回収し, 終濃度 2.5 µg/mL デオキシリボヌクレアーゼ及び終濃度 0.1 mg/mL リゾチームを含む 50 mM リン酸カリウム(pH 7.5)緩衝液にて懸濁した. その 後, 終濃度 1%となるように Tween20 を混和し, -80℃凍結した. 凍結融解後, 遠心分離により残渣を除去することで, 無細胞抽出液(CFE)を調製した. 2-2-4 -2-4 酵素活性測定方法 酸化酵素活性の測定方法は, リン酸カリウム緩衝液(pH7.0) 1 µmol, ペルオ キシダーゼ 10 U, 4-アミノアンチピリン 2.48 µmol, フェノール 42 µmol, グ ルコース 100 µmol を含む反応溶液に酵素液を添加し, 反応を開始させ,500 nm の吸光度変化を測定した. 脱水素酵素活性の測定では,リン酸カリウム緩衝 液(pH7.0) 0.1 mmol, DCIP 0.42 µmol, 1-methoxy PMS 0.6 µmol, グルコース 1 mmol を含む反応溶液に酵素液を添加し, 反応を開始させ, 600 nm の吸光度変 化を測定した. なお, 1 分間に 1 µmol の基質を消費する酵素量を 1 U と定義し た. 37 2-3 結果 2-3-1 変異導入プライマーの設計及び改変体の作製 変異導入プライマーの設計及び改変体の作製 PROD のアミノ酸配列を検索配列とした BLAST 検索を行った. その結果, 最も相同性が高い PROD として, Peniophora sp.由来 PROD(PePROD, PDB ID:2F5V)がヒットし, アミノ酸配列の同一性は 41%であった. PePROD の立 体構造には酸素分子の座標データが含まれていないため, PePROD とアミノ酸 配列の相同性が 36%である Streptomyces sp.由来コレステロール酸化酵素 (ChOX)の立体構造(PDB ID: 1MXT)を PROD(PDB ID:2F5V)とともに, 2 つの立体構造を分子グラフィックスツール Pymol を用いて重ね合わせ, 酸 素分子の立体構造上の位置の参考とした(Fig.20). 上記構造情報を用い, 酸素結合部位や活性中心近傍に立体構造上位置する と考えられたアミノ酸残基 11 種類を抽出した(Fig.21). それら抽出したアミ ノ酸と一致する PROD のアミノ酸をアラニンに置換する変異導入用プライマ ーを設計した(Table 6). 変異導入されたプラスミドの遺伝子配列を確認し, 設計した変異導入を確 認した. 38 Cyan : PePROD (PDB ID 2F5V) Green : ChOX (PDB ID 1MXT) Fig. 20. PePRODとChOX PePROD ChOXの立体構造の重ね合わせ の立体構造の重ね合わせ Fig. 21. 2 PROD と PePROD のアミノ酸配列のアライメント 赤字のマークが変異導入された残基 39 Table 6. 変異導入用プライマー 2-3-2 改変体の評価 変異導入した pET21a-PROD のプラスミドを含む大腸菌 BL21(DE3)をそれ ぞれ培養し, 菌体破砕後に得られた CFE の酸化酵素活性と脱水素酵素活性を 評価した. プレートリーダで評価した結果を Fig.22 に示す. 未変異の野生型酵 素は, 酸化酵素活性と同程度の脱水素酵素活性を示した. 評価した改変体は 11 種の改変体中, H419A を除いた 10 種において野生型と比べ, 酸化酵素活性が 低下していた. 40 Fig. 22. 野生型酵素に対する PROD 変異体の酸化酵素活性及 び脱水素酵素活性の相対活性 11 種類の改変体の中で, 酸化酵素活性と比べて脱水素酵素活性が高い 4 種 類の改変体(P147A, L214A, L216A, Q421A)について, CFE の比活性を分光 光度計にて評価した(Fig.23). 野生型酵素の酸化酵素活性は 3.4 U/mg, 脱水 素酵素活性は 2.1 U/mg であり, 脱水素酵素活性の比活性は酸化酵素活性の約 62%であった. Q421A は野生型酵素の脱水素酵素活性と比べ, 脱水素酵素活性 が約 33%低下(1.4 U/mg)していたが, 酸化酵素活性は野生型酵素の約 8.8% で, 評価した 4 種類の中で最も酸化酵素活性が低下していた. 一方で, L216A は酸化酵素活性が野生型酵素の約 56%(1.9 U/mg)であったが, 脱水素酵素活 性は野生型酵素に比べて約 2.8 倍向上(5.9 U/mg)していた. 41 Fig. 23. PROD 変異体の酸化酵素活性及び脱水素酵素活性の比 活性 2-4 考察 basidiomycetous fungus No.52 由来ピラノース酸化酵素の酸素結合部位や活 性中心近傍に位置すると考えられたアミノ酸 11 種を Ala へ置換し, 酸化酵素活 性と脱水素酵素活性を評価した. その結果, H419A は酸化酵素活性及び脱水素 酵素活性とも野生型とほぼ程度の酵素活性を示したことから, 419 番目のヒス チジン残基は酵素活性に関与しない残基であると推察された. また, T143A は 酸化酵素活性と脱水素酵素活性の両方ともほとんど活性を示さず, 失活してい た. この結果から 143 番目のスレオニンは, PROD の酵素活性に関わる重要な 残基の 1 つであると考えられた. Fig.24 に PePROD の立体構造上における, PROD の改変部位の相対配置を 示す. PePROD と PROD のアミノ酸配列のアライメント結果から, PROD の各 42 残基の位置に相当する PePROD の残基を抽出した の残基を抽出した. PePROD の立体構造で の立体構造であ るため,詳細な るため,詳細な考察は困難で 考察は困難であるが あるが,PROD PROD の酸化酵素活性が野生型の 酸化酵素活性が野生型の 8%ま 8% で低下した Q412A(Fig.24 Q412A Fig.24 の緑分子 分子, PePROD では,446 では, 番目の同じくグルタ ミン ミン残基)は は酸素分子近傍にあり,アラニンへの置換により,酸素分子の局在 酸素分子近傍にあり,アラニンへの置換により,酸素分子の局在 に何らかの影響を与えたと考えられた に何らかの影響を与えたと考えられた. 一方で,脱水素酵素活性が向上した L216A L216A(Fig.2 Fig.24 の紫分子 分子, PePROD では,239 239 番目の同じくロイシン 番目の同じくロイシン残基) 残基)は 酸素 酸素分子から離れた位置に存在 から離れた位置に存在する から離れた位置に存在する. 従って,アラニンへの置換は酸化酵素活 性の低下にそれほど影響を与えなかったと考えられた. 性の低下にそれほど影響を与えなかったと考えられた また脱水素酵素活性が 向上したことから 向上したことから人工電子伝達体 人工電子伝達体 人工電子伝達体への電子伝達に関し, の電子伝達に関し,何らかの影響を与えた の電子伝達に関し,何らかの影響を与えた のではないかと考え のではないかと考えられ られた. pink:oxygen red:2-keto keto-D-glucose yellow:FAD Fig. 224. PePROD. (PDB ID:2F5V) ID 2F5V)の立体構造 の立体構造 緑色で示した PePROD の残基( の残基(Q446)は, )は,PROD で Q412 に相当する に相当する. 紫色で示した PePROD の残基( の残基(L239)は, )は,PROD で L216 に相当する に相当する. 43 今回, basidiomycetous fungus No.52 由来 PROD の酸素結合部位や活性中心 近傍に存在すると想定されたアミノ酸残基 11 種をアラニン残基へ置換するこ とにより, 酸化酵素活性が低下し, 且つ脱水素酵素活性を保持した 4 種類の改 変体を取得した. Q421A は酸化酵素活性が野生型の 8.8%まで低下し, 改変体 L216A は脱水素酵素活性が野生型の約 2.8 倍向上した. 今後, 本実験で色素依存型脱水素酵素活性が向上した変異箇所をアラニン 以外の他の残基への置換すること, または導入した変異を組み合わせることに よって, 更に酸化酵素活性が低下した, 色素依存型脱水素酵素活性を有する改 変体を取得できると考えられた. 44 第3章 総括 本研究では, 臨床への応用を目的として, 1,5-AG を基質とするソルボース脱 水素酵素とピラノース酸化酵素の機能解析とその応用について検討を行った. 第 1 章では, Sinorhizobium sp. 97507 由来ソルボース脱水素酵素の諸性質評価 及び 1,5-AG 測定への応用可能性の評価を行い, 第 2 章では, 部位特異的変異導 入による basidiomycetous fungus No.52 由来ピラノース酸化酵素の色素依存 性脱水素酵素活性の向上の検討を行った. 第 1 章では, Sinorhizobium sp. 97507 からソルボース脱水素酵素をコードす ると考えられた遺伝子を取得し, 組換え大腸菌を用いて生産した酵素の諸性質 評価を行った. その結果, 精製酵素が L-ソルボースと 1,5-AG のみに作用し, 酵 素速度論的解析により, L-ソルボースと 1,5-AG の触媒効率が同程度であること を明らかにした. 上記の結果から, Sinorihizobium sp. 97507 由来ソルボース脱 水素酵素が L-ソルボースと 1,5-AG に反応性を示す基質特異性に優れた新規酵 素であることを明らかにした. しかしながら, 本酵素を用いた 1,5-AG の定量 検討では, 臨床的に計測される 1,5-AG 低濃度範囲を今回の測定方法では定量 することができなかった. 但し, SiSDH は L-ソルボースと 1,5-AG のみに作用す る優れた基質特異性を有することから, 遺伝子改変などによりその Km 値を改 良することで 1,5-AG 測定に利用できる可能性があると考えられた. また, 第 2 章では部位特異的変異導入による basidiomycetous fungus No.52 由来ピラノース酸化酵素の色素依存性脱水素酵素活性の向上を試みた. 本酵素 の X 線結晶立体構造は明らかとなっていなかったため, アミノ酸配列の相同性 が高いピラノース酸化酵素を公知データベースから見出し, 他酵素の改変の知 見をもとに変異を導入した. 検討の結果, 本酵素が酸化酵素活性と色素依存性 脱水素酵素活性の両方の酵素活性を有していたことが明らかとなった. また 11 種類の改変体の評価において, 酸化酵素と比べて脱水素酵素活性が高い 4 種 45 類の改変体を取得し, その中で野生型の脱水素酵素活性よりも比活性が 2.8 倍 向上した改変体を取得した. 但し, 酸化酵素活性を完全に失わせる結果には至 っておらず, 脱水素酵素の活性低下を伴わない更なる変異導入が必要と考えら れた. 以上から, 本研究では, Sinorhizobium sp. 97507 から 1,5-AG を基質とする ソルボース脱水素酵素を見出し, その諸性質を明らかとした. 一方で, 部位特 異的変異導入により basidiomycetous fungus No.52 由来ピラノース酸化酵素 の機能改変を行い, 酸化酵素活性と比べて色素依存型脱水素酵素活性が向上し た改変体を取得した. これら 2 種の酵素は, 今後実用的な酵素を開発する際の 基盤となるものである. 46 参考文献 1) 谷岡利裕. 膵 β 細胞におけるインスリン抵抗性の分子メカニズム.昭和大学 昭和大学 薬学部雑誌. 薬学部雑誌 2, 127-138 (2011) 2) 西田健朗,藤澤和夫,1 型糖尿病. 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