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212 ナノ粒子混合法によるスプレー型高速応答 PSP の
212 ナノ粒子混合法によるスプレー型高速応答 PSP の時間応答の変化 Influence of Mixing Method of nanoparticle on time response of sprayable fast-Pressure-Sensitive Paint ○学 佐藤 山本 山下 優大(愛工大院) 真也(愛工大) 耕平(愛工大) 正 小西 清水 江上 翔太(愛工大院) 祐弥(愛工大) 泰広(愛工大) Yudai SATO, Shota KONISHI, Naoya YAMAMOTO, Yuya SHIMIZU, Kohei YAMASHITA, Yasuhiro EGAMI Aichi Institute of Technology, 1247 Yachigusa Yakusa-cho, Toyota, Aichi 470-0392, Japan Key Words: Pressure-Sensitive Paint, Response time, Nanoparticle 1.諸言 近年,感圧塗料(Pressure-Sensitive Paint: PSP)を用いた圧力 計測法が注目されている(1).PSP は酸素分子によって発光強 度が変化する消光現象を利用した光学的圧力センサである. 従来の圧力測定法は,模型に圧力孔を設けて圧力センサを繋 ぎ,表面圧力場を点情報で計測していたのに対し,PSP では 面情報として捉えることができる.PSP では感圧色素を模型 に付着させるために通常ポリマが利用される.しかし,PSP の応答時間は酸素分子がポリマに浸透し感圧色素と反応す るまでの時間で決まり,通常ミリ秒のオーダーの時間を要し, マイクロ秒で変動する非定常圧力場を計測するには十分で ない.一般的な高速応答が可能な PSP として陽極酸化型 PSP(Anodized Aluminum PSP: AA-PSP)(2)があるが,陽極酸化 処理は材質がアルミニウムに限られるため,模型に多く使用 されるステンレスなどの素材には使用できない.そこで材質 などを選ばない高速応答 PSP としてスプレー型の Polymer Ceramic-PSP(PC-PSP)(3)や超微粒子を使用する PSP(4)がある. 今までのスプレー型高速応答感圧塗料は,ナノ粒子を混合 させたバインダ溶液を模型表面に塗布し,その上に色素溶液 を塗布することで高速応答性を得る方法が開発されてきた (5) .その後,更なる高速応答性を得るために,色素溶液にポ リマを溶解しない溶媒を用いることによって感圧色素がバ インダ層の表面に分散され,色素溶液にポリマを溶解する溶 媒を用いた場合と比較すると応答性が約 6 – 10 倍向上した(6). しかし,AA-PSP と比べると応答時間は長く,より高い応答 性を示すスプレー型高速応答 PSP を開発する必要がある.本 研究ではさらに応答性を向上させるために色素溶液にナノ 粒子を混合させた結果,応答性を約 3 倍向上させ,陽極酸化 型 PSP に劣らない時間応答を実現させた. 2.実験方法 2.1 PSP サンプルの作製方法 本研究ではポリマ(Poly(iso-propyl methacrylate)(PiPMA))を トルエンに溶解したバインダ溶液と,感圧色素(PtTFPP)とナ ノ粒子(Titanium silicon oxide(TiSiO4))を上記のポリマを溶解 しないメタノールに溶解/混合した色素溶液を作成した.ま ず模型表面にバインダ溶液を塗布し,その上から色素溶液を 塗布し,高速応答 PSP を作成した.従来の方法ではバインダ 溶液にポリマとナノ粒子を添加しているが,本研究ではバイ ンダ溶液にはポリマのみを添加させ,色素溶液にナノ粒子を 添加した点が大きく異なる. 2.2 衝撃波管試験 Fig.1 に本研究で用いた衝撃波管の模式図を示す.まず PSP サンプルを設置し,衝撃波管内をマイラー膜で仕切る.その 後に高圧室を 260 kPa,低圧室を 20 kPa にし,撃針でマイラ ー膜を破膜させ,マッハ数 1.69 の衝撃波を発生させる.発光 強度変化は光電子倍増管(浜松ホトニクス社製 H10721-20MOD)で測定した.また,衝撃波の到達時に発生す る圧力変動をトリガ信号としてオシロスコープ(Tektronix 社 製 DPO2014)で圧力波形を取得し,PSP サンプルの発光強度 変化率が 90 %に達した時間を応答時間 t90%とした. Oscillo scope PCB amplifier DC power PMT PMT amplifier Optical filter High-pressure chamber Needle Low-pressure chamber Shock wave Pressure Transducer Mylar film Specimen Optical filter Excitation light Fig.1 Experimental set up for shock tube testing 2.3 圧力・温度校正試験 PSP サンプルをチャンバ内に設置し,圧力校正試験は温度 を 20 °C 一定にし,圧力を 5 – 120 kPa に変化させ発光強度, 圧力感度を測定した.温度校正試験は圧力を 100 kPa 一定に し,温度を 5 – 60 °C に変化させ温度依存性を測定した. 3.実験結果及び考察 3.1 衝撃波管試験結果 2 種類の異なる粒子混合法のステップ圧力変動のグラフを Fig.2 に,これをもとに求めた応答時間を Table.1 に示す.結 果から,応答時間は粒子をバインダ溶液に添加すると 20.9 µs, 粒子を色素溶液に添加すると 7.4 µs と約 3 倍応答性が向上し たことがわかる.要因として,ナノ粒子を色素溶液に混合し た場合は,ナノ粒子をバインダ溶液に混合した場合と比較し て,ポリマに覆われた粒子の割合が少なくなる.そのためポ リマと接触する色素の割合が少なくなり,色素はより空気に 直接さらされることになる.この違いから,ナノ粒子を色素 溶液に混合した場合の方が応答時間が短くなったものと考 えられる. 3.2 圧力・温度校正試験結果 Fig.3 に圧力校正試験の発光強度の変化を,Fig.4 に 100 kPa 日本機械学会東海支部第 65 期総会・講演会講演論文集(’16. 3. 17-18) No.163-1 1.4 Nanoparticle in binder solution Nanoparticle in dye solution 1.2 1.0 I / Iref 時の発光強度で各圧力の発光強度を無次元化したグラフを 示す.発光強度は粒子をバインダ溶液に添加した時の方が 100 kPa 時の発光強度が約 5 倍高い.これは,感圧色素がよ り表面に付着しており,酸素消光や色素の凝集の影響が大き く出たからだと考えられる.一方,圧力感度はほぼ変わらな いという結果になった.Fig.5 に温度校正試験の 20 °C 時の発 光強度で各温度の発光強度を無次元化したグラフを示す.こ のグラフから,温度感度もほぼ同程度の約 1.10 - 1.25 %/C となった. 0.8 0.6 0.4 Normalized intensity 0.2 1.2 1.1 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 -0.1 0.0 5 20 25 30 35 40 45 50 55 60 Fig.5 Temperature dependence of PSP samples Table.1 Response time by mixing method of PSP samples Mixing Nanoparticle Nanoparticle method in binder solution in dye solution t90% [µs] 20.9 7.4 Nanoparticle in binder solution Nanoparticle in dye solution 0 5 10 15 20 25 30 35 40 Time[µs] Fig.2 Response time of PSP samples 60000 50000 40000 Intensity 15 Temperature[C] -5 Nanoparticle in binder solution Nanoparticle in dye solution 30000 10000 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 Pressure[kPa] Fig.3 Relation between intensity and pressure 1.2 1.0 0.8 0.6 Nanoparticle in binder solution Nanoparticle in dye solution 0.4 0.2 0.0 0 4.結言 スプレー型高速応答 PSP の開発として,ナノ粒子をバイン ダ溶液に添加したサンプルと色素溶液に添加したサンプル で時間応答性と圧力・温度特性を評価した. ナノ粒子を色素溶液に添加すると,バインダ溶液に添加し たサンプルと比べて,時間応答性が約 3 倍高くなることが分 かった.また,圧力感度,温度感度はほぼ変わらないが, 1.0 %/C 以上と高いため改善する必要があることも分かっ た. 100 kPa 時の発光強度を比較すると約 1/5 と低くなった. 今後はバインダ層表面の感圧色素の分散状態を調査,改善し 更に応答性が高く,発光強度も高い PSP の開発を行っていく. 謝辞 本研究を進めるにあたり,北川一敬教授(愛知工業大学工 学部)には,衝撃波管を使用させていただき,貴重なご意見 やご協力を頂きました.厚く感謝いたします. 20000 Iref / I 10 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Pressure[kPa] Fig.4 Pressure calibration curves of PSP samples 110 120 参考文献 (1) Liu, T. et al., “Pressure and temperature sensitive paints”, (2005), Springer. (2) Gregory, J.W. et al., “A review of pressure-sensitive paint for high-speed and unsteady aerodynamics”, Journal of Aerospace Engineering, Vol. 222, (2008), pp.249-290. (3) Sakaue, H. et al., “Characterization and Optimization of Polymer-Ceramic Pressure-Sensitive Paint by Controlling Content”, Sensors 2011, 6967-6977. (2011). (4) Kameda, M. et al., “Unsteady measurement of a transonic delta wing flow using a novel PSP”, AIAA Paper 2008-6418. (2008). (5) Sugimoto, T. et al., “Characterization of Frequency Response of Pressure-Sensitive Paints”, AIAA Paper 2012-1185.(2012). (6) 佐藤優大,小西翔太,山本真也,江上泰広, 「ポリマーセ ラミック感圧塗料の応答性向上に関する研究」 ,第 43 回 可視化情報シンポジウム,可視化情報学会誌 35(Suppl.1), (2015.07), pp.157-160.