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サステイナビリティ データブック 2016|環境への取り組み

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サステイナビリティ データブック 2016|環境への取り組み
er
環 境 へ の 取 り 組 み
燃料電池自動車「MIRAI」が
「第 12 回エコプロダクツ大賞
経済産業大臣賞を受賞
燃料電池自動車量産化の実現や、水素の製造方法により
ガソリン車に比べライフサイクルでの CO2 を約 50%削減する
優れた環境性能が高く評価されての受賞
水素社会の構築
水素社会実現に向けた
地域連携プロジェクトを推進
p.70
工場の水素利用、創エネ、燃料電池自動車による
モビリティ提案など、地域社会と連携した
さまざまな取り組みを推進
H2
ECO
「トヨタ環境チャレンジ 2050」が評価され、
「低炭素杯 2016
ベスト長期目標賞
企業部門大賞」を
受賞
人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ
CO2
「Today for Tomorrow Project」第一弾
0
低炭素社会の実現に向けて
長期的に取り組む姿勢と、
6 つの具体的なチャレンジが評価され、
企業部門 256 社の中から大賞を受賞
国際機関との
協働プロジェクト始動
p.91
IUCN*とパートナーシップを
締結。
「IUCN 絶滅の
おそれのある生物種の
レッドリスト」の充実等に注力
* IUCN(International Union for
Conservation of Nature)
:
国際自然保護連合
新車 CO2 ゼロチャレンジ
ハイブリッド車による
CO2 抑制効果
約 6,600 万トン
ハイブリッド車の世界累計販売台数が
2016 年 3 月末で 890 万台を突破。
同等クラスのガソリンエンジン車に
比較し、CO2 排出量は
約 6,600 万トン抑制*
*トヨタ試算、2015 年度
環境マネジメント
p.64
CO2
6,600万
トン
「グリーン調達
ガイドライン」改定
p.100
サプライヤーと連携した
環境活動のガイドラインを、
「トヨタ環境チャレンジ 2050」を
踏まえ改定
063 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
H 2O
CO2
er01
環境への取り組み| Challenge 1 新車 CO₂ ゼロチャレンジ
新車 CO₂ ゼロチャレンジ
er01_01
基本的な考え方
「地球温暖化」を実証するように、世界中で異常気象による被
までに 2010 年比 90%低減」に挑戦します。このため、エンジ
害が相次いでいます。現状のまま温室効果ガスの抑制策が追加
ン車の燃費向上に加え、より CO₂ 排出量の少ない、あるいは
されないと、
「2100 年には産業革命以前からの世界の平均気
ゼロであるハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車
温が 3.7 ∼ 4.8℃上昇。これを 2℃未満にするためには、CO₂
(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)といった次
の排出をゼロにするだけでなく、マイナスにしなくてはならな
世代車の開発を促進し、普及のさらなる加速を図ります。エコ
い」という報告
*があります。
カーは普及してこそ社会への貢献となります。EV や FCV が普
この 2℃未満のシナリオの実現に向けて世界が動こうとす
る中、トヨタは「新車 CO₂ ゼロチャレンジ」として、
「2050 年
及するためのインフラ整備についても、ステークホルダーの皆
様と連携して進めていきます。
* IPCC 第 3 作業部会第 5 次評価報告書 2014
er01_02
電気エネルギーを利用した次世代車の開発推進とそれぞれの特徴を活かした普及推進
ハイブリッド車のグローバル累計販売台数が 890 万台を突破
1997年12月に世界初の量産ハイブリッド乗用車「プリウス」
を発売以来、2016 年 3 月末の全世界累計販売台数は 890 万台
となりました。
なお、2016 年 3 月末までに販売した HV の CO₂ 排出抑制効
果は、車両サイズおよび動力性能が同等クラスのガソリンエン
ジン車の CO₂ 排出量と比較し、約 6,600 万トン、ガソリン消費
抑制量は、同等クラスのガソリンエンジン車のガソリン消費量
と比較し、約 2,500 万 kL の効果があったと試算しています。
ハイブリッド車による CO₂ 排出抑制効果(トヨタ試算)
1,200
1,000
CO₂抑制量
7,000
累計CO₂抑制量
単位:万トン(折れ線グラフは右目盛り)
6,000
5,000
800
4,000
600
3,000
400
2,000
200
ハイブリッド車累計販売台数
140
120
国内
海外
1,000
累計
’97 ’98 ’99 ’00 ’01 ’02 ’03 ’04 ’05 ’06 ’07 ’08 ’09 ’10 ’11 ’12 ’13 ’14 ’15 ’16
800
700
600
80
500
60
400
300
40
200
20
「CO₂ 排出抑制効果」算出方法
年度ごとの平均燃費差*1 × 年度ごとの保有台数*2 ×
平均年間走行距離*3 × CO₂排出係数
*1 その年度に走行しているHVとそれに相当するガソリン車の燃費の差
JC08モード燃費を実用燃費に換算
*2 毎年販売されたHV台数から、平均車齢を考慮してトヨタで推計したお客様の保有台数
*3 国土交通省「自動車輸送統計」
による乗用車平均年間走行距離:1万km
100
’00 ’01 ’02 ’03 ’04 ’05 ’06 ’07 ’08 ’09 ’10 ’11 ’12 ’13 ’14 ’15 ’16
0
(1~3月)
900
単位:万台(折れ線グラフは右目盛り)
100
0
0
1,000
0
(1~3月)
064 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 1 新車 CO₂ ゼロチャレンジ
er01_03
トップクラスの燃費性能を目指す開発
全体として、2015 年度基準を大幅に達成
● 2015 年度燃費基準は重量別に設定されており、2015 年度は 15 区分中 14 区分で達成、全体では 2015 年基準を上回るレベルで達成
● 2015 年度の新型車、フルモデルチェンジ車 5 車種中 4 車種で 2015 年度燃費基準をクリア
●ガソリン乗用車の燃費基準達成車の生産台数比率は 92%
2015 年度「2015 年度燃費基準」達成状況
2015 年度燃費基準達成状況とトヨタ車の燃費実績
トヨタ車の2015年度平均燃費
(km/L)
40
2015年度燃費基準
各区分でのトヨタ車トップの燃費値
重量区分
燃費基準
2015年度
2015年度 新型車・
(車両重量:kg) (km/L) 平均燃費(km/L) フルモデルチェンジ車の適合車種
601~740
21.8
35.2
30
741~855
21.0
28.6
25
856~970
20.8
23.9
20
971~1,080
20.5
26.8
15
1,081~1,195
18.7
28.4
10
1,196~1,310
17.2
17.2*1
シエンタ、プリウス
5
1,311~1,420
15.8
26.3
シエンタ*2、
シエンタ(HV)
プリウス
1,421~1,530
14.4
23.0
プリウス
1,531~1,650
13.2
18.0
1,651~1,760
12.2
16.9
1,761~1,870
11.1
15.6
1,871~1,990
10.2
11.5
RX(200t)
1,991~2,100
9.4
11.1
RX(200t、RX450h)
2,101~2,270
8.7
13.2
RX(450h)
2,271~
7.4
7.9
35
0
601~ 741~ 856~ 971~ 1,081~1,196~1,311~1,421~1,531~1,651~1,761~1,871~1,991~2,101~2,271~
(重量区分:kg)
主要車種 新旧モデル燃費比較
燃費(km/L)
40
(62)
従来車
新型車
30
(113)
(128) (135)
(142)
20
10
0
(76)
( )の数値は
CO₂排出量
(g/km)
(197)
(255)
RX
RX HV
プリウス
シエンタ
ピクシスメガ
注1: 部分は燃費基準を達成。
注2:*1印は、小数点第2位で区分別基準に未達。
この基準未達による燃料増加量は、
基準達成区分の総燃料削減量に比べ非常に小さく
(0.1%以下)、
全体としては大幅に基準を達成
注3:*2印は、適合車種でも型式および仕様によっては達成していないものがあります。
注4:2014年度以前の達成車は掲載していません。
注5:燃費値はいずれも、国土交通省JC08モード走行諸元値を持つものの平均値です。
注:燃費値はいずれも、国土交通省JC08モード走行諸元値です。
065 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 1 新車 CO₂ ゼロチャレンジ
er01_04
平均燃費の向上
第 5 次「トヨタ環境取組プラン」で、
「2015 年度のグローバ
ル平均燃費 * を 2005 年比 25%向上を目指す」という目標を
ト ヨ タ は 継 続 的 に 燃 費 を 向 上 さ せ CO₂ を 削 減 す る た め、
2015 年 10 月に発表した第 6 次「トヨタ環境取組プラン」で、
掲げ、ハイブリッド車の導入拡大などで燃費向上を図ってきま
「2020 年グローバル新車平均 CO₂ 削減率は 2010 年比 22%
したが、結果、22%の向上にとどまりました。2014 年度には
(燃費では約 28%向上)以上を目指す」という目標を新たに設
23% に到達していましたが、2015 年度は石油価格低下などの
影響で米国向け大型車の販売が伸びたことにより、燃費向上が
足踏み状態となりました。
定しました。
目標達成に向かい、これからも CO₂ 削減(燃費向上)技術を
開発し、各車に展開していく計画です。
*日本・米国・欧州・中国の乗用車が対象
トヨタの日本・米国・欧州・中国における乗用車平均燃費の推移
トヨタの日本における乗用車平均燃費の推移
(%)
(指数)
2.00
5次プラン 2015年度目標
25
20
15
1.50
10
+92%
1.00
’97 ’98 ’99 ’00 ’01 ’02 ’03 ’04 ’05 ’06 ’07 ’08 ’09 ’10 ’11 ’12 ’13 ’14 ’15(年度)
注:1997 年 ハイブリッド車導入後の推移
5
0
’05
’06
’07
’08
’09
’10
’11
’12
’13
’14
’15(年度)
注:第 5 次「トヨタ環境取組プラン」では、燃費目標の基準年を 2005 年度としています。
066 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 1 新車 CO₂ ゼロチャレンジ
er01_05
コラム
“いいクルマ”の新しい価値観。4 代目「プリウス」
世界初の量産ハイブリッド車として誕生した初代発売から 18 年。エコカー時代を切り拓いてきた「プリウス」
がフルモデルチェンジされました。DNA である環境性能はさらに飛躍し、大改良されたエンジンの最大熱効率は
世界トップレベルの 40% を達成。すべての技術が高い壁を越え、燃費性能はガソリン車世界トップクラスです。
チャレンジへの実行へ向け
動きだしたトヨタの新しい
クルマづくり
21 世紀の環境問題に一つの答えを出すハイブリッドシステムの開発
初代「プリウス」のプロジェクトがスター
歴代「プリウス」の燃費と普及の推移
トしたのは 1993 年のこと。21 世紀を代表
するクルマづくりを目指す具体的指標を環境
性能に据え、
「CO₂ 削減」
「エネルギー対応」
「大気汚染防止」という 3 つの課題をキーと
燃費(km/L)
日本JC08モード(km/L)
日本10・15モード(km/L)
して開発。このコンセプトを実現する手段が
40.8km/L
ハイブリッドシステムでした。
※Eグレードの場合
(車両重量1,310kg)
ハイブリッドシステムは、既存の電気自動
車のような外部充電を必要としないため、既
4代目
設のインフラに適合しており、また、従来の
ガソリンエンジンのおおむね 2 倍の燃費達成
29.6
2代目 35.5
が可能なシステムでした。
3代目
※
Lグレード
の場合
「このクルマは世の中を変えるであろう」
という思いのもと、ラテン語の「∼に先立つ」
初代
という意味の〈プリウス〉と名付けられ、た
くさんのお客様にその思いを共感いただき、
支持を得てきました。
以来、ハイブリッド車のアイコンであると
同時に、トヨタの代表車種として地球環境へ
の貢献に努めています。
32.6
38.0
28.0
※1997年
当時
1997.12
DEBUT
国内販売台数
7万台
2003.9
DEBUT
2009.5
DEBUT
2015.12
DEBUT
国内販売台数
国内販売台数
112万台
40万台
(累計47万台) (累計159万台)
注1:燃費消費率は、
グレード・駆動方式・車両重量などにより異なります。
注2:燃費消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。
お客様の仕様環境(気候、渋滞など)
や運転方法(急発進、
エアコン使用時など)
に応じて燃料消費率は異なります。
067 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 1 新車 CO₂ ゼロチャレンジ
「プリウス」の DNA である環境性能の進化と TNGA による変化の二人三脚
4 代目「プリウス」は、持ち前の環境性能の進化に挑むと
(Toyota
ともに、次世代プラットフォーム戦略「TNGA * 」
New Global Architecture)を全面採用した最初の車種です。
そのため、地球環境だけでなく社会環境を含めて、プリウスは
環境を良くしていくという考え方で開発が進められました。
地球環境の点は、徹底的に環境性能を上げていくことに主
眼を置き、走行時の環境負荷をこれまで以上に削減するため
に、燃費目標 40km/L という高いハードルを決め、細かく地
道な技術開発を積み重ねてその達成を目指しました。
社会環境の点では、安全なクルマで事故ゼロに貢献する
ことを目指し、安定した挙動の「低重心パッケージ」や、安全
4 代目「プリウス」開発責任者
チーフエンジニア 豊島 浩二
装備「Toyota Safety Sense P」の設定、災害時に役立つ「外
部給電機能」といった機能を取り入れました。
* TNGA とは、トヨタの「もっといいクルマをつくろう」という想いを実現す
るために考えられたクルマづくりの構造改革。プラットフォームを根本から
見直すことで、もっと「かっこいい」
「運転しやすい」
「低重心」パッケージへ。
「プリウス」は、TNGA 第 1 号車として、基本構造から生まれ変わりました。
「プリウス」販売台数と CO₂ 排出抑制効果
600
エコカーは普及してこそ環境への貢献
2015年
世界のCO₂排出抑制量
約 550 万トン
(万トン)
(万台)
500
エコカーは普及してこそ環境へ貢献します。そのためには、た
くさんのお客様に「プリウス」に乗っていただきたいと思ってい
プリウス世界累計販売台数
400
ます。
「プリウス」というクルマは、初代がハイブリッド車の先駆
けとなり、2 代目がハイブリッド車普及の先駆け、そして 3 代目
がハイブリッド車定着の先駆けとなるなど、いつの時代も先駆け
約 360 万台
300
の存在として挑戦を続け、環境に貢献してきた歴史を持っていま
す。しかし、世界各国に目を向けると、まだまだハイブリッド車
200
が特別なクルマとして見られているのも事実です。そのため、
「プ
リウス」をはじめとするハイブリッド車をこれまで以上に普及さ
100
せるためには、どのようなクルマと比較しても遜色ない仕上がり
にして、お客様の選択肢に入れていただくことが大切です。
4 代目「プリウス」は、環境性能だけでなく、スタイリングも走
行性能も、そして安全面のどこを取っても「いいクルマ」に仕上
がったと思います。欲しいと思っていただいたクルマがたまたま
ハイブリッド車だったと感じていただけるように。
0
’97 ’98 ’99 ’00 ’01 ’02 ’03 ’04 ’05 ’06 ’07 ’08 ’09 ’10 ’11 ’12 ’13 ’14 ’15
(年)
プリウスの 2015 年度の年間 CO₂ 排出抑制量は約 550 万トン(2015 年
12 月末時点のトヨタ試算)で、これは東京都の面積約 3 倍に当たる森林
(6 億本相当)の年間吸収 CO₂ 量と同じです。
「プリウス」の車両は、2代目より豊田市にある堤工場で製造され
ています。この工場は自然を利用し、自然と調和する工場づくりを
目指した「サステイナブル・プラント」のモデル工場です。ここでは
低CO₂生産技術と日常改善による省エネルギーに取り組むととも
に、テニスコート60面分の太陽光パネルで発電した電力を利用し
てCO₂排出量を低減しています。
「エコなクルマは、エコな工場・
エコな人から」を実践している、優しいモノづくりの現場です。
プリウス車両生産の堤工場関係者
068 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 1 新車 CO₂ ゼロチャレンジ
er01_06
コラム
ニューヨーク国際オートショーで新型「プリウス PHV」
(米国名:Prius Prime)発表
2016 年 3 月、ニューヨークで開催された「2016 ニューヨーク国際オートショー」で、2 代目「プリウス PHV」
(米国名:Prius Prime)を公開。さらに進化した PHV システムによる、圧倒的な燃費と環境性能によって、時代
を先駆ける EV 性能を実現します。
世界トップクラスのハイブリッド燃費
従来型の約 2 倍の総エネルギー量を実現した大容量リチ
135km/h(テストコースなどでの計測)となり、エンジンを
ウムイオンバッテリーを搭載することなどにより、満充電
始動させることなく、EV 走行モードで走ることが可能です。
からの航続距離は目標値 60km * 1 以上(現行型 26.4km)
ハイブリッド燃費
に進化しています。また、PHV システムの効率改善により、
通常走行でのハイブリッド燃費は、従来型の 31.6km/L か
ら 37.0km/L にアップしています。
[JC08モード社内測定値]
目標値
さらに、従来の家庭用電源からの充電に加え、充電ス
テーションでの急速充電にも対応。EV 走行での最高速度も
* 1 JC08 モード充電電力使用時走行距離(社内測定値)
EV走行距離
充電電力使用時
走行距離JC08モード
[社内測定値]
37.0km/L
●従来型
「プリウス PHV」
:31.6km/L
●
「プリウス」
:40.8km/L
(E グレード)
37.2km/L
(2WD)
34.0km/L
(4WD[E-Four])
新型「プリウスPHV」
目標値
60 km 以上
従来型「プリウスPHV」
26.4 km
EV最高速度
100km/h
世界初*2 のソーラー充電システム
車両のルーフに搭載した大型ソーラーパネルによ
り太陽光発電し、その電力を駆動用バッテリーおよび
12V バッテリー系統へ供給できます。駐車中は駆動用
バッテリーを充電し、走行中は駆動用バッテリーの消
費を抑えることで、EV 走行距離や燃費の向上に貢献
します。充電スタンドがない場合でも、太陽光があれ
ば駆動用バッテリーの充電が可能となります。
* 2 2016 年 3 月時点(トヨタ調べ)
069 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
EV最高速度
135km/h
(テストコースなどでの計測)
環境への取り組み| Challenge 1 新車 CO₂ ゼロチャレンジ
er01_07
水素社会 の構築へ向けて
∼ 未来のために、いま、踏み出します ∼
環境問題や資源の枯渇など、人類の課題を解決する夢の
かります。それでもトヨタは踏み出したいと思いました。
エネルギーといわれてきた水素。CO₂ フリーの水素がもっ
いままでのエネルギーと共存しながら、より幅広い選択
と社会に取り込まれ溶け込むようになれば、クリーンな社
肢を持てる未来へ。一つのエネルギーに依存するのではな
会が実現できます。しかし、水素社会としての基盤を整え、
く支え合う未来へ。
循環させるためには、いままで以上に社会全体の協力が
100年後、200年後の子どもたちの環境も考えた未来へ。
不可欠です。理想的な水素社会の実現には、長い年月がか
水素社会実現の必然性
CO₂ 排出量ゼロ
水素エネルギーの利用に取り組む
企業も増えてきています
水素は、その使用過程における
H₂O
CO₂ の排出がゼロです。
FCバス
「 H₂ + 1/ 2O₂ → H₂O 」という化学反応には、
明るい未来が示されています。
多様な一次エネルギーからの
製造が可能
H₂
水素は多様な一次エネルギーから製造できます。
家庭用
燃料電池
そのため化石燃料のように枯渇の心配がなく、
安定した供給が期待できます。
地産地消のエネルギー
水素発電所
再生可能エネルギーで得た電気から水素を作り、貯蔵。
必要な時に電気にして利用。
このシステムが確立されれば、離島・過疎地なども地産地消
が進み、エネルギーに関するリスクを抑えることができます。
水素ステーションも、
再生可能エネルギーの変動吸収
e
H₂
再生可能エネルギーの発電量は、自然に大きく左右される
ため、変動が大きくなってしまいます。発電した電気を水
素に置換することで、エネルギーを貯蔵することができ、
また需要に応じた容易な供給が可能となります。
070 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
これから増えていく予定です。
水素
ステーション
H₂ STATION
環境への取り組み| Challenge 1 新車 CO₂ ゼロチャレンジ
水素社会実現に向けたトヨタの中長期ロードマップと活動の進め方
「MIRAI」の市場導入なども手伝い、水素社会実現の機運
トヨタはこうした現状も踏まえ、2030 年を一つのター
は高まっています。しかし、インフラ整備をはじめとする
ゲットに、実証実験から得られた知見をもとに雛型を作成し、
さまざまな課題も多くあります。
水素社会本格普及に向けた取り組みに貢献していきます。
つくりたいのは、もっといい社会。
トヨタの次のチャレンジです。
水素社会拡大のイメージ(2030 年)
海外・遠隔地からの
水素エネルギー
大規模輸送
運搬
バッテリー利用
自サイト発電
液体水素貯蔵
生産工程での
水素直接利用
FCリフト
FCバス
風力
運搬
工場地帯
太陽光
創エネ
水素発電
バイオマス
電気分解
CO₂フリー水素
運搬
着実な水素
活用事例の拡大
EV STATION
EVステーション
FC多用途
モビリティ拡大
PHV・EV
コミュニティ
エネファーム
FC船舶
FC気動車
H₂ STATION
ゼロエミッションビル
FCトラック
FCリフト
FCバス
水素ステーション
FCV
トヨタの当面のミッション
01
FCVの普及を通じて水素社会の実現を目指す
02
国、地域、エネルギー業界と連携し、
仕組みづくりや実証実験に積極的に貢献
活動の方向性とステップ
2016
2020
2025
「水素利用拡大」の仲間づくりを推進
トヨタの
基本的な
取り組み方
実証モデルで
将来のイメージ共有
•東京オリンピック・パラリンピック
•FCモビリティ拡大
•地域・産業界水素利用
将来に
つながる
水素活用
事例拡大
2030
経済的自立化
支援
•ステーションインフラ
の自立化
•CO₂フリー水素
コスト低減
071 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
2040~2050
水素社会本格普及
環境への取り組み| Challenge 1 新車 CO₂ ゼロチャレンジ
er01_08
水素社会実現に向けトヨタが関与する地域連携プロジェクト(国内)
トヨタの生産拠点がある地域で、その地域特性に応じた「実証」や「ショーケース」を地域社会と連携して推進し、水素
社会実現に向けた仲間づくりを促進しています。
2020年ごろのFCV販売目
創エネ
コミュ
ニティ
(福島県)
標は、グローバルで少なくとも
[ トヨタの役割 ]
FCバス、FCリフトなどモビリティ提供
くとも年 間1万 数 千 台 程 度を
東京オリンピック・パラリンピック
次世代モビリティ社会、
クリーンな水素社会モデルを世界に提示。
(東京都)
[ トヨタの役割 ]
年間3万台以上、国内では少な
目指します。
「福島新エネ社会構想実現会議」
(2016年3月発足 経済産業省)
IOCトップスポンサーとしてサポートすると
工場
ともに、FCVやFCバスなどのモビリティを
2020年に
「MIRAI」
生産ラインにおいて
CO₂ゼロ+水素利用実証開始
提供と次世代モビリティ社会の構想支援
(愛知県)
[ トヨタの役割 ]
2050年工場CO₂ゼロを
目指し、水素利用技術を
含めた将来の
工場実証にトライ
2015年7月の東京都における
燃料電池バス実証実験
工場
「愛知県低炭素水素サプライチェーン構築」
愛知 × 大学 × 産業界で検討開始
FCバスは、2016年度中に東
(愛知県)
京 都 を 中 心に導 入 を 開 始し、
[ トヨタの役割 ]
2020年の東京オリンピック・パ
業界のリーダーとして愛知県と連携するとともに、
ラリンピックに向け100台以上
モノづくり地域での水素利用を
をめどに準備中。
グループ各社とともに検討開始
創エネ
工場
「地産地消型グリーン水素ネットワーク」
福岡県主導で産官学連携活動推進
(福岡県)
[ トヨタの役割 ]
トヨタ自動車九州が産業モデルの
代表として工場水素利用の実証に参加
コミュ
ニティ
関西国際空港「KIXプロジェクト」
水素グリッド空港モデル実証
(大規模集中型)
(大阪府)
[ トヨタの役割 ]
京浜臨海部「京浜プロジェクト」
再生エネルギー
水素製造~利用サプライチェーン実証
(中小規模密集型事業所モデル)
(神奈川県)
[ トヨタの役割 ]
トヨタは、水素を利活用する立場で
事業代表者として取りまとめ
トヨタ、豊田自動織機、豊田通商など
各社が持っている水素の知見や、
FC技術で関西国際空港主催の
KIX水素グリッド委員会をサポート
2016年3月、関西国際空港 国際貨物地区において、燃料電池フォークリフト
(FCリフト)実用化モデル2台を新たに導入し実証実験中。累計100台以上の
導入を目指しています。
2016年3月、京浜臨海部における実証プロジェクト開始が発表され、再生
エネルギーで製造したCO₂フリー水素を、
中央卸売市場や工場・倉庫など、
異なった
作業環境でFCリフトに使用するといったサプライチェーンの検証を行い
ます。
12台程のFCリフトを導入して検証を行います。
注:各地域のプロジェクトにより、目的・取り組み内容が異なるため、トヨタの役割は異なります。
072 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
FCリフト
er02
環境への取り組み| Challenge 2 ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ
ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ
er02_01
基本的な考え方
純粋にクルマが走行して排出する CO₂、またクルマ製造時に
材料にもこだわった環境配慮設計の取り組みを今後さらに加速
排出される CO₂ だけでなく、クルマの材料製造や廃棄・リサイ
し、
“もっといいクルマ”を追求していきます。例えば、製造時の
クルの段階まで含めて排出される CO₂ をゼロにしようというの
CO₂ の排出量が少ない材料の開発、使用拡大や、材料の使用量
が「ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ」です。
と部品数の削減を進めます。また、廃棄・リサイクル段階の CO₂
例えば、次世代車の中には走行時の CO₂ は減るものの、素材
や車両製造での CO₂ は増えてしまうものがあります。そのため、
排出量を削減するために、リサイクル材などの使用の拡大やク
ルマの解体を容易にする設計を一層進めていきます。
er02_02
製品開発における環境マネジメントの推進(Eco-VAS)
LCA で新型車・フルモデルチェンジ車全 5 車種を評価
「プリウス」の LCA 評価
[ 目的 ]
車両の生産、使用、廃棄まですべてのプロセスを通じ、総合
的な環境性能を評価する Eco-VAS * 1 の中で、素材製造、車両
製造、走行、メンテナンス、廃棄まですべての段階で環境への
CO₂指数
1.0
廃棄・リサイクル
メンテナンス
影響を評価する LCA * 2 を実施しています。
Eco-VAS では、開発初期段階から目標値を設定し、着実に環
ハイブリッド効果
約-45%
0.8
境パフォーマンスを高めていくため、チーフエンジニアが開発
企画段階で環境性能ごとに目標値と達成シナリオを策定し、開
発プロセスを通して目標の達成状況をフォローし、着実な達成
走行
車両製造
素材製造
0.6
を図ります。
* 1 Eco-VAS(Eco-Vehicle Assessment System)
* 2 LCA(Life Cycle Assessment)
:ライフサイクルアセスメント
[ 2015 年度の進捗 ]
新型車・フルモデルチェンジ車 5 車種(
「シエンタ」
「プリウス」
0.4
0.2
「ピクシス メガ」
、レクサス「LX」
「RX(200t、450h)
」
)について
LCA を実施しました。
0
トヨタが乗用車を対象に実施している LCA の
手法は、ドイツの第三者認証機関テュフ ライ
ンランドによる ISO14040/14044 規格に基
づく審査・認証を受けました。
当社2.0L
ガソリン車
「プリウス」
2009年
発売モデル
「プリウス」
2015年
発売モデル
注:自動車の生涯走行距離10万km
(10年)
をJC08モードで走行した場合の
結果です。LCA評価結果は指数で示しています。
073 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 2 ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ
er02_03 への対応
Scope3
Scope3 は、自社および連結会社以外のバリューチェーン
Scope3 で定められた 15 のカテゴリーと排出量比率
(購入した製品・サービス、輸送、出張、通勤、販売した製品の
使用など)からの間接的な温室効果ガス排出量を見える化する
ために設けられた算定基準です。
この基準で算定した排出量の比率を見ると、
「カテゴリー 1.
購入した製品・サービス」と「カテゴリー 11.販売した製品の
使用」を合わせた比率は、約 97%と非常に大きく、その他のカ
テゴリーはおのおの 1%未満となりました。
「カテゴリー 1.購入した製品・サービス」は、自動車を構成
する資材や部品の製造段階であり、
「カテゴリー 11.販売した
製品の使用」は、自動車の走行段階に当たるので、部品の軽量
化や材料選定、燃費向上技術や次世代車技術開発などが排出量
削減に通じる重要な方策になることが分かります。
カテゴリー
排出量比率
1. 購入した製品・サービス
16.0%
2. 資本財
0.9%
3. Scope1、2 に含まれない燃料
およびエネルギー関連活動
0.2% 4. 輸送、配送(上流)
0.1% 未満
5. 事業から出る廃棄物
0.1% 未満
6. 出張
0.1% 未満
7. 雇用者の通勤
0.2%
8. リース資産(上流)
―
9. 輸送、配送(下流)
0.1% 未満
10. 販売した製品の加工
0.3%
11. 販売した製品の使用
81.2%
12. 販売した製品の廃棄
0.9%
13. リース資産(下流)
―
14. フランチャイズ
―
15. 投資
0.1%
注 1:カテゴリー 14 は対象外。カテゴリー 8 は Scope1,2 に含み、
カテゴリー 13 はカテゴリー 11 に含みます。
注 2:排出量比率は、2014 年度の算出値から算定。
er02_04
物流活動における輸送効率の追求と CO₂ 排出量の低減
CO₂ 排出量低減活動を継続
2015 年度は、積載率向上活動、モーダルシフト、物流パー
しましたが、遠距離輸送増の影響もあり、排出量は 275 千ト
トナーと一体となった燃費向上活動の継続などに取り組みま
ンとなりました。仕事量(トンキロ)当たりの CO₂ 排出量は、
した。こうした取り組みにより、CO₂ 排出量を 6 千トン低減
108.4g-CO₂/ トン・km となりました。
TMC 物流 CO₂ 排出量の推移(国内)
TMC 物流での CO₂ 把握範囲
(千トン)
450
日本国内
440
400
改善分
▲6
350
298
300
290
ボデー
メーカー
’12
’13
部品
センター
完成車
補給部品
完成車
278
275
’14
’15
当初見込み
276
国内
販売店
(年度)
国内
共販店
ver3.0」
(経済産業省・国土交通省)
などを使用しています。
Web
http://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/environment/
data/conversionfactor.pdf
港
海外域内
注:CO₂換算係数は、
「ロジスティクス分野におけるCO₂排出量算定方法共同ガイドライン
換算係数についてはウェブサイトをご覧ください。
物流センター
(梱包工場)
生産部品 輸入品
お客様
’90
内製工場
(組立ユニット)
物流量増など
5
250
0
直送品
生産部品
サプライヤー
取り組み範囲
現状管理範囲
管理体制充実化を
推進中
074 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
お客様
港
海外
販売代理店
サプライヤー
物流
センタ-
工場
er02_05
環境への取り組み| Challenge 2 ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ
仕事量(トンキロ)当たりの TMC 物流 CO₂ 排出量の推移(国内)
CO₂ 排出量低減の改善取り組み結果
(g-CO2/トン・km)
改善の
切り口
目標
実績
130
商品
127.2
総輸送距離
の低減
109.6
106.7
106.6
配船変更による
動線短縮など
1.9
生産部品
荷姿の改善、
ルート再編など
3.8
補給部品
積載率向上、
ルート見直しなど
0.3
’12
’13
108.4
100
0
’06
低減量
(千トン)
完成車
120
110
主な改善内容
’15
’14
合計
6.0
(年度)
各国・各地域で CO₂ 排出量把握、低減活動継続
海外については、2007 年度より各国・各地域で CO₂ 排出量
また、2016 年度から、海外で発生する CO₂ 排出量の開示に
把握を開始しました。2013 年度からは、
「グローバル目標ガイ
向け、各国・各地域での CO₂ 排出量の算出方法を調査し、精度
ドライン」を明示し、各国・各地域はそれをベースに目標を設
アップを目指しています。
(公表は 2017 年度版の報告書より)
定し、低減活動に取り組んでいます。
コラム
トヨタカローラ岩手向け車両の岩手工場中継廃止に伴う輸送距離短縮
これまで、トヨタカローラ岩手向けの車両は出荷台数が少なかったため、仙台港で陸揚げされた車両はいったん
岩手工場に運ばれ、そこでロットを形成してから、トヨタカローラ岩手に送っていました。
2015 年度は、トヨタカローラ岩手向けの車両輸送が増加したため、仙台港陸揚げ分は岩手工場を中継せず、
直接輸送するルートに変更しました。この変更により、仙台港→岩手工場→トヨタカローラ岩手の輸送距離
188km を仙台港→トヨタカローラ岩手 133km へと 55km 削減することができました。この削減により、年間の
CO₂ 排出量は 37.3 トンから 26.4 トンとなり、年間約 11 トンの低減効果がありました。
改善前
改善後
トヨタカローラ岩手
トヨタ自動車東日本
61km
トヨタカローラ岩手
トヨタ自動車東日本
岩手工場
岩手工場
133km
127km
仙台港
輸送距離
CO₂
排出量
仙台港 ➡
仙台港
岩手
トヨタ
➡
工場
カローラ岩手
127km 61km
37.3トン/年
188km
輸送距離
CO₂
排出量
仙台港
➡
トヨタ
カローラ岩手
133km
26.4トン/年
075 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
効果
133km
55km
-11トン
環境への取り組み| Challenge 2 ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ
er02_06
地域グリッドエネルギーマネジメント技術の展開による地域社会への貢献
地域と工場が一体となった安全で安心なまちづくり「F- グリッド構想」
トヨタは、東日本大震災を契機とするエネルギー課題(セキュリティ性、環境性、経済性)の解決、および東北支援に向けて、
工場を中心とする新しいスマートコミュニティに取り組んでいます。
2015 年 10 月、
「F- グリッド宮城・大衡有限責任事業組合」が、非常時地域送電システムの運用を開始しました。
「F- グリッド」については、P24 も併せてご覧ください。
er02_07
道路交通セクターにおける統合的な CO₂ 低減取組の推進
WBCSD を通じたタイ・バンコク市における渋滞解消プロジェクト「サートンモデル」
WBCSD * で Sustainable Mobility Project を 立 ち 上 げ、
6 都市で実証プロジェクトを推進。トヨタがリーダーである
バンコクでは、トヨタ・モビリティ基金の助成を受け、産官学
と市民の協力で交通需要平準化と交通流改善を進め、渋滞を
緩和するモデルづくりを進めています。
2015 年 11 月には、取り組みに参画する約 70 社のトップ
マネジメントによるリーダーフォーラムを開催し、より多くの
人の参画を得てきました。現在は大規模社会実験をモデル道路
[ 社会実験で実証された施策 ]
パーク&ライド:15 箇所のパーク & ライド駐車場開設。
2016 年 6 月時点の利用者数 504 人/日
シャトルバス:2 学校への導入と企業会員制バスの試験導入
フレックスタイム:11 社、4,410 人への導入
最適交通手段選択支援アプリケーション開発:
アプリケーションダウンロード数 3,308 人
交通流ボトルネック対策:18 施策の実証(最も効果が高い地点では
13% の交通流率向上、27% の旅行速度向上)
交通流マネジメントの実証実験
であるサートン道路にて開始、23 施策の効果を実証。今後、
タイ政府とともにこの取り組みをバンコク全域に広げるための
ロードマップ作りを進めていきます。
* WBCSD(World Business Council for Sustainable Development)
Kiss & Go
リバーシブルレーン
(親が子どもを車で送る際、降ろす箇所を分散)(対向車線内、1 車線の流れる方向を変更)
「トヨタ・モビリティ基金」については、P141 も併せてご覧ください。
コラム
サプライヤーとの密な連携による環境保全活動
台湾の生産事業体 国瑞汽車株式会社は、ISO14064 1 により温室効果ガスの排出量を把握しています。今回
新たに ISO50001 を認証取得し、エネルギーパフォーマンスの可視化によって、エネルギー効率の改善に努め
ています。
調達に関しては、サプライヤーと密に連携し、環境保全活動を進めています。主な活動としては、サプライ
ヤーミーティングを毎年開催し、KPI の策定、目標達成に向けた毎月のフォローアップなどを行っています。ま
た、5 年間でコストを 30%削減する TTT30(Team Taiwan Toyota
Cost Reduction 30% during 5 years) に向けた改善活動を推進。
サプライヤー委員会の活動として、CO₂ 削減の指導、改善アイデアの
普及、改善事例の共有、ベストプラクティスの共有を図っています。
そのほか、サプライヤー向けに KPI フォームを作成しモニタリン
グを簡易化したり、CO₂ 削減指導として地方自治体の省エネ活動に加
わり、新規手法の勉強会に全サプライヤーを招いたりなど、調達に
関する徹底した取り組みを展開しています。
076 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
2015 年サプライヤーミーティング
er03
環境への取り組み| Challenge 3 工場 CO₂ ゼロチャレンジ
工場 CO₂ ゼロチャレンジ
er03_01
基本的な考え方
クルマは走行時に CO₂ を排出するだけでなく、製造時にも
ギーの利用効率を向上させることでも、排出 CO₂ を削減でき
CO₂ が排出されます。そのため、気候変動を抑えるための CO₂
ます。 さらに、エネルギーを使わない「からくり」を導入する
抑制は、クルマを製造する工場のチャレンジ目標にもなりま
など、ありとあらゆる手段で CO₂ を減らします。
す。工場の CO₂ 排出ゼロは、製造技術の改善と利用エネルギー
変更の 2 本柱で取り組みます。
使用エネルギー側の取り組みとしては、太陽光や風力発電な
ど再生エネルギーの利用、水素エネルギーの活用で、CO₂ を削
まず、製造技術としては、製造工程のシンプル化、スリム化
減していきます。
により工程や時間を短縮し CO₂ を削減します。また、エネル
er03_02
生産活動における CO₂ 排出量の低減
生産活動における CO₂ 排出量の低減活動を継続
トヨタ自動車(TMC)の CO₂ 排出量の低減は、生産拠点と、
新工場・ラインの立ち上げ時には革新技術を導入し、CO₂ 排出
オフィスなどの非生産拠点を合わせた目標を設定して取り組ん
量の低減を推進しています。STM(タイ)および GTE(中国)
でいます。
の新ラインにおいて、ラインのシンプルスリム化を図り、また
2015 年度は、蒸気レスの推進や省エネ活動を実施したこ
既存工場においても、蒸気レス化やエアーレス化に継続的に
とにより、CO₂ 年間排出量は 115 万トン(1990 年度比 45%
取り組んでいます。結果、2015 年度の CO₂ 年間排出量は 757
減)
、生産台数当たりの CO₂ 排出量は 0.408 トン / 台(2001 年
万トン(前年度比 2.8%減)、生産台数当たりの CO₂ 排出量は、
度比 44% 減)となりました。
0.744 トン / 台(前年度比 1.2%減)となりました。
グローバルについては、5カ年プランの目標達成に向けて、
TMC 使用エネルギー別熱量構成比率
A重油 2.3%
灯油 0.2%
LPG 0.02%
電力 68.5%
都市ガス 29.0%
軽油 0.02%
077 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
er03_03
環境への取り組み| Challenge 3 工場 CO₂ ゼロチャレンジ
TMCCO₂ 排出量(エネルギー起源)と
生産台数当たりの CO₂ 排出量の推移
CO₂総量(万トン)
220
200
211
194
グローバルCO₂排出量(エネルギー起源)と生産台数当たりの
CO₂排出量の推移(工場・オフィスなど固定発生源)
生産台数当たりのCO₂排出量(トン/台)
CO₂総量(万トン)
非生産部門のCO₂排出量
900
1.5
生産部門のCO₂排出量
800
180
700
160
140
0.731
120
116
120
118
1
115
400
80
0.5
60
’90
’01
’12
’13
’14
779
757
アジア、豪州、
中近東、
南アフリカ、
中南米
2
1.174
300
北米
1
0.770 0.757 0.753 0.744
欧州
中国
日本
(除くTMC)
TMC
0.5
100
20
0
784
1.5
200
0.415 0.414 0.413 0.408
40
759
600
500
100
701
生産台数当たりのCO₂排出量(トン/台)
0
’15 (年度)
0
’01
’12
’13
0
’15 (年度)
’14
注1:非生産拠点で1990年度の排出量を把握できない場合は、それ以降で把握できた
最も古いデータを使用しました。
注2:CO₂排出量は、2011年度までは、生産部門、非生産部門(バイオ・緑化研究所、
福利厚生施設を除く)
を対象としていました。2012年度からは、非生産部門に
バイオ緑化研究所を追加しました。
注3:CO₂換算係数は、1990年度の経団連係数を使用しています。
注1:TMCおよび国内外連結会社など 121社
国内 : P97 1~5グループ対象会社〔孫会社を含む(豊田通商を除く)〕
海外 : P97 生産および生販一体会社
注2:2001年度の排出量を把握できない拠点は、それ以降で把握できた最も古いデータを使用しました。
注3:CO₂換算係数は、GHGプロトコルを使用して算定しました。
注4:過去の数値に誤りがあったため訂正しました。
換算係数についてはウェブサイトをご覧ください。
換算係数についてはウェブサイトをご覧ください。
Web
Web
http://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/environment/
data/conversionfactor.pdf
http://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/environment/
data/conversionfactor.pdf
再生可能エネルギーの利用促進
2008 年 3 月、堤工場に定格出力 2,000kW(戸建住宅 500 軒分相当)の太陽光発電システムを導入しています。2015 年度は
1,737MWh の電力を発電しました。
コラム
上郷工場 国内外車両エンジン製造過程における CO₂ 排出量低減活動
従来、生産で使用するエアーと蒸気は、工場中央で集
を洗浄するため、水切りエアーのノズル形状や配置を最
中管理し、各生産ラインに送られていました。そのため、
適化し、個別ブロワ化することによりエアーの使用量を
休憩時間や休日のような非生産時には、送気ロスなどが
削減しました。
発生していました。
蒸気については、各建屋出入口の熱風カーテン方式を
そこでエアーについては中央の集中大型コンプレッ
止め、遮風シートの設置やシャッターの開閉タイミング
サーを廃止し、小型のコンプレッサーを必要な設備の横に
を調整することにより、屋内の温度低下が防止でき、蒸
設置することで(インライン化)
、生産と連動した送気ロス
気の使用量を大幅に減らすことができました。
の少ない圧縮エアーを使用することが可能となりました。
また、機械加工したエンジン部品に付着している切粉
これらの改善活動により CO₂ 排出量を、年間約 4,500
トン低減することができました。
エアーコンプレッサーのインライン化
ブロワ化
従来
従来
大型集中コンプレッサー
(連続運転、送気ロス発生)
大型集中コンプレッサー
今回の改善
小型インラインコンプレッサー
(生産連動、送気ロスミニマム)
CO₂ 低減効果
〈エアー低減効果〉 〈蒸気低減効果〉
(%)
100
コンプレッサー
廃止
高圧流量小
生産ライン
(加工)
生産ライン
(加工)
生産ライン
(組付)
生産ライン
(組付)
今回の改善
75
50
50
25
25
改善後
078 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
0
-71%
改善前
低圧高流量
改善後
個別小型コンプレッサー
改善前
他の建屋へ送気
(%)
100
75
0
ブロワ
-38%
環境への取り組み| Challenge 3 工場 CO₂ ゼロチャレンジ
エコ・ファクトリー活動を 5 工場で実施
新工場建設・生産能力の増強などのプロジェクトを対象に、
エコ・ファクトリー活動
その地域で No.1 の工場を目指す、環境対策を確実に織り込む
インド
ネシア
GTE
TMCAP
企画
設備仕様監査
[ 2015 年度の進捗 ]
タイ、中国の 5 工場でエコ・ファクトリー活動を行いました。
現物監査
コンプライアンス、
2016
リスク評価
2016
パフォーマンス評価
(CO₂、VOC等)
2017
2017
:能増P/J( 2013年度~)
:~2014年度実施済み
コラム
GTMC
第3工場
確実に織り込む活動です。
TFTM
新工場
物」でチェックし、不具合がある場合には是正し、環境対策を
中国
ブラジル
TDB
新エンジン
計画、トライ、操業の各段階で、環境配慮の織り込みを「現地現
タイ
STM
第2工場
TMMIN
新エンジン
エコ ・ ファクトリー活動を継続しています。これは、企画・設備
2016
:2015年度実施済み工場
数字のみ:今後の実施予定年度
地元埋立処分場から得られたグリーン電力を利用した生産
有機物が微生物によって分解されるとガスが発生し
ランドフィルガスを利用した発電システム
ます。なかでも、ゴミの埋立処分場から発生するもの
を、ランドフィルガスと呼び、セルロース由来のバイ
オ燃料として認められています。
「アバロン」
「カムリ」などを生産する TMMK(米国・
ケンタッキー州ジョージタウン市)では、地元の埋立
処分場から発生するランドフィルガスを利用して発電
埋立処分場
した電力を利用しています。このプロジェクトは、ケ
ンタッキー州で廃棄物の運搬および処分サービスを
行っている Waste Services of the Bluegrass との
協働によるもので、ランドフィルガスをエネルギー
に変える、この地域では初のビジネスモデルです。
TMMK から 6.5 マイル離れた埋立処分場から地下送
地下送電線
電線を引き、2015 年 11 月に稼働を始めました。試算
では、米国平均消費量に換算すると約 800 世帯分に
相当する毎時 1MW の電力を生成し、クルマ 1 万台の
生産量に相当する電力を発電します。ゆくゆくは毎時
工場
10MW の電力を生成するものと見込んでいます。さ
らに、埋立処分時の温室効果ガス排出量は、90% 削減
することができます。
環境戦略部長のケビン・バットの声
このランドフィルガスの生成方法は、当社のカーボ
ンフットプリントを減らすための今後 35 年間の取り
組み姿勢を示すものです。小さな一歩ですが、偉大な
一歩だと思っています。
079 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
er04
環境への取り組み| Challenge 4 水環境インパクト最小化チャレンジ
水環境インパクト最小化チャレンジ
er04_01
基本的な考え方
2050 年、世界の総人口は 91 億人、水の需要は現在より 55%
これまでトヨタでは、雨水貯留による工業用水利用量削減、
増加、その影響で水不足に悩まされる人は全人口の 40%にも達
ろ過装置による水の再利用率向上、排水リサイクルによる水の
する*、といわれています。クルマの製造では塗装工程などで水
再利用と排水域より高い水質で地域に還すことを推進してきま
を使用します。そのため、水環境へのインパクトを少しでも減
した。水環境の特性は、地域によって大きな違いがあります。
らさなくてはなりません。対策としては、
「使用量を徹底的に削
今後は地域の要請に合った水環境への対応を世界に広げていき
減」と「徹底的に水をきれいにして還す」の二つがあります。
ます。
*トヨタ調べ
er04_02
生産活動における水使用量の低減
水使用量低減活動を継続
トヨタ自動車(TMC)においては、2015年度も生産工程での
地道な節水活動に取り組んでいます。特に水資源の厳しい地域
3
蒸気使用量を低減する活動などにより、総使用量は10.9百万m
では、水のリサイクルの促進などにより、2015 年度の総使用
(前年度比 5.1% 減)
、生産台数当たり使用量は 4.7m3/ 台(前年
量は 29.3 百万 m3(前年度比 5.4%減)、生産台数当たりの水使
用量は 2.7m3/ 台(前年度比 9.0%減)となりました。
度比 4.2% 減)となりました。
グローバルについては、各国・各地域の水環境事情に応じて、
TMC 水使用量と生産台数当たりの
水使用量の推移
水使用量(百万m3)
18
グローバル水使用量(車両組立工場)と
生産台数当たりの水使用量の推移
(m3/台)
生産台数当たり水使用量(車両組立工場)
9.0
水の総使用量(全社)
16
14
12
8.0
11.5
11.5
11.6
11.5
10
8
4.9
4.8
4.9
4.9
6
7.0
10.9
4.7
6.0
15
2
1.0
’12
’13
’14
0
’15(年度)
注1:水総使用量は、生産部門、非生産部門(福利厚生施設除く)
を対象としています。
注2:生産台数当たり水使用量は、車両組立工場の生産台数当たり原単位を示しています。
注3:過去の数値に誤りがあったため訂正しました。
28.5
29.2
31.2
31.0
7.0
29.3
25
4.0
2.0
’11
30
5.0
3.0
生産台数当たり水使用量(m3/台)
35
20
4
0
水使用量(百万m3)
5.0
4.8
4.0
3.2
10
3.1
3.0
3.0
2.7
5
0
6.0
2.0
1.0
’01
’12
’13
’14
0
’15 (年度)
注1:TMC(車両組立工場)および国内外連結会社など 37社
注2:2013年度より対象会社を追加しました。
080 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
アジア、豪州、
中近東、
南アフリカ、
中南米
欧州
中国
北米
日本
(除くTMC)
TMC
環境への取り組み| Challenge 4 水環境インパクト最小化チャレンジ
コラム
排水を利用した多様な水辺環境の創出 ― 水質の改善がもたらす新たな命 ―
国内工場では、工場から出る排水を徹底的に処理
(懸濁物の沈殿、ろ過、バクテリアによる有機物の分
解など)したきれいな水を、放流水として川に戻す活
動を長く続けています。
「クラウン」などを生産する元町工場内にある環境
センター * では、2015 年より排水処理後の放流水を
活用したビオトープづくりを進めています。周辺で
は、これまで地域在来種の苗木を育成し、5 年ほど前
から従業員と家族で数千本の木々を植樹してきまし
排水処理設備
た。このビオトープでは、既にトンボのヤゴや蝶の幼
虫が観察されています。これは、放流水の水質が地域
の生態系に受け入れられたうれしい報告です。なかで
もトンボは、水質や流速に応じて、生息する種類が異
なるといわれています。育った木々は、トンボの隠れ
家や蝶の産卵場になります。元町工場は豊田市の市街
地にありますが、きれいな流水の指標となるハグロト
ンボも既に森の中で確認されており、今後たくさんの
ヤゴが育つことを期待しています。
コラム
環境センターのビオトープ
植樹エリア内で確認された
ハグロトンボ
*環境センターは、トヨタの工場などで発生する可燃性の廃棄物から得られ
るエネルギーを、元町工場で活用するプラントです。中では低炭素、資源循
環、自然共生に関するさまざまな実験的取り組みが行われています。
住民の衛生・生活環境改善に寄与する地下水浄化設備の導入
インドでは、多くの人々が水道以外の水(主に地下
水)を飲用に使用しています。WHO の調査によれば、
なう持続可能な仕組みも構築されました。現在約 8 万
5,000 人に利用されています。
インドで発症する伝染病の 21%は水が原因と推測さ
れ、安全な飲み水を作るための衛生設備を設置するこ
とは、地域発展のための基本的要件になっています。
そこでインドの生産事業体 TKM は、2014 年から
地域要請への対応、健康的なコミュニティづくりの
支援のため、地下水浄化設備の導入を推進し、現在は
TKM のあるビダディをはじめインド全土に計 10 機
が設置されています。この設備は、RO 膜*などを使っ
た 6 つのろ過工程と紫外線照射によって、地下水を IS
10500(飲料水に関するインドの規格)に適合する
水質へと浄化します。これにより住民は市価の 10 分の
1 できれいな水を購入でき、売り上げで運営費をまか
浄水施設開所式の様子
* RO(Reverse Osmosis)膜:水を通しながら水以外の不純物や微粒子を
通さない性質を持った膜
081 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
er05
環境への取り組み| Challenge 5 循環型社会・システム構築チャレンジ
循環型社会・システム構築チャレンジ
er05_01
基本的な考え方
世界的に人口が増加し、経済発展や利便性追求により、資源消費
理想的な資源循環社会(サーキュラーエコノミー)を実現するた
のスピードが上がっています。このまま大量採掘が続けば資源は
めには資源効率向上のため、
「エコな素材を使う」
「部品を長く使う」、
枯渇し、大量消費によって廃棄物が増えれば、適正な処理が追いつ
また自動車産業全体で「リサイクル技術の開発」
「廃車されるクルマ
かず環境汚染につながります。
からクルマを作る」の 4 本柱で取り組む必要があります。
そのため、世界各地に「自動車解体施設」を設け、環境負荷なく適
切に回収・処理する社会システムの構築を目指す「Toyota Global
100 Dismantlers Project」を立ち上げ、推進していきます。
究極の循環型社会の実現を目指し、世界各地で使用済み自動車
の資源が再びクルマを製造する際の資源として活用できるよう、
「Toyota Global Car to Car Recycle Project」を推進していきます。
er05_02
再生可能資源・リサイクル材活用による枯渇天然資源の使用量低減
植物由来のエコプラスチックの開発・活用
トヨタは、植物由来の樹脂であるエコプラスチック*を、世界で初めてクルマ用途に開発し、こうした植物由来の樹脂のさらなる
適用部位拡大につながる技術開発・実用化を推進しています。
*エコプラスチック:植物由来のため、成長時に CO₂ を吸収、石油資源採掘時などの CO₂ 排出、石油資源の使用量削減にも貢献
コラム
バイオ合成ゴムを原料としたエンジン・駆動系ホースを世界初採用
日本ゼオン株式会社、住友理工株式会社とともに共同開
由来のバイオ原料に替えて製造したものです。2016 年 5 月
発したバイオ合成ゴム「バイオヒドリンゴム*」を、世界で
から順次適用し、年内には国内生産の全車種に採用する予
初めてバキュームセンシングホース(エンジン・駆動系ホー
定です。今後はブレーキ系ホース、燃料系ホースなどの特殊
ス)に採用しました。
ゴム部品にも採用拡大を目指します。
バイオヒドリンゴムは、ホースなどに使われる「ヒドリン
ゴム」の原料の一部である「エピクロロヒドリン」を植物
原料となるアブラヤシ
バイオエピクロロヒドリン
*バイオヒドリンゴムは大気中の CO₂ を吸収しながら生長した植物を原料
とすることで、従来の石油系ヒドリンゴムに比べて製造から廃棄までのラ
イフサイクルで CO₂ 排出量を約 20%抑制可能とします。
バイオヒドリンゴム(ポリマー)
バキュームセンシングホース
パーム油の原料となるアブラヤシに化学処理を施して、バイオディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステル)を製造する際、副産物としてバイオグリセリンが産出されます。
このバイオグリセリンを活用してバイオエピクロロヒドリンを製造します。
(植物由来原料としての RSB(ROUNDTABLE ON SUSTAINABLE BIOFUELS)認証を確認済み)
082 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 5 循環型社会・システム構築チャレンジ
er05_03
資源回収しやすい「易解体性トップレベル」の実現
車両解体性向上の取り組みを設計に反映
使用済み自動車の資源循環を推進するために、解体事業者
操縦安定性、振動やふらつきの少ない快適な乗り心地などを
を実際に訪問し実情を調査した上で、解体しやすく分別しやす
実現するために低重心化パッケージが用いられ、低フード化に
い構造を研究開発し、新型車両に積極的に採用しています。
よりボンネットは先代よりも 100mm 低く、エンジンルームは
2015 年 12 月、
「もっといいクルマをつくる」を合言葉に、
狭くなっています。しかし、スペース上相反するワイヤーハー
トヨタの新しいクルマづくりのコンセプト「TNGA」を初採用
ネスの引き剥がし作業においても、先代と同等の性能を維持。
した 4 代目「プリウス」が発売されました。TNGA では、優れた
車両解体性においてもさらなる向上を目指しています。
解体しやすい車両構造
ハイブリッド車用バッテリーの
重量部品の取り外し
「プリウス」からさらに部品の取外し
時間を削減。新たに解体性向上マーク
を付け、重い部品をバランスよく吊り
出せるようにしました。
ドアトリムの引き剥がし
従来より引き剥がし荷重を30%低減
できるポイントを割り出し、解体性向
上マークを付けました。
ワイヤーハーネス
プルタブ式アース端子部採用
組み付け状態
解体時
ワイヤーハーネス配置の工夫
ワイヤーハーネスが他部品に干渉する
ことなく引き剥がすことができます。
引き剥がし
方向
薄肉部
より分離
インストルメントパネルの
取り外し
V字ミゾの設置によりインパネ部分を
強く引っ張ると容易に取り外せるように
しています。
「解体性向上マーク」の採用
解体作業のきっかけとなるポイントに
「解体性向上マーク」
を付けました。
er05_04
廃車資源に対するオリジナルリサイクルシステムの海外展開
販売店・部品共販店で着実なリサイクル推進
日本国内の販売店・部品共販店では、従来より、バンパー、鉛
バランスウエイトなど修理交換済みパーツの回収・リサイクル
を進めるなど、車両の使用時にも可能な限りリサイクルを推進
しています。また、リビルト部品や中古部品の販売や、タンク
ローリー車のオイル運搬でのドラム缶削減などの省資源化の活
2015 年度 修理交換済みパーツの回収・リサイクルの実績
バンパー
80.9万本(回収率69.4%)
鉛バランスウェイト
28.8トン
タンクローリー車によるバルク方式給油量
部品共販店販売量の63.4%
動も推進しています。
FC 専用部品のリサイクルシステム構築
2014 年 12 月に販売を開始した「MIRAI」については、水素
また、
「MIRAI」に搭載されている FC スタックには希少価値
タンクを適切に処理するため、
「適正処理関連マニュアル」を自
の高い白金などの金属が使用されています。そのため、
「MIRAI」
動車解体事業者に提供しています。さらに、ガス抜きからガス
の発売に合わせ、世界初となる FC スタックの回収・リサイクル
容器のクズ化までで、技術的なサポートをしています。
の仕組みを立ち上げました。
083 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 5 循環型社会・システム構築チャレンジ
コラム
「MIRAI」の水素タンクのリサイクルを欧州で開始
燃料電池自動車「MIRAI」は欧州でもリース販売を
再生材として使用するなど現地でリサイクルできるよ
開始しています。そのため、使用済みの水素タンクを
うになります。
適切に処理する必要があります。リサイクルの実用化
に向け、現地において、そのための実験を進めてきま
した。このたび、適切にリサイクルするめどが立ち、
現地企業にリサイクルの委託契約をする段階となりま
した。今後、欧州で廃車になる「MIRAI」の水素タンク
は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を取り出して
CFRP 水素タンク
熱分解処理
使用済みバッテリーのリサイクル促進
1997年12月に世界初の量産ハイブリッド乗用車「プリウス」
また太陽光発電用の定置式蓄電池への再利用です。
を発売以来、トヨタは、独自の回収ネットワークを構築して使
廃車のバッテリーを上手に再利用し、エコな再生エネルギー
用済みバッテリーのリサイクルに取り組み、2016 年 3 月末時
活用も進めています。再利用が終わった後は、金属素材リサイ
点で約 5 万 5,300 台を回収し、全量リサイクルしています。
クルでもう一度新しいバッテリーに使います。
ハイブリッドバッテリーには、ニッケル・コバルト・レア
アースなどの貴重な資源が含まれています。トヨタは貴重な資
ハイブリッド車用
バッテリー
源をもう一度新しいバッテリーに戻す、世界初となる「Car to
Car リサイクル技術」を開発しています。
STEP 1
修理交換用のプリウス
バッテリーとしてリユース
STEP 2
また、使用済みバッテリーは 2020 年代には数万個の発生が
リユース(再利用)
リサイクル(資源循環)
見込まれているため、使用済みバッテリーを再利用する技術も
開発しました。修理交換用バッテリーとして再利用する技術、
HV使用済み車
HVバッテリー回収
太陽光発電用の
蓄電池システムにリユース
STEP 3
レアメタルへリサイクル
HV モーターからのネオジム、ジスプロシウムの回収
HV モーターで使用する磁石には、レアアースのネオジムとジス
ターから磁石を分離する設備を導入し、リサイクル技術を確立しま
プロシウムが含まれています。トヨタは、こうしたレアアースを極
した。2012 年 2 月以降、累計で 20 トンの磁石を回収しています。
力使わないモーターの研究開発を進めるとともに、磁石メーカー
2015 年度は、三和油化工業株式会社と協力し、回収したネオジ
と連携し、抽出したネオジム、ジスプロシウムを新品の磁石に循
ム、ジスプロシウムを触媒の添加剤として再生する新たなリサイ
環させる Car to Car リサイクルシステムを始めています。2012、
クルルートを開発しました。この開発により、磁石から磁石への
2013 年度には豊田メタル株式会社、豊通リサイクル株式会社が
リサイクルルートに新たなルートが加わり、リサイクルの多角化
新エネルギー・産業技術総合開発機構の実証事業支援を得て、モー
が可能になりました。
ワイヤーハーネスの銅資源を、Car to Car リサイクル
電線や送電線に使われる銅は、可採年数があと 40 年程度と
よび同社と取り引きのある中部地区解体事業者 7 社と連携し、
いわれています。一方、新興国における送電線需要の増大、今
Car to Car リサイクルの技術開発を進めてきました。2013
後さらに普及が見込まれるハイブリッド車などの次世代車は、
年 か ら は 本 社 工 場 内 の 実 証 ラ イ ン で 再 生 銅 の 生 産 を 開 始。
モーターを搭載し、銅が多く使われます。そのため、自動車業
2014 年には銅を安定的に生産できるめどが立ち、銅のリサイ
界では銅を使用するワイヤーハーネスのリサイクルが大きな
クル技術開発が完了しました。
課題です。
2013 年 4 月以降、累計 127 トンのワイヤーハーネスを回収
そこでトヨタは、矢崎総業株式会社、豊田通商株式会社お
しています。
084 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 5 循環型社会・システム構築チャレンジ
コラム
解体事業者と連携した資源循環研究の推進
トヨタは、豊田通商株式会社および同社と取り引き
中部地区解体事業者 7 社(順不同)
のある中部地区解体事業者 7 社とともに、
「資源循環
会社名
研究会(通称:SJK)」を立ち上げ、ワイヤーハーネス
や樹脂部品などの廃車資源を有効に活用する研究を
2010 年から継続して行っています。
所在地
ニュー岩田株式会社
愛知県一宮市三ツ井
城北自動車興業株式会社
愛知県春日井市勝川町
株式会社三利
愛知県豊田市竹町
有限会社森田車輌
愛知県半田市旭町
株式会社山内商店
愛知県稲沢市片原一色町
小林商店
三重県津市安濃町
有限会社丸大産業
長野県伊那市西春近
タングステンのリサイクル
クルマ以外のレアメタルリサイクルとしては、超硬工具など
電気工業株式会社と連携し、2010 年に確立しました。トヨタ
に使用されているタングステンのリサイクルがあります。タン
の工場で発生する使用済み超硬工具を分別回収し、タングステ
グステンは全量輸入の資源で、超硬工具の刃先部の 8 割に使用
ンを 100%回収・再資源化しています。2016 年 3 月末までに、
されています。このタングステンのリサイクルシステムを住友
約 129 トンのリサイクルを実施しています。
er05_05
日本で培った廃車適正処理による国際貢献
国内の自動車リサイクル法への対応を確実に実施
法(2005 年 1 月施行)への対応を着実に推進しています。使用
TMC のリサイクル実効率* 2
および ASR 再資源化率の推移(国内)
済み自動車から発生するフロン類、エアバッグ類、ASR * 1 の引
100
解体・リサイクル事業者との連携のもと、自動車リサイクル
き取りを行い、リサイクルを実施しています。
(%)
97
2015 年度、ASR の再資源化率は 97%、車両換算したリサイ
クル実効率* 2 は 99%を達成しています。
99
99
93
94
99
99
99
96
97
97
TMCの
リサイクル
実効率
(車両換算値)
TMCのASR
再資源化率
85
* 1 ASR(Automobile Shredder Residue)
:使用済み自動車の破砕処理後に出る廃棄物
* 2 リサイクル実効率:解体・シュレッダー工程までで再資源化される比率約 83%
(2003/4 合同会議報告書より引用)に、残りの ASR 比率 17%× ASR 再資源化率
97%を合算して算出
2015年度
法定基準 70%
70
60
’10
’11
’12
’13
’14
’15(年度)
海外の自動車リサイクル法への対応
中国においては中国環境委員会の下部組織、
「リサイクル対
の使用済み自動車の解体モデル工場」を目指す工場が北京で開
応ワーキンググループ」が現地事業体と提携し、法動向の把
所し、2015 年度は約 2 万台を解体処理しました。将来的には、
握や現地インフラ調査など、現地の法対応を推進しています。
自動車リサイクル法の施行など中国社会の法整備の進展に合わ
「Toyota Global 100 Dismantlers Project」の第 1 拠点とし
せ、中国国内の他地区への展開も検討しています。
て、2014 年 2 月に豊田通商グループが 32%出資した、
「中国
085 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 5 循環型社会・システム構築チャレンジ
er05_06
生産活動における排出物の低減と資源の有効利用
廃棄物低減活動を継続
2015 年度のトヨタ自動車(TMC)の廃棄物低減活動につい
グローバルについては、こまめなコスト低減とリンクした
ては、鋳物集じんダストの低減や汚泥の減容化などの廃棄物
廃棄物低減活動を継続的に取り組んでおり、その結果、2015
低減対策を継続して実施してきました。廃棄物量は 35.2 千ト
年度の廃棄物総排出量は 461 千トン(前年度比 3.1%減)、生
ン(前年度比 2.0% 減)、生産台数当たり廃棄物量は 12.5kg/ 台
産台数当たりの廃棄物量は 45.3kg/ 台(前年度比 1.4%減)と
(前年度比 0.1% 減)となりました。
なりました。
グローバル廃棄物量と生産台数当たりの廃棄物量の推移
TMC 廃棄物量と生産台数当たり廃棄物量の推移
廃棄物量(千トン)
78.4
80
生産台数当たり廃棄物量(kg/台)
廃棄物量(千トン)
埋立廃棄物
35
600
30
500
焼却廃棄物
70
60
逆有償リサイクル
29.5
50
25
40
33.9
30
35.9
35.9
35.2
20
15
20
10
0
12.1
12.4
12.5
’12
’13
’14
’01
12.5
0
’15(年度)
注1:廃棄物量は、生産部門、非生産部門(福利厚生施設除く)
を対象としています。
注2:生産部門における廃棄物の集計は生産活動に伴うものを対象にしています。
注3:逆有償リサイクル:費用を支払いリサイクルするもの。
464
487
生産台数当たり廃棄物量(kg/台) 5次プランからの
80 新たな廃棄物指標
逆有償リサイクル*
494
475
70 +焼却+埋立
461
60
400
300
53.0
200
49.4
50
47.7
46.0
45.3
30
100
0
40
’11
’12
’13
0
’15 (年度)
’14
アジア、豪州、
中近東、
南アフリカ、
中南米
欧州
中国
北米
日本
(除くTMC)
TMC
* 逆有償リサイクル:費用を支払いリサイクルするもの。
注:TMCおよび国内外連結会社など 121社
国内 : P97 1~5グループ対象会社〔孫会社を含む(豊田通商を除く)〕
海外 : P97 生産および生販一体会社
er05_07
物流活動における梱包包装資材の低減と資源の有効利用
梱包・包装資材低減活動を継続
梱包・包装資材の使用量低減には、梱包仕様のスリム化お
7.36kg/m³ となりました。
よび出荷容器のリターナブル化などの改善に、継続して取り
なお、2008 年度より各国・各地域で使用量把握を始め、北
組んでいます。こうした取り組みにより、低減量は 1.2 千トン
米以外はほぼ実施済みです。北米は、仕入先使用分の把握が難
となり、さらに物量変動などの影響もあり、総量は 50.9 千ト
しく、把握方法を調整中です。
ンとなりました。出荷容積当たりの梱包・包装資材使用量は、
TMC 梱包・包装資材使用量の推移(国内)
出荷容積当たりの TMC 梱包・包装資材使用量の推移(国内)
(kg/m3)
(千トン)
10.0
60
目標
実績
11.0
70
56.8
56.0
当初見込み
55.7
56.3
51.7
50
50.9
9.63
9.0
改善分▲1.2
8.0
物量変動など▲3.6
7.0
7.23
6.97
6.98
’13
’14
7.36
6.0
0
’11
’12
’13
’14
’15
(年度)
0
’06
086 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
’12
’15 (年度)
環境への取り組み| Challenge 5 循環型社会・システム構築チャレンジ
梱包・包装資材使用量低減の改善取り組み結果
改善テーマ
スリム化など
リターナブル化
商品
低減量(千トン)
主な改善内容
荷姿改善、
リユースなど
0.1
包装仕様スリム化
0.3
生産部品
収容数向上、梱包仕様の簡素化など
0.3
補給部品
リターナブル容器の適用拡大(品目拡大)
0.5
生産部品
リターナブル容器の適用拡大(品目拡大)
0.03
補給部品
合計
コラム
1.2
廃棄物削減に向けた、バンパーカバーやスクラップパーツのリサイクル実証活動
米 国 ト ヨ タ の 部 品 物 流 部 門 で あ る NAPO(North
実証活動として、まずトヨタの 2 大パーツセンター「カリ
American Parts Operations)で は、破 損 し た バ ン
フォルニア州オンタリオ」と「ケンタッキー州ヘブロン」で
パーカバーやスクラップパーツをリサイクルすることで、
試行され、プログラム導入後 15 カ月で、焼却するか埋め立
廃棄物削減に努めています。この取り組みは、ビジネスパー
て処分されていたクロスとフォームを 4 万ポンド以上リサ
トナーである BPS(Boles Parts Supply)との協働のもと、
イクルする効果を得ました。
2014 年に考案した「National Scrap Program」と呼ばれ
さらに、シンシナティ、ロサンジェルス、サンフランシス
る手法を用いて、これまで再利用ができなかったパーツを
コ、ポートランドにあるトヨタの部品共販センター(parts
さまざまなサイズのプラスチックペレットに加工し、再利
distribution centers)6 拠点でもプログラムを導入し、それ
用するものです。
まで再利用できなかった 92%のパーツ 8 万 8,000 ポンド
運び込まれた破損バンパーカバーなどがプラスチックペレットに再生されるまで
以上をリサイクルすることができました。
NAPO は、2015 年度のリサイクル率が前年比 3%向上
BPS は現在、トヨタの廃棄物のうち 14 種類以上のパーツ
し、なかでもカリフォルニア州オンタリオのパーツセン
のリサイクルに成功しており、再生ペレットは、ファブリッ
ターにおけるリサイクル率は 11%向上と、大幅な改善が見
クメーカーやほかのクルマのバンパーを製造するベンダー
られたことを確認しました。
向けにも販売され、新品の車両パーツの部材として再利用
されています。
本プログラムは、残りの部品共販センターでも 2017 年度
の終わりをめどに導入することを検討中です。
NAPO のプログラムマネージャーであるジュリアナ・
ディー氏は、
「National Scrap Program 導入により、廃棄
物が削減でき、リサイクル率も向上しています。また、新品
BPS 社長の
ジェリー・ボールス氏
パーツをこれ以上調達しなくても済むので資源削減にも効
環境へ真摯に向き合い、取
果的です。ゴミとして捨てられていたモノに新たな命を吹
り組みを進めているトヨタの
き込むことができたこの取り組みに対し非常に喜ばしく思
手助けができたこの成功事例
います」と話します。
を誇りに思います。
087 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
er06
環境への取り組み| Challenge 6 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ
人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ
er06_01
基本的な考え方
人と自然が共生していくためには、各地域の豊かな森や自然
を守っていかなくてはなりません。しかし、世界では森林伐採
が進み、1 年間で日本の国土 14%分の森林が失われています*。
トヨタのグループ各社では、地域ごとの「いい町・いい社会」
を実現するために、工場の森づくり、周辺の環境保全運動、環
境教育を進めてきました。今後も、これまでの知見をグループ、
地域、団体の活動につなぎます。
*トヨタ調べ
活動の輪を“地域・世界・未来”へ広げる 3 つの「つなぐ」プロジェクト
2008 年 3 月、トヨタは COP10 *に先駆けて、トヨタ『生物
多様性ガイドライン』
(自主方針)を取りまとめました。ガイド
ラインは、生物多様性に関する取り組みの基本的な考え方と、
3 つの取り組み項目(①技術による貢献、②社会との連携・
取り組みの基本的な考え方
生物多様性の重要性を認識し、
トヨタ基本理念に基づき、住みよい地球・
豊かな社会の実現と、その持続的な発展を目指し、自動車・住宅事業、新規事業、
社会課題への貢献などにおいて、生物多様性に取り組みます。
協力、③情報開示)で構成されており、このガイドラインに
沿ってさまざまな活動を展開してきました。
今回「トヨタ環境チャレンジ 2050」公表に合わせ、このガ
イドラインをトヨタグループ各社とも共有し、3 つの「つなぐ」
プロジェクトを立ち上げました。
技術による貢献
トヨタはバイオ・緑化技術、環境技術などの
可能性を追求することにより、
生物多様性と企業活動の
両立を目指します。
* COP10:第 10 回国連生物多様性条約締約国会議
● Toyota Green Wave Project
「地域をつなぐ」
● Toyota Today for Tomorrow Project 「世界とつなぐ」
● Toyota ESD Project
社会との連携・協力
トヨタは、政府・国際機関・NPOなど、
生物多様性に関係する
社会の幅広い層との連携・協力関係を
構築することを目指します。
「未来へつなぐ」
088 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
情報開示
トヨタは企業活動と両立する
生物多様性に関する自主的取り組みや
成果を開示することにより、
広く社会と共有し、
もって持続可能な
社会の発展に寄与することを目指します。
環境への取り組み| Challenge 6 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ
er06_02
各事業所・各地域の活動を“地域とつなぐ”自然保全活動の推進
「Toyota Green Wave Project」
(地域をつなぐ)
トヨタやグループ各社は、これまでも単独で地域ごとの「い
い町・いい社会」を実現するため、工場の森づくり、周辺の環境
保全などを進めてきました。こうしたさまざまな活動を「つな
ぐ」取り組みが「Toyota Green Wave Project」です。この
©NPO 法人 表浜ネットワーク
プロジェクト推進の受け皿として、トヨタグループで「オール
トヨタ自然共生ワーキンググループ」を立ち上げ、各地域の自然
共生活動の企画・推進や新しい評価ツール開発、情報発信に
よる社会の認知向上など具体的な活動を開始しました。
愛知県田原市 表浜海岸アカウミガメ産卵地保全(2016 年 4 月)
世界各地で
活動をつなぐ
中国 TMEC 植樹活動(2016 年 5 月)
コラム
愛知県豊田市 矢作川河川敷竹林伐採(2016 年 4 月)
オールトヨタ自然共生ワーキンググループ 第1回「活動をつなぐ」
:千年希望の丘 植樹祭に参加
2016 年 5 月 28 日、宮城県岩沼市で行われた「第 4 回千年
希望の丘 植樹祭」へ、オールトヨタ自然共生ワーキンググ
ループで参加しました。東日本大震災で被害を受けた沿岸部
に、10km の緑の堤防を造り、避難場所と減災を図った自然
との共生プロジェクトです。
今回活動に賛同した 20 社・72 人と、トヨタ環境活動助成
プログラム支援 NPO「どんぐりモンゴリ」の 103 人・合計
175 人が参加し、東北の種から愛知で育てた苗約 2,500 本を
植樹しました。個々で活動してきたオールトヨタ各社が工場
の森づくりで培った植樹ノウハウを生かし、初めて一致団結
した、第 1 回「つなぐ」活動です。トヨタ自動車東日本を含む
地元企業も参加し、愛知と東北の活動をつなぎました。
今後もさらに「活動をつなぐ」輪を広げていきます。
「ALL Toyota Green Wave Project」冊子発行
2016 年 6 月、社内の意識を高めるために環境月間に合わせ
パンフレットを作成し、従業員に配付。Green Wave Project
の意義や生物多様性の大切さ、グループ各社の取り組み事例を
紹介し、従業員の活動への参加意識向上や横断的な協力の重要
性を啓発しています。
Web
http://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/environment/challenge6/green_wave/
089 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 6 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ
工場の森づくり(サステイナブル・プラント活動の推進)
モノづくりに持続可能の概念を取り入れ、2007 年より「プ
リウス」を生産する堤工場をモデル工場として「サステイナブ
ル・プラント活動」に取り組んでいます。コンセプトは「自然を
活用し、自然と調和する工場づくり」で、エネルギー低減・エネ
ルギー転換・地域交流、生態系保全に取り組んでいます。
そのなかでも、世界各地の従業員・家族・地域の皆様の延べ
5 万人で進めてきた工場の森づくりは、2015 年、累計 85 万本
の森となり、いまや各国とも、森が成長するに伴って、在来の
貞宝工場(左:2014 年植樹会、右:植樹後 2015 年撮影)
生物も飛来し、多様な生物が繁殖するなど、自然や生き物を育
む拠点となってきています。
2015 年度は、貞宝工場で 440 本を植樹し、累計で 3,600 本、
元町環境センターは従業員 130 人が 1,850 本を植樹し、累計
で 1 万 5,478 本となりました。また中国の TMEC でも植樹会
を実施しました。
在来種のアラカシ、スダジ
イなど、従業員が 3 年の月日
を要してドングリ(種)から
育て上げた苗木は、国内 12 工
場が行ってきた植樹会にも約
3 万本提供してきました。
苗木を育てた従業員
2016 年 5 月に行われた元町環境センターの植樹会の様子
er06_03
健全な森づくりと木材資源を活用する
「トヨタ三重宮川山林」プロジェクト
2007 年、トヨタは三重県多気郡大台町の山林 1,702ha を
取得。森林の持つ多様な機能の最大化を目指して整備を開始し
される森づくりと伝統的な木造住宅の工法を学ぶ体験学習」を
開始しました。
ました。併せて、現場や情報管理にクルマづくりのノウハウを
導入。データに基づく森林管理や整備の低コスト化、作業の
安全性向上などに取り組んできました。2015 年度には、自社
施設(トヨタ会館、トヨタ博物館)の改装に際し、当地産木材が
採用されました。
また、2014 年度より、より多くの人々に森と人とのつながり
を伝えるため、環境学習を開始。2015 年度には、新たに地元
の高校、地域住民と協働で、高校生を対象とした「木材が生産
整備された山林
トヨタ会館での木材利用
er06_04
自然・生物多様性保全を“世界へつなぐ”環境活動への助成の強化
「Toyota Today for Tomorrow Project」
(世界とつなぐ)
トヨタは、これまで「トヨタ環境活動助成プログラム」や中
できるようなプロジェクトや、新しい価値を創造し、世界の環
国・フィリピンにおける植林活動など、内外の環境 NGO との
境活動が進むようなプロジェクトを率先して立ち上げ、社会全
協働活動を行ってきました。長年継続してきた活動助成を、今
体を牽引していきます。
後はさまざまなグローバル団体とも協働し、社会を大きく牽引
090 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 6 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ
er06_05
Today
for Tomorrow Project 第一弾「国際機関との協働プロジェクト」始動
2016 年 5 月、IUCN(International Union for Conservation
of Nature:国際自然保護連合)と、民間企業初となる新たなパー
トナーシップ契約を締結。IUCN が進める世界共有のデータ
ベース「IUCN 絶滅の恐れのある生物種のレッドリスト」の強
化と、生物多様性の重要性の認知向上に協働で取り組むことを
発表しました。2016 年は約 120 万ドルの助成を実施。
「国際機関との協働プロジェクト」については、
『環境報告書 2016』
(P8)も併せてご覧ください。
トヨタ環境活動助成プログラム
[ プログラムの概要・目的 ]
[ これまでの助成実績 ]
トヨタ自動車は、世界初の量産型ハイブリッド車の発売や環境マネ
ジメントシステムの構築、環境情報の積極的な開示などが評価され、
1999 年に国連環境計画(UNEP)から「グローバル 500 賞」を受賞し
ました。この受賞を契機に、環境分野での課題解決と、次世代を担う
人材育成の一助にしようとの思いから、2000 年度より民間非営利団
体などの環境活動を支援するため助成プログラムを実施しています。
プログラム開始以来 16 年間で、世界 53 の国と地域で 304 件を支援。
活動対象
地域
2015 年度
累計
*
アジア・
太平洋
北米・
中南米
アフリカ
欧州
日本
5
1
3
1
16
26
98
20
28
10
148
304
* 2000 ∼ 2015 年度(助成テーマ:生物多様性、地球温暖化)
[ 助成プロジェクトの事例紹介 ]
ギニア | 野生チンパンジーの分断化された生息域を植林でつなぐ「緑の回廊」
緑の回廊
ギニア共和国ボッソウのチンパンジーは、生息域となる森
の流行により、チンパン
林が断片化し、他群との遺伝的交流が極めて難しい状況と
ジーの激減が懸念され
なっています。本プロジェクトでは、ボッソウと世界自然遺産
ますが、国際チームの編
のニンバ山との間を隔てるサバンナ地区に植林を施し、チン
成や人材交流の活発化、
パンジーが往来できる環境を整えて、絶滅危惧種の保全に取
各種シンポジウムでの
り組んでいます。
啓発活動とともに、今後
これまでに累計 2 万 2,000 株の苗木を植林し、その効果を
検証する生育調査も実施しました。ギニアでのエボラ出血熱
は植林作業のスピード
アップを図ります。
ギニア・ボッソウの野生のチンパンジー
日本 | 青少年と官学民産協働で作る『やつしろ・子ども自然と遊び図鑑』で地元の生態系を守る
次世代のためにがんばろ会
熊本県八代市の球磨川河口にあり、絶滅危惧Ⅰ類の生物が多
く生息する貴重な干潟を保全するために、
「青少年と官学民産
プロジェクトチーム」を結成、市内の高校生が主力となり、自
然環境を大切にする人づくりに取り組んでいます。取り組みの
一つとして、さまざまな地元功労者にヒアリングを重ね、
『やつ
しろ・子ども自然と遊び図鑑』を作成しました。
昔と現在の暮らしのあり方を比較、整理していくことによっ
て、プロジェクトチーム自体の知識や意識を向上させることが
できました。図鑑を活用した学習会や、同じく高校生自ら作っ
合計
地元功労者への呼びかけと、
ヒアリングによってでき上がった
『やつしろ・子ども自然と遊び図鑑』
た「希少生物カルタ」を教材としたカルタ大会などを通して、
地元の自然環境に対する意識向上を目指しています。
091 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
希少生物カルタ大会
環境への取り組み| Challenge 6 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ
er06_06
環境活動を“未来へつなぐ”環境教育貢献の強化
「Toyota ESD Project」
(未来へつなぐ)
環境保全活動を「未来へつなぐ」ためには、
「人づくり」が重
要です。そのため Toyota
ESD * Project
では、
「地域に適した
サステイナブル人材育成を促進」する活動を進めています。
国内では、トヨタ白川郷自然學校が開校 10 周年を機に「こ
どもキャンプ」などに力を入れています。新研究開発施設では
保全活動とともに、地元中学との環境学習プロブラムを実施。
海外では、トヨタタイランド新エコラーニングセンターで
環境学習プログラムを準備中です。ほかにも、トヨタグループ
の工場や人材などのリソースを生かした環境教育も進めてい
きます。
* ESD(Education for Sustainable Development)
:持続可能な開発のための教育
er06_07
自然の叡智を大切に、
地域に根差した環境教育プログラムを広く展開する「トヨタ白川郷自然學校」
世界遺産白川郷にある「トヨタ白川郷自然學校」は、環境教
育普及を目的に 2005 年 4 月に開校。2015 年度の年間宿泊者
数は 1 万 6,959 人と過去最高を達成しました。海外からも多く
の方が訪れ、延べ来場者数は 17 万 2,000 人となりました。
開校 10 周年に当たり、2015 年 6 月 14 日に記念式典を開催
し、白川村や社内外の関係者を招き、4 月に就任した山田新學
校長が 10 年間の歩みと今後の活動方針(キーワード:「共育」
を通して「共生」につながる人づくり)を表明しました。
また、当學校の「こどもキャンプ」を含む活動プログラムが
評価され、文部科学省が主催する平成 27 年度「青少年の体験
活動推進企業表彰 審査委員会奨励賞」を受賞しました。エコ
や自然との共生を考えるきっかけづくりから、共に育ち、育て
合掌家屋を協力して建てる
田舎暮らしキャンプ
合う「共育」へ発展させ、
「自ら考え、行動する」ことのできる
境キャンプ
人づくりに取り組んでいます。
雪のオリエンテーリング
恐竜の眠る秘
森を育む体験活動
10 周年記念式典
森づくりを通して持続可能な社会づくりに貢献する「トヨタの森」
豊田市における 45ha の社有林を、里山をモデルとして整備。
地域の学童を中心とした幅広い層に向けて、環境学習の場を
提供しています。
2015 年度は新たに当地に生息する「ムササビ」を題材とした
シンポジウムを開催。全国から集まった方々と、有識者の講演、
フィールドワークなどを通して、相互に学ぶ機会となりました。
こうした長年の活動が認められ、10 月に秋篠宮同妃両殿下
ご臨席のもと、
「みどりの社会貢献賞」を受賞しました。
柿を使った小学校の体験学習
巣箱を利用するムササビ
「トヨタの森」については、P111 も併せてご覧ください。
092 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 6 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ
コラム
北米全拠点を挙げた、草原生態系の指標種「オオカバマダラ」の保護活動
花を咲かせる植物の多くは、花粉を運んでくれる生
て、南はメキシコまで移動しています。保護活動に向
き物「送粉者」の力を借りて種をつくります。花粉を
け、この移動・越冬習性を利用し、渡りの中継地とな
おしべからめしべへと運ぶ送粉者は、蜂や鳥、コウモ
れるよう、北米工場の多くで敷地内や周辺地域に野生
リ、蝶などさまざまです。さらに草花だけでなく、多
の草花やトウワタを植栽しています。野生の草花は成
くの作物もこの送粉活動に依存しています。しかし、
虫に花蜜を与え、トウワタは幼虫のエサや棲みかとし
ミツバチをはじめとする送粉者の生息数は世界的に減
て使われます。
少しており、生物多様性の観点からもその保護が喫緊
の課題となっています。
各工場では、既にオオカバマダラの飛来が確認され
るようになっており、トヨタの施設がその渡りの一助
その送粉者の一つでもあり、北米を南北に移動し、
となっています。さらに、ケンタッキー州の生産事業
草原生態系の指標種として知られるオオカバマダラ
体TMMKでは、近隣の小学校にトウワタの種を配
(通称:モナーク蝶)は、北米における個体数が過去
り、オオカバマダラの観察方法を伝えており、生息地
20 年の間に 90%も減少しており、絶滅の恐れも出て
の広がりに期待をしています。
います。そこでトヨタは、北米 2 万 1,000 エーカーの
これらの活動は、連邦政府や州政府から、生態系
土地に「送粉者の住処」(pollinator garden) を造る
保護の優秀な取り組みとして表彰されており、また、
ことを決めました。
NPO 団体「Wildlife Habitat Council」より、
“Wildlife
オオカバマダラは、北はカナダからアメリカを通っ
at Work”の認証を受けています。
北米施設の場所とオオカバマダラの渡りの経路
●:トヨタ関連施設
©1998 WWW.MONARCHWATCH.ORG
オオカバマダラ
従業員の手にとまるオオカバマダラ
TMMMS のポリネーターガーデン
093 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 6 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ
er06_08
コラム
新研究開発施設の自然・地域との共生に向けた取り組み
トヨタは、持続可能な次世代モビリティの開発のた
め、豊田市と岡崎市にまたがる地域に新しい研究開発
施設の建設を進めています。この事業においては「自
然と共存し地域と調和するテクニカルセンター」をコ
ンセプトに、事業予定地の約6割の面積を保全エリア
として残し、地域の皆様とともに森林と谷津田の再生
やその管理を行っています。また、それら取り組みの
状況やここで得られた新しい知見など、積極的に情報
新研究開発施設の全体図
公開をしています。
2015 年度の進捗① 野鳥の保全活動∼オシドリが巣箱を利用
事業予定地では、鳥類の保全を目的に、繁殖用の巣箱を設置しています。鳥類の中には、繁殖に利用できる樹洞
(木のうろ)が少なくなっていることが理由となって生息数が減少していると考えられる種もいます。事業予定地
には、樹洞の形成が期待できる老齢樹林を目標とした保全エリアも設定してい
ますが、実際に自然の樹洞ができるまでには長い時間が必要です。
そこで 2012 年度に、この地域で減少が心配されるオシドリ、フクロウ、ブッ
ポウソウ、キバシリの 4 種を対象に、樹洞の代わりとなる巣箱を設置するプロ
グラムを保護団体と協働で立ち上げました。その結果、2014 年度には 2 つがい
のフクロウによる巣箱利用を確認。2015 年度には、愛知県での繁殖記録が少な
いオシドリが巣箱を利用し、ヒナの巣立ちが確認されました。
保全対象種と選定理由
オシドリ
地域的に営巣可能な環境が減少し
ているなかで、事業地周辺で生息
が確認されている。
ブッポウソウ
地域的に繁殖事例が非常に少ない
なかで、事業地内で生息が確認さ
れている。
フクロウ
巣箱を利用するオシドリ
地域的に営巣可能な環境が減少し
ているなかで、事業地内で生息が
確認されている。
キバシリ
写真提供:愛知県企業庁
地域的に繁殖事例が非常に少ない
なかで、事業地内で生息が確認さ
れている。
2015 年度の進捗② 情報発信冊子 新たに「カエル」が仲間入り 全 5 冊に
トヨタは、事業予定地の里山環境を象徴する重要な生きものについて冊子に
まとめ、イベントでの配布やトヨタウェブサイトで公開しています。2015 年度
には、カエル類に関する冊子を新たに発行しました。事業予定地やその周辺で
見られるカエルたちについて、すでに知られている特徴に加え、鳴き声などの
調査を通して新たに分かった彼らの一年間の様子などを、写真や図表、平易な
文章で、楽しく紹介しています。
同時に、既刊の下記 4 種の冊子についても、内容の更新を行いました。このう
ちミゾゴイ冊子は、2016 年 6 月に環境省より公表された「ミゾゴイ保護の進め
方」で、参考文献の一つに取り上げられています。
トノサマガエル(メス)
(環境省レッドリスト:NT(準絶滅危惧種)
)
Web
http://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/environment/challenge6/biodiversity/#learning05
094 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
er07
環境への取り組み|環境マネジメント
環境マネジメント
er07_01
基本的な考え方
環境についての理念と方針は、1992 年に制定された「トヨタ
ています。
基本理念」
(1997 年改訂)のもと、環境に対する取り組み方針
こうした理念・方針に基づき、2015年度には、トヨタとして
を「トヨタ地球環境憲章」
(1992 年制定、2000 年改訂)として
初めての環境取り組み長期ビジョン「トヨタ環境チャレンジ
定め、全世界の連結事業体 559 社で共有しています。
2050」を策定。2016 年度より第6次「トヨタ環境取組プラン
2011 年に発表した「トヨタグローバルビジョン」の中で環境
については、
「地球環境に寄り添う意識を持ち続けること」とし
(2016 ∼ 2020)
」を開始し、2050 年に向けて社会とともに持
続的に発展できるよう取り組んでいきます。
トヨタ環境取り組みの体系
トヨタ基本理念
●1992年制定、1997年改訂
トヨタ地球環境憲章(環境の基本方針)
トヨタグローバルビジョン
●1992年制定、2000年改訂
各種環境政策・指針
トヨタ環境チャレンジ2050
トヨタ環境取組プラン(5カ年)
2006~2010年度 第4次プラン
2011~2015年度 第5次プラン
各環境委員会(製品・生産・資源循環)
2016~2020年度 第6次プラン
年度方針、計画
er07_02
トヨタ地球環境憲章
Ⅰ. 基本方針
Ⅱ. 行動指針
1.豊かな21世紀社会への貢献
1.いつも環境に配慮して
豊かな21世紀社会へ貢献するため、環境との調和ある成長を
目指し、事業活動の全ての領域を通じて、ゼロエミッションに
挑戦します。
2.環境技術の追求
環境技術のあらゆる可能性を追求し、環境と経済の両立を実現
する新技術の開発と定着に取り組みます。
3.自主的な取り組み
未然防止の徹底と法基準の遵守に努めることはもとより、地球
規模、及び各国・各地域の環境課題を踏まえた自主的な改善
計画を策定し、継続的な取り組みを推進していきます。
4.社会との連携・協力
関係会社や関連産業との協力はもとより、政府、自治体を始め、
環境保全に関わる社会の幅広い層との連携・協力関係を構築
していきます。
・・・生産・使用・廃棄の全ての段階でゼロエミッションに挑戦
(1)
トップレベルの環境性能を有する製品の開発・提供
(2)排出物を出さない生産活動の追求
(3)未然防止の徹底
(4)環境改善に寄与する事業の推進
2.事業活動の仲間は環境づくりの仲間
・・・関係会社との協力
3.社会の一員として
社会的な取り組みへの積極的な参画
(1)循環型社会づくりへの参画
(2)環境政策への協力
(3)事業活動以外でも貢献
4.よりよい理解に向けて
・・・積極的な情報開示・啓発活動
Ⅲ. 体制
経営トップ層で構成する
コーポレート企画会議による推進
095 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み|環境マネジメント
第 5 次「トヨタ環境取組プラン」
第5次「トヨタ環境取組プラン」は、2011 年度からの 5 カ年
の活動計画と目標を定めたものです。
活動を整理しました。
「低炭素社会の構築」
「循環型社会の構築」
「環境保全と自然共生社会の構築」の3大重要テーマに分類し、
プラン策定にあたり、企業活動における環境問題リスクとビ
ジネス機会(環境対応車の普及促進など)という二つの観点から
企業活動である各分野の取り組み項目・具体的な実施項目を
策定し、さらに環境マネジメントを推進、強化したものです。
第 5 次「トヨタ環境取組プラン」については、
『環境報告書 2016』
(P4)も併せてご覧ください。
第 6 次「トヨタ環境取組プラン」
第 6 次「トヨタ環境取組プラン」は、
「トヨタ環境チャレンジ
示した「低炭素社会の構築」
「循環型社会の構築」
「環境保全と
2050」で掲げた6つのチャレンジを具現化するため、2016 ∼
自然共生社会の構築」の 3 大重要テーマに分類し、地球環境と
2020 年度までに実施すべき活動を明確にしたものです。
調和したモノづくり、クルマづくりと商品およびサービスの提
プラン策定に当たり、環境活動の方向性を、第 5 次プランで
供を通じて、社会、地球の持続可能な発展に寄与します。
er07_03
推進体制・仕組み
トヨタでは、2015 年 4 月より「コーポレート企画会議」に
組織・体制図(2016 年 6 月末時点)
おいて、さまざまな社会課題を踏まえて成長戦略・事業戦略を
トヨタ環境取組プラン(5カ年)
検討しています。
取締役会
環境への取り組みは、同会議において、事業戦略とともに議
承認
論を行っています。
コーポレート企画会議
また、
「製品環境委員会」
「生産環境委員会」
「資源循環委員会」
の 3 つの委員会にて、各分野の課題や対応方針を検討すると
ともに、関係するすべての部署が連携し、全社的な取り組みを
推進しています。
生産環境委員会
製品環境委員会
(1973年設置)
(1963年設置)
地域別環境委員会
資源循環委員会
(2008年設置)
オールトヨタ
生産環境会議 など
審議
展開
個別年度方針、計画(PDCA)
er07_04
連結環境マネジメントの強化推進
グローバルな環境経営の推進体制
トヨタは、環境を経営の最重要課題の一つとして位置付け、
会社など 559 社を連結環境マネジメントの対象範囲としてい
グローバルな環境経営の推進体制を構築し推進してきました。
ます。生産台数のほぼ 100%、販売台数の約 90%をカバーし
「より多くの仲間と環境に取り組むべき」との思いから、連結子
グローバルな環境経営の推進体制
欧州環境委員会(2002~)
ています。
中国環境委員会(2007~)
北米環境委員会(2004~)
コーポレート企画会議(2015~)
(旧トヨタ環境委員会(1992~))
南ア環境委員会(2008~)
豪亜環境委員会(2007~)
096 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
南米環境委員会(2006~)
環境への取り組み|環境マネジメント
連結対象範囲
連結 EMS の対象会社は 559 社で、財務会計上の全連結子会
取組内容
社と、財務会計上連結対象外でも主要な生産会社や海外販売代
1.「トヨタ地球環境憲章」を共有し、自社の環境方針を立案
理店などが対象です。具体的には、
2. 生産分野では数値目標を立ててフォロー
①トヨタ自動車(TMC)が直接管理する財務会計上の連結子会社163社
3. 販売分野では環境マネジメントシステムの構築、
②財務会計上は非連結だが主要な生産会社と海外販売代理店51社
環境コミュニケーションなどに取り組み
③そのほか、1法人
4. 各国・各地域の状況を踏まえたトップレベルの環境対応
④TMCが連結子会社を通じて間接管理する財務会計上の連結
子会社344社の4種類です。
注:財務上非連結会社への要請事項は、地域・業態によって異なる場合があります。
er07_06
連結環境マネジメントの主な対象会社
欧州自主プログラム参加事業体
Toyota Hellas( ギリシャ) Toyota Ireland(アイルランド)
Toyota AG(スイス)
Toyota SA(トルコ)
Louwman&Parqui(オランダ)
その他10社
TMUK
(英国)
TGB(英国)
TMMT
(トルコ)
欧 州
TMMF(フランス)
TFR
(フランス)
(2016年3月末時点)
TSW
(スウェーデン)
TAF(フィンランド)
TMMP(ポーランド)
TMIP(ポーランド)
TMR
(ロシア)
TMPL(ポーランド)
TMCZ(チェコ)
TCE(ハンガリー)
TPCA(チェコ)
TES
(スペイン)
ED2(フランス)
TMI(イタリア)
TME(ベルギー)
IMC(パキスタン)
販売会社
その他業種(地域統括会社など)
※アンダーラインのない事業体は財務会計上の連結子会社
アンダーライン付き太字はそれ以外
欧州の非連結代理店15社はTMEの支援のもと、自主的にISO取得を含むEMSを展開。
TDG(ドイツ)
TMG(ドイツ)
TDK
(デンマーク)
TNR(ノルウェー)
生産会社
生販一体会社
TFTD(中国)
TMCI(中国)
TTCC(中国)
FTMS
(中国)
FTCE(中国)
TMKR
(韓国)
CAPTIN
(カナダ)
日 本
TTFC(中国)
TFAP(中国)
SFTM(中国)
TMS(米国)
TMCほか
TABC(米国)
TFTE(中国)
CALTY(米国)
TFTM(中国)
TMEC(中国)
TMMBC
Kuozui(台湾)
(メキシコ)
Hotai(台湾)
TMP
(フィリピン)
TAP
(フィリピン)
TMV(ベトナム)
TMAP-MS(シンガポール)
TMMIN(インドネシア)
TAM(インドネシア)
TMCAP(中国)
GTMC(中国)
GTE(中国)
TTPI(インド)
TKM(インド)
TKAP(インド)
TMAP-EM(タイ)
TMT(タイ)
STM(タイ)
UMWT(マレーシア)
ASSB(マレーシア)
TBI
(インドネシア)
TMMC(カナダ)
北 米
TCI(カナダ)
TMMI (米国)
BODINE (米国)
TDV
(ベネズエラ)
TDB(ブラジル)
TASA(アルゼンチン)
AAP
(オーストラリア)
TMCA(オーストラリア)
中南米
TTC-AP-AU(オーストラリア)
TNZ(ニュージーランド)
TSAM(南ア)
アジア・豪州・中近東・アフリカ
er07_05
連結
EMS の国内の主な対象会社(50 音順)
(2016 年 3 月末時点)
生産会社
1グループ
2グループ
物流会社
3グループ
4グループ
5グループ
・連結子会社
・自動車製造業など
・TMCの派生会社
・財務会計上は非連結
・主要部品生産会社
・ボデーメーカー など
・連結子会社
・部品生産会社
・連結子会社
・各種製品生産会社
・財務会計上は非連結
・部品生産会社
岐阜車体工業
ダイハツ工業
トヨタ自動車九州
トヨタ自動車東日本
トヨタ自動車北海道
トヨタ車体
日野自動車
愛三工業
アイシン・エィ・ダブリュ
アイシン・エーアイ
アイシン精機
アイシン高丘
愛知製鋼
ジェイテクト
デンソー
東海理化
豊田合成
豊田自動織機
豊田通商
トヨタ紡織
キャタラー
協豊製作所
中央精機
トヨタホーム
プライムアースEVエナジー
豊精密工業
アドマテックス
シンテックホズミ
トヨタタービン
アンドシステム
日本ケミカル工業
FTS
共和レザー
小糸製作所
大豊工業
中央紙器工業
中央発條
津田工業
豊田鉄工
トリニティ工業
ファインシンター
オールトヨタ生産環境会議メンバー
TMA(米国)
TMMWV(米国)
TMMK(米国)
TEMA(米国)
TMMMS(米国)
TMMAL
(米国)
TMMTX
(米国)
オールトヨタ生産環境連絡会メンバー
097 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
・連結子会社
・完成車物流
・部品他物流
販売会社
東京トヨペット
トヨタ部品東京共販
トヨタレンタリース東京
など 計31社
愛知陸運
飛島物流サービス
トヨタ輸送
トヨフジ海運
その他業種
タクティー
トヨタエンタプライズ
豊田中央研究所
トヨタテクノクラフト
トヨタモデリスタ
インターナショナル
など 計45社
オールトヨタ物流
環境会議メンバー
※財務会計上
非連結の
1法人含む
環境への取り組み|環境マネジメント
2015 年度連結環境マネジメントの主要会社の取組方針と結果
2015年度取組方針と活動結果
取組方針
●
全 体
目標
各地域との連携を強化した環境マネジメントの
推進
活動結果
●
各分野の目標達成
● 連結環境マネジメント強化
● 国内外環境会議の実施
● グローバル環境表彰の実施
●
将来の環境戦略の方向性立案
●
●
国内/各地域の目標達成
●
●
国内
生産
(84社)
販売
(78社)
(40社)
海外
(44社*1)
国内
(31社)
海外
(47社*1)
●
●
各社2015年度目標達成に向けた取り組みの
推進
各社異常・苦情の再発防止に向けた
未然防止活動の強化
トヨタ販売店協会環境マネジメントシステムの
第三者認証取得推進を支援
●
海外販売店環境リスク監査プログラム
による推進
(DERAP*4)
●
国内外その他の会社(65社)
:各社自主的な活動を推進
第5次「トヨタ環境取組プラン」の推進
各分野の第6次「トヨタ環境取組プラン」の策定
各社において計画的に対策を実施し、
おおむね目標達成
● 未然防止活動を展開してきたが、
軽微な違反が発生
(違反1件*2、苦情0件)
●
●
●
異常・苦情ゼロ
EMS*3認証取得店数の拡大
目標達成販売店数比率:
80%以上
*1 生販一体の12社はどちらにも含む
*2 国内1件(TMCを除く)、海外0件
●
●
EMS認証取得をサポート:取得店数増加
目標達成販売店数比率:89%達成
*3 EMS
(Environmental Management System)
*4 DERAP(Dealer Environmental Risk Audit Program)
グローバル環境表彰
表彰の種類
[ 経緯および目的 ]
海外事業体の改善活動を促進するとともに、優秀な改善事例
を世界の事業体に「横展」することを目的に、2006 年より開始
しました。選考方法は、各事業体で選ばれた改善事例をトヨタ
種類
現場改善チーム表彰
事業体表彰
分野
・生産/生産事業体(工場)
・物流/統括、生産、物流事業体
・生産/生産事業体(工場)
自動車が表彰するというものでした。2011 年にはさらに活動
を盛り上げるため、各地域で選考されたチームの中から優秀提
案チームを選抜し、日本で発表会を行い、最優秀賞を決めるよ
う変更しました。同時に大きな改善成果を上げた事業体を表彰
する「事業体表彰」を新設しました。
チーム表彰結果
最優秀賞
TMMIN(インドネシア)
優秀賞
TMMC(カナダ)、STM(タイ)
TFTM(中国)、TDB(ブラジル)
事業体表彰結果
[ 2015 年度の取り組み ]
4 回目となる 2015 年度は、世界 6 地域で選抜された 13 チー
ムの中から、上位 5 チームによる発表会を日本で開催し、
「鋳造
最優秀賞
TMUK(イギリス)、TMMK(アメリカ)
TMCA(オーストラリア)、FTCE(中国)
砂とダストの分離による廃棄物低減」について発表したインド
ネシアの TMMIN チームが最優秀賞を獲得しました。優秀賞を
獲得した他 4 チームも、各事業体にとって重要なテーマについ
て発表し、大きな成果を上げた事例でした。
表彰式では、当時環境担当の高見常務役員より発表者へ、
「環
境問題がますます深刻化するなか、新たに掲げたトヨタ環境
チャレンジ 2050 の実現は、グローバル環境トップ企業であり
続けるために非常に重要な取り組みとなってきます。チャレン
ジ実現のためにも、今後も改善活動のリーダー的存在として取
り組むことはもとより、後輩の育成にも力を入れていただきた
いと思います」とのコメントがあり、取り組みに向けた努力に
対する激励が送られました。
最優秀賞を獲得した TMMIN のメンバーと高見常務役員(写真中央)
098 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み|環境マネジメント
er07_07
ISO
14001 認証取得状況
国内外の生産会社・生販一体会社において、各社とも ISO
国内外の ISO 認証取得企業数
14001 認証取得の更新をしており、環境マネジメントシステ
ムの維持・改善に日々取り組んでいます。
海外の生産会社では、新設会社 1 社が新たに認証を取得しま
した。
生産会社
生販一体会社
販売会社・その他業種
国内
39社
̶
10社
海外
33社
12社
19社
er07_08
各国、各地域の都市大気環境改善に資する排ガス低減
国内低排出ガス車認定制度適合車の推移
国土交通省「低排出ガス車認定制度」の超 - 低排出ガスレベ
平成 17 年基準低排出ガス車生産台数比率(2015 年度)
ル(U-LEV)以上の 2015 年度の生産台数比率は、ほぼ 100%
を達成しています。
2015 年度 国内低排出ガス車認定制度適合車
低排出ガスレベル
★★★★
SU-LEV
★★★
U-LEV
車種名
型式数
型式数
LX570
1
0
RX200t
2
0
RX450h
2
0
シエンタ
4
0
ピクシスメガ
2
0
プリウス
3
0
20
計
14
0
0
区分
低減レベル
生産台数比率
新☆☆☆
U-LEV
平成17年基準排出ガス
50%低減レベル
1.8%
☆☆☆☆
SU-LEV
平成17年基準排出ガス
75%低減レベル
96.8%
国内低排出ガス車の生産台数比率の推移
(%)
100
新☆☆☆
U-LEV
平成17年基準
50%低減レベル
80
☆☆☆☆
SU-LEV
平成17年基準
75%低減レベル
60
40
’11
’12
’13
’14
’15 (年度)
er07_09
生産活動における VOC の低減
ボデー塗装における VOC *排出量の低減
TMC ボデー塗装の VOC 排出量(全ライン平均)推移
[ 活動の目的 ]
VOC は、光化学スモッグを発生させる光化学オキシダント
原因物質の一つです。トヨタでは、塗装工程で排出される VOC
低減の取り組みを進めています。
原単位(g/m²)
70
50
40
[ 2015 年度の進捗 ]
30
トヨタ自動車(TMC)においては、前年度に引き続き洗浄シ
20
ンナーの使用量削減・回収率向上の継続的取り組み、水性塗料
10
への切り替え促進により、全ボデー塗装ライン VOC 排出量は、
面積当たり 16g/m² となりました。
64
60
0
’98
20
19
18
16
’12
’13
’14
’15
* VOC(Volatile Organic Compounds)
:揮発性有機化合物
099 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
(年度)
環境への取り組み|環境マネジメント
コラム
堤工場 「プリウス」生産ラインにおける VOC 排出量低減活動
塗装工程では、溶剤系塗料を使用するため、工程から多くの VOC が排出されます。
そのため、塗装色変更時の洗浄に使用する溶剤を回収するなど、日々排出量削減に取り
組んでいます。
「プリウス」を生産する第 1 塗装ラインでは、2007 年以降 新工場に導入してきた水
性 3 ウェット塗装工法を、既存工場としては初めて生産を維持しながら適用しました。
従来の塗装工程では、防錆目的の電着下地塗装と乾燥炉での焼付を実施後、電着塗膜の
保護を主目的とした中塗り塗装および焼付を行い、その後、着色するためのベース塗装
と、艶を出すためのクリア塗装および焼付を行って塗装工程が完了します。
今回、水性 3 ウェット塗装工法の適用により、中塗り塗料を水性化するとともに、中
塗り塗装後の焼き付けが不要となりました。これにより工程から排出される VOC 量を
-45%
15
10
5
0
改善後
ています。
VOC(g/㎡)
20
改善前
45% 低減することができ、また工程の短縮によるエネルギー使用量の低減にも貢献し
VOC 低減効果
工程比較
改善前
電着
下地塗装
焼付
焼付
(水分蒸発)
水性 (水分蒸発)
ベース
クリア
中塗
塗装
塗装
塗装
電着
下地塗装
ベース
塗装
焼付
プレヒート
改善後
(3ウェット)
プレヒート
(水分蒸発)
中塗
塗装
クリア
塗装
焼付
プレヒート
er07_10
ビジネスパートナーと連携した環境活動の推進(サプライヤー
焼付
)
TOYOTA グリーン調達ガイドラインを改定
環境について、サプライヤーにも配慮いただきたい事項をまとめた「TOYOTA グリーン調達ガイドライン」を発行し、サプライ
ヤーに展開しています。2016 年 1 月の改定では、
「トヨタ環境チャレンジ 2050」を踏まえ、内容を大幅に拡充しました。
「TOYOTA グリーン調達ガイドライン」については、
『環境報告書 2016』
(P8)も併せてご覧ください。
CSR 勉強会での環境に関する意識啓発
サプライヤーの CSR 推進活動を支援するために、トヨタ主催で毎年「CSR 勉強会」を開催しています。2015 年度は気候変動や
水環境、生物多様性、金属資源、ステークホルダーの動向など幅広い情報を提供し、環境に関する意識啓発を行いました。
「サプライヤーの CSR 推進活動の支援」については、P39 も併せてご覧ください。
100 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み|環境マネジメント
サプライチェーンでの気候変動、水環境に関するリスク・機会の把握
サプライチェーンでの環境関連のリスク・機会の把握の一環として、サプライヤーの気候変動や水環境に関する対応状況を
「CDP サプライチェーンプログラム」により、2015 年度から新たに調査を開始しました。対象とするサプライヤーは順次拡大して
いきます。
REACH 規制など、世界の化学物質規制への確実な対応
2002 年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」
(ヨハネ
とまで考慮する必要があります。化学物質規制については日本
スブルクサミット)、2006 年の SAICM(戦略的化学物質管理
の化審法、欧州の ELV 指令* 1、REACH 規制* 2 などのほか、北
アプローチ)採択などを受け、2020 年までにすべての化学物
米・アジアでも独自の規制があります。
質の製造/使用による人の健康と環境への重大な悪影響の最小
このような化学物質の規制に対して、企業は製品中の化学物
化を目指し、世界的に化学物質の管理規制が拡大しています。
質の含有情報を収集し、サプライチェーンを管理する必要が
化学物質規制の国際的流れとしては、個々の物質の有害性に
あります。そのためトヨタでは、サプライヤーと協力して化学
注目する「ハザード管理」から、人や動植物にどれだけ影響を
与えるかを加味した「リスク管理」へと変わってきています。
そのため、化学物質がどのような状況で使用されるかというこ
物質管理の仕組みを構築・運営しています。2016 年 1 月には、
「グリーン調達ガイドライン」を改訂し、化学物質管理の推進を
サプライチェーンに展開しています。
* 1 ELV 指令(End of Life Vehicles)
* 2 REACH 規制(Registraion, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals)
er07_11
ビジネスパートナーと連携した環境活動の推進(販売店、販売代理店)
販売店における環境取り組みの推進
トヨタ自動車販売店協会 CSR 研究会では、2005 年に制定し
た「トヨタ販売店 CSR ガイドライン」を基に、全販売店が一丸と
なり、自主的な取り組みを推進しています。さらに取り組みを進
めるため、第三者による環境マネジメントシステム認証の取得
を推奨し、環境に優しいお店・人づくりを加速し、お客様からの
信頼をより強固なものにしていくことを目指しています。
静岡トヨタ自動車では、電気使用量の削減や、環境に配慮した
商品の販売などに取り組み、2015 年 9 月にエコアクション 21
(EA21)の認証・登録を受けました。認証・登録証授与式で川嶋
社長は「社員の環境への意識も高まってきた」と、取り組みによ
る効果を語り、授与式の様子は新聞にも取り上げられました。
静岡トヨタ自動車の認証・登録証授与式
海外販売店環境リスク監査プログラム(DERAP)達成販売店数比率の向上
海外販売店のワークショップにおける環境リスクを軽減する
年度比 +10 代理店、+228 販売店 ) が DERAP に参加しました。
ため、DERAP *を継続実施しています。この監査プログラムの
そのうち、5 項目達成の販売店は参加全体の 89% となりました。
目標は、廃棄物や排水処理など環境基礎 5 項目についての体制
世界レベルで見ると、参加していない代理店、販売店も多くある
確立です。
ため、引き続き DERAP 参加の拡充と、参加会社の活動推進を
2015 年度は世界 66 カ国の 70 代理店、3,692 販売店 (2014
支援していきます。
* DERAP(Dealer Environmental Risk Audit Program)
101 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み|環境マネジメント
er07_12
遵法活動
異常・苦情ゼロに向けて
2015 年度、トヨタ自動車は 2 年連続で異常・苦情ゼロを達
成することができました。
設については、2014 年度から取り組んできた油脂類使用設備か
らの流出防止などのリスク低減対策を計画的に実施しました。
主な活動取り組み内容としては、社内・トヨタグループ各社
で過去 10 年間に発生した異常および異常ヒヤリ
* 事例をもと
に『排水異常撲滅に向けた重点ポイント集』を作成。2014 年
上記の対策内容については、環境監査において運用状況を現
地確認し、PDCA を回して維持向上に努めています。
* 異常ヒヤリ:事故に至らなかったものの、潜在的にリスクの高い事例
度の「設備・管理編」に 続 き、
〈自家発電室〉
2015 年度は「作業編」を作成
し、環境教育の場での未然防止
活動に活用しました。
燃料タンク
異常ヒヤリについても、重大
で横展が必要と思われる発生事
エンジン
例については真因追及を行い、
雨水路
全社環境事務局会議を通じて再
発防止対策を展開・推進してき
排水異常撲滅に向けた
重点ポイント集「作業編」
ました。日頃目の行き届かない
寮社宅、保養所などの遠隔地施
流出防止溝設置
油脂類使用設備からの流出防止
PCB 含有電気工作物の届出と保管
2005 年度より社外委託処理を開始しました。5,243 台については処理などを実施済みです。未処理の変圧器・コンデンサー 4
台については、2016 年度以降も委託処理を継続します。
地下水に関する取り組み
生産 6 工場における地下水の流出防止対策は、1997 年に完
了しています。
浄化完了に向けて、引き続き揚水曝気浄化を行い、基準値以
下で処理しています。トリクロロエチレンの測定結果は行政に
報告するとともに、地域の方にも「地域協議会」の場で説明を
行っています。
トリクロロエチレン測定
工 場
浄化前地下水測定データ
本 社
0.002未満~1.32
元 町
0.002未満~0.16
上 郷
0.002未満~0.12
高 岡
0.002未満~0.45
三 好
0.002未満~0.11
堤
0.002未満~0.54
注1:トヨタ自動車の全工場で測定しています。
注2:記載工場以外では検出していません。
注3:測定ポイントは各工場に複数あるため、測定値に幅があります。
102 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境基準値:0.01
単位:mg/L
環境への取り組み|環境マネジメント
er07_13
グローバル社員教育・啓発活動の一層の強化
グローバル環境月間を通した環境意識向上の取り組み
国の環境月間に合わせ、1973 年より毎年 6 月を「トヨタ環境月間」
2015 年度より新入社員への環境教育を充実させました。従来の
として、環境に関するさまざまな社員教育・啓発活動を開始、1991 年
座学に加え、自らの問題として環境について考えられるようグループ
からは「トヨタ地球環境月間」として活動をグローバルに広げました。
討議を追加したり、自分が実現したい環境に関する夢や志をそれぞれ
期間中は世界共通のポスター掲示、社内各所に設置されたモニター
が語る時間を設けています。
やイントラネットを使ったイベントの告知・社長の環境に対するメッ
セージ掲載などを通じ、従業員への告知を徹底しています。
取り組みの一例として、外部の講師を招いた環境講演会を開催。
環境省とも連携し、ライトダウンキャンペーンを実施するなど、社員
の環境意識の啓発に努めています。また環境月間はトヨタだけでなく
トヨタグループ各社や販売店、海外の事業体も参加しており、その多
くが環境に関する写真コンテストやクイズなど独自のイベントを開催
したり、工夫を凝らした取り組みを熱心に行っています。
オーストラリアの生産事業体 TMCA が、
NPO 団体「プラネット・アーク」が主催する
「National Tree Day」の植林イベントに参加
新入社員の環境教育における
グループ発表の様子
er07_14
環境情報の積極的開示とコミュニケーションの充実
海外の地域・国別情報開示
海外連結子会社などでは、各地域のニーズに沿って環境報告書やウェブサイトを通じて、積極的に環境情報の発信・開示を行い、
幅広いステークホルダーとコミュニケーションを図っています。
アルゼンチン
ニュージーランド
オーストラリア
ブラジル
北米
南アフリカ
中国
欧州
インド
インドネシア
マレーシア
フィリピン
台湾
(KUOZUI)
台湾
(HOTAI)
タイ
ベトナム
ウェブサイトで紹介している環境情報
「環境への取り組み」
ウェブサイト
Web
All Toyota Green
Wave Project
クルマと
リサイクル
トヨタの
森づくり
http://www.toyota.co.jp/jpn/
sustainability/environment/
103 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
トヨタ環境活動
助成プログラム
※ UMW ホールディング
レポートに包含して発行
er08
環境への取り組み|詳細データ
詳細データ
主要環境データの状況(2015 年度)
分野
項 目
排出ガス
主要指標[単位]
2013年度
2014年度
2015年度
̶
̶
̶
̶
2.4%
2.4%
1.8%
ガソリン2005年(平成17年)規制
75%低減レベル達成車 [生産台数比率]
̶
̶
̶
̶
97.2%
97.4%
96.8%
[台]
̶
̶
̶
̶
718,541
646,258
639,766
電気自動車
[台]
̶
̶
̶
̶
0
0
0
ハイブリッド車
[台]
̶
̶
̶
̶
718,497
646,250
639,766
[台]
̶
̶
̶
̶
クリーン
エネルギー車
天然ガス自動車
JC08モード
総排出量
本報告書
該当ページ
99
̶
44
8
0
601~740kg
32.4
34.8
35.2
741~855kg
27.7
28.5
28.6
856~970kg
20.9
24.1
23.9
971~1,080kg
26.9
29.2
26.8
1,081~1,195kg
25.1
26.6
28.4
1,196~1,310kg
17.2
17.4
17.2
1,311~1,420kg
25.9
25.9
26.3
21.4
21.9
23.0
1,531~1,650kg
16.0
18.4
18.0
1,651~1,760kg
18.0
17.2
16.9
1,761~1,870kg
12.8
15.6
15.6
1,871~1,990kg
10.7
10.9
11.5
1,991~2,100kg
9.8
9.9
11.1
2,101~2,270kg
12.5
11.8
13.2
2,271kg~
7.9
7.8
7.9
120
118
115
0.414
0.413
0.408
19
18
16
99
12.4
12.5
12.5
86
99
99
99
85
製 品
CO₂(注1)
1998年度 2001年度
ガソリン2005年(平成17年)規制
50%低減レベル達成車 [生産台数比率]
販売台数
重量区分別
平均燃費[km/L]
(ガソリン乗用車)
1990年度 1995年度
1,421~1,530kg
[CO₂換算万トン/年]
̶
̶
211(注3)
̶
̶
̶
̶
̶
生 産
リサイ
クル
生産台数当たり排出量 [CO₂換算トン/台・年]
̶
̶
̶
0.731
環境負荷物質
ボデー面積当たりVOC排出量
[g/m 2]
̶
̶
64
̶
廃棄物(注2)
生産台数当たり排出量
[kg/台]
̶
̶
̶
29.5
リサイクル率
リサイクル実効率
[%]
̶
̶
̶
̶
注1:2005年度より非生産拠点も目標範囲に加えたため、1990年度にさかのぼり全社のCO₂排出量を記載
注2:2000年度に埋立廃棄物「ゼロ」を達成・継続
注3:1990年1~12月の集計値
65
78
上記主要データ以外の指標などについてはウェブサイトをご覧ください。
Web
http://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/environment/data/
グローバル CO₂ 実排出量(2015 年度)
地域別
排出量
トヨタ自動車(TMC)
[万トン]
155
日 本(除くTMC)
[万トン]
430
北 米
[万トン]
97
中 国
[万トン]
67
欧 州
[万トン]
27
アジア、豪州、中近東、南アフリカ、中南米
[万トン]
72
総量合計
[万トン]
848
[トン/台]
0.834
生産台数当たりのCO₂実排出量
注1:TMCおよび国内外連結会社など 121社
国内 : P97 1~5グループ対象会社〔孫会社を含む(豊田通商を除く)〕
海外 : P97 生産および生販一体会社
注2:CO₂換算係数は、GHGプロトコルを使用して算定しました。
・電力はCO₂Emissions from Fuel Combustion, 2015 edition,
IEA, Paris, Franceの2013年の換算係数を使用しています。
・電力以外はIPCC 2006, 2006 IPCC Guidelines for National
Greenhouse Gas Inventories, Prepared by the National
Greenhouse Gas Inventories Programme, Eggleston H.S.,
Buendia L., Miwa K., Ngara T. and Tanabe K. (eds).
Published: IGES, Japan.の換算係数を使用しています。
※都市ガス、蒸気、温水、冷水、
コークス炉ガスについては、
「地球温暖化対策の推進に関する法律」の換算係数を使用しています。
104 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
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