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ギ EUのエネルギー安全保 障政策 3 のQ&A 障
EUのエネルギー安全保 ギ 障政策 3 のQ & A 障政策-3つのQ 蓮見 雄 立正大学経済学部教授 ユーラシア研究所事務局長 慶應ジャン モネEU研究センタ 研究員 慶應ジャン・モネEU研究センター研究員 Question 1 加盟国間の亀裂が深まっているようだが、 それぞれの思惑を収束 きるのか それぞれの思惑を収束できるのか? リスボン条約後、欧州統合を一層強めるな かで、共通のエネルギー政策、外交は構築 できるのか? ©Yu Hasumi Question 2 パイプライン問題、ガス問題をみても、 パイプライン問題 ガス問題をみても EUは、ロシアのエネルギー外交に翻弄 されているようにみえるが、ロシアとどう つきあっていくか。 つきあっていくか ©Yu Hasumi Question 3 地球温暖化対策をリードするEU 今後のエネルギー政策をどのよう 今後のエネルギ 政策をどのよう に構築していくのか。 ©Yu Hasumi Answer 1 2006年のPL紛争を契機にエネルギー共通 政策を加速 エネルギー・パッケージ2007 欧州20・20・20 欧州20 20 20 (20年までに温室効果ガスを20%削減、再生可能得エネルギーを20%に) エネルギーに関する対外政策の強化 エネルギ に関する対外政策の強化 エネルギー確保と域内エネルギー市場の統 一を同時追求 ©Yu Hasumi パイプライン紛争の背景 「市場経済国」としてのロシアの要求 盗ガス(シフォニング) ロスウクルエネルゴの排除? スウクル ネルゴの排除 EUのコソボ独立承認 vs. 未承認国家(南オセチア、アブ ハジア) 代替ルート問題(ノルド、サウス、ナブッコ) 金融危機→開発投資減少→供給不安定化? 金融危機 開発投資減少 供給不安定化? EU拡大→EU内の不協和音 従来の商慣行変更の圧力 ウクライナの不安定な政治・経済状況 ©Yu Hasumi EUの東西問題 なぜ東欧諸国は迂回路に反対するのか すべての国が反対しているわけではない(ハンガリー、 ブルガリア、セルビアなどはサウス・ストリームに協力) 通行料収入の減少 (ウクライナの場合、1.6ドル、1000m3/100km) ロシアに対する政治的カード、EU内政治におけるロシ ロシアに対する政治的カ ド、EU内政治におけるロシ ア・カードの喪失 歴史的対立 ナショナリズム 歴史的対立、ナショナリズム ©Yu Hasumi ウクライナ迂回の切り札 EUは対応してこなかったのか? EUのエネルギー政策を強化 (特 域 市場改革、多角 、代替 (特に域内市場改革、多角化、代替ルートなど) ) ノルウェーとの協力 ノルド・ストリーム ナブッコ バルカン諸国とのエネルギー共同体条約 EUのエネルギー規制協力機関ACERの設立提案 ギ ドイツ、オーストリア、フランス、デンマークの企業がガ スプロムと長期契約を更新 ©Yu Hasumi 出所: GASSCOホームページ 資料にBBLとSkanledを加筆。 ©Yu Hasumi ノルウェーからの ガスパイプライン網 ガスプロイマイゼーション? ロシアのエネルギー部門の海外投資の90%はガスプロムと ロシアの ネルギ 部門の海外投資の90%はガスプロムと ルクオイルの2社による。 ガスプロム:ロシア政府が株式の50%以上を保有。世界の 天然ガス市場の20%(CISを除く)、埋蔵量の25%を保有。西 ヨーロッパ市場の3分の1。国内ガス生産の85%。ロシア輸 パ市場 分 国内ガ 生産 シ 輸 出の14%(2006年)。シブネフチを買収し石油も扱い(ガスプ ロムネフチに名称変更)。異業種 も参入。国外に60以上の ロムネフチに名称変更)。異業種へも参入。国外に60以上の 子会社・提携企業。 ガスパイプラインを所有・運営(なお、石油パイプラインはトラ ンスネフチによる)。 ©Yu Hasumi 10 急増するロシアの外国投資 下流進出と資本逃避の一形態 出所:S. Ehrstedt and P. Vahtra, Russian energy investments in Europe, PEI, 4/2008, p. 6. 11 ©Yu Hasumi EU共通エネルギー政策の形成? 2000年 グリーン・ペーパー「エネルギー供給の安全保 グリ ン ペ パ 「 ネルギ 供給の安全保 障のためのヨーロッパ戦略」 2003年 「拡大EU、近隣・パートナー諸国のためのエネ 「拡大EU 近隣 パ トナ 諸国のためのエネ ルギー開発」 2003年 ガス ガス・電力指令改定 電力指令改定 2003年 加盟国規制機関の調整・情報交換を目的とす るERGEG (European Regulators‘ Regulators Group for electricity and gas) 2007年 ACER(Agency g y for the Cooperation p of Energy Regulators)を含む 第3次エネルギー・パッ ケージ ©Yu Hasumi 12 EUの対外エネルギー政策の形成? 2006年 グリーン・ペーパー「持続可能で競争力があり 安全なエネルギーのためのヨーロッパ戦略」 2006年 欧州委員会・ソラナの共同文書 欧州委員会 ソラナの共同文書 「ヨーロッパのエネルギー利益に奉仕する対外政策」 (域内エネルギ 政策の発展 多角化 (域内エネルギー政策の発展、多角化、一貫性・戦略性・ 貫性 戦略性 集中) 2006年 006年 南東欧との 南東欧とのエネルギー共同体条約 ネルギ 共同体条約 2006年 「対外エネルギー関係ー原則から行動へ」 2007年「ヨーロッパのためのエネルギー政策」 2007年「EUと中央アジア」 ©Yu Hasumi 13 Answer 2 化石燃料の確保の必要性 エネルギー供給構造の変化 エネルギ 供給構造の変化 EUのエネルギー輸入依存度の上昇 消費側と生産側の利害対立(平等な競争 条件 vs. vs 資産スワップ) ジオポリティクスからジオエコノミクスへ ©Yu Hasumi EU25カ国:化石燃料への依存続く 出所:EC, European Energy and Transport Trends to 2030 –update 2005, 2006, p. 6. 世界のエネルギー供給構造の変化 石油・天然ガス埋蔵保有量の比較 1960年代 セブン・シスターズが世界の石油・天然 ガス埋蔵量の85% (石油換算、10 億バレル) 2000年代 M&Aで再編されたスーパー・メジャー は高収益企業だが、新興国国有企業 が世界の石油 天然ガス埋蔵量の85% が世界の石油・天然ガス埋蔵量の85% 経済的リスク:技術力、上流部門への投資障壁 による供給能力の低下リスク 政治的リスク:大株主である政府の政治的動機 ©Yu Hasumi 出所:M. Scott,”Policy Dossier:Energy”, Europe’ss World Europe World, Spring 2007, 2007 p.120. p 120 16 EU25カ国エネルギー輸入依存度 (石油95%、ガス85%へ) 石油100 万トン換算 年 年 ©Yu Hasumi 出所:EC, Fuelling Our Future, 2006, p. 2. 天然ガスの生産・消費・貿易 予測(2005-2023年) 出所:TEN-ENERGY-Invest PROJECT SUMMARY, prepared by: CESI spa (Centro Elettrotecnico Sperimentale Italiano) – Italy, IIT (Instituto de Investigación Tecnológica), – Spain, ME (Mercados Energeticos) – Spain, RAMBØLL A/S - Denmark, 2005,p. 25. EU27カ国の石油・エネルギー (2004年) 石油 その他 ナイジェリ イラク 10% 2% ア EU カザフスタ 3% 17% ン アルジェリ 3%ア イラン 3% ロシア シア 5% リビヤ 27% 8% サウジア ラビア ノルウェー ノルウェ 9% 13% 天然ガス ナイジェリア 1% カタール カタ ル 1% アルジェリア 13% EU 37% ロシア 29% 出所 EC Energy 出所:EC, E Policy P li D Data, t SEC(2007) 12 12, 2007 2007, pp. 11 11-12. 12 ©Yu Hasumi その他 2% ノルウ ノルウェー 17% ©Yu Hasumi EU25 シアの EU25・ロシアの エネルギー相互依存 出所:http://ec.europa.eu/energy/russia/presentations/doc/2005_luxembourg_en.pdf どのように考えるか? 「武器」としてのエネルギーに基づいた ロシア勢力圏回復説 「商品」としてのエネルギーに基づいた ロシア・EU主要国協調説 ガスプロムは、(1)利益を追求する企業であるが、(2)ロシア政府という大株 主の影響を受けるという二面性。 (1)「近い外国」への影響力確保(政治的動機)と(2)EU市場確保(経済的 動機)の複合的要因。 ジオポリティクスからジオエコノミクスの視点へ。 ©Yu Hasumi ©Yu Hasumi EUの立場、ロシアの立場 欧州委員会 ロシア連邦政府 ・消費国 ・生産国 ・エネルギー安全保障と自由化 ・エネルギー安全保障と長期契約 ・EU法を基礎とするヨーロッパ・エネ EU法を基礎とするヨ ロ パ エネ ルギー市場の形成とその拡大 国内市場規制のオ トノミ ・国内市場規制のオートノミー ・エネルギー憲章 エネルギ 憲章 (自由化と消費国の視点) ・エネルギー憲章改訂 エネルギ 憲章改訂 (生産国の立場を考慮) ・仕向地条項廃止 ・テイク・オア・ペイ条項廃止 ・パイプラインへの第三者アクセス ・資源開発参加 資 参 ・EUエンドユーザーへのアクセス ・EUのTSOへのアクセス(国内でPL 同一の競争条件という論理 資金 技術をもつヨ ロッパ企業に 資金、技術をもつヨーロッパ企業に 有利なルール 資産スワップの論理 資金 技術面で劣るが 資源 資金、技術面で劣るが、資源 をもつロシア企業に有利なルール 出所:筆者作成。 開放の動きがあるが、ガスプロム抵抗) ・生産物分与法見直し・運用変更 開発途上の資源 トランジット国 ノルド・ストリーム ウクライナ サウス・ストリーム ナブッコ ©Yu Hasumi 出所:S. Ehrstedt and P. Vahtra, Russian Energy Investments in Europe, PEI, 4/2008, p.16.の図に加 筆・修正。 ノルド・ストリーム バルト海底パイプライでロシアとドイツを直結、さらにオランダ、イギリス。 バルト海底パイプライで シアとドイツを直結 さらにオランダ イギリス 2011年供給開始、年間275億m3、2013年以降は、550億m3。 ウクライナ、ベラルーシ、ポーランド、バルト諸国迂回ルート。 バルト諸国、ポーランド、フィンランド、スウェーデン反対・疑義。 ガスプロム51%、ドイツのWintershall20%、E.ON20%、オランダのハスニー9%。 資産 ワッ ドイツ企業は イ ラインの供給源である西シ リアの ジ ル 資産スワップ:ドイツ企業はパイプラインの供給源である西シベリアのユジノルスコエ・ ガス田の49%、ガスプロムはWingasの権益を35%から49%に引き上げ、ハスニーの 所有するBBLの9%を取得。 ドイツ、イギリス、デンマーク、フランスがガスプロムと契約 スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの容認 ©Yu Hasumi 競争と市場開放を求める欧州委員会の主張にもか かわらず、資産スワップによる互恵関係 Answer 3 国境を超える経済活動×国境を超える環境政策のモデ ル リスボン×京都×モスクワ 加盟国のエネルギー事情の違い 加盟国のエネルギ 事情の違い 北極海開発問題とEUの役割 ©Yu Hasumi 25 EUのエネルギー政策の3つの課題 EUのエネルギ 政策の3つの課題 競争力「リスボン」 バランス 相互補完 持続可能な発展 「京都」 京都」 供給の安全保障 「モスクワ」 モスクワ」 出所:K. Kellner, Energy Policy for Europe Action Plan 2007-2009. New and renewable sources of energy, energy efficiency and innovation. http://www.euroheat.org/Documents/Newsletter/JanFeb2008/Kellner.ppt 加筆・修正。 温暖化と 北極の資源 海氷ライン (1979ー2000年の 9月平均) 2007年9月の海氷ライン ロシアの資源 ノルウェーの資源 スヴ スヴァールバル諸島 ルバル諸島 (ノルウェー統治下だが、 各国が経済活動できる) 出所:Journal of NRODREGIO, 7(4), 2007, p. 5.に加筆。 ©Yu Hasumi おわりに エネルギー輸入依存度を高める ヨーロッパとアジア ©Yu Hasumi ©Yu Hasumi ガス輸入依存を深めるヨーロッパとアジア 出所: EC, World Energy Technology and Climate Policy Outlook 2030, 2003, p. 95. 参考文献 坂口泉、蓮見雄『エネルギー安全保障-ロシアとEUの対話』東洋書店、2007年 蓮見雄 EUの対外 ネルギ 政策と シア」『 蓮見雄「EUの対外エネルギー政策とロシア」『ユーラシア研究』第41号、2009年 ラシア研究』第41号、2009年 蓮見雄「EU・ロシアのエネルギー協力とノーザン・ダイメンション」蓮見雄編『拡大 する と ルト経済圏の胎動』昭和堂、 009年、所収 するEUとバルト経済圏の胎動』昭和堂、2009年、所収 輪島実樹『カスピ海エネルギー資源を巡る攻防』東洋書店、2008年 田畑伸一郎編著『石油・ガスとロシア経済』北海道大学出版会、2008年 月刊誌『ロシアNIS調査月報』((社)ロシアNIS貿易会ロシアNIS経済研究所) http://www.rotobo.or.jp/ 月刊誌『ロシア・ユーラシア経済』 ( (ユーラシア研究所) ラシア研究所) http://www.t3.rim.or.jp/~yuken/ htt // t3 i j / k / Yu Hasumi© 30