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佐久市学校教育の目指す方向2016(PDF:4272KB)
2016 叡智と情熱が結ぶ、21世紀の 新たな文化発祥都市 ~「たくましく心豊かな人材の育成と地域文化の保存・継承と発祥」~ ≪改訂版≫ 佐久市教育委員会 佐久市学校教育の目指す方向 2016 目 次 ○ はじめに Ⅰ 学校教育の大きな方向性 Ⅱ 佐久市学校教育の目指す子ども像 ・・・・・・・・・4 Ⅲ 具現のための基本目標 ・・・・・・・・・4 Ⅳ 基本目標へ向けた具体的な取り組み ・・・・・・・・・5 Ⅴ 重点目標とその実践 Ⅵ ・・・・・・・・・1 ・・・・・・・・2 重点目標1 ・・・・・・・・13 「子どもたちの学習力を高めよう」 ・・・・・・・・14 重点目標2 ・・・・・・・・15 「佐久市教育推進委員会」 ・・・・・・・・16 各種調査からみる本市小中学生の特徴・・・・・・・・・17 1 学力の状況 (1) 全国学力学習状況調査の結果から・・・・・・・・18 (2) 教研式 CRT 標準学力検査の結果から ・・・・・・28 2 3 児童生徒質問紙調査からみた生活実態及び特徴 (1) 自尊意識について ・・・・・・30 (2) 自己表現力について ・・・・・・31 (3) 電子メディアとの接触について ・・・・・・32 体力・運動能力について (1) 体力・運動能力の状況 ・・・・・・33 (2) 運動習慣等調査からみた体力等の状況・・・・・・34 「コスモスプラン」 ・・・・・・・・・36 ○ はじめに 佐久市教育委員会では、教育における「継続性」と「新鮮さ」の2視点を大事に して きて い ます。「不 易」 と「 流 行」 にそ れ ぞれ 置き 換 える こと も でき そう で すが 、 後者の「 新鮮さ」につ いては、教育が 時代 の 変化に 無関心 であ って はなら ないと いう だけで なく、続けて 取 り組む ことに おい ても 惰性に 陥るこ との ない ように という 想い を込め ていま す。 折に 触れて 自覚を 新た にし たいこ とです 。 さて、学校教育の目指すところを論ずる際、頻繁に行き来したいのが学習指導要 領で す。 総 則の 第1 「 教育 課程 編 成の 一般 方 針」 では、「人 間 とし ての 調和 の とれ た 育成」と「 生きる 力を はぐく む」こと を目 指 すもの である とい う大 きな方 向を示 しな がら 、いわ ゆる「知 」 「 徳」 「体 」の 教育 に言及 してい ます 。冒 頭申し 上げた「継 続性 」 の視点 からも、時の 変 化に因 らず大 事に した いそれ ぞれで あり ます 。ここで は、その 中の「知」に当た りま すが、学 習指導 要領 の 中で強 調され てい る学 力の重 要な3 つの 要素の 育成に つい て、骨太な 重点と して 特筆 したい と思い ます。① 基礎的・基本的 な 知識技 能の習 得、②課 題を解 決する ため に必 要な思 考力 、判断 力、表現力 の育成 、そ して③ 主体的 に学 ぶ態 度の養 成であ りま すが 、3つの 重点 の内① と ②は孔 子の有 名な 次の教 えと重 なる こと が注目 されま す。 学而不 思則罔 「 学び て思わ ざれば 則ち 罔( くら) し」 思而不 学則殆 「 思い て学ば ざれば 則ち 殆( あやう )し」 ①は「学」に、②は「思」に見事に相応しています。人格の完成を目指して営ま れるところの教育において、三千年近くの時を経てなお色あせることのない力点の 「継続 性」を確 認で き ること に安堵 を覚 えま す。もう 一つの 重点 ③ は、学習 を仕組 む 側のア クショ ンの 具体 として「学 ぶ意 欲の喚 起」と読み 替え ること が肝心 だと考 えま すが、こ れは①、②の それぞ れとい つも セッ トで考 えたい こと です 。学ぶ意 欲は数 値 等では 測りに くい 学力 ですが、子ども たち が 身を乗 り出し て「前 の めりに 学ぶ」学 習 をどう やって 創り 出す か、学校 はも ちろん 家 庭にお いても 日常 のテ ーマと して知 恵を 出した いもの です 。 これら 3点の 重要 性を 基盤に 置きな がら 、本 市では 特に 、子 どもた ちが知 りたい・ 出来る ように なり たい という 意欲を 持っ て、他者と 関わり なが ら粘 り強く より良 い考 えや 方法 を 追求 する 中 で、 課題 を 解決 して い く総 合的 な 実践 力を 「 学習 力」 と 称し 、 その向 上に努 めて おり ます。 「国家百年の大計」として人を育てていく教育の営みは、もちろん人によってな されま す。教師、親、地域の 人々の 温か な眼 差しが 一人一 人の 子ど もたち に注が れる 中で、 その信 頼や 期待 に応え る子ど もた ちが 育まれ ていく もの と確 信 し て お り ま す 。 なお、Ⅵ章「各種調査からみる本市小中学生の特徴」では、現学習指導要領が学 力の 国際 比 較を はじ め 諸調 査の 豊 富な デー タ に基 づい て 改訂 され た よう に、27 年度 実施の 全国学 力・学習 状況調 査や CRT 検査 、全国体 力・運動能 力・運動習 慣等調 査な どの結 果にも 注目 しな がら、各 校に 共通し て みられ る状況 等を 中心 に傾向 をまと めま した 。各校 にお いても 、自 校の実 態や 改善課 題の明 確化に 役立 てて いただ きたい と思 います 。 1 Ⅰ 学 校 教育の大きな方向性 ~主体的な学びを核に~ 教育の これか らを 展望 すると き、社 会や時 代 の背景 をふま える こと は不可 欠です 。 しかも 変化の 激し い今 日にあ っては 、長期 的 な視点 に立っ て先 行き をみる ことが 重要 であり ましょ う 。その 上で目 の前の 子ど もや 保護者 、地 域の 実態に ついて 現状認 識を 確かに するこ とで 改善 の歩が 始まる かと 考え ます 。さら に 、これ か らの子 どもた ちに は、社会が 要求 する力 を身に つける とい う発 想に加 えて 、新 しい社 会を創 り出す 力が 求めら れてい ると いう 発想に 立つこ とが 肝心 だと思 います 。 平成に なって から の教 育の歩 みを振 り返 って みます と、平 成元 年、10 年、20 年 と 平成に なって すで に3 回の学 習指導 要領 の改 訂がな されて いま すが 、この間 の大 きな 流れ は、「 チ ャー トな き航 海の 時 代」 とい う 状況 認識 に 立脚 して お りま す。 近 代産 業 社会を 支える 人材 は、与えら れた仕 事を 確実 に成し 遂げる 能力 を備 えるこ とが重 要で したが、変化 の激し い「情報化 社会」を乗 り 切るた めの人 材は、自 立した 人間と して 、 他者と 協働し なが ら創 造的に 生きて いく のに 必要な 資質・能力を 備 えるこ とが益 々必 要とな ります。新し い 学習指 導要領 が間 もな く誕生 します が、そ こ でも、何 事にも 主 体的に 取り組 もう とす る意欲 や、多様 性尊重 の態度 、他 者と 協働す るため のリー ダー シップ やチー ムワ ーク 、コミュ ニケー ショ ン 能力、ま た、豊か な感 性や思 いやり 等の 育成が 特段重 視さ れよ うかと 思いま す。 現学習指導要領の総則第1の1に示されている3本柱は、新学習指導要領におい ても その 骨 格を 保ち な がら 、新 し い時 代に 必 要と なる 資 質・ 能力 と して、「何 を知 っ てい るか 、 なに がで き るか」(基 礎的 基 本的 な知 識技 能 )、「 知 って いる こと ・ でき る こと をど う 使う か」( 思考 力・ 判 断力 ・表 現 力等)、「ど のよ う に社 会・ 世界 と かか わ り、 より よ い人 生を 送 るか」(人 間性 や 学び に向 かう 力 等) のよ う に味 付け さ れて く るよう です 。(平 成 27 年度文 科省教 育長 セミ ナーか ら) 2 佐久市 教育大 綱に は、 教育の 基本理 念と して 、 「 生涯 にわたり主体的・創造 的に学び、 生 きる力を育む人づくり、まちづくり」 が掲げ られて いま す。とりわ け、 「 主体 的な 学び」を 支え、導 く教 育の営 みは 、 「人 間性や 学びに 向か う力 」を育 成する 核と なる 取組み である と言 えま しょう 。 ダーウ ィンは 、 「 最も 強い者 が生き 残る ので はなく 、最も 賢い 者が 生き残 るので も ない。唯 一生き 残る こ とがで きるの は変 化で きる者 である」と言 っ ていま すが、こ の 「変化 できる」とは、主体性 のない 表面 的な それで はあり ませ ん。つまる ところ 、 「変 化の 激し い 社会 にあ っ て、 主体 性 を見 失う な よ」 とい う 教え とし て 咀嚼 (そ し ゃく ) しなが ら、変 化の あり ようを 考える こと が肝 心であ りまし ょう 。 Ⅲでは 、 「 佐久市 学校 教育の 目指す 子ど も像 」を具 現する ため の8 つの基 本目標 を 示しま すが、ぜ ひ関 係 するそ れぞれ の立 場に おいて、主体性 をも っ て、市民 レベル で 向かい たいと ころ であ ります 。 3 Ⅱ 佐久市学校教育の目指す子ども像 夢や希望をもって輝き、ともに生きる子ども 佐久市は、 「ひとの絆・まちの絆」をまちづくりの基本理念として、新たな文化の創造を目 指し、未来を担う子どもの育成を願っています。その願いをもとに本市の学校教育は粘り強く 学び、自ら人と人の絆を築いていく生きる力を持った子どもを育てることを目指します。 Ⅲ 具現のための基本目標 佐久市の目指す子ども像の具現のために、下記の8つの基本目標を掲げ推進します。 これらの目標の達成に向けた歩みは、本市の二大課題でもあります。「学力・体力の向上」と 「いじめ・不登校改善」に迫る実践としても大事にしたいものです。 夢や希望をもって輝き、ともに生きる子ども 就学前教育の推進 確かな学力を身に付けた子どもの育成 認め合い支え合える、 心豊かな子どもの育成 心身の健康づくりの推進 多様な子どもの、 学習機会の保障 国際感覚を身につけ、 グローバル化社会に対応できる子どもの育成 地域を知り、 地域を愛する子どもの育成 望ましい学習環境の整備 4 Ⅳ 基本目標へ向けた具体的な取り組み 基本目標 1 就学前教育の推進 ~幼保小の連携を!~ 適正な就学に向けて、またよりよい学級編制に向けて、幼稚園や保育園と情報交換をすること は、小学校や特別支援学校就学への円滑な移行に欠かせないことです。入学後の適切な支援のあ り方、家庭との連携のあり方について、早い段階から考えることができる貴重な取り組みです。 【願う子どもの姿(園から学校へ)】 ①自身の実態に応じた自立ができる子ども。 ②「遊び」から「教科の学習」への移行が滑らかにできる子ども。 ③学ぶ楽しさを感じられる子ども。 ④集団生活や協同的な活動に進んで参加できる子ども。 【学校における取り組み】 ①幼稚園、保育園の学校利用(行事利用等)の機会を積極的に取り入れる。 ②園児を生活科等の授業へ招待し、交流を図る。 ③年長児の個々の実態に応じた個別小学校参観・体験を実施する。 ④年長児(来入児)の 1 日入学や保護者への小学校説明会を実施する。 ⑤来入児の夏季集中就学相談に学校職員が参加し、支援情報を収集する。 ⑥幼保小の連携を密にし、学校、職員相互の研修を実施したり、交流を図ったりする。 【教育委員会としての施策】 ・ 幼稚園、保育園の認定こども園への移行促進 ・ 全市的な幼保小連携体制の強化 ・ 幼児教育に係る保護者の経済的負担の軽減等について検討 ・ 保護者支援のための関係機関の連携を強化 ・ 基本的生活習慣の向上に関する家庭への支援 ・ 年長児の発達検査の実施、幼稚園・保育園を訪問しての幼児の実態把握 ・ 夏季集中就学相談を中心とした就学相談の実施 5 基本目標 2 確かな学力を身に付けた子どもの育成 ~ 学習力の高まる授業づくりを! ~ すべての子どもたちが学びに参加し、自ら考え学び合うことを通して、基礎的・基本的な 知識・技能の定着と課題解決に必要な思考力・判断力・表現力・創造力が養われるよう、 「学習 力」(参照:P11 子どもたちの学習力を高めよう!)が高まる授業づくりに向け努力してい く必要があります。 【願う子どもの姿】 ①「なぜ」、「どうして」の問いを持てる子ども ② 必要な情報や既習の学びをもとに、自分なりの考えを持ち、課題を解決する楽しさを 味わえる子ども ③ 自分の考えを整理・判断し、自分の方法で伝えたり発信したりできる子ども ④ 自分の考えをもとに共と学び合い、高め合う楽しさを味わえる子ども ⑤ 困難な課題に対して、様々な角度や方法でチャレンジしようとする子ども 【学校における取り組み 】 ① 児童生徒の「疑問」「問い」を大事にし、自分事の問題を主体的に解決していく授業 を実践する。 ② 学習指導要領の目標に基づき、各教科等における評価基準を明確にする。 ③ 互いに個性を認め、課題解決の仕方をはじめ多様な考えを尊重できる場づくりをする。 ④ 一時間の授業の中に「読む力」「書く力」が位置付くように工夫する。 ⑤ 児童生徒がグループ内や、学級内で考え合い、話し合う場面を重視する。 ⑥ 児童生徒の課題解決までの過程を重視して認め励まし、学びの原動力とする。 ⑦ 自分の家庭学習を計画する力を育む。 【教育委員会としての施策】 教師の指導力向上に向けた、授業研究や校内研修などへの支援 小学校における教科担任制実施のための学力向上支援員の配置 市内小 4~中 3 の児童生徒を対象にしたCRT検査の実施と結果分析の活用 特別支援教育支援員の配置やまなびの教室(LD等通級指導教室)の充実による、障 害がある児童生徒への支援 指導主事及び学校運営支援員の配置による、授業改善や学校運営への支援 6 基本目標 3 認め合い支え合える、心豊かな子どもの育成 ~人としての生き方を! ~ 子ども同士が互いに認め合い支え合う心の育ちを促し、学校や家庭、地域が連携し、人 権教育・道徳教育など人間としての生き方の基礎を育む教育を充実させていく必要があり ます。 【願う子どもの姿】 ① かけがえのない自他の生命を尊重する子ども ② 自尊感情や相手を尊ぶ感情を育み、互いに認め合い支え合おうとする子ども ③ 役割と責任を自覚して集団生活の向上に努める子ども ④ 社会の一員としての自覚を持ち、平和な社会の実現に努める子ども 【 学校における取り組み】 ① よりよく生きたいという互いの願いを共有できる機会をグループ活動や係活動、児童 会・生徒会活動、学校行事等の中へ位置付ける。 ② 自他の命の大切さや共に生きることの大切さを学ぶ体験的活動を推進する。 ③ 認め励まし、自信を持って自らを高めていこうとする意欲や態度を育てる。 ④ 集団活動の中で個に応じた役割を設定し、所属意識(自己有用感)を高める。 ⑤ 一人一人が力を発揮でき、安心して生活できる支え合いのある学級集団を構築する。 ⑥ 同和問題など様々な差別や、いじめ、暴力を我がことと考え、見逃さず立ち向かう強 い心と態度を培う指導を家庭や地域と連携しながら推進する。 【教育委員会としての施策】 質の高い文化・芸術に触れる機会の提供や、心を育てる読書活動への支援 教職員の使命感や人権感覚を磨く研修への支援 参加体験型・疑似体験型の活動や多様な交流活動への支援 いじめや差別、体罰を許さない人権意識の高揚に向けた支援 道徳や人権教育などに関わる指導研究やカリキュラム作成 いじめや虐待などに対応するための支援ネットワークづくりの推進 7 基本目標 4 心身の健康づくりの推進 ~実態把握とその活用を! ~ 子どもの実態を的確につかみ、子どもの悩みや願いを受け止め、自ら立ち上がり歩んで いく力を育てるとともに、心身の発育段階を考慮した食育や体力づくりなど、健康の保持・ 増進や基本的生活習慣の定着を図る必要があります。 【願う子どもの姿】 ① 読書活動にいそしみ、知恵や思索を源とした創造力豊かな子ども ② 電子メディアを通した情報を適切に選択し、活用できる子ども ③ 健全で安全な食生活を実践できるこども ④ 規則正しい生活習慣を身につける子ども ⑤ 健康な体づくりを心がけ、積極的に体を動かす機会を作っていく子ども ⑥ 状況を適切に捉え、自他の命を守る判断と行動ができる子ども 【 学校における取り組み】 ① 読むことを大事にした教科学習や、家庭と協力した読書習慣づくりを推進する。 ② 家庭・地域と連携したメディアリテラシー教育、情報モラル教育を推進する。 ③ 学校給食を生きた教材として、栄養、食文化、地産等について考える学習を推進する。 ④ 家庭と協力した日常生活の見直しと、生活リズムづくりを推進する。 ⑤ 学校や、地域と連携した体育活動等を通して、体を動かす・体を鍛える活動を積極的 に取り入れ、体力・運動能力の向上を図る。 ⑥ 学級担任と養護教諭の協力体制や、PTA専門部等との連携による子どもの「健康」 に対する意識を高める活動を展開する。 ⑦ 震災等から学ぶ機会を作り、自らが適切に判断し、行動できる力を育成する。 【教育委員会としての施策】 生まれた赤ちゃんに絵本のプレゼント「ブックスタート事業」を行い、家庭教育、学 校教育の読書活動に繋げる動機付けとする。 スクールメンタルアドバイザーや就学支援専門員の配置による相談支援体制の充実 チャレンジ教室(中間教室)の設置及び特別支援教育支援員の配置による、不登校や 障害のある子どもへの支援体制の充実 健康に配慮を要する子どもの把握及び食物アレルギー対応のための、栄養士の配置や 施設の充実 地産地消の良さなどを学ぶ食育の推進及び健康生活への啓発活動の推進 保護者や地域住民と共に健康問題などに取り組む、実践活動への支援 各種の保健・健康検査や体力調査などのデータ分析及び考察資料の提供 部活動や課外活動を含めた、個性伸長を図る多様な教育活動への支援 職業体験やボランティア活動推進のための、事業所や施設と連携した基盤作り 8 基本目標 5 多様な子どもの、学習機会の保障 ~全ての子どもに適正な学習の機会を~ 特別な支援が必要な子どもや、家庭環境等が要因となって十分に学ぶ機会が保障されてい ない子どもに対し、適正な学習の場・機会を保障することは教育の基本ともいえる重要な課 題であり、優先して取り組んでいく必要があります。 【願う子どもの姿・環境】 ①自分の良さを伸ばしていかれる子ども。 ②学びの芽を伸ばしていかれる子ども。 ③自分の育ちや発達の喜びが感じられる子ども。 ④集団の一員としての自覚がもてる子ども。 ⑤自分の力を発揮できる環境にいられる子ども。 【学校における取り組み】 ①校内就学支援委員会の充実を図る。 ②小中の連携を密にし、スムーズな移行支援を行う。 ③必要に応じ、プレ支援シートを活用して、個別の指導計画、個別の教育支援計画を作成し、 支援の充実を図る。 ④家庭環境について関係機関と連携を図る中で把握し、就学援助・支援金事業等につなげる。 【教育委員会としての施策】 ・ 適正な就学支援と相談体制の充実を図る。 ・ 幼・保・小・中学校等、関係機関の連携による個々の教育的ニーズに応じた支援をする。 ・ 発達障がい児支援担当者会議を通じた発達障がい児施策を実施する。 ・ 特別支援教育支援員の資質向上のための研修機会を充実させる。 ・ 就学援助費、大工原朝代記念基金就学等支援金による支援を行う。 ・ 佐久市奨学金の安定かつ円滑な運営を行う。 9 基本目標 6 ~ コミュニケーション活動の充実を! ~ 国際化が進展する中で国際感覚を身につけるためには、自国文化理解のもとに、互いの 国や地域の文化・宗教・価値観等に触れることを通して、それぞれがかけがえのない尊さ を持つ存在であることを理解し、その上で良好な関係を築いていくコミュニケーション能 力を育成することが必要になります。 【願う子どもの姿】 ① 我が国の文化について正しく理解する子ども ② 国や地域による、それぞれ独自の文化や宗教・価値観について理解する子ども ③ 世界における社会的な出来事に関心を寄せ、自分の考えを持てるこども ④ 関わる人に、かけがえのない尊さを持つ存在として接することができるこども ⑤ 環境や限りあるエネルギー等について自分が、そして自分たちができることを考えら れる子ども 【 学校における取り組み】 ① 日本の伝統文化および現代の社会情勢、社会的な出来事等について学ぶ機会を教科や 特別活動、学校行事等において横断的に取り入れていく。 ② 諸外国の方との交流を取り入れた学習や、諸外国の文化を知ることができる体験的な 学習を推進する。 ③ その時々の社会的な出来事を題材にした学習を積極的に取り入れる。 ④ 国や地域が違っても互いが尊重し合うべき存在であることが理解できる学習を取り 入れる。 ⑤ 小学校外国語活動と中学校英語学習のつながりを図る小中連携のとれた学習を推進 する。 ⑥ 環境やエネルギー、食糧などの現代的な課題追究を通してグローバルな見方を高める 教科学習や総合的な学習を工夫する。 【教育委員会としての施策】 外国語指導助手(ALT)の配置及び地域英語ボランティアなどの、人材活用への支援 外国語教育の研修や指導計画の作成、小中連携による指導研究への支援 パソコンや視聴覚機器など、実感的で具体的な理解を図るための教育設備の充実 市内在住の外国人や海外姉妹都市との交流体験活動への支援 中学生の海外(アメリカ合衆国及びモンゴル国)研修や、モンゴル国の子どもたちの受 入れによる交流体験活動の推進 武道、和楽などを学ぶ環境や伝統芸能に触れる機会の充実 10 基本目標 7 地域を知り、地域を愛する子どもの育成 ~ 地域の「 ひと・もの・こと」との触れ合いを! ~ 子どもたちが地域の豊かな文化や伝統に接し、その保存・継承の活動に参加することで、 郷土愛や地域への誇りを育むことが重要です。そのために、地域の人材を活用したり、地 域の活動や行事に積極的に関わったり、先人の生き方に学んだりする学習を推進するとと もに、具体的な体験的学習を通して、多くの「ひと・もの・こと」と触れ合い、豊かな人間 性を育むことが必要です。 【願う子どもの姿】 ① 地域の先人の生き方や、文化、伝統について進んで学ぼうとするこども ② 地域の文化や伝統の良さに気づき、その保存と継承に関われる子ども ③ 地域の「ひと・もの・こと」と進んで関わり、共に生きようとできる子ども ④ 地域に、そしてわがまち佐久に、誇りをもてる子ども 【 学校における取り組み】 ① 先人に関する読み物学習や地域教材、資料等を活用した学習を推進する。 ② 地域の行事や遺産等を通して地域の方々と関わり、地域の一員としての意識や態度 を育てる。 ③ 学習ボランティアや見守り隊等の学校を支える各種団体を束ねて信州型コミュニテ ィ・スクールへと移行を図る。 ① 信州型コミュニティ・スクール等を活用し、地域の良さや佐久の良さについて積極的 に学び、共有する機会をつくる。 【教育委員会としての施策】 佐久の自然や地理、歴史、文化などの地域素材の発掘への支援 信州型コミュニティ・スクールに関する先進的な取り組みの市内共有と移行促進 先人に関する読み物「佐久の先人」や小学校副読本「ゆめ・花・さくし」の学習へ の活用の推進 「ゆめ・花・さくし」の改訂、「佐久 市内の文化施設のなどによる出前講座の推進 「先輩は夢先案内人」「市内文化施設巡り」など、子どもに夢を育む事業の推進 青少年健全育成や安全・防犯活動など、地域と連携した諸活動への支援 教育委員会ホームページを通した各種イベント・地域行事などの案内や子どもたちの 姿の紹介 11 わがまち市民講座」の推進 基本目標 8 望ましい学習環境の整備 ~明るく、充実した環境のもとで!~ 学校施設の整備、校舎内外や教室環境の整備は、子どもたちの適切な学びを保障するととも に、仲間とともに楽しく、前向きに過ごせる快適な場所な空間を提供します。子どもたちの安 全安心を第一に心がけるとともに、より過ごしやすい環境づくりに向けて協働していく必要が あります。 【学校における取り組み】 ①職員により、校舎内外の管理分担場所の月 1 回程度の安全点検を行うとともに、日頃より環 境に注意を払い、危険箇所等がある場合には児童・生徒の安全確保を図る。 ②危険箇所や破損箇所等があったら直ちに教育委員会と連携して改善などの対応をする。 ③子どもが学校生活を安全安心に送るために改善が必要な環境等がある場合は、教育委員会と 連携して改善などの対応をする。 【教育委員会としての施策】 <佐久市内の学校教育施設の充実に向けて> ・非構造部材の耐震化に基づく調査により、屋内運動場等吊天井改修が必要となった施設の改 修工事を平成 29 年度までに実施する。 ・老朽等による危険箇所の修繕等はもとより、児童生徒が快適な学校生活を過ごせるよう、時 代のニーズに対応した環境改善に努める。 ・児童・生徒用トイレについて、洋式トイレの割合がおおむね 50%以下の施設を対象に順次洋 式化を図る。 ・今後の改築計画にあたり、財政状況等も踏まえ、従来の全面改築だけでなく、施設の老朽化 の状況に応じて長寿命化改修への転換を図ることが求められることから、公共施設マネジメ ントの観点もふまえた長寿命化計画策定のための準備を行う。 <各学校における環境の充実> ・平成 26 年度から実施している岩村田小学校全面改築事業については、平成 31 年度完成を目 指し、引き続き事業を推進する。平成 28 年度中に普通特別教室棟の完成を見込む。 ・平成 23 年度から実施している望月中学校全面改築事業については、引き続き武道場・プー ル及びグラウンド整備等を実施し、平成 28 年度中に全ての完成を見込む。 12 Ⅴ 重点目標とその実践 佐久市が目指す子ども像『夢や希望を持って輝き、ともに生きる子ども』の実現を図るために、 「学習力の向上」を基底に、 「ともに学び合う授業づくり」や「9年間を見通したすべての子ども の力が伸びる授業の創造」を重点とします。 【重点目標1】 すべての子どもが意欲をもって学習に参加し、ともに 学び合う授業づくり 子どもたちの学びの道筋は多様であり、その個性的な道筋を生かすことが一人一人の子ど もに学習力の伸長を促していきます。また、子どもたちは他者の考えに触れることによって、 自分の考えを修正したり発展させたりしながら、学びの内容や方法を豊かにしていきます。 そこで、授業づくりに当たっては、 ○ それぞれの子どもが、自分なりの考え方やこだわりを抱く場面提示や発問の工夫 ○ 一人一人の子どもがありったけの知恵と力を出し合い学び合う中で、考えの違いや共 通点を考察したり、事象や資料などに立ち戻って考えたりする学習の実践 を大事にし、学習力の向上を図っていくことが望まれます。 また、このような共に学び合う学習を生み出すには、支え高め合う学級集団づくりが不可 欠です。子どもたちは、それぞれの違いや良さを認め合い安心して学び合える集団の中でこ そ、互いの考えやスキルの違いを受け止め共に育っていくことができるものです。そんな学 級づくりを基底に置きながら、以下の点を大事にして研究を進め、授業改善に取り組みます。 【実践内容】 ① 一人一人の考えが尊重され、それぞれの思考の道筋を生かす授業の展開 ② 付ける力と手立ての明確にした確かな教材研究 ③ 子どもの追究意識(意欲)に基づいた学習問題の設定 ④ 自分の考えを言葉や図、式などで表現する時間や場の確保 ⑤ 互いの考えや思い、感動などを、伝え合い高め合う学習の工夫 ⑥ 一時間の学習を見返し、自らの学びの自覚化を図る評価活動の設定 ⑦ 友だちとの関わり合いがつくりやすい、学習形態の工夫 ⑧ 学びの足跡が見えるノートや作品、まとめへの配慮 以上のような「重点目標1」の実践を通して、佐久市が願う学習力の向上を図っていきます が、そのための実践の視点として示したものが、次ページの『子どもたちの学習力を高めよう!』 です。各学校においてもこれを授業改善・充実の基盤に据え、具体的な取り組みに務めます。 13 ※ 学習力とは、知りたい・出来るようになりたいという意欲を 【学び合う力をつけよう】 持って、他者と関わりながら粘り強くより良い考えや方法 ○ 子どもの追究意欲を生みだす事象提示の工夫 ○ 自分の考えを持つ場の保障や、追究の見通しが持てる支援 を追求する中で、課題を解決していく総合的な実践力。 ○ 考えや思い、感動などを伝え合い共有し合う場の充実 ○ 子どもの課題や追究方法に応じた学習形態の工夫 ○ 一時間の学習を振り返る自己評価や相互評価活動の工夫 【読む力・書く力をつけよう】 ○ 「教科書を読む活動」の位置づけ ○ 辞書や事典、新聞などを活用した学習活動の位置づけ ○ レポート・新聞づくりなど、文章表現活動の位置づけ ○ 学びを深めるノートづくりへの支援 教 師 用 学習力の高まり ‐14‐ ○ 朝読書などの読書活動の充実 【家庭学習力をつけよう】 ○ 予習や復習につながる授業の工夫 ○ 個性化・個別化を図る内容の工夫 ○ 自己課題を見つけ、学習計画を立てる力の育成 ○ 日記や読書など、活字に親しむことへの働きかけ ○ 家庭学習への意欲が高まる評価 ○ 「家庭学習の手引き」をもとにした家庭との連携 【重点目標2】 小から中へと学びをつなげていく教育の推進 義務教育の9年間は、子どもが知的にも体力的にも精神的にも大きく成長をしていく時期 であり、育ちという面から考えると、この9年間に切れ目はないはずです。9年間を見通し て、学び方や学ぶべき内容などのつながりや積み上げを大事にして指導に当たっていくこと は、生きる力を育てる上で不可欠です。とりわけ、小学校から中学校への進学は、心身の変 化が伴う大きな節目であり大事にしなければなりません。したがって、小学校から中学校へ 学びをどうつなげていくかは極めて重要なことです。そのためには、小・中学校が互いにそ れぞれの子どもの特質と特徴を理解し、 ○ 今、目の前にいる子どもたちがどんな学びを経て、どんな育ちをしてきているか。 ○ 今の学習が次にどう発展し、義務教育として最終的にどんな力をどう培っていくか。 を共通理解しながら、協働して教育活動に当たることが肝要です。そこで、以下の点を大事 にして取り組みます。 【実践内容】 ① 教科の特性を踏まえた、9年間の系統性ある指導内容の研究 ② 発達段階に応じた「学習力」の向上を図る指導の研究と実践 ③ 中学校区単位での小・中間の情報交換や授業研究・相互研修の推進 ④ 小から中、中から小への参加型体験学習や職員間の交流 ⑤ 小中の系統性を持った家庭学習のあり方、子どもが自分なりの家庭学習計画を立てら れるといった学習の習慣化に関わる指導の共有化 ⑥ 保護者や地域住民の教育活動への参加など、開かれた学校づくりの工夫(信州型コミ ュニティスクールの立ち上げと充実 以上のように「重点目標2」の実践を通し、小中が協働・連携して教育活動に当たるため、佐 久市では次ページに示す『佐久市教育推進委員会』を設け、授業改善や部活動運営、不登校等の 指導改善等について中学校区ごとの具体的な実践を進め、学びの充実を図ろうとしてきています。 15 佐久市教育推進委員会 1. 目 的 小学校・中学校の9年間を見通して、子どもの学びをつないでいくことが大切です。その ためには、小中の連携を深め、指導の方針や方向を共有していくことが必要です。 そこで、佐久市では中学校区ごとに教育推進委員会を設けて、小中学校の教職員が共に学 習力向上に向けた授業研究や心身共に健康な子どもの育成に向けた教育実践を積み重ね、 9年間の学びの充実を図っていきます。 2. 組 織 佐久市教育委員会 佐久市学校教育基本目標 佐久市校長会 スポーツ活動 運営委員会 運営委員会 ・教育推進に関わる運営 研究の方向性の提案 中学校区教育推進委員会 ・部活動の運営について 意見交換 ○ 地域スポーツ指導者 ○PTA役員、保護者会 ○市スポーツ推進委員 ○整復師 等 ○ 委員長 ・校長(1 名) ○ 副委員長 ・教頭(1~2 名) ○ 委 員 ・教務主任 ・生徒指導主事(係) ・研究主任 ・特別支援教育担当者 他 ・スクールメンタルアドバイザー ・主幹指導主事 学校運営支援員 ☆ 事業内容や協議事項などにより委員等参集者を委員長が決定する。 ○各学区副委員長 中学校区重点目標 中学校区実施事業計画 実践の見返し 市内小・中学校 ◎ グランドデザインに基づく教育活動の実践 ◎ 小中の連携に基づく学校運営の改善・生徒指導対応の実践 信州型コミュニティスクール 校区、中学校区で連携 地 家 域 庭 ※ 【PDCA】Plan(計画)・Do(実行)・Check(点検評価)・Action(処置改善)の略。4 段階を順次実施 し、次の PDCA サイクルにつなげることで事業の質的向上(スパイラルアップ)を図っていく手法。 3. 運 営 (1) 委員は協議内容に応じて参加し、研究内容が各学校で具現するよう実践を推進する。 (2) 各中学校区の実践を学び合うために、年度の中間で教育推進協議会を実施する。 16 Ⅵ 各種調査からみる本市小中学生の特徴 「はじめに」で、 「各種調査で得られた結果にも注目しながら、各校に共通してみられる状況等を中 心に傾向をまとめる」と紹介しましたが、最初に、学力等を数値等でみていこうとする際に注意したい 点を挙げておきたいと思います。 ◆ 数値でとらえやすい学力と数値ではとらえにくい学力 例えば、学習への関心・意欲などは客観的にとらえることが難しい学力です。また、知識・技能に 比べて、課題解決に必要な思考力・判断力・表現力などの学力も、見えにくい要素を多く含んでいま す。よって、特に平均正答率については、少なくともそれが学力の全てではないという認識を改めて もった上で結果の活用を図る必要がありましょう。 ◆ 数値によるレッテルと数値の一人歩き 小学校の通知表では、教科等の成績が言葉や記号で伝えられます。中学生であっても、数値による 評定が「ダメのレッテル」を貼ってしまう危険性を有していることに十分留意して指導する必要があ ります。数値が、あいまいな衣を着て不本意な「一人歩き」をしてしまうこともありますので注意し たいところです。 ◆ 平均正答率と回答者%で示されるデータの違い 学力向上に向けた歩みは、各校において(さらには児童生徒一人一人において)どんな課題がある かを明らかにすることから始まります。佐久市では市全体の平均正答率は示しておりませんが、それ は、高得点と低得点が平均された結果をみても各校の課題はみえてこないからです。そこで、市全体 の傾向については文章表現で概説することにしました。 それに対し、市内小中学生のそれぞれ何%がこのような状況であるというようなデータについては、 課題把握に直結する傾向として、数値を示しながら考察しています。 ◆ 母集団規模のこと(全国:100 万人、県 2 万人、佐久市 900 人、自校○○人) 自校の調査結果について年変化を追いかける場合、平均正答率などは気をつけないと統計的に不合 理な比較をしてしまうこともあります。特に母集団が小さい場合には安易な比較は危険です。全国は 100 万人規模ですので比較参照の対象としてはベストでしょう。 また、全国学力・学習状況調査の結果については、最高学年のデータではありますが、学校の実態 を代表するのに十分なデータであるとは必ずしも言えない点も承知してとらえる必要がありましょ う。 ◆ 全国学テと CRT 全国学テは、小6でいうと小1~小6までの問題が出題されますが、量からして学習したことの一 部ではあります。一方 CRT は、当該学年の詳しい学習内容が出題されますから、その学年について はより丁寧な点検ができることになります。 17 平成 27 年度 全国学力学習状況調査の結果から (平成27年4月21日 実施) 文部科学省では、次の目的で小学校第6学年,中学校第3学年 原則として全児童生徒を対象に 「全国学力・学習状況調査」を毎年実施しています。今年度は小学校の国語、算数、理科、中学校 の国語、数学、理科で行われました。 (理科は平成 24 年度以来3年ぶりの実施:平成 24 年度は抽 出校のみ実施)国語と算数・数学は基礎知識を問うA問題と、知識の活用力を問うB問題からなっ ています。 ・務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・ 分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る。 ・そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する。 ・学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。 以下は、佐久市内小中学校における結果考察の概要です。これは、佐久市内小中学校の全体的な 傾向ですので、どの学校にもそのまま当てはまるものではありませんが、各校が自校の課題や改善 策をより明確化するための一助としています。 (1) 佐久市内小中学校の平均正答率の状況 <小学校国語> ◎全国と比べ、A・Bともに、全国と「ほぼ同じ」水準にある。 〔成績分布状況〕 A・Bともに中位から上位にかけて多い分布になっている。 〔参考となる傾向〕 目的や意図に応じて文を書く力は伸びてきた。新聞やコラムを読み理解し要約するこ と、学年に応じた習得すべき漢字等を正しく書くことに課題が見られる。 小 国語 A 小 国語 B <小学校算数> ◎全国と比べ、Aは「ほぼ同じ」水準にあり、Bは「やや下回る」。 〔成績分布状況〕 Aは上位が多いが、Bは中・下位にたまる高原状に近い分布である。 〔参考となる傾向〕 量と測定や数量関係についての理解に不十分さが見られる。また、示された情報を基 に条件に合う数値を求めることや図形領域等で筋道を立てて理由を述べることに課題が見られる。 小 算数 A 小 算数B 18 <中学校国語> ◎全国と比べ、A・Bともに、全国と「ほぼ同じ」水準にある。 〔成績分布状況〕 A・Bともに上位にかけて多い分布になっている。 〔参考となる傾向〕 伝えたい事柄を相手に効果的に伝わるように書くことや、語句の意味を理解し適切に 使うこと、読み取った内容をもとに自分の考えをまとめ書く等「話すこと・書くこと」力の伸び が見える。しかし、表現の技法や長文・説明文を読み取り理解することに課題がある。 中 国語 A 中 国語 B <中学校数学> ◎全国と比べ、A・Bともに、「やや下回る」。 〔成績分布状況〕 Aについては全国と同様に平らな高原状態。Bについても、全国と同様な下・中 位が多い分布になっている。 〔参考となる傾向〕 「数と式」など計算力や資料を基に値を求める数学的な技能面の力の伸びが見ら れる。しかし、B問題では全ての領域で課題が見られるが、特に図形、関数、資料の活用が 弱い。また、記述式解答に抵抗があり無解答率が高い。昨年度同様に、問題の意味を捉え、 言葉や図表・式などを使い論理的に筋道を立て説明できる力や応用する力に課題。 中 数学B 中 数学 A 19 <小学校理科> ◎全国と比べ、「ほぼ同じ」水準にある。 〔成績分布状況〕 中位から上位にかけて多い全国値と同様の分布になっている。 〔参考となる傾向〕 生命領域での観察実験、自然事象への知識・理解が見られる。反面、電磁石、振 り子等などのエネルギー領域や物質領域において、実験やグラフを基に考察しその内容を的 確に記述する面に課題がある。 小 理科 <中学校理科> ◎全国と比べ、「やや下回る」。 〔成績分布状況〕 全国と同様中位が膨らむなだらかな高原状態分布になっている。 〔参考となる傾向〕 「生物」領域における知識理解は高く全国とほぼ同じ水準が見られる。しかし、 他の領域は全国に比べやや下がる。特に「地学」領域では、自然事象について科学的に原因 や成因を正しく説明することに課題が見られる。そのため記述解答も弱い。 中 理科 20 (2) 無回答率の状況 (選択肢から選択しない、記述式で記述しない 割合%) 各教科の佐久市全体の無回答率を全国比でみると以下の傾向がみられます。無回答の要因は一 概に断定はできませんが、国立教育政策研究所の考察によれば、「書く分量が多い等の理由で最 初から手を付けていない」という理由が挙げられています。特に無回答率が高い教科については、 こういった学習(挑戦)意欲の欠如の要因を明らかにし、対応を考えていく必要があります。 <小学校国語、算数> 平成 26 年度は全国比で無回答の割合が少ない傾向が見られましたが、平成 27 年度は、昨年度 と比較してやや無回答の割合が多くなる傾向がみられます。 特に国語Aは昨年度も国算ABの 中で唯一、全国比で無回答の割合が多かったのですが、今年度はさらに無回答の割合が多くなり ました。国語Aにおける今年度の記述式問題の平均正答率が際だって全国を下回っており、記述 形式の問題への挑戦意欲の有無が無回答率に影響した可能性があります。記述形式の問題の平均 正答率の低さは国語Bについても言えることで、国語B全体の平均正答率を押し下げ、無回答の 割合を昨年より増加させている要因とも考えられます。 8 6 4 2 0 小学校国語 9.2 10 佐久市 7.4 全国 3.9 2.4 2.3 5.1 6.1 8 佐久市 国語A 国語B 平成 27年度 0 9.1 全国 3.6 4 3.2 8.2 6 2 国語A 国語B 平成 26 年度 小学校算数 10 4.3 1.6 1.8 0.6 0.9 算数A 算数B 平成 26 年度 算数A 算数B 平成 27年度 <中学校国語、算数> 昨年度は国数AB全てにおいて無回答の割合が多い傾向が見られましたが、今年度は国語Aで 無回答率が全国比で無回答の割合が少なくなり、他も全体に改善が見られます。それに伴い、平 均正答率も国数AB全てで向上が見られ(昨年度比)、特に国語Bについては昨年度比で8%以上 も上昇するという結果でした。前述の国立教育政策研究所の考察のように、学習(挑戦)意欲の向 上が無回答率の低下や平均正答率の向上に影響を及ぼしていることが推察されます。 中学校国語 5 4 3 4.2 3.5 3.1 3.4 佐久市 国語A 全国 国語B 平成 27年度 2.6 2.5 2.2 2 2.2 1 0 国語A 国語B 平成 26 年度 国語A 国語B 平成 27年度 21 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 中学校数学 佐久市 13.5 11.3 全国 5.6 4.5 数学A 数学B 平成 26 年度 16.5 15.3 4.3 3.8 数学A 数学B 平成 27年度 <小中学校理科>(理科は平成 24 度以来の実施のため昨年度との比較は不可) 無回答の割合が小学校では全国とほぼ同じ、中学校では無回答の割合が多い傾向が見られます。 全体の平均正答率も、その割合に伴って小学校が全国とほぼ同じ、中学校が全国よりやや下回っ ています。 国・算・数と同様に無回答率と平均正答率とは少なからず相関関係があることから、学習意欲の 現れの1つともいえる無回答率の結果からも、意欲関心の持たせ方や、課題解決的な学習の展開 の工夫が必要であると考えられます。 理科 5 4 3 3 3.2 4.3 3.8 佐久市 2 全国 1 0 小学校 中学校 平成 27年度 22 ふれあい (3) 設問別の正答率に見る特徴から <小学校の設問から 1> 国語B 1-三 地域のおじいさんやおばあさんとふれあう交流会を行った東小。 ふれあい新聞に、あやとりコーナーに参加された中田さんへのインタ また、参 加され た 中田とよ さんは 、 ビューの様子をまとめて掲載することに。 以下の条件に合わせて記事づくりをする。 * の理由がわかることばと、 “表情や声の調子”を合わせて、 1文で書く。40字以上、70字以内。 表情や声の調子 ・目を細めている ・明るい声 【中田とよさんへのインタビューの様子】 <話した内容> *あやとりのコーナーに参加してよかったわ。 それはね、1年生のみんなに様々な形を教えて あげたら喜んでくれたからなの。みなさんも準 備が大変だったことでしょうね。町で会ったと きにはいつでも声をかけてください。今度の案 内も楽しみに待っていますね。 佐久市 36.0 61.5 2.5 正答率 誤答率 全 国 34.7 0% 20% 61.3 40% 60% 4.0 80% 無回答率 100% この設問は、国語AおよびBにおいて全国平均正答率が最も低い難問です。目的や意図に応じ、取材 した内容を整理しながら記事を書くことができるかどうかを見る問題です。“中田さん”に関する記事 づくりに関して、①喜んでくださった理由を書く、②“表情や声の調子”を含める、③40字以上、7 0字以内で書く、 という3つの条件を満たして解答する必要があります。佐久市全体の傾向としては、 全国と比較して正答率が高く、無回答率も低い傾向にあります。昨年度の本調査の国語Bにおいても、 全国平均正答率が最も低い難問で同様の傾向が見られていることから、ここ数年の佐久市全体の傾向と して「B問題が苦手な傾向がある」 「文章で答えることを苦手とする傾向がある」というものがありま したが、記述式の難問にも前向きに取り組み、結果を出しつつあることを示す1つの例と考えられます。 しかし、今年度調査の国語A、国語B、共に記述式問題全体の平均正答率が低い傾向があることから、 今後も佐久市コスモスプランの「読むこと」 「書くこと」について、「様々な着眼点から解釈し(読むこ と)、考えたことを整理して書く(書くこと)こと」に重点を置いて進める市内各校の取り組みを持続し ていく必要があると考えられます。 23 <小学校の設問から 2> 算数B 2-(1)(2) たかこさんはおつかいに行きます。 2-(1) トマト7個の代金が最も安くなる買い方は下のどれですか? 1 1個入りパックを7つ買う 2 2個入りパックを3つと1個入りパックを1つ買う 3 2個入りパックを2つと3個入りパックを1つ買う 4 3個入りパックを2つと1個入りパックを1つ買う 佐久市 59.2 40.5 0.3 正答率 誤答率 全 国 64.8 34.9 0.3 無回答率 この設問は、佐久市平均正答率と全国平均正答率との差が最も大きい結果となりました。出題の趣旨 は「日常生活の事象に、割合や単位量あたりの大きさを活用して、合理的かつ適切な判断ができるかど うか」とあります。 この問題において、4つの選択肢の金額を全て計算し、結果を比較して一番安い選択肢を答える方法 (1:700 円、2:640 円、3:630 円、4:640 円)は、確実な方法ではありますが答えを導くまでに時間 がかかり、計算ミスも起きやすくなります。より効率的な方法は、まず各パックのトマト 1 個あたりの 金額を求めて、できる限り安い組み合わせを考えることです。この場合、1 個入りは 100 円、2個入り・ 3個入りはどちらも 90 円ということがわかり、100 円のトマトの数が少ないほど(90 円のトマトが多い ほど)代金が安くなることがわかります。したがって 100 円のトマトが1つも含まれない「3」が一番 安いという答えを比較的簡単に導き出すことができます。実際に買い物に行ったとき、いちいち全ての 組み合わせを計算することは実用的ではありません。まず 1 つあたりの単価を計算して、安い組み合わ せを考えるのが現実的です。こういった効率のいい考え方は、日常生活の中で養われるものでもあり、 授業の設定場面の工夫が有効です。また、算数の授業において子どもたちは、答えを導き出す方法をた くさん思いつきます。全ての方法を認めつつも、より効率の良い方法を追究することで前述のような力 を付けると共に、「より効率の良い計算方法 → 公式」という認識が育っていきます。 24 2-(2) 家で使っている洗剤が20%増量して売られていました。 増量後の洗剤の量は480ml です。 増量前の洗剤の量は何 ml ですか。求める式と答えを書きましょう。 佐久市 8.3 87.7 4.0 正答率 誤答率 全 13.1 国 0% 82.8 20% 40% 60% 4.1 80% 無回答率 100% この設問は佐久市全体の正答率が 8.3%と算数Bの中で最も正答率が低く、全国平均の正答率より5 ポイント近く低くなっています。2-(1)と同様に、日常生活の事象の解決に割合や単位量あたりの 大きさを活用して、合理的かつ適切な判断ができるかどうかをみる設問です。 【増量前×1.2=増量後 → x×1.2=480 → 逆算から 480÷1.2=400】という流れで考えるこ とで解けます。 佐久市全体の解答類型を見ると「増量後の 480 ml の 80%に当たる量を求めた:480×0.8」 等が 29.7%あります。 『20%増量したのだからもとは増量後の 80%に当たる』と考えたようです。正解 にはなりませんが、ある程度理解できる考え方です。それに対して「480÷0.2=2400 ml」 「480×0.2 =96 ml」 「480×20=9600 ml」といった正解とはかけ離れた数値の解答が 41.5%もありました。 「480 ml より、少し少ない量になる」という感覚は設問の絵を見てもわかるのですが、答えが 2400 ml、96 ml、 9600 ml というのは、 「このぐらいの量になりそうだと」いう見通しもないまま、問題中の数字を単に かけたり割ったりしている現状が見えます。 何を問われているのかを理解し、見通しを持って取り組む姿勢の不足を感じます。こういった力をつ けていくには、子どもの意識の中に「課題」が据わるような授業が日々行われていることが重要である と感じます。また、 「2割引」 「20%引き」 「20%増量」といったキャッチフレーズは日常生活の中 でよく見かけることから、日常生活に結びつけた学習の工夫を進めていく必要もあります。 25 <中学校の設問から 1> 国語A 6-二 【回答案A】の冒頭に、次の一文を入れて掲示することにしました。 に当てはまる適切な言葉を 18 字以内で書きなさい。 という要望について回答します。 佐久市 73.9 19.6 6.5 正答率 誤答率 全 国 66.4 25.0 8.6 無回答率 この設問は、伝えたい事柄が相手に効果的に伝わるように書くことができるかどうかをみる設問です。 佐久市全体の正答率は 73.9%であり、全国平均正答率 66.4%を大きく上回っています。また、無回答 率も全国平均と比較して低くなっています。回答する相手の立場に立って回答するには、要望の趣旨を 理解してより効果的な構成を考えなくてはなりません。また、【回答案B】もあることから、両回答を よく読んで総合的に考える必要もあります。 「朝の水やり」という言葉を入れると 18 字以内という制限 内に収まらないことから、 「放課後も」の表現を使うことで、朝夕どちらもという意図が伝わるように しなくてはなりません。この設問の正答率に代表されるように、佐久市内の中学校全体の傾向として、 記述式の設問に対して全国平均とほぼ同等あるいはそれ以上の正答率を示しています。それに伴い、国 語A・Bともに全国比の平均正答率が平成 26 年度より上昇しており、問題文や問いをよく読んで主旨 を理解し、回答しようとする姿勢が育ちつつあることがうかがえます。 26 <中学校の設問から 2> 数学B 2-(1)(2) 連続する3つの整数の和がどんな数になるかを調べます。 1, 2, 3 のとき 1+ 2+ 3= 6=3×2 3, 4, 5 のとき 3+ 4+ 5=12=3×4 予想 連続する3つの整数の和は、 中央の整数の3倍になる 10,11,12 のとき 10+11+12=33=3×11 これらの結果から、右のように予想できます。 (1) 連続する3つの整数が 19,20,21 のと (2) この予想がいつでも成り立つことを説明します。 き、予想が成り立つかどうかを下のように確 下の説明を完成しなさい。 かめます。 説明 下の に当てはまる式を書きな さい。 連続する3つの整数のうち最も小さい整数を n とすると 連続する3つの整数は n,n+1,n+2と表される。 それらの和は 19,20,21 のとき n+(n+1)+(n+2)= 19+20+21=60= (1)の正答率 79.3 佐久市 全 78.8 国 (2)の正答率 0% 20% 15.2 6.0 40% 35.1 佐久市 全 15.2 5.5 60% 33.8 43.1 国 0% 10% 20% 80% 30% 40% 50% 60% 80% 無回答率 正答率 誤答率 24.0 70% 誤答率 100% 31.1 32.9 正答率 90% 無回答率 100% 具体的な事象の中に数量の関係を見いだし、それを文字を用いて式に表現したり式の意味を読み取っ たりする能力をみる設問です。(1)の佐久市全体の正答率は 79.3%で全国平均よりも高く、無回答率も 低い結果が出ています。しかし、(2)で「事柄が成り立つ理由を、構想を立てて証明する」ように求め られると正答率は 35.1%となり全国平均を大きく下回るとともに、無回答率も全国を大きく上回る結 果となっています。(1)の設問で「3×20」または「20×3」と解答し、 「連続する3つの整数の和 は、中央の整数の3倍になる」ということが理解できているにもかかわらず、「文字を用いた式に表し て説明する」ことを求められると、途端に抵抗感を持つ生徒が多くなる傾向がうかがえます。前ページ で示した国語ではA・Bともに問題文や問いをよく読んで主旨を理解し、回答しようとする姿勢が育ち つつあることが見えていますが、数学では理解できている事柄ではあっても「証明する」「説明する」 段階に抵抗感を持つ生徒がいることがわかります。授業の中では、結論の正解を求めるだけでなく追究 の過程を大切に扱い、その評価もしていくことで生徒の意欲を育てていきたいところです。 27 (2)教研式CRT標準学力検査の結果から 佐久市教育委員会は、児童・生徒一人ひとりの基礎学力の定着状況を把握し、今後における学習 力の向上と学習指導の改善に役立てるため、市内小中学校において、教研式CRT標準学力検査を 実施しています。 ① 検査の概要 検査期間 平成 27 年 1 月 検査学年 〔小学校〕4~6年 〔中学校〕1~3年 検査教科 〔小学校〕国語・算数・理科 〔中学校〕国語・数学・理科・英語 ② 検査結果の概要 小学校 中学校 【国語】 4年は全国をやや下回るが、5・6年はほぼ同じ水準にある。 【算数】 4・5年は全国をやや下回り、6年はほぼ同じ水準にある。 【理科】 4~6年が全国をやや下回っている。 【国語】 1~3年が全国とほぼ同じ水準にある。 【数学】 1年は全国とほぼ同じ水準にあるが、2・3年はやや下回っている。 【理科】 1~3年が全国をやや下回っている。 【英語】 1~3年が全国とほぼ同じ水準にある。 ③ 課題と授業改善の方向 【国語】小学校の「読む力」、中学校の「書く力」、小中共通で「言語事項の知識・理解」の向上を図りたい。 そこで、 ○物語や解説文、報道文など多様な文を教材として取り入れ、長文を読み込む学習を位置づける とともに、学年に応じた読解力を高める指導の工夫や改善を進める。 ○日記や生活記録、手紙などを書いたり新聞や本を読むなど読書活動に親しむ習慣を一層身につ けるとともに、様々な場面で辞書や事典などを効果的に使う活動も位置づける。 ○自分の考えを文章にまとめる学習を取り入れたり、ディベートなどの話し合い活動を活用した りして、言語力を高める指導の充実を図る。 【算数・数学】小中共に「数学的な考え方」「知識・理解」「数学的な技能」の向上が望まれる。 そこで、 ○個人で考え追究する場を位置づけ、自分の考えを図や記号を使って表現したり数式や言葉の式 で表したりするなど工夫した活動を展開する。 ○共同追究の場を大切にし、多様な考え方に触れながら、子ども自らが追究する授業づくりを工 夫する。 ○つまずきに応じた補助教材を準備する等、子どもの理解を深める教材や手だてを工夫する。 ○導入からまとめまでの一連の学習活動を確実に行うとともに、個々の子どもの状況に応じた練 習や振り返りの場を保障し、確かな定着や発展を図るよう指導を工夫する。 【理科】小中ともに「科学的な思考・表現」と「知識・理解」の向上が望まれる。そこで、 28 ○観察や実験を重視し、結果や考察を図や表、言葉で表現するなどまとめる活動を工夫する。 ○観察や実験の結果をもとに話し合い、互いの考えを取り入れ深めながら、子ども自らが真理を 発見していく学習活動を大事にする。 ○学習過程を振り返る場を保障し、文章や図でまとめるなど定着を図る指導を工夫する。等々 【英語】「言語・文化の知識・理解」の向上が望まれる。そこで、 ○ALT の効果的な活用や多様な学習形態を工夫し、豊かなコミュニケーション活動の展開を図る。 ○読むこと・書くことと関連づけたコミュニケーション活動や子どもが主体的に追究する定着活 動を工夫し、学習内容の確かな積み重ねを図る。 等々 ④ 学力向上へ向けた取り組み 学習力の向上に向けては、教科ごとの授業改善に向けた取り組みに加え、全教科に共通する具体的 な取り組みについても共通理解し、以下の取り組みを横断的に推進していかれるようにしたい。 〈効果的な学習が営める支援として〉 ○子ども自らが追究し課題を解決する喜びや、友と学び合う楽しさを味わえる学習活動を工夫する。 そのためにも、学び合いを共有し支え合う良好な学級集団づくり・学級運営を大事に育む。 ○日常の生活場面や身近な自然事象を進んで教材として取り入れるなど、教材化や学習場面を工夫し、 子どもたちが自ら問題を見い出し主体的に問題解決に取り組む学習力が培えるよう努める。 ○子ども一人一人が自分の伸びを実感できる、評価の工夫と助言指導の充実。 〈つまずいている子どもへの細やかな支援として〉 ○子どもひとり一人の素地能力(集中力・発想性・インスピレーション能力・持続力・応用力そ の他等)を培い高めるモジュール学習等(ドリル・帯学習も含む)の効果的な取り組み。 ○小・中9年間の成長過程を踏まえ段階的学習の再検討と定着不十分な学習の指導改善を図る。(小 中系統的な育成の充実。小学校低学年学習でののびのびとした心身の成長を培いながら仲間づく り・他との関わり、学習習慣等の定着を育む野外活動や体験学習等の充実。中学年での学び合い学 習の育成。高学年や中学校での抽象的・論理的な思考の育成等。) ○ティーム・ティーチング(複数の教師が協力して行う授業)が個々の子どもへ細やかな指導ができる よう工夫・改善し進める。 ○家庭学習の充実として、予習や復習も含めた主体的な家庭学習に向けた原動力となる意欲を生み出 す助言や支援。子どもたちの家庭生活へ大きな影響を与えている電子メヂィア過剰摂取に対して学 校・家庭の連携した効果的な取り組みの充実。 〈教科性を大事にした指導を〉 ○全国学調・CRT 等の分析を大切にし、各校の授業改善の方向を具体化するとともに、教科会・学年会で 教材研究や指導研究の工夫や改善に活かす。 ○教師一人一人が専門性を高め、目の前の子どもたちへの指導目標を明確にたて、子どもたちが前の めりになって追究する楽しさを味わい、学習を深める面白さを体感できる授業づくりに努める。 29 2 児童生徒質問紙調査の結果からみた生活実態及び特徴 全国学力学習状況調査における児童生徒質問紙調査の結果から、特に全国平均と比較して特徴が見ら れる「自尊意識について」 、 「自己表現力について」の 2 点について、また、教科に関する調査(テスト 形式)とのクロス集計で見たときに大きな相関関係が見られる「電子メディアとの接触状況」について 考察し、各校の取り組みの一助としたいと考えました。 (1)自尊意識について 小学校 【自分にはよいところがある】 当てはまる どちらかというと当てはまる 2015年佐久 どちらかというと当てはまらない 33.9 2015年全国 42.5 36.3 2014年佐久 32.8 2014年全国 35 当てはまらない 17.8 40.1 43.2 41.1 5.7 16.1 7.5 17.7 6.4 16.7 7 中学校 【自分にはよいところがある】 当てはまる 2015年佐久 2015年全国 2014年佐久 2014年全国 どちらかというと当てはまる 19.7 46 26.2 17.7 24.3 どちらかというと当てはまらない 41.9 43.8 25.8 8.3 22.3 9.5 29 42.8 当てはまらない 23.3 9.5 9.4 自尊意識とは、自分の長所も含め、 「私はこれでいい」「これで十分幸せだ」と思える気持ちであり、自 分のことをかけがえのない大切な存在だと思える感情です。自尊意識が高ければ、積極的な行動や社交的 な対話も行いやすくなり、一般に社会適応が良くなり課題を達成できる確率も高くなってくると言われて います。実際に社会性のある子は、学校・学級での集団生活にもうまく適応し、学習の能率にも効果が見 られます。 佐久市の小学校では 2009 年の全国学調で「自分には良いところがある」と答えた児童が全国平均を大き く下回った結果を受け、認め励まし、自信を持って自らを高めていこうとする意欲や態度の育成に取り組 んできて、近年はかなり改善されてきました。しかし、全国比ではまだ自尊意識が低い傾向が見られます。 また、 「どちらかというと当てはまらない」 「当てはまらない」と回答している子どもが 24%(全体の約4 分の1)います、今後も更なる自尊意識を高める取り組みを続けていく必要があります。 中学校では、2009 年当初は全国平均よりも自尊意識が高い傾向が見られていましたが、2014、2015 年と 年々低くなってきています。この自尊意識の低下についは、中学生期の発達段階で、学習、部活、学級の 人間関係など学校生活の様々な活動の中で不安や悩みを抱え「孤立感」等を感じる生徒が増えつつあるこ とも考えられます。集団の中で自分の居場所を持ち、集団の中での社会性・所属意識(自己有用感)を高 め、自分に自信をつけ、日々の生活を過ごしていかれるための配慮・工夫が必要であると考えられます。 30 (2)自己表現力について 小学校 【自分の考えを他の人に説明したり、文章に書いたりすることは難しいと思いますか】 当てはまる 佐久市 全 どちらかといえば当てはまる 17.9 33.4 23.4 国 どちらかというと当てはまらない 30.5 31.8 当てはまらない 18.1 26.4 18.3 中学校 【自分の考えを他の人に説明したり、文章に書いたりすることは難しいと思いますか】 当てはまる 22.0 佐久市 全 どちらかといえば当てはまる 38.0 27.9 30.8 国 どちらかというと当てはまらない 33.6 当てはまらない 12.0 23.3 12.2 小学校 【友達の前で自分の考えや意見を発表することは得意ですか】 当てはまる 佐久市 全 国 どちらかといえば当てはまる 18.8 どちらかというと当てはまらない 当てはまらない 37.0 16.7 27.4 20.6 30.6 33.0 15.8 中学校 【友達の前で自分の考えや意見を発表することは得意ですか】 当てはまる 佐久市 全 国 12.3 17.0 どちらかといえば当てはまる どちらかというと当てはまらない 30.0 41.5 32.6 35.1 当てはまらない 16.2 15.2 自己表現力とは自分が思っていること、感じていることを的確に相手、周囲の人に伝える力です。自己 表現力を単に「表現する力」として捉えず、児童生徒が自分で考え,自分の考えを持ち,自分で判断して、 それを自分の言葉等で表現する力と捉えることが大切です。 「自分の考えを他の人に説明したり、文章に書いたりすることは難しいと思いますか」の問いに対して 「難しい」と答えた児童生徒は、小中どちらも全国比で少ない傾向があり、自己を表現するということに 関して全国比では抵抗感が少ない傾向がうかがえます。しかし、同じような問いでありながら「友達の前 で自分の考えや意見を発表することは得意ですか」の問いに対して「得意」と答えた児童生徒は、小中ど ちらも全国比で少ない傾向があります。1 年前の 2014 年の結果も同様な傾向が見られており、「友達の前 で」 「発表する」というところに抵抗感があるようです。「友達の前」で「発表する」には裏付けに基づい た自分の考えや根拠を持っている必要があります。この問題を解決していくには、単に表現する力を伸ば せばよいのではなく、自分で考えて、判断して、それを自分の表現方法で伝えるという総合的な力として の捉えをして、その力を伸ばしていく必要があります。 31 (3) 電子メディアとの接触について 佐久市内の小中学校の 2015 年児童生徒質問紙調査における「電子メディアとの接触状況」と教科に 関する調査(テスト形式)とのクロス集計の結果をグラフに表すと以下のようになります。(グラフ中の “3~4時間”とは“3時間以上4時間未満”を表す。) 1日あたりどれくらいゲーム( )をしますか。 80 80 70 小学校 70 60 4時間以上 60 50 3~4時間 50 40 2~3時間 40 30 1~2時間 30 0~1時間 20 しない 中学校 20 10 10 0 0 国語A 国語B 算数A 算数B 理科 国語A 国語B 1日あたりどれくらいスマホ等でインターネットをしますか。( 数学A 数学B 理科 ) 80 80 70 70 小学校 60 4時間以上 60 50 3~4時間 50 40 2~3時間 40 30 1~2時間 30 0~1時間 20 持ってない 中学校 20 10 10 0 0 国語A 国語B 算数A 算数B 国語A 理科 国語B 数学A 数学B 理科 佐久市内の児童・生徒の電子メディアとの接触時間を見ると、全国平均と比べて短い傾向にあり、電子 メディアへの依存度は全国と比べて低い傾向にあります。しかし、電子メディアとの接触時間と教科に関 する調査(テスト形式)とのクロス集計の結果をみると、昨年度調査(平成 26 年度)と同様に明らかな相関関 係が見られます。ゲームをする時間や、スマホ等でインターネットをする時間が長いほど各教科AB共に 正答率が低くなる傾向があります。 「4時間以上接触する児童生徒」と、 「持っていない」 「1時間未満」の 児童生徒との正答率の差はおよそ10~15%の間であり、昨年度調査(平成 26 年度)の20~30%に比 較して改善されてはいるものの、電子メディアへの依存度が、正答率の結果にも大きな連関を示している ことがわかります。また、佐久市教育委員会が小学校 3 年生以上を対象に実施したアンケート調査からは、 日頃から長時間にわたって電子メディア機器に接している児童・生徒がいること、始めると「なかなかや められない」 、 「やめられないときがある」と答えている児童生徒も少なくないことからも、学力の低下を 招くだけでなく、生活習慣の乱れや、ネットトラブルにつながることも危惧されます。子どもと共に家庭 や学校が考え、地域との連携も大切にしながら早急に対応策を講じていく必要があります。 32 3 体力、運動能力について 児童生徒の体力や運動習慣、生活習慣等を把握し、学校における体育・健康に関する指導などの改善 に役立てるために実施された「平成 27 年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果より、佐久 市内小中学校を全体的に見たときに見られる特徴的な視点で考察しました。各校の課題と照らし合わせ て分析し、今後の課題とその対応について考えていただきたいと思います。 (1) 体力・運動能力の状況 国が、本調査で抽出データを求めているのは、小学校5年生、中学校2年生であることから、佐久 市内のその2つの学年について全国平均と比較してみました。学校により多少の数値の違いはありま すが、市内の多くの学校に同様の傾向が見られました。全8種目の 筋力 = 握力+上体起こし 調査結果を、筋力、柔軟性、敏捷性、全身持久力、筋パワーの5観 敏捷性 = 50m 走+反復横跳び 点でまとめ、体重データを付け加えてレーダーチャートにしたもの 柔軟性 = 長座体前屈 持久力 = シャトルラン が以下です。 (全国平均を50として作成してあります。) 筋パワー = 立ち幅跳び+ボール投げ 佐久市内小学生では、体重はほぼ全国平均に近い状況ですが、男女とも筋パワーは全国平均よりや や上回っています。男女での若干の差はあるものの筋力、敏捷性においてはほぼ全国並で、柔軟性、 持久力においては全国平均よりやや下回っています。中学生では、男女とも体重はやや上回っていま す。また、筋パワー、筋力、柔軟性においてもやや上回っています。反面、敏捷性、持久力ではやや 下回っています。特に女子の敏捷性、持久力はその傾向が強く見られます。標準的な体格や筋力があ りながら、持久力や敏捷性が下回っているのは、スポーツ活動への関わり方が原因とも考えられます。 持久力向上のためある程度時間をかけて行うスポーツに取り組ませたり、敏捷さが要求されるチーム 33 でのゲームや敏捷さを養う個人運動を取り入れたりしていく必要があります。 いずれにせよ、スポーツ活動を日頃より行っていない児童生徒は、競技スポーツへの抵抗感がある と思われることから、運動の導入にあたり抵抗感の少ないカローリング(氷上でなく室内でカーリン グができる)や、ふわっとテニス(バドミントンコートに低いネットを張って行うテニス)等の軽スポ ーツ(ニュースポーツ)や「遊び」を取り入れるなどの工夫もしたいところです。 (2) 運動習慣等調査からみた体力等の状況 (児童生徒質問紙調査の回答と体力合計点のクロス集計) 実技の状況の総合評価(体力合計点)と児童生徒質問紙調査の回答とのクロス集計の結果から特徴 的な傾向がわかるグラフを以下に示します。 <小学校> ① 小学校「体育の授業は楽しい」×「体力総合評価」(赤線は全国平均) 体育の授業が楽しいと感じている児童の方が総合評価が高い傾向があります。特に女子にはその傾 向が見られます。「楽しい」から「できる」のか「できる」から「楽しい」のか要因は児童によって それぞれですが、体育の授業の中で「楽しい」「できた」を実現することを、基本的な目標にしてい くことが、体力・運動能力の向上につながると考えられます。 ② 小学校「一週間の合計運動時間」×「体力総合評価」(赤線は全国平均) 1 週間の合計運動時間が多い児童の方が総合評価が高い傾向があります。特に女子はその傾向が 顕著です。運動をしない傾向の児童にとって、学校体育は貴重な時間となります。限られた時間の 中で不足する運動を効果的に組み入れていくことが必要です。また、日頃から少しでも運動をする 生活習慣のあり方を、家庭、地域と協力して考えていく必要もあります。 34 <中学校> ① 中学校 「部活等所属状況」×「体力総合評価」(赤線は全国平均) ② 「一週間の合計運動時間」×「体力総合評価」(赤線は全国平均) 中学校 「①」のグラフからは、運動部や地域のスポーツクラブへ属しているか否かで、体力総合評価は大 きく左右されていること、 「②」のグラフからは、 「①」とも関連して 1 週間の合計運動量が多いい ほど体力総合評価が高い傾向が見られることがわかります。特に②のグラフから、男子の週 3.5~ 7時間以下の生徒にはその傾向が顕著に見られます。女子においては、運動時間が減少するにつれ、 体力総合評価が徐々に減少していく傾向が見られます。日頃、運動時間の少ない生徒の運動量をど う確保していくかが大きな課題となります。小学校と同様に、「毎日少しでも運動をする」という 生活習慣のあり方について検討していくことも必要ですが、中学生の発達段階からして小学校ほど の改善は望めないことも予想されます。学校生活の中で体を動かす場を、例えば全校一斉に短時間 で、あるいは、毎回の保健体育の授業の導入場面で一斉に、といった取り入れ方の工夫も必要です。 35 地 域 校 学 家 庭 ‐36‐ 行うこと 書くこと 読むこと 佐久市教育委員会 コ ス モ ス プ ラ ン ~読むこと・書くこと・行うこと~ 家庭 1 読むこと ① 子や孫への読み語り ③ 身近な図書館へ 学校 ① 朝読書 ④ 本屋を訪ねて ② 音読・暗唱 ④ 辞書・新聞を使って 地域 ① 本の贈りもの ④ 本の回覧板 家庭 2 書くこと ② 家族ぐるみの読書 ⑤ 本の紹介・読み聞かせ ② 心を通わす家族便 学校 ④ 新聞づくり など ②ノートの工夫 地域 ① 区だより・公民館だより など ③ 家計簿・記録帳 ⑤ 自分史・家族の足跡 ⑤ 連絡黒板・掲示板 など ③ 語りの会 ⑤ 移動図書館“草笛号”へ ① 自分の思いや考えを ③ 日記や生活記録 など ② 地域の歴史・文化の紹介 ③ 心届ける手紙 ④ 書道・絵手紙・俳句・詩歌 ⑤ 掲示板 家庭 3 行うこと ① おはよう・おやすみなさい・ありがとう ③ 後片付け 学校 ③ 当番活動 ⑤ 約束ごと など ② 友だちとの学習・遊び ④ 後片付け 地域 ① あいさつ・声がけ など ② お手伝い ④ 家族のふれあい・語り合い ① あいさつ・声がけ など ③ 詩歌の鑑賞 ② 公民館での読み聞かせ ① 手紙・絵手紙 ④ お話づくり ⑤ 感想の語らい ⑤ ボランティア活動 ② 地域行事への参加 ④ 子どもと大人の交流 など ③ 清掃・雪かき ⑤ 支え合い・助け合い など 佐久市民が、こぞって「読むこと・書くこと・行うこと」に取り組み、 一人ひとり自分の花を咲かせましょう。 ‐37‐