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顔の形態的特徴と女らしさ/男らしさ評価の関係

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顔の形態的特徴と女らしさ/男らしさ評価の関係
日心第71回大会 (2007)
顔の形態的特徴と女らしさ/男らしさ評価の関係
-Geometric Morphometrics による検討-
○小森政嗣1・川村智2
(1大阪電気通信大学・2大阪大学)
Key words: 幾何学的形態測定学, 顔, 性印象
目 的
性印象(「女性らしさ/男性らしさ」)は配偶者選択,すな
わち異性間淘汰と密接にかかわっていると考えられる.人の
顔には第二次性徴以降さまざまな違い(性的二型性)が現れ
てくる.この違いは顔に対する性印象評価に影響していると
考えられる.しかし,性印象評価は性的二型性以外の様々な
要因の影響も受けている可能性も考えられる.
本研究では,古生物学の分野で主に発展してきた幾何学的
形態測定学 (Geometric Morphometrics)の手法を援用すること
で,顔形状に対して多変量解析を行い,顔の形態的な性差に
ついて検討する.さらに,顔画像に対する性印象評価実験を
行い,顔の形態的な特徴との関係を検討する.
顔画像の分析
18~26 歳の 96 名 (男性 48 名,女性 48 名) の顔写真を用
いた.表情は全て真顔である.顔の形状は,形態的・機能的
に対応する 80 個の標識点座標として表した(片目: 9 点, 片
眉: 8 点, 口:11 点, 鼻: 9 点, 輪郭 26 点).これらの標識点は形
態的もしくは機能的に対応する点であり,瞳孔や顔,目,眉,
鼻,口の輪郭などが含まれる.標識点は目視により取得した.
これらの標識点は,大きさや向きが様々であるため直接比
較することはできない.そこで,各形状の重心から全標識点
までの 2 乗距離の和を等しくするようにスケーリングを行
い[1],さらに,Generalized Procrustes Method[2]により形状の
回転を行い,対応する標識点間の 2 乗距離の和を最小にする
よう最適化を行う.以上の処理により,各標識点座標は多次
元正規分布するデータとして扱うことができることができる.
以上の操作により,各画像は標識点 80×xy 座標 2 の 160 次
元のデータとなる.
これらのデータに対し,主成分分析を行い,相対的に寄与
率の大きかった第 5 主成分までの主成分得点を求めた.第 5
主成分までの累積寄与率は 62.5%だった.
被写体の性別の要因が各主成分得点に及ぼす影響を検討す
るため,多変量分散分析を行った結果性別の有意な主効果が
認められ(p<.01),また個別の主成分得点については,第 1,
第 2 主成分に対し有意な主効果が認められた(p<.05).
性印象評価実験
評定者 男女計 118 名が顔の魅力評定実験に参加した(女性
58 名, 男性 60 名).
刺激 上述の顔写真を両目の瞳孔位置で整列し,
256 階調のグ
レースケール画像に変換し,頭髪部と背景を均一の白色に置
き換えたものを印刷し,刺激とした.
手続き 実験は,オフィスビルの会議室において 10 数名単位
のグループで行った.各評定者は,
48 枚の顔写真を評定した.
評定用紙の各ページには,顔写真およびその顔の魅力を問う
質問項目が印刷されており,評定者は女性の各顔画像に対し
て「非常に女性らしい (3)」から「まったく 女性らしくない
(0)」の 4 段階で,男性の顔画像に対しては「非常に男性らし
い(3)」から「まったく男性らしくない(0)」で評価を行った.
評定における順序効果を削減するために,評定者は評定に先
立ち質問紙綴りをめくりすべての顔を確認した.その後 48
の顔画像について順に評定を行った.
評定に不備があった男性 2 名および,評定の配分において
対となる評定者 2 名の計 4 名を除く 114 名の回答を分析対象
とした.
女らしさ/男らしさ評価
各主成分得点が性印象評価に及ぼす影響を検討するため,
評定者の性別を要因,各主成分得点を共変量とし,性別と各
主成分得点の 2 次の交互作用を考慮した共分散分析を行った.
その結果,
「女性らしさ」評価については,第 1-5 主成分得点
の有意な主効果が(p<.05),
「男性らしさ」評価については第 1,
3,4 主成分の有意な主効果が認められた(p<.05).また「男性
らしさ」評価については評定者性別×第 2 主成分得点の交互
作用も見られた(p<.05).
第 1,第 5 主成分については,主成分得点が高いほど「女
性らしさ」評価が高まり,
「男性らしさ」評価が減ずる.また
第 2 主成分については,主成分得点が高いほど「男性らしさ」
評価が高まり,
「女性らしさ」評価が減ずる.第 1,第 2 主成
分は顔の物理的な性差を反映していた主成分であり,評価の
結果もこの物理的な性差と符合していた.
一方,第 3 主成分,第 4 主成分はともに,主成分得点が低
いほど「女性らしさ」,「男性らしさ」評価共に高くなってい
た.第 3,第 4 主成分方向に±3S.D.移動した標識点を図 1,図
2 に示す.
- +
図1
顔形状の第 3 主成分軸方向への変化(±3SD)
- +
図2
顔形状の第 4 主成分軸方向への変化(±3SD)
考 察
「女性らしさ/男性らしさ」評価は男女の顔の形態的な性差
を反映していた.しかし,それ以外の形態的な要因も性印象
の形成に影響していた.そのうち,第 3 主成分(図 1)は,顔の
横方向のふくらみを反映しており,これは被写体の健康に関
する印象と関係があるかもしれない.また第 4 主成分は額の
広さを反映していることから,幼児図式と関連がある可能性
が考えられる.これらの結果は,性印象の形成に性的二型性
だけでなく,健康や成熟といった要因もかかわっている可能
性を示唆している.
引用文献
[1] Bookstein, F.L. (1991). Morphometric Tools for Landmark Data, Cambridge.
[2] Dryden, I.L. & Mardia, K.V. (1998). Statistical Shape Analysis, Wiley.
(KOMORI Masashi, KAWAMURA Satoru)
本研究は科学研究費補助金(15200016)の補助を受けた
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