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肺 癌 - QI 診療の質指標

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肺 癌 - QI 診療の質指標
肺癌
肺
癌
肺(1)
肺癌診療における
Quality Indicator(QI)の策定
分担研究者
淺村 尚生
国立がんセンター中央病院
呼吸器外科
がん診療において、現在わが国で広く⾏われている診療の質を評価することは簡単では
ない。各臓器癌によってその臨床病理学的な特性が全く異なっているため、その診療形態
にも大きな差があり、診療の質を評価するにあたって画⼀的な対応ができないためであ
る。全臓器癌からみると、肺癌は罹患数が多いこと、死亡率が⾼いことなどから、肺癌診
療の質を向上させることは、わが国におけるがん診療や社会⼀般に与える影響が極めて大
きいものと考えられる。このような状況で、肺癌における診療の質を客観的に評価する指
標があれば、その経時的な変化をみることにより将来の肺癌診療の進むべき⽅向性を⾒極
めることができよう。
肺癌における「診療の質指標(Quality Indicator:QI)」の設定にあたって、考慮すべ
き背景や癌としての特性、またそれに基づく設定の考え⽅について述べる。
わが国における肺癌診療の特徴
肺癌を1つの悪性疾患としてみると、他の臓器癌と⽐較して特筆すべき特徴がある。
① 男⼥ともに、罹患数が多く、死亡率が⾼い予後不良の悪性疾患であること、
② 多様な病理組織型があって、それぞれが喫煙と異なった関連性を有すること、
③ 自覚症状に乏しく、外来受診時に⽐較的進⾏した状態で発⾒される例が多いこと、
肺
癌
④ 治療のモダリティが外科切除、化学療法、放射線治療、あるいはそれらの組み合わせ
で多様であり、病理組織型、Stag(e 進⾏度)によって、それらが選択され、相対的
に外科切除の⽐率が低くなること、
このような点を、QIという観点からみると、肺癌診療全体の質をどのように評価すべき
かという点で、課題が多いことがわかる。Stageや組織型ごとに診療指針が多岐にわたるた
めに、診療の質を計測すべき的確な項目の選択が困難であるということである。例えば、
肺癌の外科切除率は、消化器系の癌と⽐較すると低く、40%程度と推定される。残る60%
は、放射線治療か化学療法が単独あるいは併用して⾏われる。従って、診療の質を正しく
評価するためには、各治療モダリティに対応した評価項目をそれぞれ用意する必要があ
る。わが国における肺癌診療の現状として、外科分野と⽐較した場合、非切除例に対する
治療を担当する肺癌専門の腫瘍内科医や放射線治療医は少なく、外科切除例についての評
価はできても、非切除例では評価が困難となることが起こり得る。また、治療⽅針が、組
織型やStageによって異なるために、肺癌における治療前の評価は⼀層重要性が⾼く、この
部分の評価も診療の質をみる上で、大きなウェイトが必要である。
肺(2)
専門家パネル委員の選定
このような診療にあたる専門家の多様性を反映させてQIを検討する専門家パネル委員の
成を検討した。上述のような肺癌診療の多様性を考慮して10名の専門家パネル委員のう
ち、外科医3名、腫瘍内科医3名、放射線治療医1名、放射線診断医1名、病理医2名で
構成した。
肺癌専門家パネル委員の構成
(敬称略)
池⽥ 徳彦
国際医療福祉大学 呼吸器外科
遠藤 千顕
東北大学加齢医学研究所 呼吸器再建研究分野
岡⽥ 守⼈
広島大学原爆放射線医科学研究所
國頭 英夫
国⽴がんセンター中央病院 呼吸器内科
久保⽥ 馨
国⽴がんセンター東病院 呼吸器科
岡本 勇
近畿大学医学部 腫瘍内科
中⼭ 優⼦
東海大学医学部附属病院 放射線治療科
野⼝ 雅之
筑波大学 病理学教室
村⽥ 喜代史
滋賀医科大学 放射線医学講座
松野 吉宏
北海道大学病院 病理部
QIの策定にあたっての留意点
診療の質を評価する際に必要となるレファレンスは、どのようなものであろうか? 今回
のQI設定にあたっては、現⾏の⽇本肺癌学会が刊⾏している"EBMの⼿法による肺癌診療ガ
イドライン2005年版"を診療の規範として採用した。これは、このガイドラインが、わが国
における肺癌診療を総合的に取り扱う⽇本肺癌学会のガイドライン検討委員会による科学
的な討議によって、わが国の肺癌診療の実情にかんがみて作成されたものであることによ
る。またその⼿法はEBMによっており、根拠となるエビデンスとその評価が⼀定の⽅法で
⾏われているものである。
もともとこの肺癌の診療ガイドラインは、厚⽣省の"Evidence-Based Medicine(EBM)
の⼿法による肺癌の診療ガイドライン策定に関する研究"班によってまとめられ、初版が
肺
癌
2003年版として刊⾏された後、⽇本肺癌学会にその改訂作業が移管された。肺癌学会で
は、肺癌診療ガイドライン検討委員会において改訂作業が⾏われ、2005年に⽇本肺癌学会
から第2版が刊⾏されて現在に⾄っている。第3版への改訂作業は、同検討委員会で進⾏
中であり、2009年度の取りまとめが予定されている。
今回のQI作成にあたっては、このガイドラインで⽰された重要な推奨項目の中から選択
しさらに、肺癌の⽇常診療において必須と思われる項目を追加した。全体としては、肺癌
診療を専門的に⾏う施設はもちろん、各地域のがん診療連携拠点病院レベルであれば⾏わ
れるべき標準的な肺癌診療レベルを想定した。
肺(3)
肺癌におけるQI設定の考え方と方法
すでに述べたように、肺癌の診療においては、Stage、病理組織に従って治療指針が定め
られていることから、治療に先⽴って治療指針決定の根拠となる病変、病態の評価は重要
であり、治療モダリティそれぞれに評価項目を設定する必要があった。
選定した全35項目のうち、治療前の評価に関して7項目、外科療法と外科病理に関する
ものが9項目、非⼩細胞癌の化学療法と放射線治療に関するものが7項目、⼩細胞癌の化
学療法と放射線治療に関するものが6項目、放射線治療に関するものが4項目、有害事象
への対応に関するものが2項目、という配分となった。全体で35項目の評価項目があげら
れたが、個々の症例に関しては、治療について、大きく分けて3つのカテゴリーのいずれ
かのみが選択されることになるため、20項目程度による評価ということになる。
肺癌には、腺癌、扁平上⽪癌、⼩細胞癌、大細胞癌の4組織型があり、細胞⽣物学的な
特性や治療への反応性の違いから、⼩細胞癌と、それ以外(非⼩細胞癌)に分けて治療を
⾏うのが⼀般的である。特に、化学療法や放射線治療に対する反応性は大きく異なってお
り、このため、治療⽅針は両者で大きく異なる。従って、治療前の評価として、組織型を
決定した上でそれらに応じた治療計画が⽴てられているかどうかをみることは、診療の質
を評価する重要なポイントとなる。さらに、他の臓器の癌と⽐較した場合に、肺癌が発⾒
されたときにはすでに進⾏している症例が多く、相対的に外科切除の対象とならず、放射
線治療や化学療法が必要とされる場合が多いという特徴がある。そのため、肺癌に対する
治療スキーマは、組織型、Stage、治療モダリティによって、多岐の選択肢があり得ること
になる。
非⼩細胞癌においては、StageⅠ、Ⅱであれば、治療⽅法は外科切除が基本である。外科
切除としては、癌腫を含む肺葉以上の切除と肺門・縦隔のリンパ節郭清(根治術)を⾏う
ことが標準術式である。外科切除のmorbidity/mortalityは、⼿術の直接的な質の指標とな
る。通常、肺癌根治術のmortalityは2%までとするのが⼀般的である。再発率を低下させ
るための術後併用化学療法については、近年になってリンパ節転移を有する症例の術後化
学療法を施⾏したほうが有意に予後良好であることが⽰され、わが国の診療ガイドライン
においてもグレードBと記載されるようになっている。局所進⾏肺癌であるStageⅢについ
ては、化学療法と放射線治療の併用が標準治療である。遠隔転移を有するStageⅣにおいて
は、化学療法によって有意の⽣存延⻑が⽰されて標準治療としての地位を確⽴したが、依
然その⽣存延⻑は数ヵ⽉にとどまるものとされている。
肺癌全体の20%程度を占める⼩細胞癌においては、通常治療の観点から、限局病変
(Limited Disease:LD)と進展病変(Extensive Disease:ED)に分けて治療指針が⽰
される。前者は、StageⅢまでの局所進⾏癌が含まれ、後者は遠隔転移を有するものであ
る。限局病変の中でも、リンパ節転移を有さないものは超限局病変(Very Limited
Disease:VLD)として別扱いし、非⼩細胞癌と同様に外科切除が標準治療とされ、術後に
肺
癌
4ないし6コースの化学療法を追加することが推奨されている。⼀⽅、外科切除の対象と
はならない限局病変では、化学療法と放射線治療の同時併用が標準治療として確⽴されて
いる。⼀⽅、進展病変では、化学療法が標準治療となる。
今回のQI設定にあたっては、このような肺癌治療の多様性と複雑性を考慮した上で、ど
のような設問によってその診療の質を計測するかということが常に問題となった。あまり
にその複雑性を考慮すると、全体の設問数をいたずらに増加させ、その⼀⽅で回答する必
要のない設問が増加するという結果を⽣むため、それらのバランスを考慮する必要があっ
た。
肺(4)
まとめ
今回設定した設問項目で、実際に、診療の質がどの程度計測できるかということについ
ては、実地の症例においての検証が今後必須である。⼀⽅、診療の質については、その性
格上経時的な変化をみることが不可⽋であり、例えば非⼩細胞癌の術後併用化学療法のよ
うに、臨床における意義や位置づけが経時的に変化する重要な評価項目については、どの
ように設定するかという難しい側⾯があり、その点については今後の検討課題となる。
肺
癌
肺(5)
術前評価
QI 1
検査・治療前の胸部CT
分子:
診断過程において、侵襲的検査や治療が⾏われる前に胸部単純CTあ
るいは胸部造影CT検査が⾏われた患者数
分母:
肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
胸部CTは肺癌の検出や形態診断において、胸部単純写真よりも優れている。CTの画像
所⾒によりさまざまな良性疾患が除外できるとともに、悪性疾患も形状によってかなり典
型的な所⾒を呈するため、肺癌を疑う場合、気管⽀鏡などの侵襲的検査前に胸部CTを⾏う
ことで診断効率を上げることが可能である。また造影CTにより、15HU以下の造影レベル
であれば、感度98%、特異度73%で良性と診断されるという報告もある。さらに⾼解像能
CTの画像所⾒は、予後予測因⼦ともなる。肺癌診療ガイドライン2005年版では質的診断
として治療開始前に⾼分解能CT(もしくは薄層CT)による評価を推奨している。さら
に、Stage診断として胸壁や縦隔への浸潤評価における感度はあまり⾼くないものの特異
度はそれぞれ89%、99%と⾼いとされている。
以上より、CTによる質的診断で良性疾患を除外して不要な侵襲を最低限にするととも
に、正確なStage分類にも役⽴つことから肺癌の診断過程において、侵襲的検査や治療が
⾏われる前に胸部単純CTあるいは胸部造影CT検査が⾏われるべきである。
参考文献
1. Altorki N, Kent M, Pasmantier M. Detection of early-stage lung cancer: computed tomographic scan or chest radiograph? J
Thorac Cardiovasc Surg 2001;121(6):1053-7.
2. Laroche C, Fairbairn I, Moss H, Pepke-Zaba J, Sharples L, Flower C, Coulden R. Role of computed tomographic scanning of
the thorax prior to bronchoscopy in the investigation of suspected lung cancer. Thorax 2000;55(5):359-63.
3. Swensen SJ, Brown LR, Colby TV, Weaver AL, Midthun DE. Lung nodule enhancement at CT: prospective findings.
Radiology 1996;201(2):447-55.
4. Kodama K, Higashiyama M, Yokouchi H, Takami K, Kuriyama K, Mano M, Nakayama T. Prognostic value of ground-glass
opacity found in small lung adenocarcinoma on high-resolution CT scanning. Lung Cancer 2001;33(1):17-25.
5. White PG, Adams H, Crane MD, Butchart EG. Preoperative staging of carcinoma of the bronchus: can computed
tomographic scanning reliably identify stage III tumours? Thorax 1994;49(10):951-7.
6. Silvestri GA, Gould MK, Margolis ML, Tanoue LT, McCrory D, Toloza E, Detterbeck F. Noninvasive staging of non-small cell
lung cancer: ACCP evidenced-based clinical practice guidelines (2nd edition). Chest 2007;132(3 Suppl):178S-201S.
肺
癌
肺(6)
術前評価
QI 2
中枢神経症状を伴う患者に対する治療前の画像検査
分子:
治療開始前に画像診断(頭部MRI、頭部CT、特別な理由がない限り
造影)が⾏われた患者数
分母:
診断過程において、中枢神経症状を伴う肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
臨床所⾒での脳CTを基準に、肺癌における脳転移の陰性的中率(NPV)を検証した研究
では、有病率は不明であるもののNPVは95%で、臨床所⾒がない場合には脳転移の存在が
否定的であることが⽰された。無症状の患者における脳転移の発症頻度は5%であり、有
症状患者にのみ脳転移検索を⾏うことが妥当である。中枢神経症状のない患者に⼀律に画
像検査を⾏うことの是非には賛否があるが、遠隔転移の検索を⾏うことにより不必要な⼿
術を回避し、コスト削減ができたとする報告もある。少なくとも肺癌と診断された患者に
中枢神経症状を認めた場合、治療開始前に画像診断(頭部MRI、頭部CT)が⾏われるべき
である。
以上より、脳転移の存在により治療⽅針が左右され、神経症状のある患者は脳転移の可
能性が⾼いことから、肺癌の診断過程において中枢神経症状を伴う患者には、治療開始前
に画像診断(頭部MRI、頭部CT、特別な理由がない限り造影)が⾏われることが必須であ
る。
参考文献
1. Butler AR, Leo JS, Lin JP, Boyd AD, Kricheff, II. The value of routine cranial computed tomography in neurologically intact
patients with primary carcinoma of the lung. Radiology 1979;131(2):399-401.
2. Investigating extrathoracic metastatic disease in patients with apparently operable lung cancer. The Canadian Lung
Oncology Group. Ann Thorac Surg 2001;71(2):425-33; discussion 33-4.
3. Yokoi K, Kamiya N, Matsuguma H, Machida S, Hirose T, Mori K, Tominaga K. Detection of brain metastasis in potentially
operable non-small cell lung cancer: a comparison of CT and MRI. Chest 1999;115(3):714-9.
肺
癌
肺(7)
術前評価
QI 3
(改訂あり)
骨転移を疑う症状のある患者に対する画像検査
分子:
診断過程において、骨シンチ、MRI、PET、単純写真のいずれかが⾏
われた患者数
分母:
骨転移を疑う臨床所⾒(骨の痛み、胸痛、血中カルシウム⾼値など)
がある肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
臨床症状と画像所⾒の有無を検討したメタアナリシスでは、骨転移に関する臨床所⾒の
陰性的中率(NPV)は89%であり、骨転移を疑わせるような痛みや神経症状のない患者に
⼀律に画像検査を⾏うことの是非には意⾒が分かれる。⼀⽅、骨転移が認められた患者は
骨痛、胸痛、血中カルシウム⾼値、血中ALP⾼値などの臨床的指標が陽性であり、臨床的
所⾒が画像診断を施⾏する理由となる。
以上より、脳転移の存在により治療⽅針が左右され、痛みや骨に関連した検査値異常を
来している患者は骨転移の可能性が⾼いことから、肺癌の診断過程において骨転移を疑う
臨床症状(骨痛、胸痛、血中カルシウム⾼値、血中ALP⾼値など)があり、骨シンチグラ
ム、MRI、PET、単純写真のいずれかが⾏われるべきである。
参考文献
1. Silvestri GA, Littenberg B, Colice GL. The clinical evaluation for detecting metastatic lung cancer. A meta-analysis. Am J
Respir Crit Care Med 1995;152(1):225-30.
2. Michel F, Soler M, Imhof E, Perruchoud AP. Initial staging of non-small cell lung cancer: value of routine radioisotope bone
scanning. Thorax 1991;46(7):469-73.
肺
癌
肺(8)
術前評価
QI 4
肝臓・副腎転移に対する画像検査
分子:
診断過程において、画像検査が⾏われて肝臓と副腎の転移の有無につ
いて記載されている患者数
分母:
肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
臨床症状による肝臓、副腎転移の感度/特異度は、0.4〜1/0.27〜0.65と差が大き
く、非常に不正確である。肺癌診療ガイドライン2005年版では、肝、副腎のCTまたは超
⾳波による転移検索を推奨している。操作的な簡便性からは、胸部CTでは胸部から肝臓と
副腎を含む上腹部領域までを撮像範囲に含めることが推奨されるが、現在のCTの性能を考
えると多くの施設で胸部CT撮像時に上腹部領域まで撮像されているのが現状である。
以上より、臨床症状による肝臓・副腎転移の発⾒は困難であり、画像検査による評価と
Stage分類が必要であることから、肺癌の診断過程においては、画像検査が⾏われて肝臓
と副腎の転移の有無について記載されるべきである。
参考文献
1. Butler AR, Leo JS, Lin JP, Boyd AD, Kricheff, II. The value of routine cranial computed tomography in neurologically intact
patients with primary carcinoma of the lung. Radiology 1979;131(2):399-401.
2. Investigating extrathoracic metastatic disease in patients with apparently operable lung cancer. The Canadian Lung
Oncology Group. Ann Thorac Surg 2001;71(2):425-33; discussion 33-4.
3. Yokoi K, Kamiya N, Matsuguma H, Machida S, Hirose T, Mori K, Tominaga K. Detection of brain metastasis in potentially
operable non-small cell lung cancer: a comparison of CT and MRI. Chest 1999;115(3):714-9.
肺
癌
肺(9)
術前評価
QI 5
治療前の確定診断
分子:
治療開始前(緩和的放射線療法は除く)に、組織診または細胞診で確
定診断が得られた患者数
分母:
肺癌に対して⼿術療法以外の治療が⾏われる患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
肺癌の治療には外科切除、放射線治療、化学療法の組み合わせが⾏われるが、いずれの
治療法も⼀定のリスクを伴い、治療に伴う死亡が報告されている。そのため、画像だけで
はなく組織診または細胞診のいずれかによる確定診断を⾏うことが、不要なリスクを患者
に負わせないために必要である。⼿術治療においては、診断的切除もあり得るため、術前
の確定診断は必ずしも必須ではないが、化学療法や放射線治療はそれ自体、診断の補助に
ならず、治療前に必ず組織診または細胞診のいずれかにより確定診断を⾏う必要があると
考えられる。
以上より、肺癌の治療は⼀定の副作用を伴うため確定診断を⾏うべきであることから、
肺癌に対して⼿術治療以外の治療が⾏われる患者に関しては、治療開始前(緩和的放射線
療法は除く)に、組織診または細胞診で確定診断を得ている必要がある。
参考文献
1. Inoue A, Kunitoh H, Sekine I, Sumi M, Tokuuye K, Saijo N. Radiation pneumonitis in lung cancer patients: a retrospective
study of risk factors and the long-term prognosis. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2001;49(3):649-55.
2. Ohe Y, Yamamoto S, Suzuki K, Hojo F, Kakinuma R, Matsumoto T, Ohmatsu H, Nishiwaki Y. Risk factors of treatmentrelated death in chemotherapy and thoracic radiotherapy for lung cancer. Eur J Cancer 2001;37(1):54-63.
3. Watanabe S, Asamura H, Suzuki K, Tsuchiya R. Recent results of postoperative mortality for surgical resections in lung
cancer. Ann Thorac Surg 2004;78(3):999-1002; discussion -3.
肺
癌
肺(10)
術前評価
QI 6
実施率の
計算方法
(改訂あり)
TNM Stage診断の診療録への記載 (1/2)
分子:
TNM Stageが診療録に記載されている患者数
分母:
肺癌と診断された患者数
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版、 NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology、
Small Cell Lung Cancer Treatment (PDQ)
根拠
癌の進展度を正確に把握し、共通の基準で分類するためTNM分類が提唱され、1968年
UICCにより肺癌のTNM分類が定義された。その後約10年ごとに改訂が⾏われ、1997年に
現在のTNM分類と病期分類の改定が⾏われている。⽇本においてもこのTNM分類と病期分
類が広く用いられており、治療⽅針を決定する際に重要である。肺癌診療ガイドライン
2005年版では、肺癌の治療⽅針決定において病期診断は必須であるとし、⾏うことを強く
勧めている。
以上より、TNM分類によるStage診断は治療⽅針の決定に重要であることから、非⼩細
胞癌、⼩細胞癌と診断された患者は、TNM Stage診断が診療録に記載されるべきである。
参考文献
1. Denoix P. Enquete permanent gans les centres anticancereux. Bull Inst Nat Hyg(Paris) 1946;1(
2. UICC (International Union against Cancer) : Committee on TNM clasification. TNM general rules. Geneva: Livre de Poch;
1969.
3. Mountain CF. Revisions in the International System for Staging Lung Cancer. Chest 1997;111(6):1710-7.
4. ⽇本肺癌学会編. 肺癌取り扱い規約改訂第6版. 東京: ⾦原出版; 2006.
5. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. (Accessed at
http://www.nccn.org/professionals/physician̲gls/f̲guidelines.asp.)
6. Small Cell Lung Cancer Treatment (PDQ). (Accessed at http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/treatment/small-celllung/healthprofessional.)
7. ⽇本肺癌学会, ed. 肺癌診療ガイドライン
2005年度版. 東京: ⾦原出版; 2005.
肺
癌
肺(11)
術前評価
QI 6
実施率の
計算方法
(改訂あり)
TNM Stage診断の診療録への記載 (2/2)
分子:
治療前にPSが記載されている患者数
分母:
肺癌と診断された患者数
参照ガイドライン/先行研究
QI6(1/2)と同じ。
肺
癌
肺(12)
根拠
QI6(1/2)と同じ。
参考文献
QI6(1/2)と同じ。
術前評価
QI 7
実施率の
計算方法
術前の呼吸機能検査
分子:
治療前に呼吸機能検査(スパイロメトリー)が⾏われた患者数
分母:
外科切除または根治的放射線治療を受けた肺癌患者数
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
術後の予測呼吸機能と術後の合併症、⼿術死亡との関連を⽰唆する報告がある。外科切
除が可能であるか否かは呼吸機能単独で判断できるものではなく、PS(Performance
Status)、年齢、⼼機能など総合的な判断を要するものであり、呼吸機能検査だけに基づ
いて決定されるべきものではないが、少なくとも他の検査と組み合わせて呼吸機能検査を
⾏うべきである。また放射線治療を⾏う場合、正常肺への照射は避けられず、放射線肺臓
炎のリスクがある。このため治療前の呼吸機能から治療に耐えられるかどうかの評価を⾏
うことは重要であり、また治療後の呼吸機能に対する⽐較として基礎状態の情報が必要で
ある。
以上より、呼吸機能は耐術性および放射線治療の適応に関する客観的な指標として役⽴
つことから、肺癌と診断された患者に外科切除、根治的放射線治療を⾏う場合、術前また
は治療前に呼吸機能検査(スパイロメトリー)が⾏われるべきである。
参考文献
1. Bolliger CT, Wyser C, Roser H, Soler M, Perruchoud AP. Lung scanning and exercise testing for the prediction of
postoperative performance in lung resection candidates at increased risk for complications. Chest 1995;108(2):341-8.
2. Markos J, Mullan BP, Hillman DR, Musk AW, Antico VF, Lovegrove FT, Carter MJ, Finucane KE. Preoperative assessment as a
predictor of mortality and morbidity after lung resection. Am Rev Respir Dis 1989;139(4):902-10.
3. Pierce RJ, Copland JM, Sharpe K, Barter CE. Preoperative risk evaluation for lung cancer resection: predicted postoperative
product as a predictor of surgical mortality. Am J Respir Crit Care Med 1994;150(4):947-55.
肺
癌
肺(13)
外科療法・病理
QI 8
治療内容の診療録への記載
分子:
外科治療が⾏われたか、⾏われない場合にはその根拠が診療録に記載
されている患者数
分母:
臨床StageⅠ〜IIの非⼩細胞癌と診断された患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
臨床StageⅠ〜IIの肺癌に対して外科切除と放射線治療またはその他の治療法との⽐較
試験は存在しない。1999年にわが国で切除された肺癌13,010症例を対象にした予後解析
では、臨床Stage IA肺癌の5年⽣存率は77.3%、IB 59.8%、IIA 54.1%、IIB 38.3%と
報告されている。昨今、定位放射線治療による治療成績の向上が目覚ましく、⼿術に替え
てこの治療を⾏うという選択肢も浮上してきているが、まだ標準となるには⾄っておら
ず、現時点では患者が説明を受けた上で選択した場合に例外として扱われる理由に含めら
れている。
以上より、StageⅠ〜IIの肺癌の⼿術治療成績は⼀般の放射線治療や化学療法よりも優
れていることから、臨床StageⅠ〜IIの非⼩細胞癌と診断された患者では、外科治療を⾏
うか、⾏わない場合にはその根拠が診療録に記載されるべきである。
参考文献
1. Asamura H, Goya T, Koshiishi Y, Sohara Y, Eguchi K, Mori M, Nakanishi Y, Tsuchiya R, Shimokata K, Inoue H, Nukiwa T,
Miyaoka E. A Japanese Lung Cancer Registry study: prognosis of 13,010 resected lung cancers. J Thorac Oncol 2008;3(1):4652.
肺
癌
肺(14)
外科療法・病理
QI 9
(改訂あり)
組織型の病理所見書への記載
分子:
病理診断書にWHO分類に準拠した組織型(判定不能な場合には推定
組織型に⾔及)が記載されている患者数
分母:
⽣検検体が提出された肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
⼩細胞癌と非⼩細胞癌では治療法が異なることが知られている。さらに分⼦標的薬の登
場から非⼩細胞癌においても、組織亜型を明らかにすることが望ましい報告が散⾒され
る。上⽪成⻑因⼦受容体チロシンキナーゼ阻害薬は腺癌に有意に有効であることが明らか
であり、血管内⽪細胞増殖因⼦に対するモノクローナル抗体薬により、扁平上⽪癌におい
て喀血による治療関連死の報告がなされている。病理診断に組織型が記載されることで、
正確な治療法の選択が可能になると考えられる。 組織系の判定は確定に⾄らない場合もあ
るが、その際には推定の組織型に⾔及すべきである。
以上より、病理組織型により予後や治療⽅針が異なることから、肺癌の⽣検検体が提出
された場合、病理診断書にWHO分類に準拠した組織型(判定不能な場合には推定組織型)
が記載されるべきである。
参考文献
1. Hoffman PC, Mauer AM, Vokes EE. Lung cancer. Lancet 2000;355(9202):479-85.
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肺
癌
肺(15)
外科療法・病理
QI 10
(改訂あり)
手術所見の記録
分子:
以下の項目が診療録に記載されている患者数 (腫瘍径、腫瘍の発⽣部
位、腫瘍の組織型、胸膜浸潤の程度、リンパ節郭清個数、郭清部位毎
の転移の有無、切除断端または剥離⾯における癌細胞の有無、胸膜播
種の有無、悪性胸⽔の有無)
分母:
⼿術を受けた肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
1990〜2000年における19ヵ国の非⼩細胞癌患者67,725例の予後を解析したデータ
セットにおいて、16,937例の病理Stageにおける予後解析で5年⽣存率は病理Stage IAで
73%、IBで58%、IIAで46%、IIBで36%、IIIAで24%、IIIBで9%、IVで13%と正確な
病理Stage診断は予後推定に重要であることが⽰された。この診断における病理学的TNM
分類を構成する病理所⾒として重要なものには、腫瘍径、胸壁/胸膜浸潤の程度、気管⽀
中枢側への腫瘍進展の程度・有無(気管/気管⽀断端で代用される)、郭清部位毎のリン
パ節転移の有無が含まれる。これらの病理所⾒が正しく記載され、病理診断書に病理
Stageが記載されることで、正確な治療法の選択や予後推定が可能になると考えられる。
以上より、術後症例の予後推定に病理Stageは有用であることから、⼿術を受けた肺癌
患者では、腫瘍径、腫瘍の発⽣部位、腫瘍の組織型(腺癌、扁平上⽪癌、大細胞癌、⼩細
胞癌、その他、など)、胸膜浸潤の程度、リンパ節郭清個数、転移の有無、切除断端また
は剥離⾯における癌細胞の有無、胸膜播種の有無、悪性胸⽔の有無、肺内転移の有無につ
いての事項が診療録に記載されるべきである。
参考文献
1. Goldstraw P, Crowley J, Chansky K, Giroux DJ, Groome PA, Rami-Porta R, Postmus PE, Rusch V, Sobin L. The IASLC Lung
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肺
癌
肺(16)
外科療法・病理
QI 11
術前療法に対する病理学的効果判定の記載
分子:
病理学的効果判定がなされ診療録(病理所⾒書を含む)に記載されて
いる患者数
分母:
術前化学療法あるいは放射線治療が⾏われて⼿術後に病理検体が提出
された肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
術前療法の効果判定は診療の基本的事項としてなされるべきことであると考えられる。
肺癌取扱規約には主に⼿術例、剖検例を対象として「原発性肺腫瘍の治療効果の組織学的
判定基準」が定められており、⽣存しうる癌細胞・癌組織の量による判定基準がEf0〜Ef3
として定められている。 また、症例数は多くないが、N2患者の術前療法施⾏例の化学療
法の組織学的効果(>=60%)と全⽣存との関連が⽰されており、術前療法の効果は予後
推定に重要であることから、の予測因⼦となる可能性が考えられる。そのため、肺癌患者
で術前化学療法あるいは放射線治療が⾏われて⼿術後に病理検体が提出された場合には、
病理学的効果判定がなされ診療録(病理所⾒書を含む)に記載されるべきである。
参考文献
1. ⽇本肺癌学会編 肺癌取扱い規約 改訂第6版 ⾦原出版株式会社
2. Betticher DC, Hsu Schmitz SF, Totsch M, Hansen E, et al. Swiss Group for Clinical Cancer Research (SAKK). Prognostic
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肺
癌
肺(17)
外科療法・病理
QI 12
(改訂あり)
最終病理診断の時期
分子:
特殊染⾊を追加している場合を除き、3週間以内に最終病理診断がな
された患者数
分母:
⼿術検体が病理に提出された肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
術後補助化学療法の開始時期が患者アウトカムに直接結びつくという直接のエビデンス
は存在しないが、術後化学療法の有効性を⽰した試験の多くは術後8週間以内に開始され
ている。病理診断書が6週間以内に発⾏されれば、追加治療が必要な症例の治療選択に有
用になると考えられる。
以上より、術後補助化学療法が⾏われる可能性を考慮し、また外来受診等の時期等を考
慮すると、肺癌患者で⼿術検体が病理に提出された場合には、特殊染⾊を追加している場
合を除き、3週間以内に最終病理診断がなされるべきである。
参考文献
1. Arriagada R, Bergman B, Dunant A, Le Chevalier T, Pignon JP, Vansteenkiste J. Cisplatin-based adjuvant chemotherapy in
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肺
癌
肺(18)
外科療法・病理
QI 13
(改訂あり)
開胸時の胸腔内所見の診療録への記載
分子:
開胸時の胸腔内所⾒(主腫瘍の位置,胸⽔貯溜の有無,胸膜播腫の有
無)が診療録に記載されている患者数
分母:
外科切除(胸腔鏡下切除を含む)が⾏われた肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
肺癌に対する外科切除(胸腔鏡下切除を含む)が⾏われる場合には、開胸時の胸腔内所
⾒(主腫瘍の位置と性状、胸⽔貯溜の有無、胸膜播腫の有無)は基礎的事項として、診療
録(⼿術記録)に記載されるべきである。
参考文献
特になし
肺
癌
肺(19)
外科療法・病理
QI 14
肺実質切除
分子:
肺葉以上の肺実質切除が⾏われたか、⾏われない理由が診療録に記載
されている患者数
分母:
根治⼿術が⾏われた肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
Stage IA非⼩細胞癌276例を対象に肺葉切除群と肺区域切除または肺部分切除を⽐較し
たRCTでは、5年⽣存率は肺葉切除群の約63%に対して縮⼩切除群では約42%であり、縮
⼩切除の成績が劣る可能性が⽰された。局所再発率は縮⼩切除群で肺葉切除群の約3倍で
あった。これらを総合して現時点では肺癌の標準的外科治療は肺葉切除以上の術式と考え
られる。
以上より、肺癌に対する根治⼿術が⾏われる場合には、肺葉以上の肺実質切除が⾏われ
るか、⾏われない理由が診療録に記載されるべきである。
参考文献
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肺
癌
肺(20)
外科療法・病理
QI 15
肺門・縦隔リンパ節の郭清・サンプリング
分子:
原発巣の切除に加えて、肺門・縦隔リンパ節の郭清・サンプリングが
⾏われてその範囲を診療録に記載するか、⾏われない理由が記載され
ている患者数
分母:
根治⼿術が⾏われた肺癌患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
肺癌診療ガイドライン2005年版では、系統的リンパ節郭清がサンプリングと⽐較して
multiple N2の発⾒率が⾼く、術後合併症の発⽣率や死亡率に有意差がないとの報告を元
に、正確なStage診断の観点から⾏うことを勧めているが、サンプリングと系統的郭清
の、⽣存率、局所再発率、無病⽣存率などのアウトカムの違いについては報告によって結
果が⼀定していないのが実情であり、予後改善については根拠が明確でないとしている。
そのため、QIとしてはどちらかに限定できないが、肺癌に対する根治⼿術が⾏われる場合
には、原発巣の切除に加えて肺門・縦隔リンパ節の郭清・サンプリングのいずれかが⾏わ
れ、その範囲を診療録に記載するか、⾏われない理由が診療録に記載されるべきである。
参考文献
1. Izbicki JR, Passlick B, Pantel K, Pichlmeier U, Hosch SB, Karg O, et al. Effectiveness of radical systematic mediastinal
lymphadenectomy in patients with resectable non-small cell lung cancer: results of a prospective randomized trial. Ann Surg
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65-6.
肺
癌
肺(21)
外科療法・病理
QI 16
実施率の
計算方法
胸水の細胞診
分子:
胸⽔の細胞診が⾏われた患者数
分母:
外科切除(胸腔鏡下切除を含む)において胸⽔が⾒られた肺癌患者数
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
肺癌に対する外科切除(胸腔鏡下切除を含む)において胸⽔が⾒られた場合には、それ
が悪性か否かを鑑別するために、胸⽔の細胞診が⾏われるべきである。
参考文献
肺
癌
肺(22)
特になし
非小細胞肺癌に対する療法
QI 17
(改訂あり)
プラチナ製剤を含む2剤併用療法
分子:
プラチナ製剤を含む多剤併用療法が⾏われたか、⾏われない場合には
根拠が診療録に記載されている患者数
分母:
75歳未満、PS0〜1でStageⅢ〜Ⅳの非⼩細胞癌と診断され、化学
療法を受けた患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
メタアナリシスにおいて、進⾏非⼩細胞癌では化学療法により有意に⽣存期間が延⻑す
ることが⽰されている。第3世代抗癌剤(塩酸イリノテカン、ビノレルビン、ゲムシタビ
ン、パクリタキセル、ドセタキセル)とシスプラチンとの2剤併用療法とシスプラチン単
剤との⽐較試験では、併用療法がシスプラチン単剤に⽐べ、有意に⽣存期間が延⻑するこ
とが認められている。第2世代抗癌剤(ビンデシン、イフォマイド、マイトマイシン、エ
トポシドなど)とプラチナ製剤併用療法、第3世代抗癌剤とプラチナ製剤併用療法との⽐
較試験では、第3世代抗癌剤とプラチナ製剤併用療法が⽣存率において有意に優れるとの
報告が多く、メタアナリシスにおいては第3世代抗癌剤とプラチナ製剤併用療法がわずか
ながら勝っていることが⽰されている。第3世代抗癌剤とプラチナ製剤併用療法同⼠の⽐
較試験では、いずれのレジメンにおいても効果に差がないことが⽰されている。また、
EGFR変異のある場合ではゲフィチニブが1stラインの化学療法にもなりえるが、その旨が
診療録に記載されるべきである。
以上より、化学療法施⾏可能な患者において、プラチナ製剤を含む多剤併用療法は、単
剤療法よりも予後の改善を認めていることから、75歳未満、PS 0〜1でStage III〜IVの非
⼩細胞癌と診断された患者に化学療法を⾏う場合、プラチナ製剤を含む多剤併用療法(塩
酸イリノテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル)が⾏わ
れるか、⾏われない場合には根拠が診療録に記載されるべきである。
参考文献
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癌
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肺
癌
肺(24)
非小細胞肺癌に対する療法
QI 18
(改訂あり)
化学療法の施行コース数
削除しました
肺
癌
肺(25)
非小細胞肺癌に対する療法
QI 19
(改訂あり)
化学療法後の増悪・再発患者に対する化学療法
分子:
再度化学療法を⾏う選択肢について、患者に説明がされているか、化
学療法施⾏が不可能な理由の記載がある患者数
分母:
非⼩細胞癌の患者でプラチナ製剤を含む化学療法施⾏後に増悪または
再発した患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
プラチナ製剤再発例に対するドセタキセルの第3相試験が報告されており、ドセタキセ
ルと最適⽀持療法(BSC)との⽐較では、ドセタキセルにより⽣存期間の有意な延⻑を認
め、Quality of Life(QOL)の改善も認められた。ドセタキセルとビノレルビンまたはイ
フォマイドの⽐較試験では、⽣存期間では有意な差は認められなかったが、腫瘍増大まで
の期間および奏効率でドセタキセルが有意に勝っていた。これらの結果より増悪または再
発非⼩細胞癌に対するドセタキセルの有効性が確⽴されたと考えられる。また化学療法施
⾏後に増悪・再発した非⼩細胞癌に対するエルロチニブとBSCとの⽐較ではエルロチニブ
により⽣存期間の有意な延⻑を認めている。増悪・再発した非⼩細胞癌に対するゲフィチ
ニブとBSCとの⽐較試験では、ゲフィチニブにより⽣存期間が延⻑する傾向が認められ、
海外で⾏われたドセタキセルとの⽐較試験では⽣存期間においてゲフィチニブのドセタキ
セルに対する非劣性が証明されている。
以上より、プラチナ製剤を使用した後の増悪または再発例はプラチナ耐性が考えられ、
ドセタキセルなどによる治療効果が期待できることから、非⼩細胞癌の患者で、プラチナ
製剤を含む化学療法施⾏後に増悪または再発したが 化学療法が施⾏可能と考えられる場合
には、再度化学療法を⾏う選択肢について、患者に説明するべきであり、不可能な場合は
その理由が診療録に記載されるべきである。
参考文献
肺
癌
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肺(26)
非小細胞肺癌に対する療法
QI 20
非手術のStageⅠ非小細胞癌に対する根治的放射線治
療
分子:
根治的放射線単独治療が⾏われたか、⾏われない理由が診療録に記載
されている患者数
分母:
臨床StageⅠ非⼩細胞癌と診断され、⼿術が⾏われなかった患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
StageⅠ非⼩細胞癌の放射線治療に関する系統的レビューでは3年、5年⽣存率は各34
+9%(平均値+1S.E.)、21+8%、原病⽣存率は各、34+10%、25+9%であった。
わが国において1980〜1989年に55〜75Gyの通常照射で治療されたStageⅠ非⼩細胞癌の
5年⽣存率は22%であった。EBMに基づく肺癌診療ガイドラインの系統的レビューでは、
検索した9件のガイドラインのうちStageⅠに対して6件、IIに対して5件のガイドライ
ンで非⼿術症例に対して放射線治療の適応があると記載しており、何らかの理由で⼿術が
できないStageⅠ/II非⼩細胞癌に対しては経過観察よりも根治的放射線単独治療が推奨
されると考えられる。
以上より、非⼿術症例においても放射線治療により良好な⽣存率が期待できることか
ら、臨床StageⅠの非⼩細胞癌と診断された患者で⼿術が⾏われないならば、根治的放射
線単独治療が⾏われるか、⾏われない理由が診療録に記載されるべきである。
参考文献
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肺
癌
肺(27)
非小細胞肺癌に対する療法
QI 21
切除不能非小細胞癌に対する化学放射線療法
分子:
化学放射線療法が⾏われたか、⾏われない理由が診療録に記載されて
いる患者数
分母:
臨床Stage III非⼩細胞癌(悪性胸⽔例または悪性⼼嚢⽔例を除く)
と診断され、(1) PS 0〜1、(2) 70歳以下、(3) ⼿術が⾏われなかっ
た患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
切除不能な局所進⾏非⼩細胞癌に対する胸部放射線治療と化学放射線療法の⽐較試験を
まとめたメタアナリシスでは、シスプラチンを含む化学療法と放射線治療の併用群の⽣存
率が放射線単独群の⽣存率に⽐べ、有意に良好であった。化学療法と化学放射線療法につ
いての2件の⽐較試験では、いずれも⽣存期間全体では有意な差は認めなかったが、⻑期
⽣存率、局所コントロールで有意に化学放射線療法が優れていた。現在、切除不能な局所
進⾏非⼩細胞癌に対する標準的治療は化学放射線療法であることが確⽴していると考えら
れる。
以上より、切除不能な局所進⾏非⼩細胞癌において、化学放射線療法によりそれぞれの
単独療法よりも予後改善が期待できることから、臨床Stage III非⼩細胞癌(悪性胸⽔例ま
たは悪性⼼嚢⽔例を除く)と診断され、(1) PS 0〜1、(2) 70歳以下、(3) ⼿術が⾏われ
ない患者ならば、化学放射線療法が⾏われるか、⾏われない場合には理由が診療録に記載
されるべきである。
参考文献
1. Kato H, Ichinose Y, Ohta M, Hata E, Tsubota N, Tada H, Watanabe Y, Wada H, Tsuboi M, Hamajima N, Ohta M. A
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肺(28)
非小細胞肺癌に対する療法
QI 22
StageⅡ、ⅢA非小細胞癌に対する術後化学療法
分子:
プラチナ製剤を含む術後化学療法が⾏われたか、⾏われない理由が診
療録に記載されている患者数
分母:
術後Stage II、IIIAの非⼩細胞癌で完全切除された患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
術後StageI〜IIIAを対象としてシスプラチンとエトポシドまたはビンカアルカロイド
系抗癌剤の併用化学療法と⼿術単独を⽐較した臨床試験において、術後化学療法群で5年
⽣存率の有意な改善が報告されている。また術後Stage IB、IIを対象としてシスプラチン
とビノレルビンの併用化学療法と⼿術単独を⽐較した第3相試験(JBR10)、術後Stage
IB〜IIIAを対象としてシスプラチンとビノレルビンの併用化学療法と⼿術単独を⽐較した
第3相試験(ANITA)では、いずれも術後化学療法群で5年⽣存率の有意な改善が報告さ
れている。これら3試験と2件の⽐較試験を含めたメタアナリシスでは、シスプラチンを
含む術後化学療法によって5年⽣存率で5.3%(p=0.004)の改善が認められた。
以上より、術後Stage II、IIIAの術後化学療法は⼿術単独に⽐べて予後を改善すること
から、術後Stage II、IIIAの非⼩細胞癌で完全切除された患者は、プラチナ製剤を含む術
後化学療法が⾏われるか、⾏われない理由が診療録に記載されるべきである。
参考文献
1. Arriagada R, Bergman B, Dunant A, Le Chevalier T, Pignon JP, Vansteenkiste J. Cisplatin-based adjuvant chemotherapy in
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肺
癌
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肺(29)
非小細胞肺癌に対する療法
QI 23
(改訂あり)
単発性脳転移に対する手術・放射線治療
分子:
放射線治療(または⼿術) が⾏われた患者数(神経症状によるPS低下
を除く)
分母:
非⼩細胞癌の単発性脳転移(他臓器にも転移がない)と診断され、神
経症状のあるPS0〜1の患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
肺癌診療ガイドライン2005年版では、非⼩細胞癌の孤⽴性脳転移には⼿術あるいは定位
⼿術的照射を、また脳転移⼀般に関して標準治療の1つとして全脳照射を推奨している。
孤⽴性脳転移症例に対して全脳照射のみと全脳照射+⼿術を⽐較したRCTにおいて、⼿術
による⽣存期間の延⻑、Quality of Life(QOL)の改善などが報告されている。⼀⽅、⼿
術に全脳照射併用・非併用を⽐較したRCTでは、⽣存期間の延⻑は⾒られなかったもの
の、脳内再発や局所再発が統計学的に有意に減少することから、全脳照射を追加すること
は脳転移の再発低下に有用であると考えられる。
以上より、脳転移に対するこれらの治療は局所制御、⽣存期間、QOLの改善が期待でき
ることから、非⼩細胞癌の単発性脳転移(他臓器にも転移がない)と診断され、神経症状
によるPS低下例を除いて、神経症状のあるPS 0〜1の患者に対しては放射線治療あるいは
⼿術が⾏われるべきである。
参考文献
1. ⽇本肺癌学会, ed. 肺癌診療ガイドライン 2005年度版. 東京: ⾦原出版; 2005.
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肺
癌
肺(30)
小細胞肺癌に対する治療
QI 24
小細胞癌に対する多剤併用化学療法
分子:
多剤併用化学療法(化学放射線療法の場合も含む)が⾏われたか、⾏
わない場合はその理由が診療録に記載されている患者数
分母:
⼩細胞癌と診断されたPS 0〜3の患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
シクロホスファミド単剤とシクロホスファミドを含む多剤併用化学療法の⽐較では多剤
併用化学療法が有意に⽣存期間の延⻑を認めている。肺癌診療ガイドライン2005年版では
シスプラチンとエトポシドの併用療法およびシスプラチンと塩酸イリノテカンの2剤併用
療法を標準的治療として⾏うよう勧めている。また、PS不良例(PS 2、3)に対して経⼝
エトポシド単剤と多剤併用化学療法との⽐較試験が⾏われたが、経⼝エトポシド群は多剤
併用化学療法群と⽐較し、⽣存が不良で、毒性も強いことが⽰された。これらの結果よ
り、⼩細胞癌に対する化学療法は多剤併用療法が推奨され、PS不良例に対しても可能であ
れば併用化学療法を⾏うべきである。
以上より、⼩細胞癌に対して多剤併用療法は単剤化学療法に⽐べて⽣存期間の延⻑が認
められることから、⼩細胞癌と診断されたPS0〜3の患者には多剤併用化学療法(化学放射
線療法の場合も含む)を⾏うか、⾏わない場合はその理由が診療録に記載されるべきであ
る。
参考文献
1. Green RA, Humphrey E, Close H, Patno ME. Alkylating agents in bronchogenic carcinoma. Am J Med 1969;46(4):516-25.
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肺(31)
小細胞肺癌に対する治療
QI 25
小細胞癌に対する化学療法の施行コース数
分子:
4コース以上6コース以下であったか、そうでない場合はその理由が
診療録に記載されている患者数
分母:
⼩細胞癌と診断され、シスプラチン/エトポシドまたはシスプラチン
/塩酸イリノテカンの併用療法を受けた患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
化学療法の⾄適なコース数は明確ではないが、⻑期間治療を続けても効果は乏しいとさ
れている。シクロホスファミド/ドキソルビシン/エトポシドの併用療法を5コース⾏う
群とその後さらに7コース追加する(計12コース)群との⽐較試験では⽣存期間に差はな
かった。シクロホスファミドを含む併用療法の6コースと12コースとの⽐較においても⽣
存期間に差はなかった。その他、シクロホスファミドを含む併用療法の4コースと8コー
スの⽐較試験も⾏われているが、⻑期化学療法を継続する有用性は⽰されていない。最近
の臨床試験では4〜6コースの治療が⾏われることが多く、シスプラチン/塩酸イリノテ
カンの併用療法においても4〜6コースの成績が報告されている。
以上より、6コースを超えて化学療法を⾏っても効果が期待できないことから、⼩細胞
癌と診断された患者にシスプラチン/エトポシド、またはシスプラチン/塩酸イリノテカ
ンの併用療法を⾏う場合、4コース以上6コース以下とするか、そうでない場合はその理
由が診療録に記載されるべきである。
参考文献
1. Noda K, Nishiwaki Y, Kawahara M, Negoro S, Sugiura T, Yokoyama A, Fukuoka M, Mori K, Watanabe K, Tamura T,
Yamamoto S, Saijo N. Irinotecan plus cisplatin compared with etoposide plus cisplatin for extensive small-cell lung cancer. N
Engl J Med 2002;346(2):85-91.
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肺
癌
肺(33)
小細胞肺癌に対する治療
QI 26
限局型小細胞癌に対する化学放射線療法
分子:
化学療法と胸部放射線治療の同時併用が⾏われたか、⾏われない理由
が診療録に記載されている患者数
分母:
限局型⼩細胞癌と診断された患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版、 NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology、
Small Cell Lung Cancer Treatment (PDQ)
根拠
限局型⼩細胞癌に対しては、化学療法と胸部放射線治療の併用が各種ガイドラインなど
で推奨されている。13件の⽐較試験のメタアナリシスでは、化学療法に胸部放射線治療を
併用すると死亡の絶対リスクが14%減少し、3年⽣存率が5.4±1.4%改善することが報告
されている。11件の⽐較試験のメタアナリシスにおいても、化学療法に胸部放射線治療を
併用することで2年⽣存率が5.4%、局所制御率が25.3%改善すると報告されている。
以上より、限局型⼩細胞癌に対して、化学放射線療法は化学療法単独よりも⽣存率が⾼
いことから、限局型⼩細胞癌と診断された患者は、化学療法と胸部放射線治療の同時併用
が⾏われるか、⾏われない理由が診療録に記載されるべきである。
参考文献
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http://www.nccn.org/professionals/physician̲gls/f̲guidelines.asp.)
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肺
癌
肺(34)
小細胞肺癌に対する治療
QI 27
(改訂あり)
限局型小細胞癌に対するシスプラチン+エトポシド
を用いた化学放射線療法
分子:
化学療法のレジメンとしてシスプラチン+エトポシドが使用された
か、それ以外の場合は理由が診療録に記載されている患者数
分母:
限局型⼩細胞癌と診断され、化学放射線療法が⾏われた患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版、 NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology、
Small Cell Lung Cancer Treatment (PDQ)
根拠
限局型⼩細胞癌では化学療法と胸部放射線治療を併用する場合は同時併用(早期同時併
用)が推奨される。これまでのところ、放射線治療の照射⽅法を⼀定にして化学療法レジ
メンを⽐較検討した臨床試験は報告されておらず、化学療法と過分割照射による胸部放射
線治療の同時併用の⽐較試験では1試験を除いてシスプラチン+エトポシド併用療法が用
いられている。
以上より、⼩細胞癌に対してシスプラチン+エトポシド併用療法は最も成績が良く、放
射線との同時併用においても同様と考えられることから、限局型⼩細胞癌と診断された患
者で、化学放射線療法がおこなわれる場合は、化学療法のレジメンとしてシスプラチン+
エトポシドが使用されるか、それ以外の場合は理由が診療録に記載されるべきである。
参考文献
1. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. (Accessed at
http://www.nccn.org/professionals/physician̲gls/f̲guidelines.asp.)
2. Small Cell Lung Cancer Treatment (PDQ). (Accessed at http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/treatment/small-celllung/healthprofessional.)
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6. Turrisi AT, 3rd, Kim K, Blum R, Sause WT, Livingston RB, Komaki R, Wagner H, Aisner S, Johnson DH. Twice-daily
compared with once-daily thoracic radiotherapy in limited small-cell lung cancer treated concurrently with cisplatin and
etoposide. N Engl J Med 1999;340(4):265-71.
肺
癌
肺(35)
小細胞肺癌に対する治療
QI 28
(改訂あり)
小細胞癌に対する予防的全脳照射
分子:
全脳照射(PCI)が⾏われたか、⾏わない理由が診療録に記載されてい
る患者数
分母:
限局型or進展型肺⼩細胞癌に対する初回治療でCRが得られた患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版、ACCP evidence-based clinical practice guidelines
(2nd edition)
根拠
⼩細胞肺癌の診断時に脳転移がみられる割合は10%程度であるが、治療後2年で50%程
度が脳転移を起こすといわれている。7つのRCTに参加した987名の個別データを対象に
初期治療にてCR後の全脳照射を⾏うか否かを⽐較したメタアナリシスでは3年の時点で脳
転移が59%から34%に減少、⽣存率が、15%から21%に上昇することが報告されてい
る。これを受けて、肺癌診療ガイドライン2005年版では、⼩細胞肺癌の初期治療でCRが
得られた症例には予防的全脳照射を⾏うことを推奨している。また、ACCP(アメリカ胸
部医会)の2007年ガイドラインではも同様の推奨がなされ、ここでは、「⾼齢者・喫煙者
などの特定の集団がPCIから利益を受けないことはない」として広く推奨する内容となっ
ている。さらに、ガイドラインと同時期に発表された、CRの得られた進展型⼩細胞癌を対
象としたランダム化⽐較試験でも、1年以内の再発がPCI群で有意に低いことが報告され
ている。
以上より、⼩細胞癌に対する初回治療でCR が得られた患者に対しては、PCIを⾏うこと
をQIとした。
参考文献
1. ⽇本肺癌学会, ed. 肺癌診療ガイドライン 2005年度版. 東京: ⾦原出版; 2005.
2. Gregor A, Drings P, Burghouts J, Postmus PE, Morgan D, Sahmoud T, Kirkpatrick A, Dalesio O, Giaccone G. Randomized trial
of alternating versus sequential radiotherapy/chemotherapy in limited-disease patients with small-cell lung cancer: a European
Organization for Research and Treatment of Cancer Lung Cancer Cooperative Group Study. J Clin Oncol 1997;15(8):2840-9.
3. Auperin A, Arriagada R, Pignon JP, Le Pechoux C, Gregor A, Stephens RJ, Kristjansen PE, Johnson BE, Ueoka H, Wagner H,
Aisner J. Prophylactic cranial irradiation for patients with small-cell lung cancer in complete remission. Prophylactic Cranial
肺
癌
肺(36)
Irradiation Overview Collaborative Group. N Engl J Med 1999;341(7):476-84.
4. Simon GR, Turrisi A. Management of small cell lung cancer: ACCP evidence-based clinical practice guidelines (2nd edition).
Chest 2007;132(3 Suppl):324S-39S.
5. Slotman B, Faivre-Finn C, Kramer G, Rankin E, Snee M, Hatton M, Postmus P, Collette L, Musat E, Senan S. Prophylactic
cranial irradiation in extensive small-cell lung cancer. N Engl J Med 2007;357(7):664-72.
6. Cull A, Gregor A, Hopwood P, Macbeth F, Karnicka-Mlodkowska H, Thatcher N, Burt P, Stout R, Stepniewska K, Stewart M.
Neurological and cognitive impairment in long-term survivors of small cell lung cancer. Eur J Cancer 1994;30A(8):1067-74.
小細胞肺癌に対する治療
QI 29
(改訂あり)
再発小細胞癌の化学療法
分子:
化学療法が⾏われたか、⾏わない理由が診療録に記載されている患者
数
分母:
⼩細胞癌と診断された患者で、初回治療が奏効し治療完了後90⽇以
上経過後に初めて憎悪が確認されたPS0〜1の患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
初回治療に奏効し、90⽇以上経過した後に再発した⼩細胞癌の患者では、初回化学療法
と同じレジメンにより腫瘍縮⼩が得られる可能性が⾼いとされている。前治療から60⽇以
上経過して再発した⼩細胞癌患者211名を対象にCAV療法とトポテカン単剤を⽐較した
RCTでは、奏効率、⽣存曲線に差はなかった。さらに、点滴化学療法に非適応の患者に対
する経⼝トポテカンと保存療法を⽐較したRCTでは、トポテカン群で44%に進⾏停⽌がみ
られ、 ITT(Intention-to-Treat)解析においても、⽣存期間中央値26週、保存療法群14
週と有意差が認められた。その他、塩酸イリノテカン、パクリタキセルなども抗腫瘍効果
が確認されている。
以上より、再発例に対する2回目の治療は保存的治療に⽐較して予後を改善することか
ら、⼩細胞癌と診断された患者で、初回治療が奏効し、治療完了後90⽇以上経過後に初め
て憎悪が確認されたPS 0 〜1の患者は、化学療法を⾏うか、⾏わない理由が診療録に記載
されるべきである。
参考文献
1. ⽇本肺癌学会, ed. 肺癌診療ガイドライン 2005年度版. 東京: ⾦原出版; 2005.
2. Simon GR, Turrisi A. Management of small cell lung cancer: ACCP evidence-based clinical practice guidelines (2nd edition).
Chest 2007;132(3 Suppl):324S-39S.
3. von Pawel J, Schiller JH, Shepherd FA, Fields SZ, Kleisbauer JP, Chrysson NG, Stewart DJ, Clark PI, Palmer MC, Depierre A,
Carmichael J, Krebs JB, Ross G, Lane SR, Gralla R. Topotecan versus cyclophosphamide, doxorubicin, and vincristine for the
treatment of recurrent small-cell lung cancer. J Clin Oncol 1999;17(2):658-67.
肺
癌
肺(37)
放射線治療
QI 30
実施率の
計算方法
放射線治療計画
分子:
CTシミュレーションによる治療計画が⾏われた患者数
分母:
肺癌に対し、根治目的で放射線治療計画が⽴てられた患者数
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版、放射線治療計画ガイドライン2004
根拠
肺癌のように決まった形がなく、さらに周りの臓器(正常肺、⾷道、脊髄など)への照
射を最⼩限にとどめるためには、症例毎に、照射の形を加味した照射を調節して計画する
ことが必要である。そのためには、CT画像に基づいて正確な標的領域とリスク臓器の幾何
学的構造を決定した上での3次元治療計画を⾏うことで、より綿密な計画が可能になる。
2次元治療計画に対して3次元治療計画を実際に⽣存率や有害事象出現率などで⽐較試験
を⾏った報告はみられなかったものの、その優位性は自明であり、肺癌ガイドライン2005
年版、放射線治療計画ガイドライン2004においても、推奨されている。
以上より、3次元治療計画により、標的腫瘍とリスク臓器の構造を加味した正確な照射
と、有害事象の最⼩化が可能となることから、肺癌と診断された患者に根治目的で放射線
治療計画を⽴てる場合には、CTシミュレーションによる治療計画を⾏うべきである。
参考文献
肺
癌
肺(38)
1. ⽇本肺癌学会, ed. 肺癌診療ガイドライン
2005年度版. 東京: ⾦原出版; 2005.
放射線治療
QI 31
(改訂あり)
放射線治療の照射線量
分子:
通常分割照射の60Gy相当以上の線量で照射が⾏われたか、⾏われ
ない場合にはその理由が診療録に記載されている患者数
分母:
Ⅲ期非⼩細胞癌と診断され、根治的胸部放射線療法(化学放射線療法
を含む)を⾏った患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版/放射線治療計画ガイドライン2004/American Society
of Clinical Oncology: Practice Guideine
根拠
Radiation Therapy Oncology Groupの報告では、通常分割での60Gyの照射が50Gy、
40Gyよりも統計的有意には⾄らないものの⽣存率の改善を認めており、60Gyが標準とし
て用いられている。肺癌診療ガイドライン2005年版など、各種ガイドラインでも60Gy以
上を推奨している。通常照射法60Gyと過分割照射約70Gyを⽐較したRCTはいくつかあ
り、それらのメタアナリシスで過分割照射による有意な死亡率低下が⽰されている。また
Coxらは過分割照射のRCTで、69.5Gyの治療成績が最も優れていることを⽰し、さらに、
この成績は同様の患者に対する60Gy通常分割照射の成績よりも優れていると結論した。過
分割照射そのものや70Gy以上の線量などの優位性は明らかではないものの、それらを含ん
だ基準として、60Gyの線量以上が必要である。
以上より、Ⅲ期非⼩細胞癌と診断された患者で根治的胸部放射線治療 (化学放射線療法
を含む)を⾏う場合には、通常分割照射の60Gy相当以上の線量で照射を⾏い、⾏わない場
合にはその理由が診療録に記載されるべきである。
参考文献
1. ⽇本肺癌学会, ed. 肺癌診療ガイドライン 2005年度版. 東京: ⾦原出版; 2005.
2. 放射線治療計画ガイドライン 2004. (2005年更新). (Accessed Jan 31., 2008, at http://web.sapmed.ac.jp/radiol/guideline/.)
3. Perez CA, Stanley K, Rubin P, Kramer S, Brady L, Perez-Tamayo R, Brown GS, Concannon J, Rotman M, Seydel HG. A
prospective randomized study of various irradiation doses and fractionation schedules in the treatment of inoperable nonoatcell carcinoma of the lung. Preliminary report by the Radiation Therapy Oncology Group. Cancer 1980;45(11):2744-53.
4. Perez CA, Pajak TF, Rubin P, Simpson JR, Mohiuddin M, Brady LW, Perez-Tamayo R, Rotman M. Long-term observations of
the patterns of failure in patients with unresectable non-oat cell carcinoma of the lung treated with definitive radiotherapy.
Report by the Radiation Therapy Oncology Group. Cancer 1987;59(11):1874-81.
5. Clinical practice guidelines for the treatment of unresectable non-small-cell lung cancer. Adopted on May 16, 1997 by the
American Society of Clinical Oncology. J Clin Oncol 1997;15(8):2996-3018.
6. Sause W, Kolesar P, Taylor SI, Johnson D, Livingston R, Komaki R, Emami B, Curran W, Jr., Byhardt R, Dar AR, Turrisi A,
3rd. Final results of phase III trial in regionally advanced unresectable non-small cell lung cancer: Radiation Therapy Oncology
Group, Eastern Cooperative Oncology Group, and Southwest Oncology Group. Chest 2000;117(2):358-64.
7. Stuschke M, Thames HD. Hyperfractionated radiotherapy of human tumors: overview of the randomized clinical trials. Int J
Radiat Oncol Biol Phys 1997;37(2):259-67.
8. Cox JD, Azarnia N, Byhardt RW, Shin KH, Emami B, Perez CA. N2 (clinical) non-small cell carcinoma of the lung: prospective
肺
癌
trials of radiation therapy with total doses 60 Gy by the Radiation Therapy Oncology Group. Int J Radiat Oncol Biol Phys
1991;20(1):7-12.
肺(39)
放射線治療
QI 32
実施率の
計算方法
(改訂あり)
化学放射線療法における1日2回照射
分子:
1⽇2回照射が⾏われた患者数
分母:
限局型⼩細胞癌に対して同時化学放射線療法を⾏った患者数
参照ガイドライン/先行研究
肺癌診療ガイドライン2005年版
根拠
限局型⼩細胞癌に対して化学療法(シスプラチン+エトポシド)と胸部放射線治療を併
用した場合の、過分割照射法と従来の1⽇1回通常照射法を⽐較したランダム化⽐較試験
では、通常照射群(1回1.8Gyを計25回、総量45Gyを5週間で照射)に⽐べて、過分割
照射群(1回1.5Gyを1⽇2回照射し計30回、総量45Gyを3週間で照射)で、⽣存期間
中央値、2年⽣存率、5年⽣存率の有意な改善が報告されている。放射線治療において全
照射期間の短縮は治療成績の向上につながり、⼩細胞癌においても加速過分割照射による
全照射期間の短縮が治療成績の向上につながると考えられる。
以上より、1⽇2回照射による全照射期間の短縮は治療成績の向上につながることか
ら、 限局型⼩細胞癌に対して同時化学放射線治療を⾏う場合には1⽇2回照射を⾏うべき
である。
参考文献
1. Turrisi AT 3rd, Kim K, Blum R, Sause WT, Livingston RB, Komaki R, et al. Twice-daily compared with once-daily thoracic
radiotherapy in limited small-cell lung cancer treated concurrently with cisplatin and etoposide. N Engl J Med 1999;340:26571.
2. Kochhar R, Frytak S, Shaw EG. Survival of patients with extensive small-cell lung cancer who have only brain metastasis at
initial diagnosis. Am J Clin Oncol 1997;20:125-7.
肺
癌
肺(40)
放射線治療
QI 33
胸部放射線治療の患者説明
分子:
目的、⽅法、有害事象(急性障害および慢性障害)について説明がな
され、そのことが診療録に記載されている患者数
分母:
肺癌に対し、胸部放射線治療を受けた患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
治療の選択肢について、医師と患者間で話し合うべきであることは⾔うまでもないが、
特に放射線治療においては、胸部照射の有害事象に頭髪の脱⽑を気にするなど、患者の誤
解に基づく恐怖もあるので、それを取り除くための⼗分な話し合いが必要である。また、
事前に起こり得る合併症について⼗分に説明することで、合併症の早期発⾒・早期治療に
つながることも期待される。
以上より、治療選択の中⼼は患者であり、起こり得る情報を知り、納得した上で治療を
受けるべきであることから、肺癌と診断された患者が胸部放射線治療を受ける場合には、
目的、⽅法、有害事象(急性障害および慢性障害)について説明がなされ、そのことが診
療録に記載されるべきである。
参考文献
特になし
肺
癌
肺(41)
有害事象のフォローアップ
QI 34
(改訂あり)
胸部放射線治療による放射線障害の記載
分子:
照射期間中に急性障害(⾷道炎または⽪膚炎)について、また照射終
了後6ヶ⽉以内に、慢性障害(肺臓炎または脊髄症)の有無について
診療録に記載されている患者数
分母:
肺癌と診断され、胸部放射線治療(化学放射線療法を含む)を受けた
患者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
放射線治療計画ガイドライン2004
根拠
放射線治療計画ガイドライン2004(2005年更新)では、放射線治療、特に化学放射線
療法における主な急性有害反応として骨髄抑制、放射線⾷道炎、放射線肺臓炎、慢性有害
反応として脊髄症、肺臓炎をあげている。放射線⾷道炎は治療期間内、通常分割照射では
18Gy〜21Gyの照射がされたころに起こり、照射が終わって1〜3週間程度まで持続す
る。通常照射での発⽣率は1.3%程度であるが、化学療法との同時併用ではGrade3以上が
10〜37%に⾒られ、過分割照射ではさらに上昇する。放射線肺臓炎や肺線維症は照射終了
直後から数ヵ⽉で照射野に⼀致して⾒られ、時に重症化することもある。肺臓炎の出現時
期は放射線治療終了から3週間後が中央値であり、10週間程度持続する。6ヵ⽉以内に1
度は肺臓炎に関して呼吸状態、呼吸機能検査、胸部X線による評価を⾏い、診療録に記載
されるべきである。
以上より、有害事象により放射線治療の継続や⽅法などが検討され、また遅発性の肺臓
炎については治療や注意深い経過観察が必要になることから、肺癌と診断された患者が胸
部放射線治療(化学放射線療法を含む)を受けた場合には、照射期間中に急性障害(⾷道
炎または⽪膚炎)について、また照射終了後6ヵ⽉以内に、慢性障害(肺臓炎または脊髄
症)の有無について診療録に記載されるべきである。
参考文献
1. Turrisi AT, 3rd, Kim K, Blum R, Sause WT, Livingston RB, Komaki R, Wagner H, Aisner S, Johnson DH. Twice-daily
compared with once-daily thoracic radiotherapy in limited small-cell lung cancer treated concurrently with cisplatin and
etoposide. N Engl J Med 1999;340(4):265-71.
2. 放射線治療計画ガイドライン 2004. (2005年更新). (Accessed Jan 31., 2008, at http://web.sapmed.ac.jp/radiol/guideline/.)
肺
癌
肺(42)
3. Werner-Wasik M. Treatment-related esophagitis. Semin Oncol 2005;32(2 Suppl 3):S60-6.
4. Kong FM, Ten Haken R, Eisbruch A, Lawrence TS. Non-small cell lung cancer therapy-related pulmonary toxicity: an update
on radiation pneumonitis and fibrosis. Semin Oncol 2005;32(2 Suppl 3):S42-54.
5. Monson JM, Stark P, Reilly JJ, Sugarbaker DJ, Strauss GM, Swanson SJ, Decamp MM, Mentzer SJ, Baldini EH. Clinical
radiation pneumonitis and radiographic changes after thoracic radiation therapy for lung carcinoma. Cancer 1998;82(5):84250.
有害事象のフォローアップ
QI 35
(改訂あり)
静注化学療法施行中の定期検査
分子:
初回化学療法の各クール開始前または1ヶ⽉に1回以上、以下の検査
がなされている患者数
・血液検査
・胸部X線
分母:
肺癌と診断され、静注化学療法(化学放射線療法を含む)を受けた患
者数
実施率の
計算方法
参照ガイドライン/先行研究
特になし
根拠
化学療法施⾏中の患者における投与延期、または減量・中⽌に統⼀した判定基準は存在
しない。しかし、国内外の臨床試験では⼀般に⽩血球数3000/mm 3未満、好中球数
1500/mm3未満、血⼩板数10万/mm 3未満、総ビリルビン2.0mg/dL以上、AST・
ALT 100IU/L以上、血清クレアチニン値が施設正常値上限より⾼値、Grade2以上の非
血液毒性を認めた場合には、これらが回復するまで投与を延期するようにプロトコルが設
定されている場合が多い。これらの事項を満たさない患者では、化学療法の続⾏により、
重篤な有害事象が誘発される危険が⾼いと考えられる。臨床試験以外の化学療法において
も、安全性確保のためには、少なくとも各クール投与開始前に上記の条件を確認すること
が必要である。特に肺においては、これらに加えて、LDHの値、および胸部X線による評
価が必要と考えられる。
以上より、化学療法の有害事象を早期に発⾒し、以降の治療を決定することで、患者へ
の最適な治療が可能になることから、肺癌と診断された患者が初めて静注化学療法(化学
放射線療法を含む)を受ける場合には、各クール開始前または1ヵ⽉に1回以上、血液検
査、胸部X線写真の検査がなされるべきである。
参考文献
特になし
肺
癌
肺(43)
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