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資料 1-4-2 別添
通信・放送分野における研究開発の概要
1.研究開発の概要
1.1 成層圏無線通信の特質
成層圏に無人の無線通信基地局を長期間滞空させて使うというアイデアは古くから有人・無人航空機型、飛
行船型など色々な構想があった。地上無線回線では障害物により電波が遠くに届かず、衛星回線では伝搬遅
延や電波減衰に難点があるが、地上と衛星の間に位置する未開拓空間の成層圏が近年あらためて注目され
てきた。高度 10 数 km から 50km 程度の成層圏の中で、比較的気象条件の安定している高度 20km 近辺の大
気層に通信・放送機器を搭載したプラットフォームを滞空させることが出来れば、これは高さ 20km の高高度タ
ワーに匹敵し、高い仰角による見通し回線が得やすいため、1機のプラットフォームで半径 50km∼100km あま
りの広い範囲をカバー出来、端末の送信電力や伝搬遅延時間も小さくてすむ。また、半径 100km の範囲を地
上の鉄塔などによる基地局でカバーしようとすると 1500 局あまりの設置が必要となるが、成層圏プラットフォー
ムであれば1機程度でカバーすることが出来る。
静止衛星
衛星系無線通信層 36,000Km
低・中軌道周回衛星
500∼10,000Km
・衛星系に比べて伝搬遅延、
電波減衰小
・電波遮蔽、マルチパス影響小
・高い周波数の利用容易
・地上系に比べてサービスエリア大
システムコスト低減
・1機でのサービスイン可能
(中間圏)
柔軟なシステム展開可能
・ 特に20km付近は気象条件が穏やか
・ 大気希薄、常に晴天、太陽エネルギー
(宇宙)
90Km
50Km
(成層圏)
成層圏無線通信層
10Km
成層圏プラットフォーム
地上系無線通信層
図 1.1-1 成層圏無線通信層の特長
高度:20km
最低仰角:10°
カバ-半径:100km
配備機数:16機
高度:20km
最低仰角:5°
カバ-半径:200km
配備機数:7機
2
1
4
3
5
12
14
4
7
5
11
8
6
9
15
13
2
3
6
10
1
16
図 1.1-2 成層圏プラットフォーム展開例
1
7
また、グローバルなサービスに適している衛星システムに比べ、成層圏プラットフォームは需要のある地域
を中心としたローカルサービスに適しており、海上やほとんど人のいない地域にも展開せざるをえない周回衛
星システムなどに比べて高い運用効率が期待出来、1機だけでのサービスインや柔軟なシステム展開が可能
であるため経済性や低リスクの観点からも期待出来る。災害時に地上のネットワークが壊滅的な被害を被った
時や、イベント等テンポラリーなインフラとして展開し通信回線の提供も可能であり、搭載機器の修理や更新も
プラットフォームを地上に降ろすことにより可能となる。
LEO システム
グローバルなシステム
衛星打上げ
全機打上げ後サービスイン
大半は海の上
成層圏システム
1機のみでもサービスイン可能
(人口稠密地域又は過疎地域)
徐々にサービスを展開
修理や再配置も可能
図 1.1-3 低軌道衛星システムとのサービス展開の比較
1.2 開発の経緯
このような多くの利点をもつ成層圏プラットフォームは、まだ多くの課題はあるものの航空機型あるいは飛行
船型等の成層圏滞空飛翔体の実現性が高まってきたことから海外においてもその開発に関心が集まっており、
飛行船型としては米国や英国等の航空宇宙産業や防衛産業を巻き込んだ開発構想があり、アジアでも中国や
韓国が開発構想を持っている。航空機型としては米国 NASA が開発した太陽電池を電源とする無人軽量航空
機ソーラープレーンや燃料電池を電源とする無人航空機を使用したシステムで実用化しようとする動きもある。
我が国でも昨今無線通信に使える周波数が逼迫してきたこと、マルチメディア時代の流れに従い高速・大容
量無線アクセス手段が切望され、また無線による Last-Mile の可能性への期待、未利用周波数帯の活用検討
などの背景から、1989 年∼1992 年に成層圏無線中継システムに関する調査研究会が実施され、1996 年 12 月
∼1997 年 5 月に成層圏無線中継システムの実用化に向けた調査研究会においてフィージビリティ調査が行わ
れた結果、開発指針についてとりまとめられた。これを受けて 1998 年度から総務省(当時郵政省)と文部科学
省(当時科学技術庁)の連携のもとで成層圏プラットフォームの開発に着手した。
1.3 研究開発計画
通信・放送分野においては有利な伝搬環境下での未利用周波数帯の活用をも主眼にして、基地局での電磁
環境と太陽光の有効利用という両面でのクリーンな通信システムという将来性から、早期に実用化につなげる
べくあらゆる手段・機会を捉えて利用できる飛行体を最大限活用し通信システムの実証を可能な限り早期に行
い、またデモンストレーションや教宣による社会的認知にも重点を置いて、全体通信システム、搭載機器開発、
端局機器開発、無線アクセス制御、アプリケーション開発、飛行試験などの課題につき研究開発を進めることと
した。
2
年度
基
本
方
針
表 1.3-1 通信・放送全体計画
H10 H11
1998 1999
H12
2000
H13
2001
H14
2002
システム 実験シス 実験システム 実験システム 実験システム
概念設計 テム検討 搭載機器
地上機器 事前飛行試験
H15
2003
H16
2004
定点滞空
試験準備
定点滞空
試験
▽ WRC2003(ジュネーブ)
▽ WRC2000(イスタンブール)
周波数分配獲得活動支援(ITU)
準ミリ波帯DBF搭載アンテナ
ヘリコプタ
無線局位置推定実験
試
作
・
試
験
実験機器
機能付加
ミリ波帯MBH搭載アンテナ
定点滞空試験
(光リンク、放送、
無線局位置推定)
ソーラープレーン中継実験
・IMT-2000
・デジタル放送
IMT-2000搭載中継器
地上基地局機器
搭載用カメラ映像伝送評価実験
ミリ波・準ミリ波機器環境評価試験
デジタル放送搭載機器
地上移動局機器
ヘリ プリフライト試験
場外離発着場確認試験
成層圏ジェット
デジタル放送実験
ヘリコプタ
広帯域 HDTV
素材伝送実験
△
1999/12/19 : ミレニアムプロジェクト決定(目標年度:2003年度)
当初の計画では 2002 年に飛行試験を予定していたところ、本プロジェクトが 1999 年 12 月 19 日にミレニア
ムプロジェクトに選定され、また飛行船開発日程の見直しもあり飛行試験実施が 2003 年以降と変更になったが、
通信・放送実験システムは計画通り完成のめどがたったこと、ITU への寄与文書データの取得が必要であるこ
となどから通信・放送ミッションにおいては代替機体による事前飛行試験の実施を決定した。事前飛行試験の
実施にあたっては「定点滞空」と「成層圏」を分離しても何らかの形で実現できる実験を行い、現状システムに
対して電波的非干渉を第1優先とし試験実施上の利便性や実証機試験のための予備試験としても念頭にして
実施した。ソーラープレーン、ジェット機、ヘリコプタによる事前飛行試験により基礎データを取得後、実験機器
の改修・機能付加を実施して定点滞空試験を実施した。
成
成層圏試験(20Km)
(ソーラープレーン)
UHF帯放送+移動体通信試験
・基礎データの取得
・アプリケーションの有効性事前検証
層
が
圏だ
高々度
(高速無線アクセス・IMT2000・デジタル放送)
定点
・本試験に備えて試験習熟
・研究開発計画への反映
・周波数獲得寄与
・パブリックアクセプタンス醸成
滞
成層圏試験(12∼13Km)
(ジェット機/大気球)
UHF帯放送試験
い
きな
空で
低高度
定点停留試験(2∼4Km)
(ヘリコプター/飛行船)
高速無線アクセス+放送素材伝送
定点滞空試験(4Km)
定
い
圏ではな
るが成層
き
で
空
点滞
2002
2003
WRC 03
2004∼
図 1.3-1 事前飛行試験の意義
3
表 1.3-2 代替機体トレードオフ
№
項 目
事前 飛行試 験用 候補 機体の 評 価
有人飛 行船
ヘリコプタ
航 空 機
Skyship600 (米 AirshipManagemen バートル KV 107Ⅱ A (川崎 重工 業 製 GulfstreamⅡ (米Gruman製 )
無 人飛 行船 (テザー ド型)
Aerostats (米TCOM製)
気 球
ブーメラン型 気球
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
プロジェクト参画 、郵 政との情報
H14年 度での 飛行の 可否
非開 示・相互 交換許 諾 契約 要
ウエットリース :2億円
購 入 /リース/改修 /運 用 費
米国 出張 ・滞 在費 等の 加算要
米国 内での ウエットリースに限 定
実 験 の自 由度
最低 でも3ヶ月 間
次 回 WRCでの周波 数獲 得に 28/31GHz帯 の
向 けたデータ取 得の対 応
米国 国内法 の 制約 検 討要
4,571m
上 昇 可能 高度
1,600kg
搭 載 可能 ペイロード
30日 間
停 留 可能 時間
バンク角・定 点 停留精 度
風の 影響 あり。
に よる影響の 程度
30kVA、60Hz、3Φ
供 給 可能 電源容 量
搭 載 可能 容積
十分 なスペース有 り。
供 給 可能 機体データ
無し
実 験 場所 の制約
米国 内に限定
28/31GHz帯
可能
高 速 アクセス通 信実験 の可 否 28/31GHz帯 の 米国国 内法 の
制約 検討要
2GHz帯
可能
移 動 通信 実験の 可 否
47/48GHz帯
可能
デジタル放送 実 験の可 否
UHF帯
可能
デジタル放送 実 験の可 否
「飛 行 船」の 使 用
パブリックアクセプタンス効果
「成 層 圏」ま では上昇 不 可
総合評価
購入可 。 (SPECTOR50)
リース可 。 (SKYSHIP600)
購入: 9億 円 (運行 ・改 造込 )
リース: 8.6億円 (運 行 ・改造 込 )
米国内 :3ヶ月間
日本国 内:1ヶ年
米国内 :国内法 の 制 約 検討 要
リース可。
リース可 。
詳 細情報 得られず 。
1.3億円 (運 行・改造 込)
2.2億 円 (運行 )
0.2億 円 (改造 )
時間・場 所とも自 由
天候に も左 右されにくい
定点に 滞空 不可 能
時 間・場所 の制約 あ り。
天 候にも左右 され る。
定 点に滞 空 不可能
900m (クルージング)
2,100m (最大 )
500kg
13.5km
30km
2,475kg最大
300kg
(500kg (250kg+2人 他)で実験 ) 海 中落下 により再利 用不 可
120分 間 (旋回)
不明
対気速 度(30m/s)内 で滞空可
5,100m (クルージング)
(3kmでのホバリング時 に実 験)
2,750kg最 大
(500kg (250kg+2人 他 )で実 験)
90分間 (3kmでホバリング) (パイロット2人で交 代)
5度 以 内、半径 150m
0∼ 30度 、半径13km、219m/s
定 点滞空 は不 可
不明
別途搭 載の 電源 による。
十分なスペース有り。
無し
航空制 限空 域を 回 避可能
可能
AC200V 20kVA
DC28V 200Ax2
十 分なスペース有 り。
無し
航 空制限 空 域 を回避 可能
可能
DC28V 160A
AC115V 400Hz 3kVA他
十分なスペース有 り。
GPS、IRS、ADC
航空制 限空 域 を回避可 能
定点滞 空せ ず 、不可 能
搭 載電源 による。(新規 開発)
可能
可能
可能
定 点滞空 せ ず、他 に 比べ難
可能
可能
定点滞 空せ ず 、他に比べ 難
定点滞 空せ ず 、不可 能
定 点滞空 せず、不 可 能
可能
可能
定点滞 空せ ず 、他に比べ 難
「成 層 圏 」ま で上 昇可能
「飛 行 船 」では ない
定 点滞空 せず、不 可 能
6時 間
可能
「飛 行船 」の 使用
「成 層圏 」までは上 昇不 可
×
予 算次第 で回数 自由
天 候に左 右される 。
ほ ぼ定点 に滞 空可能
「飛 行 船」でもなけれ ば、
「成 層 圏」ま でも上昇 しない 。
△
◎
○
不明
十 分なスペース有 り。
無し
三 陸のみ
定 点滞空 せず、不 可 能
定 点滞空 せず、不 可 能
「成層 圏」まで上昇可 能
「飛行 船」ではない
×
また、通信機器開発やアプリケーション開発とあわせてITUにおける周波数分配に関する寄与活動にも計
画当初から貢献することとし、WRC とその準備会合、ITU-R 研究会、APG 等の国際会議において HAPS(High
Altitude Platform Station:ITU における命名)に関する寄与文書策定等に参画した。
活動年次
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
△
△
△
△
WRC97
WRC2000
WRC2003
準備会合
WRC2003
47/48GHz
地上固定業務
2004
27/28GHz
地上固定業務
・日本起案での画期的な周波数獲得
・研究成果の寄与文書への反映
・開発技術/実験結果の反映
・各国へのアピール
2GHz
IMT-2000基地局用
・SkyStation社も大きく貢献
開発中システムへの異例の分配
1999∼2004年度までに、NICTが出席した
国際会議:214日間、寄与文書数:36件
1999:CPM,SC
2000:WRC-2000,SG7,SG9
2001:SG4,SG7,SG9,APG
2002:CPM,SC,SG4,SG9,APG
2003:WRC-03,SG4,SG9
2004:SC,SG4,SG9,APG
27/28GHz帯固定業務の規制改正に成功
・31.15-31.3GHz帯使用制限撤廃
・使用可能地域の拡大
(アジア12ヶ国→アジア・ロシア20ヶ国+南北アメリカ)
・WRC-07の議題に採択→更なる緩和の可能性
図 1.3-2 ITU 対応周波数分配活動
4
2.通信・放送分野成果概要
通信・放送分野については前章で述べたように、高度20km の成層圏に大型の飛行船を滞空させ通信・放送、
地球環境保護、災害監視等を目的とする成層圏プラットフォーム研究開発プロジェクトが、平成10年度に国の
プロジェクトとして発足し、情報通信研究機構(当時の通信放送機構)を中心として関連する通信・放送機器メ
ーカ、事業者、公的機関、大学等からなる研究開発推進メンバによりその実用化に向けて以下の日程に従って
進めてきた。
表 2-1 研究開発計画日程
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
事前飛行試
実用を 想定 定点滞空飛 事前飛行試 事前飛行試 事前飛行試 験用機器の 定点滞空飛
し た 概 念 検 行試験用実 験用搭載機 験用地上機 験実施
定点滞空飛 行試験の実
討
験 シ ス テ ム 器開発
(注3)
行試験用へ 施
(注1)
基本設計
(注4)
の改修/機能
器開発
(注2)
向上設計・機
器製作試験
の実施
(注1) 実用: SPF の実用機(全長 245m、高度 20km、定点停留精度±1km、ペイロード 1000kg、ペイロード
電力 10kW)を想定
(注2) 定点滞空飛行試験:SPF の定点試験機(全長 67m、高度 4km、定点停留精度±1km、ペイロード
250kg)を想定
(注3) 事前飛行試験:高度 12km を旋回するジェット機、及び高度 3km でホバリングするヘリコプタを用
いて通信・放送実験を実施
(注4) 事前飛行試験に先立って、成層圏高度 20km を飛行する無人ソーラープレーン(Pathfinder Plus)
を用いた通信・放送実験を、ハワイにおいて日米共同(NASA、AeroVironment 社と共同)で実施
平成10年度には、従来の地上系や衛星系より優れた 20km の成層圏高度に滞空する成層圏プラットフォー
ム(以下 SPF と略称)の利点を生かした通信・放送システムの概念検討を行った。その結果、図 2-1 に示すよう
に SPF のアプリケーションを大きく「広帯域固定無線アクセス」、「高速移動通信」、「放送」の3システムに分けて、
それぞれについてその有効性を実証するための試験を実施することを目標に研究開発を進めることとした。
これに基いて実証試験に必用なアンテナ等の要素技術の開発研究を開始すると共に、平成11年度には定
点滞空飛行試験用実験システムの基本設計を実施し、平成12年度から平成13年度には搭載機器、及び地上
機器の開発を実施した。
プロジェクト開始の翌年平成11年から、国外からも講演・聴講を募って成層圏プラットフォームワークショップ
第1回を開催してきたところ、平成12年9月の第2回成層圏プラットフォームワークショップにおいて、NASA が
開発した無人のソーラープレーン Pathfinder Plus と日本側が開発した通信機器を使用した共同実験について
討議がなされた。双方共関係機関他と検討した結果これを実施する事となり、平成14年夏期には日米共同実
験という形で、Pathfinder Plus を使った世界初の成層圏無線中継実験に成功した。
5
複数の
搭載ミッション
プラットフォーム間
光通信
マルチビーム
アンテナ
デジタルテレビ放送
広帯域固定無線アクセス
高速移動通信
非常時通信
図 2-1 成層圏プラットフォームを利用した通信・放送システムのイメージ
★ NASA開発のソーラープレーン「Pathfinder Plus」使用
★ カウアイ島 パシフィックミサイルレンジファシリティにて実施
★ 日米共同実験 NASA ⇒ PMRF/AV社/SkyTower/JSC社
総務省⇒ NICT(旧CRL,旧TAO)/関連メーカ
★ IMT-2000通信実験、デジタル放送実験
Pathfinder Plus
IMT2000、デジタル放送ともに
送信出力わずか1W
PMRF
(Pacific Missile Range Facility)
IMT-2000通信実験
デジタル放送実験
高精細TV画像
市販IMT2000端末
図 2-2 ソーラープレーンを使用した飛行試験
更に平成14年秋期には事前飛行試験として SPF の代替として小型ジェット機 Gulfstream II を用いた高度
12km からの UHF 放送実験、高度 3km でホバリングするヘリコプタを用いた広帯域固定無線アクセスシステム
及びミリ波帯の広帯域伝送実験を実施し、SPF 実用化に向けた有用な技術データを取得することができた。
平成15年度には、高度4kmで滞空するJAXA(宇宙航空研究開発機構)開発の定点滞空飛行試験機を用い
た通信・放送実験を実施するための機器改修を実施し、平成16年度には、定点滞空飛行試験機を用いた通
信・放送実験を実施し、所期のデータ取得を行った。
6
2002/10/7∼10/11
北海道
実験支援棟
大樹町
・ 一般航空機飛行経路との干渉無し
・ 地上無線サービスとの干渉無し
・ 定点滞空試験予定場所
滑走路
大樹実験場
高度:約12km
2002/11/5∼11/18
TAO/CRL研究棟
横須賀
YRP
GulfstreamⅡ
実験室
高度:約3km
ヘリコプター場外離着陸場
バートルヘリコプタ
図 2-3 国内での事前飛行試験
小型ジェット機による飛行試験:4フライト
(予備)
フライト
#1
#2
#3
#4
実施日
10月07日
10月08日
10月09日
10月10日
10月11日
飛行
パターン
高度12㎞:小旋回(3周)
高度12㎞:大旋回(1周)
高度9㎞:中旋回(2周)
高度12㎞:小旋回(13周)
高度9㎞:中旋回(4周)
高度12㎞:大旋回(3周)
高度9㎞:中旋回(5周)
高度12㎞:大旋回(4周)
高度12㎞:小旋回
受信点
基地局
基地局
浦幌パラグライダー場
(基地局から38㎞地点)
浦幌パラグライダー場
長節湖キャンプ場(28㎞)
基地局
放送実験
送受信/支援機材確認
(飛行パターン確認)
送受信確認
映像伝送実験
低仰角受信実験
低仰角受信実験
映像伝送実験
ヘリコプタによる飛行試験:9フライト
#1
#2
#3
#4
#5
#6
#7
#8
#9
実施日
フライト
11月05日
11月07日
11月11日
11月13日
11月13日
11月14日
11月14日
11月18日
11月18日
飛行
パターン
高度3㎞:定
点
高度1km:
高度3㎞:
高度3㎞:
高度3㎞:
高度3㎞:
高度3㎞:
高度3㎞:
高度3㎞:
定点
定点、水平
固定
固定
固定
固定
ローリング、
ターン、水平
水平
固定通信
実験
動作確認
動作確認
動作確認
パターン取得
ビーム生成
CAL取得
通信実験
ビーム生成
追尾機能
動揺補正
パターン/CAL
通信実験
パターン取得
放送実験
動作確認
動作確認
動作確認
伝送実験
品質確認
ビーム形成
ビーム形成
アンテナ制御
ビーム形成
ビーム形成
図 2-4 事前飛行試験サマリー
一方、世界電気通信連合(ITU)では、高高度プラットフォーム局(HAPS)用周波数分配に関する活動も精力
的に実施し、特に2001年∼2002年には、31/28GHz帯の使用に関しては日本が世界を先導する形で多くの勧
告成立に寄与すると共に、無線通信規則における運用条件の緩和、使用可能国数の拡大を実現してきた。
7
3.Pathfinder Plus による通信・放送実証実験
2002 年 6∼7 月に、高高度ソーラープレーン
Pathfinder Plus を用いた世界初の成層圏からの
UHF 帯デジタルハイビジョン放送と第三世代移動通
信システムの通信実験を実施した。実験は NICT(旧
CRL、旧 TAO)と NASA Dryden 飛行研究センター、
AeroVironment 社、SkyTower 社からなる米国チーム
との共同で、米国ハワイ州カウアイ島西端にある米
海軍施設 Pacific Missile Range Facility(PMRF)にお
いて行われた。本実験で使用したソーラープレーン
Pathfinder Plus(以下 PF+と略称)は、米国 NASA の
図 3-1
Pathfinder Plus
ERAST(Environmental Research Aircraft and Sensor
Technology)計画のもとで米国 AeroVironment 社が開発した、高度 20km の成層圏を飛行可能な無人の軽量航
空機である。PF+は胴体、尾翼、垂直尾翼が全くない主翼だけの構造で翼長 36.3m、翼幅 3.4m、自重 315kg で、
地上からの遠隔制御により、翼の上面に貼付されているソーラーパネルの電力供給だけで 8 機のモータを駆
動し、成層圏高度まで到達することができる(日没後の飛行、降下、着陸のため一次電池が搭載されている)。ミッ
ション用電力は約 400W で高度 20km での対地速度は約 100km/h である。この PF+は 1998 年に揚力で飛行す
る無人航空機として当時の世界記録である高度 24km の高高度記録を樹立した。この記録は、2002 年 8 月 13
日に後継機であるヘリオスプロトタイプ(翼長 75.3m)により、高度 29.5km の高高度に更新されている。
実験項目は、第三世代移動通信システム(IMT2000 W-CDMA 3GPP規格)実験とUHF帯デジタルHDTV(高
精細度 TV)放送(ISDB-T 規格)を実施した。本実験では、わずか 1W の送信電力で、HDTV 放送の受信及び市
販 W-CDMA 携帯端末による動画携帯通信(64kbps)
に成功し、成層圏プラットフォームの実用性、有効性
を実証した。図 3-2 は中継器を載せて成層圏に向け
て離陸上昇する PF+である。現地での準備は 2002
年 5 月初めより開始され、日本からは総勢約 20 名が
最長3 ヶ月にわたって現地に滞在し、作業を行った。
計 3 回の飛行を実施し、太陽光強度が高まる午前 8
時半ごろに離陸してゆっくり上昇し、午後 1 時半∼4
時ごろにかけて高度 20km を旋回滞空した。旋回長
径は約 6km で1周の時間は約 12 分であった。
図 3-2 中継器を搭載し上昇する
Pathfinder Plus
3.1 IMT2000 通信実験
携帯電話の基地局として成層圏プラットフォームを使うシステムは、災害時の緊急移動基地局としても期待され
ており、アジア、南米、アフリカ等のインフラが未整備の途上国では地上に多数の基地局インフラを建設したり、
衛星によるシステムを導入するよりもコストが安くなる可能性が高いため関心が高い。今回の実験では、市販携
帯端末を用いて実運用を想定した見通し長距離、長遅延下での IMT2000 通信接続の実証、成層圏環境(1/20
気圧、気温-75℃)での通信機器運用の習熟や成層圏中継の有効性についてのデモンストレーションもあわせ
て実施した。
8
搭載局
LNA
D/C
U/C
LNA
SSPA
D/C
U/C
SSPA
Data Log
RX ANT (LHCP)
1987.5MHz
TX ANT (RHCP)
RX ANT (LHCP)
2137.5MHz
TX ANT (RHCP)
2177.5MHz
1947.5MHz
2137.5MHz
1987.5MHz
2177.5MHz
1947.5MHz
RX ANT (RHCP)
移動端末
TX ANT (LHCP)
基地局
・音声
・映像(64kbps)
・384kbpsデータ
Helix ANT
周波数変換部
パケット384kbps
TV-TEL 64kbps
TEL/TV-TEL
パケット384kbps
W-CDMA Foma端末
TEL
W-CDMA基地局シミュレータ
図 3.1-1 IMT2000 通信実験システム
IMT2000 通信実験システム構成は、図 3.1-1 に示すように、
・ W-CDMA 地上基地局設備
IMT2000 基地局シミュレータ、送受信周波数変換部、端末設備から構成
・ W-CDMA 地上移動端末(市販の IMT2000 携帯電話 FOMA)
・ 2台のポッド型搭載局設備(スルーリピータ及びアンテナ)
で構成されている。
(1)実験結果
実験は 6 月 28 日と 7 月 20 日の 2 回の飛行試験において
実施され、W-CDMA 基地局シミュレータと市販 IMT2000 携
帯電話間で搭載中継器を経由して世界初の成層圏経由
64kbpsTV 電話とメール配信に成功した。図 3.1-2 に実通信
時の様子を示す。
この実験により、
・ 上空を 3km 程度の半径で旋回すれば、伝搬距離変動
による回線品質に影響を与える事がないこと(図 3.1-3
図 3.1-2 実験時の様子
PF+フライト軌跡)
・ W-CDMA 基地局設備では、往復 40km の伝送遅延に
対しても、ソフトウェア改修により接続が可能であること
・ 成層圏環境(1/20 気圧、気温-75℃)での搭載通信機器
の熱管理技術の習得
・ 同一周波数の他の無線システムからの干渉軽減対策と
して、搭載受信アンテナのアレー化が有効であること
などの貴重な経験とデータを取得した。
図 3.1-3 PF+フライト軌跡
9
(2)今後の課題
今後の課題としては、基地局をプラットフォームに搭載する技術や地上ネットワークとの共存、棲み分けを検
討し、非常時の通信インフラをターゲットにした技術開発と実証実験を進める必要がある。
3.2 UHF デジタル放送実験
LNA
D/C
U/C
TX ANT
RX ANT
533MHz
1992.5MHz
533MHz
受信局
PA
1992.5MHz
送信局
周波数変換部
及び受信機
周波数変換部
HDTVモニタ
及び送信機
ISDB-T変調器
ISDB-T復調器
Mpeg2
TS信号発生器
Digital TV 受信設備
Digital TV基地局送信設備
図 3.2-1 UHF デジタル放送実験システム
成層圏プラットフォームを用いた放送サービス
は小電力でのサービスが可能なため、比較的小
HDTV
モニタ
型軽量な搭載中継器で広域の地上ユーザーに
サービスを提供できるメリットを有している。これら
のことから地上システムでは多数の中継器が必
要となるため現在では不感地域となっている地域
受信機
に対しても経済的にかつ効率的にサービスを提
供できる事が期待される。今回の実験では実運
変調器
送信機
図 3.2-2 地上局送受信装置
用を想定して、地上デジタル放送にほぼ準拠し
た放送規格と受信機を用いての実証、成層圏環
境(1/20 気圧、気温-75℃)での通信機器運用ノウ
ハウの習得及び成層圏中継の有効性デモンスト
レーションを行った。デジタル放送実験システム
構成は、図 3.2-1 に示す通りであり、地上局送受
信装置とポッド内に設置したアンテナを図 3.2-2、
2素子
パッチアンテナ
クロスダイポールアンテナ
図 3.2-3 にそれぞれ示す。
図 3.2-3 ポッド内に設置したアンテナ
10
(1)実験結果
実験は 6 月 24 日に実施され、わずか 1W の送信電力で世界初と
なる成層圏経由での約 20Mbps の HDTV 映像の安定な受信に成功
(ⅱ)
した。この実験により
・ 中継局の旋回により発生するドップラーシフトの影響による受信
品質の影響もほとんどないこと(図 3.2-4 PF+フライト軌跡)
・ 地上デジタル放送と同一の受信機が、成層圏システムでも使
(ⅲ)
(ⅰ)
用可能となる見込みが得られたこと
・ 成層圏環境(1/20 気圧、気温-75℃)での搭載通信機器の熱
地上局
管理技術の取得
などの貴重な経験とデータを取得した。
図 3.2-4 PF+フライト軌跡
(2)今後の課題
今後の課題としては地上ネットワークとの共存・棲み分けを検討し、地上放送ネットワークと成層圏放送ネット
ワークの融合した全体システムの最適化について検討する必要がある。
4. ジェット機、ヘリコプタを用いた事前飛行試験
4.1 ジェット機によるデジタル放送実験
(1)実験の概要
平成14 年6月には既に Pathfinder Plus による放送実験も実施したが、これは 70 度以上の高仰角伝送であっ
た。ジェット機による実験では 5W の出力で半径約100km(仰角が約10 度)以上をカバーすることが可能である
ことをシミュレーション実験により検討すること、及び地上ジタル TV 放送に準拠する方式で最大 23Mbps の伝
送が可能であることを確認することを目的として、平成 14 年 10 月に北海道大樹町において実施した。
ジェット機外観を図 4.1-1 に、機体下部のベリーポッドに取付けられている UHF 円偏波送信アンテナ、及び
機内に設置された送信装置の写真を図 4.1-2、図 4.1-3 に示す。
図 4.1-1 ジェット機外観
図 4.1-2 ベリーポッド内のアンテナ
図 4.1-3 機内の送信機
ジェット機は高度約 12km 以下で旋回する必要があるため、旋回円の半径を 66km とし、中心点の直下でデ
ータを取得することが考えられる。しかし、実験電波の及ぶ範囲は直径 132km の円内となるため、電波干渉の
可能性が比較的少ない北海道内でも現用の放送への干渉の恐れがあり実現が不可能である。このため、図
4.1-4 に示すような軌道でジェット機を飛行させ、受信点を仰角約 10 度の点に設定し、受信点での電界が SPF
高度約 20km、ERP 出力数 10W である場合に相当する状態でシミュレーション実験を実施した。
11
基本パターン : P1; h≒12, r≒12, s≒17km
低仰角パターン: P2; h≒ 9, s≒51km
P3; h ≒12, s≒68km
s: 傾斜距離
ジェット機:Gulfstream-Ⅱ
P2,P3
P1
r
P2,P3パターン測定点
低仰角データ
バンク角
取得範囲
C
68km (AB間:38km)
h
P1パターン測定点
A
仰角10度 B
図 4.1-4 実験で使用した3種類の飛行パターン
(2)フライトパターン
図 4.1-4 に示す P1 は、半径約 12km の円で、P2、P3 はアルファベットの D の形の飛行軌跡である。アンテ
ナを機体の左側に設置しているので、測定点での電波の強度は、図の左端をジェット機が飛行する時が最も
強くなる。この時、距離と電力のスケーリングにより、20km 高度から送信される実用時の受信電界強度とほぼ同
じになる。
結果の一例として、P3 パターンの測定時の飛行軌跡とデジタル放送の信号品質値 MER の時間変化を図
4.1-5 に示す。軌跡上の点1∼3までは右上○印の浦幌受信点方向にアンテナの指向方向が向くので、MER
値が 20dB 以上となり、デジタル HDTV が安定に受信できる。この時に仰角 10 度の受信状態のシミュレーショ
ンができたことになり、ほぼ 20km 高度から数 10W 出力で送信した実用機によるエリア端での安定な受信状態
が確認できたことになる。
試験日時:02/10/09
13:13-13:20
浦幌受信点
P3 パターン
30
2
25
3
MER(dB)
1
基地局
20
受信可能
15
1
10
2
5
3
20
22
24
26
28
30
時刻(13 時+X 分)
図 4.1-5 低仰角受信実験の飛行軌跡と、取得した時刻 対 MER データの例
4.2 ヘリコプタによる搭載用デジタルビームフォーミング(DBF)アンテナ使用高速無線アクセス実験
(1)実験の概要
DBFアンテナは複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナで、各素子毎に増幅器と周波数変換器等
を備え、それぞれの信号を実時間でデジタル信号処理することによりビーム形成を行う機能を持ったアンテナで、
マルチビーム生成機能やビーム方向・形状を適応制御するものである。
12
搭載実験局
2GHz
(TTC/フィーダリンク)
高度:3km
基地局(YRP)
28GHz
31GHz
31GHz
28GHz
移動実験局A
移動実験局B
図 4.2-1 高速無線アクセス実験概要
平成14年度までに開発したDBFアンテナを用いて、高速無線アクセス(固定通信)実験を平成14年11月に横
須賀リサーチパーク(YRP)で実施した。図4.2-1に示すとおり基地局設備と2台の移動実験局設備をYRPに配置
し、DBFアンテナと高速無線アクセス実験搭載機器を搭載したヘリコプタ(搭載実験局)を、飛行船の停留状況を
模擬するために、基地局の上空高度3kmの位置にホバリングさせ、DBFアンテナによる28/31GHz帯の高速無線
アクセス実験を行った。DBF送受信アンテナは、図4.2-2のとおりヘリコプタ後部にあるバゲージビンに取付け、
基地局上空でのバゲージビンの開閉により基地局方向に指向する。
TTC/フィーダリンクアンテナ
DBF受信アンテナ
中間周波数変換部
DBF送信アンテナ
マルチビーム
ホーンアンテナ
図 4.2-2 実験機器搭載
アンテナ部実装
バゲージビン
(2)高速無線アクセス実験項目と結果
以下に示す項目の実験を実施し、次の結果を得た。
・ ビーム生成確認
DBF アンテナビーム制御機能で生成した受信ビームによる Ka 帯信号受信レベル、ならびに生成した送
信ビームから送信された Ka 帯信号の移動実験車での受信レベルにより DBF ビームが生成されていること
を確認した。
・ キャリブレーション機能確認
ビーム生成確認でのDBF受信アンテナと送信アンテナ各素子のキャリブレーションデータの適用でビー
ム位置が適正な方向に移動したことによりキャリブレーション機能動作を確認した。
・ 追尾機能確認
信号を送信しながら移動実験局を移動し、追尾と非追尾での受信レベルの比較により追尾機能が動作し
13
ていることを確認した(図 4.2-3 参照)。
・ アンテナパターン確認
移動実験局に対し搭載実験局を水平飛行させ DBF アンテナビームのパターンを確認した。ビームは
設定した 9°間隔で形成され、ビーム幅が約 13°であることを確認した(図 4.2-4 参照)。
・ 動揺修正/水平移動補正
0
1000
1500
2000
追尾
受信レベル
による搭載実験局の姿勢検出装置からの姿勢情報と位置情
500
0
搭載実験局の水平移動およびロール姿勢角の±15 度回転
-10
報をもとにビーム方向の維持補正を行い、安定した受信レベ
ル(約 20dB の改善)が得られた。
-20
非追尾
(dB)
・ 通信機能確認
-30
TV 会議、ビデオオンデマンド及び IP テレビ電話の通信実験
を無線 LAN802.11b を使って実施し、3.75Mbps の情報速度で
の画像、動画伝送通信機能を確認した。
-40
時間(*100ms)
1
図 4.2-3 ビーム追
(3)高速無線アクセス実験の成果
・ 28/31GHz 帯 DBF アンテナを搭載して通信試験に成功し、1
ビームでの安定した通信を確認し、ビーム切替追尾、動揺補
正、水平移動補正等の機能を確認した。
・ 送受信キャリブレーションデータの取得、適用を確認した。
・ 送受信ビームの測定では指向誤差が見られたものの、ビー
ム幅、サイドローブ値は正常な値が得られた。
図 4.2-4 アンテナパターン確認
(4)今後の課題
実用化に向けてアンテナ素子数と同時ビーム数の増大、伝送速度の高速化、重量や消費電力の削減等が
課題である。
4.3 ヘリコプタによる搭載用ミリ波帯マルチビームホーン(MBH)アンテナ使用放送素材伝送実験
1997 年に SPF 用として割り当てられているミリ波帯 47/48GHz は、広い周波数帯域が使用可能であり将来の
SPF 間のリンク、あるいは降雨減衰の対策を講じた上で、地上の HDTV 放送用素材伝送等への応用が期待さ
れている。
この実験は平成14年11月に横須賀リサーチパークにおいて
前項に記述した DBF アンテナの実験と同時に行われた。
47/48GHz 帯のアンテナは 3 個のホーンで構成され、高度 3km
(高度 3km)
でホバリングするヘリコプタからは図 4.3-1 に示すように各エリ
ア直径 580m のビームで周波数が異なる 3 個のビームが得られ
る。MBH の取付け状態は、前項の図 4.2-2 の左下に示されて
いる。
エリア直径約580mの円×3個
図 4.3-1 飛行実験のイメージ
14
実験概要を、図 4.3-2 に示す。車両搭載した移動送信局に設置した HDTV 信号発生器は、例えば放送の取
材では取材用の HDTV カメラに相当する。この HDTV 信号をデジタル変調した後48GHz 帯アップリンクでヘリ
コプタに搭載した受信アンテナへ送信する。搭載装置で 48GHz 帯から 47GHz 帯に周波数変換して、送信アン
テナから基地局(YRP ベンチャー
棟)へ送信し、屋上の受信アンテナ
ヘリコプタ
高度 3km
ホバリング
で受けて基地局内受信設備により
信号再生を行う。
アンテナ姿勢制
ミリ波ではビーム幅が狭いので、
搭載するヘリコプタの位置、姿勢の
47GHz
変動により、送受信の電力変化が
大きくなるため、ビーム追尾の機能
HDTV画像再生
48GHz
HDTV信号発生器
中継
を持たせている。アンテナ追尾特
性の評価として、ヘリコプタを定点
滞空させた状態でヘリコプタ搭載発
振器の出力を基地受信局で受信し、
その受信レベルの変動を測定する
移動送信局
基地受信局
図 4.3-2 実験概要
ことで追尾特性の良否を確認した。
図 4.3-3 に示す×
印のデータは位置変
動・姿勢変動の補償
をしなかった場合の
受信レベルを、○印
のデータは姿勢変動
の補償だけをした場
合の受信レベルを、・
印のデータは位置変
動と姿勢変動の補償
をした場合の受信レ
ベルの変動を示す。
また、この受信レベル
の変動幅を表 4.3-1
に示す。この結果から、
位置と姿勢の変動の
補償を行うことにより、
受信レベル変動が約
10db改善されており、
その効果を確認する
ことができた。
図 4.3-3 追尾特性 測定結果
表 4.3-1 追尾特性結果
実験結果
実験条件
位置補償 姿勢補償 受信レベル変動
飛行パターン:定点滞空
ON
ON
4dB
送信:へりコプタ搭載発信器
OFF
ON
8dB
受信:基地局
OFF
OFF
14dB
15
Fly UP