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意思決定の権利:なぜ重要なのか? - Inclusion International
全日本手をつなぐ育成会 国際育成会連盟 意思決定の権利:なぜ重要なのか? 知的障害のある大人は世界中どこに住んでいても、地域の中で孤立していて、排除さ れ、しばしば傷つけられやすい存在となっています。彼らは自分自身の生活を選び取 る権利と、どのような暮らしをしたいのかについての意思決定の権利を否定され続け ているのです。知的障害のある人の主たる支援が家族であるという状況があるため、 家族たちは自分たちの死後や、生きていても子供たちの面倒を見られなくなってしま ったらどうなってしまうのかということを心配しています。知的障害のある人を支援 するネットワークを構築するための戦略によって、人が自分の生活を選ぶことができ るようになり、自分自身で意思決定することを支援されることが可能になるのです。 これが支援付き意思決定です。意思決定のためのこうした支援を得ることは、知的障 害のある人が傷付きやすい存在ではなくなり、孤立しなくなり、家族への依存度が軽 減され、自身で選んだ生活ができるようになるのです。 家族にとってなぜこのことが重要なのか? 家族は知的障害のある人のための第一の支援者であり主要な支援者でもあります。こ の現状およびその他の支援サービスの欠如のため、家族は障害のない子供より障害の あるすでに成人した自分の子どもの生活に、より大きな責任を持つことを当然のこと と考えています。家族が語ってくれたことは次のとおりです: ・ 将来に対する不安や恐怖と「自分が亡くなった後どうなるのか?」という疑問 ・ 知的障害のある人を受け入れ、インクルージョンしてきていない地域における娘 や息子の安全に対する心配 ・ 娘や息子が質の良くない意思決定をしたり、間違った意思決定をしたりすると、 責めを負う ・ 娘や息子の意思決定をどのように支援したらよいのかを理解するためのスキルも ツールもない ・ 正式な意思決定の役割を果たすことを求められる(法的な業務や地域の認識不足 の結果) 家族が意思決定者として過剰に期待されていることや代理意思決定が保護の形であ るという考え方は、上記の要因によるものなのです。 現在の私たちは成年後見と代理意思決定が、答ではないことを知っています。大人で 意思決定を許されていない人はより傷つけられやすい存在です。安全で安心な将来を 確実なものとするために、知的障害のある人は、自分自身で意思決定するよう支援さ れる必要があるのです。 だんだん大きくなってくる声 過去数 10 年間にわたって、知的障害のある人の直接的なかかわりとセルフ・アドボ カシー(本人活動)運動の発展により、知的障害のある大人が自分自身の優先順位を 表現するためのプラットフォームを提供してきています。一貫して知的障害のある大 人は自分の生活において発言権をもつことと生活を自分で選び取ることが最優先課 題であり、意思決定の権利を持つことが地域において平等にみなされ、処遇されるた めに必須であると語っています。意思決定の権利を持つことは、他のあらゆる権利を 保障するために重要であるということをしばしば聞くようになってきています。国連 の障害者の権利条約が、国際法上この権利を保障する機会を象徴するものです。この キャンペーンにおいて、私たちがどのようにしたらこの権利を知的障害のある人にと って現実のものとすることができるのかを注視していきます。 なぜ支援が必要なのか? 独立して意思決定を行うことが難しい人がいます。ー 何を聞かれているのかわから ない場合や、自分の決定の意味することがわからない場合もあります。 言葉でコミュニケーションしない人の場合は、自分の希望や選択について他の人に理 解してもらうのに困難があるでしょう。言葉でコミュニケーションしない人もいます。 - ジェスチャーやある種の行動でコミュニケーションする人もいます。 家族やその他の人は個人の意思決定について心配するかもしれません;彼らは個人が 意思決定するのをどのように支援するのか理解していないのです。 知的障害のある人は自分の意思決定のスキルを向上させることが必要であり、また意 思決定をするための支援が必要であると言っています;また「悪い」意思決定をして しまって、その後意思決定をさせてくれなくなるのではないかという恐れについても 言い表しています。 私たちはどのようにして意思決定をするのか 私たちすべての意思決定は多くの要因に影響を受けてなされるものです。意思決定は、 個人の現実の中でそれを反映した形でなされます。個人や家族は、意思決定は個人の 自律という認識の文化がある一方、多くの地域では集団や相互の責任においてなされ るものと認識されていると言っています。家族として暮らしているとき、私たちの意 思決定は他の人に影響を与え、しばしば家族のメンバーは相互に依存しているのです。 支援付き意思決定は、どんな、そしてすべての意思決定が可能であるということを意 味しているわけでありません。私たちすべての意思決定は、私たちの経済的な現実、 関係性、支援ニーズなどによって決まるのです。 ほとんど選択肢のない世界での意思決定 国際育成会連盟が発行した地域生活と地域におけるインクルージョンに関するグロ ーバル・レポートは、世界中の大多数の知的障害のある大人は他に何も選択肢がない ため家族と共に暮らしていると伝えています。ほとんどの人は地域に住みインクルー ジョンされるために必要な支援やサービスを得られていません。-なぜならほとんど の場合そうしたサービスが存在しないからです。 選択肢の欠如が選択を制限しています。-しかし声を制限することはありません。限 られた選択肢しかないため、個人の願いを尊重するためには創造力を必要とします。 たとえば知的障害のある大人は家族の家から離れて暮らすという選択をしたいかも しれませんーしかし様々な理由によってそれは不可能かもしれません。(文化的な要 因、適切な住居がないこと、サービスの欠如、経済的な問題など)。こうした場合ど うしたら個人が独立して暮らしたいと願う、その願いを尊重することができるでしょ うか。個人と家族が、現実の中で自身の願いを尊重するための革新的な解決策につい て述べています。これは個人が活動や、食事などといった家族全体の意思決定をコン トロールする平等の方法を確実に持つようにすることを含みます。 選択肢が限定されているからと言って、目標設定を制限することがあってはなりませ ん。現在可能でないからと言って、それを現実のものにすることを目的とすることが できないということではありません。私たちは自分たちが到達したいと望む目標を決 めてよいのです(どこに住むのか、学校へ行くこと、仕事、ほしいもの;どのように して時間を過ごしたいのかなど)。この目標に到達するには時間がかかるかもしれま せんし、その過程では様々な決定も必要となるでしょう。 家族にとってどのような意味がありますか? 多くの人、特により支援ニーズの大きい人や、資源やサービスがほとんどない国に住 んでいる障害のある人の地域でのインクルージョンや、願いを言い表すことなどにつ いては、家族が促進していかなければなりません。意思決定の権利を前進させるため には、家族はどのような役割を果たせばいいのでしょうか。知的障害のある娘や息子 が発言権を持ち自分の生活をコントロールすることができるように、どのように支援 したらよいのでしょうか。 家族は自分の娘や息子が発言権を持っており、自身の意思決定について表現すること ができるということを信じる必要があります。そのために家族のできることは: ・ 娘や息子たちが意思決定するためには、どのように支援したらよいのかについて 学ぶ ・ 娘や息子たちが成長するにつれて、意思決定のスキルを発達させるために励ます ・ わかりやすい言葉に関する情報を提供し、意思決定の意味することやその結果に ついて明確にするよう支援する ・ 娘や息子が意見を持つことを期待する ・ 行動やその他のコミュニケーションの方法を意思や意図の表出とし、それを意思 決定のガイドに利用する ・ 意思決定に誤りが起こること、そして私たちは皆失敗から学ぶことを認識する ・ 支援付き意思決定に関与する ・ 支援ネットワーク/サークルを設立する ・ 後見命令を求めるというプレッシャーを拒否する ・ (翻訳 全日本手をつなぐ育成会 袖山啓子)