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第六十六回:中国アニメの歴史

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第六十六回:中国アニメの歴史
第六十六
六十六回:
中国アニメの歴史
常陽銀行上海駐在員事務所
日本のアニメは今や世界の共通語ともいえる数々の人気作品を生み、日本はアニメ大国として世界に
評価されています。しかし、アジアで初となる長編アニメを制作したのは中国であるということは、あ
まり知られていません。今回は、中国アニメの歴史についてご紹介します。
中国のアニメは戦時下の生まれ
中国アニメは、中国アニメの祖と言われる「万氏兄弟」
(万古蟾、万籟鳴、万超塵、万滌寰の四兄弟)が、
1922年に中国初の広告アニメ「舒振東華文打字機(舒振東の中国語タイプライター)
」を制作したこと
で産声をあげました。その後、万氏兄弟は1926年に中国で初となる本格的なアニメ「大閙画室(アトリ
エの大騒ぎ)」、1935年に中国最初のトーキー・アニメ「駱駝献舞(ラクダの踊り)」など、数々の名作
を世に送り出しました。
30年代後半に、戦時下の上海で、万氏兄弟は中国最初にしてアジアでも初の長編アニメの制作に着手
しました。そこで生まれたのが名作「鉄扇公主(西遊記 鉄扇公主の巻)」です。1941年に上海で公開
され、翌年日本でも輸入公開されて大ヒットとなりました。当時は日中戦争の真っ只中だったので、万
氏兄弟はこの映画を通じて国民全員で団結して日本に打ち勝とうと中国の国民を鼓舞したようです。こ
れに刺激を受け、日本の海軍省は、戦意発揚目的の日本初の長編アニメ「桃太郎の海鷲」を作り上げま
した。
このように中国では、戦争の時代でありながら、アニメ時代が切り開かれていきました。当時の「鉄
扇公主(西遊記 鉄扇公主の巻)」は、「マンガの神様」と評された手塚治虫をはじめ、日本の漫画家や
アニメ制作者にも大きな影響を与えています。
中国アニメは黄金期から衰退期へ
50年代と60年代は、中国アニメの黄金期と言っても過言ではありません。当時の作品には、1953年の
中国最初のカラー人形アニメ「小小英雄(小さなヒーロー)」や1955年の中国最初のカラーセルアニメ「烏
鴉為什麼是黒的(カラスはなぜ黒いのか)」など、たくさんの佳作があります。
この時期には「百花斉放、百家争鳴(多彩な文化を開花させ、多様な意見を論争する)」運動により
作品数が急増し、アニメの質も向上しています。切り絵アニメ「猪八戒吃西瓜(猪八戒がスイカを食う)」
や水墨アニメ「小蝌蚪找媽媽(オタマジャクシがお母さんを探す)」、折り紙アニメ「聡明的鴨子(賢い
アヒル)
」などは、中国独自のアニメとして高い評価を獲得しています。特に、1961年と1964年に上下
巻に分けて公開された「大閙天宮(大暴れ孫悟空)
」は国内外で高い評価を受け、その後の衰退期を前
に異彩を放っています。
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中国のアニメの年表
年代
主な作品
大閙画室(アトリエの大騒ぎ)(1926 年)
…中国初の本格的なアニメ
1926 年∼ 1949 年
駱駝献舞(ラクダの踊り)(1935 年)
…中国最初のトーキーアニメ
鉄扇公主(西遊記 鉄扇公主の巻)(1941 年) 他
…アジア初の長編アニメ
小小英雄(小さな英雄)(1953 年)
…中国最初のカラー人形アニメ
小梅的夢(小梅の夢)(1954 年)
…中国最初のカラー合成アニメ
烏鴉為什麼是黒的(カラスはなぜ黒いのか)(1955 年)
1950 年∼ 1977 年
…中国最初のカラーセルアニメ
神筆(奇妙な筆)(1955 年)
…人形アニメ。初めて世界的賞を受賞。
猪八戒吃西瓜(猪八戒がスイカを食う)(1958 年)
…中国最初の切り紙アニメ
小蝌蚪找媽媽(オタマジャクシがお母さんを探す)(1960 年) 他
…中国最初の水墨アニメ
閙海(ナーザの大暴れ)
1978 年∼ 1985 年
三個和尚(三人の和尚)
阿凡提( エッペンディ)
雪孩子(雪だるま)
他
葫芦兄弟(ひょうたん童子)
大王奇遇記(だらしない大王の奇遇記)
1986 年∼ 1995 年
舒克和貝塔(シューカーとペイター) 他
1996 年∼ 1999 年
宝蓮灯
我
歌狂 他
隋唐英雄傳
梁祝(梁山伯と祝英台)
2000 年以降
風雲決
喜羊羊与灰太狼
魁抜 他
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その後、文化大革命期突入に伴い、アニメの中で描かれる「夢」や「空想」が革命にふさわしくない
とされ、反革命として批判されました。多くのアニメ制作者が「下放(徴農)」されたことから作品数
が激減し、中国のアニメは衰退期に入りました。文化大革命により、それまで積み重ねたものが崩壊し
たことはとても残念です。
80、90年代頃からの日本アニメブーム
文化大革命が終わった後も、中国のアニメはなかなか復活できませんでした。また、改革解放後の80
年代頃からは、日本やアメリカのアニメがテレビでも数多く放送されるようになり、中国産のアニメ離
れが進みました。
中国における日本のアニメ放送は、1979年の「鉄腕アトム」から始まりました。これを皮切りに「一
休さん」や「ドラえもん」、
「聖闘士星矢」、
「セーラームーン」、
「スラムダンク」、
「ちびまる子ちゃん」、
「名
探偵コナン」などの日本アニメが次々と中国で放送され、いずれも大ブームを巻き起こすほどの人気と
なりました。筆者は、当時「セーラームーン」の変身に夢中だったので、番組が放映される夕方の時間
帯には必ず家に戻ってテレビの前に陣取っていました。
これに対し、中国政府は、2006年から自国アニメの保護を目的に、ゴールデンタイム(午後5∼8時)
の海外のアニメ放送を
禁止する措置を取りま
した。それでも「上に
政策あれば、下に対策
あり」と言われるよう
に、日本のアニメはイ
ンターネットの違法視
聴などを通じて急速に
広まっていきました。
違法視聴の広がりは日
本のアニメ業界に大き
な損失をもたらす一方
で、これにより中国人
のアニメファンが増え
続け、中国における日
中国でも流行っているコスプレ
本アニメ市場が形成さ
れました。
ファン層の多様化に対応したアニメが登場
アニメ産業の発展が進む中で、いまの中国アニメには「ストーリーが単調で、キャラクターの造形が
粗雑である」との批判が付いて回ります。低年齢層だけに受け入れられるアニメから、大人も楽しめる
アニメへと進化するために、豊かな創造性あふれる魅力的なアニメ作品が求められています。
その中で登場したのが、多様なファン層から支持されている中国産アニメ「喜羊羊与灰太狼(シーヤ
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ンヤンとホイタイラ
ン)」
(2005年)です。
個性豊かな7匹の羊と
その敵対者である2匹
の狼が追いかけっこを
するストーリーで、国
内外から人気を集めて
います。2009年1月に
公開された同シリーズ
のアニメ映画も大ヒッ
トとなり、これ以降は
毎年中国産のアニメ映
画が制作されています。
「魁抜(クイバー)」
多くの来場者で賑わうアニメ展示会のグッズ即売所
(2011年 ) も「 日 本 ア
ニメに負けないほど良い作品だ」と高い評価を受け、大成功しました。タイトルの「魁拔」とは、333
年に1度誕生する恐ろしい怪物で、主人公の「蛮吉」とその父「蛮殿下」らが目覚めの兆しを見せた「魁
拔」を倒すため、長い旅に出るというアクションアニメです。
ここ数年、特撮も流行りはじめています。中国の仮面ライダーといわれる「鎧甲勇士」シリーズはク
オリティが高いことから、大人のファンも数多く獲得しています。
おわりに
これまで見てきたように、中国アニメには長い歴史があります。それにもかかわらず、現在の中国で
は日本アニメが人気を博し、大きな影響力を持っています。中国のアニメ産業には、日本アニメの強み
を参考にして、中国の文化を反映させたクオリティの高い作品を作ってほしいものです。また、独自に
制作レベルを向上させるより、日中でアニメの制作協力を通じて相互の文化交流・理解を深め、新たな
日中の友好関係を次の世代にも築いてほしいと願っています。
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