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[L1.1.4] オブジェクト指向適用による石油産業用 エンジン試験システムの

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[L1.1.4] オブジェクト指向適用による石油産業用 エンジン試験システムの
2002L1.1.4
[L1.1.4]
[L1.1.4]
オブジェクト指向適用による石油産業用
エンジン試験システムの研究開発
(石油産業用エンジン試験システムグループ) ○岩崎浩之、横山泰晴、丸茂三好
1.研究開発の目的
自動車エンジン用の潤滑油や燃料の開発は、燃費向上の面から環境負荷低減のために
重要な課題となっている。このため石油産業では低燃費の潤滑油や燃料の開発をめざし、
各種の基材や添加材を組み合わせた試験を行い、そこから最良の材料の開発を行ってい
る。この開発においては、多種多様な材料の組み合わせにおけるエンジン動作への試験
が必要となるため、エンジン試験システムを用いて効率よく評価を行う事が必要となっ
ている。
ところが、これまでのエンジン試験システムは主に自動車産業でエンジン開発のために
作られてきた。エンジン開発のための試験システムでは、エンジンの機械的構造や動作
原理が大きく変わってくるため試験装置も様々な要求に応えるだけの十分な試験能力と
可変性を必要とされる。一方、石油産業のような材料開発の段階における試験は、エン
ジンの構造がほぼ一定となっているため、試験設備としての構造は固定的であるかわり
に、多種多様な材料試験を行うため試験結果の効率的な評価を必要とされている。とこ
ろが、エンジン開発を目的としたこれまでの試験システムでは設備能力の割に、その後
のデータ処理能力が低く効率が悪いという問題があった。
一方、試験装置に関する技術的環境は、近年の電子技術の発展により汎用低コストの
測定機器が開発され、またPC技術の発達により低コストで高度のデータ処理が可能に
なっている。これらの汎用測定器とPCの技術は更に効率のよい融合が可能である。こ
のため、PCと汎用測定器のインターフェイスの標準化を行い、各種の測定機器の利用
を可能にするとともに、PCから測定器を制御する部分やその後のデータ処理のソフト
ウエアも部品化・オブジェクト化し、測定/データ処理の汎用化/効率化を保ちつつ低
コスト化する方向性が考えられている。石油産業のエンジン試験システムは、このよう
なオブジェクト指向によるデータ処理性に重点を置いたシステムにより、効率的な運転
をすることが望まれている。よって、本研究においてはエンジン試験装置を汎用のPC、
汎用の計測制御機器を用いて構成し、さらに計測制御機器の駆動ソフト、試験設定条件
ソフト、データ処理ソフトのパーツ化・オブジェクト化を行い、石油産業の試験に向け
たデータ処理の可変性の高いシステムを開発する。
目標とする開発システムは、安定したエンジン運転の実現による評価時間の短縮、連
携をとりながら多数の計測機器の統括的な監視を行い連続運転の安全性を充分確保する
ことによるオペレーター要員の削減、および装置の故障や更新の際の効率的かつ迅速な
対応によるロスタイムの低減という3つの観点から総合的なコスト削減を狙っている。
従ってエンジン試験部門のみに特化したシステムではなくプラント管理部門や分析部門
でも効果が共有できるシステムであり、広く石油産業で応用が期待できると考えている。
本研究において「石油産業用」と並ぶ本研究のもう一つのキーワードは「オブジェク
ト指向技術の適用」である。この技術を本エンジン試験システムに適用するために、シ
ステム構成を、計測制御機能、管理監視機能、データ解析機能の3つの機能に明確に分
離・独立させたインテリジェントデザインとし、各機能に対してオブジェクト指向技術
を適用する。中核となる部分は、データ解析機能部に組み込むオブジェクト指向データ
ベースで、目に見える形でオブジェクト指向技術を主張できる。また直接的には目に触
れない部分ではあるが、各機能間の相互連携部分のプログラム開発時に、CORBA(UNIX
系)あるいはCOM(Windows系)といった分散オブジェクト技術を利用する。分散オブジ
ェクト技術の計測制御システムにおける適用例はあまりないため、研究としての完成度
を高めることが出来ると考えられる。これらの結果として、ソフトウェア内部の機能分
担の明確化による操作性の向上、ソフトウェア部品のオープン仕様によるマルチベンダ
化、重複機能の整理統合によるシステムのスリム化、といった効果を得ることが出来る。
本研究においてはまた、以下のような現状抱える問題点に対するソリューションを目
指している。
①計測機器の更新や性能向上に際して、機器自身の互換性がないと制御プログラムがそ
のままでは利用できなくなる。異なるメーカー間での交換が出来ないことは、結果的に
はコストアップ要因となる。完全互換性がなくても、そのハードの違いを吸収出来るよ
うなドライバの利用が望まれる。
②計測機器が不調あるいは故障した場合、同一機器としか交換が出来なため、1台しか
所有していない場合そのベンチの運転がストップする。類似機能を有する計測機器との
置き換えが容易であることが望まれる。
③計測データは全てデータベースサーバに吸い上げて、解析のための再利用を容易なも
のとする。
④異なったベンチ、エンジン、計器を用いて、同一の運転条件で試験を行う場合、それ
ぞれに対して数百∼数千ステップに達する膨大な運転プログラムを作成・設定・検査し
なければならない。運転プログラムパターンは共有化することが望まれる。また作成し
た運転パターンは実際にエンジン運転を行わないと動作確認が出来ない。コンピュータ
ー上である程度シュミレーションが可能な確認手法が望まれる。
⑤夜間・休日のような監視のみが必要な場合、ベンチ単位での監視は効率的ではない。
集中的な監視システムが望ましい。
⑥データの集計や印刷に関して、準備されたフォーマットでしか行えずカスタマイズが
困難である。必要な出力データのフォーマット変更に対して、ユーザーサイドで容易に
対応できる柔軟性が望まれる。
使い勝手に優れてかつ低コストな石油産業用エンジン評価システムの構築にプライオ
リティを置く方針である。完全なオブジェクト指向システムの構築が目標なのではなく、
オブジェクト指向を手段として取り入れたシステムの構築が目標である。従って両立は
可能であると考えている。また、昨今のネットワーク技術の急速な進展により、外部ネ
ットワークを媒介にした分散型オブジェクト指向システムの要素も取り込む。
2.研究開発の内容
2.1 平成13年度の研究開発
オブジェクト指向技術の導入に際して、エンジン試験システムの主要な機能を管理監
視、計測制御、データ解析の3機能に分割し、各機能が最小限のスタンドアロン動作を
確保しながらも、ネットワーク経由で動作が統合化可能であるシステムの開発が本年の
目標であった。その結果本年度は、管理監視部に関しては管理マネージャの開発と遠隔
監視システムの導入、計測制御機能に関しては管理マネージャと専用計測機器間のイン
ターフェースの開発、データ解析部に関してはオブジェクト指向データベースの導入を
主要な3本柱とし、さらに実証試験も視野に入れた。
2.2 計測制御部の開発
エンジン試験システム全体を計測制御、管理監視、データ解析の3機能に分割し、ネ
ットワーク分散型オブジェクト構成とするために、燃費試験や耐久試験用の既存のスタ
ンドアロン型制御計測機器については、システムマネージャから等価に見えるようなイ
ンターフェイス PC を導入することにより、試験室間の差異を吸収するシステムを設計
する必要がある。また、システムマネージャとインターフェース PC 間のデータ送受信
プロトコルには基本的には SOAP を用いて、ネットワーク上を流れるデータは XML 形
式で行う設計として、異なる計測制御機種間での汎用性と親和性の向上を図ることを目
的とする。本システムは燃費試験用および耐久試験用エンジン試験計測制御機器システ
ム専用のインターフェースである。
2.3 管理監視部の開発
(1) エンジン試験管理用システムマネージャ
システムマネージャは一般的な個別エンジン試験制御システムの基本的なユーザーイ
ンターフェース部分を抽出して独立化させ、ネットワーク上での一元管理を意図したア
プリケーションの設計・製作である。ソフトウェア設計にはオブジェクト指向技術の適
用を最大限に図り、データのアクセシビリティ向上と有効活用、操作性向上のためのユ
ーザーインターフェースの容易な変更、計測機器および計測項目の追加・削除・変更に
対する柔軟な対応、連続運転における広範で緻密な運転状況のモニター、の各項目を目
標とするものである。仕様としては、以下の内容で設計を行った。
①運転パターン作成機能:運転パターン作成機能をシステムマネージャで一括作成して
各個別試験制御システム PC に指令する。データベースサーバと連携して保管・呼出を、
また個別試験制御システム PC と連携して実行指示を行う。システムマネージャの汎用
運転パターンと個別試験制御システム運転パターンとの互換性を確認・表示する。
②運転状態モニタ機能:ネットワーク上で稼働しているエンジンベンチを切替えて、計
測データ、設定データ、運転進行状況の疑似リアルタイム表示を行う。疑似リアルタイ
ムは、1 秒の表示更新周期を目標とするが多少の表示遅延は許容範囲とする。トレンド
表示機能は各エンジン試験室の過去一定時間のトレンドグラフを表示する。個別制御シ
ステム PC との通信プロトコルは SOAP を基本とし COM をベースとした RPC を併用す
る。各ベンチで検出された異常はすべてシステムマネージャに伝送され、画面に表示さ
れる。
③データベース入出力機能:計測データは最大 64 項目、0.1sec 周期サンプリングに対
応する。データ格納方法は自動および手動の両者に対応する。データベース機能はデー
タベースサーバ標準機能のみで実現する・データベース入出力は XML 形式を基本とす
る。
(2) エンジン試験監視記録システム
本装置はエンジン試験室に設置したカメラおよびマイクロホンを用いて、エンジン試
験状態の映像および音声をリアルタイムで遠隔監視ならびに記録保存するためのデジタ
ル 方 式 の シ ス テ ム で あ る 。 映 像 ・ 音 声 デ ー タ を MPEG 方 式 に よ り デ ジ タ ル 化 し て
100Base Ethernet を利用して通信を行い、ユーザーアプリケーションからの指示で動
画、静止画、音声の記録・再生を行うことを可能にする。最大8つのエンジン試験を同
時に監視することが可能で、従来のアナログ方式の監視記録装置と比較して、受像装置
の拡張性に優れ、記録・再生方法がより高画質、高精度でかつ効率的に行える特徴をエ
ンジン試験システムで積極的に利用することを目的とするものである。
2.4 データ解析部の開発
エンジン試験においては、エンジン試験依頼・作業・報告記録、エンジン試験設定デ
ータ、エンジン試験測定データ、エンジン部品写真・画像、 エンジン運転部位映像・エ
ンジン音、等のデータを取扱う。これらをデータベースに記録して有効活用を図るため
の基 幹デ ー タ ベ ー ス シス テム を構 築 す る こ と を目 的 とす る。 デー タ の 送 受 信 およ び 格
納・提供には SOAP プロトコルと XML ファイル形式を用い、オブジェクト指向技術を
最大限適用することを基本思想とし、データベースサーバ、管理マネージャおよび個別
試験制御システムインターフェース全てにおいて XML データ形式の共有を行う設計思
想である。
3.研究開発の結果
3.1 エンジン試験システムの全体概要
本エンジン試験システムに適用するために、システム構成を、計測制御機能、管理監
視機能、データ解析機能の3つの機能に明確に分離・独立させた分散インテリジェント
デザインとして、各機能に対してオブジェクト指向技術を適用した。ハードウェアのみ
ならずソフトウェア内部の機能分担の明確化により、操作性の向上、ソフトウェア部品
のオープン仕様によるマルチベンダ化、重複機能の整理統合によるシステムのスリム化、
といった効果を得ることが期待される。
具体的には、まず計測制御機能のオブジェクト指向適用は、ハードウェア面からの対
応とセットで設計した。すなわち、ハードウェアインターフェースをイーサネットに統
一し、プロトコルはTCP/IPまた はUDPとすることで、ハードウェア的に プラグインの
思想に基づくオブジェクト指向性を反映させた。
管理監視機能にはクラスと継承をサポートしているオブジェクト指向言語であること
と、保 守性 が高 いこ との 両面 を考 慮して、VisualBASIC.NETを開 発言語と して採用す
ることとした。各機能をカプセル化したクラス単位でのソフトウェア構築により、関連
する計測制御機構をオブジェクト化してメインテナンス性の向上を図る狙いである。
特にオペレーション上重要である警報関連のフローに関しては、ポリシーの変更、要
求精度の変更、エンジンや基材の変更に伴う想定外の変動などの柔軟かつ迅速に対応す
るためには、個々の警報要因をオブジェクト化して、変更や更新を確実なものとするこ
とが望まれる。致命的な障害に関してはハードウェアインターロックによりシャットダ
ウンを図るが、ばらつきが許容範囲を超えたか否かのような軽微な異常検知に関しては
ソフトウェア的な対応が好ましい。
システムマネージャ(富士通H13)
運転パターン設定
運転データ収集
I/F
明電舎
(H13)
従来型試験機器(明電舎H10)
耐久試験用制御計測機器
データ解析WS(横河H11)
運転データ解析
I/F
小野測
(H13)
オブジェクト指向型試験機器(小野測H12)
燃費試験用制御計測機器
監視モニタシステム(富士通H13)
運転状況記録
I/F
予定
(H14)
I/F
富士通
(H13)
DBサーバ(富士通H13)
運転データ格納
補助サーバ(自社)
時刻同期
トラフィック監視
I/F
自社
(H13)
既設計測制御機器(自社)
排ガス試験用制御計測機器
監視カメラ・マイク(富士通H13)
エンジン周辺部位監視
汎用計測機器(横河H10)
汎用項目計測
サーバ室
依頼元居室
安全監視端末(自社)
夜間無人連続運転時の監視
試験要求元端末(自社)
運転状況モニタ
データベース参照
オペレータ室
試験室
警備室
図3.1 エンジン試験ベンチの構成
以上より、システムの構築に当たっては、以下の3点を最重要点として開発を進めた。
①分散インテリジェントシステムの構築
エンジン試験システムを計測制御、管理監視、データ解析の各機能に分割して独立性
を高め、ネットワーク経由で有機的に結合する方式とする。
②オブジェクト指向設計
ネットワークによる各機能間の相互連携を図るために分散オブジェクト技術を適用し、
またデータ管理機能の中核にオブジェクトリレーショナルデータベースを採用する。
③送受データの SOAP/XML 化
ネットワーク上を流れるデータは SOAP/XML 化して互換性向上と企業内システム親
和性の両立を図る。
また、オブジェクト指向技術適用を前面に押し出すために、以下の技術を採用した。
①オブジェクト指向開発言語の利用
マネージャ開発言語として VB.NET を、送受信基本プロトコルに SOAP を採用。
②オブジェクト指向設計の適用
UML に準拠した開発フロー図の作成。
③オブジェクト指向データベースの導入
オブジェクトリレーショナルデータベースの採用。
送受信データ、格納データの XML による標準化。
MPEG-2 音声・映像データのオブジェクトとしての取扱い。
この結果、開発が進められたエンジン試験システムの全体図を図3.1に示す。
図3.2 管理マネージャの画面遷移図
3.2 管理マネージャの概要
管理マネージャは最大8ベンチのエンジン試験を一元的に管理監視する機能であるが、
個別のベンチに特有の作業は各ベンチで独立して行い、汎用的な以下の3点に機能を絞り
込んでいる。
①運転パターンデータの作成および管理
・試験室に依存しない共通運転データの作成と
・異常監視条件の設定
②計測データの収集
・試験室で収集している計測データの DB への格納
・汎用計測器、マルチメディアデータの収集指令
③トレンドデータの収集および表示
・運転中のデータの 1sec 周期程度でのリアルタイム表示
・実行中の試験運転の概算速報値の提供
管理マネージャの画面遷移図を図3.2に示す。
3.3 計測制御インターフェースの概要
計測制御インターフェースは管理マネージャと個別のベンチ制御システムの橋渡しを
行う専用の PC ハードウェアとデータ変換ドライバの組み合わせであり、1 ベンチに 1
台がアサインされる。主要な機能に以下の内容が挙げられる。
・最大8試験室を切り替えて32チャンネル程度の計測データの1sec周期程度でのトレン
ドモニタを可能とする
・計測自体は100msec周期を保証するため、計測制御機器はデータ採取に特化して、余
分な負荷のかかる外部とのデータ通信はほとんど考慮されていない
・動作保証範囲の切分けのために、計測制御機器のドライバ部分は機能付加は行わない
・I/F-PCを計測制御機器と管理マネージャ間に配置して、マネージャからの要求で瞬時
計測データをネットワークに送出する方式とする。
速度的にかなりの負荷が予想されるトレンドデータの送出方法に関しては、管理マネー
ジャが要求する方法とI/F-PCが定期的に送付する方法とが考えられるが、前者は8ベン
チ1sec周期のポーリングは負荷が大きすぎること、後者はトラフィックのコントロール
に課題が残ることが懸念点である。
図3.3 インターフェースPCのデータ授受
データの受け渡し方法に関しては、SOAP通信によりネットワークに送出する方法は
速度的にまだ不十分であるが改善の余地はあり今後の発展性を考えると魅力は大きい。
データベースに一時的に格納する方法はオーバーヘッドが大きいため断念した。共有ド
ライブでキャッシュとして持つ方法は確実性は高いがオブジェクトとしての独立性が低
くなり、研究目的に必ずしも合致しない問題がある。しかしながらまずは動作確認が取
れることが重要課題であるため、今回は共有ドライブ方式で設計し、将来的にSOAPに
切替えることとした。
図3.3にインターフェー スPCを介したデータの授受 を模式的に示す。XML形式に
統一したことにより、異なるベンダーの機器も仮想機器として想定したクラスの継承と
して取扱える点が大きなメリットである。
3.4 MPEG-2マルチメディア監視システムの概要
本装置は最大6つのエンジン試験室に設置したカメラおよびマイクロホンにて、エン
ジン試験状態の映像および音声をリアルタイムで遠隔監視ならびに記録保存するための
シ ス テ ム で あ る 。 映 像 ・ 音 声 デ ー タ を MPEG方 式 に よ り デ ジ タ ル 化 し て 100Base-TX
Ethernetを利用して送受信を行い、ユーザーアプリケーションからの指示で動画、静止
画、音声の記録・再生が行えることを特徴とする。構成としてはエンジン試験室に設置
する小型PCとエンコードカード、制御室に設置するPC、デコードカード、ビデオカー
ド、および液晶ディスプレイ、とソフトウェアデコードソフトウェアよりなる。
リアルタイムストリーミングでNTSC並みの画質を確保するためには、6Mbps程度の
帯域を必要とするため、これ以上の能力を有して可搬性に優れ、かつ低コストな製品の
市場調査を行った。その結果エンコーダが最大のネックであり、現状ではNTTエレクト
ロ ニ ク ス 社 が チ ッ プ か ら 開 発 し て お り 、 NTT 東 日 本 ・ 西 日 本 に OEM 供 給 し て い る
PCMCIA・CardBus型のエンコーダが非常に魅力的であることが判明した。また、デコ
ーだは最近のCPUの進歩から判断すると専用ハードウェアである必要は必ずしもなく、
ソフトウェアデコーダがコストパフォーマンスに優れること、しかしながらビデオチッ
プとの相性問題によりブロックノイズが発生する可能性があることなどが判明した。
以上より今回導入する機器のスペックを慎重に判断し、図3.4に示すような構成で、
問題なく映像・音声のモニタが行えることを確認した。なお、これらの情報の記録や保
存機能をエンジン試験システムに組み込むためのソフトウェア部品は現在間発中である。
これまで困難であったマルチメディアデータの扱いが手軽になることにより、エンジン
試験自体の効率化が期待されるところである。
図3.4 MPEG-2エンコーダ・デコーダ
3.5 データ解析システムの概要
データ解析機能の一環として、多数のエンジンベンチ併設を想定し、サーバーによる
履歴管理が可能なエンジン試験解析ソフトを導入した。解析ソフトとして、自動車メー
カーなどにおいて実績のある解析ソフトを導入した。構成としては解析ステーションに
プロット表示などの解析及びデータの編集などを行う管理機能を設け、サーバーにはエ
ンジン試験データをデータベースとして履歴管理するためのソフトウェアSQL
(Structured Query Language)が設定されている。データ管理項目には、エンジン型
式(排気量、バルブ数、過給機型式、ボア、ストロークなど)、計測項目(計測時間、計
測回数、燃料計測の有無、エンジン制御機能の有無など)、燃料(燃料名、燃料比重、燃
料発熱量など)および補正項目(燃料密度補正、点火時期補正温度、吸気温度補正など)
がある。
3.6 UMLを用いたデザイン手法の概要
今回のシステム開発はオブジェクト指向技術の最大限の適用がテーマであり、単に開
発されたプログラムコードにとどまらず、そこに至るプロセスもまたオブジェクト指向
技術の 恩恵 を最 大限 に享 受す るこ とが 大 き な 目的 で あ る 。 そ の た め に は UML(Unified
Modeling Language)を利用した設計手法を積極的に取りいれた。
UMLはスリーアミーゴと呼ばれる3人の研究者ブーチ、ランボー、ヤコブソンによっ
て 考 案 さ れ た ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 の た め の モ デ ル 記 述 言 語 で 、 現 在 は OMG(Object
Management Group)により標準化が図られており、2000年時点ではVer.1.3がリリース
されている。近いうちにISOによる標準化も計画されている、オブジェクト指向設計に
は不可欠の設計手法である。UMLには何種類かの図が定義されているが、それらのうち
もっとも使用頻度が多く利用価値が高い4つの図、クラス図、シーケンス図、アクティ
ビティ図、コンポーネント図を使用した。
これらの図の作成には Rasional 社の Rose を基本的には利用しているが、単に設計図
だけが必要な場合は適宜 Microsoft 社の Visio でも作成可能である。今回開発したシス
テムはすべてこれらの設計手法を踏んでコーディングがなされており、これがプログラ
ムコードの保守性向上に大きく寄与することが期待される。
4.まとめ
4.1 計測制御部開発
・現状の計測制御機器の能力解析の結果、数十チャネルのデータ収集を 100msec 周期で保
証するために外乱を極力排除する設計思想となっていることから、この部分の改造は行
わないシステム設計を行った。
・エンジン試験システム全体を計測制御、管理監視、データ解析の3機能に分割し、分散
型ネットワークシステムとして、各機能の独立性を高める構成の設計を行った。また、
燃費試験や耐久試験用の既存のスタンドアロン型制御計測機器については、システムマ
ネージャから等価に見えるようなインターフェイス PC を導入することにより、試験室
間の差異を吸収するシステムを設計した。
・運転状態のリアルタイム監視用のデータは計測データとは別に、インターフェース PC
よりトレンドデータを 1sec 周期で最大 8 試験室分収集する仕様を確定した。
4.2 管理監視部開発
・最大8エンジン試験室の運転データ指令、異常監視条件設定、計測データ収集を統括管
理するシステムマネージャを開発した。
・ シ ス テ ム 開 発 に は 最 新 の オ ブ ジ ェ ク ト 指 向 技 術 が 投 入 さ れ て い る Microsoft
VisualBASIC.NET 言語と、オブジェクト指向設計手法を駆使するための RationalRose
汎用 UML モデリングツールを利用した。
・システムマネージャとインターフェース PC 間のデータ送受信プロトコルには基本的に
は SOAP を用いて、ネットワーク上を流れるデータは XML 形式で行う設計として、異
なる計測制御機種間での汎用性と親和性の向上を狙った。しかしながら現状の
VisualBASIC.NETβ版プラットフォームでは速度 的に問 題が 残っ ているた め、動作保
証が要求される部分は一部共有ディスク方式でのバイナリデータアクセスで開発を行い、
VB.NET 最終製品版のパフォーマンスを確認してから SOAP に移行するか否かの判断を
行うこととした。
・耐久試験、夜間連続運転の際の異常検出のために、試験部品状態の映像やエンジン運転
音の収録機能を付加した。カメラおよびマイクロフォンで収録されたマルチメディアデ
ータは、ハードウェアエンコーダにより MPEG-2 データに変換され、100Base-TX ネッ
トワークを通じて 6Mbps で監視表示システムに送信され、そこでソフトウェアデコー
ドされてデジタルオーバーレイ方式で表示する方式とした。
4.3 データ解析部開発
・エンジン試験の XML データファイルを容易かつ高速に取扱うために、データ管理機能
の中核に Oracle9i オブジェクトリレーショナルデータベースを採用して運用設計を行
った。
4.4 実証運転
・ 1 ベンチ単独運転時でのエンジン運転指令、データ収集表示の動作確認を行った。
・ ネットワークのトラフィックやサーバーの負荷をモニターするためのツールを用いて、
石英光ファイバ、プラスチック光ファイバ、メタルケーブルの各伝送メディアによる比
較を行ったが、大きな差異は認められなかった。
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