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「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究」中間報告の概要
資料7-3 (第7回 H24.1.30) ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究 中間報告 2012年1月30日 「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究」の背景 最近の相次ぐ顕著な被害地震 (2004年中越地震、2007年中越沖地震) 「ひずみ集中帯」で発生 ひずみ集中帯の地震像を明らかにする必要 ●活構造(活断層・活褶曲等)の解明 ●ここで発生する地震のメカニズムの解明 震源断層モデル構築 東北日本の日本海側・ 日本海東縁部における 地質学的ひずみ集中帯 地震の発生時期・規模の予測、強震動予測 1 ひずみ集中帯における調査観測の現状 ●地震調査観測の空白域 ○基盤的地震観測網が手薄 ○活断層評価が不十分 重点的調査観測・研究手法 平成19年8月22日 地震調査研究推進本部 政策委員会 調査観測計画部会 ●機動的地震観測機器を用いた定常的稠密地震観測 ●海陸複数測線による地殻構造探査 ●GPSによる稠密地殻変動観測 ●海陸における地形地質調査 ●歴史地震調査 ●堆積平野の地盤構造調査 ひずみ集中帯における調査観測についての考え方(抜粋) 平成19年8月22日 地震調査研究推進本部 政策委員会 調査観測計画部会 4.今後のひずみ集中帯における調査観測の進め方 (1)基本的考え方 ○ ひずみ集中帯における調査観測の内、当面、東北日本の日本海側の地域及び日本海東縁部 に存在するひずみ集中帯の活断層及び活褶曲等の活構造の全体像を明らかにし、震源断層モ デルを構築することにより、ひずみ集中帯で発生する地震の規模の予測、発生時期の長期評価、 強震動評価の高度化に資することを目的として行われるものである。また、これらの調査観測に ついては、「ひずみ集中帯」における地震像を解明するための手法の高度化や、地震発生メカニ ズムの解明に資する新たな手法の開発等にも留意して実施することが重要である。 ○ このため、当面、以下の調査観測項目を優先的に実施することとする。なお、目的達成に向け、 その他の調査観測項目等についても有効に活用していくことが望ましい。 (2)調査観測項目 ① 自然地震観測 ② 制御震源を用いた地殻構造調査 ③ GPS連続観測等による精密ひずみ観測 ④ 活構造の地形地質調査 ⑤ 堆積平野の地下構造調査 ⑥ 古地震の調査・再解析 2 ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究(予算要求時) 背景 ○ ○ 近年、平成16年10月新潟県中越地震、平成19年3月能登半島地震、平成19年7月新潟県中越沖地震等、顕 近年、平成16年10月新潟県中越地震、平成19年3月能登半島地震、平成19年7月新潟県中越沖地震等、顕 著な被害地震が立て続けに発生し、これらはいずれも日本海東縁部等の「ひずみ集中帯」と呼ばれる地域で発生。 著な被害地震が立て続けに発生し、これらはいずれも日本海東縁部等の「ひずみ集中帯」と呼ばれる地域で発生。 ○ ○ 地震調査研究推進本部においては、これまで主要98活断層や、「今後の重点的観測について」で示された活断 地震調査研究推進本部においては、これまで主要98活断層や、「今後の重点的観測について」で示された活断 層等で調査観測を進めてきているが、「ひずみ集中帯」は地震調査観測の空白域。 層等で調査観測を進めてきているが、「ひずみ集中帯」は地震調査観測の空白域。 ○ ○ 「ひずみ集中帯」で発生する地震の実像を解明し、国民に安全・安心な生活を提供することが不可欠。 「ひずみ集中帯」で発生する地震の実像を解明し、国民に安全・安心な生活を提供することが不可欠。 ひずみ集中帯の地殻構造の解明 制御震源と自然震源とを組み合わせた海陸統合地殻構造調査等を行 うことにより、ひずみ集中帯の活構造を明らかにし、ここで発生する 地震のメカニズムを解明するとともに、震源断層モデルを構築する。 海陸統合地殻構造調査 ○ 自然地震観測 ・陸域及び海域に稠密設置した地震計による定常的な自然地震観測 等 ○ 制御震源を用いた反射法・屈折法による海陸統合調査 ・大型起震車や高分解能音波探査装置等を用いた、反射法・屈折法による陸域 及び海域の地下構造調査 等 ○ 震源断層モデルの構築 等 ・強震動予測の精度向上 強震動予測の精度向上(その地域ではどのような揺れが生じるか) ・発生時期・規模の予測の精度向上 発生時期・規模の予測の精度向上(いつ、どのくらいの規模の地震が 新潟県中越沖地震 新潟県中越地震 能登半島地震 起きるか) 0 50 100 150 200km 背斜構造の分布から推定した歪み集中帯 効果的・効率的な地震防災対策の推進により、安全・安心な社会の実現に寄与 ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究の具体的な内容 1.自然地震観測 ひずみ集中帯の陸域及び海域において稠密な定常的地震観測を実施し、高精度な震源決定や強震動予測に必要 な地震波速度構造と非弾性の三次元的な分布を明らかにする。 2.制御震源を用いた反射法・屈折法による海陸統合調査 陸域では大型起震車等、海域では高分解能音波探査装置等を用いた反射法・屈折法による地下構造調査を行い、 ひずみ集中帯の地下浅部におけるイメージングを行うとともに、地震波速度構造の絶対値を明らかにする。 3.GPS連続観測等による精密ひずみ観測 精密なGPSキャンペーン観測を実施し、ひずみ集中帯の地殻変動を明らかにする。 4.活構造の地形地質調査 空中写真判読、変動地形調査、音波探査等を実施し、地表及び海底面の変動構 造・地殻ひずみ速度を明らかにする。 海底地震計 5.強震動予測高精度化のための研究 陸上地震観測 海底地殻構造調査 既存のデータの収集・整理等により浅部・深部統合地盤モデルを作成する。また、 断層モデルに関する情報を総合して震源モデルの高度化を行う。 6.歴史地震の調査 過去に発生した地震や活断層等に関する歴史資料や地質資料、観測記録の収集・ 再解析を行い、地震の震源断層の位置の推定や、長期評価の精度向上に資する。 ○ 震源断層モデルの構築 1.∼6.で得られたデータを統合して、震源断層モデルの構築等に関する調査研究を行う。 3 研究代表者 防災科学技術研究所・小原一成→関口渉次 研究体制 1.自然地震観測 防災科学技術研究所・小原一成 (兼1−1)→関口渉次 1−2.東京大学地震研究所・金沢敏彦→篠原雅尚 1−3.東京大学地震研究所・平田直 1−4.京都大学防災研究所・飯尾能久 1−5.北海道大学大学院理学研究院・茂木透 1−6.東北大学大学院理学研究科・松澤暢 1−7.名古屋大学大学院環境学研究科・山中佳子 目的 1−8.九州大学大学院理学研究院・松本聡 1.震源断層モデル構築 2.ひずみ集中帯機構解明 1−9.東京工業大学山流体研究センター・小川康雄 2.地殻構造探査 東京大学地震研究所・佐藤比呂志 (兼2−1) 2−2.海洋研究開発機構・小平秀一 3.GPS観測 名古屋大学大学院環境学研究科・鷺谷威 4.地形地質調査 東北大学大学院理学研究科・今泉俊文 (兼4−1) 4−2.産業技術総合研究所・岡村行信 5.強震動予測高精度化のための調査研究 防災科学技術研究所・藤原広行 (兼5−1) 5−2.京都大学防災研究所・岩田知孝 5−3.東京大学地震研究所・纐纈一起 6.歴史地震等に関する記録の収集と解析 東京大学地震研究所・佐竹健治 (兼6−1) 6−2.地震予知総合研究振興会・松浦律子 年次計画 担当機関 1.自然地震観測 1.自然地震観測 (陸域) 防災科研 (海域) 東大地震研 2.地殻構造調査 2.地殻構造調査 (陸域・沿岸域) 東大地震研 (沖合い海域) 20年度 (新潟沖)自己浮上式 海底地震計 三条・弥彦沖 海洋研究 開発機構 名古屋大 4.地形地質調査 4.地形地質調査 (陸域) 東北大 角田・弥彦 (海域) 産総研 粟島周辺 6.歴史地震の調 6.歴史地震の調 東大地震研 査 地震予知振興会 22年度 23年度 24年度 (新潟沖)機動観測型海底ケーブ ル・インライン式地震計設置・観測 会津・佐渡沖 東山・三島 能登半島沖 ~佐渡沖 佐渡沖 ~新潟沖 六日町・直江津 飯山・西頚城 津軽沖 庄内沖 ~秋田沖 2測線でGPSキャンペーン観測 上越市∼南魚沼市、柏崎市∼南魚沼市 3.GPS観測 3.GPS観測 5.強震動予測高 5.強震動予測高 防災科研 精度化のための 京大防災研 研究 東大地震研 21年度 新潟県を中心とした地域の約300ヵ所に機動的地震計を設置・観測 既存データ 収集 高田平野西縁 粟島周辺 新潟地域浅 部地盤モデル 越後平野西縁 国中南 酒田沖 鳥越・信濃川・高田平野東縁 酒田沖 山形地域浅部 秋田地域浅部 地盤モデル 地盤モデル 酒田沖 モデル 統合化 史資料・現存する地震波形記録の収集整理 4 新潟地域周辺で発生した過去の被害地震 1802年佐渡小木地震(M6.8) 1964年 新潟地震 (M7.5) 2007年 中越沖 (M6.8) 1828 三条地震 (M7.2) 2004年 中越地震 (M6.8) 厚い堆積層により震源断層が伏在・どうして被害地震が多発? 新潟周辺地域での調査観測の目的 活褶曲帯の震源断層 震源断層モデルの構築 変形集中メカニズムの 解明 5 震源断層モデルの構築 ◎断層形状の推定(位置・深さ・広がり) ・地形地質調査による活断層分布 ・地殻構造探査による2次元反射断面 ・自然地震観測による3次元的イメージング ◎活断層の特徴 ・地形地質調査による変位速度/地震時の変位/推定 ◎地下構造 ・地殻構造探査による地震波速度測定 ・自然地震観測による地震波・減衰構造 ・浅部・深部地盤構造 ◎震源断層モデル検証 ・特性化震源モデル ・歴史地震との比較 震源断層モデル構築対象地域と調査観測内容 ◎新潟県域における集中的調査観測 ・地殻構造探査(5測線) ・陸域機動的地震観測(300台) ・オフライン及びケーブル式海底地震観測 ・GPS地殻変動観測(50台) ・海陸の地形地質調査 ◎日本海東縁部・沿岸部における広域的調査観測 ・海域地殻構造探査による海域断層イメージング ・浅部/深部地盤構造モデルの構築 ・歴史地震の史資料・記録収集に基づく 震源モデル構築への貢献 6 陸域自然地震観測 オフライン地震観測点マップ 3mの積雪の中でも観測可能 GPSアンテナ ■ オフライン観測点 ■ オフライン観測点(H22年度展開) ▲ 定常観測点 防護用コンパネ 3m 観測ケースは この中に設置 新潟を中心としたひずみ 集中帯を幅広くカバーす る 地震観測点外観 2011年3月現在 観測波形例 UD成分 ひずみ203 H20年度 300観測点を展開 H21年度 300観測点を維持 H22年度 300観測点を維持および そのうち80観測点を移設 震源分布 2001‐2011/7 まで 7 震源決定の高精度化 ● 再決定 ● JMA震源 A B 海底ケーブル・インライン式海域自然地震観測 陸上局 給電装置 データは地震研究所 基準時計 へ転送 データ収録 海底観測ノード 4点 ノード間隔 5km 陸揚 1地点 観測点 8 海域自然地震観測 海底ケーブルデータを用いた新潟地震震源域地震活動(暫定結果) 震源再決定に用い た観測点 JMA 47個 OBCSでの読み取り 29個 収束した地震17個 • • 観測点補正値は用 2010/08/29-2010/12/17 いていない 絶対走時を用いた 一般に震源の深さが5-10km浅くなる。 震源決定 今後データの蓄積を待って、より精密な震源分布を求める。 新潟県域の構造探査測線と調査対象断層 「かいれい」 海洋研究開発機構 海陸統合地殻構造探査 9 H20年 三条‐弥彦地殻構造探査 海陸統合地殻構造探査(速度構造断面) 震源分布 10 活断層の特徴 : 主体部は伏在 越後平野東縁断層帯 断層の主体部は伏在 断層の深部形状は速度の逆転から追跡 活断層の特徴 :断層の反転運動 角田-弥彦断層 日本海形成時の正断層が、現在の圧縮応力場によって逆断層として活動 震源断層の形状は、2千万から1千5百万年前にほぼ決定 11 活断層の特徴 : 寺泊層下部のデタッチメント 堆積層中のほぼ水平な断層(デタッチメント)によって、上部の地層が褶曲 震源断層の位置と活断層の関係は複雑 東山-三島断面に見る断層系の反転運動 水平圧縮応力 現在 日本海形成時 水平引張 日本海形成直前 12 地震活動によって見いだされるリフトに直交する断層 リフトと直交する断層が形成 →大規模なものはセグメント 境界を構成 リフト期の中越地域の正断層ブロック 地震波トモグラフィーによる地殻構造詳細イメージング 三条弥彦測線における構造探査結果との比較 自然地震のトモグラフィーと制御震源の構造探査の組み合わせにより、2次元断面か ら三次元への拡張が可能 13 N 地震波トモグラフィーによる地殻構造詳細イメージング L 2007中越沖 1828三条 深さ (km) ブーゲー重力異常図(駒澤、 2004) L 震源断層のセグメン ト境界の推定 H L H 5.7km/sec Iso-velocity-plane depth (km) P波速度5.7km/secの等速度深度面の 鳥瞰図 L H 2004中越 L 強震動計算に有効 H H 谷状の構造が北東− 南西方向に延び、蛇 行している 基盤形状と調和的 震源断層の形成時のテクトニクス 日本海拡大時の伸張テクトニクスにより、島弧 に平行な正断層と直交する断層が形成される 14 新潟地域の震源断層の位置と形状 ※ムービー 新潟地域の震源断層の位置と形状 過去の震源域 主要な断層面の形状と広がり 15 新潟地震(1964年)震源域の構造と地震活動 新潟地震の震源断層 z西傾斜の逆断層 z変位速度0.5∼0.6m/yr z地震発生間隔2500∼ 3000年 ●は海底ケーブルによって 求められた震源分布 震源断層モデルの構築と検証(越後平野東縁断層帯) 1828年越後三条地震の震度分布推定 ◆試作版震度分布図 ◆家屋倒壊率から求めた推定震度と村落の分布状況 宇佐美(2003) の推定震央 構 造 探 査 測 線 推定震源域 16 震源断層モデルの構築と検証(越後平野東縁断層帯) 1828年三条地震の強震動評価 構造探査に基づく震源のモデル化 (断層パラメータ) (参考資料) 長さ 30 km 傾斜 35° 地殻構造探査 (三条−弥彦測 線) 走向 40° 周辺地形 上端 3 km 下端 18 km 震源分布・ Vp構造 幅 26 km レシピ Mw 6.95 入倉・三宅(2001) 震源の深さ 13 km 中越地震の 本震・余震位置 断層面 の深さ 強震動評価に使用した震源断層モデル ★は松浦・他 [2006] による震央 震源断層モデルの構築と検証(越後平野東縁断層帯) 1828年三条地震の強震動評価 簡便法で得られた地表の震度分布 史料研究との比較 17 会津-佐渡沖断面の地殻の特徴 ひずみ集中のメカニズム 東北地方太平洋沖地 震前の強い圧縮応力 により、強度が弱い日 本海沿岸の中絶リフト 域にひずみが集中し、 地震に至る。 18 震源断層モデルの構築と検証(越後平野東縁断層帯) 今後の予定 ◎震源断層モデルの高度化 ・自然地震観測(1‐1,2):地下構造トモグラフィーに基づく断層セグメント推定 ・構造探査(2‐1):他測線との比較に基づく断層形状の再検討 ・地形地質調査(4‐1):地表面付近の活断層分布 ・震源断層モデル(5‐2):特性化震源モデルの反映 ・震源モデル検証(5‐3):震度インバージョンによる震源断層モデル ◎地下構造モデルの高度化 ・自然地震観測(1‐1,2):地下構造トモグラフィーに基づく地震波速度・減衰の3次元分布 ・構造探査(2‐1):地震波速度絶対値測定 ・地盤モデル(5‐1):微動探査・ボーリングデータに基づく浅部・深部統合地盤モデル 詳細法による強震動推定 震度分布との比較(6‐1,2) 今後の課題 ・新潟地域の三次元震源断層モデルの構築 →東北地方太平洋沖地震で変化した応力状態の影響を評 価するための基礎資料となる ・ひずみ集中メカニズムの解明 →構成岩石モデルや水の役割についても検討 島弧のひずみ蓄積と海溝の巨大地震での弾性ひずみの 解放プロセスを理解するための基礎となる 19