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周辺動向調査 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

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周辺動向調査 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
第 1 回「高機能材料設計プラットフォームの開発」
(事後評価)分科会
資料 5
「高機能材料設計プラットフォームの開発」
周辺動向調査
平成14年10月
川鉄テクノリサーチ株式会社
目次
1.プロジェクトの概要と本調査の対象
1.1
プロジェクトの概要
1.2
本調査の範囲
2.プロジェクト対象分野の動向
2.1
2.2
高分子材料開発の動向
2.1.1
材料・化学産業における高分子の位置と開発動向
2.1.2
化学産業における研究開発費の動向
高分子計算機科学の動向
2.2.1
計算化学の対象領域
2.2.2
高分子を対象とした計算機科学の特徴
2.2.3
高分子計算機科学の役割
3.国内外のプロジェクトの動向
3.1
国内における関連プロジェクトの動向
3.2
国外における関連プロジェクトの動向
4.プロジェクト対象技術の動向
4.1
分子シミュレーション技術の動向
4.2
メソスケールシミュレーション技術の動向
4.3
4.2.1
高分子レオロジーシミュレーションの動向
4.2.2
高分子材料構造予測シミュレーションの動向
シミュレーション統合技術の動向
5.市販計算化学ソフトウェアの現状
5.1
国内外市販ソフトウェア
5.2
OCTA と類似市販ソフトウェアとの比較
5.3
計算化学ソフトウェア市場
6.プロジェクト対象技術分野のマクロ動向
6.1
論文発表動向
6.2
特許動向
1.プロジェクトの概要と本調査の範囲
1.1
プロジェクトの概要
「高機能材料設計プラットフォームの研究開発」は、NEDO 委託の大学連携型産業科
学技術研究開発プロジェクトとして、平成 10∼13 年(98∼01)にわたり 15.5 億円の費
用で実施された。名古屋大学土井教授をプロジェクトリーダーとし、名古屋大学と(財)
化学技術戦略推進機構(JCII)による集中共同研究体制をとり、6 大学工学部 2 大学研
究所への再委託研究も行なわれた。
事業目的は、高機能高分子材料開発の効率化のために、ミクロからマクロ領域にわた
る設計を実現するシミュレーション手法を確立することであり、これにより従来困難で
あった高分子材料の物性推算が計算機実験によって可能となり、計算機シミュレーショ
ンによる材料開発スタイルを確立する。ここにいう「高機能材料設計プラットフォーム」
とは、高機能高分子材料の設計に使用されるシミュレータの結合環境であり、複数のメ
ソ領域の物性推算エンジン(シミュレータ)とミクロ・メソ・マクロ領域シミュレータ
を連携して稼動させうる多機能インターフェースで構成される(図 1-11 ))。
材料設計プラットフォーム
(シミュレーションプラットフォームの開発)
シミュレーションエンジンの開発
シームレスズーミング
メソ領域の物性推算
ミクロ~メソ~マクロスコピックにわたる
シミュレーションシステム開発
検証材料
検証研究
図 1-1
ポリエチレン(生産・使用量最大)
高密度ポリエチレン
連鎖型低密度ポリエチレン
事業の全体目標
開発する要素技術は具体的には、名古屋大学土井教授によるレプテーション理論や動
的平均場理論を核として、粗視化分子動力学法による分子鎖レベルの汎用の分子動力学
エンジン(WG1)、高分子混合物の相分離、自己組織化を平均場近似に基づいて計算す
る界面エンジン(WG2)、多相構造をとる高分子混合物の変形、流動、拡散及びそのカ
ップリングを計算する多相構造エンジン(WG3)、すべてのエンジンに対して共通のイ
ンターフェースを提供するとともに異なるエンジンの間でデータ交換可能なプラットフ
ォームの構築(WG4)及び開発結果の検証研究である(図 1-21 ))。
1
メソシミュレーションエンジンの開発
ミクロ
pm
マクロ
メソ
μm
nm
mm
粗視化分子動力学法(分子鎖) WG1
動的平均場理論(界面構造) WG2
分散構造シミュレーション法 WG3
(多相構造)
シミュレーション
プラットフォーム
の開発
WG5
図 1-2
1.2
検証研究
WG4
開発する要素技術
本調査の範囲
1.1 より、「高機能材料設計プラットフォームの研究開発」は高分子を対象としたミク
ロ‐メソ‐マクロ領域における物性シミュレーションの開発である。
従って本プロジェクトの「周辺動向」調査は、以下の項目を調査範囲としたい。
まず広く、高分子の材料に占める位置やその研究開発の動向など、高分子材料開発の
動向を把握する。
次に計算化学(計算機化学)の動向を全体的に調査した後、その化学産業における役
割や高分子分野における計算科学の動向に進む。その中での動きとして国内外の類似プ
ロジェクトについて調査する。
さらにプロジェクトの要素技術開発分野について調査する。即ち、粗視化分子動力学、
メソスケールシミュレーション、シミュレーション統合技術などについて調べる。シミ
ュレーションの成果物としてのソフトウェアについて、本プロジェクトに関連したソフ
トの現状について述べる。最後にマクロ技術動向として論文発表動向、特許動向を調査
した結果を報告する。
2
2.プロジェクト対象分野の動向
2.1
高分子材料開発の動向
2.1.1
材料・化学産業における高分子の位置と開発動向
現代において使用されている主要な材料は金属(鉄鋼、アルミニウム、銅など)、プラ
スチック、セラミックス、ガラスである。金属の主要製品である鋼半製品、プラスチッ
ク製品、ガラス製品およびセラミックス+金属酸化物(原料)について、日本における
生産量の推移を図 2-1
に示した。
10,500
700
600
10,000
万
ト 9,000
ン
300
(
500 生
産
量
400
(
生
産
量 9,500
)
)
200
万
ト
ン
8,500
100
8,000
0
1980
1985
鋼半製品
図 2-1
プラスチック製品
1990 1995 1996 1997 1998 1999
ガラス製品
セラミックス+金属酸化物(原料)
主要材料の生産量推移( 総務省統計センター資料より )
鋼製品は比重も大きく、構造材料としての用途が大きく生産量は大きいが伸びず、漸
減の傾向にある。プラスチックはガラスやセラミックスに比べて量も多く、生産量も最
近は飽和傾向にあるが 1990 年代後半まで伸びている。世界的にはまだまだ増大すると
予想されている。しかし、我が国の産業が情報産業等への依存度の高まり、生産のグロ
ーバル化などにより、素材料を使用する産業の割合の低下や、器具・装置の軽薄短小化
によりプラスチックの使用量が減少する傾向にある。また、1990 年代始め以来 10%近
い成長を続けてきたエンジニアリングプラスチックが、IT 産業失速の影響を直接に受け
ている 2)。
化学工業における高分子関連産業の割合は、経済産業省の化学工業統計から出荷額で
約 30%と推定される。この中にはプラスチック、合成ゴム、合成繊維、塗料・油脂、洗
剤、接着剤などが含まれる。研究開発はこれら汎用製品の高性能化に加えて、精密合成、
高次構造制御、材料の複合化などの様々な方法によって次世代高分子材料開発への努力
が払われている。需要が期待されている産業分野と開発目標を示した模式図が図 2-2で
ある 3)。
3
バイオミメティック材料
生体適合性材料
ポリマーゲル
先端複合材料
高性能高分子
ポリマーアロイ
光半導体
電子材料
光学材料
光反応材料
航空/宇宙
産業
自動車産業
図 2-2
電子/情報
産業
分離膜
電子半導体
エネルギー
産業
医療・福祉
産業
先端高分子材料のニューフロンティア
高分子材料の開発の変遷を見てみると図 2-3 4) のようになり、いくつかのパラダイム
の進化の過程が読み取れる
5) 。第一はナイロン、ポリエステルなどの合成繊維、ポリ塩
化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの汎用プラスチックスの開発に繋がる高
分子合成のパラダイムであり、それらは生活用品や建材さらには繊維強化プラスチック
や複合材を生んだ。次のパラダイムは、エンジニアリングプラスチック、炭素繊維など
であり、機械部品や金属材料の代替が目指された。第 2、第 3 のパラダイムは未だ発展
途上であり、光電子的機能の高度化、分子原子レベルまでコントロールされたナノテク
ノロジーに繋がっている。
図 2-3
高分子科学技術のパラダイム進化
4
材料科学の中の高分子の位置を調べてみる。図 2-3は日本学術会議第 5 部(工学)
材研連及び金研連登録学会協会の会員数の分布を示したものである。高分子学会の会員
数は材研連関係では日本化学会に次ぐものであり、金研連最大の鉄鋼協会と殆ど同じで
ある 6)(なお、第 4 部(理学)の化研連と材研連に大きな差異はない)。会員数の比率は
材研連が 2/3、金研連が 1/3 である。高分子に関わる研究者・技術者が非常に多いこと
を示している。一方、主要 6 ヶ国の化学全般の論文数と高分子研究論文数の推移を示し
た(図 2-4、図 2-5)。世界における日本の高分子の研究の位置が極めて高いことを示し
ている。
図 2-4
日本学術会議・(金研連+材研連)関連学協会の登録会員数の分布
図 2-5
主要 6 ヶ国の化学全般の論文数の推移(CAS による)
5
図 2-6
主要 6 ヶ国の高分子研究論文数(CAS による)
化学工業における研究開発費の動向を見てみる。図 2-7、図 2-8にそれぞれ、化学工
業の社内使用研究費(支出額)と売上高に対する比率の推移を示した
7)。総額、売上比
率ともに、総合化学・化学繊維工業は直近で低下しているのに対して、医薬品工業は増
加している。なお 2000 年度において国・地方公共団体、特殊法人からの受入及び支出
研究費は、総合化学・化学繊維工業が、それぞれ 3,294 百万円及び 2,376 百万円である
のに対して、医薬品工業は 1,526 百万円及び、18,307 百万円であり、医薬品工業におけ
る支出研究費が突出しているのが注目される。
8,000
(
7,000
使
用 6,000
研
5,000
究
費 4,000
)
3,000
億
円 2,000
1,000
0
1995
1996
総合化学・化学繊維工業
図 2-7
1997
油脂・塗料工業
1998
医薬品工業
1999
その他の化学工業
化学工業の社内使用研究費(支出額)推移
6
2000
10.00
9.00
(
8.00
使
用 7.00
研 6.00
究
5.00
費
4.00
% 3.00
)
2.00
1.00
0.00
1995
1996
総合化学・化学繊維工業
図 2-8
2.2
2.2.1
1997
油脂・塗料工業
1998
1999
医薬品工業
2000
その他の化学工業
化学工業の売上高に対する社内使用研究費比率の推移
高分子計算機科学の動向
計算化学の対象領域
高分子計算機科学は計算化学の一分野である。計算化学は Computer Chemistry、
Computer-aided Chemistry、Computational Chemistry などの英語表現が対応し、理
論化学の一分野・一側面とも考えられ、Theoretical and Computational Chemistry の
表記もある。また、広い意味での「情報化学」の中にも位置づけられる。
日本化学会の情報化学部会が主催する情報化学討論会においては、①化学情報学、②
理論化学・計算化学、③ケモメトリックス・知識情報学、④構造活性相関の 4 つのセッ
ションに分かれて研究発表がなされている。
計算を行うためのソフトウェアを中心に扱う、日本化学プログラム交換機構(JCPE)
と化学ソフトウェア学会(CSSJ)は 2002 年に合併して、新たに日本コンピュータ化学
会(SCCJ−Society of Computer Chemistry, Japan)となった。
高分子を対象として、メソ領域の物性・構造を分子の特性との関連を保ちつつシミュ
レートしようとする本プロジェクトは、計算化学の領域の研究と考えられる。図 2-9に
計算化学と本プロジェクトの領域を示した。情報化学の観点からは、本プロジェクト化
学情報学やケモメトリックスとは関連は深いが、異なる領域である。表 2-1にこの分野
における学会を示した。
7
<科学・工学>
<情報化学>
本プロジェクト
高分子
化学
化学情報学
理論化学・
物理
計算化学
データベース
計算(機)科学
ケモメトリックス
(計量科学)
気象予測、遺伝子解析
計算地震学、燃焼シミュレーション
宇宙進化モデル
超高速計算機開発など
図 2-9
計算化学と本プロジェクトの位置づけ
日本化学会/情報化学部会
――情報化学討論会
①化学情報学
②理論化学・計算化学
③ケモメトリックス・知識情報学
④構造活性相関
日本コンピュータ化学会(日本化学プログラム交換機構・化学ソフトウェア学会)
――春季・冬季大会
:細矢治夫会長
情報計算化学生物学会(CBI 学会) ――CBI 研究講演会
CAC フォーラム(Computer Aided Chemistry Forum)/ケモメトリックス部会
新化学発展協会/コンピュータケミストリー部会(高分子 WS、次世代 CCWS)
表 2-1
計算化学の学会、研究会など
各シミュレーションの技法の適用領域を示したものが図 2-10である。時間スケールと
対象の大きさのスケールで位置づけている。
計算化学における主要な計算方法には、分子科学計算法として分子力学法、分子動力
学法、分子軌道法(半経験的分子軌道法、ab initio 法、密度汎関数法、第一原理動力学
法)、モンテカルロ法があり、固体を対象とした分子動力学法によるバンド計算法がある。
それらのソフトウェアと利用分野を全体的に示したものが図 2-11である。半導体・金
属・電子セラミックスなどを対象とした計算機科学は計算物理・固体物理と呼ばれる。
8
year
原子間
ポテンシャル
day
連続体力学
時間
s
構造力学
流体力学
ナビエ-ストークスの
方程式
統計力学
1μs
ボルツマン方程式
(モンテカルロ法)
量子力学
シュレーディンガー
方程式
古典分子動力学
(ニュートン力学)
ニュートンの運動方程式
10ps
量子分子
動力学
fs
電子
状態
計算
0
バルク物性値
10nm
atomic
meso
nano
図 2-10
産業分野
macro
各シミュレーション技法の領域
対象物質
経験的
計算法/ソフトウェア
半経験的
小
高分子
エレクトロニクス
生体高分子
計算時間 大
食品・
薬品
化学・石油化学
分子単位の設計
低・中分子
金属
化学・
石油化学
自動車・
重工業
分子・原子の集合体の設計
半導体
電子
セラミックス
分子力学法
■GAUSSIAN
■CAChe
■MM3
分子動力学法
■MOLGRAPH
■AMBER
■DISCOVER
■MOPAC
■SYBYL
半経験的分子
軌道法
■MOPAC
■AMPAC
■GAUSSIAN
■CAChe
■VAMP
非経験的分子
軌道法
■GAUSSIAN
■Spartan
■GAMESS
■Q-Chem
密度汎関数法
■GAUSSIAN
■DMol3
■ADF
半経験的バンド
計算法
非経験的バンド
計算法
結晶用半経験
的分子軌道法
非経験的
量子分子動力学
■CRYSTAL
■DGAUSS
■Poly Graph
■OCTA
■DPD, MesoDym
低・中分子
図 2-11
非経験的
計算時間 大
計算機材料設計
ソフトウェア
■MolWorks
■MOE
■MEDEA
■MASPHYC
金属
高分子
m km
1μm mm
大きさ
小
計算時間 大
計算機科学のソフトウェアと利用分野
9
2.2.2
高分子を対象とした計算機科学の特徴
高分子材料を特徴づける時間・空間的なスケールは、原子のスケールである 0.1nm、
1ps のスケールから、相分離や流動のスケールである 1cm∼1m、1s∼1h にいたるまで
非常に広範囲にわたって分布している。高分子材料中には様々な高次構造が形成され、
それらはそれが置かれた条件や履歴によって多様に変化する。構造から見てみると図
2-12のようになる 8)。高分子は一次構造である一本の鎖の広がりは数十 nm に達するも
のがあり、金属やセラミックスに比べて大きい。さらにポリマーブレンド・アロイや繊
維複合材料になると、さらに大きな構造を有することになる。
ラメラ
結晶
球晶
図 2-12
高分子材料中に形成する様々な大きさの構造
Cummings9) は、高分子材料は化学工業の製品の中で最も大量に生産され、売上げ、
利益も最大なので重大な関心があるという点だけでなく、分子論的モデリングの見地か
らも特別な挑戦の対象であると述べている。その理由は、高分子の構造や化学組成のわ
ずかな差が、大きな物性変化に繋がるということ、それが決まると主として大きさによ
ってモデルが定まっていくという点にある。また、高分子の分子モデル構築の本質的な
困難さは緩和時間が長いという点にあり、分子量に従ってナノ秒からマイクロ秒、秒、
時間、日、月という範囲にわたる。従って最も短い高分子を除けば分子動力学が扱える
範囲を超えることになるからである。
Kremer ら
10)は、図
2-13のように高分子における大きさ(長さ)と時間のスケールの
違いを示している。高分子を対象とした計算機科学は、この二つの違いにどのように対
処していくかが最大の問題となる。後述するが、現状では各々のレベルに対するシミュ
レーションの構築はなされているが、全体を統一的に扱えるモデルがない。
10
図 2-13
2.2.3
高分子における長さと時間のスケールの広がり
高分子計算機科学の役割
材料開発に計算機を利用する場合は、実験データの収集・処理は当然のこととして以
下のような形態が挙げられる
11) 。
①データベース:各種のデータ(文献、高分子名、構造、物性など)を収録し、検索
を行えるようにする。パソコン、ネットワークを使って利用する。
②知識ベース:基本的な原理と理論式、経験的な規則と実験式等を計算機に登録し、
知識ベースとする。これを用いてエキスパートシステム等を構築し、予測機能を持
たせる。
③シミュレーション:計算機を用いて各種の現象を数値解析し、その解析能力と予測
能力を材料開発に利用する。計算機上で仮想の実験を行うこともできる。
④グラフィックス:計算機で扱うデータは膨大であり、その出入力を数値や文字で行
うことは事実上困難である。そのため計算機の描画機能、即ちコンピュータグラフ
ィックスを利用する。分子模型の描画は分子グラフィックス、シミュレーションの
ために解析モデルを作成したり計算結果を描画する場合には、プリポストシステム
ともいわれる。
①と②は一体化している場合も多く、2.2.1 で述べた化学情報学の範囲である。この分
野ではケモメトリックス(計量化学)とデータベース構築が中心である。ケモメトリッ
クス手法は、データ解析の方法として多くの人が程度の差はあるが利用している。市販
ソフトもあり、多変量解析、回帰分析、パターン認識、ニューラルネットワーク、AI
などを用い、膨大な実験データや計算結果を解析したり、予測したりするのに使用され
ている。三井化学では、豊技術科学大学の船津研究室及び CAC フォーラム
れたケモメトリックスソフトウェア「Chemish」13)を配布している
フトを用いてポリマーブレンドの物性予測及び逆設計を行い
グ手法の利用に発展させている
船津ら
12) で開発さ
14)。船津らはこのソ
15)、さらにデータマイニン
16)。
17) はまた有機合成の理論やコンピュータ上の構造処理などにより、合成経路の
可能性を網羅するとともに、大規模データベースから自動誘導された知識ベースを使っ
てそれらの実際性を検討し、検討にパスした合成経路に対しては実験を行う際に参考と
11
なる反応事例をデータベースよりピックアップして提示する AIPHOS と呼ぶ合成設
計システムを開発した。このシステムは現在国内の化学工業・製薬企業で広く実際に利
用されている。
我が国におけるデータベース機能と物性予測機能を併せ持つ設計支援システムの構築
事例として、EXPOD、PALSAR、PolyInfo がある
18)。
EXPOD は、三菱総研が昭和電工、住友化学、東レ、三菱化成の協力を得て開発した
システムであり、綿状ホモポリマーの基本的な物性に対するデータベースと物性予測機
能を装備した高分子材料設計支援システムである。このシステムでは、密度やガラス転
移温度などの基本物性を対象としており、既知ポリマーに対する測定データの整理や半
経験的な物性予測を行う環境が提供される。物性予測には原子団寄与法が用いられてい
る。
PALSAR も同様な方法で開発された、ポリマーアロイ材料の設計・開発を行う上で必
要となる、データの整理/解析作業の支援を目的としたシステムである。本システムで
は、ポリマーアロイ物性の解析/予測に基する基本ツールとして混合則に注目し、これ
らを格納・利用するための混合則ツールを装備している。
PolyInfo は、科学技術庁で予算化されている高機能データベース開発事業の一環とし
て科学技術振興事業団(JST)で開発が進められているシステムであり、「高分子材料設
計・開発分野における研究者の発想を支援するデータベースシステムの構築」を目的と
している。2001 年 4 月より新システムが公開されている
19)。PolyInfo
の実体は JST 内
のサーバ計算機上にあり、データベースやシミュレーションの機能を、インターネット
を介して提供する形態となっている。2002 年度からは、物質・材料研究機構に移管され
ることとなった
20)。このデータベースでは、対象とする高分子材料の種別や物性を限定
せず、また格納する情報についても、物性情報以外にも試料作成に用いられた重合反応
に関する情報や、原料モノマーに関する情報など広範囲にわたる情報を取り扱い、オブ
ジェクト指向分析法を用いてデータの解析を行っている。このことにより様々な形での
データの参照や利用が可能となる。
③のシミュレーションについては一部前節で触れたが、第 4 章で若干述べることとし、
④については本プロジェクトと直接関連しないため記述しない。
企業における製品製造工程における計算機の役割を図 2-14に示した。現状では分子設
計、材料設計、CAE はそれぞれ独立した工程となっているが、本プロジェクトにおいて
はそれらを互いに利用しあう一貫した工程となることを目的としているといえよう。
12
(Atoms)
(Molecules)
材料
(Products)
組立
分子
(Parts)
成形
混合
合成
原子
(Materials)
部品
製品
(Synthesis)
(Mixing)
(Molding)
(Fabrication)
分子設計
材料設計
CAE
SE
計算機
図 2-14
製造工程と計算機の役割
企業で高分子計算機科学や計算化学の果たしている役割について紹介されている例が
ある。
三菱化学では岡崎
21)によれば、
「分子軌道法はここ
10 年間企業の中で、たとえば樹脂
重合触媒開発といったところにおいて確実に認知されてきている。可能な作用機構を絞
り込み、触媒のプレスクリーニングにまで使われている。このような計算結果を生かし
た特許も最近精力的に模索されている」。しかし、要求されることがさらに巨大系、ミク
ロ不均一系(界面での現象)、励起状態に関係してくるとまだ大きな壁がある。機能材料
開発では、もっと多くの複雑だが重要な問題を抱えている。このような対応でどういう
レベルの貢献ができているかを表 2-2に示した。
樹脂可塑剤
架橋樹脂
合成ガラス
OPC 材料
乳化剤
表面処理剤
触媒開発の目標提示、パラメータ特許
(QSPR)
不均一性の指標と強度との関係への糸口
(ゲル化前までの架橋反応シミュレーション)
ゲル化過程の描像とゲル構造の特徴づけ
(分子動力学シミュレーション)
プレスクリーニング、パラメータ特許、特許強化
(分子軌道法、エネルギー極小化法)
特徴づけの指標提案、相図予測への見通し
(動的平均場理論)
表面偏析と性質、プレスクリーニングへの糸口
(動的平均場理論)
メゾ構造が本質的に支配している問題では、
まだ入り口に来たばかりの状況
表 2-2
機能材料分野での計算科学の現状
13
住友化学では、農業化学品研究所、生命工学研究所において生理活性物質の設計、
有機合成研究所において合成反応設計、構造設計、筑波研究所において材料設計の研究
にコンピュータ・ケミストリーが適用されている
22) 。高分子材料分野では
EXPOD の活
用、RIS 法による解析、光電材料分野では液晶材料の構造解析、HEMT 用エピ基板の開
発、表面及び触媒分野では、シリコン表面への銅イオンの吸着現象、ゼオライト中での
分子の反応、光触媒などに利用されている。
三井化学では西村により、ケモメトリックス中心に紹介されている
14)。
「Chemish」
を実験化学者に配布していることは述べたが、さらに逆解析機能を追加した材料設計支
援プログラム「Chemish Pro」の開発を行った。高分子の物性推算、逆解析による pp
アロイ材料設計における候補材料の選定等が例示されている。
豊田中央研究所では 1994 年に松岡が「高分子計算技術」 11)を、山本が「分子動力学
計算の高分子への応用」 23)を、井上が「高分子加工における粘弾性流れの数値解析」 24)
をレビューし、兵頭が部分構造モデルを用いた分子軌道計算の高分子の電子状態計算へ
の適用
25) 、分子軌道法の貴金属触媒への応用 26)を行っているが、山本らが粒子分散材料
のミクロ構造予測(粒子シミュレーション法の開発) 27)や、高分子電解膜のモルフォロ
ジーの計算
28)など、メソ領域の計算とその応用に積極的に取り組んでいることは注目に
値する。その内容については後述する。
化学技術戦略推進機構(JCII)は NEDO の委託により、先導調査研究「化学反応シ
ミュレータ技術の調査研究」を行ったが、その中でコンピュータケミストリーロードマ
ップを作成した。表 2-3にそれを示したが、高分子材料設計については現状は「メソ領
域のソフトの開発が始まった段階であり、QSAR などによる物性予測は出来ても設計は
困難」とし、2010 年は「高分子のアーキテクチャを与えるとメゾスコピックシミュレー
ションなどにより、その実用物性の多くが予測できるようになる」としている
14
29)。
技術
計算化学の
位置づけ
目標
CCの主要な
機能
分子設計
反応設計(合成
経路探索)
触媒設計
高分子材料
設計
有機材料
設計
無機材料
設計
判定指標
現状
2010
実験の傍証として計算化学
2025
まずは計算。実験で確認
方 法論のパラダイムシフト
高精度な方法は合成が非常に困 高精度な方法が原子数が数百ま
難な化合物の物性、原子数が数十 での系での分子設計、反応設計が
までの系に適用される。
行なわれる。
真空、絶対零度の過程が良い過程 中 規 模 な 系 で の 材 料 設 計 が 行 な
である系(理想系)に適用される。 われる。
複雑な現象にはQSAR
メカニズムの解明
メカニズムの解明
(反応メカニズム、機能発見メカ 物性、構造の予測
ニズムなど)
分子構造から、量子学的、分子動 指 定 し た 複 数 の 物 性 を 同 時 に 満
力学的手法により物性予測が出 たす化合物の分子設計がコンピ
来る。QSARにより毒性、安定 ュータを利用して行なわれる。
性などが予測できる。
合成したい目的化合物とその原 コンピュータによる合成ルート
料化合物から文献DBにより合 を元に化合物合成の過程が自動
成経路が選び出される。
化される。
均一系触媒は重合触媒を中心に 不均一反応系での構造が比較的
実用のレベルにある。
簡単な固体触媒の解析・反応予測
が可能になる。
メソ領域のソフトの開発が始ま 高分子のアーキテクチャを与え
った段階であり、QSARなどに る と メ ゾ ス コ ピ ッ ク シ ミ ュ レ ー
よる物性予測は出来ても、設計は シ ョ ン な ど よ り そ の 実 用 物 性 の
困難
多くが予測できるようになる。
結晶構造を初期条件に用いて物 分子構造から分子集合体構造が
性予測が可能である。実験的情報 一貫して予測できるようになり、
を用いずにランダムな状態から 様々な新奇物質の材料設計が可
構 造 を 予 測 す る こ と に は 成 功 し 能になる。
ていない。
初期構造から安定構造を計算で 比較的安定構造に近いものであ
き、その安定構造より、光学特性、 れば有機−無機複合材料、粉体状
電気特性の大雑把な見積もりが 態などの不均質な材料の構造形
できる。
成過程が第一原理的に予測可能
となる。
研究者の数%がCC利用
研究者の 1/4 がCC利用
表 2-3
殆どの系での分子設計、反応設
計、材料設計が可能となり、活用
される。新規現象の発見
実験や合成、分析は可能でも、高
精度な方法で計算したほうが精
度が高く早くて安全になる。
分子や材料の設計
分子構造、モルフォロジー、加工
条件の設計
指定した複数の物性、機能、品質
を持つ分子の設計がコンピュー
タを利用してされる。
合成経路設計や最適条件は自動
的に決定され、新化合物を研究者
が自由に作れるようになる。
リアルスケール(組成比、溶媒)
での解析がリアルタイムで可能
となり、触媒反応設計ができる。
製造条件、加工条件を与えて実用
物性が予測でき、実験研究者が日
常的に利用できるようになる。
希望する材料の原子種の組み合
わせと、分子集合体の構造予測が
でき、その製造条件が設計でき
る。
材料設計ばかりでなく、合成ルー
ト(焼成、混練、薄膜成長など従
来手法を加えて新しい材料合成
法を含む)の設計も自由に出来る
ようになる。
研究者の過半数がCC利用
コンピュータケミストリー(CC)ロードマップ
15
3.国内外の関連プロジェクトの動向
3.1
国内における関連プロジェクトの動向
計算科学の分野においては、文部省科学研究費により「物質設計と反応制御の分子物
理化学」特定領域研究が平成 10 年から 13 年度に行なわれた。新しい概念や指導原理を
提出し、緊密に連携する実験研究によって、物質設計や反応制御を行うことを目的とし
た、メゾスコピック系への展開や、表面、界面、溶液間インターフェース系への展開も
試みられたが、理論開発についてはミクロな現象を対象とする ab initio 分子軌道論、量
子ダイナミクスに限られている。
また、産業技術総合研究所の計算科学研究部門と富士通による「大規模汎用分子動力
学計算に関するソフトウェア開発」は、平成 11 年度より 13 年度までの研究で、様々な
分子動力学シミュレータや解析プログラムを本システムにプラグインするソフトウェア
を開発し、システムの拡張性を高めると同時に実験研究者が本システムを容易に利用で
きるようにするためのグラフィカル・ユーザ・インターフェースを開発した(TACPACK
2000)。本開発は材料設計そのものに関するものではない。
科学技術振興調整費による「物質・材料設計のための仮想実験システム」が岩田教授
(東大)をリーダーとして実施された(10 億円)。計算材料科学がその真価を発揮する
ためには、単なる数値計算やビジュアライゼーションではなく、コンピュータによる仮
想的実験環境をネットワークによる分散協調研究環境上で実現することが必須と考え、
そのため数値シミュレーション知識処理、ヒューマンインターフェースなどの要素技術
を統合した仮想実験技術の研究開発を行った。主として、金属間化合物による耐熱材料
設計が事例として取り上げられているが、高分子を対象とした研究もある。これは現在、
原子力研究所の計算科学技術推進センターの ITBL(IT-Based Laboratory)プロジェク
トとして動いている。
(財)化学技術戦略推進機構が NEDO からの委託で実施した「化学反応シミュレー
タ技術の研究開発」は、情報化学と理論化学、計算化学の最新の進歩を統合することに
より、理論予測から化学反応を設計・制御すること、また新しい機能を持つ物質をデザ
インすることを目的とした。検討の結果、①反応経路生成システム、②分子/結晶/反
応場ビルダー、③化学反応スクリーニングシステム、④反応解析システム、⑤反応条件
最適化システム、⑥可視化システムの 6 つのサブシステムからなる統合システムを提案
した。
経済産業省の産業科学技術研究開発制度のプロジェクトの中には、高分子の開発、メ
ソスケールのシミュレーションをその一部に含んでいるものがある。「独創的高機能材
料創成技術」は、3 つの技術領域から構成されている。生体模倣型高度刺激応答材料と
しての高分子材料(高分子ゲル)と高分子複合材料の開発、高分子の一次構造を精密に
制御するための高分子の重合及び一次構造の精密解析技術(精密重合)、弱い分子間の相
互作用を用いて個々の分子間の形態及び状態を制御し、特定の分子集合状態を形成させ
ることにより、新たな機能を発現する分子協調材料としてのメゾフェーズ材料(高配向
性高機能高分子フィルム)創製である。シミュレーションやモデリングは実施していな
16
い。2001 年から開始された精密高分子技術プロジェクトでは、液晶性高分子の自己集
合的ナノ秩序構造を集積させたメゾ秩序構造を散逸性拡張させたマクロ秩序構造の形成
技術等の開発を行う。
スーパーメタルプロジェクトでは結晶粒の微細化によって、鉄系及び Al 系のメゾス
コピック組織制御材料の創製を行った。ナノメタルプロジェクトでは、ナノクラスタの
形態・分布状態を制御すること等で飛躍的に優れた特性を狙うが、組織予測が可能なシ
ミュレーションプログラムも開発する。
アトムテクノロジープロジェクトにおいては、第一原理計算によるコンピュータシミ
ュレーションも 4 つの重点研究の一つとして寺倉をリーダーとして実施され、原子・分
子動的解析シミュレータ「STATE」が開発され、シリコン表面の酸化プロセスの解析 30),31)
や AFM のミクロ理論構築
32) 等に使用し、2,000
原子からなる系の第一原理計算に成功
した。また経験的手法を導入したハイブリッドシミュレータでは 10 万原子からなる
AFM 探針の解析に成功した。
シナジーセラミックスプロジェクトにおいては、均質化法と重ね合わせ法によるミク
ロ・マクロ解析ソフトを開発し、構造物においても結晶粒子レベルの微構造情報を反映
してマクロ応力解析を可能にした。これにより、不均質なミクロ構造と亀裂などの局所
的不均質部の同時解析、非一様場の応力解析(複雑な気孔形態を有する多孔体の三次元
弾性解析)を行った。
ナノテクノロジープログラムの「材料技術の知識の構造化」プロジェクトでは、材料
を限定せずにプロセス・構造・機能及びそれらの連関という観点から、データベース及
びモデリング、並びにこれらを実装したプラットフォームの開発を行うことによって材
料技術の知識を構造化し、材料開発の基盤として利用できるように構築するとしている。
以上のプロジェクトを図 3-1 に示したが、本プロジェクトと内容が重なるものはない。
95
96
97
98
99 2000 01
02
03
04
05
06
07
高機能材料設計プラットフォームの研究開発
(通産省大学連携型産業科学技術研究開発プロジェクト)
物質・材料設計のための仮想実験システム
仮想実験技術を活用した材料設計統合システムの開発
(科学技術振興調整費)
(ITBLプロジェクト)
物質設計と反応制御の分子物理化学
(科学研究費補助金特定領域研究(A))
化学反応シミュレータ技術の調査研究(NEDO先導調査研究)
大規模汎用分子動力学計算に関するソフトウェア開発
(通産省工技院境際特別研究)
独創的高機能材料創成技術(通産省産業技術基盤研究開発プロジェクト)
精密高分子技術プロジェクト(01~07)
(経済産業省ナノテクノロジープログラム)
原子・分子極限操作技術(アトムテクノロジー)(92~01)
(通産省産業技術基盤研究開発プロジェクト)
ジナジーセラミックス(第Ⅱ期)(通産省産業技術基盤研究開発プロジェクト)
スーパーメタル
ナノメタル(01~07)
(通産省産業技術基盤研究開発プロジェクト) (経済産業省ナノテクノロジープログラム)
材料技術の知識の構造化
(経済産業省ナノテクノロジープログラム)
図 3- 1
日本における「計算化学」関連プロジェクト
17
3.2
欧米における関連プロジェクトの動向
Polymer に関してメソスケールでのシミュレーションを行っているプロジェクトにつ
いてインターネットを中心に調査した。欧州では次の 2 つのプロジェクトが実施された。
①Foresight Challenge Programme:“Modelling Polymers”
University of Cambridge の Materials Science & Metallurgy の Polymer Group
が University of Leeds と 7 つの企業とが実施している(7 企業のうち 5 企業がポリマ
ー関連企業(Courtaulds、ICI、London International Group、TWI、Unilever)、2
つがソフトウェア企業(Molecular Simulations Ltd、Oxford Materials)である)。
Polymer Group は A. Windle の下で他に Cavendish の Particle Flow Modeling
Group の J. Melrose が参加し、Leeds 大では T. Mcleish と O. Harlen(Physics
Department)及び G. Davise(Polymer Science and Technology)が加わっている。
3 年間のプロジェクトであり、ソフトウェアを直ちに開発して参加企業の個々の問題
解決に資するとともに、世界中に市販する。
モデリングは既に確立しているマクロレベルの連続体モデルと分子レベルの間を埋
めるメソスケールのモデル化に焦点をあて、モデルの階層性の確立が主とした目的で
あるとしている。
Fund は EPSRC(The Engineering and Physical Sciences Research Council)と
DTI(The Department of Trade and Industry)から出されている($3M)。
②Esprit Project:“MesoDyn”
1997 年 1 月に開始し、2000 年までの EU のプロジェクトで BASF をリーダーとす
る IBM、Norsk、Hydro、Shell Chemicals の化学企業と、ソフトウェア企業 Molecular
Simulations Inc. が 参 加 し 、 大 学 で は University of Groningen が 加 わ っ て い た
($1.5M)。このプロジェクトも、複雑な工業的高分子液体のメソスケールの化学光学
のための新しいモデルとソフトを開発して、ミクロとマクロのモデリングの Gap の橋
渡しをすることが目的である。モデル化すべき基本プロセスは、境界条件の影響下に
ある流体力学的な相互作用と反応−拡散現象を含む、複雑高分子液体のミクロ相分離
ダイナミクスであるとした。一般化された反応−拡散−対流モデルはカップリングし
た非線型で確率論的微分一代方程式であり、大規模並列計算機によって数値的に解か
なければならない。
ソフトウェア開発がプロジェクトになるのは稀なことであり、今回の調査ではこの
2 つのプロジェクトしか見出すことができなかった。これらは両方のプロジェクトに
Molecular Simulations Inc.が加わっていることから、結局 MSI 社(現在社名変更し
てアクセルリス社(Accelrys Inc.))がソフトウェアを市販している。既に市販されて
いる Material Studio に「DPD」として、Cerius2 に「MesoDyn」として追加されて
いる。
アメリカにおいては、高分子関連での上記のようなプロジェクトはなされていない。
この分野で遅れをとるのではないかとの危機感がある(H. Fraaije:http://simu.ulb.
ac.be/newsletters/newsletter.html)。
18
4.プロジェクト対象分野の研究動向
4.1
粗視化分子動力学の動向
計算機の中で原子を熱運動させて自然を再現し、解析する系の物性を観測する方法が
分子動力学であり、物性や動的挙動の解析に利用されている。分子動力学法では原子が
運動する力は原子間のポテンシャルから求めるが、原子の対の違いや電子分布の影響な
どは、すべてポテンシャルの違いで表現されることになる。高分子の分子動力学は 1980
年代に始まり、構造、ガラス転移点、弾性率、熱膨張率などが計算され、計算機の進歩
とともに解析の対象は広がってきた。
高分子の分子動力学(Molecular Dynamics, MD)シミュレーションを原子レベルで
行う場合、計算量が膨大になるので取り扱い可能な高分子の分子量は限られたものにな
ってしまう。そこで数原子または数∼数十モノマー単位で一つの構成単位を考え、その
単位が繋がった鎖を対象として、その運動をシミュレートすることが考えられる。この
手法を“粗視化”(Coarse-graining)と称する。最も原子レベルに近い粗視化はメチレ
ン基(CH2)を 1 つの球と見なす UA(United-Atom)モデルで、これに対し原子レベ
ルのものは EA(Explicit-Atom)モデルと呼ぶ。さらに粗視化を進めたモデルとして、
図 4-1 33)の(b)に示されるようなミクロレベル(原子レベル、Atoministic level)の形
状、排除体積、フレキシビリティーをできる限り忠実に再現しようとするモデルや、(c)
に示される質点がバネで繋がれた Beads-spring モデルがある。これらのモデルはシミ
ュレーションの目的に応じて使い分けられ、多くの研究がなされている。
図 4-1
粗視化分子動力学モデルの例
Cummings34)は、分子モデリングの方法を最も詳細なレベルの電子状態/量子力学レ
ベルから、化学プラントの設計計算を行うマクロレベルまでの各段階のモデルの関係を
図 4-2 のように表した。粗視化を進めることによってメソ領域のシミュレーションが行
なわれることが示されている。
19
図 4-2
Kremer ら
分子モデリングの方法
10)は、粗視化は次のような段階を経てなされていているとしている。
①粗視化の程度と beads の位置を原子の関係で定める。
②鎖(chain)内と鎖間のポテンシャルの形を選定する(必ずしも分布から直接導出
されない)。
③被結合間の相互作用を決める自由なパラメータを最適化する(パラメータ最適化)。
①と②を決めて③の実行をいかに組織的に自動的に行うかが研究の中心になる。図
4-3 は 2%PAA(polyacrylic acid)の Na 塩水溶液の構造について調べた例である。23
モノマーからなるオリゴマー(3,200 の水分子で水和されている)の atoministic と粗視
化モデルのマッピングである。粗視化は 1 モノマーの 8 個の原子をその質量中心に bead
とした。このモデルを用いてパラメータ最適化を行い、PAA のもっと長い鎖について動
的 光 散 乱 か ら の 弾 性 率 に つ い て 、 実 験 と 比 較 し て 図 4-4 に 示 し た 。 こ の 結 果 は
atoministic model から発展した粗視化モデルが PAA の特性を良く保持していることを
表わしており、このアプローチには汎用性があるとしている。
20
図 4-3
図 4-4
2%PAA Na 溶液のミクロ、メソモデルのマッピング
水溶液中の PAA の流体力学的半径と分子量の関係
(粗視化モデルと実験値の比較)
また Kremer ら
35)は、線状融解高分子の
beads-spring モデルの分子動力学シミュレ
ーションを行った。モノマー数 5∼400 に対して絡み合い長さは約 35 である。Rouse
model は絡み合い長さより小さい短鎖については良く合い、長鎖の動力学は Reptation
model に良く合うことが示された。
なお、高分子の特性は Flory36)に代表されるように、当初は統計力学を用いて解析さ
れてきた。確率的手法であるモンテカルロ法も高分子のシミュレーションに威力を発揮
する。全部を厳密に計算することが困難な場合に代表的な状態を上手くサンプリングし
て必要な量を概算することができる
を行った
37) 。高須らは
Sticker ポリマーのシミュレーション
38)。モンテカルロ法は、分子動力学計算を補う手法としても活用されている。
以下では最近の粗視化分子動力学の動向をトピックス的に紹介する。
J. Curro 39)らは CH2 が 24 と 66 個の鎖を持つポリエチレンの濃厚流体について、MD
を実行した。モデルは beads-spring モデルや、より現実的なもの等を用いて自己無撞着
PRISM 理論(polymer reference interaction site model)と比較した。
PRISM 理論に直接相関関数 C(r)を付け加えると MD と非常に良く一致することが
見出された。
21
A. Malevanets ら
40)は、溶質−溶質及び溶質−触媒間相互作用の
MD と溶媒−溶媒相
互作用のメソスケールでの扱いとを結合させたハイブリッド MD を開発し、メソスケー
ル溶媒中でのナノコロイド粒子のブラウン運動及び濃厚ナノコロイド懸濁液に適用した。
M. Meyer ら
41) は、複雑な分子のメソスコピックモデルを構築するための粗視化法に
ついて検討した。MD シミュレーションでの原子数は出来るだけ少なくするが、原物質
の諸特性は出来るだけ保持するような工夫を考えた。実験や原子シミュレーションから
構造特性を求める非結合相互パラメータを導出する際に、シンプレックス法を用いて自
動的に最適化し、どのような構造と動力学特性の組み合わせを含ませることができる目
標関数としての動径分布関数に適合させる方法である。ジフェニルカーボネート、テト
ラヒドロフラン、ポリイソプレピレンモノマー等に適用した。
R. Akkermans ら
42) は、融解高分子中の
1 個の高分子鎖を 1 個の 2 量体とみなす粗視
化法を示した。射影演算子公式を用い、この 2 量体に関する運動方程式を算出し、現れ
る種々の力を原子モデルシミュレーションから計算する。この手法の 2 量体以上に適用
を議論している。
以上、研究動向を見てきたがケースバイケースの扱いであり、組織的、汎用的な粗視
化法はまだない。本プロジェクトは atoministic な分子動力学では計算不可能な長時間
かつスケールの大きな分子運動を解析可能にする汎用性、拡張性を持ったエンジンを開
発するという野心的な計画であり、内外から大きな期待が寄せられている。
4.2
4.2.1
メソ領域シミュレーションの動向
高分子レオロジーシミュレーションの動向
高分子溶融体や溶液の粘弾性的性質は、時間的スケールの長い現象であるため、分子
動力学法で直接計算することは現在の計算機の能力では困難なので、分子運動をモデル
化して、粘弾性的挙動をシミュレートする方法がとられている。高分子溶融体中の分子
鎖の運動については Doi-Edwords の管模型
43) が出発点となっている。
de
Gennes44)のレ
プテーション理論を発展させたもので、このモデルでは、注目する分子は絡み合った周
りの分子によって形成される固定された管の中をレプテーション運動(管に沿っての一
時元拡散)し、徐々に古い管を抜けて新しい管に移行する。このモデルは応力緩和のダ
ンピングファンクションなどを正しく記述することが認められている。しかし、ずり粘
度の分子量依存性や、速いずり速度についての応力などについて説明困難な点もある。
本プロジェクトではこの管模型を基本として、チューブに沿っての分子鎖長のゆらぎ
の効果(Contour length fluctuation)と、絡み合いの相手の分子が運動することにより
絡み合い点が消えたり、生成したりする効果(Constraint release)の 2 つを取り入れ、
さらに任意の分子量分布が扱える確率論的シミュレーション手法を取る
22
45)(図
4-5)。
(a)Primitive スリップリンクの模式図
図 4-5
(b)スリップリンクの対応関係
(一部の対応関係のみ示した)
本プロジェクトのモデル
実用的に高分子においてレオロジーが問題となるのは、成形加工においてである。図
4-6 に川上から川下にわたる成形加工の対象領域を計算科学(技術)が扱うスケールの
関連を示す
46)。これから言えるのは、メソスコピックの技術が生産技術に生かされるた
めには、CAE 技術と結合しなければならないということである。高分子成形加工 CAE
においては流動解析や構造解析を行う場合に、材料モデルとして基本的に粘弾性構成方
程式を用いる必要が生じる。構成方程式は物体の各部における変形状態とそこに働く応
力との関係を表わしたものである。溶融高分子の粘弾性構成方程式としては、多くの研
究者により様々なモデルが提出されているが、すべての流動・変形様式を定量的に予測
する段階には至っていない。
表 4-1 に CAE に使用されている代表的粘弾性構成方程式を示す
図 4-6
工学的スケールと成形加工領域
23
47)。
表 4-1
CAE に使用される代表的粘弾性構成方程式
以下、粘弾性構成方程式の研究開発という観点から動向を見てみる
48)(図
4-7)。現在
CAE に用いられている粘弾性構成方程式は分子運動のみがモデル化され、分子構造の影
響は、間接的に非線型パラメータと緩和スペクトルで表現されているに過ぎない。現在
は Doi-Edwards(DE)モデルを拡張する方向の開発が主流となっている。
McLeish と Larson49)は、主鎖の両端に複数の腕を持った分子鎖に対して粘弾性構成
方程式(pom-pom モデル)を提案している。分子両端の房の緩和と伸び切り効果を考慮
した伸長モデル及び主鎖の配向モデルにより記述されている。このモデルにより分岐鎖
のレオロジー特性への影響を見積もることができるが、いくつかの欠点もあり、その改
良も行なわれている
50) 。この
pom-pom モデルは線状高分子に適用すると問題点が生ず
る。
線状高分子に対しては、DE モデルに主鎖の伸長による緩和、管空間が大変形下では
部 分 的 に 破 壊 さ れ る CCR ( Convective Constrain Release ) 効 果 を 取 り 入 れ た
Mead-Larson-Doi モデルが提案されている
51) 。
高速大変形領域における構成方程式として、Marrucci ら
52) によるモデルは微分型で
計算が比較的容易な形であり、様々なレオロジーを良く表現する。しかし、分岐構造の
24
効果は取り入れられていない
53) 。
微分型現象論的モデル
Year
1950
Convected Maxwell
model(1946)
線形粘弾性
Rouse(1953)
Zimm(1956)
擬網目モデル
Lodge
rubberlike
liquids(1956)
Convected Jeffreys
model(Oldryd-B)
(1950)
Oldroyd 8-constant
1960 model(1958)
記憶積分関数型モデル
Yamamoto
model(1956)
White-Metzner
model(1963)
1970
1980
1990
Rivlin-Sawyers model(1971)
Acierno,Mantia,
Marrucci
Titamanlio model
(1976)
Phan Thien &
Tanner model
(1977)
Gordon Schowalter(1972)
微分型
分子論的モデル
熱力学的モデル 積分型現象論的モデル
Leonov model
(1976)
FENE-P(
(1975)
)
Giesekus model
(1982)
Leonov (1995)
2000
基礎構成
理論
発展的構成
理論
各種モデル
図 4-7
増淵は Marrucci ら
る
54) と
非線形粘弾性
Kaya-Bernstein Kearsley
Zapas model(1962,1963)
CAEに利用
Reptation[de Genne]
(1971)
管モデル(分子論的)
Wagner model(1976)
Doi-Edwards model(1978)
PapanastasiouScriven-Macosko
model(1983)
Moore-Larson(1984)
Luo-Tanner model
(1988)
Feigel-Öttinger
model(1993)
Curtiss-Bird model(1981)
Currie(1982)
Larson model(1984)
(CLF,DTD,CCR)
Wagner-Schaeffer model (1992)
McLeish-Larson model (1998)
Mead-Larson-Doi model(1998)
CCR:Convected constraint release
DTD:Dynamics of tube dilution
CLF:Contour length fluctuation
粘弾性構成方程式の研究開発動向
NAPLES と呼ぶレオロジー予測シミュレータを開発してい
53)。
“超”粗視化を行い、高分子を絡み合い点間分子量程度の要素(チューブ要素)
に分割する。分割点が絡み合い点であり、そこでは他の分子と絡み合いを形成する。絡
み合いは、スリップリンクと呼ばれる束縛に置き換える。高分子はレプテーション運動
によってのみ絡み合いをはずすことが出来ると仮定する。高分子の運動はこのスリップ
リンクの運動とチューブ内部のモノマーの輸送により記述される(図 4-8)。
図 4-8
NAPLES 理論モデルの概念図
このシミュレーションは高速であり、数十万の分子量の高分子の 2,000 秒の計算を行
っている。多様な分岐構造を扱うことが可能で、絡み合いを“見る”ことが出来、レオ
ロジー予測が実験と良く一致し、構成方程式導出も近いとしている。
25
4.2.2
高分子材料構造・物性予測シミュレーションの動向
メソ領域は 10nm∼1,000nm にわたっており、この全体をカバーするシミュレーショ
ン方法は未だ存在しない。本プロジェクトにおいても、粗視化動力学∼動的平均場法∼
分散構造シミュレーションと 3 つの領域に分けてシミュレーションエンジンを構築して
いる。山本
55) は豊田中央研究所における自らの研究活動に基づいて、図
4-9 のようにま
とめている。山本が行なったメソ領域でのシミュレーションの方法は 2 つある。
領域
対象
ミクロ
メソ
原子・分子
大きさ 1nm
方法
分子集合体
粒子・凝集体
10nm
分子軌道法
(MO)
密度汎関数法
応用
マクロ
連続体
1,000nm
分子力学
(MM)
分子動力学
(MD)
動的平均場法
散逸粒子動力学法
(DPD)
mm
格子ボルツマン法
有限要素法
粒子シミュレーション法
有限体積法
電子状態・反応解析
メソ構造・物性予測
成形加工CAE
分子構造・分子運動予測
レオロジー特性予測
マクロ物性予測
図 4-9
メソ領域のシミュレーション方法と応用
1 つは粒子充填材料における粒子が形成するミクロ構造を予測するための計算手法
(粒子シミュレーション法
27 ))と散逸粒子動力学法(DPD
法)である。
粒子シミュレーション法は粒子を球の集合体としてモデル化し、隣接する球を引張
り・曲げ・ねじりの各変形を表わす 3 種類のバネで結合する。流体中における各球の運
動を計算することにより、粒子全体の運動を追跡する。流体力学的相互作用は粒子内と
粒子間に分けて考慮し、前者では各粒子を構成する球間の多体問題として流動性マトリ
ックスを計算することにより、各球が流体から受ける粘性力とトルクを求める。粒子間
の流体力学的相互作用については、潤滑近似を用いて近距離の相互作用のみを考慮する。
この方法を繊維及び板状粒子分散流体のミクロ構造とレオロジー特性の予測、射出成
形における充填材の運動解析に応用した。この方法はきわめてユニークであり、応用範
囲も広いと考えられる。適用のスケールとしては、メソ領域でもマクロに近い範囲であ
る。
もう 1 つの DPD 法は、燃料電池への応用が期待されている高分子電解質膜 Nafion の
構造解析に用いた
28)。
DPD(Dissipative Particle Dynamics)は、粗視化をすすめて原子の集団を 1 つの球
で表わし、粒子と粒子の間に散逸力、保存力、ランダム力を考慮して動力学計算を行な
う方法である。Nafion の場合、球 A は-CF2 CF2CF2CF2-、球 B は-OCF2 CF(CF3)O-、球
C は-CF2 CF2SO3H-に概ね相当する。各球はおおよそ 0.5nm である。DPD 法は、元々
26
Hoogerbrugge 56)らがその運動がある衝突・ルールで支配されるソフトな球(完全に固体
でも完全に液体でもない)についての流体力学的な新しいシミュレーションとして導入
されたが、beads-spring 型の粒子の導入により、高分子にも適用が試みられるようにな
った。その後 Unilever の研究者である Groot と Warren 57)によって、critical review が
行なわれ atomistic と mesoscopic simulation を繋ぐ橋として確立された。ソフトは EU
の Foresight Challenge プログラムで作成され
58)、
Accelrys
社の Materials Studio とし
て市販されている。マクロスコピックな流体力学(Navier-stokes 式)やミクロスコピ
ックな分子動力学との接続も開発された。
山本が挙げている格子ボルツマン法は、流体ミクロダイナミクスの統計量である粒子
速度分布関数の時間発展を数値解析することで、巨視的な流体運動に関する保存式の数
値解を求め、流れのシミュレーションを行なう方法である。
格子ボルツマン法はボルツマン方程式を基礎としており、ボルツマン方程式は統計力
学に基づいて導かれた粒子の集団運動を記述する一般性の高い方程式である。クヌッセ
ン数が十分小さい極限でボルツマン方程式の巨視的な発展方程式は、流体力学で用いら
れる Navier-stokes 方程式となる。このことからも格子ボルツマン法が様々な流体運動
の解析に適用できる可能性があると考えられる。また、分子動力学等のミクロスケール
における現象をモデルに反映し易いという特徴がある。また、並列処理にも適している。
現在流体現象シミュレーション分野で応用されており、水−油二相流動、沸騰二相流動、
乱流、複雑構造物内流れなどが例として挙げられる。
高分子混合系での相分離構造はメソスコピック領域であり、相溶化剤やフィラーが添
加された系や反応を伴う系、塗布膜などでは分子構造や境界条件に応じた複雑なドメイ
ン構造を示す。これらの構造の時間・空間スケールはモノマー単位の大きさや運動のス
ケールよりも十分に大きいため、ミクロなモデル化の粗視化よりも統計力学的手法によ
る粗視化モデル−平均場近似−が有効である
59)。これは高分子のセグメントの空間分布
を仮定し、その分布が作る平均場の中での一本鎖のセグメント分布をシュレディンガー
型の発展方程式を解くことにより求め、これが最後に仮定したセグメント分布に一致す
るまで計算を進める。これは自己無撞着(self-consistent)という。この方法では図 4-10
(a)に示すポリマーを、(b)に示す長さ b の平均的な場の中にあるセグメントが、N
個連なって粗視化された鎖のモデルとして表わす。ここでのポイントは、平均場近似に
より高分子を独立したセグメントの連結鎖として統計的な扱える点と、それ以外の分子
間相互作用はセグメント間の Flory のχパラメータに置き換える点である。最近になっ
てさらに非平衡状態にも拡張できる動的平均場法も開発され
60)、自己組織化構造の形成
過程、界面吸着などのダイナミクスの研究にも適用できるようになってきた。平均場近
似で化学ポテンシャルを求め、その勾配に従ってセグメント分布を時間発展させる方法
であり、高分子のアーキテクチャと混合組成を与えてやれば、相分離の結果生じる自己
組織化の過程を予測することが可能となる
61) 。
27
図 4-10
平均場法における粗視化モデル
以上のように、高分子を対象としたメソスケールシミュレーションは動的平均場法と
DPD 法を中心に研究が展開されている。マクロスケールに近い領域では、汎用的なシミ
ュレーションの試みは本プロジェクトを除くと殆ど見られない状況である。
4.3
シミュレーション統合技術の動向
本節では本プロジェクトの各スケールに応じた階層のシミュレータ(エンジン)が動
作する環境(プラットフォーム)と、各階層を行き来するシームレスズーミングに関わ
る技術の動向について述べる。
ズーミング技術について見ると、大気汚染拡散モデル
62)や地下水流モデル 63) といった
大域シミュレーションにおいて一部を詳細に計算し、精密な結果を得るためにズームが
行なわれている。
NASA で行なわれている高エネルギー効率エンジン開発のための「推進システム数値
シミュレーションプロジェクト(NPSS)」64),65)は、NASA だけでなく工業界、学会から
も参加して実施されており、次の原則で運営されるユーザフレンドリーなシステムであ
る。①データ交換の標準化、②オブジェクト指向プログラムによりモジュール化された
フレキシブルなプログラミング、③必要性に応じたマルチレベルの忠実度(fidelity)、
④学際的なカップリング化された技術開発、⑤並列分散処理。ズーミング方式は、異な
る水準の忠実度のものを単一のシミュレータ内でモデル化可能とする手法をとる。ズー
ミングの対象はターボ推進システムのファンコンポーネントであり、他が一次元である
のに対して三次元である。
計算工学の分野ではマルチスチールモデリング・マルチスケール解析という手法があ
る。寺田ら
66) は、均質化法(通常のマクロスケールに加え、微視領域における材料の非
均質化さを観察することの出来るミクロスケールを導入し、両スケールに対応する 2 変
数の境界値問題を解く数学理論)をセル構造体のような材料に対して適用する非線型マ
ルチスケールモデリング手法の確定を目指している。
前記の例は構造解析であるが、材料科学においてもマルチスケールモデリングという
28
表現がある。Nieminen67) は異なる長さと時間のスケールを橋渡しして、より一般的な
frame work を作り出すことを“multiscale”modeling と呼んでいる。そして問題は、
異なる領域を適切に“hand-shaking”して情報を最適に運ぶことであるとしている。2
つのやり方があり、1 つは同時進行的な(concurrent)アプローチであり、もう 1 つは
階層的(hierarchical)アプローチである。前者は全ての領域に当てはまる universal
description から出発して、1 つのスケールの結果を出すことであり魅力的であるが、ま
だ発展中であるということで紹介されていない。階層的なアプローチについては密度汎
関数、分子動力学、速度論的モンテカルロ法、連続体方程式と分子動力学の結びつきに
つ い て 述 べ 、 自 ら の 属 す る 研 究 所 ( Labolatory of Physics at Helsinki Univ. of
Technology)で行なわれた実例を述べた。
ここで触れられた分子動力学と連続体力学の結合については R. E. Rudd ら
68)の研究
である。ミクロンスケールの弾性体力学(クラックの伝搬やデラミネーション)に統計
的粗視化を行なった分子動力学を適用した。そのメッシュサイズを原子スケールまで小
さくすると MD と一致する。このことは長さスケールを連続化できたことになる。
このような approach は中野
69)によって自らの研究を含め紹介されている。中野は大
規模並列計算機を利用したナノ構造の原子論的シミュレーションを行なっている。当初
は MD 法のために、セラミックスや半導体などについて多体的原子間相互作用ポテンシ
ャルを開発した。長距離の相互作用をより大きなクラスターを使って計算する高速多重
極法と、計算時間ステップも距離に応じたものを使用する多重時間スケール法とを組み
合わせたものである。さらに並列計算技術やデータ圧縮・マイニング技術を用いた。こ
れらの方法により、大規模シミュレーションを可能にし、セラミックスの破壊、強靭な
ナノ・セラミックスの設計などを行なってきている。
計算化学の分野で初めてアプリケーションの実行環境と開発環境を一致させたのが、
カナダの CCG 社が開発した MOE(Molecular Operating Environment)である。独自
に開発した多機能言語 SVL(Scientific Vector Language)を核として設計されている。
SVL はアプリケーションから GUI まで一貫してプログラミングすることが可能である
上にコンパクトなコーディングでユーザ独自のアルゴリズムの組み込みや、カスタマイ
ズが容易であるという特徴がある。また、ワークステーションからパソコンまで様々な
ハードウェアで同じシミュレーション環境が提供され、既存プログラムとの連携も容易
である。これは一種のプラットフォームと見ることが可能である。現在は MM、QSAR、
ドラッグデザイン、蛋白質モデリングなどのモジュールが標準搭載されている
(http://www.rsi.co.jp/kagaku/cs/ccg)。
29
5.市販計算化学ソフトウェアの現状
5.1
国内外市販ソフトウェア
現在の主な計算化学の手法である分子軌道法(MO)計算、分子動力学(MD)計算、
モンテカルロ法(MC)シミュレーションなどを行うソフトウェアは、市販、公開を含
めて非常に多い。その一部は、図 2‐11 に掲載したが、本調査においては、触れない。
それらに関する情報は、日本コンピュータ学会のホームページのリンク集
(http://www.sccj.net/link/index.htm)に詳しい。
3.2 で述べたように高分子のような時間的にも空間的にも広範囲のメソスケールシミ
ュレーションソフトは Accelrys 社のソフトウェアいか存在しないし、市販開始して間も
ない。また、OCTA は、J-OCTA として日本総研㈱から市販が開始されている。
5.2
OCTA と類似市販ソフトウェアの比較
表 5-1 に OCTA と Accelrys 社のソフトの比較を示したが、扱える範囲は OCTA がは
るかに多い。両方ともに普及はこれからだが、使い易さも問題となってくる。OCTA は
日本総研(株)が J-OCTA として販売を開始している。
表 5- 1
ソフト名
OCTA
(GOURMET)
Materials
Studio
Cerius2
メソスケールシミュレーションソフトの比較
COGNAC
理論・範囲など
粗視化理論
すべてのシミュレータへ
ズーミング
PASTA
Dual-slip link model
COGNAC へズーミング
SUSHI
動的平均場理論
COGNAC、MUFFIN へ
ズーミング
MUFFIN
FDM、FEM 等
すべてのシミュレータに
ズーミング可能
DPD
DPD 法
(散逸粒子動力学法)
MesoDyn
dynamic variant of
mean-field density
functional theory
30
テーマ例
溶融ポリマーの固体壁間ずり流動
高分子ネットワーク形成
高分子ブレンドの界面
半結晶ラメラ
連鎖及び星状鎖の単分散あるいは
多分散高分子のレオロジー
(ずり、伸張粘度、緩和弾性率)
壁にクラフトした高分子の状態
ミセルの形成
ブロックコポリマーの構造、相図
強電解質、テーパードポリマー
動的シミュレーション、拡散
反応誘起分離
多相高分子流体シミュレータ
電解質流体シミュレータ
電気化学チップ流体シミュレータ
多相線形弾性シミュレータ
光透過性シミュレータ
レオロジー
相分離
拡散
ミセル形成
ポリマーブレンド
ブロックコポリマー溶融体
逆ミセル形成
レオロジー
ラテックス種形成
5.3
計算化学ソフトウェアの市場
コンピュータケミストリーシステム(CCS)は、医薬・農薬、遺伝子・バイオ、ポリ
マー、触媒、電子材料など広く、物質設計・材料設計を支援するソフトウェア技術であ
り、分子モデリング、データベース、インフォーマティクスなどの様々のシステム群か
ら構成されている。最近ではゲノム創薬をターゲットとしたバイオインフォーマティク
ス分野で急激な成長を遂げている。その市場は「CCS news」の推定によれば 2001 年
度で 309 億円である(図 5-1、http://homepage2.nifty.com/ccsnews2/2001/2q/2001_2Q
ccshon.htm)。
化学工業日報社の推定によると、2000 年において 266 億円で前年に対して 23%程度
の成長となっている。ハードを入れるとバイオ関係だけで 1,000 億円に達すると言われ
ている。
図 5- 1
国内 CCS 市場推移
31
6.プロジェクト対象技術分野のマクロ動向
6.1
論文発表動向
科学技術文献 DB(JOIS)により、各々のメソシミュレーションプログラムに対応さ
せて、1990 年∼2001 年の年毎の発表論文件数を検索してグラフとして示す。
図 6-1 に高分子対して分子動力学を適用している論文の動向を示す(検索式=高分子
×分子動力学(×は AND を示す))。
1990 年代の始めから 95 年までに 2 倍以上に増加し 97 年まで低下したが、98 年に増
加に転じ、3 倍弱となっている。この分野は活発な研究対象となっている。
250
200
論 150
文
数 100
50
0
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
年度
図 6-1
高分子を扱った分子動力学論文数の推移
図 6-2 は粗視化手法を導入した分子動力学の論文数の推移である。1996 年以降に増加
している(検索式=分子動力学×粗視化)。
15
論 10
文
数 5
0
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
年度
図 6-2
粗視化を導入した分子動力学論文数の推移
図 6-3 はメソ領域の解析に分子動力学を用いた論文数を示す(検索式=(メソスコピ
ック系+メソスケール+メソ相+メソ構造)×分子動力学(+は OR を示す))。1992
年から急激に増加し、一時停滞したが最近増加している。
32
80
60
論
文 40
数
20
0
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
年度
図 6-3
メソ領域解析に分子動力学を導入した論文数の推移
図 6-4 にはレオロジーと分子動力学とを結びつけた論文(検索式=(レオロジー+粘
弾性+流動解析×高分子)×(分子動力学+分子モデル+分子模型))及び高分子解析に
平均場理論を導入した論文(検索式=高分子解析×平均場理論)の件数推移を示した。
レオロジーは 90 年代の後半から増加し、若干減りながらも数が多いが、平均場理論は
96 年に最高となり、その後半減に近くなっている。
50
40
論 30
文
数 20
10
0
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
年度
レオロジー
図 6- 4
平均場理論
レオロジーに分子動力学、高分子に平均場理論を導入した論文数の推移
図 6-5 にはマクロに近い領域をシミュレートしたブレンド・相分離、電解質流体、弾
性、ゲルについての論文数推移を合わせて示した。検索式をそれぞれ以下に示す。
・高分子×(ブレンド+多相+相分離+混合流体)×(流動+拡散+輸送)
・
(電解質溶液+電解質流体)×(イオン分率+電気二重層+拡散流動)×(シミュレ
ータ+シミュレーション+モデリング)
・高分子×弾性×(シミュレータ+シミュレーション+モデリング)
・高分子×ゲル×(体積相転移+変形ダイナミクス+膨潤+収縮)×(シミュレータ
+シミュレーション+モデリング)
ブレンド・相分離については、増減はあるが全体としても増加基調である。電解質流
体は 90 年代前半で増加したが後半で減じ、一定数になっている。弾性も全体として増
加している。ゲルは数は少ないが、やや増加傾向である。
33
90
80
70
60
論
50
文
40
数
30
20
10
0
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
年度
ブレンド・相分離
図 6-5
電解質流体
弾性
ゲル
ブレンド・相分離、電解質流体、弾性、ゲルのシミュレーションの
論文件数の推移
以上、全体としてみると、本プロジェクト対象分野は活発で研究者の関心の対象とな
っていることが言える。
表 6-1 に、本プロジェクトの成果として挙げられた論文のうち、英文誌に掲載された
論文(国際会議を除く)の被引用解析を試みた(ISI が作成している Sci Search を用い
た)。国外掲載雑誌の impact factor にほぼ見合った引用がなされているが、本プロジェ
クト以前の土井論文(No.12)に及ばない。今後に期待したい。
34
表 6-1
No
1
Title
Dynamic Density
Functional
Approach to
Phase Separation
Dynamics of
Polymer Systems
2 Micellar formation
in triblock
copolymer
solutions
3 Molecular
Dynamics
Simulation of
Entangled
Polymers in Shear
Flow
4 Mean-field
approach to
polymeric
microemultions
5 Model for phase
transitions in the
solid phases of
Langmuir
monolayers
6 Molecular
Dynamics Study
of Polymer Melt
Confined between
Walls
7 Dynamic Density
Functional Study
on the Structure
of Thin Polymer
Blend Films with a
Free Surface
8 Molecular
=6 Dynamics Study
of Polymer Melt
Confined between
Walls
9 Derivation of
Coarse-Grained
Potential for
Polyethylene
First
Author
本プロジェクト成果論文の被引用分析
Year
Journal
Kawakatsu
-T
2000 Int J Mod
Phys C
Monzen-M
2000 Comput
Theor
Polym S
Aoyagi-T
Citation
1999
-
2000
2001
Impact Factor
2002 Total 1999 2000 2001 Ave.
0
1 0.898 0.95 0.728 0.886
0
1
-
0
2
1
3
0.91 0.95 1.044 0.836
2000 Comput
Theor
Polym S
-
1
1
0
2
0.91 0.95 1.044 0.836
Kodama-H
2001 Europhys
Lett
-
-
0
1
1 2.214 2.23 2.304 2.227
Roan-JR
2001 J Phys
Soc Jpn
-
-
0
0
0 2.083 1.94 1.628 1.998
Aoyagi-T
2001 J Chem
Phys
-
-
0
3
3 3.289
3.3 3.147 3.221
Morita-H
2001 Macromol
ecules
-
-
0
1
1 3.534
3.7 3.733 3.601
Aoyagi-T
2001 J Chem
Phys
-
-
0
3
3 3.289
3.3 3.147 3.221
FukunagaH
2001 Comput
Phys
Commun
-
-
0
1
1
35
1.52 1.09 1.082 1.249
No
Title
First
Author
Year
10 Effects of A-B
Nose-T
Block Copolymer
Additives in
Interfacial Tension
of A/B Polymer
Blends near the
Critical
Temperature:
Comparison of
Mean-field
Calculations with
Experiments
11 Prediction of the Tasaki-H
reological
properties of
polymers using a
stochastic
simulation
12 A Moleculer
Mead-DW
Theory for Fast
Flows of Entagled
Polymers
6.2
Journal
2001 Macromol
Chem
Phys
2001 Comput
Phys
Commun
1998 Macromol
ecules
Citation
1999
-
2000
-
-
-
12
12
2001
0
Impact Factor
2002 Total 1999 2000 2001 Ave.
0
0 1.539 1.67 1.629 1.626
0
0
22
7
0
1.52 1.09 1.082 1.249
53 3.534
3.7 3.733 3.601
特許動向
本プロジェクトでは特許については申請しない方針であるが、このような分子の挙動
まで取り入れたシミュレーションを用いて、特許の取得がどのようになされているかを
調査した。
IPDL を用いて IPC で無機化学、有機化学、有機高分子化合物、染料・ペイント・接
着剤、生化学に限定し、フリーワードで発明の名称と請求範囲にフリーキーワードでシ
ミュレーション、モデリング、分子動力学、モンテカルロ法、分子軌道法、計算化学、
計算機科学、密度汎関(函)数法が 1 つでも含まれている公開特許を検索し、件数の年
次推移を図 6-6 に示した。
2002 年から急激に増加し、直近で急激に増加している。内容を見てみると高分子関係
は 10 件に満たないが生化学関係が多く、それらは外国からの出願が圧倒的である。
八尾
70)によれば、近年計算科学で導出された特性値(パラメータ)を特許に記載して
いるものが増加しており、さらに計算科学を用いて理論的に解明した機能発現メカニズ
ムによるクレームの成立を目指す動きもある。触媒分野では計算化学を利用したパラメ
ータ特許は 1996 年ぐらいから出願が増加しているが、高分子関連はまだ少ない。また
高分子関連では計算ソフトそのものを取り扱ったものもある。
36
35
30
25
論
20
文
数 15
10
5
0
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
年度
図 6-6
分子モデリングに関わる特許の出願件数推移
37
2001
2002
1) 「高機能材料設計プラットフォームの研究開発」説明資料, NEDO ナノテクノロジ
ー・材料技術開発室 (2002)
2) プラスチックス, 53, No.6, 18P (2002)
3) 第 16 期日本学術会議化学研究連絡委員会・材料工学研究連絡委員会「高分子の科
学・技術の今世紀における進展と現状」に関する調査報告書 (1966)
4) 化学経済研究所創立 40 周年記念特別調査「化学工業−戦後半世紀と 21 世紀展望」,
P501 (1996)
5) 三浦昭:高分子, 50, P19 (2001)
6) 日本学術会議(化研連, 材研連)報告:高分子科学研究体制の整備・構築について
(2000 年 5 月)
7) 総務省統計局:平成 13 年科学技術研究調査報告 (2002 年 3 月)
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9) P. T. Cummings:WTEC Panel Report on Applications of Molecular and
Materials Modeling, Chapter3, P28 (2002)
10) K. Kremer, F. Müller-Pathe:MRS Bulletin, March, 2001, 206P (2001)
11) 松岡高明:豊田中央研究所 R&D レビュー, 29, 3P (1994)
12) CAC フォーラムホームページ:http://www.quebec.tutkie.tut.ac.jp/cac/
13) 荒川正幹, 木村敏郎, 船津公人, 神村基和, 西村竜一:第 21 回情報科学討論会講演
要旨集, 150P (1998)
14) 西村竜一:CICSJ Bulletin, 17, 18P (1999)
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(1999)
16) 船津公人:化学工業, 2002 年 4 月号, 37P (2002)
17) 船津公人, 佐々木慎一:AIPHOS−コンピュータによる有機合成経路探索−, 共立
出版 (1994)
18) 長阪匡介:CICSJ Bulletin, 17, 12P (1999)
19) http://triton.tokyo.jst.go.jp/
20) 前田知子:高分子, 51, 442 (2002)
21) 岡崎慶二:CICSJ Bulletin, 17, 2P (1999)
22) 吉田元二, 善甫康成ら:住友化学, 1994-Ⅱ, 50P (1994)
23) 山本智:豊田中央研究所 R&D レビュー, 29, 19P (1994)
24) 井上良徳:豊田中央研究所 R&D レビュー, 29, 29P (1994)
25) 兵頭志明:豊田中央研究所 R&D レビュー, 29, 50P (1994)
26) 兵頭志明:豊田中央研究所 R&D レビュー, 35, 53P (2000)
27) 山本智:豊田中央研究所レビュー, 33, 63P (1998)
28) 山本智, 兵頭志明:高分子学会予稿集, 50, 2336 (2001);51, 637 (2002)
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11631P(1999)
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