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小 脳の神経回路の補足説明
⼩脳⽪質の神経回路の運動制御における機能的意義 下オリーブ核ニューロンの軸索は登上線維と呼ばれ1つの Purkinje 細胞への⼊ ⼒の特異性が⾼い。 (ただし頭尻軸に沿っては複数の Purkinje 細胞に投射するこ とが報告されている)同じ下オリーブ核ニューロンからは⼩脳深部核への投射 がある。つまり、同じ出⼒情報が Purkinje 細胞を経由する間接的なものと、直 接的なものとの2つによって⼩脳深部核に⼊るが、Purkinje 細胞からの⼊⼒は GABA 作動性であり、⼩脳深部核ニューロンを抑制する。よって、下オリーブ 核から⼩脳深部核への⼊⼒は直接の興奮性⼊⼒と Purkinje 細胞を経由する抑制 性⼊⼒からなる。下オリーブ核から Purkinje 細胞への⼊⼒の⽣理学的解析は多 いが、⼩脳深部核への⼊⼒については⼗分には調べられていない。しかし基本的 に情報を伝達するのがニューロンの役割であり、それを抑えるのはニューロン 機能の⼆次的制御といえる。 この神経回路が意味するところは、⼩脳深部核ニューロンへの苔状線維から の興奮性⼊⼒が、この下オリーブ核からの直接および間接的な⼩脳深部核への ⼊⼒による平衡状態を超えない場合、⼩脳からの出⼒とならないことを意味す る。実際には登上線維からの⼊⼒は苔状線維の⼊⼒に⽐べて、とても少ないの で、普段の歩⾏などの運動では⼩脳の神経回路は苔状線維からの⼊⼒が主であ ると考えられる。 オリーブ核から⼩脳への投射の役割は、⼤脳⽪質や⾚核などの網様系からの ⼊⼒が⼩脳の働きを安定させる役割を持っていると考えられる。⼀⽅、苔状線維 は橋核を経由した⼤脳⽪質からの情報や脊髄を上⾏してきた情報の⼩脳顆粒細 胞に対して極めて多数の投射よりなる。この投射はさらに⼩脳顆粒細胞の樹状 突起である平衡線維となって、1 つのプルキンエ細胞に対し 200,000 本以上の平 ⾏線維(つまり⼆⼗万個以上の顆粒細胞からの興奮性⼊⼒)という数多く⼊⼒が Purkinje 細胞にシナプスを作り⾼頻度の⼊⼒を与えるが、1つ1つの⼊⼒は⼩ さい。その結果、⼩脳⽪質全体としては茫洋とした⼊⼒を苔状線維の集団から受 けることになる。 (しかし、平⾏線維から Purkinje 細胞への⼊⼒情報は両者の間 の抑制性ニューロンの働きによって側⽅抑制が働き、実際にある程度の特異性 があることが⽰唆されている。 ) 苔状線維からの⼊⼒が Purkinje 細胞に⾄る神経回路には、ゴルジ細胞による ⽷球体での平⾏線維からの反回⼊⼒による情報の修飾(抑制)、星状細胞、籠状 細胞による平⾏線維から Purkinje 細胞へのそれぞれ、樹状突起と軸索起始部へ の⼊⼒の修飾(抑制)を含んでいる。苔状線維からの⼊⼒は⾼頻度で Purkinje 細 胞の活動に影響を与えるが、この情報に誤差があるときには、Purkinje 細胞の興 奮は⼩脳深部核への⼊⼒に影響を与えず、結果的に⼩脳深部核からの興奮性出 ⼒が起き、企画されている運動を補正するために運動企画は⼤脳⽪質や⾚核な どへ戻される。 登上線維と苔状線維を同時に強烈に刺激すると、Purkinje 細胞は⻑期抑制を 起こし、新たな⼊⼒に対して反応を⽰さなくなる。これは運動記憶の基盤となる 細胞レベルでの現象と考えられており LTD と呼ばれている。苔状線維と登状線 維から同じ情報が⼩脳へ⼊⼒する場合は「正しい運動」として⼩脳に記憶として 蓄えられ、⼤脳⽪質からの出⼒や中枢神経系のその他の場所からの⼩脳への⼊ ⼒が「正しい運動」を表現している限りは⼩脳(深部核)からの出⼒は起こらな い。重要なのは、⼩脳への⼊⼒が、ここから逸脱した場合である。そのようなこ とは常に起こりうる。ここを補正して、間違った⼤脳⽪質に由来する運動指令や 運動を⾏ったという末梢での結果や脊髄前⾓運動ニューロンからの反回性の⼩ 脳へ戻って来る情報などの上⾏性情報は⼩脳の運動記憶に照らし合わせ、 Purkinje 細胞からの⼊⼒よりも苔状線維から直接に⼊⼒する経路で⼩脳深部核 の興奮を起こさせる。⼩脳深部核からの情報は視床 VL 核を経由して⼤脳⽪質 へ戻されたり、⾚核などの網様体へと送られ、それらの脳部位からの運動コマン ドが補正され、最終的には脊髄前⾓などにある運動ニューロンの活性に影響を 与え円滑な運動が起こると考えられる。