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労 働 と 健 康 - 15年戦争と日本の医学医療研究会

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労 働 と 健 康 - 15年戦争と日本の医学医療研究会
労 働 と 健 康
第14号1976.2.1発行
特集“労基法改悪をめぐって”
論文
1.労基法改悪と我々の法制化要求………
大阪磯対協 下 仲 英 夫…………
2.有給安全学習休暇を与えよ………法政大学講師
1
佐 藤 一 子……………
5
3.チェンノーを捨てた国有林労働者……全林野労働組合大阪地本 金 銅 正 夫・‥9
4.じん臓をとっても障害補償がうけれなしつ
一戦業性樽胱ガンの患者を守るたたかい一合化労連田岡化学労組 藤 井
第9回春斗討論集会講演、レジメ
労基法および労災法改正をめぐって…同志社 ̄大学教授 角 田‘豊……16
報 告
1.業務による疲労の結果くひきおこされた身体障害を
公務災害と認定
姫島病院 医師 田 尻 俊一郎……17
2.有機溶剤中毒に・紅かされた中沢茂さんを守るたたかしへ…中沢さんを守る会……
8.北海道忙おける59通達以後の情勢
北海道職業病対壌連絡協議会 事務局長 他 畑
勉…‥22
労働安全衛生法物語(第2回)企業は安全衛生義務を果してしつるか? 是我法太郎 23
「労働と健康」読者会こ案内
洗剤問題について
済生会野江病院 西 谷 宣 経
とき 51年3月26日(金)市立労働会館(森の官)年后6.30∼9時
読者だより
(1)日本専売浜松工場
松 本 澄美子
r2)八幡製鉄職対協 福 田 紀 六
書
評
労災・職業病日誌(1975.11∼12)
(⊃
大阪労働者の生命と健康を守る実行委貞会
○
19
論文1
労働基準法改悪と我々の法制化要求
大阪職対協 下 作▲英_夫
昭42)事務所の衛生規則(昭46)労働安
(ユ)は じめ に
全衛生法(昭47)等々次々と法律が制定さ
労安法制定に始まった労基法改正の第2弾
として、労基法(労災補償)の労災法への移
れている。その基礎となってしっるのが労働基
行が51年直には司会に提出されるであろう
準法である。
労基法は第4葦労働時間、休憩休日及び年
と伝えられてしへる。その内容はまだ明らかに
されてしへないが、労災保険法の補償内容の若
次有給休暇、第5葦安全及び衛生、第6葦女
干の手直しと上積みを行うことによって労基
子及び年少者等、労働者がその条件に応じて
法8葦災害補償をすべて労災保徐に移行し、
安全に労働できるように保障することを事業
現行法のもとで企業に対し労災職業病の補償
者に義務づけると共に第8葦では労働者が業
を義務づけた唯一の根拠とされてしへる労基法
務が原因で負傷し疾病にかかった場合、無過
8葦を完全に削除することが中心的な課題と
失責任を前提忙一定の補償をすることを義務
されてしへるようである。
づけ、叉19条ではこれら被災労働者の解雇
現行法に対する不満や法改正の必要性は職
を禁止してしへる。
業病斗争を進めている側からもすでに指摘さ
47年に制定された労働安全衛生法は企業
れ具体的な「旗制化」要求も労働省佐提出さ
の災害防止責任をより明文化したものである
れてしへる。しかし今回の改正はそれを充たす
が、その3条は企業に対し「進んで快適な作
ようなものとは考えられない。このような動
業環境の実現のために創意工夫を一こらすこと」
きに早急に対処するために、職業病絶滅運動
を義務づけている。
これらの法律によれば、企業には「労働者
を進めてきた立場から若干検討を行いたい。
の安全と衛生を守る義務」が、労働者には「
(2)労働者のF生命と健康」は法律
健康で安心して働ける職場」を要求する権利
でどのように守られているか
憲法25条は「すべての国民は健康で文化
的な最低限慶の生活を営む権利」を保障し
が法で保障されていることは明らかである。
て
いる。労働者にとっては「生命と健康」はそ
昨年8月に労働省が行った「 ̄健康状況調査」
れを保障する唯一の手段である。当然のこと
は「サラリーマンの70多が仕事で疲れを感
として、労働者を保護するために労働基準
法
(昭22)労働安全衛生規則(昭22)有
機
溶剤中毒予防規則、じん肺法(昭35トク
レ
ないで出勤してしへる」(8月18日朝日)と
ーン等安全規則(、昭37)鉛中毒予防規則(
一1−
ない労働者が大多数である等々、職場点検を
報じている。労働組合の最近の調査をみても
70∼80痴の高率で肩こり、体のだるさを
行えばどこの職場においても必ず法違反が摘
発される状態にあるといっても過言ではない。
訴えてしっる。労働災害や疾病の多発の現状は
ところがこのような状態をなくし、法を守
本誌が毎号連載してしっる「労災職業病日詰」
るよう企業を監督指導すべき立場にある労働
で明らかであろう。
行政は、「合理化」の進行に伴い新しい磯城
本来、法で保唾されているはずである労働
者の「生命と建康」が実際には急速に破壊さ
や設備の導入、薬品の使用が急速に増え、そ
れ、それ忙対し適切な硯削がされていなしへ原
の必要性が強くなっているにも拘らず、逆に
因はどこにあるのか。
監督官1人当りの適用事業所が昭和23年
250(490P人)から現在1000(
第lに法があってもそれが守られてないよ
うな状態が作られてしへるとしへうことである。
11700人)と4倍にふえ、全部の事業所
どの職場においても最低限、基準法や他の法
を臨検監督すれば14年に1回の割になり、
律にもとっいた就業規則や作業基準が定めら
重大災害が発生するか、労働者の告発がかへ
れ、それが守られることになっている。とこ
限り野放しの状態にされてしへるのが現状であ
ろが実際忙は安全設備や保護具が定められて
る。(全国348労基署の第1線監督官は
いても、ノルマにおわれて使用出来なしへ。年
2185人)
次有給休職はとりたくてもとれないため忙ほ
また、労働者の側でもきびし〔キしめつけや
とんどが権利放棄される。昼の休憩はいそが
「生産第1主義」「企業労働者共同体」等の
しくて充分休むことができない。労災補償規
思想攻撃のなかで、「残業があるのが普通の
定があっても疾病の場合忙はなかなか適用さ
状態」
れない等々、法や規則が「画にかしへた餅」に
によれば「一窪時間以上労働させてはならな
されている場合が多いのである。
い」のであって、36条は例外規症である。
「年休は翌年に操越すもの」(労基法
′㌧ごニノ
年休は本来各年毎に「与えなければならない」
第2点は法が無視されていることである。
のであつて操越す場合必ず翌年に消化できる
炭坑災害や工場爆発で必ず問題にされるのが
保庫を前提とするのが法の精神であ.ろう)あ
「合理化」の推進や経費節減による保安要員
や保安設備の手抜きである。女子労働者に8
るいは六価クロムで間邁となった「鼻に穴が
時、9暗まで残業が強要されることが当り前
あぃてようゃく一人前」等の考え方にならさ
になっている。自由に取得さるべき年休や休
れて、法違反を摘発し少くとも現行法規にも
憩時間の外出に理由書の提出が要求される。
とずく職場の改善と権利の確保を要求して行
労安法は101条で「この法律及びこれに基
くという状態にはなっていない。
ずく命令を…‥
労働者に周知させなければな
第3点は、事業者が安全衛生法規の周知義
′㌧了㌧ご㌧ご∵㌧▼ ̄
らない」としているが、労安法の存在も知ら
務を怠っており、労働者も学習不足、法に対
一2−
する認識不足のため、法が充分活用されてい
死等を業務上疾病と認定させ一定の補償をさ
ないという問題がある。
せると共に、ベンジジンの製造使用禁止、頚
労基法、労安法では、労働者に分りやすい
腕鹿痛の認定基準、職場復帰通達(593号)
ところにその要旨をおくことを義務づけてい
、重症心身障害児施設の腰痛(基発71号)
る。また労働省が出している安全衛生の通達
引金工具による手指障害(基発94号)の予
も、出さればなしで労使ともろくろく読んで
防対策を出させる等の成果や、労基法が最低
おらず、点検、実施の努力が不十分である。
基準であり「労使関係の当事者は・‥その向上
を図るように努めなければならない」(労基
第4点は、現行法自身の不備の問題である。
現行法は形式的には企業の「安全衛生義務」
法1条2項)を足がかりに、よりよい協約を
を規定しているが、具体的な規制の内容を伴
めざしての斗いや上積み補償、慰謝料をめぐる
わないために、「解釈」や「扱しケ方」把よっ
斗いも発展し、日刊工業新聞にみられる進ん
て骨抜きにされている場合が多い。労安法3
だ労働協約や大分、三和、日商岩井等で一定
条は、「快適な職場作り」を企業に義務づけ
の慰謝料がかちとられる等の大きな前進がみ
てはいるが、その判断や実施はいわば企業の
られる。
自主的な努力にせかされる内容になってしつる。
このような運動のなかで、「有害作業、有
基準法42条は「危害の防止」を義務づけて
害薬品の事前チェックの義務づけ」「医師選
いるが、新しい機械や薬品は「必要な措置を
択の自由」「療養費の企業負担」「休業補償
講じない」まゝに次々と導入され、災害や職
、障害補償の低さ」「認定基準のあしハまし(さ」
業病多発の原因となっている。母性保護の立
「リハビリ勤務の企業の受入れ義務」等具体
場から絶対必要とされる「生理休暇」につい
的な事業を通して現行法の不備が指摘され、
ても、企業が「著しく困難」であるとの医師
更にそれが企業が「安全衛生義務」をごまか
の診断書の提出を求める等実際には取得困難
し、責任を回避するための逃げ道となり、ず
な状態が作り出され、生休取得率は全国的に
た労働者の権利を侵害する原因となっている
みて10喀を下まわるのではないかと云われ
ことが明らかにされてきてしへる。その結果:運
ている。年休操越制度は事実上権利放棄を強
動に取組んでいる労働者の側からも現行法に
制することになっている等、労働者保護の
対する不満が謬在化しつつある。昭和47年
ための条項が実際には企業を規制することに
に「全国職業病交流集会実行委員会」が提起
はなってぃないのである。
した「私たちの法制改善要求」は運動の中か
(4)現行法改正の必要性
ら出てきた問題点の一つの集約であり、今後
全国的な職業病斗争の発展は、ベンジジ/、
の運動発展の足がかりということができよう。
(5)企業と労働行政のうごき
クール、塩ビモノマー等による職業ガン、頸
扁腕障害、腰痛症、脳いっ血などによる急性
労働者の職業病斗争はその性格から認定と
−3一
補償をめぐる斗いを中心に進められ発展して
労災保険給付申請として取扱っている。従っ
きた。即ち労基法8章が企業に対し無過失責
て調査は監督権限を持たない労災補償課によ
任にもとずき「業務に起因する疾病」の補償
って行われ、決定は「労災保険支給決定」と
を義務づけていることを基礎にして「発生し
して出される。ところがこの決定は労災保険
た疾病を業務上」と認め「完全な補償」をし、
上の単なる手続きであって法的には何等企業
に対する拘束力をもつものではないことを口
「再び疾病を発生させない職場にする」こと
実に業務上認定患者に対して企業内の労災補
が要求の基本となっている。
償規定適用を拒否する企業が増えてきている。
疾病の業務起因性をめぐる斗いは、「合理
化」とし疾病の関係を追求し現在の陸康破壊
それをめぐる争いについて労働行政は「法外
の原因が「合理化」にあることを明らかにし
の問題」として一切タッチしようとせず、労
てきた。進んだ斗いが行われたところではベ
使の力関係にまかされている。このように認
ルトコンベヤーのスピードを遅らせたり、人
定や補償をめぐる問題はすべて労災保険の枠
員増をかちとる等「合理化」そのものに一定
内で処理し事実上8章を有名無実のものにし
の歯止めをかける成果をあげているところも
ようとしてきてしへる。そのねらいが業務上疾
みられる。この様に職業病の斗いは企業が強
病を発生させた企業責任を免責しようとする
行の必要にせまられている「合理化」と真正
ものであることは明らかであろう。
面から対決する斗いとして発展してきている。
このようなねらいにも拘らず労基法が最低
それだけに企業と労働行政は一体となって斗い
基準であることをテセに企業内協定適用や上
の発展を阻止し、成果を奪い返すために様々
積み補償、治療費、慰謝料、職場復帰をめぐ
な攻撃をかけてきている。46年にムチウチ、
る斗レ篤大きく発展し、8章の持つ意義は吏
頚腕雁病者忙かけられた打切り、長期傷病給
忙拡大する方向にあり、これらの斗いの中から
付移行をねらった攻撃、50年2月の頸腕障
企業の「安全衛生義務」「完治するまでの完
害認定基準(59号通達)、あるいは都市銀
全補償」の問題等が大きくクローズアップさ
行の頸腕患者忙対する特例措置等はその典型
れてきているということができる。
このような経過やかちとられてきた成果と、
的な現われであるといえる。
この斗いの根拠とも云うべき労基法8葦を
一方では関西経営者協会が48年に労働省に
形骸化しようとする動きはすでに認定斗争を
提出した「労災保険制直の改正に関する要望
めぐって具体的に現われている,。・現在の職場は
書」が労災法の手直しによる8章の削除、19
大部分が労災保険加入職場に在っているため
条の解雇制限撤廃を要望していること、その
に、8章の補償内容は84条によってすべて
直後から労基法改正の動きが具体化している
免責されているとして、労働行政は85条に
こと等を考え合すれば、今回の労基法改正が
もとずく業務上外の認定申請は一切拒否し、
8章を削除し補償内容をすべて労災保険に肩
−4一
がわりさせて社会保険化することによって「
そのため結局企業内協定によって労災保険不
企業責任追求の根拠」をなくし(社内の労災
足分を企業が補償していたところではほとん
補償規定も根拠がなくなることになる)、補
どのところでそれまでの上積み分を二割へら
償をすべて国が肩がわりすることによって企
すことで企業負担を車滅することにとどまり、
業の負担をなくし、同時に職業病斗争の発展
被災労働者には結果的には何等プラスになっ t
を阻止しようとするところに中心的なねらい
ていない場合が多い。
少くとも8章をなくするためには更に思い
があることが推察されるのである。
(6)お わ り に
きった、一見被災労働者に有利にみえる労災
保険の手直しを行わざるを得ないであろうし、
今回の改正の内容は何故か労働省がひたが
くしにしてしへるために詳らかでなしへが、以上
またそれを宣伝することによって真のねらい
の背景や経過からみれば、現行法の問題点を
をかくし、労働者の反撃をおさえようとする
解消し、企業の「安全衛生義務」を明確にす
ことが考えられる。
このような動きにまどわされず、今回の改
る方向とは逆行するものであろうことは推察
できる。「改悪」には必ず若干の「了メ」が
正の意図するものを的確にみぬき、「私たち
つきものであるがそのきざしは49年の休業
の法制改善要求」を足がかりに、運動の中で
補償の「■特別給付金制度」に見られる。この
明らかに在った現行法の不備を具体的に指摘
制度は休業補償の低さをおぎなうために(I
し、企業に対する安全衛生を守る義務と完全
LO条約の水準に近づくために)本来補償を
夜補償責任をきびしく義務づけた「法改正要
引上げるべきところを「見舞金」として出さ
求」を問題提起し、早急に大きな運動に拡げ
れるとされているがその性格はあいまいで、
ていくことが必要である。
「労使の取壊いにまかせる」とされている。
論文2
有給安全学習休暇を与えよ
法政大学講師 佐 藤 一 子
所(「大学」)、各単産レベルの学習討論集
(」
1960年代以降、労災職業病の深刻なひ
会など、さまざまなレベルで労災職業病問題
ろがりのなかで、認定闘争、補償闘争、職場
の実態があきらかにされ、問題解決の方向が
の労働条件の改善をめざす闘いがねばり強く
模索されている。これらの学習活動は、自分
すゝめられてきた。この闘しへの発展をささえ
たちの生命や健康がおかされていることに対
るひとつの重要夜側面が学習活動の組織化で
して、やむにやまれぬ思いでもとめられたも
ある。毎年開催される職業病全国交流集会を
のであり、闘いにたちあがるのに必須の力と
はじめ、大阪の一泊学校や労働安全衛生研修
なっている。
−5−
学習を通じてしばしばあきらかにされてい
全、技術にかかわる場合、その基本的な部分
ることは、取扱っている物質や労働現場の有
は、公教育として保障されねばならない。戦
害、危険性があらかじめ予知されてぃるにも
後の日本には、強固な企業内教育体制の慣行
かかわらず、それを労働者に周知徹底するこ
が確立しているため、技術革新に対処する公
となく危険の予防を怠り、みすみす災害を瑠
共職業訓練の拡充を要求する運動も十分な展
しへていることがあまりにも多いという点であ
開を見ずに現在にいたっている。公共職業訓
る。
練の貧弱夜内容を改め、使い捨て労働力とし
てのその場しのぎの教育ではなく、変化に対
72年に制定された労働安全衛生法は、事
業者が従業員にたぃして雇開時と危険業務に
応しうる基本的夜能力を身につけられる労働
つかせるさレ可に安全衛生教育をおこなわなけ
者のための公教育が構想されねばならない。
れば夜らないとしている。しかし、その義務
またその内容も労働組合の参画のもとで、労
拘束性は、労働基準監督所長が、事業者にた
働者の現実的関心と労働実態を考慮して、労
ぃして勧告することにとどまっており、安全
働者の労働権、生活権を守る立場で考案され
教育の実魔は、労働省令の定める事業内の総
るというのが本来の壌であろう。
括安全衛生管理者の統括管理にまかされるこ
むろん実態は、このような凄からはるかに
とになっている。したがって、安全衛生教育
遠いのであるが、最近労働者の権利として、
は、労働者にとって生死にかかわる最低労働
公的な教育の問題を考えていく注目すべき運
基準にふくまれるべき事柄であるにもかかわ
動がイクリ7、フランス、ドイツなど先進的
らず、事業者の窓意の範囲で実行されている
な資本主義国で発展している。この運動は、
にすぎないのである。教えらるべきことが放
「有給教育休模」制度の実現をもとめるもの
置されるだけではなく、しばしば故意に隠さ
で、1974年にはILO条約として採択さ
れる場合があることは、今までの労災職業病
れている。
闘争のなかで指摘されていると
ILO「有給教育休暇に関する条約」(140
生命と健康を守る労働者の自己教育運動が
号)では、「有給教育休暇」を、「労働時間
切実な学習要求に基づき幅広く展開されてしっ
中に一定の期間教育上の目的のために労働者
るのに対し、法忙もとづく正規の安全衛生教
に与えられる休職であって、十分な金銭的給
育が、事業主の私的娼心の城を出ず、全く公
付を伴うものをいう」と定めてしへる。そして
的な教育機会を保障していないことは、国の
この休暇は、(1)あらゆる段階での訓練、(2)一
責任を放棄した大きな問題点であろう。
般教育、社会教育及び市民教育、(3)労働組合
教育に適用されると規定されている。つまり
− ∵ノ
ー般に、労働者の学習は、自費で手弁当で
一般教育\・社会教育∴市民教育、職業訓練、
組織されている。しかし、事柄が、労働や安
労働組合教育など組織的な教育を受けようと
Ⅶ6−
する場合に、労励時間中に適当な金銭の給付
の部分的な実施をみているイタリア、フラン
を受ける機会をうることができるということ
ス、西ドイツ、北欧諸国、社会主義国、労働側
が条文の趣旨である。
側代表であった。
この様な条文が制定されるに至った背景に
「有給教育休暇」への要求は、歴史的には
1930年代忙ででさかのぼる。労働者が、
つしへては、その前文に次のように書かれる。
「世界∧権宣言第26条が、すべて人は教
使用者の悪意にとらわれずに公的な職業技術
育を受ける権利を有すると宣言してしハること
教育や一般教養を身にっける継続教育への機
把留意し…・・・
会を要求してし(く運動がその出発点であった。
科学技術の発展と種済的社会的関係の進展
すで忙1958年に、フランスでは、12労
と把関連する継続的な教育及び訓練の必項性
働日の無給の教育休職がかちとられており、
から社会的、経済的、技術的及び文化的性格
1970年の全国協定では、その有給化への
の新ししっ熱望、必要及びl∃標を満たすための
重要な一歩が獲得された。イタリアでも「150
教育及び訓練を目的とする休暇に関する適当
時間の有給学習休傾」がかちとられ、公的な
な措置が必要となっていることを考慮し、有
職業訓練、大学の労働間覆の講座、未終了の
給教育休暇が現代社会忙おける個々の労働者
義務教育にこの休職が適用されてし(る。.イタ
の真の必要を満たすための一つの手段とみな
リアの場合、特把土建部門や金属、化学部門
されるべきことを考慮し…… 次の条約を…
の安全闘争が労働者の統一要求発展のカギと
採択する」
なり、これらの成果を生み出す重要な基盤.把
ここに示されるよう把条文の前文は、「有
なっているといわれてしへる。
給教育休暇」が公的な教育、労働組合教育を
ヨーアッパでは、たしかに日本のよう1な企
必須な機会として得るための保障手段である
業内組合、企業内教育体制とはことなる労働
として、世界人権宣言にうたわれてしへる教育
慣行をも ってしへるため、公共職業訓練要求の
への権利の思想忙ねぎす考え方を明らかにし
性格も日本とは違った大きな統一要求に発展
しやすいという事情が考えられる。しかし、
ている。
事柄の重要性としへう点では、わが国において
このように、「有給教育休職」は、労働者
の要求を反映した教育への権利の思想の文脈
も全く変わらない。労働者が企業の枠にとら
でとらえられるものである。原案の論議の段
われることなく、統一的な労働運動を発展さ
階では、もっと明確夜権利として有給教育休
せ、人間らしく生き、働く権利を国家、自漁
暇は、賃金を損われることのない教育のため
体に要求し制度的にこれを保障させてし(く大
の休暇であり、「新しい労働の権利」である
きな運動の「填であり、その教育、文化的側
と主張されたことが注目される。この条約を
面の課踵として「有給教育休暇」の意義を考
推進したのはすでに国内で有給教育休暇制直
えることができるであろう。
一7−
のもとに公共事務を遂行していく性格をもっ
(三)
ている。労働者にとってこれほど切実で広範
ILO条約は、国内慣行に大きくゆだねら
れる性格をもつため、日本でも批准は無論行
な統一的要求である生命.健康.安全につい
なわず、内容の解釈も職業訓練分野に限って
ての学習は、何らかの形で公的に保障される
しへる。例えば、労働省で75年4月から実施
道が開かれるべきであろう。現在社会教育行
した「有給教育休暇給付金制度」がその一例
政のなかで模索されている原理を発展させれ
である。これによると、労使の協約にもとづ
ば、大阪の労働安全衛生研修所の労働安全衛
き、一定の基準内で各種学校や公共職業訓練
生大学を、大阪府が労働者のための公的な社
を受ける要求が認められると、都道府県労働
会教育計画の一つとして認定し、有給教育休
部から一人一日58円の給付金が支払われる
暇をえて、労働者がそこに参加することがで
というシステムである。これは事実上、使用
きるという考え方は十分根拠があるといえよ
者の認可にもとづき、資格付与を目的とする
う。「有給教育休暇」の理念は、長い時間を
現行職業訓練につしへて使用者にたいして援助
かけて成熟してきた運動の成果であり、短兵
が行なわれるにすぎず、条約成立趣旨から著
急に技術的忙導入することはできないけれ
しく達しへ。まして職業訓練所や各種学校の教
ども具体的な要求を突破口として、現在の労
育内容に、労働組合運動の要求を反映させて
働省の「給付金制度」のような現状維持のせ
いく道は、全く開かれていない。この点は、
まい解釈ではなく、労働者の教育権の主張と
労働行政全体の民主化の中でもっと重視され
して豊かにこれを発展させていくことは今後
なければならない課題であろう。大阪の「安
どうしても必要なことであろう。
全大学」受講生約20名が現在大阪府に給付
従って、すべての労働組合が自らの生命と健
金を申請中である。
康を守るため、完全有給の安全衛生学習休暇
文部省のもとでおこなわれている自治体の
を要求し、自由にすべての学習の機会を利用
社会教育の場合、近年住民の自主企画や企画
できるようにするべきである。
への参加方式か模索されている。働く婦人の
労働者が、人間らしく生き、働く権利を確
講座を地域の保育の会や働く婦人の連絡会と
立していく大きな聞いの一つとして、日本に
公民館の職員が協力して企画し、実施すると
おける「有給安全学習休暇」のあり方をぜひ
いう例もまだ少ないけれども確実に発展して
検討しなければならないと思う。
いる。自治体は本来、地域住民、勤労者の基
本的人権と生活費求を守り、幅広い住民参加
−8−
論文3
チェンノーを捨てた国有林労働者
全林野労働組合大阪地本
金 鋼■ 正 夫
何であったかとしへうと、国有林は1955年
1 激増する振動病認定者
項(昭和30年)には、チェンノーはまだ300
振動障害認定者は、昭和41年の186名
から昭和50年9月末までで2,740名(内
台しか入っていなかったが、1960年代に
大阪管内20署では1名から154名)と急
入って政府のインフレ政策と大山林地主の木
激に増加してきているっしかも、振動障害訴
材切り惜みによって木材価格が急騰し、政府
え者数は、約6,200名で訴え率は39.8痴
は、「簡略安定策」とぃって外材の輸入をふ
(内大阪管内312名で3臥8痴)にも及ん
やすと共把、国有林の伐採量を20∼30索
でおり、紀州の田辺と西中国地方の西条営林
引き上げ、1961年にはチェンノーは一挙
署では、山で木を切ったり、木を出したりす
に4,000台を突破、この当時から「木材増
る労働者の中には健康者は1人もいか′へ。つ
産計画」により国有林合理化が本格化するわ
まり労働者全員が多少なりとも振動障害にか
けである。
今まで手ノコで切り倒し、木馬で木を出し
かっている実態も明らかになっているが、林
野の現場生産点では、3人に1人しか健康者
てしへた作業方法から、チエンノー把よる大面
は残っていないことに怒り、今後さらに激増
積皆伐、集材機の大量導入によって架線での
することは必至であり事態はきわめて深刻に
全幹集材方式(伐倒した木を伎付きのまま出
し盤台上で処理する)に全面切りかえになっ
なってきている。
最近、山陰地方の鳥取営林署の仲間で振動
た。
病が悪化し、他の疾病(くも膜下出血)を誘
さらに、林野庁の利潤追求は進み、チェン
発して死亡するという事態が発生した。九州
ノーに2人の要員配置を1人にし、1人1日
では、振動病の苦しさにたえかねて、自殺し、
あたりの伐木功程を前年の5.7㌦から10.7
また昨年12月15日、振動病が原因で、
営林署の仲間が死亡(読売新聞12月16
元
日
過去8年分の減少に相当する約20ヲあ以上、
付)し、民間林業でも死亡者2名、自殺者(
奈良)1名が出ているなかで、私たちの職
場
に、新らたな恐怖と、大きなソヨツクを与
え
実に物語るものとして、特筆すべき事実は、
てしへる。
2 振動病多発の背景、要因
一体このように振動病を多発させたもの
当局の安全無視の利潤追求のため、大阪管内
は
−9一
は、邑動玉卯装置の導入をはかる。
人死亡(公務災害)してしつる。
さらにどうしても附記しなければならない
⑨ さらに可能なかぎり使用時問を短縮する。
もう一つの要因は、きわめて不安定な雇用(
④ 午前、午後それぞれ15分間の緊張緩和
毎年6カ月−8カ月の反ぶく雇用)と、出来
時間(実質な休息時間)を設定する。・
高払いによる賃金制慶である〔特に雪の多い
現在、・大阪管内対象20営林署約5●00名
山廣地方などの労働者は、短かしハ雇用期の中
は、この確認によって全部、手ノコに切り替
で、1年分の生活費を稼ぐために「馬のハナ
えている。ある仲間の1人は、チエンノーを
ゾラに人参」の諺のとぉり、わかっていても
捨てた動機について、次のように云っている。
「私は、15年間チェンノーを使い認定者
出来高払いから抜け切れず、がむしやらに働
き続けた。当時の全林野の遅効方針のなかに
になってし(ますが、高校1年の娘に、//父さ
忘れられない言葉がある。
ん、今の日本医学で治らないとしたら不具じ
//朝はあさ星、夜は夜星、・昼はウメボシ韓
やない//といわれた時は言葉で言い表わせな
い悲しさと、当局に怒りを覚えました。」
当さげて//
認定者だけがチェンノーを捨てたのではな
つまり、朝は星が見えるほど早く出動し、
ひるめしのぉかずはウメボツで、夕方は遅く
く、使用者の中には、健康者もしへるわけで、
星が見えるまで勧しへてしへたとし(うのである。
まったく旗抗がなかったのか云えば、そうで
3 チエンソーづ巨否、手工具切り替え
はなく、とくに若い労働者の中には、「洗濯
全林野がストライキで闘h敬った4,23確
機からタライに返れというのは時代錦誤だ」
認(昭和50年4月23日団体交渉議事録抄
「蹟病症など新しい職業病が出ないか。」「
)は、永い苦しい閲しへの積み重ねのなかで得
功程が半分になる賃金はどうなるのか。」等
た結論は、これ以上病人を出すことは日本林
々の意見が続出した。勿論、出来高廃止まで
業の危機脚ナごなく、全産業に拡大しつつあ
には至らなかったが、功程ダウ/(509あ)
る振劫病をくい止めることはできない。根本
による賃金の補償は当然当局の持出しとした
的な予防対策は、チエンノーを使わないこと
が、最近林野庁は、業界紙、業者団体等と連
以列にたいということだ,つた。
携して、国有林財政の危機、直圭う製品生産
林野庁当局は、この確認の基本姿勢として
事業(木を切って出し、売る仕事)の収益性
「今後これ以上の雁病者は出さないとの基本
の悪化と生産のたちおくれにつぃて要旨、次
理念にたって諸対策をこうずる.」
の様なキャンペーンをはってきた。「全林野
① チェンノーの使用時間は週4日、月32
の斗争戦術によって、減産し財務状況が悪化、
時間を最高限度として規制する。
手当等の支払いや必要な物品の困難となりつ
② 人工林及びこれに準ずる林分は手工具(
つあり、常勤制度の発足(雇用安定)にも重
手ノコ)を使用することとし、盤台の玉切
大な支障を及ぼす。」
−10−
④ 財務状況の悪化は、大企業本位の高度成
したがって、全林野も過激な斗争はやめて
生産量の確保に協力してほしいというもので
長政策、インフレ政策を続けてきた政府の経
あるっ
済政策によってもたらされたものであり、今
日の深刻なスタフグレーションの続くなかで
私たちは、林野庁に対し、(丑 今日の生産
停滞の原因は、振動病患者の大量発生、作業
国有林財政のみ好転するはずがないのは当然
主任者の選任配置をおこたり、要員不補充で
であり、材価の下落が証明している。
当局自づから作りだしたものである。
以上の基本的態度を明らかにしながら、私
② さらに、労働強化と労働災害と職業病か
たち全林野は、労働安全の確立、職業病絶家、
ら開放さ−れるための出来高作業の廃止とい
雇用を安定し、真に国民が求める立派な山造
う国有林労働者の最低の要求にすら耳をかそ
りのため、全国の労働者や国民の人たちと一
うとしない林野庁当局の姿勢によってつくり
諸になって闘ってしへく覚悟であり、今後とも
だされたものである。
皆さんの御協力と御指導の要請を願うもので
⑧ あたかも、全林野労働組合にすべての責
ある。
任があるかの如き行動は絶対に容認出来ない。
論文4
じん臓をとっても障害補償がうけれない
一一職業性膀胱ガンの患者を守るたたかいト
合化労連 田岡化学労働組合
藤 井
は じ め に
職業性勝胱ガンの現状
合化労連のベンジジン対策共斗会議やその
職業ガンとしては古くから知られている石
綿による肺ガン、クールピッチによる肺ガン、
他の斗かいの中で現状モは、過去にベンジジ
皮膚ガン、.ベンジンによる膀胱ガン、又昨
ン、ベーターナフチルアミン等を使用して、
年社会問題化した六価クロムの肺ガンや塩化
発ガンした人については、全員労災認定をか
ビニー
ルによる肝臓ガンがあり、医学的には
ちとってきています。但し労働省の昨年の動
早くから因果関係が明らかにされていました
きから推察すると、新しく芳香族7ミンに於
が、職業ガンの特徴として、これらの発ガン
ける膀胱ガンの認定基準を設ける動きもあり、
物質を使用してから発ガンする迄潜伏期間が
特に非職業性ガンとの関連で一層重視する必
15∼20年、長い物では30年と非常に長
要があります。最近の特徴として1人の人が
2ケ所以上にガンの出来る重複ガンや、泌尿
いため、その発病の実態がつかみ忙くく、非
職業性のガンとして私病扱いされている公算
器系以外にガンの出来る傾向があります。
が大きしへと思われます。
(症例1)
−11−
茂
田岡化学 65才 死亡(男)β一ナフ
⑤ 判明している非職業性の発ガン因子(例
輿煙)に対するバクロ歴が調査されている事
チルアミン8.8年製造
以上5つの基準を公言しており、現状の患
S41年 膀胱ガン 労災認定
S45年 上あごガン(骨髄ガン)
者の実態や斗かいの水準からみると、認定そ
S46年 死亡 業務外(地方審査会)
のものが、ガンの潜伏期間と同様長時間にわ
たりきわめてきびしく困難であるといえます。
(症例2)
田岡化学
叉企業内の上づみ補償も死亡1,000∼
66才 死亡(男)ベンジジ
1,500万になり76春斗では3.000万要
ン製造染料粉砕
S47年 膀胱ガン 労災認定
求で斗かし(ますが、合化労連各組織の労災法
S48年 肺ガン
定外補償の基準はしへずれも現状で「労災法で
S50年 脳瞳瘍 死亡 申請準備中
認定された」としへう一項があり、今後予想さ
れる業務外の不当な認定忙たいしては、患者
(他社の症例)膀月光ガンとの合併症例
三井化学 直腸ガン
の精神的、肉体的苦痛を具体的にあきらか忙
三菱化成 直場ガン
しながら行政の無責任さ、企業とのゆ着を糾
弾し、職場、地域の仲間の力を結集して大き
肝膝ガン2例
く斗かいを発展させる必要があります。
住友化学 月旦のうガン
本州化学 リンパ腺(ホジキン氏病)
障害補償は死ぬまで給付さ孔ない
又労働省では職業性ガンと非職業性ガンの区
労災認定を受けた患者が膀胱切除(一部、
別をつける判定基準として
全切除)、尿管切除、腎臓摘出等の手術をし
① 特定の物質に関して職業、作業忙従事す
ても現状では災害性の人と区別し、ガンと云
る人が疫学的に」投と比敦して多発してしへる
う事で医師も治ゆとしないため、障害等級決
証拠がある場合
定をせず監督官は「ガンであるので治ゆ認定
(診 病理学的忙も、一臨宋学検査忙よっても
出来ない、だから死ぬ迄給付出来ない」と公
当然ガンであることが先ず必要であると同時
言しています。
に、それが転移したものでなく、、そのガンが
斗かいの方向
原発性であるという診断がされていること
私達の斗かいの前進忙伴って労働組合は企
③ すでに判明している発ガン物質に対する
業に対し生命と健康を守るため、安全衛生の
職業上のバクロ歴(濃度と期間)の確実な把
分野ですぐれた労働協約をかちとり、一定の
握があること。
上づみ補償で前進がありますが、一方で職業
④ 発ガン物質にバクロしたことを示す特異
病の躍病者はますます増加の傾向があり深刻
的、臨床的、病理学的な所見が別個に認めら
な社会間遠になっています。
れること。
但し私達の斗かいが一部の先進的な患者、医
一12−
し現状の医学水準に照らして(医師及び学
師、労組幹部の運動だけにとどまっている限
者の協力を得る)見直しをやる。
り、切実で重大な要求と課題を解決する事は
出来ません。職業ガンの斗かいの中で昨年和
3.企業に安全衛生法を最低基準として守ら
せながら法改正の斗かしへを進める。
歌山地方でベンジジン患者を守る会を本州化
学を中心に組織され、又合化労連のベンジジ
4.障害補償請求をしへつせしへに労基署に申請
ン関係労組でも、患者会の組織が次々と決成
し、国会でも具体的に取上げてもらう。
されつつ有り、共通の課題を産業別の統一要
5.職業ガンの実態を地域、全国に広げ、社
求にまとめ、強力な産業別の斗かしっを前進さ
会問題化する。
せながら、今年はクール.ピッチの肺ガン、
6.裁判斗争につしへても準備し、企業と政府
皮膚ガン、塩ビ共斗等の職業ガン組織との共
の責任を明確にさせる。
斗を組織し立法化や法律の改正に迄運動を急
以上の点で今年は、共斗組織を一層発展
速に高める必要がありです。具体的には、
させ、労働者の生命と健康を守る統一 観廟
1.退職者の追跡調査を企業の責任で完全に
の結成を展■望し労災職業病斗争を前進させま
させると同時に組合も独自に調査する。
しよう。
2.特に退職後死亡者につしへて一斉に再調査
(資 料)
合化労連「安全衛生法の改正につ▲いて」
労 働 大 臣
長谷川
峻 殿
合成化学産業労働組合連合
中央執行委員長 太 田
要
求
書
このたび、日本化学工業、日本電工などに発生したクロム事件は、労働行政の怠慢、立ち遅
れと、企業の生産第一主義による安全、衛生の無視、それに追随した産業医の消極的な姿勢な
ど大き夜間題を浮きほりにしました。
特に職業性ガン把ついては国際的にも問題に夜りv1974年のILO総会での条約ならび
に勧告にもみられるように大きな問題になってしへます。この数年間、わが国におしっても職業ガ
ンの発生は異常に多くなっております。染料労働者にかける膀胱ガン、コークス炉、電極工場
における、クール.ピッチによる肺ガン、皮膚ガン、塩化ベンゾイルによる肺ガン、塩化ビニ
ルによる肝臓ガンなど業務上死亡者および疾病による患者は多くなり、職場には多くの発ガン
性物質を含む有害物賀が放置されたままになっています
−13−
薫
こうした問題は労働行政ならびに労働安全衛生法、諸規則が十分かつ完全に実施されていな
いし、さらに法、規則そのものにも不備があるといわざるをえません。こうした行政の姿勢を
あらためると共に労働安全衛生法ならびに諸規則の改正を要求します。
これまでにも、緊急を要する、いくつかの点を申入れてきましたが、以下の案は、当面現段
階での問題点を総合的に考えて合化労連本部が試案として作成したものでありです。今後、貴
省をふくめ、関係団体との協議のなかで、補足、訂正をしてゆくことは当然でありです。
記
1安全衛生法の改正
1.第1条(目的)の関係について
「この法律は労働基準法と相まって」となっているが、このことをもっと明確にするため
に、労働基準法第1条∼第4条までの主旨を文言で明文化すること。
2.第10条(総括安全衛生管理者)の関係につしへて
総括安全衛生管理者に対して事故が発生した際の罰則が凌いがこれは、経営責任者の安全
衛生のサボに通ずるので罰則を明文化しきびしく取締ること。
3.第13条(産業医)の関係につしって(主旨)
産業医の資格要件を明確にすること。
産業医は、公衆衛生、労働衛生の課程を修了した者または政府あるいは、日本産業衛生学
会等の職業病講習を修了した者とすること。
4.第17条(安全委員会)の関係について
(刃 「第17条 事業者は政令で定める業種及び規模の事業場ことに」の次にILO31号
勧告による次の文章を挿入する。
「労働安全衛生法および関連政省令の確保および災害の原因の確認その他」
㈱ 新たに6項を作り、「事業者は労働組合から申し出があった場合、その他必要な場合に
は労働組合が推せんする、上部団体の役員その他の者の出席をさせなければならない」を
明文化すること。(ILO第8回石油産業委員会決議)18条、19条にも適用する。
5.第29条(元方事業者の講ずべき措置等)の関係について
元方事業者の最終責任を明文化すること。
6.第37条(製造の許可)の関係について
新たに3項を作り、「新たな製造技術ならびに製品等を採用する場合には、労、使、公の
三者構成による00委員会にはかってその許可をえなければなら覆い」を明文化すること。
7.第58条(有毒性の調査等)の関係について
「………
これらの物による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように
−14−
努め夜ければならない」とあるが、これを罰則を伴う義務規定とすること。
8.第59条(安全衛生教育)の関係について
第3項「事業者は危険又は有害な業務で、労働省令で定めるものに労働者をつ誘ぃせるとき
は」のあとに次の文章を挿入する。
「機械せたは原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱し(方法に閲すろ
の文言をいれること。
9.第65条(作業環境の測定)の関係について
作業環境の測定の結果につぃてはすみやかに労働組合のもしくは労働者の過半数を▲代表す
る者に通知するこ七。内容は労働省令の定めるところとする。
10.第66条(健康診断)の関係について
健康診断の結果はすみやかに本人ならびに労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者
に通知すること。内容は労働省令の定めるところとする。
11.第67条(健康管理手帳)の関係について
(主旨)発ガ/性のうたがわしき物質を製造または取り扱う業務に従事したものは、経験
年数や職種には関係なく交付すること。せた、政府ならびに事業者は当該労働者
に周知徹底する義務を明文化すること。
12.第69条(作業時間の制限)の関係について
(主旨)有害物賀等については作業時間の制限をきびしくし、残業、休日出勤等の禁止を
明文化すること。
1 労働基準監督官の立入検査について(主旨)
ILO81号条約12条にもとずき労働省令に定める事業所については、昼夜いつでも自
由にかつ予告することなく立ちいることなどを明文化すること。
Ⅲ 産業廃棄物に関係すること(主旨)
労働安全衛生衛生法上も排出及び処理について事業者忙最終責任があることを明確にする
ことおよび排出処理等についての記録ならびに報告を義務づけること。
Ⅳ 労働基準法ならびに労災保険法の改正(主旨)
業務上の定義を法律で明確にすることかよび補償の対象とする職業病の範囲および、いわ
ゆる認定基準の制定または特定化学物質の抑制濃直につしハては労、使、公の3者構成による
委員会を作り決定すること。
−115−
第9回春斗討論集会講演、レジメ
労基法及び労災法改正をめぐって
同志社大学教授 角 田
1 労基法改正をめぐって
調査を開始し、政府は、環境、通産、厚生、
(1)1972年に労働安全衛生法(6月8日
労働の関係四省の対策をひらき、クロム加
豊
法57号)が制定され、労働安全衛生規則
工4社6工場の鉱さいと全国約5千のメッ
をはじめ、関係諸規則が一せいに、同年9
キ工場のスラッジ(汚泥)処理状呪を緊急
月30日に制定された。四半世紀の労働基
に調査するよう都道府県に指示した。六価
準法及び労働基準行政は、その第5章「安
クローム問題は全国に波及し、沖縄米軍基
全及び衛生」の42余に「労働者の安全及
地のたれ流しに屋良知事が厳重抗議するほ
び衛生に関しては、労働安全衛生法の定め
どになり、労働作業場内基準(0.1叩/もf)
るところによる」との規定を設け、労基法
は、全クロームまで規制対象をひろげ、労
43∼55条までは削除され、労働安全衛
働安全衛生規則改正に及んだ。
生法第1条の目的規定に「この法律は、▲労
働基準法と相まって……
(3)労基法26条には、使用者の責に帰すべ
き事由による休業に対して、使用者が労働
」という表現がと
られ、労基、労安両行政の関連を密接托す
者に休業手当に、その平均賃金の100分
ることを明らかにして、出発してきたのは、
の60以上の手当を支払うべきことを定め
周知の通りである。その労安法の政令も、
ている。雇用保険法が1974年12月28
規則も、1975年には、一度ならず、と
日に制定されると、75年1月から3月末
りわけ、8月の改正を行なった。これは同
までは、その附則(1条及び21条)にも
年5月1日、作業環境測定法(法28号)
とづき、従来の失業保険の福祉施設として、
が成立したことにより、労働安全衛生法も
75年4月以降は、雇用保険法の保険施設
改正になることと関連したものであった。
として、上記の休業手当の支えとして、国
(2)ところが、1975年8月7日\東京都
が雇用調整給付金(大企業と中小企業では、
公害局が、猛毒の六価クロムが大量佐投棄
支給基準は後者が多くなってしへる)を支給
されていることを、汚染源の日本化学工業
することとをった。
及びその下請け業者からの事情聴取によっ
(4)倒産会社労働者の未払賃金確保に関する
て確認、発表、同日労働省東京労働基準局
法律(国による代理弁済)をはじめとする
は、日本化工の「二鼻中隔穿孔」患者に労災
労災保倹改正による労働福祉事業
保険適用の方針を認めた。労働省、都公害
(5)ただし、労働基準法には、労働時間短縮
局、警視庁防犯課は、それぞれの観点から
婦人(年少者)労働保護など、大きく国際
−1t;−
的に立ち遅れている点があり、これら改正
給付の廃止に伴なう年金改善、スライド制
こそ大きな課題である。
の改善、年金調整の改善、特別加入の拡充
2 労災法改正をめぐって
及びメリット制の拡充ならびに前記労働福祉
(1)労災保険法一部改正法案は、今春の国会
事業の創設夜どの改善が予定されている。
(2)労災、職業病保険の今後の課題
に提出されるはずであり、長期傷病(補償)
報告1
業務による疲労の結果、ひきおこされた
身体障害を公務災害と認定′
姫島病院医師 田 尻 俊「郎
くなったので、なれなしへ責任者になって生徒
「合理化」の推進の中で、労働の態様が変
達と寝食をとも忙して朝の5暗から夜10時
し、産業疲労の質の変化と共に、労働者の
間では疲労の蓄積が重視されるようになりま
迄というきびしいトレーニング把参加し、ほ
したが、今回業務による極端な疲労の結果お
とんど全課程4日間を参加しました。学園紛
こった身体障害を公務災害として認定させる
争のあおりはこの学校にも波及し、教師のつ
ことができました。
るしあげなど日常茶飯の時期であっただけに
大阪民医連姫島病院では、これまで忙朝日
担当教師としての精神的夜苦労も大変で、そ
新聞労働者のクモ膜下出血、凸版印刷労働者
れだけに合宿訓練にも広瀬さんは生徒と全く
の脳出血の認定経験をもち、、、労働省の認定基
同じ訓練を自らに課し、文字どおりきびしい
準(昭和36年基発第116号)の枠を拡大
訓練指導に従事しました。その時の生徒たち
するという成果をあげてきました。今回の経
の日課表を見ても、ランニング、うさぎ飛び、
験もそれに続いて労働の癌一果蓄積した疲労を
両肩に人をかついでの屈伸、アメリカン腹筋
など、ぎっしりとトレーニングがくまれ、平
どうとらえるかという点できわめて重要な経
験としへうことができます。
素から訓練をうけてしつる生徒達でさえも疲れ
て食事がとれ夜かったり、暑さのせしつも加っ
被災者は元大阪市立此花工業高校の教師、
て、寝つかれなかったりする人が出る程だっ
広瀬即さん(当時35才)で、広瀬さんは、
昭和46年学園紛争のもっともはげししへ頃、
たとしへいます。生徒達がねいったあとも設備
異常な程の精神的疲労の高まりの中で、数学
の乏しい学硬の教室での合宿のことですから、
の教師として教べんをとっていました。たま
ねびえをさせないように、蚊にくわれかへよ
たまその年の夏休み、広瀬さんが副顧問をし
うにと何度も夜中見まわることも広瀬さんの
ていた空手部の合宿訓棟の指導を行うことに
大切夜仕事であったようです。
こんな合宿を無事に終えて帰宅したあと、
なりましたが、顧問の先生が急に参加できな
−17−
広瀬さんはひどい疲労感を自覚し始めましたっ
被災者及び補佐人(田尻、細川両医師、労組
最初は全身の筋肉の痛みでしたが、食欲もな
代表)の陳述をへて、この50年12月、支
部審査会の決定をみる把いたりました。
く、顔面蒼白、油汗などが持続し、およそ1
週間程自宅で静養する状態が続きました。帰
裁決書は高血圧性疾患、甲状線機能克進症
宅後8日目少し体をならそうと外出しました
などの基礎疾患があったことを認めながらも、
が、帰って自宅の玄関先で意識をなくして倒
それらが極度の疲労の結果、高血圧性脳症あ
れました。往診の医師に脳硬塞の疑いありと
るいは脳循環障害、せたは甲状腺クリーゼな
して入院治療をすすめられ、関西医大病院把
ど、あるいはそれらの競合状態をひきおこし
約2カ月聞入院、その後も約1年半もの間教
た可能性を認め、業務によっておこったもの
職に復帰できず、療養生活を余儀なくされて
として取扱われるべきで、基金支部長の業務
しまったというのです。彼はこの入院中クケ
外とする決定をとり消すとしてしへますっ
ダ製薬のペニシリン中毒で死亡した松本さん
これで民主的医学者、医師の支援をうけた
と知り合い、自分の病気が仕事から来ている
広瀬さんの業務による疲労によってひき起さ
ときどうしたらよいか教えられたのだそうで
れた身体障害は基金に業務上疾病として認め
す。
られ、勝利したわけです。
このため広瀬さんは所属の労働組合と相談
前の朝日新聞、凸版印刷の場合のように、
し、昭和48年10月、関西医大細川助教授
病名が明らかまたは推定が可能なケースと異
の意見書をえて、業務上疾病としての認定申
り、いくつかの可能性が考えられるが、断定
請を行いましたが、地方公務員災害補償基金
しがたいような例で明らかな病名を示さない
大阪支部は疲労による身体庫害の業務起因性
ませ認定されただけで、このことは大変重要
は認めながらも、症状がのびているのは体質
だと思われます。
的なものであるとの理由で、これを業務外と
所属の労組(大阪市障害児学校職員組合)
決定しました。広瀬さん及び所属の労組は当
では、日常的な健康管理は勿論ですが、今後
然この決定を不当とし、再審査請求を行うこ
クラブ活動やスポーツ訓練などの特殊な業務
とにし、臨床医としての意見を姫島病院、田
を遂行する場合、教師、生徒の健康管理を重
尻医師に求め、その意見書をそえて、50年
視するよう要求していくことにしています(
9月、再審査請求を行いました。
民医連新聞より)。せたこの判定は、「モー
50年7月、、災害補償基金支部審査会での
レツ社員訓練」「能率向上運動」「簡別大売出
し」などによる病気にも当然あてはせるものです。
−18−
報告2
有機溶剤中毒におかされた中沢茂
さんを守るたたかい
中沢 さ ん を守 る会
−一労働組合の支援も夜く、地域の人たちの支えで、溶剤中毒の労災認定を5年間にわたって要
求し続けてきた海南市(和歌山)の中沢茂さんは、本誌13号に記したように、中央労働基準
審査会におぃて、ついに業務上認定をかちとりでした。昨年5月、「中沢さんを守る会」も結
成され、今や中沢さんは孤立無縁ではありません。丁 “
S23.3月 日東紡績海南工場に入社
(1)は じめ に
S41.
中沢さんは、和歌山県海南市名高に住む小
柄夜労働者です。有機溶剤中毒で視神経をや
′′
′′ 閉鎖に伴う
希望退職
られてしへるので、白いものを見ると目がちか
S41.3月 葵産業(海商鋼管の下請)
ちかするというので室内でもサングラスをか
パイプ修理作業に班長として
けています。
従事
「中沢さんを守る会」ができて8カ月。ま
S43.5月 紀伊鉄工(三菱電機和歌山工
だ会として報告できるよう浸ことはできてい
場の下請)施盤工として約2
せせんが、中沢さんが有機溶剤中毒の労災認
年間勤務
S45.10月 スミナー鋼管化工に入社
定を求めてたゝかってきた5年間の話は、私
たちに色々夜ことを考えさせです。日本中い
スミナ鋼管に入社するせで中沢さんはカゼ
たる所にいる労働災害をうけて泣きねいりさ
以外は病気らしい病気にかかったことの夜い
せられている人達(中沢さんといっしょに働
元気夜体だったのです。
いていた人達の中にもそういう人達が多くい
(3)スミナ鋼管に入社して
です)のためにも、中沢さんのたたかいの報
スミナ鋼管というのは、住友金属の系列下
告をさせていただきます。
にある下請会社です。この会社は、中沢さん
が病気でたおれた後に有害ガスを外へ流すと
(2)中沢茂さん
中沢さんは今年51才.っスミナ鋼管化工
いう公害問題をおこした会社です。
に入社するまでは、有機溶剤など特に有害な
化学薬品の取扱ぃはしていません。
中沢さんが入社して従事した仕事は次のよ
S14.10月 西田鉄工所(東京都月島)
う夜ことでした
ポール盤工として6年間勤務
S20.4∼11月 兵隊
S45.10.19 入 社
11月まで仕上工程(塗装ずみ鋼管の両端
S20.12月 家事手伝、旅館手伝などする
−19−
]
鳥足の状態になることがありました。5月頃
」  ̄
から、のどから胸にかけてしめつけられるよ
。
うな痛みがおこり、朝食時に嘔気が強く堰吐
科でスプレー塗装)
S45.11月頃
することもしばしばありました。頭痛、頭重
感、嘔気、咽喉頭痛がだんだんひどくなって
半月程慶釣かけ作業、その後塗装作業
(S46.5.24の休業まで)
いきました。
(5)医者を転々と
その作業内容は
中沢さんが最初にみてもらったのは近所の
① ポンプを使用して塗料を塗料タンクへ
金川医院(内科)でした。さらに坂本外科、
補給する。
② 塗料の粘度、温度の測定
藤木耳鼻咽喉科などで受診しますが、病名が
⑧ 消石灰による廃酸の中和
わからず、大きい病院をまわります。
④ 塗料のパイプ内への注入作業
昭和46年6月2日 和歌山赤十字病院受診
胃潰瘍の疑いとの診断を受ける。
などで①②④では塗料の有機溶剤蒸気を⑧で
6月17日 海南市民病院で上気道炎と診断
は消石灰粉じん及び酸性ガスを吸入する機会
される。
があった。
7月 8 日 和歌山県立医大受診
脳血管障害の疑との診断をうける。
中沢さんが働いていた作業室はせまい部屋
8月11日 和歌山労災病院受診
で、その中に巾数1−0センチ、長さ5∼6メ
ートル位の塗料を入れた船型の深いおけが2
左不全マヒ左大後頭三叉神経痛と診断される。
つあります。その中に、キシレン、シンナー、
その後いろしへろの医者をまわりましたが、
塩化ビニール塗料を入れてあり、そこにパイ
有機溶剤中毒だとの診断はえられず、病状も
プを入れて塗装し、それを取り出して乾燥さ
よくなりませんでした。ただ一人、中沢さん
せるのです。部屋の中には、そのガスのにお
の症状を有機溶剤中毒だと断定して薬をくれ
いが充満し、鼻をつきます。マスクをかけて
たのは、中国からきた漢方医の先生でした。
3時間も仕事をするとマスクがまっ黄色にな
(6)労災認定の請求却下
上記のように医者の適確な診断がえられな
ります。
(4)発
病
い中で、中沢さんは体はよくならない、労災
入社して5ケ月たった昭和46年3月下旬
の認定がされないという二重の苦境に追いこ
これまで健康だった中沢さんの体に異常が表
まれたのです。
われました。手足の力がぬけ、しびれ始めた
S46.8 月 和歌山労働基準監督署あて
のです。4月中旬になると、のどが痛み、嘔
46年5月24日∼8月9日 間の休業補
気がしはじめ、歩行がふらふらし、時には千
償給付請求
−20−
S47年3月23日 上記について調査検討
第一は、利潤追求のためには、労働者の健
の結果、、業務上の疾病とは認められなしへと
康などどうなってもかまわなしへとしハう企業の
して却下される。
問題です。
(7)保健婦の支えの中で
第二は、こんなに体がポロポロになるよう
このように中沢さんが孤立無援でたたかっ
な労働災害にあいながら、その原因について
てしへるのを支えたのは、海南保健所の保健婦
はっきりした診断がえられなかったとしへう医
でした。彼女の紹介で、中沢さんは堺市耳原
療体制の問題です。
第三は、一人の市民が労働者がこんなにし
総合病院赤星医師の診断をうけ、赤星医師は
「中沢茂氏のもつ胃陽障害.呼吸器症状.中
て苦しんでいるとき、それに手をさしのべよ
枢神経症状.末梢神経障害は有機溶剤による
うとしない行政、特に労働行政のあり方の問
題です。
ものと考えられる。」と診断を下したのです。
同時に「中沢茂さんを守る会」がつくられ、
それと共にわたしたち労働組合運動忙取り
ささやかながら活動を始めました。また野間
組む者の立場からも考えなくてはならなしへ問
法律事務所に、色々お世話把なるようになり
題があります。中沢さんが発病し、スミナ鋼
ました。
管化工で公害問題がおこったことは当時新聞
(8)中央労働審査会て労災認定なる
にものり、社会間領にもなってしへました。そ
こうして、昭和50年8月、中沢さんの労
れにもかかわらず最近まで海南市の労働組合
災認定がなされたのです。
運動の課題にならなかったことは、私達の弱
点であったといわなくてはなりません。中沢
(4)以上から、請求人の昭和46年5月24
さんがこうして孤立して5年間のたたかしつを
日から同年8月9日までの疾病については、
やりぬしへてきたということは、し(たるところ
脳血管障害及び神経症に基づくものとは認め
に、第二、第三の中沢さんがしつるということ
でもあるのです。
られず、塗装業務における有機溶剤に因ると
中沢さん自身の補償を要求するたたかいも
する忙相当するものと判断する。
(昭和47年労第156号決裁書)
まだ始ま・らたばかりです。同時に中沢さんの
たたかいにはげまされて、泣きねしへりしてしへ
(9)経過をふりかえって考えること
た多くの人たちが立ち上るように、また海南
中沢さんの苦しかったこの5年間、奥さん
市の労働運動、民主運動がそうした人たちを
は「なんで私らだけがこんなに苦しまねばな
はげまし、共忙斗うようにしていかなくては
らないのか」とこぶしで水道の蛇口をたたい
ならないと思し(ます。
て苦しみをこらえたというこの5年間は、私
☆
☆
☆
中沢さんを苦しめた(和歌山)地方労災保
たちにいくつかのこ
−2l−
険審査会の業務外認定において決定的な役割
の同族体による中毒の認定基準に達しないと
を演じたのは、和歌山労災病院Y医師の意見
考える〃としてしへる。
書のようである。
これは、同医師がベンゼン(主として血液
意見書ではtt作業環境のキシレン、MIB
の変化)と、それ以外の溶剤(枯膜刺戟、精
Kが許容量を上まわり悪条件にあった〝こと
神神経系、消化器症状)の症状の違いを十分
を認めながらtt46.5頃一時的制裁症状ある
に理解せず、ベンゼソを中心につくられた認
いは一般不定の症状が認められるが、たとえ
定基準をうのみにしたものである。ベンゼ/
前者であるとしてもマスク着周把よりさけら
がほとんど使われなくなった後にも、認定基
れ、又持続するものでもない〃と的はずれの
準の改訂を行わなかった労働省の怠慢もはな
意見を述べてしへる。さらに、tt持続する症状
はだしい。近く改訂される“溶剤中毒の認定
は中毒特有のものでもなく、胃潰瘍、一般脳
基準,,は、まさに中沢さんのような症状を典
血管障害および頚神経症状であり、検尿、検
型的な溶剤中毒としていると伝えきくが、余
血、肝機能検査で異常なく、ベンゼソ又はそ
りにも遅きに失する処置である (JR)
報告3
北海道忙おける59号通達以後の情勢
北海道職業病対策連絡協議会
事務局長 鞄畑 勉
北海道では国民金融公庫労組札幌支部のな
きわめて政治的な判断であると推測できます。
かま5名が「けいわん」で労災申請してい増
このような背景があるものの、通達との関
したが、さる7月、全員が不当にも「業務外」
連につしへて、基準局の説明では「業務量が基
にされました。
準忙達していなしハ」としていますが、調査時
この間題は、原処分庁である札幌労基署長
点を私たちの主張どぉりにするならば基準に
が5月中旬に「『業務上』という方向で結論
合致する業務量でした。
をだす」と発言してし(たものを、北海道労基
また、59号以後の特徴としては申請中の
局長が指揮権を発動し、本省とも連絡をとり
労働者忙対し、「受診命令」を強要、それに
ながら結論をだしたものです。
従わない場合は基準局にりん伺をするという
したがって、「業務外」の背景としては、
二者択一をせまる攻撃がでています。
政府系金融機関である国民金融公庫の労働者
これ忙対し、私たちとしては「なぜこうしっ
忙「 ̄業務上」をだすならば、当局の「合理イb
うやり方をするのか、従来なかったではなしへ
が進まず、加えて各地で申請している公庫の
か」との追及忙対し、署長は「条件としては
夜かまの「認定」にも大きな影響を考慮した
新らしし(ケースであり、他の医師にもみても
−22−
らいたい。また受診命令にこたえなければ判
の現状をみる_」、「今後の治療の適否・につし(
断がむずかしいので局にりん伺をするしかな
て」として、頸、腰のレントゲンをとり5分
い_」と答えています。
間くらしへで終ってしへます。
また、59号通達以後、労基署から企業に
しかしこのことは労基署が「新しいケーろ」
という口実のもと忙受診命令を強要し、自ら
対して徴.収ナる調査資料の内容について「業
の判断を放棄する二重に不当なものです。て
務量」の調査方法は「他の同程度労働者との
うしっう事であれば、現代の資本主義的合理化
比戟」を月別忙、また「一日の業務量の概ね
のもとで、「新らしし。■へケース」はあらゆる職
20ヲ乙以上増加の日が十日以上ある場合」を
種から発生の可能性があり、常に「斬らしい
書かせ、また、労使関係(本疾病の災害補償)
ケース」として受診命令を強要されることに
につしへても報告させる内容になってしへます。
この報告者は全1投的に59号通達忙沿った
なります。
内容になっており、以前の報告書とはかなり
またりん伺につしへても労基署長が権限とし
異なったものになっています。
て持ってしへる「認定権」を自ら放棄するもの
で、このことは当然「義務」つ放棄にもつな
以上のように59号通達以後、多くの特徴
がる国民の公僕としてあるまじき言動です。
的た点が見受けられ、私たちとしては、特に
一方、認定後治療を継続してしへる雁病者に
「受診命令」忙つしへて大しへに問題を感じ今後
も「受診命令」が出されてしへます。この場合
適切な対処をしなければならなしへと考えてい
は日時を定め、受診の内容としては「職業病
ます。
講座第2回
労働安全衛生法物語
企業は安全衛生義務を果しているか?
是 我 法 太 郎
つぶし、能率の上る山だけをどんどん掘って
新しい年の暦はめくられたが、みんな忘れ
行ったが、掘りつくした坑道は簡単に閉じて
てしまってはい夜しへか。
去る75年11月26日、北海道の幌内炭
次を掘る。北海道の山は炭層から出るメタこ/
鉱が5月の夕張忙つしへでガス爆発を起した。
ガスが多しへので、それが次第にこもる。ガス
40名の死亡者を出したが、そのうち13名
濃度が5∼10多になると、電気の火花でも
は生死不明のまま鉱を水没させられた。丁度
ハツパの火でも着火して爆発する。’ガス圧は
10年前、65年2月にも夕張炭鉱モ70名
山を深く掘るほどふえ、温度も上るから危険
の死亡者を出したガス爆発があったが、これ
はそれだけ増加するが、、急に掘るほど危い。
は炭鉱「合理化」にようて能率の上らぬ山を
この山では生産量を60年の平均1人20ト
−23一
ン(月)から40トンへと上げたところで起
環境権をギセイにして生産量の引上げだけに
きた。そして、原因を調査、究明しない間に、
専念したのである。企業も国もその姿勢をと
って来た。それは果して、石炭生産の分野だ
「採掘跡の自然発火で山が危くなった」とい
う理由で鉱内を水没させたのであった。
けであろうか。
今度の幌内鉱爆発は、石油ショック以来、
労安法によると、(A 企業は重役クラスの
やはり掘れる石炭は掘ろうと、機械化をすゝ
総括安全衛生管理者を責任者として安全対策
め、1人当り70トン(月)生産をめざして
を重視し、① 安全衛生計画(長期の、短期
海抜800メートル(72年)の深さから、
の両方)の作成と予算化、その実施と点検、
.「1「1r㍉ ̄二 ̄二_▲
1100メートル(76年)へと急速に掘ろ
② 安全衛生教育(労働者に対する、職長に
うとし、1000メートルの地点で大爆発が
対するの両方)の計画と担当者の決定、③
起った。あくまで、ゆっくり掘りながら、、ノガ
健康診断(雇入時、定期、臨時)の計画と医
スを十分抜かねばならないのを怠っていたの
師の決定、、実施結果に基く事後処理、作業環
である。今、北海道の炭鉱はどこも急速に底
境の管理、保健指導、④ 災害、職業病の原
/\底へ掘ろうとしている。
因調査の組織と報告から防止対策に対する決
定(認定を含む)、⑤ 対策上の研究テーマ
ガスの測定は法規で毎日定められてしへるが、
生産第一のため形だけに終り、規準以上の数
の決定、⑥ スポーツ、、リクリエーションの
字が出ると監督官に改善を命令されるので、
便宜供与、⑦ 安全衛生委員会を開いて労働
報告書にはしへつも低い数字が書かれていた。
者の声を開く。夜どを行わなければならない。
夕張災害は、監督署の再三の改善命令にたい
互換や坂全衛生を担当する部局や
連当者(安全衛生管理者など)、スタッフ(
し、「採炭を行しへながら坑道を修理すること
はできなしハ。だから公休日を利用して修理す
産業医など)を整備、充実させ、日常的に、
る」と伸ばしたあげく、報告書を会社が提出
① 作業場の巡視、点検、監視、(診 作業環
した日に起った吟である。
境の測定(測定器の設置、管理)、⑧ 労災、
幌内鉱災害では、完全武装の救助隊が.入坑
職業病の原因調査、④ 健康診断、健康相談、
したのは爆発後数時間も経ってt(たし、人間
健康異常者の保護、⑤ 安全衛生日誌こ災害、
よりも炭鉱が大切としへう事後処置であった。
疾病統計の作成、⑥ 教育材料、統計、カル
これは、10年前よりも良くなるどころか、
テの保管(普通は5年、発ガンのおそれある
悪くなっている。ソ連のドンバス炭鉱では、、
者は30年、退職後も一生保存されるべきだ)
どこでも250−300人の救助隊が30分
収集、⑦ 専門家の援助、洛力、連絡をえる
以内忙かけつけられる体制がとられている。
(診 監督署との連絡、⑨ 安全衛生委員会の
炭鉱の「合理化」は、安全への投資、対策
参加、⑩ 救急訓練と体制の整備、などを行
をおろそかにし、人間の健康権、生命保持権、
わせ、その意見、勧告、助言を尊重しなけれ
ー24−
たが、新らしい原料を使う配合表を会社が一
ばならない。
次に、企業は、紅)職制(ライン)を通し
方的に廻し、技術部長は工場へも来ません。
′、JデヽJrヽJFヽ_′
て職場のすみずみに安全衛生を湊透させるた
従業員のからだへの有害性の検討に会社は
め忙、① 機械、工具の改良と安全性の確認、
無関心なのです」組合で職場点検したら(機
わるしへものを直させる、(診 材料、製品の有
械を止めて)、278件の欠陥が出てきた。
害性、危険性をしらべ、労働者全員に知らせ
(A塗料)
る、(診 安全衛生教育のための職場集会を開
「安全衛生委員会を開いても会社が主導権
をもってtハます。お金のかかることはさける
く、④ 環境測定をしながらたえず職場を改
善する、⑤ 健康診断を実施して、その成績
といっ、た状態です。組合の幹部自身にも企業
を知らせる、(⑤ 保健指導、健康相談、体育
意識が強く、そこまでしなくてもとしっう意見
活動、職場体操、リクリエーション、栄養改
が強しへのです」
善など職場の意見を聞く、⑦ 作業基準や点
(B染色)
「会社内の統計と、親会社の公表統計とで
検チェックリストを検討し、労働条件(作業
災害の数が違って封り、49名の重傷、75
量、密度、スピード、連続、休憩、婆勢、人
名の職傷が負傷0と発表されてし1ました。下
員、時間など)を改善する、(診 安全衛生教
請会社は親会社をおそれて、災害さえかくし
育のテキストを作る、(診 二救急の訓練、予防
てしへます」
具の点検を行う、などを行わなくてはならな
(C建設)
「監督署へ提出した災害報告書をたまたま
しつ。職場の末端で、職制と労働者がいつも安
見たら、みんな本人の不注意にされていまし
全の問題を話し合い、会社忙改善の凛求が出
た。また、事実も違ってしへました。」
せるフンイキを作ることが何よりも大切であ
(D機械)
幌内鉱は1人が1年に1回はけがをするほ
る。
ど災害の多し1職場であったのに、無災害記録
これらのことを、企業は忠実に行っている
で労働大臣賞を受けていた。これでは、殺さ
だろうか。そのための予算を立て、担当者を
′㌧ノ■二㌻㌫′㌧ご\′
おいてしへるだろうか。「 ̄安全第一」は北風忙
れた労働者と家族のうらみが晴らされるはず
吹かれてし(る旗やポスターだけのことであろ
がない。労働者の生命を尊重することが、す
うかっ もう一度職場の状態を調べてみよう。
べての議論に最優先されねばならなしへ。
労働者がものを云えかへ あくびも雑談も
大阪の労働安全衛生研修所の調査(1973)
忙よると、労安法ができてから総括管理者が
できない、疲れても休息できない、、からだの
決められた、安全衛生委員会がふえた、安全
具合が悪くても仕事を休めなレ\仕事のため
パトロールがふえた、の三つだけで、その他
にけがや病気をしても公傷病にしてもらえな
はほとんど変ってしへなかった。
い、そんを職場骨ま安全や衛生は守れない。汗に
まみれて働レTnへる現場の切実夜声を何よりも大
「労使で合理化事前協議の協定を行ってい
切にする職場を作らねは汝らないのである。(つづく)
ー25−
‥読者からのたよ カ(■1)
日本専売公社浜松工場松本澄美子
で責任をもち、新たな患者を発生させてはな
あけましておめでとうどざhます′
昭和51年元旦、ぶ厚い年賀状こんなにたく
らないのでサロ
昭和44年発病時、腰痛で休み明日より出
さんきたのは生れてはじめてです。その内8
割が浜松のたばこ労働者で私の斗いへの期待
動しようとする私に「「仕事は替えなしへ今ま
と励しです。
でどおりやって貰う」と公社幹部の冷酷なこ
とば、「専売の仕事はみな摩作業です」と当
新しい年をいかがお迎えですか//私は職場
事の公社診療所長。
のみなさん、全国の皆さんの暖い友情で元気
私は再三に亘って「仕事でなったのだから
に新ししへ年を迎えることができました。
認めて下さい」と公社へ云って来ました。で
職場で働きたしつ′みんなと話し⊥諸に仕事
をしたh′その願しへで痛むからだを厳しく見
もこの6年間公社は認定を放置してきたので
つめ、ある時はくじけそうになりながらも今
す。
去る12月3日、公社は休業後2年6ケ月
日まで精一杯がんばってきました。
この6年間の私の日記を読むと、私の病気
たったとして無給休職辞令を持ってきました。
このままでは一年後には解雇の辞令かきます。
が仕事でなったのだとしへう確信がより一層強
認定をさぼり「方的に私病扱いを押しつけて
くなっていきます。自分の記録ながらそれを
読み返す蒔専売公社への怒りの涙を禁じ得ま
きた公社のやり方は本当に卑怯です。どうか
せん。今も公社は私だけでなく、大勢の患者
公社が一日も早く業務上と認定するようより
を苦しめ、その責任から逃れようとしていま
一層ど支援お願いします。
す。専売公社は患者を業務上と認め、治るま
読者からのたよ カ(2)
八幡製鉄職対協 責任者福田紀六
日に「八幡製鉄構内のすべての職場から労働
「労働と健康」誌を中心とした大阪の生命
と健康を守る実行委員会のみなさん。
災害と職業病をなくす対策連絡路議会」
新ししへ年にあたり、みなさんの御健斗を期
略称=八幡製鉄職対協を発足させ、腰痛症の
待しています。私たちも、コークス工場の肺
労災認定や「医師選択の自由」のたたかい等、
ガン斗争の教訓、全国職業病交流集会や、北
すすめています。二運動を前進させる上からも
九州職対連の援助を受けて、昨年12月20
貴誌「労働と健康」は大いに役立っています。
−26−
今後も交流を含めながら共に前進しましよう。 して下さい。
5,000円同封します。誌代および、∇代と
...■■
読者のみなさん、どしどしおたよりを送って下さい。本誌への注文、御意見もどうぞ。
−
頸 腕 斗 病 日 記
田 中 澄 子 君
田申さんは、看護婦として主に注射ばかり続けて、囁肩腕障害、腰痛になった患者さんで
現在労基局に異議申請中である。三重県の患者組織を急速にもりあげてしへる活動家の一人で
でもある。この人が詩集を作った。文字どおり斗病の記録である10の詩がちりばめられ、
読む人の心をうつn「私のからだの右半分はすっかり冷えきって、頭のどこかでネジでも抜
けたような」「しびれた手に音の存在感がない……すでに雪を落した手がご飯をすくいに行
く」「二年もたつと、じっと静かに痛みをかみしめながら簡肉たちの言い分を聞くようにな
った」そして「共に斗う仲間の声がある、投げ捨てられた生命ひとつ抱えた私だから負ける
わけにはいかない」
領価200ぎと送料を、津市船頭町東1667 木村様方 田中澄子へ送れば、あなたの
手にとどくび.
書 評
谷間 の生霊 た ち
朝 海 さち子
筑摩書房 880円
この本は、重症心身障害児施設における障害児たちの安楽死の問題をテーマ忙してぃる。
しかし、安楽死が問題になってくる背景にはわが国の社会福祉対策のたちおくれ、「篤志家」
にまかされている現実のなかで、5重苦をもった18キロの子供のざぶとんのように大きい
おむつかえ作業に象徴されるような看護嫡の重労働がある。ここではどうしても男の手が必
要だ、と著者に語らせてしへるが、看護婦がつぎつぎと腰痛で倒れ、施設全体がまひ状態にお
ち込んでいく様子がさまざまな観点からえがかれてしへる。これらは重度心身障害児施設だけ
の問題でなく、現在、頸肩腕障害や嗟痛を多発させている保育所においても同様である。ぜ
ひ一読をおすすめしたい。 (J)
−27一
⋮F
書 評
一﹂
編 集 部
書 評
労働者教育協会編 学習の友社 200えん
母性保護 一母となる日のために一
母性保護をスローガンにさせないために、医学的に母性保護、生理休暇の大切さを十分に
学習することが第一に必要である。この本は、男性と女性のからだや諸機能の違いを具体的
にわかりやすく述べてあり、母性を保護し守るたたかいの重要性を学ぶことができる。
書 評
健 康 の 設 計
神 山 恵 三
大月書店・国民文庫
¥300
慎環境破壊や危機状況に圧倒されてしまえば本当の健康を取庚すことはできなしへ。圧倒さ
れないためには、まず状況に対して正しい認識をもつこと、そしてたくましく、、しなやかに
対決していく神経系の強さこそ必一要〃で、代神経系を健康に保つことが健康法の基本〃とし
てしへる。そこでこの本は神経系の強化のため忙自然や毎日の生活の中でどのように環境を知
り、それ忙どのようにたちむかっていくか、また日本の四季にどう対応してしへくかを具体的
に述べてしへる。さらに幼いころの神経系は環境からの影響が大きしへとしへうので子供と環境に
ついて一章をもうけてしへる。
最後灯建廣設計の3原則・18ケ条を提起してしつる。神経系をきたえることの大切さとそ
の観点からして現実の自然、労働、生活環境がどのような形忙ゆがんでしハるかを知るチェッ
ク.ポイ/トを教えられたという意味で興味深く読めた。聾者は、気象研究所、研究室長で
専攻は生気象学です。
(T)
◇労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(政令第l号)
1.製造許可の対象となる物質としてべ/ゾトリクロリドを加えることとした。
2.硯忙使用している労働者に対しその業務忙従事しなくなった後にか.っても特別の項目に
ついての健康診断を行うべき有害な業務としてベンゾトリクロリドを製造、又は取り扱う
業務を加えることとしたっ(第22条関係)
健康管理手帳を交付する業務として、<ビスクロロメチル>エーテルを製造し、又は取
り扱う業務等4の業務を加えることとした。(第23条関係)
−28−
労災・職業病日誌(1975.11.∼12.)
11月1日 長崎県の三菱高島炭鉱でガス
が通過の車にひかれて死亡。
爆発がおこり、2人死亡、25人重軽傷(う
4日 三井東圧化学名古屋工業所ではその
ち7人は一酸化炭素中毒症状)
後、追跡調査で明らかになった在職中死亡者
1日 大阪の三井東圧で3人の塩ビモノマ
4人(高橋さん、小野さん、前田さん、森さ
ー中毒症状の疑しへのある肝炎の患者がみつか
ん)の労災申請を行うと発表。
り、大阪労基局では「さらに詳細な調査」を
4日 阿南労基署は日本電工徳山工場のク
約束。
ロム作業者で労災申請をしてしへた45人に対
2日 三井東庄名古屋工業所で塩ビモノマ
し全員認定した。
4日 大阪市大工学部の大学院生が大学の
ーの犠性者の遺族小野さんが「夫の労災手続
をとるよう」に会社に申し込まれた。3日に
研究室の安全問題についてのアンケート調査
も6人目の犠牲者とみられる永井さんの遺族
を行い、発ガン物質を取扱ってしへる人が45
が同様に訴えたっ
多、爆発の恐れのある薬品を使っている人が
24舜あり、実際に40多の人が事故を経験
2日 名大付属病院の稲垣孝雄医師は、三
井東庄名古屋工業所で、三年以上重合ガマの
しており、危険しへつばいの研究室が明らかミ′こ
清掃作業に従事してしった従業員のほとんどが
された。
5日 愛媛労基局と新居浜労基署は住友化
何らかの塩ビ障害をうけてしへることを明らか
学菊本製造所に立入り調査をし、在職中、退
にした。
職後の死亡者19のうち2人(しへずれも塩ビ
2日 労働省は、1972年に塩ビモノマ
ー作業員1600人に対する健康調査で、50
の製造、取扱者)が肝硬変で死亡してしっるこ
人にモノマーを吸ったため指先の骨が溶けて
とを重視し、死因と塩ビとの因果関係につしつ
なくなる骨端溶解症にかかっていることを把
てさらに詳しく調査するよう同製造所に指示。
握しながら国内では公表していず、ニューヨ
5日 大阪労基局は三井東圧化学大阪工業
ーク科学アカデミー定期報告書1975.1.30
所を立入り調査を実俺。4日は鐘渕化学茨木
工場を立入り調査。
(坂部弘之、労働省労働衛生研究所)に発表
5日 大阪府下の泉佐野市、高槻市、大東
していた。
市、富田林市の公立保育所の保母4人の病気
2日 長崎県三菱高島鉱の発電所で作業中
の婦∧労働者(42)が粉炭タンク忙足をす
が公務上と認定された。大阪府下で始めての
べらして転落して窒息死する事故がおこった。
ケース。
4日.貝塚市のマンホール内でネギ畑に水
8日 松下電器では3名の職業性頸肩腕障
を引く作業をしてしハた農業の桝谷さん(63)
害忙かかった婦人労働者に対して労災申請を
−29−
拒否し、憲法に違反する敷かずの基本的人権
し」と報告され、お寒い労働行政の実態が明
侵害がでていることが明らかになった。
らかにされた。
13日 労働省は全国のクロム障害が553
6日 多聞台保育所の保母、大鼓都司枝さ
人いるとの一斉調査結果を発表した。
んがオルガンをひいている時に脳動脈りゅう
16日 日本化工のクロム中毒遺族30数
で倒れ、死亡。
6日 愛知労基局、6名塩ビモノマーの労
人「日本化学の六価クロム禍被害者の会」は
災申請が出された三井東圧化学名古屋工業に
日化工に対し約17億円の損害賠償を請求す
立入り検査を実施。7日、同工業所で、これ
る訴訟をかこすことを決めた。
まで離、退職した元従業員(120人)を対
15日 日鋼室蘭製作所で吉田さん(24)
がガス切断機の下敷になり即死。
象に臨時の健康診断を開始したっ
7日 オランダの精油所で爆発がおこり、
21日 同大付属病院で治療に使われた放
射性同位元素セシ′ウム137が放置され、看
15人が不明。
7日 大阪市大正区で電線工事の作業員(
護婦が知らずに放射能をあびてし(たことが判
近嶺電気)が感電し意識不明で死亡。同日、
明した。
21日 郵政省は、特定郵便局の職員相沢
近畿電気の下請作業員が電線工事中、誤って
高圧電線に触れ感電死した。
さん(26才)の腰痛を職業病と認定した。
9日 死者458人、CO中毒患者839
特定郵便職員として全国ではじめてのケース。
人を出した三池炭鉱大災害から丁度12年を
21日 和歌山市湊、住金和歌山製鉄所で
むかえ、大牟田市で、E池大災害12周年
火事がおこり、機械を清掃していた中田電機
抗議集会」が2千人り参加でひらかれた。
従業員が全身に大やけどをした。
12日 京都城腸市の社会福祉施設「南山
22日 京都府農林労組は、チェンノーの
城学園」で精薄者の園生約8、0人に、作巣、
販売店と交渉し、販売店と輸入商社の責任で
機能訓練としてシンナーの原液がしみこんだ
防振装置の不十分な機種(労働省基準の加速
ウェスの洗たくという危険作業を8カ月従事
度3ジーをこえる)を無料で交換することを
させていることが父母からの訴えでわかった。
約束させました。
27日 北海道の幌内炭鉱で坑内ガス爆発
その後の調査で園生のテンカン発作や、シン
ナー中毒で工場内で転倒する園児や火炎も発
事故があり、31人が坑内に閉じ込められた。
生しており、園はこのシ∵/ナ一作業を中止し
死亡7、不明17人、29日、生死不明の13
た。
人を坑内に残したまゝ再爆発の恐れのため、
12日 塩ビモノマーを取扱う日本ゼオン
坑内に注水消化した。注水でも数人ケガをし
高岡工場で今年春実施された健診で、肝障害
た。
者が21人もでているのに労基局に「異常な
29日 千葉県市原市のゴルフ場の造成工
−30一
事現場で土砂くずれがあり、8人が死亡(う
るとの考えを明らかにした。
ち3名が東北地方からの出かせぎ者)
14日 関西電力の配線コニ事を請負ってしへ
る近畿電気工事痍式会社で労働者や二次下請
28日 福岡県の鉄道弘済会の女子販売員
千代谷寿枚さん(26)は74年に、腰痛症
の労働者のなかで感電死亡事故がか.へつぎ、
・頸肩腕障害で労災申請し、75年4月に業
ことし4月からすでに7人が死亡し、特に10
務外とされた。しかし、その後この判定に不
月以降は5人も死亡していることが判明。
服を申したて、闘病生活8年目にやっと業務
15日 鹿児島の屋久町で国有林の材木作
上とされる模様。
業者で白ろう病の認定患者、佐々葦さん(53)
12月1日 韓国の冷凍機からもれたア/
は死亡した。全国ではじめて。
モニ了ガスが爆発し、2名の女子労働者が死
17日 動燃事業団東海事業所でプルトニ
亡し、80余人が病院にかつぎこまれたがす
ウム汚染事故がおき、作業員が被ばくした。
べてガス中毒。
18日 大阪西成区の地下水そう工事で浜
脇塗装工業の2名がシ∵/ナー中毒で倒れ入院
2日 大阪市住之江区、川鉄倉庫大阪事務
所で中谷運輸のクレー/が突然折れ、川鉄倉
した。
庫の三沢さん(58)が即死、他1名がけが。
22日 北海道の日本電工旧栗山工場で働
5日 西成区の橋本貴金属工業で運搬中の
き鼻中隔せん孔にかかった元従業員115人
の六価クロム中毒労災申請に、9人をのぞく
薬品が爆発し、2名がやけどをした。
6日 日本化工工業はかねてより1957
89人に業務上と認定。
年以前のクロムによる被害を知らなかったと
23日 東京都は日本化学工業から買収し
弁明していましたが、すでにその4年前の、
た江東区の土地が六価クロムに汚染されてしハ
1953年に同社が大阪市大公衆衛生教室に
たことで、.同社を相手どり、その無害化処理
調査を依痍し、多数の鼻中隔せん孔患者がい
費用として13億3千万円の損害賠償を求め
た事実をつかんでいたことが判明した。
る訴えを東京地裁におこした。
6日 大阪労働者の生命と健康を守る実行
23日 京都市の清水焼製造業、共立陶業
委員会、約100名の参加者で「労災、職業
の従業員森田さんの清水焼じん肺の損害賠償
病年末集会」が森の宮、市立労働会館で開か
請求訴訟に対し、京都地裁は、会社側の責任
れた。特別講演は丸山博氏の「■基本的人権と
をきびしく指摘し、森用さんの家業の影響も
健康基本権」
考えられるとして請求額の約半分にあたる
293万余円を支払うよう命じた。、
11日 衆院社会労働委員会で社会福祉施
25日 労働者災害補償保険審議会(近藤
設で働く労働者の労働条件が悪く、8割が労
基法違反をしていることが指摘され、田中厚
文二会長)は長谷川労相に対し、労災保険の
相は来年度予算で社会福祉職員の増員をはか
改善策を建議した。具体的な改善内容は、51
−31−
年度予算のなかで、① 社会復帰、労働安全
体制塵備要員として4,371人、保育所の休
衛生の両事業の拡大をはかる ② 休業特別
憩時間確保要員として5,059人を増員する。
支給金の支給開始日の繰り上げ(現行の休業
27日 労働省労働衛生研究所長谷川弘通
8日目を休業4日目に)⑨ 特別加入者(
氏は科学技術庁で記者会見を行い、塩ビモノマ
中/」、事業主など)に対する通勤災害保護制度
マー壮肝臓に悪影響を与える鱒けでなく、骨
の適用、などを盛りこむよう求めている。
髄にも影響を与えると発表した。
28日 インドで炭鉱爆発があり、900
25日 全日空は大阪国際空港での手荷物
人近くの鉱員が生きうめとなった。
の積みおろし、運航整備二客室整備などのい
29日 高知で削岩機を使用する建設労働
やがる仕事や危険作業を下請会社の大阪空港
事業株式会社に低賃金(60喀強)でおしつ
者3人が振動障害にかかり労災申請を行なっ
けてぉり、大阪民主法律家協会の弁護士3人
ていでしたが、このほど職業病として認定さ
はこうした航空産業における「合理化」の実
れた。今年9月出された認定基準で削岩機は
態を現場調査した。
除かれていたため、その後の削岩機による振動
25日 春斗共斗委員会が1976年春斗
動病の職業病認定は始めてということに夜る。
30日 三井東圧名古屋工業所で13年間
白書を発表。「労働安全の確立を掲げ\患者
に対する補償と共に、進んで「 ̄法改正」をし
下請労働者として働いていたNさん(61才)
て労災職業病の挙証義務を企業に負わせると
は、作業中塩ビモノマーの急性中毒で倒れ、
共に労働者が安全を確認しない限り労働をし
それ以後性格が一変し、現在精神障害に悩ん
なしへ制度に転換する」必要をあげている。
でおり、さらに、三菱モ/サント化成四日市
26日 社会福祉施設職員の増員計画に対
工場でも、塩ビ作業者で精神障害をかこして
し、人事院は来年度予算に70億を認めた。
いる労働者がおり、塩ビ中毒による後遺症と
これにより51年10月から収容施設の夜勤
しての精神障害が疑われている。
大阪労働者の生命と健康を守る実行委員会編
−たたかいの前進−
■ 労災・職業病斗争の課題
細川、辻村、水野輌
好評発売中ねだん¥980
−32−
第4回 「労働と健康」読者会
洗剤問題について(忘誉讐姦墓雫去い)
と
き
1976・仁這(金)
PM6:30′−−9:00
と こ ろ
大阪市立労働会館(森の宮)
チューター
済生会野江病院 西谷宣雄先生
第4回「労働と健康」読者会は、14号についての討議・学習が第9回春斗討論集会にてなされ
ますので、下記のレジメの内容で、学校・保育所・食堂等で多発する洗剤による皮膚障害について
行います。チューターの西谷先生は、とくに職業性皮膚障害についてのど専門で、大阪安全衛生研
修所の講師、大阪府職業病センターの嘱託医ををさっています。多数ど参加下さい。(定期講読者
は無料)
洗剤の危険性については、今日社会的関心のたかまゎがみられ、多くの人々がさせざまな視点か
ら、//追放//の叫びをあげていせすが、私は、洗剤を使用し乍ら、働いている人々の健康は如何に
守られる可きか…というところから考えを進めていこうと思いせす。
洗剤を使用して働いている人々の職業性皮膚障害の実態については、労働と健康(第4号)で、
「給食調理作業者の洗剤皮膚炎」について述べたのに続き、「労災職業病闘争の課題 開いの前進」
のなかでも、「学校給食施設従業員の洗剤皮膚炎」について、報告しぜじたが、最近、新たに市学
校給食施設及び保育所給食施設従業員の皮膚検診を行った結果や、小企業内で働く調理作業者、美
容師…などの洗剤による職業性皮膚障害の診療体験や、或いは、洗剤製造工程に働く人々から、高
級アルコール系洗剤成分による接触性皮膚炎(かぶれ)が出ている事実を教えられたゎしたこと等
から、今日、マスコミを通じて安全性を宣伝されている高級アルコール系洗剤によっても、なお高
率の皮膚障害を出していることが判カ、又、それぞれの職場特有の作業環境・労働条件によって、
「公務員労災基金当局者等には、知られてもいなかった」様な、労働者の健康破壊がすすんでいる
事も知り得たのです。
私は、これ等の職業性皮膚障碍の症状の分析をこころみると共に、その原因となわ、公労災認定
の拠わどころとなった、不健康な作業環境・労働条件に検討を加え、単に洗剤追放にとどまらをい、
職場環境の改善に取カくむ…ための、資料にして欲しいと考えています。
一3a一
第9回 春斗討論集会ど案内
と
き
51年2月24日(火)
午後6時∼9暗
中の島中央公会堂 会議室
と こ ろ
フ ̄ −
マ
① 労基法および労災法改正をめぐって
同志社大学教授 角 田 豊
(多 国会における最近の具体的夜勤きについて
全ノ労 働
資料として本誌16ページのレジメおよび以下、①労働者災害補償保険法等の⊥部を改正する法
律案要綱(1月21日上程)②1976年春斗自書(春闘共闘委員会編)
労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案要綱
第1 改正の愚旨
最近における労働災害及び職業病の発生状況、労災保険給付受給者の実情等に鑑み、年金給付
等の内容を改善整備するとともに、労働者の福祉の増進のための事業の整備拡充を図ること。
舞2 改正の内容
1 制度の目的の改正
労災保険は、労働者の業務災害及び通勤災害について必要夜保険給付を行へ併せて、被災
労働者の社会復帰の促進等を図るとともに、労働者の安全及び衛生の確保その他労働者の保護
の充実を図ることによわ、労働者の福祉の増進に寄与することを目的とすることを明らかにすること。
2 給付内容等の改善
(1)給付基礎日額の計算の整備
労働基準法第12条の平均賃金額を給付基礎日額とすることが不適当であるときは、労働
省令で定めるところによって政府が算定する額を給付基礎日額とすること。
(注) 労働省令においては、傷病の療養のため休業している期間及びその期間中に受け
−34T
た賃金は、給付基礎日額の算定基礎から除外する旨の規定を設けること○
(2)長期療養者に対する給付の改善
傷病が療養の開始後1年6箇月を経過しても治ら凌い場合には、引き続き療養補償給付を
行うとともに、労働省令で定める症状の程度に応じ障害等級1−3級の障害補債年金の額に
準ずる額の傷病補償年金を支給すること。
なお、これに伴い、長期傷病補償給付は、廃止すること。
(3)スライド制の改善
保険給付(休業補償給付を除く。)の額のスライドの要件である賃金水準の変動幅(現行
20%以上)を10%以上に改めるとともに、スライド率の計算の基礎と浸る期間を年度単
位(現行暦年単位)に改めること。
(4)他の社会保険給付との調整の改善
同一の事由について労災保険の年金と厚生年金保険等の年金とが支給される場合における
労災保険の年金の額については、現行の減額方式を改め、政令で定める率を乗じて減じた額
とすること。
夜お、療養の開始後1年6箇月を越えて支給される休業補償給付についても、同様とする
こと。
(注)通勤災害に関する保険給付の内容等についても以上と同様な改善措置をとること。
3 特別加入の拡充
(1)国内に主たる事務所を有する事業から国外に派遣される労働者を、特別加入者の範囲に加
えること。
(2)特別加入者のうち、中小事業主、一人親方等については、通勤災害に関する保険給付を行
うこと。
4 メリット制(事業所どとの災害率による保険料の調整)の拡充
(1)事業所どとの災害率による保険料の調整幅を、一般事業については35%(現行30%)
以内、有期事業については25%(現行20%)以内に拡大すること。
(2)事業所どとの災害率による保険料の調整率の計算の基礎に、労働省令で定めるところによ
少、特別支給金の額を加えること。
5 労働福祉事業
現行の保険施設に代えて、労働福祉事業として次の事業を行うことができるものとすること。
(1)被災労働者の円滑な社会復帰に資するために必要な事業
(2)被災労働者及びその道族の援護を図るために必要な事業
「3む−
(3)労働者の安全及び衛生の確保等を図るために必要夜事業
(4)労働条件に関し労働者に対して必要な保護を行うことその他労働者の福祉の増進を図るた
めに必要な事業
6 その他
(1)昭和35年3月31日以前に打切補償費を支給した者に係る年金額の減額等の措置は、廃
止すること。
(2)その他関係法律の規定について所要の整備を行うこと。
7 実施期日
この改正法の内容は、昭和51年中の政令で定める目から実施すること。ただし、2、3及
び4は、昭和52年4月1日から実施すること。
8 経過措置
他の社会保険給付との調整の改善に伴う経過措置その他以上の改正に伴う所要の経過措置を
定めること。
(参考)
特別支給金制度の改善、整備
1休業特別支給金の支給開始日を現行の休業8日目から休業4日目に改めること。
2 障害補償給付、遺族補償給付及び傷病補償年金の受給者に対し、3箇月を超える期間どとに
支給される賃金(給付基礎年額の20%相当額(最高限100万円)を限度とする。)に所定
の給付率を乗じて得た額の特別支給金を新たに支給すること。
3 長期療養者に対する給付の改善に伴い、長期傷病特別支給金を廃止し、次の経過措置を設け
ること。
(1)長期傷病補償給付及び長期傷病特別支給金の受給者であって、その受給総額を傷病補償年
金及び2の特別支給金の合計額が下回ることとなるものについては、その差額に相当する額
の特別支給金を支給すること。
(2)休業補償給付の受給者が傷病補償年金を受給することとなった場合においても(1)に準じた
措置を講ずること。
4 1は、昭和51年中の改正法施行の日から、2及び凱は昭和52年4月1日から実施するこ
と。
一36−−
労災保険の制度改善案概要
(参考)
現 行 制 度
改 善 事 項
労災保険は、労働者の業務災害及び通勤災 労災保険曙、労働者の業務災害及び通勤災
害について必要な保険給付を行へ併せて、 害ねっいて必要な保険給付を行へ併せて、
労働者の福祉に必要夜施設をなすことを目的 被災労働者の社会復帰の促進等を図るととも
目
的
とする。
療
養 療養補償給付(療養の給付又は療養費の支給)
に、労働者の安全及び衛生の確保その他労働
者の保音の充実を図ることによカ、労働者の
福祉の増進に寄与することを目的とする。
○休業補償給付
賃金日額の60%休業4日目から支給
休
業
0休業特別支給金
賃金日額の20%休業8日目から支給 休業4日日から支給
○長期傷病補償給付(療養3年経過後に支給) ○傷病補償年金(療養1.5年経過後から支給)
賃金年額の60%
傷病の程度に応じ、賃金年額の67∼86%
療養給付又は療養費の支給
療養補償給付を引き続き支給
○長期傷病特別支給金
○特別給与を基礎とする特別支給金
賃金年額の20%
特別給与の一定額の67∼86%
長期 療 養
特別給与を基礎とする特別支給金の新設
0障害補償給付
障害1∼7級 特別給与の一定額の86
障害1∼7級 賃金年額の86∼36%
障害8∼14級 賃金日額の503∼56日分
障
害
′}36%
特別給与の一定額
365
○障害特別支給金
障害1∼14級128∼5万円
障割∼14級
×
(503∼56)
特別給与を基礎とする特別支給金の新設
○遺族補償給付
年
遺
族
金
年金受給者 特別給与の一定額の35
賃金年額の35∼67%
一時金 賃金日額の1000日分
○遺族特別支給金 100万円
′〉67%
一時金受給者
年金の スライド制
特別給与の一定額氾000
365
賃金水準の変動幅 年間10%以上
厚生年金支雀顧
2
他の社会保険 労粗金支給額=宗管嘉
0休業補償給付=同上(療養1.5年経過後)
○中小事業主、一人親方、特定作業従事者に ○海外派遣者にも適用
特 別加 入
P通勤災害も保護
適用
0業務災害のみ保護
保険施設
労働福祉事業
社会静帰事業
被災労働者等援護事業
労働安全衛生事業
各種事 業
労働者保護事業
保険料あ
メリ ット制
0メリツト幅 継続事業 上下30%
有期事業 上下20%
○メリット幅
継続事業 上下35%
有期事業 上下25%
0メリット率の計算基礎=
○メリッ峰村算碁臣
僻給慣卜特販総金額
嘩険料額
全額支給
童顔肇 ○年金を40日分減額
○遺族補償給付及び葬祭料は支給やず
−37−
遺族補償給付及び葬祭料も支給
1976年春闘白書(春闘共闘委員会編)
「盛3章職場の労働条件(雇用、労働時間、安全湖第3節労働安全の確
卑よわ全文引用
労働災害は政府統計でみる眼力では度数率(100万労働時間当りの労働災害による休業1日以
上の死傷者数)も強度率(1,000労働時間当カの労働災害の死傷忙よる労働損失日数)も年々低
「
下してきている。しかし、勇働災害の実態は昨年の春闘白書でも指摘したように労働災害として報
告されず、ヤミにほうむられる場合が少なくない。そのうえに、危険な仕事を下請・臨時労働者に
行夜わせるという企業の政策が加わって、労働災害は下請・臨時労働者に圧倒的に多いという災害
発生の階層性が大き夜間題となっている。末端下請の労働者の場合には災害が発生しても、労働者
の雇用費任さえはっき少してい覆いことが多く、禰償や安全管理責任以前の問題が累積している。
労働者は資本の重層的支配のもとで生命の安全さえ保障されずに労働させられている。労働災害を
労働に関する基本的夜ことから、われわれがみ夜おしていか貴ければ宏ら凌いことを示している。
われわれはこのうえにたって労災闘争に取力組ま孜いと組織労働者の労災は減少しても、下請・未
組織労働者の労災に転嫁されて全労働者の労災防止には夜りえない場合があることを念頭に置く必
要があろう。こうした視点からの取組みは、全造船機械や電通共闘では現に運動が組織され前進し
つつあゎ、こうした連動を社会的に拡大することが重要である。
また、六価クロムや塩化ビニールモノマーによる職業病が大きな社会問題になっている。これら
の物質による被害は関係労働者の職業病にとどまらずに第三者である市民をもまきこんだ公害にも
夜っている。
クロムは十数年以前からその毒性が指摘されたにもかかわら釆政府はこれに対する効果的夜対策
をとらず、クロム酸およびその塩類が特化則(特定化学物質等障害予防規則)の適用物質になった
のは昭和46年になってからである。一方、資本は鼻中隔穿孔や鼻炎夜どの疾患に労働者がかかる
と一人前に浸った証しだというよう夜態度で職業病扱いをせず、肺ガンに夜ってさえヤミからヤミ
へとかくしてきた。さらに、資本は大量のクロム鉱さいを無処理のまま土地の埋立てに投棄して土
壌汚染までひきおこしている。
また、塩化ビニールモノマーによる肝臓障害やガン性症状が発生して死者を生んでいる。
海外では数年前から塩ビモノマーの毒性が指摘されているにもかかわらず、わが国の政府・資本
は対策をとるどころか、その事実さえ隠そうとしてきた。ここで注目し貴ければ浸らないのは、職
業性疾病ですでに明らかに夜っているように下請・臨時労働者に多い事実である。これは汚ない仕
事、危険夜仕事を無権利状態の下請・臨時労働者に行夜わせてきた資本の政策の結果でもある。
−3&−
加えて塩ビモノマーは塩ビ職場のみならず市場に出回っている塩ビ製品にも含まれ、そこから浸
出する塩ビモノマーの毒性は−→殴市民にも影響が凌いとはいえ凌い0もちろん、政府や資本は微量
だから無害だといっているが、累積効果や他の物質との相乗効果を無視した無害説がくつがえるの
は、これまでの職業病や公害の企業責任に到達するまでの歴史であゎ、安全性が立証されたわけで
はなく、有害性が立証され凌いにすぎない。
六価クロムや塩ビモノマーによる職業病や公害問題は、最近明らかに浸った新物質による大企業
における問題として社会問題化しているが、\これら二つの問題は現在の職業病問題の氷山の一角に
すぎない。六価クロムはメッキ工場や皮なめし工場でも使われておぅ、これらの工場が中小零細企
業であることを考えれば、調査も運動もなく職業病とは知らずに宿命とあきらめている疾病者が多
数存在していると▲いわれている。
また、最近の職無病はある特定の職場に共通な疾病として在来の物質による疾病のほかにさきに
みたよう夜新物質医よる職業病が広範に発生している。一万、キー・パンチャーやタイピストに多
発した頸肩腕症候群は事務職場の合理化による複写式伝票の導入、ボールペンの使用、事務量の増
大夜どによって事務労働者に共通する職業病に拡大しただけでなく、ベルトコンベアラインヤフオ
ークリフト、包装職場など現場労働者にも多発している腰痛症も、事務労働、現場労働、職種を問
わず多発している。このことは東京都品川労政事務所が行浸った職業病調査(昭和50年3月)で
も例証されている。
これまで職業病は物理的・化学的な要因による特定職場での特定の疾病といわれてきたが、最近
はこの分野が拡大しただけでなく、頸肩腕症候群や腰痛症に代表される疲労性職業病が増大してき
た。このよう夜疲労性職業病は職業病というよりは職場合理化による“労働病,,と称した万が適切
である。
こうした職業病の多発と拡大および“労働病”の蔓延は資本が利潤を求めて突っ走った高度成長
と裏腹に拡大した。しかもそれは公害の多発とも併行している。しかし、患者は疾病に苦しみ凌が
らも病気と原因の疫学的立症の困難に取組まぎるを得ず、職業病、‘‘労働病”の闘争や公害反対の
闘争を一層困難にしていた。また患者が相談に行ける医師も少なく、その場も少なかった。
労働組合はこれまで労災。職業病の補償とこれをなくする運動をしてきているが、これまでの困
難を克服し、労働者に有利な条件で運動できるようにする必要がある。それにはぜず運動の場をも
W ̄ヽ、.ノ{\−ノ
っと強固にし拡大することである。第一に労働者が気軽に労災や病気の相談をできる場をつくるこ
と。第二に病気についての調査を広範かつ統一的に行なう場をもつこと。第三に運動のセンターに
なる場をつくること。これらのためには産業別組合が重要夜場に浸ることはいうまでも凌い。産業
別の規制や補償、労働者の相談の場として産業別組合の役割は大きい。さらに広範な労災・職業病
一3≦トー
のためにはナショナルセンターが運動の瘍になることも必要である。また、全国の公立病院に労災
・職業病担当0科目を設置させ労働者の相談に応じさせることも必要である。ここでは地域の組合
が大き夜役割をになうであろう。こうした労動者の健康と安全を守る運動の展開は同時に市民の公
害追放の運動とも結合しうる場になることができる。
労災・職業病の運動にあたっては患者に対する企業の補償を要求することは当然であり、現行法
規を順守させることや法規制の拡大をはかることは緊急のことであゎ、われわれはいまその活動を
している。さらにすすんでわれわれは法改正をして労災・職業病の挙証義務を企業に負わせるとと
もに労働者が安全を確認しないかぎり労働をし凌い制度に転換することが必要になっている。
一40」
労働と健康’N。.川 (隔月刊)
(会員に限り配布)
1976年2月1日発行
発行人 大阪労働者の生命と健康を守る実行委員会
(事務局長 西 山 勝 夫)
住 所 大阪市天王寺区大道4 − 5
4 5 ビル 7 号
TEL 779−6206
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