Comments
Description
Transcript
(2)医学(臨床と治療)
14.4.14 第2章 心理学の4つの源流 • 精神医学も19世紀終盤に生 まれた。 • それ以前は精神病者は治療 ではなく隔離の対象だった。 • 19世紀前半の「人道的変革 運動」。ピネル、エスキロール など。フランス革命後の啓蒙 主義、博愛主義。 • 病者を鎖から開放し、医療の 枠内に位置づける。 (1) 哲学 (2)医学 (3)社会科学 (4)進化論 (2)医学(臨床と治療) • 医術から医学へ:実証主義の 導入(19世紀中盤) 生理学的実験医学(ベルナール) 細菌学(パスツール) 細胞病理学(ウィルヒョウ) • 進行麻痺の病因解明による、 生物学モデルに基づく「器質性 精神病」の概念。 • グリージンガー 「精神病は脳 病である」 Wilhelm Griesinger (1817 - 1868) (2)医学(臨床と治療) • ブロイラーの「精神分裂 病」概念(1911) • 連合心理学の観点から、 精神という有機物が要素 へと分解していく過程と 考えた。 • Schizophrenia=schizo(分 裂)+phrenos(気) (2)医学(臨床と治療) (2)医学(臨床と治療) • クレペリンによる2大精神 病概念(早発性痴呆、躁う つ病)の抽出。1896年。 • これが精神病概念の確立。 • 早発性痴呆:原因不明、青 年期に発症、不断に進行、 末期には人格荒廃。 • 収容所生活の影響? Emil Kraepelin, 1855-‐1926 (2)医学(臨床と治療) • シュナイダーの一級症状 Eugen Bleuler、1857-1939 (精神分裂病の診断基準) ・幻聴(思考化声、問答形式の幻 声、行動についてコメントする幻 声) ・させられ感情、させられ思考、さ せられ行為 ・被影響体験、思考奪取、思考伝 播、妄想知覚 Kurt Schneider, 1887-1967 1 14.4.14 (2)医学(臨床と治療) • 正統的な精神医学以外にも、骨相 学やメスメリズムというオカルトな 「擬似科学」も医学と心理学に大き な影響を及ぼした。 • 個人差測定、大脳局在論、催眠治 療などに発展した。 • Freudの精神分析学は20世紀初 頭から独自の流れを形成した。学 問世界では無視されたが、大きな 勢力に成長。20世紀文化に多大な 影響(後述)。 (補足) 精神分析学 「神経症者を医学的に治療する手続き」(Freud, 1917) 4つの鍵概念(懸田,1978) 不快な経験は「抑圧」され、「無意識」に封印さ れる。抑圧されたものを意識化することには 強い「抵抗」が生ずる。神経症の症状の源泉 は抑圧された性的欲動(「リビドー」)である。 (補足) 精神分析学 • 「心理学が普仏戦争の後まもなくその霊魂を 失ったときと、第2次大戦の後まもなく再びそ れを見いだしたときの間の、空位期間を満た したものが精神分析学である・・・」 (G.W.Allport,1943) • 「精神分析学者には、精神分析について語る 人々と、それを実践する人々の2種類があ る。」(藤山直樹) (補足) 精神分析学 フロイトは、ウィーン育ちのユダ ヤ人。 最初は神経生理学を志した。 学位も神経生理学で取得。 その後に神経科医院を開業し、 まったく独自の体系を樹立する。 仕事の範囲は心理学を超える。 「夢判断」(1900) 「日常生活の精神病理」(1901) 「トーテムとタブー」(1912) 「ミケランジェロのモーゼ」(1914) 「幻想の未来」(1927) Sigmund Freud 1856-1939 (補足) 精神分析学 • 精神分析は、人間には無意識の過程が存在 し、人の行動は無意識によって左右されると いう基本的な仮説に基づいている。フロイトは、 ヒステリー(現在の解離性障害や身体表現性 障害)の治療に当たる中で、人は意識するこ とが苦痛であるような欲望を無意識に抑圧す ることがあり、それが形を変え神経症の症状 などの形で表出されると考えた(Wikipedia)。 (補足) 精神分析学 • 心的装置(イド、自我、超自我) • 防衛機制(抑圧、置換、投影、否認、知性化) • 発達理論(口唇期、肛門期、男根期、潜伏期、 性器期) • 性格理論(固着の概念) • 心理療法 2 14.4.14 (補足) 精神分析学 • 「反証性」の問題(Popper,1969) • 「神経症の原因は幼児期のトラウマである」 • 「幼児期のトラウマがない神経症の症例」を 反証として提出する。 • それに対し、「トラウマは抑圧されている」と答 える。 • どういう反証を持ってきても回答可能なもの は、科学的理論ではない (補足) 精神分析学 • フロイトの仕事は心理学を超える。 ダリ「ナルシスの変貌」 (補足) 精神分析学 • 精神分析とフロイトの思想は、神経症の治療 論という枠組みを大きく越える大きさと深さを 持っている。 (1)分野の概要 • フロイト思想は、20世紀のあらゆる人文・社会 諸学や、文化・芸術に大きな影響を与えた。 • ダーウィン、フロイト、アインシュタイン(以前 はマルクスも)が20世紀を運命づけた偉人と いわれる。 (補足) 精神分析学 • Alfred Adler (1870-‐1937) 1911年にフロイトと決別し、 「個人心理学」を創設。 優越感や劣等感といった 「自尊感情(Self Esteem)」 概念を重視。その後の認 知療法や認知行動療法 へ多大な影響。 (補足) 精神分析学 • Carl G. Jung (1875-‐1961) スイス人の精神医学者。 1913年にフロイトと決別し、 「分析心理学」を創設。 「集合的無意識」 「シンクロニシティ(共時性)」 錬金術や東洋哲学への関心。 (補足) 精神分析学 • フロイトは精神分析を「新しい科学」と言った。 • しかしそれは「非科学的」と非難された。 • フロイトの概念を実証的に研究しようという動 きもあった。 • しかしフロイトの仕事は、それ自体が「科学批 判」になっているところがある。 • そこをすくい取ることが非常に大切か。 • いい例が「転移感情」という概念。 3 14.4.14 転移(Transference) • 患者が、過去に自分にとって重要だった人物 (多くは両親)に対して持った感情を、目前の 治療者に対して向けるようになるという現象。 • 転移は、患者が持っている心理的問題と深い 結びつきがある。 • 転移の解釈は、精神分析治療の根幹とされ ている。 逆転移(Counter Transference) • 治療者の側に未解決な心理的問題があった 場合、治療場面において、治療者が患者に 対して転移を起こしてしまう場合がある。これ を逆転移という。 • 面接中に治療者が抱く感情の全てを含む。逆 転移の中には患者側の病理によって治療者 の中に引き起こされるものがある。そうした逆 転移は治療的に活用できる。 転移と逆転移 • つまり、治療者は自分の病理を十分知らない と、逆転移を正しく解釈できない。 • むしろ自分の病理を使って治療するようなと ころがある。 • これは、自然科学における「観察者と観察対 象の分離」を超越(?)したものである。 4