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価数の不安定な希土類化合物の新しい熱電変換機能発現(388KB)

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価数の不安定な希土類化合物の新しい熱電変換機能発現(388KB)
MB−01
価数の不安定な希土類化合物の新しい熱電変換機能発現
研究代表者 高畠 敏郎 (広島大学:日本)
共同研究者 Ernst BAUER (ウイーン工科大学:オーストリア)
Peter ROGL (ウイーン大学:オーストリア)
Brian M. MAPLE (カリフォルニア大学サンディエゴ校:米国)
研究期間: 2000年4月 ∼ 2003年3月
研究概要
希土類化合物の熱電変換機能を開拓するために、f電子系物質として近藤半導体、充填スク
ッテルダイト、およびクラスレート化合物を選び、その熱電特性と基礎物性を研究した。セ
リウム近藤半導体は混成ギャップの形成に伴って、熱電能は最大で 186 µV/Kに達し、それら
の価数揺動は格子熱伝導度を抑制するのに有効であることがわかった。希土類充填スクッテ
ルダイトLnT4X12 (Ln =Ce, Pr, Eu, Sm, Yb; T=Fe, Ni, Ru, Os; X=P, Sb)の組成及びキャリア濃度の
調節によって、室温での無次元性能指数を0.2まで高めた。Pr0.21Fe2.5Ni1.5Sb12は熱電能の最高値
240 µV/Kを示し、その格子熱伝導度はPrイオンのラットリングによって理論的下限まで抑制
されている。低温での物性測定によって、PrOs4Sb12は4f 2 電子配置をもつPrをベースとした世
界初の重い電子系超伝導体であることを発見した。これまで報告されている全てのクラスレ
ートの結晶学的解析から、系統樹を提案した。これらの希土類熱電変換物質の薄膜を作製で
きるパルスレーザー製膜装置を立ち上げた。以下に主な三つのプロジェクトの成果について
報告する。
プロジェクト1: 近藤半導体及び関連物質の新規熱電変換機能
1-1. 背景と目的
希土類のCe及びYbを含む化合物のなかで、微小なエネルギーギャップをもつ近藤半導体は
100 µV/Kの大きな熱電能Sを示すので、熱電冷却物質の候補と見做せる。さらに、電気抵抗率
ρが半金属的であるので、性能指数Z = S2/ρκを大きくできると期待される。ここで、κ は熱伝
導度である。本研究では、近藤半導体の単結晶を育成し、そのバルク物性測定と光電子分光
によって、熱電機能発現における価数揺動とギャップ形成の役割を明らかにすることを目的
とした。さらに、Yb近藤半導体やカゴ状フレームにCe、Eu、Ybを内包する価数揺動化合物を
探索した。それらは、カゴ内の希土類イオンのラットリングが熱を運ぶフォノンを散乱し、
格子熱伝導度を低減させると期待された。
1-2. 研究方法
試料の合成、単結晶育成、評価:単結晶試料には融点と蒸気圧に応じて、ブリッジマン法、
チョコラルスキー法、自己フラックス法を用いた。試料の組成は電子プローブミクロ分析で
決めた。
磁性と熱電特性の測定:化合物中希土類イオンの価数をスクイッド磁束系で評価した。X線
LIII 端吸収実験はP. Roglとの共同で行った。熱伝導度測定装置はE. Bauer の助言によって作
製された。中性子散乱実験はM.B. Mapleと共同で行われた。
光電子分光実験:近藤半導体の擬ギャップを直接観察するために、広島大学放射光科学研究
センターにおいて谷口らによって高分解能光電子分光実験が行われた。
1-3. 結果と考察
1-3-1. セリウム近藤半導体
近藤金属 CePtSn, 半金属CeNiSn, CeRhSb, 半導体 CeRhAs はいずれも斜方晶ε-TiNiSi型の結
晶構造をとる。表Iに単位胞体積 V, エネルギーギャップ Eg/kB, 特性温度 TKH and T*, 電子
比熱係数 γ をまとめた。ここで、 T* は熱伝導度の異常から求めたギャップ形成温度である。
単位胞体積はCePtSnの276.9 Å3からCeRhAsの239.1 Å 3まで減少し、4f電子と伝導電子との混
成強度が増している。磁気的には、CePtSnにおけるCe3+ イオンのキュリーワイス的挙動から
CeRhSbの価数揺動状態まで変化する。磁化率が最大となる温度Tmax は結晶場効果が無視でき
る場合には、TKH ~ 3Tmax という関係で近藤温度TKH を見積もることができる。CeNiSn と
CeRhSb においてギャップが不完全であるのは、大きなγ値からも支持される。一方、CeRhAs
のパウリ常磁性的挙動は4f 電子が遍歴していることを意味する。
表 I. CePtSn, CeNiSn, CeRhSb, CeRhAs の単位方体積 V, エネルギーギャップ Eg / kB = 2∆,
ギャップ形成温度 T*, 近藤温度 TKH, 電子比熱係数γ.
V
(Å3)
CePtSn
CeNiSn
CeRhSb
CeRhAs
276.9
264.3
269.1
239.1
Eg / kB
(K)
-28
56
280
T*
(K)
-15
20
165
T KH
(K)
100
225
360
1500
γ
(mJ/K2mol)
< 60
45
10
3
図1に上記の単結晶試料斜方晶のb軸方向について測定したS, κ , ρのデータを示す。ρ(T) は
CePtSnの金属的挙動からCeNiSnとCeRhSbの半金属的挙動へ、さらにCeRhAsの半導体的挙動
へと遷移する。これに伴い、室温でのρ(T) の値は一桁上昇し、キャリア密度の減少あるいは
電子・フォノン散乱の増大を示唆する。κ(T=290 K)はこれと逆の関係を示し、κ(CeRhAs) <
κ(CeRhSb) < κ(CeNiSn) < κ(CePtSn)となる。一般に、金属間化合物の熱伝導度は格子の寄与κph
と電子の寄与κelからなり、後者はWiedemann-Franz 則, κel = L0T/ρから求められる。4化合物
の全てにおいて、κelはκ の値40% 以下であり、温度の低下とともに急激に減少する。従って、
TKH の増加とともにκ(T)が減少するという傾向は、κph(T)の減少に起因すると言える。熱伝導
度の現象論的解析によって、TKH の上昇が電子・格子散乱を強めるという結論を得た。
CeRhAsの電子状態密度のギャップ形成は、κ(T) が165 K以下で急激に上昇することに明確
に現れている。同様の異常はCeRhSbとCeNiSnではκ(T) の立ち上がりとして認められる。そ
の温度T* も表Iに載せてある。このκ(T) の立ち上がりは、電子状態密度の減少によってフ
ォノンの平均自由行程が伸びたためである。
室温でのS(290 K)の順番は ρ(290 K)と同じで、S(CePtSn) < S(CeNiSn) < S(CeRhSb) <
S(CeRhAs)となる、即ち、TKH が上昇する順番である。CeNiSn とCeRhSbの100-130 K におけ
るS(T) の極大は近藤共鳴による伝導電子の散乱によって現れる。上記の順序は4f電子状態の
縮退度がCePtSnでの2重から混成強度が増えたCeRhAsでの6重に増していることを意味す
る。一方、低温でのS(T)の最大はギャップ形成によるものである。実際、CeNiSnとCeRhSbの
S(T)はそれぞれT* = 15 Kと20 Kで一度上昇した後、極小を示してから零に向かう。CeRhAsの
S(T)はT* = 165 Kで跳ね上がった後に30K付近で最大となる。a軸方向での値は186 µV/Kにも達
し、これまで報告されているCe化合物の値としては最高である。
2
これらのρ, S, κの温度変化のデータから求めた熱電性能指数Z = S / ρκを図3に示す。
CeRhAsの輸送特性は異方的であるので、Z に強い異方性を生じ、b 軸方向では 0.2x10-3/K 以
下であるが、c 軸方向の Z は115Kで最大値 1.0×10-3 /K をとる。後者の値は、Ceベースの典
型的価数揺動物質CePd3 やp型Bi2-xSbxTe3の120 Kでの値に匹敵する。CeRhSbのZはさらに大
きな値1.7×10-3/Kを12Kでとる。
図 1 CePtSn, CeNiSn, CeRhSb and CeRhAs 単結晶の
図 2 CeRhAs単結晶の電気抵抗率、熱電能、熱伝導度
斜方晶b軸方向での熱電能、熱伝導度、電気抵抗率の
の温度変化における強い異方性。
温度変化。
上記の化合物のフェルミ準位近傍におけるCe 4f電子状態は、共鳴光電子分光によって直接
観測された。図4に示すように、CeRhAsのスペクトル強度がフェルミ準位から90 meV程度ま
での領域で落ち込んでいるのは、混成バンドのギャップ形成の証拠である。CeRhSbの4f電子
スペクトル強度は13 meVの範囲で温度の低下とともに低下し、擬ギャップ形成と一致する。
近藤温度が10K以下のCePtSnでは27 meVに結晶場励起が観測された。
図 3 CeNiSn, CeRhSb, and CeRhAsの熱電変換性能指数
Z の温度依存性。
図 4 CeRhAs, CeRhSb, CePtSnの高分解能光電子スペク
トルをFerni-Dirac分布関数で割り、規格化したもの。
1-3-2. 擬ギャップをもたないCe価数揺動化合物
CeRhP, CeRhSn, CeRh1-xMxSn (M=Co, Ni, Ru) を合成した。斜方晶のCeRhSb と CeRhAsが半導
体的であるにも拘わらず、 正方晶のCeRhP は金属的な伝導を示した。この結果は、一連の
CeRhX において、斜方晶ε-TiNiSi型の結晶対称性がギャップ形成には必要であることを意味
している。六方晶ZrNiAl型のCeRhSnの熱電能はa軸、c軸方向とも60 µV/K のピークを160K
に示す。一方で、電気抵抗と磁化率の著しい異方性は、価数揺動化合物の中で異色である。
この特異な異方性と低温での非フェルミ液体的挙動の原因を探るために、中性子散乱実験を
M. B. Mapleと 共 同で行 った 。さら に、 CeRhSn の 熱電 性能 の向 上を目 指し て、混 晶 系
CeRh1-xMxSn (M=Co, Ni, Ru; x≤0.25)を作製した。CeRhSnの価数揺動的磁化率はNi置換によっ
てキュリーワイス型へと変化し、他方Ru置換ではパウリ型へと変化する。しかし、いずれの
場合にも熱電能は減少した。そこで、価数揺動化合物で大きな熱電能を発現させるには4f 電
子と伝導バンドとのコヒーレントな混成が不可欠であると結論できる。
1-4. まとめと展望
近藤半導体とその関連物質の物性研究によって、熱電性能指数Z = S2/ρκ を向上させるための
新しい方法を提示した。CePtSnからCeNiSn, CeRhSb, CeRhAsの順番で近藤温度が上昇するに
従って、室温付近での熱電能は増大した。ただし、不均一な混合原子価化合物の熱電能は増
強されない。低温の熱電能を増大させるには擬ギャップ形成が極めて有効であることを見出
した。しかし、ギャップをもつCe化合物は既知のCeTX系の中では斜方晶ε-TiNiSi型の結晶構
造をとるものだけである。この事実は、4f電子と伝導電子との混成ギャップの形成には、結
晶対称性が重要であることを意味している。擬ギャップが開いても電気抵抗が比較的小さい
ので、電力因子S2/ρは従来のBi系熱電材料の値を低温で凌ぐ。一方、近藤温度が高いなるほど
格子熱伝導度が抑制されているという事実を示し、価数揺動自身がフォノン散乱に効いてい
ることを明らかにした。しかし、CeRhAsの室温での熱伝導度はBi系熱電材料のものに比較し
て数倍大きい。今後、近藤半導体のグレインサイズを小さくする、あるいはCeRhSb/CeRhAs
の超格子を作製することによって熱伝導度をさらに下げることが必要である。これが実現で
きれば、液体窒素温度までの熱電冷却への第一歩となる。
プロジェクト2: 希土類充填スクッテルダイトとクラスレートの新規熱電機能
2-1. 背景と目的
カゴ状構造の隙間に希土類イオンを内包したスクッテルダイトとクラスレートに焦点を絞っ
た。両者は低い熱伝導度、良い電気伝導、大きな熱電能という特性を備えている。特にCe,
Eu ,Ybイオンは励起状態の波動関数が空間的により広がっているために、価数の不安定性を
示す。本共同研究によって、価数揺動を示すスクッテルダイトとクラスレートの電気伝導は
元素置換によって電子的なものからホール的なものに制御することができ、しかも巨大な熱
電能を示すことが明らかになった。
2-2. 研究方法
充填スクッテルダイトとクラスレートの熱電変換特性を最適化するのに最も重要な相互作用
を解明するために、輸送係数、比熱、磁化率、LIII端X線吸収、Eu, Fe Snメスバウアー分光、
中性子散乱などの手法で物性を研究した。試料やノウハウを交換した共同研究によって、連
名の論文を発表した。試料作成にはアーク溶解や焼結法を採用した。X線回折、LIII端X線吸
収、メスバウアー分光は4.2-300Kの範囲、磁化測定は2-300Kで磁場6Tまで、比熱は1.5-140
K、電気抵抗は0.4-300Kで磁場12Tまで、静水圧は1.6 GPaまで、熱電能は1300Kまで、熱伝
導度は300Kまでの範囲で測定した。
2-3. 結果と考察
2-3-1. Eu充填スクッテルダイト
図 5 EuyFe4-xCoxSb12 の二つの組成をもつ試料の
151
Eu メスバウアースペクトル
図 6 EuyFe4-xCoxSb12の磁気転移温度の
Co濃度依存性
Eu 充 填 ス ク ッ テ ル ダ イ ト EuyFe4-xCoxSb12 と EuyFe4-xNixSb12 を 合 成 し た 。 Eu 濃 度 y の 値 は
Eu0.83Fe4Sb12 の 0.83 か ら Eu0.44Co4Sb12 の 0.44 及 び Eu0.5Fe2Ni2Sb12 の 0.5 ま で 減 少 す る 。
Eu0.83Fe4Sb12 は84 K 以下で強磁性を示し、自発磁化は6Tで4.5 µB/f.u. に達する。Euイオンは
ほぼ4 f 7電子配位をとり2価の状態にある。熱電物性の測定からは、室温での無次元性能指数
ZTが0.08に達することが判った。EuyFe4-xCoxSb12 と EuyFe4-xNixSb12におけるFe/Co及びFe/Niの
置換により、磁気転移温度はEu0.83Fe4Sb12 の84KからEu0.44Co4Sb12の8Kまで下がる。Eu低濃度
のEu0.2Co4Sb12はもはや磁気転移を示さない。同時に、Euの価数νはEu0.83Fe4Sb12での2.0 から
Eu0.2Co4Sb12での2.6へと増加する。遷移金属サイトの置換 Fe/CoとFe/NiはSb12当りのキャリア
数を減少させ、ホール伝導から電子伝導へと遷移させる。同時に熱電能Sが急激に増大し、性
能指数が向上した。
さらに、REFe4Sb12(RE = La, Pr, Nd, Eu, Yb)や Eu(Fe,Co)4Sb12, Eu(Fe,Ni)4Sb12, Yb(Fe,Co)4Sb12,
Yb(Fe,Ni)4Sb12について電気抵抗の圧力変化を16kbarまで、熱電能を4.2-300Kで測定した。前述
したように、Fe/Co及びFe/Niの置換と希土類の充填は、熱電能の正から負への変化から判るよ
うに、ホール伝導から電子伝導への変化を誘起した。
図 7 電子キャリアとホールキャリアの2種類のEu充填スクッテルダイトの
電気抵抗は圧力によって逆方向に変化する。
ホール伝導領域と電子伝導領域では、電気抵抗の圧力変化が逆になる。即ち、前者では圧力の
増加とともに電気抵抗値が減少するのに対して、後者では増大する(図7)。この結果から、
フェルミ準位近傍の電子状態密度の微妙な変化が熱電能と電気抵抗の両者の挙動を決めてい
ると言える。遷移金属サイトに加えてプニクトゲンサイトもうまく置換すると性能指数をさら
に高めることが可能である。実際、Sb/Sn置換したEu0.56Co4Sb11SnのSは290Kで–160 µV/Kに達
し、無次元性能指数ZTは0.2となり、スクッテルダイト系の室温での値としては最高レベルと
なった。
2-3-2. Pr充填スクッテルダイト
La0.83Fe4Sb12, Pr0.73Fe4Sb12, Nd0.72Fe4Sb12の輸送現象と磁性の関係を調べた。Pr0.73Fe4Sb12の物性は
Prイオンの結晶場効果で支配されており、基底状態はΓ5 三重項である。磁気測定の結果、
Pr0.73Fe4Sb12 と Nd0.72Fe4Sb12 は そ れ ぞ れ 5 K 、 16.5 K 以 下 で 長 距 離 磁 気 秩 序 を 起 こ す 。
Pr0.73Fe4Sb12の比熱係数Cp/T(図8)は 、1000 mJ/molK2という巨大な値を示すが、1K以下で
は141Pr の核スピンI = 5/2 のショットキー寄与が大きい。3Tの磁場中では長距離磁気秩序は
消失し、臨界磁場ではCp/T が –lnTに比例する。零磁場でのT2に比例する電気抵抗は、3-4T
の磁場下ではTに比例する振る舞いに変化する。Pr0.73Fe4Sb12の 290 KでのZTは0.075である。
図 8 Pr0.73Fe4Sb12の比熱Cpの温度依存性;
Cp/T対lnT プロット
図 9 Pr0.73Fe4Sb12とNd0.72Fe4Sb12の逆磁化率
の温度変化
Pr0.73Fe4Sb12をベースとして遷移金属とプニクトゲンの両サイトを置換した。Fe/Co 置換に
よって、低温での近藤効果による異常が除去されが、高温ではキャリア密度の減少効果が現
れた。Fe/NiとFe/Co に加えて、Sb/Sn 置換はSを2倍以上増大させた。即ち、Pr0.21Fe2.5Ni1.5Sb12
では240 µV/K、Pr0.25FeCo3Sb12では –100 µV/K となり、Pr0.25FeCo3Sb12に比較してZは大きく向
上した。これに伴い、金属-絶縁体転移も観測された。
2-3-3. Sn充填スクッテルダイト
新規なスクッテルダイトの探索により、SnyNi4Sb12-xSnx が始めて合成され、その固容領域は
250°Cで2.4 ≤ x ≤ 5.6; 0 ≤ y ≤ 0.31であり、350°Cで2.7 ≤ x ≤ 5.0; 0 ≤ y ≤ 0.27の広い範囲にあるこ
とが判明した。SnyNi4Sb12-xSnx 中のSn原子は結晶学的に非等価な2個のサイトを占める。(a) Sn
とSb 原子は24gサイトをランダムに占める。(b) わずかの割合のSn原子は、2a (0,0,0)位置を占
め、極めて大きな原子変位パラメータを示す。その例がEu0.8Ni4Sb5.8Sn6.2, Yb0.6Ni4Sb6.7Sn5.3,
Ni4As9.1Ge2.9 であり、組成の調整によって金属から半導体まで変化させることができる。この
変化とキャリア密度の温度依存は、フェルミ準位の僅か下に狭いギャップをもった状態密度を
仮定すると説明できるだけでなく、このモデルは電気抵抗の特異な温度変化も再現する。なお、
図10に示すように、これらのスクッテルダイトの比熱は、局所的な格子振動モードを複数仮定
すると良く再現できる。
図 10 非充填(Ni4Sb8.3Sn3.5、充填(Yb0.6Ni4Sn6.7Sn5.2)
スクッテルダイト化合物の比熱の新しい解析モデ
ルによるフィット。左軸は比熱のフォノン部であ
り、右軸は対応するフォノン状態密度である。
Einstainモードが単純なデルタ関数ではなく、エネ
ルギー幅を有することに注意。この幅は、格子の乱
れに起因する。
2-3-4. クラスレート化合物
新規なタイプIの Si及びGeクラスレートとして、
Baの一部を希土類原子で置換したものを合成し
た 。 さ ら に 、 Si の 骨 格 の 一 部 が 欠 損 し た
Ba8AlxSi42-3/4x 4-1/4x and Ba8GaxSi42-3/4x 4-1/4x (x = 8, 12,
16; - 欠損)も合成された。これらはX線回折の解
析からBa8Al16Ge30型タイプI (空間群 Pm-3n)の構
造であることが判った。
Eu2Ba6MxSi46-x (M = Cu, Al, Ga), ではEu原子は2a
サイトを選択的に占めるので、Ba8Al16Ge30 型構造
から派生した新規4元秩序構造をとる。クラスレ
ート構造の結晶幾何学的解析によって、全ての化
合物の系統樹を提唱した(図11)。
本研究で対象にしたクラスレート化合物は、電
気抵抗から低密度キャリアの不良金属とされる。
これらの中で最大のSはBa8In16Ge30の-75µV/Kであ
り、主要キャリアは電子である。Euベースのクラ
スレートの中でEu2Ba6Al8Si36 は32Kで長距離強磁
性を示した。Euイオンはいずれの場合も2価であ
ることが磁化率の解析から判った。
図 11 クラスレートの結晶構造の系統樹
2-4. まとめと展望
本プロジェクトで開拓した新規な充填スクッテルダイトとクラスレートは、いずれも通常の金属
よりも一桁から二桁大きな熱電能を示し、Pr化合物の値は240 µV/Kに及んだ。この原因には、低
密度キャリア系であることに加えて、Pr0.73Fe4Sb12 における近藤相互作用やEu(Fe,Co)4Sb12,
Eu(Fe,Ni)4Sb12, Yb(Fe,Co)4Sb12における価数揺動の効果が重要である。さらに、これらの化合物
では、複雑なカゴ状構造をとるために、内包された原子のラットリングによって熱伝導度が理論
的下限値まで抑制されている。さらなる元素置換によってキャリア密度を最適化すれば、熱電変
換性能を更に向上できると期待される。
プロジェクト3: 強相関f電子系化合物の熱電変換応用を目指した基礎物性の研究
3-1. 背景と目的
強相関f電子系化合物は新規な熱電変換物質の有望な候補である。これらの系では、局在的
なf電子が伝導バンドと混成し、価数揺動やスピンの補償された近藤状態を形成する。それ
は、フェルミ準位近傍に幅の狭い状態密度、あるいは共鳴状態によって特徴付けられる。こ
のようなフェルミ準位近傍の鋭い構造は、巨大な熱電能Sをもたらすだけでなく、輸送現象や
磁性にも異常をもらたす。これらの特異な状況は、熱電変換性能を高めるのに有効であるが、
その基礎的な機構は理解されていない。
本プロジェクトの目的は、熱電変換応用に関連した物理現象を理解し、それに基づいた戦
略を構築し、新たな熱電変換物質を合成することである。対象とした物質群は、充填スクッ
テルダイトLnT4X12 (Ln = La, Ce, Pr, Eu, Sm, Yb, U; T = Fe, Ru, Os; X = P, Sb)と価数揺動物質
CeRhSnとその合金である。これらの化合物の薄膜を作製するために、パルスレーザー製膜装
置を開発した。
3-2. 研究方法
多数の充填SbスクッテルダイトRT4Sb12 (R=La, Ce, Pr, Eu; T= Fe, Ru, Os)を作製した。Sb自己フ
ラックス法によって単結晶試料を、高周波誘導加熱によって多結晶試料を得た。CeRhSnの多
結晶はアーク溶解で作られた。これらの試料のX線構造解析と物性研究は共同研究者の高畠、
E. Bauer と P. Roglの協力で行われた。X線回折、電気抵抗、磁気抵抗、磁化、比熱などが広
い温度範囲で測定された。新しい充填スクッテルダイト化合物の探索をフラックス法と誘導
過熱法によって進めた。さらに、パルスレーザー製膜法でスクッテルダイト化合物の薄膜を
作製するために、円盤状ターゲット試料を高圧焼結法で作製した。
3-3. 結果と考察
3-3-1. パルスレーザー製膜装置開発
図 12 PLD 装置. (a) アブレーション過程における
レーザー炎 (b) 基板上に堆積された膜
本プロジェクトにより、パルスレーザー製膜
装置 (PLD) を立ち上げた(図. 12)。本装置は
Lambda Physic社LPX300エキシマレーザー
(1.2 J/pulse, 50 Hz)を装備し、パルスエネル
ギーは30 MWである。二つの製膜容器のう
ち、一方は10-7 トールの真空度である。6つ
のターゲットを有し、基板は1000°C まで昇
温できる。この装置で充填スクッテルダイト
の薄膜を作製するために、ターゲットの作製
を進めてきた。高温静水圧加圧法により、
PrOs4Sb12 の高密度ペレットの作製に成功し
た。このペレットをレーザー照射用ターゲッ
トとして最適化を図り、使用している。
3-3-2. 物質探索と基礎物性
新しい希土類化合物が数多く合成された。希土類充填スクッテルダイトの中で、CeOs4Sb12 は
重い電子系でありながら、微小なギャップ∆/kB ~ 10 K をもつ混成ギャップ半導体であること
が判明した。価数揺動系CeRhSnは低温で非フェルミ液体的挙動を示すことを見出した。この
特異な挙動は、この系がある種の弱い磁気転移に起源をもつ量子臨界点に隣接しているため
であると考えた。実際、合金系(Ce1-xLax)RhSn はTC ~ 220 K の弱い強磁性を示すが、スピン
グラス及び非フェルミ液体的挙動は、La濃度の増加とともに抑制された。高畠のグループで
育成されたCeRhSnの単結晶試料について、磁化率、電気抵抗、磁気抵抗などの測定が行われ
た。中性子散乱実験の結果を現在解析中である。
3.0
Pressed pellet
C e /T
2.0
c
0.9
PrOs4Sb12
0.7
10
0.5
1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2 2.4
Γ5
1.0
Γ3
PrOsSb SC 0402 1:44:27 PM 10/28/02
7.15 K
3.5
C/T
0.5
PrOs Sb
4
0.0
12
0
1
2
3
4
(T) 2.0
Sch
5
6
C(T) peak
α(T) peak
λ(T) dip
5
3.0
~ ∆ (Γ3, Γ5)
2.5
C(T) = γT + βT + C
3
HFOP
H (T)
1.5
-0.5
ρ(T) kink
ρ(H) kink
dρ/dT peak
M(H//001) kink
M(H//111) kink
15
T = 1.77 K
1.1
2.5
C/T (J/mol K 2 )
1.3
Hc2(T)
Single crystals
1.4
7
1.6
1.8
8
SC
2
9
10
T (K)
図 13 加圧焼結ペレット PrOs4Sb12 の C/T 対 T。
フィット曲線は電子寄与と結晶場ショットキー
寄与の和を表す。上の挿入図は Tc 近傍の電子的
寄与 Ce/T 対 T、下の挿入図は単結晶試料の Tc 近
傍∆C の2段転移構造を現す。
0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
T (K)
図 14 PrOs4Sb12 の磁場-温度相図。超伝導相境界
は比熱 C(T,H), 熱膨張α(T,H), 磁歪λ(T,H)から
求めた。破線は dρ/dT がピークをとる温度の点
を繋いだ。Pr3+ のΓ3 基底状態とΓ5 励起状態の
エネルギー差に対応する。
Pr充填スクッテルダイトPrOs4Sb12 は1.85 Kで超伝導転移を示し、有効質量m* ~ 50 me の準
粒子が超伝導を担っている事を発見した。つまり、Prベースの重い電子系超伝導体の第1号
である。準粒子の有効質量は電子比熱係数γと比熱のTcでの跳びから求めた。磁化率と比熱
の結晶場解析、および非弾性中性子散乱の結果からPr3+ の結晶場レベルスキームを以下のよ
うに求めた。基底状態は非磁性のΓ3 2重項、8Kに第一励起Γ5 3重項、133KにΓ4 3重項、
320KにΓ1 1重項。この結果は、PrOs4Sb12 の重い電子超伝導はPr3+ のΓ3 基底状態の電気4
極子と伝導電子との相互作用に起因することを強く示唆する。一方、BCS超伝導体PrRu4Sb12
との混晶系Pr(Os1-xRux)4Sb12のTcはx = 0.6で極小となることから、重い電子超伝導とBCS超伝
導が競合していることが判った。ロスアラモス強磁場実験施設において温度100mK、磁場18
Tまでの磁気抵抗が測定された。そのデータは1K以下の4.5-14.5Tの高磁場において新たな秩
序層の存在を明らかにした。この相はPr3+ の電気4極子の秩序に関係している。5.5Tまでの
磁化測定では、磁化カーブの傾きの変化として相境界が確認された。強磁場秩序層はドイツ
のLöhneysenとSteglichのグループで測定された磁場中の比熱と磁歪の測定結果によっても確
認された。最近、神木らの中性子散乱は強磁場秩序層でのPr3+ の4極子秩序を決定的なもの
にした。NEDOプロジェクトの共同研究としては、P. RoglによりPrOs4Sb12単結晶試料の構造
が決定され、E. Bauerによって熱電能が測定された。
2-5. 3-4. まとめと展望
本研究は希土類充填スクッテルダイトや価数揺動系の優れた熱電特性の発現機構を理解する
ために必須である磁性や伝導の基礎物性を測定し、以下の事実を明らかにした。大きな熱電
能を示すCeRhSnは低温で非フェルミ液体的挙動を示し、磁気臨界点近傍に位置する系であ
る。CeOs4Sb12は10K程度の混成ギャップをもつ近藤半導体である。PrOs4Sb12 は二つ以上の超
伝導相をもち、それは電気4極子の揺らぎを媒介にした対形成が関与している。実際、1K以
下4.5-15Tの高磁場秩序相では4極子秩序が確認された。さらに、希土類充填スクッテルダイ
ト化合物の薄膜を作製するために、パルスレーザー加熱製膜装置を立ち上げ、そのターゲッ
ト材を作製した。これを用いて熱電変換特性の優れたスクッテルダイト化合物の薄膜や素子
を作製する計画である。
代表的成果論文
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