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第2章 各種代替交通案とその事例
第2章 各種代替交通案とその事例 2−1 STS (1) ダイヤル・ア・ライド (2) コミュニティ・トランスポート 2−2 DRT (1) デマンドバス (2) CCS 2−1 STS STS とは Special Transport Service の略であり、地域で生活する高齢者・障害者等の移動手段として、利 用者の住居近くから目的地までの送迎サービスを提供するものである。おもに身体的状態の制約により、 バスや鉄道などを利用することのできない人や利用困難な人を対象としている。 運行主体は行政・NPO などの非営利団体であり、一定の資格(移動困難を持つ)個人を送迎する。ま た個人のインフォーマルな送迎は含まれない。 STS の種類としては、ダイヤル・ア・ライド(英国)や、コミュニティ・トランスポート(英国、米 国、豪州)などが挙げられる。 (1) ダイヤル・ア・ライド ダイアル・ア・ライド(マンチェスターでは Ring&Ride と呼ばれる)は、ある程度のルートを決めた上 で、ディビエーション(定路線を外れて運行する)運行される、ドア・ツー・ドアのシステムである。利 用には予約が必要である。 アメリカのパラトランジットを模して、1970 年代初頭にイギリスに登場し、隆盛を迎えたが、コス ト面から固定ルート化されたり廃止が相次いだ。1980 年前後に高齢者・障害者および車いす対応とい う点で復活した。病院等への送迎も行うが、一部で他の移送サービスと複合して実施されている。ボラ ンティアによる運行が一般的であり、多くが自治体からの財源補助を受けている。 今後は需要増への対応、高齢化への対応が重要と考えられており、人口の 15%程度がこうした送迎サ ービスによるモビリティの確保が必要になると考えられる(CTA による予想)。利用方法や距離の制約等 で不満を持っている利用者も多く、サービス改善の余地がある。 また、大きな課題として、有給スタッフを抱えている場合は、ドライバーの資金の問題が深刻である。 マンチェスターの事例では、1 回の送迎で平均 1.2∼1.4 マイル走行するが、運賃が£3.5 である。経費 は年間 700 万ポンドかかっており、運賃収入だけで経費をカバーするのが難しい。ロンドンでは年間 2,000 万ポンド程度かかっていると思われるが、1 回あたりの運賃は£8 を徴収している。 公共交通手段はアクセシブルになってきているが、依然としてそれらを乗り継いで外出するには体力的 に困難な人が多い。したがって、ダイアル・ア・ライドの役割は今後もあると考えられる。 (2) コミュニティ・トランスポート コミュニティ・トランスポート(以下 CT)は、英国で地域の住民、グループ、自治体等により運営され ているバスやバンなどの車両を用いた交通システムで、地域やグループのニーズに基づいて計画され、 運行されている。国内で広く普及しており、その地域やグループに必要な交通サービスを、関係者が中 心となって運営していると考えればよい。多くはミニバスやバン車両を使用しているが、個人所有の自 家用車によるソーシャル・カー・サービスも行われ、実施形態は多様である(図2−1)。零細な事業者 や NPO 的な組織が運行する場合が多く、住民やグループ関係者がドライバーをしている場合もある。 自動車を所有できない層などにとっては生活上、欠く事のできない交通手段である。また、公共交通 がアクセシブルでないために、利用できない高齢者・障害者のための交通サービスも含まれる。さらに、 地方自治体による交通不便な過疎地域や、通勤、通学、ショッピングセンターへの定期運行なども実施 されている。 図1−3 ロンドンにおけるコミュニティ・トランスポート車両 2−2 DRT DRT とは、Demand Responsive Transport の略で、需要応答型交通のことである。近年の我が国では、 デマンドバスや、CCS(Community Car Scheme)など事例がある。 運営主体は、行政、商工会、ボランティア団体などであり、今後 DRT の必要性は増していくものと 推測される。 (1) デマンドバス デマンドバスの事例として、福島県小高町の「e-まちタクシー」を挙げる。 福島県小高町の「e-まちタクシー」の運行主体は、小高町商工会で、ジャンボタクシー(9 人乗り)2 台(図2−2)と小型車(4 人)乗り 2 台の計 4 台で運行している。運行区間は、中心市街地の巡回と、 商店街の東西の郊外を結ぶ区間の 3 区間である。 料金は、中心市街地巡回(まちなか線)は 100 円、商店街と郊外を結ぶ路線は 300 円となっており、 定額制である。 「e-まちタクシー」は国土交通省の「交通不便者のシビルマム確保のためのデマンド交通 システムのモデル実験事業」に採択され、平成 14 年 1 月∼3 月まで実証実験を行い、その後施行され ている。 現在の利用客数は1ヶ月あたり2000人前後であり、平日のみの運行であるので、1日あたり約1 00人となっている。利用者の8割が70歳以上の高齢者である。 今後の課題としては、利用者の降車地についての調査は行われているが、実際の商店街の利用客数が どのくらい伸びるかと、1ヶ月平均70万円の補助を継続して維持していけるかである。 図1−4 e-まちタクシー (2) CCS(コミュニティ・カー・スキーム) CCS とは、ボランティアによる自車を用いた送迎サービスである。 カムデンの CCS の例では、9 人のボランティアドライバーが登録され実施されている。うち一人はス ケジュール管理を担当している。自車またはカムデンの所有の車を使用している。利用者は 1 週間で 15 名程度である。料金は月単位で集計して利用者から徴収している。自車仕様の場合、ドライバーあに対 して 1 マイルあたり 35 ペンスが支払われる。大型車の場合、1 マイルあたり 45 ペンスが支払われる。 カムデンの車を使用する場合は、事務所までの交通費が実費支給される。いずれの形態においてもドラ イバーには昼食が提供される。利用に際しては通常は 2 日前までに予約を行う。また、大学の講義に半 年間通うなど、長期利用の予約が可能であり、ダイアル・ア・ライドにはない細かいサービスが利用で きる利点がある。 CCS の特徴は立上げが容易なことである。しかし、近年の渋滞やガソリン代の高騰により、ボランテ ィアの確保が難しくなっている。そのため利用者の負担が大きくなり、利用者数が減少するという悪循 環が見られる。