...

(SARS)が海外旅行・訪日旅行に与える影響について

by user

on
Category: Documents
3

views

Report

Comments

Transcript

(SARS)が海外旅行・訪日旅行に与える影響について
報 道 資 料
国 際 観 光 振 興 会 (JNTO)
JNTO)
http://www.jnto.go.jp
会長 向山 秀昭
平成 15 年 4 月 4 日
重症急性呼吸器症候群(SARS)が海外旅行・訪日旅行に与える影響について
国際観光振興会(JNTO)では、世界各地において、重症急性呼吸器症候群(SARS)が海外へ
の渡航並びに日本への旅行にどのような影響を及ぼしているのか、情報収集を行い以下の
とおりとりまとめた。
1.国民に対する海外への渡航自粛・注意喚起など
どの訪日旅行主要市場においても、「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の感染経路や治療法
が依然不明なため、感染封じ込めを優先して、渡航自粛・注意喚起などを発令している。特に
「世界保健機関」(WHO)が 2002 年 4 月 2 日付けで中国・広東省と香港への渡航延期を加盟国に
勧告した以降、危険度の段階を引き上げた国が多い。
韓国:感染地域へ渡航自粛勧告
韓国政府は、2003 年 4 月 1 日、中国・広東省、香港、台湾、ベトナム、シンガポールへの「渡航
自粛勧告」を出した。また、前記以外の中国および東南アジアへ旅行する場合は、健康に留意
のうえ旅行するよう呼びかけている。また、全国 13 の検疫所での検査を強化するとともに、
入国後に症状が現れたときは速やかに当局に申し出るよう、旅行客に対し航空機内の放送
などを通じて呼びかけている。
中国:特定国・地域への渡航自粛勧告はなし
現在のところ、いかなる国・地域へも渡航自粛勧告は出されていない。
なお、中国国家観光局では、2002 年 4 月 4 日午後 2 時より関係者を集め、「広東省において
SARS が発生したが、中国地方政府が全力をあげて防衛措置を取り、衛生知識の普及に努め、
消毒を行い、隔離を実施し、病気の蔓延を防いだ結果、明らかな効果が現れている。中国人の
心理状態は安定しており、仕事や日常生活にも影響は出ていない。中国における観光は正常
に進行している。」との声明を発表した。
香港:他の感染地域への渡航自粛勧告は発せず
2003 年 4 月 3 日現在、香港特別行政区政府からは、香港住民に対する「特定国・地域への渡
航自粛勧告」は出されていない。(香港は感染地域であるが、香港住民の中国本土を含む他の
感染地域への渡航については何ら触れていない。)
台湾:海外旅行で注意を要する 5 カ国・地域は、総出国者の約 9 割を占める
台湾の外交部(日本の外務省に相当)はホームページの「國人出國旅遊須知」で SARS に関
して次の内容を掲示している。4 月 4 日現在、「注意喚起」の対象はカナダ、一段階上の「旅行
自粛勧告」の対象は、ベトナム、シンガポール、香港、中国大陸、カナダ・オンタリオ州の 5 地
域となっている。これらの 5 カ国・地域が 2001 年に台湾人旅行者を受け入れた人数は、多い
順に、中国 344 万人、香港 242 万人、シンガポール 22 万人、ベトナム 20 万人、カナダ 12 万人
と延べ人数で 640 万人となり、当該年の総出国者数 719 万人の 89%を占める。なお、渡航先
として最も厳しいカテゴリー地域は「渡航中止」で、現在、戦争中のイラクが対象国となって
いる。
また、台湾の行政院(日本の内閣に相当)は 3 月 27 日、SARS を法定伝染病に認定した。こ
の認定により、「SARS」患者及び感染が疑われる者に対して入院または自宅隔離などの処置
が執行される。同時に行政院は、公務員に対して中国、香港、ベトナムへの出張を当面禁止し
た。
シンガポール:アジアの他、カナダ・トロントへも渡航自粛勧告
WHO による感染地域リストにのっとり、香港、広東省および山西省(中国)、台湾、ハノイ(ベ
トナム)、トロント(カナダ)の国・地域への「渡航自粛勧告」が出されている。
タイ:渡航自粛勧告と注意喚起
SARS の感染が広まっている国・地域(中国、香港、台湾、ベトナム、シンガポール)への渡航
を避けるよう「渡航自粛勧告」が出されている。また、感染地域からの帰国者は、発症の有
無等の経過をみるために、「2 週間、仕事又は学校を休み、自宅待機する」、「感染の疑いが
ある者との接触を避け、人混みを避ける」などの注意喚起が発せられている。
オーストラリア:唯一の感染者も無事退院
オーストラリア外務貿易省(Dept. of Foreign Affairs and Trade)が、4 月 1 日発表した
海外旅行情報(Travel Information)には SARS に関し、次のような注意喚起がなされている。
中国、香港、シンガポール、ベトナム、カナダへの不要不急の渡航延期を勧告した。これらの
国に通過目的で一時的に滞在する場合には、感染の危険性は極めて低いものの、「滞在中は
衛生に気をつけ、くしゃみや咳をしている人に近づかない」等の注意を促した。保健・老人
福祉省(Department of Health and Ageing)は、本年 2 月、シンガポールから帰国したシドニ
ー在住のオーストラリア人男性を初の国内感染者として、世界保健機関(WHO)に報告した。
この男性は、現在、完全回復し、退院済みで、この人からの二次感染はない。保健・老人福祉省
は、航空機の機長に対して感染の疑いのある乗客の有無を豪州検疫検査局(AQIS)に報告し
なければ上陸を許可しないことを決定した。
米国:中国など 4 カ国・地域を注意喚起に、香港を「渡航自粛勧告」に引き上げ
米国国務省は、2003 年 3 月 28 日、中国本土、香港、シンガポール、ハノイ(ベトナム)への
渡航に関して「注意喚起」(Public Announcement)を発令した。ここでは、カナダ政府がカナ
ダ・オンタリオ州を SARS 感染地域と指定し非常事態を宣言したことに触れ、カナダ渡航の
際にはこの点を充分にするよう注意を喚起した。また、2003 年 4 月 1 日、香港領事館員およ
び家族に対し SARS からの自衛を理由に任地を離れることを許可したことに触れ、香港への
渡航を一段階上の「渡航自粛勧告」(Travel Warning)に引き上げた。なお、中国本土について
は「注意喚起」の段階にとどまっているものの、その内容は香港のものと同じ内容になって
いる。
カナダ:出入国ともに空港での検査を厳格化
カ ナ ダ の 厚 生 省 (Health Canada) 及 び 外 務 省 (Department of Foreign Affairs and
International Trade)は、国民のハノイ(ベトナム)、香港を含む中国、シンガポール、台湾へ
の渡航について、渡航先の変更などを勧告している(潜在的患者の国外流出を防止するため
もある)。なお、WHO のホームページは、カナダのトロント地区を SARS 感染地区として、香
港、中国、シンガポール、ベトナムと並んで紹介している。4 月 1 日現在、カナダでの発症は
151 名、死者 6 名。うちトロントを中心としたオンタリオ州でそれぞれ 124 名、6 名となって
いる。オンタリオ州は SARS に関して非常事態宣言を発令。現在、2 病院が閉鎖されている
ほか、他の病院に関しても出入りを厳しく制限している。トロント国際空港では入国者のみ
ならず出国者に対しても SARS に関する検問を開始した。
フランス:注意喚起を発する(2003 年 4 月 2 日現在)
フランス外務省は、2003 年 4 月 2 日、ハノイ(ベトナム)、シンガポール、中国(特に香港お
よび広東省)の 4 地域で SARS が流行していることから、「これら地域への旅行を避けるのが
賢明」との「注意喚起」を出した。また、台湾に関しては、未確認感染が 6 例あるとし、上記の
国・地域に準ずる取扱いをしている。なお、フランスにおいて、この種の発令は「注意喚起」
(Avertissement)、「渡航自粛勧告」(Voyages deconseilles/2 種類あり、①仕事などやむを
得ない場合除き、②いかなる場合にも)の順に強くなる。
ドイツ:注意喚起(2003 年 4 月 1 日現在)
ドイツ外務省は、2003 年 4 月 1 日付の渡航情報で、WHO は、渡航警告を発していないという
ことを紹介しつつ、感染が発生、または、発生しうる地域(現在、カナダ、香港、台湾を含む 5
地域、シンガポール及びベトナムのハノイ)では、密接な接触による健康上の問題と現地を
旅行中に検疫に係わるトラブルに巻き込まれる可能性があることを指摘し、これら地域へ
の旅行を極めて慎重に再考するよう促している。特に、風邪などの症状を呈する旅行者は、
現地で検疫を受けなければならないことから、これら地域への渡航を見直すよう言明して
いる。また、健康な人については、行動要領を守っていれば、健康上の危険は少ないとしてい
る。
2.訪日旅行市場において「SARS」が海外旅行および訪日旅行に与える影響
2002 年 4 月 3 日時点で、日本は WHO が定義する感染国に指定されていないことから、訪日
旅行への影響は比較的軽微であるが、訪日旅行者の 4 人に 1 人が日本の他にアジアの感染国
にも同じ旅で渡航していることから、影響は免れない。特に業務旅行などでその傾向が顕著
である。アジア各地においては、先月の 3 月 20 日に開始されたイラク攻撃の影響よりも
「SARS」の方が深刻にとらえられている。「SARS」から身を守るため人混みを避けるなどの注
意が各国政府から勧告されていおり、国内旅行のみならず、海外旅行そのものを延期する動
きがある。これに対し、航空会社は減便などの措置をとっている。市場別の海外旅行全般お
よび訪日旅行の動向は以下の通り。
韓国:海外旅行は全般的に大打撃だが、訪日旅行への影響は少ない
中国や香港、東南アジアへの旅行は大きな影響を受けている。大手ホールセーラー2 社に
おいては、キャンセル率が通常に比べ 60%以上増加し、新規予約も通常の半分以下に減少し
た。比較的安全と思われているアジアの他の地域への旅行も大幅に減少している。タイや
フィリピンへのハネムーン旅行も打撃を受けており、代わりに国内の済州島へのハネムー
ンが増えている。
また、多くの旅行会社で、中国や香港、東南アジア以外にも「SARS」との関係ないと思われ
る地域への旅行まで減り、売り上げが昨年同期に比べ大幅(30%-50%以上)に減少している。
中には予約のキャンセルが相次ぎ、新規申し込みは、日本商品を除くと、ゼロという旅行会
社もある。大韓航空とアシアナ航空は、乗客が前年同期比 30%以上の減少を見せている。ア
シアナ航空は中国行きの一部路線の運休や減便を検討中。 「SARS」感染国・地域などへの旅
行から日本への旅行へ切り替える人も多く、訪日旅行へ与える影響は比較的少ない。上述の
ホールセーラーやほかの旅行会社でも、日本旅行商品の売れ行きは落ちていない。顧客から
の問い合わせに対して日本やオーストラリアを紹介したり、「SARS」の影響のない安全な国、
日本」を強調して広告宣伝をしている旅行会社もある。
中国:香港を除き海外旅行は順調に増加、心理的には陰りも
北京・上海・広東省にある旅行会社からの聞き取り調査結果は次の通り。北京においては、
現在のところ、香港旅行を除き、海外旅行への影響は見られない。顧客から受入国側の対応
について、「入国客は検査を受けるのか」、「マスク着用義務があるか」など数多くの質問が寄
せられるようになった。顧客の心配が増え、強気なセールスに影を落としている。今後は楽
観視出来ない。香港への団体パッケージツアーは影響が出ており、1 日に 100 人から 200 人
のキャンセルが出ている。メーデー休暇の集客は順調で、すでに 1,000 人余りを確保した。
日本市場にはそれ程の影響が出ておらず、現在、集客が進められている。
上海では、香港を除き、売上げが増加傾向にある旅行会社と昨年並みの水準の確保を狙う
会社、さらには弱気の会社と様々である。A 社は香港へのツアーを除き、海外旅行に「SARS」
の影響はみられない。メーデー期間中のチャーター便は 150 名を予定しているが、現在でも
予約客はかなりオーバーしている。B 社では「SARS」の影響は殆どないが、イラク戦争の影響
もあり集客は容易ではない。安全第一なので、各方面へのツアー募集は例年に比べ低調。広
告も控え目にしている。「SARS」とイラク戦争で旅行を控える人が多いため、海外旅行は、例
年に比べ 4 分の 1 程度の集客となっている会社もある。
広東省においては、各国が広東省への渡航自粛勧告を発令したことから、インバウンド
(海外からの旅行者受け入れ)は全滅の状況となった。広東省居住者の海外旅行も、キャンセ
ル客が出始めている。中東情勢の影響もあり、飛行機に乗らない。9.11 米国同時多発テロ
事件当時より影響が大きい可能性がある。目的地での入国が拒否されない限りツアー募集
を続ける(マレーシアやスイスは、中国人の入国を拒否している)。例年に比べ、申込者が少
ないが、それでも毎日申込者がいる。
香港:先行き不安等から、海外旅行を控える香港市民
旅行会社が取り扱う香港人の海外旅行は、壊滅的な状況に陥っている。旅行会社の取扱い
実績は、概ね各社とも、中国旅行ほぼゼロ、アジア地区は昨年比 9 割以上の減少となってい
る。中国旅行は、3 月 23 日に北京から香港に帰着した 20 数人のツアーグループから数名の
SARS 感染者がでたため、以降、ほぼゼロ状態になった。日本は、「清潔」「今だ感染者が出てい
ないので安全」とのイメージがあるため、他の地域に比べて、落ち込みは少ないものの、約 8
割の減少と落ち込み幅は大きい。
航空会社から伝えられるところによると、香港人旅客の日本向け航空需要は 3 割から 4 割
程度、減少している。キャセイ航空は、成田-香港線のうち週 7 往復、5 月 6 日から 1 カ月を
メドに運休する。成田線の他、アジア路線では、台北便週 14 往復、シンガポール便 6 往復、
バリ便 1 往復、ジャカルタ便 2 往復、マニラ便 7 往復、クアラルンプール便 7 往復、バンコク
便 3 往復の 40 便を減便した。米国・欧州など長距離路線は、乗客の多くがビジネスマンの個
人客であるため、今のところ、影響は少ない。欧州行きは中東経由から米国経由(香港からロ
ス、サンフランシスコ、バンクーバーなどの直行便を利用)にシフトしている。香港-広島線
(週 2 往復)と香港-仙台線(週 2 往復)を運航する香港ドラゴン航空は、日本人ゼロ・香港人旅
客激減のため、広島便は 4 月いっぱい暫定運航停止とする、仙台便は 4 月 16 日、20 日、30 日
を除いて 4 月いっぱい運航を停止する。5 月以降の運航は、肺炎の今後の状況次第で決まる。
同社が多数運航している中国本土各地や台北への便も、3 月中に既に 10 往復減便したが、今
後も更なる減便が予定されている。他方、日系の航空会社は定期便の暫定的削減は現在のと
ころ予定されていない。香港から札幌へのチャーター便は、一部、成田経由の定期便に振り
替えるなど定期便の旅客確保を優先している。イースター休暇時期を中心に日本各地に向
け多数設定していたチャーター便の一部はキャンセルされた。
混雑する空港待合室や、狭い機内に長時間閉じこめられ、身元の不明な人と隣り合わせに
なって「SARS」に感染する不安、市民の外出自粛などによる飲食店等の営業活動の停滞及び
訪香港外国人旅客の激減等がもたらす香港経済の先行き不安、さらには同時並行的に継続
するイラク戦争に伴う、外国の国際空港におけるテロ発生の不安などが複合的に重なり、
人々が「今はお金を使わないで自宅に引きこもる」傾向にあり、海外旅行意欲は大幅に阻害
された。さらに、3 月 29 日から 4 月 6 日の学校臨時閉鎖によるイースター休暇(本来 4 月 18
日-21 日のイースターを挟んで、各学校は 4 月 16 日-25 日を休暇としていた)の取り消しと
夏休みの短縮など、市民の海外旅行に対しては悪い材料が多過ぎるため、今年の香港人海外
旅行及び訪日旅行は昨年に比べて大幅に減少すると見込まれる。
客が殆ど来ないので、従業員に今まで溜まった休暇をまとめて消化させている旅行会社
も多数見うけられる。人々は人ごみでの感染を恐れて雑踏や大勢の人が集まるコンサート
等イベント会場や映画館を避ける傾向にある。イベントは相次ぎキャンセルされ、コンベン
ションホールの会議等予約も解約されている。カラオケ店(マイクからの感染を恐れて)や
飲食店は閑古鳥が鳴き、自宅食事派が急増している。また、社内消毒、ビル消毒、事務所閉鎖、
妊娠中の女性従業員への休暇付与または自宅勤務、感染地域居住の従業員の自宅勤務化等
の措置をとる企業・事務所が増えていることが、連日報道されている。
台湾:海外旅行キャンセルは香港・中国に集中、日本は軽微
3 月 31 日の行政院経済建設委員会の会議で、明らかにされた交通部観光局の統計による
と、台湾から香港・中国へのツアーは全体の 90%がキャンセルされている。4 月 1 日付けの有
力紙「中國時報」には「旅行業空前大災難」との見出しが掲載された。台湾の行政院経済建設
委員会は「SARS」の感染拡大が 2003 年末まで続いた場合、台湾の観光業界の損失額は 85 億元
(約 300 億円)に達するという予想を示した。旅行社の中には職員を半日無給で休ませる、
リストラを行う、給料をカットする等の措置を行う企業も出てきている。
訪日旅行への影響は、中国や香港と比べると軽微ではあるが、ここ 1 週間で日本向けツア
ーにもキャンセルが出ている。しかし、台湾の主要紙によれば、日本と韓国についてはキャ
ンセル率は低く、対前年同期比で 10%減程度にとどまっている。日本は安全かつ衛生面の水
準が高いとの文字も紙面に見られる。訪日旅行の取りやめのなかで最も大規模なものは 4
月後半に予定されていた関西への生命保険会社のインセンティブ旅行(報奨旅行)で、一行
の規模は 2,800 人だった。同社が 3 月 28 日、社員の海外旅行禁止令を出したことが、直接の
きっかけとなっている。ある旅行会社では、混雑する空港や日本旅行の行き帰りの航空機内
での感染を危惧して訪日旅行を取り止めた顧客が 15%に上ったと報告している。ただし、同
社によれば、逆に東南アジア、中国大陸への旅行を取りやめ、日本に行き先を変更する旅行
者もいるため、全体としての日本への送客は増減ゼロとのことである。訪日旅行専門会社は、
この際とばかり、見頃の観桜旅行を昨年より 3000 円から 1 万円値下げし、中国・香港や東南
アジア向けツアーをキャンセルした顧客の取り込みに勤しんでいる。大阪の造幣局の通り
抜けを目玉にする関西ツアーから 4 月中旬の東北(5 日間ツアーで約 13 万円/7 日間ツアー
で 15 万円)や 5 月上旬の北海道にかけての観桜ツアーが各種販売されている。
タイ:訪日旅行そのものにも影響及ぶ
政府関係者がテレビ、新聞等で航空機の利用や空港自体の危険性について発言している
こともあり、それが海外旅行全般に悪影響を及ぼしている。旅行会社は、日本で患者が発生
していないことを顧客に伝えているものの、訪日旅行にもかなりの影響が出てきている。4
月催行分については、旅行会社、利用航空会社によっても異なるが、20%から 80%のキャンセ
ルが出ている。特に、シンガポール航空、キャセイパシフィック航空利用のツアーは多数の
キャンセルがあった模様である。
シンガポール:代替デスティネーションはビーチリゾート
感染国・地域へはかなりのキャンセルが出ている模様である。同国・地域を避け、バリ、マ
レーシアへの渡航者が目立ってきている。日本行きについては最大 15%程度のキャンセル
が出ている模様である。中東情勢と「SARS」の影響が重なり、大手旅行業者の中にも経営状態
が急速に悪化している企業がみられる。また、「SARS」蔓延を防ぐため、現在、4 月 6 日までの
学校閉鎖が行われているが、この閉鎖措置が延長される可能性が大きい。その場合、シンガ
ポールの海外旅行のピークシーズンである 6 月の学校休暇が短縮されることになり、仮に
事態が急速に収束に向かったとしても、6 月のピークシーズンへの悪影響は避けられないも
のと懸念される。なお、一部の日本人駐在員の中には、家族を日本へ一時的に避難させる動
きが出てきている。
オーストラリア:深刻な訪日旅行離れを懸念
当地の大手旅行会社によると、中東情勢、朝鮮半島情勢及び「SARS」の 3 つのマイナス要因
が複合的に影響し、前年同時期に比べ、取扱量は 50%から 60%減少している。特に、訪日修学
旅行については、前年同時期比で 70%から 80%も減少している。中東情勢が長期化し、「SARS」
の更なる蔓延によって、今後さらに深刻な訪日旅行離れを招くおそれが大きい。
米国:訪日旅行に与える影響は今のところ軽微
日系旅行会社のニューヨーク支店等によれば、いまのところ病気への懸念が端緒となっ
た訪日旅行のキャンセルは特段でていない。米国西海岸においても、日本と米国間の航空便
が運航停止になるほど問題は深刻化していないため、マクロ的には、日本への旅行需要が減
退している状況にはない。特に 4 月、5 月発の訪日旅行において、現段階では、当地からのツ
アーが中止になったという情報はない。ただし、JNTO への問い合わせの電話の相当数が
「SARS」に関する日本の状況についての照会であり、「日本もアジアの一国である」という認
識から、米国民が神経質になっていることが見て取れる。なお、ニューヨークのマスコミで
は日本を発症地と混同した報道はされていない。また、日本国内は安全と見られているが、
成田空港における搭乗者の健康状態のチェックが甘いと、航空会社の対応が懸念されてい
る。(ニューヨーク事務所・サンフランシスコ事務所報告)
また、ビジネス旅行の消費者団体「BTC」(Business Travel Coalition)がアジアへの出張頻
度が多い企業 180 社を対象に行った調査結果が 4 月 1 日、サンフランシスコ・クロニクル紙、
シカゴ・トリビューン紙、など全国の主要各紙に掲載された。それによると、「SARS」の懸念に
より、180 社のうち 27%の企業が「アジアのいずれかの国への出張を禁止する」措置をとって
いる(内訳は香港が 100%、シンガポールが 84%、中国本土が 82%、ベトナムが 60%)。なお、その
他 8%の企業が出張禁止を検討しており、全く何も対策を講じていない企業は 24%に過ぎな
い。また、41%の企業が従業員に対して当該 4 地域への出張に関する注意喚起を行っている。
(全在米事務所報告)
例えば、インテルやヒューレットパッカードといったシリコンバレーの著名企業では当
該 4 地域への出張を自粛するほか、自社の香港支店従業員に対して自宅勤務を命ずるなど
の「SARS」対策に追われている。英語圏であることや中国本土へのビジネス展開もあり、米国
企業はアジア統括支局を香港に置くケースが多く、こうした企業活動への影響が間接的に
日本と米国西海岸間の航空需要減や、公用私用を問わずこれまで多かった日本でのストッ
プオーバーを減少させてしまうのではないかという懸念がある。(サンフランシスコ事務所
報告)
感染者が出ている国を中心にアジアへの旅行が控えられる傾向は当面続く見通し。一方
では米系ツアーオペレーターの中には、米国のウィルス感染による死亡者数は年間 3,500
人にも上り、これに対して「SARS」被害の規模は未だ小さいことから、マスコミの取り上げ方
が過剰過ぎるという不満もあり、数ヶ月のうちに騒ぎは収まるとの見方をしている。(シカ
ゴ事務所報告)
シカゴの旅行会社によると、訪日ツアー(FIT、グループ、パッケージツアー)には、今のと
ころ殆ど影響は出ていないが、中国など他のアジア方面ツアーは「SARS」の影響でいくつか
のツアーがキャンセルや延期になっている。訪日旅行に与える影響は今のところでのとこ
ろ軽微なものに留まっているが、今後、感染者数が劇増したり、日本での感染が確認された
場合には訪日旅行にも大きな影響を及ぼす恐れがある。日本航空のシカゴ-東京線は、3 月
20 日に開始されたイラク攻撃以前からあった予約のうち約 3 割がキャンセルまたは延期に
なったが、イラク攻撃に加え、アジアの「SARS」の流行が複合的に影響したものと見られる。
(シカゴ事務所報告)
当地のツアー・オペレーターによると、中国、香港向けパッケージツアーについてはキャ
ンセルが相次いでいる。一方、日本向けパッケージツアーには特に影響はみられない。中に
は「感染者が今のところおらず、清潔で安全なイメージのある日本向けパッケージツアーの
販売に今後力を入れていくとの話が社内で出ている。」とコメントする旅行会社もある。し
かしながら日本航空の担当者の話によると、「SARS」の影響によりキャンセルが出ており、予
約状況も落ち込んでいるとのことである。(ロサンゼルス事務所報告)
カナダ:白人系カナダ人は冷静、中華系カナダ人は大きく反応
今年は気温が低い日が続いていることもあり、カリブ海などイラク攻撃と関係のないサ
ン・デスティネーションは堅調な動きが続いている。しかしながら、米国への旅行は引き続
き自粛気味で、もっとも忙しい米加国境であるナイアガラ地区は閑散としている。白人系カ
ナダ人の間においては「SARS」の影響と思われるキャンセルはほとんどなく、既に予約済み
の旅行に関しては、若干のキャンセルはあるものの、出発する予定である。白人系カナダ人
の多くは、旅行の是非を決定する上で、政府の出す注意等を判断材料にするようで、幸い日
本は、注意対象となっていない唯一ともいえるアジアの国となっており、「日本は、戦争とも
疫病とも関係ない安全な国」という認識が大きく影響している。また、発症報告のないケベ
ックを中心とした仏語圏に関しては、中東情勢、「SARS」いずれの理由においてもキャンセル
率が極めて低いとのことである。日常生活では「SARS」の影響から多くのカナダ人が外出を
控える傾向にあるようで、特に、中華系のレストラン、ショッピングモールなども閑古鳥が
鳴いている状況である。「SARS」の発症例の少ないバンクーバー地区においても、トロントの
影響か、マスクをする人間が多く、中華系レストランは敬遠されている。
エアカナダは、アジア方面の予約が 70%以上キャンセルされたことから、アジア便の減便
を検討している。日本路線の運休は、成田-トロント線で 4 月便の一部および 5 月 5 日から
5 月 31 日までの間、名古屋-バンクーバー線で 5 月一杯、関空⇔バンクーバー線は 5 月中、就
航機材が縮小される予定である。なお、同社は 4 月 1 日に会社更生法を申請した。日本航空
でも、今週に入り、キャンセルが相次いでおり、特に、東京以遠への顧客のキャンセル率が高
いとのことである。
中華系オペレーターの話によると、中東情勢に際してはほとんど影響ないとされていた
中華系カナダ人は、「SARS」に対しては大きく反応した。中国、香港、シンガポール方面のツア
ーはすべてにキャンセルが出ており、日本を含むマルチデスティネーションの場合も同様
である。日本のみのモノデス商品に関しても、今週から 4 月中旬にかけてのツアーはほぼ全
滅に近い状態とのことだ。聞き取り調査したオペレーター2 社は中華系カナダ人を顧客と
した大手で、両社だけでも、この時期だけでも少なくとも数百名単位の減少と思われる。こ
の理由については両社とも、「日本が怖いのではなく、誰が一緒に乗っているかわからない
飛行機に乗るのが怖い、という顧客の心理が強く働いている」とのことである。訪日カナダ
旅行市場で大きな割合を占めると思われる中国系カナダ人の旅行手控えが顕著になってお
り、訪日旅行動向に大きな影響を与えると思われる。
ドイツ:悪影響は少ない
旅行会社に聴取したところ、中国、ベトナム等へのツアーや、香港経由で訪日する客に悪
影響が出ている模様だが、今のところ、訪日ツアー自体への悪影響は聞いていない。
担当:総務部企画調査課
三瓶、上村
Tel.03-3216-1905
Fax.03-3214-7680
Fly UP