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衛星リモートセンシング - 千葉科学大学 図書館
千葉科学大学 図書館公開講座 衛星リモートセンシング 千葉科学大学 危機管理学部 吉田重臣 2009/11/21 1 リモートセンシングとは • • • • 対象物体に非接触・非破壊で特性情報を取得 対象物体から放射・反射される電磁波を利用 対象物体から離れた位置で観測 「リモセン」と略す 2009/11/21 2 身近なリモセン • 車体感知 – 自動感応式信号機 – 車速感知 2009/11/21 3 衛星リモートセンシング • 今や地球は「丸裸」 • 北朝鮮のテポドンミサイル発射場 ↓ 2009/11/21 4 銚子の衛星画像 • グーグル・アース 2009/11/21 5 宇宙開発の歴史 • 当初は軍事・国威発揚目的 – 東西冷戦さなかの宇宙開発競争 6 宇宙開発競争 • スプートニク・ショック – 1957年10月 ソ連が世界初の人工衛星 • エクスプローラ1号 – 1958年 米国 7 有人宇宙飛行競争 • ガガーリン: ソ連、人類初の地球周回 – 1961年4月12日、ボストーク計画 • 対抗する米国: マーキュリー計画 – 1962年2月20日、グレン • テレシコヴァ: ソ連、女性初の宇宙飛行 – 1963年6月16日 8 有人月着陸競争 • 宇宙開発の急激な進展 • ソ連: ソユーズ計画の頓挫 – 内紛、死亡事故、指導者の急逝、連続失敗 • 米国: アポロ 11号月面着陸 – 1969年7月21日 アームストロング、オルドリン 9 デタントからソ連崩壊へ • 1975年: アポロ・ソユーズテスト計画 – ソ連・米国の宇宙船がドッキング • 80年代初期: デタント終結 – 米ソの宇宙兵器開発競争激化 – 両国の経済を圧迫 – 1989年 共産圏崩壊、1991年 ソ連崩壊へ • 宇宙開発 – 平和利用、ペースは予算削減により減速 10 地球リモートセンシングの歴史 • 東西冷戦の一環 • 軍事衛星 (偵察衛星) • 資源探査衛星 • 気象衛星 (当初は「実用」衛星優先) • 冷戦終結後、科学研究目的の衛星へ 11 観測対象分類 • 陸域観測 • 海洋観測 • 大気観測 以下、順に解説 2009/11/21 12 陸域リモートセンシング • • • • (偵察衛星) 資源探査衛星 陸域環境観測衛星 (災害状況把握) 13 偵察衛星 • 1958年 米国 コロナ衛星 – クリントンにより情報公開 北朝鮮 ミサイル発射施設 14 コロナ衛星画像 • 60年代の貴重な画像 – 当時の土地利用状況 • 現在の偵察衛星 – ほとんどの場合 詳細は未公表 15 資源探査衛星 • 天然資源 (油田、鉱山) の開発 – 軍事の次に重要 • ランドサット (Landsat) – 1972年以降 • 1号機は「アーツ」、2号機から改名 – 7号機まで打ち上げ • 地球観測、農業・都市計画、安全保障まで 幅広く利用 16 資源探査衛星: 画像例 • ジンバブエ共和国の貫入岩: グレートダイク – 花崗岩の割れ目に沿って 苦鉄岩が貫入。 白金・クロムの鉱床が 分布し、ジンバブエの 経済を支える。 17 資源探査衛星: 画像例 • ケシム島 (イラン)の岩塩ドーム – 堆積岩が厚い岩塩上に 堆積したときに形成。 – 石油田の存在指標。 – 上方の赤い部分は マングローブ生息域。 18 資源探査衛星: 画像例 • ボツワナ共和国:オラパ・ダイヤモンド鉱山 – 世界最大級。 – 1967年 発見、以来ボツワナ 経済が急成長。 – 国債格付けが日本と同格に。 19 分光反射・放射特性 • 観測波長の選択 – 各対象を識別 20 Landsat • データ検索例 – インターネットで検索可能 – 銚子: 東経 140°51.4′、北緯 35°44.3′ 21 国際協力衛星 Aster • 1999年、通産省とNASAが共同開発 • 「Terra」搭載 • 多数の観測波長 – – – – 可視・近赤外線: 3 バンド、15 m 立体視バンド、15 m 短波長近赤外: 6 バンド、30 m 熱赤外: 5 バンド、90 m 22 Aster 画像例 • ERSDAC (資源・環境観測解析センター) – http://www.ersdac.or.jp/ 23 陸域観測衛星 「だいち」 • 2006年 NASDA 打ちあげ – 運用中 • 可視近赤外センサ – 4 バンド、10 m • 開口合成レーダー – 10 m • 立体視センサ – 2.5 m 24 地形図の例 • 「だいち」 可視近赤外線センサ 25 DEM (デジタル標高図)の例 • 「だいち」 開口合成レーダー 26 陸域観測 • 植生 – – – – フェノロジー 植生分類 植生ストレス 植生量、温室効果ガス吸収 • 森林火災 • 夜間の風景 • 地球内部運動 – インターフェロメトリー 27 フェノロジー • 生物季節 – 自然動植物の季節的変化 – その気候・気象との関連 • 植物の場合 – 発芽、開花、紅葉、落葉 – 各地方間の気候比較 – 気候の経年変化 28 フェノロジー • 植生指数 (NDVI)が基本 29 フェノロジー • 衛星植生指数マップとその時間変化 30 フェノロジー • 植生指数マップが簡単に見られる – http://www.mpstpc.pref.mie.jp/kids/eisei/ndvi/i ndex.htm 31 展葉前線 • 1998年 (左:高温異常)と 1999年(右:平常) 32 植生分類 • 分光反射率 33 森林火災 • 今日も世界のどこかで森林が燃えている – 自然火災: 極度の乾燥による火災 – 人為火災: 焼畑農業 • 二酸化炭素・エアロゾルの大量発生源 34 1年間の森林火災状況 • 1992年4月 – 1993年3月 35 シベリアの大規模森林火災 • 2002年夏 – 温暖化による気温上昇、降雨量減少が原因? – 気候にも影響 36 森林火災の監視 • 熱放射・夜間可視光観測 • 夜間可視光観測 – 植生指数マップとの比較 – 平常時の明るさ (都市光)分布との比較 37 宇宙からの夜景 • 人工灯火分布 – World Stable Light 38 宇宙からの夜景 • 東アジア 39 宇宙からの夜景 • 日本近辺 40 いかつり漁船 • 夏はイカ漁、冬はカニ漁 41 災害状況監視 • 広域の被害状況把握 – 台風18号の影響: 和歌山県那智勝浦町 2009/11/21 42 海洋衛星観測 • • • • 地球表面の7割が海 気象・環境への影響大 船: 限られた時間、限られた観測点のみ 衛星リモートセンシングが重要 43 海洋観測項目 • • • • • • • 海面温度 海面高度 海色 (クロロフィル量など) 海上風 海氷 日射量 塩分濃度 (将来) 44 海表面温度 • 熱赤外放射計 – 10.5 ~ 12.5 µmの輝度温度 – 複数波長の観測から表面温度を推定 – 大気の影響大、雲があると× • マイクロ波放射計 – 6 ~ 90 GHzの輝度温度 – 空間分解能、温度分解能は劣る – 水蒸気の影響は少ない → 全天候型 45 海表面温度 • 海流・気象と密接に関連 – 2・8月の平均海表面温度 (30年間平均) 46 エル・ニーニョとラ・ニーニャ • 太平洋赤道域の海面温度異常 • エル・ニーニョ現象: 平年に比べ高温 – ラ・ニーニャは逆に低温 1997年12月 47 エル・ニーニョとラ・ニーニャ • 大気現象と密接に関連 48 エル・ニーニョと異常気象 • 太平洋域だけでなく世界中に影響 – 「バタフライ効果」 49 エル・ニーニョと異常気象 • 6 ~ 8月 50 エル・ニーニョと異常気象 • 12 ~ 2月 51 エル・ニーニョ/ラ・ニーニャ 発生原因 • 根本的原因は不明 • 地球温暖化との関係 – 断定できない状況 • 海域を指定して継続的に監視中 52 海流と海表面温度 • • • • 暖流: 表面温度 高い 寒流: 表面温度 低い 海流変化が海表面温度に直接反映 全球海表面温度観測が重要 53 海流は変化する! • 黒潮大蛇行 – 漁業・航海に影響 54 海流と海表面温度 • 2005年の黒潮大蛇行 55 海流の影響 • 海流の影響により、気象・地形が変化 • 暖流 – 沿岸を温暖・湿潤化 • 寒流 – 沿岸を冷涼・乾燥化 – 海岸砂漠 • チリ・アタカマ砂漠 56 海面高度 • 海面高度計 – 人工衛星から海面までの距離をレーダーで 測定 – 人工衛星高度ー距離=海面高度 – 海面高度「偏差」 (基準との差)を決定 • 何を基準にするのか? (「海抜 0 m」とは?) 57 海面高度観測でわかること • 海底地形 – 海面高度計により発見された ファウンデーション海山 58 海色観測 • 海面の「色」 • クロロフィル a 分布 = 植物性プランクトン・藻類分布 • 海水混濁度 59 クロロフィル (葉緑素) • 植物・プランクトンの光合成 – クロロフィルが光吸収 – 光エネルギー → 化学エネルギー • 4種類 – 「a」、「b」、「c」、「d」 – 分子構造の違い 60 クロロフィル濃度観測の応用例 • 全球・広域観測 (低空間分解能) – 海洋生物量変動 – 漁業資源量予測 • 沿岸・内湾観測 (高分解能観測) – 水質モニター – 赤潮・アオコ監視 61 クロロフィル濃度全球分布 • 1997年5月:月間平均 62 日本近海のクロロフィル濃度 • 濃度が高い海域は良漁場の可能性高い 63 クロロフィル濃度の季節変化 • 「ブルーム」現象: 春から夏の大発生 – 栄養塩類の供給 – 日射の増加 64 クロロフィル濃度と海面温度 • 河川流・温度境界 – 栄養塩類豊富 65 クロロフィル濃度と海面温度 • 北米東岸 2003年4月: ブルームが見られる – 左: 海面温度、 右: クロロフィル濃度 66 漁業資源量予測 • クロロフィル濃度と漁業実績をリンク – データベース化 – 好漁場情報をリアルタイムで提供 • 「漁業情報サービスセンター」 67 赤潮・アオコ • 赤潮: プランクトンの異常増殖 • アオコ: 微細藻類の大発生 68 赤潮 • 東京湾、宇和島 69 アオコ • 八郎潟 (2007年8月) 70 地球大気衛星観測 • 気象衛星: 1960年以降 – 雲分布: 可視・赤外線画像 – 海上風・降雨量: マイクロ波散乱計 – 大気力学的観測 • 環境監視衛星 – 温暖化ガス濃度など – 大気科学的観測 71 大気大循環 • 全地球的な大気の動き • 太陽光エネルギー供給の不均一 – 赤道付近: 供給過剰 – 極付近: 供給不足 • 大気温度と大気循環 – 赤道付近: 温度高く上昇気流 – 極付近: 温度低く下降気流 72 大気大循環 • 地球の自転がなければ → 単純な南北流 • しかし、地球は自転している! 73 コリオリ力 • 回転系で運動する物体 ← 運動を曲げる力 – 一緒に回転する人が見たときの「見かけ」の力 74 コリオリ力の南北対流への影響 • 3つの循環帯に分離 – ハドレー循環: 貿易風 – フェレル循環: 偏西風 – 極循環: 極東風 • 地球の自転速度 – 3つ • 自転速度早いと 多くの帯ができる – 例: 木星 75 木星大気の縞模様 • 木星: 自転周期 9.6 時間 – 多くの循環帯を形成 76 低気圧・高気圧の渦巻き構造 • コリオリ力により渦巻き形成 77 気象衛星 • 可視光・赤外線画像 – 雲分布 • マイクロ波散乱計 – 降水量・風速 78 気象衛星 • 静止衛星による定点常時観測 – 最初は1960年米国のタイロス 1号 – 日本は1977年 ひまわり 1号から 79 気象衛星 • 5機の静止衛星+極軌道衛星で 全球をカバー – 世界気象機関 (WMO)で取り決め 80 可視光・赤外線画像 • 雲の分布 – 可視光: 昼間のみ、空間分解能高い – 赤外線: 夜間も観測可能、空間分解能は低い 81 気象衛星 • マイクロ波レーダー –風 – 降水量 – 水蒸気 82 地上マイクロ波レーダー • 風・降雨観測 83 地上マイクロ波レーダー • 風・降雨観測 84 地球大気衛星観測 • 気象衛星: 1960年以降 – 雲分布: 可視・赤外線画像 – 海上風・降雨量: マイクロ波散乱計 – 大気力学的観測 • 環境監視衛星 – 温暖化ガス濃度など – 大気化学的観測 85 地球大気組成の特徴 • 地球大気組成(地表、%) 窒素 酸素 78.09 20.95 アルゴン 二酸化炭素 0.93 0.04 ・・ 水蒸気 ・・ 0~3 窒素・酸素・アルゴンでほとんどを占める 二酸化炭素・水蒸気は変動する 86 大気微量成分 • • • • • • 硫黄化合物 窒素化合物 炭化水素 オゾン: 成層圏オゾン層 ハロゲン化物 粒子状物質 87 オゾン層の役割 • 有害紫外線を遮断 88 大気微量成分 • • • • • • 硫黄化合物 窒素化合物 炭化水素 オゾン: 成層圏オゾン層 ハロゲン化物 粒子状物質 89 オゾンの破壊 • 塩素原子を触媒としてオゾン破壊 90 オゾンホールの発見 • 南極春期 (9-11月)にオゾン層に「穴」 91 オゾンホール • 「穴」面積が年々拡大 92 南極で発生する理由 • 極成層圏雲の発生 – 低温時に発生 – 極渦により熱が南極に到達しない • 雲がオゾン破壊の触媒として作用 – 破壊が早く進行する • 北極では極渦が顕著でなくホールも小さい 93 オゾン層破壊の影響 • 有害紫外線が地上に到達 94 オゾン層破壊防止策 • モントリオール議定書 (1987年) – フロン等ハロゲン化物の回収・生産禁止 • 南極オゾンホールの拡大停滞 • 中緯度オゾン層回復傾向に • 2050年にはオゾンホール消滅の期待 95