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平成24年度 新産業創出研究会「研究成果報告書

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平成24年度 新産業創出研究会「研究成果報告書
平成24年度
新産業創出研究会「研究成果報告書」
「 自動車用シートの能動制御による振動抑制装置の研究開発 」
[岡山県立大学・教授] [ 西山 修二
[岡山県立大学・コーディネータ] [ 湯浅 光正
]
]
1.はじめに
自動車で発生する振動は、路面→タイヤ→サスペンション→車体→人体・シート系へと伝達される。
人体・シート系は複雑な振動系を構成し、車体側での開発のみでは、人体に伝達される振動低減には
限界がある。ドライバーへの振動伝達を最終的に抑制するためには、人体・シート系に焦点をあてて、
人体へ伝達される振動を抑制することが必要である。本研究開発は、車両の床上の振動を検知し、人
体・シート系のダイナミクスを考慮して、シート座面とシートバックの角度あるいはクッション性能をリアル
タイムに能動制御する自動車用シートの振動抑制装置の研究開発である。
2.概要
自動車で発生する振動は、サスペンション、車
体のみでは、人体に伝達される振動を低減するに
は限界がある。本研究は、シート下部すなわち車体
の床上振動をリアルタイムに加速度センサで検知・
計測・識別・分析し、シートの能動制御を行い人体
へ伝達される振動を低減する研究開発である。シ
ートの能動制御はシート座面とシートバックのクッシ
ョン性能と角度を制御する。
本研究は、車両の床上の振動を検知してリアル
タイムにシートを制御して人体に伝達される振動を
抑制するための理論的解析および試作品の開発に
より技術的に実用性のあることを実証する。
理論的研究として、自動車用シートの振動抑制
図 1 新規の人体モデル
を可能とする人体・シート・ステアリングホイール・
ペダル系の三次元振動モデルを構築する。この
モデルを用いて、シート下に種々の振動が入力
された場合に、シート座面とシートバックの角度と
クッション性能を能動制御して人体に伝達される
振動を最小とする振動システムを構築する。この
モデルを適用して、シート下部に入力された振動
(周波数、振動強度)に対するシート座面とシート
バックの角度あるいはクッション性能を調整する
エアクッションの最適値を算出する。さらに、実験
的研究として、シート座面とシートバックの角度と
クッション性能について、能動制御が可能なシー
トを試作する。
図1は、本研究で開発した人体・シート・ステア
図 2 能動制御による振動抑制装置
リンホイール・ペダル系のモデルを示す。
人体は頭部、胴体部、大腿部、下腿部、上腕部、前腕部から構成され、人体の上下、左右、前後方向の
運動を考慮した 3 次元のモデルである。モデル化にあたり、両端に質量を有し、その質量をばねで
接続するダンベル要素を開発した。各要素間は弾性変形と塑性抵抗を考慮した要素で接続し、人
体とシート支持点は弾性変形と粘性抵抗を考慮した。
図 2 は、本研究で研究開発する能動制御が可能な自動車用シートの振動抑制装置の構造を示す。
3. 研究成果および今後の課題
自動車用シートの振動抑制を可能とする人体・シ
ート・ステアリングホイール・ペダル系の三次元振動
モデルを構築した。パラメータの同定および高精度
化が今後の課題である。
シート下部に種々の振動が入力された場合に、
シート座面とシートバックの角度およびクッション性
能を能動制御して人体に伝達される振動を最小とし
た。図 3 は計算結果を示す。最大 33%の制御効果
が得られた。旋回・駆動・制動時の体のホールド性
を考慮した制御システムを構築することが今後の課
題である。
構築した三次元振動モデルを適用して、シー
ト下部に入力された振動(周波数、振動強度)に
下部に入力された振動(周波数、振動強度)に対する
シート座面とシートバックのクッション性能の最適値を
算出した。今後の課題として、エアクッションの、1~
30Hz は 1Hz 毎に、30~100Hz は 1/3 オクターブ中心
周波数毎に、最適値を算出する。さらに、種々の体型
に対する最適値のデータベース化をおこなう。
そして、制御効率を向上するために、道路効率を
有する三次元デジタル道路データを予見制御し、シ
ート制御の高精度化と高速化を可能とするシステムを
構築する課題がある。
振動抑制装置のハードウエア構成において、エア
クッションがシートバック 3 個、座面 2 個の場合につい
て加速度入力の周波数の帯域が 1~20Hz の間を 8
区間に分割した周波数に対して瞬時に応答可能なハ
ードウエアシステムを開発した(図 4)。今後の課題とし
て、1 から 30Hz をさらに細分化した計算結果を求める
必要性がある。車載可能なプロトタイプの能動制御可
能な自動車用シートを試作した(図 5)。今後の課題と
して、実用に供する試作品を作成し、官能評価が必
要である。
図 3 制御効果
図 4 内蔵エアクッション
4.おわりに
図 5 試作品
車両の床上の振動を検知し、人体・シート系のダイナミクスを考慮して、シート座面とシートバックの角
度あるいはクッション性能をリアルタイムに能動制御する自動車用シートの振動抑制装置の研究開発を
行った。理論的研究および実験的研究により、実証性の検証を行った。本研究の結果と意義としては、
車両側のみの対応では解決することができなかった人体への振動低減が可能となった。これにより、長時
間の運転においても、従来の車両に比べて乗り心地および快適性が格段に向上し、長時間運転してもド
ライバーの疲労が少なくなり交通事故の減少に貢献でき、社会的意義は大きいと考えられる。
5. 本研究の今後の計画
JKA 主催平成 25 年度機械工業振興補助事業「ハイレベルの乗り心地・安全性を実現する新規自動車
用シートの研究開発」において、車体で抑制できなかった振動をシートの角度やクッション特性を最適に
制御することにより人体に伝達される振動を低減する新規自動車用シートの開発を推進する。制御効果
を向上するために、三次元人体・シート・ステアリングホイール・ペダル系の振動モデルを新規に構築し、
ハイレベルの乗り心地および旋回・駆動・制動時のドライバーの体のホールド性まで考慮した新規自動車
用シートの研究開発を行う。理論的研究と実用に供するプロトタイプの試作の双方の開発を目指す。
さらに、平成 25 年度 JST A-STEP へ補助金申請し、実用化段階へ進んでいく予定である。
6.その他
(1)出願特許(タイトル・出願番号・発明者・特許権者など)
発明の名称:自動車用シートの振動抑制装置・出願番号:特願 2010-209724・発明者:西山修二,
大田慎一郎,角田鎮男,小泉敏明・特許権者:株式会社ダイモス,岡山県立大学
(2)投稿論文(タイトル・学会名等)
①大田慎一郎, 西山修二,能動制御を用いた自動車用シートにおける乗員頭部の振動低減に関する
研究, 日本機械学会論文集 C 編,Vol. 78 (2012),No. 791,pp. 2396-2404.
②S. Ota, S. Nishiyama and T. Nakamori, Investigation of a Seat with an Active Control
System for Reducing Vibrations from the Seat, Steering Wheel, and Pedals to the Human
Body in a Vehicle, ASME 2012 IMECE, November 9-15, 2012 Houston, Texas, USA.
③中森友之,大田慎一郎,西山修二,人体-シート-車両系の振動モデルを用いた乗員の振動低減シ
ステムに関する研究,日本機械学会 [No.12-12] Dynamics and Design Conference
2012CD-ROM 論文集,2012.9.18-21,横浜市.
④西山修二,大田慎一郎,北風博久,角田鎮男,乗り心地解析を可能とする新しい人体モデルの開
発,日本機械学会 [No.12-12] Dynamics and Design Conference 2012 CD-ROM 論文
2012.9.18-21,横浜市.
⑤大田慎一郎,西山修二,ステアリングホイール,シート,ペダルからの振動低減を目的とした自動車
用シートに関する研究,日本機械学会 [No.12-1] 2012 年度年次大会 DVD-ROM 論文集,
J103014,2012.9.9-12,金沢.
(3)本研究会の参加企業・団体名
株式会社三英技研
株式会社NS21
株式会社ダイモス
新川電機株式会社
マツダ株式会社
岡山県工業技術センター
広島市産業振興センター
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