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地域紹介・ 観光ボランティアガイド 全国大会

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地域紹介・ 観光ボランティアガイド 全国大会
地域紹介・
観光ボランティアガイド
全国大会 報 告 書
全国広域観光振興事業
谷川岳一ノ倉沢(みなかみ町)
おもてなしの心と言葉で伝えよう
∼地域の魅力 彩発見∼
渋川伊香保
伊香保石段街(渋川市)
開 催 日 平成
22 11 17 18
年
月
日(水)
・
日(木)
主
催
共
催 群馬県/渋川市
援 国土交通省/総務省/観光庁/財団法人群馬県観光国際協会
後
富岡製糸場(富岡市)
湯畑(草津町)
社団法人伊香保温泉観光協会/渋川市観光協会
協
力 群馬県観光ボランティアガイド連絡会
のこぎり屋根(桐生市)
地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会(渋川伊香保)報告書
目
次
地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会(渋川伊香保)開催概要 ····························· 1
開会式
主催者挨拶
社団法人日本観光協会··································································· 4
開催地挨拶
群馬県 ················································································ 5
渋川市 ················································································ 7
後援者からのメッセージ
国土交通省大臣········································································· 8
総務省大臣············································································· 9
観光庁長官············································································· 10
基調講演
「心を動かす言葉」
加賀美 幸子氏 NHK番組キャスター・千葉市女性センター名誉館長 ····················· 11
事例紹介
伊香保温泉観光ガイドの会「遊友」························································· 22
富岡製糸場解説員の会····································································· 26
全体会議(分科会報告)····································································· 29
「地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会」の今後について ································· 54
閉会式
主催者挨拶 ·············································································· 56
開催地挨拶 ·············································································· 57
参考資料
地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会(渋川伊香保)事後アンケート集計 ················· 60
地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会(渋川伊香保)開催概要
開 催 日
平成22年11月17日(水)
・18日(木)
会
11月17日(水)
場
開 会 式・基調講演
渋川市民会館
分 科 会
渋川市民会館、如心の里ひびき野、ホテル天坊
情報交換会
ホテル天坊
11月18日(木)
事例発表・全体会議・閉会式
ホテル天坊
テ ー マ
おもてなしの心と言葉で伝えよう~地域の魅力
彩発見~
主
催
社団法人日本観光協会
共
催
群馬県/渋川市
後
援
国土交通省/総務省/観光庁/財団法人群馬県観光国際協会/
社団法人伊香保温泉観光協会/渋川市観光協会
協
力
参加者数
群馬県観光ボランティアガイド連絡会
700名
プログラム(敬称略)
●11月17日(水)
開会式
13:30~
基調講演
14:00~
分科会
15:30~
吉田
正嗣
社団法人日本観光協会理事長
茂原 璋男
群馬県副知事 挨拶
阿久津貞司
渋川市長
馬淵
澄夫
国土交通大臣メッセージ
片山
善博
総務大臣メッセージ
溝畑
宏
挨拶
挨拶
観光庁長官
「心を動かす言葉」
NHK番組キャスター・千葉市女性センター名誉館長 加賀美 幸子
第1分科会「ガイド上達に向けた自主研修方法」
第2分科会「まちあるき観光におけるガイドの役割」
第3分科会「地域資源の保全と活用」
第4分科会「今後の観光ボランティアガイド組織の方向性」
第5分科会「バリアフリー観光への対応について」
第6分科会「観光ボランティアガイドによる広域連携への取り組み」
情報交換会
18:00~
長嶋
秀孝
社団法人日本観光協会常務理事
挨拶
磯田 文男 群馬県産業経済部観光局局長 挨拶
阿久津貞司
渋川市長
挨拶
真下
誠治
群馬県議会議員
挨拶
星名
建市
群馬県議会議員
挨拶
-1-
田村
亮一
財団法人群馬県観光国際協会理事長
登坂
藤夫
渋川市観光協会副会長
渋川市からのおもてなし
乾杯
中締め
渋川雷太鼓
伊香保フラ
●11月18日(木)
事例紹介
9:00~
全体会議
10:00~
発表者:伊香保温泉観光ガイドの会
「遊友」
富永
精一
発表者:富岡製糸場解説員の会 神保 千代子
分科会の討議内容発表等
第1分科会 佐藤 義一 白井宿観交(光)案内人の会
第2分科会 大澤 歳男 伊香保温泉観光ガイドの会「遊友」
第3分科会 関
第4分科会 今井
利行 富岡製糸場解説員の会
弘 水上観光ガイドの会
第5分科会 青木 達郎 新田荘史跡ガイドの会
第6分科会 湯浅 昌雄 中之条観光ガイドボランティアセンター
司会
大島
正敬
社団法人日本観光協会
事業推進グループ長補佐・国際事業チームリーダー
今後について
長嶋
閉会式
長嶋 秀孝 社団法人日本観光協会常務理事 挨拶
11:40~
秀孝
社団法人日本観光協会常務理事
大森 隆博 社団法人伊香保温泉観光協会会長 挨拶
-2-
開 会 式
基調講演
開
会
式
主催者挨拶
社団法人日本観光協会理事長
吉田 正嗣
本日、「地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会(渋川伊香保)」が開催されるに当たり、一言
ご挨拶を申し上げます。また、観光ボランティアガイド活動に大変熱心に取り組んでいらっしゃいま
す皆さまに、この場をお借りして心から敬意を表します。
本日は公務ご多忙の中、共催していただいております群馬県の茂原副知事、渋川市の阿久津市長に
お越しいただき、また、多数のご来賓の方々にご出席いただいております。この場をお借りしまして
厚く御礼申し上げます。
第15回目の今大会が、全国屈指の温泉県であり、尾瀬国立公園、世界遺産候補の富岡製糸場など
多くの観光魅力を有する群馬県において、またその中でも全国的に有名な伊香保温泉で、全国から7
00名という皆さまがお集まりになりこのように盛大に開催できますことは、主催者として大変うれ
しく、心より御礼を申し上げたいと存じます。
ご承知のように、観光は最近大変社会の関心が高い分野になってきています。地域経済の活性化、
あるいは国際相互理解の増進につながり、わが国の発展のためにも大事だということで、観光立国が
強く叫ばれております。本年5月には、日本の新成長戦略の中にも大きな柱として観光が位置付けら
れました。こういった中、ボランティアガイドの皆さまには、各地域の歴史、文化、魅力を先頭に立
ってお伝えいただくだけではなく、観光地域づくりへも積極的にご参加いただき観光振興に貢献して
いただいているわけで、皆さまへの期待はますます大きくなっております。
現在、全国で活動されておられますボランティアガイドの組織、人数は、当協会で把握しているだ
けでも1623団体、約4万1000人を数えます。こういったボランティアガイドの皆さまが一堂
に会して討議し、情報交換をしていただくこの全国大会は、ボランティアガイド活動の充実を図る上
で大変意義深いものだと考えておりますが、近年、特にボランティアの皆さまから、いろいろご要望、
ご意見をちょうだいしております。特に多く寄せられているご要望は、より地域に密着した参加のし
やすい大会、あるいは各ガイドのスキルを考慮した分科会や研修会を開催してほしいというものです。
そういったご要望、ご意見を踏まえまして、全国大会という形での開催は、今回で最後としたいと考
えております。しかし、皆さま方ボランティアガイドの活動は、地域の観光にとってこれからますま
す重要になってまいりますので、来年以降も引き続き皆さまの活動をご支援する事業を、都道府県の
皆さまや観光協会の皆さまとご相談しながら検討し、実施してまいる予定です。
そういう意味で、新しい段階でのスタート台とも言える今大会が、今後の皆さまの活動の飛躍につ
ながり、各地域の発展に結び付く実りのある大会となりますことを心より願っております。
最後に、本大会にご支援、ご協力を賜りました地元群馬県、渋川市、伊香保温泉観光協会、群馬県
の観光ボランティアガイドの多くの皆さまをはじめ、関係者の皆さまに心から御礼申し上げますとと
もに、ご参加をいただきました皆さまのご活躍を心より祈念して挨拶とさせていただきます。ありが
とうございました。
-4-
開
会
式
共催・開催地挨拶
群馬県副知事 茂原 璋男
今日は北海道から九州まで、700人近い全国のボランティアガイドの皆さんにお集まりいただき、
日本観光協会と群馬県と渋川市の共催という形で大会を開催させていただくことになりました。まず、
この群馬県渋川市を開催地に選んでいただいたことに、心から感謝を申し上げます。群馬県も観光立
県をうたって一生懸命やっている県として、全国からおいでいただいた皆さんに心から歓迎を申し上
げるところです。
私も旅行が好きで、プライベートでよく女房と二人で出掛けたり、友達と出掛けることがあります。
何年か前に奈良の法隆寺へ行きますと、ボランティアガイドの方が説明をしてくださるということが
書いてありました。30分ほど待てば来てくれるということで、電話でお願いをして来ていただいて、
友達の夫婦と4人だったのですが、案内をしていただいた覚えがあります。普通は観光地へ行って、
非常に景色がきれいだとか、古いいろいろな文化を見て、いいものだなと思って、それで終わってし
まうのですが、その時はじめて説明をしていただいて、それを聞いているうちに、昔、小中学生のこ
ろに勉強したことなどが思い出されてきて本当に印象深い旅行をすることができました。
それ以来、いろいろな所へ行ってボランティアガイドの方が何人かのグループに説明をしておられ
るのを見つけると、一緒に聞かせてもらっていいですかということで、よく聞かせていただくことが
あります。そうすると、非常にその地域のことなどを理解できて、印象深く心に残ります。ボランテ
ィアガイドの皆さんの活動は大変素晴らしいことですし、人々の勉強にも非常に役立つことだと思い
ます。どうか皆さん、健康でご活躍いただきますようお願い申し上げます。
この渋川市は、近くに伊香保温泉や水上温泉、草津温泉など、たくさんの温泉を抱えております。
山も赤城山、榛名山、妙義山、そして谷川岳、尾瀬と、大変観光資源に恵まれております。そういう
中、2~3年前の日本経済新聞で、群馬県の知名度は全国47都道府県で47番目ということで、大
変ショックを受けたわけです。本当はそうではなくて、その統計の取り方や聞き方によってそういう
結果が出るのだと思っているのですが。今日もたくさんの群馬県のボランティアガイドの皆さんに来
ていただいております。これから一生懸命そういうことで群馬県のイメージアップを図ることにご尽
力くださればと思います。
群馬県には新田義貞の出身地である新田郡がありますし、新島襄なども群馬県出身です。皆さんに
来ていただいた時に、そういうことを理解してもらう上でもやはりボランティアガイドの皆さんのお
力が必要だと思います。こういう大会は今回が最後だそうですが、また新しい出発ということで、ボ
ランティアガイドの皆さんの活躍の場を広げるためのいろいろな支援を日本観光協会や国と共に群馬
県としてもしっかりやっていきたいと思っているところです。
また、今日も受付で「群馬デスティネーションキャンペーン」と書いたはっぴでお迎えしたと思い
ます。群馬県は、全国のJR6社と提携をして、日本中の皆さんに群馬を知っていただこうというキ
ャンペーンを来年の7月~9月の3カ月間、展開する予定ですが、その際に、来ていただいた人がい
かに気持ちよく過ごしていただけるか、それがデスティネーションキャンペーンの一番大事なところ
です。それで今、古い歴史や観光資源に磨きをかけたり、旅館の女将さんたちも、群馬県のおいしい
-5-
野菜や果物を使った料理でおもてなしをしようとか、また、観光協会の皆さん、農協関係の皆さん、
商工会などの皆さんを挙げて準備をしているところです。全国から来ていただいている皆さんもこの
機会に群馬の温かいもてなしの心に触れていただいて、お帰りいただいたら、また大いに群馬のこと
をPRしていただければありがたいと思っております。これからは、外国からのお客さんも当県にお見
えになりますし、そういう方々を温かく迎えるにはますますボランティアガイドの皆さんの活動が大
切になってくるわけです。皆さま方のご活躍を心から期待をしております。
皆さま方がこれからも健康で元気で楽しいガイドをしていただけるようにお祈りをし、また、日本
観光協会、観光業界の発展を祈念してお祝いの言葉とさせていただきます。
-6-
開
会
式
共催・開催地挨拶
渋川市長 阿久津
貞司
本日は第15回の観光ボランティアガイド全国大会ということで、このように大勢の皆さんにお集
まりいただき、本当にありがとうございます。心からご歓迎を申し上げます。
この渋川市は5年前に6か市町村が合併をして、8万5000の人口となりました。伊香保温泉を
中心に今、観光事業を進めてきております。そういう中で、渋川市におきましては多くの観光ガイド
がおられます。最近できたところも含め、6市町村全部に観光ガイドができたということで、大変う
れしく思っております。
群馬県の会長さんが富永さんという伊香保の会長さんで、しょっちゅうテレビにも出られて伊香保
温泉から地域発という形で宣伝をしていただいています。その富永さんを中心に、今、6地区の観光
ガイドが集まって各地区の良さを再発見しようではないかという形で、それぞれの地域の良さを今取
りまとめ、ストーリーを作りながら、来たお客さんに楽しんでいただき、また、もう一度渋川に、ま
た伊香保温泉に来ていただこうということで頑張ってきております。
今回のテーマが「おもてなしの心と言葉で伝えよう~地域の魅力彩発見~」、この彩発見が特に素晴
らしいと思っております。皆さんには今日の夜、伊香保温泉に泊まっていただきます。明日、石段を
見ていただくと分かるのですが、あの石段の所で約900人、浴衣姿の人を集めて集合写真を撮って、
7社の新聞記者とNHKが全国に発信してくれました。観光というのは、やはり仕掛けなければ駄目
だという感じもあります。ということで、伊香保温泉では、地域の旅館組合、観光協会が力を合わせ
て発信していただいています。これからの時代、一つの団体だけではなく、行政、観光協会・旅館組
合、ボランティア団体が三位一体で地域づくりをしないといけないと思いますので、ぜひ、皆さんに
も頑張っていただければと思っています。
また、今日講演されます加賀美さんはNHKの人ですが、渋川の元市長の姪っ子で、お母さんが市
長の妹だそうです。ですから、加賀美さんが渋川での最後の全国大会で講演をされるということで、
私も今日の講演を大変楽しみにしております。
今、各市町村で観光事業は大変重要になってきております。そういう中で観光事業に取り組んでい
ただける皆さんに心から敬意を申し上げるとともに、これからも健康に留意し、ますます頑張ってい
ただければありがたいと思っています。最後になりますが、日本観光協会のますますのご発展と各地
域のボランティアの皆さま方のご健勝、その地域でご活躍されますことを、心からご祈念申し上げま
して歓迎のごあいさつをさせていただきます。本日は誠におめでとうございました。
-7-
開
会
式
後援者からのメッセージ
本日は、
「地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会」が、ここ渋川市で盛大に開催されますこと
を心よりお慶び申し上げます。また、常日頃から、訪れる方々をもてなし、地域の文化や自然を紹介
されてきた観光ボランティアガイドの皆様方に心から感謝申し上げます。
伊香保温泉を始め、この群馬県には日本有数の温泉地が数多く存在し、また上毛三山や尾瀬など素
晴らしい自然景観がたくさんございます。東京からも近く、今後益々多くの方の来訪が見込まれるこ
の群馬県、そして渋川市において、
「地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会」が開催されますこ
とは、本当に意義深く、本大会の開催に努められた群馬県、渋川市をはじめ地元関係者の皆様、社団
法人日本観光協会の皆様のご尽力に敬意を表します。
本年6月に閣議決定をした新成長戦略においても観光立国・地域活性化戦略は7つの戦略分野の一
つに選定されています。国土交通省では、観光庁を中心として、訪日旅行促進事業による外国人旅行
者誘致や、休暇取得の分散化による国内観光振興など、地域活性化やビジネス拡大を図るべく官民一
体となって取り組んでおります。
2013年訪日外国人1500万人の目標に向けて、今年から新しいキャッチフレーズとして
「Japan.Endless Discovery.」を選定しました。このキャッチフレーズには「尽きることのない感動
に出会える国、日本」という意味合いが込められていますが、海外の方に何度も訪れて頂く国にする
には全国各地で観光客をお迎えする観光ボランティアガイドの皆様方のご協力が不可欠です。今後も
更なるご支援・ご協力をお願い申し上げます。
最後になりましたが、本大会のご成功と、ご参加の皆様方のますますのご健勝、ご活躍を心より祈
念いたしまして、私の挨拶とさせていただきます。
平成22年11月17日
国土交通大臣 馬淵 澄夫
-8-
開
会
式
後援者からのメッセージ
「地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会」が、渋川市において盛大に開催されますことを心
よりお慶び申し上げます。また、本日お集まりの観光ボランティアガイドをはじめ関係者の皆様方に
おかれましては、日頃から地域観光の発展のため、熱心に活動に取り組まれていることに心から敬意
を表します。
人口減少が進む中で地域活性化を図るためには、交流人口の拡大につながる地域観光の振興が必要
不可欠です。また、そのためには、地域住民が自らの地域のすばらしさを理解し、地域に愛着を持つ
ことが何よりも肝要です。
今年度の開催地である渋川市におきましても、石段街を中心に古き良き温泉情緒溢れる湯の町伊香
保をはじめ、各地で多くの住民の方々が観光ボランティアガイドとして、活躍しておられます。
こうした住民自ら地域を紹介し、観光客との交流を通じて情報発信を行う取組みは、地域の魅力を
最大限に伝えるための重要な手段であるだけでなく、さらには、住民参加によるまちづくりを実現す
る上でも大変価値のあるものと考えております。
「地域主権」の確立は現政権の最重要政策です。地域のことは地域に住む住民が責任を持って決め
る「地域主権」の新しい国づくりを進めるとともに、活気に満ちた地域社会をつくるため、最大限の
努力を傾注してまいります。
終わりに、今後とも皆様方の活動が、地域観光の一層の発展、ひいては各地域の活性化に寄与され
ますことを期待しますとともに、関係各位のますますの御活躍と本大会の御盛会を祈念いたしまして、
私のメッセージといたします。
平成22年11月17日
総務大臣 片山
-9-
善博
開
会
式
後援者からのメッセージ
“地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会”による
“おもてなしの心”のさらなる涵養に期待します!
この度、
「地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会」が盛大に開催されますことを心よりお慶び
申し上げます。
日本は、四季折々の豊かな自然・風土、美しい景観、多様な歴史・文化などを数多く有しており、
世界的にみても観光のポテンシャルが極めて高い国です。そして、食文化・伝統芸能・お祭り・産業・
環境・スポーツ・医療・ファッションなど数多くの魅力的なコンテンツも有しており、それらを観光
と連携させることは、日本のブランド力を向上させる最も有効な手段となります。
また、それと同時に、国内外からのお客様に対して、これら日本の観光資源の魅力を正確に、また
印象深く伝える必要性も生じます。その一役を担うのがボランティアガイドであり、本大会は、我が
国の観光振興を支えるボランティアガイドの「観光に関する知識」、そしてそれ以上に大切な「おもて
なしの心」を涵養するものであります。
渋川伊香保の地で学んだホスピタリティの精神を、ボランティアガイドの方々が様々な機会、様々
な旅行者に対して発揮することは間違いなく、このことは観光立国の推進に極めて大きな貢献をもた
らすことでしょう。
本大会の開催に関わった皆様のご尽力に敬意を表すると共に、今後の更なる観光立国への取組に期
待しております。日本を元気にするために、共に頑張りましょう。
平成22年11月17日
観光庁長官 溝畑
- 10 -
宏
基
調
講
演
「心を動かす言葉」
加賀美 幸子 氏
(NHK番組キャスター・千葉市女性センター名誉館長)
皆さま、こんにちは。本日はようこそ渋川においでくださいました。私は第2回の長浜大会にも伺
ったのですが、そのときのことが心に残っていて、今回、また皆さまにお会いできることを、本当に
心の底から楽しみにしてまいりました。今回の会場、渋川には特別なつながりがありますので、それ
を最初にお話しした方がいいかと思います。
忘れられない「かるた」の上州
実は父母が群馬県出身なのです。そして、一族の大半が現在も群馬におります。私自身は戦争中、
この渋川の地に縁故疎開をしていたのです。この渋川の町から伊香保に行く途中に折原という所があ
りますが、小学校2年生、昭和23年の秋まで、そこの親戚のリンゴ園にいて、折原から渋川の町ま
で、およそ1里の道を友達と一緒に通っておりました。土手道が大きな道のわきに沿ってありまして、
冬などはまさに空っ風の中を友達と肩を寄せ合って学校に通いました。その間、八幡様、お不動様、
お稲荷様がありまして、それを目印にして、もうすぐ学校だね、もうすぐ家に着くねと思いながら通
ったのです。
その後、小学校2年生の秋に東京に転校してからも、春夏の休みや冬の休みには必ずこちらに帰っ
てきておりました。かなり土地は変わりましたが、ふるさとの夢に出てくる舞台は変わらないのです
ね。ふるさとってそういうものですね。私も何冊かの拙著があるのですが、その中にも、どうしても
書かずにいられないというのがこの土地なのです。
「上毛かるた」というカルタがあります。昭和22年、すさんだ世の中にあって、子供たちの心を
大事にという意味でできたのです。私はちょうど1年生でしたか、全て覚えています。例えば、
「鶴舞
う形の群馬県」。「力を合わせる200万」。私のときは「力を合わせる160万」でした。「利根は坂
東一の川」「雷とから風
とこ
義理人情」「伊香保温泉
薬のいで湯」
「銘仙織出す
日本の名湯」「世のちり洗う四万温泉」「草津よい
伊勢崎市」。もう口をついて出てくるのです。
「日本で最初の富岡製
糸」「ねぎとこんにゃく下仁田名産」。…それから人物もそうですね。「老農
船津伝次平」、この老農
はNHKでも知っている人はほとんどいなかったのです。あるとき番組で船津伝次平を取り上げまし
たが、私だけが知っているのです。みんなに驚かれました。「沼田城下の塩原太助」「歴史に名高い新
田義貞」
「誇る文豪
田山花袋」
「平和の使い
新島襄」
「和算の大家
関孝和」
「心の燈台
内村鑑三」
など、「かるた」で自然に、土地の風土と文化と人々の心が刷り込まれたこと、宝のように思います。
皆さまの土地にも、このようなかるたがあるかもしれませんし、ほかの形でその土地の風土や人々や
文化を、きっと子供たちに伝えてらっしゃると思うのです。大事なことですね。
私は「小さな旅」という番組を担当しておりまして、日本の各地を訪ねました。今日は茨城県の方
はいらっしゃいますか。石の町と言われる岩瀬を訪ねその時のことを書いたのですが、学校の教科書
に取り上げられ、今も高校生たちが読んでくれています。タイトルは「石の声が聞こえる」…それぞ
れの土地の特色一つ一つが集まって日本という心豊かな国をつくっているのですね。そのことにかか
わる行動をなさってらっしゃる皆さまのお仕事は、本当に意義のあるお仕事だと思います。
- 11 -
心と自然を重ねて表現する日本語の魅力
今年は11月の7日が「立冬」22日が「小雪」その次が「大雪」大雪が過ぎれば「冬至」です。
冬至というのは1年で一番昼が短い節気。そして巡って「立春」…1年を12ではなくて24に区切
って、自然の様子にふさわしい名前を付けている「24節気」。暮らしはそれほど豊かではなくても、
足元と身の回りをしっかり見つめて日々を味わうという、そういう暮らしの文化を私たちはずっと続
けてきたのです。しかも立春とか立夏とか、春が立ち上がってくる、夏が立ち上がる、冬が立ち上が
る、季節が立ち上がってくる…何てすてきな言葉でしょうか。雑節もありますね。
「雑節」というのは
24節気以外の節で、節分、お彼岸、八十八夜、入梅、土用、二百十日などです。
日常のごあいさつもそうですが、お手紙の書き出しも、私たちは必ずと言っていいほど季節のごあ
いさつから始めます。
ところが、びっくりするようなことがありました。国文学研究資料館で出している雑誌の中に、ロ
シアの『源氏物語』の翻訳者のタチアーナ・サカローバ・デリューシナ(Tatiana L. Sokolova-Deliusina)
さんという方が、こんなことをおっしゃっているのです。
「日本人は手紙の冒頭でも必ず気候のごあい
さつから始める。そのときの自然の様子に自分の心を重ねて表現を工夫している。本来、自然は自然、
人間は人間で、全く違う世界なのだから不思議でならない。ロシアでは、自然は常に外から見るもの、
外にあるものだ。従って、文学の方法も、日本人のような細やかな自然描写はしない。源氏物語の訳
をしていても、人間の心を描いているのか自然描写なのか、すぐには判断できないので大変難しい」
と。
私たち日本人は「自然の中に人があって、人の中に自然がある」と当たり前のように考えているの
で、私は本当にびっくりしたのです。しかし、ロシアのタチアーナさんは、
「もちろん訳すのは難しい
が、それが日本語の魅力である」とおっしゃっていました。
かけがえのない日本の文化の優しさとゆとりの心をうれしく感じて、あらためて私は心が動かされ
ました。でも源氏物語の訳は今、20以上の言語に訳されて、多くの国で読まれているのです。
ゆとりを持ち、前向きに生きる
ここで少し自己紹介をさせていただきます。定年後も、日曜日の夜の「NHKアーカイブス」とい
う番組を8年間担当していました。それから大河ドラマ「篤姫」の前の「風林火山」という武田信玄、
上杉謙信の物語のナレーターを務めたり。また、「ラジオ深夜便」も長い間担当しました。「BS列島
縦断短歌スペシャル」「列島縦断俳句スペシャル」NHKホールでの「全国短歌大会」の朗読、「10
min.ボックス国語」や「古典講読」その他相変わらず放送の仕事をしています。
実は昨日、夜8時過ぎまで「あの人からのメッセージ」という番組のナレーションをしておりまし
た。「高校三年生」「星影のワルツ」「お月さん今晩は」「アンコ椿は恋の花」などの作曲家・遠藤実さ
んと個性派俳優・川谷拓三さんの生き方のメッセージがテーマです。お二人とも大変ご苦労なさいま
した。
遠藤さんは昭和18年、私が渋川に疎開したのと同じときに、ご両親のふるさとの新潟に疎開なさ
っています。大変貧しくて、
「掘っ立て小屋の子供」とみんなにいじめられたそうです。貧しくて、門
付け芸人をしたり流しをしたりして14歳から働いておられました。
オーディションを何度も受けても不合格。その後、歌い手から作曲家に転向なさったのですが、
「人
生は苦労の山、涙の川」とおっしゃっています。しかし、
「それを乗り越えると先に花が見える」…そ
の心を歌にされたのです。
川谷拓三さんは4歳のときに高知県安芸市に引き揚げられて、一家7人、お父さんも働き口がなく
- 12 -
て、本当に苦しい生活だったそうです。8歳という小学校の低学年のころから映画館で働いていたら
しいのです。そこで見た映画に触発されて、いずれ僕は映画俳優になりたいと思っておられました。
そして、京都の太秦の門を叩くわけですが、最初は何も仕事がなくて、殺され役ばかりでした。
「30
00回殺された男」として有名ですが、そうしながら、10年目にやっと字幕の隅の方に名前が出る
ぐらいになって、
「もうこれで死んでもいいよ」と奥さんにおっしゃったそうです。川谷さんの言葉の
中に、
「どんなことであろうと、いつもそれをチャンスにしてきた。どんな役であろうと、また、どん
な悲しいことも、全部これがチャンスだと思ってそれを生かしてきた、夢を持ち続けた」とあります。
そのことが昨日制作した番組のテーマでもありました。
前向き思考ということです。どんなことも、どんなことがあっても必ず次の仕事に結び付けるとい
う。皆様もそうかもしれませんが、私自身もそうやってきました。とにかくどんなことがあろうと次
の仕事に結び付けていこうという思いはよく分かるのです。
苦しくてもゆとりを持ちながら前向きであるという、そのことも今日はテーマの一つにさせていた
だきたいと思います。
日本の宝『源氏物語』
古典といえばやはり、まず『源氏物語』と多くの人は言います。皆さんも観光ガイドをなさってら
っしゃると、日本の宝である「古典」について外国からのお客さまに御話しされることも必要だと思
います。
『源氏物語』について申し上げますと、今2010年ですが、2008年、一昨年が「源氏物語千
年紀」でした。『紫式部日記』の1008年11月1日、寛弘5年の日記に、「この辺りに若紫やさぶ
らふ」と、歌人の藤原公任が声を掛けたことが記されています。それが1008年ですから、ちょう
ど1000年たって、2008年を千年紀として、日本国中、改めて紫式部を大事にしました。私も
一昨年は一年中、
「源氏」とともに放送での原文朗読や講演で走り回りましたが、読めば読むほど面白
い『源氏物語』です。ラブロマンスの世界ですから、面白くないはずはないのですね。原文でなくて
も訳でお読みになったり、漫画もありますね。全文でなくても、物語のあらすじだけはご存じだと思
いますが、「源氏物語」を読むと、政治、経済、社会、文化、教育、教養、自然、暮らし、そのほか、
今と重なる世界が繰り広げられて心を動かされます。まさに日本の宝です。
日本は今難しい状態に陥り、国の外に向かって胸を張れるようなことがなかなかないのですが、
『源
氏物語』は文句なしに胸を張れます。だって、シェークスピアのさらに約600年も前の魅力的な物
語なのですから。
光源氏は、好色でもドンファンでもプレーボーイでもないと思います。今と結婚の形態がまず違っ
ていたのです。そして、光源氏は、姿形は光り輝くように素晴らしい。それだけではなくて、教養が
あって和歌、音楽、舞、絵も素晴らしい。本来、政治力もあったそうです。この素晴らしい息子に政
治力を持たせたら大変なことになるというので、お父さんの桐壺帝は息子をあえて臣下に落として源
氏姓を名乗らせたわけです。それほど本来は政治力もあるはずの人でした。
しかし、そのことよりも、何より、誠意、心映えが素晴らしいということが本の中に書かれている
のです。これは訳ではなくて、『源氏物語』の原文の中に、「心映え」という言葉そのものが出てきま
す。
「心映え」というのは、気立て、思いやり、心遣い、才気、風情、趣のことで、これが素晴らしい
ことが源氏の魅力なのです。
美しい姿形だけではなく、誠意と言葉を尽くして相手を大事にしている。だから相手は心動かされ
て、誰からも好かれるのです。光源氏個人も、また『源氏物語』という物語そのものも、1000年
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もの間人々を引きつけてきたわけです。それは「心を伝える言葉の力」があるからではないでしょう
か。まさに、相手の「心を動かす言葉」を持っているからだと思います。
本日のテーマである「言葉の心」に重なるので、私は日本の宝の「源氏」のお話をまず僭越ながら
申し上げた次第です。
「源氏」を面白く読んでいるうちに、言葉の力、日本の文化の豊かさが伝わって
くるのです。もう説明抜きです。それがあれば、本当に自信を持って、
「日本の文化は素晴らしい」と
外国からの観光客にもお話しできると思います。観光で日本を訪れる人たちに、日本の文化をぜひ伝
えていただきたい。そのためには、日本の宝の古典、
「源氏」だけではなくてたくさん古典があります。
それを大事にしたいものですね。
言葉は魔術を忍ばせている
本日は「心を動かす言葉」がテーマです。私たちのアナウンサーの仕事は、皆さまのお仕事と、言
葉で内容と心を伝えるという点では同じです。言葉というのは、心と内容を載せて伝えるということ
ですから、心、内容イコール言葉なのです。
私たちの仕事に限って言うと、同じ内容でも、あの人が読むと何か伝わってくるものがある、心動
かされるという人と、同じ内容を読んでも、同じことを話しても全然伝わってこない、味も素っ気も
ないという人がいるのです。でもこれは説明できないのです。ということは、
「見えない、聞こえない
ところ」に大きな鍵があるのです。それは「息づかい」にもあるかもしれません。
相手の心を動かす言葉の力とは何だろうと、ずっと長年尋ね続けてきました。皆さまもきっとそう
だと思います。いくら内容をお伝えしても、相手が本当に「そうですね」と言ってくださらなければ
何も伝わったことになりませんから、相手の心が動くかどうか、それが問われるわけです。
それは何かな…と思うと、それは時に内容の豊かさであったり、深さであったり、広さ、厚み、鋭
さ、分かりやすさであったり、話しぶりの美しさであったり、話しぶりのさわやかさであったり、話
しぶりの温かさ、明解さであったりしますが、見えない、聞こえない、にじみ出る雰囲気に私たちは
惹かれて、心動かされるのです。ですから、ハウツーではないのです。
私は、
「家庭画報」という女性の雑誌で3年間、医学対談をしていました。去年一年間はホリスティ
ック医学、要するに、西洋医学だけではなくて、東洋医学も含めての人間の全体を見る医学という「ホ
リスティック医学」の第一人者の帯津良一先生と対談しました。
その中で、はっと気付かされたことがあったのです。
「人間はボディー…臓器、一つ一つの働きだけ
でなく、体の中の見えないところに生きるエネルギーや自然治癒力があるのですよ」と先生はおっし
ゃいました。
「だから、臓器という見えるものを修復するだけでは本当に健康とは言えない。なぜなら、
人間はボディーとスピリットとマインド、体と心と命で成り立っている。心や命は見えないけれど、
見えないそのところに大きな自然治癒力が潜んでいる。そこを大事にしなければ本当の医療とは言え
ない」と。
その言葉を聞いて、まさに私は震えるような思いだったのです。話し方が全くそうなのです。形や
話し方をいくら直しても、駄目です。スピリットとマインド、その人の生き方がやはりその人の話し
方にかかわってくるのです。
しかし、生き方というと抽象的です。判るようでわかりにくい。言葉は魔術を忍ばせていると思う
のです。
「生き方」とは…こんな考え方もできるかもしれません。生きているということは息をしてい
るわけです。息をしていないということは死んでいること。生きていることは息をしていることです。
ですから、生きるの「生き」と、息をするの「息」とは、字は違うのですが、元は同じではないかと
私は思うのです。ですから、息づかいというのが、その人の力、味わい、魅力に大きくかかわってく
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るのではないでしょうか。
「皆さん、こんにちは。今日はいかがですか」のような言葉でも、本当に言い方によって全然違う
のです。どちらがいい悪いではないのです。元気に「元気かー」と言ってもいいし、
「今日は元気かな?」
と抑えて静かに言ってもいいし。それは、どっちがどっちではなくて、生き方というか、息づかいで
その人が見えてくるということです。
私も、その人の話し言葉や話しぶり、息づかいをちょっと聞いていると、大体その人が分かります。
どんどん明晰にお話しするのではなくて、少し間(ま)をおいて、どうかな…という感じで少し待っ
て、相手の反応を見ながら、続ける。そうするとキャッチボールができて、どんどん話も膨らみます
ね。しかし、しっかり大事なことを、ぼんぼん伝えることも時には大事ですから、申し上げるまでも
なく、これは時と場合によってです。
しかし、大体キャッチボールですね。皆さんのお仕事も一方的に内容をお伝えするのではなくて、
相手の方のお顔を見ながら、
「分かってるかな」と。もし分かっていなかったら、またこんな説明をし
てみようかなと、それも押しつけがましくなく、過ぎず、足りなくなく…これがなかなか難しいとこ
ろです。
相手に息を合わせる…ということです。相手の息を聞きとり読み取り、自分の息を合わせる。息が
合うということは何事においても素敵なことです。「あの人とは息が合う」最高の喜びでもあります。
とにかく息が大事ですが、その息というのは見えないのです。声は聞こえますが息は表だって聞こ
えない。しかし、その声を弱くしたり強めたり、軽くしたり深くしたり、みんなこれは息の力なので
す。弱くするのも逆に力が要るのです。弱くしながらきちんと伝えるという、これも息づかいでしょ
うか。
約半世紀、仕事がら、多くの人とお会いして、対談したりインタビューをしてきた道のりです。その
中で、「心動かされた言葉」を探っていきますと、必ずその方の人間としての「ゆとりの心」に気付か
されます。先ほどお話しした川谷拓三さんや遠藤実さん、苦しさをバネにして、それをすべてプラスに
して歌や演技に込め、そこには、物ごとに追い詰められない、
「ゆとりの心」に気付かされるのです。
「ゆとり」これは私自身の長い間のテーマでもありますが、このゆとりもまた眼には見えないので
すが、生き方を大きく左右する大事な言葉だと思います。話し方の魅力にも大きくかかわってきます。
放送では生き生きと生きていらっしゃる方にお話を伺うことが大変多いのですが、激烈な人生に身
をさらしながら、また大変お忙しいにもかかわらず、必ずその方のゆとりの心に気付かされるのです。
笑顔は顔に表れるプラス思考
長く担当していた「ラジオ深夜便」の中のお話を二つほどさせていただきます。
深夜便は朝までの生放送ですが、その中で、各界でご活躍の方にお話を伺うコーナー「輝け熟年」
は、土曜日夜の11時10分から12時半まで、まさに夜中の生放送だったのです。ちょうど私が担
当をバトンタッチしようと思っていたその年のお正月。晴れやかなお正月番組にふさわしい美しい人
というと、私たちの年代では山本富士子さんです。山本富士子は芸名かと思っていたら本名だったの
です。彼女にご登場願いました。美容に悪いからと夜の生放送でなく、昼間に収録をという人もいま
すが、彼女は、そのようなことも厭わず遅い番組にさりげなく来て下さいました。私はそのことにも
心を動かされたのです。自分の都合ではなく、相手を大事にして下さる心。そして、その美しさは、
言葉にありました。声といい、内容といい、話しぶりといい、あの美しい姿形をしのぐほど…と申し
上げればわかっていただけると思います。
「仕事は非凡でありたい。でも普段の生活はごく平凡でありたい」とおっしゃる通り、ご自分でお
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料理から掃除、家事全部をなさる大主婦です。富士子さんのお好きな言葉…サムエル・ウルマン(S
amuel
Ullman)の「青春」という詩。青春というのはある時期について言うのではない。
年を重ねたから青春がないのではなく、年を重ねても、理想を失うときが青春の終わりである。年を
重ねても、なおかつ前向きな生き方を持っていれば、それは年に関係なく青春だという。サムエル・
ウルマンの詩の中にある「人は年を重ねただけでは老いない。理想を失うとき、はじめて老いる」と
いう言葉を大事にしながら日々を暮らしてらっしゃるということでした。
ご自分の芸だけではなくて多くのことに耳を澄ますという、山本富士子さんのゆとりの心を見るこ
とができました。彼女は書家でもあるのです。
「深夜便」の私の対談コーナーは「輝け熟年」。そのころ「がばいばあちゃん」の映画が人気でした。
原文は島田洋七さんです。戦争でお父さんを亡くして、お母さんの手で育っていた、作品の中では明
広少年となっていました。その少年が佐賀のがばいばあちゃんに引き取られていくのです。
「がばい」
というのは頑張りばあちゃん、すごいばあちゃんという意味だそうです。その「がばい」をなぜ、あ
の楚々として上品な吉行和子さんが演じられるのかなと思って、お招きしてお話を伺いました。
がばいばあちゃん語録については、洋七さんがいろいろなところでお話しなさってらっしゃいます
が、大変な貧しさだったそうですね。明広少年が、
「おばあちゃん、今日はご飯だけでおかずがないね」
と言うと、おばあちゃんは「うん。明日はご飯だってないんだよ」と言って二人で笑ってしまう。し
かも「貧乏には二通りあって、明るい貧乏と暗い貧乏がある。うちは明るい貧乏なんだから心配ない
よ。それも今に始まった貧乏じゃなくて、もう先祖代々ずっと貧乏なんだから自信を持ちなさい」と
いう、そういうおばあちゃんの言葉、貧しくも、ゆとりがあって素敵ですね。今はいじめの問題が本
当に大変です。そのいじめに対してもおばあちゃんは「いじめられるってことは目立っているからな
んだよ。みんなと同じでなく、目立っているのはいいじゃないか。目立つと人はいじめるけども、目
立つということは素晴らしいんだよ」と言われれば、問題は解決しなくとも、子供たちはほっとする
ことでしょう。
語録は他にもいろいろありますが、その言葉を聞きながら、私はその頑張りばあちゃんの言葉に品
格を感じました。そして、見かけは全く違っても、吉行和子さんの品格とぴったり合っているのだな
と思ったのです。まさにゆとりの心です。貧乏だって全然気にしないというおばあちゃんの楽天思考
です。そしてそこに生き方の鍵を感じました。だから、心を動かされたのです。
心動かす人…どの人も、ゆとりと、プラス思考であることに気付かされました。
「プラス思考」こそ
大事だとも、今、多くの人が簡単に云います。では、プラス思考って何でしょうか。
プラス思考とは何かを考える上で、遺伝学の権威・村上和雄先生の言葉に心動かされます。村上先
生と私は同じ紙面で連載を持っているのですが、村上先生の言葉は本当に易しいのです。難しいこと
ほど易しくおっしゃいます。
今年亡くなられた「ひょっこりひょうたん島」の井上ひさしさんも、こうおっしゃいました。
「難し
いことは易しく、易しいことは深く、深いことは愉快に、愉快なことはまじめに書く」と。
村上和雄先生も難しいことを、易しく、深く語られます。遺伝学は急速に進んでいるそうですが、
「遺伝子」は寝たり起きたりしていることが分かり始めていると、おっしゃいます。
「だから、あまり
良くないと思う遺伝子を寝かせておいて、いいなと思う遺伝子を起こしておくことができればいいの
ではないか」とおっしゃるのです。では、いい遺伝子を起こすってどういうことなのかなと思いまし
た。先生は、
「それは人間が前向きの志を持つこと、人生を前向きに思うことで、それにより脳が活性
化して体も活性化する。前向き思考が一番大事なのだ」…遺伝学の権威がそうおっしゃるのです。前
向き志向、楽天思考がどんなに大切かよくわかり心動かされました。
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顔に表れるプラス思考についてお話し申し上げたいのです。皆さまのお仕事も、私たちの仕事も、
笑顔は必要ですね。
篠原菊紀先生という脳科学の先生に、お話を伺った時のことです。笑いというのは本当に脳の活性
化につながるのだそうです。自分が笑うだけではなくて、その笑いを見ると、相手の脳も活性化する
のだそうです。ですから、自分だけではなくて相手のために笑う。
先生に「でも、笑うこともなくて、笑いたくもないのに無理して笑い顔を作ったり、御世辞笑いな
どはちょっと違うのでは?」と伺いましたら、
「加賀美さん、それが笑いの素晴らしいところで、口角
をちょっと上げる表情を作るだけで、脳は活性化するのですよ」と。
その言葉に心動かされました。口角を上げて、笑顔の表情をつくるだけで、脳を刺激する。脳が笑
う。そうすると、相手の脳も同調して、笑う。ですから、両方がとてもいい関係になるということで
す。そういえば、相手がむっとしていると、こちらも嫌だなと思ってむっとする。また相手にもそれ
が通じて、関係はあまり良くなくなる。脳同士が同調するのだそうです。
皆さんもそうだと思いますが、私たちも人に会うときには、まず顔を見て、こんにちはをします。
そのときに、笑顔があると本当にほっとします。口角を上げて笑顔を作るだけでも脳は活性化するの
ですから、そのことを伺いとてもうれしく思いました。
私は、無理して笑ったり、お世辞笑いなどは、小さいときからできなかったのです。無理に笑った
ら相手に悪いし、人間としても恥ずかしいから、そんなときは下を向いていたのですが、先生から伺
ってから、最近はよく笑うようになりました。
人は、文化・風土を伝える存在
ここでプラス思考に関して、もう少し申し上げたいのです。というのは、年を重ねて、皆さまもい
ろいろな意味で、何ごとか、ご卒業なさった後、ボランティアに参加なさっている方もいらっしゃる
と思います。私もかなり年を重ねているのですが、年をとるというのは誰にとっても一番確かなこと
であって、これ以上確かなことはないですね。
辞書を引きますと、
「年」とは「実り」とあるのです。年を取ったではなくて、実りを手にしている
のです。イラク、アフガン、アフリカ、アジア、そのほか世界あちこちで戦争、貧困、病、恐怖政治
…いろいろなことで命を落として、年を取ることができない人がどれほど多いことでしょうか。みん
な、どれほど年を取りたいでしょうか。日本はいろいろな問題が山積してはいますが、普通にしてい
れば年を取ることができる。当たり前のことですが、
「生きるということは年を取っていくこと」です
ものね。年を取れることは本当にありがたいことです。
生物学者の想定した言葉で「ミーム」という言葉があります。
「文化」ということです。生きものは
すべて、自分が受け継いだ遺伝子を、次の世代に伝えていく役目を持っている。
遺伝子の乗り物であります。動物や植物は、その役目が終わると(生殖作用がなくなると)
みんな枯れたり死んだりするのです。しかし人間だけは、生殖作用が終わって遺伝子を伝達する力
がなくなっても、さらに生き生きと生きて行きます。それは「ミーム」
「文化」を伝達する役目がある
からです。遺伝子の乗り物だけでなく、ミームを伝える乗り物でもあるのです。ですから、まさに「人
間が人間たるゆえんは老年にある」とも言えるわけです。私はこの言葉に心動かされます。だから、
年を取るとうれしいのです。
皆さまの観光のお仕事もまさに、そのミームをお伝えする仕事ですよね。文化と風土を子供たちや
訪ねてくる人たちに伝える、それがミームの役割だと思うのです。
21世紀の今、国内外、いろいろな問題が突きつけられています。みんな憂いています。
「言葉」の
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面から申し上げますと、「人が憂う」と書くと「優しい」という字になります。「やさし」これを辞書
で調べますと、
「恥ずかし」と同根とあります。やさしさとは恥ずかしく思う心、やわらかな心。こん
なことをしたら人間として恥ずかしいということでしょうか。ですから、やわらかな心で足元と地球
全体のことをグローバルに見つめよう。それが21世紀の今、何より求められる心ではないでしょう
か。まさに皆さまのお仕事に重なるように思います。
今を生きるエネルギーとメッセージがあふれている古典
そして、
「言葉」の深い心を訪ねていくと、どうしても古典の存在に向き合ってしまうのです。先ほ
どは「源氏物語」についてお話しいたしました。
一条天皇の時代、中宮彰子に仕えたのが紫式部で、5年ぐらい差がありましたが、同じ時期に中宮
定子に仕えたのが『枕草子』の清少納言です。学校では、清少納言はお母さんだったなどと習ったこ
とはなかったのですが、いつも私が必ず申し上げることは、古典を難しく文法で切り刻んで教えない
でほしいということです。例えば洋服だって、経糸何本、緯糸何本、なんて見ないで、ざっくり着て
みて、その風合いがいいなと思って買うように、古典だってそうだと思うのです。
清少納言もお母さんだったのです。
「胸のどきどきするもの」という中には、まだ口のきけない赤ん
坊がひどく泣いて、乳も飲まず、乳母(めのと)が抱いても泣き止まないで、いつまでも泣くときは
胸がどきどきすると書かれています。
また、「かわいらしいもの」は小学校のある教科書にも載っていますが、「二つ、三つほどの赤ん坊
が急いではってくる途中、ほんの小さいごみがあったのを目ざとく見つけて、何とも愛らしい指でつ
まんで見せにくるのはとてもかわいらしい」とか。「早く結果を知りたいもの」という中には、「人が
子供を産んだときは、男か女か早く聞きたい」とか、「間の悪いもの」という中には、「何気なく人の
うわさ話をして悪口を言ったのに、まだ聞き分けのない子供がそれを覚えていて、その人のいる前で
口に出したとき」とか、とにかく清少納言って面白く魅力的で私たちに近しい人なのです。
「興ざめなもの」の中には、
「方違(かたたがい)に行ったのに、ごちそう出してくれない家はがっ
かりだ。地方からよこした手紙に何も贈り物がついていないのはがっかりだ」
などと書いてあるのです。「めったにないもの」という中には、「舅に褒められる婿。また姑にかわ
いがられるお嫁さん。男と女については、言うまでもない。女同士で、行く末、長くと契って仲良く
付き合っている人で、終わりまで本当に仲の良いという人はめったにない」面白いですね。又、
「急ぎ
の着物を縫うのに、うまく縫ってしめたと思ったのに、針を引き抜いたら、何と糸の終いを玉に結ん
でいなかった。」とか清少納言も慌て者だったのだと嬉しく近しくなります。
「春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきた
る…」など、学校では自然描写の素晴らしさや頭の良さなどの部分を中心に教わり、文法で切り刻ん
で教えられて、なんだか近寄りがたく思っていましたが、こういうところを読むと、
「古典」が近くな
ります。
「にくきもの、急用のあるときにやってきて長話をする客。それが軽く扱ってもいい人ならば、後
でと言って帰ってもらうこともできるであろうが、気後れするような人の場合は、ひどく憎らしく厄
介だ」とか。
「人のことをうらやましがり、自分の身の上をこぼし、他人のことをあれこれ言い、ちょ
っとしたことも知りたがり、聞きたがったりする。話してやらないと恨んで悪口を言い、またほんの
ちょっと聞いたりしたことを、自分が元から知っていることのように別の人に調子づいて話す人はひ
どく憎らしい」とか、そういうところを読みますと「うん、そういう人が周りにもいるいる」と面白
いのです。私はとにかく楽しんでいます。
「古典は日本の宝」ですが、読まなければ宝にはなりません。
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ですから私はそうやって近づいているのです。
例えば、今日の夜空はどうでしょうか。
「星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばひ星、すこしをか
し」なんてあるのです。よばひ星なんておかしいですね。
「星はすばる」…私は「すばる」は新しい言
葉かと思っていたら、清少納言は1000年前に「星はすばる…」と真っ先に書いています。今日は
雲はどうでしょうか。
「雲は、白き、紫、黒きもをかし。風吹くおりの雨雲」これはみんな原文そのま
まです。目で読むだけでなく、声に出すと、本当に息づかいが伝わってきます。古典には特別の読み
方はありません。ふつうの息づかいで読むことをお勧めします。
もう少し続けます。「近うて遠きもの」これは好きな箇所です。「近うて遠きもの。情愛のないきょ
うだいや親類の間柄。12月の31日と正月1日との間」…本当にそうですね。原文でも簡単です。
「近うて遠きもの。思はぬ同胞(はらから)親族(しぞく)の仲」。師走の晦日(つごもり)の日、正
月(むつき)の朔日(ついたち)の日のほど」
。
逆に「遠くて近きもの」。これは訳ではなく原文で読みますね。「遠くて近きもの。極楽。舟の道。
人のなか」。そうですよね。本当に死というのはいつ来るか分かりません。遠く思っているけれどもす
ぐ近くかもしれない。
「遠くて近いもの、極楽
舟の道
人のなか」。舟は当時一番速い乗り物ですね。
「人のなか」
。人も、他人は遠いけれども親族よりも近い人もいるのですね。
「遠くて近きもの。極楽。
舟の道。人のなか」。
「ただ過ぎに過ぐるもの」、これもなかなかいいのです。「ただ過ぎに過ぐるもの、帆かけたる舟。
人の齢(よわい)。春、夏、秋、冬」
。そうですね。説明は何も要りません。
「言葉」についてもたくさん書いています。
「男でも女でも
すらすらと何の苦もなく
楽にお話し
している人、いつになったら自分もああなれるだろうなと思われる」原文を読むと、
「男も女も、くる
くるとやすらかに読みたる人こそ、あれがやうにいつの世にあらむと覚ゆれ」。だれもが思うことです。
皆さんもお互いの中で、
「あの人は読むのがうまいなあ」と思うことがあるかもしれませんが、清少納
言はそんなことないと思っていましたが、同じなのですね。嬉しくなります。
日本の古典は、場面、場面に魅力があるので、どこから読んでもいいのです。どんなふうに読んで
もいいのです。私は、
「清少納言はお母さん」と思って読んだり、あるいは「面白く、おかしいところ」
ばかりを探したりして読んできました。放送でも昨年は一年間朗読しましたし、その前は『枕草子』
全編を三年かけて放送しましたが、楽しく易しく自然に読んでいるうちにも、どんどん古典が近くな
ってくるのです。
そうすると、本当にうれしくて、胸を張って海外の人にもお話をすることができます。海外の人に
いろいろな説明をしても、横を向いているときなど、古典の話などをすると、
「日本の文化はすばらし
い」と、乗り出してきます。
最後に「万の事は頼むべからず」という段です。これは清少納言ではなくて吉田兼好の『徒然草』
です。ちょうど今、私は「古典講読」という放送番組で『徒然草』を朗読していますが、その中で「万
の事は頼むべからず」というところがあります。
「何事も頼ってはならない。物事に深く頼ると、恨んだり怒ったりする。時の権勢があるからとい
って、当てにしてはいけない。強力なものは最初に滅びる。財産が多いといっても当てにしてはいけ
ない。たちまちたやすく失うものだ。才能があるといっても頼ってはならない。孔子でさえ、時世に
合わなかった。(孔子だって、生きている間はうまくいかなかったのです。死んでから、弟子たちが、
「子曰く」と伝えているのです)顔回も不幸であった。
(顔回という人は大変素晴らしい人だったそう
ですが、本当に不幸だったそうです)
主君の寵愛も当てにしてはならない。罪を負えばすぐに殺される。家僕(召使い)が従っているか
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らといっても、頼ってはならない。背いて逃げ去ることがある。人の好意も頼ってはならない。人の
意思は必ず変わる。略しますが…原文を読むと、
「勢ひありとて頼むべからず。こはき者まず滅ぶ。財
多しとて頼むべからず。時の間に失ひやすし」とあります。
そして、自分をも他人をも頼りにしなければ、うまくいったときは喜び、そうでないときも恨まな
い。左右に余裕があれば障害はない。前後に距離があれば身動き取れないことはない。幅が狭いとき
は、身がつぶれくだけてしまう。心の用い方にゆとりがなく、余裕がなく、すき間がないときは、ほ
かと食い違って、争って自分を損なってしまう。
「心をゆるやかにし、やわらかでゆとりを持っていれ
ば、いささかも傷つかないのだ」とあって、私はここが大好きなのです。
好きなところをこうやって私は切り取るのですが、古典というのはそういう見方でいいと思うので
す。自分の好きなところ、共感するところを自分のものとして読んでいく。
…すべからく、不確実な世界の中にあって、頼るべきものは何であろうか。そのことについて具体
的には、兼好は何も言っていませんが、
「心はゆるく、やわらかであるべきである」と言います。吉田
兼好は、鎌倉幕府が崩壊して南北朝の動乱が始まるころの人です。ちょうど今の時代にぴったりなの
です。ですから『徒然草』からは、生き方のメッセージが聞こえてきて、参考になり、心動かされる
のです。
日本人はまじめだから、古いものを振り返って勉強のために読むということをするのですが、そう
ではなくて、古典に書かれていることをたどっていくと、今を生きるエネルギーというかメッセージ
があふれているのです。今にぴったりだと思うのです。
そして、私自身も古典を読んできたために、この年になってもまだ放送の仕事を続けていられるの
です。古典のせいだと思います。
今日は最後に、足早に古典のことを申し上げましたが、政治でも経済でも外交でも教育でも恋愛で
もお店でも会議でもさまざまな行動でも話し合いでも、皆さまのお仕事はもちろんでしょうが、すべ
て相手の心を動かさなかったら何事も成就しないということを痛いほど感じます。恋愛でも、いくら
あなたを思っていますと言っても、相手の心が動かなかったら何も成就しない。物を売るときも、こ
んなにいい製品ですよと言っても、相手の心が動かなければ買ってはもらえません。そのことをすべ
てにおいて、本当に痛いほど感じるのです。ある意味では本当に「言葉の力、言葉の魅力」が大きく
かかわってくると思います。相手の心に届くかどうか、伝わるかどうか、そして相手の心が動くかど
うか。プラス思考や心のゆとりの中にも何か鍵がありそうです。そして、息づかいの中にも鍵があり
そうです。
今日は一人のアナウンサーの言葉への思いをお伝えしました。ありがとうございました。
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事例紹介
全体会議
閉会式
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事例紹介1
伊香保温泉観光ガイドの会 「遊友」
富永 精司
1.伊香保温泉について
渋川市伊香保町では今、11人でガイドをやっております。日本地図の北と南を二つに折り、それ
で線を引いて東と西をピタッと合わせますと、ちょうどその交わる所が渋川市です。ですから、ちょ
うど日本の中心、へそでございますが、その渋川市の真ん中に「臍石」という石があります。そのへ
そから曲がらずに真っすぐに北西に8km来た所がこの伊香保温泉です。
昨日、お風呂はどうでしたか。この温泉ですが、皆さんの右少し斜めに二ツ岳という山があります。
この辺全部が榛名山ですが、その榛名山の中腹にあるのが伊香保温泉です。その二ツ岳という山は、
今から1400年前に溶岩ドームで持ち上がった山です。ちょうど二ツ岳の下を200mぐらいマグ
マが通っております。火山から出てくる温泉を「火山型温泉」と言います。また、今1000mも1
500mも掘って温泉をわき出させておりますが、あれは「地熱型温泉」といって全然温泉の性質が
違うのです。その地熱型温泉は、日本列島が3億万年前に持ち上がったときに海水を抱き込んだもの
が多いのです。ですから、少ししょっぱいものが多いと思います。たまり水ですから、3年で駄目に
なるか、10年で駄目になるか、永久的ではないわけです。ところが伊香保温泉は、その二ツ岳とい
う山が溶岩ドームで持ち上がって中がスカスカでカステラ状態なものですから、そこから降った雨や
雪が大体1年から3年かけてそのマグマを通ってわき出しているのです。
その温泉に、ラドンが入っております。このラドンというのはガスです。-70℃で気化しますの
で、温泉の中には既にラドンガスとして入っているわけです。そのラドンガスを吸うことによって細
胞が活性化されて自然治癒力が出るので、非常にガンになりにくいと言われております。
伊香保町のシンボルは、石段街です。1575年、織田信長とこの辺の殿様である武田勝頼の軍隊
が長篠の合戦で争いました。織田信長が天下統一を図って、鉄砲を3000丁も持ってきて、武田軍
団は騎馬軍団で行ったのですが、大変やられました。織田信長の鉄砲により、けが人・病人がたくさ
ん出たのです。そこで勝頼さんが非常に情け深いお殿様で、山を切り崩して、その真ん中に温泉を流
して、両脇に野戦病院を造ったのが、あの石段街の始まりです。今から約430年前の話です。今で
はおかげさまで観光名所になっておりますが、日本の三大名段は、立石寺山寺の石段、讃岐の石段、
それから伊香保の石段です。
2.「伊香保温泉観光ガイドの会
遊友」について
発足経緯
実は私、シルバー人材に入らないかと同級生から誘いがあって入ったのですが、私は特技がないの
です。障子も張れなければ農家もできない、何もできないのです。そこで何か特技がないかというの
で「じゃあ、ガイドでもやるべえか」ということにしたのですが、1回も申し込みがないのです。そ
れで2年ほどたちまして、シルバー人材を辞めました。
ところが、当時教育委員会におられた先生がガイドをやった方がいいのではないかということで、
何人か集まって甘楽の小幡へ研修に行きました。それで、平成12年4月1日に発足したのです。
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運営方法
観光協会や旅館組合、商工会、市役所、おかみの会などのイベントには必ずこの伊香保のガイドは
参加しています。そのような関係からJTBや近畿日本ツーリストの旅館組合でタイアップしてやら
ないかという話が舞い込んできて、今では1年に約430回出ております。
発足当時は、組織もない、何もないのでどうしようかと思いました。1人、絵の非常に上手な人が
いまして、その人がこの石段街の絵を描いてくれました。それを何枚も作ってコピーして各旅館へ持
っていって、この絵を買ってくれと。旅館の方も義理で協賛金として出していただいて、それを資本
にして一銭もないところから始めました。今は1回のガイドについて2000円頂いております。
最初は無料でしていたのですが、無料でやりますと、お客さんが幾ら包んだらいいだろうなどと一
生懸命裏でコソコソやっているのですね。それでは値段を決めた方がいいのではないかということで、
1回2000円でやっております。おかげさまで年間430回ぐらいありますので、研修旅行の1泊
ぐらいは細々とできるようになりました。そのようなわけで、研修旅行も年に1回は行っています。
伊香保という名前は、二ツ岳という山が噴火して、温泉がわき出してきて、湯気を上げて川になっ
て流れました。その湯気を上げて流れる川のことを、アイヌ語で「イカホップ」と言います。そこか
ら「伊香保」という名前が出たのではないかという説と、伊香保は非常に雷が多かったので、
「雷(い
かづち)の里」が「伊香保」になったのではないかという2説あります。どちらもうそ百だと思いま
す。うそも100回言えば本当になるという意味です。大体そうですよね、実際に見たわけではあり
ませんので。そのようなわけで、いろいろ笑わせながらガイドするのが一番いいと思っております。
今日は、皆さんが温泉に入ったと見えて、ものすごく色白で良くなっております。伊香保では今2
種類の温泉が出ております。茶色い色をした「黄金の湯」、まるっきり無色透明の「白金の湯」、2種
類の温泉があります。黄金の湯は今から1400年前に山が爆発してわき出した温泉です。白金の湯
は、平成元年に掘り当てた温泉です。白金の湯は全く無色透明で、メタケイ酸というものが入ってお
ります。メタというのは自然のベンジンです。昨日白金の湯へ入った人は今日はみんな色白です。ベ
ンジンで洗ってあるわけですね。それでケイ酸というのがガラスやメノウが光る性質を持っておりま
す。ですから今日は、白金の湯へ入った人はピカピカしていますね。照明のせいでしょうか。
もう一つ黄金の湯は金の湯です。このお風呂へ入った人が、昨日もたくさんいらっしゃると思うの
ですが、黄金の湯は入りますとお金持ちになります。お金持ちといってもピンからキリまで、小金で
ございます。黄金の湯は、昔は手ぬぐいタオルをつけておきますと、その色になってしまったのです。
今はエチケットで手ぬぐいを入れませんが、昔、今日は伊香保へ行ってきたということでその手ぬぐ
いを染めて、それを一年中物干しに掛けていた農家もあったというぐらい伊香保は非常にレベルが高
かったのです。そのようなわけで、黄金色に酸化作用で色が染まります。ぜひ今日は黄金の湯に潜っ
ていってください。明日は茶髪になっています。このように少しこうユーモアを交えてお話しするの
がガイドの一番のコツだと思っております。
現在11人で、このガイドをやっております。11人ともほかに趣味はありません。趣味は全部ガ
イドです。みんな男ばかりです。私たちのガイドには女の人がいないのです。なぜ女の人が集まらな
いのかと思っていろいろ研究してみたのですが、群馬県はご存じのように、
「空っ風とかかあ天下」で
すので、今日は女性の方、特にこの伊香保の温泉を歩くときにうんと踏ん反り返って威張って歩いて
ください。かかあ天下の県ですので、決して苦情は来ません。それが群馬の特徴です。以上でガイド
の説明を終わります。
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3.ガイドの心構え
伊香保のガイドでは心構えを作っております。
(1)誠意誠実
お客さまの生命や財産に全責任を持ってご案内することが仕事である。会員はお客さまからはもち
ろんのこと、旅行業者からも、さらに旅館、ホテル、行政からも信頼されなければならない。そのた
めには誠実であることが何より大切なことである。
(2)細心、用意周到
細心であることは、いくらでも細心であってもよい。良いサービスというのは、一見つまらないと
思われるようなこと、ささいな点がうまく整理されていくことの累積であると思おう。
(3)几帳面、正確
俗に締まりのない人、ルーズな人は駄目である。約束の時間に遅れたり、お客さまから依頼された
ことを実行しなかったりするのでは、良いガイドとは言えません。
(4)愛嬌、人好き
努めて気持ちを明るくし、お客さまに好感を与えるよう心掛け、たとえ不愉快なことがあっても、
顔色に出さない修養が必要である。
(5)服装、身だしなみ、態度
イ.清潔を保つため、服装はぜいたくにする必要はないが、清潔を第一とする。
ロ.口臭に気を付け、たばこを吸った後など、口をすすいでおくぐらいの心掛けが望ましい。
ハ.頭髪のフケに気を付け、ひげ、爪先、指先、手入れをきちんとしておく。
ニ.帽子は必ずしもかぶる必要はないが、あった方が便利である。
ホ.接する態度は固くならず、自然で明朗がよい。
ヘ.ポケットに手を入れたままの対応は絶対やってはならない。
ト.お客さまと対談中の喫煙も、できれば慎んだ方がよい。もし婦人がいたら、承諾を得てからす
る。殻は必ず灰皿に。
チ.あまりなれなれしくしない。
(6)説明の仕方
イ.常に勉強して仕事に備え、自信を持って仕事に当たれるよう心掛けておく。
ロ.伊香保のみならず、群馬県および日本の風土と習慣、地理、歴史、文化、美術、工芸、政治、
産業、経済、あらゆる事項にわたって勉強を怠らず、そのお客さまに向く説明ができるように
心掛ける。
ハ.年号、数字ははっきり。数字に関する質問は多いと思われるので、必要なことはメモしておく。
ニ.早口でなく、はっきり話すこと。
ホ.説明を怠ったり、あるいは遠慮して、質問されてから答えるのは失敗である。
へ.お客さまが絵画、写真、彫刻、美術品を観賞しているときに、得意になってしゃべるのは遠慮
すべきである。相手の気持ちを尊重することは大切である。
ト.お客さまに対して固定観念を持たない。お客さまの個性、趣味、嗜好、その他を考慮に入れ、
説明の方法や内容を選択する。
チ.説明のタイミングを考え、棒読みは避け、説明に間を置くことが大事である。
(7)その他
イ.お客さまから依頼されたことはメモしておき、間違いなく実行し、その成果は必ずお客さまに
報告する。
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ロ.レディーファーストを忘れない。
ハ.年齢は聞かない。
ニ.トイレを教えるときは、できるだけ低い声でこっそり教える。
ホ.道を歩くときは道路の外側を、石段の上りには男子が先、下りには女子が先になるよう心掛け
る。
へ.決してお客さまを指差さない。
このようなことを心構えとして、今一生懸命やっております。ぜひ伊香保温泉にまた来ていただき
ますよう心からお願いして、これで終わりにさせてもらいます。ありがとうございました。
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事例紹介2
富岡製糸場解説員の会
神保 千代子
皆さん、この身支度を見て今日は何なのだろう、七五三には少し古いしなどと不思議に思ったこと
と思いますが、これは富岡製糸場創業当初の一等工女の身支度です。紫袴に赤だすきというのが一等
工女のスタイルでした。今日は皆さんにその形を見ていただきたいなと思いまして、このような身支
度をしました。普段は富岡製糸場のマークが入っているオレンジのジャンパーを着て、見学者をご案
内しております。
1.「富岡製糸場解説員の会」の発足経緯と現在の状況
先ほど「かかあ天下」という話がありましたが、まさに私も上州生れで上州女です。かかあ天下と
は上州の女性は働き者だということで、かかあを代表してお話をさせていただきたいと存じます。
富岡製糸場は片倉工業㈱から市に移管されたわけですが、富岡工場は昭和63年3月まで操業をし
ていました。その後、生産活動は一切停止しましたが、当時の会社の方針は、工場の建物を「売らな
い・貸さない・壊さない」であり、管理事務所がおかれていました。平成8年に群馬県でデスティネ
ーション・キャンペーンが行われる際、市の商業観光課は7月から9月末まで富岡製糸場を解説を含
めて一般開放をしてほしい旨を片倉工業に要請しました。工場側からは開放できるが解説要員までは
準備できないという回答でした。
そこで当時の富岡市立美術館長、現富岡製糸場総合研究センター所長である今井幹夫氏のところに
商業観光課から相談があり、現在の解説員のもととなるものができました。甘楽富岡退職校長会に声
を掛け、賛同してくださったOB18人でスタートしました。その後、ゴールデンウィークや祝日に
も富岡製糸場を公開するようになりました。
それで「外観解説事業」をするために解説員を増やそうということになり、商業観光課で新聞に一
般公募をしました。ところが、集まったのはたった2人だけで、その中の1人が私です。私は現在、
前橋におりますが、富岡生まれ・富岡育ちで、生れた所に何かお返しができないかなという感じで応
募をしました。当初はなかなか集まらなかった中で他のメンバーとともに一生懸命自分なりに勉強し
ました。
その後、世界遺産登録を目指す動きの中で、解説員として富岡製糸場に関する文化的・歴史的価値
や情報を共有するということ、また資質向上を図るために、まとまった組織が必要ということで「富
岡製糸場解説員の会」が設立されました。発足は平成19年4月16日で、当時の会員数は56人で
した。
現在は、市の世界遺産推進課が主催して毎年会員の募集をし、研修会も実施しています。数日間の
講義と実地指導を市職員が担当しています。世界遺産推進課が作成した解説の基本となる資料をもと
に、それぞれ解説員が個性をプラスして解説にあたっています。もちろんその資料は、製糸場の調査
研究が進むにつれて改訂されたものが配られます。
平成22年現在、会員数は96人おります。男性が65人に対し、女性が31人と約3分の1、ま
さにオバタリアンパワーではないかと思っているのですが、やはり皆さん富岡の地を愛する方たちの
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集まりです。群馬県は糸の町、織物の町で、女性が働き者であるということから「かかあ天下」とい
う言葉が生れたと私は聞いております。
解説事業は、定時解説と団体解説があります。定時解説とは、見学者を対象に午前9時半、10時、
11時、お昼は少しお休みして午後1時、2時、3時、4時に行う解説です。午前と午後に分かれて、
各3人当番がおりますが、土日・祝日の午後は4人体制です。また、午前9時半の解説は4月から1
1月末まで、午後4時の解説は4月から9月末というように期間限定としています。
団体の受付は事務局が対応します。予約制であり、1団体20名様以上で解説員の手配をしています。
解説当番は、事前に解説員の希望をとった上で、決めています。定時解説の当番は月ごとに予定を組
み、団体に対する解説は事務局が各解説員に再度、予定を確認しながら組んでいます。
また、解説員の研修や親睦会は、年に数回、解説員の会の役員と事務局が相談して、行っています。
富岡製糸場の入場者数は平成18年度が11万2988人、平成19年度が24万9334人、平成
20年度が26万5024人と年々増加し、平成21年度は22万3400人でした。平成21年度
の団体解説に対応した解説員数は、延べ3128人というデータが出ておりますが、さらに定時解説
の対応もあります。また、平成22年10月のデータでは団体の解説対応が延べ489人、定時解説
対応が延べ197人、1日平均22人でした。そのため、夏の暑いときでも解説員が足りないときは
2度も3度も出る定時解説担当者もいれば、午前中に定時解説を担当して午後も団体を担当する解説
員もいます。
平成17年10月以降は市の管理となり、今年度の10月17日に入場者数100万人を達成しまし
た。本当にありがたいことです。その前日には、当初、富岡製糸場で使われていたフランス式繰糸器
の復元機が姉妹都市の長野県岡谷市から寄託されるという嬉しいことが続きました。真新しい真ちゅ
うでピカピカした当時を思わせるものが展示されました。
2.アンケート結果と今後の課題
解説に対して見学者からのご意見が当然あります。アンケートを皆さまのところ同様に富岡製糸場
でも行っています。6月から9月の集計で、解説員に対しての意見が52件ありました。それを少し
皆さんにご披露したいと思います。
「説明が分かりやすかった」14件、「とても良かった・勉強になった」10件、「話が長すぎて疲
れた。時間を短く簡潔に説明してほしい」9件。特に今年は異常に夏が暑かった上に、富岡製糸場は
割と木々が少ないものですから聞く方も話す方も大変ということで、臨機応変に対応したつもりです
が、そういう貴重なご意見を賜りました。また、「詳しく丁寧で聞きやすかった」3件、「大勢で聞く
場合、マイクの使用が欲しい」「もう少しゆっくりと話をしていただきたい」「優しく教えてくれた」
が各2件ありました。このうちマイクの対応については、事務局で現在、検討しております。
残りは各1件なので項目だけ少し早口で申し上げます。「人数が少ないときは座ったままで」「説明
者がいて説明してくれるとは知らず、とても良かった」「さらなる歴史の解説を」「外国語による説明
が必要ではないか。英語・フランス語・中国語」
「感じ良かった」
「説明を聞いて興味を持った」
「あり
がとう」という感謝の言葉もありました。「話がすごくて、とても興味をもった」「解説の使命感を感
じた」
「自由に回りたいと思っていたが、説明をしてもらいよく分かった」以上、合わせて52件あり
ました。私たち解説員も、こうしたアンケートの結果を踏まえて今後も努力したいと思っています。
今後の課題も何点かあります。まず「解説員の高齢化に伴う会員の補充と対策」です。昨日の第3
分科会で小中学生によるボランティア解説という話もありましたが、これもまさに年齢の対応ではな
いかなと思いました。私どもの会では平均年齢が66歳で、65歳以上がなんと51名います。現在
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は年齢について定めがなく、定年制を導入したらどうかという意見もちらほらと出ております。会員
96人と申し上げましたが、実働人数は40人くらいです。例えば少し足の調子が悪いなど、高齢化
の問題があるなかで、来場者の増加に伴う解説員の確保も今後の課題になっております。さらに外国
語対応のできる解説員の養成も課題となっております。
3.一期一会
「一期一会」という言葉を皆さんも十二分にご存じと思いますが、私自身は常に心掛けています。
昨日から大会のお手伝いをさせていただいたときに、ここにおられる方は全員笑顔でお話されており、
普段も笑顔でお客様をお迎えしていると感じました。
私自身、言葉の香水を振りまくことを、課題としております。香水やオーデコロンは人それぞれで
好き嫌いがありますが、言葉の香水はいくら振りまいてもいいと思っております。つまり、
「ありがと
うございます」
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
「お気を付けて、良い旅を」という言葉に笑顔を添
えて、感謝の心で心から言うことです。言葉と行動が一致しませんと、やはり相手に通じないと思い
ます。私もそのようなことを心掛けて、富岡製糸場の解説をさせていただいております。最後に伊香
保をはじめ、群馬の秋を楽しんでいただけたらと思います。今日は本当にありがとうございました。
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第 1 分 科 会
「ガイド上達に向けた自主研修方法」
座
長:佐藤
義一(白井宿観光(光)案内人の会)
アドバイザー:安立
聖(石見銀山ガイドの会)
:佐藤喜久恵(函館観光ボランティアガイド一會の会)
まとめ
座長:佐藤
義一
氏(白井宿観光(光)案内人の会)
課題として挙がったのは、話術と接客マナーについてどうするか、組織全体としてどのようにまと
まって研修していくか、マンネリ化をどう打破していくか、最近増えている外国のお客さまに対する
語学研修で生じている熟練度の格差をどうするかということです。また、お客さまの意地悪な質問に
対してどのように答えるか。それから、会員数に対する実働ガイドの比率の極端な格差の問題、また、
2人体制でご案内をする際に、主として案内をしている方に対してサブの方が横やりのような意見を
入れることがあるのをどうするかという問題も課題として挙げられました。
これらの解決策としては、他団体との交流をして研修を行い、マンネリ化を打破していく。会のマ
ニュアルを個人用として作成することにより、ガイドとしての資質の向上を図るというご発言をいた
だきました。
私どもの分科会には2人のアドバイザー、お一方は島根県の石見銀山、もう一方は北海道の函館観
光案内の会の方がいました。2人体制に対しては口を挟まない約束をしている、意地悪な質問に対し
てもさらっと素直にお答えして、その場を切り抜けるというご発言をいただきました。お客さまはガ
イドの知識を求めているのではなくて、楽しみたい気持ちでその地を訪れているのだという認識をガ
イド自身が持たないといけないという助言をいただいています。マンネリ化については、年間計画を
作成してメンバーの意見を聞きながらマンネリ化の打破、打開策を見いだしているというご意見があ
りました。また、語学が堪能であるかどうかは重要な問題ではなく、外国からのお客さまに対して歓
迎の意思をハートで伝えることが重要だということです。以上のようなご発言、助言をいただきまし
た。
会場からの主な意見
自主研修の事例
【松山観光ボランティアガイドの会】
ガイド上達に向けた自主研修方法として、外部講師を招いての研修会、会のベテランガイドを講師
とする実践的座学、現地での講習を開いています。
【NPO法人横浜シティガイド協会】
春、秋、それから季節的な企画ガイドをいつも企画するのですが、そのときにコースリーダーを会
員に順番にやらせております。コースリーダーは中身を皆に説明しなければいけないので、そこで自
主研修ができるように進めています。また、会全体としての座学は、毎月1回の定例会を開いていま
す。定例会の中でテーマを決めて、研修、座学をしています。そこでは単に地域のことを振り返るだ
けではなくて、現在自分たちの地域社会がどう進んでいるのかを行政の方々に講師になっていただい
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て研修しています。
【石見銀山ガイドの会】
養成講座から始まります。養成講座はもちろん座学と実地と両方あるわけですが、始めはガイドマ
ニュアル、テキストを渡さず、めいめいがそれぞれ聞いたり、実地で見たりしたことをメモして、ま
ず自分でマニュアルづくりをするところから始まります。いろいろな検定試験や実地研修が終わって、
最後、実際に動き始めてからマニュアルを渡します。また、定例会の中で、歴史、日本と海外との関
係、鉱山学、野草草木、大工さんなどのベテランの話、人権学習、救護法、救急法の実地なども学ん
でいます。毎月必ずしているのは手話の講習です。
【室蘭市民観光ボランティアガイド協議会】
外国人観光客が非常に多くなっています。私たちは、室蘭市のふるさと支援事業というものを使っ
て英会話を昨年は15回、今年は韓国語を5回、中国語を5回、英語15回という、語学研修をして
います。
【三島市ふるさとガイドの会】
養成講座では二つ、研修をしていただきます。第1に、案内する観光資源の内容、場所や歴史を勉
強していただいて、巡る場所のマニュアルを一応作っています。それが第1の勉強です。次はガイド
自身が知っておいてもらいたいこと、例えば観光ガイドの目的やガイドの魅力、ガイドをどのように
したらうまくできるか、あるいはもてなしとはどういうことなのかを勉強していただきまして、この
勉強が終わると実際にガイドに入っていただくわけです。第1の研修方法ですが、マニュアルは会で
作っていますので、今度は個人でそのマニュアルを中心に、自分なりのガイドのマニュアルを作るよ
うにしています。
ガイドはとにかくしてみなければ駄目なのです。いくら勉強しても、ガイドをしてお客さまに接し
てみて、初めて分かることもあるわけです。最終的には私どもは、ガイドはさせていただくという気
持ちでしています。その気持ちになるまでは、相当時間がかかります。
ガイドデビューの条件
【佐藤アドバイザー】
何回か一緒に研修して、自信ができてきたら、今度は私がお客さまになって案内してもらいます。
大体それで一度でOKですよという方はいらっしゃいません。大体2~3回、少しここをこんなふう
にしたらとかいう直しがあって実際に案内をするという方法を採っています。
【倉敷地区ウェルカム観光ガイド連絡会】
当会では、最低8人の先輩に付いて、実地研修をしています。先輩に付きますと、実地で見られま
すし、皆さん一人一人、違うのです。全員が違うということは型にはまらないということで、気持ち
も楽になって、こうしなければいけないではなくて、いろいろなおもてなしがある。最終的には、会
長並びにそれに準ずる方と一緒に同行して、その方がOKと言うならば仮OKで、最終的には定例会
で全員の承認ということで、非常にスムーズにいっていると思います。
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外国人観光客への対応
【観光ボランティアいわみざわ】
各地域には必ず小学校、中学校の先生として外国人がいると思います。市役所の中にも、恐らく国
際課、係があります。そこと提携して、通訳という形ではないけれども、いざというときのためにそ
ういう人材を確保しておくということは大切なことだと思います。
【NPO法人横浜シティガイド協会】
神奈川県ではボランティアガイド協議会がありまして、外国語、主に英語のガイドですが、それぞ
れ地区のボランティア団体が持ち回りで英語でガイドをする研修を、各団体の者がお客になって一緒
に回るという形で行っています。
【安立アドバイザー】
僕は英語は話せませんが、外国人の方に話し掛けるのです。それは一つの英語を知っているからで
す。それは“I can not good at speaking English.”で、外国人を見たらすぐそれを言うのです。そ
うすると向こうは“I can not good at speaking Japanese.”と言ってくれます(笑)。それで話が通
じるのです。あなたたちにせっかく来ていただいたのだから、少しでも私の片言でも知っていただき
たいという気持ちが伝わることが、外国人の方に対して私は特に大事ではないかと思います。外国人
の方をお迎えするときに、自分にできることは何かと考えることがまずスタートなような気がします。
【NPO法人東京シティガイドクラブ】
ガイドレポートを必ず書かせるようにしています。外国の方、つまりどこのお客さまなのか。延べ
にして50カ国とか、ほとんど世界中の方をご案内することになりますので、そのときにそのお客さ
んが何に興味や関心を示したか、どんな質問を受けたかというのをレポートで毎回残しています。ど
ういうものにどんなふうに反応するのかがある程度分かっていると言葉が巧みでなくてもおもてなし
ができるのではないかと思います。
【佐藤アドバイザー】
北海道では「一指し」の研修を道内の全員ができるように、英語、中国語、韓国語の研修をしてい
ます。
「一指し」というのは、難しい長い言葉の案内はプロの人に任せましょうということで、本当の
根本になるハート、心を送りましょうということです。例えば「よくいらっしゃいました」
「お会いで
きてうれしいです」「お楽しみください」「お気を付けてどうぞ」という簡単な言葉だけでも言えるよ
うにしましょうということです。そういう研修を全道で行っております。とにかく恐れずに何でも前
向きにということです。
【呉観光ボランティアの会】
いろいろな国の方がおられますので、タブーといいますか、手真似などをしてはいけないとか、言
ってはいけないということを徹底しておかないと、せっかくガイドをしても不愉快な思いをされるこ
とがあると思います。
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研修のマンネリ化・ガイド活動への参加率について
【安立アドバイザー】
研修のマンネリ化ですが、年間計画をきちんと立て、会員の要望を幅広く取り入れて、ガイドに全
く関係のないようなことも含めてされればいいと思います。また、ガイドに登録していても参加が悪
いということについては、私どもの会では毎月、その月にいつガイドができるかという予定表を全員
に出していただいて、それで回数が均等に当たるようにガイドをお願いしています。
【観光ボランティアガイド「若狭の語り部」】
月1回のうち、隔月で情報交換会という名称で、自分が担当したガイドの中でお客さんからの質問
で答えられなかったことを持ち帰り、これはどう答えたらよかろうかという報告をします。例えば道
端の草や花の名前とかも、その回答を工夫するというようなことで、新しさを取り戻して今円滑に研
修を進めております。
【佐藤アドバイザー】
私信で、
「今、会ではこんなことをしていますよ、会のメンバーが何人増えて、こんなメンバーです
よ」と写真を入れて送っていますと、「今はこういう事情で出られないが、もう少し待ってください」
とかいう回答が来ます。休んでいらっしゃる方や、案内をされない方に試みてはいかがですか。
【ぬまづ観光ボランティアガイド】
1班の中でリーダーを中心にして自主研修をします。新入会員が入ってきますと、6回ほど養成講
座をやった後に、その班のリーダーを主として、後輩を指導していきます。班の中で困ったことは、
リーダーを中心にして解決していきます。2年に1回、班編成します。そのときに入会年度によって、
1期生が何人、2期生が何人、そのほかに1年間の登場回数、行事に参加した回数もカウントして、
平均化しています。そんなことで会員のコミュニケーションを図っています。
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第 2 分 科 会
「まちあるき観光におけるガイドの役割」
座
長:大澤
アドバイザー:嶋田
:上田
まとめ
歳男(伊香保温泉観光ガイドの会
「遊友」)
昌子(NPO法人横浜シティガイド協会)
益世(NPO法人なら・観光ボランティアガイドの会)
座長:大澤
歳男
氏(伊香保温泉観光ガイドの会
「遊友」)
「まちあるき観光におけるガイドの役割」を具体的に三つの議題に絞りました。
第1の議題は「まちあるきで心掛けていること」です。地域の住民の人たちとの協力や、住民の立
場に立って案内を心掛けること、交通事故等がないように注意を促すとともに周囲に目配りをする心
構えが大事である。1人のガイドの印象ですべてが決まってしまうので、心構えをスタッフ全員に浸
透させることが大事ではないか。また、ガイドはマップにない心を伝え、地域の肉声を伝えるもので
ある。地域の人々の生活の在り方や何気ないことを伝えることが非常に大切だということです。文化
財、民家、民具を案内する際には特別の配慮が必要であることを、案内する際にきちんと説明した上
でガイドをすべきである。また、地域の人々の祈りの場である場合、参加者も手を合わせる気持ちが
非常に大事であるということです。ガイドした際の失敗やお客さまからの疑問については、報告書を
まとめてほかのガイドに伝える必要があるので、定例会等で報告をし、お互いに研究、研磨すること
も大事です。
第2の議題は「まちあるきの魅力」です。ガイド自らが歩いて町の魅力を発見して伝えると、地元
の人々が見ると何でもないようなものが、視点を変えることによっていろいろな新しい魅力が生まれ
てきます。また、外から来た人のご意見、視点があることで、新たな発見があります。一つの町だけ
では終わらないような観光スポットについては、いろいろな連絡会などを通じて二つ、三つの地域の
ガイドで連絡をし、魅力を発見することも大切であるというご意見がありました。
第3の議題は「まちあるきマップの作成」です。マップに体験型のコースを取り入れていくことも
大切であり、1時間、2時間といった時間を区切ったコースも作った方がいいのではないか。JR等
のいろいろなチラシにコースを載せたり、PRが非常に難しい場合は行政などと協力してPRしてい
ったらどうかという意見もありました。手づくりでマップを作成したり、目の不自由な方のためにガ
イド方法やガイドブックを工夫して作成しているところもあります。また、ガイドマップは団体の間
だけでなく、団体外の多くの皆さんと一緒にマップを作ることを心掛けたらいいのではないかという
お話もありました。さらに、地域の人との接点を増やすことも非常に大切で、いろいろな行事をうま
く取り入れてコースを設定するとか、マップだけではなく「いろはがるた」などを作成し、地元の人々
に魅力を知ってもらうこともいいのではないかということでした。
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会場からの主な意見
「まちあるき」について
【嶋田アドバイザー】
「まちあるき」とはどんなものか。一つはまずボランティアガイドが自分たちでまちを再発見する、
ここから始まるのだろうと思います。五感を使ってその再発見をする。
では、どんな町を伝えるか。例えば名所・旧跡・お城とたくさんあると思いますが、一番大切なの
は、その町に住む人、人と人とを伝え合う。それは実際にボランティアガイドであったり、町の商店
主であったり、そこを通り行く人であったり。そうした人とお客さまを伝える。それが「まちあるき」
の醍醐味だと思います。
そして3点目、「うちの町何もないのよ」とおっしゃる方がいますが、何もない町などありません。
そこには人が住み、生活があります。そうした生活のありようをお伝えしたとき、その町を訪れた方
は、
「本当にいい町に行ったな」
「いい人に出会ったな」、そしてボランティアガイドさんとの出会いを
喜ばれて、町の記憶を留めてお帰りになると思います。
「まちあるき」で心掛けること
【NPO法人堺観光ボランティア協会】
「心掛けること」は、感動を持って帰っていただくことと、終わりの時間を守ることです。あと、
歩く場合の地図、マップはどんどん変わっていくので、地図には書いてないようなことをお話しして、
感動を持って帰っていただくように心掛けております。
【盛岡ふるさとガイドの会】
住民たちにきちんと断って礼儀を尽くしてその場所を見せることです。
【愛知県内観光ボランティアガイド】
お地蔵さんや常夜灯などの信仰にかかわるもののそばに40人~50人集めて入るときや、重要文
化財に指定されているような民家の格子戸は非常に傷みやすく少し触っても壊れてしまうことがある
ので、格別な配慮をしています。
【金沢観光ボランティアガイドの会「まいどさん」】
金沢は細い道がたくさんありますので、交通事故に遭わないように細心の注意をしています。また、
大変まちなみが狭いものですから、住民の皆さんにご迷惑が掛からないように、一切マイクを使わず
に自分たちの声でガイドをすることを心掛けております。
【弘前観光ボランティアガイドの会】
古いお寺・神社・仏閣といいますと、仏像など文化財のものが多いのですが、観光でおいでのお客
さまは、博物館で展示物を見るような気分でおいでになります。ですから私どもは、
「地域にとっては
ここは祈りの場所です。きちんとお祈りしてから本堂に上っていきましょう」と言って必ず賽銭を入
れて拝んでいきます。そうしますと、観光でおいでのお客さまもそれに倣ってきちんとお参りしてく
ださいます。
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【上田アドバイザー】
「まちあるき」の中では、事故などがないことが一番です。いろいろなマニュアルを各ガイドさん
の中で作っていただくのがいいのではないかと思います。うちの会に関しましては、ガイドにおける
注意事項、安全面における注意事項を会員にある程度徹底するようにしています。
「まちあるき」の魅力
【近江八幡観光ボランティアガイド協会】
建築物・風景だけでなく、私たち自身がそれぞれ感動してそれを伝えることかなと思っています。
特に近江商人がかつて生活し、そしてその考え方を全国に広げていった近江商人魂といった心を大切
にしながら、家訓と併せてお伝えしていくようにしています。
【観光ボランティアガイド「つばたふるさと探偵団」】
津幡町は宿場町になっていますが、今、町が疲弊しております。そこをご案内するときにどうすれ
ばいいかと考えました。お店ですが、地酒を造っている所が1軒あり、そこへ立ち寄ります。次に、
かまぼこ屋さんに立ち寄ります。お菓子屋さんも必ず1軒ないし2軒は訪ねます。住民、あるいは町
の方々との接点を増やすという面ではいいやり方だと思いますし、来る方も食べ物で、行ってみよう
かなという気を起こされる要素もあります。
【嶋田アドバイザー】
魅力探しは、視点を変えると本当にさまざまなものがあるということで、一度ご自分の町を外の視
点で見てください。新しいものがどんどん見つかると思います。
「まちあるき」マップの作成
【宇治観光ボランティアガイドクラブ】
JRが出している「ふれあいハイキング」というマップにわれわれがコースを作っています。非常
に宣伝効果があり、4回に分けてしているのですが、年間に300人ぐらいのお客さんがあります。
もう一つ、福祉対応ということで、身体の不自由な方をご案内するマップも別途作成し、行政にご協
力を得てインターネット等で発信させていただき、車いすでも観光していただけるようにしています。
【NPO法人横浜シティガイド協会】
横浜シティガイド協会では、それぞれの駅からスタートして、その駅からどう歩くかを会員それぞ
れが自分の足で歩いて、ここが見どころだ、こういう歴史があるのだと確認して、読み物としても面
白いような冊子を作りました。
【秋田市ふるさと案内人】
年代が異なるいろいろな人たち、地域の人と人との交流、そういうものをマップの中に取り入れて
いくことが、今私たちが3年ぐらいかけてしていることの一つです。
【上田アドバイザー】
各地に行事があると思います。この行事を何とかうまく取り入れる。行事があれば人が集まること
も多いです。そういうときに「まちあるき」を兼ねながらガイドをし、行事の説明もすることで、い
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ろいろなものが作り出され、見つけ出されるだろうと思います。
それから各都道府県で連絡会があるわけですから、その連携を何とかうまくしていただければいい
のではないかと思います。奈良県の中で古道のコースを作ろうと思うと、一つの町で終わらないので
連携が必要になってくるのです。そういう連携的なことをしていくと、一つの町ではできなくても二
つ三つ寄れば違うものが生まれてくるだろう。そういう工夫も考えていただいたらいいのではないで
しょうか。
もう一つ大事なのは、何らかの形で次の世代の子供たちに引き継いでもらうような方法を考えてい
ただいたらいいのではないでしょうか。奈良市の場合には小学校5年生に対して世界遺産学習という
のがあり、われわれが付いていって話をします。そういうことで子供たちに知らせますと、親に話し
ます。そういういろいろな工夫が成り立つと思います。
【嶋田アドバイザー】
優秀なマップを作ったからといって、ガイドが要らなくなるということはないと思います。ガイド
がしていることは、本当に心を地域の肉声で伝えているのです。マップは紙媒体です。この紙媒体と
温度のある人間が伝える声、そして歩みを共にすることは、全く異質のものだと思います。ガイドが
ご案内するのは町そのものであり、町の人です。
私どもが使っているマップに一つバリアフリーマップがあります。これは障害のある方たちと一緒
に使った視覚障害の方のための地図です。視覚障害の方も地図が使えます。そしてもう一つ、車いす
の方たちに使っていただくために、横浜中心部のすべてのトイレをチェックして多目的トイレを全部
記入しました。こうしたものは実は手づくりでできると思うのです。トイレのチェックは誰でもでき
ます。そうしたものが本当にホスピタリティのあるガイドになっていくのではないかと思います。
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第 3 分 科 会
「地域資源の保全と活用」
座
長:関
アドバイザー:一瀬
:徳永
まとめ
座長:関
利行(富岡製糸場解説員の会)
正信(NPO法人桐生再生)
京子(東広島市観光協会ボランティアガイドの会)
利行
氏(富岡製糸場解説員の会)
第3分科会も論点を三つに絞っています。1点目は、子供たちのかかわりについて、2点目は、住
民とのかかわりについて、3点目は、資源を守るための取り組みについてです。
1点目の「子供たちのかかわりについて」ですが、子供たちにどうボランティアがかかわっている
かということと、子供たち自身のガイドについて話し合いをしました。特に学校支援ガイドとも言う
べきでしょうか、学校へ出掛けての出前講座、総合学習、あるいは最近言われている体験学習等、地
域や学校と連携して実施するガイドが1点です。次に成人ガイドたちがフォローしながら子供たち自
身にガイドをさせる、それをとおして子供たちが地域の理解を深め、関心を高めるということで、例
えば旅行参加者へのガイド、自分たちで学習したものの発表、あるいは父母への説明ガイドなどをし
て大変な好評を得ているという報告もありました。また、愛郷心を子供時代に植え付けることは、将
来町を出て新しい所に住んでも、かつて自分が住んだ土地をPRすることもあるのではないかという
話し合いもありました。
2点目の「住民とのかかわりについて」ですが、一つ問題になったのは地域資源に対する住民たち
の間にずれがあるのではないかということです。具体的に言いますと、われわれがガイドする地域遺
産そのものについて、あまりに日常的なせいか関心が薄い、あるいは全く関心がない、幾つもの町村
が合併することで、住民自身の中に意識のずれがあるのではないか。そういう問題をどう解決したら
いいのか。結果としては、住民にとにかく遺産の意義を認知してもらうことが大事で、大学との協力、
連携を持ちながら市民大学や公開講座の開催、あるいは企画ウォークの参加などによって関心を持っ
てもらうことが必要ではないかという意見が出ていました。
最後に「資源を守るための取り組み」ですが、とにかく資源の大切さを子供たちに教えなければな
らない。資源を守るためには保全と活用があるが、保全については保守的なものがある、活用につい
ては現代性や利便性と二律背反の面があるのではないか、そういう点を調節し、行政と相談しながら
保っていくことが大事だということです。
アドバイザーの方からは、観光とは光を見ることと同時に、隠れたものに光を当てることでもある。
さまざまなことが観光資源になるので、それを見いだし伝えていくのがガイドの役割であるという助
言をいただいています。
会場からの主な意見
子供たちに地域資源の価値を伝える取り組み
【NPO法人堺観光ボランティア協会】
堺の町を次世代の子供たちに伝えるために、全市の小学校3年生を集めて、授業の一環として堺の
市街地、海、そして町々、古墳群をガイドが案内して、その場所を確認しながら勉強していくという
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姿勢で取り組んでいます。また、ふるさとが生んだ偉人をどう伝えていくかというところで手づくり
の紙芝居で子供たちにそれを紹介しています。もう1点、若者たちを観光に参入させたいということ
で、今、地域の観光大学と提携を組んで、ふるさとの歴史、地元の文化を学んだ人には単位を取得す
るという制度を設けています。
【倉敷地区ウェルカム観光ガイド連絡会】
私たちは夏休みを利用して、地元中学生がボランティアをしています。最低3日間私たちに付いて
回ります。最初の1日は、ボランティアガイドが説明します。2回目からは1カ所でいいから勉強し
て、それをお客さまに説明してもらっています。もちろん私たちがフォローはしますが、随分お客さ
まに喜ばれています。去年から始めましたが、今年は夏休みの間に60名の中学生が来ました。
【今治地方観光ボランティアガイドの会】
中世の時代、瀬戸内海の制海権を押さえて活躍した海賊衆、村上水軍の本拠地で、村上水軍を通じ
てしまなみ海道をPRしようということで、マンガ本を作りました。これを市内の小学校は4年生以
上、中学校は全学年、市内全校に学級5部、学校の図書館に20部、全部で2000部作り一昨年配
布したわけです。これを持って島々を訪れてくれる子供、親子連れが結構今年も見られたということ
で、それなりの成果がありました。
【加賀あいりすガイド】
私たちの町は小学5年生と6年生を対象にして文化財保護レスキュー隊を作っています。その中で
子供たちがグループを作って、自分たちの目で文化財を調べ歩いて、年に2回発表会をします。それ
によって自分たちが何を勉強したのかが本当に頭の中に入ってくるということで、レスキュー隊で勉
強をし、家に帰って親御さんたちとまた文化財保護についての話し合いができるという組織で、子供
たちに学校の先生方が教えています。
【ガイドつるが観光ボランティアゆりかもめ】
ふるさとを愛する子供を育てるために、敦賀スタンダードというふるさとを勉強する時間を作り、
そこでふるさとのいろいろな歴史、文化を子供たちの発達段階に合わせて提供するカリキュラムをス
タートさせています。また、市内を観光するときに、敦賀短期大学の学生にボランティアの仕事を受
け持っていただき、内容を紹介していただくという活動を始めています。
【NPO法人桐生再生】
子供地元学という形で、小学生を対象にして群馬大学の教授の方々と一緒になって町を散策しなが
ら、のこぎり屋根と織物遺産を実際に子供たちに絵を描かせて、それに説明を加えています。また、
そのご主人などにお話を聞いたことを文にして、桐生の町の地図におとし一覧表にして、町に掲載し、
作った子供たちが観光客にまた観光ガイドをするということをしています。
【NPO法人なら・観光ボランティアガイドの会】
奈良市は世界遺産が八つもありますので、奈良市の小学校32校を冬にかけて暇なときに私ども全員
がガイドする、これは小学校のカリキュラムで義務教育になっています。事前にその小学校に行って、
八つの世界遺産の説明をし、現地に別の日に行って講義をするということで、7年間続けています。
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【徳永アドバイザー】
子供たちが町を知る学習で、その学区にある5年生をいつもご案内しているのですが、それをただ
の学習だけに終わらせないで、子供たちに何か生かそうと、子供ガイドの養成を始めました。夏休み
前から夏休みにかけて5回の講座を行って、酒蔵通りなどを案内するのですが、夏休み以後は全部子
供たちの活動の時になります。子供ガイドの要望がある時や何かイベントがある時など、私たちの活
動に加わる形で子供たちがガイドに出ていきます。こうやって子供ガイドを10年と少し養成してき
たのですが、子供たちが町を知って町を愛する心を醸成するというのは本当に次代のまちづくりにつ
ながってきます。
【一瀬アドバイザー】
群馬大学の教授がプロジェクトリーダーをして、桐生の脱温暖化プロジェクトが行われています。
そこの一つのワーキングチームの中に、都会の人が田舎へ来て歩きながら観光していただくとどれだ
けCO2が削減できるのだというグリーン観光というものがあります。その一つで、今年になってか
ら小学生を中心にもっといろいろ活動して、将来を担っていただこうということで、子供地元探検隊
を始めました。3回目がもう済んでいるのですが、いろいろな所を見て回って、自分たちなりに説明
文を作って、それを桐生市の大きな地図に張り付けていきます。それで発表会をして、桐生市長から
認定書を授与するというところまで進んできています。
住民とのかかわり
【福岡市観光案内ボランティア協会】
私どもは市民大学を実施しています。これは歴史観光というタイトルの下に約6カ月間、100~
150人の方に毎週月曜日に来ていただいて、新聞社の1室を借りて年間36教程ぐらいしています。
【NPO法人堺観光ボランティア協会】
地元のタクシー会社が「観光タクシー」ということで、自分たちも堺の歴史や文化を学びたいと観
光の教育に大変熱心になられ、ドライバーさんに観光ボランティアが観光の案内、教育のお手伝いを
しています。
【松山観光ボランティアガイドの会】
平成17年から観光コンベンション協会が中心となり、松山観光文化コンシェルジュという制度を
作っています。はがきによる応募で試験問題が出され、その正解率90%以上をコンシェルジュとし
て認めます。その後、その中から希望者を募り、松山大学と一緒になり、ふるさとふれあい塾を平成
18年から開始しています。
【静岡案内人「駿府ウェイブ」】
市民にとにかく地元の静岡を知ってもらおうと、2カ月に1回、企画ウォークと言って、コースを
組み、それを静岡市の広報誌、または地元の新聞社で募集広告を出してもらい、大体1回に150~
200人ぐらい集まります。既に68回、10年以上続けています。
【徳永アドバイザー】
東広島町は、東広島を中心に近隣の5町が合併してできた町で、山から海まであり、なかなか共通
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点が見当たりません。それで私たちは、合併の前から皆さんに1市5町を知っていただこうと、1市
5町を順番に巡るツアーを企画して、それぞれの町の良さを発見してもらうことをしてきました。今、
全部の共通点はないのですが、隣町同士という形で同じような共通点があるものがあります。そうい
うものをつなぎ合って少しずつみんながつながっていくという形を取っています。
観光というのは「光を観る」と書きます。その土地の光、誇りを見ること、見せることです。もう
一つの意味は、隠れた魅力に光を当てて輝かせてみせることでもあると思うのです。皆さんがよく知
っている観光資源がある所もありますが、そのような資源がない所でも、探せばいろいろな資源が出
てくると思うのです。史跡文化財であったり、伝統文化であったり、伝統産業、新しい産業、伝説、
祭り、施設であったり景観、自然環境、みんなこの観光資源になると思うのです。この自分たちの町
の素晴らしいところを探して、皆さんにお伝えすることがガイドの役割ではないかと私は思っていま
す。
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第 4 分 科 会
「今後の観光ボランティアガイド組織の
方向性」
座
長:今井
アドバイザー:高橋
:辻
まとめ
弘(水上観光ガイドの会)
健治(NPO法人鎌倉ガイド協会)
貴弘(ほっと石川観光ボランティアガイド連絡協議会)
座長:今井
弘
氏(水上観光ガイドの会)
第4分科会に77団体が参加されているうち、NPO化されているのが8団体でした。NPO化の
メリット・デメリットの話が出てきました。デメリットは、NPO化すると退会が制限されてくる、
また定款に退会の手続きを定めることが必要になってくる、本人の申し出、会費の無納入、役員会の
決議などの条件が必要である。また書類手続き、経理、税金等で複雑になるので、さまざまなNPO
に対するサポート、支援制度も活用し、会員に経理や経験豊富な方も引き抜くことで解決できるので
はないか。またメリットとしては、法人格を持つことにより社会的信用性が得られる、行政からの補
助また受託事業が得られやすい、契約行為がスムーズにできる、銀行から借り入れがしやすくなり、
商工会議所等にも入会できるというご意見が出ました。
それから、組織を維持するために財源の問題が討議されました。ボランティアガイドの有償、無償
については今までの大会でも何度も議論されているようです。自主財源として各会員の会費のほかに
有料化が必要だという意見が随分とありました。また、行政の補助があれば実費負担程度で運営がで
きるというご意見等、いろいろなご意見が出ました。自主財源と公的資金、寄付金、賛助金等のバラ
ンスが合えば余計安定するのではないか。もう一つ、旅行業法第3種により旅行業の取得をする場合
には多額な開業資金が必要になる。従って、旅行業の第3種を取るよりも、旅行業者とタイアップす
る方法の方が柔軟に対応できるという意見も出ています。
人材確保の問題では、養成講座を開いているところは大変多いようです。そういう中で、ただ養成
講座を開いてガイドを募集するだけではなくて、市民公開講座的なもので大勢お集まりいただいた中
から、ガイド希望者を募る方法がいいのではないかという意見が大変多くありました。ただ、あまり
にも門戸を広げすぎると、質的にも適性的にも的確でない方にガイドに入っていただくことになるの
で、人選を絞る必要があるのではないか。そういう中で良い人材としては、例えばパソコン、経理、
企画力などの専門性のある人に入ってもらう方が有利ではないかというご意見がありました。
もう一つの問題として、高齢化の問題が出ました。若い人に入っていただく方がいいのではないか
というご意見も多くありました。高齢で、身体的にガイドが困難な方でも、OB会員または準会員と
いう形で解決している団体のご報告がありました。実際はガイドに出ないのですが、その人たちはベ
テランであるということでガイドの研修会の講師になったり資料を作成したりしてもらい、交流会や
旅行などには積極的に参加していただくということで、高齢者に対応しているということでした。
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会場からの主な意見
組織運営、NPO法人について
【高橋アドバイザー】
NPO法人を取得したバックグラウンドとして一番大きいのは、人数が増えて、事務所も持ち、い
ろいろなリース契約等が出てきたときに、任意団体だと会長の個人保証というケースが契約上非常に
煩雑で、しかもそれが理由で会長に手を挙げない方が非常に多かったということがきっかけになった
かと思います。もう一つは、県や市からの受託事業に入っていくときに法人格を持っていないと資格
がない、この二つがメインでNPO法人化を進めました。鎌倉市には、NPOを支える団体があり、
ここに各方面のアドバイザーが全部そろっておりますので、会計制度その他についても1回そういっ
た方に相談をして、そのほか年間1万円を払うだけで、会計についてのすべてコンサルティング、ア
ドバイスをしていただいております。そういう意味ではNPO団体をサポートする仕組みが市として
非常にがっちり出来上がっているということで、NPO法人化したことでの資料や帳簿の煩雑化につ
いて、特に問題はありません。
もう一つ、NPO法人にしたことによって人材確保の面で一つ大きなプラスが出ました。NPO法人
ですから募集時に地域、年齢の制限がかけられません。従って、応募者が倍増しまして、非常に優秀な
人間が多数集まったということが一つの付録の財産と言えるかと思います。
【辻アドバイザー】
法人格を持っていれば銀行からも借り入れができますし、商工会、商工会議所にも入れます。そう
いった形で法人格を持つのは非常に有利な点が多いのは確かです。財政面では、NPO法人の会計は
非営利部門と営利部門があります。物を売るのは営利部門です。だから、収益が入りますが、それは
入った収益をわれわれがガイドをしている非営利部門に回します。そういう形で経理経験者が一人ぐ
らいいらっしゃれば、NPO法人化に、そんなに気後れすることもないかと思います。
いいものはどこにでもありますが、人が介在しないといいものが光らない、それをやるのがわれわ
れボランティアではないでしょうか。法人ではなくても、地域貢献というのが、団体としては目標に
なると思います。ということは、地元の商店街や地元の人たちも喜ぶような活動をしなければいけな
いし、もちろん、やっているわれわれが一番楽しんでやらなくてはいけないし、成果も出ないといけ
ませんが、地元の人たちもお客さんも喜ぶという、三者喜ぶようなものをやるべきだと思います。わ
れわれが頑張ると行政も喜びます。その四者喜ぶような活動が今後の方向かなと思っています。
また、県や市からの補助金ですが、1円ももらってないという団体もいらっしゃると思います。も
らわないことがいいことではなくて、もらいながらそれ以上に貢献できるような活動をしていくのが
広がっていく原点ではないか。学校教育でもそうですし、公民館活動という社会教育の現場にも全部
出ています。そういうところが広がっていけばいくほど会員の活動のフィールドが広がりますので、
やはり積極的にそういったところに出ていくということが非常に大事なのではないかと私は思ってい
ます。
退会について質問
【石見銀山ガイドの会】
「NPO法人化して、戦力にならない人を辞めさせることができない」と言っておられましたが、
なぜそういったことができないのかを教えてください。
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退会についての回答
【辻アドバイザー】
NPO法人というのは、県知事の認可なのです。県ごとの単位で、法律のそこの部分が変えられる
ような形になっています。退会の件は、株式会社と一緒で、定款を作って、その中に、例えば文書を
もって役員会で退会勧告するとか、何か一行うたえば、問題のあるというか、会に迷惑の掛かる会員
に関しては辞めていただけることはできます。ただ、逆に言うと、入りたいという人を断る理由を文
面をもって答えなければいけない。
会員の質と研修、人材確保、定年制
【NPO法人横浜シティガイド協会】
われわれの協会は立ち上げたのが平成4年で、平成15年の2月にNPO法人化しました。その当
時から会員数が大体80名前後でずっと推移していますが、高齢化に伴い在籍はしていても活動が減
るということもあり、その後3度人員を補充しています。人員の補充の仕方は、従来は会で3カ月間
かけて教育をしていたのですが、現在は神奈川県がボランティアガイド育成講座を数年前から開始し
て、そこの卒業生を神奈川県に存在する各会が引き受けるように変わってきております。
われわれ協会の教育は、その3カ月間の神奈川県と横浜市に関する基礎的な講座が終わった人たち
を、その後1年半かけてみっちりと、最後はマンツーマンになって教えます。一人前のガイドになる
までには、約2年間の教育が必要になります。
【ふくしま花案内人】
人材の確保は、養成講座を毎年実施して新規補充に注力しています。当初の養成講座は、募集した
新しい人だけだったのですが、今はこの養成講座は従来の一般のメンバーも受けることができるよう
にして、ブラッシュアップの機会としています。
二つ目に会員の資格ですが、特技を重視するということが一番ほかのところにない制度ではないか
と思っています。ガイドはお客さまとのキャッチボールですから、どういうお客さまが今度見えるの
かを調べて、できるだけそれに合った方を手配します。例えば俳句、短歌の会の方が来られたら、花
案内人の中のそういう方を中心にガイドをしてもらうことが一つのおもてなしだろうということで、
こういう制度を導入しています。
【長浜観光ボランタリーガイド協会】
ガイド養成講座という形にしますと皆さん構えてしまって応募が少ないということがありまして、
公益に寄与するという目的とガイドを養成するという目的で「市民公開講座」に名前を変えて、広く
市民の人が参加しやすいような形にして、その中でガイドの希望者を募集していくという形をとって
います。
【辻アドバイザー】
金沢市がボランティア大学校というのを日本で初めて始めまして、部門は福祉や環境など6部門ぐ
らいに分かれています。そのボランティア大学校の観光コースを出たら、その後、入会するか・しな
いかということで、抽選で選ばれることになります。大体100人ぐらいの中で30人ぐらいがボラ
ンティアをすることになります。1年間の講座を受けて、やはりその中で、自分が向いているか向い
ていないかももちろんですし、組織としてもこの人はぜひやってほしいということを考えるためには、
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そういう講座は非常に大事だと思います。また、山代温泉がある加賀市ではボランティアがボランテ
ィア大学校を立ち上げています。
【松戸シティガイド】
会員の中で高齢になられた方にはOB会員に移っていただくようにお話をしています。OB会員は
実際のガイドには携わりませんが、さまざまな研修、旅行や忘年会などには積極的に参加していただ
くように、交流は切らないでしております。それから、会報等、会議、議事録等を送るような形で現
在やっております。
【高橋アドバイザー】
私どもの会ではOB会員を会友と呼んでいます。研修会の講師をしていただいたり、協会が作るガ
イド資料の校正をお願いしたり、歩く仕事以外の頭を使う仕事で大ベテランを活用させていただいて
いることで、同じ正会員ということでやっております。
【辻アドバイザー】
ボランティアの立ち上げに行政の区域は関係ありません。われわれは五つの過疎の村も含めた人材
を集めるということで組織を立ち上げました。近隣とうまく連携しながら、柔軟性を持って、行政に
縛られる必要はないと思います。
われわれは以前、第三種を取って旅行業を取ろうと思ったのです。そうすると開業資金が500
万かかります。旅行社とタイアップし、われわれの企画を旅行社がしてくれれば、旅行業違反にもな
りません。バス会社とタイアップすれば、観光バス運営も大丈夫というので、うまく外の組織を使い
ながら、われわれが主導権を持ってやれば可能性は広がると思います。
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第 5 分 科 会
「バリアフリー観光への対応について」
座
長:青木
アドバイザー:大塚
:瀬川
まとめ
達郎(新田荘史跡ガイドの会)
文子(倉敷地区ウェルカム観光ガイド連絡会)
征吉(市民ガイド八戸協会)
座長:青木
達郎
氏(新田荘史跡ガイドの会)
主としてハード面とソフト面という二つの点から意見や経験談を話しました。
一つは、視覚障害者向け立体模型です。具体的に手で触って分かるような説明板や地図を作ったと
いう話、事例発表の石見銀山の方からは、事故が発生したときの準備として七つ道具携帯電話、カメ
ラとスズメバチなどに刺された場合の毒抜き注射、
(ポイズンリムーバーというフランス製のもの)ご
み袋、クマよけ鈴、筆談ボード、ねんざ等用の三角巾を持っているという話がありました。ソフト面
については、例えばAEDの使い方などいろいろな研修例が出ました。
また、東京マラソンに視聴覚障害者が10人も参加して、介助を付けて完歩したという話や、アイマ
スクを実際に着けて歩いてみると問題点がはっきりするという話、障害者と一般の健常者が一緒に来た
場合にはどうするかという話では、障害者を特別扱いしないで普通の人と同じように話をして説明した
らいいのではないかという話が出ました。
研修については、石見銀山では月に1回手話講座を、浜田市では定例研修会を行っているなどが出
ました。
そのほか、障害の違いに応じた対応、他団体との連携についての話もありました。
会場からの主な意見
立体地図の作成
【宇治観光ボランティアガイドクラブ】
視覚障害者の方が手で触って見る立体コピーを作っています。松江でこれを参考にされて、風土記
の丘資料館の案内書を点字で作成し、その後、松江城のものも作ったということです。また、宇治の
観光ボランティアガイドでは、主として車いすの関係の人たちが多いというので、
「福祉マップ」を作
っています。
手話ガイドや優しいまちづくり
【NPO法人横浜シティガイド協会】
当協会のガイドは、企画ガイドと、ファックスやお電話で申し込まれる依頼のガイドを行っていま
すが、その2種類とも手話のガイドをします。手話のできるガイドが受け持ちます。現在、横浜市の
認定手話ガイドが3人おりまして、その人たちの一人がサポート、一人はガイドをしています。サポ
ートの場合は白い手作りのパネルのようなものを作って、そこに大きく字を書きます。例えば「横浜
市開港記念館」と書きまして、サポートが持って、一方で主役の手話のガイドがいる、そういう形で
やっております。
もう一つ、ジェントルタウンといって、優しいまちづくりをしようという他団体も一緒に活動をし
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ています。触る地図です。観光ポイント、車いす対応のトイレなどを車いすの方と一緒に歩いて一つ
一つチェックして地図に落としていきます。また、ガイドのポイントの説明文章を書くというお手伝
いをしています。こういう他団体とお付き合いすることによって、ガイドの手法の勉強にもなります。
事故対応の七つ道具
【石見銀山ガイドの会】
石見銀山の世界遺産に登録されている範囲は、529haという大変広大な範囲で、そのために危
険を伴う地域も少なくなく、事故の発生が私たちの最大の心配事です。私たちは事故発生に備えて絶
えず研修を行い、緊急時の対応やAEDの使い方、消火訓練を行っております。例えば緊急時の対応
として、ガイドをするときに七つ道具を携帯しています。それは、携帯、カメラ、ねんざ用の固定帯、
虫刺されどきの毒の取り出し器具、クマよけの鈴、聴覚障害者対応の筆談ボード、ごみ拾い用のレジ
袋です。それでも事故が起こったときには、地元の病院や同じ観光協会の助けを借りて、連絡網を作
成して処理に当たっております。
障害者対応、研修の必要性と実地の安全確保
【金沢観光ボランティアガイドの会「まいどさん」】
私たちの場合、ガイド料は無料ですので、視覚障害、その他障害をお持ちの方がおいでのときは必
ず介助者を付けていただくことが条件になります。金沢駅や兼六園などの観光地には無料の車いすが
設置されていますし、視覚障害の方および同伴者については入園料や拝観料が無料という措置もして
います。
支援センターの職員の方に出向いていただき、実際にどうガイドしたらいいか、毎月1度の定例会
のときにお話を伺っております。今取り組んでいるのはAEDです。
【石見銀山ガイドの会】
全盲の方と一緒に建物の中や階段を歩いたりするお勉強をしたのですが、それから約半年後ぐらい
にご案内を引き受けました。盲導犬より前に出てはいけない。それから、お客さまの肩より30~40
cm後ろでご案内しなくてはいけない。勉強したこととは全く違いました。
【大塚アドバイザー】
倉敷の美観地区は伝統的建造物群保存地区です。ハード面での工夫ができないので、最初はソフト
面から始めようということで、美観地区にいる私たちボランティアガイドや商店の人たちを対象に市
の方が制度を作ってくださいました。
実際にアイマスクを付けて美観地区を歩いてみると、目の見えないということがどれだけ大変かと
いうことが分かりました。一声掛けて何らかの手助けをしてあげるのがいいのではないかということ
が切実に分かりました。大阪大学の先生の講義などを聞いて三つの講習を受けると、おもてなしマイ
スターの認定書とバッチが頂けます。バッチを付けている人はそういう対応ができるということです。
【瀬川アドバイザー】
青森県は6年ほど前から、視覚障害の方々からいろいろと介助の仕方を聞いたり、車いすの畳み方、
ストッパーの掛け方を学ぶトラベルサポーター制度を行っています。観光と福祉はこれから大切だろ
うと思います。
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障害の違いに応じた対応を
【NPO法人東京シティガイドクラブ】
整理しておかなくてはいけないのは、全員が不自由な方なのか、全員が車いすをお使いなのか、全
員が視覚障害なのか、聴覚障害なのかということと、もう一つは、お客さま方の中にたまたま一人や
数人など不自由な方がいらっしゃるのかということです。また、お一人で参加されたのか、介助者が
いての参加かも分けて考えなくてはいけないと思います。耳が聞こえないというのは例えば補聴器と
いう器材もあります。しかし、突発性の難聴というと全く聞こえなくて、後ろからの自転車の様子も
分からない部分があるわけです。そうすると、もし介助者がいても後ろからの配慮もしなくてはいけ
ません。
また、不自由な方々に力を注いでしまって、一般のお客さまから、そちらの方ばかりなどというお
声が上がってはまずいわけですから、同じように楽しみを分かち合える数時間であってほしいと思い
ます。担当になったときにできる限り準備するという基本形が必要かなと思います。
不自由な方に対するいろいろな教育機関があると思います。やはりお声の掛け方一つ、目線、それ
から、介助をするに当たってどこを触れていいかというのは勉強する必要があります。自信を持って、
その手順が分かっていると「介助者の○○です」と小声で言うと、
「この人は一つ、二つ知っているな」
と思わせてお任せいただくというタイミングができると思います。
【名古屋城観光ガイドボランティア】
聴覚障害者は少なくとも口話で大体通じます。だから、声は大きな声を出さないで、普通のガイド
と一緒のような声で、口話でゆっくりお話ししてあげてください。これで十分、まず市街地回りは大
丈夫だと思います。
そんなに難しく、健常者と違うという感覚ではなくて、自分のやれる範囲でぜひ案内してあげてい
ただきたいと思います。自分たちがどれだけできるかは別として、積極的に受け入れる方向がいいと
思います。
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第 6 分 科 会
「観光ボランティアガイドによる
広域連携への取り組み」
座
長:湯浅
アドバイザー:山元
昌雄(中之条観光ガイドボランティアセンター)
:西河
利成(呉観光ボランティアの会)
まとめ
嗣郎(NPO法人堺観光ボランティア協会)
座長:湯浅
昌雄
氏(中之条観光ガイドボランティアセンター)
第6分科会では、47都道府県の中で連絡会、協議会等の設置が30団体であることが報告されま
した。群馬県においても昨年3月に緩やかな連絡会ということで発足していますが、県内に50以上
のガイド団体があると思うのですが、加盟しているのは41団体です。
まず県内連携についてですが、まだ全国で連絡会、協議会のできていない所が多々あるので、早急
に県単位の連絡会、協議会の設立を促したい、そして県単位での研修会の開催を行いたいということ
でした。また、事例としては、県単位の研修会等は各地区で持ち回りでやっているというお話があり
ました。
県外との連携ですが、他県の団体との相互交流の促進、視察研修を通じて知識やガイド技術の向上
を図ること、共通の話題を通じた連携事業の必要性について討論されました。例えばテレビ番組、ド
ラマ、映画、世界遺産、遣唐使など、いろいろ各県にまたがって同じ話題を持つものがあると思いま
すので、統一したルールやツールによりそういう地域との連携が必要ではないかということです。
特に西日本の取り組みが非常に活発だったことを私自身が感じました。例えば呉の方からは隣接市
との連携で活路を見いだしたという発表がありました。宮島や原爆ドームという世界遺産を訪ねる取
り組みをし、大変盛況だったという話です。また、堺の方からは大阪と奈良とのリレーウォークを3
年間実施しているということで私も感心した次第です。また、京都、大阪、神戸などの4都市での共
通ルールによる周遊を設定し、増客に努めているということでした。
広域連携の話題と取り組みについては、事業を行う上でお金がかかるわけですが、参加費の徴収や
県市町村の協力、民間企業の協力も不可欠ではありますが、国、県に頼らず身の丈の活動を行うとい
う意見もありました。鎌倉からは、隣接市との連携はすぐできることではないので、じっくりと取り
組むことが必要だというお話がありました。
ほかの観光地との連携では、周遊などのコースを設定しての点から線へという取り組みが非常に期
待されますので、これからは県単位ではなく県の外へ出て連携ができたらいいと思っています。ただ
し、新しい連携組織の立ち上げは簡単なことではありません。じっくりと時間をかけて取り組む必要
があると思います。2~3年かかったという例も報告されました。
会場からの主な意見
広域連携の取り組み
【山元アドバイザー】
大和ミュージアムが17年にオープンして、初年は1年間で160万人が参りました。5年間で、
- 48 -
600万人の観光客が来ていますが、これもずっと衰退をたどってきています。従って、まず県内の
観光の方々と連携を図ろうということで、平成17年に広島県の観光ボランティアガイド連絡協議会
が結成されました。それには27の市町村が加盟をしていますが、その人たちとの連携を図っていま
す。山陽アルチザン街道、職人の街道ということを、酒造りで有名な東広島市の西条、女性が喜ばれ
る頬紅を塗るはけを作る熊野町、日本一のやすりの町である呉などが、ものづくりの職人の町として
連携し合っていこうということで実施しています。
次に、瀬戸内に関する市町村のガイドの連携を図り、まず人の輪を作って呉に来ていただこうと計
画しています。さらに、世界遺産の宮島、広島の原爆ドーム、山陰の石見銀山を結ぶ計画により、山
陽と山陰の結び付きを図ろうとしています。また、朝鮮通信使に関係する下関、山口、岡山の牛窓と
の連携を図っています。こういった連携を図ることで呉の活性化を、まず交流から始めたいと計画で
進めているところです。
【西河アドバイザー】
「大阪・奈良歴史街道リレーウォーク」というものを現在第2幕でやっています。昨年は第1幕で
大阪から奈良まで3年かけて関連市町村を回りました。第2回ということで、今度は奈良から遣唐使
の道をたどる形でリレーウォークをスタートしています。3年後に住吉にたどり着いたら、それから
先、今度は住吉から遣唐使船を造って大宰府まで行って、その先は中国まで行こうという遠大な計画
を立てています。
このリレーウォークには基本的に公的な資金は全然入っていません。15回のリレーウォークを行
い、それぞれを各市町村のボランティア協会が主催する形で統一したブランドで行うのですが、毎回
そのグループが責任を持って、身丈の大きいところは大きなリレーウォークをするし、小さなところ
はそれだけのものをすることで、財政的にはその市町村である程度お金をもらうこともあるのですが、
これだけ大阪、奈良全体を歩くものでも、基本的に大阪府、奈良県からは50万円もらっているだけ
なのです。それは、のぼりやパンフレットを作る費用として、毎回の実行費用はすべてボランティア
協会で責任を持ってする。そのためには多少の参加費も頂いています。
もう一つ、
「関西あそ歩」という活動を始めています。これは京都、大阪、神戸、堺という四つの都
市を巡るまちあるきのガイドツアーです。
「大阪あそ歩」という内容で大阪市内で百何コースのガイド
コースでやっていたのですが、それを拡大し、京都府、兵庫県、大阪府の4都市で、ガイドの仕方も
使うツールもすべて統一してガイドをしていくことで回遊性を出していこうということで今回始めま
した。参加者の半分くらいはほかの所に行ってきたということで非常に広域協力の効果が出るプラン
だと思います。
【山元アドバイザー】
呉は呉市市民協働事業提案制度に提案をして、50万というお金を頂けることになり、シンポジウ
ムを開いています。これは「坂の上の雲」にちなんで瀬戸内海5地区を結び付けていこうということ
で、今5カ所に出向いていって、仲間を連れて帰ってくることを始めています。これは市の補助事業
です。
質問
【NPO法人鎌倉ガイド協会】
連携をする際、どこのガイド協会とどういう打ち合わせをするのか。境界線からこちらに入ったと
- 49 -
きには、あなたたちにやってもらいますよとか、次に行ったときにはそちらの県の人にやってもらい
ますという連携をしていくのかと思いますが、その人たちが集まる状況、話し合いの場についてお話
しいただければと思います。
回答
【藤井寺市観光ボランティアの会】
大阪府と奈良県が6~7世紀の大陸文化流入のルートとなったことから、難波津から飛鳥までを歴
史街道として整備することを知り、民間レベルで広域的なネットワークができないかということでし
た。
最初、堺と奈良が中心になって各市に呼び掛けたところ、半年ほどしてやっと検討会を開くことが
でき、それから2年ほどしてやっと実行委員会を立ち上げるというふうに非常に時間をかけてやって
きています。そして、2年8カ月、約3年かけて大阪の難波宮から飛鳥京、藤原京、平城京にゴール
したのですが、16団体で講演を含んで20回、参加者が延べ6905名、平均345名の参加があ
りました。そのうち各回でシールを張るようにしていましたが、完歩、全部を走破した方が予想を超
えて40名もありました。経緯としては、2年ほどかかって検討会および実行委員会と非常に時間を
かけて、最初は3団体、大阪3団体、京都6団体で始まったものが、実行委員会の段階では大阪が6
団体に増え、奈良が9団体、15団体で実施したということになりました。
ツイッターや大河ドラマの効果
【美幌観光ボランティアガイドの会】
ITの関係に関しては皆さん少し一歩引いてしまうことがあるのですが、今回の広域連携の取り組
みの一つの突破口として、やはりIT関係は無視できないと思います。ITを使って情報を仕入れて
いるわけですから、そこにガイドの会も入っていって、そこで何かの情報を発信していかなければい
けない。ここにガイドの会があることを理解してもらうためには、ある程度のボリュームがあって、
メニューがある中で選んでもらうことがなければいけない。
連絡協議会について
【人吉観光案内人協会】
一昨年、連絡協議会ができました。地区回りで当番をして、そこで実際にその地域を県内のボラン
ティアガイドが内容だけでなく技術も勉強しています。県外は九州がまとまって、九州の連絡機構が
でき、全国大会と同じような勉強を分科会を設けてやっています。
【山形市観光ボランティアガイド協会】
山形県ボランティア連絡協議会の下に地域ごとに四つがあります。その地域ごとに年2回、市町村
の持ち回りで研修会をやっていきます。というのは地元の町から知っていこうと。その中で県の連絡
協議会では一本化して、まとめて大事業を展開していくというやり方をしており、既に10回を数え
ています。
【橿原市観光ボランティアガイドの会】
現在、奈良県の観光ボランティアガイドの連絡会でも、県全体で31団体で研修をやっています。
周りのことを勉強するという研修もやっていますが、広域でやる必要があるのだという意識を会員が
- 50 -
持つことが広域でうまくいく一つの大きな条件になると思います。
【山元アドバイザー】
まず一つは各県で組織を作っていただくこと、そして組織の中でお互いに交流をし合いながら広域
交流を進めていただければというのがお願いです。広域観光、単独の行動それぞれのさまざまな観光
旅行があります。これに対応するためにはやはり周遊、周回させることが大事だと思います。それを
お互いに地域同士で連携をしながら、観光を交流させていただければと思います。
- 51 -
全
体
会
議
司会
大島
正敬
社団法人日本観光協会事業推進グループ長補佐兼国際事業チームリーダー
第1分科会
佐藤
義一
白井宿観交(光)案内人の会
第2分科会
大澤
歳男
伊香保温泉観光ガイドの会「遊友」
第3分科会
関
第4分科会
今井
弘
水上観光ガイドの会
第5分科会
青木
達郎
新田荘史跡ガイドの会
第6分科会
湯浅
昌雄
中之条観光ガイドボランティアセンター
利行
富岡製糸場解説員の会
各座長より各分科会のご報告をいただいた後、会場の参加者から意見等をいただきました。
大学との連携
【松戸シティガイド】
私どもの松戸市のメインのガイドの場所は戸定邸という徳川の別邸ですが、そちらと隣接している
千葉大学の園芸学部の庭園ガイドもしており、官学民の三者で回路ツアーを実施しています。季節の
良いときに、さまざまな樹木の紹介や100年前にできた庭園がありますので、そちらのガイドをし
ていますが、その研修は大学の先生に講師としていらしていただいたり、細かい樹木のことは学生さ
んに教えていただいたりということで、ガイドに入っていただくことはありませんが、そういう形で
交流して進めています。
【NPO法人堺観光ボランティア協会】
大阪に大阪観光大学という観光を主体にした大学があって、そこと私ども堺観光ボランティア協会
が提携して大学の中の一つの講座を受け持っています。観光学で、ボランティアガイドとか、そうい
ったまちなか観光の仕方をわれわれ協会側の人間が大学の学生に講義をする、上期はそういう一般的
な講義をして、下期になるとテーマを決めてまちなかを歩きながら学生たちにガイドの体験や、ガイ
ドとしての心構えや観光のストーリーづくりもしてもらいます。
【弘前観光ボランティアガイドの会】
弘前大学人文学部には留学生が非常に多いです。人文学部では地域学という講座があり、留学生が
われわれの通訳をしてくれます。4月~5月にかけてのさくらまつり、8月のねぶた祭り、菊と紅葉
まつり、その三つのシーズンの土曜日、日曜日、祭日、私たちの通訳をしていただいています。英語、
中国語、韓国語、あるいはスペイン語、フランス語、ドイツ語ができる留学生もいます。また、お客
さんのないときには私たちと一緒に、日本のお客さんをガイドしています。人文学部ではそのレポー
トを出させて、単位として与えているということです。
【NPO法人なら・観光ボランティアガイドの会】
奈良も地域の大学といろいろな形の協力をしています。まず奈良県立大学に後期の講座で過去3年
間、私どもが現地のいろいろなガイドについての話をしています。奈良には外国の方がたくさん来ら
れますので、その方にガイドができるようなアドバイスや、説明をしながら回っています。それから
奈良教育大学との関係においては、教育大学の世界遺産学習を担当しています。
- 52 -
奈良女子大学、私どもの会、それから地域の方々と町の中心活性化という意味で、正倉院展などに
向けてお客さんたちにいろいろなガイドの仕方をお話しして協力をしています。
【銚子ボランティアガイド観光船頭会】
銚子には千葉科学大学というユニークな大学があります。これからはジオツーリズムを銚子に定着
させたいということで、大学にジオ研究会があるのです。これは当然ゼミの学生さんたちが中心です
が、そこで私たちも気持ちを若返らせると同時にスキルアップを図りたいと。ジオツーリズムが銚子
に定着したときに、新たなジオツーリズムのボランティアガイドが誕生するかもしれません。
ガイド料と経費
【最上町観光ボランティガイド協会】
私どもの案内料は1回2000~4000円、また山の案内の方は1万~2万円いただいています。
1000m級の山の案内や巨木の案内をしております。前もって1日か2日、自分で事前調査をしま
す。
当然1000~2000m級の山を案内しますので、専門知識が必要となります。ガイドの方は1
年間の研修を受けて認定書をもらっています。
【北村かやぶきの里保存会】
有料という形にすればガイドとしてのプライドも芽生えて責任感も生まれてくるのではないかとい
うことで、今は大体1団体につき2000円という形にしています。内訳は1000円をガイドをし
た方にお礼として渡して、残りの1000円はガイドの会の運営資金に充てています。
- 53 -
「地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会」の今後について
説明:社団法人日本観光協会常務理事
長嶋秀孝
全国大会が中止となった経緯に付いて皆さまにご説明いたします。
私ども日本観光協会は、もともとは都道府県、主要な市町村、県そして市町村の観光協会が作った
組織です。歴史的には戦前、日本観光地連合会と言っていた時代もあります。要は各地域の集合体、
地域が作っている団体ということです。私ども事務局は、その組織を回すための一種の幹事役のよう
な役割です。
次に、この全国大会の目的です。平成7年に企画され、平成8年に横浜で第1回大会が開催され、
今回で第15回目を数えます。この大会の初期の目的は、当時まだまだ今のようではなかった地域に
おける観光ボランティアガイド活動の普及ならびに促進を図るということでした。そういった意味に
おいては、全国大会という手段を通じたボランティアガイドの普及・促進という使命は、もう十数年
たつ間に達成されているだろうと思っています。
十数年前から比較しますと、都道府県レベルの組織は既に47都道府県中30団体に至っています。
初期のころはありませんでした。それから、都道府県レベルの大会ならびに研修も、今や47都道府
県中20都道府県で行われるようになっています。さらに、ボランティアガイドの組織に至っては、
平成7年のデータですが、272あったものが現在は私どもが把握しているだけでも1623と、約
6倍になっています。さらにボランティアガイドに従事している方々の数に至っては、これは平成1
2年に1万6000人であったものが、私どもで把握できているだけで、平成22年現在で4万15
00人、2.6倍ということで、普及・促進という意味において、目的は完全に達成したのではない
かと思っています。
しかしながら、各団体の活動は、分科会でもご議論があったように、テーマも多様化していますし、
取り組みもかなり深度化してきています。全体会議でもレベルアップ、スキルアップの話題が出まし
た。これまでは量の拡大を志向してきていましたが、質の面での取り組みを皆さん始めましたので、
私どももそちらにきちんと目を向けて、限られた財源の中でどういう事業を今後していくべきかを考
え、全国大会中止の判断をするに至ったということです。
最近、地方財政が大変厳しいこと、地方が疲弊していて大変なことになっているのは重々承知して
います。観光の振興が果たす役割は限られているとは思いますが、より効率のよい、あるいは効果の
上がるようなものにシフトしていかなければいけないということで、この全国大会の見直しにとどま
らず、私ども日本観光協会が行っている事業すべてについて見直しを行っています。
ただ、日本観光協会といたしましては、多様化している活動、多角化している活動についての支援
を今後もしていきたいと思っています。
現在、ボランティア組織の情報を集めて、ホームページなりあるいはほかの手段を通じて消費者の
方々にお届けするようなことをしていますが、そういった仕事は引き続き今後も続けてまいります。
今後はもう少し地域に近い所、より多くの方が参加できる所で、ブロック単位とか県単位で大会のよ
うなものができないのか、皆さま方の組織あるいは県観光協会、地方自治体とも相談しながら、より
多様な機会が確保できるようなことで取り組んでまいりたいと思っています。時代の変化に応じた多
様な対応をしていくということでご理解をいただければと思います。
最後に一つ参考として、これはボランティアガイド活動のみならず、広域連携それから地元の住民
の方々との連携、さらには次代を担う子供たちとの連携は、私ども日本観光協会の事業においても注
- 54 -
力しているところです。
われわれの日本観光協会のミッションは、観光の振興を通じた地域の活性化です。そのためには地
域ぐるみ住民を巻き込んだ取り組みが大変大事だと思っています。そういった点もボランティアガイ
ドの皆さま方の支援の面でも、情報提供等を通じて一緒にやれるところ、あるいは皆さま方が現にや
っている取り組みなどを教えていただきながら、連携しながら進めていきたいと思います。
- 55 -
閉
会
式
主催者挨拶
社団法人日本観光協会常務理事
長嶋 秀孝
皆さま、大変お疲れさまでございました。私どもがこの取り組みを始めた平成7年当時は、まだ、学校
の先生が退職した後に町をご案内したり、郷土史家と言われる方々がこういう活動をしていた、まだまだ
創成期のときだったと思います。大変懐かしく初期のころを思い出します。今後、もっともっとお役に立
つことを考えなければいけないと、皆さま方からの言葉をよく心にたたみこんで持ち帰り、これからの事
業プランを考える上で参考にしたいと思います。
今回の大会に当たっては、地元群馬県、ならびに渋川市に全面的なご協力、ご支援をいただきました。
また、渋川市内と群馬県内の大勢のボランティアガイドの皆さま方に準備段階から積極的にご協力をいた
だきました。今大会の開催にご協力、ご尽力をいただいた多くの関係の皆さま方に改めて感謝を申し上げ
ます。ありがとうございました。おかげをもちまして、今年の大会も最後にはなりましたが、大勢のご参
加を得てここに閉会する運びとなりました。これからは違う形でまた皆さま方にお会いできるように、い
ろいろ考えてまいりたいと思います。
観光は最近いろいろな形でマスメディアをにぎわすようになりました。特に中国人に対するビザが解禁
されたことにより、観光という文字がマスコミに出ない日はないぐらいです。今まで観光は、物見遊山と
か仕事のついでに費やす時間だと言われていましたが、ここに来て地域の活性化、地域を元気にする手立
ての一つと改めてクローズアップされるようになってきました。その中で皆さま方の果たす役割は大変大
きいと思います。その活動を次の世代にもつなぐように、子供たちのボランティアなど、そういった輪を
広げていくよう取り組んでいきたいと思いますので、ご協力をお願いしたいと思います。
最後に、本日大会にご出席いただいた皆さま方のご健勝と今後のご活躍を祈念いたしまして、閉会の挨
拶といたします。ありがとうございました。
- 56 -
閉
会
式
開催地挨拶
社団法人伊香保温泉観光協会会長
大森 隆博
皆さま、大変お疲れさまでした。この会が伊香保の地で開会されることが決まりましてから、伊香保の
観光ガイドの遊友の皆さんと本当に心待ちにいたしておりました。そして、昨日から今日まで参加させて
いただくと、本当に皆さん真剣に地域を愛する心で、帰属意識を持って皆さまにお伝えするのだというこ
とが心からにじみ出て、私どもにも大変これが伝わってまいりました。恐らく、皆さまにおかれましては、
この2日間が実りある日であったのではないかと存じております。
伊香保は首都圏に近い地にあり、52軒の旅館があります。1日の収容能力が8000人ちょっととい
うところで、いろいろな試みをしています。皆さまがお持ちの赤い色と黒い色の紙袋ですが、これは伊香
保の女将さん方、
「お香女会」と言うのですが、その女将さんたちが考えた袋で、割り箸を集めて地域の福
祉施設の皆さんにその割り箸を洗浄していただき、紙にして、この袋になっています。裏側にはもっと使
ってくださいということで封筒の作り方も書いてあります。袋が無理になったら封筒にしてくださいとい
うことです。
そんなことで、
「思い立ったら伊香保温泉」ということで、私どもはまい進しています。昨日市長がお話
しした1000人の石段も、富岡製糸場ともご縁があります。昭和の初期にアメリカ人のカメラマンが撮
った大変な数の工女さんたちが石段街に並んでいる写真を見て、これを再現してみようということで、今
年の8月30日に再現のイベントを行いました。暑い日だったのですが、浴衣姿で約900人の女性に集
まっていただきました。参加した方たちは口々に、「楽しかった」「本当に参加できて良かったです」とお
っしゃっていて、今度、そのときの写真がポスターやカレンダーになります。
そんなことで遠くからお越しいただいた方も、伊香保を初めて訪れた方も、ぜひともこれから「思い立
ったら伊香保温泉」で伊香保のことを思い出していただければ幸いです。本日は誠にありがとうございま
した。
- 57 -
参考資料
資料1 地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会(渋川伊香保)事後アンケート集計
1.今大会までの出席回数をお伺いいたします。
回答
0回
1回
2回
3回
4回
5回
6回
7回
8回
9回
10回
11回
12回
13回
14回
15回
合計
回答数
0
35
13
12
9
5
1
4
0
1
4
1
0
1
1
1
88
割合
0%
40%
15%
14%
10%
6%
1%
5%
0%
1%
5%
1%
0%
1%
1%
1%
100%
出席回数
0回
1回
2回
10回以上
9%
9回
1%
0回
0
3回
8回
0
4回
7回
4%
6回
1%
1回
39%
5回
5回
5%
6回
7回
4回
10%
8回
3回
13%
2回
14%
9回
10回以上
2.今大会についてのご感想をお伺いいたします。
(1)大会全体についての印象はいかがでしたでしょうか。
回答
回答数
割合
良かった
54
61%
悪かった
3
3%
普通
27
30%
再検討すべき
3
3%
その他
0
0%
無回答
2
2%
合計
89
100%
※複数回答あり
大会全体の印象
再検討
すべき
4%
その他
0%
無回答
2%
普通
30%
良かった
悪かった
普通
悪かった
3%
良かった
62%
再検討すべき
その他
無回答
(2)プログラムごとの印象をお伺いいたします。
■基調講演「心を動かす言葉」について
回答
良かった
悪かった
普通
再検討すべき
その他
合計
回答数
52
1
33
2
0
88
割合
59%
1%
38%
2%
0%
100%
基調講演について
再検討
すべき
3%
その他
0%
普通
38%
良かった
悪かった
悪かった
1%
良かった
59%
普通
再検討すべき
その他
- 60 -
■分科会について
回答
良かった
悪かった
普通
再検討すべき
その他
無回答
合計
回答数
37
8
26
8
1
8
88
割合
42%
9%
30%
9%
1%
9%
100%
分科会について
無回答
9%
その他
1%
再検討
すべき
12%
良かった
42%
良かった
悪かった
普通
普通
30%
再検討すべき
悪かった
9%
その他
無回答
■情報交換会について
回答
良かった
悪かった
普通
再検討すべき
その他
無回答
合計
回答数
50
2
28
6
0
4
90
割合
56%
2%
31%
7%
0%
4%
100%
情報交換会について
無回答
その他 4%
0%
再検討
すべき
18%
良かった
普通
31%
良かった
56%
悪かった
普通
再検討すべき
悪かった
2%
※複数回答あり
その他
無回答
■全体会議について
回答
回答数
良かった
49
悪かった
2
普通
18
再検討すべき
6
その他
1
無回答
15
合計
91
※複数回答あり
割合
54%
2%
20%
7%
1%
16%
100%
全体会議について
無回答
16%
その他
1%
再検討
すべき
3%
良かった
54%
良かった
悪かった
普通
20%
悪かった
2%
普通
再検討すべき
その他
無回答
3.今後、ボランティアガイド活動を展開する上で、どのようなことを期待しますか?
・今後もこの様な全国レベルの大会は是非実施して欲しい。
・ますますの技量アップのための研修・情報交流の場をぜひ作っていただきたいものです。
・観光の文化・規模・種類・環境が似かよった同一レベルの地域をグループ化し、それぞれがかかえ
ている課題・問題点など悩んでいる事柄につきテーマ単位に議論し、方向性、問題点を明確にして
レベルアップを計れるようにしたらどうか。
・観光マネージメントへのボランティアガイドの役割が求められています。
- 61 -
資料2
地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会一覧
開催地
開催場所
開催日
参加者
人 数
全体テーマ
平成8年度
神奈川県横浜市 横浜インターコンチネンタルホテル 平成8年10月1日・2日
約400人 魅力ある地域づくりをめざして
平成9年度
滋賀県長浜市
平成9年11月11日・12日
約500人 さらなる発展を目指して
平成10年度 福岡県北九州市 北九州国際会議場
平成10年11月12日・13日
約450人
平成11年度 青森県弘前市
ホテルニューキャッスル(弘前)
平成11年10月21日・22日
心あたたまるボランティアガイドをめざ
約500人 して
~気持ちコ 暖まる旅を~
平成12年度 岡山県倉敷市
倉敷市芸文館
平成12年11月30日・12月1日
もっと優しく、もっと素敵に
約800人 21世紀の観光ボランティアガイド活
動を考える
平成13年度 岐阜県下呂町
水明館
平成13年11月29日・30日
約830人
平成14年度 大分県別府市
ビーコンプラザ
平成14年10月31日・11月1日
約700人 出会い・触れ合い・観光交流
平成15年度 静岡県熱海市
ニューフジヤホテル
平成15年10月21日・22日
820人
自然とのふれあい 人との交流
平成16年度 愛知県豊橋市
ホテル日航豊橋
平成16年9月2日・3日
840人
「おもてなしの心」あふれる地域づくり
平成17年度 北海道旭川市
旭川グランドホテル
平成17年9月6日・7日
550人
知りえた知識・活かそう郷土の活動に
平成18年度 長崎県長崎市
ホテルニュー長崎
平成18年10月18日・19日
800人
まち活かし・ひと活かし
~地域が育む観光~
平成19年度 石川県金沢市
金沢全日空ホテル
平成19年11月21日・22日
950人
おもてなしの心からはじまる魅力再発
見
平成20年度 和歌山県田辺市
田辺会場(紀南文化会館、ガーデ
ンホテルハナヨ)、龍神会場(季楽
里龍神)、本宮会場(川湯みどり
や、本宮行政局)
平成20年11月20日・21日
800人
癒し 満たし ようおこし
平成21年度 奈良県奈良市
奈良県文化会館、ならまちセンタ
ー、興福寺会館、ホテルサンルー
ト奈良、ホテル日航奈良
平成21年11月19日・20日
1030人
平成22年度 群馬県渋川市
開会式・基調講演:渋川市民会館
/分科会:渋川市民会館・ホテル
平成22年11月17日・18日
天坊・如心の里ひびき野/情報交
換会:ホテル天坊
長浜ロイヤルホテル
- 62 -
700人
今、観光ボランティアガイドに期待さ
れるもの
出会い・ふれあい・人間ネットワーク
-地域を支えるボランティア活動-
話そう 語ろう 伝えよう
~わが町、わがふるさと~
おもてなしの心と言葉で伝えよう
~地域の魅力 彩発見~
地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会(渋川伊香保)
おもてなしの心と言葉で伝えよう~地域の魅力 彩発見~
報告書
発
行
平成 23 年 3 月
社団法人 日本観光協会
〒104-0033 東京都中央区新川 1-6-1 アステール茅場町 4 階
TEL 03-6222-2534
FAX 03-6222-2539
社団法人 日本観光協会 2011 無断掲載禁止
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