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ギリシャに対してのリスケジューリング

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ギリシャに対してのリスケジューリング
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
ISFJ2010
2010
政策フォーラム発表論文
ギリシャに対してのリスケジュー
リング1
世界経済復活のために
慶應義塾大学 竹森俊平研究会 金融分科会
金融分科会
岩岡迪弘 王眉舒 大山智草子
岡村彩加 谷香実 林貴美子
光冨悠 室橋祐貴 森田大貴 山根千波
2010
2010年12月
10年12月
1 本稿は、2010年12月11日、12日に開催される、ISFJ日本政策学生会議「政策フォーラム2010」の
ために作成したものである。本稿の作成にあたっては、竹森俊平教授(慶應義塾大学)をはじめ、多くの方々から有
益且つ熱心なコメントを頂戴した。ここに記して感謝の意を表したい。しかしながら、本稿にあり得る誤り、主張の
一切の責任はいうまでもなく筆者たち個人に帰するものである。
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
ISFJ2010
2010
政策フォーラム発表論文
ギリシャに対してのリスケジュー
リング
世界経済復活のために
2010
2010年12月
10年12月
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
要約
本稿では、日本政府が国際舞台においてギリシャに対してリスケジューリング提案するよう提
言する。日本経済は 1990 年代のバブル崩壊をうけ、
「失われた 20 年」ともいわれる不況に陥っ
ていたが、現在ではリーマンブラザーズの倒産に端を発した世界同時不況、ギリシャのソブリン
危機とここ数年で大きなショックを二度も味わった。日本経済は激動の世界情勢に翻弄され、未
だ停滞を続けている。
ではなぜ日本経済は低迷しているのであろうか?それはもちろん企業の国際競争力低下もあ
るが、他国からの影響が大きいものと考えられる。それは日本経済が外需であるためである。
現在、アメリカやユーロ圏などの先進国は金融危機による影響から抜け出せずにいるため、そ
の影響を受けて日本の通貨である円は相対的に強くなっている。輸出依存の日本にとって円高は
成長を妨げるため鈍化していると考えられる。さらに、このままの為替水準が続けば輸出が伸び
悩む上に産業の海外逃避が進み、その結果国内産業の空洞化がより一層深刻さを増す事になる。
そのため、日本経済を立て直すには貿易相手国も復活する必要があるのである。
そこで、本稿では問題解決の糸口として、IMF を通して、ギリシャに対し債務条件変更を提
案する。なぜなら、ギリシャが再び危機に陥った場合、それはさらなるユーロの信用不安を引き
起こし、日本経済への影響も甚大だからである。ではなぜ IMF に提言するのであろうか?
IMF は今回のギリシャ危機に債権者として深く関わっており、日本はアメリカに次いで 2 番
目に出資しているため、発言権を持っているからである。そして、IMF が債務条件を変更し、
適切な政策を執ることができれば、ギリシャ危機の解決に繋がる。また再びギリシャが危機に陥
った場合、①再びソブリンリスクの上昇がPIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、
ギリシャ、スペイン)にも波及し、②それらのリスクが上昇した国債を大量に保有するドイツや
フランスといった健全国のバランスシートをも悪化させ、ユーロ全体へと波及する。それはつま
り、日本経済にも影響を与えるため、ギリシャ危機を防ぐことは日本経済にもメリットとなる。
そこで、第 2 章では現在ギリシャの債務に関わっている IMF が、実際に危機の回避に関わっ
た例としてアルゼンチン危機を取り上げ、IMF によるリスケジューリングと緊縮財政の効果を
分析する。
第 3 章では、①緊縮財政、②救済システム、③銀行危機という3つの柱が抱える問題点を通し
て、危機に対する現行の政策の矛盾点を分析する。さらに、ユーロ圏において、一度経済の低迷
した国が復活することが可能なのかを、ユーロの構造を中心に見ていく。
そして、緊縮財政については、アイルランドを例に挙げ、財政再建の為の緊縮財政でありなが
ら、それがいかに経済成長を妨げているかを見てみたい。
さらにIMFやEFSFによる救済システムも、結局は債務国に緊縮財政を求めており、EF
SFの本来の目的である財政・金融安定化という根本的な問題解決には繋がらないということを
確認する。
現在、EFSF に関してドイツとECB総裁が対立しているが、ドイツが EFSF の恒久化を主
張する背景には、財政放漫国の危機の度に大幅な支援を求められるという可能性を排除する意図
がある。しかし、自国の銀行が放漫国の国債を膨大に抱えているにも関わらず、ドイツ政府は銀
行セクターの救済のための大幅な財政支出は、財政健全化という自国の掲げる目標にそぐわない
としている。つまり、自国の財政健全化を図ることが逆説的に銀行危機を招き兼ねないという矛
盾をドイツは抱えている。以上のように、現行の緊縮財政、救済システムはどちらも欠陥がある
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
ため、再びギリシャ危機が起こり、ユーロ不安を引き起こしかねない。そのため、ギリシャのデ
フォルトを避ける為には、債務条件の変更は必須の政策である。日本政府はIMFを通してギリ
シャに対する発言の余地がある為、債務繰り延べを提言し、ギリシャに緊縮財政という形ではな
く、経済成長による財政再建を実現させる為の猶予を与えるべきである。
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
目次
はじめに
第1章 現状分析と問題意識
第 1 節 世界と日本経済の危機
第 2 節 危機の連鎖
第2章 先行研究と本稿の位置づけ
第 1 節 IMF の事例~アルゼンチン~の緊縮財政
第 2 節 リスケジューリング
第3章 現在のユーロ圏内のシステムに対する分析
第1節
第2節
第3節
第4節
構造上の矛盾
緊縮財政
救済システム
銀行セクターの不安
第4章 政策提言
第1節
第2節
第3節
第4節
政策提言
リスケジューリングがもたらす効果
政策提言における課題
政策提言実現にむけて
先行論文・参考文献・データ出典
先行論文・参考文献・データ出典
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
はじめに
現在、様々なところで「世界のフラット化」が叫ばれている。20 世紀までは産業構造を
発展させた国々が、自国の資源を確保するために航海へと乗り出し、植民地を確保していっ
た。その結果、産業の遅れていた国々は、資源も人材も搾取され続け、
「支配」されるよう
になった。そうした中で、自国の生活、権利を守ろうと反乱を起こし、ある国は権利を奪い
返し、またある国は敗戦し、さらなる仕打ちをうける状態へと移っていき、次第に先進国同
士でもさらなる植民地を得ようと、戦争を繰り返すようになった。そのような紛争が数多く
勃発した 20 世紀も第二次世界大戦の終焉とともに、落ち着いたかと思えた。
しかし、さらなる自国権益に固執する大国は冷戦へと続き、そのような権力抗争の歪みか
ら中東アジアにおけるテロリスト集団、紛争地が新たに生まれるようになった。さらに、
21 世紀になる頃にはそのような先進国の自国権益の為だけの資源の搾取が地球温暖化など
の環境問題を引き起こした、と注目されるようになった。また、金融バブルの勃発、通貨危
機などの不祥事が起こり、
そのように自国権益だけを求めるのをよしとしない意見が多く見
られるようになっていった。
一方、完全に発展した先進国のマーケットよりも人口の急増し、成長の見込みの大きい発
展途上国のマーケットが注目されるようになった。その中でも特に中国の台頭は著しく、約
12 億人いるといわれるその巨大市場は年10%以上で成長し、各国のグローバル企業は
次々に進出していった。そのように、インターネットなどの IT 化により急成長を遂げる新
興国が誕生していく中で、マネーの動きも活発となっていった。特に投機的収益を求めるヘ
ッジファンドは、共通通貨である、ドルに対して固定相場をとる新興国の貨幣に対して空売
りという攻撃を浴びせることによって貨幣価値を暴落させ、
そこで莫大な収益を得ようと考
えた。その結果、アジア通貨危機、ロシア危機、ポンド危機といった通貨危機が起こり、各
国は固定相場制をやめるようになった。
その教訓から、経済の弱い国々は自国の通貨を急激に売り浴びせられるのを恐れ、
“強い”
貨幣を持とうと考えるようになった。実際、エクアドルは自国通貨をドルに変えた。そのよ
うな流れの中で、
ヨーロッパの最強通貨であったマルクに対してもペッグ制のみならず、
“共
通通貨”にしようという流れが現実的なものとなった。そうしてできた共通通貨“ユーロ”
はドルに対しても為替レートで負けない巨大通貨となった。しかし、共通通貨を採用した結
果、金融政策が統一されたことにより、新興国が危機の度に通貨の切り下げによって成長す
ることに成功していた政策がとれなくなってしまった。そのため、財政政策でしか各国は対
応策がとれず、現在のように緊縮財政を行う状態に陥っている。
だが、将来世界中の国々をフラット化し、再び危機を引き起こさないためには、共通通貨
は欠かせないものであり、この強大な実験は成功させなければならない。さらに、共通通貨
を使っているがために、ギリシャ一国の危機がユーロ全体の不安へとつながっており、それ
がさらに世界中へと波及する。そのため、この連鎖を止めるためにはギリシャ、そして
PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)を立て直さなければ
ならない。だが、現在は緊縮財政での成果が出ておらず、デフォルトする可能性も高いため、
すぐに対処しなければならないが、優れた制度は簡単には作れない。
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
そこで、本稿ではその一時的な救済措置としてリスケジューリングを提言する。また、そ
の間に銀行への資金注入などの措置も提言する。
これを現在国際的立場が弱まっている日本
が発言することにより、
これからのアジアでの共通通貨をリードする立場をアピールできる
とも考えている。
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
第 1 章 現状分析と問題意識
第1節
第1節世界と日本経済の危機
現在世界各国が直面している経済危機は、2008 年 9 月に起きたリーマンショックに端を
発した。サブプライム問題が米国の大手証券会社リーマンブラザーズの破綻を招き、それに
よる金融機関の信用低下、投資家のリスクに対する警戒心の上昇が、他の金融機関の相次ぐ
破綻へと繋がったのだ。危機は金融機関のみならず、一国の経済にも波及し、経済大国であ
るアメリカ経済ですら二番底化が懸念されている。
現在のユーロ安がギリシャ危機によって
招かれたのも例外ではない。
リーマンショックによって投資家がリスク回避型に移行しつつ
ある中、2009 年度には財政赤字のGDP比を 3.7%から 12.5%に大幅に上方修正したこと
が投資家のリスクに対する警戒心をより一層高めたからだ。
日本も例外ではなく、①円高、②世界経済の二番底化という二つの要因により景気が悪化
している。日本はそもそも輸出品に依存する経済構造にあり、このままの為替水準が続けば
輸出が伸び悩む上に産業の海外逃避が進み、
国内産業の空洞化がより一層深刻さを増す事に
なる。下記の図から、円高によって受ける輸出産業の業績への影響が大きい事が分かる。
円高がもたらす企業業績への影響度
※円高がもたらす企業業績への影響度は、
1 ドル 95 円、
1 ユーロ 135 円の為替前提から、
2009
年度第 2 四半期以降各 5 円円高で推移した場合に、2009 年度及び 2010 年度の経常利益の合
計がどれだけ影響を受けるかを示している。
(出所)大和証券 SMBC より大和証券作成
円高は輸出企業にとって不利であるにも関わらず、比較的安全であると円買いが進み、依
然円高という危機から抜け出せないでいる。即ち、現在の円高は、日本経済の実力を反映し
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
たものではなく、ドル、ユーロに対する信用力低下による相対的な円の強さによるものなの
だ。つまり、問題解決にはドル、ユーロが信用を取り戻す事が必要不可欠である。円高のみ
ならず、世界経済の二番底化も日本経済に悪影響を与えうる懸念材料である。円の為替レー
トや株価がアメリカの株価や景況感等に比例して影響を受けているように、
日本経済は他国
の経済状況に左右されやすく、このまま世界経済が危機から回復せずに更なる不況に陥れ
ば、日本も同じような道を辿ることは避けられないであろう。
(出所:The Discipline Investor、記事「PIGS: CDS Pricing Shows the Default Risk Clearly」、2010年2月26日 )
第2節 危機の連鎖
では、日本が現在の危機から抜け出す術はあるのだろうか。アメリカと中国は両国共世界
経済を牽引する経済大国であり、
アメリカとギリシャに関しては危機を招いた当事者である
ように、三国とも日本経済に多大なる影響を与える要素を持ち合わせている。それら 3 カ国
の内、ギリシャ(EU)に日本から提言し、現状の問題解決を図るのが最も効果的であると考
える。なぜなら、ギリシャは債務国であり、援助も受けているため、債権者即ちユーロ圏各
国、そして日本が発言権を持つ IMF からの発言を受ける義務があるからである。
ギリシャを救済すべきなのは、ギリシャ危機が 2 つの方法で他国へと波及するからであ
る。1 つ目は、ギリシャ危機によるソブリンリスクの上昇が他国の信用低下にも繋がる点に
ある。
ギリシャ危機により一層リスクに対する警戒心が強まったことからソブリンリスクは
上昇し、ギリシャに限らず、ギリシャと同じような財政状況にある PIIGS(ポルトガル、ア
イルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)の信用も共に低下した。
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
下記の図からも見られるように、ギリシャ危機後、ギリシャの CDS の上昇と共に他の PIIGS
の国もギリシャの CDS と同じように推移しており、
ギリシャの信用低下が似たような財政状
況にある国にも同じく影響を与えていることが分かる。
2 つ目は、ギリシャの国債を他のユーロ加盟国の銀行が大量に保有しているため、ギリシ
ャがデフォルトをすればそれらの国債が価値の持たない紙切れとなり、
他国の銀行にも影響
を与えてしまうからである。ここで、信用低下を図る要素として国債に注目したい。一国の
国債の金利を見る事で、その国に対する信頼度を図ることができる。国の信用度が高いほど
返済される可能性が高いため、需要が多く、価格が上がる分金利が低下し、一方で国の信用
度が低いほど返済される可能性が低くなるため、需要が比較的少なく、価格が下がる分金利
が上昇する。即ち、信用度の低い国の国債を保有すると価格は下がり、返済されないリスク
もついてくるのだ。ここで問題となるのが、ドイツやフランス等の健全国と呼ばれる国の銀
行、金融機関が PIIGS の国債を大量に保有している事実である。
下記の図から、
ドイツやフランスが他国に比べて多くの PIIGS の国債を保有していることが
分かる。
大量に保有していた国債の価値は、ギリシャ危機により下がり続け、不良債権となるリス
クの高さからそれらの国債を売却できない為、銀行は膨大な不良債権を抱えることになる。
下記のグラフにもあるように、ギリシャ危機以降、ギリシャの国債の利回りが上昇、即ち、
ギリシャ国債の価値が大幅に低下していることが分かる。
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
)
週刊ダイヤモンドオンライン、2010年5月17日「ギリシャ危機・ユーロ危機噴出 100兆円支援措置でもくすぶる火種」
その為、ギリシャ危機は PIIGS のような財政状況の悪い国に波及し、それらの国の国債を
大量に保有するフランスやドイツ等の健全国にも危機が飛び火した。
このままフランスやド
イツの銀行が多量の不良債権を抱え、
健全国の金融機関も破綻するのではないかという懸念
が広がれば更なるユーロ圏の信用低下、ユーロ安に繋がりかねない為、フランスやドイツ政
府は自国の銀行や金融機関の透明性を示すことで信頼回復を図ろうと、
ストレステストを実
施した。ストレステストにより各銀行の抱える国債等の損失(エクスポージャー)の額は明
るみになったものの、ストレステストの信憑性は薄く、依然ユーロに対する信用回復には至
ってない。
即ち、ギリシャと他のユーロ加盟国は、ギリシャ国債保有という形で繋がっている為、ギ
リシャがデフォルトに陥れば、その危機が他のユーロ加盟国にも波及してしまうことにな
る。ギリシャ危機がユーロ全体の危機へと繋がれば、世界経済へ与える影響は多大であり、
外部経済に影響を受けやすい日本へも危機が飛び火することは避けられない。その為、日本
からすれば、ギリシャを救済し、危機の波及を防ぐ必要がある。
現状、ギリシャのデフォルトを回避するために、IMF と他のユーロ加盟国が協力して、ギリ
シャに資金援助をしている。しかし、この援助は 3 年という短い満期を条件としており、累
積債務残高が非常に高いギリシャは、この期間中に経済成長を続け、満期内に援助金を全額
返済することは困難である。その為、IMF が返済条件を変えない限り、ギリシャのデフォル
トは避けられない。
日本は IMF への出資率がアメリカに次いで高い為、発言力を持っており、IMF の返済条件
の変更を実現させる力がある。
さらに、
この金融危機から未だに抜け出せていないアメリカ、
ユーロ圏の国々にとっても、ギリシャがデフォルトすることは多大な損失に繋がるため、債
務繰り延べはメリットにつながると考えられる。そのため、IMF の議決権である 85%の賛成
票を得ることができると考えられる。よって、本稿では返済条件の変更(リスケジューリン
グ)を IMF に提言したい。
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第2章 先行研究と本稿の位置づけ
第1節 IMF の事例~
の事例~アルゼンチン~
アルゼンチン~
IMF が過去にリスケジューリングを行った例があるのか、そもそも IMF にその権限と意思
があるのか。また、リスケジューリングを行うに当たっての条件は何なのか。アルゼンチン
の経済危機を例に検証してみたい。
1990 年代前半のアルゼンチンは 1 ドル=1 ペソという固定相場制で高い経済成長を実現し
ていた。固定相場制と合わせて経済の自由化政策を執る事で、海外からの投資を呼び込み、
90 年代前半には年率 8%近い高度経済成長を成し遂げた。
順風満帆かに思えたアルゼンチン
経済だが、アジア通貨危機によって状況は一変する。アジア通貨危機はその後ロシアに飛び
火し、99 年には隣国のブラジルを襲った。ブラジルも 1 ドル=1 レアルの固定相場制であっ
たが、自由度の高いベック方式であったため、大幅な通貨切り下げという政策で輸出を伸ば
し経済の再建を図った。
アルゼンチンは厳密な固定相場制であるため投機筋からの攻撃には
強い、つまり通貨危機に陥りにくいという特徴を持っていたが、逆にこの制度が周辺国の通
貨危機後にアルゼンチン経済を苦しめる事となる。
アルゼンチンの厳密な固定相場制の下で
は通貨切り下げができず、
通貨切り下げを断行した国の輸出品に対してドル換算でアルゼン
チンの輸出品が割高になってしまう。
その為輸出が伸びず、
不況に陥ってしまったのである。
94 年にはメキシコが通貨危機によって通貨切り下げを断行しており、アルゼンチンの置
かれた状況はより一層深刻なものとなっていった。ここで、固定相場制を解除するという選
択肢について少し議論しておきたい。
不況に陥ったアルゼンチンにおいて固定相場制を破棄
するという選択肢はなかったのか。変動相場制に移行し、通貨切り下げを行う事で輸出を伸
ばして経済を立て直すという選択はできなかったのか。残念ながらそれは不可能に近い。な
ぜなら住宅ローンや自動車ローンなど、国民が借りているお金の 80%はドル建てで、この
段階で通貨切り下げを行えばその分国民のローン残高が跳ね上がる事になるからだ。更に、
アメリカを中心とする海外からの投資は、基本的に 1 ドル=1 ペソの前提の下に行われてい
たため、変動相場制への移行には IMF やアメリカからの反発が大きかった。つまり、アルゼ
ンチンは固定相場制を維持しながら不況から抜け出す政策を考えなければならなかったの
である。不況に対する有効打がうてないまま、アルゼンチンの経済は悪化し、2001 年には
-11%まで落ち込んでしまう。IMF はクリントン政権の意向を受けて、固定相場制を維持で
きるように融資を繰り返していたが、2001 年に予定されていた 27 億ドルの融資の条件とし
てプライマリーバランスの均衡を要求してきた。
政府はこの条件を満たすために大幅な歳出
削減に踏み切った。しかし、すでに酷い不況下にあったアルゼンチン国内においてこの削減
は経済状況をより悪化させる要因となってしまった。
この状況をワシントンポストでは以下
のように記している。
「IMF の基準を受入れることは、すでに 4 分の 1 が失業している状態のなかで、少なくと
も 35 万人の政府の雇用を削減しなければならないということを意味している。
」
融資を是が非でも受けたいアルゼンチンと厳しい条件を提示する IMF という構図はその後
も続く。その構図が顕著に表れていたのが 2002 年である。アルゼンチンは 2002 年の 8 月ま
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でに償還期間を迎える IMF 債務に対しては IMF から約 30 億ドルのスタンバイ(包括的信用
枠)の合意を取り付けその返済に充ててきた。しかし、9 月以降に返済期限を迎える IMF 債
務についての交渉が難航していた。IMF が要求する財政規律の回復、金融システムの健全化、
公共料金の引き上げ、
経済活動促進のための法的整備などの改革に進展がみられなかったか
らだ。しかし、アルゼンチンは直前になって金融システムの健全化と中央銀行の権限拡大に
関する 2 法案を成立させ、IMF からの融資を取り付ける事に成功している。一方、対民間債
務においてはデフォルトに陥った 770 億ドルに対し、
金利減免や大幅な元本削減を含む債務
再編案を IMF・世界銀行の年次総会で発表している。この再編案には日本で発行された 1915
億円の円建て債(サムライ債)も含まれている。
以上の例からわかるように、IMF は過去において債務のリスケジューリングに応じる事は
あったが、条件として非常に厳しい緊縮財政を債務国に強いる傾向にある。さらに IMF の重
要政策は 187 カ国の 85%以上の賛成が必要であり、
米国の投票権は 16.7%であることから、
アメリカが実質的な拒否権を持っており、IMF の政策決定にはアメリカの政治的意図が色濃
く見られる。また今回のアイルランドの財政危機からもわかるように、極端な緊縮財政は国
内の経済を破壊し、より深刻な経済不況を招く可能性がある。
アルゼンチンの経済危機においては、固定相場制である事、極端な緊縮財政を強いられた
事など、今回のギリシャ危機、ユーロ安との類似点が多く見られる。今回の論文を通じて
IMF の過去の振る舞いを明らかにし、ギリシャ危機への対応を考えていく。その上で日本政
府としてリスケジューリングも含めたどのような政策提言を行えるのか、
またどのような政
策を提言すべきなのかを考えていく。
第2節 リスケジューリングの事例
ここではデフォルトに陥った場合と、リスケジューリングをした場合について考察する。
しかし、デフォルトとリスケジューリングは切り離せない場合が多く(しばしばデフォルト
を前提としてリスケジューリングが行われるケースがある)
デフォルト前からリスケジュー
リングを行っていた例と、デフォルトし、その後リスケジューリングを行った場合の二つに
分けて考察を行いたい。
1990 年代後半以降で国家がデフォルトした事例は以下の図のとおりである。
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この図のデフォルトの形態という部分に注目したい。
自発的というのはデフォルト時のリ
スケジューリングが、デフォルト前から債権者との交渉に入り、ある程度債権国の意向が反
映されるものである。それに対し、債権国の意向が反映される余地がなくデフォルトに陥っ
たものを非自発的とここでは表記している。
つまりこの章ではじめに二つに分けた前者が自
発的で、後者が非自発的である。以降、この章では自発的、非自発的という呼び方に統一し
たい。
自発的なデフォルトのうち、ペルー・ウルグアイに焦点をあてる。この二国においてデフ
ォルト前後の経済はどのような状態だったのだろうか。デフォルト前後のGDPの推移をみる
とV字回復を見せており、回復傾向にある。なぜこのような回復が見られたかというと、デ
フォルト前は財政懸念等の信用不安による金利上昇、
さらにS&Pやフィッチなどの格付け会
社による国債格下げにより金利が上昇する。
そのため民間への融資が行われにくくなるクラ
ウディング・アウトが発生し流動性は低くなる。当然、消費や投資活動も落ち込み、歳入も
見込めないため政府は緊縮財政をとらざるを得なくなる。
緊縮財政はしばしば公共事業や公
務員給与の削減をともなうため、結果、国内経済が冷え込む、という悪循環に陥る。
しかしデフォルト後には、自発国ゆえのリスケジューリングにより、自国(債務国)に配
慮された返済スケジュール(繰り延べ)となる、あるいは債務の一部減免措置がとられるた
め回復するとみられる。
では非自発的デフォルトの場合はどのようになるのだろうか。
非自発的デフォルトの国の
例としては、ロシア・エクアドル・アルゼンチンがあげられる。上図によると、ロシア、ア
ルゼンチンともに GDP がデフォルト前と比較して上昇している。
デフォルトが自発的なもの
でも、非自発的なものでも関係ないのだろうか。
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ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
上図はデフォルトが発生した月を 0 としてみた為替レートの推移のグラフである。
ここに
自発的デフォルト(前もってリスケジューリングされた場合)と非自発的デフォルトの違い
が顕著に表れている。自発的デフォルトである、ペルー・ウルグアイの場合、為替レートは
デフォルト前後で安定している。しかし、非自発的デフォルトである、エクアドルやロシア、
アルゼンチンの場合はデフォルト後為替レートが急暴落している。
通貨の急落はインフレを
招きかねないし、デフォルトまで緊縮財政をとっていた国が通貨安になり、インフレとなれ
ば、ハイパーインフレにまで発展しかねない。アルゼンチンがデフォルトした際には、投資
家がアルゼンチンから逃げ、それがロシアやトルコ、アジア諸国というエマージングマーケ
ットそのものへの不安へと拡大し、
エマージングマーケット市場価格がさらに暴落する可能
性も含んでいた。また、どこかの市場価格が下がっているということは、そこから逃げた投
資家たちが別の市場の債権等を購入していると言える。これはまさに現在、日本円、ユーロ、
ドルの間で発生している問題である。
現在の円高は輸出産業を中心に日本の産業自体を圧迫
しており、日本の国益を考えても非自発的デフォルト(リスケジューリングを行わない)は
現実的な策とは言い難い。
また、非自発的デフォルトによるデメリットはもう1点ある。それは景気の二番底を招き
かねないということである。リスケジューリングがされていない、ないしはリスケジューリ
ングがされていてもそれが債務国の意向が反映されていないものであるならば、
世界経済に
は、常に二番底の不安が付きまとう。2009 年末に起こったギリシャ危機を例に取り上げて
みる。IMF は EU と協力してギリシャに対して 3 年間で 300 億ユーロの支援を決定した。1市
場のこの措置に対する反応は冷ややかで、償還期限のくる 2012 年にはまたギリシャがデフ
ォルトするのではないかという見方を示した。ギリシャ問題は依然として解決しておらず、
世界経済は二番底に対する不安をいまだぬぐえずにいる。
以上の理由からデフォルト以前からリスケジューリングをすることを支持する。
1
IMF プレスリリース No.10/187
2010 年 5 月 9 日
16
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
第3章 現在のユーロ圏内のシステムに
対する分析
第1節 構造上の矛盾
それではユーロの構造上の問題を細かく見ていく。
昔からヨーロッパ内では紛争が多く発生していたため、平和を求める声が上がっていた。
そのため、その平和の象徴を目的に、政治的統合が必要だと考えられた。しかしヨーロッパ
の各国は歴史や言語、そして文化も違うため、いきなりの政治的統合は難しかった。
そこで、ヨーロッパ圏の連携を強化するために、まずは通貨を統合し、金融政策を統一し
ようとユーロという通貨を人為的に造幣した。そして、ユーロ圏の金融政策を統治するため
に ECB という欧州中央銀行を設立した。
しかし、それぞれ違う国々の金融政策を統一した場合、インフレーションに陥る可能性が
ある。なぜなら、財政が健全な国と悪い国に対して共通の金融政策を実施する際には、悪い
国をさらに悪化させないために買いオペレーションやマネーサプライなどの拡大財政政策
を行うため、健全国の市場においては、マネーが過剰に出回り大幅な通貨安になるので、そ
の結果インフレが起きてしまう。
一方、怠慢国からしても、本来なら価値が大幅に下がりハイパーインフレの懸念が起きる
が、健全国の信頼があるので過剰に価値が下がることはない。すると本来ならハイパーイン
フレが起きるが、
実際には起こらないため財政状態が悪化した状態を甘受してしまうという
モラルハザードが発生してしまう恐れがある。その結果、金融政策の目的である物価安定が
難しくなる。
そこでこのような懸念をなくすために、
放漫国が連合内に入らないような基準が必要とな
り、マーストリヒト条約が作られた。このとき財政赤字を3%以内、インフレ率を 1.5%以
内、長期金利を 2%以内という設定が決められた。一時的な処置としてドイツのテレコムの
売却やルフトハンザの民営化が行ったにも関わらず、
ルクセンブルグ以外これらの基準を満
たすことができなかった。さらにドイツは東西統合時に健全国と放漫国に分かれており、両
国が統一した結果ハイパーインフレに陥った経験から、物価安定に固執している。そうした
状況でも放漫国を外すため、安定成長協定で基準をさらに強調した。しかし、ユーロに参加
したどの国々もこの基準を満たすことができず、
その結果、
制約条件が形骸化してしまった。
そして放漫国であるギリシャが基準を満たさないままユーロに加盟し、
ユーロ圏に健全国
と怠慢国が同時に存在する形となってしまった。また、金融政策を統一したことにより、一
つ一つの国に合わせた通貨の切り下げなどの金融政策を行うことが出来なくなってしまっ
た。そのため、財政が悪化した国が個別に執ることが出来る選択肢は財政政策のみになって
しまった。
そこで、財政が悪化した国は財政を健全化するために緊縮財政を行うしかないが、その緊
縮財政がさらに財政を悪化させるという矛盾に陥ってしまっている。実際、ギリシャはデフ
17
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
ォルトの危機に陥っており、2010 年 8 月時においてのユーロ各国の財政赤字の平均も7%、
公的債務残高は 80%にも及ぶ。
そこで次からはギリシャがデフォルトに陥る過程を説明する。
2010 年初めにギリシャで政権交代が起き、その結果隠蔽していた財政赤字を表面化させ、
5.1%から 12.7%へと増加した。その当時ドバイにおけるソブリン危機でマーケットが財政
赤字に敏感だったこともあり、その影響を受けてソブリンリスクが高まり、リスクプレミア
ムが高まった。その結果、ギリシャの国債に対する需要が減り金利が上昇すなわち国債価格
が下落し、ギリシャの国債を抱える銀行のバランスシートが悪化した。さらに、デフォルト
の危機が高まるとともに格付け機関によるギリシャ国債の格下げが起こり、
その保障コスト
である CDS スプレッドが上昇した。するとさらにバランスシートは悪化し、デフォルトする
かもしれないという可能性が上昇するスパイラルが繰り返されていく。また、マーケットが
財政赤字にさらに過敏になったため、ヨーロッパの他の国々、特に財政赤字に対して懸念を
抱えていた PIIGS にソブリンリスクが波及した。それがユーロ不安を呼び起こし、さらにリ
スクが上昇するというスパイラルに陥っている。
しかし、そもそも、なぜギリシャの財政は悪化したのだろうか。2000 年において 3.7%だ
った財政赤字は 2008 年に 7.7%に上昇、
そして 2009 年には 12.7%となった。
財政赤字とは、
歳出が歳入を上回っている状態であり、
成長率の低下によって税収が減ると歳入が少なくな
り、その成長を促すために拡大財政政策を行うと歳出が増えていく。
ギリシャの場合、2000 年から 2008 年までは、為替リスクがないユーロの恩恵を受け、資
金が集まり、年平均4%で成長していたが、2009 年から一気に成長率がマイナス 2%と低下
したため、財政赤字を拡大してしまった。その理由として、低い輸出競争力、つまり賃金上
昇率が生産性を超えている状態、であったこと、ユーロがギリシャの国力に対して割高であ
り、輸入を増加させたことで経常収支が悪化したことが挙げられる。
また、成長を促していた資本がユーロ圏の銀行や政府などの外国資本だったため、リスク
の上昇が懸念されて資本が流出した。
さらにギリシャの主要産業は観光業など外的影響を受
けやすい産業であったため、世界同時不況を受け成長が鈍化した。
そして輸出競争力を伸ばすためには通貨の切り下げや労働力のコスト削減などを行う必
要があるが、金融政策が統一しているユーロ圏では通貨の切り下げが出来ない。そのため、
緊縮財政しか残された選択肢がないが、下記で説明するように、緊縮財政はその国の経済の
規模を縮小させ、成長を妨げる可能性が高い。
結果として、一度成長が落ち込んだ国が再び成長できるような構造にはなっておらず、低
迷したままになると考えられるため、
今回のギリシャ危機のように財政が悪化した国に対し
ては IMF やユーロ圏の国々からの援助という処置でしか、
対処することができない構造とな
っている。しかし、このような一方的な関係は永久には続かず、限界があると考えられる。
18
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
こうした状況のなかで、本当にギリシャはデフォルトするのだろうか。そしてヨーロッパ
の他の国へはどう影響するのだろうか。まず、デフォルトの条件としてプライマリーバラン
スの均衡が必要である。下表で示しているように、ギリシャは IMF と EU から援助の条件と
して 2012 年までに財政赤字を 3%以下にするように言われ、緊縮財政を実施しているが、
それは経済の規模を縮小させるため、
結果として 2013 年に債務残高は 150%近くまで上昇し、
成長率も著しく低下すると予想されている。
そして、今回の援助の債務の満期である 2012 年に返済するのは困難であると考えられて
おり、デフォルトすると考えられる。
greece date
revenue
expenditure(except for interest payment)
measure(annual)
measure(total)
primary balance
interest payment
fiscal deficit
accumulated debt
real growth rate
current account deficit
foreign accumulated debt
unemployment rate
rising consumer price index rate
2009
36.9
45.4
2010
40
44.9
2.5
2.5
-2.4
5.6
-8.1
133.2
-4
-8.4
92.7
11.8
1.9
-8.6
5
-13.6
115.1
-2
-11.2
83.4
9.4
1.3
2011
39
46.6
4.1
6.7
-0.9
6.6
-7.6
145.2
-2.6
-7.1
101.5
14.6
-6.4
2012
38.5
46.5
2.4
9
1
7.5
-6.5
148.7
1.1
-5.6
103.1
14.8
1.2
2013
38.2
46
2
11
3.1
8.1
-4.9
149.2
2.1
-4
102.2
14.3
0.7
2014
37.2
43.9
1.9
12.6
5.9
8.4
-2.6
146.1
2.1
-2.8
99.7
14.1
0.9
2015
36.3
42.5
0
12.2
6
8.1
-2
140.4
2.7
-1.9
95.8
13.4
1
第2節 緊縮財政
まず、放漫国はなぜ現在緊縮財政を迫られているのか。
第一に、ユーロの存続という問題である。財政の健全性はユーロ創設時からユーロの信用
力と常にリンクしてきた。
財政不健全国の存在が明るみに出るという事はユーロに対する信
頼が揺らぐ事を意味し、
更に財政放漫国を放置するようではマーケットのユーロに対する信
頼は失われ、マーケットでのユーロ圏各国の国債消化は難しくなる。そうなればユーロの存
在意義自体の懐疑論に発展しかねない。
ユーロが加盟国の信頼を補間する存在ではないと分
かれば、共通通貨としての存在意義を見失いかねないのである。そのような事態は何として
も避けなければならない。緊縮財政は、ユーロの規律を厳守させる事であると同時に、ユー
ロの存続を世界に確信させる事でもある。
第二に、援助に頼る事の危険性である。財政放漫国は危機時に IMF や ECB に援助を求める
事になる。しかし、このような機関から援助を受ける場合には厳しい再建計画や返済計画を
迫られる。それはつまり債権国は厳しく緊縮財政を求められるという事である。以上二点か
ら放漫国は緊縮財政を求められるわけだが、
緊縮財政は債務国の経済成長を阻害するという
19
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
側面を持っている。ユーロ圏では ECB に全ての金融政策権があるため、ユーロ加盟国は財政
政策による経済刺激策に頼るしかない。
しかし、緊縮財政を強いられた国は厳しい歳出削減を行なわなければならず、経済成長を
促進するために十分な財政支出が行なえない。その結果、厳しい緊縮財政政策を行なったに
も関わらず経済の低迷によって国の財政状況が好転しないという事態に陥るのである。
ここ
で、具体例としてアイルランドを見てみたい。
アイルランドでは 2008 年の危機を受けて対応策として過度な緊縮財政を行った。
しかし、
公的債務が削減されるどころか、国内消費、投資の下落が成長率を低下させた。実際、失業
率は 2007 年の 4,5%から 2010 年の 13%へと上昇した。そして、年内に 13,5%に上昇すると予
想され、以降は下落するが 2015%年に 9,5%と依然と高止まりすると予想されている。これは
スペインに次いで EU 内第 2 位の高さである。そして、下記に表すように成長率は低下し、
債務は膨れ上がっている。
また、経済危機を受けて、銀行にも影響が波及している。下表では、アイルランドの銀行
においてリスクに備えるための資本が減少していることを表している。もう一方では、銀行
の不良債権率が危機後に著しく増加したことがわかる。
このように緊縮財政は短期的には増税によって歳入を増やし、
歳出を削減することによっ
て債務を減らすことができるかもしれないが、長期的には成長が鈍化し、国民に過度な負担
を課す恐れがある。
実際、アイルランドの経済社会研究所(ESRI)は、アイルランドが欧州連合(EU)と合
意した 2014 年の目標を達成するためには、既存のプログラムの倍に相当する 150 億ユーロ
(約 1 兆 7000 億円)の倹約が必要だと分析した。このような歳出削減によって、アイルラ
ンド経済は「転機」に追い込まれる恐れがあると警告した。
20
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
また、
アイルランドの銀行を救済する費用負担によって同国がデフォルトに陥るとの懸念
が広がり、政府の借り入れコストは今年に入って急上昇した。今年の財政赤字は国内総生産
(GDP)
比 32%に拡大すると予想されるが、
政府は 4 年後にEUの財政基準の上限である 3%
以内に財政赤字を削減することを目指している。
さらに、2010 年 11 月 11 日時点においてアイルランドの 10 年債はドイツ債への上乗せ利回
りで 651bp という過去最大のスプレッドへと広がっている。
21
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
第3節 救済システム
今回の危機を受けて、
ユーロではドイツを中心としたユーロ版 IMF とでも言うべき組織を
創設した。それが EFSF である。EFSF とはユーロ圏各国が資金を出資して作った特別会社で
あり、ユーロ圏で財政危機に陥った国への融資を目的としている。各国はその出資比率に応
じて融資金の保証をする。EFSF から融資を受ける国は融資元本に加えて EFSF の資金調達コ
スト、運用手数料などによって 8%とかなり割高な金利の支払いを迫られる。更に、EFSF
が融資を行う際には融資金保証国の全会一致での賛成が必要であり、
融資を受けるハードル
はかなり高いと思われる。以上見てきたように、EFSF は財政危機に陥った国にとっては安
易に助けを求められるような相手ではなく、EFSF の創設がユーロ圏の金融安定化を促進し
たとは言えない。では何故このような組織は創設されたのか、その本当の目的は何処にある
のか。以下では EFSF に隠された秘密に迫る。
EFSF における議論で特筆すべきはその恒久性についてドイツと欧州中央銀行(ECB)の総
裁であるジャン=クロード・トリシェの主張が異なる点である。ドイツが EFSF を永続的な
組織、システムとする事を望んでいるのに対し、トリシェは創設時に定めた 2014 年までの
期間限定的な活動を支持している。両者の主張が食い違うのは何故なのか。この謎を解く鍵
はドイツが抱える大きな矛盾にある。
ドイツは今回の EFSF 創設においてもメインプレイヤーであり、大部分を出資している。
そのドイツが主張しているのが EFSF の恒久化である。ドイツは今回のギリシャ危機におい
て 139.7(100 万)ユーロという莫大な支援を行っている。この支援の経験はドイツにとって
転機となったはずだ。ユーロ圏に潜む財政放漫国が危機に陥れば、それを救済するのがドイ
ツの役割であり、
ユーロ圏でのリーダー役をも期待されているのだという事を改めて今回の
危機が示してくれた。
しかしドイツはその役割を拒否しているように思う。前章でも見たように、ドイツは自国
で新たな財政規律を設けるなど、自国経済安定化第一主義を貫いている。つまり今回ドイツ
が EFSF の恒久化を主張する背景には、出資金の 120%を各国が保証するという支援枠限定
のシステムを利用して、
財政放漫国の際限無き救済に危機の度に大幅な支援を求められると
いう不確実性を排除する動きと考えられる。
両者の対立は、銀行セクターと財政視点の対立と言い換える事ができる。トリシェは ECB
総裁であり、言わばユーロ圏の銀行セクターの代弁者である。またドイツはユーロ圏の財政
規律を象徴する国であり、財政規律強化の急先鋒である。対立の最大の争点は、ギリシャが
デフォルトした場合に、その損失を誰が負担すべきなのかという点である。ドイツ銀行の発
表によれば、ドイツ銀行が保有するギリシャ国債の保有残高は 10.9 億ユーロ、スペイン国
債の保有残高は 10 億ユーロ、ポルトガル国債は 4.63 億ユーロ、アイルランド国債は 3.09
億ユーロとなっている。また、ギリシャの債務危機が悪化し、銀行がギリシャのソブリン債
に対するヘアカット(担保の掛け目)適用を余儀なくされた場合、
欧州の銀行は 500 億ユーロ
(635 億ドル)から 750 億ユーロ(635 億ドル)の損失を被る可能性がある。
この損失が実際に発生した場合に、一体誰がカバーするのかが問題である。銀行のバラン
スシートが傷つけば、深刻な資本不足に陥る可能性がある。資本不足を補う為には政府から
の資本注入を余儀なくされるが、
以上見てきたようにドイツは銀行セクターよりも国家財政
健全化を優先している。
つまりドイツは危機が発生した場合の銀行セクターへの公的資金注
入を嫌っている。
第4節 銀行セクターの不安
22
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
ドイツは危機が発生した場合の損失を銀行セクターに負担させたい。
(それは多分ドイツ
に限らずユーロ圏全体として。
銀行セクターの救済のための大幅な財政支出は財政健全化と
いうドイツのかかげる目標にそぐわない)
ただし、
ドイツは自国の銀行セクターの健全性に確信を持てないままに銀行セクターに負
担をさせようとしている。これがドイツの矛盾。
ドイツは自国の銀行セクターのバランスシートの脆弱生を認めて資金注入すべき。
ギリシャの救済を続けていく事で自国の銀行セクターをゾンビ化させるのではなく、
銀行の
弱さを認めて救済すべき。
こうした現状を分析する。まず、2008 年のリーマン・ショック以後、ヨーロッパでも相
次いで金融機関の破綻や救済が起きた。
米国のサブプライム問題が引き起こした世界的な信
用収縮は、民間企業や個人に対する貸し渋りのみならず、金融機関同士もお互いに相手の支
払能力を信用できないという状況に陥り、金融市場の機能が危ぶまれるまでに至った。
欧州における金融危機の衝撃の強さを、各国の金融機関が計上した評価損・貸倒損失の
計上額、及び資本調達額で比較したのが、下図である。
10 億ドル
世界の金融セクターの役割を持つロンドンを有するイギリスでは群を抜いて被害が大き
かったが、ドイツでも多額の被害があったことが見て取れる。
こうして金融危機が深まり、銀行が経営難に陥っていることを背景にして、ドイツやフラ
ンスなどは、他国の財政危機が自国の金融セクターに与える影響を危惧している。つまり、
財政危機がヨーロッパの金融システムの不安を招いているのである。
下図はドイツが保有している PIIGS 向けエクスポージャーの額であるが、合計すると 5159
億ユーロにまで上る。これは概ねドイツの GDP の 5 分の 1 に相当する。
このことからわかる通り、ギリシャやスペインなどの財務状況が一段と悪化すると、ドイ
ツの金融機関が保有する債権や債券に多額の損失が発生する。南欧の財政問題を発端とし
て、債権者側の金融機関の損失拡大による金融セクターの信用不安が強まっている。
23
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
こうした金融機関の信用不安とギリシャデフォルトの懸念を受けて、2010 年 7 月、域内の銀
行の健全性を調べるストレステストの結果が公表された。テストの対象は 20 カ国の 91 行で、
景気悪化を仮定し、保有する株式や債券で損失が発生した場合に自己資本が基準を満たさなくな
る銀行をあぶりだした。結果として、スペインの 5 行、ギリシャとドイツの各 1 行の計 7 行が
不合格になり、不足する資本額は計 35 億ユーロに上った。この発表を受けて、市場を一時信用
回復へと向かわせることに成功した。
しかし、結果への疑いも浮上している。例えば、リスクが高いとみられている国の国債保有残
高を一部の銀行が過少に申告していたことが発覚している。ドイツなどの銀行の健全性も不明瞭
であり、銀行の透明性を高め、銀行の資産について厳密に把握することが必要である。
24
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
第4章 政策提言
第1節 政策提言
現状で述べたように、現在のギリシャが抱える問題は、ユーロ圏全体の危機、さらにはそ
れに伴ってアメリカなどを含む世界全体の経済低迷に波及しかねない。日本もこの 2008 年
の金融危機に端を発する「二番底」とも恐れられている世界的な景気の影響を受けることに
なる。我々は、日本が抱える問題の中から、ギリシャという問題に焦点を絞って、政策提言
を述べる。
まず、分析で見たように、ユーロ圏ではその構造上、一国の財政が悪化した場合にその国
が財政を健全化させるのは難しい。そして、緊縮財政を余儀なくされるわけだが、アイルラ
ンドの例で見たように、模範的な緊縮財政をしている国々でさえ、国債のスプレッドは現在
過去最大まで広がっている。つまり、緊縮財政をしても問題の根本的な解決には繋がらない
のである。また現状では、分析の結果からギリシャはデフォルトの可能性が高く、マーケッ
トもそのような見方を強めている。
次に、ギリシャのデフォルトを避けるためのヨーロッパの救済措置であったが、IMF 及び
EFSF からの救済パッケージは結局のところギリシャに緊縮財政を求めており、EFSF の援助
も、本来の目的である財政・金融セクターの安定化には繋がらないと考えられる。
このように現行の緊縮財政、救済システムは両面において欠陥があり、ギリシャ財政の自
力再建は非現実的である。結局のところ、ギリシャはデフォルトを避けるために、債務のリ
スケジューリングをするべきであると考えられる。
日本は、IMF の立場から、ギリシャ国債の債権者(IMF、ECB、その他金融機関等)がギリシ
ャとの債務条件を変更するよう求めることを政策提言とする。債務条件の変更とは、債務の
元本・金利の減免、及びリスケジューリング(繰り延べ)を含む。
第2節 リスケジューリングがもたらす効果
このリスケジューリング自体が与える影響はギリシャのデフォルトを遅らせ、
ユーロ圏に
猶予を与えることである。ここで一見、今回の救済のようにただ先延ばしにしているだけだ
と思うかもしれない。
しかし、このリスケジューリングは今回のように 3 年という短い期間ではなく、10 年以
上の繰り延べであるため、その間にできることは多い。
まず、本稿で示した通り、過度な緊縮財政はその国の成長にはつながらないため、ギリシ
ャは成長を妨げない程度の程度な緊縮財政を行うべきである。同様に、財政悪化を抱えてい
る PIIGS 諸国も過度な緊縮財政をやめ、成長を促すための政策を考えるべきである。また、
ドイツの銀行セクターでは現在のような、まだ不透明性があり、マーケットに対して銀行不
安を晒さずに済んでいる間に資金注入し、バランスシートを健全化させるべきである。これ
25
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
は将来的には物価安定をもたらすため、長期的に見れば政府の目的にも適うものである。そ
して、
スペインやアイルランドなどの銀行不安を抱えている国々も同様にこの猶予の間に立
て直す努力をすべきである。
さらに、救済システムに関しても、EFSF のような経済が低迷した国同士で助け合うシス
テムではなく、もっと抜本的に低迷した国が成長できるようなシステムを作るべきである。
それには、政治統合の達成やドイツの一国安定主義をやめるよう説得すべきかもしれない。
だが、リスケジューリングすることによって時間はある。今回の救済はドイツ、フランス
という大国が多くを負担しているため、繰り延べを待つ猶予は比較的あるだろう。
しかし、もし EFSF が発動し、それを PIIGS などの債務国が抱えていると猶予を伸ばす余
地はないはずである。そのため、このギリシャの債務を繰り延べしている間に一時的な対処
ではなく、構造上の矛盾などを抜本的に解決できる新たな解決策を生み出すべきであり、そ
の時間はあると考えられる。そうした点から、ギリシャに対するリスケジューリングの効果
は大きいと考えられる。
第3節 政策提言における課題
本稿では、
日本政府が IMF や G20 などの国際舞台においてギリシャにリスケジューリング
を提言するべきだと提言しているが、
日本は IMF に対してアメリカに次ぎ 2 番目に出資して
いるとはいえ、議決権が 85%である IMF では、他国を説得させなければならない。これは
現在の国際的立場を踏まえると、やや厳しいのではないかと考える。以下が IMF に対する出
資比率と議決権比率である。
米国 出資比率 17.09%、議決権比率 16.77%
カナダ
2.93%、
2.89%
ドイツ
5,99%、
5,88%
フランス
4,94%、
4,86%
イタリア
3,25%、
3,19%
イギリス
4,94%、
4,86%
日本
6,13%、
6,02%
これを考慮するとアメリカだけでなく、
ドイツやフランスなどユーロ圏の国々も説得させ
なければいけない。
しかし、ドイツに対してのリスケジューリングの有用性は上記で示した通りであり、納得
する可能性は大きいと考えられる。また、フランスなどもスペインの国債を多く、抱えてい
るため、
再びギリシャから PIIGS に危機が波及することを考えると賛成することが予想され
る。さらに、EFSF ではドイツやフランスなどの大国だけでなく、イタリアなどの支援しな
ければいけないため、それを避けたいと考えるだろう。
一方のアメリカであるが、ユーロが再び危機に陥ることは貿易相手としても、投資先とし
ても自国経済に大きく関与するため、そのようなさらなる危機は避けたいはずだろう。その
ため、
ギリシャのデフォルトを大幅に遅らせることはアメリカにとってもメリットがあると
考えられる。
第4節 政策提言実現に向けて
上記のように、IMF での議決権を得られる可能性は十分にあると考えられる。
26
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
だが、その政策提言を日本政府がしなければ始まらない。実際、国際舞台でのプレゼンス
が中国にとって代わられるように落ちている日本にとって、
発言する機会も少なくなってき
ている。だが、低迷しているとはいえ、世界第 3 位の GDP を誇る日本の影響力は決して小さ
くないものであるため、
再び世界をリードする立場に立つためにも積極的に発言していくべ
きだと考える。
しかし、IMF の出資率も中国に 3 位と迫られつつある現在において、今積極的に発言して
いかなければ、アジア圏のキープレーヤーは中国となり、さらには韓国にも抜かれる可能性
もあるだろう。その積極的に発言する、世界に向けて発信するという行為こそが最も欠けて
おり、重要なことであると考えている。そのため、この政策提言をぜひ世界に向けて発信し
てほしいと期待してやまない。
そして、これを契機にアジア圏での通貨統合、経済統合を代表としてリードする立場にな
ることを願うばかりである。
27
ISFJ政策フォーラム2010発表論文 11th – 12th Dec. 2010
先行論文・参考文献
先行論文・参考文献・データ出
考文献・データ出典
・データ出典
《先行論文》
・西島章次(2002年)
「アルゼンチンの通貨危機と今後の課題」
『世界経済評論』200
2年3月号、10ページ数
・松井 謙一郎 (財) 国際通貨研究所 アルゼンチン危機(2001~02年)の経験
~ギリシャ危機への教訓を探る~ 2010年6月(No.19,2010)
・荒木 謙一 「欧州における金融危機の深まりと銀行経営」金融市場2008年11月号
19ページ
・IMF (2010) World Economic Outlook, October 2010
・細尾忠生 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 「欧州の財政危機と金融シス
テム不安」 けいざい早わかり2010年度第4号
・2010 International Monetary Fund July 2010 IMF Country Report No. 10/209
《参考文献》
David Marsh (2009), “The Euro The Politics of the New Global Currency” in Yale
UNINERSITY PRESS
竹森俊平(2010)『中央銀行は闘う』日本経済新聞出版社
《データ出典》
IMF HP
http://www.imf.org/external/index.htm
アクセス日時:2010 年 10 月 20 日
ECB HP
http://www.ecb.int/home/html/index.en.html
アクセス日時:2010 年 10 月 15 日
Vincent Fernando, CFA
『 German Bank Exposure To Greece Is Nothing When Compared To Spain And Italy 』
http://www.businessinsider.com/german-bank-exposure-to-greece-is-nothing-when-com
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アクセス日時:2010 年 11 月 1 日
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http://www.nikkei.com/biz/world/article/g=96958A9C9381959FE3E1E2E0E08DE3E1E2E
E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2
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革 ~改革の背景にある 3 つの観点と着地点~」
http://e-public.nttdata.co.jp/doc/open/mfr/topic/to_2010/to1012.htm
アクセス日時:2010 年 11 月 3 日
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「アイルランド耐乏2年 出口見えぬ緊縮財政」
http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201007240525.html
アクセス日時:2010 年 11 月 3 日
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=BIS」
http://jp.wsj.com/Finance-Markets/node_71081
アクセス日時:2010 年 11 月 4 日
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