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Smart-MDFを適用したサービスオーダ フロースルーオペレーション

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Smart-MDFを適用したサービスオーダ フロースルーオペレーション
沖電気研究開発 2000年4月 第182号 Vol.67 No.1
UDC 621.395.658 : 681.323
テレコム99特集
Smart-MDFを適用したサービスオーダ
フロースルーオペレーションシステム
Service Order Flow-Through Operation System with Smart-MDF
長 井 正 見 小 林 肇 山 田 雅 己 松 本 和 洋
Masami Nagai
Hajime Kobayashi
Masami Yamada
Kazuhiro Matsumoto
要 旨
通信事業者の顧客に対するサービス提供を迅速化するためには,Smart-MDFを導入した
サービスオーダ処理のフロースルー化が有効である。その有効性を検証するために,試作シ
ステムとして,実際にSmart-MDFと交換機を接続し,MDFと交換機のサービスオーダ処理を
統合化,高度化して,サービスオーダのフロースルーオペレーションシステムを構築した。
また,その有効性をPOTS (アナログ基本サービス) からISDNへのサービス切り換えを実施す
ることにより確認した。
まずSmart-MDFの概要を示し,3節でSmart-MDF
1.ま え が き
を含むフロースルーOpSの特長を説明する。4節では
試作システムを紹介し,5節ではフロースルー化の効
顧客から通信サービスの開始あるいはサービスの切
果を示す。
替え要求があると,通信事業者は一般的に,交換機で
2.Smart-MDFの概要
のSO (Service Order) の投入とMDF (Main Distribution
Frame) での配線作業を必要とする。
この2つの作業は,連携しながら並行して行われる
ため,サービス開始,変更までに相当の時間が必要と
従来,加入者線と交換機との物理的接続は,MDFに
おいて保守者の手作業により行われていた。
なる。また,配線作業時の人的ミスにより,データ不
Smart-MDFは,図1に示すように,小型ロボットに
一致などの問題が発生する可能性がある。一方,通信
より接続ピンを3段リンク構成のマトリックスボード
サービスの多様化に伴ない,加入者のサービス変更要
に挿入することにより物理的接続を実現し,MDF作業
求が増加しており,通信事業者には,これらの顧客の
を完全に自動で行うものである1) 。
要求に迅速に対応することが強く求めらていれる。
さらに,Smart-MDFには,電話網を介して操作端末
この問題の解決策として,本稿では,Smart-MDFを
導入し,交換機とSmart-MDFのSO処理を統合化した
を接続することができ,遠隔地から複数Smart-MDFを
制御することができる特長がある。
サービスオーダのフロースルーOpS (Operation System)
を提案する。
また,Smart-MDFは,配線工事,保守情報等をすべ
てデータベース化できることも大きな特長である。
·············································································································
長井正見
小林 肇
山田雅己
松本和洋
ネットワークシステム
ビジネスグループ
第一基幹ネットワーク
事業部 ソフトウェア
技術第二部 局用交換
ソフトウェアチーム
チームリーダ
ネットワークシステム
ビジネスグループ
第一基幹ネットワーク
事業部 ソフトウェア
技術第二部
SMDF-SEチーム チームリーダ
ネットワークシステム
ビジネスグループ
第一基幹ネットワーク
事業部
MDF事業推進部
ネットワークシステム
ビジネスグループ
第一基幹ネットワーク
事業部 ソフトウェア
技術第二部 SMDFソ
フト開発チーム
―― 15 ――
テレコム99特集 ❖ Smart-MDFを適用したサービスオーダフロースルーオペレーションシステム
化も実現困難である。
Smart-MDF
(2) フロースルーOpSの特長
電
話
網
データベース
コントロール モジュール
図3に,Smart-MDFを導入したサービスオーダのフ
ロースルーOpSの構成を示す。Smart-MDFのOpSと交
換機のOpSの整合をとりながら,サービスオーダ業務
操作端末
ロボット
ロボット
ロボット
が自動的に実行される。このようなシステムを構成す
ピン
ピン
ピン
ることにより,サービスオーダの投入作業は一つの端
ISDN
末に集約され,必要情報の一括投入が可能になる。ま
ISDN
た,各装置の設定情報は,フロースルーOpSのデータ
アレスタ
交換機
ベースで一元管理される。
フロースルーOpSは以下の特長を持つ。
POTS
1次マトリックスボード 2次マトリックスボード 3次マトリックスボード
① コマンドを意識させない,高度なGUIによるオペ
レーションの自動化および簡略化が可能である。
図1 Smart-MDFの構成
Fig. 1 Smart-MDF structure
② サービス提供までの時間を飛躍的に短縮する。
③ データベース管理が高度化でき,加入者回線およ
3.サービスオーダのフロースルーOpS
び交換機収容位置の使用状況,使用率等の把握が
リアルタイムで可能となる。
(1) 非フロースルーOpSの問題点
4.試作システム
非フロースルーOpSでは,図2に示すように,SmartMDFと交換機のサービスオーダは,それぞれ別の作業
(1) システム構成
者が,それぞれ個別の作業形態で実施することになる。
非フロースルーOpSには,以下の問題点がある。
フロースルーOpSの有効性を確認するために,試作
① コマンド等の専門の知識,訓練を受けた作業者で
システムを開発した。試作システムは,POTS (Plain
Old Telephone Service:アナログ基本サービス) から
ないと,作業を実施できない。
② 多数のコマンドの投入および作業の連携をとる必
要があるため,作業に時間がかかる。
ISDNへのサービス切り換えと実際の通話確認ができる
ように,図4のシステム構成を持つものとした。
(2) ソフトウェア構成
③ 個々のデータベースを設定するための時間とリ
ソースの無駄が発生し,データベース利用の高度
サービスオーダ 非フロースルーOpS
(POTS→ISDN切り替えの例)
お互い連絡を
取りながら業務
を実行
SmartMDF側
問題点
・サービスオーダの専門知識が必要
・連携作業のため時間が掛かる
・情報の2重投入、2重管理
交換機側
個別データ
ベース管理
Smart―MDFに対するパス
切替えコマンド
・POTS-交換機間パス切断
・ISDN-交換機間パス接続
データベース収集
および更新
個別データ
ベース管理
交換機に対する
サービスオーダ変更コマンド
・POTS加入者データ削除
・ISDN加入者データ登録
Smart-MDF OpS
POTS電話機 モジュラ Smartジャック MDF
ISDN電話機
接続換え
して使用
可能
データベース収集
および更新
フロースルーOpSソフトウェアは,今後の機能追加,
サービスオーダ フロースルーOpS
(POTS→ISDN切り替えの例)
フロースルー化の効果
・サービスオーダ業務の簡易化
・サービス提供の迅速化
・データベース管理の高度化
交換機
アナログ
ISDN
高度化GUIによる顧客情報一括投入
(氏名、電話番号、サービス要求内容等)
データベース収集および更新
個別データ (電話番号、線路番号、
ベース管理
収容位置番号、サービス内容)
S-MDFに対する
パス切り替え指示
フロースルーOpS
一連の処理の流れを
プログラム論理で自動実行
Smart-MDF OpS
交換機OpS
アナログ-I/F
ISDN-I/F
サービスオーダ統合端末
POTS電話機 モジュラ
ジャック
ISDN電話機
接続換え
して使用
可能
S-MDF
アナログ-I/F
ISDN-I/ F
交換機に対する
サービスオーダ変更指示
交換機OpS
交換機
アナログ
ISDN
図2 非フロースルーOpS
図3 フロースルーOpS
Fig. 2 None-Flow-Through OpS
Fig. 3 Flow-Through OpS
―― 16 ――
沖電気研究開発 2000年4月 第182号 Vol.67 No.1
フロースルー Ops システム構成図
フロースルーOpSソフトウェア構成
Analog
3次側 1次側
ISDN
AC100V
交換機
フロースルーOpS部
SmartMDF側
端子台
交換機側
フロースルーGUI部
1次側
3次側
フロースルー制御部
MJ1
COM2
MJ2
MJ3
MJ4
COM1
拡張インタフェース部 拡張インタフェース部
Smart-MDF
TRANS
AC100V
POTS POTS
ISDN
Smart-MDF 交換機
インタフェース部 インタフェース部
コマンド処理部
AC100V
ISDN
コマンド処理部
OS
OS
OS
RS232C
RS232C
RS232C
PC
フロースルーOps用とSO端末用
図4 システム構成
図5 ソフトウェア構成
Fig. 4 System configuration
Fig. 5 Software configuration
機能の高度化が容易にでき,開発期間の短縮にもつな
がるように,図5に示す階層構造を持つものとした。
Smart-MDFインタフェース部,交換機インタフェー
Flow Through Service Order Operation System
加入者側
情報表示
画面
交換機側
情報表示
画面
ス部に関しては,機種ごとのコマンドインタフェース
の違いを吸収するためにミドルソフト (拡張インタ
フェース部) を開発して,上位のフロースルー制御部に
対してインタフェースの違いを隠蔽できるようにした。
また,フロースルー制御部は,GUI (Graphical user
実行中
のロボット
動作
(動画)
interface) 部の造りに依存しないフロースルーサービス
提供単位のインタフェースを用意した。
サービス
選択画面
GUI部は,通信事業者ごと,システム規模ごと,OpS
の目的,用途に合わせて変更,着脱を容易にできるソ
図6 GUI
フトウェア構成を採用した。
Fig. 6 Graphical user interface
(3) GUI画面
図6に示すように,フロースルーOpSのメリットで
あるコマンド投入の概念がない,操作性の高い画面構
成とした。
非フロースルーOpSにおいて個々の操作端末からコ
マンド操作を実施する場合のコマンド数,パラメータ
実用システムの場合には,通信事業者ごとに容易に
GUIをカスタマイズすることができる。
数と,フロースルーOpSにおけるGUI操作数の比較,お
よびサービス切り換えに必要な時間の比較を表1に示
(4) サービス提供内容
す。
試作システムでは,以下のフロースルーサービスを
提供した。
① 新規加入者登録 (POTS,ISDN)
この結果から,フロースルー化することによって,
サービス切り換え時の操作性の飛躍的な向上と作業時
間の大幅な短縮が可能なことがわかる。
② 加入者廃止 (POTS,ISDN)
また,Smart-MDFの導入とフロースルーOpSを組み
③ 電話番号変更 (POTS,ISDN)
合わせることによって,MDF作業の効率化のみならず,
④ サービス変更 (POTS←→ISDN)
ネットワーク保守,運用作業全体が効率化できる見通
しを得た。
5.フロースルー化の効果
(2) フロースルーOpSのADSLへの適用
近年の急速なインターネットの普及による通信需要
(1) 操作性および操作時間
の高まりから,高速データ通信サービスへの接続要求
―― 17 ――
テレコム99特集 ❖ Smart-MDFを適用したサービスオーダフロースルーオペレーションシステム
表1 フロースルーOpSの効果
Smart-MDF アプリケーション例
Table 1 Effect of Flow-Through OpS
(ADSL use, Co-Location use)
比較項目
非フロースルーOpS
SMDF操作 コマンド数
3
パラメータ数
9
交換機操作 コマンド数
5
パラメータ数
サービス切り換え作業時間
A/I-SLT
A/I-SLT
A/I-SLT
A/I-SLT
フロースルーOpS
Splitter
SW
GUIからの1アクション
23
数時間∼数日オーダ
約5分
Splitter
ADSL
ISP
S-MDF
MDF
も高まっている。また,通信事業者には,加入者線を
(Co-Location)
MDF部分から他通信事業者へ切り換えたり,回線を貸
ADSLの他にHDSL、T1、E1、ISDN
アナログ、専用線に使用可能。
し出すことが求められている。
こうした中で,Smart-MDFの導入によるフロースルー
図7 Smart-MDFのADSLへの適用
OpSの適用例として,図7に示すADSL (Asymmetric
Fig. 7 Smart-MDF apprication to ADSL
Digital Subscriber Line) への適用が考えられる。ADSL
は,既存のメタリック加入者線を利用して実現できる高
速ディジタルインタフェースとして,近年注目されてい
示した。また,実際にSmart-MDFを用いたフロース
るものである。
ルーOpS試作システムを構築し,実際のサービス切り
Smart-MDFを用いて構成されたシステムに対し,フ
ロースルー化を行うことにより,既存の加入者線イン
換えを行うことによって,フロースルーシステムの有
効性を検証した。
タフェースからADSLインタフェースへの切り換えが
さらに,Smart-MDFのADSLへの適用例を示し,メ
迅速に実現できるのみならず,Smart-MDFによる
タリックケーブルを利用した高速ディジタル加入者線
ADSL試験機能のフロースルー化の提供にも柔軟に対
インタフェースに対しても対応可能な見通しを述べた。
応可能となる。
現在,ADSLの本格導入に向けて,フロースルーOpS
なお,ADSLモデムを使用した伝送特性試験におい
の具体的な商品開発を鋭意推進中である。
て,Smart-MDFを接続した場合と接続しない場合とで
伝送特性に優位差がないことを確認している2) 。
7.参 考 文 献
6.あ と が き
(1) 福田,石川,高山,小田:SMDF,沖電気研究開
発第170号, Vol. 63, No. 2, pp. 81~84, 1996
Smart-MDFの導入により交換機を含めたサービス
(2) 本田,吉木,尾崎,横地:スマートMDF,沖電気
オーダのフロースルーOpSが容易に実現できることを
研究開発第179号, Vol. 65, No. 3, pp. 61~64, 1998
―― 18 ――
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