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新事業創出支援事業 ハンズオン支援事例集
平成26年度 新事業創出支援事業 ハンズオン支援事例集 ~新連携・地域資源活用・農商工連携~ は じ め に 独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下中小機構)は、中小企業施策の総合的な実施機関として、平 成16年7月に設立されました。設立以来中小機構では、「創業・新事業展開の促進」「経営基盤の強化」「経 営環境の変化への対応の円滑化」などを事業の柱として、全国に10か所の地域本部・事務所を設置し、我 が国中小企業の成長ステージ全般にわたる支援施策を展開しています。 中でも、新たな事業に挑戦する中小企業をサポートする事を目的とした新事業創出支援事業では、新連 携事業(平成17年度〜)、地域資源活用事業(平成19年度〜)、農商工等連携事業(平成20年度〜)が、そ れぞれ法律の施行と共にスタートしています。中小機構は、この3法事業において専門家が、国の認定取 得に向けた事業計画の策定から認定後の事業化達成まで、事業者と伴走しながら事業の進捗状況に応じて 発生する様々な課題について、一貫した総合的な支援(ハンズオン支援)を行っています。 この度、この3法事業ハンズオン支援事例の中から成果が上がっている事例、特徴的な取り組みを行っ ている事例を全国で11件取り上げて、事例集を編纂致しました。 本事例集では、成功事例の事業者が、様々な事業課題を克服して新事業を力強く立ち上げた姿をご紹介 して、中小企業の方々に新事業へのチャレンジ意欲を持っていただくと同時に、中小機構の専門家が事業 者に寄り添って新事業の本質的な課題をどのように目利きし、有効な支援活動を展開したのかをご紹介す る事により、中小機構の支援内容を理解していただく事も目的としています。 なお、平成27年度から、新連携事業は中小サービス事業者の生産性向上に重点を置き、また、地域資源 活用事業では面的波及効果の高いグループ案件への支援が開始される予定となっています。今後、これら の新たな事業に対応した支援事例も順次開発していく予定になっています。これから新事業に取り組もう とされている方々、中小企業支援機関の職員や専門家の方々におかれましては、これらの動向も踏まえな がら本事例集をご活用いただければ幸いです。 本事例集の作成に当たりご協力いただいた事例企業の経営者、関係者の皆様方に心から感謝を申し上げ ます。 平成27年3月 独立行政法人中小企業基盤整備機構 経営支援部長 滝本 浩司 新連携事業の概要 新連携事業とは、事業分野を異にする事業者が有機的に連携し、その経営資源(設備、技術、個人の有する知識及 び技能その他の事業活動に活用される資源をいいます)を有効に組み合わせて、新事業活動を行うことにより新たな 事業分野の開拓を図ることをいいます。 根 拠 法 中小企業新事業活動促進法 事業実施年度 平成17年度〜 事 業 主 体 異分野の中小企業者2者以上(共同) 計 画 期 間 3年以上5年以内 事 業 内 容 新商品の開発又は生産/新役務の開発又は提供/商品の新たな生産又は販売方法の導入/役 務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動(注) 主な認定要件 1.異分野の中小企業者2者以上がそれぞれの経営資源を持ち寄り取り組む事業であること 2.新事業分野の開拓であること 3.相当程度の需要が開拓されること 4.新事業活動により一定の利益を上げられること 【イメージ図】 中小企業(コア企業) 経営資源 中小企業(異分野) 経営 資源 経営 資源 中小企業(異分野) 経営 資源 新事業活動 経営 資源 大学・研究機関等 NPO・組合等 新事業分野開拓 〔新たな需要が相当程度開拓されるもの〕 国が「基本方針」 において認定要件 等を策定 異種業の中小 企業者が 2 者以上 で連携を構築 中小企業者連携体が 共同で「新連携計画」を 作成し、国に申請 主務大臣の認定 (経済産業大臣等) 各種支援措置 の活用 (注)平成 27年度より、補助金の対象は中小サービス事業者の生産性向上に重点を置いた事業内容になる予定ですの でご注意下さい。 2 新事業分野の開拓 【事業スキーム】 地域資源活用事業の概要 地域資源活用事業とは、地域の中小企業者が共通して活用することができ、当該地域に特徴的なもとのして認識さ れている地域産業資源を活用して、中小企業者が商品の開発・生産、役務の提供、需要の開拓等の事業を行うことを いいます。 根 拠 法 中小企業地域資源活用促進法 事業実施年度 平成19年度〜 事 業 主 体 中小企業者(単独又は共同) 計 画 期 間 3年以上5年以内 事 業 内 容 新商品の開発、生産又は需要の開拓/新サービスの開発、提供又は需要の開拓(注) 主な認定要件 1.都道府県が指定する地域資源を活用した事業であること 2.地域資源の新たな活用の視点が提示されていること 3.域外への新たな需要を相当程度開拓するものであること ■地域産業資源とは 各都道府県が指定する以下のものをいいます。 ⑴地域の特産物として相当程度認識されている農林水産物又は鉱工業製品 ⑵地域の特産物である鉱工業製品の生産に係る技術 ⑶文化財、自然の風景地、温泉その他の地域の観光資源として相当程度認識されているもの 農林水産物 鉱工業製品 観光資源 国が「基本方針」 において認定要件 等を策定 都道府県が 地域資源を指定 中小企業者が「地域資源 都道府県が意見 活用事業計画」を作成し、 を付与して経済 都道府県に申請 産業局に提出 主務大臣の認定 各種支援措置 (経済産業大臣等) の活用 (注)平成 27年度より中小企業グループによる地域ブランド化の取り組み等への支援が開始される予定です。また、 補助金の内容が変更される予定です(P8「法認定に基づく各事業の支援措置」をご参照下さい。)。 新商品・新サービスの開発・ 生産等及び需要の開拓 【事業スキーム】 3 農商工等連携事業の概要 農商工等連携事業とは、農林漁業者と商工業者等が通常の商取引を超えて連携し、お互いの強みを活かして売れる 新商品・新サービスの開発、生産等を行い、需要の開拓を図ることをいいます。 根 拠 農商工等連携促進法 法 事業実施年度 平成20年度〜 事 業 主 体 農林漁業者と中小企業者(共同) 計 画 期 間 原則5年以内 事 業 内 容 新商品の開発、生産又は需要の開拓/新サービスの開発、提供又は需要の開拓(注) 主な認定要件 1.農林漁業者と中小企業者が有機的に連携して実施する事業であること 2.農林漁業者及び中小企業者のそれぞれの経営資源を有効に活用したものであること 3.新商品・新サービスの開発、生産等若しくは需要の開拓を行うものであること 4.農林漁業者の経営の改善かつ中小企業者の経営の向上が実現すること 【イメージ図】 農林漁業者 連携 なめらかな 舌触りで 新食感 新商品等 中小企業者 !! 国が「基本方針」 において認定要件 等を策定 農林漁業者・ 中小企業者が 連携体を構築 農林漁業者・中小企業者が 主務大臣の認定 共同で「農商工等連携事業計画」 (農林水産大臣・ を作成し、国に申請 経済産業大臣等) 各種支援措置 の活用 (注)平成 27年度より、利用できる補助金の内容が変更される予定です(P8「法認定に基づく各事業の支援措置」をご 参照下さい。)。 4 新商品・新サービスの開発・ 生産等及び需要の開拓 【事業スキーム】 中小機構の支援イメージ図 全国10ケ所にある中小機構の地域本部等では、ビジネスに精通したプロジェクトマネージャー(PM)及びチ ーフアドバイザー(CAD)が、新連携事業、地域資源活用事業、農商工連携事業(以下「3事業」)による新商品・ 新サービスの開発等の実施にあたっての事業計画の策定、商品開発、販路開拓等のアドバイス・ノウハウ提供な どを行い、事業の構想段階から法認定後の事業化達成まで一貫した支援を行っています。 経済産業局 農政局 等 地域支援機関 等 中小機構地域本部等(全国10ケ所) ブラッシュアップ 支援 窓口相談 ・法的要件の確認 ・ビジネスアイデアの ヒアリング ・具体化に向けた アドバイス ・事業計画策定の支援 ・商品開発、市場調査 等に関するアドバイス ・事業性・市場性の 評価 国による 法律認定 フォローアップ 支援 ・事業計画の具体化支援 ・販路開拓等支援 ・定期的なアドバイス プロジェクトマネージャー等による課題等への相談対応 地域活性化支援アドバイザー派遣事業 地域活性化パートナー事業 写真 写真 ビジネスマッチング 専門家派遣事業 国際化支援事業 5 中小機構の主な支援ツール ⑴地域活性化支援アドバイザー派遣事業 対 象 者 3事業の認定事業者及び認定を目指す事業者 事業内容 認定事業者等が直面する専門的・実務的な課題の解決のため、民間での豊富な実務経験を有する地 域活性化支援アドバイザーを複数回派遣して、必要なアドバイスを行い、課題の適切かつ早期の解 決を支援します。 派遣回数 (同一課題について)3回以内 派遣する 専 門 家 企業の現役・OB人材等の実務家や、中小企業診断士等の中小企業支援の第一線で活躍している経 験豊富な専門家 ⑵地域活性化パートナー事業 対 象 者 3事業の認定事業者 事業内容 市場ニーズの把握や商品企画、開発した新商品・新サービスの市場での評価やマーケティング、首 都圏等での販路開拓等で発生する課題に対応するため、全国規模で活動する大手の流通事業者等を 「地域活性化パートナー」として登録。パートナー企業との効果的な連携活動により、課題解決を 図り、事業化の早期達成を支援します。 登録企業数 主 な 企画内容 101社(平成27年3月現在) ■販路開拓支援:大型展示会、百貨店等販売会、通信販売企画、商談会等 ■商品化支援:各種相談会、専門家アドバイス、商品評価等 ■その他:セミナー講師、アドバイザー、評価者としてバイヤー派遣 ⑶展示会、商談会等ビジネスマッチング 新価値創造展(中小企業総合展) 対 象 者 経営革新等に取り組んでいる中小・ベンチャー企業 内 容 中小企業・ベンチャー企業が優れた製品・技術・サービス等を展示・紹介することにより、販路開 拓、業務提携といった企業間の取引を実現するビジネスマッチングの機会を提供する中小機構主催 のイベントです。 Rin crossing(リンクロッシング) 対 象 者 地域資源商品を製造するメーカー 内 容 マッチングサイトや商談会・展示会を通じて、全国各地で価値あるモノづくりに取り組むメーカー と新たな市場を創り出す商品を求めるバイヤーとの架け橋となって、地域資源を活かした商品の販 路開拓を支援します。 URL : http://rin-shopping.jp/ J-GoodTech(ジェグテック) 対 象 者 優れた技術、製品等を持つ日本の中小企業 内 容 優れた技術や製品を有する日本の中小企業を国内大手企業や海外企業をつなぐマッチングサイトで す。ウェブ上での情報発信、情報交換に加え、商談会等の開催や専門家による仲介サポートも実施 することで効率的・効果的なマッチングを実現し、新たな取引や技術提携などにつなげていきます。 URL : https://jgoodtech.smrj.go.jp/ 上記のほか、3事業の認定事業者を対象とした展示・商談会イベントなどを随時開催しています。 6 ⑷専門家派遣 経営・技術・財務・法律・知財などの専門家を派遣し、企業の発展段階に応じたアドバイスを行います。 事業名 事業の特徴 派遣する専門家 専 門 家 継続派遣 事 業 企業が抱える真の経営課題を探り、全体 支援目標を設定した上で複数の支援テー マを併行して行う、総合的な経営支援で す。企業の発展段階や経営環境の変化に 応じて、タイムリーかつ適切なアドバイ スを行います。 大企業の経営幹部など経営 経験の豊富な方、中小企業 支援の経験を積んだ中小企 業診断士・公認会計士など のアドバイザー 経営実務 支援事業 特定された経営課題の解決に向けて、単一 支援テーマに絞って実施する短期集中型の 経営支援です。実務経験の豊富なスペシャ リストを派遣し、経験で培った実務的な知 識・ノウハウにより、現場の実態に即した 具体的なアドバイスを行います。 5ヶ月以内 大手・中堅企業等での実務 (アドバイ 経験や指導・監督経験の豊 ス は1 0 回 富なアドバイザー 以内) 専門家 1人・ 1回あたり 8,200円 戦 略 的 CIO育成 支援事業 中長期的な経営戦略の実行のためにITを 組織的に活用しようとする企業に専門家 を派遣し、IT導入・運用のプロジェクト に対するアドバイスを行います。 CIO経験者、中小企業診断士、 ITコーディネーターなど、経営 支援内容に 上の問題点・課題をITの活用 より6ケ月 により解決した実務経験・支 ~1年程度 援実績を有するアドバイザー 専門家 1人・ 1日あたり 17,200円 首都圏または近畿圏に販路 ネットワークを有する商社・ メーカー等出身の販路開拓 コーディネーター 専門家 1人・ 同行支援 1回あたり 4,100円 新商品・新技術・新サービスについて、 販路開拓 首都圏・近畿圏におけるテストマーケテ コーディネート ィング活動の実践を通じ、新たな市場へ の手がかりを掴むとともに、販路開拓の 事 業 力をつけることを支援します。 支援期間 費用(税込) 支援内容 により 6ヶ月~ 1年程度 専門家 1人・ 1日あたり 17,200円 - ⑸海外展開支援 国際化支援アドバイス事業 内 容 海外投資、輸出入や海外企業との業務提携など、中小企業の海外展開に関する経営課題に対し、海 外ビジネス経験の豊富な専門家が個別にアドバイスを行います。 海外ビジネス戦略推進支援事業 内 容 海外市場に活路を見出そうとする中小企業・小規模事業者の海外展開に向けた戦略策定や販路開拓 につなげるため、F/S(実現可能性調査)支援に加え、Webサイトの外国語化、物流体制の構築等 を支援します。 中小企業CEOネットワーク事業 内 容 日本製品の購入や合弁会社設立、代理店契約締結など日本企業との連携を希望している海外企業経 営者等との商談会を開催致します。 国際展示会出展サポート事業 内 容 海外への販路開拓に意欲的に取り組む中小企業を対象に、海外展示会及び国内の国際展示会への出 展をサポートします。展示会の準備段階から、出展後のフォローアップまで、海外への販路開拓の 一環した支援を行います。 上記のほか、海外展開を目指す方を対象とした各種セミナーや研修なども企画、開催しています。 7 法認定に基づく各事業の支援措置 補助金※ 新連携事業 地域資源活用事業 農商工連携事業 ◆商 業・サービス競争力強化連携支 援事業 中小企業・小規模事業者等が他の 事業者及び大学・公的研究機関等と 連携して行う革新的なサービス開発 について、その費用の一部を補助し ます。 補助金限度額3,000万円、補助率2/3 以内 ◆ふるさと名物応援事業 (消費者志向型地域産業資源活用新 商品開発等支援事業) 市場調査、研究開発に係る調査分 析、新商品・新役務の開発(試作、 研究開発、評価等を含む)、展示会 等の開催又は展示会等への出展、知 的財産に係る調査等の事業に係る経 費の一部を補助します。 補助金限度額500万円、補助率2/3 以 内 ◆ふるさと名物応援事業 (低未利用資源活用等農商工等連携 支援事業) 中小企業者と農林漁業者とが有機 的に連携し、それぞれの経営資源を 有効に活用して行う新商品・新役務 の開発、需要の開拓等を行う事業に 係る経費の一部を補助します。 補助金限度額500万円、補助率2/3以 内 ◆政府系金融機関による融資制度 認定を受けた事業計画に基づく設備資金及び運転資金について、政府系金融機関が優遇金利で融資を行います。 融 資 ◆高度化融資制度 4者以上が連携して行う事業に必 要な生産・加工施設等の設備資金に ついて、中小機構が都道府県と協力 して融資を行います(無利子)。 ◆農 業改良資金融通法、林業・木材 産業改善資金助成法、沿岸漁業改 善資金助成法の特例 中小企業者が農林漁業者の行う農 業改良措置等を支援する場合に農業 改良資金等(無利子)の貸付を受け ることができます。また当該資金の 償還期間及び据置期間を延長します。 信用保証 ◆信用保証の特例 中小企業者が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が債務保証をする制度で、中小企業者は次の措置を受 けることができます。 *普通保証等の別枠設定 普通保証2億円、無担保保証8,000万円、特別小口保証1,250万円、流動資産担保融資保証2億円に加えて、それ ぞれ別枠で同額の保証を受けることができます。 *新事業開拓保証の限度枠拡大 新事業開拓保証の限度額が2億円から4億円(組合4億円から6億円)に拡大されます。 ◆食品流通構造改善促進法の特例 食品の製造等の事業を行う中小企業者が金融機関から融資を受ける際、食 品流通構造改善促進機構が債務保証等をする制度で、食品の製造等の事業を 行う中小企業者は、当該認定事業に必要な資金の借り入れに係る債務の保証 等を受けることができます。 その他支援措置 ◆中小企業投資育成株式会社の特例 事業を行う中小企業者が増資等を行う場合、資本金3億円を超える株式会 社であっても投資育成会社の投資対象に追加されます。 ◆特許料の減免措置 技術に関する研究開発事業による 成果について、中小企業者が特許出 願を行った場合、審査請求料・特許 料(第1〜10年)を半額に軽減でき ます。 (※)平成27年3月時点の支援措置です(一部、予定を含む)。なお、年度等によって名称や内容等が異なる場合があります。 8 目 次 都道府県 事業者名 北海道 北海道 フィールド 倶楽部 株式会社 事業 区分 商品 事例概要 頁 特殊コーティング ウレタンフォーム 家具等 屋外広告物企画制作会社が革新的なデザイン力と独 自の特殊ウレタンコーティング技術で、耐久性、防 水性、抗菌性、難燃性に優れた高級ファーニチャー、 遊具、内壁材などを商品化し空間創造メーカーとし て飛躍を目指す。 10 青 森 山 形 東 北 関 東 中 部 山 梨 岐 阜 北 陸 富 山 近 畿 奈 良 中 国 岡 山 四 国 香 川 九 州 佐 賀 沖 縄 沖 縄 藍染 地域の力を結集して開発した独創の藍染技術で、藍 染の既成概念にとらわれない新たな「あおもり藍 14 AOMORI BLUE」ブランド商品を開発。ヨーロッパの アパレルメーカーとの連携を模索し世界に挑む。 米富繊維 株式会社 ニット 創業から培った交編(こうへん)技術に世界に通用 するデザインを組み入れ、他には類を見ないニット 18 織物でファクトリーブランドに挑戦。デザイン性が パリやニューヨークの海外市場で高評価を得て飛躍。 株式会社 電溶工業 抵抗溶接機 従来にない小型・軽量で高速運転が可能な自動溶接 機を開発し、自動車製造ラインの大幅合理化を実現。 品質問題を乗り越え世界に挑む。 22 株式会社 ハナムラ 映像装置付き 鏡壁面 「インテリア」と「音」と「映像」の融合をIT技術で 可能にした室内空間の演出事業で、世界の高級マン ション、ホテル、商業施設へ挑む。 26 株式会社 ユーキフーズ 地場産カット野菜 野菜生産者、製造者、流通者、メディア、公的機関 の連携により、子育て世代が求める、地場産野菜を 使った安全で安心なカット野菜商品を開発。地場産 野菜の生産、消費の拡大と「食育」の推進に挑む。 30 今西酒造 株式会社 地酒造りと伝統 文化の体験型 観光 老舗酒造会社が中心となって伝統文化を体感する「体 験交流型観光プログラム」を開発。地元企業、観光 協会、NPO法人、地域支援機関、中小機構が協力し て着地型観光事業を実現。 34 株式会社 プラント ベース サイロの メンテ・サービス サイロ補修用移動式足場「ステージタワー」を開発し、 安全性と短工期・低コストを両立させた革新的メン 38 テナンス工法で、使用不能になったサイロを蘇らせ る画期的事業をベンチャー企業が実現。 有限会社 スエヒロ 銀波亭 オリーブ活用の 鴨肉加工品 老舗の 鴨料理専門店が料理研究家の協力を得て、地 元オリーブを活用した洋食スタイルの鴨料理ギフト セットを開発。「ヘルシー・お洒落・アレンジ自由」 をコンセプトに女性の新規顧客層を開拓。 42 有限会社 ミマツ工芸 木製インテリア アクセサリー 家具部品メーカーが、「木」にデザイン性やファッシ ョン性という付加価値を加えた世界市場に通用する インテリア・アクセサリーを開発。売り場の提案な どビジュアル・マーチャンダイジングを活かして販 路拡大に取り組む。 46 沖縄 子育て良品 株式会社 天然素材の 化粧品・雑貨・食品 「自分の子どもたちのために」という“母親の視点”で、 沖縄の天然素材を活用した化粧品・雑貨・おもちゃ 50 等の商品を開発。その価値を伝えるためのブランド コミュニケーションで販路拡大に取り組む。 あおもり藍 産業協同 組合 9 フィールド倶楽部株式会社 北海道北広島市 革新的なデザイン力と独自のコーティング 技術で「空間創造メーカー」として飛躍! 施工例:公共施設での特注大型家具 北海道の屋外広告物企画制作会社がウレタンフォームの特 殊コーティング技術を用いた高級ファニチャー、内壁材等 を市場化。子供、シニア、障がい者にも配慮した耐久性、 防水性、抗菌性、難燃性に優れた新たなウレタン製品を開発。 アジア圏等の海外販路へも進出。 ●会社名 フィールド倶楽部 株式会社 ●代表者 見上 眞司 ●設 立 昭和63年12月 ●資本金 1,500万円 ●売上高 6億5,400万円 (平成26年5月期) ●従業員数 34名 ●事業内容 商業施設・公共施設・医療施設等 の内外装空間の総合企画、デザイ ン・設計・製作・施工・監理及び これに付随する全ての業務 ●所在地 本社・FACTORY1 北海道北広島市大曲工業団地4-1-2 ●URL http://www.fieldclub.co.jp/ ●TEL 011-370-3400 ●FAX 011-370-3444 ●事業名 ウレタンフォームへの特殊コーテ ィング技術を活用した商品の開 発・市場化事業 事業の概要 <季節変動を無くすために、 空間創造メーカーに転身> フィールド倶楽部㈱(以下同社) は昭和63年の創業以来、クライアン トの想いを看板や造形という形で表 指し、本連携事業に取り組むことに なった。 <特殊コーティングしたウレタ ンフォームで安心安全・デザイ ン性の高い商品の市場展開> これまでの看板製作で培った塗装 現し、景観づくりを行ってきた。社員 技術、そして景観づくりや空間づく 一丸となってチャレンジ精神を忘れ りで培った造形技術を融合させ、ウ ず、全力で取り組んだ結果、企画力・ レタン素材に直接コーティングする 技術力・施工力等を評価され、全国 技術及びコーティングされたウレタン 展開のハンバーグチェーン店や北海 素材の活用についての特許を取得し 道の有名菓子メーカー、道内観光地、 た。 西日本のテーマパーク等で、店舗造 この特許技術を生かし、柔軟性・ 形をはじめとして、景観と環境に配 耐水性に優れ衛生的で縫目もなく、 慮した店舗づくりに携わっている。 カラーバリエーション豊富な特殊コ ーティングウレタンフォームで、安 心安全・デザイン性の高い付加価値 商品の市場展開を進めた。 施工例:札幌を代表する菓子メーカー工場外観 同社においては、長年に渡り季節 による業務の集中化と受注の不安定 さを解消することが課題となってお り、この課題を解決するために、こ 商品例:コーティングイス、遊具 れまで培ってきた技術と経験と特許 ●認定期間 平成25年10月〜平成30年9月 技術を生かしたウレタン造形物の製 造・販売メーカーとしての成長を目 製品の構造:フレックスプラスは、色づ けを含め3層にコーティングを行う 事業の推進体制 協力 テコデザイン㈲ コア 北海道工業 試験場 日本文化用品 安全試験場 ㈱相合家具 製作所 フィールド倶楽部㈱(北広島市) 事業統括・製造・販売 連携 ㈱sixinch . ジャパン(東京) デザイン・海外展開 10 連携 ㈱北海道イノアック(美唄市) 素材開発・難燃性 建材市場 特注市場 高級 ファニチャー 遊具 初めての経験であった。 <企業連携が相乗効果を発揮> 本連携事業では、フィールド倶楽 事業の展開 部㈱がコア企業になって、自社の保 の事業計画となる大切な道しるべで 有する特許技術を生かしたウレタン <新連携事業を活用> 平成25年4月、同社総務スタッフ あり、社長と小笠原さんが協力して フォームコーティング商品の開発・ 小笠原純子氏(現総務課長)は、 「同 創り上げるのが最も重要です。」と 製造・情報発信等を行った。 社は技術的にも商品的にも素晴らし 説明した。そこから同社の認定申請 連携企業でありマーケテイング戦 いものを持っている。しかしブラン 書作成への取り組みが始まった。 略立案、販売営業活動を担当した㈱ ド力を強化したり、販路開拓をする 吉本PMは、「事業新規性の根拠 sixinch.ジャパンは、ベルギー等の ためには資金が必要になる。公的機 は?もっと具体的に。」、「連携する 海外デザイン会社と業務提携し、日 関の補助金を使ってチャレンジして ことの必要性とメリットは?」、「連 本にはないデザインを取り入れ、世 みたい。」と考え、前職で補助金申 携企業にもメリットはあるのか?」、 界へ販路を広げる役割を担ってい 請相談をした経験から、縁があった 「良い物でも売れるかどうかわから る。クライアントである高級家具販 北海道経済産業局へサンプルを持参 ないから、市場調査を実施し、ニー 売事業者や設計会社に本商品の提案 し訪問した。これを見た北海道経済 ズ把握をしましょう。」と見上社長 を行った。 産業局の担当者は、「ウレタン素材 に課題を投げかけた。吉本PMが見 また、防炎、難燃性素材の開発を担 に直接塗装したイスを今までに見た 上社長に同行して市場調査を行った 当した㈱北海道イノアックは、日本 ことがない。これは新連携事業で支 時、東京の有名な高級家具販売業の で初めてドイツからウレタンフォー 援可能ではないか。」と考え、中小 マネージャーから「フィールド倶楽 ムの技術を取り入れ、軟質ウレタン 機構の新連携事業担当であった吉本 部のこのイスは、実は他社が作りた フォームの全国シェアNo.1を誇る素 プロジェクトマネージャー(PM) くても作れなかったものなんです。 材メーカーであり、防炎、難燃性の高 に紹介の電話をかけた。 デザイン、色が自由で、防水効果、 いウレタンフォームの開発を行い、加 当時、吉本PMはウレタン素材に 防カビ効果、補修が簡易等の特徴か 工技術の向上について支援を行った。 塗装したイスの新規性を懸念した ら、屋外の利用も可能な商品です。」 が、サンプルを見てから事業化の是 とのお墨付きをもらい、事業の成功 非を判断しようと見上眞司氏(代表 を確信した。 取締役)にアポイントを取った。 ただし、市場調査を進める中で、 吉本PMは、第1回目の面談で当 内壁材として市場開拓を行うために 機構を訪れた見上社長と小笠原氏の は、不燃性、難燃性の基準をどうク 商品に対する熱い思いと、事業の季 リアするのか、そもそも石油を主材 吉本PMは、「申請書は今後5年間 節変動性を無くすためには付加価値 料としているため燃えるのが当たり 商品例:自由なデザインが可能な大型ソファ メーカーへの変革が必要であるとの 前の塗料やウレタンにどう対処する さらに、技術面においては、北海 見上社長の思いにふれ、新連携事業 のかという困難な課題が明確にな 道立総合研究機構工業試験場と連携 での支援の可能性を探る必要性を感 り、工業試験場等と試行錯誤を繰り した不燃塗料の開発や北海道立総合 じた。その後、吉本PMは同種の商 返しながら課題解決に挑戦した。 研究機構北方建築総合研究所と連携 品はないかインターネットを検索、 その他にも次から次へと課題が出 した難燃性対応等の研究開発も継続 東京・青山の高級家具販売店へ電話 てきて、申請書提出期限までの3ヶ 中である。今後は、特に内壁材の建 でのヒアリング等を行った結果、実 月はあっという間に過ぎていった。 材市場展開において、技術面での課 は有りそうでなかった新規性の高い 市場調査結果やサンプリング調査 題を解決することが市場拡大の鍵と 商品であることが確認できた。また 結果、競合比較表、販路ヒアリング なる。 同社は、塗料と塗装について特許取 結果、補足資料を含めた事業計画書 得している点からも新規性はクリア が完成し、平成25年10月に新連携事 できそうだとの判断で当機構内部で 業計画に認定された。 検討の結果、新連携事業計画の認定 小笠原氏は、「これほど勉強して に向けた支援を決定した。 申請書を作成したのは生まれて初め て。」、見上社長も、「3ヶ月間はあっ <認定申請書の作成> 商品例:ウレタン素材の内壁材は、ぶつか っても柔らかいため安全性が確保できる という間で、社員、家族の誰よりも 今まで一度も公的機関へ支援制度 小笠原氏と事業計画について熱く語 や補助金の利用等で相談に行ったこ り合った。」と振り返る。 とのない同社は、もちろん、支援制 度へのエントリーも、申請書作成も 11 <連携事業の推進課題の確認> しっかりとしたコンセプトとブラン ネキン会社との連携イベント開催に 本事業が北海道の成功事例になる ド力強化が必要であるとの認識か もつながった。 ことを目標に、中小機構の支援を積 ら、吉本PMは家具関連分野のブラ ②−2 販路開拓コーディネート事業 極的に活用して事業の課題解決に取 ンディングに実績のある杉原アドバ を活用し、関西圏での販路開 り組むことで、吉本PMと見上社長 イザー(AD)に支援を依頼した。 が認識を共有して事業化へのスター 企業の目指す姿、商品の特徴やコ 首都圏においては着実に販路が広 トを切った。 ンセプト、誰にどう使ってもらいた がり始めたものの、関西圏では実績 吉本PMは、本事業の課題は大き いのか、誰を幸せにしたいのか。一 もなく、デザインや面白さに関心の く分けて以下の5項目であると思っ つ一つ議論を重ねながら具体化して 高い大阪における認知度向上を図る た。 いった。その結果、ブランドコンセ ために、建設、デザイン事務所、百 ①知名度の向上 プト等が明確になり、発信力が高ま 貨店、家具業界等に人脈を持つ販路 同社は、技術力、デザイン力は高 った。 開拓コーディネーターの紹介を受け いが、情報発信力が弱く知名度が低 ②−1 展示会等への参加で販路開拓 ることが最短距離と判断し、販路開 いことが課題である。事業コンセプ 東京、大阪を中心に、取扱店、デ 拓コーディネート事業を活用した。 トを明確にして、業界紙等のメディ ザイン会社、百貨店等への販路開拓 結果として20社の企業と面談を行 アに発信することで同社の知名度を を行うためには、商品を見てもらい、 い、大手百貨店のイベントでの採用 上げ、大口顧客獲得、各賞受賞につ 触ってもらうことが必要であるとの や高額福袋での商品提供依頼等が入 なげていくことが必要である。 判断から積極的に展示会等に出展・ り、成果が着実に現れている。 ②販路の開拓 出品することにした。新連携事業計 ③機能性開発の為、工業試験場等と 首都圏、近畿圏のターゲット顧客 画認定期間中に実施された以下の展 である家具販売店、百貨店、デザイ 示会等に出展・出品した。 今までに意思疎通が上手くいか ン事務所、設計事務所、大手ゼネコ ・IFFTインテリアライフリビング ず、公的機関との連携や相談等が苦 ン、保育園、遊戯施設等への販路開 (イス) 拓 の連携強化 手であった見上社長の思いを受け、 拓を戦略的に行うことが必要である。 ・ギフトショー(遊具・イス) 相談するべき支援機関の選定、初回 ③機能性の開発 ・JAPAN SHOP(内壁材) 訪問時の同席、意思疎通のためのプ イスや家具関連商品においては、 ・JCDプロダクトオブザイヤー レゼンテーション支援等を行い、共 抗菌、防水性試験に合格済みであり、 (内壁材) 同研究等による開発支援体制の基礎 販売に支障はないが、内壁材におい ・Living&Design大阪(イス・内壁材) 作りを行った。 ては難燃性塗料の開発、難燃性試験 具体的には、北海道立総合研究機 をクリアすることが、建築資材とし 構工業試験場と連携した不燃塗料の て販売する場合には絶対的な条件と 開発や北海道立総合研究機構北方建 なる。 築総合研究所と連携した難燃性対応 ④組織力の強化 等の研究開発などを進めている。 ④組織力強化の推進 営業、デザイン、経理など新事業 に相応しい人材を確保、育成しない リビングデザイン2014の会場入口に展示 当機構主催の研修会への参加、吉 と事業拡大のスピードに追い付いて 本PMとの月度の打ち合わせ、毎月 行かない。 の活動報告書作成、展示会毎の応対 ⑤事業資金の確保 研修等がOJTとなり、着実に社員の 事業拡大に伴い事業資金ニーズが 能力向上につながってきている。ま 出てくる。 た、新規人材の採用活動も積極的に このような課題認識から吉本PM 開始した。更に、小笠原氏の総務課 が支援して、具体的に事業を推進し 展示事例:リビングデザインセンター OZONE 長昇格による組織再編で、見上社長 出展に当たっては、見込み先の動 の思いを実現する体制ができつつあ 員方法、展示会での名刺確保の方法、 る。 <中小機構の支援策 フル活用で活性化> 商品の陳列方法、展示会後のフォロ ⑤日本政策金融公庫、商工組合中央 ①地域活性化支援アドバイザー派遣 等の打ち合わせを事前に行った。そ 人材採用、商品開発、設備投資、 事業を活用しブランディング実施 の結果、現在商談中も含め、複数の 販路拡大の為の資金確保及び金利負 良い物でも認知されなければ販路 企業からの受注につながったばかり 担軽減が課題であったが、認定の結 は広がらない。認知されるためには か、虎ノ門ヒルズでのイベントやマ 果、低利融資が実行され事業成功の ていった。 12 ーアップ(礼状やサンプル送付など) 金庫融資実行 ための資金確保ができた。 業へと成長 事業者のひと言 し て き た。 事業の成果 更 に、各 種 新連携事業実施による成果は、大 的に活用す きく分けて以下の5つである。 ①社員採用による組織構築 る こ と で、 高橋知事から北海道チャ 「平成25年 レンジ企業表彰を受ける 認定による企業イメージ向上や、 度北海道チャレンジ企業 経営革新 情報発信力の強化により、家具業界 部門表彰 ( 北 海 道 主 催 )」「2014年 出身者を中心とした5名の社員採用 JCDコンテスト準グランプリ(一般 ができ、販売における営業体制の強 社団法人日本環境デザイン協会主 化、本社(総務部を新設)における 催)」の表彰を受けた。 サポート体制の強化につながってい また、これらの表彰受賞が以下の る。特にフェイスブックで当社に興 メディア掲載につながった。 味を持ち、入社希望を伝えてきたベ ・北海道新聞(平成25年10月24日) ルギー人(東京在住)の採用のケー ・商工中金ニュースリリース(平成 制度を積極 スは、当社の自由な気質を表す例で これまで関係が薄かった公的機関 と初めて取り組むチャンスを頂き、 新連携事業計画認定にチャレンジし た結果、企業の成長、発展、社員の 成長にも繋がって来ています。 認定後、中小機構の支援制度を積 極的に利用させて頂き、顧客の拡大、 当社製品の宣伝、その成果と急激な 成長を肌で感じております。 今後、全国、アジアへと販路を広 げて北海道の中小企業のモデル事業 へと成長を遂げ、北海道の発展に微 力ながら貢献出来るような企業と成 れますよう努力をしたいと思います。 25年12月27日) あり、連携企業である㈱sixinch.ジ ・北 海道建設新聞(平成25年11月1 ャパンのスタートはベルギーである 日、平成26年1月28日) ことからも貴重な縁と言える。 ・帝国ニュース(平成25年10月31日) ②社員育成 さらに、これらの表彰受賞やメデ 申請書作成から事業計画の実現を ィアへの掲載が、企業の認知度向上、 推進する中で、チャレンジ気質や戦 ブランド力向上、人材採用につなが 略立案能力、営業力等を身につけた っていった。 社員の育成につながっている。 ⑤販路拡大 ③商品開発 展示会でターゲット顧客への訴求 遊具、大手企業とのジョイント、輸 を行い、300以上の顧客リストを入 送機器メーカーとの共同企画、 装飾材 手し、現在、フォローを行いつつ、 の開発等が進んでおり、 公共施設や美 販売につなげている。 術館、遊戯施設等へ導入されている。 また、販路開拓コーディネート事 業では大阪を拠点とした大手企業を 含む20社の候補顧客と接点ができた ことにより、着実に販路拡大につな がってきており、平成26年10月には、 初めて単月売上7百万円を達成し、 年間売上50百万円が達成できるとこ 施工例:美術館における遊戯施設 ④企業の認知度、ブランド力向上 ろまで成長してきた。また累計でも ブランディングの専門家の支援に 当初計画比130%を継続中であり、 よって事業コンセプトが明確にな 平成26年度黒字化達成、平成27年度 り、ブランド力強化、情報発進力強 には売上1億円の大台突破も現実味 化につながった。“知る人ぞ知る” を帯びてきた。 代表取締役 見上 眞司 氏 支援者のひと言 同社は、“知る人ぞ知る“北海道の 隠れたキラリ輝く企業です。中小企 業でありながら、世界的企業からも 多くのオファーを頂きメーカーとし ての第一歩を着実に歩み始めていま す。今までありそうでなかった「柔 軟性・耐水性に優れ、衛生的で縫目 もなく、カラーバリエーション豊富 な、特殊コーティングウレタンフォ ーム」素材を活用した商品は、高齢 者や子供たちにも優しく、安全安心 かつカラフルで、夢溢れる空間創造 にもつながる、素晴らしい事業です。 世界にフィールド倶楽部の名前が轟 く日を期待しています。 から、大手企業も取引したくなる企 認定事業の売上推移(単位:百万円) 70 60 50 40 売上げ実績 60 55 売上げ計画 45 50 38 30 20 10 0 17 12 1年目 2年目(見込) 3年目 4年目 5年目 北海道本部 吉本プロジェクト マネージャー 13 あおもり藍産業協同組合 青森県青森市 地域の力を結集して開発した独創の藍染技術 が、新たな「あおもり藍」ブランドを生み出す 伝統的な藍染工程「すくも」ではできなかった染料製造工 程を大幅に短縮する独自の技術を藍葉のパウダー化により 開発。その特性を生かし、藍染の既成概念にとらわれない 新たな「あおもり藍 AOMORI BLUE」ブランド商品の開発、 製造、販売に挑む。 ●会社名 あおもり藍産業協同組合 ●代表者 吉田 久幸 ●設 立 平成18年9月 ●資本金 80万円 ●従業員数 9名 ●事業内容 独自の染料化短縮技術による藍染 製品の製造、藍に含まれるトリプ タンスリンの抽出とその活用 ●所在地 青森県青森市堤町2-24-20 ●TEL 017-763-5420 ●FAX 017-763-5423 事業の概要 大学教授の藍染の歴史に関する講演 を聴いた。 <事業を取り巻く環境> 吉田氏は、スライドに映し出され 藍は、青色を発色する数少ない天 た藍の花のピンク色の美しさに感動 然の染料であり、古くから世界中で し、「休耕田を活用して藍を栽培す 使われた最もポピュラーな染料の一 れば景観も美しくなり、藍を活用し つであった。青森県においても江戸 たビジネスが興せるのでは。」と考 時代から農村などでは古くなった藍 えた。 染の布を継ぎ重ね、「ぼろ」といわ れる着物や敷物を代々受け継いでき た。 しかし、近代になりヨーロッパで 化学染料(合成インディゴ)が開発 され日本に輸入されると、日本の藍 染は衰退して手芸用途以外はほとん ●事業名 青森独自の染料化技術を核とする 「あおもり藍」ブランド商品の開 発、製造、販売 ●認定期間 平成24年7月〜平成29年3月 ●地域資源名 藍 ど皆無となっていたが、現代では天 藍の花 然藍の持つ美しさや風合いが そこで仲間に声がけを行い、藍染 「JAPAN BLUE」として欧米の美 文化の青森における復活と耕作放棄 術家などからも見直され、世界の共 地の再活用を通じた社会貢献を目的 通語「BORO」になるまで注目を集 として、「青森独自の藍染技術を確 めている。 立したい。」という夢を胸に平成15 年に研究会を立ち上げた。 <本事業着手の経緯> 藍染はインディゴを繊維に沈着さ 青森県で縫製業を営んでいた吉田 せることで染める染色である。この 久幸氏は、平成13年のある日、友人 インディゴには青い色素が含まれて に誘われて藍研究会に参加し、弘前 いるが、中性で非水溶性である事か 事業の推進体制 青森市外の連携先 青森市内の連携先 商品化支援 OEM あおもり藍産業協同組合 新素材 縫製技術 独自の 染料化技術 プリント・抜染 原料 デザインⅡ デザインⅠ ブランド化 動体裁断 14 刺繍 設備開発 連携支援 「あおもり藍 AOMORI BLUE」のタグ 販路支援 色落・変退色防止 ら、強アルカリ性の水 溶性に化学 工程を一括して行う「あおもり藍産 月に青森市内で開かれた「一日中小 変化(還元)させ(この工程を「建 業協同組合」が設立され、主に受注 企業庁」に参加したところ、中小機 てる」と呼ぶ)、繊維に沈着させた後、 による藍染を行ってきた。 構の鎌田プロジェクトマネージャー 酸化させ発色させなければならない。 また、これらの研究を進めていく (PM)に事業計画を相談する機会 これまでの藍染は「醗酵建て」と うちに青森県中小企業団体中央会や を得た。鎌田PMは、吉田氏の話を いい、染料作り職人が経験と勘を頼 青森市、弘前大学、青森市内で藍を 聞く中で当事業のポテンシャルの高 りに藍の乾燥葉を約100日かけて発 栽培する農事組合法人、地元金融機 さと地域活性化への貢献度の高さを 酵させて得られる「すくも」と呼ば 関、デザイナーとの多様な連携が生 認識した。また、吉田氏の熱意や人 れる染料によって染液を調整する方 まれ、独自の染料化技術を活用した 間的な魅力にも大いに惹きつけられ 式を採っていた。この方法では、職 商品化の機運が高まっていった。 た。 人の育成に長い時間が掛かるばかり 中でも連携していた被服デザイナ この出会いにより、藍の生産から でなく、染色工程においても量産化 ーが考案した裁断技術が本事業を前 染料化、マーケティング・企画・デ に向かないものであった。そこで、 進させた。使用時に身体の動きにフ ザイン・製造・販売の全てを独自に 研究会では安定的に藍染製品を生産 ィットして運動を妨げない「動体裁 行うオリジナルブランド「あおもり し、量産需要にも応えていくため、 断法」である。この動体裁断法と組 藍 AOMORI BLUE」の確立を目 「すくも」ではない独自の染色工程 合独自技術である藍の抗菌性、防臭 指す事業への吉田氏や組合メンバー の開発に取り組んだ。 性を取りいれて作られた藍染のポロ の挑戦と、当機構のハンズオン支援 また、研究会が開発した新しい染 シャツは、平成22年に宇宙船スペー が始まった。 色工程は「化学建て」といい、藍の スシャトル・ディスカバリー号に乗 乾燥葉をミクロン単位でパウダー化 り込んだ宇宙飛行士が着用した機内 し、それに苛性ソーダとハイドロサ 服に採用され、一躍脚光を浴びた。 <地域資源活用事業計画に挑戦> こうして、本格的な事業化が図ら ルファイトナトリウムを合わせて、 れる事になり、青森県中小企業団体 独自の調整技術により藍染液を作っ 中央会とも連携して「地域資源活用 て染色を行うものである。この工程 事業計画」の認定を受けるために鎌 の開発により、以下のメリットが得 田PMの支援を受けて、5か年の事 られた。①これまでの藍染液よりも 業計画を策定することになった。 抗菌活性物質(トリプタンスリン) 事業計画策定に当たっては、伝統 が約5倍も含まれている。②染料の 工芸品としての藍染製品に、前述の パウダー化により染色堅牢度(色落 新たに開発した藍染工法(化学建て) の持つ機能性(抗菌性・減菌性・防 ちのしにくさ)が高くなる。③従来 の20分の1以下の短期間で染色が可 宇宙船の機内服 れが簡単で耐久性が高く「使いやす 能になる。④染液調整工程を数値化 でき、8色の色の違いを提案できる ようになる。⑤品質均一化が可能に なる。など、工業製品化への実現可 臭性・消臭性など)を活かし、手入 事業の展開 さ」という新しい価値を加えた藍染 <中小機構との出会い> 購入しなかった消費者へも藍の魅力 製品を提案し、これまで藍染製品を 青森藍を原材料とした製品の産業 を伝え、販路拡大に取り組むことを 化・特産品化を図ることにより、地 主目的とした。 域活性化を図るという吉田氏や組合 商品開発に当たって商品コンセプ 員の思いは、これらの取り組みの成 トは、対象をカジュアルで青系の色 功により、第一歩を踏み出した。し を好む方全般として①買いやすい価 かしながら、オリジナルブランド「あ 格②普段使いできる商品構成③若年 おもり藍 AOMORI BLUE」を構 層から高年齢層まで対応できるデザ 築して、伝統工芸品の藍染製品から イン③日常的に使用する雑貨製品④ 普段使いの藍染製品の生産に取り組 国産で合成インディゴ式による青い むための中長期的なビジョンは、同 商品と比べても高品質で味わい深い 組合としてはまだ明確に描ききれて 色合いのあるものとした。 この技術を核として青森県中小企 はいなかった。 また、商品ラインアップは、手入 業団体中央会に相談し、平成18年に そのような中で、吉田氏が事業化 れが簡単で耐久性も高い加工を施し 青森県の縫製、刺繍、特殊印刷技術 に向けた長期的なビジョンづくりの たポロシャツやTシャツなど、普段 などを持つ異業種4社により製品化 ためのヒントを得ようと平成23年11 から気軽に使える衣類だけではな 能性が高まった。 染料化技術による色のバリエーション 15 く、介護用品や木などに藍染を施し 持つことになった。更にそのテレビ た雑貨品等とした。 <認知度の高まり> 東京の大手百貨店グループは、平 局の世界的なネットワークで147か その後、市場調査、試作品の製作、 成26年2月のニューヨーク・ファッ 国でも放送され、一層認知度が高ま モニタリング調査等を繰り返しなが ション・ウィークの開催期間に合わ った。 ら商品を完成させ、国内外の展示会 せて、現地でポップアップストアを また、前述の東京の大手百貨店グ への出展や百貨店等への営業を通じ 出店した。 ループは、平成26年4月に新宿の店 て販路の拡大に取り組むことにした。 このプロジェクトは、経済産業省 舗で同組合の藍染商品のみのイベン の平成25年度クール・ジャパン戦略 ト「JAPAN BLUE あ お も り 藍 推進事業(アパレル・ファッション・ CREATION」を開催し、同組合は 繊維、コンテンツ、地域産品、デザ このイベントのため、37ブランドと インなどに関わる日系企業が、海外 ダブルブランドでデニム、シャツ、 で効果的にブランドを打ち出し市場 シューズ、バッグなど数多くのアイ を開拓できるようにする事業)に採択 テムを作り上げ、展示販売を行った。 されたもので、日本の良いもの、良い このイベントを開催した結果、有力 人を世界に紹介し、グローバルマー ドメスティックブランド(国内のフ 藍染を施した靴 ケットへの進出をサポートすることが ァッションブランド)を中心に多く 目的である。このポップアップストア のオーダーを得ることができた。 一方、同組合の一番の課題である に同組合は、藍染したアパレル6ブラ 独自ブランド「あおもり藍 AOMORI ンド、靴、バッグを含めると8ブラン BLUE」の構築については、同組合 ドの商品をダブルブランドで出展し が操業開始後間もないこともあり、 た。会場には世界的な著名デザイナ 経営体力が弱く知名度もない中で独 ーも出展しており、反響も大きかった。 <ヨーロッパのアパレルメーカー との連携を模索> ニューヨークのポップアップスト アに出展し、海外で認知度を高める 自ブランドのみによる商品展開は難 ことの重要性を認識した吉田氏は有 しいと判断した。そこで、ダブルブ 力ブランドとのコラボを通して自社 ランド(提携、共同開発などにより、 ブランドの認知度向上の取り組みを 一つの商品に複数のブランドを付け 積極的に進めるために、ファッショ ること)によるアパレルブランドと ンの先進地であるヨーロッパのアパ のコラボレーションや、OEM生産 レルメーカーとの連携を目指すこと の受注等による販売チャネルも並行 にした。大手ファッション系商社か して確保することで、同組合の認知 らフランスでの販路開拓を勧められ 度向上及び独自ブランドの確立を目 ていたこと、連携するドメスティッ 指すことにした。そして、5年後に クブランドのイタリア進出もあり、 開発商品の売上高を5,000万円とす ニューヨークのポップアップストア ることを目指す地域資源活用事業計 ニューヨークのポップアップスト の事業展開を進めることを決定した。 画を策定し、平成24年6月20日に認 アへの出展は、日本国内のテレビの この機会を捉まえ、中小機構の海 定を受けた。 ニュース番組で取り上げられ、あお 外展開支援担当より中小企業海外展 認定後、試作品の開発を行うとと もり藍への関心は全国的な広がりを 開支援体制整備事業を活用すること 平成26年度はフランス、イタリアで もに、OEM供給先を獲得するため、 を提案し、現地の反応を踏まえたア 鎌田PMは展示会への参加を勧めた。 ドバイスを行った。 その遂行に当たっては、欧州輸出 <国内展示会への参加> 入に関して課題となる付加価値税を 鎌田PMの支援を受けながら、初 はじめとする諸問題の解決に、当機 めて本格的な展示会である東京イン 構の佐藤 海外販路開拓支援シニア ターナショナルギフトショーに平成 アドバイザーが当たり、アポイント 24年9月に参加した。数件の引き合 取得などに関しては、JETROや同 いがあったが、この時点ではまだ生 組合が連携するドメスティックブラ 産体制が十分整備されておらず、商 ンドの協力が得られた。 談までには結びつかなかった。 フランス・パリにおいては、バッ 「あおもり藍 AOMORI BLUE」を紹介 するテレビ番組の案内チラシ 16 グ、アパレルの高級ブランドメーカ ー等へのプレゼンテーションを行 い、イタリアにおいては、フィレン が強化された。 ツェで行われていた展示会への出展 藍の生産から染料化、藍製品のも 企業をはじめ、中小企業でありなが のづくりまでを青森で行うことによ ら極めて高い技術を有する企業との り、地域の農家の所得向上、雇用創 連携を模索した。 出、商品の付加価値獲得を目指す同 一方、吉田氏は、現地に製品を納 組合の試みが、地域活性化のモデル めるための日欧間の往復輸送コスト ケースとして注目されている。 及び輸送時間、通関に係る付加価値 税などが大きな障壁になると考えて いた。しかし、現地では、同組合の 支援体制の紹介 有する種々のユニークなスキルや休 <事業委員会の開催> 耕田活用の社会的背景が世界のトッ 支援機関の青森市経済部雇用創 プブランドの担当者から注目を浴 出・企業立地課、青森県中小企業団 び、藍白から濃藍の各色、綿、麻、 体中央会、地元金融機関、中小機構 絹、ウールの各素材毎の具体的なサ と同組合を構成員とした事業委員会 ンプル作成依頼が殺到する結果が得 を組成し、進捗状況の管理と事業の られるなど、欧州展開に向け大きく 進め方、課題解決の対応等、定期的 前進することができた。 に会合を持ちPDCAを廻している。 連携支援者のひと言 あおもり藍産業協同組合との出逢 いは、吉田代表理事から藍染の手袋 を戴いたことに始まります。その手 袋を戴きバイクグローブのインナー として使用したところ、2週間でア トピー性皮膚炎の症状が改善しまし た。この結果に非常に驚き、何かで 恩返しをしたいと思ってきました。 また、吉田代表理事の「青森独自 の藍染技術を確立したい」「休耕田 を活用して無農薬の藍を栽培した地 域農家の方々への利益還元」という 考え方に感動しました。あおもり藍 の仕事は、こうした出逢いと感謝に よる絆で生まれた仕事。地域に「残 る」産業になるまで共に頑張りたい と思っております。 これらの活動は着実に成果を出 事業の成果 し、様々なイベントへの出展、大学 「あおもり藍 AOMORI BLUE」 との商談推進などに結びついている。 との連携体制の構築、各種ブランド には、伝統工芸品にないファッショ 青森市経済部雇用創出・企業立地課 坂本 康人 氏(右) 青森県中小企業団体中央会 古川 博志 氏(左) ン性と、独自の染色技術により高品 質の商品を量産できる体制を持つ強 みがあり、吉田氏はオリジナルブラ ンドとして海外市場で戦える力は十 分あるとみている。同組合の仲間も これから「あおもり藍 AOMORI BLUE」のブランドを広げていくこ とで一致しており、今後は海外展示 会の企画やマーケティング、販路開 拓を積極的に進めていくことを考え ている。 また、当初同組合では、染色の作 業を実質1名で始めたが、現在では 青森県内の女性を採用して4名体制 で実施しており、前述の日本の大手 百貨店やニューヨークにおける事業 展開に伴い大きく販路が拓けたこと で、染色後の縫製、研究、事務機能 の強化も進められ9名体制となった。 異業種の企業で構成される同組合へ の加入企業も、組合設立時の4社か ら6社に増加し、加入企業への受注 も増加しつつある。さらに、藍製品 の生産増加に伴う藍栽培面積拡大の ために、青森市内で藍を栽培する農 事組合法人との間で栽培方式の規格 化に関する協議を行うなど連携関係 事業者のひと言 「あおもり藍 AOMORI BLUE」 は、 伝統の藍に科学の革新を取り入れ、 「青」を冠する青森で再び藍が生業 となること、また、後継者問題を抱え 年々増加する休耕田を活用すること で農家の方々への還元をめざして、 無農薬で藍を育てることから取り組 みを始めた地域ブランドの一つで す。暗中模索の10年でしたが、農家・ 企業・学術研究機関・金融・行政・ 支援機関の各方面から集まった多く の仲間のご支援・ご協力により青森 という地域全体の取り組みへと成長 させて戴きました。たくさんの人々 の熱い想いの結晶ともいえる「あお も り 藍 」。 そ んな想いが少 しでも皆様の ところに伝わ ること。それ が「あおもり 藍 AOMORI BLUE」の 夢 で す。 代表理事 吉田 久幸 氏 支援者のひと言 「あおもり藍 AOMORI BLUE」」 の事業は、あおもり藍産業協同組合 の吉田代表理事の幅広い人脈と地域 振興にかける熱い想いが多くの人の 共感を呼んで支援の輪が広がってい ると感じます。フランス、イタリア での中小企業海外展開支援体制整備 事業を契機として、同組合の独自ブ ランドの確立に向け更に前進するこ とを期待しています。 また、中小機構は青森県中小企業 団体中央会との連携をますます深 め、地域産業振興に貢献したいと考 えています。 写真左より、青森県中小企業団体中央会 古川博志氏、あおもり藍産業協同組合 吉田久幸代表理事、中小機構東北本部 鎌田チーフアドバイザー(前PM) 17 米富繊維株式会社 山形県東村山郡山辺町 創業から培った交編技術で海外市場に挑戦し ファクトリーブランド を実現 独自の交編技術と30年前から蓄積したニットテキスタイル、 職人の技術をベースに、世界に通用するデザインを組み入 れ、他には類を見ないニット織物を開発。 ファクトリーブランドを確立し、OEM中心の事業形態から 転換を目指した事業者の挑戦。 本社 18 同社は30年前より編地開発部門を <山形県のニット産業の概要> 設立し、企画開発型のメーカーを目 本社所在地の山形県山辺町は、古 指しニット生地の開発に力を入れて くからニット製造業者、紡績、染色 きた。 業者が集まる日本有数のニット産地 形状の異なる多数の糸を組み合わ であり、糸から染色、加工、編立、 せ、編立をする「ニット交編(こう 縫製それぞれを担う企業の連携によ へん)技術」を得意とし、糸の選定、 り同地域内で一貫生産ができる産地 編み組織の組み合わせ、編機の調整 としての形態を保っている。 などのノウハウを蓄積してきた。 しかし、山形県のニット産業は、 30年間に蓄積した15,000種類を超 昭和61年をピークに、中国製品等の えるテキスタイル・アーカイブや職 輸入品に押され売上高、従業員数、 人の技術は、他には真似のできない 企業数が激減していた。 強みを持っていた。 山形県ニット産地 売上高と従業員数の推移 600 6,000 500 5,000 400 4,000 300 3,000 200 2,000 100 1,000 0 従業員数(人) ●事業名 ニット交編技術を活用した高付加 価値ファッション商品の開発と販 路開拓 〜オリジナル ニット・ツウィード のブランド化〜 ●認定期間 平成22年9月〜平成27年5月 ●地域資源名 ニット <Coohem事業に取組む経緯> 事業の概要 売上高(億円) 0 昭 和 5 昭 7年 和 5 昭 9年 和 6 昭 1年 和 63 平 年 成 2 平 年 成 4 平 年 成 6 平 年 成 平 8年 成 1 平 0年 成 1 平 2年 成 1 平 4年 成 1 平 6年 成 1 平 8年 成 20 年 ●会社名 米富繊維株式会社 ●代表者 大江 富造 ●設 立 昭和27年8月 ●資本金 6,300万円 ●売上高 6億円 (平成24年5月期) ●従業員数 54名 ●事業内容 ウィメンズ・メンズニットの 製造、販売 ●所在地 本社 山形県東村山郡山辺町大字山辺 1136 東京オフィス 東京都渋谷区千駄ヶ谷2-6-1 エストリル93-3F ●URL http://www.yonetomi.co.jp/ http://coohem.jp/ ●TEL 023-664-8166 ●FAX 023-664-8169 売上高 従業員数 また、OEMを中心とする事業は、 景況やアパレルメーカー等の意向に テキスタイル・アーカイブ 左右されやすく、収益性が低い状況 にあった。 交編技術で作られたジャケット等 同社も厳しい市場環境、経営環境 は高いファッション性を持ち業界内 の中にあり、生き残りをかけた事業 で話題になるほどであった。 構造転換を求められていた。 工場内の編機 形状の異なる糸の組みあわせ その時は大江専務も新ブランドへ ォローアップ支援を担当することに の「ビジョン」は持っているものの、 なった。 具体的な事業計画は持っていなかっ 事業計画に沿って、セレクトショ た。小島統括PMは大江専務のビジ ップ等へのアプローチ、展示会への ョンを聞き、試作品を手に取ること 出展、百貨店の催事への出展を行い、 により、事業の可能性を強く認識す 市場の生の声を幅広く聴き、商品デ るに至った。また、大江専務の熱意 ザインに反映する活動を早期にスタ や人間的な魅力にも大いに引き付け ートすることを促した。 られた。 大江専務は飛び込みでのサンプル しかし、OEM事業は価格やデザ この出会いから、Coohem事業へ 持ち込み営業などの活動を開始する インの主導権を発注元が持っている の大江専務の挑戦と、当機構のハン が、Coohemブランドは実績も知名 ため、話題性や技術的評価が取引価 ズオン支援が始まった。 度もないため、十分な営業成果には 格に正当に反映されない。 この事業構造から脱却を目指し 繋がらなかった。 <地域資源活用事業計画認定 に挑戦> しかし、この時に肌で感じた市場 事業への思いや構想を、実現可能 ョップとの接点が、その後のビジネ 商品企画・開発・デザインから製造・ な事業計画として具体化すること ス展開に繋がってくることになる。 販売まで一貫して手掛けるファクト が、事業を推進するための最初のス リーブランド(Coohem)の事業化 テップとの認識を共有し、地域資源 にチャレンジすることを決意した。 活用事業計画の認定を目指して具体 て、交編技術、テキスタイルアーカ イブの蓄積、職人の技術を強みとし、 的な事業計画の検討がスタートした。 30年間に渡り開発し てきた、15,000種類 を超えるニットテキス タイルアーカイブ Coohem 色、形、大きさ、 素材や質感の全 く違う糸を織りあ わせる交編技術 職人技術を発揮 できる調整幅の 広い旧世代の編 機と最新のCAD システムの融合 の反応や、大手百貨店、セレクトシ <パリ展示会への出展から ブランド展開を本格化> 日本におけるこの状況をブレイク 事業計画は、 「狙う市場・ターゲ スルーするためには、世界のファッ ット」・「販路開拓方針・計画」・「販 ションの中心であるパリで評価を受 売体制」「販売促進による需要開拓」 けることが早道ではないかとの考え 「売上収支計画」「地域での関係事 から、認定事業計画を前倒ししてパ 業者連携」などの多岐に亘る項目を リの合同展示会に出展することを、 年度単位に具体化するものであった。 庄司CADに背中を押してもらい決 大江専務にとっては初めての経験 意した。 であり、苦労を伴うものであった。 海外の展示会への出展は大江専務 ON(ビジネス) にとっては初めての経験であった が、カタログ等の作成など出展準備 しかし、ファクトリーブランド事 業は、従来のOEM事業とは事業プ ロセスや、そこで求められる機能・ 能力が大きく異なるため、事業を実 を行った。 横並び 皆と同じ モノ 有名 大衆路線 有名SPA 際に実行するためには困難が予想さ セレクト Coohem ショップ 個性重視 今までに 無いモノ OFF(プライベート) れた。 展示会では、その独創性、ファッ ション性が一際目立つ存在であり、 海外のバイヤーから高い評価受け、 世界に通用するブランドであると、 改めてCoohemの価値に自信を深め 当機構の大局的なアドバイスや具 た。更に、日本から参加している多 事業の展開 体的なサポートは、大江専務には心 くのバイヤーの目にも留まり、国内 <中小機構との出会い> 「振り返って、次代を担う経営者と 強いものであり、勇気づけられた。 中小機構との出会いは、Coohem しての財産になった。」と大江専務 事業の責任者であり、社長のご子息 は話す。 である大江専務(当時部長)が山形 県企業振興公社に事業の具体化に向 け相談に訪れた時に、打ち合わせに 公社を訪問していた当機構の小島統 <国内百貨店・セレクトショップへ 営業展開を開始> 平成22年9月に地域資源活用事業 括プロジェクトマネージャー(PM) 計画に認定され、Coohem事業がス と出会ったのが始まりであった。平 タートし、庄司チーフアドバイザー 成22年6月であった。 (CAD)が事業の実現に向けてフ (パリ展示会:ATOMOSPHERE’S) 19 百貨店やセレクトショップとの取引 新事業を支える人材の確保が必要で ン製品に係わる製造者を始め、グロ が進み出した。 あった。 ーバルビジネス展開を志向する企業 日本市場への本格展開を行うのに 社内の協力体制構築の第一歩は大 が一堂に会し、日本発のコンテンツ、 あたって、営業戦略を練ることにな 江専務が何をやろうとしているの 地域産品、技術を世界進出させるた った。 か、どの様な活動をしているのかを めのマッチング大会と、展示商談会 熟慮の結果、百貨店、セレクトシ 社内に知ってもらうことであるとの を行っている。 ョップそれぞれの業界で一目置かれ アドバイスを庄司CADから受け、 この出展により、ニューヨークの ているところと取引することで、ブ 社内のコミュニケーションを計画的 高感度セレクトショップとの取引を ランドの評価につなげ、その市場に に進めることになった。 開始することになり、国内外のセレ 波及させていくというブランド戦略 都度の報告書の作成と社内への説 クトショップ等との商談に更なる波 (大江専務の名づけた「シャワー効 明の徹底を継続することで、徐々に 及効果を生み出していくことになっ 果戦略」)を展開することになった。 協力体制ができていった。 た。 営業活動の成果は大きく、大手百 また、国の進める地域資源活用事 庄司CADは海外との商談に当た 貨店の旗艦店の受注を獲得し、その 業計画に認定された事や、各種のメ っては、海外ビジネス特有のリスク 展示を見た国内海外バイヤーからさ ディアに取り上げられたことが、こ などのアドバイスを行った。 らなる引合が入ることになり、その の事業を社内へ大いにアピールする また、ニューヨークに行き、自ら 他の百貨店やセレクトショップに波 ことになった。 の目で、どういう売り場で、どのよ 及した。 次に、Coohemの生命線は洗練さ うなお客様に、どのような売り方を れたデザインであるため、CADシ しているか、お客様の反応など、自 <Coohem事業を支える 社内体制の整備> ス テ ム(computer aided design) 分の目で確認することを進言した。 の導入と、新たな都会的な感性を持 ニューヨークの販売現場を視察し このように積極果敢に市場展開を った若い人材の確保と育成が必要に た大江専務は、Coohemブランド商 進めていったCoohem事業ではある なる。 品が日本の価格の3倍以上で販売さ が、ファクトリーブランドである 新たな人材が採用され、CADシ れている状況を目の当たりにして、 Coohem事業はOEM事業では必要と ス テ ム も 稼 働 す る こ と に よ り、 Coohemの価値を再認識し、海外展 されない市場調査、商品企画、デザ Coohem事業の飛躍に向け、新しい 開に更なる自信を深める事となった。 イン、販路開拓、販売などのマーケ 感性で商品を開発する体制が整った。 その後、イタリア、ドイツ、香港、 ティング力を必要とする(図1)。 また、海外展開を睨んで英語の堪能 台湾などへの事業拡大を中小機構の また、同社の生産体制はOEM事 な女性営業職を採用した。 F/ S(フィジビリティ・スタディ)支 業の為の少品種大量生産である。一 方、Coohem事業は多品種少量生産 援事業も活用して積極展開していった。 <ブランド展開を海外へ> 体制が必要になる。 パリでの好評を弾みに、ニューヨ この特徴の違った製品を同一の製 ークを筆頭に海外との取引を促進 造ラインで実現していくためには、 し、露出効果を高めるブランド戦略 既存ラインの職人の協力は欠くこと が有効と考えた庄司CADは、中小 ができないものである。 機構が主催する海外バイヤーとの商 これらの事から、Coohem事業を 談会であるクリエイティブ東京への 成功させるためには、この事業に対 出展を勧めた。 する社内の協力と、デザイナー等の クリエイティブ東京はファッショ (図1) OEM [委託者ブランドで製品生産] 認定事業(Coohem) [自社ブランドで製品を企画・設計・生産] 各チャネルで販売 販路開拓 完成品の生産 編み立て ニット糸の選定 デザイン 商品企画 市場調査 20 製造 <商品ラインを拡大へ> その後、交編の編地を活用した鞄、 靴など商品ラインを拡大した。庄司 品を納めるに当たっては、自ら現地 CADは山形県の家具メーカーとの に出向きショップスタッフを集め コーディネートなどの側面支援した。 て、Coohemブランドのストーリー から話すことにしている。 <更なる発展を目指して> この草の根活動がCoohemブラン Coohemブランドは進行形である。 ドの「語り部(インフルエンサー)」 平成25年度には、Coohem ONLINE を増殖させ、ブランドの真の価値を SHOPをオープンしてEC事業を立 より多くの消費者に伝播していくこ ち上げた。 とになる。 Coohemブランドはデザインの独 創性や商品の企画力が成功のキーフ ァクターである。 商品開発では、自らの感性にミー http://coohem.jp/onlineshop/2014ss.html トするまで何十回も試作を繰り返 す。そこに妥協は一切ない。 また、ファッションに最も高感度 また、革やポリエステルとの異素 な街である表参道の高感度セレクト 材ミックスなど、ニット業界の常識 ショップで、期間限定イベントであ では考えられない高付加価値商品を る「Coohem CUSTOMIZE KNIT」 次々に関係事業者と連携して企画、 など、ブランドを積極的にアピール 開発している。更に、大手ブランド している。 とのコラボレーションでのWブラン 構想段階であるが、ファッションに ドにも取り組んでいる。 事業者のひと言 自社ブランドという新事業立ち上 げにあたっては、会社としても初め ての取り組みでスタート時は様々な 苦労があったことも事実ですが、① 付加価値の高い商品を販売すること による利益改善、②自社で企画、生 産、営業を手がけることによる受け 身体質からの変化、③社内のモノ作 りに対する意識の活性化、④人材育 成に対して前向きな社風への転換、 など売上、利益貢献以外の部分の効 果が予想以上に大きかったと思いま す。 今後はこの5年間のノウハウを基 に、若い人材を中心とした第2、第3 の自社ブランドの育成と継続してい ける社内体制を強化していきます。 高感度な街に自社店舗を構え、顧客 のダイレクトな声を反映し、魅力ある 商品作りにつなげたいと考えている。 専務取締役 大江 健 氏 事業の成果 支援者のひと言 <Coohem事業の快進撃を 支えたポイント> 地域資源活用事業計画での独自の Coohemブランドの立ち上げは、結 果から見れば数年間ですんなり達成 できたように見えますが、背景にあ るリスクテイクやアグレッシブな取 り組みがあってこそ成し得たと考え ます。 また種々の運の良さもスピード感 を持った取り組みの成果でしょう。 今後の第二ステージへの取り組み を通じて、さらに飛躍されることを 期待して止みません。 Coohemブランドは認定事業計画 を前倒しで達成し、同社の主力事業 に成長した。 同時に、Coohemブランドが企業 の評価を高めることになり、主力の OEM事業にも好影響を与えている。 更に、委託者のブランドで製品を企 画・デザイン・生産するODM事業( Original Design Manufacturing)も 拡大してきている。 ブランド戦略を練り、その実現のプ ロセスを事業計画として具体化し着実 ニットと、ポリエステルの裏地の異素 材ミックスによるダウンジャケット に実行に移し、 海外展開など未知の領 域にも果敢にチャレンジしたこと、何よ また、販路計画や、業界のポジショ り大 江専務のCoohem事業にかける ニング戦略などのマーケティング力 情熱が、快進撃を実現させた。 を常に進化させるべく努力している。 大江専務の情熱を持った取り組み このような情熱を持った事業者の の一端を紹介したい。 行動力が新規事業を支えている。 大江専務はセレクトショップに商 東北本部 庄司チーフ アドバイザー 21 株式会社電溶工業 山梨県中巨摩郡昭和町 小型軽量・高速対応の抵抗溶接機を開発 自動車製造ラインの大幅合理化を実現 自動車製造ラインの効率アップの要請から車体溶接作業で は、溶接ロボット等の小型軽量化が不可欠。 独自の駆動機構や支持構造の研究開発を行い、従来にない 小型・軽量で高速運転が可能な自動溶接機を実現。 抵抗溶接機 ●会社名 株式会社電溶工業 ●代表者 中村 章男 ●設 立 昭和42年12月 ●資本金 4,000万円 ●売上高 21億円 (平成26年5月期) ●従業員数 94名 ●事業内容 抵抗溶接機器、各種溶接機器、溶 接機消耗品の製造・販売 ●所在地 山梨県中巨摩郡昭和町築地新居 1648-5 ●URL http://www.denyojp.com/ http://www.denyona.com/ ●TEL 055-275-6811 ●FAX 055-275-6810 事業の概要 コンパクトな形状が求められる。 また、軽量化とともに抵抗溶接時 <小型・軽量・強度への 市場ニーズ> に係る高加圧力の連続負荷に耐える の高密度化・短縮化によるレスポン <㈱電溶工業の持つ強み> 構造上の強度が必要である。 自動車の製造においては、ライン スのよい効率的な生産ライン構築が ㈱電溶工業(以下同社)は昭和42 進んでいる。こうした技術革新の要 年の設立以来、約半世紀に渡って自 請に伴い、クルマ1台につきエンジ 動車製造のための抵抗溶接機、なか ンルームからボディーまで3千から5 でも薄い鋼板同士に電極をあて、圧 千ヶ所におよぶ車体溶接作業では、 力を加えながら電流を流して溶融合 溶接ロボット等の小型軽量化及び高 する抵抗溶接機(ロボットガン)の 速化のニーズへの対応が不可欠であ 最先端技術を提供してきた。 る。 サーボモータを搭載した抵抗溶接 機(サーボロボットガン)はロボッ トの先端に取り付け自動運転するた め、溶接ロボットに必要なパワーや 加工速度等を決定する大きな要素と なる。 ロボットの動作速度をあげるため には、先端部(サーボロボットガン) の持つ運動エネルギーを緩和する工 夫をしたり、より小さなパワーで駆 動できるようにしなければならない 自社に鋳造工場を持つ が、これを実現するためにはロボッ トガンの軽量化が不可欠となる。加 その中で、同社の特徴の一つが、 えて、複数台のロボットによる高密 ロボットガンの一つの重要部品であ 度加工を行うためには、シンプルで るアーム部(電気を溶接部へ伝える と共に鉄板を押さえる力を伝達す ●事業名 小型軽量・高速対応の抵抗溶接機 の開発及び事業化 ●認定期間 平成22年2月〜平成27年2月 る)を社内に鋳造工程を持って製造 していることである。ユーザーから の各種の要求にあった溶接機を作る ためには、色々な形状のアームを鋳 造する必要があるが、同社は多種類 の木型を持ってそれに対応している。 顧客から注文があって納入までの ラインで使用される溶接ガン 22 リードタイムが2カ月しかないこの 業界にあって、納期が短いことが強 空軸サーボモータは㈱甲府明電舎か 顧客先で性能評価や制御回路等の みとなっている。 ら供給を受けるとともに、THK㈱ マッチング評価を行い、高性能・軽 また、アームの材料は導電性と強 からは、高回転サーボモーター対応 量のモーターと制御回路が完成した 度に優れた銅合金を非鉄材料メーカ のボールナットの開発協力を受ける が、この開発過程で連携企業である ーと開発し採用していることもいま 体制にして、モーター、変速部、駆 コミヤマエレクトロン㈱の従来の10 一つの強みである。 動部を一体にした小型・軽量で高速 分の1の部品加工精度が支えとなっ 運転が可能な自動抵抗溶接機を開発 た。 事業の展開 し市場投入する事業計画を作り込ん 開発したサーボロボットガンの駆 だ。 動ユニットは、従来、駆動部、ベル <新連携事業計画として認定> PMはテスト時に確認されていた ト・プーリーケース部、モーター部 同社は自動車メーカーの生産現場 品質に関わる対策や、構造の見直し と3ユニットに分かれていたものを1 におけるラインの短縮化や高速化の によるコスト低減等をアドバイスす ユニットにまとめることが出来、大 要求の中で、ロボットの可搬重量の るとともに、新連携事業計画の認定 幅に重量軽減と省スペース化を成し 軽減のニーズを知り、コンパクトで に向け、自動車の製造ラインにおけ 遂げた。トランス(変圧器)の軽量 軽量なロボットガンの開発を進めて る革新につながる商品としての新規 化とあわせ、中空モータガンは従来 いたが、生産革新活動や、特許、海 性の評価や、連携企業の新連携事業 ガンとの比較で重量、大きさともに 外支援に関する支援を受けていたや への参画意志、今後の事業予測など ほぼ1/2となり、ロボットの小型化 まなし産業支援機構から新連携事業 を確認した。 はもとより製造ラインの大幅な短縮 を紹介され、平成21年11月に中小機 このようなPMによるブラッシュ が可能となった。 構に相談に行くことになった。 アップを経て、本事業のロボットガ そこで、当機構の担当プロジェク ンは小型・軽量で高速運転が可能な トマネージャー(PM)が面談をし 特徴から自動車の組立タクトの短縮 平成23年に入り、国内自動車メー たことから新連携事業計画認定に向 に大きく寄与すると評価され、平成 カーのモデルライン(マザー工場) けたブラッシュアップ支援が開始さ 22年2月に新連携事業計画として認 での採用が決まり先方の発案による れた。 定された。 「ダブルスイングサーボガン」を商 PMは同社の技術力や市場動向か 同社にとっては、認定に向けて事 品化した。 ら本事業の高い可能性を確信した。 業計画を作成する中で、事業課題が このダブルスイングサーボガンは 本事業は技術力に優れた複数の企業 整理され、その課題に対する対応策 軽量化したことで,1本のロボット の連携により推進される。 などを具体化することができた。 アームに2個の溶接ガンが付いて、 連携体を構成するコミヤマエレク トロン㈱は、数多くの真空装置や真 <顧客による高い評価> 同時2点・ピッチ可変2点の溶接が可 <補助金を活用した開発> 能になり、自動車生産ラインの生産 空部品を製造するとともに、最新鋭 新連携事業計画に認定され、同社 性向上に大きく寄与することが期待 大型加工機により、高精度、高効率、 はこの新商品の開発を加速し、補助 された。 そして高品質の製品を作り出す加工 金を活用した試作開発を行った。こ また、同社は関東経済産業局や山 体制を確立しており、今回の事業で の結果、基本技術となる、モーター 梨県の支援により、ものづくり補助 要求される高精度部品の加工で大き の駆動軸を中空にして軽量化した中 金の認定を受け、最新式の鋳造炉を な役割を担う。 空軸サーボモーターを搭載したロボ 導入して鋳造工程の合理化を行った。 また、軽量化のポイントとなる中 ットガンが完成した。 事業の推進体制 技術支援 連携体 THK(株) 技術支援 (株)甲府明電舎 金融支援 商工組合中央金庫 連携支援 製品開発・製造・販売 機械設計・製造 コア企業:(株)電溶工業 (山梨県中巨摩郡昭和町) コミヤマエレクトロン(株) (山梨県南都留郡鳴沢村) ・抵抗溶接機の高度な専門性 ・計測・信頼性保証 ・特許 ・機構部品の設計ノウハウ ・真空製造装置製造で鍛えた少 ロット設計・高精密加工スキル (財)やまなし産業支援機構 23 名に繋がった。 ブル発生無しで稼働した。 ただしこの時点では、国内自動車 担当CADは、未対策のサーボモ メーカーに順調に販売する一方、既 ーターの評価が拡販の阻害要因とな 存の溶接ロボットのモーターの価格 らぬよう、顧客フォローと適切なケ と、本中空ロボットの価格に大きな アをアドバイスするとともに、ロボ 差があった。次はコストダウン技術 ットの高速化によるその他の不良要 の開発が重要であることをCADは 因の分析と想定されるリスク、これ 同社と確認した。 に対する対策についての検討を支援 した。 ダブルスイングサーボガン <初めての売上> 平成23年に、この中空軸サーボモ ーターを適用した製品「ダブルスイ ング サーボガン」が自動車メーカ <コスト低減努力> 同社は、納入済みの自動車メーカ 平成23年の初めに、CADがコス ー及び、サプライヤーに対して対策 トダウンに関し次のような取り組み 品の入れ替え作業を自主的に行う事 を支援した。 により、逆に顧客の信頼を向上する ⑴カスタム対応に向けて共通部品を 事ができた。 多くした設計 不良要因の分析と対策が決まり、 ⑵主要な部品の製造時における不良 既に出荷し使用している客先の対応 発生の低減手法による製造原価の を順次行い、平成26年度にはすべて 低減 終了する。 ⑶VA/VE手法、QCD手法によるコ スト低減 一方、不良要因に対策を施した恒 久仕様品は小型軽量化が評価され ーの「ロボット工場」に納入され、 このような事業者の取組みによっ て、大手ロボットメーカーが海外自 初めての売上となった。続いて自動 て、価格が低減でき、より競争力を 動車メーカー向けの溶接ロボットに 車部品メーカーにも、小型の中空軸 高めることができた。 搭載を検討している。これは、従来 サーボガンが納入された。 の片側4台を片側8台にすることで、 同業他社がロボットメーカーが標 溶接工程を半分に削減できることが 準的に採用しているサーボモーター 評価に繋がった。 を搭載したロボットガンを製作して いるのに対し、本事業は中空軸サー <新たな事業拡大への取り組み> ボモーターを採用し、圧倒的な軽量 市場ニーズに的確に対応した商品 化を実現していることが評価された 作りによって、商品が順調に市場に 結果である。 導入されたが、品質の問題で売り上 エンコーダーメモリ(駆動軸の位 げが一時大きく減少した。しかし、 品質問題を解決して、また、攻めの 置情報のメモリ)のバックアップ電 池の搭載も、ガンチェンジ(定期的 溶接ガンの並ぶ生産現場の様子 営業展開ができるようになった。 このような中で、国内自動車メー なロボット搭載サーボガンの交換) カーでの採用は大きく進展している ので好評であった。 <品質不良問題への対応> コストダウンに成功し順調に売り が、海外メーカーの採用は低迷して この間に、大手ロボットメーカー 上げを伸ばしていたが、客先から誤 いる。海外市場への展開を如何に図 からのアライアンスの要請を受諾し 動作によりラインが止まるとのクレ るかが今後の事業課題である。 たが、競合メーカーが同様のものを ーム報告があった。調査するとモー この課題対応の一つとして、現担 開発することを想定し、新たに本事 ター内部に搭載されている位置セン 当である当機構の小松原チーフアド 業を担当した中小機構のチーフアド サーに汚れが付着し誤動作に至るこ バイザー(CAD)は当機構が運営 バイザー(CAD)が次のような支 とが分かり、対策を検討することに する中小企業と大企業のマッチング 援を行った。 なった。 サ イ ト「J-GoodTech」 へ の エ ン ト 顧客満足の向上のために現場を訪 別ロボットメーカーのタイプはト リーを勧め、早速ホームページにア 問すること、さらなる回転重量の削 ラブルが発生していないことから、 ップした。 減につとめることをアドバイスし その構造を分析し、位置センサーメ また、同社に東南アジアの顧客か た。また、商品名称・ブランドの重 ーカーと協力して改良を行った。 ら自社の近くへの工場進出の要請が 要性と名称案についてアドバイス 形状変更後の改良品の評価は順調 あり、現地への工場進出を模索して し、それが中空モーターという商品 で、一部ユーザーの実ラインでトラ いた。 の際に、前の位置情報が保存される 24 この課題に対しては、当機構の海 信頼が向上している。 外支援アドバイサーが、進出国にお 本事業で開発したサーボガンの特 ける工業団地のインフラや労働事情 徴は、 についての情報提供、海外展開に関 ①小型のロボットに搭載可能 する経営的判断についてアドバイス ②先端部が軽くなり、ロボット手首 を行った。 軸の負担軽減 次の課題としては、自動車の軽量 化の波から使用材料もアルミニウ ム、マグネシウムやプラスチックな どが考えられ、その対応が求められ ③ロボットスピード向上によりサイ クルタイム短縮 ④ロボット小型化に伴い、溶接ライ ンに密集配置 ると予想されることから、これらの などであるが、最軽量のロボットガ 開発状況に関する情報提供や、より ンの重量は47kgとなり、今までに 軽量化を狙った固有技術の紹介(例 ない軽量化を実現し50kg可搬用ロ えばモーター)等の支援を行った。 ボットに搭載可能となり、ロボット また、商品の市場における優位性 自体の小型化が可能となる画期的な を保つための知的財産に対する戦略 ものである。 が重要との判断から、特許および法 また、自動車メーカーにおいて採 律の専門家を派遣し、出願すべき特 用が進んでいる高張力鋼板に対し 許内容の絞り込みや海外への特許出 て、加圧力を20%アップして対応し 願の支援をした。 たことや、国内の全ロボットメーカ 事業者のひと言 抵抗溶接機というニッチな製品で ありますが、金属の接合としては、 低コストでありながら、信頼性の高 い接合方法であるため、今後も自動 車の製造をはじめ、さまざまな用途 に用いられると考えております。今 回の新連携事業では、従来より、大 幅な小型軽量化を実現でき、これか らの自動車製造ラインのロボットの 高集積化と高速化を実現できると期 待しております。 新連携事業計画に認定後も事業を 進める上で、中小機構及び関東経済 産業局の皆様には、多大なご支援を 頂きありがとうございました。 ーコントローラーで作動させること 事業の成果 ができるなども特徴である。 <売上の推移> トで行われたウエルディングショー 本事業で開発された商品は、市場 において、同社によるサーボガンを 投入した初年度である平成23年度は 搭載した画期的なロボットが大手ロ 数社の自動車メーカーとそれぞれの ボットメーカーによって発表され、 系列会社、主要なロボットメーカー、 自動車の組み立てラインを大幅に変 鉄 道 車 両 メ ー カ ー に 納 入 さ れ、 える提案として注目を集めた。 7,000万円を超える順調な売上を計 このような市場の高い評価を受け 上した。 ているサーボロボットガンは、今後、 しかし品質の不具合により売上が 国内外の自動車メーカーへの採用が 急激に減少し、平成24年度〜25年度 期待される。 平成26年4月には東京ビッグサイ の間の売上は伸びなかった。平成26 年度以降は位置センサー対策を終了 し、対策品投入で売上がV字回復に 向かう見込みである。 取締役(技術部) 中村 敏幸 氏 支援者のひと言 本事業は中小機構の専門家が、そ れぞれの専門性を発揮して3代に渡 り支援しました。 最初に担当したPMが事業の掘り 起こしから立ち上げまでを支援し、 次に担当したCADが、売上が上がり、 市場での課題に対する支援を行い、 現在担当している小松原が商品の機 能アップについての情報提供や、特 許戦略や海外展開での専門家の派遣 で支援しています。 残された期間で今後の課題に対す る道筋をつけたいと考えています。 <商品の市場評価> 品質の不具合が発生した時の顧客 フォローと適切なケアを行い、その 迅速で誠実な対応により顧客からの 80 70 60 50 40 30 20 10 0 発表されたサーボガン搭載ロボット 認定事業の売上推移(単位:百万円) H23年度 H24年度 H25年度 H26年度見込 関東本部 小松原チーフ アドバイザー 25 株式会社ハナムラ 岐阜県羽島市 あらゆるガラスをメディアに! グラスルーチェが都市をメディアに変える 「インテリア」と「音」と「映像」の融合をIT技術で可能に した新たな室内空間の演出事業。電源を入れると映像が鏡 面から映し出され、一瞬で癒しや高級感などで空間を満た す。高級マンション、ホテル、商業施設への新たな空間価 値創造の事業として全世界への販売に挑む。 ●会社名 株式会社ハナムラ ●代表者 花村 勇臣 ●設 立 平成5年4月 ●資本金 1,000万円 ●売上高 4億円 (平成26年3月期) ●従業員数 11名 ●事業内容 デザインガラス、ミラーディスプ レー、スマートホームの企画販売 ●所在地 岐阜県羽島市正木町南及5-53-2 ●URL http://www.h-trading.co.jp/ ●TEL 058-391-5146 ●FAX 058-394-6063 ●新宿ショールーム 東京都新宿区西新宿3−7−1 新宿パークタワーリビング デザインセンター OZONE 5階 新宿ショールーム ●事業名 ホテル・マンション・商業施設向 け映像装置付き鏡壁面の製造・販 売及び施工事業 ●認定期間 平成22年2月〜平成26年3月 26 事業の概要 代理店であり、東京都内を中心に設 グラスルーチェは、通常は鏡とし 務所に先端デザイン提案など空間プ て使用し、スイッチを入れることに ロデュースを行っている。グラスル よって鏡面に画像や映像を映し出す ーチェは単なる「映像装置付きガラ ことができるガラス鏡壁面である。 ス鏡壁面」ではなく、インテリアと 新連携事業として「ホテル・マンシ してTVやパソコンなどのモニター ョン・商業施設向け映像装置付き鏡 を空間に融合させるもので、住設機 壁面」の製造・販売から施工までを3 器・家具の販売を専門とする同社が 社の連携により実現した。 得意とするデザイン家具の発展商品 グラスルーチェの構造は次のとお である。 りである。マジックミラーガラスの 近年、インテリア空間において 裏面に液晶モニターを装着。接続し TVモニター等に風景や熱帯魚など たブルーレイ/DVD等のプレーヤー を映し出すという、BGV(バック /レコーダー、テレビ、パソコン、 グラウンドヴィジュアル・環境映像) 外部メモリ等の映像や画像を連携3 の導入が増えてきた。しかし、モニ 社で独自設計開発した基板を通じて ターサイズが大きくなるにつれ、そ 鏡面に映し出す。 のTVモニター等の存在感がインテ 新連携事業のコア企業である㈱ハ リア空間を壊してしまうという問題 ナムラは、商品企画・マーケティン が起きている。そのため、建築家、イ グ・販売を担当した。また、使用す ンテリアデザイナーなどの間では、 るマジックミラー・カラーガラスの モニターをいかに空間に融合させる 開発及び商品の組み立てから施工を のかということが課題となっていた。 浜新硝子㈱が担当し、液晶モニター グラスルーチェは壁面にマジック の調達とオリジナルボード(基板) ミラーを使用し、その裏面に液晶モ の設計及び開発を㈱ビジョンマルチ ニターを配置するため、電源オフ時 メディアテクノロジが担当した。 はモニターの存在がなくすっきりし ㈱ハナムラ(以下同社)はイタリ た鏡壁面となり、このような課題を アの住設機器・家具メーカーの日本 解決する。 事業の推進体制 計事務所、インテリアデザイナー事 【コア企業・商品開発、販売】 ㈱ハナムラ(岐阜県羽島市) 【マジックミラー製造・施工】 【基盤設計・ソフトウエア開発】 浜新硝子㈱(福岡県柳川市) ㈱ビジョンマルチメディアテクノロジ (福岡県筑紫野市) 事業の展開 許取得)が完成した。 出展し、市場の声を収集した。ブー スには人だかりができ、プレスから <商品化への道のり> 取材を受けることで、市場の評価を 平成18年、同社の事業パートナー 得た。 であるイタリアンデザイナーが、イ しかし、顧客ニーズの分析には苦 タリアのミラノサローネにてガラス 労も多かった。販売ターゲットを「ホ でフラット化したTVキャビネット テル」「マンション」「商業施設」と にBGVを映した展示を行った。こ 定めたものの、未だ世に浸透してい れは、この年のミラノサローネで一 番の評価を受けた。同社もこのイメ ない商品のため、ニーズ分析を行う 壁内へのフレーム設置 ージに衝撃を受け、 「TVの存在を消 す」 「美しい映像(BGV)を壁面空 材料に乏しかった。ホテルと言って も複数のカテゴリーに位置する。そ <中小機構との出会い> れぞれがどのようなニーズを持つの 間から映す」という時代の流れを実 グラスルーチェの販売を進めるに かなど、戦略マップを作成し検討を 感する。こうして硝子内部に映像装 当たり、同事業の第三者評価を得る 繰り返した。 置を組み込むグラスルーチェの開発 ため、取引金融機関から岐阜県産業 が始まった。 経済振興センターが行う「事業可能 高価格・高級感 性評価」を勧められ応募し、A評価 を受けた。A評価を受けた事業者に 単機能 小機構の成瀬プロジェクトマネージ ャー(PM)と出会った。 フラット型TVキャビネット <新連携事業計画認定> カプセル ホテル 宿泊特化型ホテル は、中小機構主催「中小企業総合展」 への出展推薦もあり、これを機に中 ブランド化 運営委託による効率化 ラグジュアリー ホテル コミュ ニティ ホテル ビジネス ホテル シティ ホテル 機能の絞り込み 会議需要重視 多機能 料飲部門の圧縮 ハード投資の圧縮 宿泊機能に絞り込み ローコストオペレーション ラグジュアリー ホテル 二極分化の進展 宿泊特化型 ホテル 平成19年、海外大手液晶メーカー 同社の行う事業は、中小企業が複 のシステム開発をしている企業と共 数社で取り組む新規事業である。 に、韓国で新しいTVシステムとマ 成瀬PMは新連携事業へのチャレ 一般消費者への販売戦略の立案の ジックミラーの開発を始める。しか ンジを提案し、国の認定を目指すこ 際には、「マンション」のモデルルー しTVそのものとマジックミラーの ととなった。 ムに製品を設置し、顧客の反応を見 品質、システム基盤の開発が思うよ 新連携事業計画の認定を得るため ることとした。モデルルームに訪れ うに進まず開発の継続を断念した。 には、製品の特長や新規性、機能の た一般消費者からは、斬新なリビン 平成20年、日本国内でファブリッ 優位性のほかに、市場のニーズ分析 グの壁面として、上々の評価を得た。 クガラス(合わせガラスで布を挟ん や市場規模の把握、今後の販売戦略 だ意匠ガラス)開発で、既に連携し から資金計画に至るまで、事業全体 ていた浜新硝子と新たに開発を始め にわたる計画を策定する必要がある。 た。製品本体を薄くするためTVは こうして成瀬PMによる事業計画 基板と液晶モニターを分離し、マジ の「ブラッシュアップ支援」がスタ ックミラーは反射した後ろの景色が ートした。 映り込みにくいオリジナルマジック 最初に「実際に売れる」製品であ ミラーとした。 ることを検証するため、平成21年3 マンションモデルルーム 平成21年、オリジナルTVと反射 月、商空間ディスプレー事業者が一 次に商業施設へのテスト設置を試 率透過率を研究したマジックミラー 堂に出展する「JAPAN SHOP」に み、シューズショップの3壁面に合 低価格・手ごろ感 ターゲット戦略マップ を組み合わせた「グラスルーチェミ 計7台のモニターを設置。壁面の鏡 ラー」を開発した。電源オフ時の映 から動画が流れると、多くの人がシ り込みの少ない美しいブラックのミ ョップの前で足を止め、訴求効果の ラーで、映像は高輝度でなくても鮮 増加につながっていることを確認し 明に見える。また壁内にほりこみス た。 ペースを作り、アルミフレームユニ このように成瀬PMとの事業計画 のブラッシュアップ活動により、本 ットで壁面にフラットに設置する 「ビルトインタイプ」の設置構造(特 JAPAN SHOPでの様子 事業の成功可能性を両者で確信し、 27 遣する計画が立てられた。 平 成23年9月、 同 社、 成 瀬PM、 店舗デザインの専門家の3者で商業 施設と一般高級住宅までをターゲッ トとする事業展開の方向性を確認し た。同年11月より「地域活性化支援 アドバイザー派遣事業」として支援 デパート靴売り場 新連携事業計画を申請、平成22年2 は開始された。 <3つの支援戦略> 成瀬PMの戦略は以下の通りであ 商品コンセプト会議 った。第一の戦略は、一般社団法人 具体的にはデザイナー視点に立っ <販路開拓の開始> 日本商環境デザイン協会(JCD) (旧 た製品紹介であり、「誰にどんなシ 新連携事業計画の認定を受け、い 日本商環境設計家協会)に所属する ーンで」「どんな企画を」「どんなス よいよ販路拡大に挑んだ。それは成 会員との関係構築である。JCDには タイルで提供すれば」「差別化でき 瀬PMと共に立てた事業計画を実践 全国約600名の会員が在籍している。 るのか」という展開シーンのリサー することである。中小機構の「フォ 会員はインテリアデザイナーや建築 チと展開イメージの提案を行った。 ローアップ支援」という新たなフェ 家、空間デザイナーなどである。彼ら 第三の戦略は、JCD会員へのセミ ーズが始まった。 はエンドユーザーとの接点を持って ナースペースの提供である。同社が 初年度は販売代理店をフル活用し おり新たなチャネル創造につながる。 ショールームを置く新宿のリビング た各地域の建築事務所、インテリア またデザイナー目線での製品改良ア デザインセンター OZONEは、週末 デザイナーに対する販路開拓や、専 イデアやアドバイスを提供してもら に住宅設計に関わるセミナーが開か 門誌へのPR広告掲載に取り組んだ。 える事も関係構築の目的である。 れ関東圏の集客ポイントとなってい 月に認定された。 同社と中小機構は、事業計画と実 る。そこには個人住宅を建てる富裕 際の事業実績値を毎月共有しなが 層も多く訪れ、注文住宅のオプショ ら、両者で必要な措置をとっていっ ンとして、カスタマイズ設計から製 (社)日本商環境 デザイン協会 た。 「ホテルレストランフェア」「建 築建材展」「ビューティーショップ 造、施工までの大型受注を受ける場 合もある。 セミナーに参加した注文住宅建築 展示会」等にも出展を重ねた。また、 希望の富裕層からは、以下のような 平成22年6月には新宿のリビングデ JCD会員の店舗デザイナーからは ニーズを得ることが出来た。 ザインセンター OZONE内に、ショ 店舗や住宅設計段階でスペックイン ①「内装は飽きたら変える」がキー ールームをオープンし、順調な滑り しやすい躯体の大きさや製品の薄さ ワードであり簡単に入れ替え可能な 出しを迎えた。 などのアドバイスもあり、商品改良 設備を好むこと。②TVモニターは 認定2年目を迎えると、販売実績 にも大きく役立った。 リビングのみならずキッチンや浴室 は安定化したが、更なる飛躍を目指 また販路を新築案件のみならず、 への設置も望むこと。 す打開策も必要と考えた。 店舗や一般住宅の内装リニューアル 案件の創出という新たなターゲット <更なる販路開拓の推進> へのアプローチについてもアドバイ 毎月の事業推移を共有していた成 スされた。 瀬PMは、更なる販路拡大の検討を 第二の戦略としては、JCDが主催 繰り返した。そうした中、販売ター する「日本商環境設計家協会プロダ ゲットへのアプローチにおいて、イ クトオブザイヤー2012」の受賞を目 ンテリアデザイナーや建築設計家 指すことである。表彰されれば、 が、内装設備のデザイン決定に重要 JCD会員のみならずグラスルーチェ な役割を担っていることを把握し、 の知名度を高めることができる。 「店舗デザイナー」を通じた新たな そのために、デザイナーにとって チャネル構築を試みることとした。 店舗や住宅の設計の際、使いやすい こうして当機構に登録されていた 製品であることをアピールする必要 店舗デザインに精通する専門家を派 があり、検討が開始された。 28 バスルーム向け商品 それらのユーザーニーズを開発に 取り入れることで、製品の取り換え インテリア業界雑誌に掲載。建築家 を踏まえた脱着容易な施工方法が確 やデザイナーからの問い合わせも増 立された。さらに使用エリアごとに え、知名度は高まっている。 設置できる商品ラインナップも拡大 商品コンセプトも新たに「美しい した。 空間を創るしつらえ」とし、次世代 こうしたユーザー意見に基づく開 商品のコンセプトとして次のような 発は競争力を高めていく結果とな テーマを掲げた。 り、富裕層市場分野での商品戦略が ①TVを 空 間 に 置 か ずTVの 存 在 確立した。 を消す、②TVを鏡の裏面に隠す、 ③鏡の中から艶感のあるアート映像 が現れる、など。 事業の成果 今までにない幻想的な視覚演出に <更なる販路開拓の結果> より、ファッション、アート、エン 中小機構の支援により3つの戦略 ターテイメント業界へと幅広い用途 を実行した結果は、以下の通りであ 提案が可能となる。 事業者のひと言 今回の新連携の認定事業により連 携3社間の強力なパートナーシップ が構築でき、異業種の連携により新 商品を開発販売することができまし た。これも経済産業省、中小企業基 盤整備機構のご担当者様の適切なア ドバイス・サポートがあってできた ことだと感じております。 今後はますます日進月歩するITを 今の事業にどう取り入れるかがテー マになってきます。これを踏まえて 前に進んでいきたいと考えておりま す。 る。第一戦略であるJCD会員との関 係構築については、同社の積極的ア <今後の展望> プローチが受け入れられ、現在では 自社ブランドを築いた同社の次な JCD賛助会員となり関係もさらに深 る戦略は、インテリア業界、建築業 まった。 界、家電業界、IT業界の異業種融 第二戦略である「プロダクトオブ 合に向けた商品開発である。それは、 ザイヤー2012」への参加では、準グ 商業施設、一般住宅それぞれの市場 ランプリを受賞しグラスルーチェの に向けた空間オートメーションと言 知名度が一層高まった。 われる空調、照明、音楽、映像の自 第三戦略であるセミナースペース 動制御コントロール機能であり次世 の提供では、週末に来場する富裕層 代空間の創造である。 向け販売の仕組み(集客から商品認 知までの流れ)が構築された。 こうしてグラスルーチェは、商業 施設から一般住宅へも飛躍的に販路 が広がった。 空間オートメーション端末 現在、高級インテリア業界各社と の共同販促、家電大手企業との販売 代理店契約など異業種連携をさらに 発展させ新たな拡販チームを結成。 セミナースペース 支援者のひと言 本事業は、花村社長が先頭に立ち、 会社の新たな柱となる事業とすべ く、社員一丸となって推進されてき ました。各戦略の立案を進める上で、 大きな強み、核となったのは、新宿 オゾン内のショールームであり、そ の開設には、社長の並々ならぬ決意 と英断によるものでした。 こうした社長自らの経営革新意 欲、課題に対する迅速な対応力や新 たな発想力が大きな推進力となった と考えます。 技術革新等による本事業の進化に より、さらなる発展・躍進されるこ とと期待しております。 新たな販路を海外市場とし、国内大 その他、新連携事業の支援策であ 手家電メーカーとの共働による世界 る新事業活動促進補助金を活用し、 進出に向けて着実に動き出している。 160 140 120 100 80 60 40 20 0 代表者 花村 勇臣 氏 認定事業の売上推移(単位:百万円) 1年目 2年目 3年目 4年目 中部本部 成瀬プロジェクト マネージャー 29 株式会社ユーキフーズ 富山県砺波市 地 元TV局 の 情 報 発 信 力 を 活 用 し た 消 費 者 ニーズの高い「地場産カット野菜」の商品化 野菜生産量が全国で最も少ない富山県において、生産者、 製造者、流通者、メディア、公的機関の連携により、子育 て世代が求める、安全で安心なカット野菜商品を開発。 地場産野菜の生産、消費の拡大と「食育」の推進に挑戦。 ●会社名 株式会社ユーキフーズ ●代表者 小竹 晋吾 ●設 立 昭和43年4月 ●資本金 3,000万円 ●売上高 12億6,800万円 (平成26年1月期) ●従業員数 111名 ●事業内容 カット野菜の製造・販売 ●所在地 富山県砺波市太田1889-8 ●URL http://www.yuukifoods.com/ ●TEL 0763-33-4433 ●FAX 0766-34-8010 事業の概要 ㈱ユーキフーズも本プロジェクト に賛同して、地場産野菜を原料とし <富山県の野菜生産の現状> たカット野菜の開発を検討していた 富山県は全国有数の米の産地で、 が、地場産野菜を安定的に入手する 農業者の多くが稲作中心の農業を行 ことが難しく、開発商品の種類と販 っているが、野菜の出荷額は全国で 売期間が限定されていた。 最も少ない約49億円(平成24年)の 同社は、昭和43年、豆腐・揚げ物 ため、県内で販売されている野菜の 製造会社として創業。平成12年から 多くは県外産である。 業務用カット野菜やカップサラダの 一方、最近の地産地消の流れの中、 製造・販売事業を開始し、平成20年 一般消費者や学校給食事業者からは にはカット野菜専用工場を設立し 地場産野菜のニーズが高まっている。 た。現在は、カット野菜の製造・販 売を主力事業として、売上は毎年10 <富山県産カット野菜事業に 取り組む経緯> %以上で伸びている。 地場産野菜の生産と消費を増やす 取り組みとして、富山県広域普及指 導センターが中心となって、平成19 年に「とやまてんこ盛りプロジェク ト」をスタートした。このプロジェ クトにおいて、地場産野菜の新たな 市場流通を提案し、農業者と青果市 場、スーパーとの契約生産を推進し てきた。 地元スーパーでの「とやまてんこ盛り プロジェクト」野菜の販売 事業の推進体制 ●事業名 地元TV局会員を活用した市場調査 に基づく地場産カット野菜の開 発・販売事業 ●認定期間 平成21年9月〜平成25年1月 【代表者】 連 携 体 地場産カット野菜の開発 (株)ユーキフーズ カット野菜製造技術 【共同申請者】 特徴ある県産野菜の生産 (農)サカタニ農産 野菜生産技術 JAいみず野 野菜生産技術 【連携参加者】 (株)チューリップテレビ 丸果(株)高岡青果市場 富山県広域普及指導センター 県産野菜の集荷調整 野菜生産技術指導 消費者ニーズ調査 □□□□□□□□□□□□□□ 30 事業の展開 ㈱高岡青果市場と地元TV局の㈱チ ニタリングを実施することにより、 ューリップテレビが連携参加者とし 季節のニーズにあった商品を適宜消 <中小機構との出会い> て参加することとなり、連携事業の 費者に提供できるようにした。 農商工連携事業の案件発掘で中小 体制が整った。また、富山県広域普 機構と協力関係にあった富山県広域 及指導センターは、本事業全般をフ 普及指導センターの担当者から、同 ォローする役割を担い、平成21年9 社と(農)サカタニ農産(富山県)、 月に農商工連携事業計画の認定を受 JAいみず野(富山県)の3者による けた。 農商工連携の相談を受け、平成21年 1月に中小機構の大塚プロジェクト マネージャー(PM)が同社を訪問 したのが当機構との出会いであっ <地元TV局会員を活用した 市場ニーズ調査> 大塚PMは、地場産野菜を原料と た。その時点ですでに、同社はサカ した魅力的な商品を開発するには、 タニ農産とJAいみず野からカット 富山県の消費者がどのような商品を 野菜用の各種野菜を仕入れていた 求めているかを充分に把握すること が、3者の強みを活かした連携事業 が重要であると考え、本格的な市場 には至っておらず、開発する新商品 調査を行うための支援を進めた。 も構想段階であった。 連携参加者のチューリップテレビ 地場産野菜を原料としたカップサ は地産地消を進めるため、生産者と ラダの商品化を検討していた同社 消費者をつなげるイベントを県内各 と、稲作の収益力低下を打破するた 地域で実施しており、本事業の市場 めの野菜生産を進めていた大規模稲 調査を担った。食の安心に対して関 作農業者のサカタニ農産、 JAいみ 心が高い子育て世代(三十代〜四十 ず野の思いが一致して共同開発に至 代の女性)をターゲットとし、チュ った。この出会いから、3者による ーリップテレビが運営する「子育て 農商工連携事業への挑戦と、当機構 応援ハッピーくらぶ」の会員を対象 のハンズオン支援が始まった。 にイベント等での試食、試食会での カップサラダ試作品 モニタリングによりカップサラダ商 <農商工連携事業計画の 認定に挑戦> 品の開発と改良を進めた。 さらに、季節ごとに市場調査とモ 地場産野菜の生産と消費を増やす ためのカット野菜の開発・販売事業 を、同社とサカタニ農産、JAいみ ず野の3者の経営資源を活用した実 現可能な事業計画とするため、農商 消費者モニタリング アンケート調査 (会員約1万人) <携帯メール等> 工連携事業計画の認定を目指した検 討がスタートした。 事業計画の作成にあたって、当機 域の活性化支援の実績を有する専門 家の派遣を受け、 「連携体制」、「新 カット野菜商品試作 認定事業の計画作成は初めての経験 ツマイモ、ユズ、ダイコンなどの地 場産野菜を原料とした2種類のカッ プサラダを開発し、「ハッピーサラ 試食モニタリング (アンケート回答者30-40名) 商品の内容」、「市場調査」、「販路」、 「売上収支計画」などを具体化した。 最初に、グリーンリーフ、キャベ ツ、レッドキャベツ、ニンジン、サ 構と支援を協力して進めていた(公 財)富山県新世紀産業機構から、地 <商品紹介と 地元スーパーでの販売> ダ」として商標登録を行い平成21年 11月 か ら1パ ッ ク140g、298円 で 販 売を開始した。 新商品は地元スーパーを中心に販 試作品の改良 売を行い、チューリップテレビの番 組やイベントで紹介、会員へのメー であるため戸惑いもあったが、検討 ルでの案内を行った。モニタリング 会を10回以上開催し、それを通して による商品評価を実施したところ、 連携体制が強固なものとなった。 さらに、地元産野菜の集荷調整、 消費者ニーズ調査を行うため、丸果 販売 カット野菜商品の開発フロー 「旬の野菜が簡単に食べられる」、 「地 場産の野菜などで安心」など好評で あった一方、 「価格が若干高い」、 「少 31 量商品がほしい」などの意見も寄せ 商品と異なった商品コンセプトの策 られた。これらの評価を踏まえ、新 <地産地消の取り組み> 平成23年度からは、「地産地消県 定、ターゲット設定、価格設定が必 アイテムの開発と商品改良を進め、 民フェア」、「越中とやま食の王国フ 要と判断し、大手流通業での商品開 平成22年の春からアイテム数を増や ェスタ」などのイベントに出展し商 発の実績を有する地域活性化支援ア し本格的な販売を始めた。 品アピールを行う一方、チューリッ ドバイザーを派遣して、レストラン プテレビ、サカタニ農産、料理教室 や居酒屋などの飲食店のニーズに沿 との共催により、農業体験と調理実 った「かき揚げキット」や「天ぷら 習を合わせたイベント「とやまの新 セット」などの業務用商品の開発を 鮮カット野菜を食べよう」を開催し、 支援した。 地場産野菜の普及と地産地消の推進 また、小売り用新商品「皮むきカ に取り組んだ。 ット野菜シリーズ」の開発支援にあ たって、商品コンセプト策定から、 パッケージの素材選択、デザイン、 「とやまの旬菜」 アイテムの構成、ネーミング、ブラ ンド戦略にわたる幅広い支援を行 い、カップサラダ商品に続く新商品 開発を進めた。 <カット野菜商品の製造に おける品質管理の向上支援> 「地産地消」の取組みイメージ 「とやまの恵み」 同社では、日本惣菜協会の「惣菜管 理認定事業」 (HACCP手法支援法) を取得して品質管理を実施し、商品 <カップサラダに続く カット野菜新商品開発> の安全性確保を行っていたが、大手 本事業により、季節の地場産野菜 さらなる品質管理レベルの向上が求 携促進施設整備事業」を紹介して、 を原料とした「カップサラダ」を10 められていた。そこで、大塚PMは 地場産カット野菜製造に使用する自 種類以上商品化し、月間1万個のペ 食品衛生学を専門とする石川県立大 動洗浄機、包装機、コンベア等の専 ースで売り上げが伸びたが、さらな 学の教授を紹介し、カット野菜製造 用ラインを新設した。 る地場産野菜の消費向上を目的に、 における衛生管理、技術支援を行い、 平成23年度から、業務用商品を含め 品質管理レベルの向上に繋げた。 「ハッピーサラダ」商品 また、カット野菜製造の設備導入 に活用できる農林水産省の「食農連 流通業との取引を進めるためには、 た新商品開発の検討を進めた。 自動洗浄機 電解水を利用した衛生管理 また、同社ではカット野菜商品の 微生物検査を外部の試験機関に依頼 していたが、微生物管理が重点ポイ ントであるカット野菜製造におい て、自社での検査体制の構築が急務 であった。微生物試験を行うための 品質管理室の立ち上げにあたって大 スライサー 32 業務用カット野菜キット 塚PMは、富山県食品研究所が主催 大塚PMは「業務用カット野菜」 する「微生物試験実務者講習会」を の新商品開発にあたっては、小売り 紹介する一方、試験機器の選択、担 当者へ微生物試験方法の技術指導を おける1億円産地化など、地場産の 行い、検査体制の整備を進めた。 野菜生産量が増えてきている。また、 これらの取り組みにより、取引先 本事業により連携者以外の農業者と からの評価が高まり、売上向上に繋 の取引も増え、本事業にとって追い がった。 風となっている。それにより、カッ ト野菜用に入手できる地場産野菜の 種類や量が増え、また、安定的に入 手できるようになり、消費者ニーズ に沿った幅広い商品提供が可能とな った。 事業者のひと言 連携体制の維持は大変でしたが、 生産者の方との信頼関係が高まり、 地産地消商品が増えたことが大きな 成果でした。また、本事業を行った ことにより、生産者の顔が見える商 品づくりを通して社内が活性化した ことも成果のひとつです。 本事業により消費者ニーズの把握 が深まり、北陸の野菜を原料とした カット野菜商品の県外販売や、自社 の植物工場での機能性野菜の生産な ど、当初想定していなかった分野へ も展開することができました。 金属探知機による異物検査 <販路ナビゲーター 創出支援事業の活用> 4年間の認定期間は平成25年1月に 終了したが、本事業を県外にも展開 するため「北陸の野菜」として首都 圏での販路開拓を進めたいとの相談 があり、中小機構の「販路ナビゲー 代表取締役社長 ター創出支援事業」(現在は廃止) を紹介した。当支援事業は、販路開 地場産野菜収穫カレンダー 拓に課題を有する企業に対して「販 さらに、石川県の野菜などを原料 路ナビゲーター」が商品を評価し、 としたカット野菜も開発し、「北陸 可能性のある販路先の情報提供を行 の野菜」ブランドで首都圏への販売 う支援事業である。同社はナビゲー を進めている。今後、本事業をベー ターへのプレゼンテーションを行い スにした、地場産野菜の活用のあら 商品評価を受け、首都圏を中心とし たな展開が期待できる。 たスーパーへの販路開拓を進めた。 <植物工場での野菜の自社生産> 事業の成果 同社では地産地消商品の安定供給 <地場産のカット野菜から 「北陸の野菜」への展開> 工場」によるリーフレタスの自社生 本事業最終年度(平成24年度)の 本格的に出荷をスタートした。現在、 売上は40百万円、4年間の売上累計 腎臓疾患などで食事制限の必要な方 は88百万円となり、当初の売上計画 を対象とした「低カリウムレタス」 を達成した。 などの機能性野菜生産の分野への展 現在、富山県ではタマネギ生産に 開を図っている。 50 40 30 を目的に、平成24年9月から「植物 産の準備を進め、平成25年7月から 小竹 晋吾 氏 支援者のひと言 野菜生産量が少ない富山県におい て、同社は生産者をはじめ、流通、 メディア、公的機関との連携を積極 的に進めることにより、消費者ニー ズをとらえた新商品開発を進め、食 育の推進にも取り組んでいます。 連携者の他にも関係者が多い事業 でしたので、関係者の信頼関係の構 築と、それぞれの強味を活かした特 長ある事業内容とするため、打ち合 わせを10回以上行い、事業計画をま とめました。それによって連携体が 強固になり、私にとっても印象に残 る事業のひとつになりました。 認定事業の売上推移(単位:百万円) 計画 実績 20 10 0 H21 H22 H23 H24 H25 北陸本部 大塚プロジェクト マネージャー 33 今西酒造株式会社 奈良県桜井市 「日本酒発祥の地」と「大神神社」の魅力が満載 の地域ツーリズムで地域おこしに貢献 老舗酒造会社が中心となって構想した、「日本酒発祥の地・ 三輪」を活用する“伝統文化を体感する”体験交流型観光プ ログラム。地元企業、観光協会、NPO法人、地域支援機関 や中小機構が連携し、魅力満載の観光事業を実現。 ●会社名 今西酒造株式会社 ●代表者 今西 将之 ●設 立 昭和30年(創業万治三年) ●資本金 1,000万円 ●新規事業累計売上 7,220万円 (平成24年2月〜平成26年12月) ●従業員数 9名 ●事業内容 日本酒の製造、酒販、飲食店経営 ●所在地 奈良県桜井市大字三輪510 ●URL http://www.imanishisyuzou.com/ ●TEL 0744-42-6022 ●FAX 0744-42-3612 事業の概要 を開発し提供するほか、初参加者に は蔵見学や利き酒体験も提供する。 <三輪地方の特徴を活かす酒蔵> 日本酒誕生と大神神社にまつわる お酒の神様「三輪明神」を祭る大 歴史や文化に触れられるなど「日本 神(おおみわ)神社がある奈良県三 酒の歴史物語」として楽しめる観光 輪地方は、日本酒発祥の地と言われ サービスは他に無いものである。 ている。当地には神社の門前町とし て、古来より受け継いできた“神宿 るまち”の風習や暮らしが今も根付 いている。 今西酒造㈱は、ご神体である三諸 山(三輪山)の名前を頂いた日本酒 「みむろ杉(三諸杉)」を寛永年間 の創業以来造り続けている酒蔵会社 桜井市三輪・大神神社周辺マップ である。 特に、地元の酒米、三輪山の伏流 <本事業に取り組んだ経緯> 水にこだわって酒を醸し続けている。 本事業に先駆け、同社は約10年前 (注)三輪山は古来から「三諸山(みむろや ま)」と呼ばれ、「杉」に神様が宿ると されている。) に「うまし酒オーナー制度」という 試みを手掛け、日本酒愛好家から多 数の申し込みがあった。 その制度で集まった仲間が日本酒 造りや日本酒を学ぶ倶楽部を発足、 現在は100名近いメンバーにまで発 展し、先代社長は日本酒ファンの存 在と、もっと日本酒の事を知りたい という強いニーズを感じた。 大神神社 拝殿 ●事業名 日本酒のふるさと奈良で地酒造り と伝統文化を楽しむ「日本酒のふ るさと三輪ツーリズム」の開発・ 提供 ●認定期間 平成24年2月〜平成27年9月 ●地域資源名 日本酒発祥の地、大神神社 34 その一方、観光振興を目的として、 同社も参画する「NPO法人三輪座」 が地域振興のリーダーであった先代 <日本酒発祥の地を伝えたい!> 社長の呼び掛けで設立され、地域全 同社が取り組んだ新事業は、「日 体で日本酒発祥の地をもっと訴求す 本酒発祥の地」を活用した体験型観 る仕組み作りが出来ないか考え、着 光で、地域活性化こそが自社復活に 地型観光の開発に取り組むことにな つながるとの理念のもと取り組んだ。 った。 長年培ってきた日本酒造りの技術 や趣のある酒蔵、蔵人の暮らしなど <他に無い、日本酒の体験観光> を深く理解できるオリジナルプログ このような経緯から同社は、日本 ラム「三輪日本酒大使養成スクール」 酒造りや酒米栽培を体験できるオリ ジナルプログラムや、NPO法人三 伝統産業、農林漁業などを活用した 当機構と連携した事業者へのハンズ 輪座が実施する「町の風習や暮らし 新事業や地域独自のコミュニティビ オン支援を開始した。 の体験、祭りや神事への参加などの ジネスの創出、観光まちづくりに関 体験観光」を組み合わせた、 “精神文 する法人の設立などを目的とした講 化と日本酒の関係を体感する”体験 座で構成されている。 交流型の観光プログラムを開発した。 オリジナルプログラムの「三輪日 <中小機構の観光ビジネス支援> 本酒大使養成スクール」は、単なる 中小機構近畿本部は、観光ビジネ 利き酒体験や酒蔵見学でなく、酒米 スの支援が専門の刀根プロジェクト づくりから体験することで、より深 マネージャー(PM)を配置し、観 く酒造りを知ることができる。日帰 光ビジネスやサービス産業の支援に りまたは数時間で日本酒の楽しみ方 も注力している。 が理解できるコースから、約1年を 各商工会からの新規相談者の有無 かけて酒米作りから仕込み・酒造工 と認定事業者へのフォローアップ情 同社は、桜井市商工会からの紹介 程までを学ぶコースがあり、観光客 報を共有するため支援機関への定期 で「なら観光ビジネスカレッジ」の や自社のファンにも好評のプログラ 訪問や、地域資源活用事業等に関す セミナーに参加し、構想する観光ビ ムである。 る施策説明会に加え、ここ数年は、 ジネスを具体化して行った。 また、近年では訪日外国人の参加 観光関連事業の認定事業者の販路開 また、地域の事業者等の連携体制 も増加し、顧客ターゲットは世界に 拓を支援する「観光商談会」も開催 を構築する支援も受けた。その過程 広がっている。 している。 で桜井市商工会を通じ、当機構に地 また、国内外の多くの旅行関連事 域資源活用事業計画認定を目指した 業者や交通関連事業者等とのコネク 事業計画のブラッシュアップ支援の ションを活用した、販路開拓支援に 依頼があった。 も積極的に取り組んでいる。 事業計画ブラッシュアップでは、 事業の展開 同社の三輪への思いと、酒造りへ 奈良県商工会連合会セミナー <今西酒造への支援> 刀根PMが担当となり、ビジネスモ の思いは、他に勝るとも劣らないく <奈良県商工会連合会と 中小機構との連携> デル、事業課題、営業戦略等の検討 そういった中、新たな観光ビジネ 地型観光で、顧客にこの地域まで足 までの取り組みを発展させ、観光ビ スの創造、創業を目指す事業者への を運んでもらう必要があった。そこ ジネスを行う構想を持ったが、自社 事業化支援、ビジネスモデルの具現 で、大手電鉄会社や大手旅行代理店 の経営資源だけでは実現することが 化に取り組む奈良県商工会連合会か 等の反応を確認しつつ、事業性を高 出来ないと考えた。 ら中小機構へ「奈良県内のサービス めるブラッシュアップ支援を行った。 そこで、同社はビジネスモデル策 業、小売店、農林漁業者などから、 また、着地型観光は、地域の協力者 定や支援ネットワーク構築のアドバ 消費者との交流を深めながら市場ニ の存在が大変重要である。その点も、 イスを受けるため、地元の桜井市商 ーズを察知し、観光を通じて販売を 観光プログラムに対する地域の連携 工会へ相談に行った。 伸ばす方法はないか。」という相談 方法、観光ビジネスの販路開拓の考 があった。 え方、ビジネスリスク対策等、様々な <地域支援機関の取組み> この相談を受けて、刀根PMは前 アドバイスを行い、同社と地域の関係 一方、奈良県では従来、「観光業 述の「なら観光ビジネスカレッジ」の 者の協力体制の構築をサポートした。 や旅行業」と「製造業、小売業等」 開催を企画し以下の対応を行った。 との連携を呼び掛ける新ビジネス創 ●セミナーの構成 造セミナーや相談会等の事業が行わ ●講師の紹介 れていなかった。 ●開催地域の新サービスの可能性 らい深い。 日本酒や三輪地域のファンを発掘 して地域活性化につなげようと、今 を積み重ねた。本事業は基本的に着 <事業計画ブラッシュアップ 支援のポイント> 事業計画のブラッシュアップ支援 そうした中、奈良県商工会連合会 および観光コンテンツ資源の事 で刀根PMが特に留意したのが、観 が主体となって、明日香村、桜井市、 前調査と、創出できる新たな観 光プログラムのメニュー開発、販路 斑鳩町、天川村、御所市の5商工会 光サービス、コミュニティビジ の実現性、地域の面的ネットワーク と連携した「なら観光ビジネスカレ ネスの可能性提案。 構築である。 ッジ」を中小機構近畿本部の支援を 奈良県商工会連合会は、それを受 メニュー開発では、提供メニュー 受け、県内各地で開催した。 けて各商工会や行政等と調整し、具 の魅力を高めるとともに、同社の酒 本カレッジは、地域の観光資源や 体的なセミナー企画、参加者募集、 蔵だけでなく地域観光資源を活かし 35 ながら、歴史・風景・箱ものだけに頼 ソムリエスクール、酒蔵と美食体 同社も、本事業のブラッシュアッ らず通過型の観光地から脱却するた 験、日本酒ふるさと散策の3コー プ支援段階から、観光商談会に毎年 めに、新たな観光コンテンツやリピー スを用意し、地域の暮らし等にも 参加し、「お酒と三輪」を楽しむ四 トを呼ぶ四季を通じた新観光コース 触れてもらい三輪の街の良さを味 季の観光コースの開発から、評価、 わってもらう。 改良、本格的商品化、販売活動、顧 の開発など地域全体でどのような楽 しみを提供できるかの検討を深めた。 ③オリジナル土産物の販売 客フォローまでの一連のプロセスで 販路については、大手旅行代理店 酒をテーマにした土産物を地域 PDCAを回している。 や交通機関等に商品の魅力について の協力を得て開発し、近隣のカフ 意見をもらいながら、プログラム開 ェやギャラリー等で販売する。 発に反映した。具体的には、旅行ニ ーズで今最も求められる「ほんもの」 <事業スタート後のフォロー> 「体験」「ふれあい」に応えるため 同社は、地域資源活用事業計画の 日本酒を旅の物語とした旅行商品づ 認定を得て本格的に本事業をスタート くりが必要との貴重な意見を貰った。 させた。重要課題は販路開拓であり、 また、面的ネットワークについて 刀根PMに引き続きアドバイスを求めた。 は、同社自体も地域ネットワークを そこで刀根PMは、大手旅行会社 有するが、全体を整合した観光メニ の商品企画担当者やホテル業、旅客 ューにしていくため、大神神社、奈 輸送関連会社、ご当地検定上級者、 事業の成果 良県、桜井市、周辺自治体、観光協会、 旅行パワーブロガー等の専門家によ 同社は、本事業計画の認定後、桜 地元旅行業者、バス鉄道会社、小売 るモニターツアーを開催した。その 井市商工会や奈良県商工会連合会、 店等がお互いに協力関係を維持し続 際、大手旅行会社、地元バス会社や 当機構のサポートを受けながら、本 ける仕組み作り等に関して議論し 一般財団法人奈良県ビジターズビュ 事業を積極的に進めている。本事業 た。 その中で、観光振興の枠を超えた ーローほか地元のホテルや交通関連 は順調に進んでおり、現段階では売 地域振興事業であるとの共通認識を 会社などにも参加してもらい、その 上の事業計画数値を毎年達成してい 関西国際空港での観光紹介ブース 持つようにというアドバイスを行っ 商品価値を伝え相乗効果を促すため る。 た。 その結果、 次の①から③の体験プ の情報提供のあり方やアクセスなど また、知名度も徐々に向上し、既 ログラムを開発し、平成24年2月に地 を検討し、顧客の利便性やニーズに 存事業の日本酒販売においても、自 域資源活用事業計画の認定に至った。 沿ったサービスやコンテンツを提供 社店舗での売上増加と、ホテルや百 ①オリジナルプログラム するようアドバイスを受けた。 貨店、海外の販路獲得により、売上 中小機構は独自に、地域資源活 が倍増している。 用・農商工連携等の観光事業者をサ 地域資源活用事業計画への認定 ポートするため、「観光商談会」を で、既存事業と新事業が相乗効果を 毎年開催し、認定事業者と旅行代理 生み、地域活性化にも貢献している 店等のマッチングを支援している。 モデル事例と言える。 平成25年度は関西国際空港とホテ ル日航関西空港と連携し、観光商談 会を実施した。また、物産展の開催 連携体制の紹介 入門と初級・中級・上級の4コー や観光紹介ブースの設置により、同 本事業の推進体制は、同社がリー スを設定し、中級以上は日本酒造 空港を利用する日本人および外国人 ダーとして事業主体を担い、地域の りを実際に体験できて、更に日本 の旅行客に、認定事業者の商品やサ 協力者としてNPO法人三輪座が「三 酒と三輪の知識人になってもらう。 ービスをPRした。 輪まち体験・交流プログラムの提供」 三輪日本酒大使養成スクール ②旅行会社との提携プログラム を行う。 また、桜井市観光協会が観光PR を担い、㈱島田工務店は、「桜井市 近隣にある明日香村での酒米作り体 験」、奈良県酒造組合は共同観光イ ベントの実施で連携する体制となっ ている。 さらに、奈良市内のホテルがプロ 三輪のまち体験・交流 36 観光商談会 グラム参加者の宿泊で協力し、旅行 会社も顧客紹介や情報提供などのツ アーデスク機能で協力している。 そして、支援機関として桜井市商 工会や奈良県商工会連合会が地域 で、中小機構と連携して支援してい る。 地域における観光 ビジネスの推進 セミナー「なら観光ビジネスカレ ッジ」は平成22年より通算60回開催 し、参加者は延べ1,500名である。 参加者は、観光ビジネスチャネル を使った既存商品やサービスの PR、販路拡大方法、新規顧客への アプローチ方法を学び、観光ビジネ スに関するノウハウを習得している。 また、支援機関である奈良県商工 会連合会やセミナー開催者である各 地の商工会、セミナー参加者のうち 新規創業者等が、奈良県の新聞や、 テレビ、ビジネス雑誌からも取材を 受けるなど、パブリシティ効果も高 くなっている。 さらに、本セミナーを機に過去に 観光業やサービス業者でなかった 人々が地域の観光リーダーを務め牽 引しはじめたため、ビジネス視点を 重視した観光まちづくりが広まって いる。その結果、女性や若者、高齢 者などを中心に新たな雇用も生ま 事業者のひと言 当社では「酒の神が鎮まる地 奈 良・三輪 ガイド付き聖地巡盃ツア ー」という名前で酒蔵ツーリズムを 企画・推進しています。目的は「地 域活性化」と「当蔵日本酒(みむろ 杉)のファンづくり」です。 酒蔵にお越しになる方は、月間平 均約300名とツアー企画前の2年前に 比べて約10倍になっています。 その方々が地元「三輪」を歩き、 飲食・土産物を購入されるので、微 力ながら地域に貢献出来つつあると 思っています。 これは3年前に急死した先代社長 の夢の一つでもありました。「地元 の方に支えて頂いたからこそ、今日 の今西酒造がある。今、地元に元気 がなくなっている時、酒を通じて地 域を元気にしたい。」と常日頃から 語っていました。その思いを引き継 いだものの、観光事業に対して全く の素人だった私は何をしたら良いの か途方に暮れる日々でした。その状 況下、中小機構・奈良県商工会連合 会・桜井市商工会の方々が、人的ネ ットワーク・観光事業のノウハウ等、 事業立ち上げから収益化に係る細部 まで親身になり、支えて下さいまし た。皆様方がいなければ、現在の事 業はないといっても過言ではありま せん。 先代から受け継いだ夢はまだまだ 夢半ば。これからも皆様方と共に酒 を通じて地域を元気に出来ればと思 っています。 れ、コミュニティーサービスとして も定着しつつある。 本事例のように、着地型観光は、 主体企業と地域支援機関や観光協会 以外に、地域の企業、住民、団体等も 巻き込んで総合的・面的に地域の魅 力を発信し、提供する仕組みが必要 代表取締役 である。このビジネスモデルは、今 今西 将之 氏 後の観光事業のモデルケースになる。 連携支援者のひと言 ニューツーリズムなど新たな観光 のスタイルが定着するなか、今回、 「なら観光ビジネスカレッジ」の開 催や今西酒造㈱への支援は、観光を ビジネス、特に顧客マーケティング の切り口としてとらえ、地域の新た な需要を創出することを目的に推進 しています。 奈良県内各地域に合った企画立案 や事業推進体制構築が必要で、事業 者の個別フォローアップとまちづく りビジョンをコーディネートしてい くのが課題です。これらの支援を通 じて、資金・パートナー・資源を組 み合わせ、新たなビジネスを生み出 す機会になればと思います。 奈良県商工会連合会 吉川 氏 支援者のひと言 観光立国を目指す日本、特に関西 は「おもてなしの文化」が根付いて いますが、現代社会のニーズに沿っ た新たな地域のおもてなしを発掘す るべく本事業に取り組みました。 奈良県商工会連合会をはじめ県内 各商工会と連携して、地域観光資源、 伝統産業、農林漁業等を活用したニ ュービジネスやコミュニティーサー ビスの創出を目的に60回の講座を開 催し、参加者延べ1500名、本格的な 事業化相談24件と大変好評で、その 中の一件が今西酒造㈱でした。 本事業成功の要因は、支援機関と 中小企業との信頼関係に基づく「共 に未来を創造する」といった支援ス タンスと、そのポテンシャルに気付 ける地域支援機関と中小機構との支 援機関同士の「目利き力を磨く努力」 であると感じています。 事業の推進体制 奈良県商工会連合会 今西酒造㈱ 中小機構近畿本部 桜井市商工会 各旅行会社 ㈱島田工務店 奈良県酒造組合 桜井市観光協会 地域の協力者 NPO法人三輪座 近畿本部 刀根プロジェクト マネージャー 37 株式会社プラントベース 岡山県倉敷市 サイロ業界に革新的なメンテナンス工法を提 供し、新分野を樹立したベンチャー企業 サイロ補修用移動式足場「ステージタワー」が、使用不能 になったサイロを蘇らせた。業界に驚きを与えた安全性と 短工期・低コストの両立で、大手企業と直接取引できるま でに成長したベンチャー企業の親子二代の挑戦。 ステージタワー全景 ●会社名 株式会社 プラントベース ●代表者 五十嵐 雅明 ●設 立 平成18年6月 ●資本金 950万円 ●従業員数 20名 ●事業内容 サイロメンテナンス事業 サイロ内ライニング(気密)工事、 穀物ブリッジ除去・清掃、点検 ●所在地 ◦本 社 岡山県倉敷市白楽町382 サンライトビル白楽町101 ◦関東営業所 千葉県成田市本城140-16 クレセントドイ101 ●URL http://www.plant-base.com/ ●TEL 086-441-0316 ●FAX 086-441-0317 事業の概要 従来の工事は、①地上約50m地点 <サイロ業界の課題> ドラを吊るして行う方法、②単管足 にある大人一人分ほどの穴からゴン とうもろこし、大豆などの日本の 場を内部で組み立てて行う方法、の 食を支える穀物類は、その多くが輸 2通りに限られていた。 入されたのち、サイロに保管されて しかし、①ゴンドラの場合は、少 いる。具体的に、油や飼料に使用さ 人数で直径10mほどの内部を揺れる れる大豆を例に挙げる。港湾に到着 ゴンドラに乗って作業するため、効 した大豆は、ベルトコンベアなどで、 率が悪い。②単管足場の場合は、ア 船から一時保管用のサイロ(1次サ ンカーの打ち込みができないことか イロ)に移され、植物防疫法に基づ ら不安定である上に、設置・撤収に く燻蒸消毒が行われる。この大豆を 時間がかかる。また、サイロ内部壁 製油工場で採油処理し、生じた搾り 面に固着した穀物カスが上から崩れ かすは、飼料工場にあるサイロ(2 落ちて生き埋めになる危険性を伴う。 次サイロ)に運ばれる。飼料として こうした状況から、使用不能のま 製品に加工されたのち、最終的に養 ま放置されたサイロが増えており、 鶏場等の比較的小さなサイロ(3次 サイロ会社は、機会ロス(穀物の保 サイロ)で家畜のえさとして備蓄さ 管料として得られるべきサイロ1基 れる。 当たり約2千万円/年のロス)に悩ま 1次サイロ、2次サイロは、そのほ されていた。 とんどが昭和40年代に港湾のコンビ ナートに建設されたもので、補修が 一時保管用のサイロ(1次サイロ) ●事業名 移動式仮設足場(ステージタワー) を使ったサイロ内の清掃、補修・ 塗装工事の事業化 ●認定期間 平成21年2月〜平成26年2月 必要な時期を迎えている。この補修 事業の展開 とは、穀物の燻蒸消毒に用いる臭化 <全てゼロからのスタート> メチルなどの有毒ガスの漏れを防ぐ ㈱プラントベースの五十嵐雅明社 ための補修・防水塗装工事であるが、 長は、建築・土木工事の職人であっ 実際のところ、あまり進んでいない。 た。同社設立までの6年間、個人事 理由は、サイロ内部の作業が危険な 業主として岡山県内でサイロ内のメ こととコストを伴うことにあった。 ンテナンス工事を行っていたが、単 基幹部品の製造 事業の推進体制 コア企業 統括・研究開発・工事の施工 ㈱プラントベース (岡山県倉敷市) ・移動式仮設足場の開発 ・移動式仮設足場を利用した工 事の施工 ・移動式仮設足場の販売 米山工業㈱ (愛媛県松山市) 技術指導・施工 移動式仮設足場の 製造・改良 (岡山県岡山市) 塗料の開発・販路開拓 ・コンクリート診断・補修の技 菱洋㈱ (東京都港区) ・塗料の開発・供給 ・清掃・補修工事の受注 38 ㈱ディアテック 術指導および施工 管足場での作業は非常に危険である 同社が設立された。 ため、安全に作業できる装置の開発 を思い立った。 ク(岡山県)の力を借り、他の追随 を許さない競争力の獲得を目指した。 認定に必要な事業計画の作成にお 工事中に思いついた図面をラッ <中小機構との出会い> 平成20年、岡山県からの紹介をき いては、地元の金融機関などからも ク・ピニオン の技術的なノウハウ っかけに、同社と中小機構の加藤プ 支援が得られ、平成21年2月に新連 が豊富な愛媛県の米山工業㈱に持ち ロジェクトマネージャー(PM)が 携事業計画の認定を受けることがで 込み、設計してもらったことから「設 出会った。資金調達の相談であった きた。 置・移動が簡単で安全性に優れる移 が、当時、同社は創業3期目であり、 認定後2年目には市場投入が行わ 動式仮設足場『ステージタワー』」 資金・人材・経営ノウハウ等が圧倒 れたが、その間、補助金を活用して、 の共同開発が始まった。ラック・ピ 的に不足している状況で、その他に ステージタワーの改良が進められ ニオン技術とは、歯車(ピニオン) も解決すべき課題がたくさんあっ た。これにより、安全性の向上、工 と歯切りした平板(ラック)を組み た。建設業許可の取得や知的財産の 期の更なる短縮と原価低減を実現す 合わせる技術のことであり、米山工 保護などだ。 ることができた。また、「営業用の 業㈱の製造するみかん農家の作業用 しかし加藤PMは、ステージタワ DVD」や「ステージタワーのミニ モノレールの動きをステージタワー ー本体の利便性に、「補修・防水塗 チュア模型」などの営業ツールも作 の上下運動に応用した。 装工事の技術」や「受注のための販 成することができ、いよいよ本格的 路開拓力」を組み合わせることがで な販路開拓が始まった。 ピニオン ラック きれば、これまでサイロ会社を悩ま ≪製品模型≫ 電動式でステ ージタワーの サイロ内部で の動作がわか る。 せてきた補修の問題を一気に解決す る事業になると強く感じた。そこで、 当機構のハンズオン支援で課題を解 決しながら、事業が推進できるよう 開発中に、1年以内に法人設立す 新連携事業計画の認定を目指すこと る起業予定者などの支援を目的とす を勧めた。 る「岡山県発!オンリーワン企業育 認定を目指すにあたり、同社がス 成支援事業」の採択を受け法人化し、 テージタワーの開発と工事の施工を ≪ステージタワー導入のメリット≫ ◆落下の危険が無く、安全 ◆組み立て費用が従来の3分の1 ◆複数の作業員が同時に作業でき、 工期は3日(単管足場は通常10日) ◆総重量が単管足場の約10分の1で 作業員の身体的負担が少ない ◆丸、四角等サイロの形状を問わない ステージタワーと従来の工法の比較 ステージタワーと従来工法の比較 ステージタワー ステージタワー 単管足場 単管足場 ゴンドラ ゴンドラ 行い、米山工業㈱がステージタワー の製造などを行うことで、連携して 事業に取り組むことになった。さら <親子の挑戦、開始> に、塗装工事用塗料の開発と清掃・ 認定を受けたことで、営業がスム 補修工事の販路開拓に菱洋㈱(東京 ーズになり、3年目には徐々に成果 都)、経年劣化によるサイロのひび が出始めた。以前はステージタワー 割れ診断には、コンクリートの診 の台数が3台程度しかなく、受注が 断・補修が主力事業の㈱ディアテッ あっても工事を消化できない事もあ サイロ内の清掃イメージ 上部から穀物掻き落とし作業を始 め、下部の搬出口からバキューム 等で排出する。 ったが、この頃にはステージタワー が1台増えるごとに客先も1社増える ペースで事業を進められるようにな った。 売上は軌道に乗り始めたが、赤字 決算は依然として続いていた。加藤 PMは、経営資源の拡大スピードに 限界のあるベンチャー企業ゆえ、 「足 元を固めながら成長を目指す方針」 で「現場の体制に無理がないかどう か慎重に見定めながら拡大を図るよ う」、五十嵐社長にアドバイスした。 当初の事業計画では、顧客の姿が 鮮明に見えておらず、また原価構成 や顧客との取引条件について精査さ れていない部分があり、事業計画と 39 実態が乖離していた。そのため、現 ため、関東在住の山本アドバイザー に全工程の手順を書き直す必要があ 状に合わせた事業計画の見直しと、 (AD)が中小機構の「経営実務支 り、書き手・読み手の双方に負担が 新しい事業計画を現場で実現する具 援事業」を活用して、現地で「安全 かかっていた。 体的方策の再検討が必要であった。 衛生管理体制構築」のための支援を そこで、どの現場でも遵守すべき タイミング良くこの頃同社に、社 行った。 安全に関する事項と現場や客先の要 長のご子息が取締役として入社した 山本ADは工場の安全管理に精通 求によって変更する施工要領との切 こともあり、加藤PMは事業承継を していたため、サイロという特殊な り分けを図ったのだ 。現場ではそ 視野に入れて支援を行った。 環境でのアドバイスにも対応できる れまで「安全対策は作業しながら行 そして、①工事毎の原価管理、受 専門家であった。 うもの」という意識であったが、 「安 注見込の精査、②原価・販管費の削 減、③月毎全勘定科目別の予算構築 全対策は作業の前に行うもの」とい <安全は何を変えるか> う意識に変わり、ゆとりをもって安 と 予 算 管 理 のPDCAサ イ ク ル な ど 支援を開始した当初、現場作業に で、同社の吸収力の高さと実行力が おける安全衛生管理は、作業者個人 いかんなく発揮され、同社は目覚ま の経験と判断に基づく部分が大き ②リスクアセスメントの導入・実施 しい経営改善を遂げた。 く、 「仕組み」と呼べるものは無か 危険を回避するには「危険とは何 このような経営管理への取り組み った。 か」を知る必要がある。例えば、粉 が、金融機関からの評価につながり、 支援者が同社に寄り添える時間は 塵爆発回避のため、サイロ内部の照 運転資金の調達も無理なく行えるよ 限られている。山本ADは、全社員 明を白熱球からLEDに変更した。 うになった。 による基礎的な安全管理のノウハウ 粉塵爆発は、空気中に浮遊した粉塵 全を確保できる環境が構築できた。 の習得と、作業者が変わっても情報 がある一定濃度の状態で火種に引火 <地震被害を食い止めた ステージタワー> 共有ができる「仕組み作り」が必要 すると連鎖的に爆発を引き起こす現 と考えた。 象で、可能性は低いものの、熱をも 東日本大震災の際、鹿島・仙台の 支援の結果、①安全に関する社内 った白熱球も火種となる可能性があ 現場でも作業を行っていたが、人的 基準の構築、②リスクアセスメント った。 被害は全く出なかった。 の導入・実施(緊急時含む)、③労 このような事例を丹念に探り、回 このため、安全性の高さが口コミ 働安全マネジメントシステムの導入 避してゆく必要がある。また、故障、 となって広まり、次第にサイロだけ が図られた。①〜③の具体的内容は 自然災害、火災などあらゆる災害を でなく、酒のタンクや乳業メーカー 以下のとおりである。 想定して、脱出訓練が行われた。 多くの大企業およびそのメンテナン ①安全に関する社内基準の構築 ③労働安全マネジメントシステムの ス関連企業から、直接取引の依頼が 最初に取り掛かったのは、労働安 寄せられるほどになっていった。 全衛生法と照らし合わせながら、安 最後に、これらの安全に向けた方 全に関する社内基準を構築すること 策を現場に携わる全員に継続して周 であった。 知する仕組み作り、安全衛生に於け 平成25年春、同社は初めて新卒の これまでは、現場で使われる施工 るPDCAサイクルを導入した。 社 員 を3名 採 用 し た。 加 藤PMは、 要領の中に、客先の要求と、その現 工事要領に記す安全基準を法律や 毎回予想を超えた成長ぶりを見せる 場で想定される危険に対する予防策 規定より高いレベルに作り直し、P 同社への訪問を楽しみにしていた。 などの安全に関する事項とが一緒に (PLAN)に位置づけたことで、安 しかしその頃、競合他社では粉塵 書かれていた。このため、現場ごと 全に対する意識を高め、技術や環境 の製造装置向けメンテナンスなど、 <勝って兜の緒を締めよ> 導入 爆発や穀物カスによる生き埋め死亡 事故が起きており、もし同社で同じ 同社が導入したPDCA サイクル • 法 • 規則 • 工事要領 ことがあれば、右肩上がりから一転、 即『倒産』に追い込まれる恐れもあ った。 社員の増加と他社の死亡事故報道 により、それまで整備されていなか った作業現場における安全衛生管理 体制の構築が喫緊の課題となった。 ステージタワーの営業拠点は、茨 城県神栖市と千葉県成田市にあった 40 • 安全衛生運営委員会 • 安全会議 ACTION PLAN CHECK DO • 文書 • 教育 • 作業 に応じてリニューアルし続ける仕組 増やしている。ステージタワーの他 みを作った。 の追随を許さない革新的な特徴と独 また、会議を見直し、管理職によ 自の安全衛生管理体制でハード・ソ る「安全衛生運営委員会」と、全従 フト両面の優位性が認められたとい 業員が事故事例の原因解析を行う えるだろう。 「安全会議」の2種類をC(CHECK) 中小機構と出会った当初は資金・ とA(ACTION )に位置づけた。 人材・経営の問題を抱えていた同社 五十嵐社長は、これにより、「事 であったが、それを次々と乗り越え、 故事例をもれなく情報共有し、再発 現在は権利範囲の拡大と確保を目的 防止に役立てることができたほか、 に特許の出願に取り組んでいる。 管理職の自覚と責任感の醸成に役立 特許などの知的財産権の出願は、 った。」と語る。2つの会議は同社の 網羅的な出願をすればよいというこ 取り入れた安全衛生管理における とではない。同社の場合は、すでに PDCAサイクルを動かすための原動 取得した特許があるため、権利の延 力になった。 命や現在の研究開発状況を勘案しな 事業者のひと言 創業当初は日々の資金繰りに精一 杯でしたが、大勢の方の力を借りて、 会社の体力が付きました。新連携事 業計画の認定を受けていなかったら 今ごろはまだ、今ある製品の半分以 下の台数しかなかったでしょう。ま た、安全のノウハウが直接売り上げ につながるとは想像もしていません でした。今では事業を効率的に運営 できており、短期借り入れもほとん どありません。今後は100年企業を 目指して、コツコツと身の丈に合っ た成長をしてゆきたいと思います。 がら、知的財産保護の体制を確立す る必要があった。 そこで知財支援を担当する桑原チ ーフアドバイザー(CAD)を中心 に「知財会議」を行った。同社の経 営者・技術者はもちろんのこと、弁 理士・弁護士・中小企業診断士など 安全会議の様子 を巻き込んで一緒に知財戦略を練っ たのである。こうした地域や専門領 事業の成果 域を超えた多面的な支援は当機構の <安全が売り上げに変わった> 強みである。 昨今、トレーサビリティーの強化 また同社は、ステージタワーの他 など食の安全管理がとりわけ叫ばれ に、穀物カスの「掻き落とし機」の るようになった。サイロ現場の安全 開発も進めており、さらなる工期の 管理は、単に作業者にとって良い環 短縮に挑んでいる。五十嵐社長は、 境を作ること以上の価値があると評 人材確保に苦戦を強いられる建設業 価されている。 界において、労働生産性の向上を技 このような流れの中で、同社が取 術改革で支えることで、働く魅力の り組んできた安全衛生管理体制の確 ある会社にしたいという思いを持っ 立と信頼の施工力は、口コミによっ て、日々会社を進化させている。 て広まり、現在順調に施工およびス テージタワーの設置・解体の受注を 支援体制の紹介 H21.2 新連携事業計画 認定 事業計画ブラッシュアップ 代表取締役社長 五十嵐 雅明 氏 支援者のひと言 ベンチャー企業が新連携事業計画 の認定を受けるのは珍しいことです が、これだけ大勢の協力が得られた のは、やはり全員が共通してステー ジタワーの事業実現可能性に対して 大きな期待を抱いたからでしょう。 本来であれば、熱心に支援を担当 していた山本ADに当時の現地の様 子などについて詳しく聞きながらこ の事例集を仕上げるべきでしたが、 山本ADは本支援終了の2週間後にご 病気で永眠されました。 本支援が最後になってしまったの は、大変残念ですが、彼の残した仕 組みが、同社の発展を支える土台と なるよう、引き続き力になりたいと 思います。 H25.6~11 安全管理体制 (現在取り組み中) の整備 補完特許取得 経営実務支援 知財戦略に関する支援 中国本部 加藤プロジェクト マネージャー (現統括PM) 41 ぎ ん ぱ て い 有限会社スエヒロ銀波亭 香川県高松市 老舗の鴨料理専門店が洋風ギフトセットを開発 女性の新規顧客層を開拓し百貨店の商品として採用 ターゲットは30〜40代女性、コンセプトは「ヘルシー・お 洒落・アレンジ自由なオリーブ鴨を使用した洋食スタイル」。 創業40年以上の鴨料理専門店が料理研究家、販路開拓専門 家等の支援のもと、新商品開発にチャレンジ。 テレビ、新聞等へのメディア露出で注目度もアップ。 ●会社名 有限会社スエヒロ銀波亭 ●代表者 古市 哲也 ●設 立 昭和44年9月 ●資本金 800万円 ●従業員数 5名 ●事業内容 飲食店「鴨料理 銀波亭」の運営 ●所在地 香川県高松市花園町1-2-15 ●URL http://www.ginpatei.com/ ●TEL 087-862-2131 ●FAX 087-831-7689 全国に現存する5カ所の鴨場のうち、 規顧客は増えず頭打ちとなり、売上 最大の規模となっている。このよう の拡大を図るには、女性客を中心と な地の利を生かして同社は、昭和44 した若い世代や鴨料理を食したこと 年に鴨料理の専門店「銀波亭」を創 のない人たちをターゲットとした新 業した。 たな商品を開発し、収益の柱に育て あげることが必要となっていた。 栗林公園に現存する鴨場(鴨引き堀) 同社は、40年以上にわたり鴨肉だ けを扱い、変わらない味の良さと温 落ち着いた雰囲気の「銀波亭」店内 かい家庭的なおもてなしを柱に堅実 な経営を続け、四国でも珍しい鴨料 ●事業名 オリーブ加工品(オリーブ葉高濃 縮エキス)の持つ殺菌・抗菌・抗酸 化作用を活用した常温保存が可能 な鴨肉加工品の開発・製造・販売 ●認定期間 平成24年11月〜平成28年5月 ●地域資源名 オリーブ加工品 理専門店として宴会や会席の場に活 そこで、同社の古市社長が目をつ 用されてきた。 けたのがオリーブだった。香川県は しかし、昨今の景気低迷による宴 小豆島を中心にオリーブの産地とし 会需要の減少や、消費スタイルの変 て全国に知られ、農林水産省の「平 化に伴う飲食業界の競争激化等によ 成24年産特産果樹生産動向等調査」 り、老舗スタイルの同社は厳しい経 によると、同県のオリーブ収穫量は 営環境に置かれている。落ち着いた 153tと全国1位であり、全国の96% 雰囲気は敷居を高く感じさせ、鴨鍋 を占めている。オリーブの果実は渋 料理=冬というイメージが逆に足か くてそのまま食べることができない せとなり、従来の営業スタイルが通 ことから、オイルや化粧品等の加工 用しにくくなってきていた。 品開発が活発である。オリーブには ポリフェノールの一種であるオレウ ロペインやヒドロキシチロソールが 多く含まれており、健康志向の女性 を中心に需要が増加している。 事業の概要 <老舗鴨料理専門店の現状> <香川県特産のオリーブに着目> 古市社長は、女性を中心とした若 い世代の新規顧客開拓に向けて身近 かつて高松藩主松平家の下屋敷で 「銀波亭」を代表する料理「鴨鍋」 にあり、かつ全国的にも著名で各種 あり、現在は特別名勝に指定されて 売上向上に向け、鴨鍋料理セット 効果を有するこのオリーブを鴨料理 いる「栗 林公園」。㈲スエヒロ銀波 の通信販売に取り組んだ結果、12月 に活用することで、付加価値の高い 亭の近くに位置する広大なこの回遊 の繁忙期を中心に常連客がつき、一 商品開発が可能ではないかと考えた。 式大名庭園には鴨猟を楽しむための 定の売上を上げることができるよう 既に同県では、オリーブの搾りか 鴨場(鴨引き堀)が設けられており、 になった。しかし、常連客以上の新 す等を飼料とした「オリーブ牛」や りつりんこうえん 42 「オリーブハマチ」が誕生し、注目を 大いに魅力を感じたという。 浴びていたことから、古市社長は商 品開発に先立ち、平成23年5月に「オ リーブ鴨」で商標登録出願を行った。 【PM・機構職員】 <想定市場・ターゲットを 明確化> 平成24年10月の地域資源活用事業 計画認定後、古市社長は「骨付きオ 【栁田CAD】 百貨店市場、 商品コンセプト づくり等に係る アドバイス リーブ鴨」「オリーブ鴨ロース煮」 を相次ぎ開発し、次はこれらの商品 をもとにしたギフト商品の開発が行 香川県の特産物であるオリーブ われることになった。 プロジェクト マネジメント 【佐々木AD】 【石原CAD】 新商品の包 装、色彩等 に係る アドバイス ギフトセット・ レシピ開発等に 係るアドバイス 複数の専門家がチームで支援 ギフト商品開発を進めるにあたっ ゲットの嗜好を踏まえた商品コンセ ては、担当PMと栁田CADの支援の プトづくりに係るアドバイスを担当 もと、最初に事業目的の再確認と商 し、デザイン分野に強い石原CAD <地域資源活用事業計画に挑戦> 品開発の方向性の検討を行った。 が商品の包装や色彩などパッケージ 半年後「オリーブ鴨」は商標登録 その結果、目的は新規顧客の開拓 に係るアドバイスを担当することに できたが、オリーブを活用した具体 であることが確認され、想定ターゲ なった。そして最も重要となるギフ 的な商品開発は白紙のままだった。 ットは30〜40代の女性と設定し、想 トセットの内容及びレシピ開発にあ そのような中、中小機構の栁田チ 定市場は既に従来の鴨鍋料理セット たっては料理研究家であり地域活性 ーフアドバイザー(CAD)から当 が地元百貨店にギフトとして採用さ 化支援アドバイザー(AD)である 機構の支援活動のことを聞かされて れていたこともあり、百貨店における 佐々木由美氏が起用されることにな いたこともあり、当機構に相談を持 お中元・お歳暮などのギフト市場に った。佐々木ADは、自ら飲食店を ちかけたところ、当時のプロジェク 決定した。ゴールは洋風ギフトセット 経営していた実績に加え、料理教室 トマネージャー(PM)から、小豆 の完成と百貨店での採用と決まった。 の講師も務めるなど、料理全般に精 島の農商工連携事業計画認定事業者 しかし同社はこれまで飲食業を中 通していた。 が開発したオリーブ葉の高濃縮エキ 心に事業を行ってきたため、百貨店 スの活用提案を受けた。 のギフト市場におけるトレンドやタ 事業の展開 ーゲットとする30〜40代の女性の嗜 好に対する理解が不足していた。 骨付きオリーブ鴨 「殺菌・抗菌・抗酸化作用が認め 具体的な支援の開始に先立ち、平 加えて、完成したギフトセットの 成25年7月下旬に同社と佐々木AD 訴求力とリピート率を高めるために とのマッチングが行われた。佐々木 はレシピ提案を合わせて行う必要が ADには、同社の既存の鴨鍋料理セ あった。そこで、各分野に精通した ットを見てもらった後に改善点を提 専門家がチームを組んで支援にあた 案してもらった。 ることとなった。 佐々木ADからは、30〜40代の女 られている同エキスに鴨肉を漬け込 み殺菌・減菌処理を行えば、鴨肉の <アドバイザーからの斬新な メニュー提案に驚き> 性をターゲットにした場合、開発商 品は洋鍋セットが良く、近年のトレ 味を損なうことなく常温保存が可能 <専門家による支援チーム結成> 支援メンバーは、PM及び当機構 ンドを踏まえると、オリーブ鴨ロー な鴨肉加工品の開発が可能かもしれ 職員が全体マネジメントを行いなが ス煮等が好ましいこと、薬味を添付 ない」、そう考えた古市社長は早速、 ら、百貨店の食品バイヤー出身の栁 することにより、顧客に対して素材 骨付きモモ肉を丸焼きにした既存の 田CADが百貨店市場の動向とター の活かし方を容易に提案できること 「骨付鴨」をベースに「骨付きオリ ーブ鴨」の試作を開始した。苦みを 地域活性化支援アドバイザー派遣事業を活用した支援の流れ 有する同エキスの配合割合には苦労 第1回 既存商品等の現状確認及びギフト市場の消費動向・想定ターゲットの嗜好に関するアドバイス したが、試行錯誤の結果、商品化の 第2回 ギフトセットの商品コンセプトと企画に係る提案及びすり合わせ 目途が立ったことから、地域資源活 百貨店へのギフト提案、採用へ 用事業計画認定に挑戦し、同エキス を活用した鴨肉加工品の開発に取り 第3回 ギフトセットに添付するレシピの提案及びすり合わせ 組むこととした。当時古市社長は、 第4回 ギフトセットに添付するレシピの提案及びすり合わせ 第5回 お歳暮ギフトカタログに掲載される写真等の確認及びアドバイス 計画策定から認定後のフォローアッ プに至る当機構のハンズオン支援に 43 等の意見が出された。 め、価格帯をギフト市場において多 る鷹の爪を加えた小豆島産のエキス さらに、アヒージョ(オリーブオ くの顧客の予算ラインとなる5,000 トラバージンオリーブオイルをセッ イルとニンニクで具材を煮込んだス 円(税抜)とした上で、ギフトセッ トにした「カモ・ド・オリーブ ロ ペインの代表的な小皿料理の一種) トの組み立てを検討した。 ース煮セット」を古市社長が百貨店 やバーニャカウダ等は同県の特産品 この結果、ギフトセットの中身に のお歳暮バイヤーに提案を行ったと であるオリーブオイルやにんにくと ついて、オリーブ鴨ロース煮、オリ ころ、見事採用となった。 の相性も良いので 、鴨とともにお ーブオイル及びドレッシングとし、 8月29日と9月2日には3回目と4回 洒落な小鍋付きで提案することも一 アヒージョをはじめとするオリーブ 目の支援が行われ、ギフトセットに 案とアドバイスがなされた。また、 鴨ロース煮を活用したレシピを添付 添付するレシピについて議論を行い パッケージについては色彩や透過性 することが決定された。 最終的な決定を行うとともに、レシ を考慮した訴求力のあるパッケージ とするようアドバイスが行われた。 ピ用の料理の写真撮影を行った。 レシピは折り畳み式で料理の際に 古市社長からは「これまでは鴨料 <料理専門家が洋風レシピ考案> 第 2 回目の支援は1週間後に行わ 邪魔にならない小さなサイズとし、 理=和食という発想に囚われていた れ、百貨店のお歳暮商品向け提案内 透明な商品パッケージ内に同梱する ので、この提案はとても新鮮に感じ 容のブラッシュアップを行うととも ことで、目を惹く作りとした。 た」と、大きな賛同を得た。こうし に、オリーブ鴨ロース煮を使用した また、商品ロゴ、ネーミングも支 て、佐々木ADの派遣を核とするチ レシピとして佐々木ADが考案した 援チームで考案し、提案した。 ーム支援が開始されることとなった。 アヒージョやキャロットドレッシン グを使用したオレンジソテー、野菜 巻き、バゲットサンドなどの詳細説 明が行われた。併せて包装紙や箱な どに対するアドバイスが行われた。 ギフトセットに入れるオリーブ鴨 実はこの支援日の前日、古市社長 ロース煮は塩味を予定していたが、 から、アヒージョについて疑問が投 古市社長からパサつきが気になると げかけられていた。アヒージョは、 の相談を受けていた佐々木ADは、 油に火が入る恐れがあり危険ではな 煮込む前に塩麹で漬け込むことをア いか、また、油っぽいうえ、そもそ ドバイスした。パサつきが解消され <商品開発期限は1カ月後> もメニューとしてなじみがないので たうえ、トレンドの発酵食品を使う 百貨店のお歳暮ギフトカタログへ はないかというものだ。 ことで訴求ポイントが追加されるこ の提案締切が8月下旬に迫っていた これに対して佐々木ADは、調理 とになった。 ことから、佐々木ADの派遣は短期 は簡単かつ安全でヘルシーであるこ 集中型で行われることになった。 と、ターゲットとする30〜40代女性 第1回目の支援は8月5日に行われ に今人気のメニューであることを丁 9 月 30 日には、最後の支援が行わ た。この日は、既存商品等の現状確 寧に説明した。 れ、百貨店のお歳暮ギフトカタログ 開発されたオリーブ鴨ロース煮のアヒ ージョ に掲載される写真や文章の確認が行 認を踏まえ、栁田CADより高級百 貨店におけるギフト市場のトレンド <カタログ表現内容を吟味> われた。古市社長をはじめ、支援チ について説明があり、佐々木ADよ <百貨店への提案、採用へ> 百貨店への提案コンセプトは、 「老 ーム側も思いを込めて作り出した商 り自身の料理教室に通っている生徒 舗鴨料理専門店が料理研究家ととも 品だけに、文章表現一つとっても商 の意見も含め、30〜40代女性の嗜好 に提案するヘルシー・お洒落・アレ 品の価値を伝え切れているかとの観 についてアドバイスが行われた。 ンジ自由なオリーブ鴨を使用した洋 点から徹底的な吟味がなされた。そ また、ギフトセットのコンセプト 食スタイル」。このコンセプトのも の結果、百貨店側が撮影した写真で を「伝統鴨料理の新しい“洋”食ス と、オリーブ鴨ロース煮、新開発の はシズル感(おいしそうな感じ)が タイル」として、古市社長がオリー ドレッシング及び香川本鷹と呼ばれ 不足していたことから、同社で改め ギフトセットに同梱されるレシピ 商品が掲載された百貨店のギフトカタログ ブ鴨ロース煮に添付するドレッシン グとアヒージョの試食を行った。ド レッシングとアヒージョは、佐々木 ADが事前に試作を行ってきたもの だった。 古市社長がドレッシングとアヒー ジョを活用することを概ね決めたた 44 て撮影を行い百貨店側へ提案を行う さらには、副次的な効果として、 こととした。併せて商品紹介文章も 地元テレビ局2社での紹介のほか、 シーン提案力が不足していたことか 全国紙の地方版への掲載などメディ ら、ワインなどと一緒に楽しめる商 アでも取り上げられ、当社及び商品 品だということをアピールする文章 の知名度が向上した。 へ修正を行った。 平成26年には香川県が主催する その結果、同社の意向を十分に反 「かがわ県産品コンクール」に応募 映した形でお歳暮ギフトカタログに し、見事入賞を果たした。 掲載することができた。 本認定事業がこのような成果を出 すに至った理由としては、入念な事 事業の成果 前打合せによる商品コンセプトや顧 <お歳暮ギフト売上は 6倍に伸長> 適切なAD選定と支援者側の明確な 一連の支援の成果としては、オリ れるが、自らの持てる知識とノウハ ーブ鴨ロース煮の洋風料理レシピが ウを投入してメニュー開発をアドバ 完成したほか、ドレッシング2種類 イスした佐々木ADの惜しみない支 (ラビゴットドレッシング・キャロ 援姿勢と、自店の従来のイメージに ットドレッシング)が完成、さらにこ 固執することなく、洋風メニューの れらを組み合わせた百貨店向け洋風 開発を通して新たな顧客層を開拓し ギフトセットが完成し、採用された。 ようと積極的に取り組んだ古市社長 この結果、百貨店採用分と自店舗 の熱意がとりわけ大きい。 客への提供価値・ゴールの明確化、 役割分担・適切な進捗管理が挙げら での販売分も含めて、平成25年冬の お歳暮ギフトの売上高は150万円を 事業者のひと言 百貨店のお歳暮カタログ商品の提 案期限が間近に迫り時間がない中、 佐々木ADや機構の専門家の方々か らは、商品開発の進捗に合わせて実 務的・実践的なアドバイスが得られ、 非常に役に立ちました。 男性の私では絶対に思い浮かばな い洋風レシピを提案いただいたこと で、鴨料理の新たな可能性を広げる メニューが開発され、感謝していま す。この経験を糧に、引き続き新た な商品開発に挑戦するとともに、末 永く地域の皆様に愛される店舗運営 を行ってまいりたいと思います。 代表取締役 古市 哲也 氏 <新たな商品開発をスタート> 超え、前年度の6倍に伸長した。さ 古市社長はすでに次の新たな商品 らに平成26年夏のお中元ギフトで 開発に意欲的に取り組んでいる。オ は、200万円を超えるに至った。 リーブ鴨重箱弁当やオリーブ鴨ロー スの味噌漬け、オリーブ鴨大玉煮な どがその例である。 商品開発にあたっては顧客の視点 に立つことが重要ということを学ん だ古市社長は、ターゲットとする中 高年層の女性を店舗に招き試食会を 行いながら、商品開発を進めている。 「カモ・ド・オリーブ ロース煮セット」 加えて各商品や店舗運営の根底に流 また、ギフトセット向けに開発さ れる同社の思いを目に見える形で発 れたオリーブ鴨ロース煮のドレッシ 信していくべく、他の地域活性化支 ング付き単品商品は百貨店の常設商 援ADの支援による自社ブランドの 品として採用が決定した。 再構築にも取り組んでいる。 開発されたオリーブ鴨ロース煮を 洋風メニューという新たな魅力が 初めとする洋風メニューは店舗でも 加わった「銀波亭」は、これからも 提供され、常連客からも鴨肉の新た 地域の人たちに長く愛される店であ な食べ方として好評を博している。 り続けるに違いない。 支援者のひと言 地域資源活用事業計画認定後の支 援にあたっては専門家、地域活性化 支援AD、職員の役割を明確化し取 り組みました。限られた時間と派遣 回数の中で強い情熱で惜しみない支 援を担当した佐々木ADの力と、新 規顧客開拓に向け積極的に取り組ま れた古市社長の熱意が、商品コンセ プトと顧客への提供価値を明確にし た商品開発につながり、成果に結び ついたものと思われます。 販路開拓が順調である一方、生産 の効率化、人材育成など新たな課題 も見えてきたことから、中小機構と しても引き続き専門家派遣等による 支援を検討していきたいと考えてお ります。 お歳暮・お中元ギフト売上推移(単位:万円) 200 150 100 50 0 平成24年冬 平成25年夏 平成25年冬 平成26年夏 四国本部 栁田チーフ アドバイザー 45 有限会社ミマツ工芸 佐賀県神埼市 大切なモノを部屋のインテリアに変える “置くをデザインする”M.Scoopブランドの誕生 下請け受注生産オンリーだった家具部品メーカーが、木工 技術を活かし、「木」にデザイン性やファッション性という 付加価値を加えたインテリア・アクセサリーを開発。売り 場の提案などビジュアル・マーチャンダイジングを活かし、 セレクトショップや百貨店での取り扱いを拡大。 ●会社名 有限会社 ミマツ工芸 ●代表者 実松 登志朗 ●設 立 昭和47年2月 ●資本金 500万円 ●売上高 9,100万円 (平成26年5月期) ●従業員数 7名 ●事業内容 家具部品の製造・販売 ●所在地 佐賀県神埼市千代田町柳島1265-1 ●URL http://www.mscoop.jp/ ●TEL 0952-44-2455 ●FAX 0952-44-2469 た分業体制であり、地元ブランド及 作品に加え、家具部品から派生した び企業ブランドに捉われることな 携帯電話用のウッドカスタムジャケ く、他の産地向けの製品を製造でき ットも開発し、それらを百貨店に持 るのが強みである。 ち込んだところ、クオリティの高さ 昭和47年に創業した㈲ミマツ工芸 を評価され、「メンズ向けのウッド は、諸富地区をはじめとする家具産 を使ったこだわりステーショナリー 地の家具メーカーに納めるタンスの グッズを作ったらどうか」との提案 加飾部品、椅子のパーツ、テーブル を受けた。 の脚部などを製造していた。 提案を受けて同社は、平成19年に 製造現場 しかし、平成10 自社ブランド「M.Scoop(エム・ス 年頃から、日本人 コープ)」を立ち上げ、ステーショ のライフスタイル ナリーグッズの開発に取り組んだ。 の変化に伴い、タ 製品第1号は、佐賀県のデザイン技 ンスなど大型で高 術高度化支援事業を受け、デザイナ 価な家具の需要が ーと組んで製作したモバイルスタン 激減、加えて、安価 ド「モバイルキャッチャー」だった。 な外国製家具の台 頭という状況が追い打ちをかけた。 そのあおりを受け、国内の家具産 地の景況は、ピーク時の4分の1とい う状況にまで落ち込んだ。同社もそ ●事業名 素材である「木」を生かしたイン テリアアクセサリー “M.Scoop”の 開発並びに販売 ●認定期間 平成22年2月〜平成26年5月 ●地域資源名 諸富家具・建具 の影響により、家具関連の仕事量が 年々減少しており、自社ブランド製 品の開発が喫緊の課題となっていた。 モバイルキャッチャー 主に百貨店やセレクトショップで <下請け受注生産オンリー からの脱却> 販売されたが、バイヤーから商品ラ そのような状況において、同社の ど好評だった。 実松英樹専務取締役が中心になり、 要望を受け、モバイルキャッチャ 「木」に、デザイン性、ファッショ ーに続く製品として、ペン立てやフ 事業の概要 ン性という付加価値を加えたインテ ォトスタンドなどを製造した。新製 リア・アクセサリーにより新市場開 品の開発にあたっては、競合品との インアップ強化の要望が出されるな <家具産地の盛衰> 拓を決意、平成18年頃から自社製品 優位性を出すために、市場セグメン 佐賀県南東部に位置する諸富地区 の模索を始めた。タペストリー、写 テーションを行い、ターゲット層を は、家具生産地として60年の歴史を 真立て、時計、書類ケース、ダスト モノにこだわる20代〜50代男性向け 有し、地場産業として平成5年のピ ボックスなど300に上る試作品を開 とした。販売チャネルは、百貨店、 ーク時には年間出荷額は200億円以 発した。最終的に形になったものは 専門店、セレクトショップに限定し 上を達成した。産地の特長は徹底し ごくわずかであったが、それらの試 た。また、流通経路を明確にし、売 46 り場との接点をもつため、卸経由は その後、海外の有名ブランドのス った。 極力避け、直取引とした。 マートフォーン、タブレットを中心 1 つ 目 の とした専用アクセサリーを開発し 広報連携モ 事業の展開 た。当時、それほど普及していなか デルについ った当ブランドのアクセサリーで、 ては、メン <地域資源活用事業計画認定に挑戦> ニッチトップを狙うという目的もあ ズ向けのこ M.Scoopブランドを立ち上げ、製 った。同製品は、バイヤーに好評で、 だわり雑誌 品開発に取組む中、佐賀県中小企業 セレクトショップや百貨店など、全 や製造リードタイムの短さを最大限 団体中央会から、地域資源活用事業 国50店舗で展開するまでになった。 に生かせる新聞を活用した広報戦略 について紹介を受けた。補助金と社 スタートは上々で、売上も右肩上 をたてた。具体的な実行にあたり、 会的信用度のアップという2点に魅 がりだったものの、この時実松専務 中小機構が同社に投入したのが、マ 力を感じ、認定を目指すこととした。 は不安でたまらなかったという。 「取 ーケティングやブランド販促の専門 平成20年のことである。 引先からは一律に“今までに無い商 家であり、中小企業への支援経験も 認定にあたっては、中小機構の専 品が欲しい”と言われ、深く考えず 豊富な地域活性化支援アドバイザー 門家と一緒に事業計画を練ることか に、次から次と新製品を出しました。 だった。アドバイザーが支援した内 らスタートした。 売上は上がっていましたが、それが 容は、M.Scoopの認知度アップのた 事業計画の策定にあたって一番重 市場に合ったものなのか、本当に売 め、①広報・PR強化のためのブラ 要だったのは、競合品の分析である。 れているのか、すぐ飽きられるので ンディング整理、②プレス向け資料 同社の主力となるモバイルキャッチ はないか、とても不安でした。」 作 成 方 法、Webの 構 築、 ③ 中 小 機 ャーについては、ステンレス製、プ 実松専務の予想は的中し、徐々に 構のパートナー企画を活用したテス ラスチック製、布製、スチール製の 売れない商品が出始めた。取引形態 トマーケティングであった。テスト ものがあった。それぞれ携帯電話を は購入扱いではあったが、売れずに在 マーケティングは、東京駅のエキュ 「置く」という機能は同じであるが、 庫で残ると、 「返品」扱いとなり、その ート東京で行ったが、主催者からも モバイルキャッチャーは14色の豊富 都度、新製品との交換が求められた。 高評価を受けた。また当日取材に来 なカラーバリエーションがあり、41 また、それ以外に同社は、人員不 ていた有名情報誌にも掲載された。 度の傾斜にもかかわらず、落ちない 足という課題も抱えていた。企画・ 2 つ目の という「遊び心」を付加した製品であ 商品開発・営業・広報・商品管理・ 新製品開発 る。市場には木工製品もあるが、 「木」 アフターサービス全てを実松専務一 の方向性の 単一素材で、デザイン性やファッシ 人で対応しなければならないこと、 検討にあた ョン性で流行に敏感な消費者のニー 特に、営業の範囲が限られることに っては、中 ズを捉えていないものが多かった。 より、マーケティングや営業活動が 同社の強みは、家具部品加工に特 満足にできない状態にあった。 化した技術、設備、経験によって、 それらの課題をクリアするため、 クオリティの高い製品を製造できる 同 社 が 念 頭 に お い た の は、 ①M. ー出身の地域活性化支援アドバイザ 点にある。木工メーカーであること Scoopを独立したブランドとして認 ーから、既存製品の見直しを含め、 から売り場専用の什器を製造できる 知させ、その価値を守ること、② ブランドとしての製品のつくり方や 点も他社との優位性としてあげられ Web及び広報の強化による既存店 見せ方のアドバイスを受けた。さら る。また、工場を有していることで、 舗への確実な導線確保、 の2点だった。 に同アドバイザーのネットワークを 設計、開発、製造、検査、出荷まで 一貫して自社のみで対応できるた 打合せの様子 M.Scoop紹介記事。取り 上げられた雑誌の数は 14誌にのぼる 小機構から 派遣された、 小売バイヤ 通じ、文具・家具を手掛けるデザイ <1年間東京で毎月1回の打合せ> ナーと契約することができた。同社 め、製品開発のリードタイムが短く、 課題解決にあたって実松専務は、 が得意とする木工技術をデザイナー 低コストで済む点、小ロットオリジ 中小機構本部、九州本部の専門家や が分析し、それを活かした新たなデ ナル化といった対応も可能、という アドバイザーと毎月1回、東京で打 ザインが誕生することになる。 点も強みだった。 合せを行った。「ブランド構築には この時の専門家やアドバイザーと それらの強みを事業計画に落とし 何が必要か」、「単発で終わらない製 の出会いについて、実松専務はこう 込み、新たなインテリアデザイン製 品を開発する方法」について、1年 述懐する。「運命的な出会いでした。 品としてモバイルキャッチャーの改 間かけて、徹底的に議論を重ねた。 今後の方向性が定まらず、不安で仕 良品を試作品として開発し、平成22 その中で、導き出された結論は、 方なかったときに、中小機構の専門 年1月に地域資源活用事業計画の認 ①広報連携モデルの構築、②新製品 家と出会いました。今まで培った42 定を受けることができた。 開発の方向性の整理、を行うことだ 年間の技術を今後の42年にどう生か 47 していくか、意見を聞くだけではな 向けに提供しているカタログに け たVMD く、こちらの思いやこだわりをしっ M.Scoopを掲載したい」という依頼 のチェック かり伝えたうえで、徹底的に議論さ が舞い込んだのである。商談はトン では、パッ せてもらいました。一時の流行に流 トン拍子に進み、平成24年秋に発行 ケージや されるのではなく、M.Scoopを当社 された全国版カタログでM.Scoopが POP、カタ の事業として取り組むことの意義や その表紙を飾った。最終的には、メ ログの伝え 裏付けをしっかり考えること、そし ーカーがもつ全国165の店舗で販売 てそれを意識した製品づくりを行う されるに至った。そしてその頃から、 ことを学びました。この1年は売上 全国の百貨店やセレクトショップか 器が足りないなどの指摘を受けた。 度外視で、事業基盤の確立に注力し らの引き合いも増え始めた。 具体的には、VMDにおいて、①絶 ま し た が、 そ の お か げ で、 新 生 M.Scoopのコンセプトメイクができ JFW-IFF 出展の様子 方の不備 や、売場什 対情報として、商品・ブランドを紹介 すること、②機能・用途情報として、 ました。」 <NIPPON MONO ICHIへの参加> この勢いをもって、実松専務は積 文字・イメージによる紹介をするこ その他にも、中小機構から、グラフ 極的な展示会出展に取り組んだ。目 と、③五感情報として、ものがたり ィックス・WEBデザインを専門と 的は、新製品開発のマーケティング 性・インパクト性の要素を盛り込む する地域活性化支援アドバイザーを とPRだったが、ブランド価値を守 こと、についてアドバイスされた。 派遣し、バイヤー向け提案書やPOP るため、安易な出展は避け、中小機 同 社 は、JFW-IFF以 外 に も、 有 の作成方法などの実務的なアドバイ 構が認定事業者専用ブースを設ける 名百貨店販売会、東京インターナシ スも行った。 「NIPPON MONO ICHI」の展示会 ョ ナ ル・ギ フ ト シ ョ ー、LIVING こうして認定2年目となる平成23 を中心に参加した。代表的なものが、 &DESIGNへの参加を重ねた。 年度が終了した。売上はそれほど伸 ファッション業界における国内最大 「展示会への参加を通じて、徐々 びなかったが、1〜2年目の経験とイ のトレードショー「JFW インター にVMDの重要性を肌で感じるよう ンプットが、翌年から成果として現 ナショナル・ファッション・フェア になりました。」(実松専務) れはじめた。 (JFW-IFF)」だった。同社は、平 そして、その頃には、実松専務の 成23年 度 か ら 毎 年 継 続 し てJFW- VMDに対する意識や考え方も180度 IFFに参加している。毎年同じ展示 変わっていたという。「それまでは、 まず、9 カ月かけて、デザイナー 会に参加することで、認知度も高ま 商品の配置はお店の方に考えてもら との打合せを繰り返し、完成したの り、学ぶことも多いという。 えばいいだろう、と思っていたので が、メガネを置くスタンド「グラス NIPPON MONO ICHIにみられる すが、VMDの重要性を認識するに プレイス」、その後、腕時計を置く 中小機構の出口支援では、単に展示 つれて、こう置いてほしい、お客さ スタンド「D.Watcher」も開発、新 会への参加にとどまらず、その前後 んにこう見せてほしい、と取引先に 生M.Scoopが本格始動した。素材を の支援も受けることができた。同社 提案するようになりました。 最大限に活かしたシンプルな製品で は、 平 成24年 に 参 加 し たJFW-IFF 当社の強みは ありつつ、眼鏡や腕時計など日頃大 において、中小機構が同時開催した 販売用の什器も 切に使っているモノの「置き場所」 商品評価会、大手セレクトショップ 一緒に提供でき となるインテリア・アクセサリーで との個別商談会、ビジュアルマーチ る点です。取扱 ある。 ャンダイジング(VMD=視覚的演 い店舗も増え 「置く」ことで、日々使っている 出効果)チェック全てに参加した。 て、ありがたい 大切なモノを部屋のインテリアに変 まず、商品評価会においては、百貨 ことに、遠方の えることが、新生M.Scoopブランド 店バイヤーや新聞社からマーケティ 百貨店にも置い の統一コンセプトである。 ング、商品企画、商品計画について ていただいてい 訴求力が格段に高まる中、認知度 のアドバイスをもらうことができた。 ますが、どのよ の面でも大 続く有名セレクトショップとの商 うに展示されて きな動きが 談会では、販売什器も製造可能なメ いるか気になっ あった。展 ーカーであることや「大切な身に着 て、近くまで行 示会で出会 けるモノの居場所を提供」という商 った際に見に行 った自動車 品コンセプトが高く評価され、同シ くこともありま ョップの全店舗35店でM.Scoopが販 す( 笑 )。」( 実 売されることになった。 松専務) 魅力ある売り場づくりを目的に受 中小機構のパートナー企画の有効 <新生M.Scoopの誕生> メーカーか ら、「 高 級 車オーナー 48 自動車メーカーが発行し たカタログ。M.Scoopが 表紙を飾った ミマツ工芸が取扱 店に提案する売り 場の画像 活用、新製品の市場投入、商談成約 ていたギフト商品も完成、腕時計や と順調な展開により、同事業の平成 眼鏡、携帯電話を置くセットツール 25年度の売上は、平成23年度の2倍 として仕上がった。 強まで伸びた。要因は、商品力、市 場セグメント化した販売戦略、意思 <フランスでの販路開拓> 決定の迅速さ、専務が営業ノウハウ 同社のさらなる目標は、海外展開 を習得したことである。 である。ただ、海外展開については 全く知見が無かったため、中小機構 <社内体制の整備> の国際化支援アドバイスやジェトロ 順調に事業を展開しているように の相談窓口を活用し、事業化につい みえるが、同社には、新事業を始め て検討を行った。 た当初からの継続課題が1つあった。 まずは、展示会を足掛かりとする それは、人材不足である。 ため、平成27年1月にフランスで開 専務1人による新事業への取り組 催された欧州最大級のインテリア・ みは、意思決定の速さというメリッ デザイン見本市「メゾン・エ・オブ トの反面、1人で何役もこなさなくて ジェ」に出展した。反応は上々で、 はならないという問題もあった。中 トルコ、フランス、スイスの高級文 小機構が投入した支援ツールが「販 具店と契約締結するに至った。 路ナビゲーター創出支援事業」 (現 事業者のひと言 認定をとって、資金面での補助も ありがたかったですが、何より中小 機構の支援ツールを利用できたこと が最大のメリットでした。多種多様 な専門家の方々からのアドバイスに 加え、展示会・販売会を通じた実践 的な支援など、新たな事業に取り組 むにあたって必要な知識や経験を習 得することができました。 新市場の開拓ということで、手探 りの中で戸惑いながら進み、そして、 進むたびに新たな問題や超えるべき ハードルが増え大変ですが、その都 度、専門家の方々の意見を参考に進 めてきたことが、現在の成果につな がっていると思います。そして、そ の成果は、地域や技術の認知度アッ プや社員の意識改革にもつながって いるように感じます。これからもご 指導よろしくお願いします。 在は廃止)であった。同事業は、商社・ 百貨店等のOBで構成される販路ナ ビゲーター向けに、事業者がネット 動画を使って事業や製品の紹介を行 の特長を把握した上で、自身がもつ メゾン・エ・オブジェ出展ブース (左写真) 。 海外向けに「刀置き」をイメージしたペン ホルダー「3p.tray」 を製作。 販路を事業者に提案、提案内容と事 同展示会を契機に、欧州への事業 業者の意向がマッチすれば、両者が 展開を視野に入れる。海外での商標 契約を締結する。同社は、24年度に同 登録についても中小機構の経営相談 事業を活用。そこで、ステーショナリ を活用しながら準備を進めている。 ー分野に携わって40年というナビゲ 「メゾン・エ・オブジェは、想像 ーターと出会い、契約に至った。今で を遥かに超えた世界でした。学ぶこ は、同ナビゲーターが専務と二人三 とが多く、製品の改善点も知ること 脚で、全国の専門店を開拓している。 ができました。思い切って来てよか うものである。ナビゲーターは、製品 ったと実感してます。これを機に、 事業の成果 海外にもM.Scoopのデザインと楽し <最終年の売上は過去最高> ど是非買いたい製品”になれば嬉し 平成26年5月で認定期間が終了し いですね。」(実松専務) たが、現在、M.Scoopは、東北、関東、 佐賀のイチ家具部品メーカーか 近畿、九州の主要百貨店やセレクト ら、世界に通用するインテリア・ア ショップ約65店舗で常設販売されて クセサリーメーカーへの転換を目指 いる。その他、全国各地で開催され し、ミマツ工芸の挑戦は続いている。 み方を情報発信して、“値は張るけ る催事や展示会にも年間7〜8本参加 している。売上は23年度に一度落ち 込んだものの、それ以降は順調に伸 長している。 M.Scoopも、ペン置き、メモキャ ッチャーなどの新製品が加わり、現 在は16アイテム52種類を数えるまで になった。また、かねてから検討し 25 認定事業の売上推移(単位:百万円) 20 15 10 支援者のひと言 実松専務の先見性含めたマーケテ ィング力、意欲、フットワークが原 動力となり、認定期間後半は順調に 売上を伸ばしています。 同社の一番のターニングポイント となったのは、新生M.Scoopを生み 出すために行った専門家との1年間 にわたる打合せでしょう。限られた 体制や資金の中で、いかに効率的に 事業をまわし、継続した成果を出す か、そして、そのために取り組むべ きことは何か、同社の方向性をしっ かりと固めたことが、その後の自立 と成長につながっていると思われま す。今後、国内さらには海外を目指 し、販路開拓に注力されると思いま すが、技術力、デザイン力、ブラン ド力を武器に邁進されることを期待 しています。 九州本部連携推進課 5 0 専務取締役 実松 英樹 氏 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 49 沖縄子育て良品株式会社 沖縄県島尻郡南風原町 沖縄から全国へ発信、 「母と子にやさしい子育て」ブランド 「自分の子どもたちのために」 “母親の視点”で開発した沖縄の天然素材活用の化粧品 その価値を伝えるブランドコミュニケーションの取組み ●会社名 沖縄子育て良品株式会社 ●代表者 野添 かおり ●設 立 平成16年7月 ●資本金 500万円 ●売上高 6,600万円 (平成26年1月期) ●従業員数 9名 ●事業内容 安全、安心な子育て雑貨商品、化 粧品、衣料品等の企画開発・販売 子育てに関する講座運営 ●所在地 沖縄県島尻郡南風原町宮平259-101 ●URL http://www.kosodate-ryouhin.co.jp/ ●TEL 098-996-2550 ●FAX 098-996-2560 事業の概要 分を豊富に含む「海洋深層水」、沖 縄でしか採れない天然の海底粘土 <母と子のカラダとキモチに やさしい化粧品・食品の事業> 「クチャ」などである。 「沖縄の強い日差しにも負けず、 のチカラを使って、赤ちゃんやデリ 自然の中で思いっきり遊んでほしい」 ケート肌の人でも使えるスキンケア 野添かおり社長が、アトピーの子 化粧品を企画した。また、「ウコン」 をもつ母親として、子どものからだ 「ハイビスカス」など天然素材をブ にやさしい衣料品(UVカットの帽 レンドした母子で安心して飲めるカ 子や水着)を開発したのが始まりだ。 フェインフリーのハーブブレンドテ 「自分の子どものため」と思って ィーの開発にも取り組んだ。 これら沖縄の地域資源がもつ自然 いた商品づくりが、実は周囲のお母 さんたちのニーズにも応えることが わかり、事業化の道を進むことにな ったのが、創業のきっかけである。 事業の展開 <専門家のアドバイスで マーケティングプランを作成> 沖縄県那覇市に隣接する南風原町 の国道を北上すると、左手にピンク と白のストライプの看板が見えてく る。沖縄子育て良品㈱が平成25年2 月に移転し開店した本社店舗だ。南 沖縄の日差しに負けない! 『アロマの日やけどめベビー&キッズ』 風原町の保健センターに来る赤ちゃ んを抱いたお母さん、沖縄本島の遠 少子化で子ども向け商品の市場が 方から車で来るママやおばあちゃん 縮小傾向にある中でも、健康や安全 たち、そして本土から買い物に来る 安心に徹底したこだわりをもつ商品 本社店舗 ●事業名 沖縄うまれで母と子のからだとき もちにやさしい化粧品・雑貨・食 品の開発と販路開拓 ●認定期間 平成22年10月〜平成26年3月 ●地域資源名 海洋深層水、月桃、アロエ シークワサー、ハイビスカス ウコン、クチャ(泥岩)、他 へのニーズは確実に高まっている。 中でも、アトピー性皮膚炎の患者や、 肌トラブルを抱える子どもたちが増 えており、子どもの肌を考えた商品 に対するニーズは高いと考えた。 <沖縄の地域資源が商品の強み> 野添社長が着目したのは、亜熱帯 性気候の下で育つ自然素材である。 抗菌作用に優れる沖縄伝統のハーブ 「月桃」や「フーチバー(よもぎ)」、 保湿に優れる「アロエ」、ミネラル 50 『アロマの日やけどめ ベビー&キッズ』 沖縄の地域資源、アロエ、月桃、海洋深 層水のにがりに、ハーブを組合せた日や けどめ。生後4ヶ月の赤ちゃんから使用 できる。肌の弱い人にもおすすめ 親子連れなど、ひっきりなしにお客 シャルを的確につかむことが課題で ては、ターゲット市場をよく知る野 様が訪れる。安全安心の子育て商品 あった。 添社長のこれまでの実績から、個々 が揃う「母と子のためのワンストッ そこで並木CADは、地域活性化 のアクションへの支援はほとんど必 プサービス」のショップとして認知 支援アドバイザー派遣事業を活用し 要ないと考えた。 が広まってきているのだ。 て県外のターゲット市場を知る専門 例えば商品開発は、消費者ニーズ 同社は、野添社長が10年ほど前、自 家のアドバイスを受けることを提案 に応える商品設計、原材料の調達や 分の子どものための商品づくりから した。そして、エシカルマーケット フォーミュラ(化粧品の場合は「成 創業し、自宅の押入れに商品在庫を (Ethical=倫理的の意。人や社会、 分表」のこと)の組み立てまで野添 おいて販売していたのが原点である。 環境や地球に優しい商品市場)に知 社長がマネージした。「母親目線」 その後那覇市内に店舗を構え、事 見のある専門家のアドバイスによ ばかり注目され、ややもするとエモ 業拡大に伴い2回の移転を経て現在 り、マーケットニーズと企画してい ーショナル(情緒的)な面が強調さ の本社店舗に至る。 る商品の評価を客観的にとらえるこ れがちだが、商品の機能性や原料素 同社と中小機構との関わりは、5 とができた。 材の安全性の科学的な検証も厳しく 年ほど前に那覇商工会議所が主催す その結果、ターゲットを①妊娠 行ってきた。また県外の大手流通が る展示販売会に出展したところを、 前・妊娠期・育児期(生後4ヶ月〜 要求する厳しい基準の書類作成にも 当機構の並木チーフアドバイザー 小学生)の母親、②肌の弱い子ども・ すべて勉強しながら対応してきた。 (CAD)が訪ねたことに始まる。 女性、③健康・環境エコに関心のあ 販路開拓に関しても、同事業計画 当時、同社はまだ個人事業であっ る人と明確にして商品開発・販路開 作成時すでに同社は想定する販路へ たが、すでに沖縄の地域資源を活用 拓を進めることにした。 のアプローチの方法を具体的につか した石鹸などオリジナル商品を開 また、同社はすでにナチュラル・ んでいた。ただ並木CADは、あえて 発・販売していた。また、沖縄産の エコショップを顧客にもつ専門卸 地域活性化パートナー事業の活用を 木とオリジナルの安全安心塗料を使 店、カタログ販売ルートをもつ卸店 促し、オーガニックEXPOやギフト ったお弁当箱やおもちゃの「しまの をメインの販路として持っていたの ショーなどの一般ユーザー向け展示 木」シリーズにも取り組むなど、商 で、同事業では、「お母さんがアク 会へ出展することも勧めた。同社は 品開発アイデアと意欲に満ちあふれ セスしやすい販路開拓と売場づく 展示会の出展を通して、コアなター ていた。 り」をコンセプトに、①県内外の専 ゲット市場だけでなく、周辺市場に 門小売店への直卸、②自社Webサ 視野を広げ、新しいビジネスチャン イトなどEコマースの拡大、③本社 スの芽を見つけることにチャレンジ 直営店の強化、④県内産婦人科病院 した。 の売店・薬局、⑤リゾートホテルの 開拓を新たな販路として追加した。 このようにして5年間の事業計画 を策定し、平成22年10月に地域資源 活用事業計画の認定を受けた。 「しまの木」シリーズ <ブランドを統一し 商品をシリーズ化> 「ブランディング」においては、 まずブランド構築のための考え方を 整理することから始めた。県外市場 <事業計画実現に向けての キーとなる課題を抽出> における新商品のポジショニング、 並木CADは、フォローアップ支 ョニングについて、明確にしたいと 品化、野添社長の事業意欲に大いに 援で取り組む課題は、商品の価値を 野添社長は考えていた。というのは、 可能性を感じ、『地域資源活用事業 いかに伝えるか、いわばブランディ 当時すでに自社オリジナル商品を 計画』の認定申請を目指すことを勧 ング(顧客・消費者へのコミュニケ 『はっぴー めた。こうして野添社長が事業計画 ーション)に絞って行うことにした。 ONE』と い の作成をスタートし、並木CADに そのように判断したのは、IFF(イ うブランド よるブラッシュアップ支援が開始さ ンターナショナル・ファッション・ で展開して れた。 フェア)の中の地域活性化パートナ ブラッシュアップ支援開始時すで ー事業での専門家による商品評価 に、ユーザーターゲット、商品企画、 で、ブランドや商品の価値をどうユ 販路が想定されていた。しかし、具 ーザーに伝えるかが課題だとあらた 体的なマーケティングプランに落と めて認識させられたからだ。 社名の『沖縄子育て良品』は、 「事 し込むには、特に県外市場のポテン 一方、商品開発や販路開拓に関し 業内容がひと目でわかる」、「“沖縄” 並木CADは「沖縄子育て良品」 という屋号と、沖縄の地域資源の商 さらには自社の既存商品とのポジシ おり、ロイ 「沖縄子育て良品」の 思いを伝えるブランド ブ ッ ク の『 は っ ぴ ぃ BOOK』 ヤルユーザ ーもいたか らだ。 51 “子育て” “良品”すべて魅力のあ る言葉だ」、「社名と統一するとブラ 【アロマの日やけどめシリーズ】 知の向上によ る販売増が目 ンド投資やコストが抑えられる」な 的だった。 どと評価が高かったが、 『はっぴー そして 3 回 ONE』のリピートユーザーや流通 目は平成25 の認知を考えると、ブランドの変更 年、商品ライ は重大な経営判断となる。 ここでも並木CADは地域活性化 支援アドバイザー派遣事業を活用 【お肌のナチュラルガード】 化学薬品をいっさい使わない肌にやさ しい虫よけスプレー ンアップがほ ぼ完成し、ブ ランドとして 記者発表(2回目)をす る 野 添 社 長。 中 小 機 構の沖縄事務所にて し、ブランディングの専門家のアド ひとつのスタイルを確立したタイミ バイスを受けることを提案した。 ングで行った。認定事業の総仕上げ ブランディング専門のアドバイザ にあたる。県内メディアの反応もよ ーから、コーポレートブランドやプ く、露出も高かった。 ロダクトブランドの役割、ブランド 『沖縄子育て良品』は会社名として を構成する商品シリーズの考え方の アドバイスを受け、ブランドマップ を作成した。 ま た、 既 存 ブ ラ ン ド 『はっぴー 【海底ねんどのクレンジング洗顔料】 沖縄の海底泥岩「クチャ」の吸着パワ ーとマイナスイオンに着目した南国生 まれの洗顔料 もブランドとしても、沖縄で一定程 度の高い認知を得ることが出来た。 営業活動も奏効し、県内の薬局チ ェーンからのアプローチもあって、 ONE』を残す選択肢も最後まで議論 かねてより取り組んでいたメディカ するなど、野添社長が判断するため ルルートの販路開拓につながった。 の材料を多面的に提供することがで きた。 <収益を上げる売場づくり> 最終的に、野添社長は『沖縄子育 て良品』ブランドを誕生させること に決めた。決断してからの取組みは 迅速かつ徹底していた。 同社が同事業計画認定前から課題 【月桃の保湿化粧品シリーズ】 沖縄産の「月桃」に、よもぎ、ティー ツリー、桃の葉などをブレンド。 自然派のトラブルスキンケアシリーズ として認識していたのが、本社店舗 売場の改善による売上向上・収益向 上・在庫管理の効率化であった。 ピンクのストライプと“太眉天使” 本社店舗はもともと「若いお母さ (意志の強さを表す太い眉が特徴の んのためのワンストップサービスの 天使のキャラクター)をVI(ビジ ショップ」というコンセプトで運営 ュアル・アイデンティティ)とし、 されており、自社商品以外の仕入れ 商品パッケージから看板、販促ツー 商品のアイテム数が大半を占める。 ル、ホームページ、 ラッピングペーパ ーまで、徹底して 『月桃とももの葉の保湿ジェル』 『月桃とティーツリーのケアクリーム』 『月桃とよもぎの石けん』 そんな店舗だから、自社ブランドの 売上拡大と、仕入れ商品の品揃えの バランスが微妙に難しい。従業員に <沖縄での広報活動> とっても在庫管理が膨大な仕事量に し、ターゲット層 次に並木CADは、同社にとって なってしまう。したがって、単に見た におけるブランド 地元での認知を高めることがブラン 目重視の売場づくりではなく、収益 ドを強化する基礎になると考えた。 管理に直結する売場マネジメントが 沖縄は、地元メディアの影響力が 必要であると並木CADは判断した。 統一されたブランドのもと、商品 大きい。 「 県産品」を重視する県民性 並木CADは、ここでも地域活性 がシリーズ化され、わかりやすくラ もあり、メディアでの露出が信用度 化支援アドバイザー派遣事業を活用 インアップされていく。当初、「日 に直結し、ブランディングには欠か し、百貨店・専門店で売場運営のノ やけどめ」や「虫よけスプレー」な せない。そこで、中小機構沖縄事務所 ウハウを持つ専門家にアドバイスを ど沖縄らしい夏向けの品揃えだけで での記者発表を実施することにした。 受けることを提案した。 あったが、月桃やハーブを使った 同社の記者発表は3回開催された。 そして、東京ギフトショーに出展 秋・冬向けの「保湿化粧品」も加わ 1回目は、同事業計画認定から約1年 する機会をとらえて、現実の売場づ り、通年売上が見込める商品群が揃 後に、認定計画に基づく最初の商品 くりにつながるブースレイアウトの い、事業機会も大きく広がった。 を発売した時で、2 回目はその半年 アドバイスを受けることになった。 後に新商品を発売した時である。こ また実店舗では、棚ごとに収益性 の 1 回目と 2 回目はとにかく商品認 を管理する手法、売上・収益を見な デザインを統一 認知を効果的に向 上させた。 52 太眉天使 がら次のアクションをとるノウハウ 員している。従業員は若いお母さ などを、野添社長と店長の2名で学 ん・女性が中心である。お客様のニ んだ。 ーズに寄り添うことが大切だから さらには店舗の看板、ファサード だ。また、成長市場であるEコマー (外観)など、ビジュアル面の具体 スの担当者も売上の伸びに合わせて 的アドバイスも受けることができ、 採用している。 現在の本社店舗移転時に活かされる こととなった。 野添社長は、強い信念のもと自分 で行動し、納得して進むタイプの経 営者である。しかし未知の領域に関 しては、人の話を聞き、勉強するこ とを惜しまない柔軟な経営者でもあ 野添社長とスタッフの皆さん る。失敗も含めすべてのステップに 一方、『沖縄子育て良品』のブラ 無駄はないと考え、次のステージに ンド認知やプレゼンスは、沖縄県内 上がる、そんな繰り返しが同社の事 で確実に高まった。育児講座などの 業の成長を支えているといえる。 開催や、地元紙でのコラム掲載、女 ブラッシュアップ支援時から同事 性経営者との活動など、野添社長の 業計画認定期間を通じて、野添社長 活動とともに、会社名(=ブランド のニーズに応え、タイムリーに当機 名)のメディアへの露出頻度も高ま 構の支援メニューを提案できたと並 っている。 木CADは考えている。 販路開拓では、当初設定した目標 のうち、自 社店舗強 局チェーン の開拓に加 え、Eコ マ ースの伸長 などに実績 を上げた。 県内薬局チェーンでの コーナー展開 平成25年、同社は創業10周年、法 事業の成果 人化して5年を迎えた。当機構は、 同事業計画で開発された商品の売 事業への支援という形で関わること 上は、高い成長率で推移し、年間 ができた。同事業が、同社と沖縄の 2,000万円を超える売上に達している。 これからにつながることが大いに期 また、同事業の伸びが大きく貢献 待される。 することで、全社売上も、平成25年 また、平成26年2月には、「がんば 度は対前年度比20%の伸び、平成26 る中小企業・小規模事業者300社」 年度は対前年度比15%の伸びと、二 にも選ばれており、沖縄県の注目企 桁成長を続けている。認定期間終了 業のひとつと言える。 法人化後の5年間の成長期に、認定 年度である平成26年1月期の営業利 益額は、 認定直前期の4倍超に伸びた。 少子化というマーケット全体の縮 小にもかかわらず、ニッチなセグメ ントで高成長を遂げているのである。 従業員数も認定事業開始時の5名 (正社員2名+パート3名)から、9 名(正社員3名+パート6名)まで増 「子どもとお母さんの笑顔のため にカラダにやさしくキモチにやさし い商品をつくりたい」という思いを 持ち続け暖めてきた商品企画構想を スピーディーに実現できました。 中小機構から派遣された専門家の アドバイスが、判断の際の刺激にな りました。また展示会出展で多くの 取引先様との関わりも出来ました。 今後も新たな商品開発や企画、と りわけ「食」に関する事業に取り組 んでみたいと思っています。機会が あればこれからも中小企業大学校や 機構の支援メニューを活用していき たいと考えて います。 代表取締役 野添 かおり 氏 支援者のひと言 化、県内薬 現在の商品群 事業者のひと言 「並木さん、やりたいことがあり ます!」野添社長は会うたびにそう 話します。この明るくて強いキャラ クターが事業を推進する原動力。 「母 親目線」という揺るぎないバックボ ーンと、仲間づくりのチカラには圧 倒されます。 同じ働くお母さん経営者とのネッ トワークで、沖縄の若いママたちを 応援する活動も推進中です。 最も尊敬するところは、小規模事 業者ながら沖縄の経済に貢献したい という信念のもと、雇用と人材育成 に取組んでいるところです。間違い なく沖縄を代表する女性経営者のひ とりです。 同事業は沖縄の小規模事業者にひ とつのモデル を提示したと いえます。 認定事業の売上推移(単位:百万円) 18 20 20 13 15 10 5 0 5 23年度 24年度 25年度 26年度 沖縄事務所 並木チーフ アドバイザー 53 平成26年度 新事業創出支援事業 ハンズオン支援事例集 発 行 平成27年3月 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 経営支援部 経営支援課(連携事業支援担当) 経営支援部 ハンズオン支援統括室 連絡先 〒105−8453 東京都港区虎ノ門3−5−1 虎ノ門37森ビル TEL:03−5470−1194(ダイヤルイン) FAX:03−5470−1670 中小機構URL:http://www.smrj.go.jp 新 …新連携 地 …地域資源 農 …農商工 新連携、地域資源、農商工連携についてのお問い合わせ・ご相談は、 お近くの中小機構地域本部・事務所までお願いします。 金比羅神社 新虎 通り 虎ノ門 ヒルズ 虎ノ門三丁目 新虎通り 関東本部 ■北海道本部 〈対象地域〉北海道 〒060-0002 北海道札幌市中央区北2条西1-1-7 ORE札幌ビル6階 新 地 農 011-210-7472 電話 新 地 農 011-210-7481 FAX ■東北本部 〈対象地域〉青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島 〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町4-6-1 仙台第一生命タワービル6階 新 地 農 022-399-9031 電話 新 地 農 022-399-9032 FAX ■関東本部 〈対象地域〉茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・長野・山梨・静岡 〒105-8453 東京都港区虎ノ門3-5-1 虎ノ門37森ビル3階 新 03-5470-1606 地 農 03-5470-1640 電話 新 地 農 03-5470-1573 FAX けやき大通り ■中部本部 〈対象地域〉愛知・岐阜・三重 ■北陸本部 〈対象地域〉富山・石川・福井 ■近畿本部 〈対象地域〉滋賀・京都・奈良・大阪・兵庫・和歌山 〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦2-2-13 名古屋センタービル4階 新 農 052-201-3068 052-218-8558 地 電話 新 地 農 052-201-3010 FAX 〒920-0031 石川県金沢市広岡3-1-1 金沢パークビル10階 新 地 農 076-223-6100 076-223-5855 電話 新 地 農 076-223-5762 FAX 〒541-0052 大阪府大阪市中央区安土町2-3-13 大阪国際ビルディング27階 新 地 農 06-6264-8619 電話 新 地 農 06-6264-8612 FAX ■中国本部 〈対象地域〉鳥取・島根・岡山・広島・山口 ■四国本部 〈対象地域〉徳島・香川・愛媛・高知 ■九州本部 〈対象地域〉福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島 〒730-0013 広島県広島市中区八丁堀5-7 広島KSビル3階 新 地 農 082-502-6689 電話 新 地 農 082-502-6558 FAX 〒760-0019 香川県高松市サンポート2-1 高松シンボルタワー タワー棟7階 新 地 農 087-823-3220 電話 新 地 農 087-811-3516 FAX 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