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無料印刷可能なバースデーカード

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無料印刷可能なバースデーカード
医療情報化に関するタスクフォース報告書付属資料
「どこでもMY病院」構想の実現について
(自己医療・健康情報活用サービス)
2011年5月
目次
(1)基本概念
(2)医療・健康情報の帰属
(3)「どこでもMY病院」で取り扱う医療・健康情報
(4)「どこでもMY病院」構想の運営主体
(5)医療・健康情報の電子化方策
(6)医療機関等から個人への情報の提供形態
(7)将来の発展形
(1)基本概念
1
基本概念
「どこでもMY病院」(自己医療・健康情報活用サービス。以下、「どこでもMY病院」と
いう。)構想は、個人が自らの医療・健康情報を医療機関等から受け取り、それを自
らが電子的に管理・活用することを可能とするものである
・個人に自らの医療健康情報を蓄積管理する「機会」を提供
・情報は蓄積により価値が増大。できるだけ早期の実現が重要(2013年に一部サービス)
患者に提供される標準化された
電子的医療・健康情報を整備
個人へ標準化された電子的
医療・健康情報が提供
薬局
病院・診療所等
本人提供用
退院サマリ
診療明細書
医療機関等から個人へ
医療・健康情報が提供
(自己医療・健康情報活用サービス)
運用主体に対し、
データを入力
個人の情報オーナーシップ(国民主体)
個人の生涯記録を一元管理可能
自己測定データの
利用
健康データ
自宅等
バイタル、体重・血圧、
食事・運動等
「どこでもMY病院」
個人
調剤情報
健診データ
・検査データ
運用主体は多様な候補あり
(個人が選択)
病院・診療所等
個人自らが利活用
(積極的健康管理を実施)
○医療機関等
○保険者
(市町村国保、
健康保険組合等)
○医療機関等・保
険者から委託を受
けた事業者
医療機関等へ提示
「どこでもMY病院」サービスを使うことで初診
の場合でも、かかりつけ医に準じた診療履歴
に基づいた診療を受けることができる。
2
「どこでもMY病院」構想の具体的イメージ
具体的には、希望して提供を行う医療機関等から2次元バーコード、ICカード搭載携帯電話、IC
カード、オンラインを経由して提供された自己の医療・健康情報を電子的に蓄積・管理し、タブレッ
ト型携帯端末やパソコン等で閲覧・提示することを可能とするものである。
保険者
個人・患者
医師・医療機関等
自らの健康管理に活用
保険者とのやりとり
治療を担当する医師へ提示
保健指導など
持ち運び可能なタブレット型携帯端末
患者の治療
の参考に
救急時に
読み取り可能なICカード
○「共通番号」等を用いた健康
保険証・診察券、地域包括ケア
カード、身分証明書等の中に緊
急時等に必要となる最低限の情
報が格納
○最低限の情報としては糖尿病
などの現疾病、現在服薬してい
る薬剤情報や副作用情報など
自分の意識がない救急時などに
、医療従事者等に見られても構
わないもの
被保険者の
健康管理に
活用
個人主体の過去の医療健康記録が
蓄積
・医療機関等から得た医療情報
・保険者等から得た健康情報
・介護機関等から得た介護関連情報
・自分で記入した医療健康情報
介護機関へ提示
介護機関
介護の質を
高める情報と
して活用
3
(参考)医療機関等から個人への電子的情報の提供形態イメージ
提供者(医療機関等)
次元バーコード
2
個人(患者)
医療機関等の窓口において、QRコードを印
刷した紙を渡す。
QRコードを読み取り、携帯電
話に情報を取り込む。
ICカード搭載
携帯電話
【提供者が準備すべきこと】
・QRコードを印刷するためのソフトウェア改修
・QRコードが印刷可能なプリンタの導入
【個人が準備すべきこと】
・カメラ付き携帯電話
医療機関等の窓口においてその場にあるICカードリーダへ情
報を登録。
窓口にあるICカードリーダへICカード搭載
携帯電話をかざし、携帯電話に情報を取り
込む
ICカード
【提供者が準備すべきこと】
・ICカード書き込みソフトウェアの導入
・ICカードへの書き込みが可能なICカードライタの導入
医療機関等の窓口において、その場にあるICカー
ドリーダへ情報を登録。
【個人が準備すべきこと】
・ICカード搭載携帯電話
窓口にあるICカードリーダー
へICカードをかざし、情報をIC
カードに取り込む
【提供者が準備すべきこと】
・ICカード書き込みソフトウェアの導入
・ICカードへの書き込みが可能なICカードライタの導入
オンライン
確認した本人の情報を元に提供者が、「どこ
でもMY病院」へ情報を送信
【提供者が準備すべきこと】
・運営主体とのオンライン接続環境(セキュリティの確保が必要)
・情報提供用サーバの導入 ・本人確認用ソフトウェアの導入
個人が自ら
情報を移行
ICコードへ取り込んだ情
報をPCへ移行
【個人が準備すべきこと】
・ICカード
・PC及びICカードリーダー
本人確認ができる情報
【個人が準備すべきこと】
・本人確認ができる情報(ICカー
ドやID/PW)
運営主体のサーバ
個人は窓口にて、本人(サービスのID)が確認で
きる情報を提示する。
4
(参考)タブレット型携帯端末における「どこでもMY病院」の情報提示イメージ
患者の事実情報(誕生日/血液型)や「アレルギー」など重要な告知すべき情報を把握することが可能。必
要に応じて、履歴情報を提示することができる。
太郎様
お知らせ
の「どこでもMY病院」
ヘルスデータ
2010年
MY日記
検索
アレルギー
たまご、そば・・・・・・・
主な既往歴
糖尿病、高脂血症、・・・・・・・
1月
2月
最近の
診療履歴
最近の
調剤情報
検索ページ
3月
4月
8月10日
8月17日
5月
6月
7月
設定ページ
生年月日
1978年12月29日
性別
男
血液型
AB型
8月
9月
10月
○○○病院
11月
詳細
基本料
外来診療料
処方
処方せん料(その他)
検査
生化学的検査(1)判断料
血液学的検査判断料
血中微生物
・
・
・
・
××調剤
詳細
A錠 ・・mg
1日2錠 × 28日分
B錠
・・・・・・・・・・・・・
12月
自分で記入した情報 医療機関等から提供された情報
山田
5
(参考)個人の「どこでもMY病院」の情報提示イメージ
個人は運営主体が提供
するソフトウェアを通じ
て情報をサーバへ送信
運営主体のサーバ
個人は、PCより、「どこでもMY病院」運営
主体のサーバへアクセスし、自ら紙に印刷
個人が自宅で印刷した紙を
医師へ提示
個人は、自宅のPC内のデータ
にアクセスし、自ら紙に印刷
個人は運営主体が提供
するソフトウェアを通じ
て情報をサーバへ送信
運営主体のサーバ
診療時に、個人が自ら持ち運び可能な携帯端末を通じ
て「どこでもMY病院」運営主体のサーバにアクセスし、
取得した情報を提示。
持ち運び可能な情報端末
を使って個人が提示
診療時に、個人が自ら持ち運び可能な携帯端末内にあ
る情報を提示。
個人は運営主体が提供
するソフトウェアを通じ
て情報をサーバへ送信
運営主体のサーバ
個人から提供された本人情報を基に閲覧を許可された医
師が「どこでもMY病院」運営主体のサーバより情報を取得
医師が医療機関の情報端末で
個人の情報を閲覧
本人が確認できる情報を提示した場合
個人は情報が取り込まれたICカードをかざし、医療機関
に存在する端末に情報を提示
【準備すべきこと】
・ICカード書き込みソフトウェアの導入
・ICカードへの書き込みが可能な
ICカードライタの導入
6
「どこでもMY病院」の患者にとってのメリット
これにより、各個人は、過去の自身の医療・健康情報を医療機関等で提示し、当該情
報を踏まえた医療サービスを受けることができるようになるとともに、医療健康情報を
通じて自身の現在の健康状態を把握できることから、自らの健康管理に活用すること
が可能となる等のメリットを享受することとなる。
【具体的なメリット】
自らの健康管理に活用
通院歴
調剤履歴
○過去の診療履歴、調剤履歴に基づいた自分に合っ
た医療サービスの受診
・全国どこにいても、初診時にこれまでの服薬情報等を伝えるこ
とが可能となり、過去の病歴・薬歴を把握している「かかりつけ
医」・「かかりつけ歯科医」・「かかりつけ薬局」に準じた医療
を受けることができる。
・別の病院・診療所の検査結果を提供することで、重複検査を避
けることが可能となり、診療にかかる費用や時間を節約できる。
・薬局に対しても、受診した病院・診療所での投薬情報や他の薬
局の調剤情報を提供することが可能となり、飲み合わせの悪い薬
の服用等が避けられる。
検査履歴
健康情報
「どこでもMY病院」
(自己医療・健康情報活用サービス)
提示
○多面的情報による自己健康管理のサポート
個人(患者)は自己管理
している医療健康情報を
医療機関等に提示
医療機関等
・健診結果や自己測定健康データを横断的に活用して、
自身の健康状態を把握することができる。
・蓄積されたデータを提供して、健康管理サービス等を
受けることができる。
・「どこでもMY病院」を継続的に活用することを通じ
て、自身の健康管理意識が高まる可能性がある。
7
「どこでもMY病院」の医療機関等にとってのメリット
また、医療機関等は、個人の過去の医療・健康情報の提示を受けることで、当該個人
の背景情報を参考とし、患者の現状について理解を深めたうえで診療等を行うことが
できる。
【具体的なメリット】
医療機関等
○初診時に服薬歴などの患者の医療情報を容易に把握可能
医療機関等は、患者が自
己管理している医療健康
情報を把握できる
※個人の許諾が前提
・患者の医療情報を、初診時に短時間で容易に把握することが
可能になる。
・他の医療機関での検査履歴や検査結果等の情報を把握でき、
また、必要に応じて照会をかけることができる。照会を通じて、地
域医療連携を推進するための重要なツールの一つとなり得る。
○緊急時を含む必要時に服薬歴等の患者の医療情報
を容易に把握可能
・患者自身が提示した情報を用いて、患者の診療履歴を短時間
に把握することができ、患者の状況に応じた適切な診療につな
げることが可能となる。
○患者が保有する健康情報の医療への活用可能性
通院歴
調剤履歴
検査履歴
健康情報
「どこでもMY病院」
(自己医療・健康情報活用サービス)
・健診結果や自己測定健康データなどの健康情報を、必要に応
じて参照することができ、患者の長期的な健康状態の把握が可
能となる。
・患者が保有する過去の検査データのうち、慢性疾患の悪化防
止等に役立つ検査データを治療の参考にできる。
○情報の提供を行う医療機関等は、患者の求める医
療情報を提供することで患者の満足度を向上させる
ことが可能となる。
8
自発的な取り組みとしての「どこでもMY病院」サービス
他方、この新たなサービスは、患者に情報を提供する医療機関側にとって機器の設
置・改修等の一定の負担が発生すること等から、希望する医療機関等の自発的取り
組みとして開始される。情報の提供を行う医療機関等は、患者の求める医療情報を
提供することで患者の満足度を向上させることが可能となる。
希望する医療機関が自
発的取組として設備の
導入/改修を実施。
※提供形態に応じた設備
「どこでもMY病院」サービスにて患者へ情
報を提供する際に必要となる設備・改修
9
情報通信技術の活用による利便性
個人及び医療機関等にとってのメリットを具体的に以下に示すが、これらのメリットに
ついては、「はじめに」でも触れたように、情報通信技術の活用により、紙媒体とは異
なる利便性が得られると考えられる。
情報通信技術の活用による利便性の例
紙ベースの情報は持ち歩くのが面倒。
いざというときに手元にないことも。
携帯性の向上
持参率向上による
医療安全の向上
紙ベースでは、長期間に渡る情報の蓄
積が難しい。
電子データで蓄積・管
理の手間を軽減
複数の検査データを医師か個人が直
接記入したり、毎日の健康情報を記入
手入力することは面倒で負担が大き
い。
電子データとして
簡単入力
ロキソニン錠 60mg
電子データなので、
関連する情報を提
供可能
10
患者にとってのメリット(過去の診療履歴、調剤履歴に基づいた自分に合った医療サービスの受診①)
全国どこにいても、初診時にこれまでの服薬情報等を伝えることが可能となり、過去の病歴・薬
歴を把握している「かかりつけ医」・「かかりつけ歯科医」・「かかりつけ薬局」に準じた医療を受
けることができる。
フリーアクセス
“かかりつけ医”
3年前受診の
患者情報
3年前受診
Bクリニック
1年前受診の
患者情報
1年前
受診
通院歴
C大学病院
前回受診
調剤履歴
検査歴
過去の診療情報は受診
した医療機関に散在
A病院
患者
新しくどの医療機関を受診
しても「
かかりつけ医」
に準じ
た医療を受けることができ
る
自由に医療機関を選択・
受診。
患者
A病院
Bクリニック
C大学病院
前回受診の
患者情報
過去の診療履歴情報を
電子的に一元管理
新しく受診した医療機関で
新しく受診した医療機関で
・初診時に、過去の診療履歴がわからず、服薬歴な
どについてその都度問診が必要。また、記憶に頼る
問診では必ずしも正確とは限らない。
・服薬情報などを初診時にも正確に伝えることがで
き、過去の病歴を把握している「かかりつけ医」に
準じた医療を受けることができる。
・別の医療機関で行った検査について情報がないの
で、診療のため本来は不必要な検査も行っている。
・別の医療機関で行った検査結果が分かれば、医師
は重複検査を避けたり、必要に応じてその医療機関
に検査結果の問い合わせを行うことなどができる。
服薬情報等が伝わることで、自分にあった医療サービスを享受
11
(参考)かかりつけ医制度※GP制度
患者
かかりつけ医制度のイメージ
かかりつけ患者の情報が
自然に一カ所に蓄積される
状況に応じ紹介
あらかじめ決まった
かかりつけ医を受診
かかりつけ医(GP・ホームドクター)
専門病院
・二次医療病院・専門病院の
門番的役割を持つ
(専門病院に患者を集中させない等、
医療資源の管理か可能に)。
・かかりつけの患者の医療情報が
専門病院
一カ所に蓄積される
12
(参考)フリーアクセス制度
フリーアクセス制度のイメージ
A病院
患者
3年前受診の
自由に医療機関を選択・
受診。
3年前の受診
Bクリニック
患者情報
1年前受診の
患者情報
医療機関毎の縦割りによって、
1年前の
他の機関による過去の
受診
診療情報の参照ができない。
(情報の存在すら確認出来ない)
C大学病院
今回の受診
今回受診の
患者情報
・診療所、大病院の受診の選択を患者自ら行う → 大病院への患者の集中が発生することがある。
・患者の医療情報が、都度選択した医療機関のみに残る → 個人の医療情報が散在する。
13
患者にとってのメリット(過去の診療履歴、調剤履歴に基づいた自分に合った医療サービスの受診①)
・別の病院・診療所の検査結果を提供することで、重複検査を避けることが可能となり、診療にか
かる費用や時間を節約できる。
・薬局に対しても、受診した病院・診療所での投薬情報や他の薬局の調剤情報を提供することが
可能となり、飲み合わせの悪い薬の服用等が避けられる。
患者
「どこでもMY病院」
医療機関等
通院歴
調剤履歴
検査履歴
「どこでもMY病院」サービスを使うこと
で初診の場合でも、医療機関へこれま
での診療履歴を提示することができ
る。
各医療機関からの情報を「どこで
もMY病院」サービスに登録
医師は患者の背景情報を短時間で把握できるので、参考とな
る直近の検査結果等が存在する場合は、色々な検査などをし
なくとも患者の状態を正確に把握することができる。
蓄積された患者の情報を
みせるだけなので簡単。
患者
各医療機関が個別に
情報を提供
初診の場合、これまでの診
療履歴を自身で説明するこ
とが困難である。
患者は、各医療機関からの情報を
なかなか覚えていない。
医師は、患者の状態を正確に把握するため時間をかけ
て患者に質問しなければならないが、聞いても情報が乏
しいため多くの検査をしなければならない。
医療機関では重複検査が発生する
医療機関等
14
患者にとってのメリット(多面的情報による自己健康管理のサポート)
・健診結果や自己測定健康データを横断的に活用して、自身の健康状態を把握することができる。
・蓄積されたデータを提供して、健康管理サービス等を受けることができる。
・「どこでもMY病院」を継続的に活用することを通じて、自身の健康管理意識が高まる可能性がある。
これまでは、
各医療機関が治療を主導
病院
病院
診療所
診療所
薬局
MY病院構想により
〈個人(患者)参加型の医療への展開〉
紙ベースでの提供が一部
行われている
薬局
各医療機関から
電子的に提供された
情報を個人が一元管理
必要に応じて
医療機関に提示
2010年4月より
診療明細書の
無料発行原則義務化
○情報は基本的に各医療機関が管理、医療機関内に情
報が閉じている
○医療機関が患者の治療を主導
○医療の専門化により、診療科や医療機関を超えてトータ
ルに患者を診ることが難しくなってきている。
○自分の医療・健康情報を自らが主体となり管理
○個人が自分の管理する情報を医療機関に提示すること
で適切な医療の提供を求めていくことが可能
○電子的情報提供とその活用ツール・サービスをきっかけ
に健康・病状を自己管理する意識が高まる
※医療機関等にとってのメリットはP10参照
15
(2)医療・健康情報の帰属
16
「どこでもMY病院」構想でやりとりされる情報について①
「どこでもMY病院」により提示される情報は、従来の問診票等に比べて、豊富な情報を提
供できる可能性がある。ただし、「どこでもMY病院」で取扱う情報は、個人が任意で入力
するものであるため、一部不足等があり得るものであり、また、個人が自由に記入する部
分もあることから、あくまで個人の責任範囲において医療機関等に提示するものである。
「真正性」が必要なオリジナル
の「記録」は病院にある。
医療機関等にある情報が「原本」
であり、どこでもMY病院は「コピー」
個人が自ら記入した箇所が含まれる情報であ
り、過去の記録が完全に網羅されているとは限
らない (一部不足のあるかもしれない)
※但し、患者の記憶に頼るよりは内容が豊富
通院歴
調剤履歴
情報が豊富であると医師の理
解度が向上する。
検査履歴
情報の提供
「どこでもMY病院」
情報の提供
問診票
個人が自身の記憶等を基に問
診表へ「服薬履歴等」を記入
患者
医師
問診票の情報が相対的に乏
しいため、多くの情報が必要。
医師は問診表や「どこでもMY病院」の内容を基に
患者の状態を推測する。その推測は当該医師によ
る検査結果により検証される必要がある。
17
「どこでもMY病院」構想でやりとりされる情報について②
医療機関側は自らの責任で提示される情報をどの程度参考にするかを決定することとなる。した
がって、「どこでもMY病院」により患者から提示される情報は、医師が検査等治療を実施する際に
参考情報と位置付けられるものである。
医師・医療機関
個人・患者
個人の責任範囲
医師の責任範囲
○患者から申告された情報を
参考にしながらも、医師の判
断で必要な検査を実施
電子カルテ
問診票に記載して提示する情報
と同様にあくまで患者から申告さ
れた情報
○医師自らの判断と責
任で必要な情報を電子
カルテに記入
※患者が自ら記入した情報も含まれる
※電子カルテ情報は5年等の
保存期間があり
真正性
整合性
○患者から申告された診療・検査履
歴情報を基に他の医療機関に問い
合わせすることが可能
○本人提供用退院サマリ
患者へ提供するための退院サマリ
※医療従事者間でやりとりする退院
サマリと異なる場合あり
真正性を確認できる手段
退院サマリ
HPKIなどの認証基盤
他の医療機関
○診療情報提供書などの他の医療機関からの情報は真正
性が確保されているので電子カルテに取り込むことが可能
18
(3)「どこでもMY病院」で取り扱
う医療・健康情報
19
「どこでもMY病院※」構想の実現
工程表(一部抜粋)
(自己医療・健康情報活用サービス)
(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 平成22年6月22日決定)
「どこでもMY病院」で取り扱う情報は、工程表上第1期サービスでは「診療明細書」及び
「調剤情報」、第2期サービスでは「健診情報」、「本人提供用退院サマリ」、「検査データ」
及び「健康情報」である。
20
「どこでもMY病院」で取扱う医療・健康情報の分類
これらの情報は、客観的事実である「データ」と医師の所見が入る「情報」とに区別するこ
とが可能である。医師の所見が入る「情報」については、個人に提供する情報の範囲を
含め慎重に検討を行うことが必要である一方で、医療機関が提供する血液検査・尿検査
などの検査によるデータ(以下、「検査データ」とする)、健康診断によるデータ(以下、「健
診データ」)及び個人が日々血圧・体重など測定することによる「健康データ」は医師の所
見が入らない個人のデータであるためできるだけ早期に個人へ提供することを検討する
ことが重要である。
薬局
調剤情報
病院・診療所
診療明細書
・お薬手帳記載情報 ・外来
・調剤明細書
・入院
等
等
紙ベースで既に提供
されている情報
自宅
健康データ(バイタル等)
・体重/血圧/脈拍
・運動情報
・体脂肪
等
病院・診療所
健診機関
健診データ
検査データ
・尿/血液検査
・心電図
・超音波検査の結果
等
客観的事実である「データ」(純粋に個人に帰属)
本人提供用退院サマリ
・読影レポート
等
・所見
等
医師の所見が
入る「情報」
21
「どこでもMY病院」構想の具体化
さらに、「どこでもMY病院」の実現に当たっては、情報提供を行うための負担が発生する医療機関
等からの協力を得るため、医療機関等にとってメリットが明確なサービスから実施していくことが必
要である。具体的には、①初診時に有効と考えられる情報、②地域医療において課題となってい
る生活習慣病等の慢性疾患の悪化抑制に対して有効と考えられる情報、等を取り扱うサービスが
挙げられる。
医師・医療機関等
自らの健康管理に活用
個人・患者
治療を担当する医師へ提示
保健指導など
①初診時に有効と考えられる情報
救急や介護に役立つ現疾病、現在服薬し
ている薬剤情報や副作用情報など
患者の治療
の参考に
救急時に
保険者
保険者とのやりとり
②地域医療において課題となっている生
活習慣病等の慢性疾患の悪化抑制に対
して有効と考えられる情報
生活習慣病など慢性疾患の悪化防止に
役立つ検査・健診データ、自己測定バイ
タルデータなど
被保険者の
健康管理に
活用
介護機関へ提示
介護機関
介護の質を
高める情報と
して活用
22
「どこでもMY病院」構想の具体的なイメージ
以上のことから、「どこでもMY病院」の具体化に当たり、医療機関等に対するメリット
が明確な、電子版「お薬手帳/カード」を提供するとともに、その後、検査データ、健診
データ、健康データを用いて、個人参加型疾病管理サービス(例えば電子版「糖尿病
連携手帳」)を開始する。
薬局
第
期サービス
1
調剤情報
お薬手帳 または 調剤明細書
病院・診療所
①電子版「お薬手帳/カード」(必要時に参考となる医療情報を提示)
・患者が服用している薬の内容を過去に処方された薬を含めて把握
することで、重複投与の防止やアレルギーへの注意喚起などの医療
安全の向上に資する。
・患者が自分が受診した診療について日時、医療機関名等を把握す
ることで、問診時の参考とすることができる。
診療明細書
自宅
第
期サービス
2
健康データ
(バイタル等)
健診機関
健診データ
病院・診療所
検査データ
②個人参加型疾病管理サービス(例:電子版「糖尿病連携手帳/カード」)
・患者が、体重,血圧などを記録することで、医師は診療時に検査し
たデータだけではわからない患者の情報も診療に役立てることができ
る。
・患者が記録した健康データと診療時の検査データがまとめて管理さ
れていることで、病診連携など地域連携医療へ役立てることができ
る。
・地域において、未受診の慢性疾患患者(例えば糖尿病患者)の掘り
起しのためのツールとして役立てることができる。
23
(参考)電子版「お薬手帳/カード」のイメージ
患者本人が自分の現在服用している薬の情報、過去に処方された薬の情報、医療機関・薬局の受診履歴、自
分で記入する主な既往歴、アレルギー情報、薬剤に対する副作用などの反応情報を管理し、医師や薬剤師に
提示することで重複投与の防止やアレルギーへの注意喚起などの医療安全の向上に資する。
電子版「お薬手帳/カード」の内容のイメージ
1.現在服薬しているお薬の情報
・薬局名、調剤日
・薬剤名称
・用法
・用量
・相互作用その他服用に際しての注意すべき事項
薬局から情報提供
※当初より全ての項目の網羅を提案するものではなく、情
報提供方法、患者の利用形態等により、柔軟に検討すべ
き。
お薬手帳(紙ベース)の記載例
患者名
処方箋発行医療機関名
医師名
2.医療機関の受診記録
・医療機関名、処方箋発行日(or調剤日で代替)
・診療科、処方医師名
薬局名・住所・電話番号
出典:実際に発行されたお薬手帳
4.主な既往歴など患者に関する医療基礎情報
・主な既往歴(入院歴、手術歴)
・アレルギー歴
・副作用歴
利用者が記入
3.過去に処方されたお薬の情報(1.の履歴)
24
(参考)電子版「お薬手帳/カード」のメリット
電子版「お薬手帳」を携帯電話やICカードと想定した場合、紙ベースの「お薬手帳」に比べて、①携帯性に
優れる、②長期間に渡る情報の蓄積が容易、③電子データとして扱えることによる利便性向上などのメ
リットがある。
・電子版「お薬手帳」は携帯電話、ICカード等で
携帯できることから、紙ベースの「お薬手帳」に
比べ、持参し忘れ等が減少する。
・お薬手帳の持参率の向上は、重複投与や相
互作用の防止等に寄与し、医療安全の向上に
資する。
・電子版「お薬手帳」は、紙ベースの「お薬手
帳」に比べ、長期間に渡る情報の蓄積・管理が
容易である。
・電子データとして扱えることで、調剤された情
報の詳細情報等の付加情報を提供することが
できるなど、患者が必要とする情報を提供する
ことが容易になる。
紙ベースの手帳は
持ち歩くのが面倒。
いざというときに手
元にないことも
携帯性の向上
持参率向上による医療安全
の向上
紙ベースでは、長期
間に渡る情報の蓄積
が難しい
電子データで蓄積・管
理の手間を軽減
ロキソニン錠 60mg
電子データなので、
関連する情報を提
供可能
25
(参考)個人参加型疾病管理への活用例としての電子版「糖尿病連携手帳」のイメージ
例えば、糖尿病を例にすると悪化抑制のために必要な最低限の検査データ(医療機関が提供)、バイタルデータ
(自宅で入力)を 管理し、専門病院~診療所間の連携医療への活用だけでなく、個人、自治体 (保険者)の参加を
含めて地域における糖尿病の疾病管理に役立てることができる。
自宅
患者が日常測定する健康データ(体重/血圧)
例:電子版「糖尿病連携手帳」の記載内容イメージ
利用者が記入
以下の記載内容については、あくまで例示であり、
今後関係機関において検討されるもの。
①個人が自ら入力した情報
・糖尿病疾病管理に最低限必要なデータ
測定日時 体重・血圧(バイタル):kg・mmHg
②医療機関等から提供された情報
血糖値(空腹時/食後)
HbA1c(血液)
HDLコレステロール
中性脂肪
クレアチニン/eGFR
尿アルブミン/尿蛋白
総/LDLコレステロール
AST/ALT/γGTP
等
・検査日時/検査機関名
③検査データをグラフ化した情報
医療機関等から情報提供
・糖尿病疾病管理に必要なデータの例※糖尿病連携手帳(日本糖尿病協会)より引用
病院や診療所
糖尿病に関する検査データ
(例:紙ベースの「糖尿病連携手帳」で提供されているデータ)
地域の薬局や歯科等
HbA1cのみなど特定の簡易検査データ等
血糖値などのデータをグラフ
化することで治療の経過を確
認することが可能。
26
(参考)個人参加型疾病管理への活用例としての電子版「糖尿病連携手帳」のメリット
・紙ベースの手帳に比べると、情報の入力などの管理の手間が軽減される。
・紙ベースの「糖尿病連携手帳」をいつも持ち歩かなくても、ICカード、携帯電話
などで携行でき、携帯電話の場合は自分の健康状態を表示し、過去の治療歴を
医師や薬剤師に見せることができる
・患者が電子版「糖尿病連携手帳」を管理することにより、電子ネットワークで繋
がっていない医療機関間においても患者の治療の状況を共有など地域連携医
療を効率的に実現することができる。
複数の検査データを医師か個人が直
接記入したり、毎日の健康情報を記入
手入力することは面倒で負担が大きい
電子データとして
簡単入力
紙ベースの情報は、管理が難しい
・患者が日々の健康情報(体重/血圧など)を自宅で記録できることにより医療機
関連携では、達成できない患者参加型の診療を行うことができる。
・電子版「糖尿病連携手帳」の情報を共有することにより、治療を中断している
患者や未受診の個人に対しても、保険者等から受診の奨励を行うことができ
る。
・電子版「お薬手帳」の情報を取り入れることを可能にすることにより、個人の医
療/健康情報を一元的に管理するアプリケーションとして活用することができる。
電子版「糖尿病連携手帳」
(どこでもMY病院)
電子データで管理
の手間を軽減
紙ベースの手帳は持ち歩くのが面倒。い
ざというときに手元にないことも
病院
携帯性の向上
患者が管理する
情報を提示
薬局等
検査データの提供
健康情報の登録
自宅
患者が自宅で測定した情
報(体重/血圧等)
診療所
主治医
27
(参考)電子版「糖尿病連携手帳」の活用の広がりについて
糖尿病で治療を受けている患者(230万人)に対して、未受療者はその3倍(約650万人)、糖尿病の可
能性が否定できない人はその6倍(約1320万人)となっており、厚生労働省からも糖尿病の発症後
の重症化予防や合併症の予防の重要性が示されている。治療を受けていない層に対して早期の
治療開始を促す仕組みとして、電子版「糖尿病連携手帳」が活用できる。
「治療を実施できていない未受療者/受療中断者」、「糖尿病の可能性が否定できない者」が多
数(約2000万人)を存在する。
2500
2000
人数 万(人
1320万人
(07年)
1500
1970万人
)
糖尿病の可能性が
否定できない者
(07年)
1000
650万人
500
(07年)
未受療者、受療中断者
全国厚生労働関係部局長会議資料より抜粋
医療機関で治療中の患者
0
1995
2000
237万人
2005
2010
(08年)
「糖尿病予防戦略事業」、「糖尿病疾病管理強
化対策事業」にあるように糖尿病対策の重要
性が高まっている。
糖尿病および糖尿病予備軍患者数推移のイメージ図
28
「どこでもMY病院」で取り扱う「本人提供用退院サマリ」
また、入院中の医療行為に係る情報は、その後の患者の健康管理にとって極めて重要で
あり、その提供を検討する必要がある。主に医師の所見の形で当該情報を簡潔かつ平易
に患者に提供する「本人提供用退院サマリ」については、記載する医師の負担や患者の
受け止め方を考慮する必要があることから、個人に提供する範囲等について、さらに検討
を行っていく必要がある。なお、退院時に入手可能な診療明細書には入院中の医療行為
プロセスが記述されていることから、入院中の医療行為に係る情報の患者への提供の検
討に当たっては、診療明細書に記載された情報を取り上げることとする。
入院時の医療行為
診療
検査
本人提供用退院サマリ
手術
病院・診療所
調剤
医師の所見の形で当該情報を簡
潔かつ平易に患者に提供する
退院時の診療明細書
29
「どこでもMY病院」にて取り扱う「読影レポート」
さらに、検査データのうち、CT、MRIなどの画像データについては、患者の状態を一目で
把握する観点から非常に有用である。しかしながら、医師が大量な画像データを逐一確認
することは医師の負担が重く現実的でない。このため、「どこでもMY病院」で取扱う情報と
しては、1~2枚程度の画像とそれに対する医師の所見が記述された「読影レポート」が有
用である。
検査
CTやMRIなどの画像データ
読影レポート
1~2枚程度の画像と
医師の所見
「読影レポート」を提
示することで医師の
負担が少ない方法で
検査データを提供
病院・診療所
30
(4)「どこでもMY病院」構想
の運営主体
31
医療分野の個人情報保護の概要①
医療分野の個人情報は、過去の病歴が判明する等により当該個人が著しい不利益を被る
可能性がある等、極めて機微な情報となることから、慎重な取り扱いが求められるもので
ある。
医療分野の個人情報
電子カルテ
※電子カルテ情報は5年等の
保存期間があり
刑法や健康保険法等の守秘義務規定、
個人情報保護法等及び個人情報保護ガ
イドラインなどにより適切に取扱っている
○
真正性
整合性
×
個人の医療健康情報から過
去の病歴が判明する等、情報
の取扱いによっては、個人が
不利益を被る可能性がある。
32
医療分野の個人情報保護の概要②
このため、医師・歯科医師・薬剤師等の医療関係者や健康保険組合等の保険者の役員及び職員
は、患者のカルテ情報等医療情報の取り扱いに際し、刑法や健康保険法等の規定により、職務上
知り得た秘密を漏らしてはならないとの守秘義務が課されているほか、個人情報保護法等及び個
人情報保護ガイドラインなどの規定の適用を受けている。また、医療機関等 ・保険者から医療情報
の受託管理を行う情報処理事業者及びASP・SaaS事業者においても、個人情報保護ガイドライン等
の規定上、医療機関等・保険者との委託契約によって、原因追及、損害補填責任等の責任分担を
前提に、医療機関等・保険者による監督の下、限定的に医療情報を取り扱うこととされている。
医療機関・保険者
医療・介護関係事業者における個人情報の適切な
取扱いのためのガイドライン(厚生労働省)
健康保険組合等における個人情報の適切な取扱
いのためのガイドライン(厚生労働省)
国民健康保険組合における個人情報の適切な取
扱いのためのガイドライン(厚生労働省)
情報処理事業者
責任分界
委託
契約
医療情報を受託管理する情報処理事業者向けガイドライン
(経済産業省)
要件 ・公正な第三者認証を取得
・情報資産管理
・組織的安全管理策
・リスク評価、安全対策
・事業継続計画 等
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
(厚生労働省)
ASP・SaaS事業者
委託
守秘義務に係る法令の規定例
○刑法
第百三十四条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助
産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職
にあった者が、正当な理由がないのに、その業
務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を
漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以
下の罰金に処する。
ASP・SaaSにおける情報セキュリティ対策ガイドライン(総
務省)
ASP・Saas事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に
関するガイドライン(総務省)
ASP・SaaS 事業者と医療機関
等が責任分界と役割分担につい
て合意し、契約書、SLA 等の文
書において合意内容を明文化
要件 ・管理対策
・災害等の非常時の対応
・ネットワーク利用時の安全管理
・電子署名
・真正性、見読性、保存性 等
33
(参考)個人情報の保護に関する法律の適用について
③保有個人データ
保有個人データ
③保有個人データ
②個人データ
①個人情報
②のうち、
開示、訂正、消去等
権限あるもの
①のうち、
個人情報データベース(個人を検
索可能状態)を構成しているもの
命令・罰則
第24条 保有個人データに関する事項の公表等
第25条 開示
第29条 開示手続
第26条 訂正等
第30条 手数料
第27条 利用停止等
勧告
(第16条~第18条、
第20条~第27条、
第30条
に違反した場合)
第28条 理由の説明
措置を取ら
なかった場合
②個人データ
第19条 データ内容の正確性の確保
第20条 安全管理措置
命令
第21条 従業者の監督
第22条 委託先の監督
第23条 第三者提供の制限
①個人情報
緊急措置命令
(第16条、第17条、
第20条~第22条、
第23条1項
に違反し、緊急に
措置が必要な場合)
第15条 利用目的の特定
生存している特定の個人を識別可能な情報
第16条 利用目的による制限
(他の情報と容易に照合でき、その結果、特定
個人を識別できることとなるものを含む)
第17条 適正な取得
※個人情報データベース等から出力された個人
情報は、紙への印字、QRコード、ICカード等
のいずれにおいても個人データ。
第18条 取得に際しての利用目的の通知等
第31条 苦情の処理
命令に違反
した場合
6ヶ月以下の懲役
又は
30万円以下の罰金
34
「どこでもMY病院」構想の運営主体
(自己医療・健康情報活用サービス)
「どこでもMY病院」の運営主体(「どこでもMY病院」の運営主体は、サービスを提供する者ではなく、
個人から提供を受けた個人情報を希望して管理する者を指す。以下、同じ。))は、個人情報取扱
事業者となる。しかしながら、個人情報取扱事業者は、個人から医療情報管理の委託など機微な
情報を扱う場合においても個人情報保護法等の規制以外は受けない。したがって、「どこでもMY
病院」の運営主体は、機微な医療情報を扱う場合については、(ア)医療機関等・保険者、(イ)(ア)
の機関から個人情報保護ガイドラインの規定に沿って委託を受けた情報処理事業者及びASP・
SaaS事業者に限定することが必要である。
個人情報保護法上の取り扱い
病院・診療所
医療情報
個人データ
個人は、個人情報取扱事業者に該当しないた
め、個人情報保護法は適用されない。
個人が自らサーバ等に入力
「どこでもMY病院」
QRコード等
個人情報
(自己医療・健康情報活用サービス)
薬局
健診データ
診療・保健指導
運営主体が活用
個人データ
QRコード等
健康データ
個人データ
個人データ
個 人
個人による
健康情報の計測
個人情報取扱事業者が
保有する場合は、
保有個人データ(※)
※大学病院や国立病院が保有する場合は、「保有個
人ファイル」とされている。
旅行・救急時
個人が自ら利活用
(第三者提供に該当しない)
個人データ
本人の同意があれば、第
三者提供可能。人の生命、
身体の保護の必要がある
場合は、同意不要。
【運営主体】
○医療機関等
○保険者
(市町村国保、
健康保険組合等)
○医療機関等・保
険者から委託を受
けた事業者
外部委託
個人データ
旅行先・搬送先の病院・診療所
35
運営主体が遵守すべき主なルール
運営主体が遵守すべき主なルールは、「個人情報の安全管理」、「運営主体の事業継続性の担保」、
「個人情報のポータビリティの確保」、「個人情報の利活用」である。これらのルールについて、既存
の医療分野の個人情報保護ガイドライン等で同等の規定がある場合は当面準用する。また、「個人
情報のポータビリティの確保」については、新たにガイドラインを整備することが必要である。
内容
個人情報の安全
管理
・漏洩や第3者による改ざんなど
を防ぐ運用主体が最低限守る
べきセキュリティレベル(必要条
件)のルール
・運用主体の責任範囲を明確に
するルール
当面の方針
・機微な医療情報を扱う場合、既存の医療分野の個人情報保護ガイドライ
ン等を当面準用することで対応する。ただし、ガイドラインの規定があい
まいである等の指摘もあり、「どこでもMY病院」への準用に当たっては、
必要に応じて、ガイドラインの見直しを検討する。
-医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚生労働省)
-医療情報を受託管理する情報処理事業者向けガイドライン(経済産業省)
-ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン(総務省)
-ASP・SaaSにおける情報セキュリティ対策ガイドライン(総務省)
運営主体の事業
継続性の担保
・運営主体が倒産などで事業継
続が困難となった場合の個人情
報取扱いルール
・「医療情報を受託管理する情報処理事業者向けガイドライン」の事業継続計画
等を当面準用する。
個人情報のポー
タビリティの確保
個人が「どこでもMY病院」事業
者間で医療・健康情報を移行可
能にするためのルール
・個人が「どこでもMY病院」運営主体間で医療・健康情報を移行可能とするため、
運営主体が標準フォーマットを使用し、個人が蓄積した情報をまとめて取り出せ
るようなルールを新たに作成する。
個人情報の利活
用
・運営主体による蓄積された情
報の利活用のルール
・個人が蓄積した情報を自ら使用する場合、運営主体である医療機関等が、情
報を預かった患者の診療に使用する場合、運営主体である保険者が情報を預
かった被保険者への健康指導で使用する場合等「どこでもMY病院」本来の目
的で利用する場合は、「一次利用」として認められるものとする。
・蓄積された機微な医療情報の「二次利用」は、当面禁止する。ただし、「レセプ
ト情報等の提供に関する有識者会議」において2011年3月に策定された『第
三者提供のためのガイドライン』を受けて、必要な制度改正が行われた場合等
において、再度、当該ルールや制度を参考として、公益的な側面を考慮しつつ
「どこでもMY病院」で取扱う医療情報の二次利用について検討する。
36
(参考)医療・健康情報のポータビリティについて
個人が「どこでもMY病院」運営主体間で医療・健康情報を移行可能とする情報ポータビリティ確保のために
は、データ交換用の標準フォーマットが必要。後述の電子化方策と合わせて検討を行う。留意事項は以下の
通り。
データ交換用標準フォーマット
<留意事項>
・利用者の情報を集合的に扱える
個人が保持している情報は診療のたびに提供される医療情報の蓄積である。このため、個人
が情報を利活用するためには蓄積された複数の情報を集合的に扱うことのできるフォーマット
が必要。
携帯電話のアドレス帳情報などにおける通信事業者間の
ポータビリティと同様に事業者間において、自らの医療・健康
情報を移行できるフォーマット
事業者B
データ交換フォーマット
事業者C
個人の情報は、事業者間にて移行するための「データ交換用標準
フォーマット*1」にのっとったフォーマットにて情報を移行される。
事業者A
事業者D
※1データ交換用標準フォーマット
標準フォーマットで記載された個人の情報を格納し、移行するための規格。本規
格は経済産業省「健康情報活用基盤構築のための標準化及び実証事業」の成
果を活用。
蓄積された
個人の情報
37
(5)医療・健康情報の電子化方策
38
「どこでもMY病院」の電子化方策について
「どこでもMY病院」の中で医療機関等から提供される情報は、「どこでもMY病院」に
対応する全国のどの医療機関等からの情報であっても、個人が支障なく蓄積できるよ
うにすることが必要である。このため、「どこでもMY病院」の開始に当たっては、個人
提供用標準フォーマットを定めることが必要である。
【サービス事業者 A】
個人提供用標準フォーマットを
用いたデータの提供
標準フォーマットを用いたデータであるため、
個人はどの事業者のサービスでも選択可能
医療・健康情報
情報(1日分)
個人
調剤情報
・
・
・
・
・
<Name>YAMADA</Name>
データ交換用標準フォーマットを用いたデータの移行
<・・・・>××××</・・・・>
一度預けた後でも事業者を変更できるよう、蓄積され
たデータを個人へ利活用可能な形式で提供するために
は事業者間での標準データ交換フォーマットが必要。
薬局
診療明細書
【サービス事業者 B】
情報(1年分)
病院・診療所
39
(参考)医療・健康情報を利活用する上での標準フォーマットの重要性
大切なのは標準化された情報(データ)自身の蓄積である。個人ベースでの情報蓄積を可能とする環境を実
現し、個人が受ける医療サービスの質等の向上を実現。このためには、電子化を行うに先立って標準フォー
マットを定めることが必要。
医療・健康情報を利活用する上で
病院・診療所
基礎となる「データ標準化」
運営主体
個人
○医療機関等
医療情報
薬局
健診データ
○保険者
(市町村国保、
健康保険組合等)
○医療機関等・保険者か
ら委託を受けた事業者
健康データ
標準フォーマットを
用いたデータの提供
・個人は、対応した医療機関等であれば、どこか
ら提供を受けてもスムーズに活用可能
・データを提供する医療機関等は、患者からの
信頼度が向上
自らの情報を委託する運営主体を
個人が自由に選択可能
個人に提供され蓄積された標準化された医療・健
康情報はサービス運営主体に関わらず利活用可
能
40
(参考)これまでの電子カルテや診療報酬(レセプト)請求の電子化の状況
カルテとレセプト請求の単なる電子化は、一定程度前進
● 電子カルテの導入は、1999年から本格的に開始。現在、電子カルテやオーダリングシステム
の普及は、診療所や小規模な病院等では一部にとどまるが、大病院では一定程度導入が進
んだ。
● 2006年にオンライン請求の義務化を規定。ただし、2009年には、小規模診療所等への負担の
配慮から義務化を緩和。現在、レセプトの電子化は、診療所では件数ベースで9割となってい
る。病院や調剤薬局ではほぼ対応済み。
ハード指向で電子化ばかりを重視したため、電子化された医療情報の利活用は限定的
● カルテの電子化の際に医療機関間の情報の共有・連携の必要性は十分に認識されておらず、
政策面で標準化に取り組んだのは後追い。このため、現在実施されている地域医療連携では
同一ベンダーのシステムでの連携となっており、異なるベンダーの電子カルテ間での情報共
有・連携はほとんど実現していない状況。
● 過去のレセプト電子化の取り組みによって、電子化されたレセプト情報等は厚生労働省や
個々の医療機関、保険者内で蓄積が進んでおり、当該データを医療の効率的な提供の推進
等にも活用することが求められている。
41
医療機関等から個人に提供する医療情報の個人提供用標準フォーマットについて
個人提供用標準フォーマットを検討するに当たっての留意事項は以下のとおり。
①個人への情報提供のための
システム整備を、既存のシステ
ムの改修により行うことを可能
とする等、提供者の負担を軽減
する既存のデータフォーマットを
参考とすること。
個人へ提供する医療情報
フォーマットを参考とする
レセプト等既存のデータ
②提供側のデータ作成と個人
によるデータの蓄積を容易か
つ安価に実現するため、汎用
的なフォーマットへの変換を担
保するデータ互換性を確保す
ること。
汎用的なフォーマットへの変換を担保す
るデータ交換性を確保 (②)
<情報>
<受診日>2010/12/22</受診日>
<部>
<投薬>
<調剤料>
<医薬品名>○○錠 xxmg</薬品名>
<用法>1日3回分 x 3日分</用法>
</調剤料>
</投薬>
</部>
・
・
</情報>
③提供者により記載が異なり、
個人のデータ管理が困難とな
らないよう、記録される情報の
記載項目を標準化するととも
に、項目の内容の記述に使用
するコード体系などを明確にす
ること。
具体的な記載項目について標準化を行う(③)
【例】 「○○錠 xxmg 1日3回分 x 3日分」
<投薬>
<調剤料>
<医薬品名>○○錠 xxmg</薬品名>
<用法>1日3回分 x 3日分</用法>
</調剤料>
</投薬>
④ ①~③の実現に当たり、バージョン管理を行う等の将来的なバージョンアップに対応できる
方策について考慮すること。
42
(6)医療機関等から個人への情報の
提供形態
43
医療機関等から個人への電子的情報の提供形態について
「どこでもMY病院」に対応した医療機関等から個人への情報の提供は、上記(5)のとおり、個人
提供用標準フォーマットにしたがって行われるものであるため、個人への情報提供形態を必ずし
も一つに限定する必要はない。むしろ、今後の普及や将来の発展可能性を考慮すると、一つの
選択肢に限定せず、複数の選択肢を準備し、情報を提供する医療機関等においては、その複数
の提供形態の中から、自らの判断で1つ以上の提供形態を選択できることが適当である。
標準化された
情報を受領
「どこでもMY病院」
・
・
・
提供形態B
標準化された情報
を提供
提供形態A
医療機関等は自らの判断
で提供形態を選択する
提供形態C
提供形態によらず、標準化された情報を受
け取るため、個人は容易に蓄積できる。
すべての提供形態は標準化されたフォー
マットに従って情報が書き込まれる。
提供されるデータと運営主体に預けられたデータは同じ個人提供用標準フォーマット
44
第1期サービスにおける医療機関等から個人への電子的情報の提供形態の選択肢
以上のことから、現在利用可能な媒体の中から、情報提供側の導入コスト、データ容量、利用者
の導入しやすさ、受け渡し時における情報の取り扱い、実現可能時期等を考慮すると、提供形態
の選択肢は、当面は「2次元バーコード」、「ICカード搭載携帯電話」、「ICカード」、「オンライン」の
4つが想定される。ただし、「オンライン」で提供する場合は、盗聴、改ざん、なりすまし等を考慮し
た安全性・保秘性の高い情報流通方策を検討することが必要である。なお、将来の技術の進展等
に伴い、4つ以外に選択肢が増えることも念頭におくこととする。
2次元バーコード
ICカード搭載
携帯電話
ICカード
オンライン
情報提供側の導入コ
スト
QRコードを印刷に明細書印
刷時のソフトウェア改修及び
QRコードが印刷可能なプリ
ンタの導入が必要。
ICカードへの書き込みに
ICカード書き込みソフト
ウェアの導入及びICカー
ドへの書き込みが可能な
ICカードリーダーライタ
の導入が必要
ICカードへの書き込みにICカ
ード書き込みソフトウェアの
導入及びICカードへの書き込
みが可能なICカードリーダー
ライタの導入必要
運営主体とのオンライン接続環
境(セキュリティの確保が必
要)、情報提供用サーバの導入、
本人確認用ソフトウェアの導入
データ容量
167文字~2672文字
※QRコードバージョン10で
連携した場合
8~16KB※アプリケー
ションの併用による容量
拡大可
数KB~1MB(数10万文
字)
制限なし
利用者の導入しやす
さ
カメラ付き携帯電話を持って
いる人はコストがゼロ(カメラ
付き携帯電話普及率:9割)
ICカード搭載携帯電話
を持っている人はコスト
がゼロ(普及台数:
6600万代)
受け渡し時における
情報の取り扱い
実現可能時期
ICカード及びICカードリー
ダーの新規購入が必要
セキュリティが確保された接続
環境、及び接続端末(PC、携帯
電話等)
既存の「診療明細書」等を提供している仕組みを活用。
「オンライン」で提供する場
合は、「盗聴」、「改ざん」、
「なりすまし」等の課題を検
討することが必要ではないか。
既存の「診療明細書」等を提供している仕組みを活用するため早期の実現が可能
受け渡しに関わる検討結果に応
じて実現時期が確定
45
(参考)情報提供形態別の医療機関等の導入・運営コスト試算
主要レセコンベンダーへのサンプル調査の結果では、「2次元バーコード」が初期導入費用、年間運営経費
のいずれも最も低コストで、「ICカード搭載携帯電話」「ICカード」がほぼ同等で続き、「オンライン」が最も高コ
ストという結果となった。
【サンプル調査結果】
(1医療機関・薬局毎)
上段:
初期導入費用
ソフトウェア改修費
設備の増設
導入作業(人件)費
下段:
年間運営経費
追加保守費
※現行保守費含まず
回線費(オンライン)等
★年間運営経費が0となっているのは、既存システム保守費の範囲で対応可能との回答
* 回答を留保した1社を除いた平均値
【単位:万円】
提供形態
2次元バーコード
施設
病院(4社平均)
ICカード搭載
携帯電話
ICカード
オンライン
25.4
0★
45.4
0★
45.4
0★
203.0
31.3*
9.0
0★
18.3
0★
18.3
0★
103.8
23.0
歯科(5社平均)
23.9
0★
28.1*
0★
34.6
0★
30.9*
6.0*
調剤(4社平均)
8.7
0.5
14.4
0.5
14.4
0.5
42.4
4.5
16.7
0.1
26.5
0.1
28.2
0.1
95.0
16.2
診療所(4社平均)
平均
【調査方法】
◇主要レセコンベンダーを、施設種別毎に一般市場調査結果等を元に事務局で抽出(のべ17社)したサンプル調査
各社のコンタクト先紹介、質問票作成でJAHIS(保健医療福祉情報システム工業会)に協力いただいた
◇仕様は確定していないので、前提(別添)に基づいて各社に概算額として算出いただいたものを事務局でとりまとめたもの
46
(参考)試算前提詳細
【調査対象企業へ提示した前提】
初期費用
運用費
ソフトウェア改修費
・診療明細書、調剤明細書及びお薬手帳に現在記載し
ている内容をそのまま電子化するとする。
コード変換等は行わないものとして見積もる。
・QRコード化する際には、データ容量の関係から、
HL7などをそのままいれるのではなく、HL7へ変換で
きCSVファイルなどでの対応を前提としてもよい。
・QRコードを出力する場所は、明細書を出力した直後
の余白に出力するものとして見積もる。
・ICカード搭載携帯電話の電話機側のソフトウェアは見
積もり対象外(書き込みソフトは対象)
設備の増設(機材・回
線など)
・プリンタの追加等設備の増設はせず既存の設備を活
用する。
‐オンライン時のサーバ本体/回線/VPN等の設備(セ
キュリティ設備含む)については、新規の購入を前提と
して増設(レセプトオンライン等の既存設備とは別に考
える)。見積もりは、医療機関がデータを作成し送信す
るまでの範囲とする。
‐オンラインはIP‐VPNの利用が前提で、データ送信は都
度(リアルタイム)
‐ICカードリーダー等の購入については、含めない。
・医療機関の窓口等の増設は、見積もり対象外とする。
導入作業工数
・病院 :PKGソフト改修→医療機関へ配布→医療機
関ソフトの更新→テスト→立会い
・診療所、歯科、薬局: PKGソフト改修→医療機関へ
配布(医療機関にて導入作業を行う。)
を前提とし、個別の改造は見込まないものとする。
保守費
既に運用している医事コンの保守費内での対応で可能
の場合はその旨明記。範囲外の場合はその保守費を
明記。
【事務局とりまとめの前提】
ソフトウェア改修費
・個別医療機関・薬局別の概算ではなく総額での
概算で回答いただいたものについては確認の上、
前提をおいて割戻しを行った。
・既存ユーザーすべてを対象に個別医療機関・薬
局別の概算をしたことを明示されているものにつ
いては既存ユーザー10%対象に補正した。
設備の増設
・ICカード搭載携帯電話、ICカード用のICカード
リーダーライターについては医療機関・薬局あた
り1万円(市価で約3台購入可能)を加えた
保守費
・概算の期間が月額から複数年を前提とするもの
などばらつきがあったので、単純に1年間のコスト
に補正した。
・回線費については一般的な通信費から年額4万
円とした。
47
(7)将来の発展形
48
「どこでもMY病院」構想の発展イメージ
「どこでもMY病院」構想は、「どこでもMY病院」に対応した医療機関等から、希望する
個人に向けて情報提供することを早期に実現し、利用者及び参加医療機関等の拡大を
通じて、発展していくことが想定される。
将来の姿
希望する個人から利用開始
サービス利用者の増加
対応可能な医療機関等から
個人に情報提供開始
参加医療機関等の拡大
情報提供範囲の拡大
個人ベースの情報蓄積開始
診療明細書
「どこでも
MY病院」
の実現
健康情報
調剤情報
本人提供用
退院サマリ
健診情報
・検査データ
医療機関の情報との
有機的な連携 等
自らの医療・健康情報
を医療機関等に提示
個人ベースの
電子的医療・健康情報
の蓄積
自己健康管理サポート
個人が受益者
実現当初の姿
49
「シームレスな地域連携医療」への 「どこでもMY病院」の活用
「どこでもMY病院」を活用することで、地域連携医療のネットワークが十分でない地域
においては、個人が保有する情報を中心とした情報連携を通じて、円滑な医療連携の
実現が期待される。
シームレスな地域連携医療を通じた連携
「どこでもMY病院」を活用した情報連携
患者 (個人)
病院
地域の医療機関間の情報連携ネットワークを通じた検査情
報等の共有による疾病管理
診療所
診療所
診療所
医療機関等から個人に提供さ
れた情報を他の医療機関に提
示することを通じて、情報連携
を実現。
2つのパターンの情報連携の組み合わせにより円滑な医療連携の実現が期待される。
50
在宅医療・介護における「どこでもMY病院」の活用例
また、地域の医療機関間のネットワークによる情報連携が行われている地域において
も、個人が保有する情報が活用されることで、よりきめ細やかな医療・介護の実現が期
待される。例えば、在宅医療・介護の連携においては、自宅で医療・介護を行う過程で
様々な情報を収集することが可能なことから、在宅医療・介護の質を向上する手段とし
て、個人に情報管理を集約する「どこでもMY病院」的なアプローチが有効と考えられる。
シームレスな地域連携医療を通じた連携
「どこでもMY病院」を活用した情報連携
在宅患者・ 要介護
者(個人)
診療所
関係機関間のネットワーク化を
医療・介護情報の共有
介護現場
病院
通じた
診療所
多職種の関係者から個人に提供さ
れた情報を関係者に提示すること
を通じて、情報連携が実現。
在宅医療・介護の質を向上する手段として、個人に情報管理を集約する「どこでもMY病院」的
なアプローチが有効
51
保険者による「どこでもMY病院」の活用例
また、保険者が、「どこでもMY病院」の運営主体となる場合は、被保険者及び被保険
者の扶養者に対する、より積極的な保健指導が可能となる。
保険者
糖尿病の例
これまでの医療情報連携
レセプト情報
特定健康診査・特定保健指導情報
診療所
診療所
診療所
レセプトデータに基づく
状況把握・受診勧奨
健診データ
あり
再治療開始
③患者の継続受診状
況、コントロール状況
の把握
なし
• とくに糖尿病の場合、治療の継続が、病状の重篤化防
止・医療費抑制に有効(自己判断で治療中断し、その
後再発した患者の方が結局医療費がかかる)。
• 診療データだけでは、治療に来なくなった患者が連携
地域外で治療継続しているのか、自己判断で中断して
いるかの判別がつかない。
レセプトデータ
診療データの共有
あり
病院
なし
受診開始
①未病者における
リスク者の把握
②未病者における高リ
スク者の新規受診勧奨
52
「地域協議会」における「どこでもMY病院」の活用例
さらに、後述する「シームレスな地域医療連携」では、「医療情報連携に係る地域協議
会」を提示するが、この「地域協議会」が、「どこでもMY病院」のサービスを提供すれば、
在宅医療・介護・疾病予防・疾病管理も含めたITを活用した総合的な医療介護サービ
スの提供が実現できる可能性がある。
地域協議会のイメージ
N
自治体
救急
国保・介護保険の保険者
疾病管理
在宅医療・介護
(電子版糖尿病手帳の
活用等)
疾病予防
疾病管理
「どこでもMY病院」サービスを
通じ、総合的な医療介護サー
ビスの提供
、
都道府県医師会・地域の医療機関
(ヒューマンネットワーク)
医
地 P
療
域 O
情
協 団
報
議 体
連
会 等
携
を を
に
運 構
係
営 成
るし
介護
患者(個人)
在宅医療
53
「どこでもMY病院」構想の発展イメージ (地域医療への活用)
このような理想を目指しつつ、医療者と患者自身が共に効率的で質の高い医療が実現さ
れる環境を作るため、「どこでもMY病院」と「シームレスな地域連携医療」とが、一体と
なって発展することが期待される。
将来
よりきめ細やかな医療・介護の実現
共通番号等を活用して効率的な
広域のネットワーク等が進展
ポータビリティを有した(当然、標準化された)個
人医療情報の蓄積が進む
サービス利用者の増加
より広域での医療連携
ツールとして「どこでもMY病院」
サービスを活用
二次医療圏中心の
地域医療ネットワークの普及・拡大
第2期サービの開始による
情報提供範囲の拡大
参加医療機関等の拡大
個人ベースの情報蓄積開始
医療機関間での共有
個人を経由するルート
「どこでもMY病院」構想
シームレスな地域連携医療
現在
病院・診療所等
薬局
フリーアクセス
54
個人の参加を促進するための取組の重要性
繰り返しになるが、「どこでもMY病院」構想は、希望する個人に向けて対応した医療機関等から
情報提供を行うものであり、「どこでもMY病院」を普及させるためには、医療機関等及び個人の
参加を促進するための取組が重要である。特に情報提供を行う医療機関が増加することが必要
となるが、そのためには、基本概念で示したように、医療情報の提供を受けた患者の満足度が向
上し、医療機関からの情報提供を求める患者が増大することが重要である。内閣官房が実施し
たアンケート(※)によると、医療健康情報を個人が電子的に記録・閲覧・管理・活用できるサービ
スに対して「セキュリティに不安を感じるから」という懸念が多いことから、こうした懸念を払しょく
するために、適切な情報提供を行い患者等の理解を深めることが有効である。
医療健康情報を個人が電子的に記録・閲覧・管理、活用できる
サービスが普及することを望ましいと思うか
単位(%)
わからない
14.8
望ましい
16.8
望ましくな
約7割が医療健康情報を
い
医療健康情報を個人が電子的に記録・閲覧・管理、活用できるこのようなサー
5.6
個人が電子的に蓄積・管
ビスが、普及することを望ましいと思いますか。あなたのお気持ちに最も近いも
どちらかと
どちらかと
のをお知らせください。(ひとつだけ)【必須】
理するサービスの普及を
いえば
いえば
望ましいと考えている
望ましい
望ましくな
※出典:「医療健康情報の活用サービスに関するアンケート
51.5
い
(2011年3月内閣官房IT担当室が外部委託して実施)
11.3
医療健康情報を個人が電子的に記録・閲覧・管理、活用できるサービスが
医療健康情報を個人が電子的に記録・閲覧・管理、活用できるサービスが
普及することを望ましい・どちらかと言えば望ましいと思う理由
普及することを望ましくない・どちらかと言えば望ましくないと思う理由
なぜ、「望ましい・どちらかといえば望ましい」と考えますか。あてはまるものをすべてお知ら
せください。(いくつでも)【必須】
単位(%)
過去の記録を管理しておくことで、
必要な情報をすぐに取り出せるから
81.1
過去の記録をもとに、
アドバイスをもらうことができるから
個人の医療健康に関する情報は
本来個人のものであると思うから
その他
62.8
なぜ、「望ましくない・どちらかといえば望ましくない」と考えますか。あてはまるものをすべ
てお知らせください。(いくつでも)【必須】
単位(%)
セキュリティに不安を感じるから
費用がかかると思うから
1.5
34.3
使うのが面倒だから 13.6
自分の医療情報をもらいたくないから
22.7
80.5
10.1
健康増進の効果があまりないと思うから
7.7
使いたいと思うサービスがないから
7.1
その他
3.0
55
医療情報化に関するタスクフォース報告書付属資料
シームレスな地域連携医療の実現について
※「高齢者等に対する在宅医療介護、見守り支援等の推進」の取組内容を一部含む
2011年5月
シームレスな地域連携医療の実現
も く じ
(1) 基本概念について
(2) 二次医療圏を基本とした地域連携ネットワークで取り
組む対象疾病について
(3) ITを活用した疾病の悪化抑制に対するインセンティブ
(4) 在宅に於ける医療と介護の共有すべき情報について
(5) 二次医療圏を超えた地域連携ネットワークについて
(6) 遠隔医療の推進に関する進捗状況について
(7) 「死亡時画像診断(Ai)の推進」に関する進捗状況に
ついて
(1)基本概念について
1
「シームレスな地域連携医療の実現」への取組について
「シームレスな地域連携医療の実現」の基本概念
「シームレスな地域連携医療の実現」とは、医療機関間の境界だけではなく、医療機関等の存在する
市町村・二次医療圏などといった地理的境界、医療・介護といった職種の境界などを超えて、切れ目
のない医療・介護情報連携を実現することにより、地域の医療・介護サービスの質の向上を目指すも
のである。
「シームレスな地域連携医療」の実現のためには、まず第一に、「地域医療再生基金におけるIT活用
による地域医療連携について(平成22年1月IT戦略本部医療評価委員会提言)」における留意事項
(具体的には4ページ、5ページを参照)を前提として、地域医療連携ネットワークを構築することが重
要である。
今回のIT戦略は、上記の留意事項を踏まえた地域医療連携ネットワークを活用し、在宅医療と介護
の情報連携や疾病の悪化抑制を情報連携を通じて行うことを目指すものである。
2
「シームレスな地域連携医療の実現」への取組について
(参考)『地域医療再生基金におけるIT活用による地域医療連携について』
◆ 2010年1月にIT戦略本部「医療評価委員会」が『地域医療再生基金におけるIT活用による地域医
療連携について』 を策定し、第1回地域医療再生計画に係る有識者会議を経て厚生労働省から各
都道府県衛生主管部(局)長へ伝達。
IT を導入する以前の段階における留意事項(一部抜粋)
ヒューマンネットワークの構築
地域医療連携には、医療情報を円滑に連携するための人的連携を構築する取組みが必要であり、連携医療を
担当する人員の確保とともに、その間の信頼関係が構築されていなければならない。
目的に合致したシステムの導入計画の立案
地域医療の円滑な連携・医療従事者の業務負担の軽減といった目的に合致したシステムの導入計画を立案す
ることが重要。
IT の活用を具体的に検討する際の留意事項(一部抜粋)
持続的に運用可能な情報連携ネットワークシステム
新規に情報システムを導入し連携する場合には、持続的に運用することを考慮して、可能な限り低コストで簡素
なシステムを選択すること。また、特に集中型の連携においては、地域内で連携する各医療機関間の役割分担
を明確化することが重要。
安価で拡張性のあるインターネットでの接続
将来的な拡張性(他地域の機関や他の疾病の医療連携グループとの分散型情報連携等)及びコスト負担を 考
慮して、インターネットによるネットワーク接続を選択することが望ましい。例えば既存の地域連携サービスへの
加入など、安価で簡素な情報連携を実施することが望ましい。
外部のシステムとの情報交換機能の整備及び診療情報の標準の採用
将来的にオンラインで情報連携を行うことも考慮し、標準的なフォーマット・用語コードに沿った形での診療情報
(紹介状には記載されない診療サマリを含む)を、可搬媒体で読み書きができる形で連携ができる機能を整備す
ることが望ましい
3
(参考)外部との情報連携のための機能付加について
「地域医療再生機金におけるIT活用による地域医療連携について」資料1添付資料1P5より
 中核病院は、外部との情報連携のため、患者の診療情報をCD-R(オフライン)で提供できる機能とともに、他の地域からの
診療情報を読み込む機能を有する情報連携リポジトリを設置。
 この情報連携リポジトリは、外部との情報連携をスムースに行うため、標準的なフォーマット・用語コードに沿った情報を提
供することが必要。このため、院内での情報を標準形式に変換する機能を保有することが必要。また、紹介状情報に加え
て、連携医療に必要な診療情報を提供するため、提供用の診療サマリを整備することが必要。
 将来的に、他の地域・他の疾病連携グループとオンラインでの情報交換をする場合を意識することが望ましい。
 中核病院以外の診療所等においてはリポジトリを持つ必要はないが、自らが管理する患者の診療情報を標準的な形式で
CD-Rで提供できる機能を有する情報システムを整備することが望ましい。
新規の医療連携(集中型)
診療所
診療所
診療所
情報連携
リポジトリ
新規の医療連携(集中型)
病院のシステムに
取り込む場合は
別の個人IDを付与
必要に応じてデータの
入った媒体を医療機
関へ持っていく
病院
診療所
標準的な
出力フォーマット
情報連携
リポジトリ
医療情報
標準I/F
病院
中核病院
標準I/F
この地域医療連携内
にある個人の診療
データを一元的に収
集してCD等に出力
病院
個人向けDBサービス
医療情報
個人として自らの
医療情報を保有し
て管理
個人用DB
※EHRやPHRサービス等を想定
医療情報
引越
4
ITを活用した疾病の悪化抑制に対するインセンティブ検討の視点
◆ これまでのITを活用した地域医療連携では、例えば国のモデル事業などで立ち上げたものの中
には運用費用が捻出できず、運用を中止した例が少なくない。現状運用を続けている地域医療
連携のIT活用例を見ると、カルテ情報等の共有等にメリットが限定されているものがほとんどで
あり、当該情報共有のメリットが必ずしも明確にはなっていない。
◆ 運用費用を捻出するため、つまりITを活用した地域医療連携が安定的に存続するためには、シ
ステムの運用に対して一定の定量的な費用対効果があることが必要である。さらにいえば、当該
費用対効果を基準として導入するシステムの費用を検討することが重要である。
導入費用
運用費用
一般に導入費用に比例して運
用費用も高くなるため、捻出可
能な運用費用を考えて導入費
用を検討する必要がある
運営予算(委託費)
情報共有のメリットの明確化
システムの導入による情報共有のメリット
の明確化の必要性
運営予算
費用対効果の定量化
1年目
2年目
3年目
実証期間
4年目
費用対効果をできるだけ定量化する
必要性
運用費用が捻出できず運
営ができなくなる
運用費用が捻出できず、
運営が中止に追い込まれる例のイメージ図
5
「疾病の悪化抑制のための医療情報連携」の基本的考え方
◆ 先の「地域医療再生基金におけるIT活用による地域医療連携について」の段階では、システムのコスト削減と拡
張性の重要性を示したが、今回の戦略においては、導入効果の定量化が可能と見込まれる情報連携、さらには
当該導入効果に基づいたインセンティブの付与が可能となる情報連携を推進することの重要性を提示している。
◆ 具体的には、生活習慣病などの疾病の悪化を抑制する(※ここではこれを疾病管理と呼ぶ)観点から、病院―診
療所間で連携して検査データのモニタリングを行うためにITを活用することが重要である。もちろん、疾病の悪化
抑制を対象とすることは、メリットの定量化というITシステム導入の促進の側面だけでなく、地域医療の喫緊の課
題の解決への貢献という側面がある。
「新たな情報通信技術戦略」における医療情報連携
平成21年度厚生労働省補正事業 「地域医療
再生基金」への提言に基づく地域医療情報連携
診療所
診療所
診療所
診療所
診療所
診療所
診療所
電子カルテの情報等、必要な情
報の相互閲覧等を実現
疾病の悪化抑制のみ
システム参加すること
も可能
加えて
疾病の悪化抑制のためのツー
ルとして各医療機関が利用
病院
疾病の悪化抑制の
ための検査項目を
明確化
標準I/F
外部への情報提供機能
(標準的な出力フォーマット、
用語コードによる)
医療情報
※「地域医療再生基金におけるIT活用
による地域医療連携について」で示した
ITを活用した地域医療連携で最低限留
意すべき事項を踏襲
病院
医療情報
標準I/F
外部への情報提供機能
(標準的な出力フォーマット、
用語コードによる)
※「地域医療再生基金におけるIT活用
による地域医療連携について」で示し
たITを活用した地域医療連携で最低限
留意すべき事項を踏襲
6
医療・介護の連携の必要性
 高齢化の進展に伴い、地域における医療・介護連携の重要性が増している。医療・介護連携にお
いては多職種の専門家が関係すること等から、ITによる情報共有を実現し、要介護者の状況をよ
りよく把握することを通じて、質の高い医療と介護を実現することが可能となると考えられる。これ
らの情報は、これまで余り蓄積されたことがなく、将来的には介護サービスの向上等で大きな貢
献がなされることが期待される。2012年度の診療報酬・介護報酬の同時改定に向けて両者の制
度上の連携が議論されていることから、この検討に遅れることなく、ITを活用した医療・介護連携
の取り組みについても検討していくことが重要である。
病院・診療所
医師等医療従事者
介護事業者
医師と介護の情報共有が
必要
医療・介護情報の共有不足による
医療・介護の現場、患者の不安・不便。
医療従事者の忙殺
介護に関する知識不足
患者
退院後にスムーズに
介護を受けられるか
不安!
在宅介護
介護中に具合が
悪くなったときに
主治医と連携
してほしい!
7
二次医療圏を超えた地域連携ネットワーク
◆ ITを活用してシームレスな地域連携医療を実現するための一つの課題は、システムを安定的に維
持することである。経済面でこれを実現するための課題は、システムの維持・運用費用の低減等を
行い、費用を回収する仕組みを確立することである。一つのシステムを複数の者で利用していても
コスト増はさほどではないというITシステムの特性を考えると、できるだけ多くの利用者でネットワー
クシステムを共有することが一つの解決策と考えられる。
◆ このため、拡張性を担保しながら二次医療圏単位でのネットワーク構築を並行して行いつつ、二次
医療圏を超えたネットワークの広域化を検討することが有効と考えられる。
二次医療圏を超えた地域医療情報連携
ネットワークシステム
個別の地域医療情報連携ネットワークシステム
A二次医療圏の
地域連携ネットワーク
構築費
構築費
運用費
運用費
運用費
(一部)
広域における
システムの共有
構築費
構築費、維持運用費がそれぞれ必要
C二次医療圏の
地域連携ネットワーク
D二次医療圏の
地域連携ネットワーク
構築費
構築費
運用費
運用費
B二次医療圏の
地域連携ネットワーク
A二次医療圏の
地域連携ネットワーク
B二次医療圏の
地域連携ネットワーク
運用費
構築費や維持
運用費の一括化に
よる低減
運用費
(一部)
・これまでの構築費や維持運用費を
一括化し低減
安定的に維持が可能な二次医療圏を超えた地域医療
情報連携ネットワークを実現。
運用費
(一部)
C二次医療圏の
地域連携ネットワーク
運用費
(一部)
D二次医療圏の
地域連携ネットワーク
8
(2)二次医療圏を基本とした地域連携ネットワークで
取り組む対象疾病について
9
疾病の悪化抑制のための医療情報連携について
疾病の悪化抑制のための医療情報連携について
◆地域連携ネットワークで取り組む疾病の悪化抑制は、地域の状況等に応じて、重要な疾病を選定し
つつ、二次医療圏内での病院・診療所が連携して、疾病毎に厳選された検査項目をモニタリングす
ること等により、効率的に取り組んでいくことが重要である。このため、取り上げる疾病の選定基準
を定めて、モデル事業のより良い成果を目指すことが必要である。
「新たな情報通信技術戦略」における医療情報連携
診療所
診療所
診療所
診療所
疾病の悪化抑制のみシ
ステム参加することも可
能
疾病の悪化抑制のためのツー
ルとして各医療機関が利用
疾病の悪化抑制の
ための検査項目を
明確化
・ITを活用することにより疾
病の悪化抑制を効率的に
行うことができる。
外部への情報提供機能
(標準的な出力フォーマット、
用語コードによる)
病院
医療情報
※地域医療再生基金への提言で示した
ITを活用した地域医療連携で最低限留
意すべき事項を踏襲
標準I/F
10
モデル事業で対象とする疾病の選定基準について
 モデル事業で対象とする選定基準は以下の3つとし、これら3つの基準に照らして総合的に選定
することとする。また、複数の疾病を対象とする場合は、特徴の異なる疾病を選定することが有効
である。
選定基準
具体的な視点の例
①患者のQOLの向上
が期待できること
・ADLの急激な低下、認知能力の低下等を伴う疾患である
(生活行動の制限、治療に多くの時間がかかるなど)
・長い治療期間を要する(例:慢性化し介護が必要な状態での治療が必要とな
る)
②重症化予防による医療費
適正化効果が大きいと期待
できること
・患者数が多い
・患者数が増加傾向にある
・治療費が多額である
・他地域への横展開が期待できる
③情報通信技術の活用効果
が期待できること
・疾病の予防や悪化抑制に有効な検査データが存在する
・データが多数存在しその蓄積が必要であることや、データの蓄積で処置の標
準化が可能であるなど、ITを活用したデータ処理・管理が治療に対して有
効であること
・紙ベースでの連携の実績があるなど、ITシステムの導入が容易であること
・多施設、多職種が連携しており、共有する情報が多様であること
・医療従事者等の負担が軽減できること
11
選定基準に照らして対象とすることが有益な疾病の例
 タスクフォースにおいて、以下の疾病が対象として有益と考えられる疾病の例として挙げられた。
平成19年度施行改正医療法による4疾病※
(地域医療連携体制の構築に重点が置かれた疾病)
糖尿病
がん
(前立腺がん等)
心筋梗塞
脳卒中
その他の疾病
大腿骨骨折
慢性心不全
慢性腎臓病(CKD)
感染症
(慢性肝炎等)
メンタルヘルスケア
認知症
※4疾病とは平成19年度施行改正医療法により地域医療連携の構築に重点が置かれた4疾病5事業の4疾病であるが、
医療連携の実績の観点で5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含
む小児医療)で扱われる疾病についても有力な候補が存在すると考えられる。
12
(参考)選定基準を用いた評価の例
 前述の例示の疾病を、疾病の選定基準に照らして、参考までに評価してみると以下の通り。
疾病
糖尿病
慢性腎臓病(CKD)
がん
慢性心不全
患者のQOLの向上
が期待できること
透析への移行や合併症の発症を
防ぐことで、生活に及ぼす影響
を小さくできる
透析への移行や合併症の発症を
防ぐことで、生活に及ぼす影響
を小さくできる
ターミナルケアとして長期間在宅
医療・介護が必要となっている。
情報通信技術の活用効果が
期待できること
透析への移行を防ぐことによる
医療費適正化効果が高い
少ない検査項目でモニタリング
が可能
透析への移行を防ぐことによる
医療費適正化効果が高い
・死亡原因第1位
・急激に患者数が増えている
(前立腺がん)
在宅モニタリングで入院期間の短縮や再入院の防止が可能
・がん診療連携拠点病院による全
国での治療体制が存在
・糖尿病を併発している場合にが
んの専門医と糖尿病を診ているか
かりつけ医との間で連携が必要と
されている(肝臓がん)
体重変動などの在宅でのモニタ
リングが可能
死亡原因第2位の心疾患の多く
を心筋梗塞と狭心症が占める
心筋梗塞
全国各地で地域連携パスによる
医療連携が行われている
大腿骨骨折
脳卒中
重症化予防による医療費適
正化効果が大きいと期待で
きること
急性期治療後も大きな生活制限
を伴う後遺症が残る場合がある
全国各地で地域連携パスによる
医療連携が行われている
13
(3)ITを活用した疾病の悪化抑制に対するインセンティブ
14
ITを活用した疾病の悪化抑制に対するインセンティブについて今後検討する際の論点
ITを活用した疾病の悪化抑制に対するインセンティブの検討にあたり留意すべき事項
◆ 基本概念で示したように、ITを活用した情報連携システムを持続的に運営するには、
運用費用を捻出していく必要がある。ここでは、ITを活用した地域医療連携を促進す
る観点から、特にシステムの運用を支援するインセンティブの今後の検討に資するた
め、インセンティブ付与の対象や方法について整理する。
インセンティブについて今後検討する際の論点
インセンティブ付与の対象
①情報連携システム
の構築そのもの
インセンティブ付与の方法
①診療報酬
②システムを活用して
行われる医療行為
(医療情報の提供等)
③医療行為がもたらした
医療的なアウトカム
②自治体等による補助
15
インセンティブ付与の対象について
◆インセンティブ付与の対象は、ア.情報連携システムの構築そのもの、イ.システムを活用して行われ
る医療行為(医療情報の提供等)、ウ. 当該医療行為がもたらした医療的なアウトカム、の3つに大別
される。
◆医療的なアウトカムとして、例えば患者のQOLの向上が挙げられるが、当該効果を測る客観的な指
標が必要であるとともに、当該指標の決定のための科学的なエビデンスを収集することが必要であ
る。このため、モデル事業等においてエビデンス収集を目指すことが必要である。ただし、効果の明
示化が難しい場合も考えられることから、疾病の悪化抑制の取り組み自体に対するインセンティブ付
与についても検討することが重要である。
インセンティブ付与の対象の分類
ア.情報連携システム
の構築そのもの
イ.システムを活用して
行われる医療行為
(医療情報の提供等)
ウ.医療行為がもたらした
医療的なアウトカム
ITシステムだけに限定せず、コールセンターなどの現場の負担を軽減する人
的システムを含むもの。
システムを活用した医療機関間の患者の情報連携、連携の基礎となるデータ
ベースへのデータの登録などの行為。
ITを含めた医療行為がもたらす患者のQOLの向上などが挙げられる。
16
インセンティブ付与の形態について
インセンティブ付与の方法について
◆ ITを活用した疾病の悪化抑制の実現に向けたインセンティブ付与の方法としては、①
国による全国一律の診療報酬、②地域の事情に応じた自治体等による補助の2つが
挙げられる。
なお、社会保障の観点から、国及び自治体のほかに保険者もインセンティブの提供者
の選択肢として考えられる。
インセンティブ付与の方法の分類
①診療報酬
保険医療機関等がその行った保険医療サービスに対する対価として保険から受け取る報酬。
全国の医療機関に対して一律に付与することが可能。
②自治体等による補助
地域の事情に応じたインセンティブ付与形態を取ることが可能。
情報連携システムの導入に対する費用や、運用費用に対する補助、税制による補助等の方法による
インセンティブの付与が可能。
17
情報連携システム自身に対する診療報酬等について
情報連携システム自身に対する診療報酬等について
 電子カルテなどIT導入に対する診療報酬については、日本病院団体協議会から要望があるとともに、地域
医療連携等の推進の観点から診療報酬がインセンティブの候補となるのではないかとの意見や、診療報酬
には限りがあることから、新たな診療報酬の付与を検討する際には、診療報酬の付与効果の明確化を行うと
ともに、代替される既存の診療報酬の付与対象を特定することが必要であるとの意見が、本タスクフォース
において示された。
 また、システムの普及の促進の観点から、診療報酬以外に税制、補助金等についても支援措置の候補とし
て考えられる。税制、補助金等の制度については、必ずしも医療的なアウトカムが政策目的ではなく、例えば
地域住民が安心して暮らすことができる医療提供体制の充実等の政策目的の観点から、他の政策と比較し
た優先順位を踏まえて、適切な制度の検討を行うことが有効と考えられる。
日本病院団体協議会は2011年2月4日、2012年度
の診療報酬改定に向けて、電子カルテなどITに対す
る報酬加算などの要望書を厚生労働省保険局に提
出した。
【日本病院団体協議会の要望項目】
①標準化に適合した医療情報システムの整
備と活用における診療報酬上の評価につ
いて
②同一日の同一医療機関複数科受診につ
いて
③入院患者が他医療機関への受診の取り
扱いについて
④「外来リハビリテーション」管理料の新設
について
18
ITシステム導入等に対する自治体等の補助制度について
 国民健康保険財政の安定化等の観点から、疾病の悪化抑制の実施は自治体にもメリットがあると考えられる。
当該メリットを目指して自治体が補助制度を導入することに妥当性がある。補助制度は、制度上可能であれば
システムの持続的運用を支援するものが望ましい。受けるメリットの大きさ、制度の創設のし易さ、予算の確保
のし易さ等の観点から、都道府県や国民健康保険を運営する市町村は、各地域の特性に応じて、補助制度を
検討していくことが有効である。
自治体に対する
メリットの例
70
糖尿病の例
60
施策を講じなかった場
合の透析に係る保険料
の推移
施策の導入効果
※透析への移行の抑止によ
る保険料の適正化効果等
50
40
30
20
施策を講じた場合の透析
に係る保険料の推移
10
0
透析に係る保険料の推移のイメージ図
自治体によるインセンティブ
の付与方法の比較
①疾病の悪化抑制に係るシステムの導入補助
(メリット:単年度予算獲得など制度創設は相対的に容易。)
②疾病の悪化抑制に係るシステムの運用費用の補助
(メリット:運用費用の捻出に苦労しているユーザにとって効果的。)
制度創設の
容易さ
ユーザの
メリット
○
△
△
○
19
(4)在宅に於ける医療と介護の共有すべき情報について
20
在宅医療・介護で共有することが有効な情報は何か
◆ 在宅医療・介護において共有することが有効な情報は、在宅医療・介護が開始される段階の初
期情報(在宅サービス開始時の初期情報)と、在宅医療・介護の開始後に状況・状態が変化する情報
(在宅医療・介護サービス中の状況・状態情報)とに分類できる。
在宅医療・介護において共有することが有効な情報
生活状況∑状態
情報
基本情報
診療∑治療記録
在宅移行時の初期情報
(基本情報、入退院、入退所、
ケアプラン作成時の患者の初期状態)
基本情報
診療∑治療記録
生活状況∑状態
情報
サービス提供者
関連情報
サービス提供者
関連情報
在宅医療・介護サービス中の
状況・状態情報
(在宅医療・介護サービス開始後に
状況・状態が変化する情報)
生活状況∑状態
情報
診療∑治療記録
21
在宅医療・介護で共有することが有効な情報は何か(参考:詳細情報)
◆
前述の、「在宅移行時の初期情報」と「在宅医療・介護サービス中の状況・状態情報」の
詳細は以下の通り。
在宅移行時の初期情報
基本情報
在宅医療・介護サービス中の
状況・状態情報
生活状況∑状態情報
生活状況∑状態情報
診療∑治療記録
診療∑治療記録(身体状況∑状態情報を含む)
サービス提供者関連情報
※1 ADL:日常生活動作(Activities of Daily Living)の略で、食事、排泄、
着脱衣、入浴、移動、寝起きなど、日常の生活を送るために
必要な基本動作のこと
※2 要介護状態区分:いわゆる「要介護度」を指す。
22
在宅医療・介護の流れと発生する情報との関係
◆
患者が、在院治療と在宅医療・介護の間を移動する流れの中で、関与する医療・介護関
係者と、発生する情報の関係の概要は以下の通り。
入院時
在宅療養時
生活情報や動作状態の情報、
診療情報等各種情報の発生
家族
(必要に応じ情
報共有に参加)
「在宅医療・介護サービス中の
状況・状態情報」の記録・共有
患者の退院時・在宅への移行時
→ 在宅療養計画の作成
ケアプランの作成
「在宅移行時の初期情報」の
受け渡し
在宅診療を
行う医師・
歯科医師
訪問看護師
歯科衛生士
理学療法士・
作業療法士等
訪問
薬剤師
再入院
「在宅移行時の初期情報」、「在宅医
療・介護サービス中の状況・状態情
報」等から、シームレスな医療を提供
退院前に治療に
あたった病院等の
医師・歯科医師等
ケアマネ
ジャー
ショートステイの
利用時
ヘルパー等
ケアマネ
ジャー
施設嘱託医
食事介助 入浴介助
社会福祉士
病院看護師
社会福祉士
外出介助
リハビリ
介助
・・・・・・
施設看護師
23
「在宅移行時の初期情報」を共有するメリット
◆ 「在宅移行時の初期情報」を共有することにより、関係者は以下のようなメリットを受け
ると考えられる。
情報の参照者
主に参照する情報
メリット
在宅医療を
行う医師
歯科医師
・基本情報
・生活状況・状態情報
・診療・治療記録
・診療・治療記録の参照により、患者の基礎的な情報を総
合的に把握することが可能になり、診療計画の立案に資
する。
ケア
マネジャー
・基本情報
・生活状況・状態情報
・診療・治療記録
・サービス提供者関連情報
・すべての情報に沿って適切なケアプランを作成すること
ができる。
訪問看護師
・基本情報
・生活状況・状態情報
・診療・治療記録
・診療・治療記録(身体状況・状態情報)の把握により、その処
置が必要な理由を理解した上での処置が可能になる。
・患者の状態を総合的に判断し、医師への相談を行える。
・生活状況・状態情報の参照により、ケアを行う際の最適な対応
が可能になる。
理学療法士、
作業療法士等
・基本情報
・生活状況・状態情報
・診療・治療記録
・診療・治療記録(身体状況・状態情報)や生活状況・状態情報
の把握により、その処置が必要な理由を理解した上での処置が
可能になり、より患者の状態に応じたリハビリを行える。
ヘルパー等
・基本情報
・生活状況・状態情報
・生活状況・状態情報の把握により、要介護者の状態の総合的な
把握、起こりうる変化の把握をすることで適切なケア、状態悪
化の防止に役立てることができる。
訪問薬剤師
・基本情報
・生活状況・状態情報
・診療・治療記録
・診療・治療記録(身体状況・状態情報)や生活状況・状
態情報、診療・治療記録の把握により、より患者の状態
に応じた薬学的管理を行うことができる。
多
職
種
の
情
報
へ
の
ア
ク
セ
シ
ビ
リ
テ
ィ
の
向
上
24
「在宅移行時の初期情報」のうち医師等が提供することが有効な情報
 したがって、退院前の病院等での治療及び通院中に治療にあたった医師・歯科医師は、診療
の実施に伴う「診療・治療記録」等を提供し、退院前の病院等での看護師、病院薬剤師、歯
科衛生士、理学療法士、作業療法士等は医療処置の実施に伴う「生活状況・状態情報」「診
療・治療記録」を提供することが有意義と考えられる。
関係者
退院前の病院
等で治療に
あたった医
師・歯科医師
行動
発生情報
(記録する情報)
生活状況∑状態情報
診療の実施
退院・退所情報提供書
に関する情報の提供
発生情報の詳細
診療∑治療記録
(要介護認定時)主
治医意見書の作成
その他関係職種
例
生活状況∑状態
情報
退院前の病院等
で治療に
あたった看護師
病院薬剤師等
退院前の病院
等で治療にあ
たった理学療
法士、作業療
法士等
診療∑治療記録(身体状況∑
状態情報を含む)
医療処置等の
実施
診療∑治療記録
25
「在宅移行時の初期情報」のうち
ケアマネジャーが提供することが有効な情報
 また、ケアマネジャーは、ケアプランの作成に際して収集・作成する「基本情報」「サービ
ス提供者関連情報」、及び退院・退所情報提供書の作成に際して収集する「診療・治療記
録」を提供することが有意義である。
関係者
行動
発生情報
(記録する情報)
発生情報の詳細
基本情報
基本情報
ケアマネジャー
ケアプランの作成
診療∑治療記録(身体状況∑
状態情報を含む)
サービス提供者
関連情報
退院・退所情報
提供書の作成
診療∑治療記録
サービス提供者関連情報
26
「在宅医療・介護サービス中の状況・状態情報」を共有するメリット
 「在宅医療・介護サービス中の状況・状態情報」の共有により、関係者は以下のようなメ
リットを受けると考えられる。
情報の参照者
在宅医療を
行う医師
歯科医師
・生活状況・状態
情報
・診療・治療記録
ケア
マネジャー
・生活状況・状態
情報
・診療・治療記録
訪問看護師
・生活状況・状態
情報
・診療・治療記録
理学療法士、
作業療法士等
・生活状況・状態
情報
・診療・治療記録
ヘルパー等
・生活状況・状態
情報
訪問薬剤師
メリット
主に参照する情報
・生活状況・状態情報
・診療・治療記録
・生活状況・状態情報の時系列的な参照により、患者の状態の変化か
ら病気の重篤化防止や生活不活発病の予防措置を検討できる。患者
や家族に対して限られた時間で的を絞った質問や会話が可能になる。
・診療・治療記録の時系列的な参照により、患者の病状・体調変化を
早期に把握し、対策をとることが可能になる。
多
職
・生活状況・状態情報および診療・治療記録の時系列的な参照により、種
要介護者の状況・状態に対する判断をより正確に行い、ケアプラン の
情
の更新や再作成を行うことができる。
・要介護者が入院する際の「医療連携加算」の情報提供に利用できる。報
へ
・生活状況・状態情報や診療・治療記録の時系列的な参照により、患 の
ア
者の状態を総合的に判断し、医師への相談を行える。
・診療・治療記録の参照により、診療・治療内容や、その処置が必要 ク
セ
な理由を理解した上での処置が可能になる。
シ
ビ
・生活状況・状態情報ならびに診療・治療記録の時系列的な参照によ
リ
り、患者の状態を総合的に判断し、医師への相談を行ったり、より
テ
患者の状況・状態に応じたリハビリを行うことができる。
ィ
の
・生活状況・状態情報や身体状況・状態情報の参照により、患者の状 向
態を総合的に判断し、より患者の状況・状態に応じたケアを行うこ 上
とができる。
・生活状況・状態情報診療・治療記録の参照により、患者の状況・状
態に応じたより質の高い薬学的管理や、医師等多職種への情報提
供を行うことができる。
27
「在宅医療・介護サービス中の状況・状態情報」のうち
医師・看護師等が提供することが有意義な情報
 したがって、在宅医療を行う医師・歯科医師は、「診療・治療記録」を、訪問看護師は「診療・治療記
録」「生活状況・状態情報」を、歯科衛生士は「診療・治療記録」を、理学療法士・作業療法士等は「生
活状況・状態情報」、「診療・治療記録」を提供することが有意義と考えられる。
関係者
行動
発生情報
(記録する情報)
在宅医療を行う
医師・歯科医師
生活状況∑状態情報
診療の実施
訪問看護師
発生情報の詳細
診療∑治療記録
医療処置の実施
診療∑治療記録
病状観察
生活介助・指導
理学療法士・
作業療法士等
在宅リハビリ
生活状況∑状態
情報
診療∑治療記録
生活状況∑状態
情報
診療∑治療記録
28
「在宅医療・介護サービス中の状況・状態情報」のうち
ヘルパー等・家族・在宅系薬剤師が提供することが有意義な情報
 同様に、ヘルパーや家族等は、身体介護や家事援助の際に、それぞれ自分が実施するケアに関する
「生活状況・状態情報」を提供することが有意義と考えられる。
 また、訪問薬剤師等の在宅系薬剤師は、薬学的管理の際の情報として収集できる「生活状況・状態
情報」、「診療・治療記録」を提供することが有意義と考えられる。
関係者
ヘルパー等
行動
発生情報
(記録する情報)
家族(状況
に応じ)
身体介護
家事援助
(例)身体介護を行う
ヘルパー等
食事介助
排泄介助
清拭・入浴
起床・就寝介助
服薬介助
訪問薬剤師
薬学的管理
発生情報の詳細
生活状況∑状態情報
生活状況∑状態
情報
生活状況∑状態
情報
食事∑栄養
排泄
清潔
睡眠
服薬状況
アA
セD
情スL
報メ状
ン態
トの
診療∑治療記録
生活状況∑状態
情報
診療∑治療記録
29
在宅医療・介護における円滑な情報共有を行うための課題
 在宅医療・介護における円滑な情報共有を行うための課題を克服するためには、共有する
情報を可能な限り標準化するとともに、入力を簡素化することが必要である。
タスクフォースで指摘された課題
◎
◎
情報の認識
◎
ADL情報の
ばらつき
生活記録情報が
まちまち
関係者のIT
リテラシーに
ばらつきが存在
その他
医療提供者に有用な情報とケア提供者に有用な情報が
違う。
医療提供者は要介護者がどんなケアを受けているか、
ケア提供者は要介護者の病気の段階や予想される経過
がわからない場合がある。
提供される情報の言葉の意味等がお互いにわからない
場合がある。
◎ ADL情報が重要という認識が(医療側に)ない場合が
あり、生活不活発病に結び付くことがある。
◎ ADL状態の時系列的把握等が難しい。
◎ ADL評価を行う人により評価のばらつきが存在。
解決法
共有する情報の
標準化
入力の簡素化、
定型化
◎
生活記録の情報について、記録者により粒度が異なっ
たり、必要とされる情報が異なっている。
◎
個人によって情報機器等の取扱いの習熟度が違い、誰
でも使えるような仕組みである必要がある。
◎
医療従事者の多忙や、介護サービス従事者の気おくれ等により、介護側から医療情報を取りに行き
づらい。多職種間でのヒューマンネットワークの構築を促す仕組みが必須。
介護の性質、要介護者の状況に応じた情報共有を検討すべき。
医療者の免責や認知症患者の後見人制度等、関連した法制度を同時に整備すべき。
責任範囲の明確化等の前提として、改ざんへの対応を考えるべき
◎
◎
◎
30
(参考) 各種指導料や医療連携加算の対象情報
 医療保険、介護保険の報酬が与えられる情報連携として、以下のものが存在する。
各種指導料・医療連携加算
退院・退所情報提供書の様式例
(厚生労働省 老振発第0313001号
平成21年3月13日にて提示されているもの)
(医療保険)
介護支援連携指導料(指定書式なし)
入院の原因となった疾患・障害や入院時に行った患者の心身の状況等の総合
的な評価の結果を踏まえ、退院後に介護サービスを導入することが適当であると
考えられ、また、本人も介護サービスの導入を望んでいる患者が、退院後により
適切な介護サービスを受けられるよう、入院中から居宅介護支援事業者等の介
護支援専門員(ケアマネジャー)と連携し退院後の介護サービス計画(ケアプラン)
作成につなげることを評価するもの。
(介護保険)
医療連携加算(指定書式なし)
病院または診療所に入院する利用者につき、当該病院又は診療所の職員に対
して、利用者に関する必要な情報を提供した場合に算定。
退院・退所加算(Ⅰ、Ⅱ)(厚生労働省から様式例の提示あり)
退院・退所に当たって、病院等の職員と面談を行い、利用者に関する必要な情
報の提供を求めることその他の連携を行った場合に算定。
要介護認定の際の主治医意見書(厚生労働省から様式の提示あり)
主治医が申請者の状況についての意見を記し、要介護認定を行う際の資料等
に用いられる。
居宅療養管理指導料(指定書式なし)
居宅介護支援事業者に対する、居宅サービス計画作成等に必要な情報提供、
利用者及び家族等に対する、居宅サービスを利用する上での留意点、介護方法
等についての指導・助言
※ 上記様式以外の様式の使用も認められている
31
共有情報の標準化について


介護においては医療従事者、介護サービス従事者をはじめ多職種の異なる視点が存在し、患者の行動等を評価する類似の指
標が複数存在する。このため、介護関係者の負担が増えている。患者の状態を多くの関係者で共有するためには、記入する
情報量を極力減らすことが必要であり、その観点で共有する情報の標準化が重要である。
例えば、ADL評価においては、目的や分野によって複数の異なる方式・方法が存在する。関係者間での認識を共有する観
点からは、評価指標をできる限り標準化し、共通の指標でADL状態を評価することが重要である。なお、すでに特定のA
DL評価指標が使われている場合があることから、標準化にあたっては地域において目的や分野を吟味しながら時間をかけ
て検討を行い、ADL評価に対する各関係者の共通認識を醸成することが必要である。
ADL評価の枠組み・方法
評価方法
利用している制度等
機能的自立度評価法(FIM)
1~7段階で分類
介護負担度の評価が可能。リハビリの分野などで幅広く活用されている。リハビリテー
ション実施計画書作成時に使用する指標の候補。
バーサルインデックス(BI)
2~4段階で分類
リハビリテーション実施計画書作成時に使用する指標の候補。
日常生活機能評価
3段階
看護必要度から派生した指標。
計画管理病院からの転院時及び連携医療機関からの退院時に用いる。地域医療連携・地
域包括ケアにおける急性期~回復期~維持期において連続的に評価するための指標。
慢性期病棟の病態別評価区分
B評価:日常生活活動(ADL)評価
3段階
日本慢性期医療協会が一般病床や回リハ病棟のB評価のADL基準より抜粋し、 他の診
療報酬区分との整合性を調整し作成したもの
基本診療料の算定に係る評価指標
0~2点で分類
基本診療料の算定に係る評価指標で、「ハイケアユニット 重症度・看護必要度に係る
評価票」「7対1、10対1入院基本料 一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価票」
「特定集中治療管理料 重症度に係る評価票」「回復期リハビリテーション病棟 日常
生活機能評価票」等が存在する。上記各評価票では、評価項目にばらつきが存在するが、
評価法は同一。
新全老健版ケアマネジメント方式
R4システム
5段階
ICFレベルをアセスメントする。イラストベースの簡単な共通指標を用いて、関係者のだ
れもがADLを評価でき、評価者によるブレのない評価を行うものとして期待される。
アセスメント
(ADLのレベル)
状態の
イメージイラスト
※ ICF:2001年5月、世界保健機関において採択された、
人間の生活機能と障害の分類法
32
(参考) FIM、BI等によるADL測定項目の比較
※ 博愛記念病院 武久先生提供資料 改変
33
共有情報の入力の簡素化について
 情報共有を持続的に実現するためには、情報入力の負担を極力低減することが重要である。そのためには、必要とさ
れる情報を、システムの利用者が短時間で的確に入力できる環境の整備が必要である
 例えば、ヘルパー等による情報入力の仕組みについては、持続的な入力を促進するため、可能な限り、適切な範囲で
の共有する情報の絞り込みや選択式での入力の検討、スマートフォン等の入力が容易な端末の活用やコールセンター
による入力支援等を検討することが望ましい。その際、選択式だけではなく、不定形の情報を共有するニーズもあるこ
とが考えられ、その場合は自由記述欄を設ける等、ケースごとの柔軟な方法とすることが重要である。
生活状況・状態
情報例
現場での情報入力端末
◎
◎
食事・栄養
清潔
排泄
入浴可否、方法、
頻度
方法、場所、頻度、
状態等
喜び・感情
睡眠
喜びや感情、関心
の対象、状況
時間、中途覚醒の
有無、昼夜逆転の
有無、薬剤の有無
移動
運動量、運動内容
(屋外移動可否、
自宅内移動)
服薬
何をいつどれだけ
服薬したか
治療に関する
指示の順守
治療に関する各種
指示が守られてい
るか
ADL状態の
アセスメント情報
共有すべき情報を絞り込み
容易に入力できるように選択式に
接種方法、内容、
量、栄養状態等
情報のリアルタイムな共有
共有情報の入力・閲覧
(情報は端末内には蓄積
されない)
患者∑要介護者状態の見える化
ADLの時系列比較
○山 △男 様
ADLが下がっている
からリハビリの内容
を変更しよう!
選択式で
簡単な入力
◎ 時系列で状態変化を表示(グラフ等)、
システムの活用で状態の変化を見える化。
医師∑看護師等の情報入力
◎ 非定型情報を入力。
ADL状態のアセス
メント情報
3段階選択等、単純で負
担のかかりにくい仕組み
34
(5)二次医療圏を超えた地域連携ネットワークについて
35
二次医療圏を超えた地域連携ネットワーク(地域協議会の設置)
◆地域の中核病院等を中心とした既存の二次医療圏内ネットワークでは、システムの維持費用を捻出すること
が難しいなど、当該ネットワークを持続的に運用していくための課題は多い。現状、診療録等の外部保存に
関わる要件の緩和や、クラウドコンピューティングをはじめとする情報通信技術の発達と普及等、地域医療
連携ネットワークを効率化できる環境が整いつつあることから、都道府県単位等でできるだけ効率的に管内
の情報連携が行える環境を将来に亘って整備することが重要である。
◆以上のことから、都道府県レベルで地域連携ネットワークの構築を推進するため、医療情報連携に係る地域
協議会(以下、地域協議会)を都道府県単位で設置することが有効である。
例
広域情報連携システム
(都道府県単位等
広域で構築・運営)
・管内の医療機関の診療情報
共有を、共通番号を利用して
効率的に実施しつつ、救急医
療、コホート研究等へ活用。
これまで中核病院
単位で管理してい
たデータベースを
集中化
中核病院
病院
地域協議会
・都道府県下の各医療機関の情報
連携の取り組み支援
・各種サービスの提供による取り組
みの充実
・都道府県を超えた連携への貢献
診療所
病院
中核病院を中心とした役割分担のネットワーク
診療所はシンクライアントのみ用意
診療所
診療所
診療所
診療所
中核病院を中心とした役割分担のネットワークで活用
病院
診療所
これまで地域連携に参画していなかった
域内の医療機関も新たに情報共有
36
地域協議会の取り組みの概要
◆地域協議会は、まず、管内の二次医療圏内での情報連携ネットワークが、将来の情報連携
の範囲拡大に円滑に対応できるよう支援することが重要である。さらに、対応可能な地域
協議会から、都道府県内での医療連携ネットワークの一層の効率化を図る等、自らの取り
組み内容を充実していくことが重要である。この際、既存の二次医療圏内での医療情報連
携ネットワークとの連携を図るため、既存資源を有効活用することが必要である。
◆なお、シームレスな地域連携医療の実現の観点から、地域協議会では医療情報だけの連携
にとどまらず、医療・介護で共有することが有効な情報を含めた連携や、個人の健康情報
を含めた連携を支援することも検討することが必要である。
医療情報連携に係る地域協議会
構築・運営に関する検討事項
協議会が提供することが有効なサービスのイメージ
地域協議会の取り組み内容の
充実について
地域協議会の構成メンバーについて
都道府県を超えた医療情報連携の
実現に向けて
地域協議会の当面の取り組みについて
地域協議会の目指す
セキュリティについて
37
地域協議会の構成メンバーについて
◆地域協議会の構成メンバーは、地域における医療機関間のヒューマンネットワークの構築等を
支援する観点から、都道府県医師会等が関与することが有効である。また、高齢化の進展に伴
う地域の課題(慢性疾患の患者数や要介護者の増加等)への対応の観点から関連する機関の構
成員が含まれていることが望ましい。例えば、自治体や国民健康保険組合等が関与して、地域
での疾病管理や在宅医療・介護における地域の医療情報の安全な管理を推進することが有効で
ある。また、地域医療の構成員である薬剤師等の関与も重要である。
◆さらに、地域協議会の設置にあたっては、都道府県の医療計画と整合を図る必要性があること
から、都道府県の医療審議会と緊密な連携をとることが肝要である。
地域協議会のイメージ
自治体
救急
国民健康保険組合・介護保険の保険者
在宅医療・
介護
疾病管理
(電子版糖尿病手
帳の活用等)
、
都道府県医師会・地域の医療機関
(ヒューマンネットワーク)
N
医P
地
療
域 O
情
協 団
報
議 体
連
会 等
携
を を
に
運 構
係
営 成
るし
38
地域協議会の当面の取り組みについて(1)
◆地域協議会は、都道府県下の各医療機関等の情報連携の取り組みを支援するため、当面、二
次医療圏内の情報連携ネットワークにおいて、将来の情報連携の範囲拡大に円滑に対応でき
るよう標準インターフェースを備えた情報連携リポジトリ/レジストリの整備が促進される
よう支援を行うことが必要である。
◆なお、後述する「標準的なアーキテクチャ」が国レベルで決定された際には、管内における
普及等を推進することが重要である。ただし、既に運用を行っている連携ネットワークに対
しては、インターフェースの実装支援等合理的な対策をとることが必要である。
39
(参考)地域協議会による二次医療圏内のネットワークの構築支援について
2010年1月のIT戦略本部「医療評価委員会」による地域医療再生計画への提言(外部との情
報連携のための機能付加についての記述箇所)を一部改変して抜粋
40
地域協議会の当面の取り組みについて(2)
◆地域協議会は、上記支援を行うに当たり、人的資源の確保、管内の医療機関等と
のヒューマンネットワークの構築、管内の情報連携システムへのセキュリティ監査
や相互運用性の担保(例えば、標準的アーキテクチャの採用等)等の課題に対応す
ることが必要である。
地域協議会の当面の取り組みにおける課題
人的資源の確保
複数の関係機関をとりまとめ、円滑に調整することができる人材が必要。
ヒューマンネットワークの構築
連携の前提はヒューマンネットワークであり、その構築ができていることが必要。また、地域内の多くの医療機関
等が地域協議会に参画するための方策の検討が必要。
セキュリティ監査や相互運用性の担保
セキュリティ監査や、相互運用性の担保(例えば、標準的アーキテクチャの採用等)への対応が可能であり、かつ
情報の取り扱いに対して責任を持てる、継続性のある組織体とするため、自治体・地域医師会の関与が必要。
41
地域協議会の取り組み内容の充実について(1)
地域協議会は、都道府県下のシームレスな地域連携医療をさらに促進するために、各医療機関等に存
在する医療情報を相互に参照できるサービス(連携のハブ機能)の提供や、場合により当該情報の保管
サービスの提供を検討することが有効である。
その際には、医療情報だけの連携にとどまらず、在宅医療を中心として介護情報を含めた連携や、個人
の健康情報を含んだ連携に対する支援も検討することが有効である。
共通基本機能(例)
例
患者ID管理
職員認証
地域協議会の提供する機能は県単
位で整備し、連携の実施は、例えば
データベースを二次医療圏単位もし
くは市町村ごとに分けて行う等、地
域連携の実情に応じて柔軟に検討
することが有効である。
監査証跡
電子署名
参照権限管理
シングルサインオン
データベースの一部にて、個人が収
集する情報を格納するデータベース
を設けて、例えば国保と共同で「どこ
でもMY病院」のサービス提供者とな
ることも想定し得る。
データベース管理
データベース
個人医療健康情報管理
共通データ
(例)どこでもMY病院、在宅医療・
介護、疾病管理
地域医療連携情報
A二次医療圏
A二次医療圏
A二次医療圏
A二次医療圏
A二次医療圏
A二次医療圏
A二次医療圏
B二次医療圏
B二次医療圏
B二次医療圏
B二次医療圏
B二次医療圏
B二次医療圏
B二次医療圏
C二次医療圏
C二次医療圏
C二次医療圏
C二次医療圏
C二次医療圏
C二次医療圏
C二次医療圏
地域連携
パスDB
診療情報
提供書DB
個人収集
情報DB
患者DB
参照権限DB
認証DB
診療情報DB
(リンクデータ)
ハードウェア及びネットワーク
42
地域協議会の取り組み内容の充実について(2)
地域協議会の取組内容の充実を実現する方法としては、各地域での医療情報連携で
既に活用されているサービスを応用する方法と、都道府県単位または近隣の都道府
県と協力してセンターを構築する方法とが考えられる。継続性の観点等から慎重に
検討し、地域の実情に応じた最適な方法を選定することが望ましい。
地域協議会の取組内容の充実を実現する方法の比較
方法
メリット
デメリット
都道府県単位ですで
に活用されているサー
ビス等を一括契約して
提供
・初期構築費用が小さい
・運用費用の見通しが立てやす
い
・サービスの提供が中止されるこ
とがある
・提供サービスの組み合わせや
拡張のフレキシビリティが小さい
都道府県単位もしくは
近隣の都道府県と協
力して共通の医療情
報センターを新たに構
築しで運営
・都道府県が運営に関与する場
合、事業の継続性の心配がない
・提供サービスの組み合わせや
拡張のフレキシビリティが大きい
・初期構築費用が大きい
・運用費用の見通しが立てにくい
43
地域協議会の取り組み内容の充実について(3)
◆地域協議会の取り組み内容の充実に当たり、地域協議会においては当該サービス提
供に係る費用負担のルール作成、管内で共通の個人情報保護ルールの作成が必要で
ある。
地域協議会の取り組み内容の充実における課題
費用負担ルールの策定
初期費用が大きく、負担の仕組みを作る必要がある。運用を継続させられるよ
うに、運用費用の負担の在り方を定める必要がある。
共通の個人情報保護ルールの作成
連携を行う複数の機関でそれぞれ異なる個人情報保護ルールが存在するた
め、それぞれのルールがバラバラであるケースでは連携のためのルール作り
を徹底させる必要がある。
44
地域協議会におけるハブ機能の検討について(1)
連携のハブ機能を具体的に検討していく事が望ましい。検討内容としては、「連携医療機
関の患者IDの紐付け及び地域内統一IDの発行・管理」、「職員認証・電子署名機能」、
「参照権限管理機能」等が挙げられるが、IDの発行・管理の責務は非常に重く、具体的な
取り扱いに関しては慎重な検討が必要である。
(イメージ)
連携のハブ機能として
提供する基本機能
地域医療連携の際の
基本機能を提供
↓
連携するデータは、
各医療機関で分散して管理
45
地域協議会におけるハブ機能の検討について(2)
二次医療圏における場合と同様に、他の病院と新たに患者情報の連携をする場合には、両病院で利
用している既存の患者ID(診察券番号など)を紐付けて活用することとなるが、都道府県内で一意の患
者IDを発行することが、効率的な連携を行う観点から重要である。
その際、他都道府県等のIDと重複をきたすことがないような検討(例えば、一意の患者IDの定位置へ
の都道府県番号や二次医療圏記号の付与の検討)を進めていくことが求められる。
また、将来、社会保障・税に関わる番号制度において検討されている共通番号 が付番された際に、共
通番号(または共通番号から発生した番号)を追加できる(置換できる)よう準備しておく必要がある。
地域協議会の提供サービス
病院A
○山×彦さんの患者ID:
111111
病院B
○山×彦さんに、全国で
重複しない患者IDを付与・管理
(希望する個人のみを対象とする)
都道府県毎に
決まった番号
将来共通番号ができた際に、共通番
号を追加したり、置換できるようにす
ることが望ましい。
協議会が付与する
地域で一意の患者ID
13 A 00000001
○山×彦さんの患者ID:
222222
診療所C
○山×彦さんの患者ID:
333333
病院A
患者ID:111111
病院B
患者ID:222222
診療所C
患者ID:333333
他都道府県との番号の混同を防
ぐため、先頭に都道府県番号を付
与(この場合、「13県(東京都:JIS
X 0401に準拠の場合)」であること
を示す)。
都道府県内の二次
医療圏にそれぞれ
アルファベットを付与
し、地域で一意の患
者IDに組み込む
地域内で重複しない、
患者個人のID
(都道府県ごとに8桁
(一億人以内)で設定)
46
(参考)2010年1月「地域医療再生計画」への提言における
患者ID紐付けの考え方
2010年1月のIT戦略本部「医療評価委員会」による地域医療再生計画への提言
(情報連携主体による患者IDの紐付けの記述箇所)を抜粋
他の病院と新たに患者情報の連携をする場合、両病院で利用している患者のID(診察券番号など)を紐付
けする必要がある。
その際、紐付けしたIDに対して、地域で患者に1つのIDを付番することが重要(患者の求めに応じて、患者
の地域内での診療情報をワンストップで提供することが可能となる)。
さらに、将来的に統一番号ができた際に統一番号を追加できる(置換できる)ようにしておくことが望ましい。
ドキュメントの所在情報を管理
(患者データがどこの病院にあ
りどんな情報があるか)
Aさん A病院 検査結果A
Aさん B病院 検査結果B
Aさん C病院 検査結果C
各施設で管理されている患者
IDを相互参照
患者ID簿
レジストリ
0001 Aさん 001 002 003
地域で一意のID
【参考】医療情報ネットワークの
国際標準
XDS (Cross-Enterprise Document Sharing)
は、施設間で共有する医療ドキュメントを、互い
の施設から参照可能なリポジトリに格納し、各
ドキュメントのありか情報をレジストリに登録。
施設間でドキュメントの交換が必要になった際
に、該当するドキュメントをレジストリを検索す
ることで、格納されているリポジトリから取り出
し参照できる
PIX (Patient Identifier Cross-referencing)
/PDQ(Patient Demographics Query)は、患
者の識別のための仕組みで、各施設で管理さ
れている患者IDと同時に地域で一意なIDを発
行管理する仕組。
管理工学研究所HPより一部改変
http://www.kthree.co.jp/products/xds/renkei1.html
①登録
①登録
①登録
②検索
001 Aさん
検査結果A
A病院
公開用
リポジトリ
003 Aさん
検査結果C
002 Aさん
検査結果B
公開用
リポジトリ
B病院
レジストリには将来
統一番号ができた際
に追加できるように
しておくことが望まし
い
C病院
公開用
リポジトリ
③取得
利用者
47
地域協議会におけるハブ機能の検討について(3)
共通的な機能として、例えば患者の同意に合わせて参照権限を設定できる機能や、
シングルサインオンのような利便性の向上のための機能を検討することが望ましい。
シングルサインオン
地域協議会の
提供するサービス
診療情報提供書
個人収集情報
地域連携パス
例
参照権限管理
地域協議会の
提供するサービス
A病院
患者による
診療情報の
共有の同意
(同意書等)
シングルサインオン
地域協議会の提供するサービスにアクセ
スする際、一度認証を行えば許可されて
いるすべての範囲の機能が利用可能に。
この例では、一度の認証で許可されてい
る「地域連携パス」、「診療情報提供
書」へのアクセスが可能になるが、アク
セス権限のない「個人情報収集」へはア
クセスできない。
参照権限管理
病院
例えば、ある患者自らの診療情報をA病
院で登録したが、情報の共有範囲として
B病院を認め、C病院を認めない場合、
B病院への参照権限の付与、C病院の参
照を禁止する管理を行う。
B病院
C病院
認証
48
地域協議会におけるデータ保管機能の検討について
地域協議会が今後提供を検討する機能として、上述した連携のハブ機能の提供に加えて、診療情報
提供書等のデータを各医療機関等に代わって保管するサービスが考えられる。
大規模データを取り扱う場合、情報流出等の事故の発生リスクがあり、予め情報事故の際の責任範囲
等に係るルールの検討が必要とされる。
また、既存のサービスを利用して当該サービスを提供する場合、サービスを提供する業者の変更等を
行った場合でも、蓄積された情報を引き続き支障なく利用できるような機能を契約前に検討し、契約内
容として盛り込む事が必要である。
連携対象のデータを保管し、連携機関が参照す
ることを可能にすることで、
・医療機関のデータ管理負担が軽減される
・24時間365日のデータアクセスが可能に
地域連携パス、診療情報提供書、
場合により個人医療健康情報管
理情報を、地域協議会で保管
(個々の医療機関に対する電子カ
ルテの情報の保存まで含むとは限
らない)。
49
都道府県を超えた医療情報連携の実現に向けて(1)
地域協議会は、一義的には管内の医療情報連携が効率的に行われるような取り組みを行うものである
が、将来的に都道府県を超えてシームレスな医療情報の連携がなされることに貢献することが望ましい。
都道府県を超えた連携の実現のためには、将来的に各地域協議会のネットワーク同士が連携を行うこ
とを想定して地域協議会のシステム設計を行うことが有効である。このシステム検討の際に地域協議会
が守るべき共通的なルール及び標準的なアーキテクチャの検討を国レベルで行い、各地域に示すことが
必要である。
(例)Canada Health Infoway の示す医療情報連携アーキテクチャ
(カナダにおいては、基本的なアーキテクチャを13存在する州が共有しており、技術的には各州のミドルウェアでリンクすることが可能である)
州AのEHR ソリューション
州BのEHR ソリューション
EHR インフォストラクチャ
EHR インフォストラクチャ
補助的データ、
サービス
データウェア
ハウス
EHRデータ、
サービス
レジストリ
データ、
サービス
補助的データ、
サービス
他の州と医療情報
アクセスレイヤで
接続が可能※
経時的記録サービス
薬剤師
医師の
オフィス
電子カルテ
医師
サービス提供者
EHR
ビューワ
医師
サービス提供者
EHRデータ、
サービス
レジストリ
データ、
サービス
経時的記録サービス
医療情報アクセスレイヤ
薬局
システム
データウェア
ハウス
医療情報アクセスレイヤ
患者
ポータル
住民
薬局
システム
薬剤師
医師の
オフィス
電子カルテ
医師
サービス提供者
EHR
ビューワ
医師
サービス提供者
患者
ポータル
住民
※患者IDが地域単位で振られている、州ごとにプライバシー法が違うなどの問題から、州を超えた連携は技術的には可能だがまだ実現できていない。
50
都道府県を超えた医療情報連携の実現に向けて(2)
標準的なアーキテクチャの検討に当たっては、将来的な拡張の妨げとならない事を留意しつ
つ、例えば厚生労働省標準規格やID-WSFのような標準的な規格や既に地域医療連携で
利用の進んでいる技術を活用することを検討することが必要である。
既存の地域医療連携での利用技術(道南Medikaの例)
IDの
紐付方法
概念図
Infowayの
投資分野の
機能の
実装可否
51
都道府県を超えた医療情報連携の実現に向けて(3)
◆地域協議会は、県内の情報連携の推進と並行して、他の都道府県の地域協議会と将来的に連携する
ことを可能にするため、県内の情報連携とは独立した情報連携リポジトリ/レジストリの設置を検討
することが有効である。
◆また、他の地域協議会と連携する情報の優先順位などの検討と合わせて、当該アーキテクチャの活
用を念頭に置くことが必要である。なお、都道府県を超えた連携の際においても重複を起こさない
ように付番された上述の患者IDは、当該アーキテクチャの一部となることが考えられる。
独立した都道府県同士の連携ネットワーク
(共通のルールが適用される)
標準インタフェース、標準フォーマット、
標準マスタに対応した、他県との連携の
ためのレジストリもしくはリポジトリ
(各県のネットワークにおける共通レジ
ストリもしくは共通リポジトリと同一の
場合も存在)
標準I/F
標準I/F
標準I/F
A県の地域協議会の提供するネットワーク
(他県のネットワークとは独立)
B県の地域協議会の
提供するネットワーク
C県の地域協議会の
提供するネットワーク
52
地域協議会の目指すセキュリティについて
地域協議会は、管内の医療機関間の連携が行われる際に、個人情報の保護のためのセキュリティ対策
に十分な配慮が行われるよう、各医療機関等に対して情報提供等を行うことが必要である。重視すべ
き主なセキュリティ対策として、現状では、なりすまし防止のための職員認証、改ざん防止のための電子
署名、盗聴防止のための暗号化、情報流出事故の際のトレーサビリティ確保等のための監査証跡の保
存等が挙げられる。
ITを活用した地域医療連携の持続的・安定的な運営の観点から、費用対効果の高いセキュリティ対策
をとることが重要である。例えば、高コストな技術的対策のみに拘るのではなく、運用面での対策を組み
合わせることにより、適正な費用の範囲内で万全なセキュリティ対策を講じることを検討することが重要
である。この観点も含め、セキュリティ対策として必要な機能を検討する必要がある(例えば、監査証跡、
利用者認証、電子署名等)。なお、利用者認証や電子署名には、HPKI(保健医療福祉分野公開鍵基
盤)の利用が有効であるとの意見がタスクフォースで示された。将来的には、HPKI等の医療者に対する
個人認証の仕組みが安価に提供される体制が整備されることが望ましい。
53
(参考)地域協議会を核とした地域連携ネットワークの実現の方向について
(平成22年度補正予算による地域医療再生基金の概要)
◆
地域医療再生計画は、各都道府県が地域の医療課題を抽出し、医療関係者、関
係団体等の意見を踏まえ自由な対策事業を展開するものであり、厚生労働省の
交付条件においても、個々の事業の実施方法等については規定せず、地域の自
主性を尊重しているところ。
◆ 他方、二次医療圏を超えた地域連携ネットワークの拡大の観点から、都道府県
において医療情報連携に係る地域協議会の設置は有意義と考えられる。このた
め、平成22年度補正予算による地域医療再生基金の活用に限らず、都道府県が
当該取組を行えるよう所要の予算措置等を検討することが有効である。
地域医療再生計画について(平成23年1月28日医政発0128第1号)(抜粋)
「円高・デフレ対応のための緊急経済対策」(平成22年10月8日閣議決定)において、「都道府県に設置されている
地域医療再生基金を拡充し、高度・専門医療や救命救急センターなど都道府県(三次医療圏)の広域的な医療提供体
制を整備拡充」することとした。
国は、この支援策として、平成22年度補正予算において、地域医療再生臨時特例交付金を確保し、都道府県に交
付することとしたものである。都道府県においては、高度・専門医療機関や救命救急センターの整備・拡充やこれらの
医療機関と連携する地域の医療機関の機能強化など都道府県単位(三次医療圏)の医療提供体制の課題を解決する
ための施策について定める計画(以下「地域医療再生計画」をいう。)を作成するとともに、地域医療再生臨時特例交
付金により地域医療再生基金を拡充し、これらの施策を実施することが望まれる。
54
(6)「遠隔医療の推進」に関する進捗状況について
55
「遠隔医療の推進」に係る平成22年度の関係各省の取組
工程表
平成22年度の関係各省の取組
遠隔医療実証事業の実施および継続・拡
大、エビデンスの収集
○「遠隔医療の推進方策に関する懇談会」(総務・厚生労働両大臣懇談会)の中間とり
まとめ(平成20年7月)を踏まえ、
①医師法第20条の解釈・通知の見直し
②インセンティブの在り方
等の検討に資するよう、総務省・厚生労働省で連携して、平成20年度より、遠隔医療
モデル事業を実施し、遠隔医療の有効性・安全性に関するデータ・エビデンスの収集に
取り組んでいるところ。
○厚生労働省においては、「厚生労働科学研究費補助金による遠隔医療に関する研究」
により、医療者・患者のニーズの定量的な把握、後ろ向き研究による遠隔医療の安全性、
前向き研究による遠隔診療の安全性・有効性に関するエビデンスについて収集している
ところ。なお、遠隔医療が認められ得るべき要件を明確化すべきとのこれまでの指摘に
対して、厚生労働省は、2011年3月に、「情報通信機器を用いた診療(いわゆる
「遠隔診療」)について」(平成9年12月24日付け健政発第1075号厚生省健康
政策局長通知)を改正し、遠隔診療が認められ得るべき対象は、別表に示されたものに
限定されていないことを明示した。
○総務省においては、今年度中を目途に、関係学会等とも連携して、これまでの遠隔医
療モデル事業等に係る一定の成果(データ・エビデンス)を取りまとめる予定。
懇談会等における遠隔医療推進方策の検
討
○総務大臣主催の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース・遠隔医
療等推進WG」において、遠隔医療などの普及方策について報告を取りまとめた(平成
22年5月)ところ。
処方せんの電磁的な交付の検討
○現在、健康・医療情報活用基盤の構築に向けた実証事業を3省(総務省、厚生労働省、
経済産業省)連携で実施しており、この中で、現行制度の範囲内で、処方箋の電子化に
ついても部分的に実証・検証しているところ。
56
(7)「死亡時画像診断(Ai)の推進」に関する
進捗状況について
57
「死亡時画像診断(Ai)の推進」に係る平成22年度の
厚生労働省の取組
死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会
本検討会においては、異状死や診療行為に関連した死亡の死因究明のため、死亡時画像診断(Ai;
Autopsy imaging)を活用する方法等について、幅広く検討を行う検討会。平成22年6月から、死亡時
画像診断に関する現状・科学的知見の整理や死亡時画像診断に関する今後の取組方策などについ
ての検討を行った。
死亡時画像診断の有用性(具体例)
○ 非外傷性死の場合には、出血性病変は、
ほぼ同定することができ、外傷性死の場
合には、致死的損傷を同定できる。とりわ
け、小児に限っては、死因究明ばかりでな
く、虐待事例を見逃さないという観点からも
有用性が高い。
○ 解剖の要否の判断及び解剖における死
因究明の精度の向上に寄与。
実施体制の整備
○ 死亡時画像診断の意義について、医療関係者及
び患者・家族を含む国民に広く周知し、国民的理解
を促進することが必要。
○ 死亡時画像診断は、医師、遺族等及び警察から
依頼されることが想定されるため、各地域において
実施できる体制を検討していくことが必要。
○ 医療機関で死亡時画像診断を実施する場合は、
読影に関して、専門的知見に基づき後方支援を行う
機関との連携体制を確保しておくことが必要。
○ 死亡時画像診断においては、特殊な知識や画像
の撮影・読影技術等が求められることから、専門家
の育成が必要。
平成23年度は、死因究明体制の充実に向けた支援にむけ厚生労働省は以下の支援を実施する予定。
1.診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業
2.異状死死因究明支援事業
3.死亡時画像診断システム整備事業
4.死亡時画像読影技術等向上研修(新規)
58
医療情報化に関するタスクフォース報告書付属資料
レセプト情報等の活用による医療の効率化について
2011年5月
目次
(1)基本概念
(2)レセプト情報等の第三者提供のためのガイドラインの作成
(3)自治体・医療機関・保険者におけるレセプト情報等の活用の推進
基本概念
•
•
•
過去のレセプト電子化の取り組みによって、電子化されたレセプト情報等は厚生労働省や個々の医療機関、保険者内
で蓄積が進んでおり、当該データを医療の効率的な提供の推進等に活用することが求められているところ。
これを受けて、厚生労働省が収集したレセプト情報等の第三者への提供を行うため、厚生労働省に有識者会議を設立
し、第三者提供のためのガイドラインを作成することが重要である。
当該ガイドラインの作成のほか、レセプト情報等の利活用をより一層推進し、医療の効率化・医療の質の向上等を推進
する観点から、自治体、医療機関、保険者が自らのレセプト情報等を積極的に活用するための方向性を示すことが重
要である。
レセプト情報等の活用による医療の効率化
1.レセプト情報等の第三者提供のためのガイドラインの作成
提供体制の検討
提供形態の検討
主に研究機関・大学等に
おける、疫学研究等での
利活用。
データの取扱いに関する
ガイドラインの策定
厚生労働省設置の有識者会議にて議論
2.自治体・医療機関・保険者におけるレセプト情報等の活用の推進
利活用のあり方
先進的な事例の紹介
自治体・医療機関・保険
者における、医療の効率
化・医療の質の向上に資
する利活用。
利活用にあたっての留意
事項
医療情報化に関するタスクフォースにて議論
1
レセプト情報等の第三者提供のためのガイドラインの作成 ①
• レセプト情報・特定健診等情報データベースは、高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)
に基づいて厚生労働省が収集及び管理するレセプト情報及び特定健診等情報を格納している。
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料2-1より抜粋
レセプト情報・特定健診等情報の収集経路
匿名化処理
用途に応じて集計・
加工等を行った上で活用
※電子データにより請求されるものを収集
入
口
匿名化処理
保
者
出口
審査支払機関
険
医 療 機 関
レセプト情報
レセプト情報
サーバ
※平成21年4月診療分のレセプトから収集
(平成22年6月診療分まで収集済み)
国の保有する
データベース
匿名化処理
保
代行機関
険
(支払基金、
都道府県連合会等)
者
特定健診等
実施機関
特定健診等情報
※制度開始初年度である平成20年度実績分から収集
(平成20年度実績分について収集済み。)
社会保険
診療報酬
支払基金
出
口
入
口
特定健診等
情報
サーバ
3
2
レセプト情報等の第三者提供のためのガイドラインの作成 ②
•
レセプト情報等の第三者提供のためのガイドラインは、有識者会議による審査等を行うことにより、レセプト情報・特定
健診等情報データベースの情報を、高齢者医療確保法に基づく医療費適正化計画の作成のための調査及び分析等
の本来目的以外の利用である、医療サービスの質の向上等を目指した正確なエビデンスに基づく施策の推進や学術
研究の発展に資する目的で行う分析・研究に利用することを認めるものである。
• 当該ガイドラインは、2010年10月から検討が始まり、レセプト情報等の提供に関する基本原則、提供の手続き、提供
対象範囲、提供に際しての審査基準等を盛り込んで、2011年3月31日に策定された。
(P5~7を参照)
厚生労働省
レセプト情報・特定健診等
情報データベース
匿名化処理
レセプト情報・特定健診情報等
レセプト情報等の提供に関する有識者会議
○レセプト情報等の取扱いガイドライン
・レセプト情報等の提供に関する基本原則
・提供の手続き
・提供対象範囲
・提供に際しての審査基準
○平成23年度から24年度は試行期間として運用
○試行期間における実績等を勘案した上で、データ提供の枠組みについて、
手数料や罰則等の法的整備
第三者提供
等について検討
3
(参考)レセプト情報等の第三者提供のためのガイドラインの作成 ①
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料2-1より抜粋
レセプト情報・特定健診等情報データベースの利用
(平成20年検討会報告を踏まえた仕組み)
高齢者医療確保法に基づく利用
厚生労働省保険局総務課
医療費適正化対策推進室
都道府県
医療費適正化計画の作成等
のための調査及び分析等
国による分析等
結果の公表
国が公表する結果
のほか、都道府県
が、国に対し、医療
費適正化計画の評
価等に必要な情報
の提供を要請し、入
手
左記の本来目的以外の利用
厚生労働省内の他部局、他課室
関係省庁・自治体
医療サービスの質の向上等を
目指した正確なエビデンスに
基づく施策の推進
○感染症などの疾患の実態把握に
基づく施策
○介護給付費と医療費の実態把握に
基づく施策
等
左記以外の主体
(研究機関等)
○左記のような施策に
有益な分析・研究
○学術研究の発展に
資する目的で行う
分析・研究
※所掌事務の遂行に必要な範囲内
であることが前提
有識者会議における審査
※データ利用の目的や必要性等について審査
※データ利用の目的として「公益性の確保」が必要
都道府県による分
析等
データ提供の
可否について
大臣に助言
大臣決定
5
4
(参考)レセプト情報等の第三者提供のためのガイドラインの作成 ②
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料2-1より抜粋
レセプト情報・特定健診等情報データベースの経緯
1.平成18年医療制度改革
→高齢者の医療の確保に関する法律・成立 (平成20年4月施行)
→医療費増加の構造的要因に着目し、中長期的な観点から医療費適正化を進める
医療費適正化計画の枠組みの導入
→医療費適正化計画の作成、実施及び評価に資するため、厚生労働省が行う調査及び
分析等に用いるデータベースの構築へ
※保険者は、厚生労働省に対し、必要な情報を提供
2.「医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等の活用に関する検討会」
○平成19年7月
検討開始
→収集するデータの範囲、データの利活用の方法等について検討
○平成20年2月
報告のとりまとめ(情報提供の基本的枠組み)
(検討会報告を踏まえ、データ収集のための体制の構築)
3.「レセプト情報等の提供に関する有識者会議
○平成22年10月~
検討開始
→第三者提供のためのガイドラインについて、検討
ガイドライン等の作成のため1月に模擬審査を行い、有識者委員への提供を決定
平成23年度より試行期間を開始(平成24年度まで)
5
(参考)レセプト情報等の第三者提供のためのガイドラインの作成 ③
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料2-1より抜粋
提供にあたってのスケジュール
○ 統計法の匿名データ提供における試行的提供期間(平成16年~20年の4年間)も勘
案し、以下のようなスケジュールとして、23~24年度の実施状況を踏まえ、将来的に法
的整備を含めた制度作りを検討する。
○ したがって、現在御議論いただいているガイドラインのポイントについては、あくまで
試行期間におけるもの、と位置づける。
平成23年4月
平成24年4月
平成25年4月
試行期間におけるガイドラインによる運用
新たな枠組みでの
データ提供
執行面における課題を整理・検討
法的整備を含
めた見直し
○手数料、罰則等の法律規定
○事務局体制の整備
○提供対象範囲の再検討 など。
6
自治体・医療機関・保険者におけるレセプト情報等の活用の推進
• 自治体・医療機関・保険者は、それぞれ自らのレセプト情報等を保有しており、医療の効率化・医療の
質の向上等を実現するため、当該情報を積極的に活用することが重要である。
●各種データの利活用
厚生労働省が所持するデータ
自治体による利用
病院情報・医療資源の見える化
医療機関の設備状況や治療行為等といった
情報を客観的データで見える化し、医療資源
の最適配分等を行うことで、医療の効率化に
繋げることができる。
保険者が
所持するデータ
医療機関による利用
病院経営の効率化・医療の質の向上
地域の病院の平均的パフォーマンスや診療プロセスと、
自病院のそれらとの比較により、自病院の長所・短所を
把握。結果として、病院経営の効率化・医療の質の向
上に繋げることができる。
地域の医師会等が
所持するデータ
保険者による利用
保険者機能の発揮
自ら保有するレセプト情報等を活用し、レセプト点検を
行ったり、特定健診等情報と併せて活用することによ
り、保険事業の質の向上に繋げることができる。
7
自治体による利活用のあり方 ①病院情報・医療資源の見える化
•
自治体においては、管内の医療資源の最適配分の検討等の公的な目的のために、レセプト情報等を活用することが有
効である。
• その際に、十分な匿名化がなされない活用の場合については、必要に応じて、患者の同意を得る必要がある。また、急
性期病院を退院した患者の受け入れ可能なリハビリ病院や介護連携施設の所在情報など、医療・介護連携のための基
礎情報の整備を自治体が行うことが有効である。
(P17~19を参照)
例:自治体による医療資源分布の検討
患者居住地別にみた入院先所在地の状況
20%
40%
60%
80%
100%
患者居住地0%
A
A
A地域
B
B
B地域
C
C
C地域
D地域
E
D
E
E地域
入院先所在地
大半の患者はB地域か
D地域の施設に入院している
A
B
C
D
D
E
患者動態に応じた
医療圏の設定が可能
8
自治体による利活用のあり方 ②都道府県の医療計画作成への活用
•
また、個人情報の取扱いに充分配慮することを前提に、例えば、自治体が保有するレセプト情報等と地図情報
をリンクさせて見える化すること等により、各市町村における入院患者が、どの医療圏の医療機関に入院して
いるかを把握することにより、地域における医療の需給状況の分析が可能となるとともに、効率的な医療を提
供するための医療資源の分布及び量の決定(医療圏の再設定及びそれに伴う基準病床数への反映、地域に
おける医療・介護連携体制の効果的な構築)が可能となる。
• 都道府県が、上記の分析を活用し、効率的な医療サービス提供の観点から、自らの医療圏内で適切な医療提
供体制を確保するためのデータに基づく定量性のある医療計画を作成することが重要である。
(P17~19を参照)
平成25年度からの医療計画
(5年毎に都道府県が作成)
A
A
B
C
レセプト情報等
地域における
医療の需給状況
E
B
C
D
E
D
医療圏の再設定
地域医療の
現状の見える化
都道府県
地域における
医療・介護連携体制
の効果的な構築
地図情報
基準病床数への反映
9
医療機関による利活用のあり方
•
医療機関において、プロセス・ベンチマーク(各診療プロセスを医療機関相互で比較することで診療プロセスの改善を図る試
み)などで、経営効率化に繋げるための取り組みを行うことが重要である。
• その際、医療機関が、医療の質の向上に向けた医療提供状況や経営状況に関する自らの位置付けを把握できるとさらに有
効である。このため、厚生労働省などが医療機関の全国平均のデータ等を提供するとともに、研究者の分析事例を広く共有
することが有効である。
(P26~28を参照)
B病院は他施設と比べて
画像診断が多いが、
薬は少なくすんでいる
C病院は他施設と比べて
薬が多いが、
検査は少なくすんでいる
他病院データ・全国平均との比較などの分析を
通じ、自院の利点・欠点を客観的にとらえ直す。
医療の標準化・効率化
10
保険者による利活用のあり方 ①
• 保険者の財政状況は厳しさを増しており、対応策が求められているところ。
• 保険者は、被保険者及び被扶養者の予防医療の観点で実施している保健事業を効率的に実施するため、保険者自らが
保有しているレセプト情報等を活用することが有効である。
(P20~22を参照)
健保組合、協会けんぽ、国民健康保険の主な支出
保険給付
厚生労働省・保険者保有
データ等の医療情報の有効活用
(例:医療費増加要因を探る
レセプト分析等)
※次ページ以降参照
拠出金の支払い
(前期高齢者納付金・後期高齢者支援金)
効率的な保健事業の実施
後期高齢者医療広域連合及び
国民健康保険
被保険者等への積極関与により、
予防医療の強化・疾病の悪化抑制を実施
被保険者等への積極関与により、他の保険者との
協力を通じた予防医療の強化・疾病の悪化抑制を実施
11
保険者による利活用のあり方 ②(保険事業の効率化)
•
具体的には、保険者は、高齢者の医療の確保に関する法律において義務づけられている特定検診・特定保健指導以
外に、保健事業として独自の検診などを実施しているが、適切な保健事業の観点から、組合員の疾病、医療サービス
受診状況等を把握することが重要である。
(P20~22を参照)
保険者で行っている主な取組みの例
「高齢者医療確保法」上、
義務となっている事業
特定健診
特定保健指導
健康保険組合独自の取組み
循環器検診
消化器検診
巡回乳がん検診
インフルエンザ
予防接種
大腸がん検診
前立腺がん検診
主婦検診
その他
12
保険者による利活用のあり方 ③(保険事業の効率化)
• 例えば、レセプトデータの分析により、「予防」「早期発見」「早期治療」など「介入可能な疾患」を見える化が可能になり、
介入可能な疾患を中心に効率的な対策を打つことで、保険給付費低減にも寄与する保健事業の実施が可能になる。
早期発見の可能性あり
医療費
介入可能な疾患
予防や早期治療の可能性あり
・・・・
その他の急性上気道
感染症・
症状、徴候及び
異常臨床所見・
・
その他の心疾患
脳梗塞
脊椎障害
関節症
白血病
骨折
虚血性心疾患
その他の眼及び
付属器の疾患
その他の内分泌、
栄養及び代謝疾患
腎不全
良性新生物及び
その他の新生物
その他の消化器系の
疾患
糖尿病
その他の悪性新生物
高血圧性疾患
・上位15疾患で、医療費の50%を占有。また、その中には、介入が可能な疾患と、不可能な疾患がある
出典:株式会社メディヴァ
13
保険者による利活用のあり方 ④(健康データ管理サービス)
• いくつかの保険者では、被保険者及び被扶養者の健診データや生活習慣データを、適切なデータ管理をした上で、被保
険者及び被扶養者・保険者・連携機関(医療機関など)の三者がインターネット上で共有可能なグループウェアを導入し
ているが、被保険者及び被扶養者の意識啓発やより有効な保健指導等の実施の観点から、被保険者及び被扶養者に
健診データ等を提供することが重要である。
(P23~25を参照)
(*) 階層化されたデータ閲覧権限付与機能など
協会けんぽ長野支部 「いきいき健康マイページ」の例
出典:協会けんぽ長野支部 いきいき健康マイページ http://kenkou-page.jp/kyoukainagano/
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保険者による利活用のあり方 ⑤(被保険者及び被扶養者に対する積極的な関与)
• また、予防や早期治療の可能性がある糖尿病等の疾患については、保険者が保有するデータ及び分析結果を併せて使
用しつつ、医療機関と適切に連携することで、被保険者および被扶養者に対する疾病の重篤化防止・罹患防止に積極的
に関与することが可能になる。
• さらに、保険者が、「どこでもMY病院」の運営主体として被保険者および被扶養者のモニタリングを行うことにより、保健
指導にとどまらない積極的な関与を行うことが可能になる。
保険者
糖尿病の例
これまでの医療情報連携
レセプト情報
特定健康診査・特定保健指導情報
診療所
診療所
診療所
レセプトデータに基づく
状況把握・受診勧奨
健診データ
あり
あり
病院
診療データの共有
③患者の継続受診状
況、コントロール状況
の把握
再治療開始
なし
• とくに糖尿病の場合、治療の継続が、病状の重篤化防
止・医療費抑制に有効(自己判断で治療中断し、その
後再発した患者の方が結局医療費がかかる)。
• 診療データだけでは、治療に来なくなった患者が連携
地域外で治療継続しているのか、自己判断で中断して
いるかの判別がつかない。
なし
①未病者における
リスク者の把握
②未病者における高リ
スク者の新規受診勧奨
受診開始
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(参考)自治体による利活用のあり方 ①
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-5より抜粋
16
(参考)自治体による利活用のあり方 ②
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-5より抜粋
17
(参考)自治体による利活用のあり方 ③
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-5より抜粋
18
(参考)保険者による利活用のあり方 ①
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-6より抜粋
19
(参考)保険者による利活用のあり方 ②
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-6より抜粋
20
(参考)保険者による利活用のあり方 ③
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-6より抜粋
21
(参考)保険者による利活用のあり方 ④
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-7より抜粋
22
(参考)保険者による利活用のあり方 ⑤
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-7より抜粋
23
(参考)保険者による利活用のあり方 ⑥
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-7より抜粋
24
(参考)医療機関による利活用のあり方 ①
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-8より抜粋
25
(参考)医療機関による利活用のあり方 ②
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-8より抜粋
26
(参考)医療機関による利活用のあり方 ③
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料3-8より抜粋
27
医療情報化に関するタスクフォース報告書付属資料
医療情報データベースの活用による
医薬品等安全対策の推進について
2011年5月
目次
(1)基本概念
(2)医療情報データベース基盤整備事業の概要
基本概念
医薬品等の安全対策の推進の観点から、医療情報データベースの構築・運用を通じた電子カルテ情報等の活用が重要で
ある。このため、医療情報データベース基盤整備事業を推進する。
医療情報データベース基盤整備事業計画
全国5カ所に1,000万人規模のデータ収集のための医療情報DBを構築
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に情報分析システムを構築
医療情報DBは、電子カルテデータ・オーダリング処方データ・検査値のデータ等
拠点病院内に既存の電子データを匿名化した上で格納
医薬品の安全対策における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会にて議論
拠点病院
研究者・製薬企業
協力
医薬品医療機器総合機構
副作用情報等の安全性情報の収
集及び分析
迅速な
安全対策
データ
の
調査
分析
※ 拠点を使った調査は、
製薬企業も活用可能
データベース
拠点病院
データ
ベース
データベース構築と活用推進
レセプト
電子カルテ
データ
データ
オーダリング
データ
期待される成果:医薬品等の迅速で的確な安全対策の実施
①ある副作用の発生割合の比較
②副作用であるのか、病気自体の症状なのかの判別
③安全対策の措置が副作用低減に本当に効果があったのかの検証
全国5カ所
ネットワークの形成
検査データ
拠点病院
データ
ベース
拠点病院
データ
ベース
拠点病院
データ
ベース
1
医療情報データベース基盤整備事業の概要
• 医療情報データベース基盤整備事業は、全国の大学病院等5か所に1,000万人規模のデータを収集するため
の医療情報データベースを構築するとともに、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に情報分析シス
テムを構築し、医薬品等の安全対策を推進する事業である。
• 全国5カ所に置く予定のデータベースは、電子カルテデータ、オーダリング処方データ、検査値のデータといっ
た拠点病院内に既存の電子データを匿名化した上で格納する。
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料2-2より抜粋
2
(参考)医療情報データベース基盤整備事業の概要①
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料2-2より抜粋
3
(参考)医療情報データベース基盤整備事業の概要②
※第7回医療情報化に関するタスクフォース資料2-2より抜粋
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