...

不動産取引の安全性向上とオンライン申請率50%達成に向けて 不動産

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

不動産取引の安全性向上とオンライン申請率50%達成に向けて 不動産
平成18(2006)年10月3日
第3回 登記識別情報制度研究会 提出
不動産取引の安全性向上とオンライン申請率50%達成に向けて
不動産登記法の登記識別情報制度の見直しと改正提言
司法書士
佐 藤
純 通
9月25日付け文書で、河野前副大臣より、現行の登記識別情報制度を、多少の手直しを加え
ても存続させるべきか、あるいは、登記識別情報を廃止し、新たなシステムを構築するべきかの
いずれを取るべきかという論点を最優先に議論し、なるべく早期に結論を出していただきたい旨
のご要請がありましたので、議論の論点整理の参考に供するために、実際に実務の現場で日常的
に登記識別情報を利用している立場から、また、神奈川県の横須賀・平塚両登記所で行われた、
法務副大臣の「オンライン利用促進プロジェクト」で実証実験に携わった実務家の立場から意見
を申し述べさせていただきます。
なお、本研究会につきましては,所属団体等の意見ではなく,委員の個人としての意見を
表明していただきたい旨の事前のご連絡がありましたので、本意見は私個人の実体験による評
価に基づく意見として提案するものであり、必ずしも司法書士会内部で十分に議論をしたうえで
取りまとめた意見ではないことを付言いたします。
1.登記識別情報制度の廃止をすべきである。
(1)現行の登記識別情報制度の評価
ア
登記所の視点からの評価
登記識別情報制度は、登記所にとっては、極めて有用な仕組みであると評価できる。
第一に、登記識別情報が正しいか否かは登記所のみが判定できるものであるため、
「登記所における登記官の本人確認」の仕組みとして採用した単純明瞭な12桁の英
数字による暗証番号制度は、コンピュータで瞬時に正誤が判定できる確実な制度であ
り、オンライン申請における登記申請を受領する登記所側からの「形式的な本人確認
制度」としては、登記事務処理の合理化・迅速化の観点からは、極めて効果的な仕組
みである。
第二に、書面による登記済証では精巧な偽造や変造という事案が生じ、登記官がそ
れを見抜くことが出来ず、そのため登記官の過誤による無効な登記を実行した結果、
真実の権利者あるいは取引の相手方や担保権者に損害を生じさせ国家賠償請求が起
こされるという重大な難点があったが、登記識別情報は単なる12桁の英数字による
暗証番号という情報そのものであることから、偽造や変造という問題は性質上あり得
ず、その問題の発生自体を避けられるという点で、登記事務処理の安全性の観点から
は、極めて有用な仕組みである。
1
イ
不動産取引当事者の視点からの評価
売買取引の買主や金融担保権者が、登記識別情報によって、売主や担保提供者の本
人確認をすることはできないし、取引決済時における同時履行機能も有しないもので
ある。
上記第一の、登記識別情報の有効性は登記所しか知らない情報であるという仕組み
は、登記識別情報の有効性請求制度があるも、それを確認をするためには、登記義務
者である売主や担保提供者から登記識別情報自体の情報開示とその請求のための代
理委任状ならびに印鑑証明書が必要となる。しかし、契約を締結する時に、登記名義
人が、取引決済前に情報開示と必要書類を渡すことは、リスクが大きすぎてほとんど
提供しないため、契約締結時における本人確認手段としては、登記識別情報はおよそ
全く機能しないものである。
なおかつ、不動産取引において、登記は売買等に基く物権変動の対抗要件を具備す
るための重要な手続であるので、取引決済が安全かつ確実に行われるためには、不動
産取引の最終履行段階で登記の手続要件が完全に具備していることの確認と同時引
き換え給付として資金授受が行われるのが通常である。したがって、取引決済時にお
いては、添付情報である登記識別情報が有効であり登記申請に必要な手続要件が具備
していることを確認する必要があるが、取引の現場において登記識別情報の有効性を
迅速に確認することができない仕組みとなっておいるため、結局、取引決済時におけ
る同時履行機能を果たすことはできない。
上記第二の、登記識別情報は情報そのものであるので偽造や変造は性質上あり得な
いということは、別の観点からいうならば、「本物が複数出現する」ということでも
あり、当事者側から見るとより危険性が増すといえる。12桁の英数字による暗証番
号は、正しいか間違っているかだけであり、偽造や変造という問題は確かに生じない
が、一旦外部に出た場合には、それが正当な行為であると不正な漏出であると問わず、
正しい情報が幾つでも不特定多数に伝播する可能性があり、所持者には漏洩の事実す
ら簡単には知りえない性質であり、登記済証の盗難よりも危険性は高かまる。
*
法務省では、
「登記済証自体を偽造することにより不正な登記申請がされるという事件も発生し
ており,最近のカラー複写・印刷技術の向上から,これらの偽造事件の未然防止が非常に困難な状
況になりつつあります。登記識別情報は,それ自体を偽造することは,事実上不可能であり,登記
済証の制度よりも,安全性が高まると考えています」(法務省 HP より引用)
また、通常、アクセス認証のための暗証番号は、自分で暗証番号を変更しセキュテ
ィ管理ができるが、登記識別情報は変更が出来ない仕組みのため、自己による情報コ
ントロールができずセキュティ管理上は極めて危険な仕組みである。
したがって、当事者の視点からは、登記識別情報の制度に有用性があると評価する
ことはできない。
ウ
オンライン申請の視点からの評価
a オンライン申請における、登記識別情報の提供・受領のシステム
登記識別情報の提供や受領のためには、当事者自身がパソコンによるファイル操作
2
を求められるので、事実上利用が困難であるととともに、資格者代理人が代理するこ
とができない設計となっているため、実際の実務では利用できないこととなっている。
現状の仕組みでは、登記義務者として登記識別情報の提供をする場合も、登記権利
者として登記識別情報を受領する場合にも、以下のように、当事者による登記識別情
報の関連ファイル作成操作と電子署名が必要となるため、一定の技能を求められ、神
奈川県における実証実験プロジェクトでも、結局は、登記識別情報の授受が必要な登
記申請は皆無に等しい状況であった。
・登記権利者
(売買の買主や担保設定金融機関)
登記申請前に、登記識別情報の取得の準備として作成しなければならないもの
①「暗号化鍵情報の作成」(交付される登記識別情報の暗号化と復号化に利用する鍵ペア作成)
②「登記識別情報通知用特定ファイル」 (登記権利者に登記識別情報を通知する際に暗号化する
ため提出する公開鍵に権利者の電子署名を施したファイル)
③「取得者特定ファイル」
(登記識別情報取得申請の際、権利者であることの特定のため作成する
ファイル)
・登記義務者
(売買の売主や担保抹消金融機関)
登記申請にあたり、登記識別情報の提供のため作成しなければならないもの
①「登記識別情報提供様式ファイル」(登記義務者の登記識別情報を登記所の公開鍵で暗号化し、
義務者の電子署名を施したファイル)
b
オンラインによる登記識別情報の有効性請求システム
現状の仕組みでは、一名義人ごとかつ一不動産ごとに有効性請求の申請を繰り返さ
なければならず、大変な手間と労力がかかるとともに、検証システムは自動化されて
おらず、登記官のチェックを介在するため回答が返って来るまでには多大な時間がか
かるシステムであり、およそ取引現場から利用するということは不可能に近い。
* この難点は、オンライン申請の施行前の準備段階で既に判明しており、その方式ではおよそ実務で
は利用できないということを進言していたものであるが、残念ながら改修はされず実施され、現在に
いたっている。
c 書面申請における登記識別情報の実務上の問題点
現状では、法制度上、システム上、さらに運用上の様々な障害により、およそオン
ライン申請は利用できる状況にはなく、書面申請によるものが殆どであり、登記所窓
口において、紙書面にシールを貼ったものを渡している。登記名義人はこのシールを
剥さずに保管するのが通常であり、実際には本人でもその情報内容を認識しているわ
けではない。取引等で必要になったときに司法書士がシールを剥して始めて判明する
にすぎない。すなわち、「本人のみ知りうる情報」とは、観念的なものにすぎず、そ
もそも知覚情報としては機能しておらず、登記識別情報通知書という「書面を保持す
る」という物理的な保管に依存する仕組みになっているのが実態である。
オンライン申請に用いる仕組みとして構想したにも関わらず、実際には制度設計の
失敗により書面申請にしか利用できず、書面自体が登記識別情報となっている。
以上のように、登記名義人には、登記識別情報通知書の書面自体を厳重に保管して
おかなければならないという責任を課せられ、盗難や紛失による不利益も、すべて責
3
任は所持者の管理責任に帰せられることになる。オンライン申請のシステムの設計
上・運用上のどちらからも、申請人側には、電子政府の目的である利便性の向上、国
民の負担軽減には全く寄与するところがなく、有用性は認めがたく登記制度全体から
みても極めて低い評価しかできない。
エ
登記識別情報の総合的評価
登記識別情報は、国(登記所)側から見ると、形式審査権しかない登記官にとって
は、正誤確認だけで済み、真偽の確認が不要であるため、極めて簡単な本人確認制度
であるので、コンピュータでの自動処理を予定したオンライン申請を前提とした場合
には、登記事務処理の迅速性・合理性に適うとともに、偽造変造があり得ない安全性
の高い有用な制度であるともいえる。
しかし、取引当事者側から見ると、取引の事前の情報開示は期待できないため正誤
の確認は出来なく、取引の相手側からの本人確認制度としては機能しない。また、取
引決済時においても取引の現場から迅速に有効性確認を行うことは出来ないため同
時履行機能も果たすことができない。
登記識別情報の所持者には、情報が漏洩しないように厳重な管理責任を課すもので
ある。個人のエンドユーザーはともかく、大量に取り扱う金融機関や不動産会社等に
おいては、管理システム、セキュリティシステムの構築、社員の教育等々に多大なコ
ストの負担増大を招くため経済活動における負担過重になる。さらに、迅速かつ安心
して取引をするためには全く寄与するところがなく、むしろ障害とすらなっており不
動産取引の迅速性・安全性に悖る制度である。
総合的な観点から厳しく評価するならば、国(登記所)側には、有用な制度である
と評価できるも、結局、国民側に厳重な保管責任を課し、本人確認における過誤の危
険負担を登記所側から当事者側に転嫁した制度であり、国民側にはデメリットばかり
が多く何らのメリットもなく、登記制度の目的である取引の安全の向上にはむしろ障
害となる失敗した制度であると率直に評価せざるを得ない。
(2)登記識別情報制度の本人確認の限界「成りすまし防止機能」は全くない
登記識別情報という暗証番号は、登記所における登記官の形式的審査の対象として
は、便利な情報ではあるが、無権利者がそれを悪用した登記申請がなされた場合には、
全く持って無力である。
登記官には、形式審査権しかないので申請情報、添付情報において疑うに足りる相
当な理由がない限り、申請人の申請権限の有無の調査はできない(法24条)。現行
法上、第一次的な登記官による本人確認として位置づけられている登記識別情報は、
所持者が本人であるという蓋然性が高いという推定効に依拠した制度であり、また、
それ以上のなにものでもない。したがって、悪意の第三者による成りすまし防止には
全くもってチェック機能は働くことはないものであり、「登記所における登記官の本
人確認」の制度といっても、そこには自ずと限界があり、登記制度の真実性向上には
4
寄与しない。
このような、成りすましによる登記が出現しても、国側からみれば、正しい登記識
別情報による登記申請に他ならず、形式審査権しかない登記官に他に問題がない限り
正誤の判定における過誤は生ぜず、結果として国側には過失責任が生じることがなく
免責されるものである。いわば登記識別情報は国側の国家賠償回避機能を持つ免責制
度に他ならない。
(3)登記識別情報は、登記所における事務処理の機能不全を招来し、電子政府構想に
逆行することになる
オンライン申請指定がすべての登記所において完了し、登記識別情報の通知が常態と
なると、登記申請前の登記識別情報有効性請求事件が、各登記所において大量に生じる
ことになり、現場窓口の事務停滞を招くことは必至である。
このことは、仮に、登記識別情報制度を存続して、現状での決済機能不全を回避する
ための諸々の方策を取り入れた場合には、さらに事務停滞が加速することとなる。
たとえば、資格者代理人に職責上の有効性検証権限を付与した場合、資格者は職責上
積極的に有効性請求を行うこととなり、請求事務は大量に発生する。
また、取引決済前に登記識別情報の提供をしないで失効申出のないことの証明を発行
することができるようにする場合、当然に資格者は職責上積極的に登記申請事件ごとに
その事前に確認のためその証明を得るための請求することとなり、請求事務は大量に生
じることとなる。
登記所における窓口事務は、本来の登記申請の数よりも、それらの証明請求事務の方
が遥かに凌駕し、登記所の窓口事務の増大を招くことは避けらず、登記所における事務
処理に大量の人員を要することとなり、事務処理の効率化・合理化には逆行することと
なる事態を招来する。
これらが、すべてオンライン申請で行われるまでには相当な時間がかかり、仮にそう
なった場合にも、コンピュータシステムの負荷は膨大なものとなることが予測される。
登記申請の本体システムよりも付属システムの構築、運用コストが膨大になることにな
るのは必定である。
現行の法制度上の構築上、もともと選択肢の一つに過ぎなく、無くとも他の仕組みが
用意されている有用性の低い制度のために膨大な国家予算を注ぎ込むこととなり、行政
事務の効率化、合理化には程遠く、電子政府構想の狙いが本末転倒となる。
(4)結論として
「登記所しか有効性を確認できない暗証番号」という制度設計の誤りを率直に認め、
これ以上の、取引を阻害する要因の出現を防ぎ、不動産取引・金融取引社会の混乱を防
止するため、かつ、国民の税負担増に繋がるような事態を未然に防ぐためにも、登記識
別情報制度の早期の廃止のため、法改正に踏み切る英断が必要であると提言する。
(法改正までの経過期間の対応策は、別途に論じる必要がある。)
5
2.登記識別情報制度を廃止した場合の本人確認制度
(1) 事前通知制度を原則とし、補完形態として、資格者による本人確認制度ならび
に公証人による認証制度を利用する。
(登記識別情報制度を廃止しても、現行法を大幅に改正して新たな本人確認制度を構築
するのではなく、既に法律で定められている本人確認制度を積極的に活用するものであ
る。この点は、七戸委員のお考えに基本的に賛同するものである。
)
ア
本人申請の場合
登記識別情報を廃止すると本人申請を排除することにつながるとの意見もあるが、
それは必ずしも的確な指摘ではない。
本人申請で一番多い、相続による所有権移転や、新築建物の所有権保存登記、住所
移転や氏名変更の登記名義人表示変更登記は、初めから登記済証や登記識別情報の提
供は不要である手続きである。
また、登記識別情報の提供が必要な登記申請であっても、本人申請で行われるもの
は、第三者が登場せず、当事者双方だけで行われる親族間の贈与による所有権移転や
弁済後の担保権抹消登記等がほとんどで、金銭の授受を伴わない利害対立がない場合
である。その場合には、現行の事前通知(法23条①項)の方法で登記所が本人確認
をしても何ら支障はなく、登記申請が行うことができるので、登記識別情報を廃止し
ても本人申請を行う一般国民の権利を何ら妨げることにはならない。
イ
資格者が代理人として申請する場合
資格者が代理人となって申請する場合には、原則として本人確認情報(法23条④
項)を提供するものとする。
もともと、登記済証があっても司法書士はそれだけで本人確認をしているのではな
く、諸般の資料等の調査確認、事情聴取等により厳格に本人確認を行ってきている。
それは登記識別情報になっても代わることはないので、提供を原則とすることにより、
これらの調査確認を書面等により記録するものとする。省令もしくは通達等で書面作
成を義務化することを定めることも検討すべきであろう。
もちろん、当事者の要請により事前通知で行うことを排除するものではない。しか
し、複数の契約を同時履行的に処理する連件一括申請のようなケースでは、事前通知
では、登記の確実性は担保できないおそれがあるので、実際上は、資格による本人確
認情報の提供によることとなるので、事前通知でよいとの要請があったとしても、原
則として本人確認情報の書面作成に必要な調査確認は職責上の義務として行うべき
ものである。
(2)
モノによる本人確認の仕組みよりも、ヒトによる本人確認の方が精度は高く、
優位な制度である。
6
現行法上、登記識別情報が原則形態となっており、事前通知制度や資格者代理人に
よる本人確認情報の提供は二次的・補完的な制度になっているが、登記制度全体から
みた本人確認の精度が一番高いのは、
「資格者による本人確認」である。
登記識別情報は、登記所で発行した暗証番号と提供された暗証番号が一致している
か否かを、暗証番号という情報(モノ)によって本人確認ができたと形式的に擬制す
るものにすぎず、成りすましの登記申請の防止には何ら機能しないことは、前述した
とおりである。
また、事前通知の方法は、本人限定受取郵便の仕組みを利用するものであり、モノ
とヒトの組み合わせによる本人確認の仕組みである。しかし、ヒトによる確認といっ
ても、実際には、郵便局職員が本人の運転免許証の提示等によって、ものの数秒で本
人確認を行うというものにすぎず、実際上は運転免許証やパスポート等の写真付きの
証明書というモノに依存するものであり、信頼性の観点からは不安な仕組みであるこ
とは否めない。最終的には、申請時に提出した印鑑と回答書に押印された印鑑と同一
かどうかを登記官が確認することとなるが、それも形式的な照合をするだけのモノに
依存する仕組みである。
それに対し、資格者代理人による本人確認制度は、当該登記に関わる専門家が、取
引の主体であるヒト、客体であるモノ、媒体であるカネの三要素において、それぞれ
当事者の権利能力、行為能力、不動産処分権のみならず、必要に応じて、環境の処分、
資金負担能力、税負担能力等の各視点から取引のケースごとに必要な根拠資料に基づ
き調査対象から確認すべき事項を調査確認している。
(別添の曼荼羅表にした「不動産売
買取引の詳細分析」の資料参照)
登記識別情報は、モノによる確認手段にすぎず、それが有効に存在しているからと
いって、本人であることが直接に証明されるものではない。本人確認は、専門家であ
るヒトによる確認が優位なのは、比較法的に諸外国の登記制度を見ても理解できると
ころである。たとえば、ドイツ、フランスの大陸法系の公証人による確認制度や、イ
ギリス、アメリカ諸州、カナダ等の英法系のソリシター等の法律家関与でも、登記手
続きに関与する法律家によって登記原因と当事者の本人確認が行われ安全性と信頼
性を高めている。専門の法律家による様々な資料調査、聞き取り調査等による多面的
な根拠資料に基く調査確認の方が遥かに本人確認の精度は高まり、登記制度の信頼性
向上に寄与するものであることは、比較するまでもなく明らかである。
実際、これまでの旧法時代におけるわが国の登記制度が信頼性の高いものとして評
価されるのも、決して登記済証制度によるものではなく、むしろ、登記申請前の司法
書士による登記原因確認、本人確認が厳格に行われ、それにより登記申請がなされて
いたという職責に基づく事実上の調査確認事務に依拠する部分が大である。
登記済証が存在するからといって、司法書士の本人確認が終了するものではなく、
また、それが真正な登記済であったからといって、それにより免責されるものではな
い。これまでも、申請前に司法書士による厳格な事実上の本人確認作業があればこそ、
成りすまし等を防止してきたのであり、モノに依存する本人確認制度には、限界があ
ることを認識し、ヒトによる本人確認の仕組みを正面に据える制度改正が必要である。
7
*なお、本人確認情報の提供を活用する場合の本人確認方法、金融機関等の法人の場合の「代表者に代
わるべき者」に対する業務権限証明書の取扱い運用方法等は見直しを図る必要がある。
以上
3.当面の対応策ならびにオンライン申請率50%達成に向けた対応策
登記識別情報制度の存続の論点の延長で、廃止するとした場合、当面の登記識別情報
の取扱等の対応策を検討することが必要になるが、部分最適のみで解決すべきものでは
なく、登記識別情報制度の見直し検討が必要になった契機ともなったオンライン申請率
50%達成のために、IT 新改革戦略推進の観点から、IT 化時代の登記制度の全体最適
の対応策を検討することが今後の重要な論点となる
これらの問題の詳細については、改めて意見書を提出することとする。
8
Fly UP